<光学フィルム>
本発明の光学フィルムは、中心部における粒子状物質の濃度が最も低く、かつ該濃度が表面部に向かって連続的に変化していることを特徴とする。
つまり、マット剤等の粒子状物質の濃度が、光学フィルムの中心部では最も低く、一般的には、そこから表面部に向かって連続的に濃度が低くなることを特徴とする。
本発明においては、積層によらず、新規な濾過装置を導入することにより、一層でありながらマット剤等の粒子状物質の濃度を調整することができたことから、積層界面での散乱を減ずることができる。
こうすることによって、取り扱い性等に必要とされるマット剤の効果を維持しながら、光学フィルム内部のヘイズを低減することができ、その結果、液晶表示装置での正面コントラストの劣化を抑制することができた。
本発明において中心部とは、膜厚方向、幅手方向のいずれもが中心部に該当することをいう。
ここで膜厚方向、幅手方向のいずれもが中心部におけるとは、例えば40μmの膜厚、1500mmの幅の光学フィルムであれば、フィルム表面から20μmが厚み方向の中心であり、フィルム端部から750mmが幅手方向の中心である。
中心部とはそこから膜厚40μmの±5%の範囲、つまり20μmを中心とすれば20±2μmの範囲をいい、さらに幅方向の中心部とは、幅1500mmの±5%の範囲、つまり750±75.0mmをいう。
表面部とは、光学フィルムの表面から5%の膜厚の範囲、例えば40μmの膜厚であれば、表面から2μmの範囲をいう。
本発明においては、中心部における粒子状物質の濃度が0であることが最も好ましく、粒子状物質が均一に光学フィルムに分布したとしたときの濃度(以下、平均濃度という)よりも、低ければ効果をみることができる。好ましくは、平均濃度よりも20%以上低い濃度の場合である。
<粒子状物質>
本発明では、フィルムの滑り性を付与するためにマット剤等の粒子状物質を添加する。
本発明で用いられる粒子状物質としては、得られるフィルムの透明性を損なうことがなく、溶融時の耐熱性があれば無機化合物または有機化合物どちらでもよく、例えば、タルク、マイカ、ゼオライト、ケイソウ土、焼成珪成土、カオリン、セリサイト、ベントナイト、スメクタイト、クレー、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、ガラスフレーク、ミルドファイバー、ワラストナイト、窒化ホウ素、炭化ホウ素、ホウ化チタン、炭酸マグネシウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、アルミノ珪酸マグネシウム、アルミナ、シリカ、酸化亜鉛、2酸化チタン、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭化ケイ素、炭化アルミニウム、炭化チタン、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化チタン、ホワイトカーボンなどが挙げられる。
これらの中でも、セルロースエステルと屈折率が近いので透明性(ヘイズ)に優れる2酸化珪素が特に好ましく用いられる。2酸化珪素の具体例としては、アエロジル200V、アエロジルR972V、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)、シーホスターKEP−10、シーホスターKEP−30、シーホスターKEP−50、シーホスターKE−P100(以上、株式会社日本触媒製)、サイロホービック100(富士シリシア製)、ニップシールE220A(日本シリカ工業製)、アドマファインSO(アドマテックス製)等の商品名を有する市販品などが好ましく使用できる。
粒子の形状としては、不定形、針状、扁平、球状等特に制限なく使用できるが、特に球状の粒子を用いると得られるフィルムの透明性が良好にできるので好ましい。粒子の大きさは、可視光の波長に近いと光が散乱し、透明性が悪くなるので、可視光の波長より小さいことが好ましく、さらに可視光の波長の1/2以下であることが好ましい。
粒子の大きさは、0.05μmから3.0μmの範囲であることが好ましい。
これらの粒子状物質は、単独でも二種以上併用しても使用できる。粒径や形状(例えば針状と球状など)の異なる粒子を併用することで高度に透明性と滑り性を両立させることもできる。これらの粒子状物質は光学フィルム全体の0.01〜5質量%含有させることができる。
なお、粒子の大きさとは、粒子が1次粒子の凝集体の場合は凝集体の大きさを意味する。また、粒子が球状でない場合は、その投影面積に相当する円の直径を意味する。
<濾過装置および濾過方法>
本発明の光学フィルムは、溶液流延製膜方法または溶融流延製膜方法のいずれでも製造することができるが、本発明の効果が顕著に得られる溶融流延製膜方法であることが好ましい。この場合、濾過の対象となる樹脂組成物である流体は、熱可塑性樹脂を主たる成分とするものである。
まず、本発明の濾過装置の原理について説明する。図1は、本発明の濾過装置の好ましい例の一つである。
本発明の濾過装置は、基本構成としてフィルターハウジング、フィルターツリーおよびフィルターとから構成される。
濾過有効径の小さなフィルター10が3本並列に、濾過有効径の大きなフィルター20が2本それぞれ並列に、フィルターツリー30に配置されている。フィルターツリー30は、フィルターハウジング40に固定されている。
流体は樹脂導入口50から導入され、濾過後の流体は樹脂流体排出口60から排出され、そのまま流延ダイに導入され流延製膜される。
流体である濾過前の樹脂が、樹脂導入口50からフィルターハウジング40内に導入され、並列に配置されているフィルター10とフィルター20で濾過される。濾過された樹脂は、樹脂排出口60から層流として排出される。
その際、フィルター10で濾過された樹脂は、流体の中心部に位置し、フィルター20で濾過された樹脂は、流体の外部に位置する。フィルター10で濾過された樹脂には、粒子状物質が少なく、フィルター20で濾過された樹脂には粒子状物質が多く含まれることになる。
このように濾過された樹脂をそのままダイスから流延することによって、本発明の光学フィルムとすることができる。
一般には、外部の流速は、中心部の流速よりも遅くなり熱履歴を多く受けることになるが、本濾過装置を使用した場合には、濾過有効径の異なるフィルターが並列に存在していることから、有効径の大きなフィルターの流速が相対的に早くなり、外部の流速低下を抑えることができることとなり、結果中心部と外部との熱履歴の差も小さくすることができる。
ここで、濾過有効径とは、フィルターで遮断することができる粒子や異物の大きさである。粒子や異物は真球とは限らず、棒状や楕円、複雑な形をしているものも含まれる。
本発明に使用しているフィルターカートリッジは、熱可塑性繊維からなりその繊維交点の少なくとも一部が接着されている帯状の長繊維不織布(以下、帯状長繊維不織布という)を円筒形に綾状に巻き付けてなる第一濾過層と、初期95%捕集粒径が第一濾過層の初期80%捕集粒径の0.05〜0.9倍である第二濾過層の少なくとも2層からなる。第二濾過層は第一濾過層よりも下流側(より濾過液に近い側)に位置する。
図1は円筒の外側から内側に流体を流す場合についての例であり、第一濾過層1は第二濾過層2の外周側に位置する。第二濾過層の耐圧強度が弱い場合には、強度保持のための有孔コアを設けてもよいし、第三濾過層を設けた3層構造あるいはそれ以上の複層構造にしてもむろんかまわない。
