JP2010006283A - 車両用シート装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】頭部拘束位置に作動したヘッドレストを、ヘッドレストを下げるだけの操作で、初期位置に戻すことができる車両用シート装置を提供する。
【解決手段】テンションスプリング32による横架部36の上方への移動を規制するロック機構33は、横架部の左右方向の中央部に設けられ、サポートブラケット35の移動方向と垂直をなす係合面36aと、係合面に係脱可能で、アッパパネル25の左右方向の中央部に第1支軸46によって横架部と平行な軸線の回りに回動可能に支持され、且つ第1支軸が係合面の法線方向または法線方向に近似した方向に配置されたポール47と、ポールを係合面に係合する方向に付勢する付勢部材50と、作動力伝達機構によって作動され、ポールを付勢部材の付勢力に抗して係合面から離脱する方向に回動させるケーブル34とを備えている。
【選択図】図7
【解決手段】テンションスプリング32による横架部36の上方への移動を規制するロック機構33は、横架部の左右方向の中央部に設けられ、サポートブラケット35の移動方向と垂直をなす係合面36aと、係合面に係脱可能で、アッパパネル25の左右方向の中央部に第1支軸46によって横架部と平行な軸線の回りに回動可能に支持され、且つ第1支軸が係合面の法線方向または法線方向に近似した方向に配置されたポール47と、ポールを係合面に係合する方向に付勢する付勢部材50と、作動力伝達機構によって作動され、ポールを付勢部材の付勢力に抗して係合面から離脱する方向に回動させるケーブル34とを備えている。
【選択図】図7
Description
本発明は、車両が後突された際に、乗員の頭部を拘束して首部を保護するように機能する車両用シート装置に関するものである。
後突等によって車両の後方から前方へ大きな衝撃力を受けた際に、乗員の頭部を拘束して首部を保護するように機能する車両用シートとして、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載された車両用シートは、ステーを挿入するサポートブラケットが、シートバックに対してヘッドレスト本体が上方に移動しつつ前側に傾くようにガイド支持され、且つサポートブラケットには常時上方へばね付勢され、このばね付勢に逆らってヘッドレストを初期状態に維持するロック装置を備えている。
特許文献1に記載されたロック装置は、FIG3A、FIG3Bに記載されているように、サポートブラケットから車両前方向に突出したピン(45)と、このピンに係脱可能に係合するU字部を備えたフック(41)と、このフックをピンとの係合から外れる側に付勢するばね(46)と、このばねの付勢力に抗してフックをピンとの係合状態へ押し付ける回転カム(42)とによって構成されている。
ドイツ公開特許10246475A1
上記した特許文献1に記載の車両用シートにおいては、一度ロックが解除され、ヘッドレストが頭部拘束位置に作動してしまうと、仮に衝突の程度が軽微で、各構成部品に変形ないしは損傷がなく、再使用できる場合であっても、ヘッドレストを初期位置に戻して再使用することができない問題がある。その理由は、FIG3Bに示すように、ピンが一旦フックのU字部から離脱され、サポートブラケットが上方に移動されると、フックがばねの付勢力によって回動され、FIG3Aに示すように、回転カムによってフックが回動できなくなり、ヘッドレストを下げてもピンがフックのU字部に入り込めなくなるからである。すなわち、フックがピンと係合する位置に戻る前に回転カムが戻ってしまうと、フックは固定状態となり、フックとピンとが係合できなくなる。
フックとピンとを再係合させるためには、ピンが初期位置に戻るまでの間、回転カムを解放状態に維持してフックの回動を許容し、ピンが初期位置に到達した後に回転カムを戻すようにする等の手段を講ずる必要がある。しかしながら、そのようにするためには、別途センシング手段や制御手段が必要となり、コスト高となる。
しかも、特許文献1に記載の構成では、ロック解除の際、カムを車両横方向に引く必要があり、例えば、ヘッドレストを起動させる手段が電気式ではなく、シートバックの下方に備えた受圧機構からケーブルを介して引っ張る場合には、ケーブル経路が大回りになり、非効率となる。
本発明は、上述した従来の問題を解消するためになされたもので、頭部拘束位置に作動したヘッドレストを、ヘッドレストを下げるだけの操作で、初期位置に戻すことができる車両用シート装置を提供することを目的とするものである。
