JP2009532340A - 神経変性疾患の治療 - Google Patents

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Abstract

本発明は、タンパク質ホスファターゼPP2Aの活性を高める方法および組成物におけるセレン酸またはその薬学的に許容される塩の使用に関する。タウタンパク質のリン酸化を低減する方法、GSK3の活性を阻害する方法、および神経変性疾患を治療または予防する方法もまた記載する。

Description

発明の分野
本発明は、PP2Aの活性を高める方法および組成物におけるセレン酸またはその薬学的に許容される塩の使用に関する。本発明はまた、タウタンパク質のリン酸化を阻害または低減する方法、GSK3βの活性を阻害する方法および、特に、神経変性疾患を治療または予防する方法におけるセレン酸またはその薬学的に許容される塩の使用に関する。いくつかの態様で、本発明は、セレン酸またはその薬学的に許容される塩と、神経変性疾患を治療または予防する方法で使用するための他の治療法との併用に関する。
発明の背景
神経変性疾患とは、正常な脳機能を促進するニューロンを損傷することによって脳が自らまたは身体を制御する能力を損なわせることによって作用する数多くの障害を指す総称である。神経変性疾患は主に高齢者の疾病である。平均寿命が延びるとともに、全世界の人口がより長く生き、神経変性疾患を患う人の数が増大している。
多くの神経変性疾患では、脳内のニューロンおよびグリア細胞中に異常なタウタンパク質の沈着が見られる。たとえば、アルツハイマー病(AD)に特徴的な神経原線維濃縮体の中に異常なタウタンパク質が見いだされている。神経原線維濃縮体(NT)は、ADの二つの神経病理学的特徴の一つである[Lee et al., 2001]。対らせん状フィラメント(PHF)がNTの主要構成要素であり、主として、微小管関連タンパク質タウで構成されている[Lee et al., 1991、Grundke-Iqbal et al. 1986a, Grundke-Iqbal et al., 1986b]。PHFタウ(PHFから単離したタウタンパク質)は、異常にリン酸化されているため(正常なタウタンパク質の場合よりも多くの部位でリン酸化されている)、非常に不溶性であり、SDSゲル上で遅延易動性を示し、微小管に結合することができない[Lee et al., 1991、Grundke-Iqbal et al. 1986a, Grundke-Iqbal et al., 1986b]。脱リン酸化されると、PHFタウは可溶性になり、正常なタウタンパク質と同じくらい、微小管アセンブリと結合し、微小管アセンブリを促進することができるようになる[Wang et al., 1995、Wang et al., 1996、Bramblett et al., 1993]。異常なタウリン酸化がタウ機能障害、微小管不安定化、軸索輸送損失、神経変性およびADに関連する認知症を生じさせると考えられる[Alonso et al., 1996]。
異常なタウタンパク質の1種がリン酸化過剰タウタンパク質である。タウタンパク質は、インビボでは、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3β(GSK3β)により、アルツハイマー病特異的Ser396残基をはじめとする多数のリン酸化部位でリン酸化されることが知られている[Li and Paudel, 2006]。逆に、GSK3βはタンパク質キナーゼAktによってリン酸化されることが知られており、Aktの活性はタンパク質ホスファターゼPP2Aによって弱められることが知られている。
PP2Aは、異なる調節サブユニットに結合した共通のコア構造で構成された多数の形態で存在するヘテロ三量体ホロ酵素である[Mumby and Walter, 1993]。コア酵素は、触媒(C)サブユニットと構造(A)サブユニットとの複合体である。Bと呼ばれる第三のクラスのサブユニットは、PP2A活性および特異性を調節するいくつかのポリペプチドを含む[Mumby and Walter, 1993, Kamibayashi et al. 1994]。PP2AのABCアイソフォームの有意な部分がニューロン微小管に関連し[Sontag et al., 1995]、PP2Aを微小球関連タンパク質(MAP)、たとえばタウのリン酸化状態の調節に関与させている。B調節サブユニットを含有するPP2Aは、インビトロでタウと結合し、タウを強力に脱リン酸化することが示されているが、他の形態のPP2A (すなわちB'およびB")はそうではない。さらには、PP2AのABCアイソフォームが阻害されると、タウのリン酸化過剰、微小管からのタウの解離およびタウ誘発微小管安定化の損失が誘発される[Sontag et al., 1996]。最近、PP2Aがヒト脳の全タウホスファターゼ活性の約71%を占めるということが示された[Liu et al., 2005]。全ホスファターゼ活性およびタウに対するPP2Aの活性はAD患者の脳の中で有意に低下するが、一方、PP2Bのような他のホスファターゼの活性は実際にAD脳の中で増大する[Liu et al., 2005]。PP2A活性は、ヒト脳内の大部分のリン酸化部位におけるタウリン酸化のレベルとマイナスに相関する。これは、PP2Aが、ヒト脳内の多数の部位におけるそのリン酸化を調節する主要なタウホスファターゼであることを示唆する。これは、タウの異常なリン酸化過剰が一部にはAD脳におけるPP2A活性の下方制御によるものであり、PP2A、特にPP2AのABCアイソフォームの活性をブーストするように作用することができる因子が神経変性疾患の治療および/または発症予防において臨床有用性を有するということを暗示する。
また、タウタンパク質の異常なリン酸化が、異常なα-シヌクレインタンパク質が存在する神経変性障害に関連するという証拠がまだまだある。タウおよびα-シヌクレイン病変はいずれもアルツハイマー病、パーキンソン病、グアム・パーキンソン・ALS認知症複合症候群およびα-シヌクレインの突然変異によって生じるパーキンソン病で起こる(Duda et al., 2002, Forman et al., 2002、Ishizawa et al., 2003)。
タンパク質α-シヌクレインはパーキンソン病(PD)の病態生理で重要な役割を演じると思われる。主にα-シヌクレインで構成されているレビー小体がPDの病理的特徴である(Spillantini et al., 1997、Spillantini et al., 1998b)。
α-シヌクレインはレビー小体中に蓄積し、遺伝子研究が、家族性PDに関連するα-シヌクレインの突然変異を特定しているため、α-シヌクレインはPDの病態生理で重要な役割を演じると考えられる(Kruger et al., 1998, Polymeropoulos et al., 1997; Singleton et al., 2003; Spillantini et al., 1998b, Zarranz et al., 2004)。
α-シヌクレインにおけるA53TおよびA30P突然変異が、α-シヌクレインが凝集する傾向を高めることにより、PDを生じさせる原因であると思われる。これらの突然変異いずれも、α-シヌクレインが自発的に凝集する、または外因栄養素、たとえば金属および酸化ストレスに応答して凝集する傾向を高める(Conway et al., 2000; Hashimoto et al., 1999; Kruger et al., 1998; Ostrerova-Golts et al., 2000; Paik et al., 1999, 2000; Polymeropoulos et al., 1997)。
α-シヌクレインにおけるA53TおよびA30P突然変異はまた、遺伝子導入マウスおよびショウジョウバエにおいて年齢依存性のα-シヌクレイン凝集およびニューロン損傷を生じさせる(Feany and Bender, 2000; Giasson et al., 2002; Kahle et al., 2001; Masliah et al., 2000)。これらの結果は、神経変性の研究へのα-シヌクレインの関連性を強調する。
異常なリン酸化タウが、散発性PD患者に見られるレビー小体中に存在し、α-シヌクレイン病変を含む区域の近くのニューロン中で発現する(Ishizawa et al., 2003)。また、α-シヌクレインがインビトロでタウと結合し、インビトロでのタンパク質キナーゼAによるタウリン酸化を刺激するため、インビトロでの証拠がα-シヌクレインとタウをリンクさせる(Giasson et al., 2003; Jensen et al., 1999)。最近の結果は、α-シヌクレインがインビトロでのタウ原線維形成を増強するということ、および突然変異A53Tα-シヌクレインを過剰発現する症候性遺伝子導入マウスの脳の中に異常なタウ原線維が存在するということを示す(Giasson et al., 2003)。
Frasier Mら、2005は、A30Pα-シヌクレイン凝集がタウ病変とともに起こるということ、およびA30Pα-シヌクレインを過剰発現する遺伝子導入マウスにおいてα-シヌクレイン凝集がタウ病変と並行に起こるということを示し、症候性A30Pα-シヌクレイン遺伝子導入マウスが異常なタウリン酸化を示すということ、およびリン酸化がc-junキナーゼの活性化と相関するということを示した。
α-シヌクレイン(α-Syn)の凝集は別として、酸化ストレスおよび特定の神経毒、たとえば1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン(MPTP)への曝露がPDの病因にリンクしている。MPTPは、α-Syn発現レベルおよび凝集の増大と関連する、PDで見られるようなマウスおよび霊長類における黒質線条体系ドーパミン作動経路の選択的変性を誘発するが、真のレビー小体を誘発することはなく(Dauer and Przedborski, 2003)、MPTPの連続投与でユビキチンおよびα-シヌクレインに対して免疫反応性の黒質封入体の形成を引き起こす(Fornai et al., 2005)。特定のレビー小体のもう一つの成分が異常にリン酸化されたタウである(Ishizawa et al., 2003)。凝集体または封入体としての、または特定のレビー小体もしくはレビー小体様封入体の内部でのタウおよびα-Synのニューロン共存が、家族性アルツハイマー病(AD)、ダウン症およびレビー小体疾患の患者の脳において報告されている(Kotzbauer et al., 2001; Lippa et al., 1999; Arima et al., 1999、Iseki et al., 1999)。
タウとα-Synとの類似点としては、シナプス前ニューロンにおける発現、インビボでの長い半減期、熱安定性を可能にするそれらの「固有に変性された」性質およびアセンブルされる原線維のコアを形成する疎水性残基の伸長を介して原線維形成する性向がある(Friedhoff et al., 2000、Serpell et al., 2000)。
[396/404]S 3E二重突然変異体(タウの最長のヒトアイソフォームht40の位置396および404における2個のセリン残基がグルタミン酸残基に置き換えられている、PHF-1リン酸化部位を模倣する擬似リン酸化作成物)タウでの他のインビトロデータもまた、Ser396/404でのリン酸化過剰が、タウのC末端をして、より伸長したコンフォメーションをとらせて、タウオリゴマー化に対するその阻害効果を変化させ、フィラメント形成の速度を増大させるということを示す(Abraha et al., 2000)。
Duka Tら、2006は、中脳ドーパミン作動性ニューロンにおけるα-Syn発現レベルのMPTP誘発増大が、PHF-1結合部位(Ser396/404)におけるタウのリン酸化パターンの変化を促進して、両タンパク質のミスロケーションを免疫共沈降の増大およびサルコシル不溶性リン酸化過剰タウのレベルの増大とともに生じさせるということを示して、MPTP誘発パーキンソン症および神経毒の初期ステップがSer396/404におけるタウのα-Syn指向リン酸化過剰であることを示唆している。
MPTPが微小管からのα-Synの解離の増大を細胞骨格結合画分に関連するリン酸化タウレベルの低下とともに生じさせるという発見もまた、神経変性プロセスの基礎にある機構に関連するかもしれない。タウのリン酸化過剰は、微小管に対するタウの親和性を大きく低下させて微小管の不安定化を生じさせる(Drechsel et al., 1992; Biernat et al., 1993; Michaelis et al., 2002)。加えて、リン酸化タウはまた、微小管からの他の微小管結合タンパク質、たとえばMAP1およびMAP2に結合し、それらを欠乏させることが知られている(Iqbal and Grundke-Iqbal, 2005)。そのうえ、α-Synが微小管に結合するということ(Wersinger and Sidhu, 2005)が、軸索輸送におけるその可能な役割(Sidhu et al., 2004)とともに知られているため、微小管からのこのタンパク質の解離が微小管の不安定さをさらに悪化させて細胞骨格ネットワークおよび細胞ホメオスタシスを乱す可能性が高い。このように、微小管からのα-Synの解離および微小管に結合したタウの性質における異常が、封入体形成に関連する神経変性プロセスにつながる事象の連鎖におけるもう一つの鎖環を構成することができる。
α-SynレベルのMPTP誘発異常は、リン酸化タウ形成および特にタウのPHF-1形態を修飾し、PHF形成およびそれに関連する重要なニューロン機能の両方の損失の早期段階の発現における見通しを提供し、MPTP誘発パーキンソン症候群または神経毒性が、シヌクレオパチーを思い起こさせるようなα-Synの変化を伴うタウオパチーであることを示唆する。
これは、ADの病変生成の際に可動化されることが知られるタンパク質(タウ)の異常がパーキンソン症ででも可動化されるが、ADとは関連しない脳の部位で可動化されることを示唆し、それにより、特定の神経変性疾患の発生における相当な重複を示唆する。これは、無関係であるように思われる神経変性疾患が実際には共通の誘因事象およびその後の病理を有し、それがニューロン変性を推進することを示唆する。
タウタンパク質のリン酸化に影響し、神経変性障害の治療または予防で臨床的に有用である作用因子が要望される。
発明の概要
本発明は、一部には、タンパク質ホスファターゼPP2Aの活性をセレン酸またはその薬学的に許容される塩への曝露によって高めることができるという発見に基づく。PP2Aの活性の増強は、タウタンパク質のリン酸化、特にリン酸化過剰を、二叉の手法、すなわち i) Aktを脱リン酸化および不活性化し、それによってGSK3βのリン酸化を低減し、その結果、タウタンパク質のリン酸化を低減すること、および ii) タウタンパク質の直接的脱リン酸化により、低減または阻害することができる。タウタンパク質のリン酸化、特にリン酸化過剰の低減は、ニューロンおよびグリア細胞中の異常なタウタンパク質の蓄積または沈着を低減または阻止し、したがって、神経変性障害の治療または予防で有用である。
したがって、本発明は、一つの局面で、対象における神経変性疾患を治療または予防する方法を提供し、本方法は、対象に対し、有効量のセレン酸またはその薬学的に許容される塩を投与する段階を含む。いくつかの態様で、神経変性疾患はタウオパチーである。いくつかの態様で、神経変性疾患はα-シヌクレオパチーである。特定の態様で、神経変性疾患は、初老期認知症、老人性認知症、アルツハイマー病およびパーキンソン病から選択される。
本発明のもう一つの局面では、ニューロン、グリア細胞、またはレビー小体におけるタウタンパク質のリン酸化を阻害または低減する方法を提供し、本方法は、ニューロンまたはグリア細胞を有効量のセレン酸またはその薬学的に許容される塩に曝露する段階を含む。いくつかの態様で、タウタンパク質は微小管関連タウタンパク質である。いくつかの態様で、タウタンパク質は神経原線維濃縮体中にある。いくつかの態様で、タウタンパク質のリン酸化過剰が阻害または阻止される。
本発明は、さらに別の局面で、PP2Aの活性を高めるを提供し、本方法は、PP2Aを有効量のセレン酸またはその薬学的に許容される塩に曝露する段階を含む。いくつかの態様で、PP2Aは、Aktを脱リン酸化するアイソフォームである。いくつかの態様で、PP2Aは、タウタンパク質、特に、ニューロンおよびグリア細胞ならびにレビー小体中に見られる微小管関連タウタンパク質を脱リン酸化するアイソフォームである。
本発明は、さらなる局面で、ニューロンまたはグリア細胞におけるGSK3βの活性を阻害する方法を提供し、本方法は、ニューロンまたはグリア細胞を有効量のセレン酸またはその薬学的に許容される塩に曝露する段階を含む。
