JP4041471B2 - エナメル線及びそれに用いる絶縁塗料 - Google Patents

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Description

本発明は、モータやトランスなどの電気機器に用いるエナメル線及びそれに用いる絶縁塗料に関するものである。
一般的に、エナメル線は、導体の周りに絶縁塗料からなる絶縁皮膜を設けてなる。このエナメル線を使用して電気機器、例えばモータやトランスなどを作製する場合、一般的にはモータのコア(磁芯)のスロットに連続的にエナメル線をコイル状に巻回して形成したり、或いはエナメル線をコイル状に巻いたものをコアのスロットに嵌合、挿入したりする方法が主流であった。
一方、断面積の大きな(太サイズの)エナメル線や、平角導体を有するエナメル線の場合、エナメル線を連続的に巻いて巻き数の多い長尺のコイルを形成するのではなく、巻き数の少ない短尺の小径コイルを複数形成し、これら小径コイルのエナメル線端末を溶接して繋ぎ合わせ、長尺のコイルを形成する方法が提案されている。このように形成したコイルは、小型で、かつ、高密度の磁束が要求される電気機器のコイル、例えば自動車の発電機などのコイルに使用されている。
自動車の発電機などのコイルには、導体の周りにポリエステルイミドの絶縁皮膜を形成し、そのポリエステルイミド絶縁皮膜の周りにポリアミドイミドの絶縁皮膜を設けたダブルコート線や、導体の周りにポリアミドイミドの絶縁皮膜を設けたシングルコート線が主に使用されている。また、一部では、導体の周りにポリイミドの絶縁皮膜を形成し、そのポリイミド絶縁皮膜の周りにポリアミドイミドの絶縁皮膜を設け、耐熱性と機械強度を向上させたダブルコート線なども使用されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平5−130759号公報
ところで、自動車の発電機などのコイルでは、前述した短尺の各小径コイルのエナメル線端末を溶接する場合、TIG溶接やヒュージングといった電気的な溶接方法を用いることが主流である。
TIG溶接やヒュージングを行う際、各コイルの溶接部は、銅を溶解させるために、銅の融点である1084℃以上に加熱される。この熱は溶接部近傍の絶縁皮膜にも伝わるため、絶縁皮膜も急激に加熱されることとなる。
この時、前述した従来のポリエステルイミドとポリアミドイミドの絶縁皮膜とからなるダブルコート線や、ポリアミドイミド皮膜からなるシングルコート線では、溶接に伴う高温により、絶縁皮膜が熱分解してガスが生じたり、絶縁皮膜に吸湿されていた水分や絶縁皮膜の焼き付け後においても皮膜中に残留(残存)していた溶剤成分が急激に気化したりする。その結果、これらの熱分解ガスや気化ガスにより、絶縁皮膜が導体表面から押し上げられ、導体から剥離して浮き上がってしまったり(以下、皮膜浮きと表す)、ブリスタと呼ぶような発泡が生じたりする(以下、ブリスタ発生と表す)ため、電気機器の信頼性が低下するという問題があった。
一方、これらポリエステルイミド樹脂やポリアミドイミド樹脂よりも耐熱性の高いポリイミド樹脂の皮膜と、ポリアミドイミド樹脂の皮膜とからなるダブルコート線では、ポリイミド樹脂が高価なため、高価なエナメル線となってしまうという問題があった。また、導体と絶縁皮膜との密着性が悪いために、皮膜浮きが発生し易いという問題があった。
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、端末溶接時における溶接部近傍の絶縁皮膜の信頼性が高いエナメル線及びそれに用いる絶縁塗料を提供することにある。
