JP2010023778A - 駆動装置の制御装置及び駆動装置 - Google Patents

駆動装置の制御装置及び駆動装置 Download PDF

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Abstract

【課題】噛み合い対象同士の回転を同期させる回転同期装置を有さない噛み合い式のクラッチを自動的に噛み合わせる際に、噛み合い対象同士の位置及び回転速度を同期させること。
【解決手段】クラッチ制御部12には、噛み合いクラッチを構成する回転する部材の位置を制御するための位置制御フィードバックループFBMと、位置制御フィードバックループFBMの内側に形成される、回転する部材の回転速度を制御する回転速度フィードバックループFBSとを有する。位置制御フィードバックループFBMには、無駄時間及び遅れ時間を予測する第1予測制御手段57が設けられ、また、回転速度フィードバックループFBSには、無駄時間及び遅れ時間を予測する第2予測制御手段58が設けられる。
【選択図】 図6

Description

本発明は、車両に搭載されて車両を走行させる駆動装置の制御に関し、特に、内燃機関と電動機とを組み合わせたハイブリッド駆動装置を制御する駆動装置の制御装置及び駆動装置に関する。
変速アクチュエータが一対のギヤの回転が同期させられてから相互に噛み合わせる噛み合いクラッチを駆動することにより、所定のギヤ段が達成される有段変速機が開示されている(特許文献1)。
特開2000−295709号公報(0003)
特許文献1に開示されている噛み合いクラッチは、摩擦力によって一対の噛み合いギヤの一方とシフトリングとの回転を同期させる回転同期装置(シンクロナイザ)を備えており、変速アクチュエータによる変速では、回転同期装置により、噛み合いギヤとシフトリングとの回転を同期させる。摩擦力を利用した回転同期装置を用いる場合、変速の際には、回転同期装置の引きずりによる損失が発生する。このため、このような回転同期装置を用いないで、回転を同期させることができれば、噛み合い式のクラッチを噛み合わせる際の摩擦損失を極めて低減でき、係合動作中の消費エネルギを低減できる。
しかし、回転同期装置を用いない噛み合い式のクラッチは、噛み合い対象同士の回転を同期させる機能が失われる。このため、アクチュエータを用いて自動的に噛み合い式のクラッチを噛み合わせる場合には、噛み合い対象同士の位置及び回転速度を同期させる制御が必要になる。
また、特許文献1に開示されているように、例えば遊星歯車装置を用いた動力分割機構を用いて、内燃機関と電動機とを組み合わせて、内燃機関のトルクに起因して発生する反力を電動機で受けるように構成されたハイブリッド式の駆動装置が知られている。このようなハイブリッド式の駆動装置では、運転条件によっては電動機を用いないで前記反力を受けることにより、内燃機関の燃料消費を抑制できたり、ドライバビリティを向上させたりすることができる。しかし、電動機を用いないで前記反力を受ける具体的な構成については特許文献1には開示されていない。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、機械的な構造で噛み合い対象同士の回転を同期させる回転同期装置を有さない噛み合い式のクラッチを自動的に噛み合わせる際に、噛み合い対象同士の位置及び回転速度を同期させること、電動機と内燃機関とを動力分割機構を用いて組み合わせたハイブリッド式の駆動装置において、電動機を用いないで内燃機関の反力を受ける構成を提供することのうち、いずれか一方を達成することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る駆動装置の制御装置は、動力を発生する内燃機関と、回生機能及び力行機能を有する第1電動機と、回生機能及び力行機能を有する第2電動機と、前記内燃機関の反力を伝達するための第1部材及び前記第1部材と噛み合い又は解放する第2部材を含んで構成されるクラッチと、を有する駆動装置の前記第1部材と前記第2部材とを噛み合わせる際の制御に用いるものであり、前記第1部材の実際の位置と、前記第1部材が目標とする位置目標値との偏差が0になるように、前記第1電動機を制御する位置調節手段と、前記位置調節手段の出力が入力されるとともに、前記第1部材の実際の回転速度と、前記第1部材が目標とする回転速度目標値との偏差が0になるように、前記第1電動機を制御する回転速度調節手段と、前記位置調節手段の出力側と入力側との間に設けられて、制御プロセスに存在する無駄時間及び遅れ時間を考慮した制御モデルを用いて、前記位置調節手段の周りに局所的なフィードバックを施す第1予測制御手段と、前記回転速度調節手段の出力側と入力側との間に設けられて、制御プロセスに存在する無駄時間及び遅れ時間を考慮した制御モデルを用いて、前記回転速度調整手段の周りに局所的なフィードバックを施す第2予測制御手段と、を備えることを特徴とする。
本発明の望ましい態様としては、前記駆動装置の制御装置において、前記位置調節手段の出力側と前記回転速度調節手段の入力側との間、前記回転速度調節手段の出力側の少なくとも一方に、フィードバック制御において積分動作を行わせるための積分項を演算する積分項演算手段を設けることが好ましい。
本発明の望ましい態様としては、前記駆動装置の制御装置において、前記第1部材の実際の回転速度に含まれる高周波ノイズを除去するローパスフィルタ機能を有する回転速度フィルタが設けられ、前記第2予測制御手段は、さらに、前記回転速度フィルタに起因して発生する、入力に対する出力応答の遅延を予測することが好ましい。
本発明の望ましい態様としては、前記駆動装置の制御装置において、前記内燃機関の出力変動に基づいて前記出力変動を打ち消すようなフィードフォワード要素を生成して、前記回転速度調節手段の出力に与えるフィードフォワード要素生成手段を設けることが好ましい。
本発明の望ましい態様としては、前記駆動装置の制御装置において、前記第1部材と前記第2部材とを噛み合わせる際における前記第1電動機のトルクの変動を打ち消すトルクを、前記駆動装置が搭載される車両に要求される要求トルクに加えることが好ましい。
本発明の望ましい態様としては、前記駆動装置の制御装置において、前記第1部材と前記第2部材とを噛み合わせる際における前記第1電動機のトルクの変動を打ち消すトルクは、前記第2電動機で発生させることが好ましい。
本発明の望ましい態様としては、前記駆動装置の制御装置において、前記無駄時間及び前記遅れ時間は、前記第1部材と前記第2部材とを噛み合わせる際の制御をする過程において発生し得る最大値とすることが好ましい。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る駆動装置は、動力を発生する内燃機関と、回生機能及び力行機能を有する第1電動機と、回生機能及び力行機能を有する第2電動機と、前記内燃機関の反力を伝達するための第1部材及び前記第1部材と噛み合い又は解放する第2部材を含んで構成されるクラッチと、を有することを特徴とする。
本発明の望ましい態様としては、前記駆動装置において、遊星歯車装置で構成される動力分割機構を備え、前記動力分割機構のサンギヤが前記第1電動機の入出力軸と接続され、前記動力分割機構のキャリアが前記内燃機関の出力軸に接続され、前記動力分割機構のリングギヤが前記第2電動機の入出力軸と接続され、前記第1部材は、前記第1電動機の入出力軸に取り付けられることが好ましい。
本発明の望ましい態様としては、前記駆動装置において、シングルピニオン式の第1遊星歯車装置と、ダブルピニオン式の第2遊星歯車装置とで構成される動力分割機構を備え、前記第1遊星歯車装置のサンギヤは前記第1電動機の入出力軸と接続され、前記第1遊星歯車装置のキャリアは前記内燃機関の出力軸と接続されるとともに前記第2遊星歯車装置のリングギヤと接続され、前記第1遊星歯車装置のリングギヤは前記第2遊星歯車装置のキャリアと接続されるとともに前記第2電動機の入出力軸と接続され、前記第2遊星歯車装置のサンギヤは前記第1部材が接続されることが好ましい。
