JP2016003296A - ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ - Google Patents

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亮佑 高木
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Abstract

【課題】インナーライナーの空気透過防止性能を向上させるために、板状無機充填剤を配合する技術が知られているが、所望の空気透過防止性能および耐疲労性を獲得するのが困難であった。またインナーライナーは、タイヤの低転がり性を満足すべく、低発熱性であることが望ましい。【解決手段】ブチル系ゴム60質量部以上を含むゴム成分100質量部に対し、窒素吸着比表面積が20〜150m2/gのカーボンブラックを40〜80質量部、および重量平均分子量Mwが200〜1000であり、かつ軟化点が−40〜20℃の範囲にある、フェノール系化合物で変性したC9系石油樹脂を3〜20質量部配合してなるゴム組成物によって上記課題を解決した。【選択図】なし

Description

本発明は、ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものであり、詳しくは、優れた空気透過防止性能を付与し、かつ、発熱性を悪化させることなく耐疲労性を向上させたゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
チューブレス空気入りタイヤの内面には、空気透過防止性能に優れたブチル系ゴムを主成分とするインナーライナーが設けられている。しかしインナーライナーは、タイヤ内腔の充填空気を完全に遮断できず、長期間の間に、充填空気がインナーライナーを透過し、外周側に配置されたカーカス層やベルト層に拡散する。そして充填空気中の酸素がカーカス層やベルト層のゴム成分を酸化劣化させ、耐久性を低下させるという問題があった。この対策として、タイヤインナーライナー用ゴム組成物に板状の偏平構造を有するタルクやクレー等の板状無機充填剤を配合する技術が知られているが(例えば特許文献1参照)、このような板状無機充填剤を均一に分散させるのは困難であり、所望の空気透過防止性能および耐疲労性を獲得するのが困難であった。
またインナーライナーは、タイヤの低転がり性を満足すべく、低発熱性であることが望ましい。
耐疲労性向上を図る手段の一つとして、カーボンブラック配合量の減らすことで伸びを向上させることが挙げられるが、フィラー量が減少し、空気透過性が悪化する。また、オイルの増量により伸びを向上させることも挙げられるが、発熱性増加や空気透過性の悪化を招く。
特開2002−88209号公報
したがって本発明の目的は、優れた空気透過防止性能を付与し、かつ、発熱性を悪化させることなく耐疲労性を向上させたゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することにある。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、特定の組成を有するゴム成分に対し、特定の特性を有するカーボンブラック、および特定の特性を有するフェノール系化合物で変性したC系石油樹脂を特定量でもって配合することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
すなわち本発明は以下の通りである。
1.ブチル系ゴム60質量部以上を含むゴム成分100質量部に対し、窒素吸着比表面積(NSA)が20〜150m/gのカーボンブラックを40〜80質量部、および重量平均分子量Mwが200〜1000であり、かつ軟化点が−40〜20℃の範囲にある、フェノール系化合物で変性したC系石油樹脂を3〜20質量部配合してなることを特徴とするゴム組成物。
2.フェノール系化合物で変性したC系石油樹脂が、フェノールで変性したC系石油樹脂であることを特徴とする前記1に記載のゴム組成物。
3.前記1または2に記載のゴム組成物をインナーライナーに使用した空気入りタイヤ。
本発明によれば、特定の組成を有するゴム成分に対し、特定の特性を有するカーボンブラック、および特定の特性を有するフェノール系化合物で変性したC系石油樹脂を特定量でもって配合したので、優れた空気透過防止性能を付与し、かつ、発熱性を悪化させることなく耐疲労性を向上させたゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することができる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
(ゴム成分)
本発明で使用されるゴム成分は、ゴム成分全体を100質量部としたときに、ブチル系ゴムを60質量部以上含む。
ブチル系ゴムとしては、インナーライナー用として使用されている任意のブチル系ゴム、例えばブチルゴム(IIR)やハロゲン化ブチルゴム(Br−IIR、Cl−IIR)等を挙げることができる。ブチル系ゴムの市販品としては、例えば臭素化ブチルゴムであるEXXON MOBILE社製、商品名BROMOBUTYL2255等が挙げられる。
