JP5169530B2 - 熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法並びに成形体の製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、特に多量の植物性材料を樹脂に混合し、更には、得られた複合材料を成形するには大きな困難を伴う。これは複合材料に従来の樹脂と同等の十分な流動性を付与することが難しいからであると考えられる。多量の植物材料を含む複合材料を扱う技術としては下記特許文献1及び2が知られている。
即ち、いずれの文献においても、50質量%を超える多量の植物性材料を含む射出成形可能な熱可塑性樹脂組成物を得るには困難を伴うことが示されている。
(1)植物性材料と熱可塑性エラストマーとを含有し、該植物性材料及び該熱可塑性エラストマーの合計を100質量%とした場合に、該植物性材料を50〜95質量%含有する熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
混合溶融装置を用いて、ショアA硬度が60以上70以下である熱可塑性エラストマーを溶融させながら植物性材料と混合する混合工程と、
上記混合工程で得られた混合物を破砕し、破砕物を加熱せず押し固めてペレットを得るペレット化工程と、を備えることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(2)前記ペレット化工程では、ローラー式成形方法が用いられ、
ダイに接して回転されるローラーにより前記破砕物がダイ内に圧入された後、前記ダイから押し出されて前記ペレットが成形される上記(1)に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(3)上記熱可塑性エラストマーは、オレフィン系熱可塑性エラストマーである上記(1)又は(2)に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(4)上記植物性材料は、平均粒径が5.0mm以下のケナフコア粉末及び/又は平均繊維長が10mm以下のケナフ繊維である上記(1)乃至(3)のうちのいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(5)上記混合工程において、上記熱可塑性エラストマー及び上記植物性材料と共に、酸変性熱可塑性樹脂を混合する上記(1)乃至(4)のうちのいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(6)上記酸変性熱可塑性樹脂は、酸変性ポリプロピレンであり、
上記熱可塑性エラストマー、上記植物性材料及び上記酸変性ポリプロピレンの合計を100質量%とした場合に、上記酸変性ポリプロピレンは1〜10質量%である上記(5)に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(7)上記混合溶融装置は、上記混合を行う混合室及び該混合室内に配置された混合羽根を備え、
上記混合工程は、上記混合室中で上記混合羽根の回転により溶融された上記熱可塑性エラストマーと上記植物性材料とを混合する上記(1)乃至(6)のうちのいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(8)上記(1)乃至(7)のうちのいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法により得られたことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
(9)上記(1)乃至(7)のうちのいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法により得られた熱可塑性樹脂組成物を射出成形して成形体を得ることを特徴とする成形体の製造方法。
熱可塑性エラストマーがオレフィン系熱可塑性エラストマーである場合は、適度な曲げ弾性率が得られつつ大きな撓み量を得ることができる。
植物性材料が平均粒径5.0mm以下のケナフコア粉末及び/又は平均繊維長10mm以下のケナフ繊維である場合は、この範囲を外れる植物性材料を用いた場合に比べて高い機械的強度を得つつ、大きな撓み量を得ることができる。
混合工程において、熱可塑性エラストマー及び植物性材料と共に、酸変性熱可塑性樹脂を混合した場合は、酸変性熱可塑性樹脂を用いない場合に比べて、大きな撓み量は維持しつつ、曲げ弾性率をより大きくすることができる。
酸変性熱可塑性樹脂が酸変性ポリプロピレンであり、熱可塑性エラストマー、植物性材料及び酸変性ポリプロピレンの合計を100質量%とした場合に酸変性ポリプロピレンが1〜10質量%である場合は、酸変性熱可塑性樹脂の添加による熱可塑性樹脂組成物全体への性状変化を抑制しつつ、高い添加効果を得ることができる。