本発明は、機械的な構造で噛み合い対象同士の回転を同期させる回転同期装置を有さない噛み合い式のクラッチを自動的に噛み合わせる際に、噛み合い対象同士の位置及び回転速度を同期させること、電動機と内燃機関とを動力分割機構を用いて組み合わせたハイブリッド式の駆動装置において、電動機を用いないで内燃機関の反力を受ける構成を提供することのうち、いずれか一方を達成できる。
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の説明により本発明が限定されるものではない。また、下記の説明における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
本実施例に係る駆動装置の制御装置は、動力を発生する内燃機関と、回生機能及び力行機能を有する第1電動機と、回生機能及び力行機能を有する第2電動機と、前記第1電動機の出力軸に直接又は間接的に取り付けられて、前記内燃機関の反力を伝達するための第1部材及び前記第1部材と噛み合い又は解放する第2部材を含んで構成されるクラッチと、を有する駆動装置のクラッチを噛み合わせる際に用いるものである。そして、本実施例に係る駆動装置の制御装置は、クラッチを噛み合わせる際に、第1部材の実際の位置及び回転速度を入力側へ帰還させるフィードバック制御によって、第1部材の位置(位相)と回転速度とをそれぞれの目標値になるように、制御対象である第1電動機を制御する。このとき、制御プロセス中に存在する無駄時間及び遅れ時間を予測する第1予測制御手段を、第1部材の実際の位置と、第1部材が目標とする位置目標値との偏差が0になるように第1電動機をフィードバック制御するための位置制御フィードバックループに設け、また、制御プロセスに存在する無駄時間及び遅れ時間を予測する第2予測制御手段を、位置制御フィードバックループよりも内側に形成される回転速度フィードバックループに設ける。以下において、内燃機関や電動機、あるいは軸の回転速度とは、内燃機関や電動機の出力軸の単位時間あたりにおける回転数であり、回転角速度と同じ意味である。
図1は、本実施例に係る駆動装置及び駆動装置の制御装置を搭載する車両を示す模式図である。図2−1、図2−2は、本実施例に係る駆動装置が備えるクラッチの説明図である。図3は、本実施例に係る駆動装置が備えるクラッチの動作を示す模式図である。駆動装置3は、内燃機関22と、第1電動機21と、動力分割機構30と、第2電動機23とを備えるハイブリッド式の駆動装置であり、車両1に搭載されてこれを走行させる。車両1は、図1に示すように、左前輪2FF、右前輪2FR、左後輪2RL、右後輪2RRを備えており、左前輪2FF、右前輪2FRが操舵輪、左後輪2RL、右後輪2RRが駆動輪となる。
内燃機関22と、内燃機関22の出力軸であるクランクシャフト22Sにダンパ28を介して接続された動力分割機構30と、動力分割機構30に接続された第1電動機21と、動力分割機構30に接続された第2電動機23と、車両1を制御するメインECU(Electronic Control Unit)10と、内燃機関22を制御する機関ECU16と、第1電動機21及び第2電動機23を制御する電動機ECU(MGECU)15とを備える。
内燃機関22は、ガソリン又は軽油等の炭化水素系の燃料により動力を発生する熱機関であり、内燃機関22の運転状態を検出する各種センサから信号を入力する機関ECU16により燃料噴射制御や点火制御、吸入空気量調節制御などの運転制御を受ける。機関ECU16は、メインECU10と通信しており、メインECU10からの制御信号により内燃機関22を運転制御するとともに、必要に応じて内燃機関22の運転状態に関する情報をメインECU10に出力する。
第1電動機21及び第2電動機23は、電力供給機能及び蓄電機能の両方を備える電力源(本実施例ではバッテリ20)からインバータ18を介して供給される電力によって動力を発生する機能(力行機能)、及び機械エネルギを電気エネルギに変換する機能(回生機能)を兼ね備える。これによって、第1電動機21及び第2電動機23は、動力発生手段として機能するとともに、発電機としても機能する。本実施例において、第1電動機21及び第2電動機23は、交流同期電動機が用いられるが、第1電動機21及び第2電動機23に使用できる電動機はこれに限定されるものではない。
第1電動機21及び第2電動機23は、電動機ECU15により制御される。電動機ECU15は、メインECU10と通信しており、メインECU10からの制御信号により第1電動機21及び第2電動機23の力行及び回生を制御するとともに、必要に応じて第1電動機21及び第2電動機23の運転状態に関する情報をメインECU10に出力する。
動力分割機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛み合うとともにリングギヤ32に噛み合う複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33が自転かつサンギヤ31の周りを公転できるように複数のピニオンギヤ33を保持するキャリア34とを備える。このように、動力分割機構30は、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素とする遊星歯車装置である。
動力分割機構30は、キャリア34に内燃機関22のクランクシャフト22Sが、サンギヤ31に第1電動機21の入出力軸21Sが、リングギヤ32に連結シャフト25Iがそれぞれ接続されている。第2電動機23の入出力軸23Sは、減速装置29に接続される。減速装置29は、第2電動機23の回転数を減速させて出力するとともに、内燃機関22の出力を第2電動機23の出力と合成する機能を有する。
動力分割機構30は、第1電動機21が発電機として機能するときには、キャリア34から入力される内燃機関22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側とに、そのギヤ比に応じて分配する。これによって、内燃機関22の動力は、動力分割機構30で分割され、一部で第1電動機21から発電させ、残りは動力分割機構30へ入力されて連結シャフト25Iから出力される。第1電動機21で生み出された電力は、第2電動機23を駆動したり、蓄電装置であるバッテリ20に充電されたりする。蓄電装置としては、充放電可能な二次電池であるバッテリ20や、キャパシタ等を用いることができる。
第1電動機21が生み出した電力やバッテリ20から供給される電力によって第2電動機23が動力を発生するとき、すなわち第2電動機23が力行するときには、第2電動機23が動力を発生する。第2電動機23が発生する動力は、減速装置29からプロペラシャフト25Pへ出力される。また、第2電動機23が発電機として機能するときには、連結シャフト25Iから減速装置29を介して第2電動機23へ動力が入力され、これによって第2電動機23が電力を発生する。
第1電動機21は、例えば、内燃機関22を始動させるときに、バッテリ20から電力の供給を受けて動力を発生する(力行)。この場合、第1電動機21の発生した動力は、動力分割機構30のサンギヤ31からキャリア34を介して内燃機関22のクランクシャフト22Sに伝達される。これによって、内燃機関22が始動する。
