JP2010037793A - 道路の変状防止構造及び道路の変状防止方法 - Google Patents

道路の変状防止構造及び道路の変状防止方法 Download PDF

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Abstract

【課題】地震により地盤が液状化しても、その液状化した地盤上の道路は人や車が通行する機能を確保可能な道路の変状防止構造及びその施工方法を提供する。
【解決手段】道路1の変状防止構造Sは、周囲の地盤2よりも密度の小さい道路部3が、道路1の下方の幅方向中央部に設けられ、地盤2の密度以上となる路肩部5が、道路1の下方に、道路部3の両側に設けられ、さらに、道路部3内及び路肩部5内を貫通するようにジオグリッド6が埋設されてなるものである。そして、道路部3の全幅及び路肩部5の一部を覆うように道路1が構築されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、地震等による液状化現象の発生が予測される軟弱地盤上に設けられた道路の変状を防止する変状防止構造及び変状防止方法に関するものである。
地震発生時に液状化する可能性がある軟弱地盤上に道路を構築する場合には、液状化現象に伴う道路変状を防止するために、軟弱地盤の一部を良質材で置換する置換構造が用いられている。
例えば、特許文献1には、軟弱地盤をすべてコンクリートに置換する構造が開示されている。この構造は、道路を構築する位置の下方の軟弱地盤を所定の深さまで除去して形成された空洞の底盤に止水層を設け、その止水層の上に構築された軽量コンクリートからなる基礎部と、基礎部の上に構築された舗装とからなり、道路の下方の軟弱地盤の液状化を完全に防止するものである。
特開平5−287723号公報
しかしながら、特許文献1に記載の置換構造では、次のような問題点があった。
(1)軟弱地盤を大量に掘削するので、掘削作業に多大な時間と手間がかかる。
(2)掘削した部分をすべてコンクリートに置換するので、大量のコンクリートが必要となり、コストがかかる。
(3)地震により地盤が液状化しても、その地盤上の道路を人や車が通行可能であればよく、軟弱地盤をコンクリートに置換して液状化を完全に防止する構造はオーバースペックである。
そこで、本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、地震により地盤が液状化しても、その地盤上の道路は凸状で人や車が通行する機能を確保可能な道路の変状防止構造及びその施工方法を提供することを目的とするものである。
前記目的を達成するため、本発明の道路の変状防止構造は、軟弱地盤上に設けられ、路面の中央から路肩側に向かって排水のための下り勾配を有する道路の変状防止構造であって、前記道路を構築する位置の周囲の地盤よりも密度の小さい道路部が、前記道路の下方の幅方向中央部に設けられ、前記地盤の密度以上となる路肩部が、前記道路の下方に、前記道路部の幅方向両側を挟むように設けられ、前記道路部及び前記路肩部を貫通するようにジオグリッドが埋設されてなることを特徴とする(第1の発明)。
本発明による道路の変状防止構造によれば、道路を構築する位置の周囲の地盤よりも密度の小さい道路部が、道路の下方の幅方向中央部に設けられ、地盤の密度以上となる路肩部が、道路部の両側を挟むように設けられているため、地震によって液状化現象が生じると、密度の大きい路肩部の土砂が密度の小さい道路部側にこの道路部を圧縮するように移動し、道路の中央部を上方に押し上げるので、路面の中央から路肩側に下り勾配を有する状態を維持することができる。
また、道路の下方の路肩付近には、周囲の地盤の密度以上の路肩部が設けられているので、液状化現象が生じても、周囲から路肩部への土砂の流入が防止され、路肩部の隆起を防止できる。
さらに、道路部内及び路肩部内にジオグリッドが埋設されているので、道路部内及び路肩部内の土砂等が周囲の地盤内へ流出することを防止できる。
また、ジオグリッドが設置されているので、平常時には、道路を通行する車等の荷重を分散し、道路部及び路肩部の不等沈下を防止することができる。
本発明において、前記道路部は、前記地盤よりも密度の小さい軽量材からなることとしてもよい。
本発明による道路の変状防止構造によれば、道路部は、地盤よりも密度の小さい軽量材からなるので、敷設時の施工作業が容易となる。
