JP2009293160A - スクリーン紗用ポリエステルモノフィラメント - Google Patents

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正夫 内田
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有希 岡
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Abstract

【課題】スクリーン紗製織時において、白粉スカムの発生が少ないばかりではなく、わずかに発生する白粉スカムなどの異物を容易に除去でき、得られる紗には経筋などの欠点もなく、品位の優れた高密度スクリーン紗を製造するのに好適なポリエステルモノフィラメントを提供すること。
【解決手段】スクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントであって、その表面にはアルキル基の炭素数が12以上であるアルキルホスフェートアルカリ金属塩を含有する油剤であって、かつ30℃に於ける脱水粘度が20〜100mm/sである油剤が付与されていることを特徴とする。さらには、アルキルホスフェートアルカリ金属塩がカリウム塩であることや、ジアルキルホスフェートアルカリ金属塩を含むものであることが好ましい。また、分子量300〜450の脂肪族一塩基酸エステル、エチレンオキサイド付加多価アルコールエステル、アルキレンオキサイド付加アルキルエーテルを含有する油剤であることが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、スクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントに関する。さらに詳細には、製織時における白粉スカムの発生が少なく、品質の優れたスクリーン紗を効率よく製造することができるポリエステルモノフィラメントに関する。
従来ポリエステルモノフィラメント(以下、単に繊維と称することがある)、特にポリエチレンテレフタレートモノフィラメントは、多くの優れた特性を有しているため、スクリーン印刷用のスクリーン紗用途に広く使用されてきた。近年では、エレクトロニクス、高級印刷などの分野にも進出し、モノフィラメントの細デニール化、高強力化、耐久性などに対する要求が高まっている。
しかしながら、このポリエステルモノフィラメントを用いてスクリーン紗を製織する際には、白粉スカムが発生して種々の障害を引き起こしやすい。特に繊度が33dtex未満の細dtexモノフィラメントを経糸として使用する、260メッシュ以上の高密度スクリーン紗を製織する場合に多く発生しやすい。この白粉スカムは、繰返し行なわれる筬の擦過により発生するものであり、特に破断強度が5.5g/dtex以上という高強度ポリエステルモノフィラメントの場合には、通常、高倍率で延伸して高配向・高結晶化させるために、擦過によるポリマーの削れは著しく増加する。このようにして発生した白粉スカムは、筬羽に付着して生機に経筋斑を発生させたり、一部が織物中に織りこまれて精密印刷時に欠点の要因になるといった品質問題を引き起こすため、製織を中断して筬羽を清掃しなければならず、生産効率を著しく悪化させる。
このような問題を解消するため、繊維と筬羽間の摩擦抵抗を低減させる処理剤をモノフィラメント表面に付与する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、変性シリコーンを含有する処理剤を付与する方法が提案されている、確かに、モノフィラメントと筬羽間の摩擦抵抗が低減して製織時の白粉スカムは減少するものの、未だスカムの発生量は多く高密度スクリーン紗用としては不十分であった。また特許文献2には、油膜強化剤としてα−オレフィン/不飽和二塩基酸共重合体のエステル化合物含有油剤を付与した糸が提案されている。油膜が強化されたことによって擦過による糸の損傷が少なくなり白粉スカムの量は少なくなったものの、スカムが粘着気味で清掃性し難く、筬の清掃周期を長くすることが困難であるという問題があった。
特開平6−108318号公報 特開平11−124772号公報
本発明は、上記従来技術の有する問題点に鑑みなされたもので、その目的は、スクリーン紗製織時において、白粉スカムの発生が少ないばかりではなく、わずかに発生する白粉スカムなどの異物を容易に除去でき、得られる紗には経筋などの欠点もなく、品位の優れた高密度スクリーン紗を製造するのに好適なポリエステルモノフィラメントを提供することにある。
本発明のスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントは、ポリエステルモノフィラメントの表面には、アルキル基の炭素数が12以上であるアルキルホスフェートアルカリ金属塩を含有する油剤であって、かつ30℃に於ける脱水粘度が20〜100mm/sである油剤が付与されていることを特徴とする。さらには、アルキルホスフェートアルカリ金属塩がカリウム塩であることや、ジアルキルホスフェートアルカリ金属塩を含むものであることが好ましい。
