JP2009517404A - Hmgb1および/またはrageのアンタゴニストならびにその使用方法 - Google Patents

Hmgb1および/またはrageのアンタゴニストならびにその使用方法 Download PDF

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Abstract

脊椎動物細胞からの炎症誘発性サイトカインの放出を阻害するため、および患者における炎症性サイトカインカスケードを阻害するための組成物および方法が開示される。組成物は、例えば、HMG1およびその抗原性断片に特異的に結合する高親和性抗体を含む。本発明の高親和性抗体およびそれを含む医薬組成物は、多くの目的のために、例えば、敗血症敗血症、関節リウマチ、腹膜炎、クローン病、再灌流障害、敗血症、エンドトキシンショック、嚢胞性線維症、心内膜炎、狼瘡、乾癬、乾癬性関節炎、関節炎、アナフィラキシーショック、臓器虚血、再灌流障害、および同種移植拒絶など広範囲の炎症性疾患および障害に対する治療物質として、有用である。さらに、本発明の高親和性抗体は、診断用抗体として有用である。

Description

1. 発明の背景
炎症は、腫瘍壊死因子(TNF)、インターロイキン(IL)-1α、IL-1β、IL-6、血小板活性化因子(PAF)、マクロファージ遊走阻止因子(MIF)、および他の化合物などの炎症誘発性サイトカインによってしばしば誘導される。これらの炎症誘発性サイトカインは、いくつかの異なる細胞型によって、最も重要なことには免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、および好中球)によって産生されるが、線維芽細胞、骨芽細胞、平滑筋細胞、上皮細胞、および神経細胞などの非免疫細胞によっても産生される。これらの炎症誘発性サイトカインは、炎症性サイトカインカスケードの初期の段階に様々な障害を引き起こす一因となる。
炎症性サイトカインカスケードは、炎症およびアポトーシスを含めて、多数の障害の有害な特徴を引き起こす一因となる。局所性反応および全身性反応の両方を特徴とする慢性障害および急性障害が含まれ、それだけには限らないが、以下のものが挙げられる:胃腸管および関連組織に関係する疾患(虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍、および十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵炎、潰瘍性結腸炎、偽膜性結腸炎、急性結腸炎、および虚血性結腸炎、憩室炎、喉頭蓋炎、アカラシア、胆管炎、胆嚢炎、セリアック病、肝炎、クローン病、腸炎、ならびにウィップル病など);全身性または局所性の炎症性の疾患および状態(喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、免疫複合体病、臓器虚血、再灌流障害、臓器壊死、枯草熱、敗血症、敗血症、エンドトキシンショック、カヘキシー、異常高熱症、好酸球性肉芽腫、肉芽腫症、およびサルコイドーシスなど);泌尿生殖器系および関連組織に関係する疾患(敗血性流産、精巣上体炎、膣炎、前立腺炎、および尿道炎など);呼吸器系および関連組織に関係する疾患(気管支炎、肺気腫、鼻炎、嚢胞性線維症、間質性肺炎、COPD、成人呼吸窮迫症候群、塵肺症(pneumoultramicroscopicsilico-volcanoconiosis)、肺胞炎(alvealitis)、細気管支炎、咽頭炎、胸膜炎、および副鼻腔炎など);様々なウイルス(インフルエンザ、呼吸器合胞体ウイルス、HIV、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、およびヘルペスなど)、細菌(播種性菌血症、デング熱など)、真菌(カンジダ症など)、ならびに原生動物および多細胞性寄生虫(マラリア、フィラリア症、アメーバ症、および包虫嚢胞など)による感染の結果として起こる疾患;皮膚の皮膚科学的な疾患および病態(乾癬、熱傷、皮膚炎、皮膚筋炎、日焼け、じんま疹いぼ、および膨疹);心血管系および関連組織に関係する疾患(血管炎(vasulitis)、脈管炎、心内膜炎、動脈炎、アテローム性動脈硬化症、血栓静脈炎、心膜炎、うっ血性心不全、心筋炎、心筋虚血症、結節性動脈周囲炎、再狭窄、およびリウマチ熱など);中枢神経系または末梢神経系および関連組織に関係する疾患(アルツハイマー病、髄膜炎、脳炎、多発性硬化症、脳梗塞、脳塞栓、ギラン・バレー症候群、神経炎、神経痛、脊髄損傷、麻痺、およびブドウ膜炎など);骨、関節、筋肉、および結合組織の疾患(様々な関節炎および関節痛、骨髄炎、筋膜炎、パジェット病、痛風、歯周病、関節リウマチ、および滑膜炎など);他の自己免疫性障害および炎症性障害(重症筋無力症、甲状腺炎(thryoiditis)、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、ベーチェット症候群、同種移植拒絶、移植片対宿主疾患、I型糖尿病、強直性脊椎炎、ベルジェ病、およびライター症候群など);ならびに様々な癌、腫瘍、および増殖性障害(ホジキン病など);および、どの場合でも、任意の一次疾患に対する炎症性応答または免疫宿主応答。
初期炎症誘発性サイトカイン(例えば、TNF、IL-1など)は、炎症を媒介し、かつ、高移動度群タンパク質1(HMG1)(HMG-1、HMG1、およびHMGB1としても公知)、すなわち、血清中で蓄積し、致死の遅延化および初期炎症誘発性サイトカインのさらなる導入を媒介するタンパク質の後期の放出を誘導する。
HMG1は、DNAの構造および安定性のために不可欠な、高移動度群(HMG)と呼ばれるDNA結合タンパク質のファミリーの創始メンバーとして最初に同定された。これは、配列特異性無しに二本鎖DNAに結合する、遍在的に発現される核タンパク質として約40年前に同定された。
HMG1が結合すると、DNAは、例えば、糖質コルチコイド受容体およびRAGリコンビナーゼの遺伝子転写を容易にする核タンパク質複合体の形成および安定性を促進するようになる。HMG1分子は、次の3つのドメインを有する:HMG AボックスおよびHMG Bボックスと呼ばれる2つのDNA結合モチーフ、ならびに酸性カルボキシル末端。これら2つのHMGボックスは、高度に保存されているアミノ酸80個のL字型ドメインである。HMGボックスはまた、RNAポリメラーゼI転写因子、ヒト上流結合因子、およびリンパ系特異的因子を含めて、他の転写因子においても発現される。
最近、HMG Aボックスは、HMG炎症誘発性作用の競合的阻害物質としての機能を果たし、また、HMG Bボックスが、HMGの主な炎症誘発性活性を有することが発見された(例えば、US20040005316を参照されたい)。HMG1は、炎症を誘発すると考えられるアポトーシス細胞とは対照的に、壊死細胞によって受動的に放出される、長い間探し求められていた核危険シグナルであることが実証された。HMG1は、核から分泌性リソソームへの移行を可能にし、かつ、HMG1のアセチル化型の分泌をもたらす、分子のアセチル化を要するプロセスにおいて、刺激されたマクロファージまたは単球によって能動的に分泌され得ることも示された。PCT/IB2003/005718を参照されたい。したがって、壊死細胞から受動的に放出されたHMG1と炎症細胞によって能動的に分泌されたHMGB1とは、分子的に異なる。
さらに、HMG1は、内毒素血症において致死を遅延させるサイトカインメディエーターとして意味付けられている。例えば、米国特許第6,468,533号および同第6,448,223号を参照されたい。より具体的には、細菌のエンドトキシン(リポ多糖類(LPS))が単球/マクロファージを活性化して、活性化に対する後期応答としてHMG1を放出し、その結果、毒性である高い血清HMG1レベルをもたらすことが実証されている。HMG1に対する抗体は、抗体投与が初期のサイトカイン応答の後まで遅れた場合にさえ、エンドトキシンの致死性を妨げることが示されている。他の炎症誘発性サイトカインと同様に、HMG1は、単球の強力な活性化因子である。HMG1を気管内に適用すると、急性の肺損傷が引き起こされ、また、抗HMG1抗体は、エンドトキシンによって誘導される肺浮腫から保護する。さらに、血清HMG1レベルは、敗血症または出血性ショックを有する危篤状態の患者において上昇しており、また、レベルは、生存者と比べて非生存者において有意に高い。
細胞外HMG1は、終末糖化産物受容体(RAGE)を介して、およびToll様受容体(TLR)ファミリーのメンバーを介してシグナル伝達することにより、炎症カスケードの強力なメディエーターとして作用する。例えば、米国特許公報US20040053841を参照されたい。
高移動度群タンパク質2(HMG2)(HMGB2およびHMG-2としても公知)は、HMG1の近縁種であり、遺伝子重複に由来した可能性が高い。これは、多くの細胞型に存在し、かつ、全部ではないとしても多くのHMG1の生化学的特性を共有している(Bustin, 1999, Mol. Cell. Biol. 19, 5237-46およびThomas et al., 2001, Trends Biochem.Sci. 26, 167-74)。HMG2は、成体マウス組織において、HMG1よりも量が少なく、かつ、分布がより限局されているが、リンパ系器官、精巣、および肺中では比較的豊富であり、そこで炎症のメディエーターとして役割も果たし得る。HMG1と同様に、HMG2もまた、全身性のリウマチ疾患(Uesugi et al., 1998, J Rheumatol. 25:703-9)、潰瘍性結腸炎(Sobajima et al., 1998, Clin Exp Immunol. 111:402-7)、および若年性特発性関節炎(Wittemann et al., 1990, Arthritis Rheum. 33:1378-83;Rosenberg et al., 2000, J Rheumatol. 27, 2489-93)を含めて、いくつかの自己免疫疾患における自己抗体(例えば、核周囲型抗好中球細胞質抗体)の重要な標的抗原である。
HMG1およびそのポリペプチド断片(例えば、HMG AボックスおよびHMG Bボックス)に結合する抗体が、HMG1の活性(例えば、炎症誘発性活性)を調節(modulate)することが示されていること、ならびにヒトにおけるHMG1活性を調節することは、多くの疾患および障害に対する多大な治療的用途を有し得るということを前提として、当技術分野において、HMG1に対する親和性が高く、かつ免疫原性が低い、HMG1およびそのポリペプチド断片に特異的に結合する抗体を同定する必要がある。同様に、HMG2の活性を調節(modulate)する分子(例えば、HMG2およびポリペプチド断片に特異的に結合する抗体)もまた、いくつかの疾患および障害に対する有用な治療物質である可能性がある。
2. 発明の要旨
本発明は、HMG1が、病原体関連分子パターンを有する分子(例えば、LPS、細菌核酸)と協働して、パターン認識受容体/分子(例えば、Toll様受容体(TLR))を介したシグナル伝達およびサイトカイン分泌を誘導するという発見に部分的に基づいている。特定の理論に拘泥するものではないが、HMG1は、病原体関連分子パターンを含む分子(このような分子は、本明細書において「PAMP」と呼ばれる)に結合して、PAMPシグナル伝達を増強する免疫賦活性複合体を形成することができる。特に、HMG1は、PAMPを適切なパターン認識受容体/分子へと届けるシャペロンとして機能することができ、したがって、シグナル伝達を増強することができる。例えば、HMG1は、CpG DNAに結合してCpG DNAとの高親和性複合体を形成し、これにより、TLR9/MyD88およびRAGE依存性経路を介してサイトカイン産生が促進されることが見出された。さらに、HMGB1-RAGE依存的相互作用が、DNA免疫複合体による刺激後の自己反応性B細胞の活性化に関与していること、また、狼瘡の血漿中に存在するDNA複合体によるI型インターフェロン遺伝子誘導の調節にも関与していることが見出された。総合すれば、これらのデータにより、HMGB1、すなわち分泌性の核DNA結合タンパク質が、DNAに結合し、(それだけには限らないが)全身性エリテマトーデスなど免疫複合体の存在に関連した障害を含む全身性自己免疫疾患を含む免疫疾患の病因に寄与し得るRAGE依存的機序を通じて強力な免疫賦活活性を該DNAに付与する際の新規な機序が、提供される。
したがって、本発明は、病原体関連分子パターンを有する1種または複数種の分子と組み合わせて、HMG1または生物学的に機能的なその断片を同時投与することによって、パターン認識受容体/分子を刺激する方法を提供する。本発明はまた、RAGEアンタゴニストを投与することによってHMG1および/またはHMG1:PAMP複合体とRAGEとの相互作用を阻害する方法も提供する。さらに、本発明は、PAMPへのHMG1結合および/またはHMG1のシャペロン活性を妨げることができ、かつ/または混乱させることができるHMG1のアンタゴニストを投与することによって、パターン認識受容体/分子を阻害する方法を提供する。このような治療法は、癌、感染症、喘息、およびアレルギーの治療に有用である。
本発明はまた、HMG1(本明細書において「HMGB1」とも呼ばれる)およびその抗原性断片に特異的に結合する高親和性抗体の発見に部分的に基づいている。さらに、本発明は、本発明の高親和性抗体が、パターン認識受容体/分子を介したシグナル伝達に対するHMG1の相乗効果を阻止することができるという発見にも基づいている。本発明の高親和性抗体およびそれを含む医薬組成物は、多くの目的のために、例えば、敗血症、関節リウマチ、腹膜炎、クローン病、狼瘡、再灌流障害、敗血症、エンドトキシンショック、嚢胞性線維症、心内膜炎、乾癬、関節炎(例えば、乾癬性関節炎)、アナフィラキシーショック、臓器虚血、再灌流障害、脊髄損傷、および同種移植拒絶など多様な感染性および炎症性の疾患および障害に対する治療物質として、有用である。さらに、本発明の高親和性抗体は、診断的用途のために有用である。
本発明の一実施形態では、本発明の高親和性抗体は、ヒトまたは他の動物、例えば、哺乳動物および無脊椎動物のHMG1ポリペプチドを含むか、あるいはそれからなる(または本質的にそれからなる)ポリペプチドに特異的に結合する。特定の実施形態では、本発明の高親和性抗体は、ヒトHMG1ポリペプチド(配列番号1または配列番号2)を含むか、あるいはそれからなるポリペプチドに特異的に結合する。ヒトおよび他の動物の完全長HMG1ポリペプチドは、当技術分野において周知である(例えば、US20040005316、US6,468,533、およびUS6,448,223を参照されたい)。
ヒトHMGB1アミノ酸配列(Genbankアクセッション番号NP_002119)
MGKGDPKKPRGKMSSYAFFVQTCREEHKKKHPDASVNFSEFSKKCSERWK TMSAKEKGKFEDMAKADKARYEREMKTYIP PKGETKKKFKDPNAPKRPPS AFFLFCSEYRPKIKGEHPGLSIGDVAKKLGEMWNNTAADDKQPYEKKAAK LKEKYEKDIAAYRAKGKPDAAKKGVVKAEKSKKKKEEEEDEEDEEDEEEE EDEEDEDEEE DDDDE(配列番号1)
ヒトHMGB1アミノ酸配列(Genbankアクセッション番号AAA64970))
MGKGDPKKPTGKMSSYAFFVQTCREEHKKKHPDASVNFSEFSKKCSERWK TMSAKEKGKFEDMAKADKARYEREMKTYIPPKGETKKKFKDPNAPKRLPS AFFLFCSEYRPKIKGEHPGLSIGDVAKKLGEMWNNTAADDKQPYEKKAAK LKEKYEKDIAAYRAKGKPDAAKKGVVKAEKSKKKKEEEEDEEDEEDEEEE EDEEDEEDEE DDDDE(配列番号2)
本発明の別の実施形態では、本発明の高親和性抗体は、ヒトまたは他の動物、例えば、哺乳動物および無脊椎動物のHMG2(本明細書において「HMGB2」とも呼ばれる)ポリペプチドを含むか、あるいはそれからなる(または本質的にそれからなる)ポリペプチドに特異的に結合する。さらに別の実施形態では、本発明の高親和性抗体は、ヒトHMG2ポリペプチド(配列番号21)を含むか、あるいはそれからなるポリペプチドに特異的に結合する。ヒトおよび他の動物の完全長HMG2ポリペプチドは、当技術分野において周知である。例えば、Majumdar et al., 1991, Nucleic Acids Res. 19:6643、Shirakawa et al., 1992, J Biol Chem 267:6641-6645を参照されたい。
ヒトHMGB2 アミノ酸配列(Genbankアクセッション番号AAA58659)
MGKGDPNKPRGKMSSYAFFVQTCREEHKKKHPDSSVNFAEFSKKCSERWKTMSAKEKSKFEDMAKSDKARYDREMKNYVPPKGDKKGKKKDPNAPKRPPSAFFLFCSEHRPKIKSEHPGLSIGDTAKKLGEMWSEQSAKDKQPYEQKAAKLKEKYEKDIAAYRAKGKSEAGKKGPGRPTGSKKKNEPEDEEEEEEEEDEDEEEEDEDEE(配列番号21)
本発明の別の実施形態では、本発明の高親和性抗体は、哺乳動物(または他の動物)の、好ましくはヒトHMG1ポリペプチドのHMG1AボックスまたはHMG1Bボックスのいずれかを含むか、あるいはそれからなる(または本質的にそれからなる)ポリペプチドに特異的に結合する。ヒトおよび他の動物のHMG1AボックスポリペプチドおよびHMG1Bボックスポリペプチドのアミノ酸配列は、高度に保存されており、かつ、当技術分野において周知である(例えば、US20040005316、US6,468,533、US6,448,223、およびUS20040053841を参照されたい)。
ヒトHMGB1 Aボックスアミノ酸配列(配列番号3)
PTGKMSSYAFFVQTCREEHKKKHPDASVNFSEFSKKCSERWKTMSAKEKGKFEDMAKADKARYEREMKTYIPPKGET
ヒトHMGB1 Bボックスアミノ酸配列(配列番号4)
FKDPNAPKRLPSAFFLFCSEYRPKIKGEHPGLSIGDVAKKLGEM
WNNTAADDKQPYEKKAAKLKEKYEKDIAAY
本発明のさらに別の実施形態では、本発明の高親和性抗体は、哺乳動物(または他の動物)の、好ましくはヒトHMG2ポリペプチドのHMG2AボックスまたはHMG2Bボックスのいずれかを含むか、あるいはそれからなる(または本質的にそれからなる)ポリペプチドに特異的に結合する。ヒトおよび他の動物のHMGボックスポリペプチドのアミノ酸配列は、高度に保存されており、かつ、当技術分野において周知である。例えば、Jantzen et al., 1990, Nature 344:830-6、Kolodrubetz 1990, Nucleic Acids Res.18:5565、Laudet et al., 1993, Nucleic Acids Res. 21:2493-501、およびThomas et al., 2001, Trends Biochem Sci. 26:167-74を参照されたい。
ヒトHMGB2 Aボックス(配列番号22)
PRGKMSSYAFFVQTCREEHKKKHPDSSVNFAEFSKKCSERWKTMSAKEKSKFEDMAKSDKARYDREMKNYVPPKGDK
ヒトHMGB2 Bボックス(配列番号23)
KKKDPNAPKRPPSAFFLFCSEHRPKIKSEHPGLSIGDTAKKLGEMWSEQSAKDKQPYEQKAAKLKEKYEKDIAAY
また、HMG1および/またはHMG2のAボックスおよびBボックスの両方に由来するアミノ酸残基を含むか、あるいはそれからなる(または本質的にそれからなる)エピトープに特異的に結合する抗体も、本発明に包含される。AボックスBボックスの両方に由来するアミノ酸残基に由来するエピトープは、AボックスおよびBボックスの連結物に由来する直鎖状ポリペプチドであってよく、または、AボックスおよびBボックスの両方に由来するアミノ酸を含む3次元構造のポリペプチドから生じてもよい。
本発明の別の実施形態では、本発明の高親和性抗体は、ヒト(または他の動物の)HMGB1のポリペプチド断片を含むか、あるいはそれからなる(または本質的にそれからなる)抗原性HMGB1ポリペプチド断片に特異的に結合する。
本発明の別の実施形態では、本発明の高親和性抗体は、ヒト(または他の動物の)HMGB2のポリペプチド断片を含むか、あるいはそれからなる(または本質的にそれからなる)抗原性HMGB2ポリペプチド断片に特異的に結合する。
本発明の高親和性抗体が、アセチル化HMG1および/または非アセチル化HMG1ならびにその抗原性断片に特異的に結合し得ることが、具体的に企図される。また、本発明の高親和性抗体が、これら2種の型を区別できる可能性があることも、具体的に企図される。また、本発明の高親和性抗体が、アセチル化HMG2および/または非アセチル化HMG2ならびにその抗原性断片に特異的に結合し得ることも、企図される。また、本発明の高親和性抗体が、これら2種の型を区別できる可能性があることも、具体的に企図される。
一実施形態では、本発明の高親和性抗体は、HMG1に結合し、かつ、HMG1とPAMPの相互作用を阻止する。別の実施形態では、本発明の高親和性抗体は、HMG1に結合し、かつ、HMG1:PAMP複合体とパターン認識受容体/分子(本明細書において「PRM」とも呼ばれる)との相互作用を阻止する。別の実施形態では、本発明の高親和性抗体は、HMG1に結合し、かつ、HMG1とパターン認識受容体/分子(本明細書において「PRM」とも呼ばれる)との相互作用を阻止する。さらに別の実施形態では、本発明の高親和性抗体は、HMG1に結合し、かつ、HMG1:PAMP複合体とRAGEの相互作用を阻止する。
本発明の特定の実施形態では、HMG1およびその抗原性断片に特異的に結合する抗体は、ヒト化抗体またはヒト抗体である。本発明の別の特定の実施形態では、HMG2およびその抗原性断片に特異的に結合する抗体は、ヒト化抗体またはヒト抗体である。
本発明の別の実施形態は、10-5M未満、または10-6M未満、または10-7M未満、または10-8M未満、または10-9M未満、または10-10M未満、または10-11M未満、または10-12M未満、または10-13M未満の解離定数、すなわちKd(koff/kon)で、HMG1およびその抗原性断片に特異的に結合する抗体である。
本発明のさらに別の実施形態は、10-5M未満、または10-6M未満、または10-7M未満、または10-8M未満、または10-9M未満、または10-10M未満、または10-11M未満、または10-12M未満、または10-13M未満の解離定数、すなわちKd(koff/kon)で、HMG2およびその抗原性断片に特異的に結合する抗体である。
別の実施形態では、本発明の抗体は、1×10-3s-1未満、または3×10-3s-1未満のKoffで、HMG1および/またはその抗原性断片に結合する。他の実施形態では、抗体は、10-3s-1未満、5×10-3s-1未満、10-4s-1未満、5×10-4s-1未満、10-5s-1未満、5×10-5s-1未満、10-6s-1未満、5×10-6s-1未満、10-7s-1未満、5×10-7s-1未満、10-8s-1未満、5×10-8s-1未満、10-9s-1未満、5×10-9s-1未満、または10-10s-1未満のKoffで、HMG1およびその抗原性断片に結合する。
さらに別の実施形態では、本発明の抗体は、1×10-3s-1未満、または3×10-3s-1未満のKoffで、HMG2および/またはその抗原性断片に結合する。他の実施形態では、抗体は、10-3s-1未満、5×10-3s-1未満、10-4s-1未満、5×10-4s-1未満、10-5s-1未満、5×10-5s-1未満、10-6s-1未満、5×10-6s-1未満、10-7s-1未満、5×10-7s-1未満、10-8s-1未満、5×10-8s-1未満、10-9s-1未満、5×10-9s-1未満、または10-10s-1未満のKoffで、HMG2およびその抗原性断片に結合する。
別の実施形態では、本発明の抗体は、少なくとも105M-1s-1、少なくとも5×105M-1s-1、少なくとも106M-1s-1、少なくとも5×106M-1s-1、少なくとも107M-1s-1、少なくとも5×107M-1s-1、または少なくとも108M-1s-1、または少なくとも109M-1s-1の結合速度定数、すなわちkon速度で、HMG1および/またはその抗原性断片に結合する。
別の実施形態では、本発明の抗体は、少なくとも105M-1s-1、少なくとも5×105M-1s-1、少なくとも106M-1s-1、少なくとも5×106M-1s-1、少なくとも107M-1s-1、少なくとも5×107M-1s-1、または少なくとも108M-1s-1、または少なくとも109M-1s-1の結合速度定数、すなわちkon速度で、HMG2および/またはその抗原性断片に結合する。
本発明の高親和性抗体は、HMG1に特異的に結合し得るが、HMG2には結合し得ないことか、またはHMG2に特異的に結合し得るが、HMG1には結合し得ないことが企図される。本発明の高親和性抗体が、HMG1およびHMG2の両方に特異的に結合し得ること(例えば、HMG1およびHMG2の両方に存在するエピトープを特異的に認識した抗体)も、さらに企図される。本発明の高親和性抗体が、HMG1またはHMG2のいずれかに特異的に結合し得、かつ、それぞれ、HMG2またはHMG1と交差反応し得ることが企図される。本発明の高親和性抗体が、同じ結合親和性または異なる結合親和性のいずれかでHMG1およびHMG2に結合することも、さらに企図される。
本発明の高親和性抗体には、合成抗体、モノクローナル抗体、組換えによって作製された抗体、細胞内発現抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、合成抗体、一本鎖Fv(scFv)、Fab断片、F(ab')断片、ジスルフィド結合Fv(sdFv)(二重特異性sdFvを含む)、および抗イディオタイプ(抗Id)抗体、ならびに上記のいずれかのエピトープ結合断片が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
本発明のさらなる非排他的実施形態は、特定の等電点(pI)や融解温度(Tm)などいくつかの好ましい生化学的特徴を有する本発明の高親和性抗体を含む。
一実施形態では、本発明の高親和性抗体は、5.5〜9.5の範囲にわたるpIを有する。
一実施形態では、本発明の高親和性抗体は、約65℃〜約120℃の範囲にわたるTmを有する。
本発明の特定の実施形態は、高い親和力でHMG1に特異的に結合する特定の抗体(およびその断片)も含み、これらは、米国微生物株保存機関(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション;American Type Culture Collection)(10801 University Boulevard、マナッサス、バージニア州、20110-2209)に寄託され、ATCC寄託番号PTA-6142(2004年8月4日に寄託)、PTA-6143(2004年8月4日に寄託)、PTA-6259(2004年10月19日に寄託)、およびPTA-6258(2004年10月19日に寄託)(本明細書においてそれぞれ、「S2」、「S6」、「S16」、および「G4」とも呼ばれる)を割り当てられている。これらの寄託物は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約の規定に従って維持される。参照される株は、ブダペスト条約の規定に従って維持されるため、ブダペスト条約に加盟している特許庁は利用可能となる。
本発明の他の特定の実施形態は、高い親和力でHMG1に特異的に結合し、かつ、本明細書において開示される可変領域のうちの少なくとも1つを含む特定の抗体(およびその断片)も含む(例えば、図2A〜2Jならびに配列番号5〜20、24〜27、および30〜73を参照されたい)。本明細書において開示される抗体のCDRのうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つ有する抗体は、本発明の特定の実施形態である(例えば、図2A〜Jの下線を引いたCDRおよび配列番号74〜103を参照されたい)。寄託された抗体のCDRのうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または6つすべてを有する抗体は、本発明の特定の実施形態である。これらの抗体(およびその断片)をコードする単離されたポリヌクレオチドもまた、本発明の企図された実施形態である。
さらに、本明細書において開示する抗HMG1抗体と同じエピトープ(例えば、HMG1ペプチド91〜169または150〜183内のエピトープ)に特異的に結合する任意の抗体も、本発明に含まれる。特定の実施形態では、寄託された抗体と同じエピトープに特異的に結合する抗体が、本発明に含まれる。これらの抗体が、少なくとも等しい親和力、またはより大きな親和力、もしくはより少ない親和力で、寄託された抗体と同じエピトープに結合することが、具体的に企図される。これらの抗体(およびその断片)をコードする単離されたポリヌクレオチドもまた、本発明の特定の実施形態である。
本発明の高親和性抗体のいずれかをコードする単離されたポリヌクレオチドは、本発明の実施形態として含まれる。
他の実施形態では、本発明は、RAGEアンタゴニスト(本明細書において、「本発明のRAGEアンタゴニスト」または単に「RAGEアンタゴニスト」と呼ばれる)も提供する。いくつかの実施形態では、本発明のRAGEアンタゴニストは、HMG1および/またはHMG1:PAMP複合体とRAGEとの相互作用を阻害する。いくつかの実施形態では、本発明のRAGEアンタゴニストは、1種または複数種のTLRリガンドによって刺激されるTLRシグナル伝達のHMG1を介した増強を阻害する。いくつかの実施形態では、本発明のRAGEアンタゴニストは、HMG1:PAMP複合体とRAGEの相互作用を阻害する。他の実施形態では、本発明のRAGEアンタゴニストは、HMG1-PAMPの内部移行を阻害する。本発明のRAGEアンタゴニストは、RAGEに直接結合し得、かつ/または、HMG1および/もしくはTLR、および/もしくはHMG1:PAMP複合体、および/もしくはRAGE/HMG1/TLR複合体に結合し得ることが企図される。
さらに別の実施形態では、本発明は、RAGEアンタゴニストを投与することによってHMG1および/またはHMG1:PAMP複合体とRAGEとの相互作用を阻害する方法を提供する。
一実施形態では、本発明の高親和性抗体は、RAGEアンタゴニストである。企図される他のRAGEアンタゴニストには、可溶性RAGE(例えば、ある種のRAGE断片、RAGE-Fc融合タンパク質など)およびHMG1アンタゴニスト(例えば、HMG1A-ボックス)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
他の実施形態では、本発明は、製薬上許容される賦形剤中に本発明の高親和性抗体を含む組成物、例えば、医薬組成物を対象としている。さらに別の実施形態では、本発明は、製薬上許容される賦形剤中に本発明のRAGEアンタゴニストを含む組成物、例えば、医薬組成物を対象としている。
特定の実施形態では、組成物は、HMG1のAボックス(例えば、配列番号3内のエピトープ)に特異的に結合する本発明の高親和性抗体を含む。別の特定の実施形態では、組成物は、HMG1のBボックス(例えば、配列番号4、28、29内のエピトープ)に特異的に結合する本発明の高親和性抗体を含む。さらに別の特定の実施形態では、組成物は、HMG1および/またはHMG2のAボックスおよびBボックスの両方に由来するエピトープに特異的に結合する本発明の高親和性抗体を含む。本発明の組成物が、本発明の高親和性抗体の組合せ、例えば、Aボックスに特異的に結合する抗体およびBボックスに特異的に結合する抗体の組合せを含み得ることも、企図される。
本発明の組成物は、単独で、または、ステロイド、他の抗炎症性分子、細胞傷害性薬物、もしくは他の抗体治療薬など他の有効な治療的物質および/もしくは補助物質と組み合わせて、本発明の高親和性抗体を含んでよい。より具体的には、本発明の組成物は、初期敗血症メディエーターのアンタゴニストを含んでよい。一実施形態では、初期敗血症メディエーターのアンタゴニストは、TNF、IL-1α、IL-1β、MIF、およびIL-6からなる群から選択されるサイトカインのアンタゴニストである。
本発明の組成物は、単独で、または、それだけには限らないが、外科手術、放射線療法、および化学療法を含む、癌および関連した状態に対する他の有効な治療戦略と組み合わせて、利用され得る。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、放射線療法において放射線に対する腫瘍細胞の感受性を高めるにあたって、かつ/または、化学療法剤による腫瘍への損傷を増強および/もしくは促進するにあたって、有用であり得る。本発明の組成物はまた、多剤耐性の腫瘍細胞を感受性にするためにも有用であり得る。
本発明の別の実施形態では、本明細書において説明する組成物は、急性の炎症状態および慢性の炎症状態の両方を含めて、炎症性サイトカインカスケードの活性化に媒介されるか、またはそれを特徴とする状態を阻害し得る。
本発明のさらに別の実施形態では、本明細書において説明する組成物は、CLP敗血症動物モデル(例えば、CLPマウスモデルまたはCLP子ブタモデル)において、対照組成物よりも、(少なくとも10%または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)、保護性が高い。
本発明のさらに別の実施形態では、本明細書において説明する組成物は、関節炎動物モデル(例えば、AIAラットモデル、受動的(passive)CIAマウスモデル、または能動的(active)CIAマウスモデル)において、対照組成物よりも、(少なくとも10%または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)、保護性が高い。
本発明のさらに別の実施形態では、本明細書において説明する組成物は、関節炎動物モデル(例えば、AIAラットモデル、受動的CIAマウスモデル、または能動的CIAマウスモデル)において、対照組成物よりも、(少なくとも10%または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)多く、骨量減少および/または軟骨損傷を低減させる。
本発明のさらに別の実施形態では、本明細書において説明する組成物は、ヒトにおいて、対照組成物よりも、(少なくとも10%または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)多く、骨量減少および/または軟骨損傷を低減させる。
本発明の別の実施形態では、本明細書において説明する組成物は、関節炎げっ歯動物モデルにおいて、レンブレル(Renbrel)(登録商標)(メトトレキサートを併用または併用しない)よりも、(少なくとも10%または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)、保護性が高い。
本発明のさらに別の実施形態では、本明細書において説明する組成物は、ヒトにおいて、エンブレル(Enbrel)(登録商標)(メトトレキサートを併用または併用しない)よりも、(少なくとも10%または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)、保護性が高い。
本発明のさらに別の実施形態では、本明細書において説明する組成物は、腹膜炎マウスモデルにおいて、対照組成物よりも、(少なくとも10%または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)、保護性が高い。
別の実施形態では、本明細書において説明する組成物は、関節炎動物モデル(例えば、AIAラットモデル、受動的CIAマウスモデル、または能動的CIAマウスモデル)において、対照組成物よりも、(少なくとも10%または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)多く、骨化過剰を減少させる。
本発明のさらに別の実施形態では、本明細書において説明する組成物は、ヒトにおいて、対照組成物よりも、(少なくとも10%または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)多く、骨化過剰を減少させる。
本発明の他の企図される実施形態は、関節炎、例えば、関節リウマチ、破骨細胞を媒介とした疾患、または関節の他の炎症性疾患を治療または予防する方法であって、本明細書において説明する抗体組成物を投与するステップを含む方法を含む。
別の実施形態では、本発明は、関節炎、例えば、関節リウマチ、破骨細胞を媒介とした疾患、または他の炎症性疾患を治療または予防する方法であって、抗体の結合親和性に関わらず、HMG1またはその抗原性断片(例えば、HMG Bボックス)に特異的に結合する任意の抗体(または抗体組成物)を投与するステップを含む方法を含む。
別の実施形態では、本発明は、関節炎、例えば、関節リウマチ、破骨細胞を媒介とした疾患、または他の炎症性疾患を治療または予防する方法であって、抗体の結合親和性に関わらず、HMG2またはその抗原性断片(例えば、HMG Bボックス)に特異的に結合する任意の抗体(または抗体組成物)を投与するステップを含む方法を含む。
別の実施形態では、本発明は、関節炎、例えば、関節リウマチ、破骨細胞を媒介とした疾患、または他の炎症性疾患を治療または予防する方法であって、抗体の結合親和性に関わらず、HMG1および/もしくはHMG2またはその抗原性断片(例えば、HMG Bボックス)に特異的に結合する抗体の組合せ(または抗体組成物)を投与するステップを含む方法を含む。
別の実施形態では、本発明は、異常な骨沈着に関連した疾患、例えば、強直性脊椎炎、未分化型脊椎関節症、若年性脊椎関節炎、または骨化過剰に関連した他の疾患を治療または予防する方法であって、抗体の結合親和性に関わらず、HMG1またはその抗原性断片(例えば、HMG Bボックス)に特異的に結合する任意の抗体(または抗体組成物)を投与するステップを含む方法を含む。
別の実施形態では、本発明は、治療または予防する方法を含み、本発明は、異常な骨沈着に関連した疾患、例えば、強直性脊椎炎、未分化型脊椎関節症、若年性脊椎関節炎、または骨化過剰に関連した他の疾患を治療または予防する方法であって、抗体の結合親和性に関わらず、HMG2またはその抗原性断片(例えば、HMG Bボックス)に特異的に結合する任意の抗体(または抗体組成物)を投与するステップを含む方法を含む。
別の実施形態では、本発明は、治療または予防する方法を含み、本発明は、異常な骨沈着に関連した疾患、例えば、強直性脊椎炎、未分化型脊椎関節症、若年性脊椎関節炎、または骨化過剰に関連した他の疾患を治療または予防する方法であって、抗体の結合親和性に関わらず、HMG1および/もしくはHMG2またはその抗原性断片(例えば、HMG Bボックス)に特異的に結合する抗体の組合せ(または抗体組成物)を投与するステップを含む方法を含む。
本発明のさらに別の実施形態では、本明細書において説明する組成物は、ヒトまたはSCIげっ歯動物モデルにおいて、対照組成物よりも、(少なくとも10%、または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)多く、脊髄損傷(SCI)の重症度を改善する。
他の特定の実施形態において、本発明は、虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍、および十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵炎、潰瘍性結腸炎、偽膜性結腸炎、急性結腸炎、および虚血性結腸炎、憩室炎、喉頭蓋炎、アカラシア、胆管炎、胆嚢炎、肝炎、クローン病、腸炎、ウィップル病、喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、免疫複合体病、臓器虚血、再灌流障害、臓器壊死、枯草熱、敗血症、敗血症、エンドトキシンショック、カヘキシー、異常高熱症、好酸球性肉芽腫、肉芽腫症、サルコイドーシス、敗血性流産、精巣上体炎、膣炎、前立腺炎、尿道炎、気管支炎、肺気腫、鼻炎、嚢胞性線維症、間質性肺炎、塵肺症、肺胞炎、細気管支炎、咽頭炎、胸膜炎、副鼻腔炎、インフルエンザ、呼吸器合胞体ウイルス感染症、ヘルペス感染症、HIV感染症、B型肝炎ウイルス感染症、C型肝炎ウイルス感染症、播種性菌血症、デング熱、カンジダ症、マラリア、フィラリア症、アメーバ症、包虫嚢胞、熱傷、皮膚炎、皮膚筋炎、日焼け、じんま疹、いぼ、膨疹、血管炎(vasulitis)、脈管炎、心内膜炎、動脈炎、アテローム性動脈硬化症、血栓静脈炎、心膜炎、心筋炎、心筋虚血症、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、アルツハイマー病、セリアック病、うっ血性心不全、再狭窄、COPD成人呼吸窮迫症候群、髄膜炎、脳炎、多発性硬化症、脳梗塞、脳塞栓、ギラン・バレー症候群、神経炎、神経痛、脊髄損傷、麻痺、ブドウ膜炎、関節炎、関節痛、骨髄炎、筋膜炎、パジェット病、痛風、歯周病、関節リウマチ、滑膜炎、重症筋無力症、甲状腺炎(thryoiditis)、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、ベーチェット症候群、同種移植拒絶、移植片対宿主疾患、I型糖尿病、強直性脊椎炎、ベルジェ病、ライター症候群、およびホジキン病など、慢性の状態も急性の状態も含めて、多様な炎症状態を治療および予防するために本発明の組成物および抗体を投与および使用する方法を対象としている。
他の特定の実施形態では、本発明は、骨化過剰に関連した疾患を治療および予防するために本発明の組成物および抗体を投与および使用する方法を対象としている。
他の特定の実施形態では、本発明は、強直性脊椎炎、未分化型脊椎関節症、若年性脊椎関節炎、反応性関節炎、および腸疾患に基づく関節炎など異常な骨沈着に関連した疾患を治療および予防するために本発明の組成物および抗体を投与および使用する方法を対象としている。
他の特定の実施形態では、本発明は、脊椎披裂、パジェット病、乳房パジェット病、線維性骨異形成、マクキューン・オールブライト症候群、鎖骨頭蓋(cleidiocranial)異形成症、エリス・ファンクレフェルト症候群、ラッセル・シルバー症候群、オリエ病、マフッチ症候群、ランガー・ギーディオン症候群、フライバーグ病、セーバー病、ショイエルマン病、カムラチ・エンゲルマン症候群、特発性骨溶解症、濃化異骨症(pycnodysotosis)、骨形成不全症、マルファン症候群、副甲状腺機能亢進症、くる病、ケルビム症、開花性骨異形成症、骨軟化症、骨形成異常(Oosteodystrophy)、線維性骨形成異常、耳硬化症、ファンコニー症候群、進行性骨化性線維異形成症、骨硬化症、大理石骨病、ペルテス病、脊柱側弯症、骨格性フッ素症、頭蓋・骨幹端(craniaometaphyseal)異形成症、外骨腫、骨軟骨腫症など、異常な骨代謝に関連した状態を治療および予防するために本発明の組成物および抗体を投与および使用する方法を対象としている。
他の特定の実施形態では、本発明は、骨腫、ユーイング肉腫、軟骨肉腫(chrondosarcoma)、および骨肉腫など、骨の癌に関連した状態を治療および予防するために本発明の組成物および抗体を投与および使用する方法を対象としている。
他の特定の実施形態では、本発明は、肥大性骨関節症、ソレンテ・ゴール(Solente-Gole)症候群、ファン・ブッヘム病、および常染色体優性骨硬化症など骨芽細胞の機能障害に関連した状態を治療および予防するために本発明の組成物および抗体を投与および使用する方法を対象としている。
本発明はまた、哺乳動物細胞からの炎症誘発性サイトカインの放出を阻害する方法も対象としている。この方法は、細胞からの炎症誘発性サイトカインの放出を阻害するのに十分な量の本発明の抗体または抗体組成物で細胞を処理するステップを含む。これらの実施形態では、細胞は、それだけには限らないが、末梢血単球およびマクロファージを含めて、炎症誘発性サイトカインを放出することができる任意の細胞である。さらに、炎症誘発性サイトカインは、TNF、IL-1α、IL-1β、MIF、およびIL-6からなる群から選択され得る。特定の実施形態では、細胞はマクロファージであり、かつ、炎症誘発性サイトカインは、TNF、IL-1α、IL-1β、MIF、およびIL-6からなる群から選択される。一実施形態では、これらの方法は、炎症性サイトカインカスケードの活性化を特徴とする状態に罹患しているか、またはそのリスクがある患者の細胞を治療するのに使用される。具体的な状態は、本明細書において列挙する。
関連した実施形態では、本発明は、炎症性サイトカインカスケードの活性化を特徴とする患者の状態を治療する方法を対象とする。この方法は、本発明の抗体または抗体組成物を患者に投与するステップを含む。具体的な状態は、すでに列挙した。
3.図面の簡単な説明
図1。ヒトHMG1およびHMG2のアラインメントを示す図である。Aボックスは実下線で示す。Bボックスは破下線で示す。
図2。本発明によるヒト抗HMG1抗体の重鎖(VH)および軽鎖(VL)可変領域のヌクレオチドおよび対応するアミノ酸配列を示す図である。下線部: CDR (Kabatによる定義)を示す。A)S2 VL(配列番号5〜6)、B)S2 VH(配列番号7〜8)、C)S6 VL(配列番号9〜10)、D)S6 VH(配列番号11〜12)、E)S16 VL(配列番号13〜14)、F)S16 VH(配列番号15〜16)、G)G4 VL(配列番号17〜18)、H)G4 VH(配列番号19〜20)、I)E11 VL(配列番号24〜25)、およびJ)Ell VH(配列番号26〜27)。パネルKは、G4およびS6の重鎖可変領域において推定されるRNAスプライシング部位を表す。パネルLは、G4の重鎖可変領域をコードする野生型の核酸配列(配列番号20)ならびに1箇所のドナースプライシング部位および2箇所のアクセプタースプライシング部位を除去する3箇所のサイレントヌクレオチド変化を含む変異配列(配列番号110)のアラインメントである。配列番号は、アミノ酸配列およびヌクレオチド配列を指すが、詳細については表4を参照のこと。
図3。ヒト抗HMB1抗体の物理的特性を示す図である。A)ヒト抗HMB1抗体パネルの等電点電気泳動法(IEF)は、異なるヒト抗HMG1抗体に対するpI値が広範に及ぶ(例えば、約7.77〜9.24)ことを示す。B)ヒト抗HMG1抗体パネルの示差走査熱量測定法(DSC)は、異なるヒト抗HMG1抗体に対するTm値が広範に及ぶ(例えば、約66℃〜90℃)ことを示す。C)IEFおよびDSC分析のグラフ表示は、pI値とTm値の間には直接的な相関が見られないことを示す。
図4。ヒト抗HMG1抗体の結合反応速度および特異性を示す図である。パネルA)複数のヒト抗HMG1抗体に対するHMG1捕捉ELISA法からの結合曲線で、該抗体が、大腸菌(E. coli)の産生する組換えHMG1に対して異なる親和性を有することを示す。パネルB)複数のヒト抗HMG1抗体に対するHMG1捕捉ELISA法からの結合曲線で、組換えHMG1(左)および天然核HMG1(右)の捕捉を比較することで、S16およびG4が、HMG1のいずれの形態にも結合するのに対し、S2、S6、およびS10は、天然核HMG1よりも組換えHMG1により結合しやすいことを示す。パネルC)複数のヒト抗HMG1抗体に対するHMG1捕捉ELISA法からの結合曲線で、天然核内、壊死性、および活性化の各HMG1の捕捉を比較することで、S6および、より低い程度ながらG4は、形態ごとに親和性が異なるのに対し、S16は同等であることを示す。パネルD)複数のヒト抗HMG1抗体に対する捕捉ELISA法からの結合曲線で、2種類の捕捉フォーマットである固定抗体(四角形)および固定HMG1 (三角形)を比較することで、E11および、より低い程度ながらS17が、可溶性HMG1により高い親和性を示すのに対し、G2、G4、G9、およびG12は、固定または可溶性HMG1に対する結合でほとんど差を示さなかったことを表す。パネルE)複数のヒト抗HMG1抗体の、HMG1およびHMG2に対する、相対値による結合親和性を示すELISA 法データで、本アッセイでは、被験抗体の大半(G2、G4、G9、G12、S3、G20、G34、G35、S2、S6、S10、S14、およびS17)がHMG1に特異性であるのに対して、S12およびS16はHMG1およびHMG2のいずれに対しても一定の結合を示し、E11はHMG2に対してより高い結合親和性を示すらしいことを表す。以上および他のアッセイからの非表示データを、表1にまとめる。パネルF)初期継代HUVECの非処理(左パネル)または100 ng/ml LPSによる処理(中パネル)を示す図である。4時間後、細胞を1%パラホルムアルデヒドで簡単に固定し、抗HMGB1 mAbのS6(上パネル)またはG4(下パネル)またはアイソタイプ対照(非表示)を添加した。検出抗体は、ヤギ抗ヒトIgG-FITCであった。DAPI染色法(右パネル)を用いて、細胞核を染色した。パネル G)ELISA法による、G4、S6およびアイソタイプ対照(R347)の、アジュバント誘発関節炎ラットからの関節溶解物(黒色バー)、敗血症性腹膜炎マウスからの血清(灰色バー)および組換えHMGB(斑点バー)への結合を、上パネルにプロットした。S16(レーン2)、S6(レーン3)またはG4(レーン4)を用いる、関節溶解物からの免疫沈降物(左下)または敗血症患者からの血清(右下)に対するウェスタンブロッティング法は、S6が、関節溶解物からはHMGB1を免疫沈降させないのに対し、敗血症血清からはより小型のHMGB1を沈降させることを示す。レーン5は胸腺HMGB1単独であり、レーン1はマジックマークタンパク質スタンダードである。
図5。HMG1 Bボックスエピトープマッピング試験についての図である。複数のヒト抗HMG1抗体に対する、HMG1 BボックスペプチドELISA法からの結合曲線を示す。 曲線は、S12、S16、およびG4が、HMG1ペプチド91〜169に結合することを示す(パネルA)。S12は、HMG1ペプチド150〜183にも結合する(パネルB)。残りの被験抗体(S2、S6、S10、G2、およびG9)は、本アッセイで調べたHMG1 Bボックスペプチドのいずれにも結合しない。パネルCは、上に示した各ドメインのアミノ酸残基番号をともなうHMGB1ドメイン(上パネル)のほか、G4(左パネル)およびS16(右パネル)の、HMGB1タンパク質の一部をなす多数のより小さなペプチドへの結合を表す。G4が、Bボックスペプチド91〜108および108〜138への一定の結合、およびC端テイルペプチド188〜216へのより強い結合を示すのに対し、S16は、Bボックスペプチド91〜108のほか、程度は劣るがペプチド166〜183および179〜186に結合する。
図6。多くのヒト抗HMG1抗体が、ヒトPBMCからのHMG1刺激サイトカイン放出を阻害することを示す図である。複数のヒト抗HMG1抗体(G9、S14、G20、S2、S6、およびS17)について、組換えHMG1が刺激するIL-1B、IL-6、およびTNF-a放出に対する阻害活性の代表的な用量反応曲線を、パネルAに示す。結果は、放出サイトカインのpg/ml(上グラフ)および阻害百分率(下グラフ)としてプロットした。その他の複数のヒト抗HMG1抗体(G4、S6、S16、およびS6+S16)およびRAGE-Fc融合タンパク質について、組換えHMG1が刺激するIL-6放出に対する阻害の用量反応曲線を、パネルBに示す。E11、S13、S16、S17、G4、G9、S6、RAGE-FcおよびAボックス融合タンパク質について、天然活性化HMG1が刺激するIL-6サイトカイン放出に対する阻害の代表的な用量反応曲線を、パネルCに示す。以上およびその他の非表示データから計算したIC50値を、表1にまとめる。
図7。マウスマクロファージ(mMO)において、複数のヒト抗HMG1抗体が、HMG1の刺激するサイトカイン遺伝子発現を阻害することを示す図である。バッファー、組換えHMG1 (E-HMGB1)単独、ならびにE-HMGB1およびヒトアイソタイプ対照(HuIgG)の併用、ヒト抗HMG1抗体(E11、G2、G4、S6、およびオリゴクローナル抗体)のほか、マウスおよびヒトRAGE-Fc融合タンパク質で処理したマウスマクロファージについて、IL-1β(左)またはTNF-a (右)の相対値による遺伝子発現量を示す。E11、G2、G4、およびオリゴクローナル抗体のほか、いずれのRAGE-Fc融合タンパク質も、IL-1β発現を大幅に阻害した。G2およびマウスRAGE-Fc融合タンパク質は、TNF-a発現を大幅に阻害した。以上および他の非表示データを、表1にまとめる。
図8。ヒト抗HMG1抗体のサブセットが、組換えHMG1のRAGEへの結合を阻害することを示す図である。ELISA法に基づく結合アッセイを用いて、HMG1のRAGE-Ig融合体への結合を測定した。多数のヒト抗HMG1抗体についての阻害百分率を示す。G2、G4、S10、S16、S2、およびS6が、HMG1のRAGEへの結合に対する顕著な阻害能を示すのに対し、被験濃度におけるE11、G12、G16、G20、G34、G9、オリゴクローナル抗体、S12、S14、およびS17は、阻害能を示さない。以上および他の非表示データを、表1にまとめる。
図9。E11が、TLR4活性化を部分的に阻害することを示す図である。細胞ベースのルシフェラーゼレポーターシステムを用いて、HMG1の誘発するTLR4活性化を測定した。培地のみ、組換えHMG1 (rHMGB)単独、ならびに、rHMG1およびS2、E11、S6、G4、S14またはポリクローナル抗体の併用で処理した細胞に対する、総ルシフェラーゼ活性を示す。E11は、HMG1の誘発するTLR4活性化に対して、顕著な阻害能を示した。以上および他の非表示データを、表1にまとめる。
図10。組換えHMG1のThp-1細胞への結合に対する阻害を示す図である。E11、G2、およびRAGE-Fc融合タンパク質による、組換えHMG1のThp-1細胞への結合に対する阻害を表す代表的な用量反応曲線を示す。以上および他の非表示データから計算したIC50値を、表1にまとめる。
図11。敗血症のマウスCLPモデルにおいて、ヒト抗HMG1抗体が保護的であることを示す図である。ヒト抗HMG1抗体またはヒトアイソタイプ対照抗体(R3-47)のいずれかによる処理を比較する、敗血症のマウスCLPモデルからの代表的な生存曲線を示す。G4 (パネルAおよびB)、S16 (パネルAおよびD)、S6 (パネルC)、E11およびオリゴクローナル(いずれもパネルD)の抗HMG1抗体は、生存率を最大60%改善することができる。
図12。複数の炎症性疾患モデルにおいて、HMG1値がアップレギュレートされることを示す図である。非投与受動CIAマウスから10日目に採取した前足中に存在するHMG1値は、正常マウスにおける存在値の少なくとも10倍上昇することがわかった(パネルA)。非処理能動CIAマウスからの後足部関節においては、HMGB1、RAGE、TLR2、TLR4、およびTLR9の相対値による遺伝子発現量が上昇する(右)のに対し、前足部関節においては、HMGB1、RAGE、およびTLR2のみが上昇する(左)ことがわかった(いずれもパネルB)。IL-1b、IL-6、およびTNF-aの相対値による遺伝子発現量は、非処理能動CIAマウスからの後足部(プロット)および前足部(プロット)関節のいずれにおいても上昇することがわかった(いずれもパネルC)。AIAラット足首部関節におけるHMGB1値の上昇(右上)は、足部炎症スコアの上昇(左上)および相対値による体重の低下(左下)のいずれとも相関する(いずれもパネルD)。黄色ブドウ球菌(S. aureus)チャレンジマウス血清中に存在するHMBG1、IL-1B、およびTNF-a値は、チャレンジ2時間後からHMGB1が一定の割合で上昇するのに応じて上昇することがわかる(パネルE)中で、TNF-aが、2時間後の早期ピークの後、約7時間後までにベースライン付近まで低下し、約12時間後に第二のピークを示したのに対し、IL-6は、約2時間後にピークに達した後、徐々に上昇した。ALIマウスからのBAL液中のHMGB1値は、LPS投与後50時間以内に16 ng/ml超まで上昇するが、約26時間後から最も顕著な上昇を示し(左)、BAL液中にみられる総細胞数増加の最大値(右)と相関する(いずれもパネルF)。パネルGは、PBS、ヒトアイソタイプ対照(HuIgG)、抗HMG1抗体G4、HMG1 Aボックス-Fc融合タンパク質、メトトレキサート(MTX)、MTX+HuIgG、MTX+Renbrel、およびMTX+G4投与後の、AIAラット足首部関節中に存在するHMGB1 (左上)およびIL-6 (左下)値を示す。HuIgG、G4、またはMTX+HuIgG投与後のAIAラット足首部関節中に存在するTNF-a (右上)値も示す。G4単独およびMTX+HuIgGまたはMTX+RenbrelもHMG1、IL-6、およびTNF-a値の低下を示すが、MTX+G4の併用が、最も顕著な低下を示す。以上のデータは、各種投与についての足部炎症スコアにおいて見られる低下と相関する(図16B参照)。
図13。関節炎の受動CIAマウスモデルにおいて、ヒト抗HMG1抗体が保護的であることを示す図である。パネルAは、MTXおよびRenbrel (左上)、ヒト抗HMG1抗体S6 (右上)およびG16 (左下)、ならびにHMG1 Aボックス-Fc融合タンパク質(右下)を投与した受動CIAマウスについて、時系列の足部炎症スコアを示す。MTX/Renbrel併用およびS6抗体のいずれもが臨床スコアを低下させたが、このモデルでは、S6の方がより顕著な効果を示した。前後両足部(パネルB)または前足部のみ(パネルC)についての組織学的検査により得られた骨(左上)、軟骨(右上)、および炎症(左下)スコアのプロットを示す。パネルDは、MTXおよびRenbrel (左上)、ヒト抗HMG1抗体S6 (右上)およびG16 (左下)、ならびにHMG1 Aボックス-Fc融合タンパク質(右下)投与マウスについて、経時的な体重指数を示す。臨床スコアについてみたように、MTX/Renbrel併用およびS6のいずれもが保護作用を示すが、S6の方がより有効であった。
図14。関節炎の受動CIAマウスモデルにおいて、ヒト抗HMG1抗体が保護的であることを示す図である。試験2 (パネルA)は、PBS、Renbrel、またはG4 (右)投与、およびPBS、G4、またはアイソタイプ対照抗体(左)投与受動CIAマウスについて、経時的な足部炎症スコアを示す。試験3 (パネルB)は、PBS、G4、またはアイソタイプ対照抗体投与受動CIAマウスについて、経時的な足部炎症スコアを示す。両試験ともに、正常マウスの臨床スコアも跡付けてプロットした。いずれの試験も、G4ヒト抗HMG1抗体に、本モデルにおける炎症に対する保護が可能であることを示す。試験2では、G4の方が、Renbrelよりも有効であった。
図15。関節炎の能動CIAマウスモデルにおいて、ヒト抗HMG1抗体が保護的であることを示す図である。PBS、アイソタイプ対照抗体、またはG4 (左グラフ)投与能動CIAマウス、およびPBSまたはRenbrel投与能動CIAマウス(右グラフ)について、経時的な足部炎症スコアを、パネルAに示す。アイソタイプ対照抗体およびG4抗体投与群について、時系列においてプロットした相対値による体重を、パネルBに示す。PBSを投与した正常マウスについてのスコアも、すべてのパネルにプロットする。本モデルにおいて、G4ヒト抗HMG1抗体は、Renbrelよりも炎症および体重低下のいずれに対しても、より良好な保護作用を示した。
図16。関節炎のAIAラットモデルにおいて、ヒト抗HMG1抗体が保護的であることを示す図である。PBS、アイソタイプ対照抗体、またはG4 (左)投与AIAラット、およびPBSまたはRenbrel投与CIAマウス(右)について、時系列において足部炎症スコアをプロットしたところ(いずれもパネルA、パネルBも参照)、本モデルでは、G4抗HMG1抗体が、PBS対照よりも約35%足部炎症スコアを低下させることができるのに対し、Renbrel単独は、PBS対照よりも25%足部炎症スコアを低下させるにとどまることを示した(パネルA)。メトトレキサートおよび第二の試薬(アイソタイプ対照、G4、またはRenbrel)を併用投与したAIAラットについて、時系列において足部炎症スコアをプロットしたところ(パネル16B)、MTXおよびG4併用の方が、G4単独およびMTX/Renbrel併用のいずれよりもさらに有効であることを示した。MTXおよびG4の投与は、足部炎症スコアを正常近くまで低下させた(パネルB)。G4単独よりも有効性の低かったHMG1 Aボックス-Fc融合タンパク質投与についても、足部炎症スコアを示した。Micro CT分析は、正常対照(パネルC、左)と比べ、骨膜下皮質骨の放射状突起および皮質の肥厚を証拠とする(パネルC、中)、アイソタイプIgG投与AIAラットにおける顕著な過骨症(パネルC、中)を明らかにする。過骨症は、G4投与により抑制される(パネルC、右)。過骨症、炎症、および関節損傷の重症度を、以上3群のそれぞれについて評価した(それぞれ、パネルD、上、左下、および右下)。アイソタイプIgG投与AIAラット(パネルE、中)と対照ラット(パネルE、左)との対比による炎症性病変の組織学的検討は、浮腫および脛距骨関節腔の肥大を示した。さらに、AIAラットを対照ラットと対比すると、炎症性細胞の動員が増加した。G4投与(パネルE、右)は、アイソタイプ対照(パネルE、中)と比べ、浮腫および関節腔の肥大を緩和したほか、関節部への炎症性細胞の動員を制限した。高用量Renbrelを投与したラットの足部炎症スコアは、G4単独投与でみられるのと同等の保護作用をもたらし、G4および高用量Renbrelの併用は、いずれかの単独投与よりも大幅な低下を示した(パネルF)。
