JP2010015907A - 絶縁電線とそれを用いた回転機器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】導体上に遷移金属酸化物を含有している絶縁塗料を塗布焼付した絶縁皮膜を有する絶縁電線、及びこれを用いた回転機器。
【選択図】なし
Description
例えば絶縁皮膜中にカーボンブラック微粒子を分散させる技術が公知技術として知られている(特許文献1参照)。また絶縁皮膜中にアルミナ微粒子を分散させた技術も提案されている(特許文献2参照)。
特許文献1に記載された方法でカーボンブラック微粒子を絶縁塗料中に分散させる場合、電気伝導性を有するため剥離した端部から電流が漏れるなどの問題があり電気絶縁性を保つ端部の加工が難しい。
特許文献2に記載された通りにアルミナ微粒子を絶縁塗料中に分散させる場合、アルミナ微粒子は不純物に依る物を除き本質的に1064nm近傍に有効な吸収帯を持たないため、これを皮膜中に分散させても、光吸収に対して有効な手段とは言い難い。
特許文献2では、導体上に0.1μm程度の銅の酸化物皮膜を生成させ、これを光吸収層とする提案もなされているが、厚い酸化物皮膜層を電線の導体上に位置させると絶縁皮膜と導体の間の密着性が低下し絶縁皮膜が剥離してしまうといった問題がある。また、剥離させた部分を溶接接合させる場合は、酸化物皮膜により接合不良を引き起こすといった問題もある。
さらに、工程の短縮と簡略化が可能な回転機器の製造方法と、同出力でも小型化できる回転機器を提供することを目的とする。
(1)導体上に遷移金属酸化物を含有している絶縁塗料を塗布焼付した絶縁皮膜を有することを特徴とする絶縁電線。
(2)導体上に2層以上の絶縁塗料を塗布焼付けした絶縁皮膜を有し、前記絶縁皮膜の少なくとも1層に遷移金属酸化物を含有していることを特徴とする多層絶縁電線。
(3)前記絶縁皮膜の最内層以外の少なくとも1層が遷移金属酸化物を含有していることを特徴とする(2)に記載の多層絶縁電線。
(4)前記絶縁皮膜の最内層を含む少なくとも1層が遷移金属酸化物を含有している絶縁塗料を塗布焼付けして形成されたことを特徴とする(2)に記載の多層絶縁電線。
(6)前記絶縁皮膜中に含有される遷移金属酸化物微粒子が、Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni又はCuの酸化物、並びにTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCuから選ばれる2種以上を含有する複合金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種である(1)〜(5)のいずれか1項に記載の絶縁電線または多層絶縁電線。
(7)前記絶縁皮膜がNd−YAGレーザーで剥離可能であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の絶縁電線または多層絶縁電線。
(8)前記絶縁皮膜中に分散させた遷移金属酸化物微粒子の平均一次粒子径が1μm以下であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載の絶縁電線または多層絶縁電線。
(9)前記絶縁皮膜の少なくとも一部をNd−YAGレーザーを用いて除去した(1)〜(8)のいずれか1項に記載の絶縁電線を絶縁電機子に巻付けて構成してなることを特徴とする回転機器。
(10)(1)〜(8)のいずれか1項に記載の絶縁電線または多層絶縁電線を絶縁電機子に巻付けて構成してなる回転機器の製造方法であって、その絶縁電線の末端部分の絶縁皮膜の剥離をNd−YAGレーザーで行うことを特徴とする回転機器の製造方法。
(11)(1)〜(8)のいずれか1項記載の絶縁電線または多層絶縁電線の導体と端子部材とを電気的に接続する導体の接続方法であって、
前記絶縁電線または多層絶縁電線の所定部分にレーザー光を照射装置によってレーザー光を照射して絶縁皮膜を除去する絶縁被膜除去工程と、
前記絶縁皮膜除去工程の後、前記絶縁皮膜が除去されることで露出した前記導体と前記端子部材とを当接させてそれらの少なくとも一方に前記レーザー光照射装置によってレーザー光を照射してそれらを接合し電気的に接続する導体結線工程と