本発明において、前記道路部は、前記地盤よりも密度の小さい軽量材と、前記地盤の掘り起しや掘削等により生じた現地発生土とを含むこととしてもよい。
本発明による道路の変状防止構造によれば、地盤の掘削等により発生した現地発生土を利用するので、土砂の処分費を削減することができる。また、現地発生土を利用すると軽量材の使用量を少なくできるので、材料費を削減することができる。
本発明において、前記路肩部は、前記地盤の掘り起しや掘削等により生じた現地発生土からなることとしてもよい。
本発明による道路の変状防止構造によれば、現地発生土を利用するので、土砂の処分費を削減することができる。
本発明において、前記路肩部は、前記地盤の掘り起しや掘削等により生じた現地発生土と、時間の経過とともに硬化する硬化材とを含むこととしてもよい。
本発明による道路の変状防止構造によれば、現地発生土を使用するため、硬化材の使用量を少なくすることができる。
本発明の道路の変状防止方法は、軟弱地盤上に設けられ、路面の中央から路肩側に向かって排水のための下り勾配を有する道路の変状防止方法において、前記道路を構築する予定位置の道路幅方向中央部に、その周囲の地盤よりも密度の小さい道路部を形成する道路部敷設工程と、前記道路部を挟むように前記道路部の幅方向両側に、前記地盤の密度以上の路肩部を敷設する路肩部敷設工程と、前記道路部内及び前記路肩部内にジオグリッドを敷設するジオグリッド敷設工程とを備えることを特徴とする。
本発明の道路の変状防止構造を用いることにより、地震により地盤が液状化しても、道路は凸状で人や車が通行する機能を確保することができる。
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る道路1の変状防止構造Sを示す図であり、図2は、図1の道路1の拡大図である。
図1及び図2に示すように、道路1の変状防止構造Sは、周囲の地盤2よりも密度の小さい道路部3が、道路1の下方の幅方向中央部に設けられ、地盤2の密度以上となる路肩部5が、道路1の下方に、道路部3の両側に設けられ、さらに、道路部3内及び路肩部5内を貫通するようにジオグリッド6が埋設されてなるものである。
そして、道路部3の全幅及び路肩部5の一部を覆うように道路1が構築されている。
変状防止構造Sは、地盤2の最上層の砂質盛土層8内に設けられており、その砂質盛土層8の下には第一の砂質土層9、粘性土層10、第二の砂質土層11等が存在している。この地盤2は、地下水の水位が砂質盛土層8内に有るため、地震による液状化現象の発生が予測される。なお、本実施形態においては、地盤2を構成する各地層8、9、10、11の密度を17.0〜19.0kN/mであるものとするが、この値に限定されるものではない。
道路1は、雨水等が下部に浸透するのを防止するための表層13と、所定の粒度範囲に粒径の揃えられた砕石やスラグが敷設される上層路盤14と、粒径の揃えられていない砕石やスラグが敷設される切込砕石層15とからなる。
表層13は、道路1の中心部分から道路1脇に設けられている排水路12に向かって、例えば、2%の下り勾配を有しているので、液状化現象により地盤2上に吹き出した水や雨水等は、表層13上に溜まることなく排水路12に排出される。
道路部3は、砂質盛土層8よりも小さい密度の軽量材からなる。本実施形態においては、軽量材として、密度が11.0〜15.0kN/mのクリンカアッシュを用いた。しかし、これに限定するものではなく、砂質盛土層8の密度よりも小さいもので有ればよく、例えば、水砕スラグ(12〜13.5kN/m)、火山灰土(12〜14kN/m)を用いてもよい。
路肩部5は、道路1を構築する際に地盤2の掘り起し等により生じた現地発生土と、セメントとを混合した混合土からなり、その混合土の密度は、地盤2の密度と同程度の17.0〜19.0kN/mになるように調整されている。
道路部3内及び路肩部5内には、シート状のジオグリッド6(例えば、アデム:商品名、前田工繊株式会社製)が所定の間隔で積層するように複数枚敷設されている。
次に、道路部3の両側に路肩部5を設けた効果について検討した結果を説明する。
まず、本実施形態との対比のため、砂質盛土層8に道路部3や路肩部5を設けること無く、砂質盛土層8に道路1を構築した場合、及び砂質盛土層8に埋戻材からなる層を設け、その上に道路1を構築した場合の液状化による道路1の変状について、複数ケース行った解析について説明する。
