JP2009298905A - クローラ用ゴム組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 従来のブタジエンゴム(BR)やハイシスブタジエンゴム(ハイシスBR)を用いた場合よりも耐カット性に優れ、さらには耐亀裂成長性、耐摩耗性及び耐オゾン劣化性も向上させたゴムクローラ又はそのラグ部ゴムを提供すること。
【解決手段】 分子量分布(Mw/Mn)が1.6〜3.5であり、且つ、フーリエ変換赤外分光法による測定において、シス−1,4結合含量が98%以上及びビニル結合含量が0.3%以下となるブタジエン系重合体5〜40質量%並びに(B)ジエン系ゴム95〜60質量%を含有する、クローラ用ゴム組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、クローラ用ゴム組成物、ラグ部ゴム及びゴムクローラに関する。本発明のゴムクローラは、農業機械用、建設機械用又は土木作業機械用などとして用いられる。
ゴムクローラは、主として農業機械、建設機械及び土木作業機械などの走行部に用いられ、接地面側(ラグ)ゴムに要求される性能は、耐摩耗性、耐カット性、耐亀裂成長性及び耐オゾン劣化性であり、これらをバランス良く有していることが、ゴムクローラ、特にラグ部ゴムの長期寿命につながる。
従来のゴムクローラとしては、SBRにNR又はハイスチレンポリマー(HSR)を含有させたゴム組成物から得られるゴムクローラが挙げられる(特許文献1参照)。
また、天然ゴム(NR)にスチレンブタジエンゴム(SBR)又はブタジエンゴム(BR)を含有させたゴム組成物から得られるものや、さらに、NRにハイシスブタジエンゴム(ハイシスBR、シス−1,4結合含量90%以上)を含有させたゴム組成物から得られるものも知られている(特許文献2及び3参照)。このように、ゴムクローラとしては、通常、NR/SBR系やNR/BR(又はハイシスBR)系のゴム組成物が用いられており、それぞれの配合比を変更することで、好ましい性能を得ようと努めているのが現状である。
特開平08−208890号公報 特開平11−139359号公報 特開2001−026671号公報
しかしながら、特許文献1に記載のゴム組成物は、SBRの存在による低い耐亀裂成長性が問題となる。特許文献2や3に記載のゴム組成物を用いた場合、前記同様、SBRを含有させたことによる耐亀裂成長性の低下が問題であり、一方、SBRを使用せずにBRを含有させた場合では耐亀裂成長性の問題が無くなるものの、耐カット性の大幅な低下が新たに問題となり、いずれにおいてもさらなる改良の余地がある。また、特許文献3には1,3−ブタジエン単量体単位中のシス−1,4結合含量は90%以上と記載されたハイシスBRを使用した例が開示されているが、実施例で使用している該ハイシスBRを用いても、耐カット性の大幅低下の問題は解決せず、さらなる改良の余地がある。
BRやハイシスBRをゴム組成物に含有させた場合、耐摩耗性及び耐亀裂成長性が良好となることが知られており、それゆえ、これらのBRが好ましく用いられているのだが、上記したように、これらBRの添加量が増加するに従って耐カット性が大幅に低下していくため、耐亀裂成長性等の性能向上のための多量添加により、逆にゴムクローラの寿命を低下させてしまうという根本的な問題があり、この問題を解決することが強く望まれている。
本発明者等は上記問題に着目し、クローラ用ゴム組成物について鋭意研究を重ねた結果、(A)分子量分布が1.6〜3.5であり、且つフーリエ変換赤外分光法による測定において、1,3−ブタジエン単量体単位中のシス−1,4結合含量が98%以上及びビニル結合含量が0.3%以下となるブタジエン系重合体及び(B)ジエン系ゴムを一定配合で含有するクローラ用ゴム組成物であれば、耐摩耗性、耐亀裂成長性、耐オゾン劣化性に優れるのみならず、耐カット性にも優れることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
[1](A)分子量分布(Mw/Mn)が1.6〜3.5であり、且つ、フーリエ変換赤外分光法による測定において、1,3−ブタジエン単量体単位中のシス−1,4結合含量が98%以上及びビニル結合含量が0.3%以下となるブタジエン系重合体5〜40質量%並びに(B)ジエン系ゴム95〜60質量%を含有する、クローラ用ゴム組成物、
[2]1,3−ブタジエン単量体単位中のシス−1,4結合含量とビニル結合含量とが、下記式:
ビニル結合含量(%)≦0.25×(「シス−1,4結合含量(%)」−97)
の関係を満たす、上記[1]に記載のクローラ用ゴム組成物、