図17。腹膜炎のマウスモデルにおいて、ヒト抗HMG1抗体が保護的であることを示す図である。腹膜炎を誘発する加熱不活性化黄色ブドウ球菌チャレンジマウスでの、96時間の経過における生存百分率を、G4が、PBSまたはアイソタイプ対照(R347)投与マウスよりも、約30%改善することを示す(パネルA)。抗体は、黄色ブドウ球菌を時点0分(三角)に投与したとする場合の時点-30分(星)に投与した。
図18。急性肺外傷(ALI)のマウスモデルにおいて、ヒト抗HMG1抗体が保護的であることを示す図である。G4またはE11のいずれかを投与したALIマウスからのBAL液中に回収された総細胞数は、アイソタイプ対照抗体(R347)投与マウスと比べ、約40%減少した。HMG1 Aボックス-Fc融合タンパク質は、回収総細胞数を23%減少させるに過ぎなかった。
図19。多発性硬化症(MS)試料のヒト脳組織におけるHMG1染色パターンを示す図である。A)1μg/mlアイソタイプ対照を用いる、活性化小グリアをともなうMSプラークのバックグラウンド染色、B)1μg/ml G16を用いる、活性化小グリアをともなう小グリア細胞質およびMSプラーク間質の特異的HMGB1染色、C)1μg/ml G16を用いる、脱髄、少数の活性化小グリアおよび多数のリンパ球をともなうMSプラークにおいてみられる染色の低下。
図20。微量のエンドトキシンを含む組換えHMG1 (rHMG1)が、IL-6サイトカイン放出を、ポリミキシンB (PMxB)の存在下(実線)または非存在下(点線)で同等に刺激したことを示す図である。ドナーX (左パネル)およびドナー13 (右パネル)について、同等の結果が見られた。
図21。Triton抽出HMG1が、サイトカイン放出を刺激しなかったことを示す図である。RAGEには、rHMG1 (実線)およびTriton抽出rHMG1 (点線)とも同程度に結合する(左パネル)。rHMGのみがIL-6放出を刺激した(右パネル)。
図22。HMG1とTLR4リガンドLPSとの相乗作用についての図である。左パネル)rHMG1によるヒトPBMCの処理(黒色バー)が、複数のサイトカイン(IL-6、MIP-1b、IL-8、およびTNF)放出を刺激したのに対し、Triton抽出HMG1で処理した細胞(白色バー)は、刺激を示さなかった。ただし、Triton抽出HMG1に準最適濃度LPSを併用して処理した細胞(縞模様バー)がHMG1処理で見られるのとほぼ同等のサイトカイン放出を示したのに対し、準最適濃度のLPS単独による処理(斑点バー)は、サイトカイン放出を刺激しなかった。右パネル)Triton抽出HMG1+LPSに抗TLR4抗体、または抗HMG1抗体E11、S16、もしくはG4のいずれかを併用して処理したヒトPBMCが、IL-6放出をほぼバックグラウンドレベルにまで低下させるのに対し、アイソタイプ対照抗体(R3、IgG2a)は低下させない。
図23。Triton抽出HMG1が、細胞内サイトカイン産生を刺激しない一方で、サイトカインmRNA値を上昇させうることを示す図である。A)染色細胞のフローサイトメトリーによる測定では、rHMG1で処理した細胞が、非処理細胞に比べ、細胞内IL-6レベル(上列)およびTNF-aレベル(下列)を上昇させたのに対し、Triton抽出rHMG1で処理した細胞の細胞内IL-6およびTNF-aレベルは、はるかに低い(左および中パネルを比較)。B)LPS、rHMG1、またはTx-HMGB1で処理した細胞は、いずれも、TNF-a、IL1-βおよびIL-6 mRNAレベルの上昇を示す。
図24。HMG1と他のTLRリガンドとの相乗作用を示す図である。rHMG1に以下の準最適濃度のTLRリガンド: TLR2-PAM3-CSK4、TLR3-ポリ(I:C)、TLR5-フラジェリン、TLR7-Imiquinod (イミキノド)、およびTLR9-CpGを併用(黒色バー)して処理した細胞は、HMG1単独 (縞模様バー)、または試験された各リガンドについてTLRリガンド単独(斑点バー)、のいずれかが誘発するよりもはるか大幅にIL-6放出を促進した(左パネル)。IL-12放出についても同様の反応が見られ、TLR7およびTLR9リガンドの場合に、最も顕著な促進が見られた(右パネル)。
図25。TLR4活性欠損細胞においてはみられないTx-HMGB1の相乗作用活性を示す図である。LPSと併用するTx-HMGB1は、正常マウス骨髄細胞におけるIL-6産生に対して、相乗作用効果を及ぼす。HeJ (TLR4欠損)マウスからの骨髄細胞においては、LPSシグナル伝達の促進が見られない。2つの別個の試験の結果を示す(右および左のパネル)。用いたLPS濃度を、横軸下に示す。
図26。組換えにより産生したHMG1 (rHMG1)が、TLRシグナル伝達を促進する微量の細菌DNAを含有することを示す図である。rHMG1がIFN-α放出を刺激し、ベンゾナーゼによる汚染DNA除去のための前処理が、この放出を低下させる。
図27。TRL4リガンドLPSのほか、rHMG1および天然HMG1もTNF-a mRNAを誘発する一方、rHMG1のみがTNF-aタンパク質放出を誘発することを示す図である。2時間後に、LPS、rHMG1、およびウシ胸腺から精製した天然HMG1が、TNF-a mRNAレベルを、それぞれ約66倍、43倍、および30倍に誘発した(上パネル)。rHMG1が、マウスマクロファージ上清中に存在するTNF-aを約10倍に誘発することがわかる一方、胸腺から精製した天然HMG1は、誘発を示さなかった(下パネル)。
図28。ヒト抗HMG1抗体E11が、天然(胸腺)HMG1のRAGEへの結合を阻害することを示す図である。ELISA法に基づく結合アッセイを用いて、ウシ胸腺から単離した天然HMG1のRAGE-Ig融合体への結合を測定した。被験濃度において、E11が、天然HMG1のRAGEへの結合に対する顕著な阻害能を示す一方、G4は阻害能を示さなかった。以上および他のアッセイからの非表示データを、表1にまとめる。
図29。天然HMG1が、TLR2、4、7、および9を介してシグナル伝達を促進することを示す図である。胸腺HMG1は、TLR7リガンドR837およびTLR9リガンドCpGが誘発する、IFNa (左上)、Rantes (右上)、IL-6 (左下)、およびIL-12p70 (右下)の放出を促進した。胸腺HMG1は、TLR4リガンドLPSが誘発するRantes、IL-6、およびIL-12p70の放出、ならびにTLR2リガンドPAM3が誘発するIFN-aおよびTNF-aの放出をも促進した。明色バーはリガンド単独、暗色バーはリガンド+HMG1を示す。
図30。抗HMG1抗体E11またはG4、あるいはヒトアイソタイプ対照が、CpG単独で処理したマウス骨髄細胞からのIFN-α放出を阻害しない(左下パネル)のに対し、CpGに胸腺HMG1を併用して処理した細胞からのIFN-α放出は、抗HMG1抗体E11が阻害するが、抗HMG1抗体G4またはアイソタイプ対照抗体は阻害しなかった(右下パネル)ことを示す図である。最適化した条件下における後続の試験において、RAGE-FcおよびAボックスのいずれもが、CpGに胸腺HMG1を併用して処理した細胞からのIFN-a放出を阻害することがわかる(右上パネル)。対照試験は、胸腺HMG1、または非刺激性CpG単独もしくは併用のいずれもが、IFN-a放出を刺激しないことを示し、胸腺HMG1が、CpG2216の刺激するIFN-a放出を促進することを確認する(左上パネル)。
図31。HMGB1が、LPSの刺激するTNF-a放出を促進すること(上パネル)、E11、G4、およびRage/Fcが、LPS+HMG1の誘発するTNF-a放出を阻害すること(右下)、E11は、LPS単独によるシグナル伝達も阻害すること(左下)、を示す図である。
図32。HMGB1によるTLRシグナル伝達の促進が、RAGEノックアウト細胞においては変化することを示す図である。パネルA)HMGB1による、TLR2、7、および9シグナル伝達を介するIFN-a放出の促進は、RAGEノックアウトマウス由来細胞において低下した(上パネル)。HMGB1による、TLR2、4、および9シグナル伝達を介するTNF-a放出の促進は、RAGEノックアウトマウス由来細胞において、ほぼ変化しないかまたは上昇した(下パネル)。パネルB)野生型から単離した全骨髄細胞(黒)またはRAGE欠損骨髄細胞(白)を、CpG-A (ODN 2336)単独(四角)、またはCPG-A/HMGB1複合体(丸、左上)もしくはCPG-A/Bボックス複合体(丸、右上)の濃度を上昇させて刺激したところ、RAGE欠損骨髄細胞の最大70%において、HMGBの促進するIFN-a放出が低下することがわかった。TLR9またはMyD88 欠損細胞から単離した細胞においては、CPG-A単独が刺激するIFN-a放出およびHMGB1/CPG-A複合体が刺激する放出の促進は検出できなかった(下パネル)。
図33。HMGB1/CpG/RAGEの結合を示す図である。左上は、ELISA法により、可溶性CpGが、固定HMBG1(四角)に直接的に結合するのに対し、固定対照IgG (ダイヤモンド)または固定RAGE/Fc融合体(三角)には結合しないことを示す。右上は、HMGB1が、CPG-A刺激性(黒ダイヤモンド)および同非刺激性(白ダイヤモンド)配列のいずれにも結合するのに対し、ランダムDNA配列(白三角)には結合しないことを示す。下は、Aボックスペプチド(白丸)が、CpGとHMGB1との相互作用を阻害するのに対し、対照ペプチドは阻害しない(黒丸)ことを示す。
図34。HMGB1/CpG複合体が、免疫反応を相乗作用的に刺激することを示す図である。パネルA。B6マウスの全骨髄細胞から単離したpDCを、CpG-A ODN2216単独(白丸)、または1μg/mlのHMGB1 (黒四角)または3μg/mlのHMGB1 (黒三角)との併用で24時間刺激し、ELISA法により、上清中のIFN-αおよびTNF-αタンパク質を測定した(それぞれ左および右パネル)。パネルB。非複合タンパク質であるAボックスHMGB1、BボックスHMGB1、またはCpG単独、あるいは、Aボックス/CpGまたはBボックス/CpGいずれかの複合体により細胞を刺激し、ELISA法によりIFN-a産生を測定した。BボックスHMGB1と複合させたCpG-Aで刺激した細胞からは、IFN-α産生の増大することがわかった。
図35。HMGB1/CpG複合体がRAGEに結合することを示す図である。左パネルは、ELISA法により、可溶性CpG単独が、固定対照IgG (白丸)または固定RAGE/Fc融合体(黒四角)に直接的に結合しないのに対し、可溶性HMGB1およびCpG複合体は、RAGE/Fc融合体(黒三角)に結合することを示す。右パネルは、HMGB1のRAGE/Fc (白ダイヤモンド)への結合が、0.003μM CpG-A (黒丸)、0.03μM CpG-A (黒三角)、または0.3μM CpG-A (黒四角)存在下において大幅に促進されたことを示す。
図36。CPG-A (左上)、RAGE (中上および左下)、TLR9および核(中下)の染色、ならびに、右端では、安定的にTLR9を発現し、RAGEをHMGB1およびCpG-Aで同時に刺激して導入したHEK293細胞において、TLR9およびRAGE (右下)と同様、CpG-AおよびRAGE (右上)も共局在化することを示す図である。
図37。HMGB1/CpG複合体が、RAGEおよびTLR9を動員することを示す図である。左パネルは、HMGB1およびCpGで同時に45分間刺激した細胞からRAGEがTLR9とともに免疫沈降し(レーン3)、90分間の刺激後にTLR9と会合したRAGE量が増加する(レーン4)ことを示す。培地のみで処理した細胞(レーン2)から、またはベクターのみを導入した細胞(レーン1)では、共沈殿が見られない。右パネルは、それぞれAlphascreenアクセプタービーズおよびドナービーズに連結したRAGE-FCおよびTLR9-Fcが、CpG-A (黒丸)の濃度を上昇させてインキュベートすると相互作用するが、CpG-B(白丸)ビーズでは相互作用しないことを示す。
図38。HMGB1単独(黒丸)、HMGB1+CpG DNA (黒四角)、S100単独(白丸)、S100+CpG DNA (白四角)による、IFN誘発を示す図である。
図39。HMGB1が、DNA IC中に存在し、RAGEを介してRF+B細胞に結合することを示す図である。パネルA)左: FITC抱合抗IgG2a抗体で検出する通り、MRL使用済み上清(太線)でプレインキュベートすると、PL2-3単独(細線)のAM14 FcγRIIB-/-B細胞への結合が増大した。B細胞表面への結合は、上清単独 (影付き曲線)では生じない。右:クロマチンICにおけるHMGB1の存在は、ビオチニル化抗HMGB1抗体により検出した。HMGB1は、AM14 B細胞と結合したクロマチンIC (太線)中には存在するが、上清単独(影付き曲線)またはPL2-3単独(細線)でインキュベートしたB細胞上では検出されない。パネルB)抗IgG2a (左、影付き曲線)および抗HMGB1(右、影付き曲線)が検出する通り、RAGE-Fcの添加は、クロマチンICのAM14 B細胞への結合を阻害する。対照ヒトIgG1の添加は、クロマチンICの結合に影響を及ぼさなかった(いずれのパネルとも、細線)。パネルC)それぞれ、抗IgG2aまたは抗HMGB1 mAbのいずれかが検出する通り、培地のみ、上清単独、PL2-3単独、PL2-3+上清、PL2-3+上清+RAGE-Fc、およびPL2-3+上清+対照IgG1の結合についての中央値蛍光強度。
図40。RAGE-FcおよびAボックス拮抗剤が、DNA IC複合体の誘発するB細胞活性化を阻害することを示す図である。DNA免疫複合体(左上)で刺激した精製済みAM14 B細胞をRAGE-FC (黒丸)で処理すると、対照ヒトFc(白丸)で処理した細胞と比べ、増殖(24時間後におけるチミジン取り込みで測定)が低下したが、Pam3CysK4 (右上)で刺激した該細胞では増殖が低下しなかった。DNA免疫複合体(黒丸)で刺激したB細胞(下)は、Aボックス拮抗剤存在下で増殖が低下するが、Pam3CysK4 (白丸)で刺激した該細胞は増殖が低下しないことがわかった。
図41。培地のみ(M)または抗二重らせんDNA免疫複合体を含有する20%ループス血清(黒)でPBMCを刺激し、I型インターフェロン遺伝子誘発の評価として、定量PCRによりIFIT mRNAを測定した結果を示す図である。表示の抗HMGB1 mAbまたはRAGE-Fc(影付きバー)、あるいはアイソタイプ対照(白色バー)のいずれかにより、細胞を処理した。試料数4〜5の平均+semとしてデータを示し、「*」は、p<0.05における有意性を示す。
図42。adv-IFN-α促進ループスモデルにおいて、抗HMGB1抗体G4(三角)で処理したマウスが、対照抗体(丸)で処理したマウスと比べ、蛋白尿の発症が遅延することを示す図である。
4.表の簡単な説明
表1 抗体の特徴および寄託情報
表2 保存的アミノ酸置換のファミリー
表3 TLRリガンド
表4 配列表の説明
表5 受動的CIAマウスモデルの処置プロトコルの説明
表6 AIAラットモデルの処置プロトコルの説明
表7 腹膜炎モデルの処置プロトコルの説明
5.発明の詳細な説明
本発明は、HMG1が、病原体関連分子パターンを有する分子(例えば、LPS、細菌核酸)と協働して、パターン認識受容体/分子(例えば、Toll様受容体(TLR))を介したシグナル伝達およびサイトカイン分泌を誘導するという発見に部分的に基づいている。HMG1は、パターン認識受容体/分子(PRM)のToll様受容体(TLR)ファミリーのメンバーを介してシグナルを伝達することによって、炎症カスケードの強力なメディエーターとして作用する。例えば、米国特許公報US20040053841を参照されたい。PRM(例えば、TLR)は、細胞壁脂質、ペプチドグリカン、およびグアニンオリゴヌクレオチドのストレッチなど、微生物の一般的特徴を認識する。認識される構造は、病原体関連分子パターンと呼ばれ、また、病原体関連分子パターンを含むか、あるいはそれらからなる分子は、まとめて、本明細書においてPAMPと呼ばれる。様々なPRM(例えばTLR)を刺激すると、多数のシグナル伝達経路が活性化され、その結果、炎症カスケードが活性化され、先天性免疫が刺激され、かつ、抗原特異的な獲得免疫が発生し得る。PRM(例えばTLR)およびそれらのリガンドは、当技術分野において周知である(例えば、MedzhitovおよびJaneway, 2002, Science, 296:298-300、Akira et al., 2004, Nat. Rev. Immunol. 4:499-511を参照されたい)。
特定の理論に拘泥するものではないが、HMG1は、TLRリガンドなどのPAMP(例えば、LPS、dsRNA、PolyI:C、イミキノド(imiquinod)、CpG)と一緒に作用すると思われ、かつ、これらの分子および他の炎症誘発性因子の活性のエンハンサーとして作用し得る。特に、本発明は、HMG1が、TLRリガンドなどのPAMP(例えばCpG)に直接結合し、かつ、その受容体へのPAMPの送達を促進するシャペロンとして作用し得るという発見に基づいている(以下の実施例13、14、および15を参照されたい)。例えば、HMG1は、細胞外PAMPに結合し、かつ、それを細胞内受容体に導く(chaperone)ことができ、これは、それだけには限らないが、PRM、HMG1受容体(例えばRAGE)、または受容体の組合せを含む、1種または複数種の受容体との相互作用を介して起こることができる。あるいは(または組み合わせて)、HMG1は、細胞内に存在するPAMP(例えば、感染中に存在するウイルス核酸)に結合し、かつ、細胞内受容体へのPAMPの結合および/または送達を促進し得る。
特に、HMG1が、CpG DNAに結合し、かつCpG DNAとの高親和性複合体を形成し、TLR9/MyD88およびRAGEに依存的な経路を介してサイトカイン産生を促進することが発見されている(下記の実施例15を参照されたい)。さらに、HMGB1-RAGEに依存的な相互作用が、DNA免疫複合体による刺激後の自己反応性B細胞の活性化に関与していること、また、狼瘡の血漿中に存在するDNA複合体によるI型インターフェロン遺伝子誘導の調節にも関与していることが発見されている(下記の実施例16を参照されたい)。TLR9は、いくつかの様々な細胞型、最も著しくは、pDCによって発現され、TLR9活性化後に産生されるIFNαの大多数の原因となる(Ronnblom, L., et al., 2003, Autoimmunity 36, 463-472;Asselin-Paturel, C.およびTrinchieri, G., 2005, J. Exp. Med. 202, 461-465)。さらに、研究により、HMGB1が、CpG ODNによる刺激後に、pDCおよび骨髄系樹状細胞の両方によって分泌され、かつ、オートクラインの様式でIFN-αの産生を調節することも示された。I型インターフェロン(例えばIFN-α)は、全身性エリテマトーデス(SLE)およびシェーグレン病を含めて、いくつかの自己免疫障害の病因において中心的役割を果たしていると考えられている(Jego, G. et al. 2003, Immunity 19, 225-234、Blanco, P. et al., 2001, Science 294, 1540-1543、Crow, M.K., 2005, Curr. Rheumatol. Rep. 7, 463-468、Gottenberg, J.E. et al., 2006, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S. A. 103, 2770-2775、Bennett, L. et al. 2003, J. Exp. Med. 197, 711-723)。研究により、HMGB1が、CpG ODNによる刺激後に、pDCおよび骨髄系樹状細胞の両方によって分泌され、かつ、オートクラインの様式でIFN-αの産生を調節することも示された。さらに、HMGB1が、皮膚ループスを有する個体の病変において発現されることも、最近報告された(Popovic, K. et al., 2005, Arthritis Rheum. 52, 3639-3645)。総合すると、これらのデータにより、SLEなどの障害における免疫調節不全をHMGB1が引き起こし得る、新規な機序が提供される。
特定の理論に拘泥するものではないが、HMGBによって媒介されるPAMPシグナル伝達の増強は、少なくとも2種の異なる機序によることができる。細胞表面PRMの場合、PAMP-HMGB複合体によるHMGB受容体(例えばRAGE)とPRMの同時架橋により、PRM単独の場合よりも著しく効果的にシグナル伝達するヘテロ受容体を形成する(「同時刺激」)。PAMP-HMGB複合体の形成の阻害、またはHMGB受容体および/もしくはPRMへの複合体結合の阻害は、増強されたこのシグナル伝達を阻止し得る。細胞内PRMの場合、ヘテロ受容体複合体は、PAMP-HMGB複合体によって形成されるが、これは、HMGB受容体(例えばRAGE)を介したHMGB-PAMP複合体の内部移行後である。この細胞内ヘテロ受容体複合体もやはり、ホモタイプの受容体よりもはるかに効果的にシグナル伝達する。あるいは(または組み合わせて)、HMGB細胞表面受容体(例えばRAGE)を介したHMGB-PAMP複合体の内部移行によって、PAMPは、適切なPRMを含む細胞内区画により効果的に送達され、その結果、PRMを介したシグナル伝達全体が顕著に増強される。やはり、このPAMP-HMGB複合体の形成を阻害すると、増強されたシグナル伝達が阻止される。リガンドによって誘導されるPRM(例えばTLR)の活性化は、当技術分野において周知である様々な手順によって決定することができる。HMG1を介したPRMシグナル伝達の増強を研究するのに有用である具体的な方法は、本明細書において開示される(下記の実施例13、14、および15を参照されたい)。
したがって、本発明は、病原体関連分子パターンを有する1種または複数種の分子と組み合わせて、HMG1または生物学的に機能的なその断片を同時投与することによって、パターン認識受容体/分子を刺激する方法を提供する。本発明はまた、HMG1および/またはHMG1:PAMP複合体とRAGEとの相互作用を阻害する方法も提供する。さらに、本発明は、PAMPへのHMG1結合および/またはHMG1のシャペロン活性を妨げることができ、かつ/または混乱させることができるHMG1のアンタゴニストを投与することによって、パターン認識受容体/分子を阻害する方法を提供する。
さらに、本発明は、HMG1のアンタゴニストを投与することによって、1種または複数種のTLRリガンドによって刺激されるTLRシグナル伝達のHMG1を介した増強を阻害するための方法も提供する。さらに、本発明はまた、RAGEのアンタゴニストを投与することによって、HMG1および/もしくはHMG1:PAMP複合体とRAGEとの相互作用を阻害し、かつ/または、RAGEを介したHMG1のシグナル伝達を阻害する方法も提供する。このような治療法は、癌、感染症、喘息、アレルギー、ならびに、それだけには限らないが、SLEおよび関節リウマチを含む、自己免疫性の疾患および状態の治療に有用である。
本発明はまた、以下のうち1種または複数種を妨げる/拮抗する/阻害する分子をスクリーニングする方法も提供する:HMGB1および/またはHMGB1/PAMP複合体のRAGEへの結合、PAMP(例えば、LPS、CpG)へのHMGB1結合、1種または複数種のパターン認識受容体/分子(本明細書において「PRM」とも呼ぶ)(例えば、Toll様受容体、TLR2およびTLR4)へのHMGB1結合、HMGB1および/またはHMGB1/PAMP複合体の内部移行、細胞表面(例えばTHP-1細胞)へのHMGB1結合、HMG1を介した炎症誘発性サイトカインの放出、RAGEを介したHMGB1および/またはHMGB1/PAMP複合体の内部移行、RAGE分子のTLRおよび/またはHMG1:PAMP複合体との細胞内局在化、RAGEを介したHMGB1および/またはHMGB1/PAMP複合体のシグナル伝達、RAGEを介した炎症誘発性サイトカインの放出、HMG1を介した炎症、HMG1を介した敗血症、HMG1を介した(例えば関節の)炎症、ならびにHMG1を介した関節炎。これらの活性は、本明細書において開示する方法、または当技術分野において公知である多数の方法のうち1つによって、分析することができる。例えば、US20040005316、US6,468,533、およびUS6,448,223、ならびに下記の「実施例」と題をつけたセクションを参照されたい。HMGB1の1種または複数種の活性を妨げる/拮抗する/阻害する分子は、まとめて「HMGB1アンタゴニスト」および類似した用語で呼ばれる。RAGEの1種または複数種の活性を妨げる/拮抗する/阻害する分子は、まとめて「RAGEアンタゴニスト」および類似した用語で呼ばれる。本明細書において実証するように(例えば、下記の実施例14を参照されたい)、HMGB1およびRAGEは物理的に相互作用することができ、かつ、同じ経路を調節することができ、したがって、単一の分子がRAGEおよびHMGB1の両方のアンタゴニストとして機能し得ることが、当業者には理解されるであろう。HMGB1アンタゴニストおよび/またはRAGEアンタゴニストならびにそれを含む組成物は、多くの目的のために、例えば、多様な感染性の慢性および急性の炎症性疾患および炎症性障害に対する治療物質として、有用である。
本発明は、いくつかの生化学的特徴、結合特徴、および機能的特徴を示すHMG1(本明細書において「HMGB1」とも呼ばれる)およびその抗原性断片に特異的に結合する抗体の発見に部分的に基づいている。HMG1に特異的に結合する抗体は、具体的には、本明細書において「本発明の高親和性抗体」、「高親和性抗体」と呼ばれ、また、より包括的な用語「本発明の抗体」、「抗HMG1抗体」、および単に「HMG抗体」、ならびに類似の用語によっても包含される。前述したように、HMG1およびHMG2は、高度の相同性を有しており、類似した生物学的機能および/または重複した生物学的機能を有し得る。したがって、本明細書において開示する方法および分子は、HMG1および/またはHMG2を標的とする(例えば拮抗する)のに有用である場合がある。特に、本発明は、HMG1およびHMG2の両方に結合する抗体の発見にも部分的に基づいている。
さらに、本発明は、本発明の高親和性抗体が、パターン認識受容体/分子を介したシグナル伝達に対するHMG1の相乗効果を阻止することができるという発見にも基づいている。HMGB上の様々なエピトープが様々なPAMPとの相互作用に関与している可能性が高い。したがって、HMGBの様々な領域に結合する抗体は、様々なPAMP-HMGB相互作用を選択的に妨げることが予想される。一実施形態では、本発明の高親和性抗体は、HMG1に結合し、かつ、HMG1とPAMPの相互作用を阻止する。PAMPの非限定的な例は、グラム陰性細胞壁に由来するリポ多糖(LPS)、グラム陽性細胞壁に由来するペプチドグリカン、リポテイコ(lipotechoic)酸、フラゲリン、ピリン、マンノースに富むグリカン、細菌およびウイルスの核酸、細菌タンパク質中に存在するN-ホルミルメチオニン、ウイルス由来の二本鎖RNA、微生物膜に一般的なホスホリルコリン(phophorylcholine)および他の脂質、ならびに、真菌細胞壁由来のリポテイコ酸、糖脂質、およびザイモザンなどのグルカンである。
HMGB-PAMP複合体とPRMの結合を選択的に妨げる抗体を誘導できること、および、そのような抗体が、PRMに対する炎症応答を選択的に阻害すると思われることが予想される。一実施形態では、本発明の高親和性抗体は、HMG1に結合し、かつ、HMG1:PAMP複合体とパターン認識受容体の相互作用を阻止する。別の実施形態では、本発明の高親和性抗体は、HMG1に結合し、かつ、HMG1とパターン認識受容体/分子との相互作用を阻止する。パターン認識受容体の非限定的な例は、エンドサイトーシスパターン認識受容体(例えば、マンノース受容体、スカベンジャー受容体)、シグナル伝達パターン認識受容体(例えば、Toll様受容体(TLR)、CD14、ヌクレオチド結合オリゴマー形成ドメイン(NOD)タンパク質)、および分泌性パターン認識受容体(例えば、マンナン結合レクチン、C反応性タンパク質)である。例示的なTLRおよびそれらの個別のリガンドを表3に列挙する。
本発明の生化学的特徴には、それだけには限らないが、等電点(pI)および融解温度(Tm)が含まれる。本発明の抗体の結合特徴には、それだけには限らないが、結合特異性、解離定数(Kd)、エピトープ、HMG1の様々な形態および/または調製物(例えば、組換え型、天然型、アセチル化型)を区別する能力、ならびに、可溶性抗原および/または固定化された抗原に結合する能力が含まれる。本発明の抗体の機能的特徴には、それだけには限らないが、HMG1によって誘導されるサイトカイン放出の阻害、1種または複数種の受容体へのHMG1結合の阻害、細胞表面へのHMG1結合の阻害、および1種または複数種の炎症性疾患モデル(例えば、敗血症、関節炎、急性肺損傷、腹膜炎)における保護が含まれる。
本発明の抗体およびそれを含む組成物は、多くの目的のために、例えば、それだけには限らないが、敗血症、関節リウマチ、腹膜炎、クローン病、再灌流障害、敗血症、エンドトキシンショック、嚢胞性線維症、心内膜炎、乾癬、関節炎(例えば、乾癬性関節炎)、アナフィラキシーショック、臓器虚血、再灌流障害、脊髄損傷、および同種移植拒絶を含めて、多様な感染性の慢性および急性の炎症性疾患および炎症性障害に対する治療物質として、有用である。
さらに、本発明の高親和性抗体は、診断的用途のために有用である。本発明の抗体は、例えば、それだけには限らないが、in vitroおよびin vivoの診断方法および治療方法の両方を含めて、本発明のHMG1および/またはHMG2ポリペプチドを精製、検出、および標的にするために使用され得る。例えば、これらの抗体は、生物試料中の本発明のHMG1および/またはHMG2ポリペプチドのレベルを定性的および定量的に測定するためのイムノアッセイにおいて使用される。例えば、Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版、1988)を参照されたい。
5.1 本発明のHMG1アンタゴニストおよび/またはRAGEアンタゴニスト
本発明は、HMGB1の1種または複数種の活性を妨げる/拮抗する/阻害する分子およびそのような分子をスクリーニングする方法を提供する。HMGB1の活性には、それだけには限らないが、以下が含まれる:HMGB1および/またはHMGB1/PAMP複合体のRAGEへの結合、PAMP(例えば、LPS、CpG)へのHMGB1結合、1種または複数種のパターン認識受容体/分子(本明細書において「PRM」とも呼ぶ)(例えば、Toll様受容体、TLR2およびTLR4)へのHMGB1結合、HMGB1および/またはHMGB1/PAMP複合体の内部移行、HMGB1および/もしくはHMGB1/PAMPを介したRAGEの内部移行ならびに/またはHMG1:PAMP複合体のTLRとの細胞内局在化もしくはRAGE分子のTLRとの細胞内局在化、HMG1:PAMP複合体を介したRAGEポリペプチドのTLRへの細胞内結合、HMG1:PAMP複合体を介したHMG1:PAMP複合体のTLRへの細胞内結合、HMGB1を介した細胞内TLRへのTLRリガンドの標的化、細胞表面(例えばTHP-1細胞)へのHMGB1結合、HMG1を介した炎症誘発性サイトカインの放出、HMG1を介した炎症、HMG1を介した敗血症、HMG1を介した(例えば関節の)炎症、ならびにHMG1を介した関節炎。これらの活性は、当技術分野において公知である1つまたは多数の方法よって、分析することができる。例えば、US20040005316、US6,468,533、およびUS6,448,223、ならびに下記の「実施例」と題をつけたセクションを参照されたい。
本発明は、RAGEの1種または複数種の活性を妨げる/拮抗する/阻害する分子およびそのような分子をスクリーニングする方法を提供する。RAGEの活性には、それだけには限らないが、以下が含まれる:HMGB1および/またはHMGB1/PAMP複合体へのRAGE結合、RAGEを介したHMGB1および/またはHMGB1/PAMP複合体の内部移行、RAGE分子のTLRおよび/またはHMG1:PAMP複合体との細胞内局在化、RAGEを介したHMGB1および/またはHMGB1/PAMP複合体のシグナル伝達、ならびにRAGEを介した炎症誘発性サイトカインの放出。
HMGB1アンタゴニストは、HMGB1に結合することによって、直接的に機能し得る。例えば、HMGB1に特異的に結合する抗体は、HMBG1がPAMPに結合するのを妨げることができる。あるいは、または組み合わせて、HMGB1アンタゴニストは、例えば、HMGB1発現を下向き調節することによって、または、HMGB1の受容体に結合し、相互作用を妨げることによって、間接的に機能することができる。RAGEアンタゴニストは、RAGEに結合することによって、直接的に機能し得る。あるいは、または組み合わせて、RAGEアンタゴニストは、例えば、RAGE発現を下向き調節することによって、または、RAGEのリガンドに結合し、相互作用を妨げることによって、間接的に機能することができる。前述したように、単一分子が、RAGEおよびHMGB1の両方のアンタゴニストとして機能し得る。例えば、限定するものではないが、HMGB1に結合し、RAGEへの結合を妨げる分子(例えば、それだけには限らないが、本明細書において開示するものを含めて、抗HMGB1抗体、それだけには限らないが、PCT公報WO00/192892、WO05/051995、WO06/012415において開示されているものを含めて、可溶性RAGEポリペプチド)が、RAGEおよびHMGB1の両方のアンタゴニストとして機能すると考えられる。
特定の態様では、本発明は、HMGB1に結合し、かつHMGB1のアンタゴニストとして機能する、ポリペプチド、小分子、ペプチドミメティック、および他の作用物質を提供する。他の態様では、本発明は、HMGB1発現を低減または下方調節することによってHMGB1に効果的に拮抗する作用物質を提供する。このようなHMGB1アンタゴニストとしては、それだけには限らないが、siRNA、アンチセンス分子、およびリボザイムなどの核酸物質が挙げられる。さらに別の態様では、本発明は、HMGB活性の下流の標的(例えば、TLR、RAGE)を調節する作用物質を提供する。
一実施形態では、本発明は、1種または複数種の炎症誘発性因子(例えば、TLRリガンド)によって刺激されるRAGEシグナル伝達のHMGB1を介した増強のアンタゴニストである、阻害性のオリゴヌクレオチドおよび小分子を提供する。阻害性のオリゴヌクレオチドおよび小分子の例としては、それだけには限らないが、CPG7909(PF-3512676またはプロミューン(ProMune)(商標)としても公知)およびアクチロン(Actilon)(CPG10101)が挙げられる。他の例は当技術分野において公知であり(例えば、米国特許公報US20050239733およびUS20050119273を参照されたい)、このような分子を同定するための方法が記載されている(例えば、米国特許公報US20050181422を参照されたい)。
一実施形態では、本発明は、HMGB1のアンタゴニストである抗体を提供する。特定の実施形態では、HMGB1のアンタゴニストである抗体は、HMGB1に特異的に結合する。別の実施形態では、本発明は、RAGEのアンタゴニストである抗体を提供する。特定の実施形態では、RAGEのアンタゴニストである抗体は、RAGEに特異的に結合する。
別の実施形態では、本発明は、HMGB1のアンタゴニストである可溶性RAGEペプチドを提供する。可溶性RAGEポリペプチドは、一般に、RAGEの細胞外ドメインの機能的部分を含む。可溶性RAGEポリペプチドは、Fcドメインや血清アルブミン(HSA)などの付加的なポリペプチドに融合されてよい。可溶性RAGEポリペプチドはまた、例えば、1つまたは複数のポリアルキレングリコール部分、特にポリエチレングリコール(PEG)への共有結合によって、薬物反応速度を改善するように修飾してもよい。可溶性RAGEポリペプチドを作製するための方法は、当技術分野において公知である(例えば、米国特許出願第11/186,422号を参照されたい)。
別の実施形態では、本発明は、核酸化合物であるHMGB1アンタゴニストを提供する。核酸化合物の部類の例には、アンチセンス核酸、RNAi構築物、および触媒的核酸構築物が含まれる。核酸化合物は、一本鎖でも二本鎖でもよい。二本鎖化合物は、鎖の一方または他方が一本鎖である、オーバーハング領域または非相補的領域も含んでよい。一本鎖化合物は、自己相補的な領域を含んでよく、すなわち、化合物は、二重らせん構造の領域を有する、いわゆる「ヘアピン」構造または「ステムループ」構造を形成する。核酸化合物は、HMGB1核酸配列の1000個以下、500個以下、250個以下、100個以下、または50個以下のヌクレオチドからなる領域に相補的なヌクレオチド配列を含んでよい。いくつかの実施形態では、相補的な領域は、少なくとも8ヌクレオチド、場合によっては、少なくとも10ヌクレオチド、または少なくとも15ヌクレオチドである。相補的な領域は、イントロン、標的転写物のコード配列または非コード配列、例えばコード配列部分の範囲に入ってよい。一般に、核酸化合物は、約8〜約500ヌクレオチド長または塩基対長であり、場合によっては、長さは、約14〜約50ヌクレオチドである。核酸は、DNA(特に、アンチセンスとして使用するため)、RNA、またはRNA:DNAハイブリッドでよい。任意の1つの鎖は、DNAおよびRNAの混合物、ならびに、DNAまたはRNAのいずれかとして容易に分類することができない改変型を含んでよい。同様に、二本鎖化合物は、DNA:DNA、DNA:RNA、またはRNA:RNAでよく、かつ、任意の1つの鎖は、DNAおよびRNAの混合物、ならびに、DNAまたはRNAのいずれかとして容易に分類することができない改変型も含んでよい。核酸化合物は、主鎖(ヌクレオチド間結合を含む、天然核酸中の糖-リン酸部分)または塩基部分(天然核酸のプリン部分もしくはピリミジン部分)への1つまたは複数の改変を含めて、様々な改変のいずれかを含んでよい。アンチセンス核酸化合物は、一般に、約15〜約30ヌクレオチド長であり、また、血清、細胞、または、経口送達される化合物の場合の胃および吸入される化合物の場合の肺など、その化合物が送達される可能性が高い場所における安定性などの特徴を改善するために、しばしば、1つまたは複数の改変を含む。RNAi構築物の場合、標的転写物に相補的な鎖は、一般に、RNAまたはその改変体である。他方の鎖は、RNA、DNA、または他の任意の変形物でよい。二本鎖または一本鎖の「ヘアピン」RNAi構築物の二重鎖部分は、一般に、18〜40ヌクレオチド長であり、また、場合によっては、ダイサーの基質としての機能を果たす限りにおいて、約21〜23ヌクレオチド長である。触媒的核酸または酵素的核酸は、リボザイムまたはDNA酵素でよく、また、改変型を含んでもよい。核酸化合物は、生理的条件下で、かつ、ナンセンス対照またはセンス対照がほとんどまたは全く作用しない濃度で細胞と接触させられた場合に、約50%、75%、または90%以上、標的の発現を阻害することができる。核酸化合物の作用を試験するために企図される濃度は、1、5、および10マイクロモル濃度である。核酸化合物は、例えば、血管新生に対する作用に関して試験することもできる。
いくつかの態様では、本開示は、アプタマーとして当技術分野において公知の単離された核酸化合物を提供する。アプタマーは、特定の分子標的(例えば、本明細書において説明するHMGB1、HMGB1のAボックスもしくはBボックス、および/またはHMGB1ポリペプチド)に強固に結合する核酸(例えば、RNA、DNA)から構成される高分子である。個々のアプタマーは、直線的なヌクレオチド配列によって記述することができ、また、アプタマーは、典型的には、約15〜60ヌクレオチド長である。アプタマー中のヌクレオチドの鎖は、分子内相互作用を起こして、分子を複雑な3次元形状に折り畳み、この3次元形状により、アプタマーは標的分子の表面に強固に結合することが可能になる。すべての起こり得るヌクレオチド配列の領域内に存在する分子形状の並外れた多様性を考慮すれば、タンパク質および小分子を含めて、多彩な分子標的に対してアプタマーを得ることができる。高い特異性に加えて、アプタマーは、標的に対して極めて高い親和性も有する(例えば、タンパク質に対してピコモルから低ナノモルの範囲の親和性)。アプタマーは化学的に安定であり、活性を失わずに煮沸または凍結することができる。これらは合成分子であるため、特定の用途のためにそれらの機能を最適化することができる様々な改変を受け入れることができる。in vivoの用途の場合、アプタマーを改変して、血中の酵素による分解に対する感受性を劇的に低減させることができる。さらに、アプタマーの改変は、それらの体内分布または血漿滞留時間を変化させるために使用することもできる。
HMGB1またはその断片(例えば、Aボックス、Bボックス、またはその断片)に結合できるアプタマーの選択は、当技術分野において公知の方法によって実現することができる。例えば、アプタマーは、SELEX(試験管内人工進化(Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment))法を用いて選択することができる(Tuerk, C.,およびGold, L., Science 249:505-510(1990))。SELEX法では、核酸分子の大きなライブラリー(例えば、1015種の異なる分子)を作製し、かつ/または、標的分子(例えば、本明細書において説明するHMGB1、HMGB1のAボックスもしくはBボックス、および/またはHMGB1ポリペプチド)を用いてスクリーニングする。標的分子を、一定期間、ヌクレオチド配列のライブラリーとともにインキュベートさせる。次いで、いくつかの方法を用いて、混合物中の未結合分子からアプタマー標的分子を物理的に分離することができ、かつ、未結合分子を廃棄することができる。次いで、標的分子に対して最も高い親和性を有するアプタマーを、標的分子から精製し、かつ酵素的に増幅させて、標的分子に結合できるアプタマーを実質的に濃縮した新しい分子ライブラリーを作製することができる。次いで、濃縮されたライブラリーを用いて、新しいサイクルの選択、区分化、および増幅を開始することができる。この選択、区分化、および増幅プロセスを5〜15サイクル実施した後、ライブラリーを、標的分子に強固に結合する小数のアプタマーに縮小する。次いで、混合物中の個々の分子を単離し、それらのヌクレオチド配列を決定し、かつ、結合親和性および特異性に関するそれらの特性を測定し、比較することができる。次いで、単離したアプタマーをさらに精製して、標的結合および/またはアプタマー構造に寄与しない任意のヌクレオチドを除去する(すなわち、アプタマーを、コアな結合ドメインに切り縮める)ことができる。アプタマー技術の総説については、Jayasena, S.D. Clin. Chem. 45:1628-1650(1999)を参照されたい。
いくつかの実施形態では、本発明のアプタマーは、抗HMGB1抗体に関して本明細書において説明する結合特異性および/または機能活性を有する。したがって、例えば、いくつかの実施形態では、本発明は、抗HMGB1抗体に関して本明細書において説明するのと同じまたは同様の結合特異性(例えば、結合特異性、アゴニスト活性、またはアンタゴニスト活性)を有するアプタマーを対象とする。特定の実施形態では、本発明のアプタマーは、HMGB1ポリペプチドに結合し、かつ、本明細書において説明するHMGB1ポリペプチドの1種または複数種の活性を阻害することができる。
本発明はまた、HMGB1アンタゴニストをスクリーニングするための方法も提供する。一実施形態では、本発明は、相互作用分子(例えば、PAMP、RAGEなど)へのHMGB1の特異的結合を阻害するか、または減少させる化合物をスクリーニングするための方法であって、候補化合物を含む第1の組成物を、in vitroの結合アッセイにおいてHMGB1に特異的に結合する相互作用分子を含む第2の組成物と組み合わせるステップと、HMGB1への相互作用分子の特異的結合の阻害または減少を検出するステップとを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、相互作用分子はRAGEである。他の実施形態では、相互作用分子はTLRリガンドである。特定の実施形態では、相互作用分子はポリヌクレオチドである。別の特定の実施形態では、相互作用分子はCpGである。
別の実施形態では、本発明は、RAGEへのHMGB1/PAMP複合体の特異的結合を阻害するか、または減少させる化合物をスクリーニングするための方法であって、候補化合物を含む第1の組成物を、in vitroの結合アッセイにおいてRAGEを含む第2の組成物と組み合わせるステップと、HMGB1/PAMP複合体へのRAGEの特異的結合の阻害または減少を検出するステップとを含む方法を提供する。特定の実施形態では、PAMPはTLRリガンドである。TLRリガンドは、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、およびTLR9からなる群から選択されるTLRのリガンドでよい。別の特定の実施形態では、PAMPはCpGである。
一実施形態では、本発明は、TLRシグナル伝達のHMGB1を介した増強を阻害するか、または減少させる化合物をスクリーニングするための方法であって、1種または複数種のTLRリガンドによって刺激することができ、かつ、TLRシグナル伝達のHMGB1を介した増強を示す細胞を、候補化合物を含む組成物と組み合わせて、HMGB1の存在下、TLRリガンドで刺激するステップと、細胞におけるTLRシグナル伝達のHMGB1を介した増強の阻害または減少を検出するステップとを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、TLRシグナル伝達は、1種または複数種のTLRリガンドによって刺激される。いくつかの実施形態では、TLRシグナル伝達は、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、およびTLR9からなる群から選択されるTLRを介したシグナル伝達である。
別の実施形態では、本発明は、HMGB1および/もしくはHMGB1/PAMP複合体の内部移行を阻害するか、または減少させる化合物をスクリーニングするための方法であって、HMGB1および/またはHMGB1/PAMP複合体を内部移行できる細胞を、候補化合物を含む組成物と組み合わせて、HMGB1および/またはHMGB1/PAMP複合体で刺激するステップと、HMGB1および/またはHMGB1/PAMP複合体の内部移行の阻害または減少を検出するステップとを含む方法を提供する。特定の実施形態では、HMGB1/PAMP複合体は、HMGB1およびTLRリガンドの複合体である。別の特定の実施形態では、HMGB1/PAMP複合体は、HMGB1ならびにTLR3、TLR7およびTLR9からなる群から選択されるTLRリガンドの複合体である。さらに別の特定の実施形態では、HMGB1/PAMP複合体は、HMGB1およびCpGの複合体である。
5.2 本発明の抗体
本明細書において使用される「HMG1およびその抗原性断片に特異的に結合する」高親和性抗体またはその断片とは、例えば、HMG1ポリペプチドもしくはHMG1ポリペプチドの断片(例えば、HMG1 AボックスおよびHMG1 Bボックス)またはHMG1ポリペプチドのエピトープ(特異的な抗体-抗原結合を分析するための当技術分野において周知のイムノアッセイによって決定される)に特異的に結合し、かつ他のポリペプチドに特異的に結合しない、高親和性の抗体またはその断片を意味する。一実施形態では、HMG1ポリペプチドまたはその断片に特異的に結合する高親和性抗体または断片は、他の抗原と非特異的に交差反応しない(例えば、結合は、非HMG1タンパク質、例えばBSAと競合することができない)。本発明はまた、HMG2ポリペプチドもしくはHMG2ポリペプチドの断片(例えば、HMG2AボックスおよびHMG2Bボックス)、またはHMG2ポリペプチドの抗原性断片に特異的に結合する高親和性抗体またはその断片も包含する。
HMG1およびHMG2は、異なるタンパク質であるが、相同な領域を有することは、当業者によって認識されよう(図1を参照されたい)。したがって、高親和性抗体またはその断片は、HMG1およびその抗原性断片に特異的に結合し得るが、HMG2にもその抗原性断片にも結合し得ないことが予想される。高親和性抗体またはその断片は、HMG2およびその抗原性断片に特異的に結合し得るが、HMG1にもその抗原性断片にも結合し得ないことも、さらに予想される。本発明の高親和性抗体が、HMG1およびHMG2の両方に共通するエピトープに特異的に結合し得ることも、さらに企図される。エピトープを含むアミノ酸配列がHMG1およびHMG2において同一であるような場合、共通のエピトープは、HMG1およびHMG2の両方において同一でよい。したがって、本発明の高親和性抗体は、HMG1およびHMG2の両方に特異的に結合し得る(例えば、HMG1およびHMG2の両方に存在する同一のエピトープを特異的に認識した抗体)。あるいは、共通のエピトープは、HMG1およびHMG2の両方において類似していてよい。例えば、類似エピトープは、著しい相同性(例えば、60%〜99%の同一性)を有してよく、かつ/または、HMG1とHMG2とで類似した3次元構造を採用してよく、その結果、本発明の高親和性抗体が、共通のエピトープと交差反応すると考えられる。したがって、本発明の高親和性抗体は、HMG1またはHMG2のいずれかに特異的に結合し得、かつ、それぞれ、HMG2またはHMG1と交差反応し得る。本発明の高親和性抗体は、HMG1およびHMG2上に存在する類似エピトープに対して異なる親和性を有してもよい。したがって、本発明の高親和性抗体が、同じ結合親和性または異なる結合親和性のいずれかでHMG1およびHMG2に結合することも、さらに企図される。特定の実施形態では、高親和性抗体またはその断片は、他の抗原に比べて、HMG1および/またはHMG2に特異的に結合する。
一実施形態では、本発明の高親和性抗体は、HMG1および/またはHMG2のAボックス(例えば、それぞれ配列番号3および配列番号22)を含むか、あるいはそれからなる(または本質的にそれからなる)ポリペプチドに特異的に結合する。
別の実施形態では、本発明の高親和性抗体は、HMG1および/またはHMG2のBボックス(例えば、それぞれ配列番号4および配列番号23)を含むか、あるいはそれからなる(または本質的にそれからなる)ポリペプチドに特異的に結合する。
また、HMG1および/またはHMG2のAボックスおよびBボックスの両方に由来するアミノ酸残基を含むか、あるいはそれからなる(または本質的にそれからなる)エピトープに特異的に結合する抗体も、本発明に包含される。AボックスBボックスの両方に由来するアミノ酸残基に由来するエピトープは、AボックスおよびBボックスの連結物に由来する直鎖状ポリペプチドでよく、または、AボックスおよびBボックスの両方に由来するアミノ酸を含む3次元構造のポリペプチドから生じてもよい。
本発明は、具体的には、複数の特異性を有する抗体(例えば、2種以上の別々の抗原に対する特異性を有する抗体)も包含する(Cao et al., 2003, Adv Drug Deliv Rev 55:171、Hudson et al., 2003, Nat Med 1:129に総説がある))。例えば、二重特異性抗体は、1つに融合された2種の異なる結合特異性を含む。最も単純な場合、二重特異性抗体は、単一の標的抗原上の2つの隣接したエピトープに結合すると考えられ、このような抗体は、(上述したように)他の抗原と交差反応しないと考えられる。あるいは、二重特異性抗体は、2種の異なる抗原に結合することができ、このような抗体は、2種の異なる分子(例えば、HMG1およびHMG2)に特異的に結合するが、他の無関係な分子(例えばBSA)には結合しない。さらに、HMG1および/またはHMG2に特異的に結合する抗体は、関連するHMGタンパク質と交差反応することもできる。
本明細書において説明するHMG1および/またはHMG2「断片」という用語は、HMG1および/またはHMG2ポリペプチド(例えば、ヒトHMG1および/またはHMG2)のアミノ酸配列の少なくとも5個の連続したアミノ酸残基、少なくとも10個の連続したアミノ酸残基、少なくとも15個の連続したアミノ酸残基、少なくとも20個の連続したアミノ酸残基、少なくとも25個の連続したアミノ酸残基、少なくとも40個の連続したアミノ酸残基、少なくとも50個の連続したアミノ酸残基、少なくとも60個の連続したアミノ残基、少なくとも70個の連続したアミノ酸残基、少なくとも80個の連続したアミノ酸残基、少なくとも90個の連続したアミノ酸残基、少なくとも100個の連続したアミノ酸残基、少なくとも125個の連続したアミノ酸残基、少なくとも150個の連続したアミノ酸残基、少なくとも175個の連続したアミノ酸残基、少なくとも200個の連続したアミノ酸残基、または少なくとも250個の連続したアミノ酸残基のアミノ酸配列を含むか、あるいはそれからなる(または本質的にそれからなる)HMG1および/またはHMG2ペプチドまたはポリペプチドを含む。
本明細書において説明するHMG1および/またはHMG2「断片」という用語はまた、具体的に、HMG Aボックス(例えば、ヒトHMG1および/もしくはHMG2のAボックス)またはHMG Bボックス(例えば、ヒトHMG1および/もしくはHMG2のBボックス)の少なくとも5個の連続したアミノ酸残基、少なくとも10個の連続したアミノ酸残基、少なくとも15個の連続したアミノ酸残基、少なくとも20個の連続したアミノ酸残基、少なくとも25個の連続したアミノ酸残基、少なくとも40個の連続したアミノ酸残基、少なくとも50個の連続したアミノ酸残基、少なくとも60個の連続したアミノ残基、少なくとも70個の連続したアミノ酸残基、または少なくとも80個の連続したアミノ酸残基のアミノ酸配列を含むか、あるいはそれからなる(または本質的にそれからなる)ポリペプチドも含む。
本発明の「高親和性抗体」(本明細書において「本発明の高親和性抗体」、「高親和性抗体」とも呼ばれ、また、より包括的な用語「本発明の抗体」、および単に「HMG抗体」によっても包含される)には、合成抗体、モノクローナル抗体、組換えによって作製された抗体、細胞内発現抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、合成抗体、一本鎖Fv(scFv)、Fab断片、F(ab')断片、ジスルフィド結合Fv(sdFv)(二重特異性sdFvを含む)、および抗イディオタイプ(抗Id)抗体、ならびに上記のいずれかのエピトープ結合断片が含まれるが、これらに限定されるわけではない。本発明の抗体は、単特異性、二重特異性、三重特異性、またはより多くの多重特異性のものでよい。多重特異性抗体は、本発明のポリペプチドの異なるエピトープに対して特異的でよく、または、本発明のポリペプチド、ならびに異種ポリペプチドや固体支持体材料などの異種エピトープの両方に対して特異的でよい。例えば、PCT公報WO93/17715、WO92/08802、WO91/00360、WO92/05793、Tutt, et al., J.Immunol. 147:60-69(1991)、米国特許第4,474,893号、同第4,714,681号、同第4,925,648号、同第5,573,920号、同第5,601,819号、Kostelny et al., J.Immunol. 148:1547-1553(1992)を参照されたい。
HMGB1に結合する抗体様タンパク質および抗体ドメイン融合タンパク質もまた、本発明の抗体として企図される。抗体様分子は、所望の結合特性を有する、作製された任意の分子である。例えば、PCT公報WO04/044011、WO04/058821、WO04/003019、およびWO03/002609を参照されたい。抗体ドメイン融合タンパク質は、Fcドメインや可変ドメインなど1種または複数種の抗体ドメインを組み入れてよい。例えば、異種ポリペプチドを、Fab断片、Fd断片、Fv断片、F(ab)2断片、VHドメイン、VLドメイン、VH CDR、VL CDR、またはその断片に融合または結合させることができる。それだけには限らないが、ダイアボディ(dsFv)2(Bera et al., 1998, J. Mol. Biol. 281:475-83)、ミニボディ(scFv-CH3融合タンパク質のホモ二量体)(Pessi et al., 1993, Nature 362:367-9)、四価のジダイアボディ(Lu et al., 2003 J. Immunol. Methods 279:219-32)、Bs(scFv)4-IgGと呼ばれる四価の二重特異性抗体(Zuo et al., 2000, Protein Eng. 13:361-367)を含めて、多数の抗体ドメイン分子が当技術分野において公知である。Fcドメイン融合物は、免疫グロブリンのFc領域を融合相手と組合せ、融合相手は、一般に、それだけには限らないが、リガンド、酵素、受容体のリガンド部分、接着タンパク質、または他の何らかのタンパク質もしくはドメインを含めて、タンパク質でよい。例えば、Chamow et al., 1996, Trends Biotechnol 14:52-60、Ashkenazi et al., 1997, Curr Opin Immunol 9:195-200、Heidaran et al., 1995, FASEB J. 9:140-5を参照されたい。ポリペプチドを抗体部分に融合または結合させるための方法は、当技術分野において周知である。例えば、米国特許第5,336,603号、同第5,622,929号、同第5,359,046号、同第5,349,053号、同第5,447,851号、および同第5,112,946号、欧州特許EP307,434およびEP367,166、PCT公報WO96/04388およびWO91/06570、Ashkenazi et al., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 10535-10539、Zheng et al., 1995, J. Immunol. 154:5590-5600、ならびにVil et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:11337-11341を参照されたい。
細胞内エピトープに結合することができる抗体(例えば、細胞内発現抗体)は、細胞内HMGB1(例えば、核HMGB1および/または細胞質HMGB1)に結合し、かつ、その1種または複数種の活性を混乱させる/阻害するのに有用である。細胞内発現抗体は、抗原に特異的に結合することができ、かつ、細胞内で発現され得るように操作された抗体の少なくとも一部分(例えばscFv)を含む。一般に、細胞内発現抗体は、分泌をコードする配列を含まない。このような抗体は、細胞内で抗原に結合すると考えられる。哺乳動物細胞の内部で発現させ、かつ/または正確な細胞内位置に導くための方法と組み合わせられた場合、細胞内発現抗体は、細胞内標的に対して特に有用である。
細胞内発現抗体の作製は、当業者には周知であり、例えば、米国特許第6,004,940号、同第6,072,036号、同第5,965,371号に記載されている。さらに、細胞内発現抗体の構築は、OhageおよびSteipe, 1999, J. Mol. Biol. 291:1119-1128、Ohage et al., 1999, J. Mol. Biol. 291:1129-1134、ならびにWirtzおよびSteipe, 1999, Protein Science 8:2245-2250、Stocks, M.R. Drug Disc. Today第9巻、第22号、2004年11月において考察されている。分子生物学的組換え技術も、細胞内発現抗体の作製において使用することができる。
一実施形態では、本発明の細胞内発現抗体は、抗原に対して、完全抗体の少なくとも約75%の結合有効性を保持している(すなわち、定常ドメイン全体ならびに可変領域を有する)。一実施形態では、細胞内発現抗体は、完全抗体の少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の結合有効性を保持している。
特定の局在化配列を細胞内発現抗体ポリペプチドに結合させて、細胞内発現抗体を特定の位置に誘導することができる。細胞内発現抗体は、例えば、以下の細胞内位置に局在させることができる:小胞体(Munro et al., 1987, Cell 48:899-907、Hangejorden et al., 1991, J. Biol. Chem. 266:6015)、核(Lanford et al., 1986, Cell 46:575、Stanton et al., 1986, PNAS 83:1772、Harlow et al., 1985, Mol. Cell Biol. 5:1605、Pap et al., 2002, Exp. Cell Res. 265:288-93)、核小体領域(Seomi et al., 1990, J. Virology 64:1803、Kubota et al., 1989, Biochem. Biophys. Res. Comm. 162:963、Siomi et al., 1998, Cell 55:197)、エンドソーム区画(Bakke et al., 1990, Cell 63:707-716)、ミトコンドリア基質(Pugsley, A. P., 1989, "Protein Targeting", Academic Press, Inc.)、ゴルジ体(Tang et al., 1992, J. Bio. Chem. 267:10122-6)、リポソーム(Letourneur et al., 1992, Cell 69:1183)、ペルオキシソーム(Pap et al., 2002, Exp. Cell Res. 265:288-93)、バンズ(bans)ゴルジ網(Pap et al., 2002, Exp.Cell Res. 265:288-93)、および形質膜(Marchildon et al., 1984, PNAS 81:7679-82、Henderson et al., 1987, PNAS 89:339-43、Rhee et al., 1987, J. Virol. 61:1045-53、Schultzetal., 1984, J. Virol. 133:431-7、Otsuyamaetal., 1985, Jpn. J