上記目的を達成すべく本発明に係るエナメル線は、導体の周りに少なくとも2層の絶縁層で構成される絶縁皮膜を有し、複数のコイルの端末を電気的な溶接方法を用いて銅の融点以上に加熱して溶接して形成される電気機器コイルに使用されるエナメル線において、上記導体直上の最内絶縁層は、100重量部のポリイミド樹脂に対して少なくとも0.6重量部のブチル化メラミン樹脂からなる密着性向上剤が混合されていると共に、300〜400℃での線膨張係数が9.0×10−5/℃以下である混合樹脂からなり、最外絶縁層がポリアミドイミド皮膜で構成され、導体と最内絶縁層との密着強度を85g/mm以上に形成したものである。
ここで、最内絶縁層の層厚と絶縁皮膜全体の層厚との比が0.05以上であることが好ましい。
一方、本発明に係るエナメル線の最内絶縁層に用いる絶縁塗料は、導体の周りに少なくとも2層の絶縁層で構成される絶縁皮膜を有し、複数のコイルの端末を電気的な溶接方法を用いて銅の融点以上に加熱し溶接して形成される電気機器コイルに使用されるエナメル線の絶縁塗料において、絶縁塗料の樹脂分として、100重量部のポリイミド樹脂に対して少なくとも0.6重量部のブチル化メラミン樹脂からなる密着性向上剤を混合してなり、300〜400℃での線膨張係数が9.0×10−5/℃以下である混合樹脂を含み、上記エナメル線の導体との密着強度が85g/mm以上であるものである。
本発明によれば、エナメル線の端末を溶接する際、溶接部近傍の絶縁皮膜において良好な耐熱性、溶接性が得られるという優れた効果を発揮する。
以下、本発明の好適一実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
本発明者らが、エナメル線の端末を溶接する際、溶接部近傍における皮膜浮きや、ブリスタ発生を抑制すべく、鋭意研究した結果、以下のことを見出した。
(1) 絶縁皮膜を構成する材料としては、耐熱性が高く、熱分解しづらいものを用いることが必要である。このような材料としては、ポリイミド(以下、PIと表す)、ポリアミドイミド(以下、PAIと表す)が挙げられる。特に、最も熱負荷の大きな導体直上の最内絶縁層は、最も耐熱性に優れたPI樹脂が最適である。また、最外絶縁層は、耐熱性が高く、かつ、巻線時などの加工を受けた際に傷が生じにくく、耐傷性に優れたPAI樹脂が最適である。
(2) 絶縁皮膜を構成する材料としては、導体に対する密着強度が高いものを用いることが必要である。これは、導体と絶縁皮膜との密着強度が、導体から絶縁皮膜が剥離する力(又は浮き上がる力)よりも高いと、皮膜浮きや、ブリスタ発生を抑制できるためである。
(3) 絶縁皮膜を構成する材料としては、高温時の熱変形が小さい材料、すなわち線膨張係数が小さい材料を用いることが必要である。これは、溶接時に絶縁皮膜が急激な熱を受けた際、熱変形が小さい方が、皮膜浮きや、ブリスタ発生を抑制できるためである。
以上、(1)〜(3)を踏まえ、本発明者らが、更に検討を続けた結果、最外層となる絶縁皮膜には、巻線時などの加工を受けた際に傷が生じにくく、耐傷性に優れたPAIを用い、最内層となる絶縁皮膜には、導体に対する密着強度を高く調整したPIを用いることで、皮膜浮きや、ブリスタ発生を抑制することが可能になるということを見出した。
本発明の好適一実施の形態に係るエナメル線の横断面図を図1に示す。
図1に示すように、本実施の形態に係るエナメル線10は、導体11の周りに少なくとも2層(図1中では2層)の絶縁層13,14で構成される絶縁皮膜を有するものである。より具体的には、絶縁皮膜は、導体11の直上に設けられ、導体11に対する密着強度を85g/mm以上に調整したPI樹脂の皮膜で構成される内層(最内絶縁層)13と、PAI樹脂の皮膜で構成される外層(最外絶縁層)14とで構成される。内層13及び外層14は一体に(又はほぼ一体に)形成される。また、内層13と外層14との密着性(一体性)を更に向上すべく、内層13と外層14との間に密着性向上層(図示せず)を設けてもよい。
