以下の記載においては、種々の実施形態の特定の詳細が提示される。しかしながら、幾つかの実施形態は、これら特定の詳細の少なくともいくつかを使用することなく実施可能である。他の場合には、ある種の方法、手順、成分および回路は、記載の簡潔および明確さのため、詳述を省く。
一般に、以下に記載の実施形態は、特に限定されないが、(自動車およびトラックを含む)可動排気源および(発電プラントを含む)固定排気源等の排気システム中のアンモニア(NH3)ガスを測定するための方法および設計に関する。アンモニアガスセンサーは、高温において、ガス混合物中の全アンモニア濃度を測定するために使用される。更に、アンモニアセンサーの実施形態では、場合により選択接触還元(SCR)等の工程においてNOxエミッションを低減するためにかかる排気流に添加される気体アンモニア又は尿素の残存量を検出する。
ある実施形態では、アンモニアガスセンサーは、基板上に、2つの電極を有する。基板は、平坦構造のフラット面、チューブ状の曲面または幾つかの他の複合形状構造を有していてもよい。上記2つの電極は、基板の同一面上または異なる面に配置されてもよい。
ある実施形態では、上記電極は、異なる電極からなり、排ガス中のアンモニアは、各電極と異なる反応を生じる。電極の異なる性状は、以下の種々の方法によって達成可能である。即ち、(1)異なる化学組成を有する電極;(2)異なる物理的特性(例えば、幾何学的面積、厚さ、表面積、微細構造、密度)を有する電極;(3)異なる塗布膜により、電極上またはその近辺で生じる特定のアンモニア酸化反応の性状または程度を変化させた電極。電極自体は、種々の方法によって加工された薄層形状を有することが出来る。加工方法としては、スクリーン印刷、パッド印刷、スパッタリング、電子線蒸着、パルスレーザー蒸着、化学的蒸着または薄膜または厚膜形成に使用される公知の他の方法が挙げられる。また、電極は、予め形成された層、マット、メッシュ、パッド、接点またはワイヤーの形状であってもよい。ある実施形態では、センサーは、1ppmの低アンモニア濃度および1ppmの低アンモニア濃度変化を測定可能である。他の実施形態では、10ppbの低アンモニアレベル及び1ppbの低アンモニア濃度変化を検出可能である。
ある実施形態では、アンモニア濃度は、ターゲットガスに曝露された2つの異なる電極間で測定される電位と直接の相関関係を有する。電極は、同一温度で作動することも出来るし、ある実施形態では、異なる温度で作動してもよい。
他の実施形態では、少なくとも異なる2つの電位が、測定される。例えば、”参照電極”と各異なる2つの電極間の個々の電位が、測定可能である。参照電極としては、例えば、封止エアー参照電極、金属/金属酸化物埋設電極、エアー参照電極、または他のタイプの参照電極が挙げられる。上記2つの電位は、組み合わせて、ターゲットガス内のアンモニア濃度を決定するために使用される。
ある実施形態では、基板は、イオン導通材料から成る。ある実施形態では、基板は、イオン導通材料のみから成るか、又は主としてイオン導通材料から成る。例えば、基板は、酸素イオン導通材料のみから成るか、又は主として酸素イオン導通材料から成ることが出来る。更には、基板は、プロトン導通又は金属イオン導通材料のみから成るか、又は主としてプロトン導通又は金属イオン導通材料から成ることが出来る。
ある実施形態では、基板は、イオン非導通材料から成る。特に、基板は、イオン非導通材料のみから成るか、又は主としてイオン非導通材料から成ることが出来る。斯かる実施形態では、電極は、イオン導通材料のみから成るか、又は主としてイオン導通材料から成る他の多孔性皮膜、層または材料と接触させてもよい。例えば、電極は、酸素イオン導通材料のみから成るか又は主として酸素イオン導通材料から成る多孔性皮膜と接触させることが出来る。別の形態では、電極は、プロトン導通又は金属イオン導通材料のみから成るか又は主としてプロトン導通又は金属イオン導通材料から成る多孔性皮膜と接触させることが出来る。
センサーの他の実施形態は、また、NOx及び/又は酸素センサー又は検出部材を有し、アンモニアと同時にNOx及び酸素濃度を測定することが出来る。これら測定は、NOx及び酸素濃度の関数としての信号に少なくとも部分的に基づいた、全アンモニア濃度の正確な決定を可能とする。
ある実施形態では、アンモニアセンサーは、電極を作動温度範囲内の温度に加熱するためのヒーターを有する。別の形態では、ヒーターは、電極を異なる作動温度に加熱する。ある実施形態では、電極の作動温度は、ヒーターを有するフィードバック制御機構の一部としての1つ以上の温度測定装置を使用することによって保持される。温度測定装置としては、例えば、ワイヤー式サーモカップル、薄膜又は厚膜式サーモカップル、レジスター、抵抗温度検出器(RTD)、又は他のタイプの温度測定装置が挙げられる。
