JP2009298881A - 防振ゴム組成物及びそれを用いてなる防振ゴム - Google Patents

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Abstract

【課題】破壊特性等の常態物性及び低動倍率を損なわずに耐オゾン性、電気絶縁性を向上させた防振ゴムを与える防振ゴム組成物、及び該組成物を用いて得られた上記性状を有する防振ゴムを提供すること。
【解決手段】ゴム成分として、(A)ジエン系ゴム及び(B)1,3−ブタジエン単量体単位を含むブタジエン系重合体を含有し、充填材として(C)カーボンブラックを含有する防振ゴム組成物であって、(B)成分における1,3−ブタジエン単量体単位中のフーリエ変換赤外分光法で測定したシス−1,4結合含量が98.0%以上であり、かつビニル結合含量が0.3%以下で、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.6〜3.5であり、(C)カーボンブラックの体積分率が10%以下であり、かつ(A)成分と(B)成分との質量比が40:60〜80:20であることを特徴とする防振ゴム組成物、及び該防振ゴム組成物の加硫物からなる防振ゴムである。
【選択図】なし

Description

本発明は、防振ゴム組成物及びそれを用いてなる防振ゴムに関する。さらに詳しくは、本発明は、ゴム成分として、特定の割合のジエン系ゴムと特定の構造を有するブタジエン系重合体を含有し、充填材として、カーボンブラックをある値以下の割合で含み、好ましくはシリカをさらに含むゴム組成物であって、破断強力、伸びなどの力学物性を維持すると共に、低動倍率であって、かつ耐オゾン性、電気絶縁性を向上させた防振ゴムを与える防振ゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いて得られた上記性状を有する、鉄道車輌用、特に鉄道車輌用ブッシュとして好適な防振ゴムに関するものである。
従来、防振ゴムは、鉄道車輌、自動車、一般産業機械などの分野において、振動や騒音などを防止するために使用されている。
これらの中で、鉄道車輌用、特に鉄道車輌用ブッシュに用いられる防振ゴムに対しては、動倍率が低いこと、耐オゾン性がよいこと、絶縁性が高いことなどが要求される。
これまで、耐オゾン性を高める手法として、天然ゴムの一部を、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(EPDM)に置換することが試みられているが、この手法では、得られる防振ゴムは、破壊特性などのゴム物性や耐久性が低下してしまうという欠点があった。
また、ジエン系ゴムに対して、老化防止剤の配合量を増やして耐オゾン性を確保することが行われているが、この場合、ゴム組成物の金属との加硫接着性が低下するという問題があった。
また、動倍率を低下させるためには、一般に粒径の大きなカーボンブラックが使用されるが、これらのカーボンブラックは補強性が十分でなく、破断強力、伸びなどの力学物性及び耐久性に劣るという問題があった。そこで、力学特性と低動倍化を達成するために種々の検討が行われ、例えば、ジエン系ゴム成分に特定の構造を有するヒドラジン誘導体と大粒径・ハイストラクチャーカーボンブラックを含むゴム組成物よりなるゴム部材が提案されている(特許文献1参照)。
また、ネオジウム系触媒を用いて重合したシス含量97%以上のブタジエンゴムと天然ゴム等を組み合わせた自動車用ゴム組成物が提案されている(特許文献2参照)。
しかしながら、特許文献1及び2に開示されるゴム組成物は、カーボンブラックの配合量が大きく、電気絶縁性が不十分である。
特開2006−143859号公報 特許第2969510号公報
本発明は、このような状況下で、破壊特性等の常態物性及び低動倍率を損なわずに耐オゾン性、電気絶縁性を向上させた防振ゴムを与える防振ゴム組成物、及び該組成物を用いて得られた上記性状を有する防振ゴムを提供することを目的とするものである。