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の特徴は、車両用シートのシートバックの上方に配置されるヘッドレスト本体と、前記ヘッドレスト本体を前記シートバックに支持するステーと、前記シートバック内に配設され、前記車両用シートに着座する乗員の入力荷重によりばね力に抗して作動される受圧部材と、前記シートバック内に配設され、前記シートバックに後突による衝撃荷重が作用され且つ前記受圧部材が作動された際に、該受圧部材の作動力を伝達する作動力伝達機構と、該作動力伝達機構によって作動され、前記ヘッドレスト本体を頭部拘束位置に移動するヘッドレスト移動手段とを備えた車両用シート装置において、 前記ヘッドレスト移動手段は、前記シートバックのシートバックフレームに上下移動可能に支持され、前記ステーを保持する左右一対のサポートブラケットと、該左右一対のサポートブラケットを連結する左右方向に延在された横架部と、前記シートバックフレームに両端部が固定された左右方向に延在するアッパパネルと、前記横架部を前記シートバックフレームに対して上方へ付勢するテンションスプリングと、該テンションスプリングによる前記横架部の上方への移動を規制し且つ前記作動力伝達機構によって規制を解除されるロック機構とを備え、該ロック機構は、前記横架部の左右方向の中央部に設けられ、前記サポートブラケットの移動方向と垂直をなす係合面と、該係合面に係脱可能で、前記アッパパネルの左右方向の中央部に第1支軸によって前記横架部と平行な軸線の回りに回動可能に支持され、且つ該第1支軸が前記係合面の法線方向または該法線方向に近似した方向に配置されたポールと、該ポールを前記係合面に係合する方向に付勢する付勢部材と、前記作動力伝達機構によって作動され、前記ポールを前記付勢部材の付勢力に抗して前記係合面から離脱する方向に回動させるケーブルとを備えていることである。
請求項2に係る発明の特徴は、請求項1において、前記アッパパネルには、前記ポールに当接面を介して当接するカムが前記第1支軸と平行な第2支軸によって回転可能に支持され、前記ポールと前記カムとの間に、前記付勢部材が設けられ、前記カムの前記当接面と前記第2支軸を挟んで反対側に、前記ケーブルに連結されるケーブル連結部を設けたことである。
請求項3に係る発明の特徴は、請求項1または請求項2において、前記ヘッドレスト移動手段は、前記シートバックフレームに設けられた上下方向に延びるガイド孔を有するガイド部材と、前記サポートブラケットに設けられ、前記ガイド部材のガイド孔に摺動可能に係合された摺動部材を有していることである。
上記のように構成した請求項1に係る発明によれば、テンションスプリングによる横架部の上方への移動を規制するロック機構が、横架部の中央部に設けられ、サポートブラケットの移動方向と垂直をなす係合面と、係合面に係脱可能で、アッパパネルの中央部に第1支軸によって回動可能に支持され、且つ第1支軸が係合面の法線方向または法線方向に近似した方向に配置されたポールと、ポールを係合面に係合する方向に付勢する付勢部材と、作動力伝達機構によって作動され、ポールを付勢部材の付勢力に抗して係合面から離脱する方向に回動させるケーブルとを備えているので、ヘッドレストが頭部拘束位置に作動された後、ヘッドレストを再使用する場合には、ヘッドレストを介してサポートブラケットをテンションスプリングの付勢力に抗して下降させるだけで、ポールを横架部の係合面に係合させることができ、初期状態に戻すための特別な構成を不要にすることができる。
請求項2に係る発明によれば、アッパパネルには、ポールに当接面を介して当接するカムが第1支軸と平行な第2支軸によって回転可能に支持され、ポールとカムとの間に、付勢部材が設けられ、カムの当接面と第2支軸を挟んで反対側に、ケーブルに連結されるケーブル連結部を設けたので、ケーブルを下方向に引っ張るだけで、ポールを横架部との係合を解除する方向に回動させることが可能となり、ケーブルを湾曲等させる必要がない。このため、ケーブルを最短経路で構成でき、ケーブルの構成を単純化することができる。しかも、カムを設けたことにより、ケーブルを組み付ける際の作業スペースを確保でき、ケーブルの組み付け作業を簡単に行うことができる。
請求項3に係る発明によれば、ヘッドレスト移動手段は、シートバックフレームに設けられた上下方向に延びるガイド孔を有するガイド部材と、サポートブラケットに設けられ、ガイド部材のガイド孔に摺動可能に係合された摺動部材を有しているので、ヘッドレストを上方に移動しながら前側に傾かせて、乗員の頭部を拘束する頭部拘束位置に位置決めすることができ、乗員の首部を的確に保護することができる。
以下本発明の実施の形態に係る車両用シート装置を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明における左右方向とは、車両(車両用シート)の左右方向をいい、同様に前後方向とは、車両(車両用シート)の前後方向をいう。