さらには、油剤が下記(a)〜(d)を含有する油剤であることが好ましい。
(a)分子量300〜450の脂肪族一塩基酸エステル;50〜70重量%
(b)エチレンオキサイド付加多価アルコールエステル;15〜30重量%
(c)アルキレンオキサイド付加アルキルエーテル;5〜10重量%
(d)アルキル基の炭素数が12以上であるアルキルホスフェートアルカリ金属塩;1〜10重量%
また、油剤の付着量としては、繊維重量に対して0.1〜0.4重量%であることが好ましく、ポリエステルモノフィラメントとしては、繊度が6.6〜33dtex、破断強度が5.5g/dtex以上、10%荷伸強度が3.6g/dtex以上であることが好ましい。
本発明によれば、スクリーン紗製織時において、白粉スカムの発生が少ないばかりではなく、わずかに発生する白粉スカムなどの異物を容易に除去でき、得られる紗には経筋などの欠点もなく、品位の優れた高密度スクリーン紗を製造するのに好適なポリエステルモノフィラメントが提供される。
本発明のポリエステルモノフィラメントとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートまたはポリブチレンテレフタレートよりなるモノフィラメントを主たる対象とする。しかし、これらのポリエステルに物性を損わない範囲で第3成分を共重合および/または混合したポリエステルよりなるモノフィラメントであってもよい。ポリエステルの固有粘度(35℃のオルソクロロフェノール溶液で測定)は、0.5以上、好ましくは0.7〜1.2の範囲が適当である。また、該モノフィラメントは、マルチフィラメントとして溶融紡糸、延伸した後に分繊しても、また最初からモノフィラメントとして溶融紡糸、延伸してもよい。
本発明のポリエステルモノフィラメントは、繊度が33dtex以下であるときに効果が顕著であり好ましい。繊度が33dtexを越える場合には、比較的低メッシュの、高精度の印刷が要求されない分野のスクリーン紗として利用されることが多いため、厳しい品質の要求はされない場合が多い。繊度は小さいほど高精度の印刷を行うには好ましいが、余りに小さくなりすぎると得られる紗の寸法安定性が低下して高精度の印刷が困難になるので、6.6dtex以上が好ましい。
さらに、本発明のポリエステルモノフィラメントは、破断強度が5.5g/dtex以上、好ましくは5.5〜6.4g/dtexで、且つ10%荷伸強度が3.6g/dtex以上(荷伸曲線における10%伸長時の引張強度が3.6g/dtex以上)、好ましくは3.6〜4.5g/dtexの範囲であることが好ましい。ここで破断強度が5.5g/dtex未満、10%荷伸強度が3.6g/dtex未満のモノフィラメントにあっては、強度が小さいために紗製織時の筬による高張力下での擦過により、部分的に弱い箇所が他より部分的に大きな伸長を受けやすくなり、得られる紗に経筋斑やたるみなどが発生して、品位が低下しやすくなる。
本発明においては、上記モノフィラメントの表面には、アルキル基の炭素数が12以上であるアルキルホスフェートアルカリ金属塩を含有する油剤であって、かつ30℃に於ける脱水粘度が20〜100mm/sである油剤が付与されていることが肝要である。
モノフィラメント表面にアルキル基の炭素数が12以上であるアルキルホスフェートアルカリ金属塩を含有する油剤を付与することにより、耐熱性や油膜成形性を保持しながら付与処理後の乾燥時に対応する脱水粘度を下げることが可能となる。金属塩としてはカリウム塩であることが好ましい。また、アルキルホスフェートアルカリ金属塩としてジアルキルホスフェート金属塩を含むことが脱水粘度を下げるためには効果的であり、各アルキル基の炭素数としては12から24、さらに好ましくは18以下の範囲であることがより好ましい。また油剤中の含有量としては1〜10重量%であることが好ましい。
また、脱水粘度が20mm/s未満では延伸時、走行糸がヒータープレートやホットローラーで熱処理される際、油剤の劣化による発煙が大きく工場内の環境が悪化するため採用することは困難である。一方、脱水粘度が100mm/sより大きくなると、製織時、筬や綜こうとの擦過によるポリマー削れと油剤が相まって粘着性の高いスカムになり、清掃性が極めて悪くなり、製織性が低下する問題が発生する。
更に本発明では該油剤成分として、アルキルホスフェートアルカリ金属塩(以下d成分)に加えて、下記(a)〜(c)の成分を含有することが好ましい。
(a)分子量300〜450の脂肪族一塩基酸エステル 50〜70重量%
(b)エチレンオキサイド付加多価アルコールエステル 15〜30重量%
(c)アルキレンオキサイド付加アルキルエーテル 5〜10重量%
(d)アルキル基の炭素数が12以上であるアルキルホスフェートアルカリ金属塩;1〜10重量%
ここで上記(d)成分以外の(a)〜(c)の各成分について説明する。