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ゴム成分として、特定の割合のジエン系ゴムと特定の構造を有するブタジエン系重合体を含有し、充填材として配合するカーボンブラックの配合量を特定したゴム組成物により、その目的を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、ゴム成分として、(A)ジエン系ゴム及び(B)1,3−ブタジエン単量体単位を含むブタジエン系重合体を含有し、充填材として(C)カーボンブラックを含有する防振ゴム組成物であって、(B)成分における1,3−ブタジエン単量体単位中のフーリエ変換赤外分光法で測定したシス−1,4結合含量が98.0%以上であり、かつビニル結合含量が0.3%以下で、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.6〜3.5であり、(C)カーボンブラックの体積分率が10%以下であり、かつ(A)成分と(B)成分との質量比が40:60〜80:20であることを特徴とする防振ゴム組成物、及び該防振ゴム組成物の加硫物からなる防振ゴム、を提供するものである。
本発明によれば、破壊特性等の常態物性及び低動倍率を損なわずに耐オゾン性、電気絶縁性を向上させた防振ゴムを与える防振ゴム組成物、及び該組成物を用いて得られた上記性状を有する、鉄道車輌用、特に鉄道車輌用ブッシュとして好適な防振ゴムを提供することができる。
まず、本発明の防振ゴム組成物について説明する。
[防振ゴム組成物]
本発明の防振ゴム組成物は、ゴム成分として(A)ジエン系ゴムと(B)1,3−ブタジエン単量体単位を含むブタジエン系重合体、及び充填材として(C)カーボンブラックを含有することを特徴とする。
(A)ジエン系ゴム
本発明の防振ゴム組成物において、ゴム成分の一方の材料として用いられるジエン系ゴムの種類に特に制限はなく、天然ゴム及びジエン系合成ゴムのいずれも用いることができる。ジエン系合成ゴムとしては、例えばスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、スチレン−イソプレン共重合体(SIR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、エチレンプロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)などを挙げることができる。
本発明においては、当該ジエン系ゴムは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよいが、破壊特性、低動倍率などの観点から、天然ゴムが特に好適である。
(B)1,3−ブタジエン単量体単位を含むブタジエン系重合体
本発明の1,3−ブタジエン単量体単位を含むブタジエン系重合体(以下、単に「ブタジエン系重合体」と記す。)は、該1,3−ブタジエン単量体単位中のフーリエ変換赤外分光法で測定したシス−1,4結合含量が98.0%以上で、かつビニル結合含量が0.3%以下である。
該ブタジエン系重合体は、従来のブタジエン系重合体に比べ1,3−ブタジエン単量体単位中のシス−1,4結合含量が高く、かつビニル結合含量が低いため、伸張結晶性が著しく高く、該ブタジエン系重合体をゴム組成物に配合することで、ゴム組成物の耐摩耗性、耐亀裂成長性及び耐オゾン劣化性を大幅に向上させることができる。
上述のシス−1,4結合含量が98.0%未満であるか、ビニル結合含量が0.3%を超えるブタジエン系重合体は、伸張結晶性が不充分で、ゴム組成物の耐摩耗性、耐亀裂成長性及び耐オゾン劣化性を向上させる効果が小さい。以上の点から、シス−1,4結合含量は98.5%以上であることが好ましく、ビニル結合含量は0.2%以下であることが好ましい。
また、上記ブタジエン系重合体は、シス−1,4結合含量とビニル結合含量とが、下記式(I)
(ビニル結合含量)≦0.25×{(シス−1,4結合含量)−97}(%)・・(I)
の関係を満たすのが好ましい。この場合、ブタジエン系重合体の伸張結晶性が更に向上して、該ブタジエン系重合体をゴム組成物に配合することで、ゴム組成物の耐摩耗性、耐亀裂成長性及び耐オゾン劣化性を更に向上させることができる。
本発明のブタジエン系重合体を規定するシス−1,4結合含量及びビニル結合含量は、FT−IRで測定される値であり、具体的には、特開2005−15590に開示される方法で測定される。