. Can. Res. 76: 1132-5、Ratner et al., 1985, Nature 313:277-84)。
組換えによって発現させた細胞内発現抗体を患者に投与して、予防効果または治療効果を実現することができる。細胞内発現抗体を細胞内で誘導するために、細胞内発現抗体ポリペプチドを「膜透過性配列」と結合させる。膜透過性配列は、細胞膜を通過して、細胞の外側から細胞の内部に通り抜けることができるポリペプチドである。別のポリペプチドに連結された場合、膜I透過性配列はまた、同様に、細胞膜を通過するポリペプチドの転位を指示することもできる。有用な膜透過性配列には、シグナルペプチドの疎水性領域が含まれる(例えば、Hawiger, 1999, Curr. Opin. Chem. Biol. 3:89-94、Hawiger, 1997, Curr. Opin. Immunol. 9:189-94、米国特許第5,807,746号および同第6,043,339号を参照されたい)。膜透過性配列の配列は、任意のシグナルペプチドの疎水性領域をベースとしてよい。シグナルペプチドは、例えば、SIGPEPデータベースから選択することができる(例えば、von Heijne, 1987, Prot.Seq.Data Anal. 1:41-2、von HeijneおよびAbrahmsen, 1989, FEBS Lett. ;224:439-46を参照されたい)。細胞内発現抗体ポリペプチドを挿入するために特定の細胞型を標的とすべき場合、膜透過性配列は、好ましくは、その細胞型に内在するシグナルペプチドをベースとする。別の実施形態では、膜透過性配列は、ウイルスタンパク質(例えば、ヘルペスウイルスタンパク質VP22)またはその断片である(例えば、Phelan et al., 1998, Nat.Biotechnol. 16:440-3を参照されたい)。特定の細胞内発現抗体および/または特定の標的細胞型に対する適切な特性を有する膜透過性配列は、各膜透過性配列が、細胞膜を通過する細胞内発現抗体の転位を指示する能力を評価することによって、実験的に決定することができる。
多重特異性抗体は、少なくとも2種の異なる抗原に対する結合特異性を有する。このような分子は通常、2種の抗原にのみ結合するが(すなわち、二重特異性抗体、BsAbs)、三重特異性抗体などさらなる特異性を有する抗体も、本発明に包含される。BsAbsの例には、それだけには限らないが、HMG1および/またはHMG2のエピトープを対象とする1つのアーム、ならびに他の任意の抗原を対象とする他のアームを有するものが含まれる。二重特異性抗体を作製するための方法は、当技術分野において公知である。完全長二重特異性抗体の伝統的な作製は、2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(2つの鎖は異なる特異性を有する)の同時発現に基づいている(Millstein et al., 1983, Nature, 305:537-539)。免疫グロブリンの重鎖および軽鎖のランダムな組合せにより、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、異なる抗体分子の潜在的な混合物を生じ、このうち1種のみが、正確な二重特異性構造を有する。通常はアフィニティクロマトグラフィーステップによって実施される正確な分子の精製は、かなり厄介であり、収率は低い。同様の手順がWO93/08829およびTraunecker et al., 1991, EMBO J., 10:3655-3659に開示されている。さらに絞り込んだ手法は、ジ-ダイアボディ(Di-diabody)、すなわち四価の二重特異性抗体の作製である。ジ-ダイアボディを作製するための方法は、当技術分野において公知である(例えば、Lu et al., 2003, J Immunol Methods 279:219-32、Marvin et al., 2005, Acta Pharmacolical Sinica 26:649を参照されたい)。
別の手法によれば、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体-抗原結合部位)は、免疫グロブリンの定常ドメイン配列に融合される。融合は、好ましくは、ヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域の少なくとも一部分を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインを相手とする。融合物のうち少なくとも1つに存在する、軽鎖結合に必要な部位を含む第1の重鎖定常領域(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合物、および、所望の場合は、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAは、別々の発現ベクター中に挿入され、かつ、適切な宿主生物中に同時トランスフェクトされる。これは、構築する際に使用される異なる比率の3つのポリペプチド鎖が最適の収量をもたらす実施形態において、3つのポリペプチド断片の相互比率を調整する際に大きな柔軟性を与える。しかしながら、等しい比率の少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現が高収量をもたらす場合、または、それらの比率が特に重要性を持たない場合、1つの発現ベクター中に2つまたは3つすべてのポリペプチド鎖に対するコード鎖を挿入することが可能である。
この手法の一実施形態では、二重特異性抗体は、一方のアーム中の第1の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖(例えば、Aボックス、BボックスなどのHMG1および/またはHMG2エピトープ)、ならびに他方のアーム中のハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第2の結合特異性を提供する)から構成される。二重特異性分子の一方の半分にだけ免疫グロブリン軽鎖が存在することにより、分離の容易な方法が提供されるため、この非対称性の構造が、望まれない免疫グロブリン鎖の組合せから所望の二重特異性化合物を分離するのを容易にすることが判明した。この手法は、WO94/04690に開示されている。二重特異性抗体の作製に関するさらなる詳細については、例えば、Suresh et al., 1986, Methods in Enzymology, 121:210を参照されたい。WO96/27011に記載されている別の手法によれば、抗体分子のペアを操作して、組換え細胞培養から回収されるヘテロ二量体の百分率を最大化することができる。好ましい境界は、抗体定常ドメインのCH3ドメインの少なくとも一部分を含む。この方法では、第1の抗体分子の境界に由来する1つまたは複数の小型のアミノ酸側鎖が、より大型の側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)で置き換えられる。大型アミノ酸側鎖をより小型のもの(例えば、アラニンまたはトレオニン)で置換することによって、大型側鎖に同一または類似したサイズの代償的な「空洞」が、第2の抗体分子の境界上に作り出される。これにより、ホモ二量体など他の望まれない最終産物よりもヘテロ二量体の収量を増加させるための機序が実現する。
二重特異性抗体には、架橋された抗体または「ヘテロコンジュゲート(heteroconjugate)」抗体が含まれる。例えば、ヘテロコンジュゲート中の抗体のうち一方をアビジンに結合し、他方をビオチンに結合させることができる。このような抗体は、例えば、望まれない細胞に対して免疫系細胞を導くために(米国特許第4,676,980号)、また、HIV感染症を治療するために(WO91/00360、WO92/200373、およびEP03089)提案されている。ヘテロコンジュゲート抗体は、従来の任意の架橋方法を用いて作製することができる。適切な架橋剤は、当技術分野において周知であり、いくつかの架橋技術とともに、米国特許第4,676,980号において開示されている。
本発明の少なくとも1つのヒンジ改変を組み込む、2より大きな価数を有する抗体が、企図される。例えば、三重特異性抗体が調製され得る。例えば、Tutt et al. J. Immunol. 147: 60(1991)を参照されたい。
具体的に企図される他の抗体は、「オリゴクローナル」抗体である。本明細書において使用される場合、「オリゴクローナル抗体」という用語は、別個のモノクローナル抗体の所定の混合物を意味する。オリゴクローナル抗体を作製するための方法は、当技術分野において公知である。例えば、「実施例セクション」の実施例1、PCT公報WO95/20401、米国特許第5,789,208号および同第6,335,163号を参照されたい。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のエピトープに対する所定の抗体混合物からなるオリゴクローナル抗体は、単一の細胞において作製される。他の実施形態では、オリゴクローナル抗体は、共通の軽鎖と対形成して、複数の特異性を有する抗体を生じることができる、複数の重鎖を含む(例えば、PCT公報WO04/009618)。オリゴクローナル抗体は、単一の標的分子(例えば、HMG1)上の複数のエピトープを標的とすることが望ましい場合に、特に有用である。当業者は、どのタイプの抗体または抗体混合物が、意図される目的および所望の必要のために適用可能であるかを知っているか、または決定することができる。特に、本発明の抗体には、免疫グロブリン分子、および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、HMG1抗原に特異的に結合する抗原結合部位(例えば、抗HMG1抗体の1つまたは複数の相補性決定領域(CDR))を含む分子が含まれる。本発明の抗体には、免疫グロブリン分子、および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、HMG2抗原に特異的に結合する抗原結合部位(例えば、抗HMG2抗体の1つまたは複数の相補性決定領域(CDR))を含む分子が含まれることも、具体的に企図される。本発明の免疫グロブリン分子は、免疫グロブリン分子の任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)、またはサブクラスのものでよい。免疫グロブリンは、重鎖および軽鎖の双方を有してよい。IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgYの重鎖の配列は、κ型またはλ型の軽鎖と対になり得る。
本発明の抗体はまた、免疫グロブリン分子、および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な断片、すなわち、抗原結合部位を含む分子を包含し、これらの断片は、それだけには限らないが、Fc領域またはその断片を含めて、別の免疫グロブリンドメインに融合されてもされなくてもよい。本明細書において概説するように、「抗体(antibody)」および「抗体(antibodies)」という用語は、本明細書において説明するHMG1および/またはHMG2に特異的に結合する抗体、完全長抗体、ならびに、免疫グロブリンの免疫学的に活性な断片または本明細書において説明する他のタンパク質に融合された、本明細書において説明する少なくとも1つの新規なアミノ酸残基を含むFc領域を含むそのFc変種またはその断片が含まれる。このような変種Fc融合物には、それだけには限らないが、scFv-Fc融合物、可変領域(例えば、VLおよびVH)-Fc融合物、scFv-scFv-Fc融合物が含まれる。免疫グロブリン分子は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)、またはサブクラスのものでよい。
本発明の抗体はまた、哺乳動物(例えばヒト)において、5日超、10日超、15日超、20日超、25日超、30日超、35日超、40日超、45日超、2ヶ月超、3ヶ月超、4ヶ月超、または5ヶ月超の半減期(例えば、血清半減期)を有する抗体も包含する。哺乳動物(例えばヒト)における本発明の抗体の半減期を延長すると、哺乳動物における前記抗体または抗体断片の血清力価がより高くなり、したがって、前記抗体もしくは抗体断片の投与頻度が少なくなり、かつ/または、投与されるべき前記抗体もしくは抗体断片の濃度が減少する。in vivoでの半減期を延長された抗体は、当業者に公知の技術によって作製することができる。例えば、in vivoでの半減期を延長された抗体は、FcドメインとFcRn受容体の相互作用に関与していることが確認されたアミノ酸残基を改変(例えば、置換、欠失、または付加)することによって作製することができる(例えば、国際公開WO97/34631、WO04/029207、US6,737056、米国特許公報第2003/0190311号を参照されたい。また、下記により詳細に考察する)。
一実施形態では、本発明の抗体は、例えば、Ghetie et al., 1997, Nat Biotech. 15:637-40、Duncan et al, 1988, Nature 332:563-564、Lund et al., 1991, J.Immunol 147:2657-2662、Lund et al, 1992, Mol Immunol 29:53-59、Alegre et al, 1994, Transplantation 57:1537-1543、Hutchins et al., 1995, Proc Natl. Acad Sci U S A 92:11980-11984、Jefferis et al, 1995, Immunol Lett. 44:111-117、Lund et al., 1995, Faseb J 9:115-119、Jefferis et al, 1996, Immunol Lett 54:101-104、Lund et al, 1996, J Immunol 157:4963-4969、Armour et al., 1999, Eur J Immunol 29:2613-2624、Idusogie et al, 2000, J Immunol 164:4178-4184、Reddy et al, 2000, J Immunol 164:1925-1933、Xu et al., 2000, Cell Immunol 200:16-26、Idusogie et al, 2001, J Immunol 166:2571-2575、Shields et al., 2001, J Biol Chem 276:6591-6604、Jefferis et al, 2002, Immunol Lett 82:57-65、Presta et al., 2002, Biochem Soc Trans 30:487-490)、米国特許第5,624,821号、同第5,885,573号、同第5,677,425号、同第6,165,745号、同第6,277,375号、同第5,869,046号、同第6,121,022号、同第5,624,821号、同第5,648,260号、同第6,194,551号、同第6,737,056号、同第6,821,505号、同第6,277,375号、米国特許出願第10/370,749号、およびPCT公報WO94/2935、WO99/58572、WO00/42072、WO02/060919、WO04/029207において開示されているものなど、Fcドメイン内に改変/置換(substation)、および/または新規なアミノ酸を含んでよい。Fcドメインの他の改変/置換は、当業者には容易に明らかになろう。
Fc領域中に改変/置換、および/または新規なアミノ酸残基を含む本発明の抗体は、当業者には周知である多数の方法によって作製することができる。非限定的な例は、(例えば、ハイブリドーマから)抗体コード領域を単離するステップと、単離した抗体コード領域のFc領域中に1つまたは複数の所望の置換を起こすステップを含む。あるいは、本発明の抗体の可変領域を、1つまたは複数の改変/置換および/または新規なアミノ酸残基を含むFc領域をコードするベクター中にサブクローニングしてもよい。
本発明の抗体は、やはり抗体の1種または複数種の機能特性を変更するために、グリコシル化を変更するように改変してもよい。
一実施形態では、本発明の抗体のグリコシル化が改変される。例えば、アグリコシル化抗体を作製することができる(すなわち、この抗体はグリコシル化を欠く)。グリコシル化を変更して、例えば、標的抗原に対する抗体の親和性を増大させることができる。このような炭水化物改変は、例えば、抗体配列内の1つまたは複数の部位のグリコシル化を変更することによって、達成することができる。例えば、1つまたは複数の可変領域フレームワークのグリコシル化部位を消失させ、それによってその部位のグリコシル化を無くす、1つまたは複数のアミノ酸置換を実施することができる。このようなアグリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を増大させ得る。このような手法は、米国特許第5,714,350号および同第6,350,861号においてさらに詳細に記載されている。
さらに、またはあるいは、フコシル残基の量が減少した低フコシル化抗体または分岐GlcNAc構造の増加した抗体など、変更されたタイプのグリコシル化を有する本発明の抗体を作製することができる。このような変更されたグリコシル化パターンは、抗体のADCC能力を増大させることが実証された。このような炭水化物改変は、例えば、グリコシル化機構が変更された宿主細胞において抗体を発現させることによって、達成することができる。グリコシル化機構が変更された細胞は、当技術分野において説明されており、かつ、本発明の組換え抗体を発現させて、それにより、グリコシル化が変更された抗体を産生させる場となる宿主細胞として使用することができる。例えば、Shields, R.L. et al.(2002)J. Biol.Chem. 277:26733-26740、Umana et al.(1999)Nat. Biotech. 17:176-1、ならびに欧州特許EP1,176,195、PCT公報WO03/035835、WO99/54342を参照されたい。
下記により詳細に考察するように、本発明の抗体は、単独で、または他の組成物と組み合わせて使用され得る。抗体はさらに、組換えによってN末端もしくはC末端で異種ポリペプチドに融合させてもよく、または、ポリペプチドもしくは他の組成物に化学的に結合(共有結合および非共有結合を含む)させてもよい。例えば、本発明の抗体は、検出アッセイにおいて標識として有用な分子、および異種ポリペプチド、薬物、放射性核種、または毒素などのエフェクター分子に、組換えによって融合させるか、または結合させてよい。例えば、PCT公報WO92/08495、WO91/14438、WO89/12624、米国特許第5,314,995号、およびEP396,387を参照されたい。
本発明の抗体には、修飾された、すなわち、抗体がHMG1および/もしくはHMG2ポリペプチドまたはその断片に結合すること、ならびに/または所望の応答を生じることを、共有結合が妨げないように、任意のタイプの分子を抗体に共有結合させることによる、誘導体が含まれる。例えば、それだけには限らないが、抗体誘導体には、例えば、公知の保護基/ブロック基、タンパク質分解切断、細胞性リガンドまたは他のタンパク質への連結などによるグリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、誘導体化によって修飾された抗体が含まれる。それだけには限らないが、特異的化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝的合成などを含む公知の技術によって、多数の化学修飾のいずれかを実施することができる。さらに、誘導体は、1つまたは複数の非古典的なアミノ酸を含んでよい。「抗体誘導体およびコンジュゲート」と題をつけた下記のセクション5.5を参照されたい。
本発明の抗体はまた、交差反応性の観点から説明または特定することもできる。本発明のポリペプチドの他のいかなる類似体にも、オルソログにも、ホモログにも結合しない抗体が含まれる。本発明のヒトHMG1ポリペプチド(例えば、ヒトHMG1 AボックスまたはBボックス)と少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも65%、少なくとも60%、少なくとも55%、および少なくとも50%の同一性(当技術分野において公知であり、かつ本明細書において説明する方法を用いて算出)を有するポリペプチド(およびポリペプチド断片)に結合する抗体もまた、本発明に含まれる。特定の実施形態では、本発明の抗体は、ヒトHMG1タンパク質のマウス、ラット、および/またはウサギのホモログ、ならびにそれらの対応するエピトープと交差反応する。同様に、ヒトHMG2ポリペプチド(例えば、ヒトHMG2 AボックスまたはBボックス)と少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも65%、少なくとも60%、少なくとも55%、および少なくとも50%の同一性(当技術分野において公知であり、かつ本明細書において説明する方法を用いて算出)を有するポリペプチド(およびポリペプチド断片)に結合する抗体もまた、本発明に含まれる。ヒトHMG2ポリペプチドまたはその断片に結合する抗体が、ヒトHMG1タンパク質のマウス、ラット、および/またはウサギのホモログ、ならびにそれらの対応するエピトープと交差反応し得ることも、さらに企図される。
本発明のHMG1および/またはHMG2ポリペプチドと95%未満、90%未満、85%未満、80%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満、および50%未満の同一性(当技術分野において公知であり、かつ本明細書において説明する方法を用いて算出)を有するポリペプチドに結合しない抗体もまた、本発明に含まれる。
一実施形態では、HMG1ポリペプチドまたはその断片に特異的に結合する抗体またはその断片は、以下のうち1種または複数種を妨げる/拮抗する/阻害する:RAGEへのHMGB1結合、1種または複数種のパターン認識受容体/分子(本明細書において「PRM」とも呼ぶ)(例えば、Toll様受容体、TLR2およびTLR4)へのHMGB1結合、PAMP(例えば、LPS、CpG)へのHMGB1結合、細胞表面(例えばTHP-1細胞)へのHMGB1結合、HMG1を介した炎症誘発性サイトカインの放出、HMG1を介した炎症、HMG1を介した敗血症、HMG1を介した(例えば関節の)炎症、ならびにHMG1を介した関節炎。これらの活性は、当技術分野において公知である1つまたは多数の方法よって、分析することができる。例えば、US20040005316、US6,468,533、およびUS6,448,223、ならびに下記の「実施例」と題をつけたセクション6を参照されたい。
「50%阻害濃度」(「IC50と略される)という用語は、阻害物質が標的とする分子(例えばHMG1)の所与の活性を50%阻害するのに必要とされる、阻害物質(例えば、本発明の抗体)の濃度を表す。IC50の値が低いほど、より強力な阻害物質に対応することが、当業者には理解されるであろう。一実施形態では、本発明の抗体は、5000ng/ml未満、または4000ng/ml未満、または3000ng/ml未満、または2000ng/ml未満、または1000ng/ml未満、または500ng/ml未満、または250ng/ml未満、または100ng/ml未満、または50ng/ml未満、または10ng/ml未満、または5ng/ml未満のIC50で、HMG1を介した炎症誘発性サイトカインの放出を阻害する。別の実施形態では、本発明の抗体は、1000nM未満、または500nM未満、または250nM未満、または100nM未満、または50nM未満、または25nM未満、または10nM未満、または5nM未満、または0.25nM未満、または0.1nM未満、または0.01nM未満のIC50で、HMG1を介した炎症誘発性サイトカインの放出を阻害する。
一実施形態では、本発明の抗体は、RAGEへのHMGB1結合を妨げる/拮抗する/阻害するが、1種もしくは複数種のPRM(例えば、Toll様受容体、TLR2およびTLR4)へのHMG1結合、ならびに/または1種もしくは複数種のPAMP(例えば、LPS、CpG)へのHMG1結合に実質的に影響を及ぼさない。別の実施形態では、本発明の抗体は、1種もしくは複数種のPRM(例えば、Toll様受容体、TLR2およびTLR4)へのHMG1結合、ならびに/または1種もしくは複数種のPAMP(例えば、LPS、CpG)へのHMG1結合を妨げる/拮抗する/阻害するが、RAGEへのHMGB1結合に実質的に影響を及ぼさない。さらに別の実施形態では、本発明の抗体は、RAGEへのHMGB1結合を妨げ/拮抗し/阻害し、かつ、1種もしくは複数種のPRM(例えば、Toll様受容体、TLR2およびTLR4)へのHMG1結合、ならびに/または1種もしくは複数種のPAMP(例えば、LPS、CpG)へのHMG1結合を阻害する。これらの活性は、当技術分野において公知である1つまたは多数の方法よって、分析することができる。例えば、US20040005316、US6,468,533、およびUS6,448,223、ならびに下記の「実施例」と題をつけたセクションを参照されたい。
特定の実施形態では、本発明の抗体は、少なくとも約10%、または少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または約100%、RAGEへのHMGB1結合を阻害する。別の特定の実施形態では、本発明の抗体は、少なくとも10%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または100%、1種または複数種のPRM(例えば、Toll様受容体、TLR2およびTLR4)へのHMG1結合を阻害する。特定の実施形態では、本発明の抗体は、少なくとも約10%、または少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または約100%、1種または複数種のPAMP(例えば、LPS、CpG)へのHMG1結合を阻害する。別の特定の実施形態では、本発明の抗体は、少なくとも10%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または100%、RAGEへのHMG1結合を阻害する。別の特定の実施形態では、本発明の抗体は、少なくとも10%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または100%、1種または複数種のPRM(例えば、Toll様受容体、TLR2およびTLR4)へのHMG1結合を阻害する。さらに別の特定の実施形態では、本発明の抗体は、少なくとも10%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または100%、1種または複数種のPAMP(例えば、LPS、CpG)へのHMG1結合を阻害する。
一実施形態では、本発明の抗体は、HMG1を介した1種または複数種の炎症誘発性因子の増強を阻害する。特定の実施形態では、炎症誘発性因子は、それだけには限らないが、TLRリガンド(例えば、LPS、dsRNA、Poly(I:C)、イミキノド(imiquinod)、R-848、CpG、PAM3-CSK4、フラゲリン、ザイモザン、ペプチドグリカン、リポテイコ(lipoteicholic)酸など)を含めて、PAMPである。別の実施形態では、本発明の抗体は、1種または複数種のPAMPによって刺激されるパターン認識受容体シグナル伝達のHMG1を介した増強を阻害する。特定の実施形態では、本発明の抗体は、1種または複数種のTLRリガンドによって刺激されるTLRシグナル伝達のHMG1を介した増強を阻害する。その他の特定の実施形態では、TLRシグナル伝達は、それだけには限らないが、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、およびTLR6:TLR2やTLR2:TLR1などTLRのヘテロ二量体を含めて、1種または複数種のTLRによって媒介される。1種または複数種の炎症誘発性因子、特にTLRリガンドのHMG1を介した増強に対する抗体の影響を決定するための具体的な方法は、本明細書において開示される(以下の実施例13および実施例14を参照されたい)。
本明細書において実証するように、抗体は、異なる供給源から単離された同じポリペプチドを区別することができる。特定の理論に拘泥するものではないが、異なる供給源から単離された、アミノ酸配列が類似または同一であるポリペプチドは、それだけには限らないが、翻訳後修飾(例えば、リン酸化、アセチル化、メチル化、グリコシル化など)、全般的な構造の変更(例えば、ジスルフィド結合および/またはフォールディングの変化)、ならびに、そのポリペプチドが結合していてよい他の任意の分子(例えば、塩、ポリヌクレオチドおよび/または他のポリペプチドなど付加的なサブユニット)の差異を含めて、いくつかの差異によって区別することができる。一実施形態では、本発明の抗体は、(例えば、哺乳動物の細胞または組織から単離された)天然のHMG1の場合と同じ親和力またはより強い親和力で、組換えによって大腸菌(E.coli)において産生されたHMG1に特異的に結合する。別の実施形態では、本発明の抗体は、大腸菌において産生された組換えHMG1の場合と同じ親和力またはより強い親和力で、(例えば、哺乳動物の細胞または組織から単離された)天然のHMG1に結合する。さらに別の実施形態では、本発明の抗体は、それだけには限らないが、(例えば、凍結解凍によって細胞から単離された)核HMG1、(例えば、壊死細胞の上清から単離された)放出されたHMG1、および(例えば、LPSによって刺激された細胞など刺激された細胞から単離された)活性化HMG1を含めて、1種または複数種の形態の天然HMG1に結合すると考えられる。さらに別の実施形態では、本発明の抗体は、それだけには限らないが、(例えば、凍結解凍によって細胞から単離された)核HMG1、(例えば、壊死細胞の上清から単離された)放出されたHMG1、および(例えば、LPSによって刺激された細胞など刺激された細胞から単離された)活性化HMG1を含めて、1種または複数種の形態の天然HMG1に結合しないと考えられる。天然HMG1および組換えHMG1を得るための具体的な方法は、本明細書において開示される(下記の実施例2を参照されたい)。
一実施形態では、本発明の抗体は、可溶性のHMG1および/またはHMG2に特異的に結合する。別の実施形態では、本発明の抗体は、固定化されたHMG1および/またはHMG2に特異的に結合する。さらに別の実施形態では、本発明の抗体は、可溶性のHMG1および/またはHMG2にも、不溶性のHMG1および/またはHMG2にも特異的に結合する。
前述したように、HMG1およびHMG2は、公知のポリヌクレオチド(すなわちDNAおよびRNA)結合タンパク質である。一実施形態では、本発明の抗体は、ポリヌクレオチド分子に結合しているHMG1および/またはHMG2に結合する。別の実施形態では、本発明の抗体は、以下のうち1種または複数種を妨げる/拮抗する/阻害する:RAGEへのHMGB1結合、1種または複数種のPRM(例えば、Toll様受容体、TLR2およびTLR4)またはPAMP(例えば、LPS)へのHMGB1結合、細胞表面(例えばTHP-1細胞)へのHMGB1結合、HMG1を介した炎症誘発性サイトカインの放出、HMG1を介した炎症、HMG1を介した敗血症、HMG1を介した(例えば関節の)炎症、ならびにHMG1を介した関節炎(ここで、前記HMG1はポリヌクレオチドに結合している)。特定の実施形態では、ポリヌクレオチド分子は、炎症応答を促進するもの(例えば、微生物または壊死細胞に由来するポリヌクレオチド)である。
特定の実施形態では、本発明の抗体は、非アセチル化HMG1よりも高い親和力で、アセチル化HMG1に結合する。別の特定の実施形態では、本発明の抗体は、アセチル化よりも高い親和力で、非アセチル化HMG1に結合する。さらに別の特定の実施形態では、本発明の抗体は、アセチル化HMG1および非アセチル化HMG1の両方に、実質的に同じ親和力で結合する。
別の実施形態では、本発明の高親和性抗体は、ヒトまたは他の動物、例えば、哺乳動物および無脊椎動物のHMG1ポリペプチドまたはその抗原性断片を含むか、あるいはそれからなる(または本質的にそれからなる)ポリペプチドに特異的に結合する。特定の実施形態では、本発明の高親和性抗体は、ヒトHMG1ポリペプチド(配列番号1または配列番号2)を含むか、あるいはそれからなる(または本質的にそれからなる)ポリペプチドに特異的に結合する。ヒトおよび他の動物のHMG1ポリペプチドは、当技術分野において周知である(例えば、例えば、US20040005316、US6,468,533、およびUS6,448,223を参照されたい)。
ある実施形態では、本発明の高親和性抗体は、配列番号1または配列番号2のヒトHMG1ポリペプチドに対して少なくとも60%の同一性、または少なくとも70%の同一性、または少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、または少なくとも少なくとも97%の同一性、または少なくとも99%の同一性、または100%の同一性を有するHMG1ポリペプチドを含むか、あるいはそれからなる(または本質的にそれからなる)ポリペプチドに特異的に結合する。
別の実施形態では、本発明の高親和性抗体は、配列番号3のヒトHMG1 Aボックスポリペプチドに対して少なくとも60%の同一性、または少なくとも70%の同一性、または少なくとも80%の同一性、または少なくとも85%の同一性、または少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性、または少なくとも少なくとも97%の同一性、または少なくとも99%の同一性、または100%の同一性を有するポリペプチドを含むか、あるいはそれからなる(または本質的にそれからなる)ポリペプチドに特異的に結合する。
さらに別の実施形態では、本発明の高親和性抗体は、配列番号4および/または配列番号28および/または配列番号29のヒトHMG1 Bボックスポリペプチドに対して少なくとも60%の同一性、または少なくとも70%の同一性、または少なくとも80%の同一性、または少なくとも85%の同一性、または少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性、または少なくとも少なくとも97%の同一性、または少なくとも99%の同一性、または100%の同一性を有するポリペプチドを含むか、あるいはそれからなる(または本質的にそれからなる)ポリペプチドに特異的に結合する。
別の実施形態では、本発明の高親和性抗体は、ヒトまたは他の動物、例えば、哺乳動物および無脊椎動物のHMG2ポリペプチドまたはその抗原性断片を含むか、あるいはそれからなる(または本質的にそれからなる)ポリペプチドに特異的に結合する。特定の実施形態では、本発明の高親和性抗体は、ヒトHMG2ポリペプチド(配列番号21)を含むか、あるいはそれからなる(または本質的にそれからなる)ポリペプチドに特異的に結合する。ヒトおよび他の動物のHMG2ポリペプチドは、当技術分野において周知である。例えば、Jantzen et al., 1990, Nature 344:830-6、Kolodrubetz 1990, Nucleic Acids Res.18:5565、Laudet et al., 1993, Nucleic Acids Res. 21:2493-501、およびThomas et al., 2001, Trends Biochem Sci. 26:167-74を参照されたい。
一実施形態では、本発明の高親和性抗体は、配列番号21のヒトHMG2ポリペプチドに対して少なくとも60%の同一性、または少なくとも70%の同一性、または少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、または少なくとも少なくとも97%の同一性、または少なくとも99%の同一性、または100%の同一性を有するHMG2ポリペプチドを含むか、あるいはそれからなる(または本質的にそれからなる)ポリペプチドに特異的に結合する。
別の実施形態では、本発明の高親和性抗体は、配列番号22のヒトHMG2 Aボックスポリペプチドに対して少なくとも60%の同一性、または少なくとも70%の同一性、または少なくとも80%の同一性、または少なくとも85%の同一性、または少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性、または少なくとも少なくとも97%の同一性、または少なくとも99%の同一性、または100%の同一性を有するポリペプチドを含むか、あるいはそれからなる(または本質的にそれからなる)ポリペプチドに特異的に結合する。
さらに別の実施形態では、本発明の高親和性抗体は、配列番号23のヒトHMG2 Bボックスポリペプチドに対して少なくとも60%の同一性、または少なくとも70%の同一性、または少なくとも80%の同一性、または少なくとも85%の同一性、または少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性、または少なくとも少なくとも97%の同一性、または少なくとも99%の同一性、または100%の同一性を有するポリペプチドを含むか、あるいはそれからなる(または本質的にそれからなる)ポリペプチドに特異的に結合する。
2つのアミノ酸配列(または2つの核酸配列)の同一性パーセントは、例えば、最適な比較目的のためにそれらの配列を整列させることによって(例えば、第1配列の配列中にギャップを導入することができる)、決定することができる。次いで、対応する位置のアミノ酸またはヌクレオチドを比較し、また、2つの配列間の同一性パーセントは、それらの配列が共有する同一位置の数の関数である(すなわち、同一性%=同一位置の数/位置の総数×100)。2つの配列の実際の比較は、例えば、数学アルゴリズムを用いて、周知の方法によって遂行することができる。このような数学アルゴリズムの具体的な非限定的例は、Karlin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:5873-5877(1993)に記載されている。このようなアルゴリズムは、Schaffer et al., Nucleic Acids Res., 29:2994-3005(2001)に記載されているように、BLASTNプログラムおよびBLASTXプログラム(バージョン2.2)に組み入れられる。BLASTプログラムおよびGapped BLASTプログラムを使用する場合、各プログラム(例えばBLASTN)の初期設定パラメーターを使用することができる。2002年4月10日に利用可能である、http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。一実施形態では、検索されるデータベースは、非冗長(NR)データベースであり、配列比較のためのパラメーターは、次のように設定することができる:フィルター無し、期待値10、ワードサイズ3、行列はBLOSUM62、また、ギャップコスト(Gap Cost)は、存在(Existence)11および伸長1である。
配列比較のために利用される数学アルゴリズムの別の非限定的な例は、MyersおよびMiller, CABIOS(1989)のアルゴリズムである。このようなアルゴリズムは、GCG(Accelrys社)配列アライメントソフトウェアパッケージの一部分である、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み入れられる。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを利用する場合、PAM120ウェイト残基テーブル、ギャップ長ペナルティ12、およびギャップペナルティ4を使用することができる。配列解析のためのその他のアルゴリズムは、当技術分野において公知であり、TorellisおよびRobotti, Comput. Appl. Biosci., 10: 3-5(1994)に記載されているADVANCEおよびADAM、ならびに、PearsonおよびLipman, Proc. Natl. Acad. Sci USA, 85: 2444-8(1988)に記載されているFASTAが含まれる。
別の実施形態では、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラム(http://www.accelrys.comで利用可能、2001年8月31日に利用可能)によって、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、Blossom63行列またはPAM250行列のいずれか、ならびに、ギャップウェイト12、10、8、6、または4、および長さウェイト2、3、または4を使用して、得ることができる。さらに別の実施形態では、2つの核酸配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラム(http://www.cgc.comで利用可能)によって、ギャップウェイト50および長さウェイト3を用いて得ることができる。
本発明の別の実施形態は、10-5M未満、または10-6M未満、または10-7M未満、または10-8M未満、または10-9M未満、または10-10M未満、または10-11M未満、または10-12M未満、または10-13M未満、または5×10-13M未満、または10-14M未満、5×10-14M未満、または10-15M未満、または5×10-15M未満の解離定数、すなわちKd(koff/kon)で、HMG1およびその抗原性断片に特異的に結合する抗体である。さらに別の実施形態では、HMG1およびその抗原性断片に特異的に結合する本発明の抗体は、約10-7M〜約10-8M、約10-8M〜約10-9M、約10-9M〜約10-10M、約10-10M〜約10-11M、約10-11M〜約10-12M、約10-12M〜約10-13M、約10-13M〜約10-14Mの解離定数、すなわちKd(koff/kon)を有する。さらに別の実施形態では、HMG1およびその抗原性断片に特異的に結合する本発明の抗体は、10-7M〜10-8M、10-8M〜10-9M、10-9M〜10-10M、10-10M〜10-11M、10-11M〜10-12M、10-12M〜10-13M、10-13M〜10-14Mの解離定数、すなわちKd(koff/kon)を有する。
本発明の別の実施形態は、10-5M未満、または10-6M未満、または10-7M未満、または10-8M未満、または10-9M未満、または10-10M未満、または10-11M未満、または10-12M未満、または10-13M未満、または5×10-13M未満、または10-14M未満、5×10-14M未満、または10-15M未満、または5×10-15M未満の解離定数、すなわちKd(koff/kon)で、HMG2およびその抗原性断片に特異的に結合する抗体である。さらに別の実施形態では、HMG2およびその抗原性断片に特異的に結合する本発明の抗体は、約10-7M〜約10-8M、約10-8M〜約10-9M、約10-9M〜約10-10M、約10-10M〜約10-11M、約10-11M〜約10-12M、約10-12M〜約10-13M、約10-13M〜約10-14Mの解離定数、すなわちKd(koff/kon)を有する。さらに別の実施形態では、HMG2およびその抗原性断片に特異的に結合する本発明の抗体は、10-7M〜10-8M、10-8M〜10-9M、10-9M〜10-10M、10-10M〜10-11M、10-11M〜10-12M、10-12M〜10-13M、10-13M〜10-14Mの解離定数、すなわちKd(koff/kon)を有する。
平衡解離定数(Kd)が、koff/konと定義されることは、当技術分野において周知である。Kdの小さい(すなわち高親和性の)結合分子(例えば、および抗体)の方が、Kdの大きい(すなわち低親和性の)結合分子(例えば、および抗体)よりも好ましいことが、一般に理解されている。しかしながら、場合によっては、konまたはkoffの値の方が、Kdの値よりも重要なことがある。当業者は、反応速度パラメーターが、所与の抗体用途にとって最も重要であると判断することができる。いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、他の抗原に対してよりも1種の抗原に対して、より小さなKdを有する。
別の実施形態では、抗体は、1×10-3s-1未満、または3×10-3s-1未満のkoffで、HMG1およびその抗原性断片に結合する。他の実施形態では、抗体は、10-3s-1未満、5×10-3s-1未満、10-4s-1未満、5×10-4s-1未満、10-5s-1未満、5×10-5s-1未満、10-6s-1未満、5×10-6s-1未満、10-7s-1未満、5×10-7s-1未満、10-8s-1未満、5×10-8s-1未満、10-9s-1未満、5×10-9s-1未満、または10-10s-1未満のkoffで、HMG1およびその抗原性断片に結合する。
別の実施形態では、抗体は、1×10-3s-1未満、または3×10-3s-1未満のKoffで、HMG2およびその抗原性断片に結合する。他の実施形態では、抗体は、10-3s-1未満、5×10-3s-1未満、10-4s-1未満、5×10-4s-1未満、10-5s-1未満、5×10-5s-1未満、10-6s-1未満、5×10-6s-1未満、10-7s-1未満、5×10-7s-1未満、10-8s-1未満、5×10-8s-1未満、10-9s-1未満、5×10-9s-1未満、または10-10s-1未満のkoffで、HMG2およびその抗原性断片に結合する。
別の実施形態では、本発明の抗体は、少なくとも105M-1s-1、少なくとも5×105M-1s-1、少なくとも106M-1s-1、少なくとも5×106M-1s-1、少なくとも107M-1s-1、少なくとも5×107M-1s-1、または少なくとも108M-1s-1、または少なくとも109M-1s-1の結合速度定数、すなわちkon速度で、HMG1および/またはその抗原性断片に結合する。
別の実施形態では、本発明の抗体は、少なくとも105M-1s-1、少なくとも5×105M-1s-1、少なくとも106M-1s-1、少なくとも5×106M-1s-1、少なくとも107M-1s-1、少なくとも5×107M-1s-1、または少なくとも108M-1s-1、または少なくとも109M-1s-1の結合速度定数、すなわちkon速度で、HMG2および/またはその抗原性断片に結合する。
抗体は、すべてのポリペプチドと同様に、等電点(pI)を有し、これは、一般に、ポリペプチドが正味電荷を保有しないpHと定義される。タンパク質の溶解度は、典型的には、溶液のpHがそのタンパク質の等電点(pI)に等しい場合に最も低いことが、当技術分野において公知である。本明細書において使用される場合、pI値は、優勢な荷電型のpIと定義される。タンパク質のpIは、それだけには限らないが、等電点電気泳動および様々なコンピュータアルゴリズムを含めて、様々な方法によって決定することができる(例えば、Bjellqvist et al., 1993, Electrophoresis 14:1023を参照されたい)。さらに、抗体のFabドメインの熱融解温度(Tm)は、抗体の熱安定性の好適な指標となることができ、さらに、貯蔵寿命の指標になることもできる。Tmが低いほど、凝集がより多く/安定性がより低いことが示されるのに対し、Tmが高いほど、凝集がより少なく/安定性がより高いことが示される。したがって、いくつかの実施形態では、Tmのより高い抗体が好ましい。タンパク質ドメイン(例えば、Fabドメイン)のTmは、当技術分野において公知の任意の標準的方法を用いて、例えば、示差走査熱量測定によって、測定することができる(例えば、Vermeer et al., 2000, Biophys.J. 78:394-404、Vermeer et al., 2000, Biophys.J. 79: 2150-2154を参照されたい)。
したがって、本発明のさらなる非排他的実施形態は、特定の等電点(pI)や融解温度(Tm)などいくつかの好ましい生化学的特徴を有する本発明の高親和性抗体を含む。
より具体的には、一実施形態では、本発明の高親和性抗体は、5.5〜9.5の範囲にわたるpIを有する。さらに別の特定の実施形態では、本発明の高親和性抗体は、約5.5〜約6.0、または約6.0〜約6.5、または約6.5〜約7.0、または約7.0〜約7.5、または約7.5〜約8.0、または約8.0〜約8.5、または約8.5〜約9.0、または約9.0〜約9.5の範囲にわたるpIを有する。他の特定の実施形態では、本発明の高親和性抗体は、5.5〜6.0、または6.0〜6.5、または6.5〜7.0、または7.0〜7.5、または7.5〜8.0、または8.0〜8.5、または8.5〜9.0、または9.0〜9.5の範囲にわたるpIを有する。さらにより具体的には、本発明の高親和性抗体は、少なくとも5.5、または少なくとも6.0、または少なくとも6.3、または少なくとも6.5、または少なくとも6.7、または少なくとも6.9、または少なくとも7.1、または少なくとも7.3、または少なくとも7.5、または少なくとも7.7、または少なくとも7.9、または少なくとも8.1、または少なくとも8.3、または少なくとも8.5、または少なくとも8.7、または少なくとも8.9、または少なくとも9.1、または少なくとも9.3、または少なくとも9.5のpIを有する。他の特定の実施形態では、本発明の高親和性抗体は、少なくとも約5.5、または少なくとも約6.0、または少なくとも約6.3、または少なくとも約6.5、または少なくとも約6.7、または少なくとも約6.9、または少なくとも約7.1、または少なくとも約7.3、または少なくとも約7.5、または少なくとも約7.7、または少なくとも約7.9、または少なくとも約8.1、または少なくとも約8.3、または少なくとも約8.5、または少なくとも約8.7、または少なくとも約8.9、または少なくとも約9.1、または少なくとも約9.3、または少なくとも約9.5のpIを有する。
抗体中のイオン性残基の数および位置を変更してpIを調整することによって、溶解度を最適化することが可能である。例えば、ポリペプチドのpIは、適切なアミノ酸置換を起こすことによって(例えば、アラニンなどの非荷電残基をリシンなどの荷電アミノ酸で置換することによって)、操作することができる。特定の理論に拘泥するものではないが、抗体のpIの変化をもたらす、抗体のアミノ酸置換により、抗体の溶解性および/または安定性が改善され得る。当業者は、所望のpIを実現するために、どのアミノ酸置換が個々の抗体に対して最も適切であるかを理解するはずである。一実施形態では、pIを変更するために、本発明の抗体において置換が行われる。FcγRへの結合の変更をもたらす、Fc領域の置換(前述)もまた、pIの変化をもたらし得ることが、具体的に企図される。別の実施形態では、Fc領域の置換は、具体的には、所望のFcγR結合の変更および任意の所望のpI変化の両方をもたらすように選択される。
一実施形態では、本発明の高親和性抗体は、65℃〜120℃の範囲にわたるTmを有する。特定の実施形態では、本発明の高親和性抗体は、約75℃〜約120℃、または約75℃〜約85℃、または約85℃〜約95℃、または約95℃〜約105℃、または約105℃〜約115℃、または約115℃〜約120℃の範囲にわたるTmを有する。他の特定の実施形態では、本発明の高親和性抗体は、75℃〜120℃、または75℃〜85℃、または85℃〜95℃、または95℃〜105℃、または105℃〜115℃、または115℃〜120℃の範囲にわたるTmを有する。さらに別の特定の実施形態では、本発明の高親和性抗体は、少なくとも約65℃、または少なくとも約70℃、または少なくとも約75℃、または少なくとも約80℃、または少なくとも約85℃、または少なくとも約90℃、または少なくとも約95℃、または少なくとも約100℃、または少なくとも約105℃、または少なくとも約110℃、または少なくとも約115℃、または少なくとも約120℃のTmを有する。さらに別の特定の実施形態では、本発明の高親和性抗体は、少なくとも65℃、または少なくとも70℃、または少なくとも75℃、または少なくとも80℃、または少なくとも85℃、または少なくとも90℃、または少なくとも95℃、または少なくとも100℃、または少なくとも105℃、または少なくとも110℃、または少なくとも115℃、または少なくとも120℃のTmを有する。
特定の実施形態では、本発明の高親和性抗体またはその断片は、ヒト抗体またはヒト化抗体である。
一実施形態では、本発明は、高い親和力でHMG1に特異的に結合する、特定の抗体(およびその断片)も含む。特に、米国微生物株保存機関(ATCC、10801 University Boulevard、マナッサス、バージニア州、20110-2209)に寄託され、それぞれATCC寄託番号PTA-6142、PTA-6143、PTA-6259、およびPTA-6258を割り当てられている、本明細書において「S2」、「S4」、「S16」、および「G4」と呼ばれる抗HMG1抗体である。これらの寄託物は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約の規定に従って維持される。参照される株は、ブダペスト条約の規定に従って維持されるため、ブダペスト条約に加盟している特許庁は利用可能となる。
別の実施形態では、本発明は、本明細書において開示する1つまたは複数の可変領域を含むHMG1および/またはHMG2に特異的に結合する抗体を含む(図2A〜2J、配列番号5〜20、24〜27、および30〜73を参照されたい)。
本発明はまた、可変軽鎖(VL)ドメインおよび/または可変重鎖(VH)ドメインに1つまたは複数のアミノ酸残基置換を含む、変種G2、G4、G9、G12、G16、G20、G34、G35、S2、S6、S10、S12、S14、S16、S17、およびE11(図2A〜2J、配列番号5〜20、24〜27、および30〜73を参照されたい)も包含する。本発明はまた、1つもしくは複数のVL CDRおよび/または1つもしくは複数のVH CDRに1つまたは複数のさらなるアミノ酸残基置換を有する、変種G2、G4、G9、G12、G16、G20、G34、G35、S2、S6、S10、S12、S14、S16、S17、およびE11(図2A〜2J、配列番号5〜20、24〜27、および30〜73を参照されたい)も包含する。G2、G4、G9、G12、G16、G20、G34、G35、S2、S6、S10、S12、S14、S16、S17、およびE11(図2A〜2J、配列番号5〜20、24〜27、および30〜73を参照されたい)のVHドメイン、VH CDR、VLドメイン、および/またはVL CDRに置換を導入することによって作製した抗体を、例えば、(例えば、それだけには限らないが、ELISAおよびBIAcoreを含むイムノアッセイによって)、HMG1および/もしくはHMG2に結合する能力に関して、または、HMG1によって誘導されるサイトカイン放出を阻害する能力、炎症性疾患または1種もしくは複数種のその症状を予防、治療、管理、もしくは改善する能力に関して、in vitroおよびin vivoで試験することができる。
本明細書において参照される相補性決定領域(CDR)残基数は、Kabatら(1991, NIH Publication 91-3242, National Technical Information Service、スプリングフィールド、バージニア州)のものであることが理解されるであろう。具体的には、軽鎖可変ドメイン中の残基24〜34(CDR1)、50〜56(CDR2)、および89〜97(CDR3)、ならびに重鎖可変ドメイン中の残基31〜35(CDR1)、50〜65(CDR2)、および95〜102(CDR3)である。CDRは、抗体によってかなり異なる(および、定義上、Kabatコンセンサス配列との相同性を示さない)ことに留意されたい。フレームワーク残基の最大のアライメントは、Fv領域のために使用されるように、番号付け系中に「スペーサー」残基の挿入を必要とする。本明細書において参照されるCDRは、前記のKabatらのものであることを理解されたい。さらに、任意の所与のKabat部位番号でのいくつかの個々の残基の同一性は、種間の分岐または対立遺伝子の分岐が原因で、抗体鎖によって異なることがある。
他の実施形態では、本発明は、本明細書において開示するCDR(例えば、図2A〜2J、下線によって示したCDRを参照されたい)のうち少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つを有する抗体を含む。さらに別の実施形態では、本発明は、表4に列挙したVH CDRのいずれかのアミノ酸配列を有するか、かつ/または表4に列挙した抗体重鎖可変領域のいずれかの重鎖可変領域に由来するVH CDRを含むHMG1および/またはHMG2に特異的に結合する抗体を包含する。別の特定の実施形態では、本発明は、表4に列挙したVL CDRのいずれかのアミノ酸配列を有するか、かつ/または表4に列挙した抗体軽鎖可変領域のいずれかの軽鎖可変領域に由来するVL CDRを含むHMG1および/またはHMG2に特異的に結合する抗体を包含する。
本発明は、HMG1および/またはHMG2に特異的に結合する本明細書において説明するVHドメイン、VH CDR、VLドメイン、またはVL CDRの誘導体を含む、HMG1および/またはHMG2に特異的に結合する抗体を包含する。当業者に公知の標準的技術を用いて、本発明の抗体をコードするヌクレオチド配列中に変異(例えば、付加、欠失、および/または置換)を導入することができ、これらの技術には、例えば、部位特異的変異誘発およびPCR法による変異誘発が含まれ、アミノ酸置換を起こすためにごく普通に使用される。一実施形態では、VH CDRおよび/またはVL CDRの誘導体は、元のVH CDRおよび/またはVL CDRと比べて、25個未満のアミノ酸置換、20個未満のアミノ酸置換、15個未満のアミノ酸置換、10個未満のアミノ酸置換、5個未満のアミノ酸置換、4個未満のアミノ酸置換、3個未満のアミノ酸置換、または2個未満のアミノ酸置換を含む。別の実施形態では、VH CDRおよび/またはVL CDRの誘導体は、1つまたは複数の予測される不可欠ではないアミノ酸残基(すなわち、抗体がHMG1および/またはHMG2に特異的に結合するのに不可欠ではないアミノ酸残基)に対して起こされた保存的アミノ酸置換を有する(例えば、前記)。あるいは、変異は、飽和的変異誘発などによって、VH CDRおよび/またはVL CDRのコード配列の全体または一部分にランダムに導入することができ、かつ、得られる変異体は、活性を保持している変異体を同定するために、生物活性に関してスクリーニングすることができる。変異誘発後、コードされた抗体を発現させることができ、また、抗体の活性を決定することができる。
本発明はまた、HMG1および/もしくはHMG2またはその断片に特異的に結合する抗体であって、G2、G4、G9、G12、G16、G20、G34、G35、S2、S6、S10、S12、S14、S16、S17、およびE11(図2A〜2J、配列番号5〜20、24〜27、および30〜73を参照されたい)の可変重鎖および/または可変軽鎖のアミノ酸配列に少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一である可変重鎖および/または可変軽鎖のアミノ酸配列を含む抗体も包含する。本発明はまた、HMG1および/もしくはHMG2またはその断片に特異的に結合する抗体であって、G2、G4、G9、G12、G16、G20、G34、G35、S2、S6、S10、S12、S14、S16、S17、およびE11(図2A〜2J、配列番号5〜20、24〜27、および30〜73を参照されたい)の可変重鎖および/または可変軽鎖のアミノ酸配列に少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%同一である可変重鎖および/または可変軽鎖のアミノ酸配列を含む抗体も包含する。
本発明は、HMG1および/もしくはHMG2またはその断片に特異的に結合する抗体であって、G2、G4、G9、G12、G16、G20、G34、G35、S2、S6、S10、S12、S14、S16、S17、およびE11(図2A〜2J、配列番号5〜20、24〜27、および30〜73を参照されたい)の1つまたは複数のCDRのアミノ酸配列に少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一である1つまたは複数のCDRのアミノ酸配列を含む抗体または抗体断片もさらに包含する。本発明は、HMG1および/もしくはHMG2またはその断片に特異的に結合する抗体であって、G2、G4、G9、G12、G16、G20、G34、G35、S2、S6、S10、S12、S14、S16、S17、およびE11(図2A〜2J、配列番号5〜20、24〜27、および30〜73を参照されたい)の1つまたは複数のCDRのアミノ酸配列に少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%同一である1つまたは複数のCDRのアミノ酸配列を含む抗体または抗体断片もさらに包含する。2つのアミノ酸配列の同一性パーセントの決定は、BLASTタンパク質検索を含めて、当業者に公知の任意の方法によって決定することができる。
