JP2009057495A - 熱可塑性樹脂組成物の製造方法及び成形体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本組成物の製法は、植物性材料(ケナフコア)と無機材料(タルク)と熱可塑性樹脂(ポリ乳酸)とを含有し、組成物全体100質量%に対する樹脂含有が50質量%未満である組成物の製造方法であって、植物性材料と無機材料と熱可塑性樹脂とを撹拌機で混合する混合工程を備え、無機材料は、植物性材料及び無機材料の合計に対して1〜55質量%である。本成形体の製法は、本組成物の製法により得られた熱可塑性樹脂組成物を押出成形又は射出成形して成形体を得る。
【選択図】図1
Description
この問題に対して、樹脂に対してより高い機械的特性を付与する観点から、下記特許文献1及び下記特許文献2に開示されるように、植物性材料等を含有させる技術が知られている。
更に、上記特許文献2の熱可塑性樹脂組成物の製造には、ケナフを10分間かけて徐々に混練機に投入した上で20分間混練を行い、更に、添加剤を添加した上で20分間混練を継続することが記載されている。このように、従来、植物性材料は数度に分けて投入し、更に、混練を繰り返すことが必要であり、熱可塑性樹脂組成物の製造には煩雑な工程と長時間を要している。このため、より簡便で短時間での製造が求められる。
(1)植物性材料と無機材料と熱可塑性樹脂とを含有し、本熱可塑性樹脂組成物全体100質量%に対する該熱可塑性樹脂の含有量が50質量%未満である熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
植物性材料と無機材料と熱可塑性樹脂とを撹拌機で混合する混合工程を備え、
上記無機材料は、上記植物性材料及び該無機材料の合計を100質量%とした場合に1〜55質量%であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(2)上記撹拌機は、上記混合を行う混合室及び該混合室内に配置された混合羽根を備え、
上記混合工程は、上記混合室中で上記混合羽根の回転により溶融された上記熱可塑性樹脂と、上記植物性材料及び上記無機材料と、を混合する上記(1)に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(3)上記無機材料の見掛け比重をBとし、上記熱可塑性樹脂の見掛け比重をCとした場合に、B/Cは1.2以上である上記(1)又は(2)に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(4)上記無機材料は、平均粒径が100μm以下である上記(1)乃至(3)のうちのいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(5)上記植物性材料は、ケナフコアである上記(1)乃至(4)のうちのいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(6)上記熱可塑性樹脂は、生分解性樹脂である上記(1)乃至(5)のうちのいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(7)上記無機材料は、タルクである上記(1)乃至(6)のうちのいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(8)上記(1)乃至(7)のうちのいずれかに記載の製造方法により得られた熱可塑性樹脂組成物を押出成形又は射出成形して成形体を得ることを特徴とする成形体の製造方法。
混合工程では、混合室中で混合羽根の回転により溶融された熱可塑性樹脂と、植物性材料及び無機材料と、を混合することで、特に短時間で混合を行うことができ、また、外部からの加熱を要することなく熱可塑性樹脂組成物を製造できる。更に、外部からの加熱を要しないために別途の加熱手段等が不必要であり、低コストで熱可塑性樹脂組成物を製造できる。
無機材料の見掛け比重をBとし、熱可塑性樹脂の見掛け比重をCとした場合にB/Cが1.2以上である場合は、優れた機械的特性を有しながら軽量な成形体が得られる熱可塑性樹脂組成物を短時間で製造できる。
植物性材料がケナフコアである場合は、より軽く且つ特に機械的特性に優れた成形体が得られる熱可塑性樹脂組成物を製造できる。また、ケナフは成長が極めて早い一年草であり、優れた二酸化炭素吸収性を有するため、大気中の二酸化炭素量の削減、森林資源の有効利用等に貢献できる。
熱可塑性樹脂が生分解性樹脂である場合、生合成可能であり、また、非石油系樹脂である樹脂を用いることとなり、高い機械的特性を得ながら、石油資源の使用を抑制できる。