図3〜図6は、道路1の変状についての解析ケースNo.1〜No.4の各地盤2を示す図である。また、図7は、解析ケースNo.1〜No.4の解析条件を示す一覧図である。
図3に示すように、解析ケースNo.1は、地盤2の砂質盛土層8内に直接、道路1を構築したものである。道路1は、表層13と切込砕石層15とから構成し、それぞれの厚さを0.1m、0.5mとした。なお、砂質盛土層8の密度、厚さは、それぞれ19.0kN/m、2.03mとした。
図7に示すように、解析ケースNo.1における道路1の地表から深度1.0mまで(0.1m(表層13)+0.5m(切込砕石層15)+0.4m(砂質盛土層8))を平均した平均密度G1は(1)式となる。なお、本実施形態においては、各地層8、9、10、11の密度を、例えば、19.0kN/mとした。
G1=22.5×0.1+20.0×0.5+19.0×0.4
=19.85kN/m …(1)
(1)式より、道路1の地表から深度1.0mまでは、周囲の地盤2よりも密度が大きいことがわかる。これは、道路1を構成する表層13及び切込砕石層15の密度が砂質盛土層8よりも大きいため、全体として地盤2の密度よりも大きくなったものである。
次に、図4に示すように、解析ケースNo.2は、砂質盛土層8内に埋戻材であるクリンカアッシュからなる層4を設け、その上に道路1を構築したものである。クリンカアッシュからなる層4内には、複数のジオグリッド6を敷設した。また、道路1は、表層13と上層路盤14と切込砕石層15とから構成した。
図7に示すように、解析ケースNo.2における道路1の地表からクリンカアッシュからなる層4の底面の深度1.0mまでを平均した平均密度G2は(2)式となる。
G2=22.5×0.05+20.0×0.15+20.0×0.5+
12.0×0.3=17.725kN/m …(2)
(2)式より、道路1の地表から深度1.0mまでは、周囲の地盤2よりも密度が小さいことがわかる。これは、道路1を構成する表層13、上層路盤14及び切込砕石層15の密度は砂質盛土層8よりも大きいが、クリンカアッシュの密度が他の層の密度よりも著しく小さいため、全体として地盤2の密度よりも小さくなったものである。
また、図5に示すように、解析ケースNo.3は、砂質盛土層8内に埋戻材である現地発生土からなる層16を設け、その上に道路1を構築したものである。現地発生土からなる層16内には、複数のジオグリッド6を敷設した。また、道路1は、表層13と上層路盤14と切込砕石層15とから構成し、それぞれの厚さを0.05m、0.15m、0.5mとした。
図7に示すように、解析ケースNo.3における道路1の地表から現地発生土からなる層16の底面の深度1.0mまでを平均した平均密度G3は(3)式となる。
G3=22.5×0.05+20.0×0.15+20.0×0.5+
19.0×0.3=19.825kN/m …(3)
(3)式より、道路1の地表から深度1.0mまでは、周囲の地盤2よりも密度が大きいことがわかる。これは、道路1を構成する表層13、上層路盤14及び切込砕石層15の密度が砂質盛土層8よりも大きいため、全体として地盤2の密度よりも大きくなったものである。なお、解析ケースNo.1の密度よりもやや小さくなった。
そして、図6に示すように、解析ケースNo.4は、砂質盛土層8内に現地発生土とクリンカアッシュとを混合した混合土からなる層17を設け、その上に道路1を構築したものである。この混合土は、現地発生土の密度とクリンカアッシュの密度との平均値である15.5kN/mになるように調合されている。混合土からなる層17内には、複数のジオグリッド6を敷設した。また、道路1は、表層13と上層路盤14と切込砕石層15とから構成した。
図7に示すように、解析ケースNo.4の場合における道路1の地表から混合土からなる層17の底面の深度1.0mまでを平均した平均密度G4は(4)式となる。
G4=22.5×0.05+20.0×0.15+20.0×0.5+
(19.0+12.0)/2×0.3=18.775kN/m …(4)
(4)式より、道路1の地表から深度1.0mまでは、周囲の地盤2よりも密度が小さいことがわかる。これは、道路1を構成する表層13、上層路盤14及び切込砕石層15の密度は砂質盛土層8よりも大きいが、混合土の密度が他の層の密度よりも著しく小さいため、全体として地盤2の密度よりも小さくなったものである。なお、解析ケースNo.2の密度よりもやや大きくなった。