アンモニアセンサーのある実施形態は、排気環境中での使用に供される。更に、ある実施形態は、一酸化炭素(CO)、炭化水素類、二酸化硫黄および排ガス中に存在する他のガス種等のその他のガス種に対するクロス感度を減少するように構成される。例えば、CO及び/又は炭化水素類に対するクロス感度を減少させるために、特定の酸化触媒を使用して、別個のガス予備調整を行うか、又は該触媒を、電極の少なくとも1つの表面上に被膜として設けてもよい。二酸化硫黄に対するクロス感度を減少させるために、二酸化硫黄を吸収する材料を、別個のガス予備調整ユニットの一部として、又は電極の少なくとも1つの表面上に被膜として使用することも出来る。他の実施形態は、上記少なくとも2つの電極間に印加するバイアス電圧またはバイアス電流を使用することによって、ガスクロス感度を減少させることも出来る。
図1.aは、アンモニアセンサー110の一実施形態を示す模式斜視図である。図1.bは、図1.aのアンモニアセンサー110の斜視断面図である。アンモニアガスセンサー110の実施形態は、排気流等のガス流中のアンモニアを測定するために使用される。図示のアンモニアセンサー110は、基板118の表面116上に配置された第1センサー電極112と第2センサー電極114を有する多電極アセンブリーから成る。各センサー電極112及び114は、電圧電位等の電気信号を発生する。電気信号は、電気リードによって、ボルトメーター(図示せず)又は電子制御モジュール(図14参照)等の診断装置に伝送される。電子制御モジュールの実施形態は、また、データ収集システムと称せられる。
電極アセンブリーは、センサー電極と共に、対応センサー電極に関連して使用される1つ以上の層または材料を有してもよいことを留意すべきである。例えば、電極アセンブリーの一実施形態は、他の層または材料無しに、単一のセンサー電極から成る。電極アセンブリーの他の実施形態は、センサー電極に塗布された触媒等の単一層を有するセンサー電極から成る。電極アセンブリーの他の実施形態は、イオン導通層、多触媒、吸収層またはこれらの組み合わせ等の例示層を含む多くの層を有することが出来る。他の実施形態は、他の層を含んでいてもよい。
電極112及び114は、基板118の同一面116上に取付けた状態を図示しているが、他の実施形態は、基板118の両面上に電極112及び114を配置するように構成することも出来る。更に、基板118は、実質的に平坦構成以外の形状を有していてもよい。例えば、基板118は、チューブ状または他の形状を有することが出来る。更に、基板118上の電極112及び114の配置は、ガス流と各電極112及び114間の重大な相互作用を提供するために最適化することも出来る。ある実施形態では、電極112及び114は、基板118に、接着、プレスフィット、溶接、ファスナー又は他の取付メカニズムを使用して、取り付けられる。
電極112及び114は、同一材料から形成されて、第1及び第2電極112及び114間に電位差が測定されるように、互いに配置されることが出来る。2つ以上の電極112及び114が存在する実施形態では、電極112及び114は、一対の第1及び第2電極112及び114間に電位差が測定されるように、互いに配置される。一実施形態では、電極112及び114は、貴金属から成ることが出来る。例えば、電極112及び114の両方が、白金(Pt)を含有するか、又は全て白金(Pt)から成ることが出来る。ある種の実施形態では、電極112及び114は、導電性または半導電性のいずれであってもよい。
他の実施形態では、電極112及び114は、異なる材料から形成される。例えば、第1電極112は、主として、白金(Pt)からなり、第2電極114は、主として、酸化タングステン(WO3)から形成することが出来る。他の実施形態では、電極112及び114は、同一材料から成る一方で、それらの微細構造が異なっていてもよい。例えば、両電極112及び114とも、白金から成るが、異なる微細構造、密度、多孔性、厚さ、又は他の相違を有していてもよい。これらの相違点によって、電極112及び114は、これら電極112及び114と接触するアンモニアと異なる反応を生起することが可能となる。したがって、一実施形態では、異なる電極とは、アンモニアと反応する方法が、構造的、物理的、化学的または機能的に異なる電極を含むものである。それ故、電極112及び114の種々の組合せが、電極112及び114間で電位を発生させるために使用されることが出来る。