混合溶融装置が混合を行う混合室及び混合室内に配置された混合羽根を備え、混合工程が混合室中で混合羽根の回転により溶融された熱可塑性エラストマーと植物性材料とを混合する工程である場合は、とりわけ効率よく熱可塑性エラストマーに植物性材料を多く含有させながら射出成形できる熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物によれば、熱可塑性エラストマーに植物性材料が50〜95質量%と多く含有されながら射出成形することができる。更に、得られた成形体に優れた耐衝撃性を発揮させることができる。
本発明の成形体の製造方法によれば、植物性材料を50〜95質量%と多く含有しながら優れた耐衝撃性を発揮できる成形体が得られる。加えて優れた柔軟性を発揮させることができる。
[1]熱可塑性樹脂組成物の製造方法
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、植物性材料と熱可塑性エラストマーとを含有し、該植物性材料及び該熱可塑性エラストマーの合計を100質量%とした場合に、該植物性材料を50〜95質量%含有する熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
混合溶融装置を用いて、ショアA硬度が60以上70以下である熱可塑性エラストマーを溶融させながら植物性材料と混合する混合工程と、
上記混合工程で得られた混合物を破砕し、破砕物を加熱せず押し固めてペレットを得るペレット化工程と、を備えることを特徴とする。
上記「植物性材料」は、植物に由来する材料である。この植物性材料としては、ケナフ、ジュート麻、マニラ麻、サイザル麻、雁皮、三椏、楮、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹、各種針葉樹(スギ及びヒノキ等)、広葉樹及び綿花などの各種植物体から得られた植物性材料が挙げられる。この植物性材料は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかではケナフが好ましい。ケナフは成長が極めて早い一年草であり、優れた二酸化炭素吸収性を有するため、大気中の二酸化炭素量の削減、森林資源の有効利用等に貢献できるからである。
また、上記植物性材料として用いる植物体の部位は特に限定されず、非木質部、木質部、葉部、茎部及び根部等の植物体を構成するいずれの部位であってもよい。更に、特定部位のみを用いてもよく2ヶ所以上の異なる部位を併用してもよい。
また、本発明におけるジュートとは、ジュート麻から得られる繊維である。このジュート麻には、黄麻(コウマ、Corchorus capsularis L.)、及び、綱麻(ツナソ)、シマツナソ並びにモロヘイヤ、を含む麻及びシナノキ科の植物を含むものとする。
一方、上記平均繊維径は、0.2mm以下が好ましい。平均繊維径が0.2mm以下の植物性繊維を用いることで、植物性繊維を用いることによる前記効果をよりよく得ることができる。この平均繊維径は0.01〜0.15mmがより好ましく、0.01〜0.1mmが特に好ましい。この平均繊維径は、無作為に単繊維を1本ずつ取り出し、繊維の長さ方向の中央における繊維径を光学顕微鏡を用いて実測し、合計200本について測定した平均値である。
更に、その形状が粉末状である場合には、平均粒径は5.0mm以下(通常0.1mm以上、更には0.2〜5.0mm、より更には0.3〜4.0mm、特に0.3〜3mm、とりわけ0.5〜2mm)とすることが好ましい。尚、平均粒径とは、粒度分布測定装置によって測定された粒度分布におけるD50の値である。
このケナフは靭皮と称される外層部分とコアと称される芯材部分とからなるが、このうち靭皮は、強靱な繊維を有するために利用価値が高いのに対して、コアはケナフ全体の60体積%程をも占めるにも関わらず、植物性繊維にすることができない。更に、見掛け比重が小さく嵩高いために取扱い性が悪く、樹脂等との混練が難しく、コアは廃棄又は燃料化されることが多い。しかし、本方法によれば、ケナフコアを植物性材料として利用しつつも機械的特性に優れ且つ射出成形が可能な高い流動性を有する熱可塑性樹脂組成物を選ることができる。
このうち、オレフィン系樹脂成分は、オレフィンを主成分とする樹脂であること以外特に限定されない。このオレフィン系樹脂成分としては、オレフィンの単独重合体、オレフィンを含む共重合体(オレフィン共重合体を構成する構成単位全体を100モル%とした場合に70モル%以上のオレフィンに由来する構成単位を有する共重合体)が挙げられる。前者(オレフィンの単独重合体)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン及びエチレン・プロピレン共重合体(エチレン・プロピレンランダム共重合体など)等が挙げられる。一方、後者(オレフィンを含む共重合体)としては、エチレン・酢酸ビニル共重合体及びエチレン・アクリル酸アルキル共重合体等が挙げられる。これらのオレフィン系樹脂成分は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
更に、オレフィン系ゴム成分がオレフィン系樹脂成分内に分散されてなる熱可塑性エラストマー全体を100質量%とした場合に、オレフィン系ゴム成分の含有量は90質量%以下であることが好ましい。オレフィン系ゴム成分の含有量が90質量%以下であることにより、混合工程における混合をより容易に行うことができる。