本発明の成形体の製造方法によれば、熱可塑性樹脂に対して多量の植物性材料が含有された機械的特性に優れた成形体を得ることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、植物性材料と無機材料と熱可塑性樹脂とを含有し、本組成物全体100質量%に対する熱可塑性樹脂の含有量が50質量%未満である熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
植物性材料と無機材料と熱可塑性樹脂とを撹拌機で混合する混合工程を備え、
上記無機材料は、上記植物性材料及び上記無機材料の合計を100質量%とした場合に1〜55質量%であることを特徴とする。
尚、本発明におけるケナフとは、木質茎を有する早育性の一年草であり、アオイ科に分類される植物である。学名におけるhibiscus cannabinus及びhibiscus sabdariffa等が含まれ、更に、通称名における紅麻、キュウバケナフ、洋麻、タイケナフ、メスタ、ビムリ、アンバリ麻及びボンベイ麻等が含まれる。
また、本発明におけるジュート麻には、黄麻(コウマ、Corchorus capsularis L.)、及び、綱麻(ツナソ)、シマツナソ並びにモロヘイヤ、を含む麻及びシナノキ科の植物を含むものとする。
尚、植物性材料は混合時の剪断力等により形状及び大きさが変化して熱可塑性樹脂組成物内に含有されてもよい。即ち、熱可塑性樹脂組成物内における植物性材料と、混合工程で用いる植物性材料と、は形状及び大きさにおいて同じであってもよく、異なっていてもよい。
尚、植物性材料が粒状である場合の粒径は、粒度分布を測定して得られるD50(平均粒径)の値である。一方、植物性材料が繊維状である場合の長さは、JIS L1015に準拠し、直接法にて無作為に単繊維を1本ずつ取り出し、置尺上で繊維長を測定し、合計200本について測定した平均値として得られる。
尚、本方法により得られる熱可塑性樹脂組成物に含まれる植物性材料の含有量は、通常、上記配合量と同じである。
尚、上記A及び上記Cの各々の範囲は特に限定されないものの、Aは0.1〜0.5が好ましく、Cは0.89〜1.5が好ましい。また、発明にいう比重(見掛け比重)は、JIS Z8807{熱可塑性重合体性は液中ひょう量方法、植物性材料(水分率10%)は体積からの測定方法、にて各々測定}に準じて測定した場合の比重値である。
しかし、本発明の製造方法によれば、上記ケナフコアのような木質部を用いて、混合時間を効果的に短縮でき、また、前述の如く植物性材料を20質量%以上(更には50質量%以上)と多く含有させることができ、尚かつ高い補強効果を得ることができる。更に、靭皮繊維のような長繊維ではないために高い成形性(特に射出成形及び押出成形における)を得ることができる。
上記無機材料は、特に限定されず種々のものを用いることができる。この無機材料としては、タルク(比重2.7〜2.8)、マイカ(比重2.7〜3.2)、シリカ(天然シリカ、合成シリカ、石英及び非晶質シリカ等を含む、比重2.0〜2.5)、モンモリロナイト(比重2.5〜2.6)、ベントナイト(比重2.0〜2.6)、パイロフィライト(比重2.7〜2.9)、ゼオライト(比重2.1〜2.2)、カオリン(比重2.5〜2.6)、珪石(比重2.5〜2.6)、クレ−(比重2.5〜2.9)、ウォラストナイト、バサルト(玄武岩)などの硅素化合物類、アルミナ(比重3.7〜3.9)及び酸化チタン(比重3.7〜4.3)等の金属酸化物類、炭酸カルシウム(比重2.5〜2.7)等の炭酸塩化合物類、並びに、グラファイト(比重2.1〜2.3)等の炭素類などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかでは、熱可塑性樹脂に含有された際の機械的特性における補強効果が高いものが好ましく、特にタルク、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト及びパイロフィライト等の硅素化合物類のなかでも層状鉱物が好ましく、特にタルク及びマイカが好ましく、タルクがとりわけ好ましい。
尚、上記Bの範囲は特に限定されないものの、Bは2〜6が好ましい。また、発明にいう無機材料の比重(見掛け比重)は、JIS Z8807(体積からの測定の方法)に準じて測定した場合の比重値である。
更に、無機材料の形状は特に限定されず、粒状、薄片状、針状及び繊維状等のどのような形状であってもよい。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかでも粒状及び薄片状が特に好ましい。