上記実施形態では、電極112及び114を取付けた基板118は、薄層基板の形状である。更に、基板118は、イオン導通材料から形成されてもよい。一実施形態では、基板118は、酸素イオン導通材料から形成される。他の実施形態では、基板118は、水素イオン導通材料から形成される。他の実施形態では、基板118は、アルカリイオン導通材料から形成される。例えば、基板118は、テープ流延法によって形成された6モル%イットリア安定化ジルコニア(YSZ)から形成されてもよい。
電極112及び114に結合された電気接続リード120は、焼結YSZテープの表面116上に、スクリーン印刷されてもよい。一実施形態では、リードワイヤー120は、白金から成る。他の実施形態では、電気リード120に他の材料を使用することが出来る。一実施形態では、電気リード120は、印刷されて、1200℃の温度で焼成することにより形成される。電極112及び114が異なる材料から成る場合は、白金電極を、印刷した後1000℃の温度で焼成することにより形成し、次いで酸化タングステン電極を、印刷した後925℃の温度で焼成することにより形成する。
図2.aは、アンモニアセンサー210の他の実施形態を示す模式斜視図であり、図2.bは、図2.aのアンモニアセンサー210の斜視断面図である。図示されたアンモニアセンサー210は、多電極アセンブリーから成る。特に、第1の電極アセンブリーは、第1センサー電極212を有し、第2の電極アセンブリーは、第2センサー電極214を有する。両センサー電極は、基板218の表面216に結合される。図1.a及び図1.bのアンモニアセンサー110と同様に、図2.a及び図2.bのアンモニアセンサー210は、各電極アセンブリーに結合した電気リード220を有し、特に、電気リード220は、各電極アセンブリーのセンサー電極212及び214に結合する。
図示されたアンモニアセンサー210においては、層222は、センサー電極214を実質的に被覆し、他方、他のセンサー電極212は、非被覆状態とする。なお、「実質的に被覆」とは、センサー電極214の表面積の大部分が、層222によって被覆されていることを意味する。また、「実質的に被覆」とは、アンモニア又は他のガスが、層222によって実質的に被覆されたセンサー電極214に接触する前またはそれと同時に、層222に接触することを意味する。
一実施形態では、層222は、触媒材料から成る。例えば、層222は、酸化ルテニウム(RuO2)又は酸化ルテニウム系の他の材料等の酸化物である触媒材料から成る。一実施形態では、電極212及び214の一方が、RuO2浸透アルミナパッドで被覆されてもよい。RuO2浸透アルミナパッドは、アルミナフェルトパッドに、塩化ルテニウム(RuCl2)溶液を含浸させ、次いで上記パッドを680℃の温度で焼成して、RuCl2をRuO2に酸化することにより形成されてもよい。RuO2含浸アルミナパッドは、基板218の表面216に、セラミックセメントにより結合するか、又は他の方法で取付けることによって、電極212及び214の一方を部分的または完全に被覆することが出来る。
他に実施形態では、層222は、非ゼオライト系のいずれの酸化物から形成されてもよい。他の実施形態では、層222は、両電極212及び214を被覆してもよい。各電極212及び214では、層222は、同一の触媒材料から形成されてもよいが、異なる触媒材料から形成されてもよい。以下で詳細に説明するように、多層222を、電極212及び214のいずれか又は両方に塗布および相互に作用させてもよい。
図3.aは、アンモニアセンサー310の他の実施形態を示す模式斜視図であり、図3.bは、図3.aのアンモニアセンサー310の斜視断面図である。図示されたアンモニアセンサー310は、センサー電極312及び314が、基板318の両側に配置された以外は、実質的に図2.a及び図2.bのアンモニアセンサー210と同一である。電極の一方312は、触媒層等の付加層322を有する。一実施形態では、基板318は、6モル%イットリア安定化ジルコニア(YSZ)から成る薄層基板である。他の実施形態では、他のタイプの基板318を使用することが出来る。電気接続リード320は、電極312及び314に取り付けられ、焼結YSZ電解質基板318の表面上にスクリーン印刷されてもよい。