また、オレフィン系ゴム成分がオレフィン系樹脂成分内に分散されてなる熱可塑性エラストマーの架橋度は90%以下であることが好ましい。架橋度が90以下であることにより、混合工程における混合をより容易に行うことができる。
この酸変性熱可塑性樹脂は、植物性材料及び熱可塑性エラストマーと混合することができればよく、その混合順序は特に限定されないが、混合溶融装置を用いて、熱可塑性エラストマー及び酸変性熱可塑性樹脂を溶融させながら植物性材料と混合することが好ましい。
即ち、ベース樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂(メタクリレート及び/又はアクリレート等を用いて得られた樹脂)、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ABS樹脂、オレフィン系エラストマー樹脂、スチレン系エラストマー樹脂、ニトリルゴム(NBR)とオレフィン系樹脂との混合樹脂(NBR添加オレフィン樹脂)、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体(EPDM)とNBR添加オレフィン樹脂との混合樹脂、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)と水素添加型スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBBS)とスチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)との混合樹脂などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
非酸変性熱可塑性樹脂のなかでも、ポリオレフィンが好ましく、なかでも、エチレン・プロピレン共重合体、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリプロピレンとポリエチレンとの混合樹脂(アロイ)が好ましく、とりわけエチレン・プロピレン共重合体が好ましい。
また、上記混合室は、該混合室を構成する壁に冷却媒体を循環させることができる混合室冷却手段を備えることがより更に好ましい。この構成により、混合室内の過度な温度上昇を抑制でき、熱可塑性エラストマーの分解及び熱劣化を抑制(更には防止)できる。
また、上記温度の制御は、混合溶融装置の混合羽根の回転速度を制御することによって行うことが好ましい。より具体的には、混合羽根の先端の回転速度を5m/秒〜50m/秒となるように制御することが好ましい。この範囲に制御することで、効率よく熱可塑性エラストマーを軟化・溶融させつつ、植物性材料とより強力に(より均一に)混合することができる。
ペレット化は、どのように行ってもよい。即ち、例えば、上記混合溶融装置と、得られた熱可塑性樹脂組成物が除熱される前にペレット化(細分化)できるペレット化装置と、が一体的に設けられた装置を用いる場合には、混合とペレット化とを連続的に行ってペレットを得ることができる。また、上記のようなペレット化装置が併設されていない装置を用いる場合は、混合溶融装置からは、通常、塊状の熱可塑性樹脂組成物が得られるため、この塊状の熱可塑性樹脂組成物をペレット化することでペレットを得ることができる。
尚、塊状の熱可塑性樹脂組成物は、上述のように、ペレット化前に破砕を行う。破砕方法は特に限定されないが、従来公知の破砕機を用いて行うことができる。
このローラーディスクダイ式成形機500では、上記構成に加えて更に、上記プレスローラ52は表面に凹凸521を備えるものであることが好ましい。また、主回転軸53の回転に伴って回転される切断用ブレード55を備えることが好ましい。
ペレット化された熱可塑性樹脂組成物の形状及び大きさは特に限定されないが、柱状(その他の形状であってもよいが、円柱状が好ましい)であることが好ましい。また、その最大長さは1mm以上(通常20mm以下)とすることが好ましく、1〜10mmがより好ましく、2〜7mmが特に好ましい。
即ち、植物性材料を押し固めて原料ペレットを得る原料ペレット作製工程と、
混合溶融装置を用いて、ショアA硬度が60以上70以下である熱可塑性エラストマーを溶融させながら上記原料ペレットと混合する混合工程と、
上記混合工程で得られた混合物を破砕し、破砕物を加熱せず押し固めてペレットを得るペレット化工程と、をこの順に備える熱可塑性樹脂組成物の製造方法とすることができる。
この原料ペレット作製工程においても上記ペレット化工程と同様に上記ローラーディスクダイ式成形機500を用いることができる。