ブタジエン系重合体中の1,3−ブタジエン単量体単位のミクロ構造の分析法としては、従来、1H−NMR及び13C−NMRによりシス−1,4結合含量、トランス−1,4結合含量及びビニル結合含量を求める方法が知られているが、13C−NMRによる測定結果では、ビニル結合含量が過少に評価され、実際の値より小さい値が出てしまう。これに対し、本発明のブタジエン系重合体は、シス−1,4結合含量が高いことに加え、ビニル結合含量が極めて小さいことを特徴とするため、ビニル結合含量の測定精度が高いFT−IR法により測定するものである。
該ブタジエン系重合体は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)、即ち分子量分布(Mw/Mn)が1.6〜3.5であることを特徴とする。ブタジエン系重合体の分子量分布(Mw/Mn)が1.6以上であると、該ブタジエン系重合体を含むゴム組成物の作業性が良好であり、混練りが容易であって、ゴム組成物の物性を十分に向上させることができる。一方、ブタジエン系重合体の分子量分布が3.5以下であると、ゴム組成物の未加硫粘度が改良され、かつヒステリシスロス等のゴム物性の低下が少ない。以上の点から、分子量分布は1.6〜2.7であるのが好ましい。なお、ここで、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の値である。
該ブタジエン系重合体は、数平均分子量(Mn)が100,000〜500,000であるのが好ましい。ブタジエン系重合体の数平均分子量が100,000以上であると、加硫物の弾性率が良好であり、ヒステリシスロスの上昇がなく、更に十分な耐摩耗性が得られる。一方、500,000以下であると、該ブタジエン系重合体を含むゴム組成物の作業性が良好であり、混練りが容易であって、ゴム組成物の物性を十分に向上させることができる。以上の点から、ブタジエン系重合体の数平均分子量(Mn)は150,000〜300,000であるのが更に好ましい。
該ブタジエン系重合体は、1,3−ブタジエン単量体単位が80〜100質量%で、1,3−ブタジエンと共重合可能なその他の単量体単位が20〜0質量%であるのが好ましい。重合体中の1,3−ブタジエン単量体単位含量が80質量%以上であると、重合体全体に対する1,4−シス結合含量が十分であり、本発明の効果を十分に発現し得る。本発明においては、特に、該ブタジエン系重合体が1,3−ブタジエン単量体のみからなるのが好ましい。すなわち、ポリブタジエンゴム(BR)であるのが特に好ましい。
ここで、1,3−ブタジエンと共重合可能なその他の単量体としては、例えば、炭素数5〜8の共役ジエン単量体、芳香族ビニル単量体等が挙げられ、これらの中でも、炭素数5〜8の共役ジエン単量体が好ましい。上記炭素数5〜8の共役ジエン単量体としては、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。上記芳香族ビニル単量体としては、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。
上記ブタジエン系重合体の製造方法としては、(a)周期表の原子番号57〜71の希土類元素を含有する化合物、又はこれらの化合物とルイス塩基との反応物、(b)有機アルミニウム化合物、及び(c)ルイス酸、金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物、及び活性ハロゲンを含む有機化合物からなる群から選択される少なくとも一種のハロゲン化合物、からなる触媒系の存在下、25℃以下の温度で、少なくとも1,3−ブタジエンを含む単量体を重合させることで得られる。特に、高いシス−1,4結合含量及び低いビニル結合含量のブタジエン系重合体を得るとの点から、上記(a)成分としてネオジムを用いることが好ましい。
本発明の防振ゴム組成物において、ゴム成分として用いられる(A)ジエン系ゴムと(B)ブタジエン系重合体との含有割合は、良好な常態物性及び耐久性を有し、かつ低動倍率であるとの観点から、質量比で40:60〜80:20であることを要する。
(C)カーボンブラック
本発明の防振ゴム組成物において、充填材として用いられるカーボンブラックとしては、ヨウ素吸着量が10〜70g/kg及びDBP吸油量が30〜180ml/100gの範囲にあるものが好ましい。このようなカーボンブラックとしては、N550、N660、N762、N880などを挙げることができる。また、チッ素吸着比表面積(N2SA)は、10〜75m2/g程度である。