[3]分子量分布(Mw/Mn)が1.6〜2.7である、上記[1]又は[2]に記載のクローラ用ゴム組成物、
[4]ブタジエン系重合体が、1,3−ブタジエン単量体80〜100質量%と1,3−ブタジエンと共重合可能なその他の単量体20〜0質量%とからなる、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のクローラ用ゴム組成物、
[5]ブタジエン系重合体が1,3−ブタジエン単量体のみからなる、上記[4]に記載のクローラ用ゴム組成物、
[6]数平均分子量(Mn)が100,000〜500,000である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載のクローラ用ゴム組成物、
[7]数平均分子量(Mn)が150,000〜300,000である、上記[6]に記載のクローラ用ゴム組成物、
[8]ジエン系ゴムが、天然ゴム、イソプレンゴム及びスチレンブタジエンゴムからなる群から選ばれる少なくとも一種である、上記[1]〜[7]のいずれかに記載のクローラ用ゴム組成物、
[9]ブタジエン系重合体とジエン系ゴムの含有量の質量比が20〜30:80〜70である、上記[1]〜[8]のいずれかに記載のクローラ用ゴム組成物、
[10]上記[1]〜[9]のいずれかに記載のクローラ用ゴム組成物から得られるラグ部ゴム、
[11]上記[10]に記載のラグ部ゴムを備えたゴムクローラ、
[12]上記[1]〜[9]のいずれかに記載のクローラ用ゴム組成物から得られるゴムクローラ、
[13]農業機械用、建設機械用又は土木作業機械用である、上記[11]又は[12]に記載のゴムクローラ、
を提供するものである。
本発明によれば、ゴム組成物に超ハイシスBRを含有させることにより、従来のBRやハイシスBRを用いた場合よりも耐カット性に優れ、さらには耐亀裂成長性、耐摩耗性及び耐オゾン劣化性も向上させたゴムクローラ又はそのラグ部ゴムを提供することができる。このようなゴムクローラ又はラグ部ゴムを備えたゴムクローラは、農業機械、建設機械又は土木作業機械のいずれに用いられても、長期間の使用に耐えることが可能である。
本発明のクローラ用ゴム組成物は、(A)分子量分布が1.6〜3.5であり、且つ、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)による測定において、1,3−ブタジエン単量体単位中のシス−1,4結合含量が98%以上及びビニル結合含量が0.3%以下となるブタジエン系重合体(超ハイシスBR)5〜40質量%並びに(B)ジエン系ゴム95〜60質量%を含有する。
まず、成分(A)の超ハイシスBRについて説明する。
超ハイシスBRは、1,3−ブタジエン単量体80〜100質量%と1,3−ブタジエンと共重合可能なその他の単量体20〜0質量%からなることが好ましく、1,3−ブタジエン単量体100質量%からなることがより好ましい。
かかる1,3−ブタジエンと共重合可能なその他の単量体としては、例えば2−メチル−1、3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどの炭素数5〜8の共役ジエン単量体;スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレンなどの芳香族ビニル単量体が挙げられる。
超ハイシスBRの分子量分布(Mw/Mn)は1.6〜3.5であり、1.6〜2.7であることが好ましく、1.9〜2.7であることがより好ましく、2.2〜2.4であることがさらに好ましい。なお、本明細書における、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の値である。ブタジエン系重合体の分子量分布が1.6未満であると、クローラ用ゴム組成物をロール機により混練りする際にバギング(ロール間隙を通過したゴムバンドが浮き上がる現象)が発生するため、混練時における作業性が悪化し、ゴムクローラの物性を充分に向上させることができない。一方、3.5を超えると、ヒステリシスロス等によるゴムクローラの物性低下を招く。
数平均分子量(Mn)に特に制限は無いが、100,000〜500,000であることが好ましく、150,000〜300,000であることがより好ましい。かかる範囲であれば、ゴムクローラの弾性率が安定し、ヒステリシスロスが増加することもなく、耐摩耗性の低下も生じないため好ましく、さらにクローラ用ゴム組成物の混練時における作業性も低下せず、ゴムクローラの物性を充分に向上させることができるため好ましい。