本発明はまた、HMG1および/もしくはHMG2またはその断片に特異的に結合する抗体であって、ストリンジェントな条件下で、G2、G4、G9、G12、G16、G20、G34、G35、S2、S6、S10、S12、S14、S16、S17、およびE11(図2A〜2J、配列番号5〜20、24〜27、および30〜73を参照されたい)のヌクレオチド配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列にコードされている抗体も包含する。別の実施形態では、本発明は、HMG1および/もしくはHMG2またはその断片に特異的に結合する抗体であって、ストリンジェントな条件下で、G2、G4、G9、G12、G16、G20、G34、G35、S2、S6、S10、S12、S14、S16、S17、およびE11(図2A〜2J、配列番号5〜20、24〜27、および30〜73を参照されたい)の1つまたは複数のCDRのヌクレオチド配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列にコードされている1つまたは複数のCDRを含む抗体を包含する。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件には、それだけには限らないが、約45℃、6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中のフィルター結合DNAへのハイブリダイゼーションとそれに続く、約50〜65℃、0.2×SSC/0.1%SDS中で1回もしくは複数回の洗浄、約45℃、6×SSC中のフィルター結合DNAへのハイブリダイゼーションとそれに続く、約60℃、0.1×SSC/0.2%SDS中で1回もしくは複数回洗浄など高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件、または、当業者に公知である他の任意のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件が含まれる(例えば、Ausubel, F.M. et al.編 1989 Current Protocols in Molecular Biology、第1巻、Green Publishing Associates, Inc.およびJohn Wiley and Sons, Inc., ニューヨーク、6.3.1 〜6.3.6頁および2.10.3頁を参照されたい)。
寄託された抗体のCDRのうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または6つすべてを有する抗体は、本発明の特定の実施形態である。これらの抗体(およびその断片)をコードする単離されたポリヌクレオチドもまた、本発明の特定の実施形態である。「S2」、「S4」、「S16」、および「G4」、ならびに本発明のいくつかの他の具体的な抗HMG1抗体の結合特徴および機能特徴を表1に記載する。
Figure 2009517404
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本発明の別の実施形態は、前述した(表1を参照されたい)対象の抗HMG1抗体の任意の部分への保存的アミノ酸置換の導入を含む。「保存的アミノ酸置換」とは、機能的に等価なアミノ酸を置換するアミノ酸置換を意味することは、当技術分野において周知である。保存的なアミノ酸変化は、結果として生じるペプチドのアミノ酸配列のサイレントな変化をもたらす。例えば、同様の極性を有する1つまたは複数のアミノ酸は、機能的等価物として作用し、そのペプチドのアミノ酸配列内にサイレントな変更をもたらす。電荷が中性であり、また、ある残基をより小型の残基で置換する置換もまた、それらの残基が異なるグループのものでも、「保存的置換」とみなしてよい(例えば、より小型のイソロイシンによるフェニルアラニンの置換)。類似した側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野において定義されている。保存的アミノ酸置換のいくつかのファミリーを表2に示す。
Figure 2009517404
「保存的アミノ酸置換」という用語はまた、アミノ酸の類似体または変種の使用も意味する。表現型的にサイレントなアミノ酸置換を作り出す方法に関する手引きは、Bowie et al., 「Deciphering the Message in Protein Sequences: Tolerance to Amino Acid Substitutions」、(1990, Science 247:1306-1310)において提供されている。
5.3 本発明の抗体を作製およびスクリーニングする方法
HMG1ポリペプチドに特異的に結合する高親和性抗体または断片は、例えば、イムノアッセイ、BIAcore、または当業者に公知である他の技術によって、同定することができる。
HMGB1-PAMP複合体に選択的に結合する抗体は、HMGB1-PAMP複合体とPRMとの相互作用を阻止し、それによって、そのPAMPに対するHMGB1によって増強された炎症応答を選択的に阻害し得る。特定の理論に拘泥するものではないが、HMGB1-PAMP複合体を認識する抗HMG1抗体は、1種または複数種のPAMPを含むアジュバント(例えば、フロイントのアジュバント)と組み合わせたHMGB1で動物を免疫化し、かつ、HMGB1-PAMP 複合体にのみ結合する抗体をスクリーニングすることによって産生させ得ることが予想される。あるいは、HMGB1-PAMP複合体を認識する抗HMG1抗体は、HMGB1-PAMP複合体を用いてパンニングすることによって、抗体ライブラリー(例えば、ファージディスプレイまたは発現ライブラリー)から単離することができる。
HMGB1に結合し、1つまたは複数のHMGB1-PAMP複合体の形成を阻止する抗体は、そのPAMPによるシグナル伝達のHMGB1を介した相乗作用を妨げることができる。特定の理論に拘泥するものではないが、HMGB1-PAMP複合体の形成を阻止する抗体は、PAMPに結合していない非常に純粋なHMGB1抗原を用いてパンニングし、かつ、HMGB1-PAMP複合体の形成を阻止する抗体をスクリーニングすることによって、抗体ライブラリー(例えば、ファージディスプレイまたは発現ライブラリー)から単離することができる。動物は、アジュバント中に存在するPAMPとすでに複合体を形成しているHMGB1、または細胞核酸もしくは他の生物学的分子と複合体を形成しているHMGB1に対してのみ抗体を産生する可能性が高いため、動物を免疫化することによって産生させた抗体は、PAMPへのHMGB1の結合を効率的に阻止する見込みは少ないことが予想される。
本発明の抗体は、当技術分野において公知である任意の適切な方法によって作製することができる。対象の抗原に対するポリクローナル抗体は、当技術分野において周知の様々な手順によって作製することができる。例えば、本発明のHMG1ポリペプチドを、それだけには限らないが、ウサギ、マウス、ラットなどを含めて、様々な宿主動物に投与して、その抗原に特異的なポリクローナル抗体を含む血清の産生を誘導することができる。宿主の種に応じて、免疫学的応答を増大させるために、様々なアジュバントを使用することができ、これらには、それだけには限らないが、フロイント(完全および不完全)、水酸化アルミニウムなどの無機質ゲル、リゾレシチンなどの表面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳濁液、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、およびBCG(カルメット・ゲラン杆菌(Bacille Calmette-Guerin))やコリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)など潜在的に有用なヒトアジュバントが含まれる。このようなアジュバントもまた、当技術分野において周知である。
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術、組換え技術、およびファージディスプレイ技術、またはその組合せの使用を含めて、当技術分野において公知である多種多様の技術を用いて調製することができる。例えば、モノクローナル抗体は、当技術分野において公知であり、かつ、例えば、Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版、1988)、Hammerling, et al.、Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681(Elsevier、ニューヨーク、1981)において教示されているものを含む、ハイブリドーマ技術を用いて作製することができる。本明細書において使用される「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術によって作製される抗体に限定されない。「モノクローナル抗体」という用語は、任意の真核生物クローン、原核生物クローン、またはファージクローンを含む、単一のクローンに由来する抗体を意味し、それが作製される方法を意味しない。
「モノクローナル抗体」は、2つのタンパク質、すなわち、重鎖および軽鎖を含んでよく、あるいはそれらからなってよい。
ハイブリドーマ技術を用いて特異的抗体を作製およびスクリーニングするための方法は、ごく普通であり、当技術分野において周知である。非限定的な例では、マウスを、本発明のポリペプチドまたはこのようなペプチドを発現する細胞を用いて免疫化することができる。免疫応答が検出されたら、例えば、抗原に特異的な抗体がマウス血清中で検出されたら、マウス脾臓を採取し、脾細胞を単離する。次いで、これらの脾細胞を、周知の技術によって、任意の適切な骨髄腫細胞、例えば、ATCCから入手可能な細胞株SP20由来の細胞に融合させる。ハイブリドーマを選択し、かつ、限界希釈によってクローン化する。次いで、これらのハイブリドーマクローンを、本発明のポリペプチドに結合できる抗体を分泌する細胞に関して、当技術分野において公知の方法によって分析する。高レベルの抗体を一般に含む腹水は、陽性のハイブリドーマクローンでマウスを免疫化することによって作製することができる。
したがって、本発明は、モノクローナル抗体を作製する方法、ならびにその方法によって作製した抗体を提供し、この方法は、好ましくは、本発明の抗原で免疫化したマウスから単離した脾細胞を骨髄腫細胞と融合することによって作製した、本発明の抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を培養するステップと、次いで、本発明のポリペプチドに結合できる抗体を分泌するハイブリドーマクローンに関して、融合の結果として生じるハイブリドーマをスクリーニングするステップとを含む。
特異的なエピトープを認識する抗体断片は、公知の技術によって作製することができる。例えば、本発明のFab断片およびF(ab')2断片は、パパイン(Fab断片を作製するため)やペプシン(F(ab')2断片を作製するため)などの酵素を用いて、免疫グロブリン分子をタンパク質分解により切断することによって作製することができる。F(ab')2断片は、可変領域、軽鎖の定常領域、および重鎖のCH1ドメインを含む。
本発明の抗体はまた、当技術分野において公知の様々なファージディスプレイ法を用いて作製することもできる。ファージディスプレイ法では、機能的な抗体ドメインは、それらをコードするポリヌクレオチド配列を有するファージ粒子の表面にディスプレイされる。特定の実施形態では、このようなファージを利用して、レパートリーまたは抗体コンビナトリアルライブラリー(例えばヒトもしくはマウス)から発現される抗原結合性ドメインをディスプレイすることができる。対象の抗原に結合する抗原結合性ドメインを発現するファージは、抗原を用いて、例えば、標識抗原または固体表面もしくはビーズに結合もしくは捕捉された抗原を用いて、選択または同定することができる。これらの方法で使用されるファージは、典型的には、fdおよびM13を含む繊維状ファージであり、ファージから発現される結合ドメインは、ファージのgene IIIタンパク質またはgeneVIIIタンパク質のいずれかに組換えによって融合された、Fab、Fv、またはジスルフィドで安定化されたFv抗体のドメインを有する。本発明の抗体を作製するのに使用され得るファージディスプレイ法の例には、Brinkman et al., J. Immunol.Methods 182:41-50(1995)、Ames et al., J.Immunol.Methods 184: 177-186(1995)、Kettleborough et al., Eur.J.Immunol. 24:952-958(1994)、Persic et al., Gene 187:9-18(1997)、Burton et al., Advances in Immunology 57:191-280(1994)、PCT出願番号PCT/GB91/01134、PCT公報WO90/02809、WO91/10737、WO92/01047、WO92/18619、WO93/11236、WO95/15982、WO95/20401、ならびに米国特許第5,698,426号、同第5,223,409号、同第5,403,484号、同第5,580,717号、同第5,427,908号、同第5,750,753号、同第5,821,047号、同第5,571,698号、同第5,427,908号、同第5,516,637号、同第5,780,225号、同第5,658,727号、同第5,733,743号、および同第5,969,108号において開示されているものが含まれる。
上記の参考文献において説明されているように、ファージ選択後、ファージ由来の抗体コード領域は、単離し、かつ、ヒト抗体を含む全抗体、または他の任意の所望の抗原結合性断片を作製するのに使用し、また、例えば下記に詳述するように、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母、および細菌を含む任意の所望の宿主において発現させることができる。例えば、Fab断片、Fab'断片、およびF(ab')2断片を組換えによって作製するための技術もまた、PCT公報WO92/22324、Mullinax et al., BioTechniques 12(6):864-869, (1992)、およびSawai et al., AJRI 34:26-34, (1995)、ならびにBetter et al., Science 240: 1041-1043, (1988)において開示されているものなど当技術分野において公知の方法を用いて使用することができる。
一本鎖Fvおよび抗体を作製するために使用することができる技術の例には、米国特許第4,946,778号および同第5,258,498号、Huston et al., Methods in Enzymology 203:46-88(1991)、Shu et al., PNAS 90:7995-7999(1993)、ならびにSkerra et al., Science 240:1038-1040(1988)に記載されているものが含まれる。
ヒトにおける抗体のin vivo使用およびin vitroの検出アッセイを含めて、いくつかの用途のために、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体を使用することが好ましい場合がある。キメラ抗体は、マウスのモノクローナル抗体に由来する可変領域およびヒト免疫グロブリン定常領域を有する抗体など、抗体の異なる部分が、異なる動物種に由来する分子である。キメラ抗体を作製するための方法は、当技術分野において公知である。例えば、Morrison, Science 229:1202(1985)、Oi et al., BioTechniques 4:214(1986)、Gillies et al.,(1989)J.Immunol.Methods 125:191-202、米国特許第5,807,715号、同第4,816,567号、および同第4,816,397号を参照されたい。ヒト化抗体は、非ヒト種由来の1つまたは複数の相補性決定領域(CDR)およびヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域を有する、所望の抗原に結合する非ヒト種抗体由来の抗体分子である。しばしば、ヒトフレームワーク領域中のフレームワーク残基は、抗原結合を変更、好ましくは改善するために、CDRドナー抗体由来の対応する残基で置換される。これらのフレームワーク置換は、当技術分野において周知の方法によって、例えば、抗原結合のために重要なフレームワーク残基を特定するための、CDRとフレームワーク残基の相互作用のモデリング、および特定の位置の通常と異なるフレームワーク残基を特定するための配列比較によって、特定される。(例えば、Queenらの米国特許第5,585,089号、Riechmann et al., Nature 332:323(1988)を参照されたい)。抗体は、例えば、CDRグラフティング(EP239,400、PCT公報WO91/09967、米国特許第5,225,539号、同第5,530,101号、および同第5,585,089号)、ベニアリング(veneering)またはリサーフェシング(resurfacing)(EP592,106、EP519,596、Padlan, Molecular Immunology 28(4/5):489-498(1991)、Studnicka et al., Protein Engineering 7(6):805-814(1994)、Roguska. et al., PNAS 91:969-973(1994))、およびチェーンシャッフリングを(米国特許第5,565,332号)含めて、当技術分野において公知の様々な技術を用いてヒト化することができる。
完全なヒト抗体は、ヒト患者の治療的処置のために特に望ましい。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体ライブラリーを使用する前述のファージディスプレイ法を含めて、当技術分野において公知の様々な方法によって作製することができる。米国特許第4,444,887号および同第4,716,111号、ならびにPCT公報WO98/46645、WO98/50433、WO98/24893、WO98/16654、WO96/34096、WO96/33735、およびWO91/10741も参照されたい。
ヒト抗体はまた、機能的な内因性免疫グロブリンを発現できないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現できるトランスジェニックマウスを用いて作製することもできる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子複合体を、ランダムに、または相同組換えによって、マウス胚性幹細胞に導入することができる。あるいは、ヒト可変領域、定常領域、および多様性領域(diversity region)を、ヒト重鎖遺伝子およびヒト軽鎖遺伝子に加えて、マウス胚性幹細胞中に導入することができる。マウス重鎖免疫グロブリン遺伝子およびマウス軽鎖免疫グロブリン遺伝子は、相同組換えによるヒト免疫グロブリン遺伝子座の導入と別々に、または同時に非機能的にすることができる。特に、JH領域のホモ接合性欠失は、内因性抗体の産生を妨げる。改変された胚性幹細胞を増殖させ、かつ、胚盤胞中に微量注入して、キメラマウスを作製する。次いで、キメラマウスを飼育して、ヒト抗体を発現するホモ接合性の子孫を産ませる。トランスジェニックマウスを、選択された抗原、例えば、本発明のポリペプチドの全体または一部分を用いて、通常の様式で免疫化する。抗原に対するモノクローナル抗体は、従来のハイブリドーマ技術を用いて、免疫化したトランスジェニックマウスから得ることができる。トランスジェニックマウスに保持されたヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞分化の間に再編成し、続いて、クラススイッチおよび体細胞変異を受ける。したがって、このような技術を用いて、治療的に有用なIgG抗体、IgA抗体、IgM抗体、およびIgE抗体を作製することが可能である。ヒト抗体を作製するためのこの技術の概要については、LonbergおよびHuszar, Int.Rev.Immunol.13:65-93 (1995)を参照されたい。ヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を作製するためのこの技術ならびにそのような抗体を作製するためのプロトコルの詳細な考察については、例えば、PCT公報WO98/24893、WO92/01047、WO96/34096、WO96/33735、欧州特許第0598877号、米国特許第5,413,923号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、同第5,569,825号、同第5,661,016号、同第5,545,806号、同第5,814,318号、同第5
,885,793号、同第5,916,771号、および同第5,939,598号を参照されたい。さらに、Abgenix, Inc.(フリーモント、カリフォルニア州)およびGenpharm(サンジョゼ、カリフォルニア州)などの会社は、前述の技術に類似した技術を用いて選択された抗原に対するヒト抗体を提供することを保証できる。
選択されたエピトープを認識する完全ヒト抗体は、「導かれた選択(guided selection)」と呼ばれる技術を用いて作製することができる。この手法では、選択された非ヒトモノクローナル抗体、例えばマウス抗体を使用して、同じエピトープを認識する完全ヒト抗体の選択を導く。(Jespers et al., Bio/technology 12:899-903(1988))。
さらに、本発明のポリペプチドに対する抗体を次に利用して、当業者に周知の技術により、本発明のポリペプチドを「模倣する」抗イディオタイプ抗体を作製することもできる(例えば、GreenspanおよびBona, FASEB J. 7(5):437-444;(1989)ならびにNissinoff, J.Immunol. 147(8):2429-2438(1991)を参照されたい)。例えば、本発明のポリペプチドに結合し、かつ、本発明のポリペプチドのポリペプチド多量体化および/またはリガンド結合を競合的に阻害する抗体を用いて、ポリペプチド多量体化および/または結合ドメインを「模倣し」、結果として、ポリペプチドおよび/またはそのリガンドに結合し、かつ中和する抗イディオタイプを作製することができる。このような中和性の抗イディオタイプまたはこのような抗イディオタイプのFab断片は、ポリペプチドリガンドを中和するための治療計画において使用することができる。例えば、このような抗イディオタイプ抗体は、本発明のポリペプチドに結合させるか、かつ/またはそのリガンド/受容体に結合させ、それによって、その生物活性を阻止するのに使用することができる。
抗体が、in vivoの用途において治療的に使用される場合には、抗体は、好ましくは、個体において免疫原性がより少なくなるように改変される。例えば、個体がヒトである場合には、抗体は、好ましくは「ヒト化」され、その際、(例えば、Jones et al., Nature 321:522-525, 1986およびTempest et al., Biotechnology 9:266-273, 1991に記載されているように)、抗体の相補性決定領域がヒト抗体に移植される。
ファージディスプレイ技術はまた、抗Bボックス抗体の所有に関してスクリーニングされたヒト由来リンパ球のPCRによって増幅したv遺伝子のレパートリー、または天然ライブラリーのいずれかから、ポリペプチドに対する結合活性を有する抗体遺伝子を選択するのに利用することもできる(McCafferty et al., Nature 348:552-554, 1990、およびMarks, et al., Biotechnology 10:779-783, 1992)。これらの抗体の親和性は、チェーンシャッフリングによって改善することもできる(Clackson et al., Nature 352: 624-628, 1991)。
作製のために使用されるポリペプチドの選択は、当業者によって容易に決定され得る。ポリペプチドは、作製される抗体が、HMGタンパク質ファミリーの別のメンバーと顕著に交差反応することも、それに特異的に結合することもないように、選択することができる。あるいは、HMGタンパク質ファミリーの2種以上のメンバーとの間にかなりの程度の相同性を有するポリペプチドを、HMGタンパク質ファミリーの複数のメンバー(例えば、HMG1およびHMG2)と特異的に結合する(すなわち、交差反応する)ことができる抗体の作製のために使用してもよい。
5.4 抗体をコードするポリヌクレオチド
本発明はさらに、本発明の高親和性抗体およびその断片をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。本発明はまた、例えば、本明細書において定義したように、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下またはストリンジェンシーのより低いハイブリダイゼーション条件下で、本発明のHMG1および/またはHMG2ポリペプチド(例えば、配列番号1もしくは配列番号2またはその断片)に特異的に結合する抗体をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドも包含する。特定の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドに結合する抗体をコードする。別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチドに特異的に結合する抗体をコードする。別の好ましい実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号4のアミノ酸配列を有するポリペプチドに特異的に結合する抗体をコードする。別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号21のアミノ酸配列を有するポリペプチドに結合する抗体をコードする。さらに別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号22のアミノ酸配列を有するポリペプチドに結合する抗体をコードする。さらに別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号23のアミノ酸配列を有するポリペプチドに結合する抗体をコードする。さらに別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号28および/または配列番号29のアミノ酸配列を有するポリペプチドに結合する抗体をコードする。
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、50%ホルムアミド、5×SSC(750mM NaCl、75mMクエン酸三ナトリウム(trisodium cirate))、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト液、10%硫酸デキストラン、および20μg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中、42℃で一晩インキュベーションし、続いて、約65℃にて0.1×SSC中でフィルターを洗浄することが意図される。
当技術分野において公知である任意の方法によって、ポリヌクレオチドを得、かつ、それらのポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を決定することができる。例えば、抗体のヌクレオチド配列が公知である場合には、(例えば、Kutmeier et al., BioTechniques 17:242(1994)に記載されているように)、その抗体をコードするポリヌクレオチドは、化学合成されたオリゴヌクレオチドから構築することができ、これは、手短に言えば、その抗体をコードする配列の一部分を含む重複したオリゴヌクレオチドの合成、それらのオリゴヌクレオチドのアニーリングおよび連結、次いで、連結されたオリゴヌクレオチドのPCRによる増幅を含む。
あるいは、抗体をコードするポリヌクレオチドは、適切な供給源に由来する核酸から作製することもできる。特定の抗体をコードする核酸を含むクローンが入手可能ではないが、その抗体分子の配列が公知である場合には、免疫グロブリンをコードする核酸は、化学合成することができ、または、その配列の3'末端および5'末端にハイブリダイズできる合成プライマーを用いたPCR増幅によって、もしくは、例えば、抗体をコードするcDNAライブラリー由来のcDNAクローンを同定するために特定の遺伝子配列に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを用いたクローニングによって、適切な供給源(例えば、抗体cDNAライブラリー、または、本発明の抗体を発現する選択されたハイブリドーマ細胞など抗体を発現する任意の組織もしくは細胞から作製されたcDNAライブラリー、もしくは、それらから単離された核酸、好ましくはポリA+RNA)から得ることができる。次いで、PCRによって生成した増幅核酸を、当技術分野において周知である任意の方法を用いて、複製可能なクローニングベクター中にクローニングすることができる。
抗体のヌクレオチド配列および対応するアミノ酸配列が一旦決定されたら、ヌクレオチド配列を操作するための当技術分野において周知の方法、例えば、組換えDNA技術、部位特異的変異誘発、PCRなどを用いて、抗体のヌクレオチド配列を操作して(例えば、Sambrook et al., 1990, Molecular Cloning, A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor、ニューヨーク、およびAusubel et al.編、1998, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons、ニューヨークに記載されている技術を参照されたい)、異なるアミノ酸配列を有する抗体を作製する、例えば、アミノ酸置換、欠失、および/または挿入を起こすことができる。
特定の実施形態では、当技術分野において周知である方法によって、例えば、配列が超可変性である領域を決定するために、他の重鎖可変領域および軽鎖可変領域の公知のアミノ酸配列と比較することによって、本発明の抗体の重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列を検査して、相補性決定領域(CDR)の配列を同定することができる。常用的な組換えDNA技術を用いて、1つまたは複数のCDRをフレームワーク領域内に、例えば、ヒトフレームワーク領域中に挿入して、前述したように、非ヒト抗体をヒト化することができる。フレームワーク領域は、天然に存在するものでも、コンセンサスなフレームワーク領域でもよく、好ましくは、ヒトフレームワーク領域でよい(例えば、ヒトフレームワーク領域の一覧については、Chothia et al., J. Mol. Biol. 278: 457-479(1998)を参照されたい)。好ましくは、フレームワーク領域およびCDRの組合せによって作製されたポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗体をコードする。
好ましくは、上記に考察したように、1つまたは複数のアミノ酸置換をフレームワーク領域内に起こしてよく、好ましくは、アミノ酸置換により、抗原に対する抗体の結合が改善する。さらに、このような方法を使用して、鎖内のジスルフィド結合に関与している1つまたは複数の可変領域システイン残基のアミノ酸置換または欠失を起こして、1つまたは複数の鎖内ジスルフィド結合を欠いている抗体分子を作製することもできる。ポリヌクレオチドに対する他の変更も、本発明および当業者の技能の範囲内に包含される。
さらに、適切な抗原特異性を有するマウス抗体分子に由来する遺伝子を、適切な生物活性を有するヒト抗体分子に由来する遺伝子と継ぎ合わせることによる、「キメラ抗体」を作製するために開発された技術(Morrison et al., Proc.Natl. Acad.Sci. 81:851-855(1984)、Neuberger et al., Nature 312:604-608(1984)、Takeda et al., Nature 314:452-454(1985))を使用することもできる。前述したように、キメラ抗体は、マウスのmAbに由来する可変領域およびヒト免疫グロブリン定常領域を有するもの、例えばヒト化抗体など、異なる部分が、異なる動物種に由来する分子である。
あるいは、一本鎖抗体の作製に関して説明された技術(米国特許第4,946,778号、Bird, Science 242:423-42(1988)、Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883(1988)、およびWard et al., Nature 334:544-54(1989))は、一本鎖抗体を作製するために適合させることができる。一本鎖抗体は、アミノ酸架橋を介してFv領域の重鎖断片および軽鎖断片を連結して一本鎖ポリペプチドを生じることによって形成される。大腸菌中で機能的なFv断片を組み立てるための技術もまた、使用することができる(Skerra et al., Science 242:1038-1041(1988))。
5.5 抗体を作製する方法
本発明の抗体は、抗体を合成するための当技術分野において公知である任意の方法によって、特に、化学合成によって、または好ましくは、組換え発現技術によって、作製することができる。
本発明の抗体、またはその断片、誘導体、もしくは類似体(例えば、本発明の抗体の重鎖もしくは軽鎖、または本発明の一本鎖抗体)の組換え発現は、その抗体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターの構築を必要とする。本発明の抗体分子または抗体の重鎖もしくは軽鎖、またはその一部分(好ましくは、重鎖または軽鎖の可変ドメインを含む)をコードするポリヌクレオチドを一度得ると、その抗体分子を作製するためのベクターは、当技術分野において周知の技術を使用する組換えDNA技術によって作製することができる。したがって、抗体をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを発現させることによってタンパク質を調製する方法を、本明細書において説明する。当業者には周知である方法を用いて、抗体をコードする配列ならびに適切な転写および翻訳の制御シグナルを含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法には、例えば、in vitroの組換えDNA技術、合成技術、およびin vivoの遺伝子組換えが含まれる。したがって、本発明は、プロモーターに作動可能に連結された、本発明の抗体分子、またはその重鎖もしくは軽鎖、または重鎖もしくは軽鎖の可変ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む複製可能なベクターを提供する。このようなベクターは、抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含んでよく(例えば、PCT公報WO86/05807、PCT公報WO89/01036、および米国特許第5,122,464号を参照されたい)、かつ、完全な重鎖または軽鎖を発現させるために、抗体の可変ドメインをそのようなベクターにクローニングすることができる。
従来技術によって宿主細胞に発現ベクターを導入し、次いで、トランスフェクトされた細胞を従来技術によって培養して、本発明の抗体を産生させる。したがって、本発明は、異種プロモーターに作動可能に連結された、本発明の抗体、またはその重鎖もしくは軽鎖、または本発明の一本鎖抗体をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を含む。二重鎖抗体を発現させるための好ましい態様において、重鎖および軽鎖の両方をコードするベクターは、下記に詳述するように、完全な免疫グロブリン分子を発現させるために宿主細胞において同時発現され得る。
様々な宿主発現ベクター系が、本発明の抗体分子を発現させるために利用され得る。このような宿主発現系は、それによって対象のコード配列を作製し、続いて精製することができる運搬体(vehicle)を表すが、また、適切なヌクレオチドをコードする配列で形質転換またはトランスフェクトされた場合に、本発明の抗体分子をin situで発現し得る細胞も表す。これらには、抗体をコードする配列を含む、組換えバクテリオファージDNA発現ベクター、組換えプラスミドDNA発現ベクター、もしくは組換えコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば、大腸菌、枯草菌(B. subtilis))などの微生物;抗体をコードする配列を含む組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えば、サッカロミケス属(Saccharomyces)、ピキア属(Pichia));抗体をコードする配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス(Cauliflower mosaic virus)(CaMV)、タバコモザイクウイルス(tobacco mosaic virus)(TMV))に感染した植物細胞系もしくは抗体をコードする配列を含む組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞系;または、哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)もしくは哺乳動物のウイルスに由来するプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含む組換え発現構築物を保有する哺乳動物細胞系(例えば、COS細胞、CHO細胞、BHK細胞、293細胞、NS0細胞、3T3細胞、PerC6細胞)が含まれるが、それらに限定されるわでではない。好ましくは、大腸菌(Escherichia coli)などの細菌細胞、より好ましくは、特に、組換え抗体分子全体の発現のためには、真核細胞が、組換え抗体分子の発現のために使用される。例えば、ヒトサイトメガロウイルス由来の主要中初期(intermediate early)遺伝子プロモーターエレメントなどのベクターと組み合わせた、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)などの哺乳動物細胞は、抗体の効果的な発
現系である(Foecking et al., 1986, Gene 45: 101、Cockett et al., Bio/Technology 8:2 (1990))。例えば、米国特許第5827739号、同第5879936号、同第5981216号、および同第5658759号も参照されたい。
細菌系では、抗体分子の発現を目的とする使用に応じて、いくつかの発現ベクターを有利に選択することができる。例えば、抗体分子の医薬組成物を製造するために、このようなタンパク質を多量に産生させようとする場合、容易に精製される融合タンパク質産物の高レベルの発現を指示するベクターが望ましい場合がある。このようなベクターには、抗体をコードする配列が、lacZをコードする領域とインフレームでベクターに個別に連結され得、その結果、融合タンパク質が産生される大腸菌発現ベクターpUR278(Ruther et al., EMBO J. 2:1791(1983))、pINベクター(InouyeおよびInouye、Nucleic Acids Res. 13:3101-3109(1985)、Van HeekeおよびSchuster, J.Biol.Chem. 24:5503-5509(1989))などが含まれるが、それらに限定されるわけではない。pGEXベクターもまた、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現させるために使用され得る。一般に、このような融合タンパク質は可溶性であり、かつ、溶解させた細胞から、マトリックスグルタチオン-アガロースビーズへの吸着および結合とそれに続く遊離グルタチオン存在下での溶出によって容易に精製することができる。pGEXベクターは、トロンビンまたはXa因子のプロテアーゼ切断部位を含むように設計され、その結果、クローン化された標的遺伝子産物は、GST部分から遊離され得る。
昆虫系では、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcNPV)が、外来遺伝子を発現させるためのベクターとして使用される。このウイルスは、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞において増殖する。抗体をコードする配列を、このウイルスの非必須領域(例えばポリヘドリン遺伝子)中に個別にクローニングし、かつ、AcNPVプロモーター(例えばポリヘドリンプロモーター)の制御下に配置することができる。
哺乳動物宿主細胞では、いくつかのウイルスベースの発現系が使用され得る。アデノウイルスが発現ベクターとして使用される場合、対象の抗体をコードする配列は、アデノウイルスの転写/翻訳制御複合体、例えば、後期プロモーターおよび3分節リーダー配列に連結され得る。次いで、このキメラ遺伝子は、in vitroまたはin vivoでの組換えによって、アデノウイルスゲノムに挿入することができる。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば、E1領域またはE3領域)に挿入すると、生存能力があり、かつ、感染した宿主において抗体分子を発現できる組換えウイルスが生じる(例えば、LoganおよびShenk、, Proc. Natl. Acad. Sci.USA 81:355-359(1984)を参照されたい)。特定の開始シグナルもまた、挿入された抗体コード配列の効率的な翻訳のために必要とされることがある。これらのシグナルには、ATG開始コドンおよび隣接する配列が含まれる。さらに、開始コドンは、挿入断片全体の翻訳を確実にするために、所望のコード配列のリーディングフレームと同時に機能しなければならない。これらの外因性翻訳制御シグナルおよび開始コドンは、様々な起源のものでよく、天然でも、合成でもよい。発現の効率は、適切な転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含めることによって向上させることができる(Bittner et al., Methods in Enzymol. 153:51-544(1987)を参照されたい)。
さらに、挿入された配列の発現を調節するか、または、所望の特定の様式で遺伝子産物を修飾およびプロセシングする宿主細胞株を選択することができる。タンパク質産生物のこのような修飾(例えばグリコシル化)およびプロセシング(例えば切断)は、タンパク質の機能にとって重要な場合がある。異なる宿主細胞は、タンパク質および遺伝子産物の翻訳後プロセッシングおよび修飾のための特徴的かつ特異的なメカニズムを有する。適切な細胞株または宿主系は、発現される外来タンパク質の正確な修飾およびプロセッシングを確実にするように選択され得る。このために、一次転写物の適切なプロセッシング、遺伝子産物のグリコシル化、およびリン酸化のための細胞機構を有する真核宿主細胞が使用され得る。このような哺乳動物宿主細胞には、それだけには限らないが、CHO、VERY、BHK、Hela、COS、MDCK、293、3T3、W138、NS0、Per.C6、および特に、例えば、BT483、Hs578T、HTB2、BT20、およびT47Dなどの乳癌細胞株、ならびに、例えば、CRL7030およびHs578Bstなど正常な乳腺細胞株が含まれる。
組換えタンパク質を長期に渡って高収率で産生させるには、安定な発現が好ましい。例えば、抗体分子を安定に発現する細胞株を設計することができる。ウイルスの複製起点を含む発現ベクターを使用する代わりに、適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)によって制御されるDNAおよび選択マーカーで宿主細胞を形質転換することができる。外来DNAを導入した後、操作された細胞を強化培地中で1日〜2日間増殖させてよく、次いで、選択培地に交換する。組換えプラスミド中の選択マーカーは、選択に対する耐性を与え、細胞が染色体中にプラスミドを安定に組み込み、かつ増殖して増殖巣を形成するのを可能にする。次に、この増殖巣をクローン化し、かつ増殖させて細胞株にすることができる。この方法は、抗体分子を発現する細胞株を設計するために、有利に使用され得る。このような操作された細胞株は、直接的または間接的に抗体分子と相互作用する化合物のスクリーニングおよび評価において、特に有用であり得る。
それだけには限らないが、単純ヘルペス(herpes simplex)ウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(Wigler et al., Cell 11:223(1977))、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(SzybalskaおよびSzybalski, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48:202(1992))、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Lowy et al., Cell 22:817(1980))を含む、いくつかの選択系を使用することができ、tk-細胞、hgprt-細胞、またはaprt-細胞においてそれぞれ使用することができる。また、代謝拮抗物質耐性も、以下の遺伝子を選択する根拠として使用され得る:メトトレキサートに対する耐性を与えるdhfr(Wigler et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:357(1980)、O'Hare et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:1527(1981))、ミコフェノール酸に対する耐性を与えるgpt(MulliganおよびBerg、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2072(1981))、アミノグリコシドG-418に対する耐性を与えるneo(Clinical Pharmacy 12:488-505、WuおよびWu、Biotherapy 3:87-95(1991)、Tolstoshev, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32:573-596(1993)、Mulligan, Science 260:926-932(1993)、ならびにMorganおよびAnderson、Ann. Rev. Biochem. 62:191-217(1993)、May, 1993;TIB TECH 11(5):155-215))、ならびに、ヒグロマイシンに対する耐性を与えるhygro(Santerre et al., Gene 30:147(1984))。所望の組換えクローンを選択するために、組換えDNA技術の分野において一般に公知の方法を常用的に適用することができ、また、そのような方法は、例えば、Ausubel et al.(編)、 Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons、ニューヨーク(1993)、Kriegler, Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual, Stockton Press、ニューヨーク(1990)、ならびに、Dracopoli et al.(編)、Current Protocols in Human Genetics、12章および13章、John Wiley & Sons, ニューヨーク(1994)、Colberre-Garapin et al., J. Mol. Biol. 150:1(1981)に記載されている。
抗体分子の発現レベルは、ベクター増幅によって上昇させることができる(総説については、BebbingtonおよびHentschel、「The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells」、DNA cloning、第3巻(Academic Press、ニューヨーク、1987)を参照されたい)。抗体を発現するベクター系中のマーカーが増幅可能である場合、宿主細胞の培養物中に存在する阻害物質のレベルが上昇すると、マーカー遺伝子のコピー数が増加すると考えられる。増幅される領域は抗体遺伝子と関連しているので、抗体の産生も増加すると考えられる(Crouse et al., Mol. Cell. Biol. 3:257(1983))。
宿主細胞は、本発明の2種の発現ベクター、すなわち、重鎖由来のポリペプチドをコードする第1のベクターおよび軽鎖由来のポリペプチドをコードする第2のベクターで同時トランスフェクトすることができる。これら2種のベクターは、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドの等しい発現を可能にする同一の選択マーカーを含んでよい。あるいは、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドの両方をコードし、かつ発現することができる単一のベクターを使用してもよい。このような状況では、重鎖より先に軽鎖を配置して、毒性の遊離重鎖が過剰になるのを避けるべきである(Proudfoot, Nature 322:562(1986)、Kohler, Proc. Natl. Acad. Sci.USA 77:2197(1980))。重鎖および軽鎖のコード配列は、cDNAまたはゲノムDNAを含んでよい。
本発明の抗体分子は、動物に産生させるか、化学合成するか、または組換えによって発現させた後、免疫グロブリン分子を精製するための当技術分野において公知である任意の方法によって、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー(特に、プロテインAに対する特異的抗原の親和力による)、およびサイジング(sizing)カラムクロマトグラフィー)、遠心分離、差示的溶解度によって、または、タンパク質を精製するための他の任意の標準的な技術によって、精製することができる。さらに、本発明の抗体またはその断片を、本明細書において説明するか、またはそうでなければ当技術分野において公知の異種ポリペプチド配列に融合して、精製を容易にすることもできる。
さらに、本発明の抗体またはその断片を、精製を容易にするペプチドなどマーカー配列に融合させることもできる。いくつかの実施形態では、マーカーアミノ酸配列は、とりわけ、pQEベクター(QIAGEN, Inc., 9259エトンアベニュー(Eton Avenue)、チャッツワース、カリフォルニア州、91311)において提供されるタグなど、ヘキサヒスチジンペプチドであり、これらの多くは市販されている。Gentz et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:821-824(1989)に記載されているように、例えば、ヘキサヒスチジンは、融合タンパク質の簡便な精製を実現する。精製に有用な他のペプチドタグには、それだけには限らないが、インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質に由来するエピトープに対応する「HAタグ」(Wilson et al., Cell 37:767(1984))および「フラグ(flag)」タグが含まれる。
5.6 抗体コンジュゲート(結合体)および誘導体
本発明の抗体には、(例えば、任意のタイプの分子を抗体に共有結合させることによって)修飾された誘導体も含まれる。例えば、限定されるわけではないが、抗体誘導体には、例えば、公知の保護基/ブロック基、タンパク質分解切断、細胞性リガンドまたは他のタンパク質への連結などによるグリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、誘導体化によって修飾された抗体が含まれる。それだけには限らないが、特異的化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝的合成などを含む公知の技術によって、多数の化学修飾のいずれかを実施することができる。さらに、誘導体は、1つまたは複数の非古典的なアミノ酸を含んでよい。
in vivoでの半減期の長い抗体またはその断片は、高分子量のポリエチレングリコール(PEG)などのポリマー分子を、前記抗体または抗体断片に結合させることによって作製することができる。PEGは、前記抗体もしくは抗体断片のN末端もしくはC末端にPEGを部位特異的に結合させることによって、または、リシン残基上に存在するεアミノ基を介して、多官能性リンカーを使用または使用せずに、前記抗体または抗体断片に結合させることができる。生物活性の損失が最小限である直鎖状または分枝状のポリマー誘導体化が使用される。抗体へのPEG分子の適切な結合を徹底させるために、結合の程度は、SDS-PAGEおよび質量分析によって厳密に観察される。未反応のPEGは、例えば、サイズ排除クロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィーによって、抗体-PEGコンジュゲートから分離することができる。
さらに、抗体は、抗体もしくは抗体断片をin vivoでより安定にするために、または、in vivoでより長い半減期を有するようにするために、アルブミンに結合させることができる。これらの技術は当技術分野において周知であり、例えば、国際公開WO93/15199、WO93/15200、およびWO01/77137、ならびに欧州特許EP413, 622を参照されたい。本発明は、それだけには限らないが、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、融合タンパク質、核酸分子、低分子、模倣物質、合成薬物、無機分子、および有機分子を含めて、1種または複数種の部分に結合または融合された抗体またはその断片の使用を包含する。
一実施形態では、本発明は、融合タンパク質を作製するために、異種タンパク質もしくは異種ポリペプチドに(または、その断片に、具体的には、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個、または少なくとも100個のアミノ酸のポリペプチドに)組換えによって融合されるか、または(共有結合および非共有結合の両方を含めて)化学的に結合される、抗体またはその断片の使用を包含する。別の実施形態では、本発明は、融合タンパク質を作製するために、異種タンパク質もしくは異種ポリペプチドに(または、その断片に、具体的には、少なくとも約10個、少なくとも約20個、少なくとも約30個、少なくとも約40個、少なくとも約50個、少なくとも約60個、少なくとも約70個、少なくとも約80個、少なくとも約90個、または少なくとも約100個のアミノ酸のポリペプチドに)組換えによって融合されるか、または(共有結合および非共有結合の両方を含めて)化学的に結合される、抗体またはその断片の使用を包含する。融合は、必ずしも直接的である必要はなく、リンカー配列を介して存在してもよい。例えば、抗体は、特定の細胞表面受容体に特異的な抗体にそれらの抗体を融合または結合させることによって、in vitroまたはin vivoのいずれかで、特定の細胞型に異種ポリペプチドを導くために使用され得る。異種ポリペプチドに融合または結合させた抗体は、当技術分野において公知の方法を用いるin vitroのイムノアッセイおよび精製方法において使用することもできる。例えば、国際公開WO93/21232、欧州特許EP439,095、Naramura et al., 1994, Immunol. Lett. 39:91-99、米国特許第5,474,981号、Gillies et al., 1992, PNAS 89:1428-1432、およびFell et al., 1991, J.Immunol. 146:2446-2452を参照されたい。
本発明はさらに、抗体断片に融合または結合された異種のタンパク質、ペプチド、またはポリペプチドを含む調合物も含む。例えば、異種ポリペプチドを、Fab断片、Fd断片、Fv断片、F(ab)2断片、VHドメイン、VLドメイン、VH CDR、VL CDR、またはその断片に融合または結合させることができる。ポリペプチドを抗体部分に融合または結合させるための方法は、当技術分野において周知である。例えば、米国特許第5,336,603号、同第5,622,929号、同第5,359,046号、同第5,349,053号、同第5,447,851号、および同第5,112,946号、欧州特許EP307,434およびEP367,166、国際公開WO96/04388およびWO91/06570、Ashkenazi et al., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 10535-10539、Zheng et al., 1995, J. Immunol. 154:5590-5600、ならびにVil et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:11337-11341を参照されたい。
例えば、HMG1および/もしくはHMG2またはその断片(例えば、前記)に特異的に結合する抗体のその他の融合タンパク質は、遺伝子シャッフリング、モチーフシャッフリング、エキソン-シャッフリング、および/またはコドンシャッフリング(まとめて、「DNAシャッフリング」と呼ばれる)の技術によって作製することができる。DNAシャッフリングは、本発明の抗体またはその断片の活性を変更するために使用することができる(例えば、より親和性が高く、かつ解離速度がより遅い、抗体またはその断片)。一般に、米国特許第5,605,793号、同第5,811,238号、同第5,830,721号、同第5,834,252号、および同第5,837,458号、ならびにPatten et al., 1997, Curr.Opinion Biotechnol. 8:724-33、Harayama, 1998, Trends Biotechnol. 16(2): 76-82、Hansson, et al., 1999, J.Mol.Biol. 287:265-76、ならびにLorenzoおよびBlasco, 1998, Biotechniques 24(2): 308-313を参照されたい。抗体もしくはその断片、またはコードされた抗体もしくはその断片は、組換え前に、誤りがちなPCRによるランダム変異誘発、ランダムなヌクレオチド挿入、または他の方法に供することによって、変更することができる。C/CLPに特異的に結合する、抗体または抗体断片をコードするポリヌクレオチドの1つまたは複数の部分を、1種または複数種の異種分子の1つまたは複数の構成要素、モチーフ、セクション、部分、ドメイン、断片などと再結合させることができる。
さらに、本発明の抗体またはその断片を、精製を容易にするペプチドなどのマーカー配列に融合させることもできる。いくつかの実施形態では、マーカーアミノ酸配列は、とりわけ、pQEベクター(QIAGEN, Inc., 9259エトンアベニュー(Eton Avenue)、チャッツワース、カリフォルニア州、91311)において提供されるタグなど、ヘキサヒスチジンペプチドであり、これらの多くは市販されている。Gentz et al., 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:821-824に記載されているように、例えば、ヘキサヒスチジンは、融合タンパク質の簡便な精製を実現する。精製に有用な他のペプチドタグには、それだけには限らないが、インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質に由来するエピトープに対応する赤血球凝集素「HA」タグ(Wilson et al., 1984, Cell 37:767)および「フラグ」タグが含まれる。