上記カーボンブラックの粒径よりも小さな粒径のカーボンブラックを用いると、得られる防振ゴムの動倍率が高くなるおそれがあり、一方上記カーボンブラックの粒径よりも大きな粒径のカーボンブラックを用いると、得られる防振ゴムの補強性が低下するおそれがある。上記性状を有するカーボンブラックを用いることにより、補強性及び低動倍率のバランスした防振ゴムを与えるゴム組成物を得ることができる。
ヨウ素吸着量のより好ましい範囲は、12〜60g/kgであり、DBP吸油量のより好ましい範囲は60〜180ml/100gである。
なお、上記のヨウ素吸着量は、JIS K 6217−1:2001に準拠して
測定した値であり、DBP吸油量は、JIS K 6217−4:2001に準拠して測定した値である。また、窒素吸着比表面積(N2SA)は、ASTM D3037に準拠して測定した値である。
本発明においては、カーボンブラックとして、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の防振ゴム組成物においては、得られる防振ゴムの電気絶縁性を確保する観点から、上記カーボンブラックの含有量は10体積%以下であることを要する。この含有量が10体積%を超えると電気絶縁性を確保することができない場合がある。
また、本発明の防振ゴム組成物には、さらに充填材として(D)シリカを用いることができる。シリカを含有させることで、電気絶縁性及び低動倍率を維持し、破壊特性を向上させることができる。
シリカとしては、BET比表面積が70〜230m2/gの範囲にあるものが好ましく用いられる。このBET比表面積が70m2/g以上であれば良好な補強効果が得られ、ゴム物性の悪化や耐久性の劣化を抑えることができる。またBET比表面積が230m2/g以下であれば、ゴム組成物中へのシリカの分散不良を抑えることができ、その結果、分散不良による耐久性の低下や動倍率の悪化を抑制することができる。このBET比表面積のより好ましい範囲は80〜200m2/gである。
なお、上記BET比表面積は、「アメリカ化学会誌(J.Am.Chem.Soc.)」、第60巻、第309頁に記載されているブルナウアー、エメット及びテラー(“BET”)法により、測定される値である。
当該シリカとしては、BET比表面積が70〜230m2/gの各種の市販されているものを使用することができる。なお、本発明における「シリカ」の用語は、SiO2を組成式中に含む、二酸化珪素、珪酸、珪酸塩を包含する広義の概念であるが、無水珪酸である二酸化珪素が、上述の作用効果の点から好ましく、特にシリカゲルなどの湿式法で製造されたシリカが好適である。
本発明においては、シリカとして、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の防振ゴム組成物において、カーボンブラックと共にシリカを用いる場合、それらの合計含有量(充填材の含有量)は、カーボンブラックの含有量が10体積%以下であることを満たすと共に、前述のゴム成分100質量部に対して、通常10〜80質量部程度、好ましくは15〜60質量部である。上記充填材の含有量が10質量部以上であれば、得られる防振ゴムの破壊特性が良好となると共に、動倍率も低くなり、80質量部以下であれば、加工性の低下及び動倍率の上昇を抑えることができる。
本発明において、シリカを用いる場合、当該シリカのゴム組成物への分散性を向上させるために、ゴム組成物にシランカップリング剤を含有させることができる。
(シランカップリング剤)
本発明のゴム組成物に、前記シリカと共に含有させるシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシ−エトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、及びγ−トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド、γ−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィドなどのテトラスルフィド類などを挙げることができる。