超ハイシスBRは、上記の通り、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)による測定において、1,3−ブタジエン単量体単位中のシス−1,4結合含量が98%以上及びビニル結合含量が0.3%以下となるブタジエン系重合体であり、1,3−ブタジエン単量体単位中のシス−1,4結合含量が98.2%以上且つビニル結合含量が0.2%以下であることが好ましく、シス−1,4結合含量が98.35%以上且つビニル結合含量が0.15%以下であることがより好ましい。FT−IRによる測定において、シス−1,4結合含量が98%未満であるか、又はビニル結合含量が0.3%を超えていると、伸長結晶性が不充分であり、ゴムクローラの耐摩耗性、耐亀裂成長性、耐オゾン劣化性及び耐カット性を向上させる効果が小さい。なお、FT−IRによるミクロ構造の測定方法は、公知の方法に従えばよく、例えば特開2005−15590号公報を参照できる。
また、超ハイシスBRは、1,3−ブタジエン単量体単位中のシス−1,4結合含量とビニル結合含量とが、下記式:
ビニル結合含量(%)≦0.25×(「シス−1,4結合含量(%)」−97)
を満たすことが好ましい。この関係を満たしていると、超ハイシスBRの伸長結晶性がさらに向上するため、ゴムクローラの耐摩耗性、耐亀裂成長性、耐オゾン劣化性及び耐カット性がさらに良好なものとなる。
該超ハイシスBRは、従来のブタジエン系重合体に比べ、1,3−ブタジエン単量体単位中のシス−1,4結合含量が高く且つビニル結合含量が低い。例えば、ハイシスBRとして市販されている「BR01」(商品名、JSR株式会社製)は、FT−IRによる測定において、シス−1,4結合含量が96.29%であり、ビニル結合含量が2.20%である。また、同じくハイシスBRとして市販されている「BR150L」(商品名、宇部興産株式会社製)は、FT−IRによる測定において、シス−1,4結合含量が97.18%であり、ビニル結合含量が1.63%である。超ハイシスBRのシス−1,4結合含量とは数%の差であり、ビニル結合含量も数%の差であるが、本発明は、この差がゴムの伸長結晶性に大きな差をもたらし、ゴムクローラの性能に大きく影響を与えることを見出したものである。
このような超ハイシスBRの製造方法は、公知の方法を利用できる(特開2005−15590号公報参照)。例えば、(1)周期律表の原子番号57〜71の希土類元素を含有する化合物又は該化合物とルイス塩基との反応物、(2)有機アルミニウム化合物及び(3)ルイス酸、金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物、及び活性ハロゲンを含む有機化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種のハロゲン化合物、並びに必要に応じて(4)アルミノキサンからなる触媒の存在下に、1,3−ブタジエン及び必要に応じて該1,3−ブタジエンと共重合可能なその他の単量体を25℃以下で重合させることにより得られる。
次に、成分(B)のジエン系ゴムについて説明する。
成分(B)のジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、(ハイシス)ブタジエンゴム[(ハイシス)BR]、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレン−プロピレンゴム(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、クロロプレンゴム又はこれらの混合物などが挙げられる。(ハイシス)BRとは、FT−IRによる測定において、1,3−ブタジエン単量体単位中のシス−1,4結合含量が90%未満のブタジエンゴム又はシス−1,4結合含量が90%以上98%未満のハイシスブタジエンゴムのことである。ゴムクローラの性能の観点から、成分(B)としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、又はこれらの混合物であることが好ましい。
該成分(B)は、成分(A):成分(B)=5〜40:95〜60(質量比)となるように含有させ、成分(A):成分(B)=10〜35:90〜65(質量比)であることが好ましく、成分(A):成分(B)=20〜30:80〜70(質量比)であることがより好ましい。成分(B)が上限値を超える(成分(A)が下限値未満である)と、ゴムクローラの耐摩耗性、耐亀裂成長性、耐オゾン劣化性及び耐カット性を向上させる効果が小さくなり、一方、成分(B)が下限値未満である(成分(A)が上限値を超える)と、耐カット性が低下する傾向にあり、ゴムクローラの寿命が低下する。
