JP2010001442A - 熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法並びに成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】植物性材料(ケナフコア)と、熱可塑性樹脂(PP)と、(C1)スチレン系熱可塑性エラストマー(水添スチレン・ブタジエン共重合体)及び酸変性熱可塑性樹脂(酸変性PP)及び/又は(C2)酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー(酸変性水添スチレン・ブタジエン共重合体)とを含み、これらの合計に対して植物性材料が40〜95質量%。混合溶融装置を用いて、熱可塑性樹脂及び(C1)及び/又は(C2)を溶融させながら植物性材料と混合する工程と、得られた混合物を押し固めてペレットを得る工程とを備える。本成形体は前記熱可塑性樹脂組成物が射出成形されてなる。
【選択図】図3
Description
しかし、特に多量の植物性材料を樹脂に混合し、更には、得られた複合材料を成形するには大きな困難を伴う。これは複合材料に従来の樹脂と同等の十分な流動性を付与することが難しいからであると考えられる。多量の植物材料を含む複合材料を扱う技術としては下記特許文献1及び2が知られている。
即ち、いずれの文献においても、50質量%を超える多量の植物性材料を含む射出成形可能な熱可塑性樹脂組成物を得るには困難を伴うことが示されている。
(1)植物性材料(A)と、熱可塑性樹脂(B)と、下記熱可塑性重合体成分(C1)及び下記熱可塑性重合体成分(C2)のうちの少なくとも一方の熱可塑性重合体成分(C)と、を含有し、
上記植物性材料(A)、上記熱可塑性樹脂(B)及び上記熱可塑性重合体成分(C)の合計を100質量%とした場合に、該植物性材料が40〜95質量%であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
(C1);スチレン系熱可塑性エラストマー及び酸変性熱可塑性樹脂
(C2);酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー
(2)上記熱可塑性重合体成分(C)は1〜30質量%である上記(1)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(3)上記熱可塑性重合体成分(C1)のスチレン系熱可塑性エラストマーは、水素添加型スチレン系熱可塑性エラストマーである上記(1)又は(2)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(4)上記熱可塑性樹脂(B)は、ポリプロピレン及び/又はエチレン・プロピレン共重合体である上記(3)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(5)上記酸変性熱可塑性樹脂は、酸価が5以上であり且つ重量平均分子量が10,000〜200,000である酸変性ポリプロピレンである上記(4)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(6)上記熱可塑性重合体成分(C2)の酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーは、酸変性された水素添加型スチレン系熱可塑性エラストマーである上記(1)又は(2)のうちのいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
(7)上記(1)乃至(6)のうちのいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
混合溶融装置を用いて、上記熱可塑性樹脂(B)及び上記熱可塑性重合体成分(C)を溶融させながら上記植物性材料(A)と混合する混合工程と、
上記混合工程で得られた混合物を、押し固めてペレットを得るペレット化工程と、を備えることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(8)上記混合溶融装置は、上記混合を行う混合室及び該混合室内に配置された混合羽根を備え、
上記混合工程は、上記混合室中で上記混合羽根の回転により溶融された上記熱可塑性樹脂(B)及び上記熱可塑性重合体成分(C)と上記植物性材料(A)とを混合する上記(7)に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(9)上記(1)乃至(6)のうちのいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物が射出成形されてなることを特徴とする成形体。
