JP2010019687A - 動脈硬化改善・予防効果の評価方法及び評価用キット、並びに、物質のスクリーニング方法 - Google Patents

動脈硬化改善・予防効果の評価方法及び評価用キット、並びに、物質のスクリーニング方法 Download PDF

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Abstract

【課題】被験物質が有する動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を評価する方法等を提供する。
【解決手段】動脈硬化を発症している動物又は将来の発症リスクが高い動物に被験物質を摂取させ、該動物の体液中における5種のマーカー物質の少なくとも1つの濃度を基準値と比較し、被験物質が有する動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を評価する。マーカー物質に対する親和性を有する物質を固定化した担体にマーカー物質を捕捉して、体液中のマーカー物質の濃度を算出する構成が推奨される。該評価方法を用いる物質のスクリーニング方法、該評価方法を簡便に行うことができるキットも提供される。
【選択図】図1

Description

本発明は、動脈硬化改善・予防効果の評価方法及び評価用キット、並びに、物質のスクリーニング方法に関し、さらに詳細には、動脈硬化を発症している動物又は将来の発症リスクが高い動物に被験物質を摂取させ、該動物の体液中におけるマーカー物質の濃度を指標して、被験物質が有する動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を評価する動脈硬化改善・予防効果の評価方法、該評価方法を簡便に行うことができる動脈硬化改善・予防効果の評価用キット、並びに、該評価方法を用いて動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を有する物質をスクリーニングする物質のスクリーニング方法に関する。
近年、食生活の欧米化が進み、それに起因すると考えられる肥満,糖尿病,高脂血症、動脈硬化等の生活習慣病が増加している。これらの発症増加は遺伝的なものではなく、主に環境因子によるものである。例えば、高脂肪食や高カロリー食の摂取による脂質代謝異常が、血中脂質上昇、インスリン抵抗性の発症、脂肪細胞肥大化、インスリン分泌不全等の原因となっている。その結果、糖尿病、肥満、動脈硬化等が高確率で発症し、病態の進展へとつながっている。
動脈硬化とは、動脈壁が肥厚して弾力性がなくなる病態の総称である。動脈硬化にはいくつかの種類があるが、アテローム動脈硬化(粥状硬化)と呼ばれる病態が最も多くみられる。特に注記しない場合には、動脈硬化とはアテローム動脈硬化を指すことも多い。アテローム動脈硬化は、動脈内壁に粥状のプラーク(アテローム)が沈着して血流に支障をきたす状態であり、脳、心臓、腎臓、手足などに重篤な損傷をもたらすおそれがある。すなわち、脳梗塞、脳出血、心筋梗塞、狭心症、腎不全、手足の壊死など、生命に直接かかわる症状につながるおそれがある。動脈硬化が起こる原因については、まだ完全には解明されていない部分もあるが、上記のように肥満、糖尿病、高脂血症、高血圧等が発症の危険因子とされている。
動脈硬化のような生活習慣病に属する疾病については、予防することの重要性が強調されている。すなわち、生活習慣病は徐々に進行するものが多く、発症初期には自覚症状があまりないことが多い。その結果、発見されたときにはすでに重篤な状態まで進んでいることがあり、予防の重要性が特に高い。このような背景の下、疾病の将来の発症リスクを検出することができるようなバイオマーカー、すなわち「予防マーカー」あるいは「リスクマーカー」と呼ばれるマーカー物質の探索が盛んに行われている。生活習慣病の予防マーカーを用いれば、例えば、当該疾病の将来の発症リスクを判定することが可能となり、事前に生活習慣の是正、食事制限、運動等の適切な処置を行って当該疾病の発症を予防することが可能となる。また、予防マーカーを用いることで、被験物質が当該疾病の発症リスクを低減させるような効果を有するか容易に調べることも可能となり、食品素材の機能性評価やスクリーニングにも有用である。そして、そのような評価・スクリーニング系で選抜された食品素材を含む食品を日常的に摂取することで、生活習慣病を容易に予防することが可能となる。
生活習慣病関連では、例えば特許文献1に糖尿病の予防マーカー、特許文献2に高脂血症の予防マーカーについての開示がある。ただし、これらは動脈硬化に特化したバイオマーカーではない。一方、動脈硬化に特化したバイオマーカーを探索する試みもあり、例えば特許文献3には炎症のバイオマーカーであるC反応性タンパク(CRP)が、特許文献4には腫瘍マーカーであるα−フェトプロテイン(AFP)が動脈硬化のバイオマーカーとしても使えるとの記載がある。しかしながら、CRPやAFPについては動脈硬化とは全く異なる臨床的意義(炎症や発がん)が確立しており、動脈硬化のバイオマーカーとしては特異性の面で使いにくい。したがって、動脈硬化の将来の発症リスク診断や、被験物質が有する動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を可能にする新たなマーカー物質を特定することが望まれている。
国際公開第2006/073195号パンフレット 特開2007−064747号公報 特表2001−525058号公報 特開2007−010567号公報
本発明の目的は、動脈硬化の予防マーカーとなり得るマーカー物質を新たに特定し、該マーカー物質を用いて被験物質が有する動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を評価する方法等を提供することにある。
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、動脈硬化を発症している動物又は将来の発症リスクが高い動物に被験物質を摂取させ、該動物の体液中における下記マーカー物質(Mf1)〜(Mf5)の少なくとも1つの濃度を基準値と比較し、被験物質が有する動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を評価することを特徴とする動脈硬化改善・予防効果の評価方法である。
(Mf1)pH3.0で弱陽イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約3500のイオンピークを生じるタンパク質、
(Mf2)pH3.0で弱陽イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約3520のイオンピークを生じるタンパク質、
(Mf3)pH7.0かつ0.5MのNaCl濃度で銅イオン結合金属キレート体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約5900のイオンピークを生じるタンパク質、
(Mf4)pH7.0かつ0.5MのNaCl濃度で銅イオン結合金属キレート体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約11000のイオンピークを生じるタンパク質、
(Mf5)pH3.0で弱陽イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約13600のイオンピークを生じるタンパク質。
本発明の動脈硬化改善・予防効果の評価方法は、動脈硬化を発症している動物又は将来の発症リスクが高い動物に被験物質を摂取させ、該動物の体液中における上記(Mf1)〜(Mf5)の5種のマーカー物質の少なくとも1つの濃度を基準値と比較し、被験物質が有する動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を評価するものである。上記マーカー物質(Mf1)〜(Mf5)は、いずれも動脈硬化の発症直前段階にある動物の体液中で特異的に検出されるタンパク質であり、動脈硬化の予防マーカー・リスクマーカーとして有用なものである。本発明の動脈硬化改善・予防効果の評価方法によれば、被験物質が有する動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を、容易かつ高精度に評価することができる。なお、「動物」には、マウス等の飼育可能な動物の他、ヒトも含むものとする。