このシランカップリング剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その配合量は、使用するシリカに対して、1〜10質量%が好ましく、5〜10質量%がより好ましい。当該シランカップリング剤の配合量が1質量%以上であれば、配合効果が発揮され、得られる防振ゴムの動倍率は良好となり、10質量%より多く配合しても、その量の割には効果の向上
があまり認められず、経済的にむしろ不利となる。
(その他の添加成分)
本発明の防振ゴム組成物には、前述した(A)ジエン系ゴムと(B)1,3−ブタジエン単量体単位を含むブタジエン系重合体、(C)カーボンブラック、(D)シリカ、シランカップリング剤以外に、必要に応じ各種添加剤、例えば加硫剤、加硫促進剤、ステアリン酸、亜鉛華、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、加工助剤などを含有させることができる。
本発明の防振ゴム組成物における加硫剤としては、ジエン系ゴム及びブタジエン系重合体の両方に対して有効である硫黄を用いることが好ましい。当該硫黄の含有量は、前述のゴム成分100質量部に対して、0.1〜3質量部の範囲であることが好ましい。この硫黄の含有量が0.1質量部以上であれば、加硫ゴムは良好な破壊特性を維持することができ、一方、3質量部以下であれば、所望の耐熱性及び圧縮永久歪を得ることができる。
本発明で使用できる加硫促進剤としては、ジエン系ゴム及びブタジエン系重合体に対して有効なもの、例えばグアニジン系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系などの中から選ばれる一種又は二種以上の混合物を挙げることができる。この加硫促進剤の使用量は、ゴム成分100質量部に対し、通常0.1〜3質量部程度、好ましくは0.5〜2質量部である。
また、老化防止剤としては、例えば4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、ポリメライズド2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン(RD)、N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(6C)などを用いることができる。この老化防止剤の使用量は、ゴム成分100質量部に対し、通常0.5〜10質量部程度、好ましくは1〜5質量部である。
本発明で使用できる軟化剤としては、例えばプロセスオイル、パラフィン、流動パラフィン、ワセリン、石油アスファルトなどの石油系軟化剤、ナタネ油、アマニ油、ヒマシ油、ヤシ油などの植物系軟化剤等の一般的な軟化剤を挙げることができる。可塑剤としては、ジオクチルフタレートやジオクチルアジペートなどの一般的なエステル系可塑剤、エーテル・チオエーテル系可塑剤、エーテル・エステル系可塑剤などを用いることができる。
(防振ゴム組成物の調製)
本発明の防振ゴム組成物の調製方法に特に制限はないが、例えば以下に示す方法により、調製することができる。
バンバリミキサー、ニーダー、ロール、インターナルミキサーなどの混練機により、(A)ジエン系ゴムと(B)ブタジエン系重合体との組合せからなるゴム成分と、充填材としてのカーボンブラックと、好ましくはシリカと、さらに必要に応じて、シランカップリング剤や、前記のその他添加成分の中で加硫関与成分を除いた成分とを混練りし、さらに加硫剤としての硫黄と加硫関与成分加え混練りすることによって、本発明の防振ゴム組成物を調製することができる。
このようにして得られた本発明の防振ゴム組成物は、所定形状に成形加工後、加硫処理することにより、防振ゴムとすることができ、以下に示す効果を奏する。
(1)ゴム成分として、特定の割合のジエン系ゴムとブタジエン系重合体との組合せを含むとともに、カーボンブラックをある値以下の割合で含むことにより、良好な耐オゾン性、及び低動倍率を備え、かつ電気絶縁性を確保した防振ゴムを与えることができる。
(2)ジエン系ゴムとして天然ゴムを用いることにより、得られる防振ゴムは、破壊特性などのゴム特性が向上する。
(3)カーボンブラックとして特定の性状を有するものを用いることにより、良好な破壊特性及び低動倍率を有する防振ゴムが得られる。