熱可塑性重合体成分(C)が1〜30質量%である場合は、特に優れた耐衝撃性を発揮させることができる。
熱可塑性重合体成分(C1)のスチレン系熱可塑性エラストマーが水素添加型スチレン系熱可塑性エラストマーである場合は、特に優れた耐衝撃性を発揮させることができる。
熱可塑性樹脂(B)がポリプロピレン及び/又はエチレン・プロピレン共重合体である場合は、特に優れた耐衝撃性を発揮させることができる。
酸変性熱可塑性樹脂の酸価が5以上であり且つ重量平均分子量が10,000〜200,000である酸変性ポリプロピレンである場合は、植物性材料(A)及び熱可塑性樹脂(B)との相互の相溶性に優れ、得られる熱可塑性樹脂組成物全体に含まれた各成分の分散性と密着性に優れ、特に優れた耐衝撃性を発揮させることができる。
熱可塑性重合体成分(C2)の酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーが酸変性された水素添加型スチレン系熱可塑性エラストマーである場合は、植物性材料(A)及び熱可塑性樹脂(B)との相互の相溶性に優れ、得られる熱可塑性樹脂組成物全体に含まれた各成分の分散性と密着性に優れ、特に優れた耐衝撃性を発揮させることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法によれば、植物性材料を40〜95質量%と多く含みながら射出成形可能であり且つ耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
混合溶融装置が混合を行う混合室及び混合室内に配置された混合羽根を備え、混合工程が混合室中で混合羽根の回転により溶融された熱可塑性樹脂(B)及び熱可塑性重合体成分(C)と植物性材料とを混合する工程である場合は、とりわけ効率よく熱可塑性樹脂(B)と熱可塑性重合体成分(C)に植物性材料(A)を多く含有させながら射出成形できる熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
本発明の成形体によれば、植物性材料が40〜95質量%と多く含有されながら優れた耐衝撃性を発揮できる。加えて優れた柔軟性を発揮できる。
[1]熱可塑性樹脂組成物
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、植物性材料(A)と、熱可塑性樹脂(B)と、下記熱可塑性重合体成分(C1)及び下記熱可塑性重合体成分(C2)のうちの少なくとも一方の熱可塑性重合体成分(C)と、を含有し、
上記植物性材料(A)、上記熱可塑性樹脂(B)及び上記熱可塑性重合体成分(C)の合計を100質量%とした場合に、該植物性材料が40〜95質量%であることを特徴とする。
(C1);スチレン系熱可塑性エラストマー及び酸変性熱可塑性樹脂
(C2);酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー
上記「植物性材料(A)」は、植物に由来する材料である。この植物性材料としては、ケナフ、ジュート麻、マニラ麻、サイザル麻、雁皮、三椏、楮、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹、各種針葉樹(スギ及びヒノキ等)、広葉樹及び綿花などの各種植物体から得られた植物性材料が挙げられる。この植物性材料は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかではケナフが好ましい。ケナフは成長が極めて早い一年草であり、優れた二酸化炭素吸収性を有するため、大気中の二酸化炭素量の削減、森林資源の有効利用等に貢献できるからである。
更に、本発明の熱可塑性樹脂組成物内に含まれる植物性材料(混合前の植物性材料)の形状は特に限定されず、繊維状であってもよく、非繊維状(粉末状、破砕物状、チップ状及び不定形状等が含まれる)であってもよい。
また、本発明におけるジュートとは、ジュート麻から得られる繊維である。このジュート麻には、黄麻(コウマ、Corchorus capsularis L.)、及び、綱麻(ツナソ)、シマツナソ並びにモロヘイヤ、を含む麻及びシナノキ科の植物を含むものとする。