本発明のクローラ用ゴム組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、さらにその他の添加剤を含有させてもよい。かかる添加剤としては、通常、ゴムに含有されるものであれば特に制限は無いが、例えば、カーボンブラック、プロセスオイル、樹脂、ステアリン酸などの脂肪酸、酸化亜鉛、老化防止剤、ワックス、硫黄、加硫促進剤、加硫遅延剤(スコーチ防止剤)、シリカ、シリカカップリング剤、しゃく解剤、オゾン亀裂防止剤、抗酸化剤、クレー、炭酸カルシウムなどが挙げられる。これらは、市販品を使用できる。添加剤の添加量は、本発明の目的が損なわれない範囲で当業者が適宜選択できる。
カーボンブラックとしては、標準品種であるSAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF(以上ゴム用ファーネス)、MTカーボンブラック(熱分解カーボン)などを挙げることができる。カーボンブラックを使用する場合、その使用量は、成分(A)及び(B)の合計100質量部に対して、20〜90質量部であることが好ましく、40〜80質量部であることがより好ましい。
プロセスオイルとしては、例えばパラフィン系、ナフテン系、アロマチック系のプロセスオイルを挙げることができる。
樹脂としては、ポリエステルポリオール樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、ロジン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、脂肪・脂環族C5系石油樹脂、C5/C9系石油樹脂、C9系石油樹脂、テルペン樹脂、並びにこれらの共重合体及び変性品などを挙げることができる。樹脂を使用する場合、その使用量は、成分(A)及び(B)の合計100質量部に対して、0.5〜20質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましい。
脂肪酸を使用する場合、その使用量は、成分(A)及び(B)の合計100質量部に対し、0.5〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。
酸化亜鉛を使用する場合、その使用量は、成分(A)及び(B)の合計100質量部に対し、0.5〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。
老化防止剤としては、公知の老化防止剤を選択し用いることができる。例えば、N−フェニル−N'−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン(6C)やN−フェニル−N'−イソプロピル−p−フェニレンジアミン(3C)、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物(RD)などが挙げられる。老化防止剤を使用する場合、その使用量は、成分(A)及び(B)の合計100質量部に対して0.5〜10質量部が好ましい。
ワックスを使用する場合、その使用量は、成分(A)及び(B)の合計100質量部に対し、0.5〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。
硫黄を使用する場合、その使用量は、成分(A)及び(B)の合計100質量部に対し、硫黄分として0.1〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。
加硫促進剤は、特に限定されるものではないが、例えば、M(2−メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)、CZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)等のチアゾール系、あるいはDPG(ジフェニルグアニジン)等のグアニジン系の加硫促進剤等を挙げることができる。加硫促進剤を使用する場合、その使用量は、成分(A)及び(B)の合計100質量部に対し、0.1〜5質量部が好ましく、さらに好ましくは0.2〜3質量部である。
このように、本発明のクローラ用ゴム組成物は、成分(A)及び(B)と、適宜必要な添加剤を混練することにより得られる。混練方法は、当業者が通常実施する方法に従えばよく、例えば、硫黄、加硫促進剤、酸化亜鉛、加硫遅延剤以外の全成分を、バンバリーミキサー、ブラベンダー、ニーダー、高剪断型ミキサーなどを用いて100〜200℃で混練(A練り)した後、硫黄、加硫促進剤、酸化亜鉛、加硫遅延剤を添加(B練り)して混練ロール機などで60〜130℃で混練すればよい。得られるクローラ用ゴム組成物を加熱金型によって成形することにより、ゴムクローラやゴムクローラのラグ部ゴムを得ることができる。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、各分析は以下の通りに行なった。