ここで、各マーカー物質における質量/電荷比(以下、「m/z」と略記することもある。)の「約3500」、「約5900」、「約13600」等の値は、質量分析における測定値の誤差範囲を考慮した値であり、概ね±0.2%の幅を有する。すなわち、約3500は概ね3500±0.2%、約5900は概ね5900±0.2%、約13600は概ね13600±0.2%を表す。他の質量/電荷比についても全く同様に、概ね±0.2%の幅を有する。また、これらのマーカー物質はいずれも主に血液中に存在するタンパク質である。被験物質が動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を有する場合、動物の体液中のマーカー物質(Mf1)、(Mf2)、及び(Mf4)の濃度はより低値を示し、(Mf3)及び(Mf5)の濃度はより高値を示す。
請求項2に記載の発明は、マーカー物質(Mf5)は、トランスサイレチン又はその修飾体であることを特徴とする請求項1に記載の動脈硬化改善・予防効果の評価方法である。
トランスサイレチンは物理化学的性質がよく知られているので、本発明の動脈硬化改善・予防効果の評価方法によればマーカー物質(Mf5)の解析が容易である。
「タンパク質の修飾体」の代表例は、当該タンパク質を構成するアミノ酸残基の少なくとも1つが修飾されたタンパク質である。「修飾」には化合物や官能基の付加(例:リン酸化)のみならず、脱離(例:脱リン酸化)も含まれる。また「タンパク質又はその修飾体」には、当該タンパク質のアイソフォームが含まれる。さらに「タンパク質又はその修飾体」には、当該タンパク質の1次構造において数個のアミノ酸残基が欠失、置換若しくは付加されたような実質的に同一のタンパク質が含まれる。またさらに、「タンパク質又はその修飾体」には、プロテアーゼによる切断を受けた当該タンパク質由来のタンパク質断片が含まれる。なお、複合体タンパク質の場合には「タンパク質又はその修飾体」にはそのサブユニットも含まれるものとする。
同様の課題を解決するための請求項3に記載の発明は、動脈硬化を発症している動物又は将来の発症リスクが高い動物に被験物質を摂取させ、該動物の体液中におけるトランスサイレチン又はその修飾体に属するマーカー物質の濃度を基準値と比較し、被験物質が有する動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を評価することを特徴とする動脈硬化改善・予防効果の評価方法である。
本発明の動脈硬化改善・予防効果の評価方法は、動脈硬化を発症している動物又は将来の発症リスクが高い動物に被験物質を摂取させ、該動物の体液中における「トランスサイレチン又はその修飾体」に属するマーカー物質の濃度を基準値と比較し、被験物質が有する動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を評価するものである。「トランスサイレチン又はその修飾体」に属するマーカー物質は、動脈硬化の発症直前段階にある動物の体液中で特異的に検出されるタンパク質であり、動脈硬化の予防マーカー・リスクマーカーとして有用なものである。本発明の動脈硬化改善・予防効果の評価方法によれば、被験物質が有する動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を、容易かつ高精度に評価することができる。特に、トランスサイレチンは物理化学的性質がよく知られているので、解析が容易である。なお本発明においても、「動物」には、マウス等の飼育可能な動物の他、ヒトも含むものとする。
被験物質が動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を有する場合、動物の体液中のトランスサイレチン又はその修飾体に属するマーカー物質の濃度は、より高値を示す。
本発明においても「タンパク質の修飾体」の代表例は、当該タンパク質を構成するアミノ酸残基の少なくとも1つが修飾されたタンパク質であり、「修飾」には化合物や官能基の付加のみならず、脱離も含まれる。また「タンパク質又はその修飾体」には、当該タンパク質のアイソフォーム、当該タンパク質の1次構造において数個のアミノ酸残基が欠失、置換若しくは付加されたような実質的に同一のタンパク質、並びに、プロテアーゼによる切断を受けた当該タンパク質由来のタンパク質断片が含まれる。さらに、複合体タンパク質の場合には「タンパク質又はその修飾体」にはそのサブユニットも含まれるものとする。
請求項4に記載の発明は、前記基準値は、動脈硬化を発症している動物又は将来の発症リスクが高い動物に、動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を有さない既知物質を摂取させた際の、該動物の体液中における前記マーカー物質の濃度であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の動脈硬化改善・予防効果の評価方法である。
かかる構成により、被験物質が有する動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を、より容易かつ高精度に評価することができる。
請求項5に記載の発明は、前記動脈硬化を発症している動物又は将来の発症リスクが高い動物は、自然発症モデル動物又は遺伝子操作モデル動物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の動脈硬化改善・予防効果の評価方法である。
本発明の動脈硬化改善・予防効果の評価方法では、動脈硬化を発症している動物又は将来の発症リスクが高い動物として、自然発症モデル動物又は遺伝子操作モデル動物を用いる。かかる構成により、動物の飼育が容易となり、被験物質が有する動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を、きわめて容易に評価することができる。なお当該動物の例としては、アポリポタンパク質E遺伝子欠損マウス(以下、「アポE欠損マウス」と略記する。)が挙げられる。アポE欠損マウスは通常の飼育でアテロームを形成し、動脈硬化発症モデル動物の標準として各分野で採用されているものである。
請求項6に記載の発明は、前記体液は、血液であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の動脈硬化改善・予防効果の評価方法である。
かかる構成により、測定試料となる体液を簡単に採取でき、より簡便かつ迅速に、被験物質が有する動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を評価することができる。
請求項7に記載の発明は、前記被験物質は、食品素材であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の動脈硬化改善・予防効果の評価方法である。
かかる構成により、機能性食品の開発を目的として、動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を評価することができる。
請求項8に記載の発明は、前記体液又は体液成分を、前記マーカー物質に対する親和性を有する物質を固定化した担体に接触させて、体液中の前記マーカー物質を担体上に捕捉し、捕捉された前記マーカー物質の量に基づいて体液中の前記マーカー物質の濃度を算出することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の動脈硬化改善・予防効果の評価方法である。
本発明の動脈硬化改善・予防効果の評価方法においては、マーカー物質に対する親和性を有する物質を固定化した担体を使用する。そして、該担体に体液又は体液成分を接触させて、体液又は体液成分に含まれるマーカー物質を、マーカー物質に対する親和性を有する物質を介して担体上に捕捉し、捕捉されたマーカー物質の量に基づいて体液中のマーカー物質の濃度を算出する。本発明の動脈硬化改善・予防効果の評価方法によれば、担体上に捕捉されたマーカー物質を測定対象とするので、測定試料中に含まれる夾雑物質の影響を低減させることができ、より高感度かつ高精度でマーカー物質の濃度を測定することができる。なお、体液成分の例としては、体液が血液である場合の血清又は血漿が挙げられる。