上記「熱可塑性樹脂(B)」は、熱可塑性を有する樹脂であるが、後述する熱可塑性重合体成分(C1)の酸変性熱可塑性樹脂と異なり、酸変性されてない熱可塑性樹脂である。この熱可塑性樹脂(B)としては、特に限定されず種々のものを用いることができる。熱可塑性樹脂(B)としては、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン等)、ポリエステル樹脂{(ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル樹脂)、(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリトリメチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂)}、ポリスチレン、アクリル樹脂(メタクリレート及び/又はアクリレート等を用いて得られた樹脂)、ポリアミド樹脂(ナイロン等)、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらのなかでは、ポリ乳酸、乳酸と乳酸を除く他の上記ヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリカプロラクトン、及び上記ヒドロキシカルボン酸のうちの少なくとも1種とカプロラクトンとの共重合体が好ましく、特にポリ乳酸が好ましい。これらの生分解性樹脂は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。尚、上記乳酸にはL−乳酸及びD−乳酸を含むものとし、これらの乳酸は単独で用いてもよく、併用してもよい。
熱可塑性重合体成分(C)は、熱可塑性重合体成分(C1)及び熱可塑性重合体成分(C2)を含む成分であり、これらの熱可塑性重合体成分(C1)と熱可塑性重合体成分(C2)はいずれか一方のみが含有されてもよく、両方が含まれてもよい。
このうち熱可塑性重合体成分(C1)は、スチレン系熱可塑性エラストマー及び酸変性熱可塑性樹脂であり、熱可塑性重合体成分(C2)は、酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーである。
上記「スチレン系熱可塑性エラストマー」は、芳香族ビニル化合物(スチレン等)に由来する構成単位を含む共重合体であり、通常、この芳香族ビニル化合物に由来する構成単位は、芳香族ビニル重合体ブロック(ポリスチレンブロック)として含有され、スチレン系熱可塑性エラストマー内においてハードセグメントとして機能される。また、このスチレン系熱可塑性エラストマーは水素添加されていてもよく、水素添加されていなくてもよいが、特に熱可塑性樹脂(B)としてオレフィン系熱可塑性樹脂を用いる場合には、水素添加された水素添加型スチレン系熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。尚、スチレン系熱可塑性エラストマーは、後述する酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーと異なり、酸変性されてないスチレン系熱可塑性エラストマーである。
尚、スチレン系熱可塑性エラストマーは、通常、その全構成単位を100モル%とした場合に芳香族ビニル化合物に由来する構成単位を5モル%を越えて(通常80モル%以下)含有する。
このうち水素添加型スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、水素添加型スチレン・ブタジエン共重合体、及び、水素添加型スチレン・イソプレン共重合体等が挙げられる。このうち水素添加型スチレン・ブタジエン共重合体としては、水素添加型スチレン・ブタジエンランダム共重合体(HSBR)、及び、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS,水素添加型スチレン・ブタジエンブロック共重合体)が挙げられる。一方、水素添加型スチレン・イソプレン共重合体としては、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS,水素添加型スチレン・イソプレンブロック共重合体)等が挙げられる。
一方、スチレン・イソプレン共重合体としては、スチレン・イソプレンブロック共重合体が挙げられ、より具体的には、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)等が挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物では、スチレン系熱可塑性エラストマーと酸変性熱可塑性樹脂とを併用することによって、スチレン系熱可塑性エラストマーによる耐衝撃性向上効果を発揮させることができる。これにより、植物性材料を多く含有しながら優れた耐衝撃性を発揮できる熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。この作用は、酸変性熱可塑性樹脂を配合することで植物性材料とスチレン系熱可塑性エラストマーとの相溶性が向上されることで得られるものと考えられる。
