JP2871820B2 - 高耐熱電気絶縁電線の端末剥離方法 - Google Patents

高耐熱電気絶縁電線の端末剥離方法

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JP2871820B2 JP2215473A JP21547390A JP2871820B2 JP 2871820 B2 JP2871820 B2 JP 2871820B2 JP 2215473 A JP2215473 A JP 2215473A JP 21547390 A JP21547390 A JP 21547390A JP 2871820 B2 JP2871820 B2 JP 2871820B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、高耐熱電気絶縁電線の端末剥離方法に関す
る。
[従来の技術およびその課題] 近年、自動車部品や電子・電気機器は、著しく小型化
・高性能化されている。これに伴い、これらの部品や機
器に用いられるモーター・コイル等の電気絶縁電線に
は、細径であることおよび高い耐熱性を有することが要
求される。このため、電気絶縁電線の電気絶縁被覆物の
耐熱性の向上が望まれている。しかし、ポリイミド樹
脂、ポリアミドイミド樹脂等の高耐熱性の材料は価格が
高いので、製品として得られるコイルの価格が必然的に
高くなる。このため、ポリイミド樹脂やポリアミドイミ
ド樹脂等を単独被覆してなる絶縁電線と同等の耐熱性お
よび機械的特性を有し、しかも安価である絶縁電線の開
発が進められた。その結果、上記の要求を満足する絶縁
電線として導体上に耐熱クラス(耐熱指数)がIEC Pub
172による耐熱クラスが180℃以上であるポリエステル
イミド樹脂等の材料からなるエナメル被覆層とポリイミ
ド系樹脂からなるエナメル被覆層を上層/下層比が1/5
〜1/1で順次設けてなる複合絶縁構造の絶縁電線が開発
された。
一方、電気絶縁電線は、他の電気機器の端子等に接続
するために、絶縁電線の端末部の電気絶縁被覆物を剥離
して半田つけする端末処理がなされるが、従来の絶縁電
線の電気絶縁被覆物の剥離方法としては、電気絶縁被
覆物の上から直接半田つけを行い電気絶縁被覆物を焼失
させる方法、薬品を用いて電気絶縁被覆物を溶解する
方法、電気絶縁被覆物を機械的に削りとる方法等が一
般に用いられる。
しかしながら、前記〜の方法を、上述の如き複合
絶縁構造の高耐熱性電気絶縁電線に適用するとそれぞれ
以下のような問題があった。
の方法では、従来コイルに使用される絶縁電線被覆
材料の耐熱温度は150〜170℃であり、その場合の半田つ
け温度が400〜460℃であったが、高耐熱性化に伴い被覆
材料の耐熱温度が180℃以上に上がることにより被覆材
料が焼失し難くくなり400〜460℃での半田つけ性が悪化
する。
の方法では、高耐熱性化に伴い被覆材料の耐薬品性
が向上するために、非常に長い剥離時間を要する。ある
いは、従来使用している強酸・強アルカリ溶液をさらに
高温に加熱して用いなければならないなど作業者に危険
が伴うと共に被覆を剥離した後に充分な薬品除去処理を
施さないと腐食などの不具合の原因となる。
の方法では、直径100μm以下の極細径の電気絶縁
電線の場合に、機械的に削りとる際に導体への損傷が無
視できず、接合部の信頼性を著しく低下させる。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、高い
耐熱特性を保持した複合絶縁構造を持つ電気絶縁電線の
絶縁被覆物を充分に剥離でき、しかも電気絶縁被覆物が
剥離された導体が高い信頼性で電気的接合できる高耐熱
電気絶縁電線の端末剥離方法を提供することを目的とす
る。
[課題を解決するための手段] 本発明者らは、下層がポリエステルイミド樹脂、上層
がポリイミド樹脂である如き複合絶縁構造を持つ高耐熱
電気絶縁電線の電気絶縁被覆物が、特定のレーザを用い
ることによって容易に剥離でき、よって高い信頼性で半
田つけ処理できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、導体上にIEC Pub 172による耐
