眼の中では、眼の天然水晶体は眼房水を硝子体から分離している。虹彩は、角膜又は眼の前方と水晶体との間の領域を、前眼房と後眼房に分離している。天然水晶体レンズは、被膜又は被膜嚢として知られている膜内に収容されている。天然水晶体が眼から除去されるとき、被膜も除去されてもよく(嚢内摘出)、又は、被膜の後部を無処置のまま残して(嚢外摘出)、多くの場合被膜の前部から小さなひだ若しくは弁を残して、被膜の前部が天然水晶体レンズとともに除去されてもよい。眼内移植片の場合、人工水晶体は、前眼房、後眼房、又は被膜嚢に挿入されてもよい。
本発明の眼内レンズアセンブリ、特に「ループ状」又は「パドル状」の、好ましくは角形成を伴う可撓性ハプティックの設計は、従来の眼内装置によってもたらされる遠近調節の不足を克服する。本発明の眼内レンズアセンブリは、主として、眼の前眼房に配置し、有水晶体眼の屈折レンズとして使用するように設計される。しかし、眼内レンズアセンブリの独自の設計によって、それを無水晶体眼に使用し、後眼房溝(posterior chamber sulcus)及び後眼房嚢(posterior chamber bag)の中に配置することも可能になっている。本明細書に記載される眼内レンズアセンブリは、眼の解剖学的構造又は生理機能を損なうことなく、近視、遠視、老眼、及び乱視を矯正するのに適している。好ましい一実施形態では、任意の圧縮力の一部がレンズアセンブリに伝達されるように、1つ又は複数のハプティックは十分に剛性であってもよい。好ましい代替実施形態では、ハプティックが変形することによって任意の圧縮力の一部を吸収するように、1つ又は複数のハプティックは十分に圧縮性である。
本発明の眼内レンズアセンブリは、生体適合性且つ可撓性の材料から作られる。一実施形態では、材料は更に折曲げ可能な材料であり、それによって、好ましくは8mm未満、より好ましくは5mm未満、最も好ましくは3mm以下の小さな切開部を通して装置を挿入することができる。更なる実施形態では、装置は、好ましくは、天然水晶体レンズと接触していない眼の前眼房に挿入されるので、白内障の形成が最小限に抑えられる。更なる実施形態では、装置は、眼の天然水晶体を除去した後、一般に白内障レンズと置き換えて被膜嚢に挿入される。この設計によって、眼の中の他の組織との接触が最小限に抑えられる。更に、装置は、必要に応じて容易に除去し再挿入することができる。可撓性材料とハプティックの設計との組合せによって、装置は、装置が割れたり、反ったり、眼から係脱したりすることなく、患者が眼をこするなどのある程度の変形力に耐えることが可能になる。
本発明の一実施形態では、本発明のレンズアセンブリは単焦点レンズで形成されてもよい。前記レンズは、凸状、凹状、ほぼ平面、又は波状の屈曲の1つ若しくは複数の部分を有してもよい。より好ましい一実施形態では、単レンズの形状は両凸面である。当業者には理解されるように、単焦点レンズの屈折力は、近視、遠視、老眼、及び/又は乱視を含むがそれらに限定されない、特定の視力異常を矯正するように設計することができる。レンズの形状を変更することによって、屈折力は、近くにある物体、中間にある物体、及び/又は遠くにある物体のいずれかに焦点が合うように変更される。
単焦点レンズアセンブリは、患者が日常生活で利用可能な広範囲の合焦点視力(in-focus vision)を有するように、例えば、コンタクトレンズ及び矯正用眼鏡と組み合わせることができることが予期される。
本発明の眼内レンズアセンブリは、任意に、二重焦点光学装置を備えてもよい。前記二重焦点光学装置は、凸状、凹状、ほぼ平面、正弦曲線、又は波状の屈曲の1つ若しくは複数の部分を有してもよい。好ましくは、前記二重焦点光学装置は、レンズの第1の部分からレンズの第2の部分へと屈折力を増減する勾配を有するレンズを備える。例えば、レンズは、遠くにある物体に焦点が合っている像をレンズの第1の部分が生じさせ、近くの物体に焦点が合っている像をレンズの第2の部分が生じさせ、レンズの第1及び第2の部分の間の部分が、遠くと近くにある物体の間のすべての距離に焦点を合わせるように配置されてもよい。
好ましい一実施形態では、屈折力の変化の勾配は平滑化されるので、屈折力の増減は、患者が屈折力の明確な描写に気付くことなく認知される。更なる好ましい実施形態では、屈折力の変化の勾配は、ほぼ線形、指数関数的、及び/又は放物線状である。代替実施形態では、二重焦点光学装置は、レンズ区域がそれぞれ固有の変化の勾配を有する複数のレンズ区域で構成される。レンズが増加又は減少する屈折力の勾配を備えた少なくとも1つのレンズ区域を含むという条件で、変化の勾配は、正、負、又は0であることができる。
本発明の好ましい一実施形態では、屈折力の増減の勾配は光軸に垂直である。最も好ましい実施形態では、屈折力の変化の勾配は、光軸に垂直であり、且つ患者の眼に移植されたときの水平軸に平行である。そのような最も好ましい実施形態では、レンズの底部は遠い物体に焦点を合わせるのに適した低い屈折力を有し、レンズの頂部は近い物体に焦点を合わせるのに適した高い屈折力を有する。そのようなレンズが移植された患者は、遠い物体を水平軸の上方で焦点が合っているものとして、また近い物体を水平軸の下方で焦点が合っているものとして視覚化する。そのようなレンズは、本などの物を読むのと、運転などの遠方視とに適していることが予期される。
本発明の眼内レンズアセンブリは、多焦点光学装置を任意に含んでもよい。前記光学装置は、凸状、凹状、ほぼ平面、又は波状の屈曲の1つ若しくは複数の部分を有してもよい。好ましくは、前記多焦点光学装置は、入射光によって、特にそのような光が点光源から発しているときに生じるグレア及び/又はハロー(holoing)の望ましくない影響を低減或いは排除する。
多焦点光学装置は、少なくとも2つ以上のレンズ区域を備えてもよい。そのような区域は均等又は不均等なサイズのものであってもよく、任意の形状で多焦点光学装置内に配置されてもよい。好ましい一実施形態では、レンズ区域はそれぞれ固有の焦点面を有し、例えば、第1のレンズ区域は網膜上に近くにある物体からの光の焦点を合わせてもよく、第2のレンズ区域は網膜上に中間にある物体からの光の焦点を合わせてもよい。そのようにして、多焦点光学装置は、特定の疾患を治療するように、又は各患者の視力を最適に矯正するように設計することができる。
本発明の好ましい一実施形態では、多焦点光学装置は次の5つのレンズ区域を備える。第1のレンズ区域は長円形状であり、光軸に垂直に、且つ患者の両眼を二分することによって形成される面に平行に配置され、即ち、前記第1のレンズ区域は水平軸に平行である。第2のレンズ区域は、多焦点光学装置における第1のレンズ区域の上方の部分を含み、即ち、患者の眼に移植されたとき、多焦点光学装置の頂部にある。第3のレンズ区域は長円形状であり、第1のレンズ区域に平行に、且つその下方に配置される。第4及び第5のレンズ区域は、縁部が湾曲したほぼ三角形の形状であり、第3のレンズ区域の2つの遠位縁部に位置し、それによって、多焦点光学装置の周縁部及び第1のレンズ区域とも交差する。各レンズ区域の屈折力を変えることによって、広範囲の視力状態に適した多焦点光学装置を構築することができる。最も好ましい実施形態では、第1のレンズ区域は近くから中間にある物体に焦点を合わせるのに適しており、第2のレンズ区域は近くにある物体に焦点を合わせるのに適しており、第3のレンズ区域は遠くにある物体に焦点を合わせるのに適しており、第4及び第5のレンズ区域は中間にある物体に焦点を合わせるのに適している。患者の眼に移植されたとき、患者は、第1のレンズ区域を通して、屋内で見られるものなど、近くから中間にある物体に焦点を合わせて見ることが予期される。患者は、第2のレンズ区域を通して、本、キーボード、又は調理器具など、近くにある物体に焦点を合わせて見る。患者は、第3のレンズ区域を通して、運転中に、景色、近付いてくる車両、又は歩行者など、地平線よりも上の遠くにある物体に焦点を合わせて見る。最後に、患者は、第4及び第5のレンズ区域を通して、信号機、建物、及び道路標識など、地平線よりも上の中間にある物体に焦点を合わせて見る。