次に、上述した解析ケースNo.1〜No.4の各地盤2に地震波を作用させた場合の地盤2の変形について検討した結果を示す。
解析ケースNo.1〜No.4の各地盤2に、海溝型地震を想定した地震動で、建設省(現国土交通省)告示第1461号の加速度応答スペクトル(図8に示す)の模擬地震動のうち、図9に示すような地震波を作用させた際の二次元有効応力解析を行った。以下、各解析ケースの解析結果について考察する。
図10〜図13は、各解析ケースNo.1〜No.4の応力解析によって得られた地震終了時(t=81.92秒)の残留変形を示す図である。また、図14は、各解析ケースNo.1〜No.4の応力解析によって得られた地震終了時(t=81.92秒)の路面の残留変位を比較した図である。
<解析ケースNo.1について>
図10に示すように、道路1及びその下方部分を平均した平均密度が周囲の地盤2よりも重いため、地震波によって、道路1下方の土砂が周囲に移動して、路肩部5から排水路12までの区間の地盤2が隆起した。しかし、路面中央付近では、道路1の重みにより沈下が生じた。
その結果、図14に示すように、路面中央で約35cmの沈下が生じ、路肩部5から排水路12までの区間では約15cmの隆起が生じ、幅方向の排水勾配2%を確保できなかった。
<解析ケースNo.2について>
図11に示すように、道路1及びその下方部分を平均した平均密度が周囲の地盤2よりも軽いため、地震波によって、道路1の周囲の土砂がクリンカアッシュからなる層4内に入り込んで、クリンカアッシュを押し潰し、道路1全体が隆起した。特に、周囲の土砂が流入した路肩部5から排水路12までの区間が著しく隆起した。
その結果、図14に示すように、路面中央で約2cmの隆起が生じ、路肩部5から排水路12までの区間では約25cmの隆起が生じ、幅方向の排水勾配2%を確保できなかった。
<解析ケースNo.3について>
図12に示すように、道路1及びその下方部分を平均した平均密度が周囲の地盤2よりも重いため、地震波によって、道路1下方の現地発生土が周囲に移動し、路肩部5から排水路12までの区間が隆起した。しかし、路面中央付近では、道路1の重みにより沈下が生じた。
その結果、図14に示すように、路面中央で約17cmの沈下が生じ、路肩部5から排水路12までの区間では約3cmの隆起が生じ、幅方向の排水勾配2%を確保できなかった。
路肩部5から排水路12までの区間の隆起は解析ケースNo.1よりも小さくなっている。これはジオグリッド6により、道路1の下方から周囲の地盤2内への土砂の移動が制限されたことが考えられる。したがって、ジオグリッド6の設置は土砂の移動を防止するのに効果的である。
<解析ケースNo.4について>
図13に示すように、道路1及びその下方部分を平均した平均密度が周囲の地盤2よりも軽いため、地震波によって、道路1の周囲の土砂が混合土からなる層17内に入り込んで、路肩部5から排水路12までの区間が隆起した。しかし、路面中央付近では、道路1の重みにより沈下が生じた。
その結果、図14に示すように、路面中央で約5cmの沈下が生じ、路肩部5から排水路12までの区間では約15cmの隆起が生じ、幅方向の排水勾配2%を確保できなかった。
上述した各解析ケースNo.1〜No.4までの解析結果より、密度が小さい層と密度が大きい層とが接する部分では、液状化によって、密度が大きい層内の土砂が小さい層内へ移動することがわかる。そして、密度差が大きい場合に、土砂は大量に移動し、その土砂は小さい密度の層内の土砂を押し潰すので、小さい層の表面が隆起する。一方、密度差が小さい場合に、土砂は少量だけ移動するので、小さい密度の層はあまり隆起しない。そして、土砂が移動した後の密度が大きい層は、土砂が少なくなり沈下する。
そこで、本実施形態では、図15に示すように、道路1下方の中央部が沈下しないように、道路1下の中央部に密度の小さいクリンカアッシュからなる道路部3を構築するとともに、この両脇に地盤2と同じ密度の現地発生土からなる路肩部5を構築し、液状化によって、現地発生土が道路部3内に移動して道路1中央部の沈下を抑制する効果を期待した。また、同時に、路肩部5には、周囲から道路1下方へ大量の土砂が流入することを防止する効果を期待した。