本実施の形態に係るエナメル線10においては、導体11と絶縁皮膜(内層13)との密着強度がより強い(高い)方が好ましい。これは、導体11と内層13との密着強度がより高い方が、ブリスタ発生を抑制する効果が大きくなるからである。しかし、導体11の周りに、PI樹脂単体からなる絶縁皮膜を形成した場合、40g/mm以上の密着強度を確保することは困難である。そこで、導体11と内層13との密着強度を40g/mm以上に向上させるべく、導体11直上の内層13を構成するPI樹脂の絶縁塗料中に、密着性向上剤と呼ばれる添加剤が添加、混合される。導体11と内層13との密着強度を40g/mm以上としたのは、密着強度が40g/mm未満だと、絶縁皮膜の皮膜浮きや、ブリスタ発生を抑制する効果が小さくなるためである。
密着性向上剤としては、導体11と内層13との密着強度を向上させる作用を奏するものであるブチル化メラミン樹脂が挙げられる
絶縁塗料のPI樹脂分に対する密着性向上剤の添加割合は、密着性向上効果が十分に得られ、かつ、絶縁塗料の安定性、内層13の線膨張係数、エナメル線10の可とう性などの特性に悪影響を及ぼさない範囲とし、密着性向上剤としてブチル化メラミン樹脂を用いる場合、PI樹脂分100重量部に対して、0.6重量部以上添加すればよい。
また、内層13の300℃〜400℃における線膨張係数は9.0×10-5 /℃以下とされる。300℃〜400℃における線膨張係数を9.0×10-5 /℃以下としたのは、線膨張係数が9.0×10-5 /℃より大きいと、絶縁皮膜の皮膜浮きや、ブリスタ発生を抑制する効果が小さくなるためである。
さらに、内層13の層厚と絶縁皮膜全体(内層13+外層14)の層厚との比は、特に規定するものではないが、0.05以上、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.15以上とされる。この場合、内層13の層厚と絶縁皮膜全体の層厚との比が0.05より小さくなると、例えば、内層13の層厚が2μmより薄くなると、皮膜浮きや、ブリスタ発生を抑制する効果が小さくなるためである。
本実施の形態で言う内層13を構成するPI樹脂と密着性向上剤との混合樹脂は、導体11と絶縁皮膜(内層13)との密着強度が40g/mm以上の絶縁フィルムを作製可能なものである。また、混合樹脂は、300℃〜400℃における線膨張係数が9.0×10-5 /℃以下の絶縁フィルムを作製可能であることがより好ましい。さらに、混合樹脂は、層厚が約2μmの極薄の絶縁フィルムを作製可能であるものがより好ましい。この混合樹脂の絶縁塗料を導体11に塗布、焼き付けしてなる絶縁皮膜が内層13である。
本実施の形態で言うPI樹脂の絶縁塗料は、通常塗料の状態ではポリアミド酸溶液になっており、本溶液を導体に塗布した後、ダイスで絞って塗布厚を均一にし、その後、焼付炉にて焼成することによりポリアミド酸が閉環してPI樹脂絶縁皮膜となる。PI樹脂絶縁塗料としては、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを極性溶媒中で反応させて得られた塗料が最も一般的であり、PIの化学構造については特に規定するものではない。
芳香族テトラカルボン酸二無水物として代表的なものは、
ピロメリット酸二無水物、
ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等がある。
芳香族ジアミンとして代表的なものは、
4,4'−ジアミノジフェニルメタン、
4,4'−ジアミノジフェニルエーテル等がある。
市販のPI樹脂絶縁塗料としては、デュポン社製のPyre ML、東レ社製のトレニース#3000等が挙げられる。
一方、本実施の形態で言うPAI樹脂の絶縁塗料としては、トリメリット酸無水物と4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネートとを極性溶媒中で加熱反応させて得られた塗料が最も一般的であり、PAIの化学構造については特に規定するものではない。
市販のPAI樹脂絶縁塗料としては、日立化成工業社製のHI-404やHI-406等が挙げられる。