図1において、車両用シート装置10は、シートクッション11と、シートバック12と、ヘッドレスト13を備えている。ヘッドレスト13は、略上下方向に移動可能な左右一対のステー14と、ステー14の上端に取付けられたヘッドレスト本体15とを有している。
シートバック12は、図2、図3および図4に示すように、内部にシートバックフレーム20を有している。シートバックフレーム20は、左右一対のサイドパネル21、22と、サイドパネル21、22の上端を連結する逆U字形のアッパパイプ23と、サイドパネル21、22の下端を連結するロアフレーム24とを備え、これらサイドパネル21、22、アッパパイプ23およびロアフレーム24が溶接によって互いに結合された構成となっている。シートバックフレーム20のアッパパイプ23には、左右方向に延在するアッパパネル25の両端部が固定されている。アッパパネル25は、アッパパイプ23と平行に、且つ下方に所定量オフセットして配置されている。アッパパネル25の前面には、左右一対のガイド部材26が固定されている。
アッパパイプ23には、左右一対の保持ブラケット27が固定され、これら保持ブラケット27とアッパパイプ23との各間に、上下方向に平行に延びる略矩形状のパイプ材からなる左右一対の摺動筒部材28が上下方向に移動可能に保持されている。保持ブラケット27には、図6に示すように、摺動筒部材28を挟んでアッパパイプ23と対向する面に、円弧凸部27aが形成され、摺動筒部材28の前後両面は、アッパパイプ23の円弧部と保持ブラケット27の円弧凸部27aに挟持され、これによって、摺動筒部材28は、上下方向に移動可能であるとともに、前後方向に傾動可能となっている。
シートバックフレーム20には、車両の衝突(後突)時に、ヘッドレスト13をシートバック12に対して頭部拘束位置に移動させるヘッドレスト移動手段30が配設されている。ヘッドレスト移動手段30は、図3および図4に詳細図示するように、ヘッドレスト13を保持するステーサポート部材31と、ステーサポート部材31を上方向に付勢するテンションスプリング32と、テンションスプリング32によるヘッドレスト13の上方向への移動を規制するロック機構33と、ロック機構33に一端が連結され、下方向への引っ張りによってロック機構33をロック解除するケーブル34を備えている。
ステーサポート部材31は、左右一対の摺動筒部材28と、これら摺動筒部材28にそれぞれ嵌装固定されたサポートブラケット35と、これらサポートブラケット35の下部に両端を固定された横架部36とによって構成されている。横架部36は、左右方向に延在され、アッパパネル25と略平行に配置されている。ステーサポート部材31は、左右一対のガイド部材26の間に配置され、シートバック12に後突による衝撃荷重が作用された際に、ガイド部材26および保持ブラケット27に案内されながら略上下方向に移動できるようになっている。なお、サポートブラケット35の各上端には、ステー14(図1、図2参照)が上下方向に摺動可能に挿入され、周知のノッチ機構によって、所定の高さ位置に保持されるようになっている。
ステーサポート部材31の各サポートブラケット35の下部には、摺動ピン37が左右方向の互いに外向きに、すなわち、アッパパイプ23と互いに平行にそれぞれ取付けられ、これら摺動ピン37は、ガイド部材26に形成された後述するガイド孔43に摺動可能に係合されている。ガイド部材26は、アッパパネル25に固定される左右一対のガイドブラケット41と、これらガイドブラケット41に一体的に取付けられた樹脂製の摺動ガイド42とによって構成されている。摺動ガイド42は、図4および図6に示すように、ガイドブラケット41に形成された取付孔41aに嵌合する嵌合突起部42bを有している。嵌合突起部42bには、摺動ピン37が摺動可能に係合する略円弧状あるいは直線状の長孔からなるガイド孔43が、略上下方向に沿って且つ上方に向かうにつれて斜め後方に偏移するように形成されている。
ガイド孔43の長手方向の両端部の幅寸法は、摺動ピン37のピン径とほぼ等しくされているのに対し、ガイド孔43の両端部を除く中央部の幅寸法は、摺動ピン37のピン径より大きくされている。このように、ガイド孔43の寸法幅をガイド孔43の長手方向で変化させることにより、摺動ピン37がガイド孔43の長手方向の両端部に位置している状態においては、摺動ピン37とガイド孔43(ガイド部材26)との間のガタを除去し、且つ摺動ピン37がガイド孔43に沿って摺動する途中では、ガタによって摺動抵抗を軽減できるようにしている。