3層以上の構造にする場合、活性炭層など粒子捕集以外を目的とする層を設けてもよいし、あるいは第三濾過層の初期95%捕集粒径を第二濾過層の初期95%捕集粒径の0.05〜0.9倍としてさらなる濾過ライフの延長を図っても良い。
ここでまず、初期95%捕集粒径について説明する。あるフィルターの初期95%捕集粒径とは、その粒径における粒子捕集効率がちょうど95%となる粒径である。その求め方には種々の方法があるが、ASTM F795−88の方法が信頼性がある。
その概要は、循環式濾過性能試験機等にフィルターを取り付け、ポンプで通水循環し、フィルターにACファインテストダストなどのケーキを混濁させた液(濾過前液)を通過させて濾過液を得て、濾過前液と濾過液を適当な倍率で希釈した後にそれぞれの液に含まれる粒子の数を光遮断式粒子検出器で計測して各粒径における初期捕集効率を算出するというものである。
本明細書中では、その値を内挿して捕集効率が95%を示す粒径を初期95%捕集粒径と定義している。初期捕集効率は多くの場合、粒径に対して単調に増加するため、その場合は、初期95%捕集粒径は各フィルターで一意的に求まる。
まれに初期捕集効率曲線が単調増加にならず、粒子捕集効率がちょうど95%となる粒径が2つ以上存在する場合があるが、そのときはその中の最も小さい粒径をそのフィルターの95%捕集粒径とする。
なお、本発明のフィルターカートリッジは多層からなる構造であるから、フィルターカートリッジの形状を保ったままでそれぞれの層ごとの初期95%捕集粒径をそのまま測定することは困難である。そこで、次の2つの方法で求める。
第一の方法は、各層をそれぞれ別に製造する方法である。それぞれの層の製造条件が分かっている場合には、この方法を使用することができる。それぞれの層だけでは形状を維持できない場合には、適当なダミー、例えば中が空洞の有孔プラスチック成型品などを使用すると良い。
第二の方法は、測定データを解析して求める方法である。それぞれの層の製造条件が分からない場合には、この方法を使用すると良い。
例えば二層の場合、まず、それぞれの粒径におけるフィルターカートリッジの捕集効率を測定する。次に、フィルターカートリッジから第一濾過層を取り除き、第二濾過層のみにする。第一濾過層、第二濾過層、フィルターカートリッジの捕集効率の関係は、次の式に従う。
(1−フィルターカートリッジの捕集効率)=(1−第一濾過層の捕集効率)×(1−第二濾過層の捕集効率)
従って、フィルターカートリッジと第二濾過層の捕集効率が求まれば、解析的に第一濾過層の捕集効率を求めることができる。この方法を応用すれば、層が3層以上になっている場合にも求めることができることは明らかであろう。この方法でそれぞれの層の各粒径における捕集効率を算出し、その値を内挿して初期95%捕集粒径を算出すればよい。また、第一濾過層を取り除くことが困難であれば、第二濾過層を取り除いて測定しても同様に求めることができる。
図2は、本発明のフィルターの拡大図である。濾過有効径の小さなフィルターと大きなフィルターは、それぞれ金属繊維の太さ、密度によって濾過有効径を調整することができる。図3に金属繊維のイメージを示す。
上記フィルターには、紙で構成したフィルター、金属繊維または金属粉末を焼結したメディアで構成したフィルターを用いるが、ここでは溶融流延製膜方法に好ましい、金属繊維または金属粉末を焼結したメディアで構成したフィルターについて詳述する。
金属繊維または金属粉末は、ステンレス、ブロンズ、銅などを用いることができるが、熱可塑性樹脂との活性の問題、再生再使用の観点からステンレス製とするのが好ましい。ステンレスの中でもSUS304、SUS316、SUS316L、SUS430等が好適である。
金属繊維により構成されるメディア層は、図1に示すように金属繊維の軸がメディア層に平行になるように、すなわち流体である溶融熱可塑性樹脂の流れに対して直交する方向(直角方向)に配することで本発明の効果が顕著になる。ここで金属繊維軸が流れに直角方向以外にも配されていると、見掛け上メディアの空隙率が大きくなって好ましいようにも見えるが、濾過に有効な金属繊維間の空隙にロスが生じて、厚みの極薄い層を積層して精度良く濾過するという本発明の機能の点から、直交方向であることが好ましい。
金属繊維により構成されるメディア層は、一層以上でもよく、その場合、フィルター全体として有効濾過径の大小が判断される。
図4では、流体である溶融熱可塑性樹脂の流れに対して平行な方向に配した濾過装置の例を示した。図4に示す濾過装置は、中央部で縦に2分割した装置を、2台並列に配してもよい。
これらのメディアはその空隙率が35〜90%である。好ましくは50〜80%であり、さらに好ましくは65〜75%である。さらに積層する隣同士のメディアの空隙率の差は15%以下、さらには10%以下であることが好ましいが、これに限定されない。
また、各メディアの目付け量は、100〜10000g/m2が好ましい。ここで目付け量とはメディアを構成している材料の単位濾過面積当たりの重量である。
本発明においては、上記のように構成した金属繊維を積層したメディアに対し、熱可塑性樹脂が通過する下流側に金属粉末を焼結したメディアが積層される装置が好ましい。
すなわち、金属粉末をその目付け量が500〜20000g/m2でその空隙率が25〜65%になるように焼結し、積層する。金属粉末はアトマイズ法などによって得られる2〜200μmの球形の粉末より焼結することが好ましい。
好ましくは800〜10000g/m2であり、さらに好ましくは1000〜5000g/m2である。
本発明において上記のような積層は、単体のメディアをそれぞれ焼結後に積層しても、又単体のメディアを構成する金属繊維または金属粉末を、例えば不織布層として構成した後に一体焼結してもよい。
ここで焼結とは、その物質の融点よりも低い温度で粉体粒子を結合させたものであって、その特徴は例えば「金属便覧(社団法人日本金属学会編、丸善発行)」に詳述されている通りである。
さらにまた、本発明のフィルターは、空気による流動抵抗値が35〜800mmH2Oの範囲にある。35mmH2O未満の流動抵抗を示すメディアでは前記添加粒子状物質の粗粒部分のカットや凝集の分散効果が劣り、捕集効率も悪くなる。
また、空気による流動抵抗値が800mmH2Oを越えると、濾過抵抗が高すぎて溶融熱可塑性樹脂を通過させることが難しくなるので好ましくない。好ましくは、50〜600mmH2O、さらに好ましくは、60〜500mmH2Oである。
本発明で用いることのできる押出機は、例えばスクリュー式の押出機で、単軸または2軸の押出機とするのがよいが、熱可塑性樹脂にその融点より数十℃以上になるような異常昇温等がなく、均一溶融できることが重要である。
本発明でフィルターを通過して濾過できる熱可塑性樹脂の溶融粘度の範囲としては、例えば200〜12000ポイズの範囲に調整される。
熱可塑性樹脂は溶融状態によって粘度が変わる。すなわち、熱可塑性樹脂の分子量や溶融温度によってその溶融粘度が変わるので、例えば、本発明のように構成したフィルターを通過させる場合には、その溶融粘度をコントロールして200〜12000ポイズに調整することが重要である。こうすることによって、異常に濾過抵抗が高くなってフィルターの破損を招いたり、異常に濾過抵抗が低くなって起こる溶融熱可塑性樹脂の不均一な流れを防止して、均質な熱可塑性樹脂の吐出が可能となり、かつ、フィルターの捕集効率も含めて最適な状態での使用が可能となる。