請求項9に記載の発明は、前記担体は平面部分を有し、前記マーカー物質に対する親和性を有する物質は、該平面部分の一部に固定化されていることを特徴とする請求項8に記載の動脈硬化改善・予防効果の評価方法である。
本発明の動脈硬化改善・予防効果の評価方法では、平面部分を有する担体を用い、マーカー物質に対する親和性を有する物質は該平面部分の一部に固定化されている。かかる構成により、マーカー物質に対する親和性を有する物質を、担体上の複数箇所にスポット的に固定化することができる。その結果、1個の担体で複数の測定試料を同時処理することや、1個の担体で複数のマーカー物質の濃度を同時測定することが可能となり、作業効率がよい。さらに、各スポットの面積を小さくすることにより、微量の測定試料からでもマーカー物質の濃度を測定することができる。なお、平面部分を有する担体の例としては、チップ等の基板が挙げられる。
請求項10に記載の発明は、前記マーカー物質に対する親和性を有する物質は、イオン交換体、金属キレート体又は抗体であることを特徴とする請求項8又は9に記載の動脈硬化改善・予防効果の評価方法である。
本発明の動脈硬化改善・予防効果の評価方法においては、マーカー物質に対する親和性を有する物質としてイオン交換体、金属キレート体又は抗体を用い、イオン交換体、金属キレート体又は抗体を介して測定試料中のマーカー物質を担体上に捕捉する。当該物質がイオン交換体や金属キレート体の場合は各種のものが入手容易であり、マーカー物質を捕捉するための担体を容易に調製することができる。また、当該物質が抗体の場合は、より特異的にマーカー物質を捕捉することができる。捕捉されたマーカー物質の量を測定する方法としては、質量分析、イムノアッセイ(抗体の場合)が挙げられる。
請求項11に記載の発明は、請求項1〜10のいずれか1項に記載の動脈硬化改善・予防効果の評価方法によって被験物質を評価し、動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を有する物質をスクリーニングすることを特徴とする物質のスクリーニング方法である。
本発明は物質のスクリーニング方法にかかり、動物の体液中における上記(Mf1)〜(Mf5)の各マーカー物質およびトランスサイレチン又はその修飾体に属するマーカー物質の少なくとも1つの濃度を基準値と比較し、動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を有する物質をスクリーニングするものである。上記(Mf1)〜(Mf5)の各マーカー物質およびトランスサイレチン又はその修飾体に属するマーカー物質は、いずれも動脈硬化の発症直前段階にある動物の体液中で特異的に検出されるタンパク質であり、動脈硬化の予防マーカー・リスクマーカーとして有用なものである。本発明の物質のスクリーニング方法によれば、動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を有する物質を、容易かつ高精度にスクリーニングすることができる。特に、被験物質が食品素材の場合は、動脈硬化の改善効果を有する機能性食品又は将来の発症リスクの低減効果を有する機能性食品の開発に有用な食品素材をスクリーニングすることができる。
請求項12に記載の発明は、請求項1〜10のいずれか1項に記載の動脈硬化改善・予防効果の評価方法に用いるためのキットであって、前記マーカー物質に対する親和性を有する物質を固定化した担体を含むことを特徴とする動脈硬化改善・予防効果の評価用キットである。
本発明の動脈硬化改善・予防効果の評価用キットは、マーカー物質に対する親和性を有する物質を固定化した担体を含む。かかる構成により、マーカー物質の濃度測定に際して当該担体を別途用意する必要がなく、きわめて簡便にマーカー物質の濃度を測定することができる。
請求項13に記載の発明は、前記マーカー物質に対する親和性を有する物質は、イオン交換体又は金属キレート体であることを特徴とする請求項12に記載の動脈硬化改善・予防効果の評価用キットである。
かかる構成により、マーカー物質をより確実に担体上に捕捉することができる。
動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を有する物質をスクリーニングするために使用される構成が推奨される(請求項14)。
本発明の動脈硬化改善・予防効果の評価方法によれば、被験物質が有する動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を、容易かつ高精度に評価することができる。
本発明の物質のスクリーニング方法によれば、動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を有する物質を、容易かつ高精度にスクリーニングすることができる。
本発明の動脈硬化改善・予防効果の評価用キットによれば、マーカー物質の濃度測定に際して当該担体を別途用意する必要がなく、きわめて簡便にマーカー物質の濃度を測定することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
本発明の動脈硬化改善・予防効果の評価方法は2つの様相を含む。1つの様相では、動脈硬化を発症している動物又は将来の発症リスクが高い動物に被験物質を摂取させ、該動物の体液中における下記マーカー物質(Mf1)〜(Mf5)の少なくとも1つの濃度を基準値と比較し、被験物質が有する動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を評価する。
(Mf1)pH3.0で弱陽イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約3500のイオンピークを生じるタンパク質、
(Mf2)pH3.0で弱陽イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約3520のイオンピークを生じるタンパク質、
(Mf3)pH7.0かつ0.5MのNaCl濃度で銅イオン結合金属キレート体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約5900のイオンピークを生じるタンパク質、
(Mf4)pH7.0かつ0.5MのNaCl濃度で銅イオン結合金属キレート体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約11000のイオンピークを生じるタンパク質、
(Mf5)pH3.0で弱陽イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約13600のイオンピークを生じるタンパク質。
これらのマーカー物質はいずれも主に血液中に存在するタンパク質であり、動脈硬化の発症直前段階にある動物体内で特異的に検出されるものである。なお、(Mf1)、(Mf2)、及び(Mf4)の各マーカー物質(以下、これらのマーカー物質からなるグループを「グループ1」と称することがある。)は、動脈硬化を発症している状態又は動脈硬化の将来の発症リスクが高い状態でより高値を示すものであるので、被験物質が動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を有する場合には、当該被験物質を摂取させた動物においてより低値を示す。一方、(Mf3)及び(Mf5)の各マーカー物質(以下、これらのマーカー物質からなるグループを「グループ2」と称することがある。)は、動脈硬化を発症している状態又は動脈硬化の将来の発症リスクが高い状態でより低値を示すものであるので、被験物質が動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を有する場合には、当該被験物質を摂取させた動物においてより高値を示す。
ある条件でのペプチドマッピングによれば、マーカー物質(Mf3)はトランスサイレチンと同定され得る。すなわち、ある実施形態では、マーカー物質(Mf3)はトランスサイレチン又はその修飾体である。