なお、ヘッドレスト13の通常使用位置(初期位置)においては、図6に示すように、摺動ピン37とガイド孔43の下方端部との間に僅かな隙間cが設けられている。この隙間cは、後述するように、後突等によって頭部拘束位置に移動されたヘッドレスト13を初期位置に復帰させる際に必要なものである。
テンションスプリング32は、図3に示すように、左右一対の保持ブラケット27と横架部36との間に左右2つ配設されており、左右2つのテンションスプリング32は、シートバックフレーム20の左右方向の中心位置より等距離だけ隔てた位置に配置されている。テンションスプリング32のそれぞれ一端(上端)は保持ブラケット27に係止され、他端(下端)は横架部36に係止されて、横架部36(ステーサポート部材31)をアッパパイプ23に対して上方向に付勢している。
横架部36の背面側には、図7に示すように、ガイド部材26のガイド孔43の長手方向に略平行な傾斜面36aと、この傾斜面36aの上部に連続して、サポートブラケット35の移動方向に略垂直、すなわち、ガイド孔43の長手方向に略垂直な係合面36bとが形成され、この係合面36bに後述するロック機構33のポール47が当接するようになっている。なお、係合面36bは、円弧状であってもよく、請求項における「サポートブラケットの移動方向と垂直をなす係合面」は、そのような円弧状のものも、また、サポートブラケット35の移動方向に対して垂直に近い構成も、実質的に含むものである。
ロック機構33は、アッパパネル25と横架部36との間の前後方向隙間に配設され、アッパパネル25の前面側に取付けられている。ロック機構33は、図7に示すように、アッパパネル25の左右中央部に固定されたロックブラケット45と、ロックブラケット45に第1支軸46の回りに回動可能に支持され、横架部36の係合面36bに係脱可能に係合する係合突部47bを有するポール47と、ロックブラケット45に第2支軸48の回りに回動可能に支持されたカム49とを有している。第1および第2支軸46、48は、アッパパイプ23と互いに平行に、且つ上下方向に所定の間隔を有して、シートバックフレーム20の左右方向の中央部に配置されている。すなわち、ロック機構33を構成するポール47およびカム49は、シートバックフレーム20の左右方向の中央部に重合配置され、常に2つのテンションスプリング32の中間部でステーサポート部材31をロック保持およびロック解除できるようにしている。
ポール47とカム49との間には、付勢部材としての引張りばね50が設けられ、この引張りばね50の付勢力によって、カム49は第2支軸48を中心にして反時計回りに回動され、通常ロックブラケット45のストッパ部45aに係合する角度位置に保持されている。一方、ポール47は、引張りばね50の付勢力によって、第1支軸46を中心にして時計回りに回動され、カム49の当接面49aにポール47の当接面47aが当接する角度位置に保持され、その角度位置で係合突部47bが横架部36の係合面36bに当接し、横架部36の上方向への移動を規制している。この際、横架部36の係合面36bに対して第1支軸46は、係合面36bの法線方向または法線方向に近似した方向に配置されている。これによって、テンションスプリング32のばね力が横架部36を介してポール47に作用しても、ポール47には何ら回転モーメントが作用しない。その結果、テンションスプリング32のばね力を大きくすることができるとともに、横架部36の上方向への移動を確実に規制することができる。
カム49には、当接面49aと第2支軸48を挟んで反対側に係合孔からなるケーブル連結部49bが形成され、このケーブル連結部49bにケーブル34のインナワイヤ51の一端(上端)が連結されている。そして、カム49がケーブル34によって、引張りばね50のばね力に抗して下方に引っ張られると、カム49のケーブル連結部49bがケーブル34の引っ張り方向と同じ方向に移動される。これによって、カム49は第2支軸48を中心にして時計回りに回動され、当接面49a、47aを介してポール47が第1支軸46を中心にして反時計回りに回動される。かかるポール47の反時計回りの回動により、横架部36の係合面36bとの係合が解除され、横架部36はテンションスプリング32のばね力によって上方向に移動される。
このように、カム49を設けたことにより、ケーブル34を下方向に引っ張るだけで、ポール47を横架部36の係合面36bとの係合を解除する反時計回りに回動させることが可能となり、ケーブル34を湾曲等させる必要がない。このため、ケーブル34を最短経路で作動力伝達機構61の作動力をヘッドレスト移動手段30に伝達することができ、ケーブル34の構成を単純化することができる。しかも、横架部36が上方向に移動した図8に示す状態では、ケーブル連結部49bを横架部36の下方位置に突出させることができ、ケーブル34を組み付ける際の作業スペースを確保でき、ケーブル34の組み付け作業を簡単に行うことができる。