内燃機関22の動力及び第2電動機23の動力は、減速装置29で合成されてからプロペラシャフト25Pへ出力される。なお、内燃機関22のみが動力を発生している場合には、この動力が直接プロペラシャフト25Pへ出力され、第2電動機23が単独で動力を発生している場合には、この動力が減速装置29を介してプロペラシャフト25Pへ出力される。プロペラシャフト25Pは、減速装置29とデファレンシャルギヤ26とを連結しており、両者の間で動力を伝達する。
プロペラシャフト25Pが内燃機関22や第2電動機23の動力をデファレンシャルギヤ26へ入力すると、車両1の駆動軸27L、27Rに取り付けられる左後輪2RL、右後輪2RRを駆動する。これによって、車両1が走行する。また、第2電動機23が回生する場合、左後輪2RL、右後輪2RRから駆動軸27L、27R、デファレンシャルギヤ26、プロペラシャフト25P及び減速装置29を介して第2電動機23が駆動される。
第1電動機21、第2電動機23は、コンバータ17及びインバータ18を介してバッテリ20と電力をやり取りする。バッテリ20は、第1電動機21と第2電動機23とのいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、第1電動機21、第2電動機23により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ20は充放電されない。
第1電動機21、第2電動機23は、いずれも電動機ECU15により駆動制御されている。電動機ECU15には、第1電動機21、第2電動機23を駆動制御するために必要な信号、例えば第1電動機21、第2電動機23の回転子の回転位置を検出する第1回転位置検出センサ43、第2回転位置検出センサ44からの信号や、電流センサにより検出される第1電動機21、第2電動機23に印加される相電流等が入力されている。電動機ECU15からは、インバータ18へのスイッチング制御信号が出力されている。ここで、第1回転位置検出センサ43及び第2回転位置検出センサ44には、例えば、レゾルバが用いられる。
本実施例において、車両1に搭載される駆動装置3は、クラッチ24を備える。図1、図2−1、図2−2に示すように、クラッチ24は、第1部材である噛み合いピース24Rと、噛み合いピース24Rと噛み合い(係合)又は解放する第2部材である噛み合いスリーブ24Sとで構成される噛み合いクラッチである。本実施例において、噛み合いピース24Rは、第1電動機21の入出力軸21Sに取り付けられ、噛み合いスリーブ24Sは、駆動装置3の静止系(例えば、第1電動機21、第2電動機23、クラッチ24、動力分割機構30を格納する筐体3S)に取り付けられる。すなわち、噛み合いピース24Rは、第1電動機21の入出力軸21Sとともに回転するが、噛み合いスリーブ24Sは回転しない。
図2−1に示すように、噛み合いスリーブ24Sは、環状の部材であり、内周部に複数の噛み合い内歯が形成されており、外周部に複数の外歯24STBが形成される。図1に示す筐体3Sの内側には、噛み合いスリーブ24Sの外周部に形成される複数の外歯24STBと噛み合う溝が形成されている。筐体3Sの内側に形成される溝に噛み合いスリーブ24Sの外歯24STBを噛み合わせることで、噛み合いスリーブ24Sの回転が止められるとともに、噛み合いスリーブ24Sは、噛み合いスリーブ24Sの中心軸Zsと平行な方向、すなわち、第1電動機21の入出力軸21Sの回転中心(図2−2のZr)と平行な方向に移動できる。
噛み合いピース24Rは、クラッチ24が係合されたときには、内燃機関22の反力、すなわち、内燃機関22のクランクシャフト22Sから出力されるトルクに起因する反力を、噛み合いピース24Rと噛み合う対象である噛み合いスリーブ24Sへ伝達するための部材である。噛み合いピース24Rは、第1電動機21の入出力軸21Sに取り付けられる円板状の部材であり、外周部に複数の噛み合い外歯が形成される。噛み合いスリーブ24Sの内周部に形成される噛み合い内歯と、噛み合いピース24Rの外周部に形成される噛み合い外歯とが互いに噛み合って、クラッチ24が係合する。図1、図3に示すように、噛み合いクラッチ24を構成する噛み合いスリーブ24Sは、アクチュエータ5によって噛み合いピース24Rの回転軸、すなわち、第1電動機21の入出力軸21Sの回転中心Zrと平行な方向に移動されて、噛み合いピース24Rと噛み合い、又は解放(噛み合いが解除)される。アクチュエータ5は、例えば、ソレノイドが用いられる。
クラッチ24が噛み合わされると、内燃機関22のクランクシャフト22Sから出力されるトルクに起因する反力は、噛み合いピース24Rから噛み合いピース24Rの噛み合い外歯、噛み合いスリーブ24Sの噛み合い内歯、噛み合いスリーブ24S、噛み合いスリーブ24Sの外歯24STB、筐体3Sの順に伝達される。このように、内燃機関22の前記反力は、クラッチ24を介して筐体3Sで受けられる。このように、本実施例では、電動機と内燃機関とを動力分割機構を用いて組み合わせたハイブリッド式の駆動装置において、電動機を用いないで内燃機関の反力を受ける構成を提供できる。
なお、噛み合いクラッチはこのような構成以外であってもよい。例えば、筐体3S側に、第1電動機21の入出力軸21Sの回転中心(図2−2のZr)と平行な方向に移動できるキーを設け、第1電動機21の入出力軸21Sに前記キーと噛み合うキー溝が形成された部材を取り付けて、クラッチ24を構成してもよい。そして、クラッチ24を噛み合わせる際には、前記キーを前記キー溝に嵌合させる。
図2−1、図2−2に示すX軸、Y軸は、いずれも共通する軸であり、X軸とY軸との交点(原点)が、噛み合いスリーブ24Sの中心軸Zs及び噛み合いピース24Rの回転軸(すなわち第1電動機21の入出力軸21Sの回転中心Zr)となる。このため、噛み合いスリーブ24Sにおける座標と、噛み合いピース24Rにおける座標とは共通する。クラッチ24を噛み合わせる際には、回転する噛み合いピース24Rの所定の噛み合い位置が、静止している噛み合いスリーブ24Sの所定の噛み合い位置にきたときにアクチュエータ5を駆動して噛み合いスリーブ24Sを噛み合いピース24Rに噛み合わせる。
本実施例では、噛み合いスリーブ24SのY軸上にある噛み合い内歯24STA1(図2−1参照)を噛み合いスリーブ24Sの噛み合い位置とし、噛み合いピース24Rの隣接する噛み合い外歯24RT1、24RT2との間を噛み合いピース24Rの噛み合い位置とする。したがって、噛み合いピース24Rの噛み合い位置が、静止している噛み合いスリーブ24Sの噛み合い内歯24STA1の位置にきたときにアクチュエータ5が駆動されて、噛み合いスリーブ24Sを噛み合いピース24Rに噛み合わされる。
回転している噛み合いピース24Rの噛み合い位置は、第1回転位置検出センサ43により検出できる。また、静止している噛み合いスリーブ24Sの噛み合い位置は、噛み合いスリーブ24SのY軸上にある噛み合い内歯24STA1なので、この位置は予め特定できる。したがって、第1回転位置検出センサ43によって検出された噛み合いピース24Rの噛み合い位置が、噛み合いスリーブ24Sの噛み合い内歯24STA1の位置にきたときが、クラッチ24を噛み合わせるタイミング、すなわち、アクチュエータ5を駆動するタイミングとなる。
例えば、高速走行かつ低負荷で車両1が走行しているときや、第1電動機21が発生するトルクの制限により、第1電動機21が受けることができる内燃機関22の前記反力が制限されるとき等にクラッチ24が噛み合わされる。クラッチ24に摩擦式のクラッチを用いたり、シンクロナイザリングを用いるクラッチを用いたりすることもできるが、このような方式のクラッチは、摩擦により引きずりを発生させる。駆動装置3が備えるクラッチ24は噛み合い式であり、機械的な構造、より具体的には摩擦により噛み合わせ対象同士の回転の同期をとる回転同期装置が存在しないため、摩擦を発生させる要素がない。このため、クラッチ24を係合する、あるいは解放するときの引きずりによる損失が極めて小さい。これによって、内燃機関22の燃料消費を抑制できる。また、摩擦式のクラッチと比較して、係合に要するエネルギを低減できる。さらに、回転同期装置が存在しないので、クラッチ24を小型化できる。