本発明の動脈硬化改善・予防効果の評価方法の他の様相では、動脈硬化を発症している動物又は将来の発症リスクが高い動物に被験物質を摂取させ、該動物の体液中におけるトランスサイレチン又はその修飾体に属するマーカー物質の濃度を基準値と比較し、被験物質が有する動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を評価する。
タンパク質の修飾の例としては、N末端αアミノ基やリジンεアミノ基のメチル化、アセチル化、アデニリル化、ミリスチル化等;セリン・スレオニン・アスパラギンへの糖又は糖鎖の付加;セリン・スレオニン・チロシン・アルギニン・ヒスチジンのリン酸化;システインのシステイニル化、ホモシステイニル化、スルホニル化等;グルタミン酸のγ−カルボキシル化;N末端グルタミン酸のピログルタミン酸への変換、等が挙げられる。また、これらの修飾の脱離(脱メチル化、糖又は糖鎖の脱離、脱リン酸化等)も「修飾」に含まれる。
例えば、トランスサイレチンはシステイン残基を1個有するが、この唯一のシステイン残基のチオール基(−SH)は修飾可能であり、生体内ではシステイン残基への修飾の種類が異なる複数種の修飾トランスサイレチンが見出されている。当該修飾の例としては、スルホン化、システイン化、ホモシステイン化、システイニルグリシン化、グルタチオン化、が挙げられる。本発明における「トランスサイレチンの修飾体」には、これらの修飾トランスサイレチンが含まれる。
また、「タンパク質又はその修飾体」には、当該タンパク質のアイソフォームが含まれる。アイソフォームとしては、前記した各種の修飾の他、選択的スプライシングによって生じたタンパク質が挙げられる。さらに、「タンパク質又はその修飾体」には、当該タンパク質の1次構造において数個のアミノ酸残基が欠失、置換若しくは付加されたような実質的に同一のタンパク質が含まれる。またさらに、「タンパク質又はその修飾体」には、プロテアーゼによる切断を受けた当該タンパク質由来のタンパク質断片が含まれる。例えば、当該タンパク質由来と認められうる長さのタンパク質断片、例えば20個以上のアミノ酸残基からなるタンパク質断片、分子量が2千以上のタンパク質断片、等が挙げられる。
複合体タンパク質の場合には「タンパク質又はその修飾体」にはそのサブユニットも含まれるものとする。例えば、トランスサイレチンは4個のサブユニットからなる複合体タンパク質であるので、「トランスサイレチン又はその修飾体」にはトランスサイレチンのサブユニットが含まれる。
本発明の動脈硬化改善・予防効果の評価方法では、(Mf1)〜(Mf5)の各マーカー物質並びにトランスサイレチン又はその修飾体に属するマーカー物質の1つだけを用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。複数を用いる場合の組み合わせ方については特に限定はないが、例えば、グループ1から選択したマーカー物質(1つ又は複数)とグループ2から選択したマーカー物質(1つ又は複数)とを組み合わせることができる。
本発明の動脈硬化改善・予防効果の評価方法の好ましい実施形態では、上記基準値として、動脈硬化を発症している動物又は将来の発症リスクが高い動物に、動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を有さない既知物質を摂取させた際の、該動物の体液中における前記マーカー物質の濃度を用いる。すなわち、動脈硬化を発症している動物又は将来の発症リスクが高い動物に、動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を有さない既知物質を摂取させた場合、その体液中の上記マーカー物質の濃度は「異常値」となる。そして、被験物質を摂取させた上記動物における値(測定値)と当該基準値(異常値)とを比較し、測定値が基準値と有意に差がありかつ正常側である場合(正常側に維持された場合)に、当該被験物質が動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を有すると評価することができる。具体的には、グループ1に属するマーカー物質を指標とする場合は、測定値が当該基準値に比べて有意に低いときに、一方、グループ2に属するマーカー物質を指標とする場合は、測定値が基準値に比べて有意に高いときに、当該被験物質が動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を有すると評価することができる。
さらに、基準値は複数あってもよい。例えば、上記の異常値に加え、動脈硬化を発症していない動物又は動脈硬化の発症リスクが低い動物における値(正常値。陰性対照。)を基準値に加えることができる。具体的には、(1)動脈硬化を発症していない動物又は動脈硬化の発症リスクが低い動物に、普通食又は被験物質を摂取させる群(正常値を示す群)、(2)動脈硬化を発症している動物又は動脈硬化の発症リスクが高い動物に、動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を有さない既知物質を摂取させる群(異常値を示す群)、及び、(3)動脈硬化を発症している動物又は動脈硬化の発症リスクが高い動物に被験物質を摂取させる群、の計3群を設定し、動物を飼育する。そして、各動物の体液中の上記マーカー物質を測定し、各測定値を比較する。このとき、(1)と(2)とで有意差があり、(3)と(2)とで有意差があり、かつ(3)が(2)に比べて正常側((1)に近い側)である場合(正常側に維持された場合)に、当該被験物質が動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を有すると評価することができる。
さらに、基準値として、(4)動脈硬化を発症している動物又は将来の発症リスクが高い動物に、動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を有する既知物質を摂取させる群、の動物における値(陽性対照)を加えることもできる。具体的には、上記(1)〜(3)に加えて、上記(4)の群を設定し、動物を飼育する。このとき、(1)と(2)とで有意差があり、(3)と(2)とで有意差があり、かつ(3)が(2)に比べて正常側((1)及び(4)に近い側)である場合に、当該被験物質が動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を有すると評価することができる。すなわち、このような被験物質は、(4)で採用した上記既知物質と同様の挙動を示し、同様の作用を有する物質といえる。「動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を有する既知物質」の例としては、アゼルニジピン等の降圧剤(カルシウム拮抗薬)、酢酸、発酵乳、紅花種子抽出物が挙げられる。発酵乳の動脈硬化に対する改善効果等については、例えば、インターネット<URL:http://www.calpis.co.jp/corporate/press/nrl_00007.html>(2007年7月13日 日本動脈硬化学会にて発表)に記載されている。
「動脈硬化を発症している動物又は将来の発症リスクが高い動物」における動物の種類には特に限定はなく、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ブタ等を採用することができる。また、「動脈硬化を発症している動物又は将来の発症リスクが高い動物」としては、動脈硬化の自然発症モデル動物、あるいはトランスジェニックやジーンターゲッティングによる遺伝子操作モデル動物が好ましく用いられる。当該動物の具体例としては、アポE欠損マウスが挙げられる。アポE欠損マウスは通常飼育で動脈硬化を発症するので、飼育実験を容易に行うことができ、特に好適である。
なお、アポE欠損マウスを通常飼育するといずれ動脈硬化を発症するが、その発症は飼育20週目ごろから検出可能となることが分かっている(例えば、Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology; 2004; 24; 1006-1014)。よって、飼育20週目以前、例えば飼育14週目のアポE欠損マウスは、動脈硬化の発症直前段階にあるといえる。本発明の動脈硬化改善・予防効果の評価方法で用いるマーカー物質(Mf1)〜(Mf5)及びトランスサイレチン又はその修飾体に属するマーカー物質は、飼育14週目のアポE欠損マウスの体液中に存在し、動脈硬化の発症直前段階にないマウス(例えば、正常マウス)と比較してその体液中の濃度に有意差を示す。したがって、本発明においてアポE欠損マウスを用いる場合には、例えば、飼育14週目ごろの体液を測定試料として各マーカー物質の濃度を測定すればよい。