本実施形態に対応する解析ケースとして、道路1の幅を13mとし、道路1を構成する表層13、上層路盤14、切込砕石層15の厚さをそれぞれ0.05m、0.15m、0.5mとした。また、道路部3の幅、厚さをそれぞれ7.8m、1.0mとし、路肩部5の幅、厚さをそれぞれ2.6m、1.0mとする解析ケースNo.5を設定した。
図16は、解析ケースNo.5の解析条件を示す図である。
図15及び図16に示すように、解析ケースNo.5は、道路1下方の中央部にクリンカアッシュからなる道路部3を設け、その両側に現地発生土からなる路肩部5を敷設したものである。また、道路部3及び路肩部5内には、複数のジオグリッド6を敷設した。
解析ケースNo.5の場合における道路1の地表から深度1.0mまでの道路1全体の平均密度G5は(5)式となる。
G5=22.5×0.05+20.0×0.15+20.0×0.5+
12.0×0.3×(3.9/6.5)+19.0×0.3×
(1−(3.9/6.5))=18.565kN/m …(5)
(5)式より、道路1の地表から深度1.0mまでの道路1全体の密度は、周囲の地盤2よりも平均すると小さいことがわかる。これは、路肩部5の地表から深度1.0mまでの密度は、地盤2の密度よりも大きいが、道路部3の地表から深度1.0mまでの密度は、地盤2の密度よりも著しく小さいので、路肩部5と道路部3との平均密度G5は、地盤2の密度よりも小さくなった。
そして、解析ケースNo.5の地盤2に、上述した地震波を作用させた際の応力解析を行った。以下に、この結果を示す。
図17は、解析ケースNo.5の応力解析によって得られた地震終了時(t=81.92秒)の残留変形を示す図である。また、図18は、解析ケースNo.5の応力解析によって得られた地震終了時(t=81.92秒)の路面の残留変位を追記した図である。
図17に示すように、道路1の下方の道路部3は、路肩部5から土砂が流入し、道路部3は隆起した。また、周囲からの土砂が路肩部5内に流入したが少量で、路肩部5から排水路12までの区間はわずかに隆起した。
さらに、路肩部5の土砂が周囲へ移動している様子は見られない。
その結果、図18に示すように、路面中央で約2cmの隆起が生じ、路肩部5から排水路12までの間では約5cmの隆起が生じたが、幅方向の排水勾配2%を概ね確保できた。
したがって、道路1の下方に道路部3及び路肩部5を設けた構造は、残留沈下がほとんど生じず、排水勾配2%を概ね確保できることがわかった。
また、ジオグリッド6の敷設により、道路1の下方から周囲への土の移動を抑制できることがわかった。
以上説明したように、本実施形態によれば、砂質盛土よりも密度の小さい道路部3が、道路1の下方中央部に設けられ、地盤2の密度以上となる路肩部5が、道路部3の両側を挟むように設けられているため、地震によって液状化が生じると、密度の大きい路肩部5の土砂が密度の小さい道路部3側にこの道路部3を圧縮するように移動し、道路1の中央部を上方に押し上げるので、中央部から幅方向に下り勾配を有する状態を維持することができる。
また、道路1の下方の路肩付近には、周囲の地盤2の密度以上の路肩部5を設けているので、液状化が生じても、周囲から路肩部5への土砂の流入が防止され、路肩部5の隆起を防止できる。
さらに、道路部3及び路肩部5内にジオグリッド6が設置されているので、道路部3及び路肩部5内の土砂等が周囲の地盤2内へ流出することを防止できる。
また、道路部3には、密度の小さい軽量材を敷設するので、施工作業が容易である。
そして、路肩部5には、現地発生土を利用するので、土砂の処分費を削減することができる。
なお、本実施形態においては、道路部3に軽量材を敷設する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、密度が地盤2よりも小さければよく、例えば、軽量材と、現地発生土と、時間の経過とともに硬化する硬化材と、気泡とを混合した気泡混合軽量土(5〜12kN/m)を用いたり、軽量材と、現地発生土と、固化材と、発泡ビーズとを混合した発泡ビーズ混合軽量土(8〜16kN/m)を用いてもよい。
なお、本実施形態においては、路肩部5に、地盤2の密度と同じ密度の混合土を用いる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、地盤2の密度以上であればよい。