本発明のさらなる局面では、神経変性疾患を治療または予防するための医薬の製造におけるセレン酸またはその薬学的に許容される塩の使用が提供される。
上記で概説した方法および使用のいくつかの態様で、セレン酸またはその薬学的に許容される塩は、神経変性疾患の治療または予防に適した他の治療薬または神経変性疾患の症状を緩和するのに適した治療薬と併用されて投与される。
発明の詳細な説明
1. 定義
断りない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似している、または同等である任意の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法および材料を記載する。本発明に関して、以下の用語を以下のように定義する。
本明細書で使用する冠詞「ある(a)」および「ある(an)」は、文法上の対象物の一つまたは複数(すなわち少なくとも一つ)を指す。一例として、「ある要素」とは、一つまたは複数の要素を意味する。
本明細書で使用する用語「約」とは、基準の数量、レベル、値、寸法、サイズまたは量に対して最大で30%、20%または10%しか変化しない数量、レベル、値、寸法、サイズまたは量を指す。
本明細書および請求の範囲を通じて、断りない限り、単語「含む(comprise)」、ならびに「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」などその活用形は、述べられた完全体もしくはステップまたは完全体もしくはステップの群の包含を暗示するが、任意の他の完全体もしくはステップまたは完全体もしくはステップの群の排除を暗示しないものと理解される。
本明細書で使用する用語「脱リン酸化」とは、タンパク質のような生化学的実体からのリン酸基(PO4 2-)の化学的除去を指す。細胞条件下、脱リン酸化は、ホスファターゼのような酵素によって酵素的に達成される。
本明細書で使用する用語「グリア細胞(glial cell)」および「グリア細胞(glial cells)」とは、中枢神経系のニューロンのための構造的かつ代謝的支持を提供する非ニューロン細胞を指す。グリア細胞は、神経膠またはグリアと呼ぶことができる。
用語「リン酸化過剰」とは、タンパク質のような生化学的実体上で利用可能なすべてのリン酸化部位がリン酸化されている状況を指す。その生化学的実体のさらなるリン酸化は起こりえない。語句「リン酸化過剰を阻害または低減」とは、生化学的実体上のすべての部位がリン酸化されることを防ぎ、リン酸化部位のすべてがリン酸化されている生化学的実体の数を減らすことを含む。
本明細書で使用する用語「併用」とは、少なくとも二つの薬剤を、神経変性疾患に対するそれらの効果が少なくとも部分的に同じ期間にわたって出るように用いる対象の治療を指す。少なくとも二つの薬剤の投与は単一の組成物として同時に実施されてもよいし、あるいは各薬剤が別個の組成物として同時または順次に投与されてもよい。
用語「レビー小体」とは、神経細胞中で発生する異常なタンパク質凝集体を指す。レビー小体中の主要なタンパク質凝集体はα-シヌクレインで構成されている。
本明細書で使用する用語「神経変性疾患」とは、ニューロンの損失または変性を特徴とする神経学的疾病を指す。神経変性疾患は、神経変性運動障害ならびに記憶損失および/または認知症を伴う神経変性状態を含む。神経変性疾患のとしてはタウオパチーおよびα-シヌクレオパチーがある。神経変性疾患の例は、初老期認知症、老人性認知症、アルツハイマー病、第17染色体(FTDP-17)にリンクしたパーキンソン症、進行性核上性麻痺(PSP)、ピック病、一次進行性失語症、前頭側頭型認知症、皮質基底認知症、パーキンソン病、認知症を伴うパーキンソン病、レビー小体を伴う認知症、ダウン症、多系統萎縮症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、およびハレルフォルデン・スパッツ症候群を含むが、これらに限定されない。
本明細書で使用する用語「神経原線維濃縮体」とは、脳の中に位置し、対らせん状フィラメント(神経フィラメントおよび微小管)の高密度配列で構成された異常な構造を指す。神経原線維濃縮体は、タウタンパク質、特に微小管関連タウタンパク質を含む。脳の中に存在する神経原線維濃縮体の数が対象における認知症の程度に相関すると考えられている。神経原線維濃縮体はアルツハイマー病の識別特性である。
本明細書で使用する用語「ニューロン」とは、情報を受け取り、処理し、伝達することに特化した、中枢神経系内に見られる細胞を指す。ニューロンは、神経細胞と呼ぶこともできる。
本明細書で使用する用語「栄養量」とは、平均1日摂取量を提供するセレンの量を含む。合衆国では、平均1日摂取量は80〜120μg/日である。
セレン酸に関して本明細書で使用する「薬学的塩」とは、ヒトおよび動物への投与に関して毒物学的に安全である金属イオン塩を意味する。たとえば、適当な薬学的に許容される塩としては、薬学的に許容される無機酸、たとえば塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、スルファミド酸および臭化塩素酸の塩または薬学的に許容される有機酸、たとえば酢酸、プロピオン酸、酪酸、酒石酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、乳酸、ムチン酸、グルコン酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、サリチル酸、スルファニル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、エデト酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリル酸、パントテン酸、タンニン酸、アスコルビン酸およびバレリアン酸の塩があるが、これらに限定されない。
塩基塩としては、薬学的に許容されるカチオン、たとえばナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、ニッケル、亜鉛、アンモニウムおよびアルキルアンモニウムとで形成される塩基塩があるが、それらに限定されない。
塩基性窒素含有基は、低級アルキルハロゲン化物、たとえばメチル、エチル、プロピルおよびブチル塩化物、臭化物およびヨウ化物、ジアルキルスルフェート、たとえばジメチルおよびジエチルスルフェート等のような薬剤で第四級化されていることができる。
セレン酸の適当な金属イオン塩としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、ニッケル、亜鉛、アンモニウムおよびアルキルアンモニウム塩があるが、これらに限定されない。いくつかの態様で、塩はセレン酸のリチウム塩ではない。好ましいセレン酸塩はナトリウム塩Na2SeO4である。
本明細書で使用する用語「リン酸化」とは、タンパク質のような生化学的実体へのリン酸基(PO4 2-)の化学的付加を指す。細胞条件下、リン酸化は、キナーゼのような酵素によって酵素的に達成される。語句「リン酸化を阻害または低減する」とは、リン酸化過剰の場合におけるようなすべてのリン酸化部位のリン酸化を防ぐことを含め、生化学的実体上の一つまたは複数のリン酸化部位のリン酸化を防ぐことを含む。この語句はまた、一つまたは複数のリン酸化部位で起こるリン酸化を防ぐことにより、または、生化学的実体上の一つまたは複数のリン酸化部位で起こる脱リン酸化の結果として、生化学的実体のリン酸化の程度を下げることを含む。
本明細書で互換可能に使用される用語「対象」または「個体」または「患者」は、予防または治療が望まれる任意の対象、特に脊椎動物対象、より具体的には哺乳動物対象を指す。本発明の範囲に入る適当な脊椎動物としては、霊長類、鳥類、家畜(たとえばブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ロバ)、実験動物(たとえばウサギ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター)、愛玩動物(たとえばネコおよびイヌ)ならびに捕獲野生動物(たとえばキツネ、シカ、ディンゴ)があるが、これらに限定されない。好ましい対象は、神経変性疾患、特にアルツハイマー病または認知症の治療または予防を要するヒトである。しかし、前述の用語は、症状が存在することを暗示するわけではないことが理解されよう。
本明細書で使用する用語「栄養過剰」とは、栄養所要量とみなされる量よりも多い量を指す。合衆国では、セレンの平均1日摂取量は80〜120μg/日である。セレンの栄養過剰量は、推奨1日許容量を超えるセレンを対象に提供する。たとえば、セレンの栄養過剰量は、1日3μg/kg〜20mg/kg、0.015mg/kg〜20mg/kg、0.1mg/kg〜20.0mg/kg、0.1mg/kg〜14mg/kg、0.1mg/kg〜13mg/kg、0.1mg/kg〜12mg/kg、0.1mg/kg〜10mg/kg、0.1mg/kg〜9mg/kg、0.1mg/kg〜8mg/kg、0.1mg/kg〜7mg/kg、0.1mg/kg〜6mg/kg、0.15mg/kg〜5mg/kg、0.15mg/kg〜4mg/kg、0.15mg/kg〜3mg/kg、0.15mg/kg〜2mg/kg、0.15mg/kg〜1mg/kg、特に1日0.1mg/kg〜14mg/kg、0.07mg/kg〜6.5mg/kgまたは0.15mg/kg〜5mg/kg、より具体的には1日0.07mg/kg〜2mg/kgであることができる。
本明細書で使用する用語「α-シヌクレオパチー」とは、脳内の神経細胞中のα-シヌクレインの凝集または異常なα-シヌクレインを伴う神経変性障害または疾患を指す。α-シヌクレオパチーとしては、パーキンソン病、認知症を伴うパーキンソン病、レビー小体を伴う認知症、ピック病、ダウン症、多系統萎縮症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、およびハレルフォルデン・スパッツ症候群があるが、これらに限定されない。
神経変性疾患の治療もしくは予防またはタウタンパク質のリン酸化の阻害もしくは低減またはGSK3β活性の阻害に関連して本明細書で使用する用語「有効量」とは、PP2Aの活性を高めるのに有効である、特に、神経変性疾患に関連して、症状をこうむるのを防ぎ、そのような症状を食い止め、および/または既存の症状を治療するのに有効である、セレン酸またはその薬学的に許容される塩の、単一用量または一連の用量の一部としての投与または付加を意味する。有効量は、治療を受ける個体の健康および身体状態、治療を受ける個体の分類学的グループ、組成物の製剤形態、医療状況の評価およびその他の関連要因に依存して異なる。量は、日常的試行を通じて決定することができる比較的広い範囲に入ると予想される。具体例では、有効量は栄養量または栄養過剰量である。
本明細書で使用する用語「タウオパチー」とは、脳内のニューロンおよびグリア細胞中の異常なタウタンパク質アイソフォームの沈着を伴う神経変性障害または疾患を指す。タウオパチーは、リン酸化過剰にあるタウタンパク質を含め、タウタンパク質が異常にリン酸化される疾病および障害を含む。タウオパチーとしては、初老期認知症、老人性認知症、アルツハイマー病、第17染色体(FTDP-17)にリンクしたパーキンソン症、進行性核上性麻痺(PSP)、ピック病、一次進行性失語症、前頭側頭型認知症、および皮質基底認知症があるが、これらに限定されない。
2. 神経変性疾患を治療または予防する方法
本発明は、一部には、セレン酸またはその薬学的に許容される塩がPP2Aの活性を高めるのに有効であり、それが他方で、GSK3βによるタウタンパク質のリン酸化の低減および/またはタウタンパク質の脱リン酸化速度の増大を生じさせるという断定に基づく。本発明の方法は、一般に、ニューロンまたはグリア細胞中に存在するPP2Aを、PP2A活性増強量のセレン酸またはその薬学的に許容される塩に曝露することを含む。好適には、セレン酸のPP2A活性増強量は、セレン酸またはその薬学的に許容される塩の栄養量または栄養過剰量である。いくつかの態様で、セレン酸またはその薬学的に許容される塩の、特にセレン酸またはその塩の量は、1日約0.015mg/kg〜約20mg/kg、通常は約0.1mg/kg〜14mg/kg、0.07mg/kg〜6.5mg/kgまたは0.15mg/kg〜5mg/kg、たとえば1日0.07mg/kg〜2mg/kgである。
本発明は、神経変性疾患を治療または予防するために効果的に使用することができる。神経変性疾患は、神経変性運動障害および記憶損失を伴う神経変性疾患を含み、タウオパチーおよびα-シヌクレオパチーを含む。神経変性疾患の代表例は、初老期認知症、老人性認知症、アルツハイマー病、第17染色体(FTDP-17)にリンクしたパーキンソン症、進行性核上性麻痺(PSP)、ピック病、一次進行性失語症、前頭側頭型認知症、皮質基底認知症、パーキンソン病、認知症を伴うパーキンソン病、レビー小体を伴う認知症、ダウン症、多系統萎縮症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、およびハレルフォルデン・スパッツ症候群を含む。好ましい態様で、本発明は、タウオパチー、特にアルツハイマー病および認知症を治療または予防するのに適している。他の態様で、本発明は、α-シヌクレオパチー、特にパーキンソン病を治療または予防するのに適している。好適には、セレン酸またはその薬学的に許容される塩の有効量は、セレン酸の栄養量または栄養過剰量である。いくつかの態様で、セレン酸またはその薬学的に許容される塩の量は、1日約0.015mg/kg〜約20mg/kg、通常は約0.1mg/kg〜14mg/kgまたは0.07mg/kg〜6.5mg/kgまたは0.15mg/kg〜5mg/kg、たとえば1日0.07mg/kg〜2mg/kgである。好ましい態様で、セレン酸またはその薬学的に許容される塩はセレン酸ナトリウム(Na2SeO4)である。
いくつかの態様で、セレン酸またはその薬学的に許容される塩は、神経変性疾患を治療または予防するためのもう一つの治療薬と併用して対象に投与される。セレン酸またはその薬学的に許容される塩と併用することができる、神経変性疾患を治療または予防するための治療薬の代表例は、コリンエステラーゼ阻害薬、たとえばタクリン(Cognex(登録商標))、ドネペジル、ガランタミンおよびリバスチグミン; N-メチル-D-アスパルテート(NMDA)受容体拮抗薬、たとえばメマンチン; エストロゲン治療薬、たとえばプレマリン、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)、たとえばアスピリンおよびイブプロフェン、レボドパ(Lドーパ)、ドーパデカルボキシラーゼ阻害薬、たとえばカルビドパおよびベンセラジドまたはLドーパとドーパデカルボキシラーゼ阻害薬との組み合わせ、たとえばsinemet(登録商標)およびStalevo(登録商標)、ドーパミン作動薬、たとえばブロモクリチン(Parlodel(登録商標))、ペルゴリド(Permax(登録商標))、プラミペキソール(Mirapex(登録商標))、ロピニロール(Requip(登録商標))、カベルゴリン、アポモルフィン(APOKYN(商標))およびリスリド、モノアミンオキシダーゼB阻害薬、たとえばセレジリン(Eldepryl(登録商標)およびCarbex(登録商標))およびラサジリン(Azilect(登録商標))、抗コリン作動剤、たとえばメシル酸ベンズトロピン(Cogentin(登録商標))および塩酸トリヘキシフェニジル(Artane(登録商標))ならびにCOMT阻害薬、たとえばエンタカポン(Commtan(登録商標))およびトルカポン(Tasmar(登録商標))または他の薬、たとえば酒石酸リバスチグミン(Exelon(登録商標))およびアマンタジン(Symmetrel(登録商標))またはレボドパ、ドーパデカルボキシラーゼ阻害薬、ドーパミン作動薬、モノアミンオキシダーゼB阻害薬、抗コリン作動剤またはCOMT阻害薬の二つまたはそれ以上の混合物を含むが、これらに限定されない。
併用治療法は、有効量のセレン酸またはその薬学的に許容される塩を、神経変性疾患を治療または予防するために使用される、通常はセレン酸の非存在で使用される量の薬剤とともに含むことができる。たとえば、塩酸タクリンを、セレン酸またはその薬学的に許容される塩との併用の一部として、ADのような神経変性疾患の患者に対し、1日40mg〜160mgの量で投与することもできるし、またはドネペジルを1日5〜10mgの量で投与することもできる。認知症の患者には、プレマリンを、結合型ウマエストロゲン(CEE) 1日1.25mgを達成するための用量で投与することもできる。または、セレン酸またはその薬学的に許容される塩との同時投与の場合には、神経変性疾患の治療に使用される薬剤の量を減らしてもよい。いくつかの態様で、併用は相乗効果を発揮することができる。