図4は、本実施例に係る駆動装置の他の構成例である。この駆動装置3aは、上述した駆動装置3と略同様であるが、動力分割機構を2個の遊星歯車装置30a、30bで構成される点が異なる。動力分割機構30Aは、シングルピニオン式の第1遊星歯車装置30aと、ダブルピニオン式の第2遊星歯車装置30bとで構成される。第1遊星歯車装置30aは、上述した動力分割機構30を構成する遊星歯車装置と同様の構成である。第2遊星歯車装置30bは、外歯歯車のサンギヤ31bと、このサンギヤ31bと同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32bと、サンギヤ31bに噛み合う複数の第1ピニオンギヤ33b1と、第1ピニオンギヤ33b1及びリングギヤ32に噛み合う複数の第2ピニオンギヤ33b2と、第1ピニオンギヤ33b1、第2ピニオンギヤ33b2が自転かつサンギヤ31bの周りを公転できるように第1ピニオンギヤ33b1、第2ピニオンギヤ33b2を保持するキャリア34bとを備える。
第1遊星歯車装置30aのキャリア34aには、内燃機関22のクランクシャフト22Sが接続され、さらに、第1遊星歯車装置30aのキャリア34aは、第2遊星歯車装置30bのリングギヤ32bに接続される。また、第1遊星歯車装置30aのサンギヤ31aには第1電動機21の入出力軸21Sが接続される。第1遊星歯車装置30aのリングギヤ32aは、第2遊星歯車装置30bのキャリア34bに接続される。第2遊星歯車装置30bのキャリア34bは、連結シャフト25Iと接続される。連結シャフト25Iは、一端がプロペラシャフト25Pと接続されている。プロペラシャフト25Pは、減速装置29の出力部と接続されているので、第2電動機23の入出力軸23Sは、減速装置29を介して第2遊星歯車装置30bのキャリア34bと接続される。
駆動装置3aが備えるクラッチ24は、上述した駆動装置3が備えるクラッチと同様の構成であるが、噛み合いピース24Rは動力分割機構30Aを構成する第2遊星歯車装置30bのサンギヤ31bに取り付けられる。すなわち、噛み合いピース24Rは、動力分割機構30Aを介して第1電動機21の入出力軸21Sと接続されている。この駆動装置3aにおいても、噛み合いピース24Rは、内燃機関22の反力を、噛み合いピース24Rと噛み合う対象である噛み合いスリーブ24Sへ伝達するための部材である。
噛み合いピース24Rの回転速度や位置は、噛み合いピース回転位置検出センサ43aで検出される。したがって、回転している噛み合いピース24Rの噛み合い位置は、噛み合いピース回転位置検出センサ43aにより検出できる。噛み合いピース回転位置検出センサ43aによって検出された噛み合いピース24Rの噛み合い位置が、噛み合いスリーブ24Sの噛み合い内歯24STA1の位置にきたときにアクチュエータ5が駆動されてクラッチ24が噛み合わされる。
駆動装置3aにおいて、内燃機関22のクランクシャフト22Sから出力されるトルクに起因する反力は、第2遊星歯車装置30bのサンギヤ31bから噛み合いピース24R、噛み合いピース24Rの噛み合い外歯、噛み合いスリーブ24Sの噛み合い内歯、噛み合いスリーブ24S、噛み合いスリーブ24Sの外歯24STB、筐体3Sの順に伝達される。このように、内燃機関22の前記反力は、クラッチ24を介して筐体3Sで受けられる。このように、本実施例では、電動機と内燃機関とを動力分割機構を用いて組み合わせたハイブリッド式の駆動装置において、電動機を用いないで内燃機関の反力を受ける構成を提供できる。なお、駆動装置3aでは、クラッチ24を噛み合わせても、第1電動機21の回転は拘束されない。
駆動装置3aが備えるクラッチ24は噛み合い式であるため、摩擦を発生させる要素がない。このため、クラッチ24を係合する、あるいは解放するときの引きずりによる損失が極めて小さい。これによって、内燃機関22の燃料消費を抑制できる。また、摩擦式のクラッチと比較して、係合に要するエネルギを低減できる。さらに、回転同期装置が存在しないので、クラッチ24を小型化できる。
図1に示すメインECU10は、CPU(Central Processing Unit)を中心とするマイクロプロセッサとして構成される処理部10Pを備えて構成されており、処理部10Pの他に、本実施例に係る駆動装置の制御を実現するための処理プログラムや情報を一時的に格納する記憶部10Mと、入出力ポート及び通信ポートとを備える。なお、記憶部10Mは、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)で構成される。本実施例において、処理部10Pは、処理部10Pの機能を実現するためのプログラムを、処理部10Pを構成するメモリにロードして実行することによりその機能を実現させるものであるが、処理部10Pは専用のハードウェアにより実現されるものであってもよい。
メインECU10には、アクセルペダル40Pの踏み込み量を検出するアクセルポジションセンサ40からのアクセル開度、車両1の速度(車速)を検出する車速センサ41からの車速、第1回転位置検出センサ43や第2回転位置検出センサ44からの信号等が入力ポートを介して入力される。また、メインECU10には、アクチュエータ5が接続されている。メインECU10は、前述したように、機関ECU16や電動機ECU15と通信ポートを介して接続されており、機関ECU16や電動機ECU15と各種制御信号や情報をやり取りする。
メインECU10の処理部10Pは、駆動制御部11と、クラッチ制御部12とを含んでいる。駆動制御部11は、アクセル開度や車速に基づき、内燃機関22、第1電動機21、第2電動機23を制御する。クラッチ制御部12は、アクチュエータ5を動作させることにより、クラッチ24の噛み合い及び解放を制御する。メインECU10は、本実施例に係る駆動装置の制御装置として機能し、クラッチ制御部12が駆動装置の制御装置としての機能を実現する。
メインECU10は、運転者によるアクセルペダル40Pの踏み込み量に対応するアクセル開度PAPと車速Vcとに基づいて、駆動軸としてのプロペラシャフト25Pに出力すべき要求トルクを計算する。そして、メインECU10は、この要求トルクがプロペラシャフト25Pに出力されるように、内燃機関22と第1電動機21と第2電動機23とを制御する。
本実施例で用いる噛み合い式のクラッチ24は、回転同期機能が存在しないため、クラッチ24単体では、噛み合いの動作に大きな力を要したり、噛み合い時には車両1にショックが発生したりする。また、噛み合い式のクラッチ24は、噛み合い位置が限定されるので、適切な噛み合い位置を外れて噛み合わされると摩擦やショックが発生する。これを回避するため、本実施例ではメインECU10のクラッチ制御部12を用いてクラッチ24の係合を制御する。これにより、噛み合い式のクラッチ24を用いた場合に、噛み合い位置で確実に噛み合い対象同士を噛み合わせることにより、噛み合い動作における摩擦やショックを低減し、また、噛み合い動作に要する力を低減できる。次に、クラッチ制御部12を詳細に説明する。
図5、図6は、クラッチ制御部の機能ブロック図である。図1に示すメインECU10の処理部10Pが備えるクラッチ制御部12は、クラッチ24の噛み合いスリーブ24Sを噛み合いピース24Rに噛み合わせる際、すなわち、クラッチ24を係合させる際に、噛み合いピース24Rの回転速度及び位置(位相)を同時に目標値へ追従させるように、制御対象(第1電動機21、伝達関数はG(S))を制御する。すなわち、クラッチ制御部12は、噛み合いピース24Rの実際の回転速度と目標値との偏差及び噛み合いピース24Rの実際の位置と目標値との偏差を0にするように、第1電動機21のトルクを制御する。このように、クラッチ制御部12は、クラッチ24を係合させる際には、制御対象である第1電動機21の出力に相当する噛み合いピース24Rの実際の位置及び実際の回転速度をフィードバック信号として入力側に帰還(負帰還)させ、目標値と実際の値との偏差を0にするフィードバック制御を実行する。ここで、噛み合いピース24Rの位置は、噛み合いピース24Rの回転方向における位置である。