を有することを特徴とする導体の接続方法。
(12)電機子の巻線を構成する導体の一部を、(11)に記載の導体の接合方法により前記端子部材に接合することを特徴とする回転機器の製造方法。
(13)(12)に記載の回転機器の製造方法において、前記電機子がロータを構成するものであって、前記端子部材が整流子のセグメントから延出した整流子接続片であることを特徴とする回転機器の製造方法。
本発明の絶縁電線を絶縁電機子に巻付けて構成した本発明の回転機器は、絶縁電線の端末部をNd−YAGレーザーの照射により絶縁皮膜を剥離し導体を露出させ、また同じNd−YAGレーザーを用いた絶縁電線端末部の溶接加工を行うことができる。皮膜の剥離と端末部の導体の溶接を同一のレーザー光で行えるため、従来行われていた方法(絶縁皮膜を機械的に剥離したのち電気溶接で端末部を接合)に比べて大幅に工程を短縮することができる。また、絶縁皮膜の剥離を炭酸ガスレーザーで行い、端末部の導体の接合をNd−YAGレーザーと波長の異なるレーザー光を用いて加工する場合に比べて、同一の発振器を使用できるため光学系の製造機器の簡略化を実現できる。
本発明ではレーザー光で導体の接合加工を行うため、電気溶接に比べて溶接用の給電端子接触部分を絶縁電線の導体露出部および被溶接電気端子に用意する必要がない。よって回転機器の設計上の自由度が増し、回転機器の小型化にも寄与することができる。
また、絶縁皮膜の剥離を炭酸ガスレーザーで行い、端末部の導体の接合をNd−YAGレーザーと波長の異なるレーザー光を用いて加工する場合に比べて、同一の発振器を使用するため製造機器の光学系の簡略化を実現できる。
一般的に遷移金属原子は配位子が配位することによって縮退していたd軌道のエネルギー準位が分裂し、分裂したd軌道間のエネルギー差に相当する光を吸収することが知られている(d−d遷移)。
d−d遷移の吸収帯は500〜1200nmにあり、Nd−YAGレーザーの発振波長1064nmは、この吸収帯の吸収端に位置する。そのため遷移金属化合物はNd−YAGレーザーの光を効率よく吸収することができる。光吸収によって電子状態が励起状態に遷移するが、そのほとんどは無輻射失活過程により熱を放出して基底状態に戻る。そのため遷移金属化合物はNd−YAGレーザー光によって効率良く発熱する。遷移金属化合物を分散させた絶縁皮膜では、Nd−YAGレーザー光照射によって遷移金属化合物より生じた熱により樹脂成分を熱分解させて除去することができる。
皮膜中の遷移金属酸化物微粒子はレーザー光照射時の発熱に対しても安定であるが、皮膜樹脂の熱分解ガスによって吹き飛ばされ導体上には残留せず、皮膜剥離後の導体接合は良好に実施することができる。
金属酸化物微粒子を添加する絶縁皮膜を構成する樹脂成分は特に制限はないが、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエステルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミドなどから選ばれる一つ又は複数の樹脂を、電線に要求される耐熱特性によって選択し用いることができる。これらの絶縁樹脂をN−メチルピロリドンやクレゾールなどに溶解させた樹脂液に、金属酸化物微粒子を添加し均一分散体を調製し、導体上に塗布・焼付することで絶縁電線を製造する。
また、導体としては、従来絶縁電線に用いられている導体であれば制限無く用いることができる。
多層構成の絶縁皮膜の最外層には電線の電機子への巻付け工程での耐傷性を付与する目的でポリエチレンワックスなどの潤滑性分を配合した絶縁皮膜を形成しても良い。
本発明における絶縁皮膜の厚さは、レーザー光照射で剥離が十分に行える厚さであれば特に制限はないが、例えば膜厚(複数層の場合は各層膜厚の合計)が10〜150μmが好ましい。
図1に示す回転機器10は、電機子1と固定子11を備える。電機子1は、回転軸2と、該回転軸2に固定され、ティース4に巻線が巻回された整流子3とを備える。
従来は、整流子のセグメントに形成された結線爪に、巻線が係止されたものが主流であった。これに対し、結線工程を簡略化するため、セグメントに結線すべく結線部を所定位置に配置し、レーザー剥離によってその結線部の巻線の絶縁皮膜を除去し、その後、レーザー溶接を施して電気的に接続させる方法がとられるようになった。