本発明の代替実施形態では、多焦点光学装置は、少なくとも中心レンズ区域、及びその周りに配置された同心的に位置する1つ又は複数のレンズ区域から形成される。好ましい一実施形態では、中心レンズ区域は円筒形であり、光軸と一直線に並んだ中心軸を有する。しかし、代替実施形態では、中心レンズ区域は、円錐形又は楕円形などの任意の形状であってもよく、光軸からずれた中心軸を有してもよい。更なる好ましい実施形態では、同心的に位置するレンズ区域の1つ又は複数は、円環、即ちリング状の形状である。代替実施形態では、円環は1つ又は複数の軸線若しくは面方向に引き伸ばされていてもよい。任意の一実施形態では、前記同心のレンズ区域は、完全には中心レンズ区域の周りを延びずに、例えば、半円環形状を形成してもよい。したがって、多焦点光学装置は、患者固有の視力矯正要件に合わせて調整することができ、或いは、夜間視力、運転時に必要な視力、読書若しくは裁縫などのための近見視力、又は野外活動などのための遠距離視力など、特定の視力状況に対して最適化することができる。
本発明のレンズ区域は、多焦点光学装置の前面又は後面上に配置されてもよい。好ましい一実施形態では、レンズ区域は、多焦点光学装置の前面から後面までほぼ延びる。しかし、本発明の代替実施形態では、少なくとも1つの第2のレンズ区域が多焦点光学装置に埋め込まれて、前面若しくは後面のどちらか又は両方が単一のレンズ区域から形成されてもよい。更なる代替実施形態では、多焦点光学装置に埋め込まれるものを含む2つ以上のレンズ区域は、光軸に平行な軸線に重なってもよく、即ち、レンズ区域はレンズアセンブリ内で積み重ねられてもよい。
レンズ区域の形成を容易にするため、多焦点光学装置は、個々に形成された1つ又は複数のレンズ区域から構築されてもよい。次に、個々のレンズ区域は、熱若しくは接着剤などで互いに溶融されるか、又は部分的に若しくは完全に包まれるかにかかわらずIOLの材料によって適所で保持され、或いは膜若しくはブリッジによって接合されてもよい。更なる実施形態では、レンズ区域は、独自の屈折特性を付与するように、異なる材料で形成されてもよい。
本発明の一実施形態では、多焦点光学装置は、少なくとも1つの、但し任意に2つ以上のレンズ区域をそれぞれ有する、2つ以上の個々の光学レンズから形成される。好ましい一実施形態では、前記光学レンズは、光軸にほぼ垂直に、且つIOLの面(即ち、平坦にされたときのレンズアセンブリの面)にほぼ平行に配置される。そのような実施形態では、個々の光学レンズは、現行のカメラレンズに見られる複数のレンズ素子の配置を模倣する。任意に、前記個々のレンズは、光学レンズを通り抜ける光の拡散若しくは集束を阻害又は促進するため、適切な透明又は半透明の材料でコーティングされてもよい。好ましい一実施形態では、光学レンズの少なくとも1つは、両凸面、両凹面、凸面/凹面、凸面/平面、凹面/平面、又は正弦曲線の形状である。
代替実施形態では、光学レンズの1つ又は複数は、1°、2°、3°、4°、5°、6°、7°、8°、9°、10°、11°、12°、13°、14°、又は15°のいずれか1つの角度だけ、IOLの面からずれている。より好ましい代替実施形態では、前記ずれは、乱視又は疾病の影響を含む、患者の眼の光学収差を矯正する。
複数の光学装置から形成された多焦点光学装置(「合成多焦点光学装置」)は、好ましくは、材料、構造、屈折率、ハプティックの位置決め、遠近調節、又はIOLの他の任意の観点によって生じる1つ又は複数の光学収差を矯正するように設計されてもよい。
合成多焦点光学装置は、非球面性の程度が異なる2つ以上の要素から形成されてもよい。任意に、光学レンズは、両凸面、凹面/凸面、両凹面であるか、又はほぼ平面の1つ若しくは複数の表面を有してもよい。当業者には分かるように、視野角及びレンズを通して透過される光量は、必要な要素の数と個々の光学レンズそれぞれの形状とに影響を及ぼす。合成多焦点光学装置が、主として遠見視力を改善しようとするものである場合、少なくとも2つの個々の光学レンズが必要なことがある。近距離視力の改善が目的である場合、3つ以上の要素を有するより複雑な構成が必要なことがある。
更なる実施形態では、前記レンズ区域の間に光の一部を吸収する吸収手段が挟まれてもよい。吸収手段としては、顔料、塗料、染料、インク、金属、及び/又はポリマー組成物を挙げることができる。更なる実施形態では、吸収手段は、入射光の一部を吸収するように位置付けられ、その結果、光の大部分は網膜の前方又は後方の地点(1つ若しくは複数)に焦点が合う。最も好ましい実施形態では、前記吸収手段は、視覚のかすみ、光源からのグレア、及び/又は患者から見たときの、多焦点光学装置によって生成されるハローを低減するように位置付けられる。
そのような吸収手段が、多焦点光学装置を通して透過される光の一部を吸収する能力を有するという条件で、光吸収手段は、不透明、半透明、又は透明であってもよい。好ましい一実施形態では、可視光の1つ又は複数の波長で入射光の2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%のいずれか1つよりも多い量を吸収する。好ましい一実施形態では、前記吸収手段は、350nm〜750nmの可視スペクトル波長範囲内の光を吸収する。更なる好ましい実施形態では、前記吸収手段は、上述の可視スペクトル内で、10nm、25nm、50nm、75nm、100nm、150nm、200nm、250nm、又は300nmのいずれか1つの帯域内にある光の波長を吸収する。例えば、350nm〜360nm、又は400nm〜500nmである。そのような範囲はすべて、この明細書の範囲内に含まれ、当業者が容易に列挙することができるが、簡潔にするため列挙していない。
吸収手段がそれに従って配置される幾何学形状により、光の透過パターンが作成される。吸収手段は、様々な透過プロファイルを作成するように、多数のやり方でレンズ内又はレンズ上に設けることができる。吸収手段は任意のやり方で配置されてもよい。本発明の一実施形態では、吸収手段は、1つ又は複数のラジアル平面内に配置され、任意に光軸から延びる。更なる実施形態では、吸収手段は、球状、円錐形、又は円筒状の形状を有する同心面内に配置され、任意に光軸を中心とする。最も好ましい一実施形態では、吸収手段は、円錐形状で、或いは、吸収手段が光軸の面に平行ではないような形状で配置されるが、むしろ、多焦点光学装置の1つの表面上に、多焦点光学装置の反対側の表面上の半径よりも大きい、円形又は半円形の半径を有する円錐を形成する。このようにして、レンズが移植された患者の視覚が遮られるのは細い線のみである。或いは、前記吸収手段は、光軸に平行な面内に配置されてもよい。任意に、前記平行な吸収手段は、患者から遮られた視覚の領域を最小限に抑えるように、可視光スペクトルの25%、40%、50%、60%、75%、90%、及び95%のいずれか1つ程度に関して透明又は半透明である。