図4は、順次増加するアンモニア濃度に対する、図1.aのアンモニアセンサー110における時間の関数としての例示電圧応答を示す信号図410である。例示電圧応答を示す信号図410を得るために、アンモニアセンサー110の一実施形態を作製した。作製されたアンモニアセンサー110は、スクリーン印刷白金ヒーターを備えた別個のアルミナ基板118に取り付けたセンサー電極112及び114を有する。また、センサー電極112及び114の近辺には、サーモカップルを設置した。センサー電極112及び114に取り付けた白金ストリップは、リードワイヤー120に結合し、リードワイヤー120は、更に、コンピューター系データ収集システムに結合した。アンモニアセンサー110は、約3.0インチx0.75インチの寸法を有する小型チューブ状金属ハウジング内に封入した(図13参照)。各ヒーターからのワイヤーは、直流(DC)電源に接続し、電力をヒーターに供給して、センサー電極112及び114を、約540℃の作動温度に加熱した。
次いで、実験ガス混合物を、アンモニアセンサー110を収容したハウジング内に導入した。ガス混合システムは、4MKSマスフローコントローラーを使用して、種々のガス組成物流を混合および制御した。ガス混合物は、0〜77ppmのアンモニア、5%の酸素(O2)及び残部窒素(N2)の組成を有する。アンモニアセンサー110の電圧応答は、(4秒毎の増分で)種々のアンモニア濃度に依存する。図から判るように、ハウジングを通過するガス中のアンモニア濃度が、新たなレベルに変化する際に、アンモニアセンサー110は、対応する出力電圧変化(即ち、センサー応答)を示す結果となる。それゆえ、アンモニアセンサーは、発生するセンサー応答を、対応するアンモニア量と相関させることによって、ターゲットガス中のアンモニアレベルを測定するために使用することが出来る。
図5は、順次増加するアンモニア濃度に対する、図2.aのアンモニアセンサー210における時間の関数としての例示電圧応答を示す信号図510である。図6は、順次増加するアンモニア濃度に対する、図3.aのアンモニアセンサー310における時間の関数としての例示電圧応答を示す信号図610である。
アンモニアセンサー110、210及び310の実施形態の更なる特徴は、排ガス中に存在する可能性がある他のガスに対するクロス感度を最小限に低減する能力である。例示ガスは、窒素酸化物(集合的にNOxと称す)、炭化水素類、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)及び蒸気(H2O)を含有する。アンモニアセンサー110、210及び310の実施形態は、アンモニアセンサー110、210及び310の形状を改良するか、又は特には検出部材、一般的には検出システムの設計に、更なる特徴を付加することによって、これらガスの各々に対し、低クロス感度を示すように構成することが出来る。例えば、ある実施形態では、触媒を使用して、炭化水素類、NOx、CO、CO2、H2O、SO2及び他の物質等の1つ以上の物質を酸化吸収する。
図7は、2つの異なる窒素酸化物(NO)濃度に対する、図2.aのアンモニアセンサー210における時間の関数としての他の例示電圧応答を示す信号図710である。上記したように、アンモニアセンサー210は、ヒーター、サーモカップル及びハウジングと結合される。アンモニア及び窒素酸化物の濃度は、5%酸素および残部窒素(N2)を含有するガス混合物中で変化させた。実験の結果、異なるアンモニアレベルに対する信号強度および応答は、2つの異なる濃度の窒素酸化物に対し、比較的変化がない。このことは、NOxが主成分である窒素酸化物に対し、低クロス感度であることを示している。ある実施形態では、電極212及び214の温度を適当な範囲で選択することによって、NOxに対するクロス感度を効果的に低減又は最小限化することが可能である。
ある実施形態では、CO及び炭化水素類等の他のガスに対するクロス感度は、酸化触媒材料の特定の使用により低減することが可能である。例えば、各電極上に、CO及び炭化水素類が電極/電解質の界面に透過する前にこれらガスを酸化する同一の酸化触媒を使用することによって、CO及び炭化水素類に対するクロス感度を、低減または緩和することが出来る。酸化触媒としては、例えば、アルミン酸ニッケル(NiAl2O4)、五酸化バナジウム(V2O5)、酸化モリブデン(MoO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化鉄(FeO、Fe2O3、Fe3O4)、酸化セリウム(CeO2)、酸化銅(CuO)、酸化マンガン(MNO2)、酸化ルテニウム(RuO2)、銀(Ag)、白金(Pt)及び銅(Cu)、並びにこれら酸化触媒を含有する種々の混合物及び複合物が挙げられる。他の実施形態では、CO及び炭化水素類を酸化可能な他の触媒を使用することが出来る。更に、アンモニアセンサー210では、異なる電極をマスキングすることによって、アンモニア感応性を付与することが出来る。このように、アンモニアセンサー210のある実施形態では、異なるアンモニア酸化反応に適応する付加層222を使用することが出来る。