また、ゴム成分には、ブチル系ゴム以外に、任意のジエン系ゴムを配合することもできる。ジエン系ゴムとしては、タイヤ用ゴム組成物として使用されるジエン系ゴムをいずれも使用することができるが、天然ゴム(NR)が好適である。なおジエン系ゴムの配合割合が40質量部を超えると、空気透過防止性能が悪化する。
(カーボンブラック)
本発明で使用されるカーボンブラックは、空気透過防止性能を高め、発熱性を悪化させず、耐疲労性を向上させるために、窒素吸着比表面積(NSA)は20〜150m/gであることが必要であり、該効果をさらに高めるという観点から、20〜125m/gであるのが好ましく、20〜100m/gであるのがさらに好ましい。
なお窒素吸着比表面積(NSA)は、JIS K6217−2に準拠して求めるものとする。
(フェノール系化合物で変性したC系石油樹脂)
本発明で使用するフェノール系化合物で変性したC系石油樹脂は、重量平均分子量Mwが200〜1000であり、かつ軟化点が−40〜20℃の範囲にある。また、該C系石油樹脂は、常温で液体である。
系石油樹脂とは、よく知られているように、ナフサの熱分解によって得られるC9 留分を(共)重合して得られる芳香族系石油樹脂である。典型的なC系石油樹脂は、スチレン、ビニルトルエン、メチルスチレン、インデン、メチルインデンおよびジシクロペンタジエンから選択された1種以上をモノマー単位として構成されている。
本発明で使用するフェノール系化合物で変性したC系石油樹脂は、C留分をフェノール系化合物の存在下でカチオン重合して得ることができる。フェノール系化合物としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、p−t−ブチルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール等が挙げられ、中でも本発明の効果が向上するという観点から、フェノールが好ましい。
ここで、フェノール系化合物で変性したC系石油樹脂の重量平均分子量Mwが200未満あるいは1000を超えると、空気透過防止性能を高め、発熱性を悪化させず、耐疲労性を向上させるという本発明の効果を獲得することができない。軟化点が−40℃未満あるいは20℃を超える場合でも、上記本発明の効果を獲得することができない。
前記重量平均分子量は、ポリスチレン換算のGPC法により測定され、軟化点は、JIS K6220−1に規定されたリングアンドボール法により測定される。
なお、本発明で使用するフェノール系化合物で変性したC系石油樹脂は、市販されているものを使用することができ、例えばRutgers社製ノバレスL100、ノバレスL800、ノバレスA1200、ノバレスLC60等が挙げられる。
フェノール系化合物で変性したC系石油樹脂は、通常配合されるオイルと比較すると運動性が低く、空気透過防止性能を良化するものと考えられる。また、加硫促進の作用にによって低架橋密度による発熱性の悪化が見られず、自身が架橋鎖の一部となり架橋鎖長を長くすることで耐疲労性を向上させる効果を奏するものと推測される。
(ゴム組成物の配合割合)
本発明のゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対し、窒素吸着比表面積(NSA)が20〜150m/gのカーボンブラックを40〜80質量部、および重量平均分子量Mwが200〜1000であり、かつ軟化点が−40〜20℃の範囲にある、フェノール系化合物で変性したC系石油樹脂を3〜20質量部配合してなることを特徴とする。
前記カーボンブラックの配合量が40質量部未満であると、補強性が低下し、80質量部を超えると発熱性および耐疲労性が悪化する。
前記フェノール系化合物で変性したC系石油樹脂の配合量が3質量部未満であると、配合量が少な過ぎて本発明の効果を奏することができない。逆に20質量部を超えると空気透過防止性能および発熱性が悪化する。
前記カーボンブラックのさらに好ましい配合量は、ゴム成分100質量部に対し、50〜80質量部である。
前記フェノール系化合物で変性したC系石油樹脂のさらに好ましい配合量は、ゴム成分100質量部に対し、5〜20質量部である。
(その他成分)
本発明におけるゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤;加硫又は架橋促進剤;酸化亜鉛、クレー、タルク、炭酸カルシウムのような各種充填剤;老化防止剤;可塑剤;その他の樹脂などのゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
本発明の組成物は板状無機充填剤を配合することもできる。
板状無機充填剤としては、クレー、タルク、ベントナイト、モンモリロナイト等が挙げられる。
また本発明のゴム組成物は従来の空気入りタイヤの製造方法に従って空気入りタイヤを製造するのに適しており、優れた空気透過防止性能を付与し、かつ、発熱性を悪化させることなく耐疲労性を向上させ得ることから、インナーライナーとして使用するのがよい。