熱クラスが180℃以上の材料からなるエナメル被覆層お
よびポリイミド系樹脂からなるエナメル被覆層を順次設
けて複合絶縁構造となした高耐熱電気絶縁電線の端末部
分にエキシマレーザを照射することにより前記端末部分
の被覆層を剥離することを特徴とする高耐熱電気絶縁電
線の端末剥離方法である。
本発明で絶縁被覆層の剥離に使用するレーザとして特
にエキシマレーザを用いた理由は、炭酸ガスレーザで
は、高耐熱性の被覆物を充分に剥離することができず、
半田つけ性を低下させ、YAG(イットリウム−アルミニ
ウム−ガーネット)レーザでは、被覆物の剥離の際に導
体に大きな損傷を与えるのに対して、エキシマレーザが
導体に損傷をほとんど与えず、かつ、効率よく絶縁被覆
層を剥離することができるためである。
本発明の高耐熱電気絶縁電線の上層の被覆材料には、
ポリイミド系樹脂を用いる。これは、ポリイミド系樹脂
以外の樹脂では所望の高耐熱性が発揮されないからであ
る。ポリイミド系樹脂の中で、テトラカルボン酸と、多
価イソシアネートおよび/または多価アミンを合成して
なるポリイミド樹脂が好ましい。このような材料の市販
製品としては、Pyre−ML(デュポン社製、商品名)やTV
E−5051(東芝ケミカル社製、商品名)等が挙げられ
る。
また、下層の被覆材料には、IEC Pub 172による耐熱
クラスが180℃以上の材料を用いる。これは、ポリイミ
ド樹脂との複合絶縁構造にて高い耐熱特性を付与でき、
しかもエキシマレーザによって効率よく剥離することが
できるからである。このような材料として、ポリアミド
イミド、ポリヒダントイン、ポリエステルイミド、耐熱
ポリエステル等の樹脂が挙げられる。なお、これらの材
料の一般的合成法を以下に示す。
ポリアミドイミド樹脂は、トリカルボン酸無水物と、
ジイソシアネートあるいはジアミンとを反応させること
により合成される。市販製品としては、HI−405(日立
化成社製、商品名)等が挙げられる。
ポリヒダントイン樹脂は、ジグリシン誘導体、ジイソ
シアネート、トリカルボン酸無水物、および多価アルコ
ールを反応させることにより合成される。市販製品とし
ては、PH−20(バイエル社製、商品名)等が挙げられ
る。
ポリエステルイミド樹脂は、トリカルボン酸無水物、
ジイソシアネート、および多価アルコールを反応させる
ことにより合成される。市販製品としては、Isomid RL
(日触スケネクタディ社製、商品名)、Terebec850(大
日精化社製、商品名)等が挙げられる。
耐熱性ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸と多価アル
コールと多価アルコールの一部量としてトリスヒドロキ
シエチルイソシアヌレートと反応させることにより合成
される。市販製品としては、Isonel 200(スケネクタ
ディーケミカル社製、商品名)等が挙げられる。
本発明でいう高耐熱電気絶縁電線の被覆物の下層の厚
みに対する上層の厚みの比(以下、上層/下層と省略す
る)は、1/5〜2/1程度である。
[作用] 本発明の高耐熱電気絶縁電線の端末剥離方法では、導
体上にIEC Pub 172による耐熱クラスが180℃以上の樹
脂層とポリイミド系樹脂層を順次設けた複合構造の被覆
物を有する高耐熱電気絶縁電線の端末部分をエキシマレ
ーザを用いて剥離する。
エキシマレーザによれば、導体に損傷を与えることな
く短時間で被覆物を軟化させ、充分に剥離することがで
きる。端末部分の導体上には、ほぼ完全に被覆物が剥離
されているので、露出された導体を高い信頼性で半田接
合することができる。
[実施例] 以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
実施例1 まず、ジフェニルメタンジイソシアネート1モルと、
トリメリット酸無水物1モルとを反応させることにより
ポリアミドイミド樹脂塗料を調製した。次いで、得られ
たポリアミドイミド樹脂塗料を直径0.1mmの導体上に塗
布焼付した。その後、この導体上にポリイミド樹脂塗料
としてPyre−ML(デュポン社製、商品名)を上層/下層
=3/7となるように塗布焼付して実施例1の高耐熱電気