図8.aは、他の実施形態のアンモニアセンサー810を示す模式斜視図である。図8.bは、図8.aのアンモニアセンサー810の斜視断面図である。図示されたアンモニアセンサー810は、基板818の表面816に取り付けた多電極アセンブリーを有する。第1の電極アセンブリーは、第1センサー電極812、第1層822及び第2層824から成る。第2の電極アセンブリーは、第2センサー電極814及び第1層822から成る。他の実施形態では、第2センサー電極814を被覆する層822は、第1センサー電極812を被覆する層822と異なっていてもよい。センサー電極812及び814に取り付けられる電気リード820は、対応するセンサー電極812及び814から発生する電気信号を搬送する。
一実施形態では、複数の電極アセンブリーは、同一アンモニア濃度に応答して異なる電位信号を生起する点で、互いに異なる。特に、異なる応答は、異なるセンサー電極812及び814によって、又は1つ以上の異なる層822及び824で被覆された同一のセンサー電極812及び814によって、生起されることが出来る。一実施形態では、両センサー電極812及び814は、主として白金(Pt)なり、センサー電極812は、触媒材料を含む層822により実質的に被覆される。一実施形態では、上記触媒材料は、CO及び炭化水素類を効果的にCO2及びH2Oに酸化可能な触媒から成る。他の電極814は、同一の触媒材料を含む層822、並びに第1層822と異なる触媒材料を含む付加層824によって、実質的に被覆される。第2層824は、アンモニアを窒素および蒸気に選択酸化する触媒材料から成る。例えば、一実施形態では、層824は、アルミン酸ニッケルから成る。他の実施形態では、少なくとも1つのセンサーアセンブリー上に、他の層822及び824、又は2,3以上の層を使用してもよい。
図9.aは、他の実施形態のアンモニアセンサー910を示す模式斜視図である。図9.bは、図9.aのアンモニアセンサー910の斜視断面図である。図示されたアンモニアセンサー910は、基板918の表面916上に取り付けた2つの電極アセンブリーを有する。しかしながら、電極アセンブリーの種々の層を記載する際の簡潔さを考慮して、図9.aでは、センサー電極914に取付ける層922及び924の幾つかを省略する。
一実施形態では、アンモニアアセンブリー910の基板918は、イオン非導通である。しかしながら、センサー電極912及び914の一方又は両方の少なくとも一部は、イオン導通材料から成る皮膜926によって被覆されてもよい。また、皮膜膜926は、少なくとも2つの電極の一部を被覆することも出来る。皮膜926は、ファスナー、接着、溶接、圧接、粘着等の多くの好適な方法のいずれかによって、電極912及び914に塗布または取付けられてもよい。一実施形態では、皮膜は、層922と電極912及び914間に配置される。一実施形態では、皮膜膜926は、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)から成る。他の実施形態では、アンモニアセンサー910は、他のタイプの皮膜926を有することも出来る。
他の実施形態では、上記アンモニアセンサーは、硫黄吸収材料または脱硫材料含有フィルターと共に構成されてもよいことを留意すべきである。フィルターは、センサー電極に接触する前に、ガス流から硫黄を除去するための硫黄スクラバーであってもよい。更に、ある実施形態では、アンモニアセンサーは、ヒーター及び任意に温度測定制御システムを含むか、又はこれと結合して、少なくとも1つの電極の温度を、所定の作動温度に保持してもよい。
図10は、一実施形態のアンモニアセンサー1010を示す分解アンモニアセンサーレイアウト図である。図示されたアンモニアセンサー1010は、底部カバープレート1012、ヒーター層1014、ヒーター基板1016、サーモカップルチャネル層1018、イオン導通基板1020、多電極アセンブリー1022及び1024を有する電極アセンブリー層、及びトップカバープレート1026から成る。一実施形態では、底部カバープレート1012及びトップカバープレート1026は、アルミナから形成される。同様に、ヒーター基板1016及びサーモカップルチャネル層1018は、アルミナから形成されてもよい。一実施形態では、イオン導通基板1020は、YSZから形成される。電極アセンブリー1022及び1024は、上記したように、センサー電極および1つ以上の付加層から成る。