ここで、溶融した熱可塑性樹脂の溶融粘度を本発明の溶融粘度に調整する装置としては、例えば、前記押出機の外部加熱温度を制御する方法が一般的である。フィルター装置の手前に温度計を設置し、溶融した熱可塑性樹脂の温度より、温度−粘度の関係によって粘度を算出し、押出機の温度コントロールユニットにフィードバックして調整することができる。
さらに好ましい調整方法としては、フィルターに入る直前の溶融熱可塑性樹脂の粘度を調整すると容易に調整でき、かつ調整範囲が広くなり、さらに熱可塑性樹脂の熱劣化も抑えられるので好ましい。
すなわち、加熱と冷却が同時にできるジャケットが付いたもので、内部で熱可塑性樹脂と熱交換できる構造の溶融粘度調節装置を通過させることにより、短時間に熱可塑性樹脂の温度を調整して、溶融粘度を調整することができる。
熱交換した後の熱可塑性樹脂に温度むらが生じないように、スタチックミキサー等を、温度調節装置内またはその出口側に併設するとさらによい。本溶融粘度調節装置においても、その出口側で熱可塑性樹脂の温度を検出し、温度−粘度の関係によって温度コントロールユニットにフィードバックして調節する。
上記において、熱交換を容易にするジャケット内には、熱交換の効率および温度むらの点から液体を封入して温度コントロールユニットとの間を循環させることが好ましいがこの限りではなく、電熱器、空気、水などを組み合わせた熱交換システムでもよい。
また、本発明で使用する溶融粘度調節装置は、フィルターを通過後の熱可塑性樹脂にも適用して異常に高い温度に長時間保持されないようにすることが好ましいが、本発明フィルター通過後口金で吐出されるまでの時間が短時間であればこの限りでない。
さらに、フィルター装置に入る前に溶融熱可塑性樹脂の圧力を検出し、異常に高い圧力がフィルターにかからないようにするとともに、フィルター詰まりを検知するための圧力計を設置するとよい。
本発明における口金は、T型、コートハンガ型、フィッシュテール型などの形状で用いることが好ましい。さらに本発明における口金の上流側に2台以上の押出機を設置して、フィードブロックを用いて積層するタイプや、口金内で積層する口金を用いてもよい。当然、これらのそれぞれの押出機と口金との間には本発明のフィルターを用いて本発明で目的とする濾過を行うことができる。
なお、本発明の粒子状物質の特性は、下記の方法により求めた。
(1)粒子状物質の平均粒子径、標準偏差
透過型電子顕微鏡写真により粒子の面積を求め、同じ面積を有する円の直径として全観測粒子よりその平均値と標準偏差を求める。
(2)フィルム中の粒子状物質の平均粒子径、標準偏差
熱可塑性樹脂フィルムをプラズマ法によって表面の熱可塑性樹脂を取り除き、走査型電子顕微鏡写真を撮り、粒子の面積を求め、同じ面積を有する円の直径として全観測粒子よりその平均値と標準偏差を求める。
(3)濾過有効径
試験粉体JIS−Z8901−1974の11種またはダストACFTDを蒸留水中に分散させてHIACで粒度分布を測定し、フィルターを通過させた後の粒度分布と比較してその95%カット値をもって濾過有効径とする。
(4)空隙率
メディアの容積と使用した材料の量および比重より空間部分の容積を求め百分率で表す。
(5)目付け量
メディアの単位濾過面積当たりに使用した材料の重量で表す(単位:g/m2)。
(6)溶融粘度
加熱溶融した熱可塑性樹脂を高化式フローテスターにより粘度を測定し、温度−粘度曲線の検量線を作成する。熱可塑性樹脂の溶融時の粘度は温度を検出して、検量線より算出する。
<光学フィルムを形成する樹脂組成物>
本発明の光学フィルムを形成する樹脂組成物は、光学フィルムを形成するポリマー、粒子状物質および添加剤とからなる。
本発明の光学フィルムを形成するポリマーとしては、光学用途として使用することができフィルムを形成することが可能な通常のポリマーを使用することができるが、セルロースエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、アクリル系重合体含有セルロースエステルおよびポリシクロオレフィンから選ばれる熱可塑性樹脂が好ましく、特に光学フィルムとした場合の位相差を調整することが容易である、セルロースエステル、ポリシクロオレフィン、ポリアクリレート、アクリル系重合体含有セルロースエステルおよびポリカーボネートから選択されることが好ましい。
これらのポリマーは通常の公知の製造方法によって作製されたもの、市販のものを使用することができる。
本発明のポリアクリレートとしては、例えば、デルペット60N、80N(旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR52、BR80、BR83、BR85、BR88(三菱レイヨン(株)製)、KT75(電気化学工業(株)製)等が挙げられる。
市販のポリシクロオレフィンとしては、例えば、ゼオネックス、ゼオノア(日本ゼオン(株)製)、アートン(JSR(株)製)、トーパス(TICONA(株)製)、APEL(三井化学(株)製)が挙げられる。
本発明のセルロースエステルとしては、後述のセルロースエステルが挙げられる。
<光学フィルムの特性>
本発明の光学フィルムは、フィルムの面内の遅相軸方向の屈折率をnx、面内で遅相軸に直交する方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとしたときに、下記であるような位相差を有する光学フィルムであることが好ましい。
膜厚 :20〜70μm
0nm≦Ro≦330nm
−200nm≦Rt≦500nm
なお、Ro、Rtの測定波長は590nm、Ro=(nx−ny)×d、Rt={(nx+ny)/2−nz}×dであり、dは光学フィルムの膜厚(nm)を表す。
本発明の光学フィルムにおいて位相差を上記のように調整する方法としては、下記の方法が挙げられる。
例えば、ポリシクロオレフィンフィルムは、適当な延伸処理を施すことが好ましい。
例えば、セルロースエステルフィルムは、適当な延伸処理を施すことが好ましく、さらには下記数式(1)で表される棒状分極率異方性が300×10−25cm3以上2000×10−25cm3以下であり分子の末端間距離が2nm以上10nm以下の化合物、数式(2)で表される平面分極率異方性が300×10−25cm3以上1500×10−25cm3以下であり分子の末端間距離が2nm以上10nm以下の化合物、アクリル系重合体、およびピラノース構造またはフラノース構造の少なくとも1種を1個以上12個以下有しその構造のOH基のすべてもしくは一部をエステル化したエステル化合物、を少なくとも1種含有するセルロースエステルフィルムであってもよい。
数式(1):Δα1=αx−(αy+αz)/2
数式(2):Δα2=(αx+αy)/2−αz
(式中、αxは、分極率テンソルを対角化後に得られる固有値の内、最大の成分であり;αyは、分極率テンソルを対角化後に得られる固有値の内、二番目に大きい成分であり;αzは、分極率テンソルを対角化後に得られる固有値の内、最小の成分である。)
〈数式(1)または(2)で表される化合物〉
本発明の数式(1)または(2)で表される化合物は、いわゆるセルロースエステルのレターデーションを上昇させるレターデーション上昇剤として作用する。
本発明のレターデーション上昇剤の末端間距離は、その機能発現のためには2nm以上10nm以下であることが必要である。