(4)さらに、シリカを所定の割合で配合することにより、電気絶縁性及び低動倍率を保持すると共に、破壊特性を改善することができ、特に窒素吸着比表面積、(BET比表面積)が特定の範囲にあるシリカは、上記効果が大きい。
(5)シリカと共にシランカップリング剤を配合することにより、ゴム組成物中のシリカの分散性が向上し、上記(4)の効果がさらに大きくなる。
[防振ゴム]
本発明の防振ゴムは、前述した本発明の防振ゴム組成物の加硫物からなるものであって、本発明の防振ゴム組成物を所定形状に成形加工後、通常140〜180℃程度、好ましくは150〜170℃の温度で加硫処理することにより、製造することができる。
本発明の防振ゴムは、破壊特性、低動倍率、耐オゾン性、及び電気絶縁性のいずれも良好であるものにすることができ、これらの性能が要求される用途、例えば鉄道車輌用、特に鉄道車輌用ブッシュに好適に用いられる。
上記鉄道車輌用ブッシュは、近くに配置されているモーターから発生するオゾンの影響を受けるため耐オゾン性を有することが必要であり、また、電気絶縁性でないと、電食を引き起こす問題が生じる。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
<評価方法>
ゴム組成物を160℃で10分間加硫処理したのち、下記試験方法により評価を行った。
(1)常態物性
(1−1)ゴム硬度Hs:JIS K 6253(タイプA)に準拠して測定した。
(1−2)破断伸びEb:JIS K 6251に準拠して測定した。
(1−3)破断強度Tb:JIS K 6251に準拠して測定した。
(2)動特性
(2−1)静的バネ定数Ks(N/mm):JIS K 6385に準拠して、静的特性試験の両方向負荷方式において、試験片の軸直角方向に変位速度20mm/分で0mm〜+4.5mmの範囲のたわみを3回負荷し、3回目の負荷過程での荷重−たわみの関係を測定し、この関係を用いて同規格に記載の計算方法によりたわみの範囲=1.5〜3.0mmで算出した。
(2−2)動的バネ定数Kd100(N/mm):JIS K 6385に準拠して、動的性質測定試験の非共振方法において、10%(3mm)たわむ荷重の下で、試験片の軸直角方向に振動数100Hz、振幅±0.05mmの条件で測定した。
(2−3)動倍率Kd100/Ks:JIS K 6385に準拠して計算した。
(3)耐オゾン性
JIS K 6259に準拠し、オゾン濃度50pphm、40℃、0〜20%伸張条件下で動的オゾン劣化試験を24時間及び100時間行い、耐オゾン性を評価した。評価は中央部に亀裂が生じるか否かで判定した。
(4)絶縁抵抗
加硫ゴムシートに1000Vの直流電圧を印加し、電気抵抗(MΩ)を測定した。
実施例1
(1)ポリブタジエンゴムA(ブタジエン系重合体、(B)成分)の製造
<触媒の調製>
乾燥及び窒素置換された容積100mLのゴム栓付きガラスビンに、順次、ブタジエンのシクロヘキサン溶液(ブタジエン濃度:15.2質量%)7.11g、ネオジムネオデカノエートのシクロヘキサン溶液(ネオジム濃度:0.56M)0.59mL、メチルアルミノキサン(MAO)[東ソーファインケム(株)製PMAO]のトルエン溶液(アルミニウム濃度:3.23M)10.32mL、水素化ジイソブチルアルミニウム[関東化学(株)製]のヘキサン溶液(0.90M)7.77mLを投入し、室温で2分間熟成した後、塩化ジエチルアルミニウム[関東化学(株)製]のヘキサン溶液(0.95M)1.45mLを加え、室温で時折撹拌しながら15分間熟成した。こうして得られた触媒溶液中のネオジム濃度は、0.011M(mol/L)であった。
<ポリブタジエンゴムAの製造>
乾燥及び窒素置換された容積約1Lのゴム栓付きガラスビンに、乾燥精製された1,3−ブタジエンのシクロヘキサン溶液及び乾燥シクロヘキサンをそれぞれ投入し、ブタジエンのシクロヘキサン溶液(ブタジエン濃度:5.0質量%)400gが投入された状態とし、10℃の水浴中で十分に冷却した。次に、上記のようにして調製した触媒溶液1.56mL(ネオジム換算で0.017mmol)を加え、10℃の水浴中で3.5時間重合を行った。引き続き、老化防止剤2,2'−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)のイソプロパノール溶液(NS−5濃度:5質量%)2mLを加えて反応を停止させ、更に、微量のNS−5を含むイソプロパノール溶液中で再沈澱させた後、常法にて乾燥して、ほぼ100%の収率でポリブタジエンゴムAを得た。