吸収手段は、任意に、幾何学パターンで多焦点光学装置内に配置されてもよい。最も好ましい実施形態では、吸収手段はレンズ区域を分離するように配置される。吸収手段は、レンズを通り抜ける、且つ地表面の上方の視覚と関連付けられた光の大部分を吸収するなど、入射光を不均一に吸収するように配置されてもよい。例えば、地平線、空又は太陽からの光の増加した入射を吸収することによって、グレア及び/又はハローなどの人工産物が低減される。患者の神経系は光から形成された像を網膜上に反転させるので、任意の実施形態では、吸収手段は、患者の眼の内部に向き付けられたとき、レンズの底部において光の大部分を吸収するように配置されてもよい。
材料の屈折特性は、温度の変化によって調節することができる。当業者であれば、本発明のIOLを作成する際、IOLが単焦点又は多焦点光学装置のどちらを含むかにかかわらず、レンズは体温で最適に動作するように設計されることを理解するであろう。
高い入射角を有する光の屈折は、小さな入射角を有する光よりも大きい。そのため、グレア、ハロー、かすみ、及び/又は色縁などの光学収差は、高い入射角を有する光の場合に生じる傾向が強い。
これらの光学収差を打ち消すため、光学レンズの1つ若しくは複数の表面、レンズ区域、及び/又は単焦点若しくは多焦点光学装置の前方若しくは後方表面を、既知の薄膜コーティングを使用してコーティングすることができる。
好ましい一実施形態では、任意のそのような薄層の屈折率は、光学レンズ、レンズ区域、又は光学装置の屈折率の平方根にほぼ等しいものであるべきである。しかし、任意の屈折率の材料が使用されてもよい。屈折率は、可視スペクトル及び/又は非可視スペクトルの任意の部分の弱め合う干渉が結果として得られるように変化させることができる。好ましい一実施形態では、薄層コーティングは130nm〜145nmの厚さを有する。より好ましい実施形態では、薄層コーティングは約137.5nmの厚さを有する。代替実施形態では、薄層コーティングは87.5nm〜187.5nmの厚さを有する。本発明のIOLが、可視スペクトルの青端における光学収差を低減するのに使用される場合、87.5nm〜125nmの薄層コーティングが使用されるべきであることが理解されるであろう。或いは、可視スペクトルの赤端における光学収差が低減される場合、150nm〜187.5nmの薄層コーティングが使用されるべきである。本発明の最も好ましい実施形態では、合成多焦点光学装置は、1つ又は複数の薄膜コーティングと、任意に、異なる膜厚を有する2つ以上のコーティングとを有する。
好ましい一実施形態では、そのようなコーティングは、例えばフッ化マグネシウムの薄層である。前記フッ化マグネシウムは、高真空下での堆積、又は塗布された溶液若しくは付着層の焼付けなど、任意の適切な手段によって塗布されてもよい。更なる例としては、二酸化シリコン(屈折率1.45)及び氷晶石(屈折率1.4)が挙げられる。代替実施形態では、上述のコーティングのいずれかを、ニッケル、クロム、インコネル、及びニクロム(相当量のニッケル及びクロムを含む材料)から形成された薄い金属層と組み合わせることができる。銀及びアルミニウムを本発明に使用できることが予期されるが、薄層は均一に堆積されることが必要である。或いは、上記に概説した薄層と同一の厚さの薄い金属層が、単独で、或いは1つ若しくは複数の光学レンズ、レンズ区域、若しくは光学装置の上に使用されてもよい。
本発明の更なる好ましい実施形態では、レンズアセンブリは、UV光及び短波長青色光の透過を減少させるのに適した材料を含む。そのようなレンズはまた、任意に、Eastman Yellow 035-MA1などの黄色染料を含んでもよい。
本発明の好ましい一実施形態では、レンズアセンブリは、モデル眼によって規定されるような球面収差及び色収差を矯正することができる。眼の球面収差は、通常、0〜1.5ジオプトリーであるが、色収差は、通常、0〜2.5ジオプトリーである("Optics of the Human Eye" written by David A. Atchison and George Smith)。本発明の好ましい一実施形態では、レンズアセンブリは、3ジオプトリー以下の球面収差及び/又は5ジオプトリー以下の色収差を矯正する。本発明のより好ましい実施形態では、レンズアセンブリは、1.5ジオプトリー以下の球面収差及び/又は2.5ジオプトリー以下の色収差を矯正する。
本発明の好ましい一実施形態では、ハプティックに作用する力は、IOLのレンズアセンブリを圧縮し、それによってレンズアセンブリの形状を変更して、例えば、非球面性を生じさせる(即ち、レンズアセンブリの一部の曲率半径を増加させる)。そのような膨れはレンズアセンブリの屈曲を変える。好ましい一実施形態では、屈曲の変化によって、レンズアセンブリが網膜上により短距離にある物体の焦点を合わせるように、屈折力の増加が得られる。
最も好ましい実施形態では、本発明のIOLは、眼の小帯、毛様体筋、外在筋の通常の圧縮力、硫酸塩圧(vitriol pressure)の何らかの変化を受けたとき、屈折力を増加させることができる。そのような圧縮力によって、レンズアセンブリの非球面性がもたらされ、患者により近い、又は患者からより離れた物体に焦点が合う。
代替実施形態では、ハプティックは、レンズアセンブリの第1の部分、例えばレンズ区域又は光学レンズに作用して、レンズアセンブリの第1の部分の非球面化の程度がレンズアセンブリの第2の部分よりも大きくなるように配置される。任意に、そのような配置によって、第2の部分によるベースライン屈折力が得られるとともに、眼筋が弛緩しているときの第1の部分の屈折力と、眼筋がハプティックに対して、したがって第1の部分に対して圧縮力を掛けているときの屈折力との差による可変の屈折力が得られる。
本発明の好ましい一実施形態では、レンズアセンブリの非球面化により、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10ジオプトリーの少なくともいずれか1つだけ、レンズの屈折力が増減する。より好ましい実施形態では、レンズアセンブリの非球面化により、少なくとも2ジオプトリーだけレンズの屈折力が増加する。より好ましい実施形態では、レンズアセンブリの非球面化により、少なくとも2ジオプトリーから5ジオプトリー未満だけレンズの屈折力が増加する。更なるより好ましい実施形態では、レンズアセンブリの非球面化により、1〜2ジオプトリーだけレンズの屈折力が増加する。最も好ましい実施形態では、レンズアセンブリの非球面化により、2〜4ジオプトリーだけレンズの屈折力が増加する。
本発明の任意の実施形態では、レンズアセンブリの一部は剛性又はほぼ変形不能であってもよいので、非球面化は生じないか、或いは、屈折力の増減が0.5ジオプトリー未満である程度までは生じない。そのような実施形態では、IOLのハプティックは、例えば、ハプティックを変形可能な部分と同じ面内に、但し剛性の又はほぼ変形不能な部分とは同じ面内ではないように位置付けることによって、レンズの変形可能な部分に作用するように配置されてもよい。レンズのそのような剛性の又はほぼ変形不能な部分は、最小限の屈折力をもたらしてもよいが、変形可能な部分は、IOLに作用する圧縮力に応答して遠近調節をもたらすことが予期される。