末端間距離は、分子軌道法または密度汎関数法を用いた計算によって、最適化された分子構造より求めることができる。
本発明で使用するレターデーション上昇剤は2種類に大別される。第1は、分子の棒状分極率異方性が大きい数式(1)で表されるタイプのものであり、第2は分子の平面分極率異方性が大きい数式(2)で表されるものである。
これらの化合物については、特開2006−193724号公報に記載の化合物を参考にすることができる。
分子の平面分極率異方性の大きいレターデーション上昇剤は、少なくともその1種を、セルロースに対して0.1〜30質量%添加することが必要であり、好ましくは0.5〜20質量%、より好ましくは1〜15質量%、特に好ましくは1〜10質量%である。2種類以上を用いる場合には、その合計量が、上記の範囲を満たしていることが好ましい。
また、本発明の分子の棒状分極率異方性の大きいレターデーション上昇剤と、分子の平面分極率異方性の大きいレターデーション上昇剤は、併用して使用するとブリードアウトがより効果的に抑制され、特に好ましい。
併用する場合には、その合計量が、上記の1種類の場合と同じ数値範囲を満たしていることが好ましい。これらレターデーション上昇剤の混合比は、分子の棒状分極率異方性の大きいレターデーション上昇剤1質量部に対して、平面分極率異方性の大きいレターデーション上昇剤0.01〜100質量部が好ましく、0.1〜10質量部がさらに好ましい。
〈アクリル系重合体〉
本発明の光学フィルムがセルロースエステルの場合にはアクリル系重合体を含有しても良い。なお、ここでアクリル系重合体にはメタクリル系重合体も含まれる。光学フィルムにおける樹脂のうち全量をアクリル系重合体としても良いし、他の樹脂と併用してもよく、その含有率は0〜100%の範囲で任意に選択できる。本発明ではセルロースエステルと併用することが最も好ましい。
本発明に用いられるアクリル系重合体としては、セルロースエステルフィルムと併用した場合、機能として延伸方向に対して負の複屈折性を示すことが好ましく、特に構造が限定されるものではないが、エチレン性不飽和モノマーを重合して得られた重量平均分子量が500以上1000000以下である重合体を、適宜選択したものであることが好ましい。
アクリル系重合体の適正な分子量範囲が上記の通りであるが、30質量%以上含有させる場合は、セルロースエステルとの相溶性の点から重量平均分子量が80000〜1000000であることが好ましい。
本発明のアクリル系重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=2,800,000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
アクリル系重合体は、後述するドープ液を構成する素材として直接添加、溶解するか、もしくはセルロースエステルを溶解する有機溶媒にあらかじめ溶解した後ドープ液に添加することができる。
〈ピラノース構造またはフラノース構造の少なくとも1種を1個以上12個以下有しその構造のOH基のすべてもしくは一部をエステル化したエステル化合物〉
本発明の光学フィルムがセルロースエステルフィルムの場合は、ピラノース構造またはフラノース構造の少なくとも1種を1個以上12個以下有しその構造のOH基のすべてもしくは一部をエステル化したエステル化合物を含むことを特徴とする。
エステル化の割合としては、ピラノース構造またはフラノース構造内に存在するOH基の70%以上であることが好ましい。
本発明においては、エステル化合物を総称して、糖エステル化合物とも称す。
本発明のエステル化合物の例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、あるいはアラビノース、ラクトース、スクローあるいはトース、1F−フラクトシルニストース、スタキオース、マルチトール、ラクチトール、ラクチュロース、セロビオース、マルトース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノースあるいはケストース挙げられる。
この他、ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース、キシロトリオース、ガラクトシルスクロースなども挙げられる。
これらの化合物の中で、特にピラノース構造とフラノース構造を両方有する化合物が好ましい。
例としてはスクロース、ケストース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオースなどが好ましく、さらに好ましくは、スクロースである。
具体的には、グルコースペンタアセテート、グルコースペンタプロピオネート、グルコースペンタブチレート、サッカロースオクタアセテート、サッカロースオクタベンゾエート等を好ましく挙げることができ、この内、サッカロースオクタアセテート、サッカロースオクタベンゾエートがより好ましく、サッカロースオクタベンゾエートが特に好ましい。
市販品としてはモノペットSB(第一工業製薬(株)製)等を使用することができる。
本発明のセルロースエステルフィルムは、位相差値の変動を抑制して、表示品位を安定化するために、本発明のエステル化合物を、セルロースエステルフィルムの1〜30質量%含むことが好ましく、特には、5〜30質量%含むことが好ましい。
〈セルロースエステル〉
本発明のセルロースエステルとしては、炭素数2〜22程度のカルボン酸エステルであり、芳香族カルボン酸のエステルでもよく、特に炭素数が6以下の低級脂肪酸エステルであることが好ましい。
水酸基に結合するアシル基は、直鎖であっても分岐してもよく、また環を形成してもよい。さらに別の置換基が置換してもよい。同じ置換度である場合、前記炭素数が多いと複屈折性が低下するため、炭素数としては炭素数2〜6のアシル基の中で選択することが好ましい。前記セルロースエステルとしての炭素数が2〜4であることが好ましく、炭素数が2〜3であることがより好ましい。
具体的には、セルロースエステルとしては、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、またはセルロースアセテートプロピオネートブチレートのようなアセチル基の他にプロピオネート基またはブチレート基が結合したセルロースの混合脂肪酸エステルを用いることができる。
なお、ブチレートを形成するブチリル基としては、直鎖状でも分岐していてもよい。本発明において好ましく用いられるセルロースエステルとしては、特にセルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートフタレートが好ましく用いられる。
本発明に好ましいセルロースアセテートフタレート以外のセルロースエステルとしては、下記式(1)および(2)を同時に満足するものが好ましい。
式(1) 2≦X+Y≦3.0
式(2) 0≦Y≦1.5
式中、Xはアセチル基の置換度、Yはプロピオニル基またはブチリル基、もしくはその混合物の置換度である。
また、目的に叶う光学特性を得るために置換度の異なる樹脂を混合して用いても良い。混合比としては100:0〜50:50(質量比)が好ましい。