上記した構成のロック機構33によれば、シートバック12の前後方向に回動可能なポール47が、横架部36の係合面36bに係脱可能に係合され、シートバック12の左右方向の中央部で、横架部36の上方への移動をロック保持しているので、2つのテンションスプリング32のばね力をステーサポート部材31に常に左右均等に作用させることができる。これにより、ステーサポート部材31が左右で傾くことがなく、ヘッドレスト13の初期位置での保持および頭部拘束位置への移動をバランスよく行うことができる。
図2、図9および図10に示すように、シートバックフレーム20には、車両用シート装置10に着座する乗員の入力荷重によって作動される受圧部材60が、シートバック12の前後方向に移動可能に設けられている。また、シートバックフレーム20の下部中央部には、シートバック12に後突による衝撃荷重が作用され且つ受圧部材60が作動された際に、受圧部材60の作動力をヘッドレスト13側に伝達する作動力伝達機構61が配設されている。
受圧部材60は、例えば、丸棒を屈曲して構成したもので、図略のばねによってシートバック12の前方に向かって付勢されており、乗員からの入力荷重がばねのばね力に打ち勝つと、受圧部材60がばね力に抗してシートバック12の後方に移動される。
作動力伝達機構61は、図9および図10に詳細図示するように、主として、入力リンク部材63と、出力リンク部材64と、作動リンク部材65と、支持ブラケット67によって構成されている。支持ブラケット77は、シートバックフレーム20のロアフレーム24に固定されている。
支持ブラケット67には、支持軸68がロアフレーム24に平行な水平な軸線に沿って取付けられている。支持軸68には、入力リンク部材63の下端および出力リンク部材64の一端が回動可能に支持されている。入力リンク部材63の上端には、受圧部材60に係合する連結部63aが設けられ、入力リンク部材63は受圧部材60の後方への移動によって、支持軸68を中心にして図10の時計回りに回動される。
出力リンク部材64の他端には、インナワイヤ51の一端が連結される連結孔64aが形成され、インナワイヤ51は支持ブラケット67に一端を固定されたアウタチューブ71内に挿通されて、上方向に延在され、その先端(上端)は上記したロック機構33のカム49のケーブル連結部49bが連結される。これらインナワイヤ51およびアウタチューブ71によってケーブル34が構成されている。
出力リンク部材64と支持ブラケット67との間には引張りばね69が設けられ、この引張りばね69のばね力によって、インナワイヤ51に連結された連結孔64aを下方向に移動させるように出力リンク部材64を支持軸68を中心にして図10の時計回りに付勢するようになっている。引張りばね69のばね力は、上記したロック機構33の引張りばね50のばね力より弱くされており、引張りばね69のばね力によってロック機構33をロック解除することはないが、ケーブル34に所定のテンションを付与できるようにしている。これにより、作動力伝達機構61とロック機構33との間の遊び代をなくし、作動ロスの抑制とガタ異音対策の役目を果たしている。
作動リンク部材65は、下端を支持軸68と平行な支軸73によって出力リンク部材64に回動可能に支持されている。支軸73は支持軸68と連結孔64aとの中間位置に配置されている。作動リンク部材65は、後突による衝撃荷重によって車両用シート装置10に慣性力が作動されると、支軸73を中心にして図10の時計回りに回動されるようになっている。作動リンク部材65には、係合溝74が形成され、この係合溝74に係合する係合突部63bが、入力リンク部材63の中央部に設けられている。作動リンク部材65は、出力リンク部材64との間に介挿された引張りばね66によって、支軸73を中心にして図10の反時計回りに付勢され、通常図略のストッパによって図10に示す角度位置に保持されている。これによって、係合突部63bを、係合溝74の中央部に保持している。
作動リンク部材65に形成された係合溝74は、略上下方向に延びるキャンセル溝74aと、キャンセル溝74aに接続する略水平方向に延びる伝達溝74bからなるL字形を呈している。これは、乗員がシートバック12に荒っぽく着座したり、あるいは乗員の膝や肘でシートバック12が強く押されることによって、受圧部材60が図略のばねのばね力に抗してシートバック12の後方に移動された場合には、ロック機構33を作動させないようにするためである。