本発明の特定の態様は、対象における神経変性疾患を治療または予防する方法を提供し、本方法は、一般に、対象に対し、有効量のセレン酸またはその薬学的に許容される塩を投与する段階を含む。これらの方法を実施する場合、対象を管理する人が、対象の特定の状態および状況のためのセレン酸またはその薬学的に許容される塩の有効な剤形を決定することができる。セレン酸の有効量とは、症状をこうむるのを防ぎ、症状を食い止め、症状を治療することを含め、神経変性疾患の治療または予防に有効である量である。いくつかの態様で、有効量は栄養量である。他の態様で、有効量は栄養過剰量である。特定の態様で、セレン酸またはその薬学的に許容される塩はセレン酸ナトリウムである。
以下、本発明の方法で使用するための投与形態、セレン酸の投与量およびセレン酸の製剤形態を説明する。治療される神経変性疾患は、疾病の過程を示す一つまたは複数の診断パラメータを適当な対照との比較で計測することによって決定することができる。ヒト対象の場合、「適当な対照」は、治療前の個人であってもよいし、プラセボで治療されたヒト(たとえば、年齢が適合するまたは類似の対照)であってもよい。本発明にしたがって、神経変性疾患の治療は、非限定的に、(i) 疾病の素因を有するおそれがあるが、まだ当該疾病を有するとは診断されていない対象における神経変性疾患を予防すること(したがって、治療は神経変性疾患の予防的処置となる) (ii) 神経変性疾患を抑止する、すなわち、神経変性疾患の発症を制止すること、または (iii) 神経変性疾患の結果として生じる症状を緩和することを包含する。
本発明の方法は、神経変性疾患を有すると診断されている個体、神経変性疾患を有する疑いがある個体または神経変性疾患にかかりやすいことがわかっており、神経変性疾患を発症する可能性が高いと考えられる個体を治療するのに適している。
上記方法のいくつかの態様で、神経変性疾患はタウオパチー、特にアルツハイマー病または認知症であり、治療は、場合によっては、上記のようなタウオパチーを治療するのに適したもう一つの薬剤の投与をさらに含む。
上記方法の他の態様で、神経変性疾患はα-シヌクレオパチー、特にパーキンソン病であり、治療は、場合によっては、上記のようなα-シヌクレオパチーを治療するのに適したもう一つの薬剤の投与をさらに含む。
好ましい態様で、セレン酸はセレン酸ナトリウムである。
本発明の方法で治療される例示的な対象は、脊椎動物、特に哺乳動物である。特定の態様で、対象は、ヒト、ヒツジ、ウシ、ウマ、ウシ、ブタ、イヌおよびネコからなる群より選択される。好ましい対象はヒトである。
セレン酸またはその薬学的に許容される塩は、薬物送達の技術分野で公知の多数の技術のいずれかにしたがって製剤化することができる。セレン酸またはその薬学的に許容される塩は、当然、すべての製剤形態があらゆる投与経路に適するわけではないことを考慮しつつ、多数の手段によって投与することができる。セレン酸またはその薬学的に許容される塩は、固体または液体形態で投与することができる。適用は、経口、直腸、経鼻、局所(口腔内および舌下を含む)または吸入によるものであることができる。セレン酸またはその薬学的に許容される塩は、従来の薬学的に許容される補助剤、担体および/または希釈剤とともに投与することができる。
固体適用剤形は、錠剤、カプセル剤、散剤、丸剤、パステル剤、坐剤および顆粒剤を含む。これらはまた、担体または添加物、たとえば香料、染料、希釈剤、軟化剤、結合剤、保存剤、持続剤および/または封包剤を含むこともできる。液体投与剤形としては液剤、懸濁剤および乳剤がある。これらもまた、上述の添加物とともに提供することができる。
使用しやすい適当な粘度を有するセレン酸またはその薬学的に許容される塩の液剤および懸濁剤を注射することもできる。注射するには粘度が高すぎる懸濁剤は、必要ならば、埋め込む目的に設計された装置を使用して埋め込むこともできる。徐放剤形は一般に、非経口または経腸的手段によって投与される。非経口投与は、本発明を実施するために使用されるセレン酸またはその薬学的に許容される塩のもう一つの投与経路である。「非経口」は、注射ならびに経鼻、膣内、直腸および口腔内投与に適した製剤形態を含む。
セレン酸またはその薬学的に許容される塩の投与は経口持続性製剤形態を含むことができる。経口製剤形態は、好ましくは、1日1回〜1日3回、徐放性カプセル剤もしくは錠剤の形態で、または水性液剤として投与される。セレン酸またはその薬学的に許容される塩は、毎日、持続的に、週1回または週3回のいずれかで、静脈内投与することもできる。
セレン酸またはその薬学的に許容される塩の投与は、毎日の投与、好ましくは、1日1回、徐放性カプセル剤もしくは錠剤の形態での投与または1日1回、水性液剤としての投与を含むことができる。
セレン酸またはその薬学的に許容される塩と、神経変性疾患を治療するのに適した少なくとも一つの薬剤との組み合わせは、固体または液体形態で、単一の製剤形態または組成物として、または別個の製剤形体または組成物として投与することができる。いくつかの態様で、セレン酸またはその薬学的に許容される塩および神経変性疾患を治療するのに適した薬剤は、単一の錠剤もしくはカプセル剤または別個の錠剤もしくはカプセル剤として経口投与される。他の態様で、セレン酸またはその薬学的に許容される塩および神経変性疾患を治療するための薬剤は、単一組成物または別個の組成物として静脈内投与される。
本発明はまた、栄養量または栄養過剰量のセレン酸またはその薬学的に許容される塩を含む、神経変性疾患を治療または予防するための薬学的組成物を提供する。いくつかの態様で、組成物は、セレン酸またはその薬学的に許容される塩約0.5mg〜約1.0g、たとえば5mg〜450mgおよび薬学的に許容される担体を含有する。いくつかの態様で、セレン酸またはその薬学的に許容される塩は、約5.0mg〜約700mgまたは5mg〜450mgの量である。代表例では、セレン酸またはその薬学的に許容される塩は、1回または分割1日用量で約1.6mg〜450mg、5mg〜450mg、7.5mg〜250mg、特に50mg〜200mg、たとえば50mg〜100mgまたは100mg〜150mgの量である。いくつかの態様で、薬学的組成物は、タウオパチー、特にアルツハイマー病または認知症を治療または予防するのに有用である。他の態様で、薬学的組成物は、α-シヌクレオパチー、特にパーキンソン病を治療または予防するのに有用である。
セレン酸またはその薬学的に許容される塩を含む薬学的組成物は、神経変性疾患を治療または予防するためのもう一つの薬剤をさらに含むことができる。たとえば、組成物は、セレン酸またはその薬学的に許容される塩およびコリンエステラーゼ阻害薬、たとえばタクリン、ドネペジル、ガランタミンもしくはリバスチグミン、N-メチル-D-アスパルテート(NMDA)受容体拮抗薬、たとえばメマンチン、エストロゲン様薬剤、たとえばプレマリンまたは非ステロイド抗炎症薬(NSAID)、たとえばアスピリンもしくはイブプロフェン、レボドパ、ドーパデカルボキシラーゼ阻害薬、レボドパとドーパデカルボキシラーゼ阻害薬および/またはCOMT阻害薬との組み合わせ、ドーパミン作動薬、モノアミンオキシダーゼB阻害薬、抗コリン作動剤、COMT阻害薬または別の薬、たとえば酒石酸リバスチグミンもしくはアマンタジンを含有することができる。
本発明の薬学的組成物は、セレン酸とで非免疫原性および生体適合性であり、無傷の分子として生吸着、生分解、排出されることができるさらなる成分を含むこともできる。製剤形態は、すぐに使用可能な形態で供給することもできるし、投与の前に溶媒の添加を要する無菌散剤または液剤の形態で供給することもできる。無菌性が望まれるならば、製剤形態を無菌条件下で製造することもできるし、混合物の個々の成分が無菌性であることもできるし、製剤形態を使用前に無菌ろ過することもできる。このような液剤はまた、適切な薬学的に許容される担体、たとえば緩衝液、塩、添加物、保存剤等を含有することもできるが、これらに限定されない。
いくつかの態様では、本発明の方法でセレン酸またはその薬学的に許容される塩を投与するために徐放性経口製剤形態が使用される。これらの製剤形態は、一般に、血流中への吸収を遅らせるために溶解性を低下させたセレン酸またはその薬学的に許容される塩を含む。加えて、これらの製剤形態は、同じくセレン酸またはその薬学的に許容される塩の吸収を遅らせるように働くことができる他の成分、薬剤、担体等を含むこともできる。また、生浸食性であってもなくてもよいマイクロカプセル化、ポリマー包括系および浸透圧ポンプを使用して、カプセルまたはマトリックスからのセレン酸またはその薬学的に許容される塩の遅延的または抑制的拡散を可能にすることもできる。
セレン酸またはその薬学的に許容される塩は、単独で使用することもできるし、別の薬剤の一部として使用することもできる。したがって、本発明はまた、神経変性疾患の治療のための、セレン酸またはその薬学的に許容される塩を含む薬剤をも考慮する。
以下、本発明の性質をより明確に理解し、実施に移すことができるよう、以下の非限定的実施例を参照しながら特に好ましい態様を説明する。
実施例
実施例1
間接的機構によってAktを脱リン酸化するセレン酸ナトリウム
セレン酸ナトリウムは無傷の前立腺癌細胞において一貫してAktの脱リン酸化を誘発する。このような脱リン酸化は、Aktタンパク質そのものに対する直接的な阻害効果の結果であるかもしれず、または、Aktリン酸化の負の調節因子をブーストする、または正の調節因子を阻害することにより、間接的に同様に達成することもできる。直接的機構と間接的機構とを区別するため、無細胞環境でAktリン酸化および活性に対するセレン酸ナトリウムの効果を測定した。PC3前立腺癌細胞を100mm皿で平板培養し、70〜80%密集したところで血清を夜通し欠乏させた。無傷の細胞中でのAktリン酸化に対する効果を測定するため、PC3細胞を、新鮮な無血清培地中、セレン酸ナトリウム500μMで1時間処理した。細胞を溶解させ、Akt Ser473リン酸化のレベルを、活性化特異的抗体を用いるイムノブロット分析によって測定し、発現したAktタンパク質のレベルに対して比較を実施した。精製Aktに対する効果を測定するため、同様に平板培養した、ただし非処理のPC3細胞を、タンパク質-タンパク質複合体の維持を最小限にする強力な細胞溶解緩衝液であるRIPA(ホスファターゼ阻害薬なし)中で溶解した。等しい量(40〜500μg)の全細胞溶解産物(WCL)からpan-Aktモノクロナール抗体を用いる免疫沈降によってAktを精製したのち、37℃のヒートブロック中、500μMセレン酸ナトリウムとともに1時間インキュベートした。そして、免疫沈降したタンパク質を分解し、活性化Aktのレベルを上記のイムノブロット分析によって測定した。図1Aは、PC3細胞に関して無傷の細胞および無細胞環境の両方における処理後のリン酸化Aktのレベルを比較する。無傷のPC3細胞を500μMセレン酸ナトリウムで1時間処理した結果、Aktリン酸の大幅な低減が生じた。
これらの発見を確証するため、Calbiochem K-LISA(商標)Akt活性キットを使用して組換えヒトAkt1の酵素活性に対するセレン酸ナトリウムの効果を計測し、それを、強力かつ非特異的なタンパク質キナーゼ阻害薬であるスタウロスポリンの効果と比較した。このELISAベースのアッセイは、二番目のセリンでAktによってリン酸化されているビオチン化ペプチド基質(GRPRTSSFAEG)を使用する。ストレプトアビジンでコートした穴の中で、セレン酸ナトリウム500μMまたはスタウロスポリン1μMを、用いてまたは用いずに、組換えヒトAkt1 250ngをビオチン化Akt基質とともに30℃で30分間インキュベートした。そして、結合したリン酸化基質をホスホセリン検出抗体、そしてHRP-抗体結合体によって検出し、TMB基質で発色させた。吸光度を、590nmの基準に対して450nmで計測した。計算された平均吸光度(A450-A590-ブランク)±SEMとしてまとめた三つの独立した実験の結果が、図1Bに示されている。上記の観察結果と合致して、セレン酸ナトリウムは、組換えヒトAktのキナーゼ活性に対して計測可能な直接的影響を及ぼさなかった。対照的に、非特異的阻害薬スタウロスポリンはAktのキナーゼ活性を強力に阻害した。
要するに、これらのデータは、セレン酸ナトリウムがAkt活性に対して直接的な阻害効果を有さないことを示し、観察された脱リン酸化は間接的機構を介さなければならないことを示す。
実施例2
PP2Aのホスファターゼ活性を刺激することによってAktを脱リン酸化するセレン酸ナトリウム
正味Akt活性の低下は、初期Aktリン酸を防ぐことにより、または、Akt脱リン酸化を高めることにより、間接的に達成することができる[Kohn et. al. 1996]。しかし、セレン酸ナトリウムによって誘発されるAktリン酸化の二相性応答(初期の一過性ブーストののち深く持続性の低下がある)を考慮すると、セレン酸ナトリウムが、単に上流側キナーゼがAktをリン酸化する能力を下げることによって作用したとは考えにくい。したがって、セレン酸ナトリウムがAkt脱リン酸化を誘発する能力に対するタンパク質ホスファターゼ阻害の効果を測定した。まず、Akt脱リン酸化の調節に関与する二つのホスファターゼであるリンタンパク質ホスファターゼPP1およびPP2Aを阻害する、赤潮藻類からのポリエーテル毒素(かつ、下痢性貝毒の原因)である、オカダ酸を使用した[Fernandez et al., 2002]。PC3前立腺癌細胞5×105個を6穴プレートの各穴で平板培養し、8時間付着させたのち、血清を夜通し欠乏させた。新鮮な無血清培地中、オカダ酸5nMまたは1000nMを用いて、または用いずに細胞を30分間前処理したのち、1時間かけてセレン酸ナトリウムを500μMの最終濃度まで加えた。溶解した細胞をSDS-PAGEによって分解したのち、Ser473残基でのAktリン酸化に関し、この部位でリン酸化されたときAktを特異的に認識する抗体を用いるイムノブロット分析によってプロービングし、発現したAktタンパク質の全レベルに関して比較を実施した(図2A)。PTEN欠失PC3細胞をセレン酸ナトリウムで処理すると、予想どおり、この細胞株で認められる慢性的に高いレベルのAktリン酸化が顕著に低下し、この低下は、5nMオカダ酸との事前のインキュベーションによる影響を受けない。対照的に、オカダ酸1000nMでの前処理は、非セレン酸対照でAktリン酸化をブーストするだけでなく、セレン酸ナトリウムの阻害効果を完全に消滅させる。
関与するホスファターゼをさらに精製するため、PPP阻害に関する特異性が異なる様々なリンタンパク質ホスファターゼ(PPP)阻害薬の群を、Aktリン酸化に対するセレン酸ナトリウムの阻害効果を排除する能力に関してスクリーニングした。この群は、タウトマイシン500nM (PP1)、オカダ酸500nM (低用量PP2A>PP1)、エンドタールA (PP2A) 100μM、カリクリンA2nM (低用量PP1>PP2A)、カリクリンA10nM (高用量はPP1およびPP2Aを阻害)およびシクロスポリンA400ng/ml (PP2B)を含むものであった。PC3前立腺癌細胞をほぼ上記のように平板培養し、30分前にPPP阻害薬による前処理を実施したのち、または実施せずに、500μMセレン酸ナトリウムで1時間、同様に処理した。この場合もまた、溶解した細胞をSDS-PAGEによって分解したのち、Ser473残基でのAktリン酸化に関し、この部位でリン酸化されたときAktを特異的に認識する抗体を用いるイムノブロット分析によって膜をプロービングし、発現したAktタンパク質の全レベルに関して比較を実施した。図2Bに示すように、PPP阻害薬による前処理を受けなかった細胞またはPP1もしくはPP2Bに特異的であったPPP阻害薬で処理された細胞では、セレン酸ナトリウムへの曝露がAktのリン酸化の顕著な低減を生じさせた。対照的に、PP2Aの特異的または比較的特異的阻害薬である低用量オカダ酸またはエンドタールAのいずれかで処理された細胞は、セレン酸ナトリウム誘発Akt脱リン酸化を完全に阻止した。