この中で特にセルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられる。セルロースアセテートプロピオネートでは、1.0≦X≦2.5であり、0.1≦Y≦1.5、2.0≦X+Y≦3.0であることが好ましい。アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96に準じて測定することができる。
本発明に用いられるセルロースエステルの重量平均分子量は、60000〜300000の範囲が、得られるフィルムの機械的強度が強く好ましい。さらに75000〜280000のものが好ましく用いられる。
〈その他の添加剤〉
(可塑剤)
本発明の光学フィルムがセルロースエステルフィルムの場合は、本発明の効果を得る上で必要に応じて可塑剤を含有することができる。
可塑剤は特に限定されないが、好ましくは、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤および多価アルコールエステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、アクリル系可塑剤等から選択される。
そのうち、可塑剤を2種以上用いる場合は、少なくとも1種は多価アルコールエステル系可塑剤であることが好ましい。
(酸化防止剤)
本発明では、酸化防止剤としては、通常知られているものを使用することが好ましい。特に、ラクトン系、イオウ系、フェノール系、二重結合系、ヒンダードアミン系、金属原子を有しないリン系化合物のものを好ましく用いることができる。
本発明のラクトン系化合物としては、チバ・ジャパン(株)からHP−136という商品名で市販されているものが好ましい。
上記フェノール系化合物としては、2,6−ジアルキルフェノールの構造を有するものが好ましく、例えば、チバ・ジャパン(株)、“Irganox1076”、“Irganox1010”、“IrgafosXP40”、“IrgafosXP60”、(株)ADEKA”アデカスタブAO−50”という商品名で市販されているものが好ましい。
上記金属原子を有しないリン系化合物は、例えば、住友化学(株)から、“SumilizerGP”、(株)ADEKAから“ADK STAB PEP−24G”、“ADK STAB PEP−36”、“ADK STAB 2112”および“ADK STAB 3010”、チバ・ジャパン(株)から“IRGAFOS P−EPQ”、堺化学工業(株)から“GSY−P101”という商品名で市販されているものが好ましい。
上記ヒンダードアミン系化合物は、例えば、チバ・ジャパン(株)から、“Tinuvin144”および“Tinuvin770”、(株)ADEKAから“ADK STAB LA−52”という商品名で市販されているものが好ましい。
上記イオウ系化合物は、例えば、住友化学(株)から、“Sumilizer TPL−R”および“Sumilizer TP−D”という商品名で市販されているものが好ましい。
上記二重結合系化合物は、住友化学(株)から、“Sumilizer GM”および“Sumilizer GS”という商品名で市販されているものが好ましい。
さらに、市販のエポキシ基含有エポキシド樹脂化合物として、EPON 815C、米国特許第4,137,201号明細書に記載されているような、エポキシ基を有する化合物を含有させることも可能である。
これらの酸化防止剤等は、再生使用される際の工程に合わせて適宜添加する量が決められるが、一般には、フィルムの主原料である樹脂に対して、0.05〜20質量%、好ましくは0.1〜1質量%の範囲で添加される。
これらの酸化防止剤は、一種のみを用いるよりも数種の異なった系の化合物を併用することで相乗効果を得ることができる。例えば、ラクトン系、リン系、フェノール系および二重結合系化合物の併用は好ましい。
本発明において好ましい態様のセルロースエステルは、貧溶媒による懸濁洗浄時に酸化防止剤存在下で洗浄することも好ましい。
使用される酸化防止剤は、フィルムを形成するポリマーに発生したラジカルを不活性化する、あるいはフィルムを形成するポリマーに発生したラジカルに酸素が付加したことが起因のフィルムを形成するポリマーの劣化を抑制する化合物であれば制限なく用いることができる。
フィルムを形成するポリマーの懸濁洗浄に使用する酸化防止剤は、洗浄後フィルムを形成するポリマー中に残存していてもよい。残存量は0.01〜2000ppmがよく、より好ましくは0.05〜1000ppmである。さらに好ましくは0.1〜100ppmである。
本発明において有用な酸化防止剤としては、酸素によるフィルム成形材料の劣化を抑制する化合物であれば制限なく用いることができるが、なかでも有用な酸化防止剤としては、フェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、金属原子を有しないリン系化合物、イオウ系化合物、耐熱加工安定剤、酸素スカベンジャー等が挙げられ、これらの中でも、特にフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、金属原子を有しないリン系化合物、が好ましい。
これらの化合物を配合することにより、透明性、耐熱性等を低下させることなく、熱や熱酸化劣化等による成形体の着色や強度低下を防止できる。これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
酸化防止剤は、前述のフィルムを形成するポリマー同様に、製造時から持ち越される、あるいは保存中に発生する残留酸、無機塩、有機低分子等の不純物を除去することが好ましく、より好ましくは純度99%以上である。残留酸および水としては、0.01〜100ppmであることが好ましく、フィルムを形成するポリマーを溶融流延製膜する上で、熱劣化を抑制でき、製膜安定性、フィルムの光学物性、機械物性が向上する。
本発明においては、これらの酸化防止剤は、フィルムを形成するポリマーに対して各々0.01〜10質量%添加することが好ましく、さらに0.1〜5質量%添加することが好ましく、さらに0.2〜2質量%添加することが好ましい。これらは2種以上を併用してもよい。
(紫外線吸収剤)
本発明光学フィルムは、紫外線吸収剤を含有することもできる。
本発明に用いられる紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系化合物の具体例として、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−(2−オクチルオキシカルボニルエチル)−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(1−メチル−1−フェニルエチル)−5′−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。
また、市販品として、チヌビン(TINUVIN)326、チヌビン(TINUVIN)109、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)900、チヌビン(TINUVIN)928、チヌビン(TINUVIN)360(いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、LA31(ADEKA社製)、Sumisorb250(住友化学社製)、RUVA−100(大塚化学製)が挙げられる。