クラッチ制御部12には、噛み合いピース24Rの実際の位置と、噛み合いピース24Rが目標とする位置目標値との偏差が0になるように、第1電動機21の入出力軸21Sの位置を調整するための位置制御フィードバックループFBMが形成される。さらに、クラッチ制御部12には、噛み合いピース24Rの実際の回転速度と、噛み合いピース24Rが目標とする回転速度目標値との偏差が0になるように、前記第1電動機21の出力軸21Sの回転速度を調整するための回転速度フィードバックループFBSが形成される。回転速度フィードバックループFBSは、位置制御フィードバックループFBMの内側に形成される。このように、本実施例では、クラッチ24を係合させる際に、制御ループが二重になるカスケード制御が用いられる。
位置制御フィードバックループFBMに設けられる位置調節手段である位置コントローラ60は、噛み合いピース24Rの実際の位置と、噛み合いピース24Rが目標とする位置目標値との偏差が0になるように、第1電動機21に付与するトルク値を設定することにより、第1電動機21の入出力軸21Sの位置を調節する。回転速度フィードバックループFBSに設けられる回転速度調節手段である回転速度コントローラ61は、位置コントローラ60の出力が入力されるとともに、噛み合いピース24Rの実際の回転速度と、噛み合いピース24Rが目標とする回転速度目標値との偏差が0になるように、第1電動機21に付与するトルク値を設定することにより、第1電動機21の入出力軸21Sの回転速度を調節する。そして、噛み合いピース24Rが位置目標値及び回転速度目標値に到達したら、クラッチ24を係合させる制御が終了する。次に、クラッチ制御部12の構成を説明する。
クラッチ制御部12は、位置コントローラ60(Gc1)と、回転速度コントローラ61(Gc2)と、積分項演算手段であるPIコントローラ62と、フィードフォワード要素生成手段63(FF)と、回転速度変換手段68と、回転速度フィルタ69と、第1予測制御手段57と、第2予測制御手段58と、加算手段50、51、52、53、54、55、56と、を含む。なお、クラッチ制御部12は、アクチュエータ5を駆動するアクチュエータ制御機能を有する。位置コントローラ60及び回転速度コントローラ61は、少なくとも比例制御(P制御)が実現できればよいが、PI制御、PID制御が実現できるものであってもよい。
クラッチ制御部12のそれぞれの構成要素は、それぞれの機能を実現するためのソフトウェアで構成してもよいし、オペアンプや抵抗、コンデンサ等を用いて専用のハードウェアで構成してもよい。例えば、比例制御を実行する位置コントローラ60及び回転速度コントローラ61をソフトウェアで構成する場合、実験等により予め設定したそれぞれの比例ゲインKs、KpをメインECU10の記憶部10Mに格納しておき、加算手段50、51からの入力値に比例ゲインKs、Kpを乗ずるようにコンピュータプログラムを記述すればよい。
加算手段50は、噛み合いピース24Rが目標とする位置目標値R_Tと、噛み合いピース24Rの実際の位置(実位置)R_Rとが入力されて、両者の偏差を演算し、その結果を位置コントローラ60へ出力する。加算手段50へ入力される実位置R_Rは、図1に示す駆動装置3においては、第1回転位置検出センサ43により検出され、図4に示す駆動装置3aにおいては、噛み合いピース回転位置検出センサ43aにより検出される。
加算手段51は、位置コントローラ60の出力と、噛み合いピース24Rが目標とする回転速度目標値N_Tと、噛み合いピース24Rの実際の回転速度(実回転速度)N_Rとが入力される。そして、加算手段51は、回転速度目標値N_Tと、実回転速度N_Rとの偏差を演算し、その結果を位置コントローラ60の出力に加算して、PIコントローラ62へ出力する。図1に示す駆動装置3においては、検出器である第1回転位置検出センサ43により検出された値を回転速度変換手段68で変換し、回転速度フィルタ69を通過した値が、実回転速度N_Rとして加算手段51へ入力される。また、図4に示す駆動装置3aにおいては、検出器である噛み合いピース回転位置検出センサ43aにより検出された値を回転速度変換手段68で変換し、回転速度フィルタ69を通過した値が、実回転速度N_Rとして加算手段51へ入力される。
回転速度変換手段68は、例えば、微分機能を有しており、第1回転位置検出センサ43により検出された噛み合いピース24Rの実位置R_Rを時間で微分して、噛み合いピース24Rの実回転速度N_Rを生成する。回転速度フィルタ69は、高周波ノイズを除去するローパスフィルタ機能を有しており、回転速度変換手段68から出力される実回転速度N_Rに含まれる高周波ノイズを除去する。回転速度変換手段68は、例えば、抵抗とコンデンサとを組み合わせて構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。
PIコントローラ62は、フィードバック制御において比例動作を行わせる比例項及び積分動作を行わせる積分項を演算して、PIコントローラ62への入力値から操作量、すなわち第1電動機21に付与するトルクの値(トルク指令値)Tcを演算して、加算手段52へ出力する。加算手段52は、PIコントローラ62から出力されるトルク指令値Tcに、フィードフォワード要素生成手段63から入力されるフィードフォワード要素を加算して、クラッチ24を係合させる際の制御中における、第1電動機21に対する最終的なトルク指令値Tcfを演算する。制御対象である第1電動機21は、この最終的なトルク指令値Tcfで駆動される。
最終的なトルク指令値Tcfは、メインECU10のクラッチ制御部12から電動機ECU15へ送信される。最終的なトルク指令値Tcfを受信した電動機ECU15は、インバータ18を制御して、第1電動機21が最終的なトルク指令値Tcfと同じ大きさのトルクを発生するように、第1電動機21へ供給する電流を制御する。
クラッチ24を係合させる際には、第1電動機21に最終的なトルク指令値Tcfが与えられるので、この分だけ車両1の駆動力が変化する。その結果、車両1にショックが発生したり、車両1の運転者の意思とは異なる挙動を車両1が示したりして、ドライバビリティが低下するおそれがある。このため、本実施例では、最終的なトルク指令値Tcfが、メインECU10を構成する処理部10Pの駆動制御部11へ送られる。そして、最終的なトルク指令値Tcfに相当するトルクを打ち消すトルクが駆動制御部11で演算され、駆動装置3、3aが搭載される車両1に要求される駆動力から求められる要求トルクTdに加算される。これによって得られるトルクTd_Tを車両に付与すれば、クラッチ24を係合させる際における第1電動機21のトルク変動の影響が、車両1の駆動力に現れることを抑制できるので、ドライバビリティの低下を抑制できる。
最終的なトルク指令値Tcfに相当するトルクを打ち消すトルクは、内燃機関22で発生させてもよいが、第2電動機23で発生させることが好ましい。動力分割機構30、30Aにより、第2電動機23のトルク変動は、第1電動機21に伝達されないので、第2電動機23で最終的なトルク指令値Tcfに相当するトルクを打ち消すトルクを発生させることにより、クラッチ24を係合させる際における第1電動機21の制御に対する影響を最小限に抑えることができる。その結果、クラッチ24を高精度かつ迅速に係合させることができる。