セレン酸ナトリウムは、PP2AとAktとの複合体形成速度を高めることによるか、すでにPP2Aに結合しているPP2Aの内因性ホスファターゼ活性を高めることによるかのいずれかで、またはそれら両方により、PP2A媒介Akt脱リン酸化を増大させることができる。これらの機構を区別しやすくするため、まず、セレン酸ナトリウムによる処理がPP2AとAktとの複合体形成のレベルを高めるかどうかを判定した。PC3前立腺癌細胞1×106個を6cm皿で平板培養し、8時間付着させたのち、次に血清を夜通し欠乏させた。そして、細胞を、新鮮な無血清培地または10%FCSのいずれかの中で、500μMセレン酸ナトリウムで1.5時間処理したのち、ELB緩衝液中で溶解させた。モノクロナール抗Akt抗体を使用して全細胞溶解産物それぞれ400μgから全Aktを免疫沈降させ、タンパク質A-セファロースビーズで捕獲した。負の対照溶解産物(ブランク)は、免疫沈降抗体を省略したものであった。非特異的結合を減らすために洗浄したのち、ビーズを3×SDSタンパク質負荷緩衝液中で5分間煮沸し、高速で遠心分離処理し、上澄みをSDS-PAGEによって分解した。ホスファターゼの触媒サブユニットを特異的に認識する抗体を用いるイムノブロット分析によってPP2A結合のレベルを測定し、Aktの減少量および沈降する抗体(IgG)の濃度に関して比較を実施した。図2Cに示すように、非処理PC3細胞からのAktの免疫沈降は、検出可能なPP2A触媒サブユニットの量をビーズに非特異的に結合する量(ブランク)よりも多くし、高レベルのAktリン酸化を有する基底状態ででも、少なくともいくらかのAktがPP2Aと複合体化することを示す。セレン酸ナトリウムによる処理はPP2A触媒サブユニットとAktとの会合を増大させるが、血清による刺激は複合体形成を基底レベル未満に下げる。複合体形成におけるこの増大を定量化するため、三つの独立した実験からの代表的なイムノブロットを数値化し、濃度分析に付し、実験ごとに対照に対して正規化した。そして、全免疫沈降Aktタンパク質に対するPP2A触媒サブユニットの平均比±SEMを決定した。図2Cに示すように、セレン酸ナトリウムによる処理ののち、Aktタンパク質に対するPP2A触媒サブユニットの結合の約50%の増大が認められた。
二つのタンパク質の間の会合の単なる増大によってAkt脱リン酸化に対するセレン酸ナトリウムの効果を十分に説明することができるかどうかを判定するため、Akt会合ホスファターゼ活性に対するセレン酸ナトリウムの効果を計測した。PC3細胞2×106個を10cmプレートで平板培養し、8時間付着させたのち、血清を夜通し欠乏させた。そして、新鮮な無血清培地中、セレン酸ナトリウム500μMを用いて、または用いずに細胞を1時間処理したのち、低リン酸緩衝液中で溶解させた。そして、全タンパク質500〜600μgを抗Akt (1:100)モノクロナール抗体およびタンパク質Aスラリー30μlで免疫沈降させ、洗浄後、最終洗浄緩衝液25μlをマラカイトグリーンとともにインキュベーションにより、遊離ホスフェート汚染に関してチェックした。500μM合成ホスホトレオニンペプチドとともに撹拌しながら30℃で10分間インキュベーションにより、免疫沈降物をホスファターゼ活性に関してアッセイした。マラカイトグリーン溶液の添加によって遊離ホスフェートを検出し、試料ごとに二重反復で590nmの吸光度を読み取った。三つの独立した実験からの平均ホスファターゼ活性±SEMが図2Dに示されている。セレン酸ナトリウムによるPC3細胞の処理は、免疫沈降Aktタンパク質に関連するホスファターゼ活性を2倍超に増大させて、以前に観察されたPP2A結合における簡単な増大よりも有意に大きくした。
要するに、これらのデータは、セレン酸ナトリウムが、リンタンパク質ホスファターゼ、具体的にはPP2Aを介して間接的にAkt脱リン酸化を誘発することを実証する。セレン酸ナトリウムは、Aktに結合するPP2Aの量を増すが、ホスファターゼ活性に関連する相対的増加はその2倍近くであり、セレン酸ナトリウムが主として酵素活性に影響を及ぼすということを示す。
実施例3
PP2Aコア二量体のホスファターゼ活性を直接ブーストするセレン酸ナトリウム
PP2Aのコア構造は、36kDa触媒サブユニット(PP2Ac)および65kDa調節サブユニット(PR65またはAサブユニット)からなる。第三の調節Bサブユニットとの結合が基質特異性を調節する[Wera and Hemmings, 1995]。PP2Aホスファターゼ活性は、図3に概略的に示す翻訳後修飾によって調節することができる。PP2Acは、受容体および非受容体チロシンキナーゼのいずれも、たとえばEGFR、インスリン受容体、p60v-srcおよびp56lckによってインビトロでリン酸化されることが示されている[Chen et al., 1992]。このリン酸化は、Tyr307で特異的に起こり、ホスファターゼ活性の90%超の損失と関連している[Chen et al., 1992]。このリン酸化はまた、インビボでも特定されており、血清またはEGFで刺激された、またはp60v-srcで形質転換された線維芽細胞中で増大するが、血清欠乏によって減少する[Chen et al., 1994]。隣接するThr304のリン酸化もまた、ホスファターゼ活性の有意な損失に関連している[Guo and Damuni, 1993]。Tyr307とは対照的に、Thr304は、自己リン酸化活性化タンパク質キナーゼによってリン酸化され、それにより、初期阻害シグナルを増幅させると思われる。いずれの場合でも、PP2Aは、オカダ酸またはミクロシスチンLRによる薬理学的阻害がリン酸化を増大させるように、それ自体のホスファターゼとして作用する[Chen et al., 1994、Guo and Damuni, 1993]。したがって、阻害性刺激の除去ののち、PP2Aは両リン酸基を加水分解して活性ホスファターゼを急速に再生させる。PP2Acはまた、カルボキシ末端リジン残基L309の可逆性メチル化によって調節に付される。メチル化反応は、ロイシンカルボキシルメチルトランスフェラーゼによって触媒され[Xie and Clarke, 1994]、活性三量体を形成するためのサブユニットの正しい会合のために必要であると思われる[Wu et al., 2000、Tulstylch et al., 2000、Bryant et al., 1999]。PP2Acはホスファターゼメチルエステラーゼ1 (PME-. 1)によって脱メチル化される[Lee et al., 1996]。興味深いことに、PME-1はまた、PP2Aチロシルホスファターゼ活性を刺激するものとしてはじめに同定されたタンパク質であるホスホチロシルホスファターゼ活性化因子(PTPA)によって逆転される状況である不活性コンフォメーションにあるPP2a二量体および三量体に結合し、それらを潜在的に安定化すると報告されている[Cayla et al., 1994, Langin et al., 2004、Van Hoof et al., 2005]。
セレン酸ナトリウムで観察されたPP2Aホスファターゼ活性のブーストが翻訳後調節に関与する上流側成分に対する効果から独立したものであるかどうかを判定するため、セレン酸ナトリウムの存在または非存在でインキュベートした赤血球から精製したヒトPP2A A-Cヘテロ二量体の酵素活性を測定した。初期アッセイで、ホスファターゼ酵素作用の化学基質としてパラニトロフェニルホスフェート(pNPP)を使用し、これが、ホスフェート部分の加水分解ののち、アルカリ性条件下で可溶性である濃い黄色のクロモゲンであるパラニトロフェノールを生成する。精製ヒトPP2A二量体0.05Uを、5mMセレン酸ナトリウムまたは500nMオカダ酸の存在で、37℃で合計30分間インキュベートし、生成されたパラニトロフェノールの量をホスファターゼ活性の読みとして計測し、非処理の対照試料と比較した。各試料の吸光度を、基準としての590nmとともに、405nmで二重反復で計測した。以下の式を使用してPP2A活性を計算した。
活性=(試料の量、リットル単位)×A405/1.78×104M-1cm-1 (吸光係数)×0.25cm×15分×0.05U酵素
データは、少なくとも三つの独立した実験からの平均相対ホスファターゼ活性±SEMとして提示される。図4A(i)に示すように、このような低さの精製酵素の濃度でさえ、ホスファターゼ活性はすぐに明白であり、これは、オカダ酸とのインキュベーションによって完全に消滅した。対照的に、セレン酸ナトリウムとのPP2Aのインキュベーションは、観察されるホスファターゼ活性をほぼ三倍増させた。
次に、内部トレオニン残基上でリン酸化された合成6アミノ酸ペプチドからの無機ホスフェートのPP2A A-C二量体による放出に対するセレン酸ナトリウムの効果を計測することにより、ホスファターゼ活性のこのブーストが基質特異的であるかどうかを判定した。50μMセレン酸ナトリウムを用いて、または用いずに、PP2A 0.01〜0.05Uをリンペプチド500μMとともに37℃で15分間インキュベートした。マラカイトグリーンの添加により、酵素活性によって放出された無機ホスフェートの量を測定し、590nmで吸光度を読み取った。マラカイトグリーンは、モリブデートおよびオルトホスフェートの存在で安定な緑色複合体を形成して、存在する無機ホスフェートの濃度を計測することを可能にする。データは、少なくとも三つの独立した実験からの590nmでの平均吸光度±SEMとして提示される。図4A(ii)に示すように、セレン酸ナトリウムは、ここでもまた、PP2Aのホスファターゼ作用によってセリンリンペプチドから放出される無機ホスフェートの濃度を2倍超に増大させた。
PP1の触媒サブユニットは、PP2Aの触媒サブユニットとで約50%の配列相同性を共有し、これは、関連するホスファターゼの中で最高である[Barton et al., 1994]。セレン酸ナトリウムによって刺激されたホスファターゼ活性のブーストがPP2Aに特異的であるかどうかを判定するため、PP1の活性に対するその効果を測定した。骨格筋から精製したウサギPP1 0.05Uを、50μMセレン酸ナトリウムを用いて、または用いずに、500μMホスホトレオニン合成ペプチドとともに37℃で15分間インキュベートし、上記のようにマラカイトグリーンを使用して遊離ホスフェートの濃度を測定した。データは、三つの独立した実験からの590nmでの平均吸光度+SEMとして提示される。図4Bに示すように、セレン酸ナトリウムはPP1のホスファターゼ活性に影響しなかった。
実施例4
PP2Aの酸化還元調節に影響しないセレン酸ナトリウム
ますます多くの研究が、可逆性酸化が、タンパク質ホスファターゼをマイナスに調節する一般的な機構であることを示唆している[Wang et al., 1996、Barrett et al., 1999、Sohn and Rudolph 2003]。触媒領域中の保存されたシステイン残基がそれらの酵素活性にとって重要であるが、酸化性ミクロ環境では、これは、細胞内ジスルフィドまたはスルフェニル-アミド結合のいずれかの形成によって修飾されて(図5A)、ホスファターゼ活性の損失を伴うかもしれない[Salmeen et al., 2003, Kwon et al., 2004]。セレン化合物が細胞酸化還元状態に影響することができるものとして、セレン酸ナトリウムが酸化の阻害効果を軽減することによってPP2Aを刺激するという可能性を調査した。
まず、セレン酸ナトリウムによって誘発されるAktの脱リン酸化が細胞酸化還元状態に感応性であるかどうかを判定した。PC3前立腺癌細胞5×105個を6穴プレートの穴1個あたりで平板培養し、8時間付着させたのち、血清を夜通し欠乏させた。細胞を、新鮮な培地中、500μMセレン酸ナトリウムを用いて、または用いずに処理したのち、0.25mMまたは1mMの過酸化水素に10分間曝露した。等しい量の全細胞溶解産物を分解したのち、イムノブロット分析に付してリン酸化Akt Ser473のレベルを測定した。そして、発現したAktタンパク質の全レベルとで比較を実施した。図5Bに示すように、セレン酸ナトリウムによる細胞の処理はAktリン酸化のレベルを顕著に低下させ、これは、過酸化水素0.25mMの急性添加による影響を受けなかった。対照的に、より高い用量の1mM過酸化水素への急性曝露はセレン酸ナトリウムの脱リン酸化効果を完全に消滅させて、このブロックが酸化還元感応性であることを示した。
タンパク質ホスファターゼの可逆性酸化を不活性化することは、触媒領域内の重要なシステイン残基の修飾を含み、最終的に、細胞内ジスルフィドまたはスルフェニル-アミド結合のいずれかの形成につながる。セレン酸ナトリウムがPP2A中のシステイン残基に対して何らかの修飾効果を有するかどうかを判定するため、種々の処理ののち、Ellmanアッセイ[Ellman, 1958]を使用して、精製ヒトPP2A A-C二量体中の遊離スルフヒドリル基の数を定量した。Ellman試薬(5,5'-ジチオ-ビス(2-ニトロ安息香酸)、DTNB)は、遊離スルフヒドリル基とでジスルフィド結合を急速に形成して、色素産生性チオレートイオンを放出する。PP2A 0.01UをN-エチルマレイミド(NEM) 10mMまたは過酸化水素10mMまたはセレン酸ナトリウム10mMまたはセレン酸ナトリウム10mMおよび過酸化水素10mMとで37℃で15分間インキュベートした。そして、Ellman試薬の添加および、その後、412nmでの吸光度の計測により、ホスファターゼ内に存在する遊離スルフヒドリル基の量を測定した(図5C)。スルフヒドリルアルキル化剤としてのNEMおよび過酸化水素の両方とのインキュベーションは、存在する遊離スルフヒドリル基の数を有意に減らした。対照的に、セレン酸ナトリウムとのインキュベーションは効果を及ぼさず、特に、スルフヒドリル基の過酸化水素媒介修飾からPP2Aを保護しなかった。事実、過酸化水素によるスルフヒドリル基の修飾は、セレン酸ナトリウムの存在におけるほうが有意に効率的であった。
次に、2',7'-ジクロロジヒドロフルオレセインジアセテート(DCFDA)を使用して、セレン酸ナトリウムが無傷の細胞の酸化還元電位に影響するかどうかを判定した。DCFDAは非蛍光性かつ自由に細胞透過性であるが、反応性酸素種(ROS)の存在では、細胞非透過性かつ高度に蛍光性の2',7'-ジクロロフルオレセイン(DCF)へと急速に転換される[Bass et al., 1983]。PC3前立腺癌細胞1×106個を60mm皿で平板培養し、8時間付着させ、血清を夜通し欠乏させた。処理の前に細胞をDCFDA 5μMとで15分間インキュベートした。
細胞をセレン酸ナトリウム500μMまたはN-アセチルシステイン(NAC) 1mMのいずれかで1時間処理したのち、過酸化水素500μMに10分間曝露した。そして、蛍光細胞の割合をフローサイトメトリーによって測定した。図5Dは、処理グループごとに代表的な蛍光分布ヒストグラムを示し、三つの独立した実験からの蛍光細胞の平均%+SEMが図5Eに要約されている。過酸化水素へのPC3細胞の曝露は、予想どおり、分布ヒストグラム中の右へのシフトによって示される、細胞内酸素遊離ラジカルの生成の顕著な増大につながった。セレン酸ナトリウムによる細胞の前処理は、蛍光細胞の基底割合に対して効果を及ぼさず、過酸化水素への曝露ののち、ROSの生成から細胞を保護しなかった。対照的に、水素供与体NACでの前処理は、蛍光細胞の基底割合の小さな減少を招き、特に、過酸化水素によるROS産生を有意に減衰させた。
要するに、これらのデータは、セレン酸ナトリウムによって誘発されるAktの脱リン酸化は細胞酸化還元状態に感応性であるが、セレン酸ナトリウムは、内因性かつ可逆性の阻害的酸化を緩和することにより、PP2Aのホスファターゼ活性をブーストしないということを示す。
実施例5
基質特異性を示すセレン酸ナトリウム刺激PP2Aホスファターゼ活性
PP2Aは、全細胞タンパク質の0.1〜1%を構成すると推定される、遍在性で多量に発現するタンパク質であり[Gallego M and Virshup 2005; Cohen, 1997]、増大する数のタンパク質基質の調節に関与する[Zhu et al., 2004、Woetmann et al., 2003, Silverstein et al., 2002]。PP2A基質特異性を制御する機構は不完全にしか理解されていないが、特異性調節Bサブユニットの示差的結合が重要であると思われる[Van Kanegan et al., 2005]。セレン酸ナトリウムによって刺激される増大したPP2Aホスファターゼ活性が無差別的であるのか、または特にヘテロ三量体に対して特異的であるのかを判定した。
セレン酸ナトリウムが、PC3前立腺癌細胞から免疫沈降したAktに関連するホスファターゼ活性を増大させるということ、およびセレン酸ナトリウムが精製PP2A A-C二量体のホスファターゼ活性を直接刺激するということが実証された。ホスファターゼ活性におけるこのブーストが一般化されているかどうかを判定するため、PP2A触媒サブユニットに対するモノクロナール抗体を使用して、セレン酸ナトリウム500μMまたはエンドタールA100μMのいずれかで1時間処理されたPC3細胞からPP2Aを免疫沈降させた。細胞溶解産物を脱塩カラムに通すことによって遊離ホスフェートを除去し、ホスホセリンペプチドおよびマラカイトグリーンを使用してホスファターゼ活性を計測した。異なる条件下での免疫沈降PP2Aの相対ホスファターゼ活性が三つの独立した実験の平均吸光度+SEMとして図6Aに示されている。セレン酸ナトリウムによるPC3細胞の処理は、細胞内PP2Aの一般的プールのホスファターゼ活性には影響を及ぼさなかった。対照的に、PP2A特異的ホスファターゼ阻害薬エンドタールAによる処理はホスファターゼ活性を有意に低下させた。