本発明はさらに、診断用物質または治療物質に結合された、抗体またはその断片を包含する。これらの抗体を、例えば、臨床検査の手順の一環として腫瘍の発達または進行を観察して、例えば所与の治療計画の有効性を判定するために、診断的に使用することができる。検出可能な物質に抗体を結合させることによって、検出を容易にすることができる。検出可能な物質の例としては、様々な酵素、補欠分子団、蛍光性材料、発光性材料、生物発光材料、放射性材料、様々なポジトロン放出断層撮影を用いたポジトロン放出金属、および非放射性常磁性金属イオンが挙げられる。検出可能な物質は、抗体(またはその断片)に直接的に、または、当技術分野において公知の技術により、(例えば、当技術分野において公知であるリンカーなどの)介在物を介して間接的に、連結または結合させることができる。本発明による診断用物質として使用するための抗体に結合させることができる金属イオンに関しては、例えば、米国特許第4,741,900号を参照されたい。適切な酵素の例としては、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられる。適切な補欠分子団複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられる。適切な蛍光性材料の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド、またはフィコエリトリンが挙げられる。発光性材料の例としては、ルミノールが挙げられる。生物発光材料の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが挙げられる。適切な放射性材料の例としては、それだけには限らないが、125I、131I、111In、または99Tcが挙げられ、さらに、様々なポジトロン放出断層撮影を用いたポジトロン放出金属、非放射性常磁性金属イオン、および放射標識されるか、または特殊な放射性同位体に結合された分子を、本発明の抗体に結合させることができる。
さらに、本発明の抗体またはその断片は、サイトトキシン、例えば、細胞増殖抑制剤もしくは細胞破壊剤、治療物質、または放射性金属イオン、例えば、α放射体、例えば、213Biなどの治療用部分に結合させてもよい。サイトトキシンまたは細胞傷害性物質には、細胞に有害である任意の作用物質が含まれる。例としては、パクリタキソール(paclitaxol)、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシン、ならびにそれらの類似体またはホモログが挙げられる。治療物質には、それだけには限らないが、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル(thioepa chlorambucil)、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびcis-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン(以前はダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、ならびに抗有糸分裂物質(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)が含まれる。治療的部分のより広範囲のリストは、PCT公報WO03/075957において確認することができる。
本発明の複合体(コンジュゲート)は、所与の生物学的応答を改変するために使用することができ、治療物質または薬物部分は、従来の化学治療物質に限定されると解釈されるべきではない。例えば、薬物部分は、所望の生物活性を有するタンパク質またはポリペプチドでよい。このようなタンパク質としては、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナスエキソトキシン、もしくはジフテリア毒素などの毒素;腫瘍壊死因子、α-インターフェロン、β-インターフェロン、神経成長因子、血小板由来増殖因子、組織プラスミノーゲンアクチベーター、アポトーシス性物質、例えば、TNF-α、TNF-β、AIM I(国際公開WO97/33899を参照されたい)、AIM II(国際公開WO97/34911を参照されたい)、Fasリガンド(Takahashi et al., Int. Immunol., 6:1567-1574(1994))、VEGI(国際公開WO99/23105を参照されたい)、CD40リガンド、血栓性物質、もしくは抗血管新生物質、例えば、アンギオスタチンもしくはエンドスタチンなどのタンパク質;または、例えば、リンフォカイン、インターロイキン-1(「IL-1」)、インターロイキン-2(「IL-2」)、インターロイキン-6(「IL-6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM-CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G-CSF」)、もしくは他の増殖因子などの生体応答調節物質を挙げることができる。
また、抗体を固体支持体に結合させてもよく、これらは、イムノアッセイまたは標的抗原の精製のために特に有用である。このような固体支持体には、それだけには限らないが、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、塩化ビニル、またはポリプロピレンが含まれる。
このような治療的部分を抗体に結合させるための技術は周知であり、例えば、Amon et al.、「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeld et al.(編), 243〜56頁(Alan R. Liss, Inc. 1985)、Hellstrom et al.、「Antibodies For Drug Delivery」、Controlled Drug Delivery(第2版)、Robinson et al.(編)、623〜53頁(Marcel Dekker, Inc. 1987)、Thorpe、「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review」、Monoclonal Antibodies '84:Biological And Clinical Applications, Pinchera et al.(編)、475〜506頁(1985);「Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwin et al.(編)、303〜16頁(Academic Press 1985)、およびThorpe et al.、「The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates」、Immunol. Rev., 62:119-58(1982)を参照されたい。
本発明の抗体は、他のポリペプチドに結合させることができる。抗体をポリペプチド部分に融合または結合させるための方法は、当技術分野において公知である。例えば、US5,336,603、US5,622,929、US5,359,046、US5,349,053、US5,447,851、およびUS5,112,946、EP307,434、EP367,166、PCT公報WO96/04388およびWO91/06570、Ashkenazi et al., 1991, PNAS USA 88:10535、Zheng et al., 1995, J Immunol 154:5590、ならびにVil et al., 1992, PNAS USA 89:11337を参照されたい。ある部分への抗体の融合は、必ずしも直接的である必要はなく、リンカー配列を介して存在してもよい。このようなリンカー分子は、当技術分野において一般に公知であり、Denardo et al., 1998, Clin Cancer Res 4:2483、Peterson et al., 1999, Bioconjug Chem 10:553、Zimmerman et al., 1999, Nucl Med Biol 26:943、Garnett, 2002, Adv Drug Deliv Rev 53:171に記載されている。
あるいは、米国特許第4,676,980号においてSegalによって説明されているように、抗体を第2の抗体と結合させて、抗体ヘテロコンジュゲートを形成させることもできる。
結合された治療的部分の有無に関わらず、単独で、または細胞傷害性因子および/もしくはサイトカインと組み合わせて投与される抗体は、治療物質として使用することができる。
5.7 抗体の結合および活性に関するアッセイ
本発明の抗体は、当技術分野において公知である任意の方法によって、特異的(すなわち、免疫特異的)結合に関して分析することができる。使用され得るイムノアッセイには、ほんの数例を挙げれば、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、イミノラジオメトリックアッセイ、蛍光イムノアッセイ、プロテインAイムノアッセイなどの技術を用いた競合的アッセイ系および非競合的アッセイ系が含まれるが、それらに限られるわけではない。このようなアッセイ法は常用的であり、かつ、当技術分野において周知である(例えば、Ausubel et al.編、1994, Current Protocols in Molecular Biology、第1巻、John Wiley & Sons, Inc.、ニューヨークを参照されたい)。例示的なイムノアッセイは、下記に手短に説明する(ただし、限定するためのものではない)。
免疫沈降法プロトコルは、一般に、タンパク質ホスファターゼおよび/またはプロテアーゼ阻害剤(例えば、EDTA、PMSF、アプロチニン、バナジン酸ナトリウム)を補充したRIPA緩衝液(1% NP-40またはトリトンX-100、1%デオキシコール酸ナトリウム、0.1% SDS、0.15M NaCl、0.01Mリン酸ナトリウム(pH7.2)、1%トラジロール(Trasylol))などの溶解緩衝液中に細胞集団を溶解させるステップと、対象の抗体を細胞溶解物に添加するステップと、一定期間(例えば、1〜4時間)、4℃でインキュベートするステップと、プロテインAおよび/またはプロテインGセファロースビーズを細胞溶解物に添加するステップと、約1時間以上、4℃でインキュベートするステップと、溶解緩衝液中でビーズを洗浄するステップと、それらのビーズをSDS/試料用緩衝液中に再懸濁するステップとを含む。対象の抗体が特定の抗原を免疫沈降させる能力は、例えば、ウェスタンブロット解析によって評価することができる。当業者は、抗原に対する抗原結合を増大させ、バックグラウンドを減少させるように修正することができるパラメーターに関して精通していると思われる(例えば、セファロースビーズで細胞溶解物を前処理する)。免疫沈降法プロトコルに関するさらなる考察については、例えば、Ausubel et al編、1994, Current Protocols in Molecular Biology、第1巻、John Wiley & Sons, Inc.、ニューヨーク、10.16.1を参照されたい。
ウェスタンブロット解析は、一般に、タンパク質試料を調製するステップと、ポリアクリルアミドゲル(例えば、抗原の分子量に応じて、8%〜20% SDS-PAGE)中でのタンパク質試料の電気泳動と、タンパク質試料をポリアクリルアミドゲルから、ニトロセルロース、PVDF、またはナイロンなどの膜に移すステップと、ブロッキング溶液(例えば、3%BSAまたは脱脂乳を含むPBS)中で膜をブロッキングするステップと、洗浄緩衝液(例えば、PBS-Tween20)中で膜を洗浄するステップと、ブロッキング緩衝液中で希釈した一次抗体(対象の抗体)で膜をブロッキングするステップと、洗浄緩衝液中で膜を洗浄するステップと、ブロッキング緩衝液中で希釈した酵素基質(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼ)または放射性分子(例えば、32Pもしくは125I)に結合された、(一次抗体、例えば抗ヒト抗体を認識する)二次抗体で膜をブロッキングするステップと、洗浄緩衝液中で膜を洗浄するステップと、抗原の存在を検出するステップとを含む。当業者は、検出されるシグナルを増大させ、バックグラウンドノイズを減少させるように修正することができるパラメーターに関して精通していると思われる。ウェスタンブロットプロトコルに関するさらなる考察については、例えば、Ausubel et al編、1994, Current Protocols in Molecular Biology、第1巻、John Wiley & Sons, Inc.、ニューヨーク、10.8.1を参照されたい。
ELISAは、抗原を調製するステップと、96ウェルマイクロタイタープレートのウェルを抗原でコーティングするステップと、酵素基質(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼ)など検出可能な化合物と結合させた対象の抗体をそのウェルに添加し、かつ一定期間インキュベートするステップと、抗原の存在を検出するステップとを含む。ELISAでは、対象の抗体を検出可能な化合物に結合させる必要はない。その代わりに、検出可能な化合物に結合させた、(対象の抗体を認識する)二次抗体をウェルに添加してもよい。さらに、抗原でウェルをコーティングする代わりに、抗体でウェルをコーティングしてもよい。この場合、検出可能な化合物に結合させた二次抗体は、コーティングされるウェルに対象の抗原を添加した後に、添加してよい。当業者は、検出されるシグナルを増大させるために修正することができるパラメーター、ならびに当技術分野において公知であるELISAの他の変形法に関して精通していると思われる。ELISAに関するさらなる考察については、例えば、Ausubel et al編、1994, Current Protocols in Molecular Biology、第1巻、John Wiley & Sons, Inc., ニューヨーク、11.2.1を参照されたい。
抗原に対する抗体の結合親和性および他の結合特性(例えば、抗体-抗原相互作用の解離速度(off-rate))は、例えば、平衡法(例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)もしくはラジオイムノアッセイ(RIA))、または速度論(例えば、BIACORE(登録商標)解析)、ならびに、間接的結合アッセイ、競合的結合アッセイ、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)、ゲル電気泳動、およびクロマトグラフィー(例えば、ゲルろ過)など他の方法を含めて、当技術分野において周知である様々なin vitroアッセイ法によって決定することができる。これらの方法および他の方法は、それだけには限らないが、発色性標識、蛍光標識、発光標識、または同位体標識を含めて、検査される1種もしくは複数種の構成要素に関する標識を利用することができ、かつ/または、様々な検出方法を使用することができる。結合親和性および速度論に関する詳細な説明は、抗体-免疫原の相互作用に焦点を合わせている、Paul, W.E.編、Fundamental Immunology、第4版、Lippincott-Raven、フィラデルフィア(1999)において確認することができる。競合的結合アッセイの1つの例は、量を漸増させた未標識抗原の存在下で、対象の抗体とともに標識抗原をインキュベーションするステップと、標識抗原に結合した抗体を検出するステップとを含むラジオイムノアッセイである。特定の抗原に対する対象抗体の親和性、および結合解離速度は、スキャッチャードプロット解析によって、データから決定することができる。二次抗体との競合も、ラジオイムノアッセイを用いて決定することができる。この場合、抗原は、量を漸増させた未標識二次抗体の存在下で、標識化合物に結合させた対象の抗体とともにインキュベーションする。他の具体的な方法は、本明細書において開示する。下記の実施例2〜4を参照されたい。
本発明の抗体は、当技術分野において公知である任意の方法によって、生物活性に関して分析することができる。
本発明のプロトコルおよび調合物は、ヒトにおいて使用する前に、好ましくは、in vitroで、次いでin vivoで、所望の治療活性または予防活性に関して試験される。例えば、本発明の具体的な治療プロトコル調合物の投与または併用療法の実施が必要であるか決定するために使用され得るin vitroアッセイには、患者の組織試料を培養で増殖させ、本発明の調合物に曝露するか、またはそうでなければ接触させ、かつ、組織試料に対するそのような調合物の効果を観察する、in vitroの細胞培養アッセイが含まれる。組織試料は、生検によって患者から得ることができる。この試験により、個々の患者に対して治療上最も有効な予防物質または治療物質を同定することが可能になる。様々な特定の実施形態では、自己免疫障害、炎症性障害、HMG1および/またはHMG2の異常な発現および/または活性に関連した障害に関与している細胞型の代表的な細胞を用いてin vitroアッセイを実施して、本発明の調合物がそのような細胞型に対して所望の効果を有するかを判定することができる。例えば、接触された細胞によって産生されるHMG1および/もしくはHMG2ならびに/または炎症誘発性サイトカインのレベルが低くなる場合、本発明の組成物が、患者の病態を治療するのに効果的であり得ることが示唆される。あるいは、患者に由来する細胞を培養する代わりに、例えば、末梢血単核細胞(PBMC)、THP-1細胞、またはマクロファージ(MO)など、HMG1および/またはHMG2によって刺激することができる細胞を用いて、本発明の調合物をスクリーニングしてもよい。ELISAアッセイ、リアルタイムPCR、および当技術分野において周知である他の方法を含めて、当技術分野において標準的な多くのアッセイを用いて、サイトカイン産生を評価することができる。具体的な方法は、本明細書においても開示される(下記の実施例2および6を参照されたい)。
予防物質または治療物質は、ヒトにおいて試験する前に、それだけには限らないが、ラット、マウス、ニワトリ、雌ウシ、サル、ウサギ、ハムスターなどを含めて、適切な動物モデル系で試験することができる。
当技術分野において公知であり、広く使用されている原則的動物モデルは、前述したように、当技術分野において公知であり、説明されている。さらに、敗血症(実施例5を参照されたい)、腹膜炎(実施例10を参照されたい)、および関節炎(実施例7〜9を参照されたい)の具体的な動物モデルは、本明細書において開示される。
さらに、当業者に公知である任意のアッセイを用いて、炎症性疾患を治療または予防するための本明細書において開示する組合せ療法の予防的有用性および/または治療的有用性を評価することができる。
5.8 本発明の抗体、抗体組成物、ならびにその治療的投与および/または予防的投与
本発明は、本明細書において開示される抗HMG1抗体を包含し、また、本明細書において「本発明の抗体組成物」、「本発明の組成物」、またはより単純に「組成物」と呼ばれる抗体組成物も対象とする。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、製薬上許容される賦形剤中に本発明の抗体を含む。本明細書において使用される場合、「製薬上許容される担体」という用語は、本発明の抗体と組み合わせてよく、また、組合せ後に、本発明の抗体を対象に投与するのに使用することができる化学組成物を意味する。これらの抗体組成物は、本明細書において「医薬組成物」とも呼ばれる。他の実施形態では、本発明の組成物。
本発明はさらに、急性の炎症状態および慢性の炎症状態の両方を含めて、炎症性サイトカインカスケードの活性化を特徴とする状態を治療するための方法であって、本発明の抗体または医薬組成物を治療有効量投与するステップを含む方法も含む。慢性の炎症状態は、しばしば永久的である組織損傷をもたらす、長期の期間-数週間、数ヶ月、またはさらには無期限に及ぶ炎症応答を特徴とする。慢性の炎症状態には、それだけには限らないが、関節炎(例えば、関節リウマチ)、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎およびクローン病)、ならびに胆嚢炎が含まれる。急性の炎症状態は、通常、組織壊死をしばしばもたらし、また、死をもたらすこともある、血管透過性の増大、水腫、全身性発熱を含む、突然の症状発現を特徴とする。急性の炎症状態には、それだけには限らないが、(例えば、微生物感染に起因する)敗血症、過敏性反応、組織壊死、および虫垂炎が含まれる。状態は、炎症性サイトカインカスケードが、例えば、エンドトキシンショックとともに、全身性反応を引き起こすものでよい。あるいは、状態は、関節リウマチの場合のように、局部的な炎症性サイトカインカスケードによって媒介されてもよい。一実施形態では、本発明の組成物は、HMG1のAボックス(例えば、配列番号4、28、または29内のエピトープ)に特異的に結合する高親和性抗体を含む。別の実施形態では、組成物は、HMG1のBボックス(例えば、配列番号4内のエピトープ)に特異的に結合する本発明の高親和性抗体を含む。さらに別の実施形態では、本発明の組成物は、HMG2のAボックス(例えば、配列番号22内のエピトープ)に特異的に結合する高親和性抗体を含む。別の実施形態では、組成物は、HMG2のBボックス(例えば、配列番号23内のエピトープ)に特異的に結合する本発明の高親和性抗体を含む。
前述したように、HMG1シグナル伝達は、少なくとも部分的に、RAGEによって、おそらくは、PRMおよびPAMPファミリーのタンパク質のメンバーによって媒介されている。AボックスおよびBボックスはどちらも、受容体結合およびシグナル伝達においてある役割を果たしている可能性が高い。したがって、特定の理論に拘泥するものではないが、Aボックスに特異的に結合する抗体(または他のアンタゴニスト)およびBボックスに特異的に結合する抗体(または他のアンタゴニスト)の組合せは、RAGEならびに/またはPRMおよび/もしくはPAMPタンパク質へのHMG1結合を効果的に阻止するであろうことが予想される。したがって、本発明の組成物は、本発明の高親和性抗体(または他のHMGB1抗体もしくはアンタゴニスト)の組合せ、例えば、それだけには限らないが、HMG1 Aボックスに特異的に結合する抗体と、HMG1 Bボックスに特異的に結合する抗体の組合せ、または、HMG2 Aボックスに特異的に結合する抗体と、HMG2 Bボックスに特異的に結合する抗体の組合せを含んでよい。特定の実施形態では、組成物は、HMG1のAボックスおよびBボックスの両方に由来するエピトープ(例えば、AボックスとBボックスの間の連結部にまたがるエピトープ)に特異的に結合する本発明の高親和性抗体を含む。
本発明の組成物は、本発明の高親和性抗体を、単独で、または、他の活性な治療的分子および/もしくはステロイドなどのアジュバント、他の抗炎症性分子、もしくは他の抗体治療薬と組み合わせて含んでよい。より具体的には、本発明の組成物は、初期敗血症メディエーターのアンタゴニストを含んでよい。初期敗血症メディエーターのアンタゴニストは、一実施形態では、TNF、IL-1α、IL-1β、MIF、およびIL-6からなる群から選択されるサイトカインのアンタゴニストである。特定の実施形態では、初期敗血症メディエーターのアンタゴニストは、TNFもしくはMIFに対する抗体、またはIL-1受容体アンタゴニストである。
本発明の組成物は、単独で、または、それだけには限らないが、手術、放射線療法、および化学療法を含めて、癌および関連した状態に対する他の有効な治療戦略と組み合わせて、利用してよい。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、放射線療法において放射線に対する腫瘍細胞の感受性を高める際に、かつ/または化学療法剤による腫瘍損傷を増強および/もしくは亢進させる際に、有用であり得る。本発明の組成物は、多剤耐性腫瘍細胞を感受性にするのにも有用であり得る。
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、エンドトキシンおよび/または関係する発熱性物質を実質的に含まない、パイロジェンフリー製剤である。エンドトキシンには、微生物内部に閉じ込められており、微生物が分解または死滅する場合にのみ放出される毒素が含まれる。発熱性物質には、細菌および他の微生物の外膜に由来する、発熱を誘発する耐熱性物質(糖タンパク質)も含まれる。これらの物質はどちらも、ヒトに投与された場合には、発熱、低血圧、およびショックを引き起こし得る。潜在的な有害作用があるため、少量のエンドトキシンでさえ、静脈内投与される薬学的薬物溶液から除去しなければならない。食品医薬品局(Food & Drug Administration)(「FDA」)は、静脈内薬物適用に関して、1時間の期間に、5エンドトキシン単位(EU)/回/kg体重の上限を設定している(The United States Pharmacopeial Convention, Pharmacopeial Forum 26(1):223(2000))。モノクローナル抗体と同様に、数百mg/kg体重または数千mg/kg体重の量の治療用タンパク質を投与する場合、極微量の有害かつ危険なエンドトキシンさえも、除去しなければならない。いくつかの特定の実施形態では、組成物中のエンドトキシンおよびパイロジェンのレベルは、10EU/mg未満、または5EU/mg未満、または1EU/mg未満、または0.1EU/mg未満、または0.01EU/mg未満、または0.001EU/mg未満である。
in vivo投与用に使用する場合、本明細書において説明する組成物は、無菌でなくてはならない。これは、例えば、滅菌濾過膜を通した濾過によって、または当技術分野において周知である他の手段によって、容易に達成される。注射用の無菌組成物は、Remington's Pharmaceutical Sciences(180版, Mack Publishing Company、イーストン、ペンシルバニア州、1990)に記載されているように、従来の薬学的実践に従って調製することができる。本明細書において開示するものなどの抗体を含む組成物は、通常、凍結乾燥型で、または溶液中で保存される。本発明の抗体を含む無菌組成物は、無菌取出口を有する容器、例えば、皮下注射針によって貫通可能な栓など製剤の回収を可能にする取付具を有する静注液バッグまたはバイアル中に入れられることが企図される。
本発明の一実施形態では、本明細書において説明する組成物は、急性炎症状態および慢性炎症状態の両方を含めて、炎症性サイトカインカスケードの活性化によって媒介されるか、またはそれを特徴とする状態を阻害することができる。特定の実施形態では、本明細書において説明する組成物は、急性の炎症状態(例えば、敗血症)の治療に有用である。別の特定の実施形態では、本明細書において説明する組成物は、慢性の炎症状態(例えば、関節リウマチ)の治療に有用である。さらに別の実施形態では、本明細書において説明する組成物は、急性炎症状態および慢性炎症状態の両方の治療に有用である。
本発明の組成物は、炎症性サイトカインカスケードの活性化によって媒介されるか、またはそれを特徴とする炎症状態を有する対象に投与される場合、保護性であることが企図される。本発明の組成物によって与えられる保護は、当技術分野において周知の方法によって測定することができる。本発明の組成物がどの程度保護性であるかを判定するために使用される方法は、治療および/または予防される状態、ならびに検査される測定値に応じて異なると考えられる。例えば、関節炎のげっ歯動物モデルでは、本発明の組成物で処置された動物および適切な対照組成物で処置された動物の足の炎症スコアの比較が、本発明の組成物がどの程度保護性であるかを判定するために使用され得る。敗血症のCLPモデルでは、本発明の組成物で処置された動物および適切な対照組成物で処置された動物の生存の比較が、抗体治療によって与えられる保護を判定するために使用され得る。一般に、本発明の組成物による処置を、いくつかの対照処置と比較する。例えば、対照処置は、対照抗体を含んでよく、または、賦形剤のみを含んでもよい。場合によっては、対照は、例えば、関節炎を治療するためのメトトレキサートや抗TNF(例えば、エンブレル(Enbrel)、フミラ(Humira))など、疾患を治療するための標準的な治療(または適切な代用分子)でよい。場合によっては、対照は、陰性対照(例えば、PBS)でよい。対照が標準的な治療に相当する場合、本発明の組成物を、単独で、または、標準的な治療処置と組み合わせて投与し、かつ、各群の保護レベルを比較することができる。対照の選択は、治療および/または予防される状態、ならびに検査される測定値を含む因子に応じて異なると考えられ、また、当業者によって容易に決定され得る。本発明の組成物によって与えられる保護を判定するための方法の具体例は、本明細書において提供される(下記の実施例7〜11を参照されたい)。
本発明の別の実施形態では、本明細書において説明する組成物は、CLP敗血症動物モデルにおいて、対照組成物よりも、(少なくとも10%または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)、保護性が高い。特定の実施形態では、本明細書において説明する組成物は、CLPマウスモデルおよびCLP子ブタモデルを含む群から選択されるCLP敗血症動物モデルにおいて、対照組成物よりも、(少なくとも10%または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)、保護性が高い。別の特定の実施形態では、CLP動物モデルは、CLPマウスモデルである。
本発明のさらに別の実施形態では、本明細書において説明する組成物は、コラーゲン誘発関節炎マウスモデルにおいて、対照組成物よりも、(少なくとも10%または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)、保護性が高い。特定の実施形態では、コラーゲン誘発関節炎マウスモデルは、受動的なコラーゲン誘発関節炎モデルである。別の特定の実施形態では、コラーゲン誘発関節炎マウスモデルは、能動的なコラーゲン誘発関節炎モデルである。
本発明のさらに別の実施形態では、本明細書において説明する組成物は、コラーゲン誘発関節炎マウスモデルにおいて、レンブレル(Renbrel)(登録商標)(メトトレキサートを併用または併用しない)よりも、(少なくとも10%または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)、保護性が高い。特定の実施形態では、コラーゲン誘発関節炎マウスモデルは、受動的なコラーゲン誘発関節炎モデルである。別の特定の実施形態では、コラーゲン誘発関節炎マウスモデルは、能動的なコラーゲン誘発関節炎モデルである。
本発明のさらに別の実施形態では、本明細書において説明する組成物は、コラーゲン誘発関節炎マウスモデルにおいて、対照組成物よりも、(少なくとも10%または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)、骨量減少および/または軟骨損傷を低減させる。特定の実施形態では、コラーゲン誘発関節炎マウスモデルは、受動的なコラーゲン誘発関節炎モデルである。別の特定の実施形態では、コラーゲン誘発関節炎マウスモデルは、能動的なコラーゲン誘発関節炎モデルである。
他の実施形態では、本明細書において説明する組成物は、アジュバント誘発関節炎ラットモデルにおいて、対照組成物よりも、(少なくとも10%または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)、保護性が高い。
本発明のさらに別の実施形態では、本明細書において説明する組成物は、アジュバント誘発関節炎ラットモデルにおいて、レンブレル(登録商標)(メトトレキサートを併用または併用しない)よりも、(少なくとも10%または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)、保護性が高い。
本発明のさらに別の実施形態では、本明細書において説明する組成物は、アジュバント誘発関節炎ラットモデルにおいて、対照組成物よりも、(少なくとも10%または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)、骨量減少および/または軟骨損傷を低減させる。
本発明の別の実施形態では、本明細書において説明する組成物は、ヒトにおいて、エンブレル(Enbrel)(登録商標)(メトトレキサートを併用または併用しない)よりも、(少なくとも10%または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)、保護性が高い。
本発明のさらに別の実施形態では、本明細書において説明する組成物は、腹膜炎マウスモデルにおいて、対照組成物よりも、(少なくとも10%または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)、保護性が高い。
本発明のさらに別の実施形態では、本明細書において説明する組成物は、ヒトまたはSCIげっ歯動物モデルにおいて、対照組成物よりも、(少なくとも10%、または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)多く、脊髄損傷(SCI)の重症度を改善する。
本発明のさらに別の実施形態では、本明細書において説明する組成物は、ヒトまたはALIげっ歯動物モデルにおいて、対照組成物よりも、(少なくとも10%、または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)多く、急性肺傷害(ALI)の重症度を改善する。
別の実施形態では、本明細書において説明する組成物は、関節炎動物モデル(例えば、AIAラットモデル、受動的CIAマウスモデル、または能動的CIAマウスモデル)において、対照組成物よりも、(少なくとも10%または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)多く、骨化過剰を減少させる。
本発明のさらに別の実施形態では、本明細書において説明する組成物は、ヒトにおいて、対照組成物よりも、(少なくとも10%または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)多く、骨化過剰を減少させる。
本発明はまた、哺乳動物細胞に由来する炎症誘発性サイトカインの放出を阻害する方法も対象としている。この方法は、細胞からの炎症誘発性サイトカインの放出を阻害するのに十分な量の本発明の抗体または抗体組成物で細胞を処理するステップを含む。これらの実施形態では、細胞は、好ましくはマクロファージである。いくつかの実施形態では、炎症誘発性サイトカインは、TNF、IL-1α、IL-1β、MIF、およびIL-6からなる群から選択される。他の実施形態では、細胞はマクロファージであり、かつ、炎症誘発性サイトカインは、TNF、IL-1α、IL-1β、MIF、およびIL-6からなる群から選択される。さらに別の実施形態では、細胞はPBMCであり、かつ、炎症誘発性サイトカインは、TNF、IL-1α、IL-1β、MIF、およびIL-6からなる群から選択される。一実施形態では、これらの方法は、炎症性サイトカインカスケードの活性化を特徴とする状態に罹患しているか、またはそのリスクがある患者の細胞を治療する。具体的な状態は、本明細書において列挙する。
本発明はまた、哺乳動物細胞からのHMG1および/またはHMG2の放出を阻害する方法も対象としている。この方法は、細胞からのHMG1および/またはHMG2の放出を阻害するのに十分な量の本発明の抗体または抗体組成物で細胞を処理するステップを含む。これらの方法は、好ましくは、炎症性サイトカインカスケードの活性化を特徴とする状態に罹患しているか、またはそのリスクがある患者の細胞を治療する。好ましい状態は、本明細書において列挙する。
サイトカイン、HMG1および/またはHMG2の放出の阻害を決定するための方法は、前述したものや本明細書において開示するものなど当技術分野において周知の多数の方法によって決定することができる(下記の実施例2〜11を参照されたい)。
本明細書において使用される場合、「治療有効量」、「十分な量」、および同様の用語は、HMG1および/またはHMG2によって媒介される疾患または障害を治療または管理するのに十分な、治療物質、例えば、本発明のHMG1抗体組成物の量を意味する。治療有効量は、疾患の発症を遅延させるか、または最小化する、例えば、疾患の重症度を遅延させるか、または最小化するのに十分な治療物質の量を意味してもよい。治療有効量は、炎症性障害を治療または管理する際に治療的利益を提供する、治療物質の量を意味してもよい。さらに、本発明の医薬組成物に関する治療有効量は、疾患、例えば炎症性疾患を治療または管理する際に治療的利益を提供する、単独、または他の療法と組み合わせた、治療物質の量を意味する。
本発明はさらに、炎症性障害または1種もしくは複数種のその症状を予防、管理、治療、または改善する方法であって、本発明の抗体組成物および/または1種もしくは複数種の治療法を、それを必要とする対象に与えるステップを含む方法も提供する。炎症性障害または1種もしくは複数種のその症状の予防、管理、治療、または改善のために有用であることが公知であるか、あるいは、これまで使用されてきたか、または現在使用されている、任意の作用物質または治療法を、本発明の抗体組成物と組み合わせて使用することができる。このような作用物質の例には、それだけには限らないが、免疫調節性物質、抗血管新生物質、抗炎症物質、およびTNF-αアンタゴニストが含まれる。
本発明の抗体組成物、すなわち、医薬組成物を用いて有用に治療することができる状態の非限定的な例には、本明細書の背景技術のセクション、および下記に列挙する状態が含まれる。好ましくは、状態は、虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍、もしくは十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵炎、潰瘍性結腸炎、偽膜性結腸炎、急性結腸炎、もしくは虚血性結腸炎、憩室炎、喉頭蓋炎、アカラシア、胆管炎、胆嚢炎、肝炎、クローン病、腸炎、ウィップル病、喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、免疫複合体病、臓器虚血、再灌流障害、臓器壊死、枯草熱、敗血症、敗血症、エンドトキシンショック、カヘキシー、異常高熱症、好酸球性肉芽腫、肉芽腫症、サルコイドーシス、敗血性流産、精巣上体炎、膣炎、前立腺炎、尿道炎、気管支炎、肺気腫、COPD、鼻炎、嚢胞性線維症、間質性肺炎、塵肺症、肺胞炎、細気管支炎、咽頭炎、胸膜炎、副鼻腔炎、インフルエンザ、呼吸器合胞体ウイルス感染症、ヘルペス感染症、HIV感染症、B型肝炎ウイルス感染症、C型肝炎ウイルス感染症、播種性菌血症、デング熱、カンジダ症、マラリア、フィラリア症、アメーバ症、包虫嚢胞、熱傷、皮膚炎、皮膚筋炎、日焼け、じんま疹、いぼ、膨疹、血管炎(vasulitis)、脈管炎、心内膜炎、動脈炎、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、血栓静脈炎、心膜炎、心筋炎、心筋虚血症、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、アルツハイマー病、セリアック病、うっ血性心不全、成人呼吸窮迫症候群、髄膜炎、脳炎、多発性硬化症、脳梗塞、脳塞栓、ギラン・バレー症候群、神経炎、神経痛、脊髄損傷、麻痺、ブドウ膜炎、関節炎、関節痛、骨髄炎、筋膜炎、パジェット病、痛風、歯周病、関節リウマチ、滑膜炎、重症筋無力症、甲状腺炎(thryoiditis)、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、ベーチェット症候群、同種移植拒絶、移植片対宿主疾患、ベルジェ病、I型糖尿病、強直性脊椎炎、ライター症候群、またはホジキン病である。より好ましい実施形態では、状態は、虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍、もしくは十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵炎、潰瘍性結腸炎、偽膜性結腸炎、急性結腸炎、もしくは虚血性結腸炎、肝炎、クローン病、喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、臓器虚血、再灌流障害、臓器壊死、枯草熱、敗血症、敗血症、エンドトキシンショック、カヘキシー、敗血性流産、播種性菌血症、熱傷、アルツハイマー病、セリアック病、うっ血性心不全、成人呼吸窮迫症候群、脳梗塞、脳塞栓、脊髄損傷、麻痺、同種移植拒絶、または移植片対宿主疾患である。
一実施形態では、本発明は、虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍、および十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵炎、潰瘍性結腸炎、偽膜性結腸炎、急性結腸炎、および虚血性結腸炎、肝炎、クローン病、喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、関節リウマチ、狼瘡、臓器虚血、再灌流障害、臓器壊死、枯草熱、敗血症、敗血症、エンドトキシンショック、カヘキシー、敗血性流産、播種性菌血症、熱傷、アルツハイマー病、セリアック病、うっ血性心不全、成人呼吸窮迫症候群、脳梗塞、脳塞栓、脊髄損傷、麻痺、同種移植拒絶、ならびに移植片対宿主疾患からなる群から選択される状態を治療および/または予防するために、本発明の組成物および抗体を投与および使用する方法を対象としている。いくつかの実施形態では、状態は、エンドトキシンショックまたは同種移植拒絶である。状態が同種移植拒絶である場合、組成物は、有利には、シクロスポリンなど同種移植拒絶を阻害するのに使用される免疫抑制薬も含んでよい。いくつかの他の実施形態では、状態は、狼瘡である。
本発明の特定の実施形態は、敗血症、狼瘡、および関節炎(例えば、RA、乾癬性関節炎、若年性関節リウマチ)を治療および/または予防するために本発明の組成物および抗体を投与および使用する方法を対象としている。さらに、本発明の特定の好ましい実施形態は、乾癬を治療および予防するために本発明の組成物および抗体を投与および使用する方法を対象としている。
別の実施形態では、本発明は、異常な骨沈着に関連した疾患、例えば、強直性脊椎炎、未分化型脊椎関節症、若年性脊椎関節炎、または骨化過剰に関連した他の疾患を治療または予防する方法であって、抗体の結合親和性に関わらず、HMG1またはその抗原性断片(例えば、HMG Bボックス)に特異的に結合する任意の抗体(または抗体組成物)を投与するステップを含む方法を含む。
別の実施形態では、本発明は、治療または予防する方法を含み、本発明は、異常な骨沈着に関連した疾患、例えば、強直性脊椎炎、未分化型脊椎関節症、若年性脊椎関節炎、または骨化過剰に関連した他の疾患を治療または予防する方法であって、抗体の結合親和性に関わらず、HMG2またはその抗原性断片(例えば、HMG Bボックス)に特異的に結合する任意の抗体(または抗体組成物)を投与するステップを含む方法を含む。
別の実施形態では、本発明は、治療または予防する方法を含み、本発明は、異常な骨沈着に関連した疾患、例えば、強直性脊椎炎、未分化型脊椎関節症、若年性脊椎関節炎、または骨化過剰に関連した他の疾患を治療または予防する方法であって、抗体の結合親和性に関わらず、HMG1および/もしくはHMG2またはその抗原性断片(例えば、HMG Bボックス)に特異的に結合する抗体の組合せ(または抗体組成物)を投与するステップを含む方法を含む。
本発明の特定の好ましい実施形態は、再狭窄、血管疾患、および心血管疾患を治療および予防するために本発明の組成物および抗体を投与および使用する方法を対象としている。
本発明のさらに別の特定の好ましい実施形態は、組織損傷を治療および予防し、かつ、組織の修復および再生を促進するために本発明の組成物および抗体を投与および使用する方法を対象としている。
別の実施形態では、本発明の組成物は、従来の非毒性の製薬上許容される担体、補助剤、およびビヒクルを含む単位用量の製剤として、経口的に、非経口的に(すなわち、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、胸骨内注射もしくは輸注技術を含む)、吸入スプレーによって、または直腸経由で投与してよい。
さらに別の実施形態では、本発明の方法に従って、前記組成物を、分割した形態または単一の組合せ形態で、治療過程の様々な時点に別々に、または同時に投与することができる。したがって、本発明は、このような同時治療または交互治療の治療計画すべてを包含するものとして理解されるべきであり、「投与する(administering)」という用語は、しかるべく解釈されるべきである。
さらに別の実施形態では、本発明のHMGB1阻害物質と組み合わせて使用される予防物質または治療物質を、同時または逐次的に対象に投与することができる。本発明のHMGB1阻害物質と組み合わせて使用される予防物質または治療物質は、周期的に投与することもでき得る。サイクリング療法は、作用物質のうち1種に対する耐性の発達を抑制するため、作用物質のうち1種の副作用を回避するか、もしくは減少させるため、かつ/または、治療の有効性を改善するために、第1の予防物質または治療物質の一定期間の投与と、それに続く、第2の予防物質または治療物質の一定期間の投与と、この逐次投与、すなわちサイクルの繰り返しを含む。
一実施形態では、本発明の抗体は、1種または複数種のPRM(例えば、TLR2、TLR4、TLR9)に結合する抗体と組み合わせて使用される。特定の実施形態では、1種または複数種のPRM(例えば、TLR2、TLR4、TLR9)に結合する抗体は、PRMのシグナル伝達を阻害する。別の特定の実施形態では、1種または複数種のPRM(例えば、TLR2、TLR4、TLR9)に結合する抗体は、リガンド結合を阻害する。
上記に考察したように、炎症性障害または1種もしくは複数種のその症状の予防、管理、治療、または改善のために有用であることが公知であるか、あるいは、これまで使用されてきたか、または現在使用されている、任意の作用物質または治療法を、本発明の抗体組成物と組み合わせて使用することができる。本発明の抗体組成物と組み合わせて、炎症性障害を有する対象に投与することができる免疫調節性物質の具体的な例としては、それだけには限らないが、メトトレキサート、レフルノミド、シクロホスファミド、シトキサン、イムラン(Immuran)、シクロスポリンA、ミノサイクリン、アザチオプリン、抗生物質(例えば、FK506(タクロリムス))、メチルプレドニゾロン(MP)、コルチコステロイド、ステロイド、ミコフェノール酸モフェチル、ラパマイシン(シロリムス)、ミゾリビン、デオキシスペルグアリン、ブレキナル、マロノニトリロアミンド(malononitriloaminde)(例えば、レフルンアミド(leflunamide))、抗T細胞受容体抗体(例えば、抗CD4抗体(例えば、cM-T412(Boeringer社)、IDEC-CE9.1.RTM.(IDECおよびSKB)、mAB 4162W94、オルトクロン(Orthoclone)およびOKTcdr4a(Janssen-Cilag社))、抗CD3抗体(例えば、ヌビオン(Nuvion)(Product Design Labs社)、OKT3(Johnson&Johnson社))、抗CD20抗体(例えば、リツキサン(Rituxan)(IDEC&Genentech社、米国特許公報US2004/0202658、および国際特許公報WO00/67796)およびその誘導体、HuMax-CD20(GenMab社およびMedarex社、米国特許公報2004/0167319))、抗CD19抗体(例えば、米国特許公報US20020041847、US20030133930、および国際特許公報WO05/012493を参照されたい)、抗CD5抗体(例えば、リシン結合型抗CD5免疫複合体)、抗CD7抗体(例えば、CHH-380(Novartis社))、抗CD8抗体、抗CD40リガンドモノクローナル抗体(例えば、IDEC-131(IDEC))、抗CD52抗体(例えば、カンパス(CAMPATH)1H(Ilex社))、抗CD2抗体(例えば、MEDI-507(MedImmune, Inc.社、国際特許公報WO02/098370およびWO02/069904)、抗CD11a抗体(例えば、ザネリン(Xanelim)(Genentech社))、および抗B7抗体(例えば、IDEC-114)(IDEC));抗サイトカイン受容体抗体(例えば、抗IFN受容体抗体、抗IL-2受容体抗体(例えば、ゼナパックス(Zenapax)(Protein Design Labs社))、抗IL-4受容体抗体、抗IL-6受容体抗体、抗IL-10受容体抗体、および抗IL-12受容体抗体)、抗サイトカイン抗体(例えば、抗IFN抗体、抗TNF-α抗体、抗IL-β抗体、抗IL-6抗体、抗IL-8抗体(例えば、ABX-IL-8(Abgenix社))、および抗IL-12抗体));抗CD22抗体(例えば、エプラツズマブ(Epratuzumab)(Immunomedics社)などの非リガンドブロッキング抗体およびリガンドブロッキング抗体(例えば、米国特許公報2004/0001828および2003/0202975));CTLA4-免疫グロブリン;LFA-3TIP(Biogen社、国際特許公報WO93/08656および米国特許第6,162,432号);可溶性サイトカイン受容体(例えば、TNF-α受容体またはその断片の細胞外ドメイン、IL-1β受容体またはその断片の細胞外ドメイン、およびIL-6受容体またはその断片の細胞外ドメイン);サイトカインまたはその断片(例えば、インターロイキン(IL)-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-15、TNF-α、TNF-β、インターフェロン(IFN)-α、IFN-β、IFN-γ、およびGM-CSF);ならびに抗サイトカイン抗体(例えば、抗IL-2抗体、抗IL-4抗体、抗IL-6抗体、抗IL-10抗体、抗IL-12抗体、抗IL-15抗体、抗TNF-α抗体、および抗IFN-γ抗体)が挙げられる。
本発明の抗体組成物と組み合わせて、炎症性障害を有する対象に投与することができる抗血管新生物質の非限定的な例としては、ビタキシン(Vitaxin)(登録商標)(MedImmune社)または他の抗αvβ3抗体(例えば、CNTO95(Centocor社))、エンドスタチン、アンギオスタチン、アポミグレン(apomigren)、抗血管新生性アンチトロンビンIII、フィブロネクチンのN末端(29kDa)およびC末端(40kDa)のタンパク質分解断片、uPA受容体アンタゴニスト、プロラクチンのタンパク質分解断片(16kDa)、血小板因子-4のタンパク質分解断片(7.8kDa)、血小板因子-4の抗血管新生性の24アミノ酸断片、13.40と呼ばれる抗血管新生因子、トロンボスポンジンIの抗血管新生性22アミノ酸ペプチド断片、SPARCの抗血管新生性20アミノ酸ペプチド断片、RGDおよびNGRを含むペプチド、ラミニン、フィブロネクチン、プロコラーゲン、およびEGFの小型抗血管新生性ペプチド、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF)アンタゴニスト、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)アンタゴニスト、血管内皮増殖因子(VEGF)アンタゴニスト、VEGF受容体(VEGFR)アンタゴニスト(例えば、抗VEGFR抗体)、ならびにアバスチン(Avastin)(登録商標)が挙げられる。
本発明の抗体組成物と組み合わせて、炎症性障害を有する対象に投与することができるTNF-αアンタゴニストの非限定的な例としては、TNF-αに免疫特異的に結合する抗体などのタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、融合タンパク質、抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、Fv、ScFv、Fab断片、F(ab)2断片、およびその抗原結合性断片)、TNF-αの機能、活性、および/または発現を阻止、低減、阻害、または相殺する、核酸分子(例えば、アンチセンス分子もしくは3重らせん体)、有機分子、無機分子、および低分子が挙げられる。様々な実施形態では、TNF-αアンタゴニストは、TNF-αの機能、活性、および/または発現を、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)などの対照と比べて、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%、低減させる。TNF-αに免疫特異的に結合する抗体の例としては、それだけには限らないが、インフリキシマブ(レミケード(REMICADE)(商標);Centacor社)、D2E7(Abbott Laboratories/Knoll Pharmaceuticals Co.社、マウントオリーブ(Mt.Olive)、ニュージャージー州)、フミケード(HUMICADE)(商標)としても公知であるCDP571、およびCDP-870(いずれも、Celltech/Pharmacia社、スラウ、英国)、ならびにTN3-19.12(Williams et al., 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 2762-2766、Thorbecke et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:7375-7379)が挙げられる。本発明は、本発明の組成物および方法における、以下の米国特許において開示されているTNF-αに免疫特異的に結合する抗体の使用も包含する:米国特許第5,136,021号、同第5,147,638号、同第5,223,395号、同第5,231,024号、同第5,334,380号、同第5,360,716号、同第5,426,181号、同第5,436,154号、同第5,610,279号、同第5,644,034号、同第5,656,272号、同第5,658,746号、同第5,698,195号、同第5,736,138号、同第5,741,488号、同第5,808,029号、同第5,919,452号、同第5,958,412号、同第5,959,087号、同第5,968,741号、同第5,994,510号、同第6,036,978号、同第6,114,517号、および同第6,171,787号。可溶性TNF-α受容体の例としては、それだけには限らないが、sTNF-R1(Amgen社)、エタナーセプト(ENBREL(商標)、Immunex社)およびそのラットホモログであるレンブレル(商標)、TNFrI、TNFrIIに由来するTNF-αの可溶性阻害物質(Kohno et al., 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:8331-8335)、ならびにTNF-αInh(Seckinger et al, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:5188-5192)が挙げられる。
本発明に包含される他のTNF-αアンタゴニストとしては、それだけには限らないが、インターフェロンγに活性化されるマクロファージを介してTNF-α産生を阻止することが公知であるIL-10(Oswald et al. 1992, Proc. Natl. Acad. Sci.USA 89:8676-8680)、TNFR-IgG(Ashkenazi et al., 1991, Proc.Natl.Acad.Sci. USA 88:10535-10539)、マウス産生物TBP-1(Serono/Yeda社)、ワクチンCytoTAb(Protherics社)、アンチセンス分子104838(ISIS)、ペプチドRDP-58(SangStat社)、サリドマイド(Celgene社)、CDC-801(Celgene社)、DPC-333(Dupont社)、VX-745(Vertex社)、AGIX-4207(AtheroGenics社)、ITF-2357(Italfarmaco社)、NPI-13021-31(Nereus社)、SCIO-469(Scios社)、TACEターゲター(targeter)(Immunix/AHP社)、CLX-120500(Calyx社)、チアゾロピリム(Thiazolopyrim)(Dynavax社)、オーラノフィン(リドーラ(Ridaura))(SmithKlineBeechamPharmaceuticals社)、キナクリン(メパクリンジクロロ水和物)、テニダプ(Enablex社)、メラニン(Melanin)(Large Scale Biological社)、レネルセプト(Lenercept)(Roche社、スイス)、サリドマイド、およびUriach社の抗p38 MAPK剤が挙げられる。
本発明の抗体組成物と組み合わせて、炎症性障害を有する対象に投与することができる抗炎症物質の非限定的な例としては、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、ステロイド系抗炎症薬、β-アゴニスト、抗コリン(anticholingeric)剤、およびメチルキサンチンが挙げられる。NSAIDの例としては、それだけには限らないが、アスピリン、イブプロフェン、セレコキシブ(セレブレックス(CELEBREX)(商標))、ジクロフェナク(ボルタレン(VOLTAREN)(商標))、エトドラク(ロジン(LODINE)(商標))、フェノプロフェン(ナルフォン(NALFON)(商標))、インドメタシン(インドシン(INDOCIN)(商標))、ケトララク(ketoralac)(トラドール(TORADOL)(商標))、オキサプロジン(ダイプロ(DAYPRO)(商標))、ナブメントン(nabumentone)(レラフェン(RELAFEN)(商標))、スリンダク(クリノリル(CLINORIL)(商標))、トルメンチン(tolmentin)(トレクチン(TOLECTIN)(商標))、ロフェコキシブ(バイオックス(VIOXX)(商標))、ナプロキセン(アレブ(ALEVE)(商標)、ナプロシン(NAPROSYN)(商標))、ケトプロフェン(アクトロン(ACTRON)(商標))、およびナブメトン(レラフェン(RELAFEN)(商標))が挙げられる。このようなNSAIDは、シクロオキシゲナーゼ酵素(例えば、COX-1および/またはCOX-2)を阻害することによって機能する。ステロイド系抗炎症薬の例としては、それだけには限らないが、糖質コルチコイド、デキサメタゾン(デカドロン(DECADRON)(商標))、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン(デルタゾン(DELTASONE)(商標))、プレドニゾロン、トリアムシノロン、アザルフィジン、ならびにプロスタグランジン、トロンボキサン、およびロイコトリエンなどのエイコサノイドが挙げられる。
特定の実施形態では、変形性関節症の患者に、それだけには限らないが、鎮痛薬(非限定的な例は、最高4000mg/日までの用量のアセトアミノフェン、フェナセチン、および、200〜300mgの範囲の日用量のトラマドールである);NSAID(非限定的な例としては、それだけには限らないが、アスピリン、ジフルニサル、ジクロフェナク、エトドラク、フェナマート、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、サリチル酸メチル、ネブメトン(nebumetone)、ナプロキシン(naproxin)、オキサプラジン(oxaprazin)、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スリンダク、およびトルメチンが挙げられる)を含めて、変形性関節症の予防、治療、管理、または改善のために有用な他の作用物質または治療法と組み合わせて、予防的または治療的に有効な量の本発明の抗体組成物を投与する。低用量のNSAID、例えば、1200mg/日のイブプロフェン、500mg/日のナプロキセンが好ましい。胃保護物質、例えば、ミソプロストール、ファモチジン、またはオメプラゾールは、NSAID;それだけには限らないが、サルサラートを含む、非アセチル化サリチラート;それだけには限らないが、セレコキシブおよびロフェコキシブを含む、シクロオキシゲナーゼ(Cox)-2-特異的阻害剤(CSI);糖質コルチコイドデポー製剤の関節内注射または関節周囲注射;ヒアルロン酸の関節内注射;カプサイシンクリーム剤;フィブリン、軟骨破片、および他の崩壊物を洗い流すための、変形性関節症の膝の大規模な洗浄;ならびに関節置換手術と同時に使用するのに好ましい。本発明の抗体組成物はまた、それだけには限らないが、関節負荷の軽減(非限定的な例は、不良姿勢の矯正、過剰な腰部前弯の支持、関与する関節への過剰な負荷の回避、長期の立位、膝立ち、およびしゃがみ状態の回避である)、患部関節の加熱、有酸素運動、および他の理学療法を含めて、変形性関節症の予防、治療、管理、または改善において、他の非薬理学的な処置と組み合わせて使用することもできる。