このように原料ペレット作製工程を備えることで、植物性材料と熱可塑性エラストマーとの間の比重差を小さくでき、作業性が向上され、混合の際の材料の偏在も抑制でき、植物性材料と熱可塑性エラストマーとが相互に均一に分散された熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。更に、得られる成形体は高い機械的強度を有する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、前記本発明の製造方法により得られたことを特徴とする。即ち、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、植物性材料と熱可塑性エラストマーとを含有し、該植物性材料及び該熱可塑性エラストマーの合計を100質量%とした場合に、該植物性材料を50〜95質量%含有する熱可塑性樹脂組成物であって、混合溶融装置を用いて、ショアA硬度が60以上70以下である熱可塑性エラストマーを溶融させながら植物性材料と混合した後、得られた混合物を破砕し、破砕物を加熱せず押し固めてペレット化してなることを特徴とする。この熱可塑性樹脂組成物における「植物性材料」、「熱可塑性エラストマー」、「混合溶融装置」等は前記各々の記載をそのまま適用できる。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、前述の通り、上記植物性材料及び上記熱可塑性エラストマー以外にも酸変性熱可塑性樹脂を含有できる。その含有量及び好ましい範囲についても各々前述の通りである。但し、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、熱可塑性樹脂(酸変性されておらずエラストマーでもない熱可塑性樹脂)は実質的に含有されないことが好ましい。
本発明の成形体の製造方法は、前記本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法により得られた熱可塑性樹脂組成物(ペレット化された熱可塑性樹脂組成物)を射出成形して成形体を得る成形工程を備えることを特徴とする。
上記熱可塑性樹脂組成物は、植物性材料を多く含有しつつも、優れた流動性が発現される。このため、成形時の計量時間(射出成形機における計量時間等)、及び射出時間などを短縮できる結果、成形サイクルが短縮されて、成形効率を向上させることができる。射出成形における各種成形条件及び使用する装置等は特に限定されず、目的とする成形体及び性状、使用されている熱可塑性エラストマーの種類等により適宜のものとすることが好ましい。
[1]熱可塑性樹脂組成物の製造
(1)実験例1〜11(実験例3〜6及び10〜11)
下記に示す各植物性材料、熱可塑性エラストマー、酸変性熱可塑性樹脂及び非酸変性熱可塑性樹脂を、表1に示す組合せ及び配合量で用い、混合溶融装置1(株式会社エムアンドエフ・テクノロジー製、WO2004−076044号に示された器機)の材料供給室(図4の13)に投入(植物性材料と熱可塑性エラストマーとで合計700g)した後、混合室(容量5L、図4の3)内で混合した。この混合に際して混合羽根(図3の10及び図5の10a〜10f)は回転速度2000rpmで回転させた。そして、混合羽根にかかる負荷(トルク)が上昇し、最大値に達して(100%を超えて)6秒後を終点として混合を停止して、得られた混合物(ペレット化前の熱可塑性樹脂組成物)を混合溶融装置から排出した。
「ケナフコア」;粒径1.0mm以下のケナフコアの破砕物(ケナフコアを破砕後、目
開き1.0mm円孔板篩の篩下として選別)。
「ケナフ繊維」;平均繊維長3mmのケナフ繊維(ケナフ繊維の裁断物を篩選別後、J
IS L1015に準拠して、直接法にて無作為に単繊維を1本ずつ
取り出し、伸張させずにまっすぐに伸ばし、置尺上で繊維長を測定し
、合計200本についての平均値)。
「E1/90A」 ;ショアA硬度90の熱可塑性エラストマー(三井化学株式会社製
、品名「ミラストマー 9070N」)
「E2/70A」 ;ショアA硬度70の熱可塑性エラストマー(三井化学株式会社製
、品名「ミラストマー 7030N」)
「E3/60A」 ;ショアA硬度60の熱可塑性エラストマー(三井化学株式会社製
、品名「ミラストマー 6030N」)
「E4/50A」 ;ショアA硬度50の熱可塑性エラストマー(三井化学株式会社製
、品名「ミラストマー 5030N」)
「酸変性PP」;無水マレイン酸変性ポリプロピレン(酸変性熱可塑性樹脂、三洋化成
工業株式会社製、品名「ユーメックス #1001」、ベース樹脂が
ポリプロピレン、重量平均分子量が40,000、溶融粘度が16,
000mPa・s、酸価が26)。
[非酸変性熱可塑性樹脂]
「PP」 ;ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製、品名「ノバティック
NBX03HRS」)
上記[1]で得られた実験例1〜6及び8〜11の各熱可塑性樹脂組成物を射出成形機(住友重機械工業株式会社製、形式「SE100DU」)に各々投入し、シリンダー温度190℃、型温度40℃の条件で、各種試験片(長さ80mm×幅10mm×厚さ4mm)を成形した。
尚、実験例7では、熱可塑性エラストマー(E4/50A)と植物性材料とを十分に混合することができず、熱可塑性樹脂組成物を得ることができなかったために、成形体を得ることができなかった。