一方、高コレステロール食を摂取するとアテローム形成するような動脈硬化自然発症モデル動物を用いることもできる。この場合には、例えば、被験物質とコレステロールとを同時摂取させることにより、被験物質が有する動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を評価することができる。さらに、動物としてヒトを採用することもできる。この場合には、臨床試験の結果によって物質を評価することになる。
本発明の動脈硬化改善・予防効果の評価方法において使用する動物の体液としては、血液が好ましく用いられる。特に、血液から調製した血清又は血漿(体液成分)を測定試料とすることが好ましい。血清又は血漿は遠心分離等の公知の方法で血液から調製することができる。
本発明の動脈硬化改善・予防効果の評価方法における被験物質としては、食品素材、医薬原体などが挙げられる。特に、食品素材を評価対象とする場合は、機能性食品の開発に役立てることができる。
本発明の動脈硬化改善・予防効果の評価方法において、マーカー物質の濃度を測定する方法は、そのマーカー物質の濃度を特異的に測定できる方法であれば、タンパク質の定量に一般に用いられている方法をそのまま用いることができる。例えば、各種のイムノアッセイ、質量分析(MS)、クロマトグラフィー、電気泳動等を用いることができる。
イムノアッセイによれば、夾雑物質の多い試料のままでも正確にマーカー物質の濃度を測定することができる。イムノアッセイの例としては、抗原抗体結合物を直接的又は間接的に測定する沈降反応、凝集反応、溶血反応などの古典的な方法や、標識法と組み合わせて検出感度を高めたエンザイムイムノアッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光イムノアッセイ(FIA)等の方法が挙げられる。なお、これらのイムノアッセイに用いるマーカー物質に特異的な抗体は、モノクローナルでもよいし、ポリクローナルでもよい。
質量分析によれば、各マーカー物質由来のイオンピークを特定し、そのイオンピーク強度をもって各マーカー物質の量(濃度)を測定することができる。質量分析によってマーカー物質の濃度を測定する場合のイオン化の方法としては、マトリクス支援レーザーイオン化(matrix-assisted laser desorption/ionization、MALDI)、エレクトロスプレーイオン化(electrospray ionization、ESI)のいずれも適用可能であるが、多価イオンの生成が少ないMALDIが好ましい。特に、飛行時間質量分析計(time-of-flight mass spectrometer、TOF)と組み合わせたMALDI−TOF−MSによれば、より正確にマーカー物質由来のイオンピークを特定することができる。
電気泳動によりマーカー物質の濃度を測定する場合は、例えば、検査材料をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に供して目的のマーカー物質を分離し、適宜の色素や蛍光物質でゲルを染色し、目的のマーカー物質に相当するバンドの濃さや蛍光強度を測定すればよい。SDS−PAGEだけではマーカー物質の分離が不十分な場合は、等電点電気泳動(IEF)と組み合わせた2次元電気泳動を用いることもできる。さらに、ゲルから直接検出するのではなく、ウエスタンブロッティングを行って膜上のマーカー物質の量を測定することもできる。
クロマトグラフィーによってマーカー物質の濃度を測定する場合は、例えば、液体高速クロマトグラフィー(HPLC)による方法を用いることができる。すなわち、試料をHPLCに供して目的のマーカー物質を分離し、そのクロマトグラムのピーク面積を測定することにより試料中のマーカー物質の濃度を測定することができる。
好ましい実施形態では、マーカー物質を担体上に捕捉し、その捕捉されたマーカー物質を測定対象とする。すなわち、マーカー物質に対する親和性を有する物質を担体に固定化し、その親和性を有する物質を介してマーカー物質を担体上に捕捉する。そして、捕捉された前記マーカー物質の量に基づいて体液中の前記マーカー物質の濃度を算出する。本実施形態によれば、試料中に含まれる夾雑物質の影響を低減させることができ、より高感度かつ高精度でマーカー物質の濃度を測定することができる。本実施形態において用いることができる担体の例としては、ビーズ、金属、ガラス、樹脂等のような一般的なものの他、基板のような、平面部分を有する担体を用いることができる。基板を用いる場合は、その平面部分の一部にマーカー物質に対する親和性を有する物質を固定化することが好ましい。例としては、基板としてチップを用い、その表面の複数箇所にスポット的にマーカー物質に親和性を有する物質を固定化した担体が挙げられる。なお「親和性」の例としては、イオン結合、金属キレート体とタンパク質中のヒスチジン残基等とのアフィニティ、抗原と抗体、酵素と基質、若しくはホルモンとレセプターのようなバイオアフィニティ、及び、疎水性相互作用のような化学的な相互作用、が挙げられる。
イオン結合によってマーカー物質を担体に捕捉する場合は、イオン交換体を担体に固定化する。この場合、イオン交換体には陽イオン交換体、陰イオン交換体のいずれも用いることができ、さらに、強陽イオン交換体、弱陽イオン交換体、強陰イオン交換体、弱陰イオン交換体のいずれも用いることができるが、強陰イオン交換体と弱陽イオン交換体が好ましく用いられる。強陰イオン交換体の例としては、4級アンモニウム(トリメチルアミノメチル)(QA)、4級アミノエチル(ジエチル,モノ・2−ヒドロキシブチルアミノエチル)(QAE)、4級アンモニウム(トリメチルアンモニウム)(QMA)等の強陰イオン交換基を有するものが挙げられる。また、弱陽イオン交換体の例としては、カルボキシメチル(CM)等の弱陽イオン交換基を有するものが挙げられる。また、強陽イオン交換体の例としては、スルホプロピル(SP)等の強陽イオン交換基を有するものが挙げられる。さらに、弱陰イオン交換体の例としては、ジメチルアミノエチル(DE)、ジエチルアミノエチル(DEAE)等の弱陰イオン交換基を有するものが挙げられる。
金属キレート体を介してマーカー物質を捕捉する場合は、例えば、Cu2+、Zn2+、Ni2+、Co2+、Al3+、Fe3+、Ga3+等の金属キレート体を固定化した担体を用いることができる。
抗体によってマーカー物質を担体に捕捉する場合は、マーカー物質に特異的な抗体を担体に固定化すればよい。
疎水性相互作用によってマーカー物質を担体に捕捉する場合は、担体に疎水基をもつ物質を固定化する。疎水基の例としては、C4〜C20のアルキル基、フェニル基等が挙げられる。
本実施形態においてマーカー物質の測定方法にイムノアッセイを用いる場合は、抗体を固定化した担体を用いることが好ましい。このようにすれば、担体に固定化された抗体を1次抗体としたイムノアッセイの系を簡単に構築することができる。例えば、マーカー物質に特異的でエピトープの異なる2種類の抗体を用意し、一方を1次抗体として担体に固定化し、他方を2次抗体として酵素標識し、サンドイッチEIAの系を構築することができる。その他、結合阻止法や競合法によるイムノアッセイの系も構築可能である。さらに、担体として基板を用いる場合は、抗体チップによるイムノアッセイが可能である。抗体チップによれば、複数のマーカー物質の濃度を同時に測定でき、迅速な測定が可能である。
一方、本実施形態において質量分析を用いる場合は、例えば、抗体の他、イオン交換体、金属キレート体又は疎水基を固定化した担体を用いることができる。なお、これらの物質による結合は抗原と抗体等のバイオアフィニティほどの特異性がないので、これらの物質を固定化した担体を用いる場合はマーカー物質以外の物質も担体上に捕捉されうるが、質量分析によれば分子量を反映した質量分析計スペクトルによって定量するので、問題はない。特に、担体として基板を用い、表面エンハンス型レーザー脱離イオン化(surface-enhanced laser desorption/ionization)−飛行時間質量分析(time-of-flight mass spectrometry)(以下、「SELDI−TOF−MS」と称する)を行うことにより、マーカー物質の濃度をより正確に測定することができる。使用できる基板の種類としては、陽イオン交換基板、陰イオン交換基板、順相基板、逆相基板、金属イオン基板、抗体基板等を用いることができるが、陽イオン交換基板、特に弱陽イオン交換基板と、金属イオン基板とが好ましく用いられる。