また、無機材料の大きさは特に限定されないが、100μm以下(通常1μm以上)が好ましい(大きさの測定は植物性材料が粒状である場合と同じ方法による)。この範囲では、上記混合時間を短縮しながら、得られる成形体において高い曲げ弾性率を得ることができる。更に、この無機材料の大きさは5〜70μm(更に好ましくは10〜50μm)がより好ましい。この範囲では、混合時間の短縮効果が高く、特に高い曲げ弾性率を得ることができる。
尚、本方法により得られる熱可塑性樹脂組成物に含まれる無機材料の含有量は、通常、上記の無機材料の配合量と同じである。
これらのなかでは、ポリオレフィン及びポリエステル樹脂のうちの少なくとも一方であることが好ましい。また、上記ポリオレフィンのなかではポリプロピレンがより好ましい。
これらのなかでは、ポリ乳酸、乳酸と乳酸を除く他の上記ヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリカプロラクトン、及び上記ヒドロキシカルボン酸のうちの少なくとも1種とカプロラクトンとの共重合体が好ましく、特にポリ乳酸が好ましい。
これらの生分解性樹脂は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
尚、上記乳酸にはL−乳酸及びD−乳酸を含むものとし、これらの乳酸は単独で用いてもよく、併用してもよい。
尚、用いる熱可塑性樹脂の形状は特に限定されず、粒状であってもよく、その他の形状であってもよい。
尚、本方法により得られる熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の含有量は、通常、上記の熱可塑性樹脂の配合量と同じである。
撹拌機を用いて植物性材料と無機材料と熱可塑性樹脂とを混合する際は、混合される材料同士の衝突エネルギー(熱量)により発熱されるものと考えられる。しかし、見掛け比重が小さい植物性材料だけを熱可塑性樹脂に混合しようとすると衝突によるエネルギーは小さくなり、熱可塑性樹脂を軟化又は溶融させるまで、更には、植物性材料と熱可塑性樹脂とを混合するまで、の時間を要することとなるものと考えられる。これに対して、植物性材料よりも見掛け比重が大きい無機材料を用いると、混合される材料同士の衝突エネルギー(熱量)が植物性材料及び熱可塑性樹脂のみの場合に比べて大きくなり、発熱効率が向上され、結果的に混合時間を短縮できるものと考えられる。このため、極めて簡便且つ短時間で上記混合を行うことができる。
また、上記混合室は、該混合室を構成する壁に冷却媒体を循環させることができる混合室冷却手段を備えることがより更に好ましい。この構成により、混合室内の過度な温度上昇を抑制でき、熱可塑性樹脂の分解及び熱劣化を抑制(更には防止)できる。
カルボジイミド化合物としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
その他、本方法では、各種帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、着色剤等を混合することができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
尚、本発明の製造方法では、植物性材料と無機材料と熱可塑性樹脂との混合を促進するための添加剤(各種滑材、可塑剤、及びロジン等)を何ら用いることなく、目的とする熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
この大粒植物性材料の大きさは2mm以上であればよく、特に限定されないが、2〜15mm(より好ましくは2〜10mm、更に好ましくは3〜9mm、より更に好ましくは3〜8mm、とりわけ好ましくは4〜7mm)とすることが好ましい。
尚、大粒植物性材料の粒径は、JIS Z8801に準拠して得られる。また、大粒植物性材料の粒径が「X〜Ymm」であるとは、目開きXmmの円孔板篩を通過せず且つ目開きYmmの円孔板篩を通過するものを意味する。
尚、上記D及びCの範囲は特に限定されないものの、Dは0.1〜0.5が好ましく、Cは0.89〜1.5が好ましい。また、発明にいう比重(見掛け比重)は、JIS Z8807{熱可塑性重合体性は液中ひょう量方法、植物性材料(水分率10%)は体積からの測定方法、にて各々測定}に準じて測定した場合の比重値である。
この大粒植物性材料を用いる場合、その配合量は、無機材料と大粒植物性材料との合計を100質量%とした場合に、1〜55質量%(より好ましくは5〜50質量%)とすることが好ましい。
本発明の成形体の製造方法は、前記製造方法により得られた熱可塑性樹脂組成物を押出成形又は射出成形して成形体を得ることを特徴とする成形体の製造方法である。