ベンゾフェノン系化合物の具体例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明において紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、偏光板保護フィルムの乾燥膜厚が30〜200μmの場合は、偏光板保護フィルムに対して0.5〜10質量%が好ましく、0.6〜4質量%がさらに好ましい。
<光学フィルムの溶融流延製膜>
本発明の光学フィルムの製造方法は、少なくとも、光学フィルムを形成するポリマー、粒子状物質および添加剤を混合溶融して本発明の濾過装置により濾過し、その後通常のダイから押出し、冷却ロール上に流延する光学フィルムの製造方法である。
以下、製造方法の全体について述べる。
〈溶融ペレット製造工程〉
溶融押出に用いる光学フィルムを形成するポリマー、粒子状物質、可塑剤およびその他の添加剤の混合物は、通常あらかじめ混錬してペレット化しておくことが好ましい。
ペレット化は、公知の方法でよく、例えば、乾燥光学フィルムを形成するポリマーや可塑剤、その他添加剤をフィーダーで押出機に供給し1軸や2軸の押出機を用いて混錬し、ダイからストランド状に押出し、水冷または空冷し、カッティングすることでできる。
原材料は、押出する前に乾燥しておくことが原材料の分解を防止する上で重要である。特に光学フィルムを形成するポリマーは吸湿しやすいので、除湿熱風乾燥機や真空乾燥機で70〜140℃で3時間以上乾燥し、水分率を200ppm以下、さらに100ppm以下にしておくことが好ましい。
添加剤は、押出機に供給する前に混合しておいてもよいし、それぞれ個別のフィーダーで供給してもよい。酸化防止剤等少量の添加剤は、均一に混合するため、事前に混合しておくことが好ましい。
酸化防止剤の混合は、固体同士で混合してもよいし、必要により、酸化防止剤を溶剤に溶解しておき、光学フィルムを形成するポリマーに含浸させて混合してもよく、あるいは噴霧して混合してもよい。
真空ナウターミキサなどが乾燥と混合を同時にできるので好ましい。また、フィーダー部やダイからの出口など空気と触れる場合は、除湿空気や除湿したN2ガスなどの雰囲気下にすることが好ましい。
押出機は、せん断力を抑え、樹脂が劣化(分子量低下、着色、ゲル生成等)しないようにペレット化可能でなるべく低温で加工することが好ましい。例えば、2軸押出機の場合、深溝タイプのスクリューを用いて、同方向に回転させることが好ましい。混錬の均一性から、噛み合いタイプが好ましい。
以上のようにして得られたペレットを用いてフィルム製膜を行う。ペレット化せず、原材料の粉末をそのままフィーダーで押出機に供給し、そのままフィルム製膜することも可能である。
〈溶融混合物をダイから冷却ロールへ押し出す工程〉
作製したペレットを1軸や2軸タイプの押出機を用いて、押し出す際の溶融温度Tmを200〜300℃程度とし、本発明の濾過装置により濾過し異物を除去した後、Tダイからフィルム状に流延し、冷却ロール上で固化し、弾性タッチロールと押圧しながら流延する。
供給ホッパーから押出機へ導入する際は真空下または減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。なお、Tmは、押出機のダイ出口部分の温度である。
ダイに傷や可塑剤の凝結物等の異物が付着するとスジ状の欠陥が発生する場合がある。このような欠陥のことをダイラインとも呼ぶが、ダイライン等の表面の欠陥を小さくするためには、押出機からダイまでの配管には樹脂の滞留部が極力少なくなるような構造にすることが好ましい。ダイの内部やリップにキズ等が極力無いものを用いることが好ましい。
押出機やダイなどの溶融樹脂と接触する内面は、表面粗さを小さくしたり、表面エネルギーの低い材質を用いるなどして、溶融樹脂が付着し難い表面加工が施されていることが好ましい。具体的には、ハードクロムメッキやセラミック溶射したものを表面粗さ0.2S以下となるように研磨したものが挙げられる。
本発明の冷却ロールには特に制限はないが、高剛性の金属ロールで内部に温度制御可能な熱媒体または冷媒体が流れるような構造を備えるロールであり、大きさは限定されないが、溶融押し出されたフィルムを冷却するのに十分な大きさであればよく、通常冷却ロールの直径は100mmから1m程度である。
冷却ロールの表面材質は、炭素鋼、ステンレス、アルミニウム、チタンなどが挙げられる。さらに表面の硬度をあげたり、樹脂との剥離性を改良するため、ハードクロムメッキや、ニッケルメッキ、非晶質クロムメッキなどや、セラミック溶射等の表面処理を施すことが好ましい。
冷却ロール表面の表面粗さは、Raで0.1μm以下とすることが好ましく、さらに0.05μm以下とすることが好ましい。ロール表面が平滑であるほど、得られるフィルムの表面も平滑にできるのである。もちろん表面加工した表面はさらに研磨し上述した表面粗さとすることが好ましい。
本発明の弾性タッチロールとしては、特開平03−124425号、特開平08−224772号、特開平07−100960号、特開平10−272676号、WO97−028950、特開平11−235747号、特開2002−36332号、特開2005−172940号や特開2005−280217号に記載されているような表面が薄膜金属スリーブ被覆シリコンゴムロールを使用することができる。
冷却ロールからフィルムを剥離する際は、張力を制御してフィルムの変形を防止することが好ましい。
〈延伸工程〉
本発明では、上記のようにして得られたフィルムは冷却ロールに接する工程を通過後、さらに少なくとも1方向に1.01〜3.0倍延伸することが好ましい。延伸によりスジの鋭さが緩やかになり高度に矯正することができるのである。
好ましくは縦(フィルム搬送方向)、横(巾方向)両方向にそれぞれ1.1〜2.0倍延伸することが好ましい。
延伸する方法は、公知のロール延伸機やテンターなどを好ましく用いることができる。特に光学フィルムが、偏光板保護フィルムを兼ねる位相差フィルムの場合は、延伸方向を巾方向とすることで偏光フィルムとの積層がロール形態でできるので好ましい。
巾方向に延伸することで光学フィルムの遅相軸は巾方向になる。一方、偏光フィルムの透過軸も通常巾方向である。偏光フィルムの透過軸と偏光板保護フィルムの遅相軸とが平行になるように積層した偏光板を液晶表示装置に組み込むことで、良好な視野角が得られるのである。
本発明の光学フィルムを形成するポリマーフィルムを光学補償機能を有するフィルムとして用いる場合は、所望のレターデーション特性が得られるように温度、倍率を選ぶことができる。
通常、延伸倍率は1.1〜3.0倍、好ましくは1.3〜2.0倍であり、延伸温度は、通常、フィルムを構成する樹脂のTg〜Tg+50℃、好ましくはTg〜Tg+40℃の温度範囲で行なわれる。
延伸は、幅手方向で制御された均一な温度分布下で行うことが好ましい。好ましくは±2℃以内、さらに好ましくは±1℃以内、特に好ましくは±0.5℃以内である。
上記の方法で作製した光学フィルムのレターデーション調整や寸法変化率を小さくする目的で、フィルムを長手方向や幅手方向に収縮させてもよい。
長手方向に収縮するには、例えば、巾延伸を一時クリップアウトさせて長手方向に弛緩させる、または横延伸機の隣り合うクリップの間隔を徐々に狭くすることによりフィルムを収縮させるという方法がある。
本発明の光学フィルムの面内レターデーション(Ro)、厚み方向レタデーション(Rt)は適宜調整することができるが、Roは0〜200nm、Rtは−150〜400nmが好ましい。