特定の実施形態では、関節リウマチおよび/または異常な骨沈着に関連した他の疾患に罹患している患者に、それだけには限らないが、NSAID(非限定的な例としては、それだけには限らないが、アスピリン、ジフルニサル、ジクロフェナク、エトドラク、フェナマート、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、サリチル酸メチル、ネブメトン(nebumetone)、ナプロキシン(naproxin)、オキサプラジン(oxaprazin)、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スリンダク、およびトルメチンが挙げられる);鎮痛薬(非限定的な例は、アセトアミノフェン、フェナセチン、およびトラマドールである);それだけには限らないが、エチドロナート、パミドロナート、アレンドロナート、リセドロナート、ゾレドロナート、イバンドロナートを含む、ビスホスホナート;それだけには限らないが、セレコキシブおよびロフェコキシブを含む、CSI;糖質コルチコイド(好ましくは低用量の経口糖質コルチコイド、例えば、7.5mg/日未満のプレドニゾン、もしくは高用量の糖質コルチコイドを月1回、間欠的に投与、または関節内への糖質コルチコイド;それだけには限らないが、メトトレキサート(好ましくは、所与の間欠的な低用量、例えば、1週1回、7.5〜30mg)を含む、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、金化合物(例えば、金の塩)、D-ペニシラミン、抗マラリア薬(例えば、クロロキン)、およびスルファサラジン;それだけには限らないが、エタネルセプトおよびインフリキシマブを含む、TNF-α中和物質;免疫抑制性かつ細胞傷害性の物質(例としては、それだけには限らないが、アザチオプリン、レフルノミド、シクロスポリン、およびシクロホスファミドが挙げられる)、ならびに、外科手術(例としては、それだけには限らないが、関節形成術、関節全置換術、手の再建手術、直視下または関節鏡視下の滑膜切除術、および早期の手首腱鞘切除術が挙げられる)を含めて、関節リウマチおよび/または異常な骨沈着に関連した他の疾患の予防、治療、管理、および改善において有用な他の作用物質または治療法と組み合わせて、予防的または治療的に有効な量の本発明の抗体組成物を投与する。本発明の抗体組成物はまた、それだけには限らないが、安静、炎症を起こした/損傷した関節の望ましくない動作を減少させるための副子固定、様々な矯正器具および補助器具を使用した運動、ならびに他の理学療法を含めて、関節リウマチおよび/または異常な骨沈着に関連した他の疾患の予防、治療、管理、および改善において、他の処置と組み合わせて使用してもよい。本発明の抗体組成物はまた、それだけには限らないが、食餌療法(例えば、肉中に存在する食事性のω-6必須脂肪酸を、ある種の魚油中に存在するエイコサペンタエン酸などのω-3脂肪酸で代用する)、ワクチン、ホルモン、および局所用製剤を含む、関節リウマチおよび/または異常な骨沈着に関連した他の疾患の予防、治療、管理、および改善のいくつかの非伝統的な手法と組み合わせて使用してもよい。
特定の実施形態では、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者に、単独で、または、それだけには限らないが、気管支拡張薬(それだけには限らないが、短時間作用性および長時間作用性のβ2-アドレナリン作用薬を含む)(短時間作用性のβ2作用薬の例としては、それだけには限らないが、アルブテロール、ピルブテロール、テルブタリン、およびメタプロテレノールが挙げられ、長時間作用性のβ2作用薬の例としては、それだけには限らないが、経口徐放性アルブテロールおよび吸入サルメテロールが挙げられる)、抗コリン薬(例としては、それだけには限らないが、臭化イプラトロピウムが挙げられる)、ならびにテオフィリンおよびその誘導体(テオフィリンの治療的範囲は、好ましくは10〜20μg/mLである)、糖質コルチコイド、外因性のα1AT(例えば、ヒト血漿プールに由来するα1AT、週用量60mg/kgで静脈内投与される)、酸素、肺移植、肺容量減少術、気管内挿管、換気支持、年1回のインフルエンザワクチンおよび23価のポリサッカライドを用いた肺炎球菌ワクチン接種、運動、ならびに禁煙を含めて、COPDの予防、治療、管理、および改善において有用な他の作用物質もしくは治療法と組み合わせて、予防的または治療的に有効な量の本発明の抗体組成物を投与する。
特定の実施形態では、肺線維症の患者に、単独で、または、それだけには限らないが、酸素、コルチコステロイド(非限定的な例では、プレドニゾンを1〜1.5mg/kg/日(最大100mg/日まで)で開始して、毎日、6週間、投与し、3〜6ヶ月間に渡ってゆっくりと、最小限の維持用量0.25mg/kg/日まで減らして投与する)、細胞傷害性薬物(非限定的な例では、100〜120mgのシクロホスファミドを毎日1回経口投与し、3mg/kg〜最大200mgのアザチオプリンを毎日1回経口投与する)、気管支拡張薬(非限定的な例は、短時間作用性および長時間作用性のβ2-アドレナリン作用薬、抗コリン薬、ならびにテオフィリンおよびその誘導体である)、ならびに抗ヒスタミン薬(非限定的な例は、ジフェンヒドラミンおよびドキシラミンである)を含めて、肺線維症治療法のために有用な、有効量の1種もしくは複数種の他の作用物質と組み合わせて、予防的または治療的に有効な量の本発明の抗体組成物を投与する。
特定の実施形態では、SCI患者に、単独で、または、それだけには限らないが、糖質コルチコイドステロイド(非限定的な例では、15分間に渡ってメチルプレドニゾロンを30mg/kgでボーラス投与し、ボーラス投与後45分から開始して、23時間、メチルプレドニゾロンを5.4mg/kg/時で輸注する)、神経保護物質(例えば、ミノサイクリン)、再生療法(例えば、幹細胞治療、ヒドロゲル)、弱電場(例えば、脊髄外の振動磁場刺激装置である埋め込み可能な医療器具)を含めて、SCI治療法のために有用な、有効量の1種もしくは複数種の他の作用物質と組み合わせて、予防的または治療的に有効な量の本発明の抗体組成物を投与する。
特定の実施形態では、喘息患者に、単独で、または、それだけには限らないが、アドレナリン作動性刺激薬(例としては、それだけには限らないが、カテコールアミン、例えば、エピネフリン、イソプロテレノール、およびイソエタリン;レソルシノール、例えば、メタプロテレノール、テルブタリン、およびフェノテロール;ならびにサリゲニン、例えば、サルブタモールが挙げられる。吸入は、アドレナリン作動性刺激薬の好ましい投与経路である);それだけには限らないが、テオフィリンおよびその様々な塩を含むメチルキサンチン;それだけには限らないが、硫酸アトロピン、硝酸メチルアトロピン、および臭化イプラトロピウムを含む抗コリン薬;糖質コルチコイド(例としては、それだけには限らないが、全身性ステロイド薬もしくは経口ステロイド薬、および吸入糖質コルチコイドが挙げられる);肥満細胞安定化剤(例としては、それだけには限らないが、クロモリンナトリウムおよびネドクロミルナトリウムが挙げられる);ロイコトリエン修飾薬(例としては、それだけには限らないが、ジレウトン(Zileuton)、ザフィルルカスト、およびモンテルカストが挙げられる);免疫抑制剤(例としては、それだけには限らないが、メトトレキサートおよび金の塩が挙げられる);ならびに、粘液溶解剤(例としては、それだけには限らないが、アセチルシステインが挙げられる)を含めて、喘息治療法のために有用な、有効量の1種もしくは複数種の他の作用物質と組み合わせて、予防的または治療的に有効な量の本発明の抗体組成物を投与する。
本発明は、本発明の化合物または医薬組成物、好ましくは本発明の抗体を対象に有効量投与することによって治療、阻害、および予防する方法を提供する。好ましい実施形態では、化合物は、実質的に精製されている(例えば、その効果を制限するか、または望まれない副作用を生じる物質を実質的に含まない)。対象は、好ましくは、それだけには限らないが、雌ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌなどの動物を含めて、動物であり、また、好ましくは、哺乳動物、最も好ましくはヒトである。
組成物が核酸または免疫グロブリンを含む場合に使用することができる製剤および投与方法は前述した。その他の適切な製剤および投与経路は、本明細書において後述するものから選択することができる。
様々な送達系が公知であり、また、本発明の化合物を投与するのに使用することができる。例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセルへの封入、化合物を発現できる組換え細胞、受容体を介したエンドサイトーシス(例えば、WuおよびWu, J.Biol.Chem. 262:4429-4432(1987)を参照されたい)、レトロウイルスベクターまたは他のベクターの一部分としての核酸の構築である。導入方法には、それだけには限らないが、皮内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、静脈内経路、皮下経路、鼻腔内経路、硬膜外経路、および経口経路が含まれる。化合物または組成物は、任意の簡便な経路によって、例えば、輸注もしくはボーラス注射によって、上皮内壁もしくは皮膚粘膜内壁(例えば、口腔粘膜、直腸および腸の粘膜など)を通じての吸収によって、投与してよく、また、他の生物学的に活性な作用物質とともに投与してもよい。投与は全身的でも局所的でもよい。さらに、本発明の薬剤化合物または医薬組成物を、脳室内注射およびくも膜下注射を含む任意の適切な経路によって中枢神経系中に導入することが望ましい場合もある。脳室内注射は、例えば、オマヤレザバーなどの貯蔵器に結合された脳室内カテーテルによって容易にすることができる。肺投与もまた、例えば、吸入器またはネブライザー、およびエアロゾル化剤を含む製剤を使用することによって、使用することができる。
特定の実施形態では、本発明の薬剤化合物または医薬組成物を、治療を必要とする領域に局所的に投与することが望ましい場合がある。これは、例えば、それだけには限らないが、外科手術中の局所注入、例えば、外科手術後の創傷ドレッシングと併用した局所適用によって、注射によって、カテーテルを用いて、坐剤を用いて、または、埋め込み剤を用いて(該埋め込み剤は、シラスティック(sialastic)膜などの膜、もしくは繊維を含めて、多孔性、非多孔性、もしくはゼラチン質の材料である)、実現することができる。好ましくは、抗体を含めて、本発明のタンパク質を投与する場合、そのタンパク質が吸着しない材料を使用するように注意しなければならない。
別の実施形態では、化合物または組成物は、小胞中、特にリポソーム中に入れて送達することができる(例えば、Langer, Science 249:1527-1533(1990)、Treat et al.、Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer、Lopez-BeresteinおよびFidler(編)、Liss、ニューヨーク、353〜365頁(1989)、Lopez-Berestein、同書、317〜327頁を参照されたい。一般に同書を参照されたい)。
さらに別の実施形態では、化合物または組成物を制御放出系で送達することができる。一実施形態では、ポンプを使用してよい(前記のLanger、Sefton, 1987, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201、Buchwald et al., 1980, Surgery 88:507、Saudek et al., 1989, N. Engl.J. Med. 321:574を参照されたい)。別の実施形態では、ポリマー材料を使用することができる(Medical Applications of Controlled Release、LangerおよびWise(編)、CRC Press、ボカラトン、フロリダ州(1974)、Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance, SmolenおよびBall(編)、Wiley、ニューヨーク(1984)、RangerおよびPeppas, J., 1983, Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61を参照されたい。また、Levy et al., 1985, Science 228:190、During et al., 1989, Ann. Neurol. 25:351、Howard et al.,1989, J. Neurosurg. 71:105も参照されたい)。さらに別の実施形態では、制御放出系を、治療標的、すなわち、脳の近くに配置することができ、したがって、ごくわずかな全身投与量しか必要としない(例えば、Goodson、Medical Applications of Controlled Release、前記、第2巻、115〜138頁(1984)を参照されたい)。他の制御放出系は、Langerによる総説(1990, Science 249:1527-1533)において考察されている。
本発明の化合物が、タンパク質をコードする核酸である特定の実施形態では、その核酸を、適切な核酸発現ベクターの一部分として構築し、かつそれを、例えば、レトロウイルスベクターを用いて(米国特許第4,980,286号を参照されたい)もしくは直接注入によって、または、微粒子のボンバードメント(例えば、遺伝子銃、バイオリスティック(Biolistic)、Dupont社)を用いて、または脂質もしくは細胞表面受容体もしくはトランスフェクト剤でコーティングすることによって、細胞内に入るように投与することによって、あるいは、核に移行することが公知であるホメオボックス様ペプチドに連結させて、それを投与することによってなど(例えば、Joliot et al., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:1864-1868を参照されたい)、コードされたタンパク質の発現を促進するためにin vivoで投与することができる。あるいは、核酸を、細胞内に導入し、相同組換えによって、宿主細胞DNA内に組み入れて発現させることもできる。
本発明は、医薬組成物も提供する。このような組成物は、治療有効量の化合物および製薬上許容される担体を含む。特定の実施形態では、「製薬上許容される」という用語は、連邦または州政府の規制機関によって承認されていること、あるいは、動物、特にヒトで使用するために米国薬局方または他の一般的に認識されている薬局方に収載されていることを意味する。「担体」という用語は、治療物質がいっしょに投与される希釈剤、補助剤、またはビヒクルを意味する。このような薬剤用担体は、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱物油、ゴマ油など、石油、動物、植物、または合成由来のものを含めて、水や油など滅菌した液体でよい。水は、医薬組成物が静脈内投与される場合、好ましい担体である。生理食塩水溶液ならびに水性デキストロース溶液およびグリセロール溶液も、特に注射液剤用の液状担体として使用することができる。適切な薬学的賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。組成物は、望ましいならば、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤も含んでよい。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放製剤などの形態をとってよい。組成物は、従来の結合剤およびトリグリセリドなどの担体を用いて、坐剤として調剤することができる。経口製剤は、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウムなど標準的な担体を含んでよい。適切な薬剤用担体の例は、E.W.Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」において説明されている。このような組成物は、患者に適切に投与するための形態を提供するために適切な量の担体とともに、好ましくは精製された形態の治療有効量の化合物を含む。製剤は、投与様式に適するべきである。
好ましい実施形態では、組成物は、ヒトに静脈内投与するために適合させた医薬組成物として、常用的な手順に従って調剤される。典型的には、静脈内投与用の組成物は、無菌の等張性水性緩衝液中の液剤である。必要な場合には、組成物は、可溶化剤、および注射部位での疼痛を緩和するリグノカインなどの局所用麻酔薬も含んでよい。一般に、これらの成分は、単位剤形で、例えば、活性な作用物質の量を示すアンプルやサシェットなど密閉型容器中の凍結乾燥粉末または水分の無い濃縮物として、別々に、または一緒に混合して供給される。組成物が、輸注によって投与される予定の場合、これは、医薬品グレードの無菌の常水または生理食塩水を含む点滴瓶を用いて投薬することができる。組成物が注射によって投与される場合、投与前に成分を混合できるように、無菌注射用水または生理食塩水入りのアンプルを提供することができる。
本発明の化合物は、中性の形態または塩の形態として調剤することができる。薬剤として許容される塩には、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するものなど陰イオンとともに形成されるもの、および、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するものなど陽イオンとともに形成されるものが含まれる。
本発明のポリペプチドの異常な発現および/または活性に関連した疾患または障害の治療、抑制、および予防において有効であると考えられる本発明の化合物の量は、標準的な臨床技術によって決定することができる。さらに、最適な投薬量範囲を特定するのを助けるために、in vitroアッセイを場合によって使用してよい。製剤中で使用すべき正確な用量は、投与経路および疾患または障害の重篤性にも依存すると考えられ、開業医の判断および各患者の状況によって決定すべきである。有効量は、in vitroまたは動物モデルの試験系に由来する用量反応曲線から推定することができる。
抗体の場合、患者に投与される投薬量は、典型的には、0.1mg/kg体重〜100mg/kg体重である。好ましくは、患者に投与される投薬量は、0.1mg/kg体重〜20mg/kg体重、より好ましくは、1mg/kg体重〜10mg/kg体重である。一般に、ヒト抗体は、外来ポリペプチドに対する免疫応答が原因で、他の種に由来する抗体よりも、ヒトの体内で、より長い半減期を有する。したがって、ヒト抗体の投薬量をより少量にすること、および投与頻度をより少なくすることが、しばしば可能である。さらに、本発明の抗体の投薬量および投与頻度は、例えば、脂質化などの修飾によって抗体の取込みおよび(例えば、脳への)組織浸透を促進することによって、減少させることができる。
本発明はまた、本発明の医薬組成物の1種または複数種の成分を詰めた1つまたは複数の容器を含む、薬学的なパックまたはキットも提供する。場合によっては、薬剤または生物学的製品の製造、使用、または販売を規制する行政機関によって規定された形式の注意書きが、これらの容器に伴ってよく、この注意書きは、ヒト投与用の製造、使用、または販売をその機関によって承認されていることを示す。
これらの組成物中にポリペプチドとともに含まれる賦形剤は、治療的用途における組成物の予想される投与経路に基づいて選択される。組成物の投与経路は、治療しようとする状態に応じて変わる。例えば、静脈注射は、エンドトキシンショックなどの全身的障害の治療のために好ましい場合があり、また、経口投与は、胃潰瘍などの胃腸管障害を治療するのに好ましい場合がある。投与経路および投与する組成物の投薬量は、当業者が、過度に実験をすることなく、標準的な用量反応研究と併用して、決定することができる。これらの決定を下す際に考慮すべき重要な事柄には、治療する1種または複数種の状態、投与する組成物の選択、個々の患者の年齢、体重、および応答、ならびに患者の症状の重症度が含まれる。したがって、状態に応じて、経口的に、非経口的に、鼻腔内に、腟内に、直腸内に、舌に、舌下に、頬側に(bucally)、口腔内に(intrabuccaly)、および経皮的に、患者に抗体組成物を投与することができる。
したがって、経口投与、舌投与、舌下投与、頬側投与、および口腔内投与のために設計される組成物は、過度に実験をすることなく、当技術分野において周知の手段によって、例えば、不活性な希釈剤または可食性の担体を用いて、作製することができる。組成物は、ゼラチンカプセル剤中に封入してもよく、または圧縮して錠剤にしてもよい。経口的な治療的投与をするために、本発明の医薬組成物を賦形剤と混合し、錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、カシェ剤、チューインガムなどの形態で使用することができる。
錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、結合剤、レシピエント(recipient)、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、および矯味剤も含んでよい。結合剤のいくつかの例としては、結晶セルロース、トラガカントゴム、またはゼラチンが挙げられる。賦形剤の例としては、デンプンまたはラクトースが挙げられる。崩壊剤のいくつかの例としては、アルギン酸、トウモロコシデンプンなどが挙げられる。滑沢剤の例としては、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カリウムが挙げられる。流動促進剤の例は、コロイド状二酸化ケイ素である。甘味剤のいくつかの例としては、スクロース、サッカリンなどが挙げられる。矯味剤の例としては、ペパーミント、サリチル酸メチル、オレンジ香料などが挙げられる。これらの様々な組成物を調製する際に使用される材料は、薬学的に純粋であり、かつ、使用される量で非毒性であるべきである。
本発明の組成物は、例えば、静脈内注射、筋肉内注射、くも膜下腔内注射、または皮下注射によってなど、非経口的に容易に投与することができる。非経口投与は、本発明の抗体組成物を液剤または懸濁剤中に混合することによって遂行することができる。このような液剤または懸濁剤は、注射用水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶剤などの無菌希釈剤も含んでよい。非経口製剤は、例えば、ベンジルアルコールやメチルパラベンなどの抗菌剤、例えば、アスコルビン酸や重亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤、およびEDTAなどのキレート剤を含んでもよい。酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩などの緩衝剤、および塩化ナトリウムやデキストロースなど張性を調整するための作用物質も、添加してよい。非経口調製物は、ガラス製またはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ、または複数回投与用バイアル中に入れることができる。
直腸投与は、医薬組成物を直腸または大腸中に投与するステップを含む。これは、坐剤または浣腸を用いて遂行することができる。坐剤製剤は、当技術分野において公知の方法によって容易に作製することができる。例えば、坐剤製剤は、グリセリンを約120Cまで加熱し、抗体組成物をグリセリン中に溶解し、加熱したグリセリンを混合し(この後、精製水を添加してもよい)、かつ、熱い混合物を坐剤の鋳型中に流し込むことによって、調製することができる。
経皮投与には、皮膚を通しての組成物の経皮的吸収も含まれる。経皮製剤としては、パッチ、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、膏薬などが挙げられる。
本明細書において説明する抗体組成物はまた、初期敗血症メディエーターのアンタゴニストも含んでよい。本明細書において使用される場合、初期の敗血症メディエーターとは、炎症性サイトカインカスケードの誘導(例えば、LPSへの曝露)後すぐに(すなわち、30〜60分以内に)細胞から放出される炎症誘発性サイトカインである。これらのサイトカインの非限定的な例は、TNF、IL-1α、IL-1β、IL-6、PAF、およびMIFである。これらのサイトカインの受容体(例えば、腫瘍壊死因子の1型受容体)およびこれらのサイトカインの産生に必要とされる酵素(例えば、インターロイキン-1β変換酵素)もまた、初期の敗血症メディエーターとして含まれる。現在公知であるか、または今後発見される、任意の初期敗血症メディエーターのアンタゴニストは、炎症性サイトカインカスケードをさらに阻害することによって、これらの実施形態に有用となり得る。
初期敗血症メディエーターのアンタゴニストの非限定的な例は、初期敗血症メディエーターのmRNAに結合して、その発現を妨げるアンチセンス化合物(例えば、Ojwang et al., 1997, Biochemistry 36:6033-6045、Pampfer et al., 1995, Biol. Reprod. 52:1316-1326、米国特許第6,228,642号、Yahata et al., 1996, Antisense Nucleic Acid Drug Dev. 6:55-61、およびTaylor et al., 1998, Antisense Nucleic Acid Drug Dev. 8:199-205を参照されたい)、初期敗血症メディエーターのmRNAを特異的に切断するリボザイム(例えば、Leavitt et al., 2000, Antisense Nucleic Acid Drug Dev. 10: 409-414、Kisich et al., 1999、およびHendrix et al., 1996, Biochem.J. 314: 655-661を参照されたい)、および初期敗血症メディエーターに結合し、それらの作用を阻害する抗体(例えば、KamおよびTargan, 2000, Expert Opin.Pharmacother. 1: 615-622、Nagahira et al., 1999, J. Immunol. Methods 222, 83-92、Lavine et al., 1998, J. Cereb.Blood Flow Metab. 18: 52-58、ならびにHolmes et al., 2000, Hybridoma 19: 363-367を参照されたい)である。現在公知であるか、または今後発見される、初期敗血症メディエーターの任意のアンタゴニストは、本発明の範囲内にあるものと想定される。当業者なら、任意の個々の炎症性サイトカインカスケードを阻害するためにこれらの組成物中で使用する初期敗血症メディエーターの量を、過度に実験をすることなく、常用的な用量反応研究によって決定することができる。
5.9 診断法および画像化
対象のポリペプチドに特異的に結合する、標識抗体ならびにその誘導体および類似体は、本発明のポリペプチドの異常な発現および/または活性に関連した疾患および/または障害を検出、診断、または観察するために診断目的に使用することができる。本発明は、(a)対象のポリペプチドに特異的な1種または複数種の抗体を用いて、個体の細胞または体液における対象ポリペプチドの発現を分析するステップと、(b)遺伝子発現のレベルを標準的な遺伝子発現レベルと比較するステップであって、標準的な発現レベルと比較して、分析したポリペプチドの遺伝子発現レベルが上昇または低下する場合、異常な発現が示されるステップとを含む、対象のポリペプチドの異常発現の検出を提供する。
本発明は、(a)対象のポリペプチドに特異的な1種または複数種の抗体を用いて、個体の細胞または体液における対象ポリペプチドの発現を分析するステップと、(b)遺伝子発現のレベルを標準的な遺伝子発現レベルと比較するステップであって、標準的な発現レベルと比較して、分析したポリペプチドの遺伝子発現レベルが上昇または低下する場合、特定の障害が示されるステップとを含む、障害を診断するための診断的アッセイを提供する。
本発明の抗体は、当業者に公知である従来の免疫組織学的方法を用いて生物試料中のタンパク質レベルを分析するのに使用することができる(例えば、Jalkanen, et al., 1985, J. Cell. Biol. 101:976-985、Jalkanen, et al., 1987, J. Cell. Biol. 105:3087-3096を参照されたい)。タンパク質遺伝子発現を検出するのに有用な他の抗体ベースの方法としては、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)やラジオイムノアッセイ(RIA)などのイムノアッセイが挙げられる。
当技術分野において公知の技術を適用して、本発明の抗体を標識することができる。このような技術には、それだけには限らないが、二官能性結合剤の使用が含まれる(例えば、米国特許第5,756,065号、同第5,714,631号、同第5,696,239号、同第5,652,361号、同第5,505,931号、同第5,489,425号、同第5,435,990号、同第5,428,139号、同第5,342,604号、同第5,274,119号、同第4,994,560号、および同第5,808,003号を参照されたい)。
本発明の一実施形態は、動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトにおける、対象のポリペプチドの異常発現に関連した疾患または障害の検出および診断である。一実施形態では、診断は、(a)対象のポリペプチドに特異的に結合する標識分子の有効量を対象に(例えば、非経口的に、皮下に、または腹腔内に)投与するステップと、(b)標識分子を、ポリペプチドが発現される対象中の部位で優先的に濃縮させるために(かつ、未結合の標識分子をバックグラウンドレベルまで消失させるために)、投与後に一定の時間間隔、待機するステップと、(c)バックグラウンドレベルを決定するステップと、(d)対象中の標識分子を検出するステップであって、バックグラウンドレベルを上回る標識分子が検出された場合、対象のポリペプチドの異常発現に関連した特定の疾患または障害を対象が有することが示唆されるステップとを含む。バックグラウンドレベルは、特定の系に対して予め決定された標準値に対して、検出された標識分子の量を比較することを含めて、様々な方法によって決定することができる。
また、本明細書において説明するように、本発明の抗体は、敗血症、関節リウマチ、腹膜炎、クローン病、再灌流障害、敗血症、エンドトキシンショック、嚢胞性線維症、心内膜炎、乾癬、乾癬性関節炎、関節炎、アナフィラキシーショック、臓器虚血、再灌流障害、および同種移植拒絶を有する個体を治療、診断、または予知するために使用することもできる。
対象の大きさおよび使用される画像化システムによって、診断用の画像を作製するのに必要な画像化部分の量が決定されることが、当技術分野において理解されるであろう。ヒト対象に対する放射性同位体部分の場合、注射する放射能の量は、通常、約5〜20ミリキュリーの99Tcの範囲にわたると考えられる。その場合、標識された抗体または抗体断片は、特定のタンパク質を含む細胞の位置で優先的に蓄積すると考えられる。in vivoでの腫瘍画像化は、S.W.Burchiel et al.,「Immunopharmacokinetics of Radiolabeled Antibodies and Their Fragments.」(Tumor Imaging: The Radiochemical Detection of Cancer,S. W. BurchielおよびB.A. Rhodes編、Masson Publishing Inc.(1982)中の13章)に記載されている。
使用される標識のタイプおよび投与様式を含む、いくつかの変動要素に応じて、標識分子を対象中の部位で優先的に濃縮させ、かつ、未結合の標識分子をバックグラウンドレベルまで消失させるための投与後の時間間隔は、6〜48時間、または6〜24時間、または6〜12時間である。別の実施形態では、投与後の時間間隔は、5〜20日または5〜10日である。
ある実施形態では、疾患または障害の観察は、疾患または障害を診断するための方法を、例えば、最初の診断後1ヶ月目に、最初の診断後6ヶ月目に、最初の診断後1年目などに繰り返すことによって、実施する。
患者中の標識分子の存在は、in vivoでスキャンするための当技術分野において公知の方法を用いて検出することができる。これらの方法は、使用する標識のタイプに応じて変わる。当業者なら、個々の標識を検出するために適切な方法を決定できるであろう。本発明の診断方法において使用され得る方法および装置としては、それだけには限らないが、コンピュータ断層撮影法(CT)、ポジション(position)放射断層撮影法(PET)などの全身スキャン、磁気共鳴画像法(MRI)、および断層撮影法が挙げられる。
特定の実施形態では、分子は、放射性同位体で標識され、かつ、放射線に応答する外科器具を用いて患者から検出される(Thurston et al.、米国特許第5,441,050号)。別の実施形態では、分子は、蛍光性化合物で標識され、蛍光に応答するスキャニング機器を用いて患者から検出される。別の実施形態では、分子は、ポジトロン放出金属で標識され、ポジトロン放出断層撮影法によって患者から検出される。さらに別の実施形態では、分子は、常磁性標識で標識され、磁気共鳴画像法(MRI)によって患者から検出される。
5.9 HMGB1ポリペプチドおよびPAMP(例えば、TLRリガンド)の組合せを含む医薬組成物ならびにその使用方法
本発明は、治療有効量のHMGB1ポリペプチドおよびPAMP(例えば、TLRリガンド)の組合せならびに製薬上許容される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。別の実施形態では、本発明は、治療的に有効な濃度のHMGB1ポリペプチドをPAMPと組み合わせて含む医薬組成物であって、前記PAMPが、前記HMGB1ポリペプチドの作用を増強するのに十分な濃度で存在する医薬組成物である。
HMGB1ポリペプチドは、完全長HMGB1、例えば、完全長ヒトHMGB1でよい。一実施形態では、完全長ヒトHMGB1は、配列番号3のアミノ酸配列を有する。HMGB1ポリペプチドは、完全長HMGB1の断片でもよい。一実施形態では、HMGB1の断片はAボックスである。別の実施形態では、HMGB1の断片は、Bボックスである。完全長HMGB1の断片は、さらに、少なくとも5個の連続したアミノ酸、少なくとも10個の連続したアミノ酸、少なくとも20個の連続したアミノ酸、または少なくとも25個の連続したアミノ酸を含むポリペプチドでもよい。完全長HMGB1の断片は、さらに、5〜10個の連続したアミノ酸、10〜20個の連続したアミノ酸、または15〜25個の連続したアミノ酸を含むポリペプチドでもよい。
特定の実施形態では、PAMPはTLRリガンドである。本明細書において使用される場合、「TLRリガンド」は、相互作用およびシグナル伝達に適切な条件下で、TLRと相互に作用し、TLRによるシグナル伝達を誘発することができる分子である。TLRリガンドには、現在公知であるか、または今後発見されるリガンドが含まれる。一実施形態では、TLRリガンドは、TLRの細胞外ドメインと相互に作用する分子である。別の実施形態では、TLRリガンドは、天然リガンドまたはその断片である。天然リガンドは、天然に存在しているTLRリガンドである。別の実施形態では、TLRリガンドは、非天然リガンドでも合成リガンドでもよい。TLRリガンドは、例えば、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、およびTLR11を含めて、任意のトール様受容体のリガンドでよい。
様々なTLRに対するリガンドが文献に記載されており、それだけには限らないが、以下のものが挙げられる。
Figure 2009517404
PAMP(例えば、TLRリガンド)は、具体的には、CPG 7909(PF-3512676またはプロミューン(ProMune)(商標)としても公知)やColey Inc社が現在開発中のアクチロン(Actilon)(CPG 10101)などのTLRアゴニストを含めて、合成PAMPを包含する。
HMGB1ポリペプチドおよびPAMPの組合せを有効量含む医薬組成物は、それだけには限らないが、癌、感染症、喘息、およびアレルギーを含めて、HMGB1ポリペプチドまたはPAMPの投与が治療的または予防的である任意の状態を治療するのに利用することができる。
一実施形態では、本発明は、HMGB1ポリペプチドおよびPAMPの組合せを有効量含む医薬組成物を投与するステップを含む、それを必要とする患者において免疫応答を増大させる方法である。免疫応答を増大させるためのHMGB1それ自体の使用は、国際特許公報WO2004/046338および米国特許公報2004/242481に記載されている。免疫応答の刺激を必要とする患者には、例えば、癌または感染症に罹患している患者が含まれる。癌には、それだけには限らないが、頭部、頸部、眼、口、咽頭、食道、胸部、骨、肺、結腸、直腸、結腸直腸、または他の胃腸管器官、胃、脾臓、腎臓、骨格筋、皮下組織、転移性黒色腫、子宮内膜、前立腺、乳房、卵巣、精巣、または他の生殖器官、皮膚、甲状腺、血液、リンパ節、腎臓、肝臓、膵臓、および脳または中枢神経系の癌が含まれる。感染症には、それだけには限らないが、HIV-1、HIV-2、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、エボラ(Ebola)ウイルス、エボラウイルス、ならびにA型、B型、C型、D型、およびE型の肝炎ウイルスなどのウイルス感染症、結核菌(bacillus tumerculose)や炭疽菌(bacillus anthracis)などの病原性細菌が引き起こす疾患が含まれる。
別の実施形態では、HMGB1ポリペプチドおよびTLRリガンドの組合せを有効量含む医薬組成物は、ワクチンとともに使用することができる。ワクチンの例としては、B型肝炎、ジフテリア、破傷風、百日咳、インフルエンザ菌B型(hemophilus influenzae type B)、ポリオ、麻疹、ムンプス、風疹、水痘、肺炎球菌(pneumococcal)、A型肝炎、インフルエンゼ(influenze)、日本脳炎、ロタウイルス、黄熱病、クルーズ・トリパノソーマ(trypanosome cruzi)、および狂犬病が挙げられる。ワクチンは、免疫賦活性オリゴヌクレオチド、イミダゾキノリン、モノホスホリルリピドA、および無毒化したリポ多糖類(LPS)などのアジュバントもさらに含んでよい。
別の実施形態では、本発明は、組織の損傷を治療し、かつ/または組織の修復および再生を促進するための方法であって、HMGB1ポリペプチドおよびPAMPの組合せを有効量含む医薬組成物を投与するステップを含む方法である。組織の損傷を治療し、かつ/または組織の修復を促進するためのHMGB1の使用は、国際特許公報WO2004/004763に記載されている。一実施形態では、組織は、心臓組織または骨格組織である。組成物は、壊死組織の治療または修復および再生のために利用され得る。壊死組織は、例えば、敗血症または多臓器不全の結果であり得る。壊死組織は、腸梗塞、急性膵炎、および/または他の外傷においても発生し得る。別の実施形態では、本発明は、熱傷部位や心筋梗塞後など、外傷または虚血によって引き起こされる組織損傷を治療するための方法である。
さらに別の実施形態では、本発明は、HMGBポリペプチドおよびPAMPの組合せを有効量含む医薬組成物を投与するステップを含む、それを必要とする患者において体重減少に影響を及ぼすか、または肥満を治療するための方法である。
Figure 2009517404
Figure 2009517404
6.実施例
本節では、本発明を以下の実施例との関連で述べる。これら実施例は、あくまでも例証を目的に提示するものであり、本発明がこれら実施例に限定されると解釈すべきではなく、本節に提示する教示の結果明らかとなる、任意のあらゆる変更を包含すると解釈すべきである。
6.1 実施例1
ヒト抗HMG1抗体の開発および物理的特性解析
ヒトHMG1(配列番号1および2、図1も参照)に対する数ラウンドのパンニング法により、ナイーブヒトFabファージディスプレイライブラリーから、多数種のヒト抗HMG1抗体を単離した。次いで、重複クローンを排除するためにクローンの配列を決定し、全長IgG産生のために発現ベクター内にFab断片をサブクローン化した。いくつかの抗体クローン(G2、G4、G9、G12、G16、G20、G34、G35、S2、S6、S10、S12、S14、S16、S17、およびE11)の軽鎖および重鎖可変領域のヌクレオチドおよび対応するアミノ酸配列を、配列表に示す(個別の配列番号については、表4を参照)。図2は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(寄託の番号: PTA-6142、PTA-6143、PTA-6259、およびPTA-6258)に寄託されている数種の抗体クローン(それぞれS2、S6、S16、およびG4)の軽鎖および重鎖可変領域を表す。図2には、抗HMG1抗体E11の軽鎖および重鎖可変領域をも示す。図2に示す各抗体のCDRには下線を付し、配列表に示す(個別の配列番号については、表4を参照)。結果として得られる全長抗体を精製し、その物理的特性を下記のように測定した。表1にまとめたように、これら解析は、そのヒト抗HMG1抗体が広範にわたる特性を示すことを示している。
G4抗体は、発現レベルが低いことが判明した。G4、S6、およびS16を含む数種のヒト抗HMBG1抗体の重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列の検討は、推定上のRNAスプライス部位を明らかにした。G4およびS6について推定されるスプライス部位を図2Kに示す。一過性発現したG4およびS6からの重鎖転写産物のRT PCR解析は、スプライスされたメッセージに対応する、複数の低分子量バンドを示した(データは示さない)。部位特異的変異誘発を用いてG4スプライス部位をノックアウトするため、0.5を超えるスコアを示す各スプライス部位にサイレント置換を導入した。導入した3つの変異を、図2Lのヌクレオチドアラインメント中で囲った。G4のアミノ酸配列は、図2Hに示したものと変わらない。同様の基準を用いて、S6または他の抗HMGB1抗体をコードするヌクレオチド配列にも同様の変化を導入して、mRNAスプライス部位を排除してメッセージを安定化させることにより発現を増大させることが可能である。
6.1.1 材料と方法
ヒト抗HMG1抗体の単離: ヒトFabファージディスプレイライブラリー(マサチューセッツ州、ケンブリッジ、Dyax社製)は、以下の3ラウンドのパンニングによりスクリーニングした。1日目:I)免疫チューブを0.1M炭酸バッファー(pH9.6)中20μg/mlの全長HMGB-1でコートする。それを4℃中、一晩放置する。2日目:I)ライブラリーサイズの100倍のファージを用いる。1/5容のPEG 6000 (20%)を添加する。氷上に1時間放置する。14000rpmで10分間遠心する。PBS (pH7.4)中に再懸濁させ、ファージライブラリーを沈殿させる。II)抗原コート済み免疫チューブおよびファージのいずれをも、2%ミルク/PBSでブロックする。次いで、その免疫チューブを2倍濃度のPBSですすぎ、ファージを免疫チューブに移し、30分間の回転により混合した後、さらに1.5時間、静かにインキュベートする。III)免疫チューブをPBST (PBS + 0.1% Tween 20)で10〜20回洗浄した後、PBSで10〜20回洗浄し、ファージを100mMトリエチルアミン1mlで溶出する。溶出したファージを1M Tris-HCl (pH7.5) 0.5mlで中和させる。IV)1容の中和済み溶出ファージを5容の対数期TG1および4容の2YTと混合する。37℃で30分間(水浴中)インキュベートする。遠心分離により感染した細胞を収集し、2YT培地中に再懸濁させ、カルベニシリンおよび2%グルコースを加えた2YT寒天上にプレート播種する。
ヒト抗HMG1オリゴクローナルおよびモノクローナル抗体の発現:プラスミドは、3ラウンド目のパンニング後にいくつかの細菌プールから抽出した。次いで、そのプラスミドからFab遺伝子断片を切り出し、CMVプロモーターの制御下、IgG発現ベクター内に挿入した。Fab断片をともなうIgG発現ベクタープラスミドを293H細胞内に一過性導入し、プロテインAカラムを通すことでオリゴクローナル抗体を増殖培地から精製した。オリゴクローナル抗体の各プールを、HMG1への反応性に関して調べた。陽性を示したこれらプールをさらにスクリーニングし、各陽性クローンを同定した。
等電点ゲル電気泳動: multi temp 3冷却槽循環ユニットおよびEPS 3501 XL電源を備えたPharmacia社製Biotech Multiphor 2電気泳動システムを使用して、等電点を測定した。プレキャストのアンフォリンゲル(Amersham Biosciences社製、pI範囲2.5〜10)にタンパク質5μgをロードした。広範囲pIマーカー標準液(Amersham社、pI範囲3〜10、8μL)を用いてMabの相対値によるpIを測定した。電気泳動は、1500V、50mAで105分間にわたり実施した。ゲルは、精製水で1倍濃度まで希釈したSigma社製固定液(5倍濃度)を用いて固定した。染色は、Simply Blue染色液(Invitrogen社製)を用い、室温で一晩にわたり実施した。脱染色は、25%エタノール、8%酢酸、および67%精製水からなる溶液を用いて行った。等電点は、標準液の検量線との比較により、Bio-Rad社製デンシトメーターを用いて測定した。
示差走査熱量測定: 熱融解温度(Tm)は、VP-DSC (MicroCal, LLC)を用い、走査速度1.0℃/分および温度範囲25〜120℃で測定した。5分間の走査前恒温維持とともに、8秒間のろ過時間を用いた。試料は、Pierce社製透析カップ(3.5 kD)を用いる、25mMヒスチジン-HCl、pH6中への透析により調製した。平均Mab濃度は、A280で測定したところ、50μg/mLであった。融解温度は、該システムと共に供給されたOriginソフトウェアを用い、製造元の手順に従って測定した。略述すれば、試料セルおよび参照セルの両方にバッファーを入れて複数のベースラインを実施して、熱平衡を確立した。試料サーモグラムからベースライン分を差し引いた後、データを濃度について標準化し、デコンボリューション関数を用いて近似した。
6.1.2 結果
単一のファージディスプレイライブラリーから、35を超える個別のFabクローンを単離し、そのうち18を全長IgG1に変換し、一過性トランスフェクションから精製した。これらクローンを対象とする後続の解析は、クローンが広範な特性を有することを実証する。例えば、これらクローンは、約330nMの高値からわずか22nMの低値に至る解離定数(Kd)を示す(表1にまとめる)。安定性の指標を与えうるTm値は、わずか約70℃の低値から約90℃の高値の範囲に及ぶ(図3Bおよび3C)。抗体溶解性の指標を与えうるpI値も広範囲を示し、抗体は7.8〜9.0のpI値を示した(図3Aおよび3C)。多数のin vitroおよびin vivo試験(下記を参照)において、様々な特性を有する抗体をスクリーニングし、最も望ましい特性の組合せを定めた。このほか、さらなるスクリーニング用に、他の多数のクローンを利用できる。
6.2 実施例2
ヒト抗HMG1抗体の反応速度解析
複数のヒト抗HMG1抗体について、各種の測定法を用いて結合反応速度および特異性を検討した。加えて、エピトープマッピング試験では複数のペプチドを用いた。表1にまとめたように、これらの解析は、ヒト抗HMG1抗体が、異なる結合反応速度および特異性を有することを示す。さらに、データは、抗HMG1抗体が、HMG1 BボックスおよびAボックスを含む様々なエピトープに結合することを示す。
6.2.1 材料と方法
組換えHMG1の製造/単離: 組換えHMG1 (rHMG1)は、カルモジュリン結合タンパク質(CBP)融合タンパク質(CBPをHMGB1のN末端に融合)として大腸菌(E. coli)から精製する。大腸菌によるCBP-HMG1発現を2〜3時間誘導し、25mM Tris-HCl、150mM NaCl、2mM CaCl2、pH8.0における微細流動化により該タンパク質を放出させる。溶解した細胞を125,000×gで1時間遠心分離し、ろ過した上清をCaCl2存在下のカルモジュリンカラムに添加する。カラム2〜2.5倍容の溶解バッファーでカラムを洗浄した後、カラム5倍容の50mM Tris、400mM NaCl、2mM CaCl2、pH8.0までの直線勾配を用いて洗浄し、そして100mM Tris、400mM NaCl、5mM EGTA、pH8.0でタンパク質を溶出する。TritonX114抽出を用いて、エンドトキシンを除去する。TX-114を最終濃度2%で用い、4℃で30分間インキュベートし、37℃中に30分間移し、それから遠心分離して、複数相を分離する。タンパク質は、2度抽出する。
4つの形態の天然HMG1の調製: 核HMG1は、ATCCによるプロトコールに従い、10% FBS入りのDMEM中で増殖させた293H (ATCC番号CRL-1573、ヒト腎臓、上皮)細胞から調製する。室温で1分未満にわたりトリプシン/EDTAを添加することにより80%コンフルエンスで細胞を収集した。フラスコを静かにフラッシュして、ただちにPBS中に細胞を回収した後、1100rpmで3分間遠心分離する。PBSにより細胞を2度洗浄し、PBS中の最終濃度約2〜5×107/mlで2mLエッペンドルフ管に移してから、液体窒素中で2分間で凍結させた後、室温水浴中で5〜10分間解凍させた。凍結解凍プロセスをさらに2度繰り返した。溶解した細胞を13,000rpmで遠心分離し、上清を新規の無菌試験管に移し、-70〜-80℃で保存した。上清の使用量は、凍結解凍以前の上清の細胞濃度に基づく。
放出HMG1は、壊死性293H細胞の馴化培地から調製する。293H細胞は、10% FBSを含むDMEM培地中で培地を交換せずに10日間増殖させた。フラスコから培地を収集し、3000rpmで10分間遠心分離してから、上清を0.2 μmフィルターに通し、透析バッグに入れ、濃縮液(Pierce社製)に対して透析した。濃縮液は、培地量が約10倍減少するまで、必要に応じて交換した。次いで、濃縮培地をPBS (pH7.2)に対して透析した。濃縮試料中に存在するHMGB1の濃度は、精製HMGB1を標準物質として用いるサンドウィッチELISA法(下記を参照)により測定した。
活性化HMG1は、ATCCによるプロトコールに従い、10% FBS、0.05mM 2-メルカプトエタノールを含むRPMI1640 (カタログ番号: 03-0078DJ)培地中で増殖させたTHP-1 (ATCC番号TIB-202、ヒト単球)細胞から調製する。細胞は、約4×105 細胞/mlに達したら、最終濃度0.5μg/mlでLPSにより一晩(14〜16時間)処理した。細胞を1,100rpm×3分間の遠心分離により回収し、PBSにより3回洗浄してLPS含有培地を完全に除去し、PBS中の最終濃度約2〜5×107/mlで2mLエッペンドルフ管に移してから、液体窒素中で2分間で凍結させた後、室温水浴中で5〜10分間解凍した。凍結解凍プロセスをさらに2度繰り返した。溶解した細胞を13,000rpmで遠心分離し、上清を新規の無菌試験管に移し、-70〜-80℃で保存した。上清の使用量は、凍結解凍以前の上清の細胞濃度に基づく。
ウシ胸腺HMG1は、基本的にWalker, J.M., Goodwin, G.H., Johns, E.W., Wietzes, P. & Gaastra, W. A comparison of the amino-terminal sequences of two calf-thymus chromatin non-histone proteins. Int. J. Pept. Protein Res. 9, 220-223 (1977)が述べる方法で調製した。
BIAcore解析によるHMG1結合親和性: すべての試験は、BIAcore 3000測定器(ニュージャージー州、ピスケイタウェイ、BIAcore社製)により実施した。略述すると、標準的なアミンカップリング化学法を用いて、各mAbをCM5センサーチップに固定した。別個に参照(対照)フローセルも準備した。計測器バッファー中のHMG1の2倍段階希釈液を、各mAbおよび参照フローセル表面に、緩徐な流速で連続的に注入した。HMG1の結合および解離の後、mAb表面を1M NaCl-50mM NaOHの短いパルスで再生させた。各試験の終了時には、BIAcore社(ニュージャージー州、ピスケイタウェイ)製のBIA評価ソフトウェアで使用できる定常状態モデルを用いて、結合曲線を評価した。これらの試験から定めたKd値を、表1に列挙する。
直接ELISA法(固定化HMG1): 96ウェル免疫プレート(Costar社製、高結合度EIA/RIAプレート)の各ウェルを、PBS中5μg/mlのHMGB-1により、4℃で一晩コートした。次いで、プレートをPBS中に溶解した4%ミルクパウダーにより、37℃で1時間ブロッキングした。ブロッキング溶液を除去し、各種濃度(図4Aを参照)のヒト抗HMG1抗体で置換した。次いで、プレートを洗浄(BIO-TEK社製、ELX-405プレート洗浄機)し、二次抗体(PIERCE社製、抗ヒトIgG-HRP)を37℃で1時間にわたり最終濃度1:125,000で加えた。HRP活性は、Sureblue HRP基質(KPL社製)により検出した。プレートは、Kinetic Microplate Reader (Molecular Devices社製)により、450nmで測定した。データを表1にまとめ、代表的な結合曲線を図4AおよびDに示す。
サンドウィッチELISA法(可溶性HMG1): 免疫プレート(Costar社製、高結合度EIA/RIAプレート)をPBS (pH7.2)中10μg/mlの抗ヒトIgG Fcでコートし、4℃で一晩インキュベートした。コーティング試薬を除去し、プレートをPBSで簡単にすすいだ。次いで、プレートを、4%ミルクにより37℃で1時間ブロッキングし、さらにPBSですすいだ。抗HMG1抗体を4%ミルクで希釈した。段階希釈には、抗体を20μg/mlの出発濃度で用いた。次いで、希釈した抗HMG1抗体をプレートに加え、37℃で1時間インキュベートした。次いで、PBST (PBS/0.1% tween 20)で10回プレートを洗浄し、4%ミルク中の抗原(HMGB1を2μg/ml、または天然HMGB1を0.7μg/ml)とともに37℃で1時間インキュベートした。次いで、プレートを10回洗浄し、4%ミルク中1μg/mlのマウス抗HMGB1とともに37℃で1時間インキュベートした。このプレートを10回洗浄し、1:1000の抗マウスIgG-HRPとともに37℃で1時間インキュベートした。次いで、プレートを洗浄し、発色させた。HRP活性は、Sureblue HRP基質(KPL社製)を用いて検出した。プレートを、Kinetic Microplate Reader (Molecular Devices社製)を用いて、450nmで読み取った。データを表1にまとめ、代表的な結合曲線を図4B〜Dに示す。
BIAcore解析による抗体HMG1結合競合試験: すべての試験は、BIAcore 3000測定器(ニュージャージー州、ピスケイタウェイ、BIAcore社製)により実施した。BIAcoreハンドブック(ニュージャージー州、ピスケイタウェイ、BIAcore社)が述べる標準的なアミンカップリング化学法プロトコールを用いて、HMGB-1タンパク質をCM5センサーに固定した。略述すると、CM5表面をNHS/EDC活性化に供する。活性化後、該表面上に100nMまたは200nM (10mM NaOAc、pH4中)の濃度でHMGB-1を注入し、表面密度が1100〜1200RUとなるようにした。この後、センサーチップ表面の未反応部位を1Mエタノールアミンの注入により「キャップ」した。参照目的のため、HMGB1を固定するのに用いたのと同じ手順を用いるがリガンドは用いずに、ブランクフローセルも調製した。
mAbであるG2、G4、G9、S6、およびSynagisを、1μMおよび2μMで調製した。すべてのmAb溶液は、HBS-EPバッファー(ニュージャージー州、ピスケイタウェイ、BIAcore社製)中に調製した。1μMで注入する第1のmAbの100μL注入により各サイクルを開始した後、2種類の2倍濃度mAbの1:1混合液100μLの第2の注入を行って、混合液中の各成分mAbの最終濃度が1回目の注入時と同等になるようにした。各注入サイクルの後、HMGB-1表面を10mM HClの1分間パルスで再生させた。
一度セット全体を収集してから、各注入サイクル後の各mAbに対するRU反応の最大値を記録した。次いで、これらを用いて、各mAbに対する平均反応レベルを計算した。次いで、この平均結合反応を用いて、第1のmAbによるHMGB1表面の飽和後の、各mAbのHMGB-1表面への結合率を計算した。まとめると、以上の結合/ブロッキングパターンを用いて、mAbがHMGB-1上のどの非関連部位または関連部位に結合するのかを判定した。以上のデータを表1にまとめる。
HMG1およびHMG2への結合対比: 超高結合性ELISAプレート(ThermoLab Systems社製、番号3855)を、10mMリン酸緩衝食塩水(PBS)(pH7.2)で希釈した5μg/mLのウシ胸腺HMGB1またはHMBG2によりコートし、4℃で一晩インキュベートした。CaおよびMgフリーのPBSでプレートを2回洗浄し、10mM PBS (pH7.2)+1%ウシ血清アルブミン(BSA)により最終濃度10μg/mLまで希釈した100マイクロリットルの抗HMGB1抗体を各ウェルに加え、プレートを室温で1時間インキュベートした。100μlのPBS (pH7.2)でウェルを3回洗浄した。HRP標識ヤギ抗ヒトIgGカッパ鎖(KPL社製、番号14-10-10)およびヤギ抗ヒトIgGラムダ鎖(KPL社製、番号14-10-11)を10mM PBS+1% BSAにより1:1000に希釈し、100μlを各ウェルに加え、プレートを室温で1時間インキュベートした。次いで、100μlのPBS (pH7.2)でウェルを3回洗浄した。製造元の取扱説明書に従ってOPD基質(Pierce chemical company、番号34006)を調製し、調製した基質100μlを各ウェルに加え、プレートを室温、暗所で20〜30分間インキュベートした。100μlの2M H2SO4を加えて反応を停止させ、プレートリーダーにて波長490nmでプレートを測定した。多数の抗体に対するOD値を図4Eに示し、表1にまとめる。
HMG1 Bボックスとペプチドマッピング: 96ウェル免疫プレート(Costar社製、EIA/RIAプレート、高結合性)の各ウェルを、PBS中10μg/mlのHMG1 Bボックスペプチドアミノ酸91〜169(図5A)またはアミノ酸150〜183 (図5B)により、4℃で一晩コートした。次いで、このプレートをPBS中に溶解した4%ミルクパウダーにより、37℃で1時間ブロッキングした。ブロッキング溶液を除去し、各種濃度(図5A〜Bを参照)のヒト抗HMG1抗体で置換した。次いで、プレートを洗浄(BIO-TEK社製、ELX-405プレート洗浄機)し、二次抗体(PIERCE社製、抗ヒトIgG-HRP)を37℃で1時間にわたり最終濃度1:125,000で加えた。HRP活性は、Sureblue HRP基質(KPL社製)により検出した。プレートを、Kinetic Microplate Reader (Molecular Devices社製)を用いて450nmで読み取った。ペプチドマッピングのより詳細なデータを得るため、下記の様にHMGB1タンパク質のアミノ酸1〜215に及ぶ16個のビオチニル化した重複ペプチドを用いて同様のELISAアッセイを行い、2μg/mlのNeutroAvidin (Pierce社製)によりmaxisorpマイクロタイタープレートを4℃で一晩コートした。PBS中の1% BSAによる洗浄およびブロッキング後、アビジンでコートしたウェルにビオチニル化ペプチドを独立して加え、室温で30分間インキュベートした。次いで、初期濃度10μg/mlで段階希釈した抗体G4、S16、およびS6をウェルに移した後、マウス抗ヒトIgG-HRPコンジュゲート(Pierce社製)を添加した。50μlのテトラメチルベンジジン(TMB)基質(KPL社製)を加えて検出を行い、450nmで吸光度を読み取った。使用したペプチドは以下のアミノ酸であった: 46〜63、61〜78、76〜93、91〜108、106〜123、136〜153、151〜168、166〜183、179〜185、181〜198、196〜215。
生体試料からのHMGB1検出: AIA関節ホモジネートおよび腹膜炎血清からのHMGB1検出のため、サンドウィッチELISA法を実施した。PBS中14μg/mlのヤギ抗ヒトFc (Pierce社製)を、Immunlon IVマイクロタイタープレートに、4℃で一晩コートした。洗浄および5%ミルクによる室温で1時間のブロッキング後、ブロッキングバッファー中のG4またはS6 (10μg/ml)を、ブロック済みプレートの各ウェルに添加した。1時間後にプレートを洗浄し、0.5M NaCl/ブロッキングバッファー中0.8μg/mlのHMGB1を含有するAIAホモジネートまたは7μg/mlのHMGB1を含有する腹膜炎血清25μlを、2倍の段階希釈でウェルに添加した。インキュベーションの1時間後の洗浄により、非結合物質を除去した。2μg/mlのマウス抗HMGB1抗体により、それに続き西洋ワサビペルオキシダーゼと結合した抗マウス抗体により、結合HMGB1を検出した。マウス腹膜炎血清は、熱殺菌黄色ブドウ球菌(staphylococcus aureus)による感染7日後の心穿刺により得た。関節溶解物は、後出の実施例6に述べるようにして、AIAラットの足部全体から調製した。ヒト敗血症血清は、商業的供給源から購入した。
免疫蛍光法: 直接的免疫蛍光法により、細胞質(ic)HMGB1を定量した。トリプシン-EDTA処理によりHUVECを収集し、カバーガラススリップに播種した。細胞が定着したら、0.2μg/mlのLPS (Sigma社製)で4時間刺激した。細胞は、2%パラホルムアルデヒドで15分間固定した後、0.2% Triton X-100で2分間透過化処理した。1μg/mlの抗HMGB1抗体により、室温で1時間、固定および透過化処理済みの細胞をインキュベートした。次いで、細胞を洗浄し、過剰または非特異的に結合した一次抗体を除去した後、蛍光物質(Pierce社製)と結合した抗ヒトIgGとともにインキュベートした。fluoromount (アラバマ州、バーミングハム、Southern Associates社製)とともに切片をマウントし、Nikon社製顕微鏡(日本)およびSPOT画像化システム(Diagnostic Instrument社製)を用いて画像を加工した。