<FT−IRによるミクロ構造の分析法>
同一セルの二硫化炭素をブランクとして、5mg/mLの濃度に調製したブタジエン系重合体の二硫化炭素溶液のFT−IR透過率スペクトルを測定し、該スペクトルの1130cm-1付近の山ピーク値をa、967cm-1付近の谷ピーク値をb、911cm-1付近の谷ピーク値をc、736cm-1付近の谷ピーク値をdとしたとき、下記行列式
Figure 2009298905
から導かれるe、f、gの値を用い、下記式:
(シス−1,4結合含量)=e/(e+f+g)×100 (%)
(トランス−1,4結合含量)=f/(e+f+g)×100 (%)
(ビニル結合含量)=g/(e+f+g)×100 (%)
に従って1,3−ブタジエン単量体単位中のシス−1,4結合含量及びビニル結合含量を求める。なお、上記スペクトルの1130cm-1付近の山ピーク値aはベースラインを、967cm-1付近の谷ピーク値bはトランス−1,4結合を、911cm-1付近の谷ピーク値cはビニル結合を、736cm-1付近の谷ピーク値dはシス−1,4結合を示す。
<数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)の測定>
GPC[東ソー株式会社製、HLC−8020]により検出器として屈折計を用いて測定し、単分散ポリスチレンを標準としたポリスチレン換算で示した。なお、カラムはGMHXL[東ソー株式会社製]で、溶離液はテトラヒドロフランである。
<製造例1>超ハイシスBRの製造
−触媒の調製−
乾燥及び窒素置換された内容積100mLのゴム栓付きガラスビンに、順次、ブタジエンのシクロヘキサン溶液(ブタジエン濃度:15.2質量%)7.11g、ネオジムネオデカノエートのシクロヘキサン溶液(ネオジム濃度:0.56M)0.59mL、PMAO(商品名、ポリメチルアルミノキサン、東ソーファインケム株式会社製)のトルエン溶液(アルミニウム濃度:3.23M)10.32mL、水素化ジイソブチルアルミニウム[関東化学株式会社製]のヘキサン溶液(0.90mol/L)7.77mLを投入し、室温で2分間熟成した後、塩化ジエチルアルミニウム[関東化学株式会社製]のヘキサン溶液(0.95mol/L)1.45mLを加え、室温で時折撹拌しながら15分間熟成した。こうして得られた触媒溶液中のネオジム濃度は、0.011mol/Lであった。
−超ハイシスBRの製造−
乾燥及び窒素置換された内容積1Lのゴム栓付きガラスビンに、乾燥精製された1,3−ブタジエンのシクロヘキサン溶液及び乾燥シクロヘキサンをそれぞれ仕込み、ブタジエンのシクロヘキサン溶液(ブタジエン濃度:5.0質量%)400gが仕込まれた状態とし、10℃の水浴中で十分に冷却した。次に、上記のようにして調製した触媒溶液1.56mL(ネオジム換算で0.017mmol)を加え、10℃の水浴中で3.5時間重合を行った。引き続き、老化防止剤として、2,2'−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)のイソプロパノール溶液(濃度;5質量%)2mLを加えて反応を停止させ、更に、微量の2,2'−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)を含むイソプロパノール溶液中で再沈澱させた後、常法にて乾燥して、収率約100%で超ハイシスBR(数平均分子量205,000、分子量分布2.3)を得た。FT−IRによりミクロ構造を分析したところ、1,3−ブタジエン単量体単位中のシス−1,4結合含量は98.43%であり、ビニル結合含量は0.13%であった。また、0.25×(「シス−1,4結合含量」−97)=0.48であった。
<実施例1〜10及び比較例1〜8>
表1及び表2に示した配合(単位:phr)で、硫黄及び加硫促進剤を除く各成分をバンバリーミキサーにて150℃で混練(A練り)し、引き続き硫黄及び加硫促進剤を添加して混練(B練り)することによりクローラ用ゴム組成物を得、該ゴム組成物を金型温度150℃で成形することによりゴムクローラを得た。得られたゴムクローラの耐亀裂成長性、耐摩耗性、耐カット性及び耐オゾン劣化性を以下のようにして測定し、結果を表1及び表2に示した。
[耐亀裂成長性]