すなわち、乗員の挙動によって受圧部材60が移動され、入力リンク部材63が支持軸68を中心にして図10の時計回りに回動された場合には、係合突部63bは係合溝74の中央部からキャンセル溝74aに沿ってスライドするだけであり、この状態においては、入力リンク部材63の回動に出力リンク部材64が従動せず、入力リンク部材63が回動されてもインナワイヤ51は作動されない。
これに対し、作動リンク部材65が後突等による慣性力によって、支軸73を中心にして引張りばね66のばね力に抗して図10の時計回りに回動されると、入力リンク部材63の係合突部63bが係合溝74の中央部から伝達溝74b内に突入される。従って、その状態で、入力リンク部材63が支持軸68を中心にして図10の時計回りに回動されると、係合突部63bと伝達溝74bとの係合によって、作動リンク部材65を介して出力リンク部材64が入力リンク部材63に従動して一体的に回動され、インナワイヤ51が下方に引っ張られるようになる。
このようにして、乗員の挙動によってヘッドレスト13が作動されることがないようにし、誤動作を防止するようにしている。
次に、上記した実施の形態における動作について説明する。
車両が後突され、シートバック12に車両の後方から前方へ向かって大きな衝撃荷重が作用されると、作動リンク部材65が引張りばね66のばね力に抗して図10の時計回りに回動される。これにより、入力リンク部材63の係合突部63bは、作動リンク部材65の係合溝74の伝達溝74bに突入される。この状態で、後突による乗員からの入力荷重によって受圧部材60が図略のばねのばね力に抗してシートバック12の後方に移動され、入力リンク部材63が支持軸68を中心にして図10の時計回りに回動されると、出力リンク部材64が作動リンク部材65を介して入力リンク部材63に従動して一体的に回動され、ケーブル34のインナワイヤ51の一端が下方に引っ張られる。
車両が後突され、シートバック12に車両の後方から前方へ向かって大きな衝撃荷重が作用されると、作動リンク部材65が引張りばね66のばね力に抗して図10の時計回りに回動される。これにより、入力リンク部材63の係合突部63bは、作動リンク部材65の係合溝74の伝達溝74bに突入される。この状態で、後突による乗員からの入力荷重によって受圧部材60が図略のばねのばね力に抗してシートバック12の後方に移動され、入力リンク部材63が支持軸68を中心にして図10の時計回りに回動されると、出力リンク部材64が作動リンク部材65を介して入力リンク部材63に従動して一体的に回動され、ケーブル34のインナワイヤ51の一端が下方に引っ張られる。
インナワイヤ51が下方に引っ張られると、カム49が引張りばね50のばね力に抗して第2支軸48を中心にして時計回りに回動され、このカム49の回動に伴い当接部49a,47aを介してポール47が第1支軸46を中心にして反時計回りに回動されるため、ポール47と横架部36の係合面36bとの係合が解除される。この結果、テンションスプリング32のばね力によってステーサポート部材31の横架部36が、図8に示すように、上方に移動される。ステーサポート部材31の上昇により、サポートブラケット35の下端に取付けられた摺動ピン37がガイド孔43に沿って上方に移動しながら斜め後方に移動するため、サポートブラケット35を嵌装した摺動筒部材28は、上昇しつつ、アッパパイプ23の円弧部と保持ブラケット27の円弧凸部27aとを支点にして上部が前方に傾動される。これによって、ヘッドレスト本体15が上方に移動しながら前側に傾き、乗員の頭部を拘束する頭部拘束位置に位置決めされ、乗員の首部を保護する。図5はステーサポート部材31が上昇端まで移動された状態を示す。
この際、横架部36とともに上方に移動するサポートブラケット35に取付けられた摺動ピン37が、摺動ガイド42に形成したガイド孔43内を移動するが、ガイド孔43の幅寸法は両端部を除いて、摺動ピン37のピン径より大きくしてあるため、横架部36の上昇途中における摺動抵抗が軽減され、上昇スピードをアップできる。また、横架部36の下降端および上昇端においては、摺動ピン37とガイド孔43とのガタが除去されるため、ヘッドレスト13を初期位置および頭部拘束位置において安定的に保持できるようになる。このように、ヘッドレスト13の初期位置および頭部拘束位置でのガタを抑制しつつ、作動途中における摺動抵抗を減らして、ヘッドレスト13の安定性と応答性の両立を図っている。
なお、ステーサポート部材31が上昇端まで移動されると、ポール47は、図8の2点鎖線に示すように、引張りばね50のばね力によって、ロックブラケット45のストッパ部45aに係合する角度位置に復帰される。また、後突による慣性力がなくなると、作動力伝達機構61も原位置に復帰されるため、引張りばね69のばね力によってケーブル34が引っ張られ、テンションが付与される。