レンズの剛性の又はほぼ変形不能な部分は、眼の後方の被膜に接して置かれるように構成されてもよい。任意に、レンズの前記剛性の又はほぼ変形不能な部分は、乱視を含む眼の収差の光学的効果を低減してもよい。
レンズアセンブリは、変形可能な部分よりも硬い補強層を更に備えてもよい。好ましい一実施形態では、変形可能な部分は、補強層と剛性の又はほぼ変形不能な部分との間に配置される。そのような実施形態では、変形可能な部分は第1の材料で作られてもよく、補強層は第2の材料で作られてもよい。変形可能な部分、補強部分、及び剛性/変形不能な部分の屈折率は、同一である必要がないことが予期される。
代替実施形態では、変形可能な部分又は剛性の部分は、変形可能な部分が変形したとき、変形可能な部分からの材料がその中に拡張又は拡大してもよい容積を提供する、逃げ部分を更に備えてもよい。逃げ部分は、変形可能な部分の周りの周辺部の少なくとも一部、及び/又は変形可能な部分内の1つ若しくは複数の空隙を備えてもよい。
本発明の更なる実施形態では、変形可能な部分はIOLの周縁部までは延びない。そのような実施形態では、変形可能な部分は、上述したように、円形、長円形、円環、半円環、三角形、星形、又は他の任意の幾何学形状を含む、任意の形状であってもよい。好ましい一実施形態では、変形可能な部分は、光軸に位置する中心点を有する、或いはそうではない中央の円形部分である。そのような好ましい実施形態では、変形可能な部分の直径は少なくとも2mmである。より好ましい実施形態では、変形可能な部分の直径は2mm〜5mmである。最も好ましい実施形態では、変形可能な部分の直径は5mm超過である。
本発明の好ましい一実施形態では、圧縮力は凸レンズを非球面化するように作用する。しかし、本発明中では、圧縮力は、表面の中心部分を潰すようにして、凹面を備えたレンズに作用するか、或いは、IOL及び眼の両方の例において上述の範囲に従ってレンズの屈折力を減少させるようにして、IOL及び眼の後方に向けて置かれた凸レンズを非球面化するように作用してもよい。
本発明の好ましい一実施形態では、ハプティックの圧縮又は硫酸塩圧の増加により、レンズアセンブリが、非圧縮状態から患者の眼の前面に向かって平行移動する。そのような平行移動は、平行移動1mmごとに約2ジオプトリー以下だけレンズの屈折力を増加させてもよいことが予期される。本発明の好ましい一実施形態では、レンズアセンブリは、ハプティックの圧縮又は硫酸塩圧の増加を受けて、非圧縮状態から1.5mm超過だけ平行移動してもよい。より好ましい実施形態では、レンズアセンブリは、ハプティックの圧縮又は硫酸塩圧の増加を受けて、2mm超過だけ平行移動してもよい。最も好ましい実施形態では、レンズアセンブリは、ハプティックの圧縮又は硫酸塩圧の増加を受けて、2mm〜3mm前方に平行移動してもよい。任意に、そのようなレンズアセンブリが被膜嚢を損傷する圧力を回避するのに十分に小さいことを条件として、ハプティックは、ハプティックの圧縮又は硫酸塩圧の増加を受けて、3mm超過だけレンズアセンブリを平行移動させてもよい。任意に、そのような好ましい実施形態では、レンズアセンブリの直径は、最大限広がったとき、患者の瞳孔の直径に等しいか、それよりも小さい。
本発明の好ましい一実施形態では、無水晶体IOLレンズアセンブリは10〜40ジオプトリーの矯正を提供する。より好ましい実施形態では、無水晶体IOLレンズアセンブリは15〜30ジオプトリーの矯正を提供する。更なるより好ましい実施形態では、無水晶体IOLレンズアセンブリは18〜22ジオプトリーの矯正を提供する。最も好ましい実施形態では、無水晶体IOLレンズアセンブリは19〜21ジオプトリーの矯正を提供する。当業者は、波面技術、瞳孔径、並びに天然水晶体のサイズ及び形状を使用して、個々の患者それぞれに対して無水晶体IOLに求められる矯正ジオプトリー(diopters of correction)を決定できることが予期される。
本発明の好ましい一実施形態では、有水晶体IOLレンズアセンブリは1〜20ジオプトリーの矯正を提供する。より好ましい実施形態では、有水晶体IOLレンズアセンブリは2〜15ジオプトリーの矯正を提供する。更なるより好ましい実施形態では、有水晶体IOLレンズアセンブリは5〜10ジオプトリーの矯正を提供する。最も好ましい実施形態では、有水晶体IOLレンズアセンブリは6〜8ジオプトリーの矯正を提供する。当業者は、波面技術、瞳孔径、並びに天然水晶体のサイズ及び形状を使用して、個々の患者それぞれに対して有水晶体IOLに求められる矯正ジオプトリーを決定できることが予期される。
代替実施形態では、有水晶体及び無水晶体IOL両方のジオプトリー指数(diopter power)に対する上述の範囲は、患者の眼の光学収差によって、又は眼科手術若しくは疾病によって、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、又は40ジオプトリーのいずれか1つだけ増減することができる。眼科手術若しくは疾病としては、角膜の損傷、LASIK手術、LASEK手術、レンズなどの異物の移植、1つ若しくは複数の有水晶体若しくは無水晶体IOLの存在、及び/又は眼科装置の存在が挙げられるが、それらに限定されない。
本発明の好ましい一実施形態では、レンズアセンブリによって提供される矯正ジオプトリーは、所望の焦点面に従って変更される。例えば、多焦点レンズアセンブリが使用される場合、近焦点レンズ区域は、上記に概説した範囲に比べて、+1、+2、+3、+4、+5、+6、+7、+8、+9、又は+10のいずれか1つの増加した矯正ジオプトリーを必要とすることがある。同様に、遠焦点レンズ区域は、上記に概説した範囲に比べて、−1、−2、−3、−4、−5、−6、−7、−8、−9、又は−10のいずれか1つの減少した矯正ジオプトリーを必要とすることがある。最後に、中間焦点レンズ区域は、上記に概説した範囲に比べて、−5、−4、−3、−2、−1、+1、+2、+3、+4、+5のいずれか1つの減少又は増加した矯正ジオプトリーを必要とすることがある。同様に、二重焦点レンズ設計では、最も高い矯正ジオプトリーと最も低い矯正ジオプトリーとの差は30ジオプトリー以下であってもよい。本発明の好ましい一実施形態では、最も高い矯正ジオプトリーと最も低い矯正ジオプトリーとの差は5ジオプトリー〜20ジオプトリーである。本発明のより好ましい実施形態では、最も高い矯正ジオプトリーと最も低い矯正ジオプトリーとの差は10ジオプトリー〜15ジオプトリーである。二重焦点レンズの平均矯正ジオプトリーは、無水晶体又は有水晶体IOLに関するものを含む、上記に概説した値のいずれか1つであってもよい。
本発明の好ましい一実施形態では、レンズアセンブリ又はその変形可能な部分の非球面化により、+1、+2、+3、+4、+5、+6、+7、+8、+9、又は+10ジオプトリーのいずれか1つだけ矯正ジオプトリーが増加する。より好ましい実施形態では、レンズアセンブリ又はその変形可能な部分の非球面化により、上述の範囲に比べて、0.5〜3、0.5〜4、0.5〜1、0.5〜2、1〜2、1.5〜2、1.5〜3、2〜3、2〜3.5、2.5〜3、2.5〜4、3〜4、3〜5、3.5〜4、3.5〜5、4〜5、4.5〜5、5〜6、5.5〜6、6〜7、6〜10、7〜10、8〜10、又は9〜10ジオプトリーのいずれか1つだけ矯正ジオプトリーが増加する。