PIコントローラ62は、フィードバック制御において積分動作を行わせるための積分項を演算するが、第1予測制御手段57及び第2予測制御手段58に積分項が含められると、定常偏差の発生を抑えることができない。このため、本実施例では、PIコントローラ62は、位置コントローラ60の出力側と回転速度コントローラ61の入力側との間、回転速度コントローラ61の出力側の少なくとも一方に設けることで、第1予測制御手段57及び第2予測制御手段58には設けないようにする。これによって、クラッチ24を係合させる際のフィードバック制御における定常偏差を抑制して、迅速にクラッチ24を係合させることができる。なお、PIコントローラ62は、噛み合いピース24Rの実回転速度と回転速度目標値との偏差、及び実位置と位置目標値との偏差が0になるように設定された指令値(トルク値)が出力される回転速度コントローラ61の出力側に設けることがより好ましい。これによって、積分項による定常偏差を抑制する作用を、より効果的に発揮させることができる。
なお、PIコントローラ62における積分項のゲインは、位置コントローラ60のゲインKsと回転速度コントローラ61のゲインKpとのうち小さい方の1/20以上1/10以下とする。これによって、オーバーシュートやハンチングが抑制された安定した制御を実現できる。ここで、積分項のゲインを設定する場合において、位置コントローラ60のゲインKs及び回転速度コントローラ61のゲインKpは、いずれも比例ゲイン(比例項のゲイン)、又は比例項(比例項のゲイン)と微分項(微分項のゲイン)とを用いる。
フィードフォワード要素生成手段63は、図1に示す内燃機関22の出力変動に基づいて、この出力変動を打ち消すようなフィードフォワード要素を生成する。例えば、クラッチ24を係合させる際にアクセルペダル40Pが操作されると、内燃機関22の出力(トルク)が変動し、外乱DTが発生する。また、車両1が上り坂を走行したり下り坂を走行したり、悪路を走行したりすることで車両1の走行抵抗が変化するが、これによっても内燃機関22の出力(トルク)が変動し、外乱DTが発生する。その結果、噛み合いピース24Rの実際の位置及び回転速度が位置目標値R_T及び回転速度目標値N_Tに到達するまでに時間を要してしまう。
フィードフォワード要素生成手段63は、この出力変動(外乱DT)を打ち消すような出力(トルク)を演算し、これをフィードフォワード要素として加算手段52へ出力する。これによって、クラッチ24の係合中に内燃機関22の出力変動が発生した場合でも、迅速かつ高精度に噛み合いピース24Rの実位置R_Rを位置目標値R_Tに、実回転速度N_Rを回転速度目標値N_Tに調節できるので、迅速かつ確実なクラッチ24の係合が実現できる。フィードフォワード要素は、内燃機関22の出力(トルク)の変動による外乱DTの予測としても機能する。フィードフォワード要素生成手段63の代わりに、外乱オブザーバのような外乱補償器を用いてもよい。
第1予測制御手段57は、スミス法に基づき、制御対象モデルと無駄時間及び遅れ時間とを分離したものであり、第1予測モデル部64と、無駄/遅れ要素65とで構成される。スミス法とは、制御対象モデルを用いて見かけ上の制御対象の特性を変えて、制御対象に存在する無駄/遅れ要素DL、すなわち、無駄時間L及び遅れ時間Tを制御ループの外側に出して、1次遅れ系として制御しようとする考え方である。ここで、下付文字のSは、スミス法における予測モデルや予測値であることを示し、下付文字のSがない無駄時間L、遅れ時間T、伝達関数G(S)は、実際の制御対象のものであることを示す。また、下付文字でないSは、ラプラス演算子である(以下同様)。無駄時間は、例えば、制御系の信号経路に沿って発生する遅れと指令を受けてから制御対象が実際に出力を発生するまでに要する時間との和である。遅れ時間は、制御対象が出力を発生し始めてから、実際に制御対象が全出力の63%を発生するまでに要する時間(時定数)である。
図5、図6に示すように、第1予測制御手段57は、位置コントローラ60の出力側と入力側との間に設けられて、クラッチ24を係合させる際の制御プロセスに存在する無駄時間L及び遅れ時間Tを考慮した制御モデル(第1の制御モデル、モデル1)を用いて、位置コントローラ60の周りに局所的なフィードバックを施す。第1予測制御手段57においては、位置コントローラ60の出力が第1予測モデル部64を介して加算手段54に入力される。また、位置コントローラ60の出力は、第1予測モデル部64及び無駄/遅れ要素65を介して加算手段53に入力される。加算手段53には、噛み合いピース24Rの実位置R_Rが入力され、加算手段53は、無駄/遅れ要素65からの出力と実位置R_Rとの偏差を演算して加算手段54へ出力する。
加算手段54では、無駄/遅れ要素65からの出力と実位置R_Rとの偏差に、第1予測モデル部64の出力を加算して加算手段50へ出力する。このような構成により、クラッチ制御部12がクラッチ24を係合させる際のフィードバック制御の安定性は、制御プロセスに存在する無駄時間L及び遅れ時間Tがない系と同様になり、位置コントローラ60のゲインを高くすることができる。その結果、噛み合いピース24Rの実位置R_Rを位置目標値R_Tに精度よく追従させることができる。
第2予測制御手段58は、第1予測制御手段57と同様に、スミス法に基づき、制御対象モデルと無駄時間L及び遅れ時間Tとを分離するとともに、さらに、第2予測制御手段58は、回転速度フィルタ69による影響も考慮する。第2予測制御手段58は、第2予測モデル部66と、無駄/遅れ/フィルタ要素67とで構成される。これによって、第2予測制御手段58では、無駄時間L及び遅れ時間Tに加え、回転速度フィルタ69による影響(入力に対する出力応答の遅延)を制御ループの外側に出して、1次遅れ系として制御できる。
図5、図6に示すように、第2予測制御手段58は、回転速度コントローラ61の出力側と入力側との間に設けられる。そして、第2予測制御手段58は、クラッチ24を係合させる際の制御プロセスに存在する無駄時間L及び遅れ時間T、並びに回転速度フィルタ69の影響を考慮した制御モデル(第2の制御モデル、モデル2)を用いて、回転速度コントローラ61の周りに局所的なフィードバックを施す。
なお、回転速度フィルタ69の影響が無視できる程度であれば、第2予測制御手段58においては回転速度フィルタ69による影響を考慮しなくてもよい。この場合、無駄/遅れ/フィルタ要素67は、第1予測制御手段57を構成する無駄/遅れ要素65と同じものとなる。このように、本実施例において、第2予測制御手段58では、少なくとも、制御プロセスに存在する無駄時間及び遅れ時間を考慮した制御モデルを用いればよい。すなわち、第2予測制御手段58は、スミス法に基づき、制御対象モデルと無駄時間L及び遅れ時間Tとを分離したものであればよい。
第2予測制御手段58においては、回転速度コントローラ61の出力が第2予測モデル部66を介して加算手段56に入力される。また、回転速度コントローラ61の出力は、第2予測モデル部66及び無駄/遅れ/フィルタ要素67を介して加算手段55に入力される。加算手段55には、噛み合いピース24Rの実回転速度N_Rが入力され、加算手段55は、無駄/遅れ/フィルタ要素67からの出力と実回転速度N_Rとの偏差を演算して加算手段56へ出力する。
加算手段56は、無駄/遅れ/フィルタ要素67からの出力と実回転速度N_Rとの偏差に、第2予測モデル部66の出力を加算して加算手段51へ出力する。このような構成により、クラッチ制御部12がクラッチ24を係合させる際のフィードバック制御の安定性は、制御プロセスに存在する無駄時間L及び遅れ時間T並びに回転速度フィルタ69の影響がない系と同様になり、回転速度コントローラ61のゲインを高くすることができる。その結果、噛み合いピース24Rの実回転速度N_Rを回転速度目標値N_Tに精度よく追従させることができる。