本発明の物質のスクリーニング方法は、本発明の動脈硬化改善・予防効果の評価方法によって被験物質を評価し、動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を有する物質をスクリーニングするものである。本発明の物質のスクリーニング方法においても、上記した本発明の動脈硬化改善・予防効果の評価方法の実施形態と全く同様の実施形態をとることができる。
本発明の動脈硬化改善・予防効果の評価方法を簡便に行なうために、必要な試薬類をまとめて評価用キットを構築することができる。当該評価用キットとしては、例えば、マーカー物質に対する親和性を有する物質を固定化した担体を含むものが挙げられる。特に、担体として、CM等の弱陽イオン交換体、あるいは銅イオン等の金属キレート体を固定化した基板を含めた評価用キットによれば、SELDI−TOF−MS等を簡便に行なうことができる。本キット中には他の試薬類、例えば、標準物質、前処理用の各種緩衝液等を含めてもよい。なお本キットは、動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を有する物質をスクリーニングするためのキットとしても使用できる。本発明のキットの構成例を以下に挙げる。
〔キットの構成例〕
(1)弱陽イオン交換基板:1枚
(2)金属イオン基板:1枚
(3)基板洗浄用バッファーA(pH3.0):適量
(4)基板洗浄用バッファーB(pH7.0かつ0.5M NaClを含む):適量
(5)各マーカー物質の標準品:各適量
以下に、実施例をもって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1.動脈硬化発症モデル動物を使った動物実験
動脈硬化発症モデル動物としてアポE欠損マウス(The Jackson Laboratory社)、正常動物としてC57BL/6J系統マウス(日本チャールス・リバー社。以下、単に「正常マウス」と略記する。)を採用した。また、与える飼料としてCE−2(日本クレア社。以下、単に「通常飼料」と略記する。)と、発酵乳を10%(5g/kg体重に相当)含有するCE−2(以下、単に「発酵乳含有飼料」と略記する。)を採用した。
マウスの種類と与える飼料の組み合わせが異なる以下の4つの群を設定した。
第1群:正常マウスを通常飼料で飼育
第2群:アポE欠損マウスを通常飼料で飼育
第3群:アポE欠損マウスを発酵乳含有飼料で飼育
第4群:正常マウスを発酵乳含有飼料で飼育
すなわち、第1群は動脈硬化を発症しない群、第2群は動脈硬化を発症する群、第3群は動脈硬化の発症が抑制される群、に相当する。第4群は発酵乳の作用検証用の群である。
6週齢より所定の条件で飼育を開始し、14週(20週齢)、34週(40週齢)の各ポイントで5匹ずつマウスを屠殺した。各マウスから血液を採取し、血漿を調製した。
アポE欠損マウスにおいて動脈硬化が発症し始める飼育期間である14週目(20週齢)の血漿を動脈硬化の発症直前段階の体液試料とし、以下のプロテオーム解析に供した。
2.プロテインチップによる解析とイオンピークの選抜
各血漿20μLに、変性バッファー(9M 尿素、2% CHAPS、50mM Tris−HCl(pH9.0))30μLを加えて前処理を行い、タンパク質を変性させた。次に、前処理した各体液試料を強陰イオン交換樹脂カラム(Q−Sepharose、GEヘルスケア社)にアプライした。次いで、pH9.0の緩衝液(50mM Tris−HCl(pH9.0)、0.1%(w/v)1−o−N−オクチル−β−D−グルコピラノシド(以下、「OGP」と称する。))、pH5.0の緩衝液(100mM 酢酸ナトリウム(pH5.0)、0.1%(w/v)OGP)、pH3.0の緩衝液(50mM クエン酸ナトリウム(pH3.0)、0.1%(w/v)OGP)、及び有機溶媒(0.1%トリフルオロ酢酸、50.0%アセトニトリルからなる混合液)各200μLで順に溶出させ、画分1(pH9.0で溶出、素通り)、画分2(pH5.0で溶出)、画分3(pH3.0で溶出)、画分4(有機溶媒で溶出)の4つの粗分画画分を得た。
得られた各画分10μLをpH3.0のプロテインチップ結合バッファー(50mM クエン酸ナトリウム)で10倍希釈した後、弱陽イオン交換チップCM10(バイオラッド社)に添加した。同様に、得られた各画分10μLをpH7.0/0.5M NaClのプロテインチップ結合バッファー(100mM リン酸ナトリウム,0.5M NaCl,pH7.0)で10倍希釈した後、銅修飾チップIMAC30(バイオラッド社)に添加した。各チップを各結合バッファーで3回洗浄した後に脱イオン水で1回洗浄し、乾燥させた。次に、エネルギー吸収分子であるシナピン酸(SPA−H、SPA−L)又はα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(CHCA)を添加し、プロテインチップリーダーModel PBS IIc(バイオラッド社)を用いて、SELDI−TOF−MSを行なった。なお、測定分子量範囲(m/z)は、3000〜200000の範囲で行なった。また、測定は2連で行い、m/zの平均値を算出した。データ解析は、Protein Chip Software、CiphergenExpress Data Manager、及びBiomarker Patterns Software(いずれもバイオラッド社)を用いて行なった。具体的には、ベースライン補正、分子量校正、スペクトルの正規化処理を行なった後、シングルマーカー解析及び数本のマーカーを組み合わせたマルチフロー解析を行なった。その結果、粗分画画分の種類、プロテインチップの種類、チップの洗浄条件等の組み合わせによって多数のピークが検出された。各ピークについて、p値(Mann−Whitney検定法)、ROC面積、及びイオンピーク強度を算出し、さらに、以下の(1)〜(4)の条件を指標として5個の候補ピークを選抜した。
(1)候補ピーク探索(基本)
第1群と第2群との間でイオン強度に有意差がある(p<0.05)。
(2)発酵乳効果検証
第2群と第3群との間でイオン強度に有意差があり(p<0.05)、かつ第3群の値の方が第2群の値よりも第1群の値に近い(第3群の値が第1群側に復帰している)。
(3)増減パターン解析
第2群のみが高値または低値を示し、第1群、第3群および第4群の間ではあまり差がない。なお、第3群と第4群との間に差があっても、第4群の値の方が第3群の値よりも第2群から離れている場合には本条件を満たすものとして取り扱う。
3.マーカー物質(Mf1)の特定
画分1(pH9.0)を弱陽イオン交換チップCM10に接触させ、pH3.0のプロテインチップ結合バッファーで洗浄してSELDI−TOF−MS(EAM:SPA−L)を行なった場合に、質量/電荷比が3499(平均値)のイオンピークが検出された。増減パターン解析の結果、本ピークは第1群、第3群および第4群で低値を示し、第2群で高値を示した。図1に、各群に分けて本ピークのピーク強度をプロットした場合の箱髭図を示す。図中、髭の上端と下端はそれぞれ最大値と最小値、箱の上辺と下辺はそれぞれ第3四分位(75パーセンタイル)と第1四分位(25パーセンタイル)、箱の中の線は中央値である(図2以降も同じ)。各ROC面積と各p値は以下のとおりとなった。
ROC面積(第1群vs第2群):0.98
p値(第1群vs第2群):0.0002
ROC面積(第2群vs第3群):0.86
p値(第2群vs第3群):0.010