免疫沈降法とウェスタンブロット法: 製造元(Pierce社)が指示するようにして、EZ-Link Sulfo-NHS-LC-Biotinを用いて、抗HMGB1 mAb (G4およびS6)およびアイソタイプ対照をまずビオチニル化した。標識化の後、非標識mAbを対照として用いるELISA法により、HMGB1への結合についてmAbを調べた。生体試料である関節溶解物(30μl)を、5mgビオチニル化G4、S6、またはアイソタイプ対照とともに、300μl IPバッファー[1倍濃度PBS (pH7.2)(Invitrogen社製)、0.1% Tween 20、0.5M塩化ナトリウム、10mMブチル酸ナトリウム、およびホスファターゼ阻害剤カクテルI (Sigma社製)の1:100希釈液]中で、4℃で一晩混合した。敗血症血清では、Tween 20、塩化ナトリウム、ブチル酸ナトリウム、およびホスファターゼ阻害剤カクテルIを、IPバッファーと同じ最終濃度で500μl血清に添加した。4% BSA-PBS中、4℃で一晩にわたりストレプトアビジンセファロースビーズ(GE Healthcare社製)をブロッキングした後、PBSで3回洗浄し、それを1倍濃度PBS中に再懸濁させて、50%スラリーを得た。次いで、mAb/試料一晩混合液にそのビーズスラリー(60μl)を加え、室温で20分間混合した。PBSで1回、IPバッファーで5回、ビーズを洗浄した後、PBSを加えて1000×gで2分間のスピンを2回掛けた。2.5%βメルカプトエタノールを含む30μl試料バッファーを用いて、70℃で10分間にわたり、該ビーズから免疫沈降タンパク質を溶出させた。1倍濃度MESランニングバッファー中の10% NuPAGE Bis-Trisゲルを用いて溶出物を電気泳動させた後、PVDF膜に転写した。次いで、膜を4% BSA-PBSで1時間ブロッキングし、異なるビオチニル化抗HMGB1 mAbであるS16を0.5mg/mlで加えて1時間インキュベートした。PBS/0.1% Triton X-100による洗浄後、ストレプトアビジンHRP (GE Healthcare社製)の1/40,000希釈液中で、ブロットを40分間インキュベートした。洗浄後、LumiGlo基質溶液(KPL社製)により、バンドを検出した。
6.2.2 結果
ELISA試験は、調べた抗体の大半が、固定化rHMG1に結合することを示した(図4A)。本アッセイでは、抗体の大半が固定化および可溶性rHMG1のいずれにも結合するのに対し、E11、G34、およびG20は、可溶性rHMG1の方により良好に結合し、一方、S10、S12、S16、およびG16は、固定化rHMG1の方にやや良好に結合することが分かった(図4Dおよび非開示データ)。被験抗体の多くが、rHMG1または天然HMG1の1つもしくは複数の形態のいずれかへの結合にある程度の選択性を示した(表1にまとめる、図4B〜Cも参照)。例えば、S16が組換えおよび天然HMG1のいずれにも結合するのに対し、G4は天然核HMG1の方により良好に結合し、S2、S6、およびS10はすべて、rHMG1の方により良好に結合する(図4B)。興味深いことに、S6はHMG1のどの天然形態にも良好に結合しないが、放出されたHMG1に対しては一定の結合を示す(図4C、左上)。S16およびG4は、HMG1の各種天然形態への結合ではほとんど差を示さない(図4C、右上および左下)。以上のデータは、哺乳類細胞から調製されるrHMGB1とHMGB1との間には、本発明者らの一連の抗HMGB1抗体により検出可能な差があることを示す。この差は、組換え産物には見られないが細胞内には存在する、フォールディングまたはコンホメーションから生じると考えられる。あるいは、細胞から調製する場合、天然HMGB1が、他のタンパク質または補因子と複合体化するとも考えられる。さらに、関連性の高いHMG2タンパク質に対する交差反応性についても、該抗体を調べた。E11、S12、S16はすべて、HMG2に対してある程度の結合を示した。興味深いことに、E11は、本実施例で用いた条件と同様に抗原を固定した場合には、HMG1よりもHMG2に対しより良好に結合すると考えられる。
ほぼすべての抗体に関するBIAcore解析を用いて、各抗体の組換えHMG1 (rHMG1、表1を参照)に対するKdを測定した。BIAcore競合アッセイによるいくつかの抗体(G4、G9、S2、およびS6)の解析は、これら抗HMGB1抗体が、同一部位、または高度に関連した部位、おそらくは重複する部位のいずれかに結合すると考えられることを示した(表1参照)。
いくつかの抗HMGB1抗体(S2、S6、S10、G2、G4、G9、S12、およびS16)を対象にペプチドマッピング試験を行い、HMG1 Bボックスへの結合を調べた。図9A〜Bに示したように、G4、S12、およびS16がHMG1のペプチド91〜169 (図5A)に結合するのに対し、S12だけはHMG1のペプチド150〜183 (図5B)に結合する。さらに、E11はHMG1 Aボックスを認識することがわかった(データは示さない)。G4およびS16のいずれに対しても、詳細なペプチドマッピングを実施した(図5C、それぞれ左および右パネル)。G4は、C末端テイルペプチド188〜215に対して最も強力な結合を示し、Bボックスペプチド91〜108および108〜138へはより弱い結合を示す。S16は、Bボックスペプチド91〜108に対して最も強力な結合を示し、ペプチド166〜183および179〜186への結合はそれほど強力でない。
上記したように、異なる供給源から単離または調製したHMGB1への結合は、異なる抗体間で異なる。この知見を拡張するため、抗HMBG1抗体G4およびS6を用いて、非処理またはLPSで活性化したTHp-1 (非表示)およびHUVEC細胞(図4F)の免疫染色を行った。G4が核HMGB1および盛んに分泌されたHMGB1 (図4F、左下および中下パネルを比較)のいずれをも認識し、S6が盛んに分泌されたHMGB1 (図4F、左上および中上パネルを比較)を認識しなかったことは、結合データ(図4C、左パネル)と合致する。しかし、結合データとは対照的に、S6は核HMGB1を認識し、これは凍結解凍細胞から調製された核HMGB1が細胞の核内の天然HMGB1とは異なることを示している。核HMHB1は、細胞凍結および解凍後に破壊されうるヒストンおよびDNAに結合するので、本発明者らは、凍結解凍調製物について免疫沈降させ、ウェスタンブロット法でヒストンをプローブした。DNAまたはヒストンのいずれも、この調製物からは検出されなかった(データは示さない)。さらに、ELISA法および免疫沈降解析を用いて、アジュバント誘発関節炎(AIA)ラットの関節から調製した溶解物、および熱殺菌した黄色ブドウ球菌により誘導した敗血症性腹膜炎マウスから採取した血清(ELISA法試験)またはヒト敗血症血清(免疫沈降試験)中に存在するHMGB1に対する、抗HMGB1抗体S6およびG4の結合を調べた。G4は、ELISA法により関節炎関節由来のHMGB1に選択的に結合すること(図4G、上)、AIA関節溶解物およびヒト敗血症血清の双方由来のHMGB1を免疫沈降させること(図4G、それぞれ左下および右下パネルのレーン4)がわかった。これに対し、S6は、関節炎関節からのHMGB1に結合する、またはこれを免疫沈降させることがなかった(図4G、上および左下、レーン3)。S6は、ELISA法により敗血症血清からのHMGB1に対してより良好な結合を示し(図4G、上)、ヒト敗血症血清から比較的小さいバンドを免疫沈降させることがわかった(図4G、右下、レーン3)。ゲル消化および配列決定において、その比較的小さいバンドがHMGB1であることが確認された(データは示さない)。
まとめると、HMGB1は、細胞および各種病態において複数の形態で存在すると考えられ、単離されたヒト抗HMG1抗体は、HMG1の全ての形態に結合するもの(例えば、S16)もあれば、組換え形態および各種天然形態を識別するもの(例えば、S10およびS2)もあり、広範にわたる結合特性を示す。さらに、抗体の一部(例えば、S6およびG4)は、ある種の疾病状態に存在するHMGB1に優先的に結合すると考えられる。これら抗体は、AおよびBボックスを含む多数の異なるエピトープにも結合する。いくつかのヒト抗HMG1抗体を選択し、さらに多数の追加のin vitroおよびin vivo試験(後出参照)に用いた。
6.3 実施例3
抗HMGB1抗体はヒトPBMCからのサイトカイン放出を阻害する
一連のヒト抗HMG1抗体の、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)からのHMG1誘発サイトカイン放出に対する阻害能が明らかになった。以下のサイトカイン、IL-12、IL-1β、TNF-α、およびIL-6に対する効果を検討した。多数の抗HMG1抗体が、HMG1により誘発される1つまたは複数のこれらサイトカインの放出を阻害することができる。さらに、HMG1がNOの放出を促進できること、HMG1に対する抗体がこの放出を阻害できることが明らかになった。複数のヒト抗HMG1抗体の、マウスマクロファージにおけるHMG1誘発サイトカイン遺伝子発現を低減させる能力も示した。
6.3.1 材料および方法
サイトカイン放出の阻害: 健康なボランティア被験者の末梢血から、密度勾配遠心分離法によりヒト末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。採血後の新鮮なヘパリン化全血を2倍容のPBSと混合した。Histopaque-1077 (Sigma-Aldrich社製)の液面上に希釈血を静かに上層し、400×g、室温で30分間遠心分離した。血漿と密度勾配溶液との界面からPBMCを採取した。3倍濃度PBS中での洗浄後、100 U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンおよび50μM β-メルカプトエタノールを含有するRPMI-1640培地(GIBCO BRL社製)中に、精製PBMCを再懸濁した。96ウェル細胞培養プレートの各ウェルに1×105 個の細胞を添加した。
PBMCは、5% CO2にて、37℃で2時間インキュベートした。4μg/mlの組換えHMG1、または2.4×105 個のLPS刺激THP-1細胞からの天然活性化HMG1、および異なる濃度のヒト抗HMGB-1モノクローナル抗体、RAGE-Fc融合タンパク質またはHMG1 Aボックス-Fc融合タンパク質を各ウェルに添加した。該培養培地には8 U/ml (1μg/ml)硫酸ポリミキシンB (Sigma-Aldrich社製)を添加し、可能性あるエンドトキシンを阻害した。同じドナーからの、HMG1による刺激なしのPBMCを対照に用いた。無細胞培養培地は14時間後に採取し、-20℃で保存した。
Luminex 100によるUpstate(Luminex社製)からのBeadlyte human multi-cytokine flex kitを用い、炎症性サイトカインについて培養培地を解析した。前炎症性サイトカインであるTNF-α、IL-6、IL-1β、およびIL-12 (p40)を、組換えHMG1で刺激した細胞について測定した。さらに、TNF-α、IL-6、IL-1β、およびIL-8を、天然活性化HMG1で刺激した細胞について測定した。
サイトカイン放出データは、3回の試験の平均±標準偏差として示す。抗HMGB1モノクローナル抗体のIC50を、HMGB1により刺激したPBMCからのサイトカイン放出に対する最大阻害の1/2を生じるのに必要な抗体濃度として定義する。IC50は、PRISMプログラムにより計算した。
NO放出の阻害: NOアッセイに用いたマクロファージには、C57BL/6マウスから得た骨髄由来マクロファージ(mBMMf)のほか、RAW細胞(マウスマクロファージ細胞系)を含めた。mBMMfは、M-CSF存在下の培養で3日間かけて成熟させた後に用いた(「新鮮mBMMf」)。細胞は、96ウェルプレートに105 個/ウェルで接種し、100μlの無血清a培地中で一晩HMG1により刺激した。HMGB-1 (5μg/ml)およびLPS (1μg/ml)を陽性対照として用いて、各種濃度のマクロファージによりNO産生を刺激した。これら刺激により、用量依存的応答が観察された。抗体は、HMG1に対しモル比4:1で調べた。翌日、プレートを1500rpmで5分間遠心し、上清を採取する。別の96ウェルプレートに以下の成分: 50μlの刺激済み上清および標準液(a培地で希釈)、25μlのNADH、25μlの硝酸還元酵素、50μlのグリース試薬Iを混合し、プレートを37℃で30分間インキュベートする。次いで、各ウェルに50μlのグリース試薬IIを加え、プレートを室温で10分間インキュベートする。540nmで各ウェルの吸光度を読み取り、標準液曲線に対して硝酸塩値を計算する。
HMG1により刺激されるマウスマクロファージ(mMΦ)のTaqman解析: 正常C57BL/6マウスの大腿部をすすいで、マウス骨髄を採取した。次いで、10%ウシ胎仔血清(FBS)および50ng/ml M-CSFを添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で24時間にわたり、単離した骨髄細胞を培養し、そして非接着細胞を収集して、T-75フラスコ内で10% FBSおよび50ng/ml M-CSFを添加した完全DMEM中で6日間増殖させた(1×107 個/15ml/フラスコ)。6日目に、接着細胞を収集して、96ウェルプレート中の10% FBS含有α-MEM培地中に、5ng/ml MCSFを加えて一晩再播種した(1×105 個/200μl/ウェル)。
培養培地をα-MEMで置換し、2時間インキュベートしてから、細胞に飢餓刺激を与えた。HMGB1 (大腸菌から産生された組換えCBP-HMGB1融合タンパク質10μg/ml)、マウスRAGE-FcまたはヒトRAGE-Fc融合タンパク質を、α-MEM中に100μg/mlの各種ブロッキング試薬を加えて室温で20分間予め混合した後、その混合液100μlを上記細胞に加え、37℃で2時間インキュベートした。次いで、上清を除去し、そしてAmbion社製MagMAX (商標)-96全RNA単離キットを用いてRNAを抽出した。回収したRNAは全て、cDNA合成のために、SuperScript (商標)IIIおよびオリゴ(dT)プライマー(Invitrogen社製)を用いる逆転写酵素(RT)反応に用いた。結果として得られるcDNAの1μlまたは2μlを、ABI Prism 7700または7000を用いたリアルタイム定量的PCR解析(TaqMan)に用いた。
6.3.2 結果
複数の抗体についての、代表的なHMG1誘発サイトカイン放出滴定曲線を図6A〜Bに示す。各被験抗体につきIC50値を計算した(表1を参照)。天然活性化HMG1 (LPS刺激したTHP-1細胞由来、上記参照)を阻害する能力について、さらに数種の抗体も調べた。RAGE-Fc融合タンパク質と同様にE11、S16、S17は、天然活性化HMG1によって誘導されるIL-6放出を阻害できたのに対し、S6、S13、G4、およびG9はそれほど有効でなかった(図6C)。これらの試験およびデータを示さない他の多数の試験の結果を、表1にまとめる。複数の抗体が、低い抗体濃度でサイトカイン放出を阻害できることが明らかである。ここまで検討してきた抗体のうち、S6がIL-1β、TNF-α、IL-6、およびNO放出の最良の阻害剤である一方、G4はIL-12の最良の阻害剤である。全ての抗体について、全てのサイトカインの放出の阻害能について調べられているわけでないことに注意する。いくつかの抗体は、単離したマウスマクロファージ(mMΦ)におけるrHMG1誘発サイトカイン遺伝子発現を阻害(ブロック)する能力についても調べた。E11、G2、およびG4は、HMG1誘発IL-1b遺伝子発現を顕著に低下させることができた(図7、左、および表1)。G2は、HMG1誘発TNF-α遺伝子発現をも顕著に低下させることができた(図7、右、および表1)。複数の抗体をさらなる解析のために選択し、細胞表面受容体へのHMG1の結合に対するその影響を明らかにした。
6.4 実施例4
抗HMG1抗体は細胞表面受容体へのHMG1結合を阻害する
RAGEおよびTLR4はともに、HMG1の推定上の受容体として同定されている。ヒト抗HMG1抗体が、HMG1とこれら推定上の受容体の1つまたは複数との相互作用を阻害できることを示すため、ELISAアッセイで、RAGE-Fc融合体への組換えHMG1の結合を阻害する能力について(図8)、および/または細胞レポーターシステムにおいてTLR4のHMG1誘発活性化をブロックする能力について(図9)、複数のヒト抗HMG1抗体を評価した。さらに、THP-1細胞の細胞表面へのHMG1の結合を特異的に阻害する、ヒト抗HMG1抗体の能力も示した(図10)。
6.4.1 材料と方法
HMG1のTHP-1細胞への結合: PerkinElmer社製Eu-labelling Kitにより、組換えラットHMGB-1を標識した。HMGB-1とEuのモル比は、1:5である。THP-1は、ATCCによるプロトコールに従い培養した。細胞を収集し、1倍濃度DELFIA L*R結合バッファー(PerkinElmer社製)、50% DELFIA安定剤(PerkinElmer社製)、および0.05%アジ化ナトリウムを含有するアッセイバッファー中に1×106 /mlの濃度で懸濁させた。96ウェル培養プレートのウェルに100μlの細胞(1×105個)を添加した。4℃で1時間静かに振とうしながら、プレートをインキュベートした。各種濃度(333、166.5、83.25、41.6、20.8、10.4、5.2nM)のヒト抗HMGB1抗体E11またはG2または可溶性ヒトRAGE-Fcと混合した、ユーロピウム標識した2nMのHMGB-1を含有する100μlのアッセイバッファーを、各ウェルにそれぞれ添加した。4℃で静かに振とうしながら1時間のインキュベーション後、1倍濃度L*R洗浄バッファー(PerkinElmer社製)を用いる1200rpm×5分間の遠心により、細胞を4回洗浄した。各ウェルに200μlの促進溶液を加え、615nmでのEu蛍光を分離および促進した。Wallac社製Victor蛍光光度計により蛍光を測定した。アッセイは3回の試験として実施し、ヒト抗体R3-47を陰性アイソタイプ対照として用いた。
ELISA法によるRAGE-IgへのHMG1の結合: PBS中に5μg/mlのRAGE-Fc融合タンパク質を、ELISA法プレートの各ウェルに50μl/ウェルずつ加え、4℃で一晩インキュベートした。次いで、プレートを、200μlの5%ミルクを加えて37℃で1時間ブロッキングし、PBS/Tweenで3回洗浄した。HMGB1希釈液を50μl/ウェルずつ添加した。用量曲線では、HMG1濃度はPBS中4μg/mlから出発した。抗体ブロッキングのため、他のプレートでHMGB1をヒト抗HMG1抗体またはバッファーによりプレインキュベートした後、RAGEでコートしたプレートに移した。次いで、プレートを室温で2時間インキュベートし、3回洗浄した。固定化RAGE-Fcに結合したHMG1を検出するため、各1μg/mlのビオチニル化マウス抗HMG1 mAb (10D4、4H11、3E10、および5C12)の混合液(全抗体量: 4μg/ml)を各ウェルに加え、室温で1時間そのプレートをインキュベートした。次いで、プレートを洗浄し、各ウェルにストレプトアビジン-HPRを加え、15分間インキュベートした。次いで、プレートを3回洗浄し、乾燥させた。100μlのTMB発色剤を加え、650nmでプレートを読み取った。測定値は阻害百分率として計算し、HMG1単独を0%阻害とした。図9に示しており表1にまとめたデータは、2つの別個の試験の平均を表す。
TLR4活性化アッセイ: HuTLR4およびCD14を安定的に発現した293細胞(Invitrogen社製)を、10% FCSを含む100μlのDMEM中に2×104/ウェルで、96ウェルプレートに一晩播種した。次いで、NF-κB/Luc (Stratagene社製)ルシフェラーゼレポーター構築物を、キットの指示するようにして24時間かけて細胞にトランスフェクトした。HMGB1および抗HMGB1の混合液を100μl/ウェルで細胞に一晩加えた。次いで、TLR4活性化を反映するルシフェラーゼ活性を測定した(Promega社製)。
6.4.2 結果
以上の試験は、被験抗体のいくつかがRAGEへの組換えHMG1の結合を少なくとも35%阻害したこと(例えば、G2、G4、S10、S16、S2、およびS6)、被験抗体のうちの2つ、すなわちG2およびG4が、被験条件下で結合をほぼ75%阻害したことを示す(図8、および表2)。複数の抗体が、被験濃度でのRAGE結合を阻害しなかった(例えば、G9、G12、G16、S14など、表1を参照)。E11は、より高濃度ではRAGEへのHMG1の結合を阻害することがわかった(データは示さない)が、さらに天然HMG1結合を阻害できる(実施例14を参照)。E11およびG20は、TLR4のHMG1活性化を阻害することができた(図9および表1)。さらに、E11およびG2の両方のヒト抗HMG1抗体も、THP-1細胞へのHMG1の結合を阻害する(図10および表1)。E11は、TLR4活性化およびTHP-1細胞へのHMG1の結合をともに阻害することができた。さらなる解析のために複数の抗体を選択し、in vivoにおける炎症反応に対するそれらの効果を示した(後述参照)。
6.5 実施例5
抗HMG1抗体は盲腸結紮穿刺(CLP)モデルにおける敗血症を抑制する
ヒト抗HMG1抗体が敗血症における致死性を抑制できることを示すため、本発明者らは、マウスにおいて敗血症を確立し、複数の抗体投与プロトコールについて生存率をモニタリングした。マウスに盲腸結紮穿刺(CLP)法を施し(これは、外科的に形成する盲腸憩室の穿孔により引き起こされる敗血症モデルとして十分に特性付けされている)、多菌性腹膜炎および敗血症を生じさせた(Fink and Heard、前出参照; Wichmann et al.、前出参照; およびRemick et al.、前出参照)。複数のヒト抗HMG1抗体について投与したマウスの生存率を、アイソタイプ対照抗体を投与したマウスと比較した。G4、S6、およびS16を含む複数のヒト抗HMG1抗体が、CLPモデルにおいて顕著な保護を示した(図11A〜Dおよび表1)。
6.5.1 材料と方法
敗血症における抗HMGB1抗体: 生体腹腔内感染および敗血症を確立するため、Balb/Cマウス(一群あたり9〜11匹)に、すでに記述された(Fink and Heard, 1990, J Surg Res 49:186-196; Wichmann et al., 1996, J Surg Res 65:109-114)ようにして、CLP法を施した。ケタミン(インディアナ州、フォートドッジ、Fort Dodge Laboratories社製、75mg/kg)およびキシラジン(Boehringer Ingelheim社製、20mg/kg)の筋内注射による麻酔後、15mmの正中切開により盲腸を露出させた。盲腸先端から5.0mmでの結紮後、盲腸基部を22ゲージ針で1回穿刺し、少量の便(1mm長)を押し出した。盲腸を通常の腹腔内位置に戻し、2層の連続縫合により創部を閉鎖した。手術の30分後、マウス全部に、生理食塩水溶液(0.9%皮下投与、20ml/体重kg)による蘇生法、および抗生剤の単回投与(1匹あたり、0.5mgのイミペネムを含む200μlの無菌生理食塩水を皮下注射)(Merck社製Primaxin)を施した。
手術の24および48時間後に、抗HMG1抗体またはアイソタイプ対照抗体(容量200μl 中に50μg/匹)を腹腔内投与した。いくつかの追跡試験では、手術の24時間後に、抗HMG1抗体またはアイソタイプ対照抗体(8mg/kg)を腹腔内投与した(図11C〜D)。以上の試験は、盲検法で行った。すなわち手術担当者がケージをランダム化し、別の試験実施者がコード化した抗体を投与した。全部で14日間にわたり1日2回ずつ、マウスの生存をモニタリングした。24および48時間後に50μg/匹で抗体を投与する、いくつかの代表的試験の生存曲線を、図11Aおよび11Bに示す。手術の24時間後に8mg/kgで抗体を投与するいくつかの代表的な試験を統合して得られた生存曲線は、図11Cに示す。さらに複数の抗体およびオリゴクローナル抗体プールを、手術の24時間後に8mg/kgで投与して調べた(図11D)。
6.5.2 結果
以上の試験は、瀕死の敗血症マウスのヒト抗HMG1抗体による受動免疫化が保護的であったことを示す。とくに、ヒト抗HMG1抗体S6、S16、E11、およびG4がCLPモデルにおいて保護的であった(図11A〜D参照)。複数の試験で、9日目における生存率の方が14日目におけるよりも良好であった(図11B)。より長期的な生存率におけるこの差は、該マウス系におけるヒト抗体の半減期の短縮によると考えられる。ただし、大半のマウスにとって、ヒト抗HMG1抗体の投与は、たんに死亡を遅延させたのでなく、むしろ致死性の敗血症に対する完全な保護を与えた。本モデルでは抗HMG1抗体S6が最も広範に調べられており、抗HMG1抗体S6は多数の試験において少なくとも30%の保護を再現性よくもたらしている(おもな累積データを図11Cに示す)。
6.6 実施例6
HMG1は複数の炎症性病態の動物モデルにおいてアップレギュレートされる
ヒトの血清HMG1レベルは、敗血症/敗血症性ショック時に上昇することが示されている。本発明者らは、複数の関節炎モデル、急性肺外傷、および腹膜炎を含む炎症性疾患の多数の異なる動物モデルにおけるHMG1タンパク質および/または遺伝子発現のレベルを調べた。これまでに調べたすべてのモデルにおいて、HMG1レベルが疾患進行とともに上昇することが判明した。さらに、複数のサイトカインおよび/または推定上のHMG1受容体分子のレベルも上昇することが判明した。
6.6.1 材料と方法
炎症性疾患の誘発: 各疾患モデルの誘発に用いる方法の詳細な記述については、後出を参照のこと。疾患を誘発した非投与動物においてHMG1および各種サイトカインのレベルを調べ、正常動物と比較した。
受動CIAマウスにおけるHMG1レベル: 10日目に正常または受動CIAマウスの前足部を採取して液体窒素で瞬時凍結し、アッセイ実施まで-80℃で保存した。関節試料および溶解バッファーを、専用溶解マトリクスA粒子(Q biogene社製)であらかじめ満たした、2ml衝撃耐性チューブに添加した。FastPrep (登録商標)ホモジナイザーにより関節をホモジナイズした後、遠心分離した。上清を採取し、MesoScale technology (Meso Scale Discovery社製)を用いるELISA法によりHMG1レベルを測定した。図12Aに示すデータは、各群における5つの足部の平均である。
能動CIAマウスのTaqman解析: 35日目に正常または能動CIAマウスの前足部および後足部を採取して液体窒素で瞬時凍結し、アッセイ実施まで-80℃で保存した。関節試料および溶解バッファーを、専用溶解マトリクスA粒子(Q biogene社製)であらかじめ満たした、2ml衝撃耐性チューブに添加した。FastPrep (登録商標)ホモジナイザーにより関節をホモジナイズし、製造元の取扱説明書に従いQiagen社製RNAse mini kitまたはRNA STAT-60を用いて、ホモジネートからRNAを調製した。回収したRNAは全て、cDNA合成のために、SuperScript (商標)IIIおよびオリゴ(dT)プライマー(Invitrogen社製)を用いる逆転写酵素反応に用いた。cDNAの1μlまたは2μlを、ABI Prism 7700または7000によるリアルタイム定量的PCR解析(TaqMan)に用いた。HMGB1および複数の推定上の受容体分子RAGE、TLR2、TLR4、およびTLR9の相対的遺伝子発現量を、前足部および後足部の両方につき個別に調べた(図12B)。複数サイトカインIL-1b、IL-6、TNF-aの相対的遺伝子発現量も、前足部および後足部の両方につき個別に測定した(図12C)。正常マウスにおける各分子の遺伝子発現量を1とし、各分子の相対的遺伝子発現量をプロットした。各分子の下の数字がその値を示す。
AIAラットにおけるHMG1レベル: 0、5、10、15、20日目にAIAラットの後足部を採取して液体窒素で瞬時凍結し、アッセイ実施まで-80℃で保存した。前出の受動CIAマウスに用いたのと同じプロトコールを用いて、AIA関節を処理および分析した。関節ホモジネート中に存在するHMG1のレベルを、図12D (右上グラフ)に経時的にプロットした。疾患進行の2大指標である関節炎症および体重減少もプロットした(それぞれ、左上および左下のグラフ)。
黄色ブドウ球菌チャレンジ後のマウス血清におけるHMG1値およびサイトカインレベル: 黄色ブドウ球菌でチャレンジしたマウスからの血清を、チャレンジ後2、8、12時間後に採取した。MesoScale technology (Meso Scale Discovery社製)を用いるELISA法によりHMG1、IL-1b、およびTNF-aの各レベルを測定した。HMG1、IL-1b、およびTNF-αの各レベルは、経時的にプロットした(図12E)。HMG1とサイトカインでは異なるスケール(それぞれ、右および左の座標軸)を用いたことに注意する。ガラクトサミン単独でチャレンジしたかまたはチャレンジなしのマウスは、HMG1またはサイトカインの同様の上昇を示さなかった(データは示さない)。
ALIマウスのBAL液中のHMG1レベル: PBS (対照)またはLPS (肺外傷)のいずれかでチャレンジしたマウスからのBAL液をチャレンジ後の表示時点で採取し、MesoScale ELISA法によりHMG1のレベルを測定した。HMG1のレベルは、経時的にプロットした(図12F、左プロット)。疾患進行の指標である総存在細胞数を、やはり経時的にプロットした(図12F、右プロット)。
投与後AIAラットにおけるHMG1レベル: 投与後AIAラットの後足部(後出の実施例9参照)を前記のようにして処理し、MesoScale ELISA法によりHMG1、IL-6、およびTNF-aの各レベルを測定した。
MesoScale ELISA法: 略述すると、プレートをHMGB1またはサイトカイン(例えば、IL-1b、TNF-a、IL-6など)に対する捕捉抗体でプレコートし、MSDブロッカーバッファー(MSD社製、カタログ番号R93AA-1)で1時間ブロッキングした。標準液(例えば、正常マウスのBAL液、血清または関節ホモジネートを適切な試料バッファーで希釈したもの)および試料を、プレートに20μl量で添加した。一次抗体および検出抗体の20μl混合液を各ウェルに添加し、振とうしながら4時間、室温でインキュベートした。次いで、プレートを洗浄し、測定バッファー(MSD社製、カタログ番号R92TD-2)を添加し、Sector Imager 6000で読み取った。HMG1検出用の一次抗体はアフィニティウサギ抗HMGB1ポリクローナル抗体(Becton Dickinson Biosciences社製、カタログ番号556528)で、検出抗体はヤギ抗ウサギMSD検出抗体(MSD社製、カタログ番号R32AB-1)であった。
6.6.2 結果
3つの関節炎モデルを調べた。各モデルにおいて、該関節におけるHMG1レベルは、疾患進行に合わせて上昇することがわかった。受動CIAマウスでは、広範な関節部炎症が見られる(後出および図13A参照)10日目までに、HMG1のレベルが約10倍上昇した(図12A)。能動CIAマウスでは、HMG1、炎症性疾患への関与が知られる複数のサイトカインおよび複数の受容体も、疾患進行に合わせて上昇することがわかった(図12B〜Cおよび15A)。RAGE受容体は前足部および後足部いずれにおいても、約2倍の上昇を示し、TLR2およびTLR4受容体は、前足部ではそれぞれ2および3倍の上昇を示したに過ぎないが、後足部ではそれぞれより顕著な19および17倍の上昇を示した。後足部においてはTLR9レベルのみ上昇した(7倍)。サイトカインIL-1b、IL-6、およびTNF-aの発現レベルは同様の傾向を示し、前足部ではそれぞれ39、145、7倍上昇し、後足部ではより顕著にそれぞれ247、361、76倍上昇した。AIAラットモデルでは、関節ホモジネートのHMG1レベルが、検出不可能なレベルから、関節炎症が最も重度であった15日目までには200ng/ml超に上昇した(図12D、左右のグラフを比較せよ)。ほぼ20日目に炎症が低減したとき、HMG1レベルにも対応する低下が見られた。
他の2つの疾患モデルも検討した。図12Eは、黄色ブドウ球菌の腹膜炎モデルにおいて、チャレンジの約2時間後に始まるHMG1レベルの経時的な一貫した上昇を示す。TNF-a値およびIL-6値はチャレンジ直後急激に上昇し、TNF-aレベルは2時間後にピークに達し、下降し、チャレンジの約9時間後に再び上昇した。IL-6レベルは、約2時間後にピークに達した後は、わずかな上昇のみで全般的に定常状態を保った。急性肺外傷のマウスモデルでは、BAL液中のHMG1レベルが、検出不可能なレベルから、LPSチャレンジの48時間後までに1500ng/ml超に上昇した(図12F、左のグラフ)。HMG1レベルのこの上昇は、LPSでチャレンジしたマウスからのBAL液中に存在する細胞浸潤物(全細胞数)の増加と相関する(図12F、左右のグラフを比較せよ)。PBSバッファーでチャレンジしたマウスからのBAL液中のHMGレベルは、検出不可能であった(図12F左のグラフ)。以上の試験は、HMG1レベルが、3つの関節炎モデル、急性肺外傷モデル、および腹膜炎モデルを含む多数の炎症性疾患モデルにおいて疾患進行とともに上昇することを示す。これらモデルにおけるさらなる試験のために複数のヒト抗HMG1抗体を選択し、HMG1レベルの上昇と関連する他の炎症性疾患において、抗HMG1抗体が有用であることを示した。
本発明者らは、PBS、ヒトアイソタイプ対照(HuIgG)、G4、Aボックス-Fc融合体、および、HuIgGまたはRenbrelまたはG4のいずれかと併用するメトトレキサート(MTX)、のいずれかの投与後のAIAラットの関節におけるHMG1、IL-6、およびTNF-aのレベルも調べた。図12Gは、各投与後のHMG1レベル(左上)およびIL-6レベル(左下)を示す。HuIgGまたはAボックス-Fc投与は、HMG1レベルまたはIL-6レベルを顕著には低下させなかった。G4単独、およびHuIgGまたはRenbrelのいずれかと併用したMTXは、HMG1またはIL-6レベルの同様な低下を示した。一方、MTXとG4の併用は、それらのレベルを正常にまで低下させた。G4もTNF-aレベルを顕著に低下させたが、MTX+HuIgGは、このサイトカインをよりいっそう低下させた(図12G、右上)。
6.7 実施例7
抗HMG1抗体は受動コラーゲン誘発関節炎(CIA)マウスモデルにおける疾患進行の重症度を抑制する
HMG1に対するヒト抗体が有用な治療薬であることを示すため、受動マウスモデルにおいてコラーゲン誘発関節炎を治療するため一連のヒト抗HMG1抗体を試験した。この一連の試験のため、本発明者らは、臨床的関節炎の発症以前に投与を開始する予防モデルを用いた。本試験においては、抗HMG1抗体の有効性を、既知の治療プロトコールの場合、すなわちRenbrel (げっ歯類モデル系での使用が認められているEnbrel (商標)の代理分子)単独またはRenbrel (商標)およびメトトレキサート(MTX)の併用のいずれかと、直接に比較した。
本発明者らは、本実施例において初めて、HMG1に対する抗体が、受動CIAマウスRAモデルにおける予防に有効であったことを示す。実際、抗HMG1抗体G4がRenbrel単独よりもより有効であることが示されたが、一方、抗HMG1抗体S6はMTX/Renbrel療法よりもさらに足部炎症の軽減、および骨損失および軟骨損傷の軽減に有効であった。
6.7.1 材料と方法
受動コラーゲン誘発関節炎(CIA)の誘発: 関節炎モデルを確立するため、6〜8週齢の雄DBA/1Jマウス(メーン州、Bar Harbor、Jackson Labs社製)を用いた。全般に各群5〜8匹のマウスを用いた。0日目に、2mg/匹の抗コラーゲンmAbカクテル(Chemicon社製、番号ECM1100、10mg/ml)を尾静脈に静脈注射してマウスを免疫した。次いで、3日目に、50μg LPS/匹をマウスに腹腔内注射した。各試験には、以下の複数の動物群を含めた:試験1におけるA〜E群、試験2におけるG〜J群、およびL〜N群。その他のマウス群(F、K、O群)は、正常対照群として非投与であった。表5に示す以下の投与を行った。
Figure 2009517404
疾患モニタリング: 0日目から、全てのマウスを毎日観察し、各足部に定性的な臨床スコアを割り当てることにより、足部において疾患の状態を評価した。毎日、各マウスの4つの足部に、臨床病態に応じたスコアをつける。スコア評価は、2名の観察者が行い、うち少なくとも一人は盲検化する。さらに、各マウスの体重を測定し、体重変化を追跡すると同時に足部のスコアをつける(図6Aおよび6D参照)。足首部/手首部/中足部/前足部の評価スケールは以下の通りである:
0=正常
1=限定的な腫脹
2=高度の腫脹
3=最も高度の腫脹で体重を支持できない
各足部につき4本の甲側指の評価スケールは、罹患または罹患なし、すなわち1または0である。例えば、最大限に罹患した左後足部のスコアは以下のようになる:足首部=3、中足部=3、指部=4 (臨床スコア=10単位)。これを各足部について繰り返し、スコアを合計する。14日目、または総臨床スコアが40に達し次第マウスを安楽死させ、関節の組織学的評価を行う。
組織学:各マウスからの後肢脛距骨関節を評価し、Badger et al., 2001, Arthritis & Rheumatism 44:128-37が述べる手順で、組織学的変化を評価した。略述すると、32日目にマウスを安楽死させ、後脚をホルマリンで固定し、Cal-Rite (ミネソタ州、Kalamazoo、Richard-Allen Scientific社製)で脱灰した。次いで、脛骨骨幹遠位部で足部を脚部から切り離した。常套的な加工の後、試料を埋め込み、脛距骨関節と距骨足根関節の中間を通る平面で冠状切片を切り取った。切片はSafranin Oで染色し、ファーストグリーンで対比染色した(データは示さない)。
骨および関節軟骨/関節周囲軟組織の組織学的特性は、盲検化した観察者が別個に評価した(図13Bおよび13C)。骨は、以下のように評価した: 0=正常、1=骨膜性線維骨をともなう骨膜下線維症、2=骨髄炎症、骨内膜および骨梁における骨吸収、3=広範な炎症、4=顆粒化組織による骨髄置換、骨梁骨の僅少化、皮質骨輪郭の広範な消失。軟骨/滑膜は、以下のように評価した: 0=正常、1=滑膜および周囲組織における軽微なリンパ球性炎症、2=滑膜線維症および浮腫、関節腔の部分的なリンパ球性浸潤、軽度のパンヌスによる軟骨びらん、3=関節腔の広範な浸潤、末梢骨および軟骨下部の軟骨びらん、局所性壊死性液状化をともなう軟組織の広範な線維症。
6.7.2 結果
複数の試験を実施し、HMG1抗体投与が、受動CIAマウスモデルにおける疾患重症度を抑制または軽減しうることを示した。試験1では、マウスへのLPS注射後3日目から、マウスに抗HMG1抗体S6またはG16 (0.2mg/匹)を投与した。マウスは、13日間で全6回の投与を受けた。同時に対照マウスには、ヒトmAb(0.2mg/匹)を投与した。最終群は、MTX (0.2mg/匹、12日間で4回の投与)およびRenbrel (0.2mg/匹、10日間で2回の投与)の併用療法を受けた。初回投与後毎日、関節炎の発現を評価した。図13Aのグラフは、試験期間中の各投与群の足部炎症スコアを示す。図13Bは、CIA予防モデルについての、骨、軟骨および炎症の全組織学スコアである。本モデルでは、後足部の罹患にばらつきが生じうるので、前足部の方が、より予測性の高い指標であることに注意を要する。図13Cは、前足部のみについての、骨、軟骨および炎症の組織学スコアである。ヒトIgGの投与は、関節炎の発現に効果を及ぼさなかった。一方、抗HMG1 S6抗体投与マウスは、対照マウスと比べ、骨、軟骨および総炎症スコアを大幅に低下させた。抗HMG1 S6抗体投与マウスがMTX/Renbrel併用療法投与マウスよりも顕著に良好であったことは、特筆に価する(図13Bおよび13C)。
疾患進行のいま一つの臨床症状は、体重減少である。対照マウスの相対値による体重スコアは、試験期間中に実質的な低下を示した。抗HMG1 S6抗体投与マウスの臨床スコアは顕著な保護作用を示したが、この群のマウスは、体重の実質的な減少も示した。ただし、抗HMG1 S6抗体投与マウスでは、対照群ほど大きくは減少しなかった。MTX/Renbrel投与マウスも試験早期には実質的な体重減少を示したが、終了時までには非投与マウスと同等になった(図13D)。以上の結果は、抗HMG1抗体が、疾患発症前に投与すれば、関節損傷および他の症状に対し、有効な保護作用を与えうることを示す。とくに、これらの結果は、抗HMG1 S6抗体投与が、CIAマウスにおける疾患重症度の軽減に顕著な効果を及ぼしたことを示す。本試験が、関節炎モデルにおけるS6の保護効果の典型でない場合もあることに注意すべきである。抗HMG1 S6抗体投与は、敗血症のマウスCLPモデルにおいて顕著な保護作用を繰り返し示してきたが(前出の実施例5参照)、関節炎モデルにおける結果はより流動的である。この流動性は、抗体調製、動物モデル、抗体薬物動態および他の同様のパラメーターにおける違いを反映すると考えられる。
試験2および3では、マウスへのLPS注射後3日目から、マウスに抗HMG1抗体G4 (10mg/kg)を投与した。マウスは、試験2の13日間で全6回、および試験3の同一期間で全4回の投与を受けた。同時に、対照マウスには、ヒトmAb (10mg/kg)またはPBSのいずれかを投与した。試験2の最終群には、Renbrel (用量はG4と同じ)を投与した。初回投与後毎日、関節炎の発現を評価した。図14A〜Bのグラフは、試験期間中の足部炎症スコアを示す。試験2 (図14A)からは、抗HMB1抗体G4の方が、Renbrel単独よりも足部炎症の軽減により有効であることが明らかである(右パネル)。試験3からのデータ(図14B)は、抗HMG1抗体G4が、より少ない投与回数で足部炎症を鎮静化しうることを示す。G4抗体は、関節炎の本モデルおよび他の複数のモデルにおいて、顕著な保護作用を繰り返し示した(後出の実施例8および9)。
6.8 実施例8
抗HMG1抗体は能動コラーゲン誘発関節炎(CIA)マウスおよびラットモデルにおける疾患進行の重症度を抑制する
HMG1に対するヒト抗体が有用な治療薬であることを示すため、マウスモデルにおいて能動コラーゲン誘発関節炎を治療するために一連の抗HMG1抗体を調べた。この一連の試験のため、本発明者らは、臨床的関節炎の発症以前に投与を開始する予防モデルを用いた。本試験においては、抗HMG1抗体の有効性を、Renbrelと比較した。
本発明者らは、本実施例において初めて、HMG1に対する抗体が、能動CIAマウスRAモデルにおける足部炎症および体重減少の軽減に有効であったことを示す。実際、抗HMG1抗体G4が、Renbrel単独よりも足部炎症の軽減により有効であることが示された。
6.8.1 材料と方法
マウスにおける能動コラーゲン誘発関節炎(CIA)の誘発: 6〜8週齢の雄DBA/1Jマウス(メーン州、Bar Harbor、Jackson Labs社製)を用いた。0日目に、50μl 0.1N酢酸中に溶解し、同量のフロイント完全アジュバント(ワシントン州、レッドモンド、Chondrex社製)で乳化させた、200μgウシII型コラーゲン (CII)をイソフルラン麻酔下マウスの尾基部に皮内注射した。三週間後の21日目に、25μl 0.1N酢酸中に溶解し、同量のフロイント不完全アジュバント(ミネソタ州、デトロイト、Difco社製)で乳化させた、100μgのCIIを再び同様の皮内注射でマウスに投与した。
マウスにおける疾患モニタリング: 14日目から、全マウスを毎日観察し、各足部に定性的な臨床スコアを割り当てることにより足部病態を評価した。毎日、各マウスの4つの足部に、臨床病態に応じたスコアをつける。スコア評価は、2名の観察者が行い、うち少なくとも一人は盲検化する。さらに、各マウスの体重を測定し、体重変化を追跡すると同時に足部のスコアをつける。足首部/手首部/中足部/前足部の評価スケールは以下の通りである:
0=正常
1=限定的な腫脹
2=高度の腫脹
3=最も高度の腫脹で体重を支持できない
各足部につき4本の甲側指の評価スケールは、罹患または罹患なし、すなわち1または0である。例えば、最大限に罹患した左後足部のスコアは以下のようになる:足首部=3、中足部=3、指部=4 (臨床スコア=10単位)。これを各足部について繰り返し、スコアを合計する。36日目、または総臨床スコアが40に達し次第マウスを安楽死させ、関節の組織学的評価を行う。
ラットにおける能動コラーゲン誘発関節炎(CIA)の誘発: 6〜8週齢の雌DAラットを用いた。0日目、50μl 0.1N酢酸中に溶解し、同量のフロイント不完全アジュバント(ワシントン州、レッドモンド、Chondrex社製)で乳化させた、2mg/kgウシII型コラーゲン (CII)を麻酔下ラットの尾基部に皮内注射した。一週間後の7日目に、前出と同様の手順で調製した100μgのCIIを、再び同様の皮内注射でラットに投与した。
ラットにおける疾患モニタリング: 対照群における炎症および腫脹が明らかとなって(ほぼ18日目)から、全ラットを毎日観察し、各足部に定性的な臨床スコアを割り当てることで足部病態を評価した。毎日、各ラットの4つの足部に、臨床病態に応じたスコアをつける。スコア評価は、2名の観察者が行い、うち少なくとも一人は盲検化する。さらに、各ラットの体重を測定し、体重変化を追跡すると同時に足部のスコアをつける。足首部/手首部/中足部/前足部の評価スケールは以下の通りである:
0=正常
1=かろうじて識別可能な腫脹
2=限定的な腫脹
3=高度の腫脹
4=最も高度の腫脹で体重を支持しない
各足部につき4本の甲側指の評価スケールは、罹患または罹患なし、すなわち1または0である。例えば、最大限に罹患した左後足部のスコアは以下のようになる:足首部=4、中足部=4、中足指節(MTP)=4、近位指節間(PIP)=4、遠位指節間(DIP)=4 (20単位)。これを各肢について繰り返し、各肢ごとにスコアを合計する。42日目、または総臨床スコアが80に達し次第ラットを安楽死させる。
6.8.2 結果
ヒト抗HMG1抗体投与が、能動CIAモデルにおける疾患重症度を抑制または軽減しうるかどうかを検討した。21日目から、抗HMG1抗体G4、アイソタイプ対照抗体、またはRenbrelを10mg/kgで3日ごとにマウスに投与した。関節炎の発現を毎日評価した。図15Aのグラフは、試験期間中の各投与群の足部炎症スコアを示す。ヒトIgGの投与は、関節炎の発現に効果を及ぼさなかった。一方、抗HMG1 G4抗体投与マウスは、対照マウスと比べ、炎症スコアを大幅に低下させた。抗HMG1 G4抗体投与マウスが、Renbrel療法投与マウスよりも顕著に良好であったことは特筆に価する(図15A、左右パネルを比較)。
本モデルにおける疾患進行のいま一つの臨床症状は、体重減少である。対照マウスの相対体重スコアは、試験期間中に実質的な低下を示した。抗HMG1 G4抗体投与マウスの臨床スコアは顕著な保護作用を示したが、この群のマウスは、体重の実質的な減少も示した。ただし、抗HMG1 G4抗体投与マウスでは、対照群ほど大きくは減少しなかった(図15B)。以上の結果は、抗HMG1抗体が、疾患発症前に投与すれば、関節損傷および他の症状に対して、有効な保護作用を与えうることを示す。とくに、これらの結果は、抗HMG1 G4抗体投与が、CIAマウスモデルにおける疾患重症度の軽減に顕著な効果を及ぼしたことを示す。
さらなる試験で能動コラーゲン誘発関節炎ラットモデルにおけるG4抗HMGB1抗体の用量滴定を検討したところ、用量30mg/kgまでは有効性が増大した。最高用量100mg/kgでは臨床スコアのさらなる改善は見られなかった(図15C)。
6.9 実施例9
抗HMG1抗体はアジュバント誘発関節炎(AIA)ラットモデルにおける疾患進行の重症度を抑制する
本発明者らは、さらに、アジュバント誘発関節炎(AIA)ラットモデルにおいて、ヒト抗HMG1抗体G4を調べた。この一連の試験のため、本発明者らは、臨床的関節炎の発症以前に投与を開始する予防モデルを用いた。本試験においては、抗HMG1抗体の有効性を、Renbrelの有効性と比較した。
本発明者らは、本実施例において初めて、HMG1に対する抗体(G4)が、AIAラットRAモデルにおける足部炎症の軽減に有効であったことを示す。実際、抗HMG1抗体G4が、Renbrel単独よりも足部炎症の軽減により有効であることが示された。抗HMG1 G4ラットでは約34%の臨床スコアの低下が見られたのに対し、Renbrel投与ラットでは約11%の低下が見られたに過ぎない。本発明者らは、抗HMG1 G4投与ラットにおける過骨症の阻害も示す。さらに、本発明者らは、メトトレキサートおよびG4の併用が、メトトレキサートおよびRenbrelの併用よりも足部炎症の軽減により有効であることを示す。
6.9.1 材料と方法
アジュバント誘発関節炎(AIA)の誘発: 6〜8週齢の雌DAラット(Harlan社製)を用いた。0日目、100μl不完全フロイントアジュバント(ミネソタ州、デトロイト、Difco社製)中に混合した、0.75mgのマイコバクテリウム・ブチリクム(Mycobacterium butyricum)(Difco社製、番号0640-33-7)を、イソフルラン麻酔下ラットの尾基部に皮内注射した。該試験のために、表6に示す以下の投与を行った。
Figure 2009517404
ヒト抗HMG1抗体G4、Aボックス-Fc融合体およびhuIgGアイソタイプ対照は0〜15日目に、3日ごと、10mg/kgで投与した。メトトレキサートは0〜15日目に、6日ごと、0.8mg/kg、およびRenbrelは、グループ5には0〜15日目に、2日ごと、2.5mg/kg、またはグループ6には0〜15日目に、3日ごと、4mg/kgで投与した。投与群B、C、D、およびEには、0日目から3日ごとに10mg/kgで抗体を投与し、投与群DおよびEには、0日目から3日ごとに4mg/kgでRenbrelを投与した。
疾患モニタリング: 6日目から全ラットを毎日観察し、各足部に定性的な臨床スコアを割り当てることで足部病態を評価した。毎日、各ラットの4つの足部に、臨床病態に応じたスコアをつける。スコア評価は、2名の観察者が行い、うち少なくとも一人は盲検化する。さらに、各ラットの体重を測定し、体重変化を追跡すると同時に足部のスコアをつける。足首部/手首部/中足部/前足部の評価スケールは以下の通りである:
0=正常
1=かろうじて識別可能な腫脹
2=限定的な腫脹
3=高度の腫脹
4=最も高度の腫脹で体重を支持できない
各足部につき4本の甲側指の評価スケールは、罹患または罹患なし、すなわち1または0である。例えば、最大限に罹患した左後足部のスコアは以下のようになる:足首部=4、中足部=4、中足指節(MTP)=4、近位指節間(PIP)=4、遠位指節間(DIP)=4 (20単位)。これを各肢について繰り返し、各肢ごとにスコアを合計する。21日目、または総臨床スコアが80に達し、関節の組織学的評価を行い次第ラットを安楽死させる。
骨形態計測モニタリング: MicroCT-40機器(コンピュータ断層撮影)(Scanco社製)による測定の前に、脛骨および腓骨遠位部の付着した後足部を3.7%中性緩衝ホルマリンに浸漬して固定した。骨表面および関節界面からの粗面化した肥厚および突起を証拠とする、骨膜過骨症の重症度および分布について、MicroCT画像を評価した。0〜6の重症度および分布スコアを脛骨、腓骨、および距骨遠位部に割り当て、足根骨および中足骨および関節近位部に0〜6の第二のスコアを割り当てた。MicroCT総スコアは、これら2領域の合成スコアからなる。
組織病理学モニタリング: MicroCTスキャン後、無傷足部をギ酸溶液(ニュージャージー州、フェアローン、Fischer Scientific社製、Cal-EXII)中で約12時間脱灰した。次いで、矢状半切片を28時間脱灰し、水で洗浄し、常套的にパラフィン包埋し、4〜6ミクロンの切片をスライドガラスに載せた。ヘマトキシリンおよびエオシン、ヘマトキシリン-フロキシン-サフロン、またはトルイジンブルーにより染色し、光学顕微鏡で精査した。
組織学的評価には、炎症および関節損傷のほか、過骨症存在の確認も含めた。炎症については、腱鞘の炎症の存在(腱鞘炎)に、0 (正常)から4 (高度)までの数値スコアを割り当て、骨膜外層組織における炎症細胞および線維血管増殖の存在(蜂巣炎)に、第二のスコアを割り当てた。総炎症スコアは、骨膜炎骨、腱鞘炎、および蜂巣炎の合成スコアからなる。
関節損傷については、耐力非連接関節(足根骨)を、耐力非連接関節(脛距骨関節、中足指節関節、および指節間関節)とは別個に評価した。パンヌス形成の存在および範囲について0 (正常)から4 (高度)までのスコアを割り当て、関節軟組織の炎症(滑膜炎)の重症度および範囲に第二のスコアを割り当てた。総関節損傷スコアは、パンヌス形成および滑膜炎の合成スコアからなる。軟骨びらんは軽度の症状であること、したがって潜在的な投与効果の評価には信頼性のないことが判明しているので、AIAラットモデルにおいては評価しなかった。
6.9.2 結果
本発明者らは、ヒト抗HMG1抗体G4が、ラットにおけるAIAの重症度を抑制または軽減しうるかどうかを判定した。21日目から、3日ごとに10mg/kgのPBS、抗HMG1抗体G4、アイソタイプ対照抗体(HuIgG)、または2日ごとに2.5mg/kgのRenbrelのいずれかをAIAラットに投与した。さらに、AIAラットには、Renbrel、G4またはHuIgGを含む複数の他の療法との併用で、メトトレキサートを投与した。AIAラットには、HMG1 Aボックス-Fc融合タンパク質をも投与した。関節炎の発現を毎日評価した。図16Aのグラフは、試験期間中の該抗体またはRenbrel単独の各投与群のほか、PBSおよび正常対照群の足部炎症スコアを示す。ヒトIgGの投与は、関節炎の発現に効果を及ぼさなかった。一方、抗HMG1 G4抗体投与ラットは、対照ラットと比べ、炎症スコアを大幅に低下させた。抗HMG1 G4抗体投与ラットが、Renbrel単独療法投与ラットよりも顕著に良好であったことは特筆に価する(図16A、左右パネルを比較)。抗HMG1 G4ラットでは約30%の臨床スコアの低下が見られたのに対し、Renbrel投与ラットでは約25%の低下が見られるに過ぎなかった。
図16Bのグラフは、併用療法投与群の足部炎症スコアを経時的に示す。比較のため、該抗体単独およびHMG1 Aボックス-Fc融合タンパク質投与群も含めた。Aボックス-Fc融合タンパク質単独は、炎症スコアを低下させたが、G4単独よりは有効性が低かった。MTXおよびRenbrelの併用は、G4単独と比べ炎症スコアを低下させた。MTXおよびHuIgG対照抗体の併用がMTX/Renbrel併用と同様の炎症軽減を示したので、MTXがこの軽減により大きく寄与したと考えられる。一方、MTXおよびG4の併用は、MTX/Renbrel併用よりもさらに有効であり、炎症スコアをほぼ正常にまで低下させた。各投与群で見られる足部炎症スコアの低減は、AIA ラット関節におけるHMG1、IL-6およびTNF-a値の低下と相関した(図12G参照)。
足部micro-CTおよび組織病理学的評価のいずれもが、足部炎症に対する抗HMG1治療の有益な効果をさらに確認した。図16Cでは、micro-CTが、骨膜下皮質骨の放射状突起および該皮質自体の壁肥厚を証拠とする、AIAラットにおける顕著な過骨症を明らかにした。関節の顕微鏡評価は、上を覆う骨膜が肥大性であり、最大2〜3層の肥満した卵形細胞からなることを確認した。過骨症は、脛距骨周囲で最も高度かつ広範で、アキレス腱を持ち上げ、足底腱を部分的に断裂させていた。抗HMG1 G4投与は、過骨症を30%低下させた(図16Cおよび16D、上パネル)。
組織学的評価が、AIAラットにおいて高度の炎症性病変を明らかにしたことは、臨床的観察と符合する(図16E)。脛距骨、手掌表面、さらに指節遠位部周囲の顕著な浮腫が、臨床的および組織学的に明らかとなった。透明な体液による脛距骨関節腔の顕著な肥大も認められた。腱内に広がり腱を分離させる腱鞘浸潤物とともに、炎症細胞(リンパ球、血漿細胞、組織球、および一部好中球の混合)が、浮腫性軟組織内全体に広がった。比較では、G4投与ラットの方が、炎症反応が顕著に低いことを示した(図16D、左下パネル)。さらに、滑膜炎およびパンヌス形成を含む関節病変の評価も、G4投与ラットの方が関節損傷が軽度であることを示した(図16D、右下パネル)。以上まとめると、足部に対するmicro-CTおよび組織病理学的評価はともに、足部炎症に対する投与の有益な効果が、抗HMG1療法を投与したラットにおける正常形態への回復に対応することを確認した。
さらなる試験で、より高用量のRenbrelを単独またはG4との併用で検討した。図16Fに示すように、高用量のG4およびRenbrelは同等であった(臨床スコアで、それぞれ、48%および44%の抑制)。一方、併用すると、いずれの単独投与よりも臨床スコアが改善した(62%の抑制)。過骨症、蜂巣炎、腱鞘炎および関節滑膜炎スコアを含む複数の組織学的評価スコア(データは示さない)についても、併用療法での改善が見られた。6日目から3日ごとに、10mg/kgの抗体(対照IgGまたはG4)を17mg/kgのRenbrelと併用投与する遅延投与レジメンを用いても、同様の結果が得られた(データは示さない)。以上のデータは、抗HMGB1療法の有益な効果をさらに確認し、併用療法が臨床転帰をさらに改善しうることを示唆する。
6.10 実施例10
抗HMG1抗体は黄色ブドウ球菌によるマウス腹膜炎モデルにおける生存率を改善する
本発明者らは、血清HMG1値の上昇が見られる(前出参照)マウス腹膜炎モデルにおいても複数のヒト抗HMG1抗体を調べた。本実施例で、本発明者らは、ヒト抗HMG1抗体投与が、生存率を対照に対してほぼ30%改善することを示す。
6.10.1 材料と方法
腹膜炎の誘発: 4〜6週齢の雌BALB/cマウスを用いた。ガラクトサミンをプレミックスした加熱不活性化黄色ブドウ球菌で腹腔内チャレンジしたマウスによる最初の試験は、LD100が1×107〜1×109個(データは示さない)であることを示した。0日目のHMG1値を測定するため、20mgガラクトサミンとプレミックスした約109個の加熱不活性化黄色ブドウ球菌(8325-4菌株)、またはガラクトサミン単独を、200μl量のPBS溶液として腹腔内投与した。第3群のマウスにはチャレンジしなかった。チャレンジの2、8、12時間後に、マウスをCO2吸入により安楽死させ、心穿刺により採血した。0日目の抗体投与試験のため、20mgガラクトサミンとプレミックスした約109個の加熱不活性化黄色ブドウ球菌(8325-4菌株)を200μl容で腹腔内投与し、チャレンジの30分前に表7に示す以下の投与を100μl量で腹腔内で行った。
Figure 2009517404
疾患モニタリング: 1〜14日目まで継続して、マウスの罹患率(顕著な運動低下、被毛の逆立ち、および/または最高>20%の体重減少)および死亡率の徴候を毎日観察した。マウスの体重も、週に2回測定した。顕著な罹患の徴候を示すマウスは、安楽死させた。15日目に、すべての生存マウスを安楽死させた(顕著な罹患が観察され次第、安楽死させた)。
6.10.2 結果
致死量の加熱不活性化黄色ブドウ球菌でチャレンジした、高度のグラム陽性菌誘発敗血症モデルにおいても、ヒト抗HMG1抗体を調べた。このモデルでは、PBSまたは該抗体アイソタイプ対照(R347)のいずれかを投与したどのマウスも、生存しなかった。これに対し、HMG1 G4に対するヒト抗体投与マウスの27%が生存し(図17)、E11投与マウスの8%が生存した(データは示さない)。投与24時間後までに死亡率の差が見られ、試験期間を通じて継続した。以上のデータは、CLP試験(前出参照)を支持し、ヒト抗HMG1抗体が、広範な病原体の誘発する敗血症治療に有用であることを示す。
6.11 実施例11
抗HMG1抗体は急性肺外傷に伴う細胞浸潤を軽減する
リポポリサッカライド(LPS)誘発急性肺外傷(ALI)マウスモデルにおいて、2つのヒト抗HMG1抗体を調べた。本発明者らは、本実施例において初めて、ヒト抗HMG1抗体が、対照と比べ約40%総細胞浸潤を軽減することを示す(図18)。
6.11.1 材料と方法
LPS誘発ALIの誘発: 1日目に50〜100μl中にマウスあたり5〜10μgの用量で、イソフルラン(イリノイ州、ディアフィールド、Baxter Pharmaceuticals社製)麻酔下成熟BALB/cマウスに、LPS (ミズーリ州、セントルイス、Sigma社製; 大腸菌[E.coli]菌株0111:B4)を鼻腔内投与した。HMG1値測定のため、LPS投与の4、8、24、32、および48時間後にマウスをCO2窒息により安楽死させ、タンパク質分析および組織病理学分析のために気管支肺胞洗浄(BAL)および他の試料を採取した。LPS投与24時間後の投与プロトコールのため、抗HMGB1抗体、HMG1 Aボックス-Fc融合体、または対照を、100μl量中10mg/kgの用量で腹腔内(i.p.)投与した。3日目(LPS投与の48時間後)に、マウスをCO2窒息により安楽死させ、分析用に試料(BAL、血液、および肺)を採取した。
BAL試料採取: カテーテルチュービング付きシリンジを用いて、約0.8mlリン酸バッファー(メリーランド州、ロックビル、GIBCO社製、PBS、pH7.2)により、肺を3回フラッシュ洗浄した。採取したBAL試料を4℃、1,200rpmで10分間遠心分離して上清を採取、タンパク質(例えばHMGB1)定量用に-80℃で保存し、ペレット中の細胞を再懸濁させ細胞スライドに移し、固定し、ギムザ染色し、顕微鏡を援用して目視によりBAL細胞充実性を判定した。
6.11.2 結果
鼻腔内LPS投与により誘発した急性肺外傷モデルにおいて、ヒト抗HMG1抗体を調べた。このモデルでは、HMG炎症促進作用の競合的阻害剤として知られるHMG1 Aボックスは、対照と比べ約23%浸潤を軽減するに過ぎなかった。これに対し、G4およびE11は、対照と比べBAL液中に存在する総細胞浸潤物を37〜40%低減することがわかり、抗HMG1抗体が急性肺外傷の治療に有用であることを示した。
6.12 実施例12
多発性硬化症(MS)プラークにおけるHMGB1染色パターン