PP2Aのもう一つの公知の基質p70S6Kに対するセレン酸ナトリウムの効果を試験した[Peterson et al., 1999]。PC3前立腺癌細胞5×105個を6穴プレートの各穴で平板培養し、8時間付着させたのち、血清を夜通し欠乏させた。そして、30分前にオカダ酸500nMで前処理を実施し、または実施せずに、細胞をLY294003 50μMまたはセレン酸ナトリウム500μMのいずれかで1時間処理した。全細胞溶解産物の等しい量(75μg)をSDS-PAGEによって分解し、p70S6Kリン酸化のレベルを、Thr389でリン酸化されたときp70S6Kタンパク質を特異的に認識する抗体を用いる免疫ブロット分析によって測定した。タンパク質負荷対照βチューブリンとで比較を実施する。図6Bに示すように、基底条件下でさえ、p70S6Kリン酸化はすぐに明白であり、これは、PI3K阻害薬LY294002による処理によって消滅する。p70S6Kリン酸化の負の調節因子としてのその公知の役割と一致して、オカダ酸によるPP2Aの阻害は、観察されるリン酸化のレベルをブーストする。しかし、セレン酸ナトリウムによって誘発されるAktの脱リン酸化とは対照的に、p70S6Kのリン酸化は、同様な条件下では影響を受けない。
基質特異性の主要な決定因子は、Aおよび触媒サブユニットとともにインビボで観察される三量体複合体を構成する調節Bサブユニットにあると思われる。
Bサブユニットのどのファミリーが前立腺癌細胞中のAktとで複合体を形成するのかを判定することを試みた。PC3前立腺癌細胞2×106個を100mm皿で平板培養し、8時間付着させたのち、血清を夜通し欠乏させた。そして、細胞を、弱い洗浄緩衝液であるELBで溶解させ、pan-Aktモノクロナール抗体(1:100)および30μlタンパク質A-セファロースを用いて溶解産物500μgから全Aktを免疫沈降させた。負の対照(ブランク)は、免疫沈降性抗体を省略したものであった。繰返し洗浄したのち、ビーズを3×SDSタンパク質負荷緩衝液中で5分間煮沸し、高速で遠心分離処理し、得られた上澄みをゲル電気泳動によって分解した。比較のため、全細胞溶解産物100μgを同じゲル上で分離させ、得られた膜を、サブユニットのBファミリーまたはB'ファミリーいずれかのメンバーを特異的に認識する抗体でプロービングした。pan-Aktを認識する抗体を用いて同じブロットをプロービングすることにより、Aktの正常な沈降を確認した。図6Cに示すように、この系ではBファミリー調節サブユニットだけがAktとで共沈し、PP2Ac、AおよびR2 Bサブユニットファミリーのメンバーの三量体がこれらの細胞におけるAkt脱リン酸化を媒介するということを示唆した。
実施例6
グリコーゲン合成に対するインスリンの代謝効果は、Aktの直接下流基質であるグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3 (GSK-3)によって媒介される。GSK-3は、グリコーゲンシンターゼをリン酸化しかつ不活性化する、遍在的に発現するセリン/トレオニンキナーゼである。インスリン受容体の活性化に応答して、Aktは抑制因子GSK-3をリン酸化しかつ不活性化し、それによってグリコーゲン合成を刺激する[Cross et al., 1995]。加えて、GSK-3は、タンパク質翻訳の調節、細胞周期進行およびWntシグナル伝達に関与している[Diehl et al., 1998, Welsh et al., 1996、He et al., 1995]。GSK-3β活性化に対するセレン酸ナトリウム処理の効果を測定するため、PC3前立腺癌細胞を平板培養し、血清を夜通し欠乏させたのち、新鮮な培地中、表記する様々な時間、セレン酸ナトリウム500μMで処理した(図7)。分解された全細胞溶解産物を、キナーゼ活性にとって重要な部位であるSer9でリン酸化された場合のみGSK-3βを特異的に認識する抗体を用いるイムノブロット分析に付し、負荷対照としての細胞骨格タンパク質β-チューブリンとで比較を実施した。PC3細胞は、対照レーン(0時間)で観察される高程度のリン酸化によって示されるGSK-3β活性化の高い基底レベルを有する。セレン酸ナトリウムによる処理は、1時間および3時間で最大であり、6時間の時点で基底レベルに戻るリン酸化の顕著な低下を招いた。セレン酸ナトリウムが誘発した阻害の程度を定量化するため、セレン酸ナトリウム500μMの3時間の効果をLY294002 50μMの1時間の効果と比較する数値化イムノブロットを作成し、濃度測定により、GSK-3βリン酸化の程度を発現タンパク質の割合として測定した。平均で、セレン酸ナトリウムはGSK-3βを20%超低下させたが、一方、LY294002はリン酸化レベルのほぼ60%の低下を生じさせた。
実施例7
Akt/タンパク質キナーゼB活性化を強力に阻害するが、セレノメチオニンはそうではないセレン酸ナトリウム
セレン酸ナトリウムがPI3K経路の活性を妨害することができるかどうかを判定するため、無血清PC3細胞を500μMセレン酸ナトリウムで様々な時間処理した。活性化特異的抗体を使用して全細胞溶解産物中のAktのリン酸化状態を測定した。PTENの損失のせいで、さらなる血清の非存在でさえ、Ser473およびThre308の両部位でAktの強力な活性化がある。セレン酸ナトリウムの添加は、曝露から10分以内に両部位でAktのリン酸化における一過性のブーストを誘発した。そして、このブーストに続き、顕著で長い不活性化が生じ、その間、全細胞Aktレベル(pan Akt)は本質的に変化のないままであった。
各化合物500μMで様々な時点で処理し、Ser473でのAktリン酸化を評価することにより、PC3細胞におけるAkt活性化に対するセレン酸ナトリウムの効果をセレノメチオニンの効果に比較した。図8に示すように、セレノメチオニンは、計測したすべての期間でAktのリン酸化のレベルに影響しなかったが、一方、セレン酸ナトリウムはAktリン酸化を大きく阻害した。
実施例8
セレン酸ナトリウムに特有であるAkt脱リン酸化を誘発する能力
セレン酸ナトリウムが一貫してカギキナーゼAktの強いリン酸化を誘発するが、セレノメチオニンは効果を有しないということを考慮して、この能力がセレン酸ナトリウムに特有であるのか、またはセレンの他の化学形態によって共有されるのかを判定した。他の無機セレン種(亜セレン酸ナトリウム、二酸化セレン、硫化セレンおよび亜セレン酸)および有機セレン種(メチルセレノシステイン、セレノシステイン)を、Akt活性化に影響するそれらの能力に関して試験した。DMSOに可溶化させた硫化セレンを除き、すべての形態を水に溶解し、500μMの濃度で1時間、血清欠乏PC3細胞に加えた。そして、全細胞溶解産物を分解し、Akt発現の全レベル(pan Akt)だけでなく、Aktの活性化状態を、Ser473部位でリン酸化されたときAktを特異的に認識する抗体を用いるイムノブロッティングによって測定した。Akt活性化の程度を定量化するため、イムノブロットを数値化し、全Aktに対するリン酸化Aktの比を濃度測定によって測定した。三つの独立した実験からの全Aktタンパク質レベルに対するリン酸化Aktの平均比±SEMを図9にまとめた。PC3細胞を500μMのセレン酸ナトリウムで1時間処理すると、非処理細胞に比較して、Ser473でAktリン酸化の80%を超える低下が生じた(p<0.05、スチューデントt検定)。対照的に、同一条件下で投与されたセレンの他の無機形態および有機形態によるPC3細胞の処理は、Akt活性化の程度に対して有意な効果を及ぼさなかった。要するに、これらのデータは、Akt脱リン酸化を誘発する能力がセレン酸ナトリウムに特有であることを示す。
実施例9
セレン酸ナトリウムに特有であるPP2A活性を高める能力
実施例7では、試験したセレンのすべての化学形態のうち、セレン酸ナトリウムだけがAktの脱リン酸化を有意に誘発するということを実証するデータが提示された。PP2A活性に対する差別的な効果がこの特異性を説明することができるかどうかを判定するため、PP2Aホスファターゼ活性に対するセレン酸ナトリウム(5mMまたは50μM)、亜セレン酸ナトリウム(5mMまたは50μM)およびセレノメチオニン(5mMまたは50μM)の効果を、pNPPおよびセリンリンペプチドをそれぞれ基質として使用するpNPP加水分解アッセイで比較した(図10Aおよび10B)。セレン酸ナトリウムで認められたホスファターゼ活性の明らかなブーストとは対照的に、亜セレン酸ナトリウムまたはセレノメチオニンのいずれもPP2Aホスファターゼ活性に有意に影響しなかった。
実施例1〜9の材料および方法
試薬
細胞株
実験手順で使用した哺乳動物細胞株の詳細を表1に記載する。
(表1)
Figure 2009532340
すべての細胞培養物を、5%または10%の二酸化炭素を含むForma Scientificインキュベータ中、L-グルタミン(Gibco Invitrogen #11875-119)を含むRPMI 1641中で37℃で維持した。ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)およびアンフォテリシンB (25ng/ml)(Gibco Invitrogen #15240-062)を標準としての培地に加えた。断りない限り、通常の手順として、細胞を5%または10%ウシ胎児血清(Gibco Invitrogen #10099-141)中に維持した。サブコンフルエント細胞を0.5%トリプシン-EDTA(Gibco Invitrogen #15400-054)で継代接種した。
市販の抗体
上記の実験作業では、市販の一次抗体およびセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合または蛍光標識またはビオチン化二次抗体を数多く使用した。これらの詳細を以下にまとめる:
抗Aktウサギポリクロナール抗体、カタログ番号9272、Cell Signalling Technology (CST);
抗Akt (5G3)マウスモノクロナール、カタログ番号2966、CST;
抗ホスホAkt (ser473)ウサギポリクロナール、カタログ番号9271、CST;
抗ホスホGSK3β(ser9)ウサギポリクロナール、カタログ番号9336、CST;
各種抗PP2A抗体、カタログ番号05-421、06-2221、07-334および05-592、Upstate。
キナーゼおよびキナーゼ阻害薬、ホスファターゼ阻害薬および精製ホスファターゼ
(表2)キナーゼおよびホスファターゼ阻害薬
Figure 2009532340
(表3)精製ホスファターゼおよび組換えキナーゼ
Figure 2009532340
緩衝液、溶液および培地
断りない限り、すべての溶液は室温(RT)で貯蔵した。
Figure 2009532340
セレン化合物
セレン酸ナトリウムをSigmaから購入した。すべての溶液をdH2O中で新たに作り、記載の濃度で使用した。
タンパク質発現
SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)
指定の処理ののち、培養中の細胞をPBS中で一度洗浄したのち、プロテアーゼ阻害薬カクテル(Calbiochemプロテアーゼ阻害薬カクテルセット1 #539131)およびホスファターゼ阻害薬(10mMオルトバナジン酸ナトリウムおよび10mMフッ化ナトリウム)を含有する、卵溶解緩衝液(ELB)またはRIPA溶解衝液のいずれかの中で、細胞スクレーパを用いながら4℃で15分間溶解させた。試料を4℃で15分間、14,000rpmで遠心分離することによって明澄化し、上澄みを分析に使用した。ビシンコニン酸溶液アッセイ(BCA)によって試料タンパク質濃度を測定した。96穴プレート中で溶解産物1μlをdH2Oで1:25に希釈した。ビシンコニン酸溶液および4% (w/v)硫酸銅の80:1溶液200μlを各試料に加え、37℃で30分間インキュベートした。一連のタンパク質標準に照らして590nmで吸光度を計測した(Perkin Elmer MBA2000)。
濃縮用ゲルおよび分解用ゲルからなる変性SDS-ポリアクリルアミドゲルを使用するゲル電気泳動によってタンパク質試料を分析した。異なる濃度のSDS-PAGEゲルにタンパク質50〜100μgを添加した。添加の前にSDS試料緩衝液を等しい量で試料に加え、100℃で5分間煮沸した。分離用緩衝液中、約100Vでゲル電気泳動を実施した。各ゲルを添加されたタンパク質サイズマーカ(Biorad Kaleidoscope)により、対象のタンパク質の分子量を評価した。
ウェスタンブロット分析
分解ののち、タンパク質をPVDF膜(Immobilon P, Millipore)に移した。膜を100%メタノールに10秒間浸漬することによって調製し、蒸留水ですすぎ、ウェスタン転写緩衝液中で平衡させた。転写は、100Vで、室温で1.5時間または4℃で夜通し実施した。TBS-T中で膜を5分間洗浄し、1時間乾燥するにまかせた。そして、膜を、0.1% Tweenを含むTBS中3%スキムミルクによって室温で1時間ブロックした。膜を、TBS-Tで5分間ずつ3回洗浄したのち、3%スキムミルク/0.1% TBS-Tまたは3% BSA/0.1% TBS-Tで希釈した一次抗体とで室温で1〜2時間、あるいは4℃で夜通し優しく撹拌しながらインキュベートした。0.1% TBS-T中で5分間の洗浄を3回実施したのち、膜をブロッキング緩衝液中セイヨウワサビペルオキシダーゼ結合二次抗体とで1時間インキュベートした。膜を再び5分ずつ3回洗浄したのち、Super Signal(登録商標) West Dura Extended Duration Substrate (Pierce #34075)またはECL Western Blotting Detection Agents (Amersham Biosciences #RPN2106)を用いる増強化学発光によって抗体結合を検出した。CL露光フィルム(Kodak)を使用するオートラジオグラフィーによって発光を記録した。初期の分析ののち、イムノブロットを膜ストリッピング緩衝液(62.5mM TRIS pH7、2% SDS、7%β-メルカプトエタノール)によって60℃で15分間ストリッピングし、TBS-T中で3回洗浄し、再びブロックしたのち、再プロービングを実施した。
濃度測定分析
Vistaデジタルスキャナ(Umax)を使用して、関連するイムノブロットをCorel Photo-Paintバージョン8 (Corel Corporation)で.tifファイルに変換した。Windows用Image-Pro-Plus V4.5.1.22 (Media Cybernetics)で濃度測定分析を実施した。白に0の値を割り当て、黒に255の値を割り当てる線形較正を使用して、関連するバンドに対応する対象領域を選択し、シグナル強度を測定した。
免疫沈降
全細胞溶解産物100〜600μgを、種々の抗体とともに、1:100の希釈度で、回転ホイール上の微量遠心管中、前記のように室温で1〜2時間または4℃で16時間インキュベートした。短時間の遠心分離ののち、予備洗浄した50%タンパク質-Aセファロース高速フロービーズ(Sigma #9424)30〜40μlを各管に加え、4℃で1時間、室温または4℃で回転させた。短時間の遠心分離ののち、上澄みを除去し、ペレットを細胞溶解緩衝液500μlで洗浄した。そのような洗浄3回ののち、ビーズを酵素アッセイに使用した、またはビーズを3×SDSタンパク質負荷緩衝液中で5分間煮沸することによってタンパク質を溶離させ、SDS-PAGEゲル上で分解した。
ホスファターゼアッセイ
アリコート中に-20℃で提供され、貯蔵された希釈緩衝液により、精製ヒトPP2AcおよびウサギPP1を0.01U/μlに希釈した。
精製ホスファターゼによるリンペプチドアッセイ