図1に示す様に、「幅100mm×長さ30mm×厚み2mm」のシートを、長さ10mmを残した形で全幅チャッキングし、長さ10mm部分に室温で0〜100%の歪みで繰り返し疲労を与え、予め、片端に入れた20mmの亀裂の成長速度(da/dN:繰り返し疲労回数に対する亀裂成長長さ)を測定した。各歪みでの値を求め、その平均値を用い、比較例1を100として指数表示した。指数値が大きいほど、耐亀裂成長性に優れることを示す。
[耐磨耗性]
ランボーン型磨耗試験機を使用して室温で磨耗量を測定し、該磨耗量の逆数を算出し、比較例1を100として指数表示した。指数値が大きいほど、耐磨耗性に優れることを示す。
[耐カット性]
縦60mm×横70mm×高さ30mmのゴムブロックを加硫し、サンプルを作成する。室温で、該サンプルから80cm離した高さから質量15kgの錘を付けた角度60度の鋭利な刃を落下させ、生じた亀裂深さ(mm)を測定し、逆数を算出し、比較例4を100として指数表示した。指数値が大きいほど、耐カット性に優れることを示す。
[耐オゾン劣化性]
JIS K6301(1975年)[JIS K6259(2004年)]に準拠して、120時間オゾンに暴露した後のゴム組成物の表面を観察し、その耐オゾン劣化性を評価した。表中、A〜Cはキズの発生数の多さを示し、A<B<Cの関係にある。また、A〜Cの右側に記載された数値はキズの大きさを示し、1<2<3の関係にある。具体的には、A−1は肉眼で確認できないが、10倍の拡大鏡では確認できる亀裂が少数存在することを示し、A−2は、肉眼で確認できる亀裂が少数存在することを示し、B−2は肉眼で確認できる亀裂が多数存在することを示し、B−3は深くて比較的大きい亀裂(1mm未満)が多数存在することを示し、C−3は、深くて比較的大きい亀裂(1mm未満)が無数に存在することを示す。また、「No Crack」は、目に見える及び10倍の拡大鏡で見えるキズが全く発生しなかったことを示す。
Figure 2009298905
Figure 2009298905
*1:天然ゴム、グレード;RSS−4号
*2:TAIPOL1500E(商品名)、スチレンブタジエンゴム、TSRC社製
*3:BR01(商品名)、ハイシスブタジエンゴム、JSR株式会社製
*4:製造例1にて製造した超ハイシスブタジエンゴム
*5:旭♯70(商品名)、旭カーボン株式会社製
*6:「コウモレックス(登録商標)NH−60T」(商品名)、新日本石油株式会社製
*7:ハイロジンB(商品名)、ロジン樹脂、大社松精油株式会社製
*8:「クイントン(登録商標)1920」(商品名)、ジシクロペンタジエン樹脂、日本ゼオン株式会社製
*9:PALMAC1600(商品名)、ACIDCHEM社製
*10:「銀嶺(登録商標)SR」(商品名)、東邦亜鉛株式会社製
*11:「ノクラック(登録商標)224」(商品名)、大内新興化学工業株式会社製
*12:「ANTIGENE(登録商標)6C」(商品名)、住友化学株式会社製
*13:パラフィンワックス135(商品名)、日本精鑞株式会社製
*14:「OZOACE(登録商標)−0017」(商品名)、日本精鑞株式会社製
*15:Sulfax5(商品名)、鶴見化学工業株式会社製
*16:「ノクセラー(登録商標)D」(商品名)、1,3−ジフェニルグアニジン、大内新興化学工業株式会社製
*17:「ノクセラー(登録商標)CZ−G」(商品名)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、大内新興化学工業株式会社製
*18:「ノクセラー(登録商標)DM−T」(商品名)、ジベンゾチアジルジスルフィド、大内新興化学工業株式会社製
*19:「ノクセラー(登録商標)NS−F」(商品名)、N−tert−ブチルベンゾリルスルフェンアミド、大内新興化学工業株式会社製
表1に示したように、ゴム成分としてNR及びSBRと超ハイシスBRを含有するゴムクローラ(実施例1)は、NR及びSBRと従来使用されてきたハイシスBRを実施例1と同じ配合比で含有するゴムクローラ(比較例1)よりも、耐亀裂成長性、耐磨耗性及び耐オゾン劣化性に優れるばかりでなく、耐カット性も高い。実施例2〜5のように、超ハイシスBRの配合量をゴム成分全体に対して5〜40質量%の範囲で振っても、超ハイシスBRを含有させたことによる効果が現れ、良好な耐カット性を維持している。
ゴム成分としてNRと超ハイシスBRを含有するゴムクローラ(実施例5)は、一見、耐カット性が低下しているように思えるが、NRとハイシスBRを実施例5と同じ配合比で含有するゴムクローラ(比較例2)よりも耐カット性は非常に優れており、耐亀裂成長性及び耐磨耗性も高くなり、各特性のバランスが良く、超ハイシスBRが従来のハイシスBRの代替品として優れていることが示されている。