上記「酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー」は、酸基を有するスチレン系熱可塑性エラストマーである。この酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーは、スチレン系熱可塑性エラストマーを酸変性したり、芳香族ビニル化合物と共役ジエンと酸基を有する化合物とを共重合したりするなどして得ることができる。このうち、芳香族ビニル化合物及び共役ジエンについては前記スチレン系熱可塑性エラストマーにおける各々の記載をそのまま適用できる。また、酸基を有する化合物としては、前記酸変性熱可塑性樹脂におけるこの化合物に関する記載をそのまま適用できる。
酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーに導入される酸基の量は特に限定されないものの、酸価において2以上であることが好ましく、2〜15がより好ましく、4〜13が更に好ましく、8〜13が特に好ましい。尚、この酸価はJIS K0070によるものである。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれる各成分の含有量は、植物性材料(A)と熱可塑性樹脂(B)と熱可塑性重合体成分(C)との合計を100質量%とした場合に、植物性材料(A)が40〜95質量%である。この含有量は40〜90質量%が好ましく、40〜80質量%がより好ましく、40〜70質量%が更に好ましい。この含有量は、通常、製造時に配合する植物性材料(A)の配合量と同じである。
また、熱可塑性樹脂(B)は4〜59質量%とすることが好ましい。この範囲では優れた流動性と機械的強度を得ることができる。この含有量は、10〜55質量%がより好ましく、15〜55質量%が更に好ましく、20〜50質量%が特に好ましい。
更に、熱可塑性重合体成分(C)は1〜30質量%とすることが好ましい。この範囲では耐衝撃性を向上させることができる。この含有量は、2〜27質量%がより好ましく、3〜25質量%が更に好ましく、4〜22質量%が特に好ましい。
更に、この熱可塑性重合体成分(C1)を使用する場合において、本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれる植物性材料(A)と熱可塑性樹脂(B)とスチレン系熱可塑性エラストマーと酸変性熱可塑性樹脂との合計を100質量%とした場合に、酸変性熱可塑性樹脂の割合は1〜20質量%とすることが好ましい。この範囲では、熱可塑性樹脂組成物内から酸変性熱可塑性樹脂がブリードすることを防止しつつ、高い相溶化効果を得ることができる。この含有量は、1〜15質量%がより好ましく、1.5〜12質量%が更に好ましい。
尚、これらの各成分の含有量は、通常、製造時に配合する各成分の配合量と同じである。
前記本発明の熱可塑性樹脂組成物を得る方法は特に限定されず、前記熱可塑性樹脂組成物を得ることができればよく、その混合順序等は特に限定されないが、例えば、下記(1)及び(2)の方法が挙げられる。
上記混合工程で得られた混合物を、押し固めてペレットを得るペレット化工程と、を備えることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法(以下、単に「第1の方法」ともいう)。
上記混合工程で得られた混合物を、押し固めてペレットを得るペレット化工程と、
上記ペレットと上記熱可塑性重合体成分(C)とを混合してペレット混合物を得るペレット混合工程と、
上記ペレット混合物を射出成形して熱可塑性樹脂組成物(熱可塑性樹脂組成物からなる成形体として得られる)を得る射出成形工程と、を備えることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法(以下、単に「第2の方法」ともいう)。
上記のうち繊維状の植物性材料(以下、単に「植物性繊維」ともいう)は、植物体から取り出された繊維であり、且つ長さ(繊維長)Lに対する径(繊維径)tの割合L/tが5.0〜20,000であるものをいう。この植物性繊維において、上記繊維長Lは、通常、0.5〜300mmであり、上記繊維径tは、通常、0.01〜1mmである。この繊維長は、JIS L1015における直接法と同様に、1本の植物性繊維を伸張させずにまっすぐに伸ばし、置尺上で測定した値(L)である。一方、繊維径は、繊維長を測定した当該植物性繊維について、繊維の長さ方向の中央における繊維径を光学顕微鏡を用いて測定した値(t)である。