合成リンペプチドK-R-pT-I-R-R(Upstate #12-219)およびR-R-A-pS-V-A (Upstate #12-220) 1mgを、dH2O 1.10〜1.285mlに溶解して1mM溶液を調製し、分取し、使用するまで-20℃で貯蔵した。ヒト赤血球から精製した精製PP2A A-C二量体0.01〜0.05Uまたは骨格筋から精製したウサギPP1 0.05Uをリンペプチド500μMと混合し、前記のような種々の処理の存在で、加熱ブロック上、37℃で15分間インキュベートした。各反応物をpNPP緩衝液(50mM Tris-HCl、pH7.0、100μM CaCl2)で合計量25μlに調合した。マラカイトグリーン溶液(10mMモリブデン酸アンモニウム中0.034%マラカイトグリーン、1N HCl、3.4%エタノール、0.01% Tween-20) 100μlを加えることによって酵素反応を終了させた。マラカイトグリーンは、モリブデートおよびオルトホスフェートの存在で安定な緑色複合体を形成して、存在する無機ホスフェートの量を計測することを可能にする。試料ごとに590nmで吸光度を二重反復で読み取った。
PP2A免疫沈降およびホスファターゼアッセイ
PC3細胞1×106個を60mmプレートで平板培養し、8時間付着させたのち、血清を夜通し欠乏させた。前記のような種々の処理ののち、培地を吸引し、細胞をTBSで洗浄した。細胞を溶解緩衝液(20mM Tris-HCl、pH7.0、1% Igepal-CA、2mM EDTA、2mM EGTA、1×完全プロテアーゼ阻害薬カクテル) 0.3ml中で溶解させ、溶解産物を2ml Zeba脱塩スピンカラム(Pierce #89890)に通すことによってホスフェートを除去した。前記のようにBCAアッセイによって脱塩溶解産物のタンパク質濃度を測定した。抗PP2Aモノクロナール抗体4μgおよびタンパク質A-セファローススラリー30μlを用いて全タンパク質100〜150μgを4℃で2時間免疫沈降させた。そして、試料を14,000rpmで1分間ペレット化し、過剰のTBS中で3回洗浄し、pNPPアッセイ緩衝液で一度洗浄した。最後のスピンののち、上澄みの全部を入念に除去し、最終容量80μlのリン光体−トレオニンペプチド500μMをビーズに加えた。試料を撹拌しながら30℃で10分間インキュベートし、マラカイトグリーン溶液の添加によって反応を停止させた。吸光度を試料ごとに590nmで二重反復で読み取った。
pNPP加水分解アッセイ
パラニトロフェニルホスフェート(pNPP)は、ホスフェート部分の加水分解ののち、アルカリ条件下で可溶性である強い黄色のクロモゲンであるパラニトロフェノールを生成するホスファターゼ酵素の化学基質である。相対ホスファターゼ活性を計測するアッセイでは、精製PP2A 0.05Uを、マイクロ遠心分離管中、40mM NiCl2 5μlおよびBSA溶液(5mg/ml) 5μlと混合した。前記のような種々の処理を加え、pNPPアッセイ緩衝液で容量を80μlに調整した。試料を37℃で15分間プレインキュベートした。各アッセイの前に、1.5mg/ml pNPPを50mM Tris-HCl、pH 7.0に溶解することにより、pNPP基質を新たに調製した。ホスファターゼ反応を開始させるため、pNPP基質120μlを加え、試料を37℃でさらに15分間インキュベートした。各試料の吸光度を405nmおよび基準としての590nmで二重反復で計測した。以下の式を使用してPP2A活性を計算した:
活性=(試料量、リットル単位)×A405/1.78×104M-1cm-1 (吸光係数)×0.25cm×15分×0.05U酵素
全遊離スルフヒドリル基の計測
種々の処理ののち、精製PP2A中の遊離スルフヒドリル基の変化をEllman試薬によって測定した。PP2A 0.01Uに対し、希釈緩衝液(30mM Tris-HCl、3mM EDTA、pH8.2) 37.5μl、DTNB試薬(Ellman試薬) 12.5μlおよびメタノール200μlを加えた。試料を室温で5分間インキュベートしたのち、それぞれ412nmで吸光を計測した。結果を、N-アセチルシステインを用いて精製した標準曲線と比較した。
Aktキナーゼ活性アッセイ
K-LISA(商標)AKT活性キット(Calbiochem #CBA019)を使用して、組換えヒトAkt1キナーゼ活性に対するセレン酸ナトリウムの効果を測定した。これは、二番目のセリンでAkt1、Akt2、Akt3、SGK (血清糖コルチコイドキナーゼ)およびMSK1によってリン酸化されているビオチン化ペプチド基質(GRPRTSSFAEG)を使用するELISAベースのアッセイである。ビオチン化Akt基質およびAkt試料を、リン酸化および基質捕獲を単一ステップで可能にする、ストレプトアビジンでコートされた96穴プレーの穴の中、ATPの存在でインキュベートした。リン酸化基質をホスホセリン検出抗体によって検出したのち、HRP-抗体結合体によって検出し、TMB基質で発色させた。
各アッセイ実施のはじめに、原液をdH2Oで1:100に希釈することにより、ビオチン化Akt基質作業溶液の新たなアリコートを調製した。そして、以下をこの順序で各穴に加えて穴一つあたり合計50μlまで混合した: 5×キナーゼアッセイ緩衝液10μl; ビオチン化Akt基質作業溶液10μl; dH2O 10μl中、組換えヒトAkt1 250ng; dH2O10μl中500μMセレン酸ナトリウムまたは1μMスタウロスポリンまたは正の対照としてdH2Oのみ; 5×ATP/MgCl2 10μl。プレートをプレートシーラでシールし、マイクロプレートシェーカ上で手早く混合し、30℃で30分間インキュベートした。そして、キナーゼ停止溶液10μlを各穴に加えることによってキナーゼ反応を停止させた。各穴の内容物を捨てたのち、1×ELISA洗浄溶液(ELISA原液をdH2Oで1:20に希釈することによって調製)で3回洗浄し、ひっくり返し、乾くまでブロッティングペーパの上に注ぎ出した。そして、ホスホセリン検出抗体作業溶液(ホスホセリン抗体原液をdH2Oで1:1000に希釈することによってアッセイ実施ごとに新たに調製) 100μlを各穴に加え、室温で1時間インキュベートした。そして、プレートを上記のように洗浄した。そして、HRP-抗体結合体作業溶液(HRP-抗体結合体原液をdH2Oで1:1000に希釈することによってアッセイ実施ごとに新たに調製) 100μlを各穴に加え、室温で1時間インキュベートした。そして、プレートを再び上記のように洗浄した。そして、TMB基質100μlを各穴に加え、室温で20分間発色させた。ELISA停止溶液100μlを各穴に加えることによって反応を停止させ、マイクロプレートリーダを使用して、590nmを基準にして450nmでの吸光度を読み取った。
細胞内酸化還元状態アッセイ
2',7'-ジクロロジヒドロフルオレセインジアセテート(DCFDA)を使用して細胞内酸化還元状態を測定した。DCFDAは非蛍光性かつ自由に細胞透過性であるが、反応性酸素種(ROS)の存在では、細胞非透過性かつ高度に蛍光性の2',7'-ジクロロフルオレセイン(DCF)へと急速に転換される。種々の処理の前に、細胞をDCFDA 5μMで15分間平衡させた。そして、付着性細胞を収穫し、PBSで2回洗浄し、蛍光細胞の割合をただちにフローサイトメトリーによって測定した。
本明細書で引用する各特許、特許出願および刊行物の開示内容は参照により全体として本明細書に組み入れられる。
本明細書における任意の参考文献の引用は、そのような参考文献が本出願に対して「従来技術」として利用可能であるということを認めるものとして解釈されるべきではない。
本明細書を通して、目的は、本発明を任意の一つの態様または特定の特徴の集合体に限定することなく、本発明の好ましい態様を説明することである。したがって、当業者は、本開示を鑑みて、本発明の範囲を逸することなく、例示される特定の態様に様々な変形および変更を加えることができることを理解するであろう。そのような変形および変更はすべて請求の範囲に含まれることを意図する。
実施例10
マウス脳組織およびヒト神経芽細胞種細胞株の両方におけるタウリン酸化活性に対するセレン酸の効果
材料および方法
細胞培養物
ヒト神経芽細胞種SY5YおよびBE2M17細胞株をJanetta Culvenor (Department of Pathology, University of Melbourne, VIC)から得た。SY5Y細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS、Invitrogen, GIBCO)、1%非必須アミノ酸(Sigma, St Louis, MO, USA)、1OmM HEPES (Invitrogen, GIBCO)、1mMピルビン酸ナトリウム(Invitrogen, GIBCO)および1%抗生/抗真菌物質混合物(Invitrogen, GIBCO)で補足されたRPMI 1640培地(Invitrogen, Auckland, New Zealand)で通常どおりに培養した。BE2M17細胞を、10% FBS(Invitrogen, GIBCO)、1%非必須アミノ酸(Sigma, St Louis, MO, USA)、1mMピルビン酸ナトリウム(Invitrogen, GIBCO)および1%抗生/抗真菌物質混合物(Invitrogen, GIBCO)で補足されたOPTI-MEM I還元血清培地(Invitrogen, GIBCO)で培養した。5% CO2中37℃で細胞を培養した。セレン酸ナトリウムをSigma (St Louis, MO, USA)から得た。
抗体
断りない限り、以下の抗体をPierce Endogen (Rockford, USA)から得た: 抗ヒトPHF-タウモノクロナール(クローンAT100: AT180; AT270)および抗ヒトタウモノクロナール(クローンHT-7)。ポリクロナールヤギ抗マウス免疫グロブリン/HRP (Dako, Denmark)および抗チューブリン(G712A, Promega)。
インビトロ
SY5YまたはBE2M17細胞2×105個を、Falcon 6穴プレートの各穴の中、コートされた面またはコートされていない面のいずれかで平板培養し、完全増殖培地中、5% CO2/37℃で夜通し付着させた(上記の通り)。培地を、100μM濃度のセレン酸ナトリウムを含有する新鮮な完全増殖培地に交換し、3時間培養した。細胞を、0.1% ゼラチン(Sigma, St Louis, MO, USA)、マトリゲル(カタログ番号354234, BD, NSW, Australia)または0.5μg/mlフィブロネクチン(Sigma, St Louis, MO, USA)のいずれかでコートされた表面を有するFalcon 6穴プレートで培養した。
インビボ
14週齢Balb/C Nu Nu雄マウスをARCから得た。マウスに対し、PBS 200μlあたりセレン酸ナトリウム300μgの皮下注射を一回施した。注射後の様々な時点でマウスを殺処分し、血液および脳組織標本を採取した。
溶解産物調製およびイムノブロッティング
細胞を冷温PBS中で2回洗浄し、冷温RIPA緩衝液(10%グリセロール、20mM Tris、137mM NaCl、0.1% SDS、0.05% IGEPAL、1% Triton X-100、2mM EDTA、10% NaV、2% NaFおよび4Xプロテアーゼ阻害薬を含有) 150μl中で溶解させ、同様に、乳鉢および乳棒を使用して脳組織をドライアイス中で均質化し、RIPA緩衝液150μl中で溶解させた。試料を氷上で30分間インキュベートしたのち、13000rpm/10分/4℃で遠心分離に付した。上澄みを捕集し、BCA試薬(Sigma)を使用することによって試料ごとにタンパク質推定値を計算した。等しい量のタンパク質を10% SDS-ポリアクリルアミドゲルの各レーンに添加した。タンパク質をPVDF (Millipore)膜に移し、5%スキムミルクブロットで2時間ブロックした。膜をブロックしたのち、一次抗体:抗ヒトPHF-タウ(1:200のAT100、1:1000のAT180および1:2500のAT270)または抗ヒトタウ(1:1000のHT-7)のいずれかを5%スキムミルクブロット中4℃で夜通しインキュベートした。二次抗体インキュベーションの前に、膜を3×すすぎ、次いで3×5分間、0.01% Tweenを含むTris緩衝食塩水中で室温で洗浄した。続いて、5%スキムミルクブロット中/室温で、1:10000希釈度のセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)に結合した二次抗体ポリクロナールヤギ抗マウス(Dako, Denmark)の1時間のインキュベーションを実施した。上記のように膜を洗浄し、Amersham ECLウェスタンブロッティング検出試薬(Amersham Bioscience, Buckinghamshire, UK)を使用することによって検出した。2% SDS/β-メルカプトエタノール抗体除去緩衝液を使用して膜を抗体除去し、チューブリン(Promega)に関して再プロービングしてタンパク質負荷を確認した。
様々なコーティング面下、セレン酸ナトリウムの存在(+)または非存在(-)で抗ヒトPHF-タウを用いるヒト神経芽細胞腫BE2M17細胞株のイムノブロッティングが図11に示されている。BE2M17完全増殖培地中、セレン酸ナトリウムを100μMで調製した。細胞をセレン酸ナトリウムとともにフィブロネクチン、非コート(プラスチック)またはマトリゲル上で3時間インキュベートした(方法の部分で説明したとおり)。
結果
抗ヒトPHF-タウクローンAT100が68kDaで検出された。セレン酸ナトリウムの存在では、PHF-タウシグナルは、セレン酸非処理細胞と比較して、フィブロネクチンおよびマトリゲル上で培養された細胞から減少したように思われた。
抗ヒトPHF-タウクローンAT180が71kDaおよび67kDaの両方で検出された。フィブロネクチン、プラスチック(非コート)およびマトリゲル上で培養されたセレン酸処理細胞は、セレン酸非処理細胞に比較して弱めのPHF-タウシグナルを有するように思われた。マトリゲル上で培養された細胞は、67kDaで、フィブロネクチンおよびプラスチック上で培養された細胞に比較して、より強いPHF-タウシグナルを与えた。
抗ヒトPHF-タウクローンAT270が66kDaおよび63kDaの両方で検出された。フィブロネクチン、プラスチック(非コート)およびマトリゲル上で培養されたセレン酸処理細胞は、セレン酸非処理細胞に比較して弱いPHF-タウシグナルを有するように思われた。マトリゲル上で培養されたセレン酸処理細胞と非処理細胞との間にわずかな差しかないことに注目すること。
抗ヒトタウクローンHT-7が68kDa、64kDaおよび57kDaで検出された。フィブロネクチン上でセレン酸とで培養された細胞はタウ発現を減らすように思われた。
等しいタンパク質負荷を示す抗チューブリンが検出された。
様々な培養表面下、セレン酸ナトリウムの存在(+)または非存在(-)で抗ヒトPHFタウを用いたヒト神経芽細胞腫SY5Y細胞株のイムノブロッティングが図12に示されている。SY5Y完全増殖培地中、セレン酸ナトリウムを100μMで調製した。細胞をセレン酸ナトリウムとともにゼラチン、フィブロネクチン、非コート(プラスチック)またはマトリゲル上で3時間培養した(方法部分で説明したとおり)。
結果
抗ヒトPHF-タウクローンAT270が70kDaで特異的に検出された。ゼラチンおよびフィブロネクチン上で培養されたセレン酸処理細胞は、セレン酸非処理細胞に比較して弱いPHF-タウシグナルを有するように思われた。
抗ヒトTauクローンHT-7が6OkDaで検出された。マトリゲルおよびフィブロネクチンは抗タウシグナルを減らすように思われた。特に、フィブロネクチン上でセレン酸とで培養された細胞は、抗タウに関して、セレン酸なしで培養された細胞よりも弱いシグナルを有するように思われた。
比較的等しいタンパク質負荷を示す抗チューブリンが検出された。
セレン酸ナトリウムの存在(+)または非存在(-)のいずれかで抗ヒトPHF-タウ抗体を用いる14週齢Balb/C Nu Nu雄マウスからの全脳溶解産物のイムノブロッティング(上記のとおり)が図13に示されている。セレン酸ナトリウムで処理したマウスには1.5μg/μlの皮下注射を与えた。セレン酸ナトリウムの非存在(-)で、マウスに対し、PBSを皮下注射した。様々な時点0、2および6時間で脳組織を採取した(方法の部分で説明したとおり)。
結果
PBSは、研究したすべてのクローン(AT100、AT180およびAT270)に関し、抗ヒトPHFタウシグナルに対して効果を有するように思われた。等しいタンパク質負荷を確認するため、方法部分で説明したように、すべての膜を抗体除去し、チューブリンに関して再プロービングした。
図13Aは、60kDaの抗ヒトPHFタウクローンAT100の免疫反応性を示す。セレン酸ナトリウムの存在で、PHFタウシグナルは、セレン酸非処理細胞に比較して、2および6時間の時点で減少するように思われる。
図13Bは、60kDaの抗ヒトPHFタウクローンAT180の免疫反応性を示す。セレン酸ナトリウムの存在で、PHFタウシグナルは、セレン酸非処理細胞に比較して、2および6時間で明らかに減少した。