一つの例示実施形態では、アンモニアセンサー1010は、ジルコニア電解質から成る基板1020を有し、基板1020の同一側に、2つの異なる電極アセンブリー1022及び1024が配置される。基板1020は、ヒーター層1014及びサーモカップル層1018と結合される。ヒーター層1014は、アルミナ基板1016上に白金レジスターをスクリーン印刷し、1000℃で焼成することによって形成される。焼成パターンを冷却した後、白金付加層(例えば、第2及び第3層)を、該ヒーターパターンの脚部上にスクリーン印刷する。ヒーター層1014は、次いで、1200℃で焼成した後冷却される。アルミナカバープレート1012及びサーモカップルチャネル層1018は、ヒーターパターン1014を設けたアルミナ基板1016にガラス接合される。カバープレート1012は、ヒーターパターン側でヒーター1014にガラス接合され、ヒーターのコイルを被覆する。サーモカップルチャネル層1018は、ヒーターのコイルから離間したチャネル配向開口部を有するヒーターパターン1014の反対側で、アルミナ基板1016にガラス接合される。次いで、サーモカップルを、サーモカップルチャネルに挿入し、サーモカップルチャネルに注入された少量の銀(Ag)インクによって所定位置に保持される。更なる少量の銀インクを、サーモカップルチャネル脚部の上面に塗布した後、YSZ基板1020を、サーモカップルチャネル層1018上に配置する。次いで、アセンブリーを750℃で焼成することにより、層間の結合が形成される。なお、図10で例示された上記作製法および幾何構造は、ヒーター及び温度測定を実施する方法を限定するものではない。
図11は、他の実施形態のアンモニアセンサー1110を示す分解アンモニアセンサーレイアウト図である。図示されたアンモニアセンサー1110は、底部カバープレート1112、ヒーター層1114、ヒーター基板1116、サーモカップルチャネル層1118、イオン導通基板1120、イオン導通基板1120の各側に配置された電極アセンブリー1122及び1124を有する電極アセンブリー層、及びトップカバープレート1126から成る。電極アセンブリー1122及び1124をイオン導通基板1120の両側に配置しているので、アンモニアセンサー1110は、また、ガスチャネル層1128を備え、ガス流の少なくとも一部のガスが、イオン導通基板1120の裏側に配置された電極アセンブリー1122に接近するのを可能とする。
図12は、他の実施形態のアンモニアセンサー1210を示す分解アンモニアセンサーレイアウト図である。図示されたアンモニアセンサー1210は、底部カバープレート1212、ヒーター層1214、ヒーター基板1216、サーモカップルチャネル層1218、エアー基準チャネル層1230の各側に配置されたイオン導通基板1220、多電極アセンブリー1222及び1224並びに酸素センサー1232を有する電極アセンブリー層、及びトップカバープレート1226から成る。
混合電位センサーは、酸素に対する感応性を有することが一般に知られているので、この問題を克服する1つの方法は、上記電極/電解質アセンブリーを酸素センサー1232と結合することである。酸素センサー1232からの信号を測定することによって、ガス中の酸素濃度を決定することが出来る。上記信号を電子制御モジュールに付与することによって、アンモニアセンサー1210は、上記信号を処理して、ターゲットガス中の酸素およびアッモニアレベルを決定することが出来る。上記組み合わせは、外部の酸素センサー(図示せず)に結合するか、又は異なる電極1222及び1224を備えた基板としての同一多層アセンブリーに内蔵された酸素センサー1232に結合することによって達成することが出来る。
上記したように、ある実施形態では、アンモニアセンサー1210は、脱硫部材と組み合わせて使用することにより、硫黄含有化合物を処理または吸収することが出来る。アンモニアセンサー1210の脱硫段は、CaO、MgO又はガス流から二酸化硫黄(SO2)を除去する機能を有するペロブスカイト群の物質から誘導される化合物等の吸収材(また、硫黄スクラバーとして知られる)を含むことが出来る。この吸収材は、ペレットパック、電極皮膜または含浸支持体の形状であってもよい。他の実施形態では、他の硫黄吸収または処理メカニズムを使用してもよい。