導体11の構成材としては、エナメル線導体として慣用的に用いられているものであれば全て適用可能であり、特に限定するものではないが、Cu又はCu合金が好ましい。また、導体11の断面形状についても、特に限定するものではなく、円形導体、平角導体などのようにいずれであってもよい。さらに、導体11の断面積(サイズ)についても、特に限定するものではなく、エナメル線導体として慣用的に用いられているものであれば全て適用可能である。
次に、本実施の形態の作用を説明する。
本実施の形態に係るエナメル線10は、絶縁皮膜として、PI樹脂で構成され、導体11に対する密着強度を40g/mm以上に調整した内層13と、PAI皮膜で構成される外層14とを有している。また、内層13の300℃〜400℃における線膨張係数は9.0×10-5 /℃以下に調整されている。これによって、絶縁皮膜は、導体11に対する密着強度が高く、耐熱性が高く、熱分解しづらいものとなり、かつ、高温時の熱変形が小さくなる。その結果、エナメル線10の端末を溶接して繋ぎ合わせる際、溶接に伴う高温により絶縁皮膜が熱分解してガスが生じたり、絶縁皮膜に吸湿されていた水分や絶縁皮膜の焼き付け後においても皮膜中に残留(残存)していた溶剤成分が急激に気化したりしても、溶接部近傍の絶縁皮膜における皮膜浮きや、ブリスタ発生を抑制することができる。
よって、本実施の形態に係るエナメル線10を用いて巻き数の少ない短尺の小径コイルを複数形成し、これら小径コイルのエナメル線端末を溶接して繋ぎ合わせてなる長尺のコイルで構成される電気機器においては、高い信頼性が得られる。
以上、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、他にも種々のものが想定されることは言うまでもない。
次に、本発明について、実施例に基づいて説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
ポリイミドa(トレニース#3000,東レ社製;以下、PIaと表す)塗料の樹脂分100重量部に対して密着性向上剤A(ブチル化メラミン樹脂)を1重量部添加し、絶縁塗料を得た。
この絶縁塗料を、導体寸法が1.5×2.5mm、R部面取り半径が0.6mmの平角形状の銅導体上に塗布した後、熱風循環式堅型焼付炉により焼き付けを行い、皮膜厚さが10μmの内層絶縁皮膜を設けた。この内層絶縁皮膜の周りに、ポリアミドイミド(HI-404,日立化成工業社製;以下、PAIと表す)塗料単体を塗布した後、焼き付けを行い、皮膜厚さが30μmの外層絶縁皮膜を設けた。これによって、絶縁皮膜全体の厚さが40μmの2層耐熱エナメル線を作製した。
(実施例2)
PIa塗料の代わりにポリイミドb(Pyre ML,デュポン社製;以下、PIbと表す)塗料を用いる以外は、実施例1と同様にして、2層耐熱エナメル線を作製した。
(参考例3)
酸成分としてピロメリット酸二無水物、ジアミン成分として4,4'−ジアミノジフェニルメタン及び4,4'−ジアミノジフェニルエーテルを、モル比で2対1対1となるように溶媒(2-メチルピロリドン)中に溶解した。この溶液を攪拌し、反応させることによりポリイミドc(以下、PIcと表す)塗料を作製した。
PIa塗料の代わりにPIc塗料を用いる以外は、実施例1と同様にして、2層耐熱エナメル線を作製した。
(実施例4)
内層絶縁皮膜の厚さが5μm、外層絶縁皮膜の厚さが35μmである以外は、実施例1と同様にして、2層耐熱エナメル線を作製した。
(実施例5)
内層絶縁皮膜の厚さが2μm、外層絶縁皮膜の厚さが38μmである以外は、実施例1と同様にして、2層耐熱エナメル線を作製した。
参考例6)
PIa塗料の樹脂分100重量部に対する密着性向上剤Aの配合割合を0.5重量部とする以外は、実施例1と同様にして、2層耐熱エナメル線を作製した。
参考例7)
PIa塗料の樹脂分100重量部に対する密着性向上剤Aの配合割合を0.2重量部とする以外は、実施例1と同様にして、2層耐熱エナメル線を作製した。