図2に示すように、巻線の導体接続部を定位置に配置する。その後、導体接続部5にレーザー光照射装置6によるレーザー光LB7を照射して該部分の絶縁皮膜を除去し、導線本体を露出させる。
次に図3に示すように導体接続部5上に整流子接続片9が重なるように整流子セグメント8が配置される。位置決め後、レーザー光LB7を照射して接合させる。
この照射範囲を変更する方法は、焦点はずらさず、集光レンズを剥離用に変更してもよい。
ファイバーレーザーなどによっても行うことができる。
レーザー照射条件は、絶縁層の厚さ、樹脂の種類などにより適宜に設定できる。また、酸素が過剰な雰囲気にてレーザー光を照射することでより良好な皮膜除去ができる。
(遷移金属酸化物微粒子を分散させた絶縁樹脂液の調製と絶縁電線の製造)
実施例1
酸化チタン微粒子(平均一次粒径0.1μm)64gをN−メチルピロリドン200gに撹拌させながら分散しスラリー状の混合物を作成した。このスラリー状の混合物を撹拌させながらポリアミドイミドワニスHI−406(商品名、日立化成株式会社製)(固形分32%)2000gを添加し約1時間撹拌して、微粒子が均一に分散した絶縁樹脂液を調製した。調製した絶縁樹脂液を用いておよそ5mの熱風循環式の竪型炉で400〜500℃にて通過時間を30〜90秒で導体径0.9mmの軟銅線に塗布・焼付を行い、皮膜厚30μmの絶縁電線を作成した。
酸化チタン微粒子(平均一次粒径0.03μm)128gを用いた以外は実施例1と同様にして、微粒子分散絶縁樹脂液を調製し、同様の製造方法で皮膜厚30μmの絶縁電線を作成した。
実施例1の酸化チタン微粒子の代わりに酸化クロム微粒子(CAS No.1308−38−9、平均一次粒径0.1μm)45gを用いて微粒子分散絶縁樹脂液を調製し、実施例1と同様にして皮膜厚30μmの絶縁電線を作成した。
実施例1の酸化チタン微粒子の代わりに銅−クロム−マンガン複合酸化物微粒子(CAS No.68168−94−4、平均一次粒径0.5μm)45gを用いて微粒子分散絶縁樹脂液を調製し、実施例1と同様にして皮膜厚30μmの絶縁電線を作成した。
実施例1の酸化チタン微粒子の代わりにアルミナ微粒子(平均一次粒径0.1μm)64gを用いて微粒子分散絶縁樹脂液を調製し、実施例1と同様にして皮膜厚30μmの絶縁電線を作成した。
実施例1の酸化チタン微粒子の代わりにシリカ微粒子(平均一次粒径0.03μm)128gを用いて微粒子分散絶縁樹脂液を調製し、実施例1と同様にして皮膜厚30μmの絶縁電線を作成した。
下層(導体に接する層)に実施例1と同じ遷移金属酸化物微粒子分散絶縁樹脂液、上層はHI−406を塗布焼付して下層膜厚10μm、上層膜厚20μmからなる絶縁電線を作成した。
下層に実施例3と同じ遷移金属酸化物微粒子分散絶縁樹脂液、中間層に実施例1と同じ遷移金属酸化物微粒子分散絶縁樹脂液、上層にHI−406にポリエチレンワックスを樹脂固形分100質量部に対して5質量部を加え分散させた絶縁樹脂液を塗布焼付して、下層膜厚10μm、中間層膜厚17μm、上層3μmからなる絶縁電線を作成した。
下層にHI−406、上層に実施例1と同じ遷移金属酸化物微粒子分散絶縁樹脂液を塗布焼付して、下層膜厚10μm、上層膜厚20μmからなる絶縁電線を作成した。
各実施例、比較例の電線端末を以下のように剥離し、剥離状態の評価を行った。
5.5kW出力のNd−YAGレーザー光を2ミリ秒間絶縁皮膜に2回照射することでレーザーによる皮膜剥離状態を拡大鏡にて観察した。併せて、酸素雰囲気下での皮膜剥離も行った。酸素雰囲気では3.5kW出力で2ミリ秒間、2回の照射とした。皮膜が完全に消失し導体が見える状態を良好と判定した。皮膜の除去が不完全な場合はその旨を表中に記載した。
表1に示すとおり、比較例1〜2では樹脂分解物が残留するか、ほとんど剥離しなかったのに対し、実施例1〜7ではいずれも良好に皮膜が剥離された。
絶縁電線の皮膜を上記の方法で剥離した部分に対して、Nd−YAGレーザー光を用いて、厚さ0.3mmのスズめっき付き純銅端子を重ねて溶接による接合を行った。Nd−YAGレーザー光(2.8kW出力)を10ミリ秒間絶縁皮膜に照射した。