以上より、SELDI−TOF−MSに供すると質量/電荷比が約3500のピークを生じるタンパク質(マーカー物質(Mf1))が、動脈硬化を発症しているマウス、又は動脈硬化の将来の発症リスクが高いマウスに特異的な物質であり、動脈硬化のマーカーとなり得ることがわかった。これにより、被験物質を摂取させた動脈硬化を発症している動物又は将来の発症リスクが高い動物の体液中におけるマーカー物質(Mf1)の濃度を指標として、被験物質が有する動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果の評価、並びに、そのような物質のスクリーニングが行なえることが示された。例えば、所望の被験物質を使用して同様の動物実験を行なって体液試料を調製し、同様の手順でSELDI−TOF−MSを行なった場合に、質量/電荷比が約3500のピークを生じるタンパク質の濃度が正常値に維持されたとき、該被験物質は、動脈硬化の改善効果、又は将来の発症リスクの低減効果を有すると評価することができる。
4.マーカー物質(Mf2)の特定
画分1(pH9.0)を弱陽イオン交換チップCM10に接触させ、pH3.0のプロテインチップ結合バッファーで洗浄してSELDI−TOF−MS(EAM:SPA−L)を行なった場合に、質量/電荷比が3518(平均値)のイオンピークが検出された。増減パターン解析の結果、本ピークは第1群、第3群および第4群で低値を示し、第2群で高値を示した。図2に、各群に分けて本ピークのピーク強度をプロットした場合の箱髭図を示す。各ROC面積と各p値は以下のとおりとなった。
ROC面積(第1群vs第2群):0.98
p値(第1群vs第2群):0.0002
ROC面積(第2群vs第3群):0.74
p値(第2群vs第3群):0.034
以上より、SELDI−TOF−MSに供すると質量/電荷比が約3520のピークを生じるタンパク質(マーカー物質(Mf2))が、動脈硬化を発症しているマウス、又は動脈硬化の将来の発症リスクが高いマウスに特異的な物質であり、動脈硬化のマーカーとなり得ることがわかった。これにより、被験物質を摂取させた動脈硬化を発症している動物又は将来の発症リスクが高い動物の体液中におけるマーカー物質(Mf2)の濃度を指標として、被験物質が有する動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果の評価、並びに、そのような物質のスクリーニングが行なえることが示された。例えば、所望の被験物質を使用して同様の動物実験を行なって体液試料を調製し、同様の手順でSELDI−TOF−MSを行なった場合に、質量/電荷比が約3520のピークを生じるタンパク質の濃度が正常値に維持されたとき、該被験物質は、動脈硬化の改善効果、又は将来の発症リスクの低減効果を有すると評価することができる。
5.マーカー物質(Mf3)の特定
画分1(pH9.0)を銅修飾チップIMAC30に接触させ、pH7.0/0.5M NaClのプロテインチップ結合バッファーで洗浄してSELDI−TOF−MS(EAM:CHCA)を行なった場合に、質量/電荷比が5901(平均値)のイオンピークが検出された。増減パターン解析の結果、本ピークは第1群、第3群および第4群で高値を示し、第2群で低値を示した。図3に、各群に分けて本ピークのピーク強度をプロットした場合の箱髭図を示す。各ROC面積と各p値は以下のとおりとなった。
ROC面積(第1群vs第2群):0.86
p値(第1群vs第2群):0.003
ROC面積(第2群vs第3群):0.78
p値(第2群vs第3群):0.023
以上より、SELDI−TOF−MSに供すると質量/電荷比が約5900のピークを生じるタンパク質(マーカー物質(Mf3))が、動脈硬化を発症しているマウス、又は動脈硬化の将来の発症リスクが高いマウスに特異的な物質であり、動脈硬化のマーカーとなり得ることがわかった。これにより、被験物質を摂取させた動脈硬化を発症している動物又は将来の発症リスクが高い動物の体液中におけるマーカー物質(Mf3)の濃度を指標として、被験物質が有する動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果の評価、並びに、そのような物質のスクリーニングが行なえることが示された。例えば、所望の被験物質を使用して同様の動物実験を行なって体液試料を調製し、同様の手順でSELDI−TOF−MSを行なった場合に、質量/電荷比が約5900のピークを生じるタンパク質の濃度が正常値に維持されたとき、該被験物質は、動脈硬化の改善効果、又は将来の発症リスクの低減効果を有すると評価することができる。
6.マーカー物質(Mf4)の特定
画分3(pH3.0)を銅修飾チップIMAC30に接触させ、pH7.0/0.5M NaClのプロテインチップ結合バッファーで洗浄してSELDI−TOF−MS(EAM:CHCA)を行なった場合に、質量/電荷比が11047(平均値)のイオンピークが検出された。増減パターン解析の結果、本ピークは第1群、第3群および第4群で低値を示し、第2群で高値を示した。図4に、各群に分けて本ピークのピーク強度をプロットした場合の箱髭図を示す。各ROC面積と各p値は以下のとおりとなった。
ROC面積(第1群vs第2群):0.86
p値(第1群vs第2群):0.008
ROC面積(第2群vs第3群):0.78
p値(第2群vs第3群):0.019
以上より、SELDI−TOF−MSに供すると質量/電荷比が約11000のピークを生じるタンパク質(マーカー物質(Mf4))が、動脈硬化を発症しているマウス、又は動脈硬化の将来の発症リスクが高いマウスに特異的な物質であり、動脈硬化のマーカーとなり得ることがわかった。これにより、被験物質を摂取させた動脈硬化を発症している動物又は将来の発症リスクが高い動物の体液中におけるマーカー物質(Mf4)の濃度を指標として、被験物質が有する動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果の評価、並びに、そのような物質のスクリーニングが行なえることが示された。例えば、所望の被験物質を使用して同様の動物実験を行なって体液試料を調製し、同様の手順でSELDI−TOF−MSを行なった場合に、質量/電荷比が約11000のピークを生じるタンパク質の濃度が正常値に維持されたとき、該被験物質は、動脈硬化の改善効果、又は将来の発症リスクの低減効果を有すると評価することができる。
7.マーカー物質(Mf5)の特定
画分3(pH3.0)を弱陽イオン交換チップCM10に接触させ、pH3.0のプロテインチップ結合バッファーで洗浄してSELDI−TOF−MS(EAM:SPA−H)を行なった場合に、質量/電荷比が13648(平均値)のイオンピークが検出された。増減パターン解析の結果、本ピークは第1群、第3群および第4群で高値を示し、第2群で低値を示した。図5に、各群に分けて本ピークのピーク強度をプロットした場合の箱髭図を示す。各ROC面積と各p値は以下のとおりとなった。
ROC面積(第1群vs第2群):0.78
p値(第1群vs第2群):0.028
ROC面積(第2群vs第3群):0.82
p値(第2群vs第3群):0.028
以上より、SELDI−TOF−MSに供すると質量/電荷比が約13600のピークを生じるタンパク質(マーカー物質(Mf5))が、動脈硬化を発症しているマウス、又は動脈硬化の将来の発症リスクが高いマウスに特異的な物質であり、動脈硬化のマーカーとなり得ることがわかった。これにより、被験物質を摂取させた動脈硬化を発症している動物又は将来の発症リスクが高い動物の体液中におけるマーカー物質(Mf5)の濃度を指標として、被験物質が有する動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果の評価、並びに、そのような物質のスクリーニングが行なえることが示された。例えば、所望の被験物質を使用して同様の動物実験を行なって体液試料を調製し、同様の手順でSELDI−TOF−MSを行なった場合に、質量/電荷比が約13600のピークを生じるタンパク質の濃度が正常値に維持されたとき、該被験物質は、動脈硬化の改善効果、又は将来の発症リスクの低減効果を有すると評価することができる。
なお、ヒトの体液中にもマーカー物質(Mf1)〜(Mf5)と同等のタンパク質が存在する場合には、ヒトの体液中における当該タンパク質の濃度を指標として、動脈硬化の発症の有無、又は将来の発症リスクを診断できる可能性も示唆された。
マーカー物質(Mf5)の精製と同定