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
実施例1〜3および比較例1〜5
サンプルの調製
表1に示す配合(質量部)において、加硫系(加硫促進剤、硫黄)を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、ミキサー外に放出させて室温冷却した。続いて、該組成物を同バンバリーミキサーに再度入れ、加硫系を加えて混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で160℃で20分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を調製した。得られた加硫ゴム試験片について以下に示す試験法で物性を測定した。
発熱性(tanδ(60℃)):(株)東洋精機製作所製の粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪=10%、振幅=±2%、周波数=20Hzの条件下でtanδ(60℃)を測定し、この値をもって発熱性を評価した。結果は、比較例1の値を100として指数表示した。指数が小さいほど、低発熱性であることを示す。
空気透過防止性能:JIS K7126 A法に準拠し、30℃の空気透過係数を測定した。結果は、比較例1で得られた値を100として指数表示した。指数が小さいほど空気透過防止性能に優れることを示す。
耐屈曲疲労性:JIS K6251に準拠して、JIS 3号ダンベル状サンプルを用いて、歪率60%にて繰返し歪を与え、破断に至るまでの回数を測定した。結果は、比較例1で得られた値を100として指数表示した。指数が大きいほど耐屈曲疲労性に優れることを示す。
結果を表1に示す。
Figure 2016003296
*1:Br−IIR(EXXON MOBILE社製BROMOBUTYL2255)
*2:NR(SIR20)
*3:カーボンブラック(新日化カーボン(株)製ニテロン#GN、窒素吸着比表面積(NSA)=30m/g)
*4:ステアリン酸(千葉脂肪酸(株)製ビーズステアリン酸)
*5:芳香族炭化水素系樹脂(エアウォーター(株)製FR−120)
*6:石油樹脂(トーネックス(株)製エスコレッツ1102)
*7:アロマオイル(昭和シェル石油(株)製エキストラクト4号S)
*8:樹脂−1(Rutgers社製ノバレスL800、フェノールで変性したC9系石油樹脂、Mw=300、軟化点−40〜−30℃、水酸基価=0.1wt%、常温で液体)
*9:酸化亜鉛(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*10:硫黄(細井化学工業(株)製油処理イオウ)
*11:加硫促進剤(三新化学工業(株)製サンセラーDM−P0)
*12:樹脂−2(Rutgers社製ノバレスC90、クマロンインデン樹脂、Mw=2000、軟化点20〜30℃、水酸基価=0.0wt%、常温で固体)
上記の表1の結果から明らかなように、実施例1〜3で得られたゴム組成物は、特定の組成を有するゴム成分に対し、特定の特性を有するカーボンブラック、および特定の特性を有するフェノール系化合物で変性したC系石油樹脂を特定量でもって配合したので、従来の代表的な比較例1に対し、優れた空気透過防止性能を付与し、かつ、発熱性を悪化させることなく耐疲労性も向上している。
これに対し、比較例2は、ブチル系ゴムの配合量が本発明で規定する下限未満であるので、空気透過防止性能および発熱性が悪化した。
比較例3は、カーボンブラックの配合量が本発明で規定する上限を超えているので、発熱性および耐疲労性が悪化した。
比較例4は、フェノール系化合物で変性したC系石油樹脂の配合量が本発明で規定する下限未満であるので、耐疲労性が改善されなかった。
比較例5は、フェノール系化合物で変性したC系石油樹脂の配合量が本発明で規定する上限を超えているので、空気透過防止性能および発熱性が悪化した。
比較例6は、フェノール系化合物で変性したC系石油樹脂を使用せず、その替わりに未変性のクマロンインデン樹脂を使用した例であるので、発熱性が悪化した。

Claims (3)

  1. ブチル系ゴム60質量部以上を含むゴム成分100質量部に対し、窒素吸着比表面積(NSA)が20〜150m/gのカーボンブラックを40〜80質量部、および重量平均分子量Mwが200〜1000であり、かつ軟化点が−40〜20℃の範囲にある、フェノール系化合物で変性したC系石油樹脂を3〜20質量部配合してなることを特徴とするゴム組成物。
  2. フェノール系化合物で変性したC系石油樹脂が、フェノールで変性したC系石油樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
  3. 請求項1または2に記載のゴム組成物をインナーライナーに使用した空気入りタイヤ。
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