ゴム成分がNRのみ(比較例3)であると、耐磨耗性、耐カット性及び耐オゾン劣化性が大幅に低下した。
また、ゴム成分としてNRと超ハイシスBRを含有するゴムクローラであっても、超ハイシスBRがゴム成分全体に対して50質量%である場合(比較例4)、実施例5と比較すると、耐磨耗性及び耐オゾン劣化性は良好であるものの、耐亀裂成長性及び耐カット性が低下した。
表2に示したように、ゴム成分としてSBRと超ハイシスBRを含有するゴムクローラ(実施例6)は、SBRとハイシスBRを実施例6と同じ配合比で含有するゴムクローラ(比較例6)と比べ、耐亀裂成長性、耐磨耗性、耐カット性及び耐オゾン劣化性の全てにおいて優れている。実施例7〜10のように、超ハイシスBRの配合量をゴム成分全体に対して5〜40質量%の範囲で振っても、超ハイシスBRを含有させたことによる効果が現れ、良好な耐カット性を維持している。
ゴム成分としてSBRと超ハイシスBRを含有するゴムクローラ(実施例10)は、一見、耐カット性に乏しいように思えるが、SBRとハイシスBRを実施例10と同じ配合比で含有するゴムクローラ(比較例7)よりも耐カット性が非常に優れており、耐亀裂成長性及び耐磨耗性も高くなっている。
ゴム成分がSBRのみ(比較例5)の場合と比較すると、実施例6〜10では耐カット性がやや低下しているが、比較例5で得られるゴムクローラでは耐亀裂成長性、耐磨耗性及び耐オゾン劣化性が実用に耐え得る程度ではない。そこで、比較例6や7のように、従来はハイシスBRを含有させることによりそれらを改善していたが、耐カット性の低下が激しかった。その点、本発明で使用する超ハイシスBRは、耐カット性の低下を抑制しつつ、耐亀裂成長性、耐磨耗性及び耐オゾン劣化性にも優れたゴムクローラを得ることができているため、各特性のバランスが良く、優れた発明であるといえる。
本発明のクローラ用ゴム組成物は、ゴムクローラやゴムクローラのラグ部ゴム用途に利用可能である。かかるゴムクローラ又はラグ部ゴムを備えたゴムクローラは、農業機械用、建設機械用又は土木作業機械用に利用可能である。
耐亀裂成長性の測定における、シートのチャッキング方法を示す。
符号の説明
1 試験機
2 試験機に上下を挟まれたシート

Claims (13)

  1. (A)分子量分布(Mw/Mn)が1.6〜3.5であり、且つ、フーリエ変換赤外分光法による測定において、1,3−ブタジエン単量体単位中のシス−1,4結合含量が98%以上及びビニル結合含量が0.3%以下となるブタジエン系重合体5〜40質量%並びに(B)ジエン系ゴム95〜60質量%を含有する、クローラ用ゴム組成物。
  2. 1,3−ブタジエン単量体単位中のシス−1,4結合含量とビニル結合含量とが、下記式:
    ビニル結合含量(%)≦0.25×(「シス−1,4結合含量(%)」−97)
    の関係を満たす、請求項1に記載のクローラ用ゴム組成物。
  3. 分子量分布(Mw/Mn)が1.6〜2.7である、請求項1又は2に記載のクローラ用ゴム組成物。
  4. ブタジエン系重合体が、1,3−ブタジエン単量体80〜100質量%と1,3−ブタジエンと共重合可能なその他の単量体20〜0質量%とからなる、請求項1〜3のいずれかに記載のクローラ用ゴム組成物。
  5. ブタジエン系重合体が1,3−ブタジエン単量体のみからなる、請求項4に記載のクローラ用ゴム組成物。
  6. 数平均分子量(Mn)が100,000〜500,000である、請求項1〜5のいずれかに記載のクローラ用ゴム組成物。
  7. 数平均分子量(Mn)が150,000〜300,000である、請求項6に記載のクローラ用ゴム組成物。
  8. ジエン系ゴムが、天然ゴム、イソプレンゴム及びスチレンブタジエンゴムからなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1〜7のいずれかに記載のクローラ用ゴム組成物。
  9. ブタジエン系重合体とジエン系ゴムの含有量の質量比が20〜30:80〜70である、請求項1〜8のいずれかに記載のクローラ用ゴム組成物。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載のクローラ用ゴム組成物から得られるラグ部ゴム。
  11. 請求項10に記載のラグ部ゴムを備えたゴムクローラ。
  12. 請求項1〜9のいずれかに記載のクローラ用ゴム組成物から得られるゴムクローラ。
  13. 農業機械用、建設機械用又は土木作業機械用である、請求項11又は12に記載のゴムクローラ。
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