一方、上記平均繊維径は、0.2mm以下が好ましい。平均繊維径が0.2mm以下の植物性繊維を用いることで、植物性繊維を用いることによる前記効果をよりよく得ることができる。この平均繊維径は0.01〜0.15mmがより好ましく、0.01〜0.1mmが特に好ましい。この平均繊維径は、無作為に単繊維を1本ずつ取り出し、繊維の長さ方向の中央における繊維径を光学顕微鏡を用いて実測し、合計200本について測定した平均値である。
更に、その形状が粉末状である場合には、平均粒径は5.0mm以下(通常0.1mm以上、更には0.2〜5.0mm、より更には0.3〜4.0mm、特に0.3〜3mm、とりわけ0.5〜2mm)とすることが好ましい。尚、平均粒径とは、粒度分布測定装置によって測定された粒度分布におけるD50の値である。
尚、本方法により得られる熱可塑性樹脂組成物では、上記混合前の植物性材料の形状及び大きさは、熱可塑性樹脂組成物内でそのまま維持されてもよく、維持されなくてもよい。維持されない場合としては、混合時に更に細かく粉砕されて熱可塑性樹脂組成物内に含まれる場合が挙げられる。
このケナフは靭皮と称される外層部分とコアと称される芯材部分とからなるが、このうち靭皮は、強靱な繊維を有するために利用価値が高いのに対して、コアはケナフ全体の60体積%程をも占めるにも関わらず、植物性繊維にすることができない。更に、見掛け比重が小さく嵩高いために取扱い性が悪く、樹脂等との混練が難しく、コアは廃棄又は燃料化されることが多い。しかし、本方法によれば、ケナフコアを植物性材料として利用しつつも機械的特性に優れ且つ射出成形が可能な高い流動性を有する熱可塑性樹脂組成物を選ることができる。
また、上記混合室は、該混合室を構成する壁に冷却媒体を循環させることができる混合室冷却手段を備えることがより更に好ましい。この構成により、混合室内の過度な温度上昇を抑制でき、熱可塑性樹脂{第1の方法においては、更に熱可塑性重合体成分(C)}の分解及び熱劣化を抑制(更には防止)できる。
また、上記温度の制御は、混合溶融装置の混合羽根の回転速度を制御することによって行うことが好ましい。より具体的には、混合羽根の先端の回転速度を5m/秒〜50m/秒となるように制御することが好ましい。この範囲に制御することで、効率よく熱可塑性樹脂{第1の方法においては、更に熱可塑性重合体成分(C)}を軟化・溶融させつつ、植物性材料とより強力に(より均一に)混合することができる。
ペレット化は、どのように行ってもよい。即ち、例えば、上記混合溶融装置と、得られた熱可塑性樹脂組成物が除熱される前にペレット化(細分化)できるペレット化装置と、が一体的に設けられた装置を用いる場合には、混合とペレット化とを連続的に行ってペレットを得ることができる。また、上記のようなペレット化装置が併設されていない装置を用いる場合は、混合溶融装置からは、通常、塊状の混合物が得られるため、この塊状の混合物をペレット化することでペレットを得ることができる。尚、塊状の混合物は、通常、ペレット化前に破砕を行う。破砕方法は特に限定されないが、従来公知の破砕機を用いて行うことができる。
このローラーディスクダイ式成形機500では、上記構成に加えて更に、上記プレスローラ52は表面に凹凸521を備えるものであることが好ましい。また、主回転軸53の回転に伴って回転される切断用ブレード55を備えることが好ましい。
得られるペレットの形状及び大きさは特に限定されないが、柱状(その他の形状であってもよいが、円柱状が好ましい)であることが好ましい。また、その最大長さは1mm以上(通常20mm以下)とすることが好ましく、1〜10mmがより好ましく、2〜7mmが特に好ましい。
この射出成形における各種成形条件及び使用する装置等は特に限定されず、目的とする成形体及び性状、使用されている熱可塑性樹脂の種類等により適宜のものとすることが好ましい。
本発明の成形体は、前記第1の方法により得られた熱可塑性樹脂組成物(ペレット化された熱可塑性樹脂組成物)を射出成形してなる。射出成形については前述の通りである。本発明の成形体によれば、植物性材料を40〜95質量%と多く含みながら射出成形可能であり且つ耐衝撃性に優れる。特に大きな撓み量と適度な大きさの曲げ弾性率を備える。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は植物性材料を40〜95質量%と多く含みつつも、優れた流動性を有するため、成形時の計量時間(射出成形機における計量時間等)、及び射出時間などを短縮できる結果、成形サイクルが短縮されて、成形効率を向上させることができる。従って、優れた耐衝撃性を備える成形体を安価に効率よく製造することができる。