本発明の代替実施形態では、レンズアセンブリ又はその変形可能な部分の非球面化、或いはレンズアセンブリの凹状部分の潰れにより、−1、−2、−3、−4、−5、−6、−7、−8、−9、又は−10ジオプトリーのいずれか1つだけ矯正ジオプトリーが減少する。より好ましい実施形態では、レンズアセンブリ又はその変形可能な部分の非球面化、或いはレンズアセンブリの凹状部分の潰れにより、上述の範囲に比べて、0.5〜3、0.5〜4、0.5〜1、0.5〜2、1〜2、1.5〜2、1.5〜3、2〜3、2〜3.5、2.5〜3、2.5〜4、3〜4、3〜5、3.5〜4、3.5〜5、4〜5、4.5〜5、5〜6、5.5〜6、6〜7、6〜10、7〜10、8〜10、又は9〜10ジオプトリーのいずれか1つだけ矯正ジオプトリーが減少する。
本発明の好ましい一実施形態では、レンズアセンブリ又はその変形可能な部分の平行移動により、+1、+2、+3、+4、+5、+6、+7、+8、+9、又は+10ジオプトリーのいずれか1つだけ矯正ジオプトリーが増加する。より好ましい実施形態では、レンズアセンブリ又はその変形可能な部分の平行移動により、上述の範囲に比べて、0.5〜3、0.5〜4、0.5〜1、0.5〜2、1〜2、1.5〜2、1.5〜3、2〜3、2〜3.5、2.5〜3、2.5〜4、3〜4、3〜5、3.5〜4、3.5〜5、4〜5、4.5〜5、5〜6、5.5〜6、6〜7、6〜10、7〜10、8〜10、又は9〜10ジオプトリーのいずれか1つだけ矯正ジオプトリーが増加する。
本発明の好ましい一実施形態では、IOLは、患者の眼の前眼房内に(有水晶体)、或いは天然水晶体と置き換えるため、眼の被膜嚢内に(無水晶体)移植される。前眼房に移植したとき、IOLは、虹彩の前に、又は虹彩と被膜嚢の間に位置付けることができる。
好ましい一実施形態では、IOLを2つ折り及び3つ折りなどに折り畳み、且つ/又は丸めることによって、眼の組織の必要な切開は最小限に抑えられる。好ましい一実施形態では、IOLは円筒状の形状に丸められてもよい。移植後、IOLは、開くか、又は広がることができるか、或いはそのように操作される。最も好ましい実施形態では、IOLは、レンズアセンブリが光軸の少なくとも一部を覆うように位置付けられる。
流体及び/又は栄養分が、前眼房から後眼房へ、若しくは虹彩の後ろから虹彩の前へなど、IOLの周りを、又はそこを通って透過するのが容易になるように、レンズアセンブリは複数の穴及び/又は開口部を備えてもよい。好ましい一実施形態では、そのような穴又は開口部は、レンズアセンブリの周辺部若しくはその近くに配置される。任意の実施形態では、透過は、レンズアセンブリを眼又は被膜嚢の内壁の一部からずらすことによって達成される。好ましい一実施形態では、穴及び/又は開口部はIOLの後面及び前面の両方と連通している。代替実施形態では、穴及び/又は開口部はそれぞれ、IOLの後面又は前面の1つのみと連通している。
本発明の一実施形態では、図1に示されるように、眼内レンズアセンブリ10は、前方光学面と後方光学面の間の光軸OAに沿って延びるレンズ部分(「光学部品」)12を含む。IOLのレンズ12は、前方光学面と後方光学面の交点において(光軸OAの周りに配置された)周縁部8を有する。レンズ12は、光学部品12の周縁部8から延びる、二対の向かい合った可撓性ハプティック14A及び14B、並びに15A及び15Bを有する。ハプティックは、関連するハプティック軸HAに沿って延びており、ハプティック14Aはハプティック軸HA−14Aに沿って延び、ハプティック14Bはハプティック軸HA−14Bに沿って延び、ハプティック15Aはハプティック軸HA−15Aに沿って延び、ハプティック15Bはハプティック軸HA−15Bに沿って延びる。図示される実施形態では、ハプティック軸HAはそれぞれ、関連するハプティック面内で光軸OAと同一平面上にある。他の実施形態では、異なる数のハプティックが用いられてもよい。例えば、N個(Nは整数)のハプティックがあってもよい。
可撓性ハプティック14A、14B、15A、及び15Bはそれぞれ、可撓性且つ「ループ状」又は「パドル状」である。本明細書で使用されるとき、用語「ループ状」は、例えば、「C字形」又はU字形の周辺縁部(peripheral edge)を有し、幅が均一若しくは不均一なループの平滑な湾曲した部分を指す。本明細書で使用されるとき、用語「パドル状」は、C字形又はU字形の周辺縁部によって境界が規定された中実要素(中央のアパーチャを有さない)を指す。ハプティックは、周縁部8の関連部分でレンズ12に接合されるハプティックの末端部分の間を延びる。例えば、ハプティック14Aは、EP−14AとEP−14Bの間を延び、ハプティック軸HA−14Aに沿って延びる。
図1に図示される実施形態では、二対の向かい合った可撓性のループ状ハプティックは、光学部品12の周縁部8の周囲に等距離で間隔を空けて配置される。この対称性により、患者に対する快適さとレンズの安定性がもたらされる。或いは、2つ以上のループ状の可撓性ハプティックが、異なる間隔を空けた等距離ではない地点で、又は非対称的に周縁部8上に取り付けられて、ハプティック軸HAに沿って延びてもよい。図5D〜5Gを参照のこと。それに加えて、個々の眼の解剖学的構造又は視力の要件に応じて、レンズアセンブリの遠近調節及び安定性を最大限にするように、2つ以上の可撓性ハプティックが取り付けられてもよい。
図1Aに示されるように、眼内レンズアセンブリ10は、周縁部8の反対部分(面P内)から関連するハプティック軸の第1の対HA−14A及びHA−14Bに沿って延びるハプティックの第1の対14A及び14Bと、周縁部8の反対部分から関連するハプティック軸の第2の対HA−15A及びHA−15Bに沿って延びるハプティックの第2の対15A及び15Bとを含み、ハプティック軸の第1の対及び光学軸OAは、第1のハプティック面HP1内で同一平面上にあり、ハプティック軸の第2の対及び光学軸OAは、第2のハプティック面HP2内で同一平面上にある。それに加えて、第1のハプティック面HP1は第2のハプティック面HP2に垂直である。ハプティックは、前方光学面から離れる方向で光軸OAに直角な面Pから角度Aだけ光軸に対して角度をなしてずれている。好ましくは、眼内レンズアセンブリは約4〜7°の範囲の角度Aを使用する。ハプティックはそれぞれ、それに関連するハプティック軸HAの周りで対称に延びる、少なくとも1つのフットプレートFPを含むことにも留意されたい。或いは、ハプティックはそれぞれ、それに関連するハプティック軸の周りで対称に延びるフットプレートを1つも含まなくてもよい。