参考例8)
密着性向上剤Aの代わりに密着性向上剤B(メルカプトベンズイミダゾール)を用いる以外は、実施例1と同様にして、2層耐熱エナメル線を作製した。
(比較例1)
内層絶縁皮膜を構成する絶縁塗料中に密着性向上剤Aを全く添加しない、つまり内層絶縁皮膜の樹脂分をPIa単体で構成する以外は、実施例1と同様にして、2層耐熱エナメル線を作製した。
(比較例2)
内層絶縁皮膜を構成する絶縁塗料として、実施例1のPAI塗料の樹脂分100重量部に対して密着性向上剤Aを1重量部添加した塗料を用いる以外は、実施例1と同様にして、2層耐熱エナメル線を作製した。
実施例1、2、4、5、参考例3、6〜8及び比較例1,2各エナメル線について、導体と絶縁皮膜(内層)との密着強度を求めた。
導体と絶縁皮膜との密着強度測定は以下の方法で行った。先ず、各エナメル線を製造した後、各エナメル線から約5cmの長さの試料片をそれぞれ切り取った。その後、各試料片の上面又は下面(幅が広い方の面のいずれか一方)の絶縁皮膜に、カッターなどを用いて、試料片の長手方向に延びる切り込みを1mm間隔で2本形成した。この切り込み間における絶縁皮膜の長手方向端部を、ピンセットなどを用いて導体から剥離させ、つかみ代を形成した。その後、各試料片を治具に固定すると共に、つかみ代をチャックで挟み、テンシロン万能試験機を用いて導体から絶縁皮膜を更に引き剥がした。この時、絶縁皮膜を1mm長さで剥がす時の剥離強度(密着強度)を測定した。
また、実施例1、2、4、5、参考例3、6〜8及び比較例1,2の各エナメル線について、内層の300〜400℃における線膨張係数を求めた。
具体的には、先ず、ガラス板上にそれぞれの内層を構成する絶縁塗料をキャスト(塗布)した後、恒温槽を用いて、80℃×20分、200℃×20分、300℃×10分という熱履歴で加熱して各絶縁塗料を硬化させ、厚さ30μmの絶縁フィルムを作製した。各絶縁フィルムを、幅2mm、チャック間長さ20mmとなるよう治具に取り付けた後、熱機械分析測定装置を用いて、引張荷重48mN、昇温速度10℃/分という条件で絶縁フィルムの伸びを測定し、300℃から400℃における平均線膨張係数を測定した。
さらに、実施例1、2、4、5、参考例3、6〜8及び比較例1,2の各エナメル線についてTIG溶接後の外観評価を行った。
TIG溶接後の外観評価は以下の方法で行った。先ず、各エナメル線を製造した後、評価時の環境によるばらつきを考慮して、各エナメル線を40℃−95%RHの恒温恒湿槽内に30分間放置した。その後、恒温恒湿槽から各エナメル線を取り出して10分以内に、各エナメル線から約5cmの長さの試料片をそれぞれ切り取り、各試料片の一方の端末から4.5mmの長さに亘って絶縁皮膜を剥離した。各試料片の一方の端末の端部から2.5mmの所を、断面寸法が1.5mm×2.0mmのクロム銅製アース棒で挟み込み、また、各試料片の一方の端末の端部から1.25mmの所に、溶接トーチの先端位置を合わせ、TIG溶接機により通電を行った。通電条件は、通電電流40A、通電時間0.5秒とした。
外観の評価は、通電後の各試料片における通電部近傍の表面を目視で観察し、皮膜浮きやブリスタ発生がほとんど見られないものを良、皮膜浮きの試料片長手方向の長さが4mm未満で、発泡(ブリスタ)の径が1mm未満、かつ、その数が5個以下と少数のものをほぼ良、これ以上の皮膜浮きやブリスタ発生が見られるものを不良とした。
導体と絶縁皮膜との密着強度、内層の線膨張係数の測定結果、及びTIG溶接後の外観評価結果を表1に示す。
Figure 0004041471
表1に示すように、実施例1、2、4、5及び参考例3、6〜8の各エナメル線は、絶縁皮膜の内層を、PI樹脂と密着性向上剤とで構成している。