[1]熱可塑性樹脂組成物の製造
(1)実験例1〜17(実施例1〜5、9〜12及び14〜17)
下記に示す各植物性材料(A)、熱可塑性樹脂(B)、熱可塑性重合体成分(C)を、表1及び表2に示す組合せ及び配合量で用い、混合溶融装置1(株式会社エムアンドエフ・テクノロジー製、WO2004−076044号に示された器機)の材料供給室(図4の13)に投入{各植物性材料(A)と熱可塑性樹脂(B)と熱可塑性重合体成分(C)とで合計700g}した後、混合室(容量5L、図4の3)内で混合した。この混合に際して混合羽根(図3の10及び図5の10a〜10f)は回転速度2000rpmで回転させた。そして、混合羽根にかかる負荷(トルク)が上昇し、最大値に達して(100%を超えて)6秒後を終点として混合を停止して、得られた混合物(ペレット化前の熱可塑性樹脂組成物)を混合溶融装置から排出した。
「ケナフコア」;粒径1.0mm以下のケナフコアの破砕物(ケナフコアを破砕後、目
開き1.0mm円孔板篩の篩下として選別)。
「ケナフ繊維」;平均繊維長3mmのケナフ繊維(ケナフ繊維の裁断物を篩選別後、J
IS L1015に準拠して、直接法にて無作為に単繊維を1本ずつ
取り出し、伸張させずにまっすぐに伸ばし、置尺上で繊維長を測定し
、合計200本についての平均値)。
「PP」 ;ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製、品名「ノバティック
NBX03HRS」)
「TPS」 ;水素添加型スチレン・ブタジエン共重合体(スチレン系熱可塑性エラ
ストマー、旭化成株式会社製、品名「タフテック H1221」、シ
ョアA硬度42、スチレン含有量12質量%)
「酸変性PP」;無水マレイン酸変性ポリプロピレン(酸変性熱可塑性樹脂、三洋化成
工業株式会社製、品名「ユーメックス #1001」、ベースポリマ
ーがポリプロピレン、重量平均分子量が40,000、溶融粘度が1
6,000mPa・s、酸価が26)。
「酸変性TPS」;酸変性水素添加型スチレン・ブタジエン共重合体(酸変性スチレン
系熱可塑性エラストマー、旭化成株式会社製、品名「タフテック
H1943」、ショアA硬度67、酸価10、スチレン含有量20
質量%)
上記[1]で得られた実験例1〜17の各熱可塑性樹脂組成物を射出成形機(住友重機械工業株式会社製、形式「SE100DU」)に各々投入し、シリンダー温度190℃、型温度40℃の条件で、各種試験片(長さ80mm×幅10mm×厚さ4mm)を成形した。
上記[2]で得られた実験例1〜17の成形体の曲げ弾性率及び撓み量を測定した。このうち曲げ弾性率については、各試験片を支点間距離(L)64mmとした2つの支点(曲率半径5mm)で支持しつつ、支点間中心に配置した作用点(曲率半径5mm)から速度2mm/分にて荷重の負荷を行い測定した(JIS K7171に準拠)。また、撓み量については、曲げ試験における破断点までの作用点のストローク量を計測することで測定を行った。この結果は上記表1及び上記表2に併記した。更に、実験例9〜12より、スチレン系熱可塑性エラストマーの含有量と撓み量及び曲げ弾性率との相関を図1に、実験例13〜17より、酸変性熱可塑性樹脂の含有量と撓み量及び曲げ弾性率との相関を図2に、各々グラフとして示した。
表1より、実験例6(比較例)は、熱可塑性重合体成分(C)を含まない例であり、その撓み量は2.5mmであり、曲げ弾性率は4500MPaである。
これに対して、実験例8(比較例)は、実験例6(比較例)におけるケナフコアの一部に換えてスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)を含有させた例であり、その撓み量は3.5mmであり、曲げ弾性率は2300MPaである。即ち、植物性材料の一部に換えてTPSを含有させることで曲げ弾性率は大きく低下(−49%)させることができたものの、撓み量は1.4倍となるにとどまることが分かる。
上記実験例8(比較例)に対して、実験例2(実施例)は、実験例8におけるPPの一部に換えて酸変性PPを含有させた例であり、その撓み量は13mmであり、曲げ弾性率は2400MPaである。即ち、PPの一部を酸変性PPに換えることで曲げ弾性率をほぼ変化させずに、撓み量は3.7倍(実験例6に対しては5.2倍)もの大きさに飛躍的に向上されていることが分かる。このことから、TPSだけでなく、酸変性PPを併用することで飛躍的な耐衝撃性の向上が得られることが分かる。