ところで、ヘッドレスト13が頭部拘束位置に作動された後に、例えば、衝突が比較的軽微で、車両用シート装置10の各構成部品が変形ないしは損傷していない場合には、ヘッドレスト13を初期位置に復帰させて再使用することができる。すなわち、ヘッドレスト13を押し下げると、ステーサポート部材31がテンションスプリング32のばね力に抗して下方へ押し戻され、これによって、ロック機構33のポール47が横架部36の傾斜面36aを滑りながら引張りばね50のばね力によって係合面36bに乗り上げる。その状態で、ヘッドレスト13から手を離すと、テンションスプリング32のばね力によってポール47が係合面36bに係合される。この場合、ポール47と横架部36の係合面36bとの係合を容易に行うために、横架部36をオーバストロークさせる必要があるが、このオーバストロークは、摺動ピン37とガイド孔43の端部との間の隙間cによって可能となる。
上記した実施の形態によれば、テンションスプリング32による横架部36の上方への移動を規制するロック機構33が、横架部36の中央部に設けられ、サポートブラケットの移動方向と垂直をなす係合面36bと、この係合面36bに係脱可能で、アッパパネル25の中央部に第1支軸46によって回動可能に支持され、且つ第1支軸46が係合面36bの法線方向または法線方向に近似した方向に配置されたポール47と、ポール47を係合面36bに係合する方向に付勢する付勢部材としての引張りばね50と、作動力伝達機構61によって作動され、ポール47を引張りばね50の付勢力に抗して係合面36bから離脱する方向に回動させるケーブル34とを備えているので、ヘッドレスト13が頭部拘束位置に作動された後、ヘッドレスト13を再使用する場合には、ヘッドレスト13をテンションスプリング32の付勢力に抗して押し下げるだけで、ポール47を横架部36の係合面36bに係合させることができ、初期状態に戻すための特別な構成を不要にすることができる。
上記した実施の形態によれば、アッパパネル25には、ポール47に当接面47a、49aを介して当接するカム49が第1支軸46と平行な第2支軸48によって回転可能に支持され、ポール47とカム49との間に、引張りばね50が設けられ、カム49の当接面と第2支軸48を挟んで反対側に、ケーブル34に連結されるケーブル連結部49bを設けたので、ケーブル34を下方向に引っ張るだけで、ポール47を横架部36の係合面36bとの係合を解除する方向に回動させることが可能となり、ケーブル34を湾曲等させる必要がない。このため、ケーブル34を最短経路で作動力伝達機構61の作動力をヘッドレスト移動手段30に伝達することができるようになり、ケーブル34の構成を単純化することができる。しかも、カム39を設けたことにより、ケーブル34を組み付ける際の作業スペースを確保できるようになり、ケーブル34の組み付け作業を簡単に行うことができる。
上記した実施の形態によれば、ヘッドレスト移動手段30は、シートバックフレーム20に設けられた上下方向に延びるガイド孔43を有するガイド部材26と、サポートブラケット35に設けられ、ガイド部材26のガイド孔43に摺動可能に係合された摺動ピン37を有しているので、ヘッドレスト本体13を上方に移動しながら前側に傾かせて、乗員の頭部を拘束する頭部拘束位置に位置決めすることができ、乗員の首部を的確に保護することができる。
上記した実施の形態においては、ロック機構33に、横架部36に形成した係合面36bに係合するポール47と、ポール47に当接面を介して当接するカム49を備えた例について述べたが、頭部拘束位置に作動したヘッドレスト13を初期位置に戻すうえで、カム49は必須の構成要素ではなく、ケーブル34の経路を大回りにすれば、カム49を省略することも可能である。
また、上記した実施の形態においては、ガイド部材26に設けたガイド孔43に、ステーサポート部材31(サポートブラケット35)に設けた摺動ピン37を摺動可能に係合した例について述べたが、ガイド孔43に係合する部材は必ずしもピンである必要はなく、ガイド孔43に沿って摺動できる部材であればよい。
以上、本発明を実施の形態に即して説明したが、本発明は実施の形態で述べた構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内で種々の形態を採り得るものである。