図13Cは、AT180クローンに比較したAT270の類似した免疫反応シグナルを示す。AT270クローンは、73kDa、70kDaおよび6OkDaでPHFタウの三つのアイソフォームを検出すると思われた。
図13Dは、セレン酸ナトリウムを用いた場合(+)または用いない場合(-)いずれかのマウス脳全溶解産物におけるタウタンパク質の発現を示す。マウス脳中の抗ヒトタウ、具体的にはクローンHT-7は、非特異的であるように思われた。
実施例11
ヒトタウ441を過剰発現する遺伝子導入マウス(TMHT)の行動およびタウ脳病変に対するセレン酸ナトリウムの効果
方法
序文
この実験は、脳特異的ネズミThy-1プロモータの制御下、二つの突然変異V337MおよびR406Wを有するヒトTAU441遺伝子を過剰発現するTAU441遺伝子導入(Tg) TMHTマウス(C57BL6バックグラウンド)の行動および脳形態に対するセレン酸ナトリウム処理の効果を評価するために設計された。処理の1.5および3ヶ月後にすべてのTgマウスの行動をオープンフィールド(OF)試験、ロータロッド(RR)試験および好奇行動を評価するためのノーズポーク好奇・活動試験で評価した。さらに、処理の最後に、モリス水迷路(MWM)タスクで記憶および学習を評価した。また、ベースライングループの非処理マウスをOF試験、RR試験、ノーズポーク試験およびMWMタスクで試験した。まず、処理グループあたり3匹で脳TAU病変を測定した。
実験動物
脳特異性ネズミThy-1プロモータの調節制御下、ミスセンス変異V337MおよびR406Wを有するヒトTAU441を発現する雄および雌Tg TMHTマウスを使用した。マウスは、JSW-Research (Graz, Austria)で繁殖し、飼育したものであった。これらのマウスのためのC57BL/6バックグラウンドは、優良学習個体として知られるマウスを生み出す。このマウスモデルはヒトアルツハイマー病タウ病変に似ている。処理の開始時、マウスは5ヶ月±2週の年齢であり、これがベースライングループの年齢でもあった。
動物識別およびハウジング
マウスをイヤーマーキングで識別した。これらのマウスを、ABEDD(登録商標)によって供給される標準化齧歯類用ベッディング上で個別の通気されたケージ(IVC)に収容した。各ケージに最大5匹のマウスを収容した。国際規格に基づく標準的作業手順にしたがってマウスを維持した。
実験番号、性別、マウスの個別登録番号(IRN)、誕生日ならびに選別日および処理グループ割当てを示す色付きカードによって各ケージを識別した。
実験中、温度を約24℃に維持し、相対湿度を約40〜70%に維持した。マウスを一定の光サイクル(12時間ずつ明暗)下で収容した。
マウスには、乾燥ペレット化標準齧歯類餌(Altromin(登録商標))および通常の水道水を自由に与えた。
処理
マウスをグループA(セレン酸ナトリウム)、B(溶媒)およびC(ベースライン)にランダムに割り当てた。処理グループAには、飲み水を介してセレン酸ナトリウムを12週間与え、一方、対象マウス(B)には、通常の水道水を与えた。投与に際して、セレン酸ナトリウム1.2mgを無菌水10OmLに溶解し、重さを記録し、ボトルをケージに入れた。これを毎週月曜、水曜および金曜に実施し、交換時に水を計量して消費量を計測した。
行動試験
オープンフィールド試験
運動機能のもっとも標準化された一般的測度は、オープンフィールド(OF)における自発的活動である。本治験には、Plexiglasオープンフィールド(48×48cm、TSE-System(登録商標))を使用した。赤外線フォトビームを箱の回りに1.4cm離して配置した。立ち上がり(後足で立つ)を感知するため、もう一つのフォトビーム列を最初の列の4cm上に取り付けた。試験セッションを5分継続させて、新環境におけるマウスの行動および慣れをチェックした。その後、情動性の測度として脱糞回数を数えた。臭いの痕跡を消すために、マウスごとにOFを70%エタノールで清浄した。試験は、概日サイクルの光段階中、標準の室内照明条件下で実施した。
ロータロッド試験
この試験を使用してTAU Tgマウスにありうる運動欠損を検出した。加速式5レーンロータロッド(TSE-Systems(登録商標))で治験を実施した。マウスには、最大300秒のプログラムを完了させた。5rpmの速度で出発し、120秒後、ロッドは60rpmの速度に達した。この実験ののち、落下までの潜時およびその時点でのロッド速度を計算した。
ノーズポーク好奇・活動試験
穴あきボード装置は、新規な環境に対するマウスの応答を計測する簡単な方法を提供し、マウスの好奇性および穴の中に鼻を突っ込む性質を利用する。好奇性行動の治験は、穴あきボード(1枚あたり穴16個)を備えたOFボックスで実施した。頭が穴に突っ込まれると、各穴の縁のすぐ下を通る赤外線ビームが遮られるものであった。1匹ごとに5分間、頭を突っ込む回数および期間を計算した。
モリス水迷路(MWM)
モリス水迷路タスクは、直径100cmの黒い円形プールの中で実施した。プールには22±1℃の水道水を満たし、プールを仮想的に4つのセクタに分割した。透明なプラットフォーム(直径8cm)を水面下約0.5cmに配置した。予試験を除く全試験セッション中、プラットフォームをプールの南西側四分円に配置した。
4日継続訓練セッションの前のある日に、マウスにいわゆる「予試験」(2回の60秒トライアル)を受けさせて、各マウスの視覚能力が正常であることを保証した。このタスクに合格したマウスだけを続いてMWM試験に処した。
MWMタスクでは、各マウスには、連続4日間、3回のトライアルを受けさせた。1回のトライアルが最大1分間継続した。この期間中、マウスには、隠れた透明な標的を見つける機会を与えた。マウスが水からの「出口」を見つけることができないならば、治験者がマウスをプラットフォームに誘導するか、プラットフォームの上に載せた。各トライアルののち、マウスをプラットフォーム上で10〜15秒間休憩させた。この期間中、マウスには、周囲で方向付けする機会を与えた。治験は、負の影響から追跡システムを防護するために減光条件下で実施された(Kaminski; PCS, Biomedical Research Systems)。プールを取り囲む壁には、黒い太字の幾何学記号(たとえば円および四角)のポスターを貼り付けて、マウスがそれらの記号を方向付けのための目印として使用することができるようにした。
トライアル1回あたり一つの遊泳グループはマウス5〜6匹からなり、約5〜10分のトライアル間隔を保証した。
逃避潜時(マウスが隠れたプラットフォームを見つけ、ひいては水から出るために要する秒単位の時間)、経路(標的に達するためのメートル単位の軌道の長さ)およびゴール四分円における滞在を定量するため、コンピュータ化追跡システムを使用した。コンピュータを、プールの中央の上方に配置したカメラに接続した。このカメラが、小さなヘアグリップでマウスの尾に取り付けた発光ダイオード(LED)のシグナルを検出した。
プローブトライアル
4日目の最後のトライアルの1時間後、マウスは、いわゆるプローブトライアルに合格しなければならなかった。このとき、プラットフォームをプールから取り除き、1分のプローブトライアル中、実験者は、以前の標的位置を横切る回数を数えた。さらに、この四分円中の滞在を計測した。
組織標本化および試料採取
処理期間の最後に、すべての行動試験に続き、各マウスを殺処分して、血液(血漿および血清)、CSFおよび脳を採取し、すぐに処理するか、さらなる実験に備えて貯蔵した。
そのために、すべてのマウスを標準吸入麻酔(Isofluran, Baxter)によって鎮静した。鈍的切開および大後頭孔の露出によって髄液を得た。露出させると、パスツールピペットを大後頭孔の中に約0.3〜1mmの深さまで挿入した。流れが完全に止まるまで吸引および毛管作用によってCSFを捕集した。各試料をすぐに凍結し、ELISA技術によるさらなる分析の準備ができるまで-80℃で保存した。
CSF試料採取ののち、各マウスを背側横臥姿勢に配置し、1mL注射器に取り付けた26ゲージ針を横隔膜から胸郭に約2cmの深さまで挿入した。軽い吸引を針に加え、注射器チャンバへの血流によってマウスの心臓(心室)内の配置を確認した。流れが止まるまで血液を吸引し、EDTAバイアルに捕集し、その後使用するまで-20℃で貯蔵した。
血液試料採取ののち、遺伝子導入マウスを0.9%塩化ナトリウムで心臓内かん流した。脳を速やかに取り出し、右半分を新たに調製した4%パラホルムアルデヒド中に24時間浸漬固定し、組織学的治験のためにパラフィンに埋め込んだ。左半球をドライアイスで凍結し、その後の可能な生化学的分析に備えて-80℃で貯蔵した。
最初に9個の脳半球(Tgマウスグループあたり3個)で組織学的評価を実施してTAU病変を定性的および定量的に評価した。
Gallyas染色および特定の抗体(AT180およびHT7)によるTAU病変の測定のために、PaxinosおよびFranklinの形態アトラス「The Mouse Brain」(第二版)にしたがって選択したブレグマ-1.82と-1.34mmとの間の五つの異なる脳層それぞれで15個の冠状連続切片(Leica SM 2000R)を切り出した(厚さ5μm)。治験したすべての遺伝子導入マウスの組織は、この手順のばらつきによる偏りを避けるため、全く同じやり方で取り扱った。使用しなかった残りの脳半球または組織は保存し、治験依頼者が処理の方法を決めるまで、または実験の最後まで貯蔵した。
TAU病変の免疫組織化学的測定
モノクロナールTAU抗体AT180およびHT7 (Pierce Endogen(登録商標))を使用してTAU沈着を測定した。AT180はPHF-TAUおよび濃縮体様形成[この抗体のエピトープはリン酸化Thr231残基である]を認識し、HT7は正常なヒトTAUおよびPHF-TAU [この抗体のエピトープは、残基159および163の間でヒトTAUにマッピングされている]を認識する。
五つの異なる層それぞれからの厚さ5μmの冠状パラフィン切片を上記モノクロナールマウス抗ヒトTAU抗体(AT180 - 1:100、HT7 - 1:1000)で染色し、二次抗体抗マウスCy3(1:500、Jackson Laboratories(登録商標))を使用して可視化した。詳細な染色プロトコルを以下に記す。
ヒトPHF-TAU沈着の測定のためのAT180インキュベーションプロトコル
1.) Tissue Clear (Sakura(登録商標))および等級付けアルコール(Merck(登録商標))シリーズに通して組織切片を脱パラフィン化し、水和させる。
2.) 二回蒸留水(Fresenius-Kabi(登録商標))中で2分間洗浄する。
3.) 抗原アンマスキングのために組織切片をスチーマ中95℃で10%クエン酸緩衝液(Labvision(登録商標))に15分間入れ、15分かけて室温まで冷ます。
4.) 切片をPBS中で2×5分間洗浄する。
5.) 内在性ペルオキシダーゼを、メタノール(Merck(登録商標))中1%過酸化水素(Linaris(登録商標))により、室温で10分間ブロックする。
6.) 切片をPBS中で2×5分間洗浄する。
7.) ダンプチャンバ中、室温で60分間、MOMブロッキング試薬(Vector(登録商標))との非特異的結合をブロックする。
8.) 切片をPBS中で2×5分間洗浄する。
9.) 室温で5分間、MOM希釈剤(Vector(登録商標))との非特異的結合をブロックする。
10.) ダンプチャンバ中、室温で60分間、AT180 (Pierce Endogen(登録商標); MOM希釈剤中1:100)とでインキュベートする。
11.) 切片をPBS中で3×5分間洗浄する。
12.) ダンプチャンバ中、室温で10分間、10%非免疫ヤギ正常血清(Dako(登録商標))との非特異的結合をブロックする。
13.) 切片をPBS中で2×5分間洗浄する。
14.) ダンプチャンバ中、室温で60分間、Cy3ヤギ抗マウス(Jackson(登録商標); MOM希釈剤中1:500)とでインキュベートする。
15.) 切片をPBS中で5分間洗浄する。
16.) 切片を二回蒸留水中で5分間洗浄する。
17.) 切片をMoviolおよびカバーガラスでカバーする。
薬品および試薬
メタノール中1%過酸化水素:
メタノール60mL+30%過酸化水素2mL+Triton X-100 (Amresco(登録商標)) 0.6mL。
MOMブロッキング試薬:
MOMマウスIgGブロッキング試薬(MOM-Kit (Vector(登録商標))から) 2滴+PBS 2.5mL。
MOM希釈剤:
PBS 10mL+タンパク質濃縮物(MOM-Kit (Vector(登録商標))から) 800μL。
抗体AT180:
MOM希釈剤中1:100。
抗体Cy3ヤギ抗Mouse:
MOM希釈剤中1:500。
正常なヒトTAUおよびPHF-TAU沈着の測定のためのHT7インキュベーションプロトコル
1.) Tissue Clear(Sakura(登録商標))および等級付けアルコール(Merck(登録商標))シリーズに通して組織切片を脱パラフィン化し、水和させる。
2.) 二回蒸留水(Fresenius-Kabi(登録商標))中で2分間洗浄する。
3.) 抗原アンマスキングのために組織切片をスチーマ中95℃で1%クエン酸緩衝液(Labvision(登録商標))に15分間入れ、15分かけて室温まで冷ます。
4.) 切片をPBS中で2×5分間洗浄する。
5.) 内在性ペルオキシダーゼを、メタノール(Merck(登録商標))中1%過酸化水素(Linaris(登録商標))により、室温で10分間ブロックする。
6.) 切片をPBS中で2×5分間洗浄する。
7.) ダンプチャンバ中、室温で60分間、MOMブロッキング試薬(Vector(登録商標))との非特異的結合をブロックする。
8.) 切片をPBS中で2×5分間洗浄する。
9.) 室温で5分間、MOM希釈剤(Vector(登録商標))との非特異的結合をブロックする。
10.) ダンプチャンバ中、室温で60分間、HT7 (Pierce Endogen(登録商標); MOM希釈剤中1:100)とでインキュベートする。
11.) 切片をPBS中で3×5分間洗浄する。
12.) ダンプチャンバ中、室温で10分間、10%非免疫ヤギ正常血清(Dako(登録商標))との非特異的結合をブロックする。
13.) 切片をPBS中で2×5分間洗浄する。
14.) ダンプチャンバ中、室温で60分間、Cy3ヤギ抗マウス(Jackson(登録商標); MOM希釈剤中1:500)とでインキュベートする。
15.) 切片をPBS中で5分間洗浄する。
16.) 切片を二回蒸留水中で5分間洗浄する。
17.) 切片をMoviolおよびカバーガラスでカバーする。
薬品および試薬
メタノール中1%過酸化水素:
メタノール60mL+30%過酸化水素2mL+Triton X-100 (Amresco(登録商標)) 0.6mL。
MOMブロッキング試薬:
MOMマウスIgGブロッキング試薬(MOM-Kit (Vector(登録商標))から) 2滴+PBS 2.5mL。
MOM希釈剤:
PBS 10mL+タンパク質濃縮物(MOM-Kit (Vector(登録商標))から) 800μl。
抗体HT7:
MOM希釈剤中1:1000。
抗体Cy3ヤギ抗マウス:
MOM希釈剤中1:500。
評価
行動
オープンフィールド(OF)では、水平および垂直活動、脱糞回数、立ち上がりの回数および期間、活動過剰ならびにオープンフィールドの中央で費やした時間vsオープンフィールドの周縁部で費やした時間を計測した。
ノーズポーク好奇・活動試験では、頭を突っ込む回数および期間を計算した。
ロータロッド試験では、落下までの潜時およびその時点におけるロッドの速度を計算した。
モリス水迷路試験では、遊泳経路の長さおよび逃避潜時を記録した。遊泳速度は、遊泳経路÷逃避潜時によって計算した。プラットフォームを取り除いての試験であるプローブトライアルでは、以前のフラットフォーム位置を横切る回数およびプールの各四分円で費やす時間をデータシートに記録した。
神経病理学
海馬および扁桃におけるTAU免疫反応性の程度を測定するため、専用の画像解析ソフトウェア(Image Pro Plus、バージョン4.5.1.29)を使用した。以下のパラメータを評価し、計算した。
・各スライス中の海馬および扁桃の領域面積
・特定の脳領域である海馬および扁桃中の免疫反応陽性細胞の絶対面積
・海馬および扁桃の特定脳領域面積に対する免疫反応陽性面積の数
定量手順
a) スライス形態をより良く可視化するため、画像にコントラストを適用することなく画像の対比を強調する。
b) 海馬輪郭の対話式描画および海馬面積(=領域面積)の計測。
c) 強度ベースのしきいレベルを超える染色された物体が検出される対象区域(AOI)の対話式描画。しきい値を測定するために、可視性の免疫反応がない区域でAOIの近くにラインヒストグラムを対話式に描画した。ラインヒストグラムの全画素からの平均強度レベル+定数が強度しきいレベルを規定した。7μm2未満のサイズの物体は排除した。