上記[2]で得られた実験例1〜6及び8〜11の成形体の曲げ弾性率及び撓み量を測定した。このうち曲げ弾性率については、各試験片を支点間距離(L)64mmとした2つの支点(曲率半径5mm)で支持しつつ、支点間中心に配置した作用点(曲率半径5mm)から速度2mm/分にて荷重の負荷を行い測定した(JIS K7171に準拠)。また、上記曲げ弾性率の測定において得られたF−S曲線{荷重とストローク(撓み)}から読みとった各試験片の破断時のストローク量を撓み量とした。この結果は上記表1に併記した。更に、実験例1〜4で用いた熱可塑性エラストマーの硬度と撓み量及び曲げ弾性率との相関を図1に、実験例8〜11で用いた熱可塑性エラストマーと撓み量及び曲げ弾性率との相関を図2に、各々グラフとして示した。
表1、図1及び図2の結果より、ショアA硬度が50である熱可塑性エラストマーを用いた実験例7では、植物性材料と熱可塑性エラストマーとの混合を行うことができず、熱可塑性樹脂組成物を得ることができなかった。一方、ショアA硬度が90である熱可塑性エラストマーを用いた実験例2では、エラストマーではないポリプロピレンを用いた実験例1に比べて撓み量が1.6倍にしかならず、実験例8では1.2倍にしかならなかった。即ち、ショアA硬度90以上の熱可塑性エラストマーを用いた場合には、曲げ弾性率は下げることができるものの、撓み量を大きくすることはほとんどできず、得られる成形体は単に割れやすくなったに過ぎなかった。
その結果、得られた成形体においては、ポリプロピレン(非酸変性熱可塑性樹脂)と植物性材料とのみを混合した組成物(実験例1及び8)に比べて、飛躍的に大きな撓みを発揮させることができると共に、割れるときには過度な応力を蓄積することなく割れるという実用性に優れた熱可塑性樹脂組成物及び成形体を得ることができた。
更に、実験例5及び6に示すように、酸変性熱可塑性樹脂又は非酸変性熱可塑性樹脂を熱可塑性エラストマーと併用することによって、実験例4と比較して十分な撓み量を維持しながら、曲げ弾性率を大きくすることができることが分かる。そして、曲げ弾性率は、実験例4対して実験例6は2.1倍であるのに対して、実験例5では2.4倍であり、非酸変性熱可塑性樹脂を用いるよりも、酸変性熱可塑性樹脂を用いることでより効果的に曲げ弾性率を大きくすることができることが分かる。
Claims (9)
- 植物性材料と熱可塑性エラストマーとを含有し、該植物性材料及び該熱可塑性エラストマーの合計を100質量%とした場合に、該植物性材料を50〜95質量%含有する熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
混合溶融装置を用いて、ショアA硬度が60以上70以下である熱可塑性エラストマーを溶融させながら植物性材料と混合する混合工程と、
上記混合工程で得られた混合物を破砕し、破砕物を加熱せず押し固めてペレットを得るペレット化工程と、を備えることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。 - 前記ペレット化工程では、ローラー式成形方法が用いられ、
ダイに接して回転されるローラーにより前記破砕物がダイ内に圧入された後、前記ダイから押し出されて前記ペレットが成形される請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。 - 上記熱可塑性エラストマーは、オレフィン系熱可塑性エラストマーである請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 上記植物性材料は、平均粒径が5.0mm以下のケナフコア粉末及び/又は平均繊維長が10mm以下のケナフ繊維である請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 上記混合工程において、上記熱可塑性エラストマー及び上記植物性材料と共に、酸変性熱可塑性樹脂を混合する請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 上記酸変性熱可塑性樹脂は、酸変性ポリプロピレンであり、
上記熱可塑性エラストマー、上記植物性材料及び上記酸変性ポリプロピレンの合計を100質量%とした場合に、上記酸変性ポリプロピレンは1〜10質量%である請求項5に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。 - 上記混合溶融装置は、上記混合を行う混合室及び該混合室内に配置された混合羽根を備え、
上記混合工程は、上記混合室中で上記混合羽根の回転により溶融された上記熱可塑性エラストマーと上記植物性材料とを混合する請求項1乃至6のうちのいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。 - 請求項1乃至7のうちのいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法により得られたことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1乃至7のうちのいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法により得られた熱可塑性樹脂組成物を射出成形して成形体を得ることを特徴とする成形体の製造方法。
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