10…車両用シート装置、11…シートクッション、12…シートバック、13…ヘッドレスト、14…ステー、15…ヘッドレスト本体、20…シートバックフレーム、24…ロアフレーム、25…アッパパネル、26…ガイド部材、30…ヘッドレスト移動手段、31…ステーサポート部材、32…テンションスプリング、33…ロック機構、34…ケーブル、35…サポートブラケット、36…横架部、36b…係合面、37…摺動部材(摺動ピン)、43…ガイド孔、46…第1支軸、47…ポール、47a…当接面、48…第2支軸、49…カム、49a…当接面、49b…ケーブル連結部、50…付勢部材(引張りばね)、60…受圧部材、61…作動力伝達機構。
Claims (3)
- 車両用シートのシートバックの上方に配置されるヘッドレスト本体と、
前記ヘッドレスト本体を前記シートバックに支持するステーと、
前記シートバック内に配設され、前記車両用シートに着座する乗員の入力荷重によりばね力に抗して作動される受圧部材と、
前記シートバック内に配設され、前記シートバックに後突による衝撃荷重が作用され且つ前記受圧部材が作動された際に、該受圧部材の作動力を伝達する作動力伝達機構と、
該作動力伝達機構によって作動され、前記ヘッドレスト本体を頭部拘束位置に移動するヘッドレスト移動手段と、
を備えた車両用シート装置において、
前記ヘッドレスト移動手段は、
前記シートバックのシートバックフレームに上下移動可能に支持され、前記ステーを保持する左右一対のサポートブラケットと、
該左右一対のサポートブラケットを連結する左右方向に延在された横架部と、
前記シートバックフレームに両端部が固定された左右方向に延在するアッパパネルと、
前記横架部を前記シートバックフレームに対して上方へ付勢するテンションスプリングと、
該テンションスプリングによる前記横架部の上方への移動を規制し且つ前記作動力伝達機構によって規制を解除されるロック機構とを備え、
該ロック機構は、
前記横架部の左右方向の中央部に設けられ、前記サポートブラケットの移動方向と垂直をなす係合面と、
該係合面に係脱可能で、前記アッパパネルの左右方向の中央部に第1支軸によって前記横架部と平行な軸線の回りに回動可能に支持され、且つ該第1支軸が前記係合面の法線方向または該法線方向に近似した方向に配置されたポールと、
該ポールを前記係合面に係合する方向に付勢する付勢部材と、
前記作動力伝達機構によって作動され、前記ポールを前記付勢部材の付勢力に抗して前記係合面から離脱する方向に回動させるケーブルと、
を備えていることを特徴とする車両用シート装置。 - 請求項1において、前記アッパパネルには、前記ポールに当接面を介して当接するカムが前記第1支軸と平行な第2支軸によって回転可能に支持され、前記ポールと前記カムとの間に、前記付勢部材が設けられ、前記カムの前記当接面と前記第2支軸を挟んで反対側に、前記ケーブルに連結されるケーブル連結部を設けたことを特徴とする車両用シート装置。
- 請求項1または請求項2において、前記ヘッドレスト移動手段は、前記シートバックフレームに設けられた上下方向に延びるガイド孔を有するガイド部材と、
前記サポートブラケットに設けられ、前記ガイド部材のガイド孔に摺動可能に係合された摺動部材を有していることを特徴とする車両用シート装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008169378A JP2010006283A (ja) | 2008-06-27 | 2008-06-27 | 車両用シート装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2008169378A JP2010006283A (ja) | 2008-06-27 | 2008-06-27 | 車両用シート装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2010006283A true JP2010006283A (ja) | 2010-01-14 |
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ID=41587260
Family Applications (1)
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JP2008169378A Pending JP2010006283A (ja) | 2008-06-27 | 2008-06-27 | 車両用シート装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2010006283A (ja) |
-
2008
- 2008-06-27 JP JP2008169378A patent/JP2010006283A/ja active Pending
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