強陰イオン交換カラムHiTrap Q HPを平衡化バッファー(50mM Tris−HCl pH9.0,1M 尿素,0.22% CHAPS)にて平衡化した。マウス標準血漿1mLに対して変性バッファー(50mM Tris−HCl pH9.0,9M 尿素,2% CHAPS)を1.5mL加えて変性処理した後、平衡化した前記カラムに添加した。50mM Tris−HCl(pH9.0)、50mM Tris−HCl(pH7.0)にてカラムを順次洗浄した後、50mM NaClを含有する50mM Tris−HCl(pH7.0)により溶出・回収した。
回収した画分をアセトン沈殿処理した後、ポリペプチド分離用ゲルDRC NTH−5A0Tゲルを用いてSDS−PAGEを行った(図6)。図6中、レーン1〜6は回収画分、Mは分子量マーカーである。分離されたバンド(図6の矢印)を切り出してタンパク質を抽出し、SELDI−TOF−MS分析を行い、マーカー物質(Mf5)と同等の質量/電荷比を示すピークを確認した(図7の矢印)。
あらためて同様のSDS−PAGEを行って約13.6kDaのバンドを切り出し、還元アルキル化処理した後、0.01μg/μLのトリプシン溶液(50mM 炭酸水素アンモニウム(pH8.0)に溶解)を作用させてゲル内で消化した。消化したサンプル1μLを金属プレート上に滴下し、飽和CHCA溶液0.4μLをさらに滴下して乾燥させた後、質量分析計Proteomics Analyzer 4700(アプライドバイオシステムズ社)で測定したところ、少なくとも6個のピークが検出され、それらの精密質量は、「1510.73」、「1382.63」、「2438.17」、「3123.48」、「1554.82」、及び「2517.20」と算出された。これらのデータを元にMascotデータベース(マトリックスサイエンス社)によって既知タンパク質を検索し、ペプチドマスフィンガープリンティングを行ったところ、これらのペプチドはそれぞれ配列番号1〜6で表わされるアミノ酸配列のペプチドと一致し、目的のタンパク質は99%以上の確率で「トランスサイレチン」と同定された。各ペプチドの精密質量、アミノ酸配列、及び配列番号の対応関係を第1表に示す。
なお、報告されているマウス由来トランスサイレチンのアミノ酸配列は配列番号7に示すとおりである。
質量/電荷比が3499(平均値)のイオンピークについての箱髭図である。 質量/電荷比が3518(平均値)のイオンピークについての箱髭図である。 質量/電荷比が5901(平均値)のイオンピークについての箱髭図である。 質量/電荷比が11047(平均値)のイオンピークについての箱髭図である。 質量/電荷比が13648(平均値)のイオンピークについての箱髭図である。 マーカー物質(Mf5)の精製過程で行ったSDS−PAGEの結果を示す写真である。 マーカー物質(Mf5)の精製過程で行ったSELDI−TOF−MS分析の結果を示すイオンピーク図である。

Claims (14)

  1. 動脈硬化を発症している動物又は将来の発症リスクが高い動物に被験物質を摂取させ、該動物の体液中における下記マーカー物質(Mf1)〜(Mf5)の少なくとも1つの濃度を基準値と比較し、被験物質が有する動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を評価することを特徴とする動脈硬化改善・予防効果の評価方法。
    (Mf1)pH3.0で弱陽イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約3500のイオンピークを生じるタンパク質、
    (Mf2)pH3.0で弱陽イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約3520のイオンピークを生じるタンパク質、
    (Mf3)pH7.0かつ0.5MのNaCl濃度で銅イオン結合金属キレート体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約5900のイオンピークを生じるタンパク質、
    (Mf4)pH7.0かつ0.5MのNaCl濃度で銅イオン結合金属キレート体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約11000のイオンピークを生じるタンパク質、
    (Mf5)pH3.0で弱陽イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約13600のイオンピークを生じるタンパク質。
  2. マーカー物質(Mf5)は、トランスサイレチン又はその修飾体であることを特徴とする請求項1に記載の動脈硬化改善・予防効果の評価方法。
  3. 動脈硬化を発症している動物又は将来の発症リスクが高い動物に被験物質を摂取させ、該動物の体液中におけるトランスサイレチン又はその修飾体に属するマーカー物質の濃度を基準値と比較し、被験物質が有する動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を評価することを特徴とする動脈硬化改善・予防効果の評価方法。
  4. 前記基準値は、動脈硬化を発症している動物又は将来の発症リスクが高い動物に、動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を有さない既知物質を摂取させた際の、該動物の体液中における前記マーカー物質の濃度であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の動脈硬化改善・予防効果の評価方法。
  5. 前記動脈硬化を発症している動物又は将来の発症リスクが高い動物は、自然発症モデル動物又は遺伝子操作モデル動物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の動脈硬化改善・予防効果の評価方法。
  6. 前記体液は、血液であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の動脈硬化改善・予防効果の評価方法。
  7. 前記被験物質は、食品素材であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の動脈硬化改善・予防効果の評価方法。
  8. 前記体液又は体液成分を、前記マーカー物質に対する親和性を有する物質を固定化した担体に接触させて、体液中の前記マーカー物質を担体上に捕捉し、捕捉された前記マーカー物質の量に基づいて体液中の前記マーカー物質の濃度を算出することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の動脈硬化改善・予防効果の評価方法。
  9. 前記担体は平面部分を有し、前記マーカー物質に対する親和性を有する物質は、該平面部分の一部に固定化されていることを特徴とする請求項8に記載の動脈硬化改善・予防効果の評価方法。
  10. 前記マーカー物質に対する親和性を有する物質は、イオン交換体、金属キレート体又は抗体であることを特徴とする請求項8又は9に記載の動脈硬化改善・予防効果の評価方法。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の動脈硬化改善・予防効果の評価方法によって被験物質を評価し、動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を有する物質をスクリーニングすることを特徴とする物質のスクリーニング方法。
  12. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の動脈硬化改善・予防効果の評価方法に用いるためのキットであって、前記マーカー物質に対する親和性を有する物質を固定化した担体を含むことを特徴とする動脈硬化改善・予防効果の評価用キット。
  13. 前記マーカー物質に対する親和性を有する物質は、イオン交換体又は金属キレート体であることを特徴とする請求項12に記載の動脈硬化改善・予防効果の評価用キット。
  14. 動脈硬化の改善効果又は将来の発症リスクの低減効果を有する物質をスクリーニングするために使用されることを特徴とする請求項12又は13に記載の動脈硬化改善・予防効果の評価用キット。
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