なお、フィルムの遅相軸方向の屈折率Nx、進相軸方向の屈折率Ny、厚み方向の屈折率Nz、フィルムの膜厚をd(nm)とすると、
Ro=(Nx−Ny)×d
Rt={(Nx+Ny)/2−Nz}×d
として表される。(測定波長590nm)
レターデーションのバラツキは小さいほど好ましく、通常±10nm以内、好ましくは±5nm以下、より好ましくは±2nm以下である。
遅相軸方向の均一性も重要であり、フィルム巾方向に対して、角度が−5〜+5°であることが好ましく、さらに−1〜+1°の範囲にあることが好ましく、特に−0.5〜+0.5°の範囲にあることが好ましく、特に−0.1〜+0.1°の範囲にあることが好ましい。これらのばらつきは延伸条件を最適化することで達成できる。
本発明の光学フィルムは、隣接する山の頂点から谷の底点までの高さが300nm以上であり、傾きが300nm/mm以上の長手方向に連続するスジがないことが好ましい。
スジの形状は、表面粗さ計を用いて測定したもので、具体的には、ミツトヨ製SV−3
100S4を使用して、先端形状が円錐60°、先端曲率半径2μmの触針(ダイヤモンド針)に測定力0.75mNの加重をかけながら、測定速度1.0mm/secでフィルムの巾方向に走査し、Z軸(厚み方向)分解能0.001μmとして断面曲線を測定する。
この曲線から、スジの高さは、山の頂点から谷の底点までの垂直距離(H)を読み取る。スジの傾きは、山の頂点から谷の底点までの水平距離(L)を読み取り、垂直距離(H)を水平距離(L)で除して求める。
<清掃設備>
本発明の製造装置には、ベルトおよびロールを自動的に清掃する装置を付加させることが好ましい。清掃装置については特に限定はないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール、粘着ロール、ふき取りロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、レーザーによる焼却装置、あるいはこれらの組み合わせなどがある。
清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
実施例1
<溶融流延セルロースエステルフィルム>
下記のような、セルロースエステル、粒子状物質および各種添加剤の組成を用いて、溶融流延製膜のためのペレットを作製するための混練検討を以下のように行った。
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度1.6、プロピオニル基置換度1.2、Mn=86,000、Mw/Mn=2.5) 100質量部
粒子状物質 表1に示す。
ペンタエリスリトールテトラベンゾエート 8.0質量部
IRGANOX1010(チバ・ジャパン(株)製) 0.50質量部
SumilizerGS(住友化学(株)製) 0.20質量部
GSY−P101(堺化学工業(株)製) 0.25質量部
TINUVIN928(チバ・ジャパン(株)製) 1.5質量部
セルロースエステルを70℃、3時間減圧下で乾燥を行い室温まで冷却した後、添加剤を混合した。
以上の混合物を、2軸式押出し機を用いて230℃で溶融混合しペレット化した。なお、このペレットのガラス転移温度Tgは136℃であった。
下記の方法により図5に記載の製膜装置を使用し光学フィルムを作製した。
作製したペレットを窒素雰囲気下、250℃にて溶融後、ギヤポンプを経由して本発明の濾過装置により濾過し、流延ダイT−4から第1冷却ロールT−5上に押出し、第1冷却ロールT−5とタッチロールT−6との間にフィルムを挟圧して成形した。
流延ダイT−4のギャップの幅がフィルムの幅方向端部から30mm以内では0.5mm、その他の場所では1mmとなるようにヒートボルトを調整した。
タッチロールとしては、その内部に冷却水として80℃の水を流した。
流延ダイT−4から押し出された樹脂が第1冷却ロールT−5に接触する位置P1から第1冷却ロールT−5とタッチロールT−6とのニップの第1冷却ロールT−5回転方向上流端の位置P2までの、第1冷却ローラT−5の周面に沿った長さLを20mmに設定した。
その後、タッチロールT−6を第1冷却ロールT−5から離間させ、第1冷却ロールT−5とタッチロールT−6とのニップに挟圧される直前の溶融部の温度Tを測定し、その結果温度Tは141℃であった。
なお、第1冷却ロールT−5とタッチロールT−6とのニップに挟圧される直前の溶融部の温度Tは、ニップ上流端P2よりもさらに1mm上流側の位置で、温度計(安立計器(株)製HA−200E)により測定した。
タッチロールT−6の第1冷却ロール5に対する線圧は14.7N/cmとした。
このフィルムを、ロール周速差を利用して縦方向に熱延伸した。加熱は赤外線ヒータによって行い、延伸倍率は1.5倍とした。さらに、テンターに導入し、巾方向に160℃で1.6倍延伸した後、巾方向に3%緩和しながら30℃まで冷却し、その後クリップから開放し、クリップ把持部を裁ち落とし、フィルム両端に幅10mm、高さ5μmのナーリング加工を施し、巻き取り張力220N/m、テーパー40%で巻芯に巻き取った。
なお、フィルムは、厚さが80μmとなるように、押出し量および引き取り速度を調整し、仕上がりのフィルム幅は、1500mm幅になるようにスリットし、巻き取った。
巻芯の大きさは、内径152mm、外径165〜180mm、長さ1550mmであった。
この巻芯母材として、エポキシ樹脂をガラス繊維、カーボン繊維に含浸させたプリプレグ樹脂を用いた。巻芯表面にはエポキシ導電性樹脂をコーティングし、表面を研磨して、表面粗さRaは0.3μmに仕上げた。なお、巻長は2500mとした。
なお表1に示した実施例で使用した素材は下記の通りである。
(粒子状物質)
1.NAX50(シリカ)平均粒径0.2μmアエロジル日本アエロジル(株)製
2.KE−P30(単分散シリカ)平均粒径0.3μmシーホスター(株)日本触媒製
3.KE−P100(単分散シリカ)平均粒径1.0μmシーホスター(株)日本触媒製
4.R972V(シリカ):平均粒径0.1μmアエロジル日本アエロジル(株)製
5.MG−151(架橋アクリル):平均粒径0.07μm日本ペイント(株)製
6.MG−164(架橋スチレン・アクリル):平均粒径0.3μm日本ペイント(株)製
7.MR−2G(架橋アクリル):平均粒径1.0μm綜研化学(株)製
8.MX−100(架橋アクリル単分散):平均粒径1.0μm綜研化学(株)製
平均粒径は、電子顕微鏡写真によって測定し、粒子の形状は全て球形であるとした場合の直径で示した。
(ハウジング)
ハウジング1:図1記載のハウジング
ハウジング2:図4記載のハウジング
<粒子状物質の濃度>
各光学フィルム試料を幅手50、500、750(幅方向の中心部に該当)、1000,1450mmの部分について切り出し、光学フィルムの厚み方向について最表面から0〜4μm、20±4μm、40±4μm、60±4μm、76〜80μmの範囲ついて、その薄片の部分の断面を透過型電子顕微鏡(JEM−2010F 日本電子(株)製)にて1000倍の視野で写真を5箇所撮影し、この写真をスキャナーにより取り込み、画像処理解析装置LUZEX AP((株)ニレコ製)を用いて、一視野における面積の平均値を測定した。平均粒子径0.5μmの粒子の面積としたときの個数で示す。
<滑り性評価>
動摩擦係数の値により滑り性を評価した。