該重合体の特性を第1表に示す。なお、ミクロ構造の分析は、上述したFT−IRで行った。また、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、GPC[東ソー(株)製、HLC−8020]により検出器として屈折計を用いて測定し、単分散ポリスチレンを標準としたポリスチレン換算で示した。なお、カラムはGMHXL[東ソー(株)製]で、溶離液はテトラヒドロフランである。
(2)ゴム組成物の調製
第2表に示す配合割合の各成分を混練りしてゴム組成物を調製した。該ゴム組成物について、上記評価方法にて評価した。結果を第2表に示す。
実施例2及び3
実施例1において、(A)天然ゴムと(B)ブタジエンゴムの配合割合を第2表に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を得た。実施例1と同様に評価した結果を第2表に示す。
比較例1
実施例1において、ポリブタジエンゴムAに代えて、ポリブタジエンゴムB(市販品、宇部興産(株)製「150L」、シス含量97.2%)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を得た。実施例1と同様に評価した結果を第2表に示す。
比較例2
実施例1において、ポリブタジエンゴムAに代えて、ポリブタジエンゴムC(市販品、JSR(株)製「BR01」、シス含量96.3%)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を得た。実施例1と同様に評価した結果を第2表に示す。
比較例3
実施例1において、ポリブタジエンゴムAに代えて、EPDM(市販品、住友化学(株)製「エスプレン586」)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を得た。実施例1と同様に評価した結果を第2表に示す。
比較例4
実施例1において、(B)ポリブタジエンゴムを配合しなかったこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を得た。実施例1と同様に評価した結果を第2表に示す。
比較例5
実施例1において、(A)天然ゴムと(B)ポリブタジエンゴムAの配合割合を第2表に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を得た。実施例1と同様に評価した結果を第2表に示す。
比較例6
実施例1において、カーボンブラックの配合量を第2表に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を得た。実施例1と同様に評価した結果を第2表に示す。
Figure 2009298881
Figure 2009298881
Figure 2009298881
[注]
1)天然ゴム:「RSS#1」
2)ポリブタジエンゴムA:実施例1に記載の方法で製造(シス含量98.8%)
3)ポリブタジエンゴムB:市販品(宇部興産(株)製「150L」、シス含量97.2%)
4)ポリブタジエンゴムC:市販品(JSR(株)製「BR01」、シス含量96.3%)
5)EPDM:エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、住友化学(株)製「エスプレン586」
6)シリカ:東ソー・シリカ(株)製「ニップシールVN3」、BET比表面積175m2/g
7)カーボンブラック(N550):FEF;ヨウ素吸着量=43g/kg、DBP吸油量=121ml/100g、N2SA(窒素吸着比表面積)=42m2/g、旭カーボン(株)製「旭#65」
8)老化防止剤;6C(精工化学(株)製「オゾノン6C」)
9)ワックス;Rhein Chemie社製「Antilux654」
10)シランカップリング剤;DEGUSSA社製「Si69」
11)プロセスオイル;ナフテン系オイル
12)加硫促進剤;CBS(シクロヘキシルベンゾチアジルスルフェンアミン、大内新興化学工業(株)製)
第2表から下記のことが分かる。