ハプティックはそれぞれ、それに関連するハプティック軸HAの周りで対称に延びるM個(Mは0よりも大きい整数)のフットプレートFPを含む。一実施形態では、Mは1に等しい。或いは、ハプティックはそれぞれフットプレートを1つも含まなくてもよい。図1及び1Aでは、フットプレートFPは、好ましくはハプティックの頂点において、各ハプティックHAの遠位端上に一体的に形成される。図1に示されるように、ハプティック14A、14B、15A、及び15Bはそれぞれ、それに関連するハプティック軸HA−14A、HA−14B、HA−15A、及びHA−15Bの周りで対称に配置された、フットプレートFP−14A、FP−14B、FP−15A、及びFP−15Bの関連する1つを含む。他の実施形態では、関連するハプティック軸の周りで対称に配置された複数のフットプレートがあってもよい。例証として、様々なフットプレート構成が図5A〜5Iに示される。一実施形態では、これらの構成は1つもフットプレートを有さなくてもよいことに留意されたい。フットプレートFPは、好ましくは、眼の構造との接触を最小限にし、且つ依然として所望の視力上の結果に必要な安定性をもたらすことができるように、断面がレンズ形状であることにも留意されたい。図5A〜5E及び5Iはループ状のハプティックを示し、図5A〜5Cは均一な幅のハプティックを示し、図5D〜5Gは不均一な幅のハプティックを示す。図5Hはパドル状のハプティックを示す。
図2は、光軸OA並びにハプティック軸HA−14A及びHA−14Bによって規定される面HP1に沿って、図1の眼内レンズアセンブリ10に類似の眼内レンズアセンブリを示す。光学部品22はレンズアセンブリの光学部分を構成する。光学部品22は前方光学面24及び後方光学面26を備える。表面24と表面26の組合せにより、ほぼ平面、凸面、平凸(図2に図示)及び凹面、両凸面、凹凸、又は他の既知の形態の光学部品が得られてもよい。光学部品22の直径は、必要に応じて、眼の虹彩角膜角間測定値(angle-to-angle measurement)及び眼の屈曲に適応するように変えることができる。個々の患者の眼に挿入される眼内レンズ(光学部品及びハプティック)の全長は、患者の眼の白眼間測定値(white-to-white measurement)に1mmを加えることによって決定される。一実施形態では、光学部品22は6mmの光学区域を有する。
光学部品22は、視力矯正に必要な所要のジオプトリー測定値まで研磨されてもよい。レンズは、負若しくは正メニスカスレンズであってもよいし、乱視の矯正を含んでいてもよい。使用される材料の屈折率及び必要な視力矯正に応じて、光学部品22は、中央部分27及び周縁部28において同じ厚さを有してもよく、又は中央部分27は周縁部28よりも薄くてもよい。一実施形態では、光学部品22の厚さは1mmである。
図2を参照すると、別の実施形態では、可撓性ハプティック14A及び14Bは、光軸OAに直角な面Pからわずかな角度Aで、光学部品22の周縁部28から延びる。アセンブリ20の円蓋距離(vault distance)Vは、フットプレートFPの間に(図示されるように)水平に描かれる線Qから、内側の光学面24の頂点29までを、光軸OAに沿って測定したレンズアセンブリの高さとして定義される。角度Aは、レンズアセンブリ20の遠近調節を最大限にするように、約4〜7°の範囲内、又は所望に応じてそれ以上である。好ましくは、角度Aは、光学部品及び可撓性ハプティック及びアセンブリ20のサイズと形状、並びに眼の解剖学的角度と組み合わせたとき、1mmの円蓋距離Vをもたらすものであるが、他の円蓋距離を使用することができる。円蓋距離により、眼内レンズアセンブリを前眼房内で天然水晶体レンズと角膜の間に載置するのに適切な隙間が保証される。
図3に示されるように、光学部品32の周縁部38から延びるタブA及びタブBを含む、図1の眼内レンズアセンブリ10に類似の眼内レンズアセンブリが示される。それらのタブは、移植の間、ユーザ(外科医)がレンズアセンブリの向きを確認するのを助ける。外科医から見て、図3に示されるタブの「左対角線方向の」向きは、レンズアセンブリが正確に移植されており、レンズが前方にアーチ状になっている(vaulted-forward)ことを示す。タブA及びBが左対角線方向に向いていれば、レンズアセンブリ30が後ろ向き又は逆向きに移植されていることを示す。
本発明の好ましい実施形態の眼内レンズアセンブリは、一般に3mm以下の長さの小さな切開部を介して容易に挿入されるように、折曲げ可能に設計されている。装置は、軸線Aに沿って、軸線Aに直角に、軸線Aからずれた角度で、又は複数の方向に折り曲げることができる。装置は、光学体内で、可撓性ハプティックの任意の地点で、光学体と可撓性ハプティックの間の交点で、又はそれらのすべてで折り曲げることができる。装置は、各方向に沿って、単一又は複数の折り目で折り曲げることができる。
本発明のレンズアセンブリに適した材料は、ヒドロゲル、コラマー、コラーゲル(ヒドロゲルとコラーゲンのブレンド)アクリルポリマー、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、及びシリコーンポリマーなどの、固体であって可撓性且つ折曲げ可能な非生体適合性光学材料である。レンズアセンブリはまた、材料の複合体で作られてもよく、即ち、可撓性ハプティックが1つの材料から製造され、光学部品が別の材料から製造される場合、例えば、アクリル製の光学部品とヒドロゲル製のハプティックである。レンズアセンブリが無水晶体眼に使用される場合、可撓性であるが折り曲げにくい材料が好ましいことがある。例えば、無水晶体眼の場合、レンズアセンブリはすべてがPMMAで作られるか、PMMA製の光学部品とプロレン製のハプティックとの複合体で作られてもよい。
例証として、レンズアセンブリは、例えばAlcon Laboratories社製のAcrySof(商標)IOLと同じ材料を使用した、無菌のUV吸収性アクリルの折曲げ可能な形態として作られてもよい。更に、様々な形態で、レンズは、前眼房、後眼房溝、及び後眼房嚢の中で使用されてもよい。
図4Aでは、眼43の前眼房内に移植され、虹彩角膜角(angle)44内で固着された、本発明の有水晶体眼内レンズアセンブリ40が示される。或いは、本発明の有水晶体IOLは、後眼房内に移植され、虹彩角膜角で固着されてもよい。レンズアセンブリ40は、角膜45と虹彩46の間で前眼房C内に位置付けられる。アセンブリ40の光学部品47は瞳孔48上に位置付けられる。可撓性ハプティック49は光学部品47から延び、フットプレートFP(光学部品47から遠位側)は虹彩角膜角44内に延びる。この構成では、天然水晶体レンズ50の移動は後眼房42内では妨げられない。レンズアセンブリ40の比較的低い円蓋高さにより、それが角膜44に接触しないことが保証される。
図4Bでは、眼43の被膜嚢内に移植された、本発明の無水晶体眼内レンズアセンブリ40が示される。或いは、本発明の無水晶体IOLは眼の溝内に移植されてもよい。レンズアセンブリ40は、虹彩46及び角膜45の後ろの被膜嚢P内に位置付けられる。アセンブリ40の光学部品47は、虹彩角膜角44内に延びるフットプレートFP(光学部品から遠位側)とともに、可撓性ハプティック49を有する。レンズアセンブリ40の比較的低い円蓋高さにより、それが角膜44に接触しないことが保証される。
図6では、本発明の眼内レンズアセンブリの平面図は、中間視力のための第1のレンズ区域62、近見視力のための第2のレンズ区域63、遠見視力のための第3のレンズ区域64、並びに中間視力のための第4のレンズ区域66及び第5のレンズ区域68を有する。