23℃55%RHの雰囲気下で24時間以上保存した各試料の動摩擦係数を、同雰囲気下においてJIS−K−7125−ISO8295に記載の方法に準じて測定した。
各フィルムの表裏面が接触するように切り出し、200gの重りを載せ、フィルム試料の移動速度100mm/分、接触面積80mm×200mmの条件で重りを水平に引っ張り、重りが移動中の平均荷重(F)を測定し、下記式より動摩擦係数(μ)を求めた。
動摩擦係数=F(g)/重りの重さ(g)
○:μ≦0.6
△:0.6<μ≦1.5
×:1.5<μ
<ヘイズ>
23℃55%RHの雰囲気下で24時間以上保存した各試料のヘイズを、同雰囲気下において、NDH 2000、日本電色(株)製を使用して測定した。このヘイズは、光学フィルム全体としてのヘイズである。
<内部ヘイズ>
本発明の光学フィルム内部の散乱因子を内部ヘイズで評価した。
内部のヘイズとは、フィルムの内部の散乱因子により発生するヘイズであり、内部とは、フィルム表面から5μm以上の部分である。
この内部のヘイズは、フィルム屈折率±0.05の屈折率の溶剤をフィルム界面に滴下して、フィルム表面のヘイズをできるだけ無視できる状態にして、ヘイズメーターにより測定される。
〈フィルム内部のヘイズ(以下、内部ヘイズと略す)測定装置〉
ヘイズメーター(濁度計)(型式:NDH 2000、日本電色(株)製)
光源は、5V9Wハロゲン球、受光部は、シリコンフォトセル(比視感度フィルター付き)を用いている。
本発明においては、この装置にてフィルム屈折率±0.05の屈折率の溶剤をフィルム界面とした場合のフィルムのヘイズ測定において、その値が0.02以下であることを特徴とする。測定はJIS K−7136に準じて測定した。
内部ヘイズ測定は以下のように行う。図6〜9を持って説明する。
1.きれいにしたスライドガラスの上にグリセリンを一滴(0.05ml)たらす。このとき液滴に気泡が入らないように注意する。ガラスは見た目がきれいでも汚れていることがあるので必ず洗剤で洗浄したものを使用する。図1参照
2.その上にカバーガラスを載せる。カバーガラスは押さえなくてもグリセリンは広がる。
3.ヘイズメーターにセットしブランクヘイズ1を測定する。
ついで、試料を含めたヘイズ2を測定する。
4.スライドガラス上にグリセリンを滴下する。(0.05ml)図1参照
5.その上に測定する試料フィルムを載せる。 図2参照
6.試料フィルム上にグリセリンを滴下する。(0.05ml) 図3参照
7.その上にカバーガラスを載せる。 図4参照
8.ヘイズメーターにセットしヘイズ2を測定する。
9.(ヘイズ2)−(ヘイズ1)=(本発明の内部ヘイズ)を算出する。
上記測定にて使用したガラス、グリセリンを以下の通りである。
ガラス:MICRO SLIDE GLASS S9213 MATSUNAMI
グリセリン: 関東化学製 鹿特級
結果を表1および2、3に示す。
実施例2
<偏光板の作製>
実施例1で作製した光学フィルムを偏光板保護フィルムとした偏光板を以下のようにして作製し評価した。
厚さ120μmの長尺ロールポリビニルアルコールフイルムを沃素1質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃で5倍に搬送方向に延伸して偏光子を作った。
次に、この偏光子の両面にアルカリケン化処理した本発明のセルロースエステルフィルムをポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼合、乾燥し偏光板を作製した。
<液晶表示装置の作製>
視野角測定を行う液晶パネルを以下のようにして作製し、液晶表示装置としての特性を評価した。
SONY製40型ディスプレイKLV−40J3000の予め貼合されていた両面の偏光板を剥がして、上記作製した偏光板101をそれぞれ液晶セルのガラス面の両面に貼合した。
その際、その偏光板の貼合の向きは、本発明のセルロースエステルフィルムの面が、液晶セル側となるように、かつ、予め貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くように行い、液晶表示装置101を各々作製した。
この液晶表示装置について色味変動および正面コントラストについて評価した。
<正面コントラストの評価>
23℃55%RHの環境で、各々の液晶表示装置のバックライトを1週間連続点灯した後、測定を行った。測定にはELDIM社製EZ−Contrast160Dを用いて、液晶表示装置で白表示と黒表示の表示画面の法線方向からの輝度を測定し、その比を正面コントラストとした。 正面コントラスト=(表示装置の法線方向から測定した白表示の輝度)/(表示装置の法線方向から測定した黒表示の輝度)
<色ムラ>
目視により色ムラを評価した。
◎:色ムラが全く観察されない
○:色ムラがほんの部分的に観察される
△:色ムラが、全面的に弱いものが観察される
×:色ムラがはっきりと全体に観察される
以上の結果を表4に示す。
実施例3
<ポリシクロオレフィンフィルム>
ポリシクロオレフィン系重合体(ノルボルネン系単量体の開環共重合体の水素化物、日本ゼオン(株)製、商品名:ZEONOR 1430、ガラス転移温度(Tg)=145℃)100質量部に対して、0.2質量部のフェノール系熱安定剤ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕および本発明のシリカ粒子0.05質量部とを混合し、二軸混練機で混練し、ストランド(棒状の溶融樹脂)を、ストランドカッターを通してペレットを得た。
上記で得たペレットを、空気を流通させた熱風乾燥機を用いて110℃で、4時間乾燥した。
そしてこのペレットを、リーフディスク形状のポリマーフィルター(ろ過精度30μm)を設置した65mmφのスクリューを備えた樹脂溶融混練機を有するTダイ式フィルム溶融押出し成形機を使用し、内面に表面粗さRa=0.15μmのクロムメッキを施した350mm幅のT型ダイスを用いて溶融樹脂温度260℃およびダイス温度260℃で押出し、押し出されたシート状のノルボルネン系重合体を、第1冷却ドラム(直径250mm、温度:135℃、周速度R1:10.05m/分)に密着させ、次いで第2冷却ドラム(直径250mm、温度:125℃、周速度R2:10.05m/分)、次いで第3冷却ドラム(直径250mm、温度:100℃、周速度R3:9.98m/分)に順次密着させて移送し、長さ300m、膜厚40μmのポリシクロオレフィンフィルムを押出成形した。得られた長尺のポリシクロオレフィンフィルムは、ロール状に巻き取った。
また、このポリシクロオレフィンフィルムの揮発性成分の含有量は0.01質量%以下、飽和吸水率は0.01質量%以下であった。
このようにして作製したポリシクロオレフィンフィルムについて、実施例2と同様に評価した。結果を表5および6、7に示す。
実施例4
実施例3で作製した光学フィルムを偏光板保護フィルムとした偏光板を以下のようにして作製し評価した。
厚さ120μmの長尺ロールポリビニルアルコールフイルムを沃素1質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃で5倍に搬送方向に延伸して偏光子を作った。
次に、この偏光子の両面にアクリル接着剤を用いて、作製した光学フィルムにコロナ処理を施したのち、貼合した。
このように作製した偏光板について、実施例2と同様に液晶表示装置を作製し、正面コントラストを評価した。結果を表8に示す。