同様に、実験例6(比較例)の熱可塑性樹脂(B)の一部を、熱可塑性重合体成分(C2)で置換した組成に相当する実験例5(実施例)では、撓み量が8mmであり、曲げ弾性率が2900MPaである。即ち、熱可塑性重合体成分(C2)の配合により、撓み量は3.2倍と飛躍的に向上され、曲げ弾性率は64%まで低下させることができた。
また、実験例7(比較例)は、撓み量が3mmであり、曲げ弾性率が5000MPaである。これに対して、実験例7の熱可塑性樹脂(B)の一部を、熱可塑性重合体成分(C1)で置換した組成に相当する実験例4(実施例)では、撓み量が18mmであり、曲げ弾性率が3200MPaである。即ち、熱可塑性重合体成分(C1)の配合により、撓み量は6倍と飛躍的に向上され、曲げ弾性率は64%まで低下させることができた。
また、表2及び図2より、TPSの配合量を固定したままで、酸変性PPの配合量を大きくすると、撓み量を飛躍的に大きくできることが分かる。従って、TPSと酸変性PPとの両方の配合により、撓み量を大きくしつつも、曲げ弾性率を適度な大きさにコントロールできることが分かる。この結果、PPと植物性材料とのみを混合した成形体に比べて、飛躍的に大きな撓みを発揮させることができると共に、割れるときには過度な応力を蓄積することなく割れるという実用性に優れた熱可塑性樹脂組成物及び成形体が得られることが分かる。
Claims (9)
- 植物性材料(A)と、熱可塑性樹脂(B)と、下記熱可塑性重合体成分(C1)及び下記熱可塑性重合体成分(C2)のうちの少なくとも一方の熱可塑性重合体成分(C)と、を含有し、
上記植物性材料(A)、上記熱可塑性樹脂(B)及び上記熱可塑性重合体成分(C)の合計を100質量%とした場合に、該植物性材料が40〜95質量%であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
(C1);スチレン系熱可塑性エラストマー及び酸変性熱可塑性樹脂
(C2);酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー - 上記熱可塑性重合体成分(C)は1〜30質量%である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 上記熱可塑性重合体成分(C1)のスチレン系熱可塑性エラストマーは、水素添加型スチレン系熱可塑性エラストマーである請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 上記熱可塑性樹脂(B)は、ポリプロピレン及び/又はエチレン・プロピレン共重合体である請求項3に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 上記酸変性熱可塑性樹脂は、酸価が5以上であり且つ重量平均分子量が10,000〜200,000である酸変性ポリプロピレンである請求項4に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 上記熱可塑性重合体成分(C2)の酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーは、酸変性された水素添加型スチレン系熱可塑性エラストマーである請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1乃至6のうちのいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
混合溶融装置を用いて、上記熱可塑性樹脂(B)及び上記熱可塑性重合体成分(C)を溶融させながら上記植物性材料(A)と混合する混合工程と、
上記混合工程で得られた混合物を、押し固めてペレットを得るペレット化工程と、を備えることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。 - 上記混合溶融装置は、上記混合を行う混合室及び該混合室内に配置された混合羽根を備え、
上記混合工程は、上記混合室中で上記混合羽根の回転により溶融された上記熱可塑性樹脂(B)及び上記熱可塑性重合体成分(C)と上記植物性材料(A)とを混合する請求項7に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。 - 請求項1乃至6のうちのいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物が射出成形されてなることを特徴とする成形体。
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