G16ヒト抗HMGB抗体を用い、ヒト脳組織からのMSプラークにおけるHMGB染色パターンを検討した。脱髄および多数の活性化小グリアをともなうプラークのほか、脱髄を主とし少数の活性化小グリアおよび多数のリンパ球をともなうプラークも検討した。図19Aは、アイソタイプ対照抗体を用いて、脱髄および多数の活性化小グリアをともなうプラークにおける低レベルのバックグラウンド染色を示す。MS患者からのヒト脳組織におけるヒトmAb G16により、小グリア細胞質中にHMGB1を検出した。脱髄および多数の活性化小グリアをともなうプラークは、小グリア細胞質中および脱髄間質中で広範な染色を示す(図19B)。これに対し、脱髄を主とし少数の活性化小グリアおよび多数のリンパ球をともなうプラークは、ヒトmAb G16によって調べると、ほとんどまたはまったく染色を示さなかった(図19C)。以上の結果は、HMGB1の、細胞外炎症モジュレータとしてのきわめて重要な役割を再確認し、HMGB1が、MS炎症過程に関与しているらしいことを示す。
6.13 実施例13
組換えHMGB1とToll様受容体(TLR)リガンドとの間の相乗作用
大腸菌が産生する組換えHMGB1(「rHMG1」または「rHMGB1」と呼ぶ)は、組換えRAGEに結合することができ、新鮮なヒト末梢血単核細胞(PBMC)およびマウス骨髄単核細胞(BMMC)におけるサイトカイン分泌を誘発する。この活性は、HMGB1特異的なモノクローナル抗体(前出参照)により阻害できる。一部のrHMG1調製物がなお微量のエンドトキシンを含有する場合、該調製物の活性は、ポリミキシンBの有無に関わらず変化しない。一方、rHMG1をTriton-X114でさらに抽出(「Tx-HMGB1」と呼ぶ)して残存する疎水性/脂溶性混入物質を除去すると、該タンパク質は、サイトカイン放出刺激能を失うものの、非処理HMGB1と同等のRAGE結合能を保持する。このTx-HMGB1を準最適濃度のTLRリガンドと併用して細胞を処理すると、いずれかの成分単独が誘発するよりもはるか大幅に促進されたサイトカインおよびケモカイン放出が観察される。この促進されたサイトカイン産生を、HMGB1特異的またはTLR特異的モノクローナル抗体により阻害することができる。TLR4活性の欠損した細胞では、Tx-HMGB1およびLPSの相乗作用が見られない。
6.13.1 材料と方法
サイトカイン放出アッセイ: ポリミキシンBの存在または非存在下で、rHMG1によりヒトPBMCを処理した(図20)。最高4μg/mlの濃度のrHMG1およびTx-HMGB1により、ヒトPBMCを処理した(図21)。約16μg/mL (512nM)のTx-HMGB1を、61.5EU/mL (6.15ng/mL、約0.615nM)LPSとともに、4℃で一晩インキュベートした。試料を表示の通りに希釈し、ヒトPBMCに添加した(図22)。すべてのアッセイにおいて、37℃、5% CO2で、細胞を一晩インキュベートし、Bioplexアッセイにより上清をサイトカイン値について分析した。ポリミキシンB存在下では、8U/mLで用いた。
HMG1-RAGE結合: 前述の手順で、RAGE結合アッセイ(図21、左パネル)を実施した。
HMG1媒介TLRシグナル伝達促進の阻害: Tx-HMGB1+LPSに、抗HMG1抗体E11、S16、またはG4、抗TLR4抗体、またはアイソタイプ対照抗体(R3、IgG2a)を併用して、ヒトPBMCを処理し(前述の手順で)、8U/mLポリミキシンB存在下、37℃、5% CO2、一晩インキュベートした。上清をサイトカイン値について分析した(図22、右パネル)。
細胞内サイトカイン測定:ヒトPBMCを、4ug/ml精製rHMG1 (左パネル)、Tx-HMGB1 (中パネル)で刺激するか、または非処理で一晩放置した(右パネル)。フローサイトメトリーにより、IL-6 (上段)またはTNF-a (下段)の細胞内染色を分析した(いずれも図23)。Tx-HMGB1処理細胞は、IL-6およびTNF-aいずれの細胞内染色値も低下させた。
サイトカインmRNA測定: ヒトPBMCを、培地のみ、400EU/mL LPS (40 ng/mL)、4μg/mL Tx-HMGB1、または4μg/mL rHMG1で刺激し、処理後1、4、24時間後に総RNAを抽出した。ヒトサイトカインマルチプレックスPCRキット(カリフォルニア州、サンフランシスコ、Maxim Biotech社製)を用いて、RT-PCRを実施した。
他のTLRリガンド: C3H/HeN (正常マウス)からの骨髄細胞を、各種TLRリガンドのみ、rHMG1 (97pg/mLエンドトキシン)のみ、またはTLRリガンド+4μg/mL rHMG1により刺激した。使用したTLRリガンドは、以下の通りであった: TLR2-0.01μg/mL PAM3-CSK4、TLR3-0.25μg/mLポリ(I:C)、TLR5-0.01μg/mLフラジェリン、TLR7-0.25μg/mL imiquinod (イミキノド)、およびTLR9-0.10μg/mL CpG。一晩インキュベーション後、Bioplexにより上清中の23のサイトカインを測定した(図24A)。
他の試験では、C3H/HeN (正常マウス)またはHeJ (TLR4欠損)マウスからの骨髄細胞を、Tx-HMGB1、LPS、または両者の混合液により、一晩処理した。上清を採取し、Bioplexによりサイトカイン濃度を測定した(図24B)。
6.13.2 結果
大腸菌が産生するrHMG1は、微量のエンドトキシンを含有する。rHMG1中に存在するエンドトキシンの相対的寄与を検討するため、rHMG1を増量させたときのサイトカイン放出(IL-6)刺激活性を、ポリミキシンBの存在下および非存在下で測定した。異なる2人のドナーからのPBMCを用いたところ、rHMG1活性はポリミキシンB 存在の有無によらず変化がなかった(図20)。一方、rHMG1をTriton-X114でさらに抽出(Tx-HMGB1)して残存する疎水性/脂溶性混入物質を除去すると、該タンパク質は、最高4μg/mLの濃度で添加しても(図21、右パネル)サイトカイン放出能を失うものの、非処理HMG1 (図21、左パネル)と同等のRAGE結合能を保持する。さらに、rHMG1処理細胞がIL-6およびTNF-aいずれの細胞内値も顕著に上昇させる(図23、左右パネルを比較)のに対し、Tx-HMGB1処理細胞は、同様の上昇を示さなかった(図23A、左中パネルを比較)。ただし、Tx-HMGB1処理細胞も、TNF-a、IL-1b、およびIL-6 mRNA値を上昇させた(図23、赤矢印)。
上述の通り、Tx-HMGB1は、サイトカイン放出を刺激しないが、準最適濃度のTLR4リガンドLPSをTx-HMGB1に添加し直すと、IL-6、MIP-1b、およびTNF-aを含む複数のサイトカイン放出が大幅に回復された。準最適濃度のLPSのみを添加しても、サイトカイン放出を刺激しなかった。したがって、Tx-HMGB1は、準最適濃度のTLRリガンドLPSのTLRサイトカイン放出誘発能を促進すると考えられる(図22、左パネル)。HMG1またはTLR4に特異的な抗体(E11、S16、およびG4)は、Tx-HMG1が媒介するTLR4シグナル伝達の促進を阻害することが判明した(図22、右パネル)。TLR4活性が欠損したHeJマウスからの骨髄細胞を用いる試験は、LPS刺激に対するTx-HMGB1の相乗作用が、TLR4活性に依存することを示す(図25)。
次いで、以下の準最適濃度のTLRリガンドにrHMGB1 (微量のエンドトキシンを含む)を添加して細胞を処理した: TLR2-PAM3-CSK4、TLR3-ポリ(I:C)、TLR5-フラジェリン、TLR7-imiquinod (イミキノド)、およびTLR9-CpG。いずれかの成分単独が誘発するよりもはるか大幅に促進されたIL-6放出が、各被験リガンドについて観察された(図24、左パネル)。本実施例で用いたアッセイ条件下において、TLRリガンドごとのIL-6放出の相対的促進は、TLR2>TLR9>TLR7>TLR5>TLR3であった。ただし、ここでの「>」は、「〜よりも大幅に促進した」の意味で用いる。同様の反応がIL-12放出に対してもみられ、最も顕著な促進はTLR7およびTLR9リガンドについてみられた(図24、右パネル)。
以上にまとめたデータは、rHMG1が、準最適濃度の炎症促進因子のシグナル伝達、とくに1つまたは複数のTLRリガンドの刺激するTLRシグナル伝達を促進できることを示す。HMG1およびTLR4シグナル伝達の相乗作用活性は、抗HMG1抗体E11、S16、およびG4、または抗TLR抗体のいずれかにより阻害できる。
6.14 実施例14
天然HMGB1とToll様受容体(TLR)リガンドとの間の相乗作用
HMGB1は、クロマチン結合タンパク質である。大腸菌の産生するHMGB1 (rHMG1)中に存在すると考えられる微量の細菌核酸の影響を検討するため、rHMG1のサイトカイン放出刺激(IFN-a)活性を、ベンゾナーゼまたはモック処理で前処理した試料において検討した。rHMGB1のサイトカイン誘発能がベンゾナーゼ処理後に顕著に低下したことは、HMGB1のサイトカイン誘発能が、部分的には細菌核酸含有量に依存することを示唆する(図26)。これに対し、胸腺由来HMGB1は、TNF-a mRNAを含む多数のサイトカインに対応するmRNA 転写産物の誘発に有効(図26、上)ではあるが、TNF-a分泌を誘発できなかった(図27、下)。これは、サイトカイン分泌または細胞内サイトカイン値の誘発には有効でないが、複数のサイトカインに対応するmRNA転写産物の誘発には有効であった、Tx-HMGB1について観察されたことと類似する(実施例13参照)。Tx-HMGB1と同様、胸腺HMGB1がTLRリガンドのうち、TLR9リガンドCpG2216と相乗作用することは、骨髄細胞からのIFN-a、RANTES、IL-12p70およびIL-6分泌の誘発における強力な相乗作用を示す(図29)。TLR9リガンドCpGとの相乗作用は、使用した条件下で、抗HMG1抗体E11、G4により、またより低い程度でRAGE/Fcにより阻害することができた(図30)。TLR4リガンドLPSとの相乗作用も、使用した条件下で、抗HMG1抗体E11、G4、およびRAGE/Fcにより阻害することができた(図31)。初期試験において、RAGEノックアウトマウスでは、HMG1ならびにTLR2、7、および9リガンドが促進するIFN-a放出が低下した(図32A)。後続の試験は、CpG-AおよびHMGB1複合体に対する相乗作用反応が、RAGE欠損マウスから単離した骨髄細胞において低下したことを確認し、CpG-AおよびHMGB1 Bボックス複合体について、同様の結果を示した(図32B)。
6.14.1 材料と方法
マウスと骨髄細胞: 後出の実施例15参照。
TNF-a誘発: mRNA値を検討するため、M-CSFを用いて、マウス骨髄細胞からマクロファージを抽出した。次いで、LPS、大腸菌の産生する組換えHMGB1、またはウシ胸腺から精製したHMGB1により、表示した長さの時間マクロファージを刺激し、TaqmanによりmRNAを測定した。タンパク値を検討するため、チオグリカン(thioglycan)活性化マウス腹膜マクロファージを、ウシ胸腺から精製した10μg/mLのHMGB1、または大腸菌から産生させた組換えHMGB1で24時間刺激した。上清中のサイトカインをELISA法で測定した。
RAGE-Fcへの天然HMG1結合の阻害: ELISAプレートを5μg/mL、0.1mL/ウェルの組換えRAGE/Fcでコートした。各濃度の抗HMGB1 mAbクローンE11またはG4で0.5時間、HMGB1 (0.5μg/mL)をプレインキュベートした。プレートのブロッキング後、抗HMGB1 mAbでプレインキュベートしたHMGB1を、RAGE/Fcでコートしたプレートに添加し、2時間放置した。RAGEと結合したHMGB1を、ビオチン標識した抗HMGB1 pAbで検出した。
HMGB1+TLRリガンド: 単離直後の骨髄細胞を、胸腺HMGB1 (10μg/mL)の存在または非存在下におけるTLRリガンド(TLR3: 5μg/mLのポリIC、TLR4: 2.5ng/mLのLPS、TLR5: 0.25μg/mLのフラジェリン、TLR7: 4μg/mLのポリUまたは5μg/mLのR837、TLR9: 1μMのCpG2216)により24時間刺激した。上清中のサイトカインは、ELISA法により測定した。
HMG1媒介TLRシグナル伝達促進の阻害: 単離直後の骨髄細胞を、各濃度の抗HMGB1 mAb E11または対照ヒトIgG存在下における、TLR9リガンドCpG2216 (0.3μM)および胸腺HMGB1 (10μg/mL)により24時間刺激し、上清中のIFN-aをELISA法で測定した。CpG2216、HMGB1、および非刺激性DNAを、アッセイ用の対照として単独または併用した。
6.14.2 結果
上述の通り、大腸菌から単離したrHMG1は、TLR受容体を介してシグナル伝達を促進する微量のエンドトキシンを含有する。Triton抽出により微量のエンドトキシンを除去すると、rHMG1はサイトカイン放出刺激能を失う。rHMG1はIFN-a放出を誘発することも示されているが、該反応は、ベンゾナーゼでrHMG1を前処理して混入物質となる細菌核酸を除去することで、顕著に弱められた(図26)。以上のデータは、TLR受容体を介するHMG1シグナル伝達が、細菌核酸および/またはLPSを含む、微量のTLR受容体リガンドにより促進されるという結果を支持する。
微量のエンドトキシンまたは細菌核酸を一切含まない、ウシ胸腺から精製されたHMG1の天然調製物 (胸腺HMG1)が、mRNA値およびタンパク質のいずれにおいても経時的にTNF-aを誘発する刺激活性を、マウスマクロファージにおいて検討した。胸腺HMG1処理が、2時間でmRNA値を約30倍に上昇させたのに対し、rHMG1処理は、約43倍に上昇させた(図27、上)。処理の8時間後には、胸腺HMG1のみが、約15倍でmRNA値の上昇を継続して示した。陽性対照として含めたLPSは、2および8時間後のいずれにおいても、それぞれ約66倍および約7倍でTNF-a mRNA値の上昇を誘発した。24時間後に、胸腺HMG1はTNF-a mRNA値を上昇させたが、TNF-aタンパク質値の上昇を誘発させた(約10倍の上昇)のはrHMG1のみであった(図27、下)。
ウシ胸腺から精製した天然HMG1のRAGE-Fc融合体への結合に対する、複数の抗HMG1抗体による阻害能を、ELISA法を用いて検討した。E11が天然HMG1を阻害すると判明する一方、G4は、本実施例で調べた濃度においてはほとんど阻害を示さなかった。
天然HMG1が、TLRリガンドによるシグナル伝達をも促進することを示すため、天然HMG1の存在または非存在下における以下のTLRリガンド: TLR2: PAM3-CSK、TLR3:ポリIC、TLR4:LPS、TLR5:フラジェリン、TLR7: R837、TLR9: CpG2216により骨髄細胞を刺激し、IFN-a、RANTES、IL-6、およびIL-12p70の放出について分析した。天然HMG1は、TLR2、TLR7、およびTLR9リガンドが刺激するIFN-a放出(図29、左上)、TLR3、4、7、および9が刺激するRANTES放出(図29、右上)、TLR2、4、7、および9が刺激するTNF-a放出(図29、左下)、TLR4、7、および9が刺激するIL-12p70放出(図29、右下)を促進した。
さらに単離したマウス骨髄細胞において、胸腺HMG1が誘発するTLR9シグナル伝達の促進に対する阻害能について、E11、G4、RAGE/Fc融合体およびHMG1 Aボックスペプチドを調べた。E11、G4、またはRAGE/Fc融合体のいずれも、TLR9リガンドCpG2216単独が誘発するIFN-a放出を阻害しなかった(図30、右下)が、E11およびRAGE/Fc融合体ともに、CpG2216+胸腺HMG1が誘発するIFN-a放出を阻害した(図29、左下)。本アッセイではHMGB1 Aボックスが阻害を示さなかったのに対し、アッセイ条件の最適化後は、RAGE-Fcおよび該Aボックスともに、HMGB/CpG-Aが媒介し、IFN-α放出により測定されるTLR9シグナル伝達の促進を、95%超阻害することがわかる(図30、右上)。対照反応を並行して行い、骨髄細胞を、胸腺HMG1、刺激性CpG2216、または非刺激性CpGの単独または併用で処理した。刺激性CpGのみがIFN-a放出を誘発し、この放出を胸腺HMG1の存在が促進した(図30、左上)。
HMG1が誘発するTLR4シグナル伝達の促進に対する阻害能についても、E11、G4、およびRAGE/Fc融合体を調べた。E11、G4、RAGE/Fc融合体は、いずれも、LPS+HMG1が誘発するTNF-a放出を阻害することがわかった(図31、左下)。E11は、LPS単独によるシグナル伝達をも阻害することがわかった(図31、右下)。対照反応を並行して行い、HMG1、LPS、またはHMG1およびLPSの併用で細胞を処理した。HMG1の存在がTNF-a放出を促進した(図31、上)。
各種TLRリガンドが刺激するサイトカイン放出に対するHMG1による促進能を、野生型およびRAGEノックアウト(RAGE-/-)マウスにおいて、並行で検討した。初期試験においては、INF-aおよびTNF-aの放出ともに検討した。IFN-a放出に対するHMG1の相乗作用効果は、TLR2、7、および9について顕著に低下した(図32A、上パネル)。以上の観察を拡張するため、本発明者らは、次に、野生型マウスまたはRAGE欠損マウスいずれかからの全骨髄細胞を、CpG-A (ODN2336)単独、またはCpG-A/HMGB1により刺激した。結果は、CpG-A単独への反応が、野生型およびRAGE欠損マウスからの細胞において同等であったのに対し、CpG-A/HMGB1への反応は、RAGE欠損マウスからの骨髄細胞において70%低下した(図32B、左上)。同様に、図32B右上パネルに示すように、CpG-AおよびHMGB1 Bボックス複合体への相乗作用反応も、RAGE欠損骨髄細胞においては消滅した。本発明者らがRAGE欠損細胞において観察したことに反し、CpG-AおよびCpG-A/HMGB1のいずれに対する反応も、MyD88およびTLR9欠損マウスからの骨髄細胞においては、完全に消滅した(図32B、左下)。
以上のデータは、rHMG1について述べた結果を天然HMG1に拡張するものであり、天然HMG1も、1つまたは複数のTLRリガンドが刺激するTLRシグナル伝達を促進できることを示す。さらに、以上のデータは、HMG1がTLRリガンドと直接的に相互作用して複合体を形成すると考えられ、これがTLRリガンドの刺激活性を高めることを示す。LPSシグナル伝達に対するHMG1の相乗作用活性はTLR4を必要とし、TLR2、7、および9リガンドによるIFN-a放出の刺激はRAGEを必要とする。
TLRリガンドは、病原体関連分子パターン(このような分子はPAMPとして知られる)を有する一群の分子に属し、TLRを含む、受容体/分子パターン認識ファミリー(PRMとして知られる)により認識される。HMG1が多数の化合物および分子と関連することが知られるように、HMG1は、他の多数のPAMPの刺激活性を高めると考えられる。さらに、以上のデータは、複数の抗HMG1抗体がHMG1およびTLR9シグナル伝達の相乗作用活性を阻害でき、抗体が異なれば阻害効果も異なることを示す。これは、異なるTLRシグナル伝達経路には、異なる抗体が有用でありうることを示す。
6.15 実施例15
HMGB1はCpGに結合しTLR9への細胞内輸送を容易にする
上述の通り、HMGB1は、TLR9を介してCpG DNAのシグナル伝達を促進しうる、クロマチン結合タンパク質である(図34)。ELISA法に基づくアッセイにより、HMGB1がCpGに直接的に結合できること(図33)、HMGB1/CpG複合体がRAGE/Fc融合体に結合できるのに対しCpG単独では結合できないこと(図35)が判明した。HMGB1/CpGで刺激したTLR9+/RAGE+ HEK293細胞の顕微鏡による精査は、CpG、RAGE、およびTLR9が共局在することを示した(図36)。この結果は、HMGB1/CpGで細胞を処理した場合にのみRAGEおよびTLR9が共沈殿すること、および処理を長くするとTLR9とともに共沈殿するRAGE量が増加すること(図37)、を示した該細胞の免疫沈降法試験によって支持される。これに対し、いま一つのRAGEリガンドS100bは、単独またはCpG DNAとの併用でIFN-α分泌を誘発できなかった(図38)。
6.15.1 材料と方法
材料: CpG-A (ODN2216)配列5'-GGGGGACGATCGTCGGGGGG-3'(配列番号104)およびその対照であるODN配列5'-ggG GGA GCA TGC TGg ggg gc-3'(配列番号105)は、Invitrogen社より購入した。ランダムDNA ODNの配列は、5'-GGT CGT TCC ATT TTA CTC CAC-3'(配列番号106)である。CpG-B (ODN2006)配列は、5'-TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT-3'(配列番号107)である。ビオチンまたは蛍光標識ODN2216は、アラバマ州、ハンツビル、Qperon Biotechnologies社が合成した。マウスRAGE/Fcおよび各種ELISA法キットは、R&D system社から購入した。HMGB1 AボックスおよびBボックスは、New England Peptide社が合成した。Aボックス配列は、以下の通り:PRGKMSSYAFFVQTCREEHKKKHPDASVNFSEFSKKCSERWKTMSAKEKGKFEDMAKADKARYEREMKTYIPPKGET(配列番号108)であり、Bボックス配列は、PKRPPSAFFLFCSEYRPKIKGEHPGLSIGDVAKKLGEMWNNTAADDKQPYEKKAAKLKEKYEKDIAAYR(配列番号109)である。HMGB1は、上述のように、MedImmune社によりウシ胸腺から精製された。ウシ脳S100bは、Calbiochem社から購入した。TLR9 (HAタグありまたはなし)を安定的に発現したHEK293細胞は、Invitrogen社より購入した。形質細胞様樹状細胞単離キットは、Miltenyibiotec社から購入した。ヒトHMGB1に対する、完全ヒトモノクローナル抗体は、ファージディスプレイ法により産生し、HMGB1への結合に関して特異性であることを示した(前出の実施例1参照)。TLR9-Fcタンパク質は、マウスIgG2aのFc部分に連結したヒトTLR9の細胞外ドメインを含む融合タンパク質を安定的に発現するHEK293細胞から精製した。実施例14も参照のこと。
マウスと骨髄細胞: C57BL/6マウスは、Jackson Laboratories社から入手し、MedImmune社の常套的な実験動物施設における特定病原体未感染状態で飼育された。TLR9欠損マウスおよびMyD88欠損マウスならびにそれらの同腹動物対照は、マサチューセッツ大学医学部の実験動物施設で飼育した。発生させたRAGE欠損マウスは、ドイツ、ハイデルベルクから入手し、マサチューセッツ大学医学部で飼育した。新鮮な骨髄細胞を採取し、Miltenyibiotec社の形質細胞様樹状細胞単離キットにより、骨髄細胞からpDCを単離した。pDCをOpti-MEM (Invitrogen社製)に再懸濁させ、2.5×104個/ウェルを24時間刺激し、ELISA法により上清中のサイトカイン値を測定した。
CpG ELISA法: タンパク質またはペプチドをPBSで5μg/mlの濃度まで希釈し、4℃で一晩プレートにコートした。プレートはPBSによる4%ドライミルクでブロッキングした。ビオチン標識CpG-A単独またはHMGB1との併用により、37℃のプレートで1時間インキュベートし、HRP標識ストレプトアビジンで検出した。
HMGB1へのCpG-A結合を表すトリプトファン発光: SPEX Fluoromax-3蛍光分光光度計により、25℃でHMGB-1の蛍光滴定および分光法を行い、ダルベッコリン酸緩衝食塩水(PBS)溶液(カリフォルニア州、カールスバード、Invitrogen社製)による1:10 HMGB-1溶液1.7μMにCpG-A (0.5mM)を段階的に添加し、遮蔽キャップ式二重光路(0.2×1.0cm)石英セル(ニューヨーク州、ジャマイカ、Hellma Cells社製)内での280nm励起(バンド幅3nm)による、347nm (バンド幅8nm)におけるHMGB-1固有トリプトファン発光をモニタリングした。該タンパク質の初期蛍光変化により、HMGB-1と核酸との間における複合体形成をモニタリングした。核酸添加のたびごとに観察された蛍光変化の、最大変化(飽和時)Flimに対する比から、HMGB-1飽和度を推定した。相対蛍光強度を[核酸塩基]/[タンパク質]と対比したグラフから、結合親和性を計算した。外挿した初期勾配の、平衡結合等温線における限界蛍光プラトーとの交点から、閉鎖された結合部位の大きさ(n)を導出した。トリプトファン発光評価のための測定については、Lakowicz, 2000, Photochem. Photobiol. 72, 421-437が詳細に総括している。
免疫沈降法と免疫ブロッティング法: HAタグ付きTLR9を安定的に発現するHEK293細胞に、24時間で全長ヒトRAGEを導入した。次いで、抗HMGB1 mAb (50μg/ml)の存在または非存在下で、HMGB1単独(10μg/ml)またはCpG-A単独(0.3μM)あるいは両者の併用により、1時間細胞を刺激した。細胞ペレットを採取し、1倍濃度PBS、1% Nonidet P-40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1% SDS、および10mg/mlフッ化フェニルメチルスルホニルを含有するRIPAバッファーで溶解した。試料の10%をSDS-PAGEゲルに投入し、試料の残りは、免疫沈降法(IP)によりTLR9を沈殿させるために用いた。略述すると、1μgのHAビーズにより、4℃で一晩細胞溶解物をインキュベートし、ビーズを5回洗浄後、SDS/PAGEを実施した。膜に抗HA (Roche社製)、マウス抗hu RAGE (Calbiochem社製)、および抗HMGB1 (MedImmune社製)をブロットした。
免疫染色法: TLR9を安定的に発現するHEK293細胞をカバースライドガラス上で培養し、48時間で全長ヒトRAGEまたはベクター対照プラスミドを導入した。次いで、細胞をPE標識CpG (0.1μM)およびHMGB1 (10μg/ml)の複合体で80分間刺激し、2%パラホルムアルデヒドで10分間固定し、10%血清でブロッキングし、0.2% Triton-100で透過処理した。ヤギ抗TLR9 (eBiosience社製)およびマウス抗RAGE (Calbiochem社製)を、37℃で1時間、一次抗体として用いた。洗浄後、蛍光色素を抱合した適切な二次抗体を用いて検出した。蛍光顕微鏡下で、画像を観察した。
AlphaScreen (増幅発光近接均質)結合アッセイ: RAGE-Fcタンパク質またはTLR9-Fcキメラタンパク質は、製造元(Perkin Elmer社)の推奨に従い、アクセプタービーズまたはドナービーズ上に、それぞれ直接的に連結した。最終濃度20μg/mlのバッファー(50mM Tris-Cl (pH7.2)、100mM NaCl、0.1% BSA、0.01% Tween 20)単独、またはCpG-AもしくはCpG-B DNAを増量させつつ含有するバッファー中に、ビーズをインキュベートした。25℃の暗所で30分のインキュベーション後、Envision HTマイクロプレートリーダー(Perkin Elmer社製)を用いて、白色384ウェルプレート(Perkin Elmer社製、Proxiplate)内で試料を測定した。データは、標準化なしのAlphascreen単位として示す。
6.15.2 結果
ELISA法により、固定HMGB1の可溶性CpG-Aへの結合を測定した(図33、左上)。さらに、固有トリプトファン発光の摂動測定は、HMGB1が、見かけのKd=70nMでCpG-A DNAと結合することを示した(図33、右上)。クロマチンタンパク質であるHMGB1が、CpG-Aと密接な複合体を形成することは、予想外であった(図33、上パネル)。同様に、HMGB1のAボックスおよびBボックスペプチドも、全長タンパク質と同等の親和性で、CpG DNAに結合した(データは示さない)。CpG-Aと対照的に、CpG-Bは、HMGB1に結合しなかった(データは示さない)。HMGB1拮抗剤として機能することが示されているAボックスHMGB1は、HMGB1のCpG DNAへの結合を阻害した(図33下パネル)。
全骨髄から単離した初代樹状細胞(pDC)上で、これら複合体の相乗作用性免疫刺激効果を確認した。CpG DNA単独(白丸)が、中程度ながらも非刺激細胞と比べると顕著なIFN-αおよびTNF-α産生の増加を誘発した(IFN-α: 0pg/mlに対し32±5 pg/ml、TNF-α: 0pg/mlに対し43±5 pg/ml)(それぞれ、図34A左および右パネル)。HMGB1単独(非表示)は、IFN-αまたはTNF-αいずれの分泌の誘発にも有効でなかった。一方、3μg/mlのHMGB1による共刺激は、IFN-αおよびTNF-αいずれの産生においても顕著な(20倍の)増加を誘発した(それぞれ、IFN-α: 550±25pg/ml、TNF-α: 172±15pg/ml)(黒三角)。HMGB1処理前のCpG-Aによる前処理、またはCpG-A処理前のHMGB1前処理のいずれも、サイトカイン分泌を増加させなかった(データは示さない)。さらに、非刺激性ODN配列(ODN2216)は、HMGB1と予め複合化されていたかどうかを問わず、IFN-α分泌の誘発に有効でなかった(データは示さない)。この相乗作用にHMGB1のどのドメインが必要なのかを調べるために、HMGB1 AボックスまたはBボックスの単独、あるいはAボックス/CpG DNAまたはBボックス/CpG DNA複合体のいずれかで細胞を刺激した。図34Bに示すように、CpG DNA 単独と比べ、Bボックス/CpGはIFN-α産生を増加させたが、Aボックス/CpG DNAは増加させなかった。以上のデータは、HMGB1に免疫刺激活性を賦与するためには、HMGB1のRAGE結合領域を含むと報告されているBボックスドメインが必要であることを示す。上述の通り、MyD88ノックアウトマウスまたはTLR9ノックアウトマウスのいずれかより得られたpDCで実施した試験は、CpG-A単独またはHMGB1/CpG-Aに対する反応が、完全に消滅することを明らかにした(図32B)。
興味深いことに、HMGB1の結合は、CpG-A濃度の上昇により促進される(図35、右パネル)。HMGB1/CpGA複合体は、HMGB1単独による相互作用よりも100〜1000倍低いEC50でRAGEと結合した。HMGB1/CpG-A複合体と対照的に、HMGB1/CpG-B複合体は、RAGEへの結合を促進しなかった(データは示さない)。さらに、CpG単独がRAGEに結合できなかったのに対し、ひとたびHMGB1に結合した後ではCpGがRAGEに結合できた(図35、左パネル)ことは、HMGB1/CpG複合体がRAGEに結合することを示す。したがって、HMGB1はAおよびBいずれのクラスのODNとも結合するが、CpG-AのみがHMGB1の該受容体への結合を高める。
上述の通り、RAGE/Fcが、CpG-Aの誘発するIFN-α産生を阻害しなかった(図30)のに対し、CpG/HMGB1複合体の誘発するIFN-αおよびTNR-α産生を、HMGB1による増幅効果さえ超えて顕著に阻害した(図30および31)ことは、CpG/HMGB1の誘発するTLR9活性化を、RAGEが媒介することを示す。さらに、この点は、TLR9+およびRAGE+のHEK293をCpG/HMGB1複合体で処理した試験によっても支持される。顕微鏡観察により、本発明者らは、CpG、RAGEおよびTLR9の共局在を見出した(図36)。本発明者らは、さらに、免疫沈降法により、TLR9-HAを安定的に発現しヒトRAGEを一過性に導入したHEK293細胞におけるTLR9およびRAGEの会合を示した。TLR9は免疫沈降し、TLR9と会合したRAGEおよびMyD88は、CpG/HMGB1複合体による細胞の刺激後には、抗RAGEおよび抗MyD88抗体によるウェスタンブロット法で検出された(図37、左)が、HMGB1またはCpG-A単独による刺激後には検出されなかった(データは示さない)。さらに、CpG-A単独は、MyD88のTLR9との会合を誘発した(データは示さない)。この相互作用をさらに探索するため、RAGE-FcおよびTLR9-FcをAlphascreenアクセプタービーズおよびドナービーズにそれぞれ共有結合で連結した。CpG DNAの非存在下では、RAGEとTLR9との間にはさほどの相互作用が生じないのに対し、CpG-BではなくCpG-Aは、RAGEとTLR9との間の相互作用を促進した(図37、右)。以上のデータは、HMGB1が細胞外CpGに結合するシャペロンとして機能すること、自らの受容体であるRAGEを介してCpGをそのエンドソーム受容体であるTLR9に送り込むことを示唆する。
RAGEは多価受容体であり、終末糖化産物以外に、例えば、カルグラニュリン/S100ファミリーメンバーを含む炎症促進性サイトカイン様メディエーターといった、多数のリガンドに結合する。他のRAGEリガンドもCpG DNAと相乗作用するかどうかを明らかにするため、本発明者らは、S100bのRAGEへの結合、およびS100b単独またはCpG DNAとの併用のいずれがIFN-αを誘発するのかを、ともに評価した。図38に示すように、S100およびHMGB1がRAGEに結合する程度は同等であったが、RAGEへの結合にもかかわらず、S100bまたはS100b/CpG DNAは、IFN-α分泌を誘発しなかった。以上のデータは、RAGEへの結合だけでは、CpG DNAが媒介するpDCからのサイトカイン分泌を促進するのに十分でないことを示す。
6.16 実施例16
自己反応性B細胞の活性化におけるHMGB1/RAGE
上で詳述したように、HMGB1/CpG-Aは、RAGEとの相互作用により、強力な免疫刺激複合体を形成する。自己反応性B細胞の結合および活性化試験は、DNA免疫複合体による刺激後における自己反応性B細胞の活性化には、HMGB1-RAGE依存相互作用が必要であり、ループス血漿中に存在するDNA複合体によるI型インターフェロン遺伝子誘発の制御においてきわめて重要であることを示した。まとめると、以上のデータは、核内DNA結合分泌タンパク質であるHMGB1が、RAGE依存的機構を介してDNAに結合し、強力な免疫刺激活性を賦与しうるほか、全身性自己免疫疾患の病理発生の原因ともなりうる、新たな機構を提示する。
6.16.1 材料と方法
DNA免疫複合体とAM14細胞結合アッセイ: 使用済み培養上清を15μg/mlのPL2-3 (抗ヌクレオソームIgG2a)と混合することにより、DNA免疫複合体をあらかじめ作成した。AM14FcγRIIB-/-細胞を、氷上で、使用済み培養上清(CML sup.)および15μg/mlのPL2-3 (抗ヌクレオソームIgG2a)の混合液を加えてインキュベートした。該複合体のAM14 B細胞への結合能に対するRAGE-Fcの効果を分析するため、免疫複合体にRAGE-Fc (またはFc対照)を添加して、氷上でさらに2時間インキュベートした。該クロマチン免疫複合体、または抗体単独を、0.5×106個の脾臓精製AM14 FcγRIIB-/-Bに添加した。複合体中のHMGB1は、抗HMGB1ビオチニル化抗体(MedImmune社製)を用いて検出し、PL2-3は抗IgG2a-FITCにより検出した。
AM14増殖アッセイ: 精製AM14 B細胞を、RAGE-Fcまたは対照ヒトIgG1により、37℃で30分間プレインキュベートし、0.1μg/mlのPL2-3により37℃で24時間刺激した。次いで、[3H]チミジンにより6時間細胞をパルスした。
ヒト細胞の培養と単離: 健康ドナーから採血直後のPBMCを、Ficoll-hypaque分画法により調整し、96ウェル平底プレート中の培養培地に2×105 個/0.1mlの密度で培養した。20%のループス血漿を、PBMCとともに24時間インキュベートした。一部のウェルには、ループス血漿とともに、抗HMGB1、RAGE-Fc、またはヒトIgGといった抗体を含めた。24時間後、PBMCを採取し、溶解した。96ウェル全RNA 精製キット(ミネソタ州、ミネアポリス、Gentra社製)により、全RNAを精製した。11μlの該RNAを、SuperScript III RNase H-Reverse Transcriptase (カリフォルニア州、カールスバード、Invitrogen社製)を用いる20μl反応によりcDNAに逆転写した。各試料から得られたcDNAを1:40で希釈し、10μlを、0.4μMのセンスおよびアンチセンスプライマー、ならびに2倍濃度iQ SYBR Green Supermix (カリフォルニア州、ハーキュリーズ、Bio-Rad社製)を用いる25μlのリアルタイムPCR反応により増幅した。GAPDHをハウスキーピング遺伝子対照として用いた。IFITおよびGAPDHのプライマー配列は以下の通りであった:
IFIT1フォワード、5'-CTCCTTGGGTTCGTCTATAAATTG-3'(配列番号111);
IFIT1リバース、5'-AGTCAGCAGCCAGTCTCAG-3'(配列番号112);
GAPDHフォワード、5'-CAACGGATTTGGTCGTATT-3'(配列番号113);
GAPDHリバース、5'-GATGGCAACAATATCCACTT-3'(配列番号114)。
上述の通り、HMGB1/CpG-Aは、RAGEとの相互作用を介して、強力な免疫刺激複合体を形成する。自己反応性B細胞を用いて、生理学的により関与性の高い免疫複合体への細胞応答においてHMGB1およびRAGEが果たす役割を検討した。AM14導入遺伝子がコードする受容体を発現するB細胞は、IgG2aを認識し、DNAアーゼ感受性、TLR9/MyD88依存性でクロマチンまたはDNAと反応するIgG2a mAbに応答して増殖する(Viglianti, G.A., et al., 2003, Immunity 19, 837-847; Marshak-Rothstein, A, et al., 2004, J. Endotoxin Res. 10, 247-251)。IgG2a mAbは、使用済み細胞培養液中に存在する損傷/死滅細胞由来のクロマチンに結合し、使用済み細胞培養液からの上清によるこれらmAbのプレインキュベーションは、AM14 B細胞への結合親和力を高める(図39A、左パネル、それぞれ、PL2-3単独およびMRL使用済み上清によるプレインキュベートを表す、細線および太線を比較せよ)。HMGB1が、AM14 Crib-/-細胞表面に結合する作成済みPL2-3 免疫複合体中にも存在することを明らかにするため、抗HMBG1抗体を用いた(図39A、右パネル、太線)。上清のみでインキュベートしたAM14細胞のバックグラウンド染色を、図39Aの影をつけた曲線で示す。
抗IgG2aまたは抗HMGB1 mAbのいずれかが検出したとおり、RAGE-Fcの添加は、HMGB1含有DNA免疫複合体のB細胞表面への結合を阻害する(図39B、それぞれ左および右パネルの影をつけた曲線)。対照ヒトIgG1抗体の添加は、クロマチン免疫複合体の結合に影響を及ぼさなかった(図39B、両パネルの細線)。以上の結果は、HMGB1がDNA免疫複合体に結合すること、およびHMGB1がクロマチン免疫複合体のAM14 B細胞への結合能を顕著に高めることを示す。試験ごとの蛍光強度中央値を図39Cにプロットする。
DNA免疫複合体(PL-2-3)、TLR2リガンドPAM3CysK4、TLR4リガンドLPS、または、HMGB1拮抗剤として知られるHMGB1 AボックスもしくはRAGE-Fcいずれかの存在下で抗IgM抗体をともなうBCR、以上のいずれかによりAM14細胞を刺激することで、自己反応性B細胞の活性化におけるHMGB1およびRAGEの役割を解明した。RAGE-FcのほかHMGB1 Aボックスも、PL2-3に依存するAM14 B細胞の増殖を、対照Igと比べ顕著に阻害した(図40)が、TLR2、TLR4リガンドの誘発する増殖、またはBCRの媒介するB細胞活性化には影響を及ぼさなかった(図40、および非表示データ)。以上のデータは、HMGB1が、DNAまたはクロマチン反応性B細胞の活性化においてきわめて重要な役割を果たすことを示唆する。
I型IFN誘発可能遺伝子であるIFIT1 mRNAの誘発が評価するとおり、SLE患者からの血清を含有する抗DNA/DNA免疫複合体によるPBMCの刺激は、I型IFN分泌を誘発すると報告されている(Hua, J, et al., 2006, Arthritis Rheum. 54, 1906-1916)。DNA免疫複合体が媒介するI型IFN遺伝子制御におけるHMGB1/RAGEの役割を、ヒトPBMCにおいて検討した。抗ヒトHMGB1抗体クローンG4 mAbまたはRAGE-Fc 存在下における20%ループス血漿で、PBMCを刺激した。図41に示すように、抗ヒトHMGB1 mAbおよびRAGE-Fcは、ループス血漿によるIFIT1 mRNAの誘発を、約75%阻害した。以上のデータは、SLE患者に存在するDNA含有免疫複合体による刺激後の、I型IFN標的遺伝子の誘発におけるHMGB1/RAGEの役割を示す。
まとめると、以上のデータは、HMGB1が産生される壊死または組織外傷の状況において、HMGB1が自己DNAに結合する結果、RAGEとの相互作用を介してTLR9が媒介する自然および獲得免疫反応を促進しうることを示す。以上のデータは、RAGEによるHMGB1/DNA複合体の認識が、自己抗原への耐性喪失において重要な役割を果たしうること、およびそうしたものとして、SLEを含む自己免疫疾患の病理発生の原因になりうることをも示す。
6.17 実施例17
ループス発症に対する抗HMGB1の効果
上述の通り、RAGEによるHMGB1/DNA複合体の認識が、自己免疫疾患の病理発生の原因になると考えられる。in vitroにおいて、抗HMGB1抗体G4が、I型IFN誘発可能遺伝子IFIT1の誘発を阻害することを示した(図41)。NZWBマウスにおける促進ループスモデル(例えば、Mathian et al. 174 (5):2499.(2005)を参照)を用いて、ループス発症に対する抗HMGB1抗体G4の効果をin vivoで検討した。G4投与群では、蛋白尿の発症が遅延した(図42)。以上の条件下では、自己抗体産生またはIFN-α署名遺伝子(IFIT1、MX1、およびCXCL9)に対する影響が見られなかった(データは示さない)。蛋白尿発症の遅延は、抗HMGB1抗体投与が、全身性エリテマトーデス(SLE)および関連する自己免疫疾患の治療において有効でありうることを示唆する。
6.17.1 材料と方法
Adv-IFN-α促進ループスモデル: 群あたり10週齢のNZWBマウス5匹を用いた。1日目に、アデノウイルス(Adenovirus)が発現するマウスIFNα5 (Adv-IFN-α)を、マウスあたりのウイルス粒子数0.3×1010 個で、静脈内注射により投与した。1〜5日目に、HMGB-1または対照抗体を、10mg/kgで腹腔内注射により投与した。血液試料は、毎週採取した。Chemstripにより、蛋白尿検査を毎週行った。3週目のPBMC試料にqPCRを実施して、IFN-α署名遺伝子であるIFIT1、MX1、およびCXCL9の発現濃度を精査した。さらに、ELISA法により、自己抗体(dsDNAおよびSSA/Ro)を定量した。
明確でわかりやすくするため、上述の発明についてある程度詳しく述べてきたが、本発明の真の適用範囲から逸脱することなく、形態および詳細において各種の変更が可能であることは、専門的研究者が本開示を読めば明らかであろう。例えば、上述の技法および装置は、すべて、様々な組合せで用いることができる。各個の公刊物、特許、特許出願、または他の文書を参照によりあらゆる目的に組み入れることがあたかも個別に表示されていると仮定した場合と同程度に、本出願において引用したすべての公刊物、特許、特許出願、または他の文書も参照によりその全体をあらゆる目的に組み入れる。さらに、以下の米国仮特許出願: 2004年10月22日出願の60/620,726、2005年2月10日出願の60/651,512、2005年3月7日出願の60/658,572、2005年3月18日出願の60/662,944、2005年9月6日出願の60/713,712、2005年11月28日出願の60/739,938、2006年2月7日出願の60/765,746、2006年5月12日出願の60/799,639、2006年8月10日出願の60/822,044、2006年8月10日出願の60/822,041; "High Affinity Antibodies Against HMGB1 and Methods of Use Thereof"と題する2006年11月27日出願の国際特許出願;および2005年10月21日出願の米国特許出願11/254,679も、参照によりその全体を組み入れる。
Figure 2009517404
Figure 2009517404
ヒトHMG1およびHMG2のアラインメントを示す図である。Aボックスは実下線で示す。Bボックスは破下線で示す。 本発明によるヒト抗HMG1抗体S2 VLのヌクレオチドおよび対応するアミノ酸配列を示す図である。 本発明によるヒト抗HMG1抗体S6 VHのヌクレオチドおよび対応するアミノ酸配列を示す図である。 本発明によるヒト抗HMG1抗体S6 VLのヌクレオチドおよび対応するアミノ酸配列を示す図である。 本発明によるヒト抗HMG1抗体S6 VHのヌクレオチドおよび対応するアミノ酸配列を示す図である。 本発明によるヒト抗HMG1抗体S16 VLのヌクレオチドおよび対応するアミノ酸配列を示す図である。 本発明によるヒト抗HMG1抗体S16 VHのヌクレオチドおよび対応するアミノ酸配列を示す図である。 本発明によるヒト抗HMG1抗体G4 VLのヌクレオチドおよび対応するアミノ酸配列を示す図である。 本発明によるヒト抗HMG1抗体G4 VHのヌクレオチドおよび対応するアミノ酸配列を示す図である。 本発明によるヒト抗HMG1抗体E11 VLのヌクレオチドおよび対応するアミノ酸配列を示す図である。 本発明によるヒト抗HMG1抗体E11 VHのヌクレオチドおよび対応するアミノ酸配列を示す図である。 G4およびS6の重鎖可変領域において推定されるRNAスプライシング部位を表す図である。 G4の重鎖可変領域をコードする野生型の核酸配列(配列番号20)ならびに1箇所のドナースプライシング部位および2箇所のアクセプタースプライシング部位を除去する3箇所のサイレントヌクレオチド変化を含む変異配列(配列番号110)のアラインメントを示す図である。 ヒト抗HMB1抗体の物理的特性を示す図である。 ヒト抗HMB1抗体の物理的特性を示す図である。 ヒト抗HMB1抗体の物理的特性を示す図である。 ヒト抗HMG1抗体の結合反応速度および特異性を示す図である。 ヒト抗HMG1抗体の結合反応速度および特異性を示す図である。 ヒト抗HMG1抗体の結合反応速度および特異性を示す図である。 ヒト抗HMG1抗体の結合反応速度および特異性を示す図である。 ヒト抗HMG1抗体の結合反応速度および特異性を示す図である。 ヒト抗HMG1抗体の結合反応速度および特異性を示す図である。 ヒト抗HMG1抗体の結合反応速度および特異性を示す図である。 HMG1 Bボックスエピトープマッピング試験についての図である。 HMG1 Bボックスエピトープマッピング試験についての図である。 HMG1 Bボックスエピトープマッピング試験についての図である。 多くのヒト抗HMG1抗体が、ヒトPBMCからのHMG1刺激サイトカイン放出を阻害することを示す図である。 多くのヒト抗HMG1抗体が、ヒトPBMCからのHMG1刺激サイトカイン放出を阻害することを示す図である。 多くのヒト抗HMG1抗体が、ヒトPBMCからのHMG1刺激サイトカイン放出を阻害することを示す図である。 マウスマクロファージ(mMO)において、複数のヒト抗HMG1抗体が、HMG1の刺激するサイトカイン遺伝子発現を阻害することを示す図である。 ヒト抗HMG1抗体のサブセットが、組換えHMG1のRAGEへの結合を阻害することを示す図である。 E11が、TLR4活性化を部分的に阻害することを示す図である。 組換えHMG1のThp-1細胞への結合に対する阻害を示す図である。 敗血症のマウスCLPモデルにおいて、ヒト抗HMG1抗体が保護的であることを示す図である。 敗血症のマウスCLPモデルにおいて、ヒト抗HMG1抗体が保護的であることを示す図である。 敗血症のマウスCLPモデルにおいて、ヒト抗HMG1抗体が保護的であることを示す図である。 敗血症のマウスCLPモデルにおいて、ヒト抗HMG1抗体が保護的であることを示す図である。 複数の炎症性疾患モデルにおいて、HMG1値がアップレギュレートされることを示す図である。 複数の炎症性疾患モデルにおいて、HMG1値がアップレギュレートされることを示す図である。 複数の炎症性疾患モデルにおいて、HMG1値がアップレギュレートされることを示す図である。 複数の炎症性疾患モデルにおいて、HMG1値がアップレギュレートされることを示す図である。 複数の炎症性疾患モデルにおいて、HMG1値がアップレギュレートされることを示す図である。 複数の炎症性疾患モデルにおいて、HMG1値がアップレギュレートされることを示す図である。 複数の炎症性疾患モデルにおいて、HMG1値がアップレギュレートされることを示す図である。 関節炎の受動CIAマウスモデルにおいて、ヒト抗HMG1抗体が保護的であることを示す図である。 関節炎の受動CIAマウスモデルにおいて、ヒト抗HMG1抗体が保護的であることを示す図である。 関節炎の受動CIAマウスモデルにおいて、ヒト抗HMG1抗体が保護的であることを示す図である。 関節炎の受動CIAマウスモデルにおいて、ヒト抗HMG1抗体が保護的であることを示す図である。 関節炎の受動CIAマウスモデルにおいて、ヒト抗HMG1抗体が保護的であることを示す図である。 関節炎の受動CIAマウスモデルにおいて、ヒト抗HMG1抗体が保護的であることを示す図である。 関節炎の能動CIAマウスモデルにおいて、ヒト抗HMG1抗体が保護的であることを示す図である。 関節炎の能動CIAマウスモデルにおいて、ヒト抗HMG1抗体が保護的であることを示す図である。 関節炎の能動CIAマウスモデルにおいて、ヒト抗HMG1抗体が保護的であることを示す図である。 関節炎のAIAラットモデルにおいて、ヒト抗HMG1抗体が保護的であることを示す図である。 関節炎のAIAラットモデルにおいて、ヒト抗HMG1抗体が保護的であることを示す図である。 関節炎のAIAラットモデルにおいて、ヒト抗HMG1抗体が保護的であることを示す図である。 関節炎のAIAラットモデルにおいて、ヒト抗HMG1抗体が保護的であることを示す図である。 関節炎のAIAラットモデルにおいて、ヒト抗HMG1抗体が保護的であることを示す図である。 関節炎のAIAラットモデルにおいて、ヒト抗HMG1抗体が保護的であることを示す図である。 腹膜炎のマウスモデルにおいて、ヒト抗HMG1抗体が保護的であることを示す図である。 急性肺外傷(ALI)のマウスモデルにおいて、ヒト抗HMG1抗体が保護的であることを示す図である。 多発性硬化症(MS)試料のヒト脳組織におけるHMG1染色パターンを示す図である。 多発性硬化症(MS)試料のヒト脳組織におけるHMG1染色パターンを示す図である。 多発性硬化症(MS)試料のヒト脳組織におけるHMG1染色パターンを示す図である。 微量のエンドトキシンを含む組換えHMG1 (rHMG1)が、IL-6サイトカイン放出を、ポリミキシンB (PMxB)の存在下(実線)または非存在下(点線)で同等に刺激したことを示す図である。 Triton抽出HMG1が、サイトカイン放出を刺激しなかったことを示す図である。 HMG1とTLR4リガンドLPSとの相乗作用についての図である。 Triton抽出HMG1が、細胞内サイトカイン産生を刺激しない一方で、サイトカインmRNA値を上昇させうることを示す図である。 Triton抽出HMG1が、細胞内サイトカイン産生を刺激しない一方で、サイトカインmRNA値を上昇させうることを示す図である。 HMG1と他のTLRリガンドとの相乗作用を示す図である。 TLR4活性欠損細胞においてはみられないTx-HMGB1の相乗作用活性を示す図である。 組換えにより産生したHMG1 (rHMG1)が、TLRシグナル伝達を促進する微量の細菌DNAを含有することを示す図である。 TRL4リガンドLPSのほか、rHMG1および天然HMG1もTNF-a mRNAを誘発する一方、rHMG1のみがTNF-aタンパク質放出を誘発することを示す図である。 ヒト抗HMG1抗体E11が、天然(胸腺)HMG1のRAGEへの結合を阻害することを示す図である。 天然HMG1が、TLR2、4、7、および9を介してシグナル伝達を促進することを示す図である。 抗HMG1抗体E11またはG4、あるいはヒトアイソタイプ対照が、CpG単独で処理したマウス骨髄細胞からのIFN-α放出を阻害しない(左下パネル)のに対し、CpGに胸腺HMG1を併用して処理した細胞からのIFN-α放出は、抗HMG1抗体E11が阻害するが、抗HMG1抗体G4またはアイソタイプ対照抗体は阻害しなかった(右下パネル)ことを示す図である。 HMGB1が、LPSの刺激するTNF-a放出を促進すること(上パネル)、E11、G4、およびRage/Fcが、LPS+HMG1の誘発するTNF-a放出を阻害すること(右下)、E11は、LPS単独によるシグナル伝達も阻害すること(左下)、を示す図である。 HMGB1によるTLRシグナル伝達の促進が、RAGEノックアウト細胞においては変化することを示す図である。 HMGB1によるTLRシグナル伝達の促進が、RAGEノックアウト細胞においては変化することを示す図である。 HMGB1/CpG/RAGEの結合を示す図である。 HMGB1/CpG複合体が、免疫反応を相乗作用的に刺激することを示す図である。 HMGB1/CpG複合体が、免疫反応を相乗作用的に刺激することを示す図である。 HMGB1/CpG複合体がRAGEに結合することを示す図である。 CPG-A (左上)、RAGE (中上および左下)、TLR9および核(中下)の染色、ならびに、右端では、安定的にTLR9を発現し、RAGEをHMGB1およびCpG-Aで同時に刺激して導入したHEK293細胞において、TLR9およびRAGE (右下)と同様、CpG-AおよびRAGE (右上)も共局在化することを示す図である。 HMGB1/CpG複合体が、RAGEおよびTLR9を動員することを示す図である。 HMGB1単独(黒丸)、HMGB1+CpG DNA (黒四角)、S100単独(白丸)、S100+CpG DNA (白四角)による、IFN誘発を示す図である。 HMGB1が、DNA IC中に存在し、RAGEを介してRF+B細胞に結合することを示す図である。 HMGB1が、DNA IC中に存在し、RAGEを介してRF+B細胞に結合することを示す図である。 HMGB1が、DNA IC中に存在し、RAGEを介してRF+B細胞に結合することを示す図である。 RAGE-FcおよびAボックス拮抗剤が、DNA IC複合体の誘発するB細胞活性化を阻害することを示す図である。 培地のみ(M)または抗二重らせんDNA免疫複合体を含有する20%ループス血清(黒)でPBMCを刺激し、I型インターフェロン遺伝子誘発の評価として、定量PCRによりIFIT mRNAを測定した結果を示す図である。 adv-IFN-α促進ループスモデルにおいて、抗HMGB1抗体G4(三角)で処理したマウスが、対照抗体(丸)で処理したマウスと比べ、蛋白尿の発症が遅延することを示す図である。

Claims (38)

  1. 有効量のHMGB1アンタゴニストを投与するステップを含む、DNA免疫複合体の存在を特徴とする状態を治療するための方法。
  2. 状態が、全身性エリテマトーデス、炎症性ループス腎炎乾癬、およびシェーグレン病からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  3. HMGB1アンタゴニストが、HMG1とRAGEの相互作用を阻害する、請求項1または2に記載の方法。
  4. HMGB1アンタゴニストが、HMGB1と少なくとも1種のPAMPとの相互作用を阻害する、請求項1または2に記載の方法。
  5. HMGB1アンタゴニストが、HMG1:PAMP複合体とパターン認識受容体またはRAGEとの相互作用を阻害する、請求項1または2に記載の方法。
  6. HMGB1アンタゴニストが、HMG1:PAMP複合体とTLRの相互作用を阻害する、請求項1または2に記載の方法。
  7. HMGB1アンタゴニストがRAGE分子のTLRとの細胞内局在化を阻害する、請求項1または2に記載の方法。
  8. HMGB1アンタゴニストが、HMG1:PAMP複合体のTLRへの細胞内局在化を阻害する、請求項1または2に記載の方法。
  9. HMGB1アンタゴニストが、HMG1:PAMP複合体を介したRAGEポリペプチドのTLRへの細胞内結合を阻害する、請求項1または2に記載の方法。
  10. TLRが、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、およびTLR9からなる群から選択される、請求項6、7、8、または9に記載の方法。
  11. HMGB1アンタゴニストが、1種または複数種の炎症誘発性因子によって刺激されるシグナル伝達のHMGB1を介した増強を阻害する、請求項1または2に記載の方法。
  12. 炎症誘発性因子がTLRリガンドである、請求項11に記載の方法。
  13. HMGB1アンタゴニストが、1種または複数種のTLRリガンドによって刺激されるTLRシグナル伝達のHMGB1を介した増強を阻害する、請求項1または2に記載の方法。
  14. HMGB1アンタゴニストが、抗体、siRNA、アプタマー、化学化合物、sRAGE、免疫賦活物質、免疫阻害物質、および抗増殖性物質からなる群から選択される、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
  15. HMGB1アンタゴニストが、ヒトHMGB1またはその抗原性断片に特異的に結合する単離された抗体である、請求項14に記載の方法。
  16. 前記抗体が、ヒトHMGB1 Bボックスを含むポリペプチドに特異的に結合する、請求項15に記載の方法。
  17. 前記抗体が、ヒトHMGB1 Bボックスからなるポリペプチドに特異的に結合する、請求項15に記載の方法。
  18. ヒトHMGB1 Bボックスが、配列番号4、配列番号28、および配列番号29からなる群から選択される、請求項16または17に記載の方法。
  19. 前記抗体が、ヒトHMGB1 Aボックスを含むポリペプチドに特異的に結合する、請求項15に記載の方法。
  20. 前記抗体が、ヒトHMGB1 Aボックスからなるポリペプチドに特異的に結合する、請求項15に記載の方法。
  21. 前記Aボックスが配列番号3である、請求項19または20に記載の方法。
  22. 前記抗体が、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖Fv(scFv)、Fab断片、F(ab')断片、細胞内発現抗体、および合成抗体からなる群から選択される、請求項15、16、17、18、19、20、または21に記載の方法。
  23. 前記抗体が、ヒト抗体またはその抗原結合性断片である、請求項15、16、17、18、19、20、21、または22に記載の方法。
  24. HMGB1アンタゴニストがsRAGEである、請求項14に記載の方法。
  25. 有効量のRAGEアンタゴニストを投与するステップを含む、DNA免疫複合体の存在を特徴とする状態を治療するための方法。
  26. 前記状態が、全身性エリテマトーデス、炎症性ループス腎炎乾癬、およびシェーグレン病からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
  27. RAGEアンタゴニストが、HMG1とRAGEの相互作用を阻害する、請求項25または26に記載の方法。
  28. RAGEアンタゴニストが、HMG1:PAMP複合体とRAGEの相互作用を阻害する、請求項25または26に記載の方法。
  29. RAGEアンタゴニストがRAGE分子のTLRとの細胞内局在化を阻害する、請求項25または26に記載の方法。
  30. RAGEアンタゴニストが、HMG1:PAMP複合体を介したRAGEポリペプチドのTLRへの細胞内結合を阻害する、請求項25または26に記載の方法。
  31. TLRが、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、およびTLR9からなる群から選択される、請求項29または30に記載の方法。
  32. RAGEアンタゴニストが、1種または複数種の炎症誘発性因子によって刺激されるRAGEシグナル伝達のHMGB1を介した増強を阻害する、請求項25または26に記載の方法。
  33. 炎症誘発性因子がTLRリガンドである、請求項32に記載の方法。
  34. RAGEアンタゴニストが、抗体、siRNA、アプタマー、化学化合物、sRAGE、免疫賦活物質、免疫阻害物質、および抗増殖性物質からなる群から選択される、請求項26、27、28、29、30、31、32、または33に記載の方法。
  35. RAGEアンタゴニストが、ヒトRAGEポリペプチドに特異的に結合する抗体である、請求項34に記載の方法。
  36. 前記抗体が、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖Fv(scFv)、Fab断片、F(ab')断片、細胞内発現抗体、および合成抗体からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
  37. 前記抗体が、ヒト抗体またはその抗原結合性断片である、請求項35または36に記載の方法。
  38. RAGEアンタゴニストが可溶性RAGEである、請求項34に記載の方法。
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