ゴム成分として、天然ゴムのみを用いた比較例4では、加硫ゴムは良好な常態物性を有するものの、耐オゾン性が悪く、かつ動倍率も高い。また、ゴム成分として、シス−1,4結合含量が98.0%未満のブタジエンゴムを用いた比較例1及び2においては、耐オゾン性が悪い。ゴム成分として、天然ゴムとEPDMの組合せを用いた比較例3では、破断強度Tbが低く、かつ動倍率が高い。さらに、天然ゴムに対するブタジエンゴムの配合割合が過度に大きい比較例5では、破断伸び(Eb)及び破断強度(Tb)が低く、また、カーボンブラックを10体積%より多く含有する比較例6では、絶縁性が悪い。
これに対し、本発明のゴム組成物である実施例1〜3は、いずれも常態物性、動倍率、耐オゾン性及び絶縁性が良好である。
本発明の防振ゴム組成物は、破壊特性等の常態物性及び低動倍率を損なわずに耐オゾン性、電気絶縁性を向上させた防振ゴムを与える。この防振ゴムは鉄道車輌用、特に鉄道車輌用ブッシュに好適に用いられる。

Claims (15)

  1. ゴム成分として、(A)ジエン系ゴム及び(B)1,3−ブタジエン単量体単位を含むブタジエン系重合体を含有し、充填材として(C)カーボンブラックを含有する防振ゴム組成物であって、(B)成分における1,3−ブタジエン単量体単位中のフーリエ変換赤外分光法で測定したシス−1,4結合含量が98.0%以上であり、かつビニル結合含量が0.3%以下で、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.6〜3.5であり、(C)カーボンブラックの体積分率が10%以下であり、かつ(A)成分と(B)成分との質量比が40:60〜80:20であることを特徴とする防振ゴム組成物。
  2. 前記(B)成分におけるシス−1,4結合含量と前記ビニル結合含量とが、下記式(I):
    (ビニル結合量)≦0.25×{(シス−1,4結合含量)−97}(%)・・・(I)
    の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の防振ゴム組成物。
  3. 前記(B)成分における重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.6〜2.7であることを特徴とする請求項1又は2に記載の防振ゴム組成物。
  4. 前記(B)ブタジエン系重合体が、1,3−ブタジエン単量体単位80〜100質量%と1,3−ブタジエンと共重合可能なその他の単量体単位20〜0質量%とからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の防振ゴム組成物。
  5. 前記(B)ブタジエン系重合体が、1,3−ブタジエン単量体単位のみからなることを特徴とする請求項4に記載の防振ゴム組成物。
  6. 前記(B)ブタジエン系重合体の数平均分子量(Mn)が100,000〜500,000であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の防振ゴム組成物。
  7. 前記(B)ブタジエン系重合体の数平均分子量(Mn)が150,000〜300,000であることを特徴とする請求項6に記載の防振ゴム組成物。
  8. 前記(A)ジエン系ゴムが天然ゴムである請求項1〜7のいずれかに記載の防振ゴム組成物。
  9. 前記(C)カーボンブラックが、ヨウ素吸着量10〜70g/kg及びDBP吸油量30〜180ml/100gのものである請求項1〜8のいずれかに記載の防振ゴム組成物。
  10. 充填材として、さらに(D)シリカを含む請求項1〜9のいずれかに記載の防振ゴム組成物。
  11. 前記シリカが、BET比表面積70〜230m2/gのものである請求項10に記載の防振ゴム組成物。
  12. 前記充填材の含有量が、ゴム成分100質量部に対して10〜80質量部である請求項1〜11のいずれかに記載の防振ゴム組成物。
  13. さらに、シランカップリング剤を、シリカに対して1〜10質量%の割合で含む請求項10〜12のいずれかに記載の防振ゴム組成物。
  14. 請求項1〜13のいずれかに記載の防振ゴム組成物の加硫物からなる防振ゴム。
  15. 鉄道車輌に用いられる請求項14に記載の防振ゴム。
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