これによって、実施例1、2、4及び5の各エナメル線の、導体と絶縁皮膜との密着強度は110〜124g/mmとなり、いずれも規定範囲(85g/mm以上)を満足していた。また、実施例1、2、4、5及び参考例6〜8の各エナメル線における内層の、300〜400℃での線膨張係数は5.9×10−5/℃〜9.0×10−5/℃となり、いずれも規定範囲(9.0×10−5/℃以下)を満足していた。特に、実施例1,4,5及び参考例6〜8の各エナメル線と比較例1のエナメル線とを比較することで、密着性向上剤の添加により、密着強度が高くなり、かつ、線膨張係数が更に小さくなることが確認できた。
また、実施例1、2、4、5及び参考例3の各エナメル線は、導体と絶縁皮膜との密着強度が85g/mm以上と非常に良好であった。さらに、実施例1,2,4,5及び参考例6〜8の各エナメル線は、300〜400℃での線膨張係数が9.0×10−5/℃以下と非常に良好であった。よって、実施例1、2、4及び5の各エナメル線が、密着強度及び線膨張係数が共に非常に良好であり、より好ましい。このことから、導体と絶縁皮膜との密着強度は85g/mm以上がより好ましい。
これらの結果、実施例1、2、4及び5の各エナメル線は、その溶接部近傍における密着強度が十分に高く、耐熱性が十分で、熱分解しづらいものとなり、かつ、高温時に熱変形しにくいため、TIG溶接後の外観は良好又はほぼ良好であった。
これに対して、密着性向上剤を混合させることなく、PIa単体で絶縁皮膜の内層を構成した比較例1のエナメル線は、300〜400℃における線膨張係数9.1×10-5/℃と規定範囲を満足しておらず、また、密着強度35g/mmと規定範囲未満であった。その結果、比較例1のエナメル線の絶縁皮膜は、耐熱性、密着強度が不足しているため、溶接時に皮膜浮きや、ブリスタが発生してしまい、TIG溶接後の外観は不良であった。
また、内層のベース樹脂をPI樹脂ではなく、PAI樹脂に密着性向上剤を添加した比較例2のエナメル線は、密着強度は58g/mmと規定範囲を満足していたものの、300〜400℃における線膨張係数が7.2×10-4/℃と規定範囲よりも大きかった。その結果、比較例2のエナメル線の絶縁皮膜は、密着強度は十分であるものの、PI樹脂よりも耐熱性の劣るPAI樹脂を用いているため、耐熱性が不足していると共に、高温時の熱変形が大きく、溶接時に皮膜浮きや、ブリスタが発生してしまい、TIG溶接後の外観は不良であった。
本発明の好適一実施の形態に係るエナメル線の横断面図である。
符号の説明
10 エナメル線
11 導体
13 内層(最内絶縁層)
14 外層(最外絶縁層)

Claims (3)

  1. 導体の周りに少なくとも2層の絶縁層で構成される絶縁皮膜を有し、複数のコイルの端末を電気的な溶接方法を用いて銅の融点以上に加熱して溶接して形成される電気機器コイルに使用されるエナメル線において、上記導体直上の最内絶縁層は、100重量部のポリイミド樹脂に対して少なくとも0.6重量部のブチル化メラミン樹脂からなる密着性向上剤が混合されていると共に、300〜400℃での線膨張係数が9.0×10−5/℃以下である混合樹脂からなり、最外絶縁層がポリアミドイミド皮膜で構成され、導体と最内絶縁層との密着強度を85g/mm以上に形成したことを特徴とするエナメル線。
  2. 上記最内絶縁層の層厚と上記絶縁皮膜全体の層厚との比が0.05以上である請求項1記載のエナメル線。
  3. 導体の周りに少なくとも2層の絶縁層で構成される絶縁皮膜を有し、複数のコイルの端末を電気的な溶接方法を用いて銅の融点以上に加熱し溶接して形成される電気機器コイルに使用されるエナメル線の最内絶縁層に用いる絶縁塗料において、絶縁塗料の樹脂分として、100重量部のポリイミド樹脂に対して少なくとも0.6重量部のブチル化メラミン樹脂からなる密着性向上剤を混合してなり、300〜400℃での線膨張係数が9.0×10−5/℃以下である混合樹脂を含み、上記導体との密着強度が85g/mm以上であることを特徴とするエナメル線の最内絶縁層に用いる絶縁塗料。
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