図13は、包装アンモニアセンサー1310の一実施形態を示す斜視断面図である。一実施形態では、上記のアンモニアセンサーの1つであるアンモニアセンサー1312は、ハウジング1314内に収容される。ハウジング1314は、金属ハウジング又は他のタイプのハウジングであってもよい。異なるタイプのアンモニアセンサーが、包装アンモニアセンサー1310に使用されるが、図示されたアンモニアセンサー1310は、1つ以上のアンモニア電極アセンブリー1316と、酸素電極アセンブリー1318とから成る。包装アンモニアセンサー1310は、また、硫黄スクラバー1320と、シール1322と、1つ以上の電気接点1324とを有する。一実施形態では、ハウジング1314は、また、防汚コネクター1326を包含する。
包装アンモニアセンサー1310を排気環境で使用するためには、包装アンモニアセンサー1310のセンサー末端(破線1328の上方の部分として示される)は、例えば、排気管又は排気流を促進する他の排気室内に挿入される。包装アンモニアセンサー1310の残部(破線1328の下方の部分)は、排気管または排気室から外側に延設され、ハウジング1314内のアンモニアセンサー1312に対する電気接続を容易にする。他の実施形態では、他の構成が可能である。
図14は、排気システム1412で使用される検出システム1410の一実施形態を示す模式ブロック図である。一実施形態では、排気システム1412は、エンジン1414に結合される。エンジン1414は、排ガスを発生し、排気システム1412は、排気口1416に向かう排ガス流を促進する。
エンジン1414からのNOx排気量を低減するために、エミッションコントロールシステム1418は、気体状アンモニア又は尿素を、排気システム1412に噴射する。ある実施形態では、エミッションコントロールシステム1418は、気体状アンモニア又は尿素を排気システム1412に噴射するアンモニアインジェクターを有する。気体状アンモニア又は尿素は、NOxと反応して、排ガス中のNOx量を減少させる。しかしながら、もし過剰な量のアンモニア又は尿素が、排気流中に噴射されると、ある量のアンモニアが、排気システム1412から排出される可能性がある。排気システム1412から排出されるアンモニア量を低減するためには、アンモニア検出部材1420により、排気流中のアンモニアを検出する。一実施形態では、図示されたアンモニア検出部材1420は、代表的には、上記のアンモニアセンサーの1つで構成される。別の場合は、アンモニア検出部材1420は、他のタイプのアンモニアセンサーにより構成されてもよい。
次いで、アンモニア検出部材1420は、1つ以上の電気信号を、電子制御モジュール1422に伝送する。一実施形態では、電子制御モジュール1422は、アンモニア検出部材1420から遠隔して取り付けられる。アンモニア検出部材1420は、無線または有線データ通信信号を含む如何なるタイプのデータ信号を使用して、電気信号を電子制御モジュール1422に伝送してもよい。図示された電子制御モジュール1422は、プロセッサー1424、ヒーターコントローラー1428及び電子記憶装置1430から構成される。
一実施形態では、プロセッサー1424は、データ収集システム1422の1つ以上の動作の実行を容易にする。特に、プロセッサー1422は、プロセッサー1424上に局所的に記憶されるか、又は電子記憶装置1430に記憶された指令を実行することが出来る。更に、種々のタイプのプロセッサー1424としては、一般的データプロセッサー、特殊仕様プロセッサー、多コアプロセッサー等が挙げられ、これらプロセッサーは、電子制御モジュール1422内で使用することが出来る。
一実施形態では、エミッションコントロールシステム1418は、また、アンモニアコントローラーを有し、アンモニアインジェクター1418により排気流中に噴射される気体状アンモニア又は尿素の量を制御する。同様に、ヒーターコントローラー1428は、アンモニア検出部材1420内の1つ以上のヒーターを制御し、対応する電極アセンブリー、特に、対応するセンサー電極を、特定の作動温度に保持する。
一実施形態では、電子記憶装置1430は、少なくとも1つのルックアップ表1432を記憶し、アンモニアセンサー1420から伝送された差電気信号を、特定のアンモニアレベル又は量と相関させる。このように、プロセッサー1424は、排気流中のアンモニア量を決定し、次いで適当な調整を行うことによって、エミッションコントロールシステム1418は、排気流中に噴射する気体状アンモニア又は尿素量を増加または減少させる。
添付図面に関し上述された記載は、アンモニア検出部材の実施形態および使用形態の特定の詳細を提供するものであるが、他の実施形態では、別の態様によって構成および/または使用されてもよい。以下の記載は、上記実施形態と合致するアンモニア検出部材の種々の可能な形態の全てではないが、異なる電極を有するアンモニア検出部材のための幾つかの他の実施形態を提供するものである。