図7では、光軸及びハプティックに垂直な面を通る本発明の合成多焦点光学装置の断面図は、第1の両凸面光学レンズ70、第2の両凸面光学レンズ72、及び第3の両凹面光学レンズ74を示す。考察したように、これらの光学レンズは、光学レンズ70、72、及び74を光学部品12内に埋め込むことによってなど、光学部品12の材料によって支持されてもよい。或いは、第1の光学装置70、第2の光学装置72、及び第3の光学装置74は互いに溶融されてもよい(図示なし)。
図8では、2つのハプティック82及び84を有する本発明の変形可能なレンズアセンブリ80は、圧縮力(黒で示される)を受けている。これらの圧縮力の結果として、レンズアセンブリ80は変形し、それによって、変形可能なレンズアセンブリ80の形状は変形したレンズアセンブリ86の形状に変わる。これは、ハプティック82及び84に作用する圧縮力を受けた本発明のIOLの適応の一例である。
上述したように、本発明の眼内レンズアセンブリは、屈折性有水晶体眼内レンズアセンブリ又は無水晶体眼内レンズアセンブリのいずれかとして、眼内に有効に移植することができる。有水晶体眼内レンズ移植は、良好な屈折性及び視力上の結果のため、またほとんどの場合移植が比較的容易であることから、より一般的になってきている(Zaldivar & Rocha. 36 Int. Ophthalmol. Clin. 107-111 (1996); Neuhann et al., 14 J. Refract. Surg. 272-279 (1998); Rosen & Gore, 24 J. Cataract Refract. Surg. 596-606 (1998); Sanders et al., 24 J. Cataract Refract. Surg. 607-611 (1998))。移植は、通常の技術を有する眼科医が行うことができる。そのような移植の間、眼の組織に対して生じる外科的損傷はわずかでしかない。手術の質に妥協がなければ、結果は極めて予測可能であり、即効性があり、且つ持続的である。
本発明の眼内レンズアセンブリを使用する有水晶体レンズアセンブリ移植は、外科的な視力強化の他の形態よりも優れた利点を有する。レーザー手術と異なり、移植片は除去可能である。天然水晶体レンズはそのままであり、患者は遠近調節する能力を失わない。遠視の患者の間での有水晶体眼内レンズによる屈折矯正手術は、近視の患者ほどまだ一般的ではないが、それは主として、そのような手術が近視の手術ほど長い間利用可能ではなかったためである(Fechner et al., 24(1) J. Cataract Refract. Surg. 48-36 (1998))。
有水晶体レンズアセンブリ移植の場合、本発明の眼内レンズアセンブリは、好ましくは眼の前眼房内に置かれる。適切な移植に続いて、本発明のアセンブリの眼内レンズは、虹彩の前に置かれた虹彩角膜角支持(angle-supported)有水晶体眼内レンズ、又は後眼房内で虹彩の後ろに置かれた溝支持(sulcus-supported)有水晶体眼内レンズのどちらかであることができる。本発明の眼内レンズアセンブリのハプティックレンズ機構は、レンズの遠位側ハプティック部分を固着し、それによって、眼内レンズがその適正位置から転位すること及び滑り又はずれることを防ぐ。
本発明の眼内レンズアセンブリの移植アセンブリは、一般に、(Singh, emedicine Ophthalmology (2000) http://www.emedicine.com/cgibin/foxweb.exe/showsection@d:/em/ga?book=oph&topicid=662)によって提供されるように行うことができる。
最初に、局所的抗生物質滴剤の投与を開始する。有用な抗生物質は、トブラマイシン0.3%を1滴、1日当たり6回である。次に、手術の45分前から開始して、例えば15分間隔で投与される、1%ピロカルピン滴剤を用いて眼の瞳孔を収縮させる。炎症を最小限に抑えるため、滴剤(NSAID滴剤など)を手術前に2回投与する。
患者に対して全身麻酔を行うことができるが、局所麻酔が好ましい。局所麻酔の場合、ヒアルロニダーゼを7.5U/ml含む2%リドカインを手術の10分前に与えることができる。眼窩圧迫(orbital compression)は、眼を柔軟にし、且つ眼窩圧(orbital pressure)を低減するために適用される。
手術野を準備するため、患者の眼窩周囲の皮膚をヨウ素で着色し、次に5%ポビジン(povidine)を塗布する。5%ポビジンも、眼瞼縁及び結膜円蓋に2〜3回塗布する。次に、眼を食塩水で洗浄する。
開瞼器を使用して手術野を露出させる。上眼瞼及び下眼瞼の縫合、並びに上直筋縫合をスペキュラムの代わりに適用することができる。(無縫合処置を使用することもできる。)眼瞼の表面に塗布した接着性プラスチックを使用して、睫毛を引っ張る。
小さな術中切開部を作るため、前眼房に側部開口(例えば、0.6mm)を作る。この注入は向かい合った角膜縁(limbus)において開始する。水性流体が流出すると、それを例えば粘弾性剤と交換する。前眼房の深さはどの時点でも低減されない。
一実施形態では、本発明の眼内レンズアセンブリを眼の中に移植する場合、2つの側部開口を作って、虹彩をハプティックに固定するのに使用される器具を導入する。切開部の幅は、本発明の眼内レンズアセンブリの直径(例えば、4〜5mmである)に応じて変わる。切開部は、角膜縁に、又は透明角膜内に作ってもよい。ポケット部が作られる場合、創傷閉鎖(以下を参照)は縫合なしで行うことができる。次に、本発明の眼内レンズアセンブリを、角度付きの縫合鉗子を用いて水晶体前空間に導入することができ、レンズは、例えば、毛様体解離スパチュラを用いて水平軸上で虹彩の後ろに位置付けられる。次に、本発明の眼内レンズアセンブリを操作して、光学部品を瞳孔上で心合わせする。本発明の有水晶体眼内レンズアセンブリを前眼房内に移植する間に、レンズを心合わせし、適所を外れて滑らないように固定する。レンズは、角膜と虹彩の間に、但しそれらとの接触を避けるように位置付けて、角膜損傷を防ぐか、或いはレンズの前面上で角膜上皮が増殖して、虹彩を混濁化させるのを防ぐことができる。レンズが瞳孔に対して適切に位置付けられていない場合、網膜に入る光が多過ぎて、重大な視覚障害を引き起こすことがある。ハプティックは、一般に、前眼房の虹彩角膜角内に留まる。また、眼の前眼房は、毛様体突起によって分泌される流体である眼房水で満たされており、眼房水は、瞳孔を介して後眼房から前眼房へ、また前眼房の虹彩角膜角から、フォンターナ腔内に、櫛状絨毛へと移動し、それによってろ過されて静脈性のシュレム管(venous canal of Schlemm)に入る。移植されたレンズは、流体の流れが阻害されないように位置付けられる。
本発明の眼内レンズアセンブリを移植した後、粘弾性物質(眼房内に既に導入されている場合)は、吸引注射器(24ゲージのカニューレなど)を用いて眼の前眼房及び後眼房から除去される。本発明の眼内レンズアセンブリを、レンズのハプティックによって虹彩の前面に固定する。固着を達成するため、ハプティックは、瞳孔のどちらかの側で虹彩のひだを保持する。前眼房を食塩水で十分に洗浄する。瞳孔を、眼内アセチルコリン1%、カルバコール0.01%、又はピロカルピン0.5%溶液を用いて収縮させる。角膜切開部を水和することによって切開部を閉じる。縫合が必要な場合はまれである。