また、本実施形態においては、路肩部5に現地発生土のみを用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、現地発生土とセメントとを含む混合土を用いてもよい。
なお、本実施形態においては、道路部3、路肩部5の幅をそれぞれ7.8m、2.6mとした場合について説明したが、これらの値に限定されるものではなく、適宜設計等により変更する。
本発明の実施形態に係る道路の変状防止構造を示す図である。 図1の道路の拡大図である。 道路の変状についての解析ケースNo.1の地盤を示す図である。 道路の変状についての解析ケースNo.2の地盤を示す図である。 道路の変状についての解析ケースNo.3の地盤を示す図である。 道路の変状についての解析ケースNo.4の地盤を示す図である。 解析ケースNo.1〜No.4の解析条件を示す一覧図である。 建設省(現国土交通省)告示第1461号の加速度応答スペクトルを示す図である。 解析に使用した地震波の形状を示す図である。 解析ケースNo.1の応力解析によって得られた地震終了時(t=81.92秒)の残留変形を示す図である。 解析ケースNo.2の応力解析によって得られた地震終了時(t=81.92秒)の残留変形を示す図である。 解析ケースNo.3の応力解析によって得られた地震終了時(t=81.92秒)の残留変形を示す図である。 解析ケースNo.4の応力解析によって得られた地震終了時(t=81.92秒)の残留変形を示す図である。 各解析ケースNo.1〜No.4の応力解析によって得られた地震終了時(t=81.92秒)の路面の残留変位の比較を示す図である。 本実施形態に係る道路の変状防止構造を示す図である。 解析ケースNo.5の解析条件を示す図である。 解析ケースNo.5の応力解析によって得られた地震終了時(t=81.92秒)の残留変形を示す図である。 解析ケースNo.5の応力解析によって得られた地震終了時(t=81.92秒)の路面の残留変位を追記した図である。
符号の説明
1 道路
2 地盤
3 道路部
4 クリンカアッシュからなる層
5 路肩部
6 ジオグリッド
8 砂質盛土層
9 第一の砂質土層
10 粘性土層
11 第二の砂質土層
12 排水路
13 表層
14 上層路盤
15 切込砕石層
16 現地発生土からなる層
17 混合土からなる層
S 変状防止構造

Claims (6)

  1. 軟弱地盤上に設けられ、路面の中央から路肩側に向かって排水のための下り勾配を有する道路の変状防止構造であって、
    前記道路を構築する位置の周囲の地盤よりも密度の小さい道路部が、前記道路の下方の幅方向中央部に設けられ、
    前記地盤の密度以上となる路肩部が、前記道路の下方に、前記道路部の幅方向両側を挟むように設けられ、
    前記道路部及び前記路肩部を貫通するようにジオグリッドが埋設されてなることを特徴とする道路の変状防止構造。
  2. 前記道路部は、
    前記地盤よりも密度の小さい軽量材からなることを特徴とする請求項1に記載の道路の変状防止構造。
  3. 前記道路部は、
    前記地盤よりも密度の小さい軽量材と、前記地盤の掘り起しや掘削等により生じた現地発生土とを含むことを特徴とする請求項1に記載の道路の変状防止構造。
  4. 前記路肩部は、
    前記地盤の掘り起しや掘削等により生じた現地発生土からなることを特徴とする請求項1に記載の道路の変状防止構造。
  5. 前記路肩部は、
    前記地盤の掘り起しや掘削等により生じた現地発生土と、時間の経過とともに硬化する硬化材とを含むことを特徴とする請求項1に記載の道路の変状防止構造。
  6. 軟弱地盤上に設けられ、路面の中央から路肩側に向かって排水のための下り勾配を有する道路の変状防止方法において、
    前記道路を構築する予定位置の道路幅方向中央部に、その周囲の地盤よりも密度の小さい道路部を形成する道路部敷設工程と、
    前記道路部を挟むように前記道路部の幅方向両側に、前記地盤の密度以上の路肩部を敷設する路肩部敷設工程と、
    前記道路部内及び前記路肩部内にジオグリッドを敷設するジオグリッド敷設工程とを備えることを特徴とする道路の変状防止方法。
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