絶縁電線(以下、絶縁電線と省略する)を得た。なお、
被覆層の全体の厚みは7μmであった。
実施例2 直径0.1mmの導体上にポリヒダントイン樹脂塗料であ
るPH−20(バイエル社製、商品名)を塗布焼付した。そ
の後、この導体上にジアミノジフェニルメタン1モル
と、ピロメリット酸2無水物0.5モルと、ベンゾフェノ
ンテトラカルボン酸2無水物0.5モルとを用いて合成さ
れたポリイミド樹脂塗料を上層/下層=3/7となるよう
に塗布焼付して実施例2の絶縁電線を得た。なお、被覆
層の全体の厚みは7μmであった。
実施例3,4 下層の形成にポリアミドイミド樹脂塗料の代りに下記
第1表に示す樹脂塗料を用いた他は、実施例1と同様に
して実施例3,4の絶縁電線を得た。なお、下層に用いた
樹脂塗料は、実施例3では、ポリエステルイミド樹脂塗
料としてIsomid RL(日触スケネクタディ社製、商品
名)を用い、実施例4では、耐熱性ポリエステル樹脂塗
料としてIsonel 200(スケネクタディーケミカル社
製、商品名)を用いた。
しかして作製した実施例1〜4の高耐熱性絶縁電線の
端末部分にそれぞれエキシマレーザ、炭酸ガスレーザ、
YAGレーザを照射して端末部分の絶縁被覆物の剥離処理
を行った。このとき、エキシマレーザの照射は、周波数
が150Hz、ショット数が150(表裏両側から照射。以下同
じ)、照射エネルギーが0.2J/cm2、炭酸ガスレーザの照
射は、周波数が10Hz、ショット数が50、照射エネルギー
が4ジュール(15J/cm2)、YAGレーザの照射は、周波数
1kHz、ショット数が100、照射エネルギーが1.4Wの条件
でそれぞれ行った。剥離後の絶縁電線の端末部分の被覆
物の剥離状態を調べた。剥離状態は、目視により判断
し、完全剥離の場合を○、剥離せずの場合を×とした。
次に、端末の絶縁物層の剥離処理により絶縁電線から
露出された導体の半田つけ性を調べた。半田つけ性は、
460℃の溶融半田浴中に導体を数秒間浸漬したときの半
田の濡れ状態を確認することにより判断した。このと
き、半田のりが良好の場合を○、半田のり不良の場合を
×とした。
また、実施例1〜4の絶縁電線につき、耐圧残率、軟
化温度を測定した。耐圧残率は、JIS C 3003の2個
より法にて作成したサンプル片を常態と250℃7日間放
置後に破壊電圧を測定し、その残率を算出した。軟化温
度はJIS C 3003により測定した。
得られたそれぞれの結果を被覆層の構成とともに第1
表に示す。
第1表から明らかなように、エキシマレーザを用いた
場合は、高耐熱性被覆物剥離性および半田つけ性が良好
であった。これに対して、エキシマレーザ以外のレーザ
(炭酸ガスレーザ、YAGレーザ)を用いた場合は、高耐
熱性被覆物剥離性および半田つけ性が悪かった。
[発明の効果] 以上説明した如く、本発明の高耐熱電気絶縁電線の端
末剥離方法は、高い耐熱特性を保持した電気絶縁電線の
絶縁被覆物を充分に剥離でき、しかも電気絶縁被覆物が
剥離された導体が高い信頼性で電気的接合できる。
フロントページの続き (72)発明者 夏目 喜孝 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 日本 電装株式会社内 (72)発明者 時森 好孝 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 日本 電装株式会社内 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B21F 21/00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】導体上にIEC Pub 172による耐熱クラスが
    180℃以上の材料からなるエナメル被覆層およびポリイ
    ミド系樹脂からなるエナメル被覆層を順次設けてなる高
    耐熱電気絶縁電線の端末部分にエキシマレーザを照射す
    ることにより前記端末部分の被覆層を剥離することを特
    徴とする高耐熱電気絶縁電線の端末剥離方法。
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