接合の良否は引っ張り試験機を用いて接合部分の破断強度を測定し、溶接強度とした。30N以上を良好と評価した。
表2に示すとおり、比較例1〜2では溶接強度が30N未満で強度不足であるに対し、実施例1〜7ではいずれも30N以上の良好な溶接強度を示した。
2 回転軸
3 整流子
4 ティース
5 導体接続部
6 レーザー照射装置
7 レーザー光LB
8 整流子セグメント
9 整流子接続片
10 回転機器
11 固定子
Claims (13)
- 導体上に遷移金属酸化物を含有している絶縁塗料を塗布焼付した絶縁皮膜を有することを特徴とする絶縁電線。
- 導体上に2層以上の絶縁塗料を塗布焼付けした絶縁皮膜を有し、前記絶縁皮膜の少なくとも1層に遷移金属酸化物を含有していることを特徴とする多層絶縁電線。
- 前記絶縁皮膜の最内層以外の少なくとも1層が遷移金属酸化物を含有していることを特徴とする請求項2に記載の多層絶縁電線。
- 前記絶縁皮膜の最内層を含む少なくとも1層が遷移金属酸化物を含有している絶縁塗料を塗布焼付けして形成されたことを特徴とする請求項2に記載の多層絶縁電線。
- 前記絶縁皮膜を構成する樹脂成分がポリウレタン、ポリエステル、ポリエステルイミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の絶縁電線または多層絶縁電線。
- 前記絶縁皮膜中に含有される遷移金属酸化物微粒子が、Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni又はCuの酸化物、並びにTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCuから選ばれる2種以上を含有する複合金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜5のいずれか1項に記載の絶縁電線または多層絶縁電線。
- 前記絶縁皮膜がNd−YAGレーザーで剥離可能であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の絶縁電線または多層絶縁電線。
- 前記絶縁皮膜中に分散させた遷移金属酸化物微粒子の平均一次粒子径が1μm以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の絶縁電線または多層絶縁電線。
- 前記絶縁皮膜の少なくとも一部をNd−YAGレーザーを用いて除去した請求項1〜8のいずれか1項に記載の絶縁電線または多層絶縁電線を絶縁電機子に巻付けて構成してなることを特徴とする回転機器。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の絶縁電線または多層絶縁電線を絶縁電機子に巻付けて構成してなる回転機器の製造方法であって、該絶縁電線または多層絶縁電線の末端部分の絶縁皮膜の剥離をNd−YAGレーザーで行うことを特徴とする回転機器の製造方法。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の絶縁電線または多層絶縁電線の導体と端子部材とを電気的に接続する導体の接続方法であって、
前記絶縁電線または多層絶縁電線の所定部分にレーザー光を照射装置によってレーザー光を照射して絶縁皮膜を除去する絶縁被膜除去工程と、
前記絶縁皮膜除去工程の後、前記絶縁皮膜が除去されることで露出した前記導体と前記端子部材とを当接させてそれらの少なくとも一方に前記レーザー光照射装置によってレーザー光を照射してそれらを接合し電気的に接続する導体結線工程と
を有することを特徴とする導体の接続方法。 - 電機子の巻線を構成する導体の一部を、請求項11に記載の導体の接合方法により前記端子部材に接合することを特徴とする回転機器の製造方法。
- 請求項12に記載の回転機器の製造方法において、前記電機子がロータを構成するものであって、前記端子部材が整流子のセグメントから延出した整流子接続片であることを特徴とする回転機器の製造方法。
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