別の実施形態では、本発明の眼内レンズアセンブリを移植する場合、主要切開部は眼の腹側領域(ventral area)に(眼の「頂部」、「12時」の位置に)作る。幅は、好ましくは、4〜5mmであってもよい光学部品のサイズに等しい。側部切開部は約1mm幅で作る。次に、本発明のレンズアセンブリを垂直に挿入する。本発明のレンズアセンブリを粘弾性体で満たされた前眼房の内部で回転させ、ハプティックを水平に置く。
本発明のレンズアセンブリの固着は両手を使う処置である。レンズアセンブリは、鉗子又はカニューレなどの、ハプティックを圧縮する専用ツールを使用して移植されるか、或いは、マイクロフックに頼って、光学部品の表面の穴を介して光学部品を操作する(米国特許第6,142,999号明細書の考察を参照)。主要切開部を介して前眼房に入る垂直保持(vertically-holding)レンズ鉗子は、光学部品を瞳孔上で心合わせし、それをしっかり保持する。薄い鉗子を側部切開部から導入し、虹彩を把持して、虹彩の一部又はひだをハプティックに通す。器具を両方とも引き抜き、外科医は各ツールを保持する手を入れ替える。眼の前眼房の粘弾性物質を再び濃くし、レンズ固着器具を再導入する。反対側の切開部を介して、第2のハプティック固着手技を行う。
次に、周辺虹彩切除を行うことができる。次に、3つの切開部を介して、導入された粘弾性物質(もしあれば)を吸引する。前眼房を徐々に潅注し、空気で膨張させて粘弾性物質をすべて除去する。
切開線の閉鎖については、切開部の側部の付着は1つ又は2つの表面縫合によって達成されてもよい。或いは、付着をもたらすため、大きな気泡が前眼房内部に残されてもよい。ポケットなしで輪部切開(limbal incision)を行った場合、切開線の閉鎖は縫合糸を使用して行うべきである。
手術の終了時に、ゲンタマイシン20mg及びデキサメタゾン2mmを結膜下注射する。無菌パッド及び保護シールドを適用する。
或いは、本発明の眼内レンズアセンブリは、眼科分野の当業者には知られている方法を使用して、眼の後眼房内に置くことができる(米国特許第6,110,202号明細書、Pesando et al., 15(4) J. Refract Surg. 415-23 (1999); Sanders et al., 15(3) J. Refract Surg 309-15 (1999)を参照)。後眼房移植片の場合、ハプティックは通常、毛様体溝内に留まる。
無水晶体眼内レンズアセンブリ移植も、本発明の眼内レンズアセンブリによって有効に提供される。レンズアセンブリは、眼の水晶体の空にした被膜嚢に、眼内レンズアセンブリのレンズ光学部品が前嚢の残渣によって規定される開口部と一直線に並び、レンズの遠位部分の外側端部が嚢の外周内に配置されるような位置で、(例えば、嚢内の前方被膜開口部を介して)外科的に移植することができる。本発明の眼内レンズアセンブリは、遠位部分又は延長部分の外側端部から眼内レンズアセンブリの軸線までの半径方向寸法を有する。したがって、眼内レンズアセンブリを被膜嚢内に移植することで、延長部分の外側端部は、嚢をまったく又はごくわずかしか伸展させることなく、被膜嚢の内周壁を係合する。眼内レンズアセンブリを被膜嚢内に移植した後、嚢の前方被膜縁(anterior capsule rim)の後面上にある活性の外胚葉性細胞は、レンズの延長部分の周りの繊維増多によって、嚢の弾性の後方被膜に対する縁の融合を引き起こす。ハプティックの設計により、本発明の眼内レンズアセンブリは、眼の被膜嚢内に置かれたとき、患者に対して適応する。
有利には、眼の毛様体筋の術後アトロピン投与は、本発明の眼内レンズアセンブリ(屈折性有水晶体眼内レンズ又は無水晶体眼内レンズとして移植されたとき)が適応を得るためには不要である。手術の間、特に無水晶体眼内レンズの移植の場合、眼の毛様体筋は、筋肉を弛緩状態にさせる毛様体筋弛緩剤によって事前に、且つ一般的に麻痺させてある。毛様体筋弛緩剤としては、アトロピン、スコポラミン、ホマトロピン、シクロペントレート、及びトロピカルニド(tropicarnide)などの抗コリン作用薬が挙げられる。アトロピンが好ましい。アトロピンの専売薬としては、Isopto Atropine(点眼薬)、Minims Atropine Sulphate(一回量点眼薬)、Min-I-Jet Atropine(注射薬)、Actonorm Powder(制酸剤及びはっか油との併用)、Atropine-1、Atropine-Care、Atropisol、Isopto Atropine、Ocu-tropine、Atropair、Atropine Sulfate S.O.P、Atrosulf、1-Tropine、Isopto Atropine、及びOcu-Tropineが挙げられる。本発明よりも前(即ち、本発明の折曲げ可能な眼内レンズアセンブリの利点を有さない眼内レンズを移植していた間)は、患者の眼は、移植された無水晶体眼内レンズアセンブリのレンズが眼に適応できるようにするため、術後にアトロピン投与されていた(米国特許第6,051,024号明細書の考察を参照)。手術後、繊維増多が完了するまで毛様体筋をその弛緩状態で維持するため、毛様体筋弛緩剤(アトロピンなど)が、術後の繊維増多及び治癒期間全体にわたって周期的に導入されていた。毛様体筋のこの薬物誘発性の弛緩は、毛様体筋の収縮を防ぎ、被膜嚢を不動化した。したがって、移植された眼内レンズの光学部品は、繊維増多の間に、網膜に対して眼の中でその遠見視力位置を決定した。移植されたレンズは、被膜嚢の弾性後方被膜を後方に押し付け、それによってそれを前方に伸展させた。対照的に、本発明の眼内レンズアセンブリのハプティックの設計により、レンズは、眼の被膜嚢内に置かれたとき、術後にアトロピンを投与することなく、患者に適応させることができる。
本発明の別の形態では、適応をもたらす、眼内レンズアセンブリを眼に移植する方法も提供される。これは、眼内レンズ(IOL)アセンブリを眼に挿入することを含み、その際、IOLアセンブリは、前方光学面と後方光学面の間の光軸に沿って延びる。レンズは、前方光学面と後方光学面の交点で光軸の周りに配置される周縁部を有する。レンズは、N個(Nは1よりも大きい整数)のハプティックを更に含む。ハプティックはそれぞれ、周縁部の関連部分から関連するハプティック軸に沿って延びる。ハプティックはそれぞれ、ループ状又はパドル状であり、その反対端部にある末端部分の間を延びる。末端部分はレンズに周縁部で接合される。また、ハプティック軸は、光軸に直角な面に対して角度Aだけ前面から角度をなして離れる。一実施形態では、角度Aは約4〜7°の範囲内であってもよい。
上述の発明並びにその作成及び使用方法において、本明細書の本発明の範囲から逸脱することなく他の変更及び修正を行うことができ、上述の説明に含まれる事項はすべて例示目的と解釈され、限定を意味するものではないことが、当業者には理解されるであろう。
明細書及び特許請求の範囲全体にわたって、且つ文脈上別の意味が必要とされない限り、用語「備える」又は「備えている」などの変形は、規定される整数又は整数群を含み、但し他のあらゆる整数又は整数群を除外するものではないことが理解されるであろう。
明細書及び特許請求の範囲全体にわたって、且つ文脈上別の意味が必要とされない限り、用語「ほぼ」又は「約」は、これらの用語によって制限される範囲の値に限定されないことが理解されるであろう。