第2予測制御手段58の第2予測モデル部66の第2モデルは、予測伝達関数G(S)で表される。なお、図6に示す伝達関数G(S)は、実際の制御対象の伝達関数である。例えば、図1に示す駆動装置3における内燃機関22や第1電動機21や噛み合いピース24Rのイナーシャ、クランクシャフト22Sや第1電動機21の入出力軸21Sのねじれ、ばね定数、動力分割機構30のイナーシャ等、制御対象である第1電動機21の出力応答に関連する要素の特性に基づいて、第1電動機21のトルクと回転速度との関係を記述した運動方程式を作成する。この運動方程式から、第1電動機21が発生するトルクに対する回転速度が得られる。予測伝達関数G(S)は、作成された運動方程式から得られる伝達関数である。また、予測伝達関数G(S)は、制御対象である第1電動機21の入力(例えば、トルクの指令値やトルクの指令値に対応する電流値)に対する出力(回転速度)の周波数応答を求め、入力に対する出力の位相遅れに基づいて作成してもよい。
第2予測制御手段58の無駄/遅れ/フィルタ要素67は、e^(−L・S)/(1+T・S)×F(S)で表される。ここで、eは自然対数の底、^はべき乗を意味する。このように、第2予測制御手段58では、制御対象モデル(第2モデル)である予測伝達関数G(S)と、無駄時間L及び遅れ時間T及び回転速度フィルタ69の影響が分離される。回転速度フィルタ69は、例えば、抵抗とコンデンサとを組み合わせて構成することができる。この場合、出力電圧をVout、入力電圧をVinとすると、Vout/Vin=1/(1+ω・C・R)となるので、この関係を用いて回転速度フィルタ69の伝達関数F(S)を求めることができる。ここで、ωは各周波数、Rは抵抗値、Cはコンデンサの静電容量である。なお、回転速度フィルタ69による影響が無視できる等の理由で、第2予測制御手段58で回転速度フィルタ69による影響を考慮しない場合、無駄/遅れ/フィルタ要素67は、e^(−L・S)/(1+T・S)で表される。
第1予測制御手段57の第1予測モデル部64の第1モデルは、上述した予測伝達関数G(S)、回転速度コントローラ61のゲインKpを用いて、Kp・G(S)/(1+Kp・G(S))・1/Sで表される伝達関数となる。また、第1予測制御手段57の無駄/遅れ要素65は、e^(−L・S)/(1+T・S)で表される。
第1モデル及び第2モデル中の無駄時間Lは、例えば、メインECU10や電動機ECU15、あるいはメインECU10と電動機ECU15との間の通信システム等の仕様や、実測により求めることができる。また、第1モデル及び第2モデル中の遅れ時間Tは、第1電動機21や動力分割機構30、30A等の仕様から求めたり、実測により求めたりすることができる。
本実施例においては、第1モデル及び第2モデル中の無駄時間L及び遅れ時間Tは、クラッチ24を係合させる制御を実行する過程において発生し得る最大値を用いることが好ましい。これは、第1モデル及び第2モデル中の無駄時間L及び遅れ時間Tがばらつきをもつ場合、ばらつきの最大値を用いることで実現できる。このようにすれば、クラッチ24を係合させる際には、オーバーシュートやハンチングが抑制された安定した制御を実現できる。なお、無駄時間L及び遅れ時間Tがばらつきをもつ場合、小さい値を用いることにより、クラッチ24をより迅速に係合させることができるので、無駄時間L及び遅れ時間Tの大きさは、必要に応じて設定する。次に、本実施例に係るクラッチの係合の手順を説明する。
図7は、本実施例に係るクラッチの係合の手順を示すフローチャートである。まず、メインECU10の駆動制御部11が、車両1の運転条件から、クラッチ24を係合するか否かを判定する。クラッチ24を係合しないと駆動制御部11が判定した場合(ステップS101:No)、本実施例に係る駆動装置の制御は終了する。クラッチ24を係合すると駆動制御部11が判定した場合(ステップS101:Yes)、ステップS102へ進み、クラッチ制御部12は、クラッチ24の係合を開始する。
クラッチ24を係合させるにあたり、クラッチ制御部12は、噛み合いピース24Rの位置目標値R_Tを加算手段50へ入力し、また、噛み合いピース24Rの回転速度目標値N_Tを加算手段51に入力する。位置目標値R_Tは、噛み合いスリーブ24SのY軸上にある噛み合い内歯24STA1(図2−1)である。そして、図2−2に示す噛み合いピース24Rの隣接する噛み合い外歯24RT1、24RT2との間が、噛み合い内歯24STA1の位置に一致するように、第1電動機21が制御される。
本実施例においては、静止している噛み合いスリーブ24Sに噛み合いピース24Rを噛み合わせるので、回転速度目標値N_Tは0となる。ここで、噛み合いスリーブ24S及び噛み合いピース24Rが両方とも回転する構成である場合、噛み合いスリーブ24Sの回転速度と噛み合いピース24Rの回転速度との差回転速度が0となるようにする。
加算手段50、51には、それぞれ現時点における噛み合いピース24Rの実位置R_R、実回転速度N_Rが入力される。また、噛み合いピース24Rの位置目標値R_Tが加算手段50へ入力され、噛み合いピース24Rの回転速度目標値N_Tが加算手段51に入力される。クラッチ制御部12は、実位置R_Rと位置目標値R_Tとの偏差、及び実回転速度N_Rと回転速度目標値N_Tとの偏差がそれぞれ0になるように、第1電動機21を制御する。
実位置R_Rと位置目標値R_Tとの偏差、及び実回転速度N_Rと回転速度目標値N_Tとの偏差がともに0になったら(ステップS103)、クラッチ制御部12は、アクチュエータ5を駆動して、噛み合いスリーブ24Sを噛み合いピース24Rに噛み合わせる(ステップS104)。これによって、クラッチ24が係合するので、第1電動機21の位置及び回転速度の制御は終了し、本実施例に係るクラッチの係合が終了する。ここで、実位置R_Rと位置目標値R_Tとの偏差、及び実回転速度N_Rと回転速度目標値N_Tとの偏差がともに0になったか否かは、加算手段50、51の出力から判定できる。
以上、本実施例では、噛み合い式のクラッチを係合させる際に、噛み合いピースの位置及び回転速度を目標値に制御するにあたって、制御プロセス中に存在する無駄時間及び遅れ時間を予測する第1予測制御手段を位置制御フィードバックループに設け、また、制御プロセスに存在する無駄時間及び遅れ時間を予測する第2予測制御手段を回転速度フィードバックループに設ける。このように、無駄時間及び遅れ時間の両方を加味して第1予測制御手段及び第2予測制御手段を構成するので、入力に対する出力の遅延を精度よく予測できる。その結果、機械的な構造で噛み合い対象同士の回転を同期させる回転同期装置を有さない噛み合い式のクラッチを自動的に噛み合わせる場合には、噛み合い対象同士の位置及び回転速度を迅速かつ確実に同期させて、高精度かつ迅速にクラッチを係合させることができる。
さらに本実施例では、次の発明が開示される。この発明は、動力を発生する内燃機関と、回生機能及び力行機能を有する第1電動機と、回生機能及び力行機能を有する第2電動機と、前記第1電動機の出力軸に直接又は間接的に取り付けられる第1部材及び前記第1部材と噛み合い又は解放する第2部材を含んで構成されるクラッチと、を有する駆動装置の前記第1部材と前記第2部材とを噛み合わせる際の制御に用いる駆動装置の制御装置であり、前記第1部材の実際の位置と、前記第1部材が目標とする位置目標値との偏差が0になるように、前記第1電動機を制御するための位置制御フィードバックループと、前記位置制御フィードバックループの内側に形成される、前記第1部材の実際の回転速度と、前記第1部材が目標とする回転速度目標値との偏差が0になるように、前記第1電動機を制御するための回転速度フィードバックループと、を有し、前記位置制御フィードバックループには、制御プロセスに存在する無駄時間及び遅れ時間を予測する第1予測制御手段が設けられ、また、前記回転速度フィードバックループには、制御プロセスに存在する無駄時間及び遅れ時間を予測する第2予測制御手段が設けられることを特徴とする。