d) 各物体の面積およびAOI中の染色面積の合計の計測。
e) 扁桃に関してa〜d)を繰り返す。
f) 相対TAU免疫陽性区域(=「TAU免疫反応性の合計面積/領域面積×100」)の計算。
g) パラメータ「画像タイトル、領域面積、合計TAU面積およびTAU面積の%をはじめとする、Excelスプレッドシートへの自動化データエクスポート。注釈のためのフィールドを使用してそれぞれ画質および排除基準を記録した。排除基準は、スライスの欠損部分、多くのしわまたは大きな欠陥であった。
h) 保存せずに画像を閉じる(生データを保持するため)。
統計
すべての計測パラメータに関して平均値、標準偏差またはSEMを計算した。
結果
総括
概して、セレン酸ナトリウムによる処理はマイナスの副作用をもたらさなかったし、また早期死を生じさせなかったと述べることができる。
行動結果
オープンフィールド
活動パラメータ(活動、活動過剰、立ち上がり行動)はセレン酸ナトリウム処理による影響を受けなかったが、セレン酸ナトリウム処理マウスは、最初のOFセッションの間に接触走性行動の乱れを示した。これは、最初のターンで溶媒処理マウスとセレン酸ナトリウム処理マウスとの間で、オープンフィールドボックスの中央における有意に高い滞在、すなわち、より低い接触走性を生じさせた(図14-「接触走性」を参照。処理動物のT検定、p=0.019)。ターン2の処理の最後に、接触走性行動は溶媒対照のレベルに正規化した。
ベースラインマウスは、OFテストで、1.5ヶ月後に治験した両処理グループよりも高い排便率を示し(ANOVA:両処理グループに関してp=0.018、p<0.05)試験手順に対するより高い情動性反応を示した。
ロータロッド
運動能力はセレン酸ナトリウム処理で変化ないままであった。
ノーズポーク好奇・活動テスト
好奇行動はセレン酸ナトリウム処理で変化ないままであった。
モリス水迷路
二つの異なる処理グループ+ベースライン(5月齢マウス処理)のモリス水迷路(MWM)成績の結果が、統計学的分析の結果を示す図15および表4に示されている。MWMタスクは、溶媒グループとの比較および三ヶ月若いベースライングループとの比較で、セレン酸ナトリウム処理マウスの間で、場合によっては顕著な差(表4を参照)、さらには有意な差を明らかにした。
(表4)モリス水迷路結果に関するマン・ホイットニーU検定
Figure 2009532340
これらの結果は、認知機能を改善するセレン酸ナトリウムの潜在能力を明らかに示す。
脳組織学および免疫組織化学の結果
結果概要
AT180およびHT7の定量では、海馬および扁桃のIHC領域面積は、治験したすべての脳を通じて非常に一定であり、それは、免疫組織化学的染色ステップにおける組織に対するマイナスの効果(たとえば収縮、異なる切除環境)を排除し、さらには、処理によって誘発される萎縮がなかったということのサインである。最小限の差をも扱うことができるよう、計測されたTAU負荷データをスライス中の個々の領域サイズに関連させた。
HT7およびAT180
海馬中の相対HT7-TAU面積の割合は、溶媒で処理されたグループ(ANOVA:p<0.05、処理グループのT検定: p=0.04)および非処理ベースライングループ(ANOVA:p<0.05; 図16Aを参照)に対し、セレン酸ナトリウム(1.2mg)で処理されたマウスで有意に減少していた。この効果は、セレン酸ナトリウムで処理されたマウスが、非処理ベースライングループ(ANOVA: p<0.01)および溶媒で処理されたマウス(ANOVA: p<0.05; 処理のみのT検定: p=0.0018)に対し、有意に低下した相対HT7-TAU面積の割合を示した扁桃でより顕著であった(図16Bを参照)。
HT7-TAUと同様に、海馬中の相対AT180-TAU面積の割合もまた、溶媒で処理されたマウス(処理グループのT検定: p=0.04、図17Aを参照)に対し、セレン酸ナトリウム(1.2mg)で処理されたマウスで有意に減少していたが、しかし有意さのレベルはより低かった。ここでもまた、この効果は、セレン酸ナトリウムで処理されたマウスが、溶媒で処理されたグループに対しては有意に低下した相対HT7-TAU面積の割合を示したが(ANOVA: p<0.05、処理グループのT検定: p=0.0045)、非処理ベースライングループに対しては有意に低下した相対HT7-TAU面積の割合を示さなかった扁桃でより顕著であった(図17Bを参照)。
海馬および扁桃中のAT180およびHT7免疫反応陽性ニューロンは、神経細胞体における多大なTAU沈着を示し、それはPHF TAUとで密に詰まっていた。セレン酸ナトリウム処理は、TAU負荷ならびに扁桃および海馬CA1領域のニューロン層におけるTAU陽性細胞を目に見えて減らした。
効果の概要および結び
〇 処理開始から1.5ヶ月後での接触走性の低下は、セレン酸ナトリウムで処理された遺伝子導入マウスの扁桃構造に関連する恐怖の変化を暗示する。長期的なセレン酸ナトリウム処理ののち、マウスは、殺処分前の二回目のオープンフィールド試験実施で、溶媒で処理された対象の匹敵しうる正常な接触走性行動に戻った。
すべての運動パラメータ、たとえばロータロッド成績、オープンフィールド活動、活動過剰および立ち上がり行動はセレン酸ナトリウム処理による影響を受けなかった。
セレン酸ナトリウムによる処理は、モリス水迷路で試験した認知能力を改善することができた。セレン酸ナトリウム処理マウスは、1日目、2日目および3日目に、溶媒処理マウスよりも速く、高い有意さ(p0.O1)でプラットフォームを見つけることができ、また、1日目には、ベースライングループの3ヶ月若いマウスよりも速くプラットフォームを見つけることができた。
セレン酸ナトリウムでの処理の顕著な効果は、TMHT Tgマウスの海馬および扁桃中のHT7免疫陽性TAU沈着およびTAU負荷を評価する場合に見ることができる。
処理のおかげで、海馬および扁桃では非処理ベースライングループに比較して、それどころか扁桃では溶媒(H2O)処理対象にも比較して、HT7陽性TAU面積の有意な減少を見ることができる。
HT7-TAU沈着に対する結果はAT180インキュベーションによって裏付けされている。ここで、セレン酸ナトリウムによる処理ののち、海馬および扁桃において、溶媒(H2O)処理対照に比較して、AT180陽性TAUの有意な減少を見ることができる。
参考文献
Figure 2009532340
Figure 2009532340
Figure 2009532340
Figure 2009532340
Figure 2009532340
Figure 2009532340
PC3細胞に関する、無傷の細胞および無細胞環境の両方における処理後のリン酸化Aktのレベルの比較表現である。 Calbiochem K-LISA(商標)Akt活性キットを使用した場合の、組換えヒトAkt1の酵素活性に対するセレン酸ナトリウムおよびスタウロスポリン(強力かつ非特異的なタンパク質キナーゼ阻害薬)の効果を比較するグラフ表現である。 セレン酸ナトリウムまたはオカダ酸(リンタンパク質ホスファターゼPP1およびPP2Aを阻害する赤潮藻類からのポリエーテル毒素)の存在におけるSer473でのAktリン酸化の比較表現である。 セレン酸ナトリウムまたは多数のリンタンパク質ホスファターゼ阻害薬(タウトマイシン、オカダ酸、エンドタールA、カリクリンAおよびシクロスポリンA)の存在におけるSer473でのAktリン酸化の比較表現である。 セレン酸(ATE)またはウシ胎児血清(FCS)の非存在(対照)および存在でPP2Aと複合化したAktの量を示す、PC3細胞からのAktの免疫沈降の表現を提供する。 セレン酸ナトリウムの存在または非存在におけるPC3細胞中のホスファターゼPP2A活性のグラフ表現である。 PP2Aホスファターゼ活性および基質特異性の翻訳後調節の概略表現である(LCMT―ロイシンカルボキシメチルトランスフェラーゼ、PME-1―ホスファターゼメチルエステラーゼ 1、PTPA―ホスホリロシルホスファターゼ活性化因子)。 図4A(i)は、セレン酸ナトリウムまたはオカダ酸(OKA)の非存在(対照)または存在における相対PP2Aホスファターゼ活性のグラフ表現である。図4A(ii)は、PP2Aのホスファターゼ作用によってセリンリンペプチドから放出される無機ホスフェートの濃度に対するセレン酸ナトリウムの効果を示すグラフ表現である。図4Bは、PP1のホスファターゼ活性に対するセレン酸ナトリウムの効果を示すグラフ表現である。 酸化性環境におけるPP2Aの不活性化の概略表現である。 Aktリン酸化のレベルに対するセレン酸ナトリウムおよび過酸化水素の効果を示す表現である。 N-エチルメレイミド(NEM)、過酸化水素、セレン酸ナトリウムおよびセレン酸ナトリウム+過酸化水素の存在におけるPP2Aホスファターゼ中に存在する遊離スルフヒドリル基のグラフ表現である。 過酸化水素を用いて、または用いずにセレン酸ナトリウムまたはN-アセチルシステイン(NAC)で処理した細胞に関するフルオレセイン分布ヒストグラムのグラフ表現である。 過酸化水素、セレン酸ナトリウム、過酸化水素+セレン酸ナトリウム、NACおよび過酸化水素+NACで処理した場合の蛍光細胞の平均%値をグラフで表す。 セレン酸ナトリウム(ATE 500μM)またはエンドタールA (ETA 100μM)を用いた場合または添加物なしの場合(対照)での免疫沈降PP2Aの相対ホスファターゼ活性をグラフで表す。 オカダ酸(OKA 500nM)による前処理を用いて、または用いずにLY294003 (LY 50μM)またはセレン酸ナトリウム(ATE 500μM)で処理した後のリン酸化p7OS6Kのレベルの比較表現である。 Aktを認識する抗体によるPP2Aの異なるBファミリーサブユニット(BおよびB')のプロービングの比較表現である。Aktは、PP2AのBファミリーサブユニットとでのみ共沈した。 GSK3β活性化に対するセレン酸ナトリウムの効果を示す表現である。 セレノメチオニンはAktリン酸化のレベルに影響しなかったが、一方、セレン酸はAktリン酸化を阻害したということを示す比較表現である。 Aktの活性化に対する様々なセレン化合物の効果を示すグラフ表現である。処理:対照(con); セレン酸ナトリウム(ATE); 亜セレン酸(Sel acid); 亜セレン酸ナトリウム(ITE); 二酸化セレン(SeO2); 硫化セレン(SeS2); メチルセレノシステイン(MSC); およびセレノシステイン(SeC)。全Aktタンパク質レベルに相関させた相対活性Aktシグナル強度がy軸に示されている。グラフは、セレン酸ナトリウム(ATE)だけがAktの活性を阻害して、リン酸化Aktのレベルを対照(con)レベル未満に下げることを示す。対照的に、亜セレン酸(Sel acid)、亜セレン酸ナトリウム(ITE)、二酸化セレン(SeO2)、硫化セレン(SeS2)、メチルセレノシステイン(MSC)、セレノシステイン(SeC)はいずれも、対照(con)レベルを超えるAktの活性化を誘発する。 pNPP(図10A)またはセリンリンペプチド(図10B)を基質として使用するpNPP加水分解アッセイにおけるPP2Aホスファターゼ活性に対するセレン酸ナトリウム(ATE)、亜セレン酸ナトリウム(ITE)およびセレノメチオニン(SeMet)の効果をグラフで表す。 様々なコーティング条件下、セレン酸ナトリウムの存在(+)または非存在(-)で抗ヒトPHFタウ抗体を用いたヒト神経芽細胞腫BE2M17細胞株のイムノブロッティングの比較表現である。 様々なコーティング条件下、セレン酸ナトリウムの存在(+)または非存在(-)で抗ヒトPHFタウ抗体、AT270(図12A)およびHT-7 (図12B)を用いたヒト神経芽細胞腫SY5Y細胞株のイムノブロッティングの比較表現である。 セレン酸ナトリウムの存在(+)または非存在(-)で抗ヒトPHFタウ抗体、AT100 (図13A)、AT180 (図13B)、AT270 (図13C)およびHT-7 (図13D)を用いた14週齢Balb/c Nu Nu雄マウスからの全脳溶解産物のイムノブロッティングの比較表現である。 オープンフィールド(接触走性)で試験した行動に対するセレン酸ナトリウム処理の効果をターン1(図14A)およびターン2 (図14B)でグラフで表す。 逃避潜時(秒単位、図15A)および遊泳距離(メートル単位、図15B)によって評価した、モリス水迷路タスクで試験した学習および記憶に対するセレン酸ナトリウム処理の効果をグラフで表す。 hTAU441遺伝子導入TMHTマウスにおけるHT7免疫組織化学によって測定した、海馬(図16A)および扁桃(図16B)におけるタウ負荷に対するセレン酸ナトリウムの効果をグラフで表す。 hTAU441遺伝子導入TMHTマウスにおけるAT180免疫組織化学によって測定した、海馬(図17A)および扁桃(図17B)におけるタウ負荷に対するセレン酸ナトリウムの効果をグラフで表す。

Claims (20)

  1. 有効量のセレン酸またはその薬学的に許容される塩を対象に投与する段階を含む、対象の神経変性疾患を治療または予防する方法。
  2. 神経変性疾患がタウオパチーまたはα-シヌクレオパチーである、請求項1記載の方法。
  3. タウオパチーが、初老期認知症、老人性認知症、アルツハイマー病、第17染色体にリンクしたパーキンソン症(FTDP-17)、進行性核上性麻痺、ピック病、一次進行性失語症、前頭側頭型認知症、および皮質基底認知症から選択される、請求項2記載の方法。
  4. タウオパチーが、初老期認知症、老人性認知症、およびアルツハイマー病から選択される、請求項3記載の方法。
  5. α-シヌクレオパチーが、パーキンソン病、認知症を伴うパーキンソン病、レビー小体を伴う認知症、ピック病、ダウン症、多系統萎縮症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、およびハレルフォルデン・スパッツ症候群から選択される、請求項2記載の方法。
  6. α-シヌクレオパチーがパーキンソン病である、請求項5記載の方法。
  7. 神経変性疾患を治療または予防するためのもう一つの治療薬または神経変性疾患の症状を軽減するための治療薬の投与をさらに含む、請求項1記載の方法。
  8. ニューロンまたはグリア細胞を有効量のセレン酸またはその薬学的に許容される塩に曝露する段階を含む、ニューロン、グリア細胞、またはレビー小体におけるタウタンパク質のリン酸化を阻害または低減する方法。
  9. タウタンパク質が微小管関連タウタンパク質である、請求項8記載の方法。
  10. タウタンパク質が神経原線維濃縮体中にある、請求項8記載の方法。
  11. タウタンパク質のリン酸化過剰が阻害または阻止される、請求項8記載の方法。
  12. PP2Aを有効量のセレン酸またはその薬学的に許容される塩に曝露する段階を含む、PP2Aの活性を高める方法。
  13. PP2Aが、Aktを脱リン酸化するアイソフォームである、請求項12記載の方法。
  14. PP2Aが、タウタンパク質を脱リン酸化するアイソフォームである、請求項12記載の方法。
  15. タウタンパク質が、ニューロン、グリア細胞、またはレビー小体中に見られる微小管関連タウタンパク質である、請求項14記載の方法。
  16. ニューロンまたはグリア細胞を有効量のセレン酸またはその薬学的に許容される塩に曝露する段階を含む、ニューロンまたはグリア細胞におけるGSK3βの活性を阻害する方法。
  17. 神経変性疾患を治療または予防するための医薬の製造における、セレン酸またはその薬学的に許容される塩の使用。
  18. セレン酸またはその薬学的に許容される塩と、神経変性疾患を治療または予防するためのもう一つの薬剤とを含む、薬学的組成物。
  19. 他の薬剤が、コリンエステラーゼ阻害薬、N-メチル-D-アスパルテート受容体拮抗薬、エストロゲン様薬剤、非ステロイド抗炎症薬、レボドパ、ドーパデカルボキシラーゼ阻害薬、ドーパミン作動薬、モノアミンオキシダーゼB阻害薬、抗コリン作動薬、およびCOMT阻害薬の一つまたは複数から選択される、請求項18記載の薬学的組成物。
  20. 他の薬剤が、タクリン、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチン、プレマリン、アスピリン、イブプロフェン、レボドパ、カルビドパ、ベンセラジド、ブロモクリプチン、ペルゴリド、プラミペキソール、ロピニロール、カベルゴリン、アポモルフィン、リスリド、セレギリン、ラサジリン、メシル酸ベンズトロピン、塩酸トリヘキシフェニジル、エンタカポン、トルカポン、およびアマンタジンから選択される、請求項18記載の薬学的組成物。
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