ある実施形態では、アンモニア検出部材は、ガス混合物に曝露された少なくとも2つの電極を有し、この場合、電極の少なくとも1つは、アンモニアをN2及びH2Oに選択酸化可能な触媒活性材料により被覆される。他の電極は、アンモニアをNO及びH2Oに選択酸化可能な触媒活性材料により被覆される。言い換えれば、各センサー電極は、少なくとも1つの皮膜を有する。それ故、N2及びNOの測定は、ガス混合物中のアンモニア又は尿素の測定に使用することが出来る。
他の実施形態では、電極の1つは、アンモニア又は尿素をNO及びH2Oに選択酸化可能な触媒活性材料により被覆され、更にアンモニア又は尿素をN2及びH2Oに選択酸化可能な触媒活性材料により被覆される。言い換えれば、少なくとも1つのセンサー電極は、2つ以上の皮膜を有する。
他の実施形態では、電極の1つは、アンモニア又は尿素をN2及びH2Oに選択酸化可能な触媒活性材料により被覆される。他の電極は、触媒不活性材料または非常に触媒活性の低い材料により被覆される。
他の実施形態では、電極の1つは、アンモニア又は尿素をNO及びH2Oに選択酸化可能な触媒活性材料により被覆される。他の電極は、少なくとも、触媒不活性材料または非常に触媒活性の低い材料により被覆される。
ある実施形態では、アンモニア検出部材は、イオン導通材料の表面に配置された電極を有する。ある実施形態では、イオン導通材料としては、酸素イオン導通材料、水素イオン導通材料(即ち、プロトン導通材料)、アルカリ金属(例えば、Li+、Na+、K+)イオン導通材料等が挙げられる。ある実施形態では、電極の少なくとも1つは、白金、金または銀等の貴金属を含有する。ある実施形態では、電極の少なくとも1つは、酸化タングステン、酸化モリブデン又は酸化銅等の金属酸化物を含有する。ある実施形態では、バイアス電流または電圧が、電極間に印加される。
ある実施形態では、イオン導通材料を含む多孔性または緻密層により、電極の少なくとも1つを少なくとも部分的に被覆する。ある実施形態では、イオン導通材料を含む多孔性または緻密層により、電極の少なくとも1つを少なくとも部分的に被覆する。ある実施形態では、電極の少なくとも1つを少なくとも部分的に被覆するイオン導通材料の多孔性または緻密層は、酸素イオン導通材料、水素イオン導通材料(即ち、プロトン導通材料)、アルカリ金属(例えば、Li+、Na+、K+)イオン導通材料から形成することが出来る。ある実施形態では、硫黄吸収または吸着により、ガスが電極の少なくとも1つと接触する前に、ガス流中の二酸化硫黄を、少なくとも部分的に除去する。
更に、アンモニア検出部材の少なくとも1つの実施形態を使用した方法例は、以下の通りである:アンモニアと異なる相互作用を示す少なくとも2つの異なる電極を有するアンモニア検出部材を提供する;排ガス中のアンモニアが、少なくとも1つの電極上で酸化されるように、検出部材を、排ガスに曝露する;電極の少なくとも2つの間に電位を発生させる;電極間の電位を測定する;内部または外部酸素検出部材を使用して、ガスの酸素含有量を推定する;予め作成された検量データと比較するか、理論または実験式セットを使用するか、又は検量データに基づく内挿、外挿または計算によって、測定電位および酸素含有量に基づく排ガス中のアンモニア量を計算する;及びアンモニア計算量を、ディスプレイに出力するか、又は斯かる情報を、オンボードコンピュター又は等価の装置に伝送する。
本明細書を通じて記載される「一実施形態」、「実施形態」又は同様の言語は、記載された特徴、作動、構造または特性が、少なくとも1つの実施形態で実施可能であることを意味する。このように、本明細書を通じて記載される「一実施形態において」、「実施形態において」又は同様の語句は、必ずしも限定されないが、同一の実施形態を称するものである。
更に、実施形態の記載された特徴、作動、構造または特性は、好適な方法で、組み合わせることが可能である。それ故、電極構成例、ハウジング構成例、基板構成例、チャネル構成例、触媒構成例等の本明細書中に記載された多くの詳細は、本発明のある実施形態に関する理解を提供するものである。しかしながら、幾つかの他の実施形態は、1つ以上の特定の詳細を使用することなく、又は他の特徴、作動、要素、材料等により、実施可能である。その他、公知の構造、材料または作動は、簡略及び明確化のため、図面の少なくとも幾つかで図示または記載を省略する。
本発明の特定の実施形態に関して記載および例示したが、本発明は、記載および例示した部分の特定の形状および配置に限定されない。本発明の権利範囲は、添付請求の範囲およびその等価物によって限定されるものである。