また、次の発明は、前記発明に係る駆動装置の制御装置において、前記第1予測制御手段のループ、又は前記第2予測制御手段のループの外側に、フィードバック制御の積分項を演算する積分項演算手段を設けることを特徴とする。
以上のように、本発明に係る駆動装置の制御装置及び駆動装置は、噛み合い式のクラッチを自動的に噛み合わせる場合に有用であり、特に、噛み合い対象同士の回転を同期させる回転同期装置を有さないものに適している。
本実施例に係る駆動装置及び駆動装置の制御装置を搭載する車両を示す模式図である。 本実施例に係る駆動装置が備えるクラッチの説明図である。 本実施例に係る駆動装置が備えるクラッチの説明図である。 本実施例に係る駆動装置が備えるクラッチの動作を示す模式図である。 本実施例に係る駆動装置の他の構成例である。 クラッチ制御部の機能ブロック図である。 クラッチ制御部の機能ブロック図である。 本実施例に係るクラッチの係合の手順を示すフローチャートである。
符号の説明
1 車両
3、3a 駆動装置
3S 筐体
5 アクチュエータ
10 メインECU
10M 記憶部
10P 処理部
11 駆動制御部
12 クラッチ制御部
15 電動機ECU
16 機関ECU
17 コンバータ
18 インバータ
20 バッテリ
21 第1電動機
21S 入出力軸
22 内燃機関
22S クランクシャフト
23 第2電動機
23S 入出力軸
24 クラッチ
24R 噛み合いピース
24S 噛み合いスリーブ
24RT1、24RT2 噛み合い外歯
24STA1 噛み合い内歯
25I 連結シャフト
25P プロペラシャフト
26 デファレンシャルギヤ
27L、27R 駆動軸
29 減速装置
30、30A 動力分割機構
30a 第1遊星歯車装置
30b 第2遊星歯車装置
31、31a、31b サンギヤ
32、32a、32b リングギヤ
33 ピニオンギヤ
33b1 第1ピニオンギヤ
33b2 第2ピニオンギヤ
34、34a、34b キャリア
40 アクセルポジションセンサ
41 車速センサ
43 第1回転位置検出センサ
43a 噛み合いピース回転位置検出センサ
44 第2回転位置検出センサ
50〜56 加算手段
57 第1予測制御手段
58 第2予測制御手段
60 位置コントローラ
61 回転速度コントローラ
62 PIコントローラ
63 フィードフォワード要素生成手段
64 第1予測モデル部
65 無駄/遅れ要素
66 第2予測モデル部
67 無駄/遅れ/フィルタ要素
68 回転速度変換手段
69 回転速度フィルタ

Claims (10)

  1. 動力を発生する内燃機関と、回生機能及び力行機能を有する第1電動機と、回生機能及び力行機能を有する第2電動機と、前記内燃機関の反力を伝達するための第1部材及び前記第1部材と噛み合い又は解放する第2部材を含んで構成されるクラッチと、を有する駆動装置の前記第1部材と前記第2部材とを噛み合わせる際の制御に用いるものであり、
    前記第1部材の実際の位置と、前記第1部材が目標とする位置目標値との偏差が0になるように、前記第1電動機を制御する位置調節手段と、
    前記位置調節手段の出力が入力されるとともに、前記第1部材の実際の回転速度と、前記第1部材が目標とする回転速度目標値との偏差が0になるように、前記第1電動機を制御する回転速度調節手段と、
    前記位置調節手段の出力側と入力側との間に設けられて、制御プロセスに存在する無駄時間及び遅れ時間を考慮した制御モデルを用いて、前記位置調節手段の周りに局所的なフィードバックを施す第1予測制御手段と、
    前記回転速度調節手段の出力側と入力側との間に設けられて、制御プロセスに存在する無駄時間及び遅れ時間を考慮した制御モデルを用いて、前記回転速度調整手段の周りに局所的なフィードバックを施す第2予測制御手段と、
    を備えることを特徴とする駆動装置の制御装置。
  2. 前記位置調節手段の出力側と前記回転速度調節手段の入力側との間、前記回転速度調節手段の出力側の少なくとも一方に、フィードバック制御において積分動作を行わせるための積分項を演算する積分項演算手段を設けることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置の制御装置。
  3. 前記第1部材の実際の回転速度に含まれる高周波ノイズを除去するローパスフィルタ機能を有する回転速度フィルタが設けられ、
    前記第2予測制御手段は、さらに、前記回転速度フィルタに起因して発生する、入力に対する出力応答の遅延を予測することを特徴とする請求項1又は2に記載の駆動装置の制御装置。
  4. 前記内燃機関の出力変動に基づいて前記出力変動を打ち消すようなフィードフォワード要素を生成して、前記回転速度調節手段の出力に与えるフィードフォワード要素生成(演算)手段を設けることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の駆動装置の制御装置。
  5. 前記第1部材と前記第2部材とを噛み合わせる際における前記第1電動機のトルクの変動を打ち消すトルクを、前記駆動装置が搭載される車両に要求される要求トルクに加えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の駆動装置の制御装置。
  6. 前記第1部材と前記第2部材とを噛み合わせる際における前記第1電動機のトルクの変動を打ち消すトルクは、前記第2電動機で発生させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の駆動装置の制御装置。
  7. 前記無駄時間及び前記遅れ時間は、前記第1部材と前記第2部材とを噛み合わせる際の制御をする過程において発生し得る最大値とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の駆動装置の制御装置。
  8. 動力を発生する内燃機関と、
    回生機能及び力行機能を有する第1電動機と、
    回生機能及び力行機能を有する第2電動機と、
    前記内燃機関の反力を伝達するための第1部材及び前記第1部材と噛み合い又は解放する第2部材を含んで構成されるクラッチと、
    を有することを特徴とする駆動装置。
  9. 請求項8に記載の駆動装置は、遊星歯車装置で構成される動力分割機構を備え、
    前記動力分割機構のサンギヤが前記第1電動機の入出力軸と接続され、
    前記動力分割機構のキャリアが前記内燃機関の出力軸に接続され、
    前記動力分割機構のリングギヤが前記第2電動機の入出力軸と接続され、
    前記第1部材は、前記第1電動機の入出力軸に取り付けられることを特徴とする駆動装置。
  10. 請求項8に記載の駆動装置は、シングルピニオン式の第1遊星歯車装置と、ダブルピニオン式の第2遊星歯車装置とで構成される動力分割機構を備え、
    前記第1遊星歯車装置のサンギヤは前記第1電動機の入出力軸と接続され、
    前記第1遊星歯車装置のキャリアは前記内燃機関の出力軸と接続されるとともに前記第2遊星歯車装置のリングギヤと接続され、
    前記第1遊星歯車装置のリングギヤは前記第2遊星歯車装置のキャリアと接続されるとともに前記第2電動機の入出力軸と接続され、
    前記第2遊星歯車装置のサンギヤは前記第1部材が接続されることを特徴とする駆動装置。
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