前記熱可塑性樹脂の製造方法により得られた熱可塑性樹脂組成物は、押出成形又は射出成形することで賦形することができる。これらの成形は、撹拌機に押出成形機又は射出成形機を接続して行うことができる。また、得られた熱可塑性樹脂組成物を冷却した後に破砕機等を用いてチップ化した後、このチップを押出成形機又は射出成形機に投入して成形を行ってもよい。
[1]熱可塑性樹脂組成物の製造及び成形体(試験片)の製造
植物性材料として粒径(平均粒径)0.2mmのケナフコアの粉砕物(粉末)を用いた。また、無機材料として、粒径(平均粒径)26μmのタルク(富士タルク株式会社製、品名「MK−48」)を用いた。更に、熱可塑性樹脂として、粒径4mmのポリ乳酸樹脂ペレット(トヨタ自動車株式会社製、品名「U’s S−12」)を用いた。
尚、植物性材料は、粒度分布測定装置(シスメックス株式会社製、形式「マスターカイザー2000」)によって測定された粒度分布におけるD50(平均粒径)が0.2mmの材料(この植物性材料には、目開き4mmの円孔板篩を通過しない粒状の植物性材料は含まれない)である。また、無機材料も同じ粒度分布測定装置によって測定された粒度分布におけるD50(平均粒径)が26μmの材料である。
また、上記混合においては、撹拌開始(混合羽根が回転し始めた時点)から上記終点までの経過時間を計測し、この経過時間を混合時間とし、表1に併記した。
実験例1〜6の各試験片(厚さ4mm、幅10mm、長さ80mmの板形状)の曲げ弾性率を測定した(JIS K7171に準拠)。この測定に際しては、各試験片を支点間距離(L)64mmとした2つの支点(曲率半径5mm)で支持しつつ、支点間中心に配置した作用点(曲率半径5mm)から速度2mm/分にて荷重の負荷を行い、各試験片の破断直前の最大荷重(曲げ弾性率)を測定し、表1に併記した。
更に、表1に示す混合時間と曲げ弾性率との相関をグラフにして図1に示した。
表1及び図1より、無機材料を用いることによって混合時間を短縮できることが分かる。即ち、図1では、無機材料の割合が0〜10質量%の間で、混合時間が急激に短くなることが見てとれる。この混合時間の短縮の効果は、無機材料の割合が10.2質量%を超えると比較的緩やかになることも分かる。
一方、無機材料を用いると、その割合が50質量%以下の範囲では曲げ弾性率は緩やかに低下するが、50質量%を超えて70質量%の間で急激に曲げ弾性率が低下することが分かる。
更に、実施例の結果から、本方法により得られた熱可塑性樹脂組成物は射出成形により問題なく成形を行うことができ、優れた成形性を有していることが分かる。
Claims (8)
- 植物性材料と無機材料と熱可塑性樹脂とを含有し、本熱可塑性樹脂組成物全体100質量%に対する該熱可塑性樹脂の含有量が50質量%未満である熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
植物性材料と無機材料と熱可塑性樹脂とを撹拌機で混合する混合工程を備え、
上記無機材料は、上記植物性材料及び該無機材料の合計を100質量%とした場合に1〜55質量%であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。 - 上記撹拌機は、上記混合を行う混合室及び該混合室内に配置された混合羽根を備え、
上記混合工程は、上記混合室中で上記混合羽根の回転により溶融された上記熱可塑性樹脂と、上記植物性材料及び上記無機材料と、を混合する請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。 - 上記無機材料の見掛け比重をBとし、上記熱可塑性樹脂の見掛け比重をCとした場合に、B/Cは1.2以上である請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 上記無機材料は、平均粒径が100μm以下である請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 上記植物性材料は、ケナフコアである請求項1乃至4のうちのいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 上記熱可塑性樹脂は、生分解性樹脂である請求項1乃至5のうちのいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 上記無機材料は、タルクである請求項1乃至6のうちのいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 請求項1乃至7のうちのいずれかに記載の製造方法により得られた熱可塑性樹脂組成物を押出成形又は射出成形して成形体を得ることを特徴とする成形体の製造方法。
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