(a)成分である脂肪族一塩基酸エステルとは、一価の脂肪族アルコールと一価の脂肪族カルボン酸とのエステル化合物をいい、この分子量が450を越えると走行糸と製織機糸導等との摩擦が増大して白粉スカムが発生しやすくなり、一方、分子量が300未満になると、製糸時の加熱により揮散して発煙を生じ、作業環境汚染の問題を引き起こしやすくなるので、分子量は300〜450の範囲のものが特に好ましい。また、2価以上の多塩基酸エステルでは、白粉スカム発生の抑制効果が小さくなるので好ましくない。好ましく用いられる脂肪族一塩基酸エステルとはとしては、オクチルラウレート、オクチルパルミテート、オクチルステアレート、イソトリデシルラウレート、イソトリデシルオレート、ラウリルオレートなどがあげられる。かかる脂肪族一塩基酸エステルの処理剤有効成分中に占める割合は、少なすぎると平滑性が不足して、製織時の白粉スカム発生が増加すると同時にモノフィラメント製造工程でのトラブルも増加し、一方、多すぎると安定した油剤エマルジョンを得ることが困難になるので、50〜70重量%の範囲が適当である。
(b)成分であるエチレンオキサイド付加多価アルコールエステルとは、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパンジオレエート、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールジオレエート、エチレンオキサイド付加ソルビタントリラウレート、エチレンオキサイド付加ソルビタントリオレエート、エチレンオキサイド付加グリセリンジオレエート、エチレンオキサイド付加水添ヒマシ油トリラウレート等が挙げられる。なかでも、エチレンオキサイド付加ソルビタンのトリエステルまたはエチレンオキサイド付加水添ヒマシ油のトリエステルが好ましい。かかる剤の油剤中含有量は、少なすぎると油剤エマルジョンの安定性が低下し、一方、多くなりすぎると繊維と筬羽の摩擦抵抗が大きくなりすぎて白粉スカムの抑制が難しくなるので、15〜30重量%の範囲が適当である。
さらに、(c)成分であるアルキレンオキサイド付加アルキルエーテルは、前記脂肪族一塩基酸エステルの乳化作用を有すると同時に、油剤の繊維表面への濡れ性を向上させて、油剤の付着斑による製織時の白粉スカム発生を防止する作用を有する。好ましく用いられるアルキレンオキサイド付加アルキルエーテルとしては、炭素数8〜15のアルコールにプロピレンオキサイドおよび/またはエチレンオキサイドを3〜9モル、好ましくは7〜9モル付加させたものが挙げられる。ここでアルコールは直鎖状でも分岐状でもよいが、第2級または第3級、特に第2級のアルコールは、上記の効果がより顕著になるので好ましい。かかるアルコールとしては、2ーエチルヘキシルアルコール、6ードデシルアルコール、炭素数12〜14の第2級アルコール等を例示することができる。このようなアルキレンオキサイド付加アルキルエーテルの油剤中含有量は、少なすぎると油剤を繊維表面に均一に付着させることが困難となり、一方、多すぎると摩擦抵抗が大きくなりすぎ、また繊維表面の油膜強度も低下して製織時の白粉スカムが増大するため、5〜10重量%の範囲が適当である。
本発明で用いられる油剤は、さらに通常油剤成分として用いられている帯電防止剤、酸化防止剤等を含有することもでき、これらは従来公知のものを適宜選択して使用することができる。
上記油剤のモノフィラメントへの付与は、従来公知の手段いずれも採用することができるが、なかでも通常の溶融紡糸工程でエマルジョンの形で付与する方法が好ましい。もちろん、延伸・整経の各工程中あるいはその前後で、エマルジョンあるいはストレートの状態で付与してもかまわない。
油剤のモノフィラメントへの付着量は、あまりに少ないと平滑性不足による毛羽、断糸などの問題が発生しやすく、逆に多すぎると粘性アップによるスカムの発生が増加する傾向にあるので、モノフィラメント重量を基準として0.1〜0.4重量%(有効成分として)の範囲が特に好ましい。
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例における各評価項目は下記の方法で測定した。
<強伸度>インストロンTM−M型(米国インストロン社製)を使用し、20℃×65%RHに調節された雰囲気下、測定フィラメント長20cm、ストレッチ速度100%/分の条件で、任意の10パーンについて、各パーンとも5サンプル測定しその平均値で表した。
<擦過試験>糸長20mのモノフィラメントを、30cmの間隔で相対した2本の把持棒に、0.3mmのピッチで平行に30往復引掛け、負荷総加重3gの緊張状態で固定し、このモノフィラメントの中央に設置された摺動可能な擦過用筬羽に通して400回/分の速度で120分間擦過し、筬羽に付着したスカム量を観察して下記4段階に級付けをした。
◎ :白粉スカムが殆ど発生しない
○ :粘着性が殆どなく白粉スカムが少ない
△ :粘着気味で白粉スカムやや多い
× :粘着気味で白粉スカムが多い
[実験例1〜6]
ポリエチレンテレフタレートを溶融し、孔径が0.65mmのノズル孔を有する紡糸口金から紡糸温度295℃、延伸後の繊度が18dtexとなる割合で吐出し、冷却固化させた後に表1に記載の処理剤を繊維重量に対して0.25重量%付着させ、引取速度900m/分で一旦巻取った。得られた未延伸糸を温度110℃で延伸し、ついで温度190℃で高温熱処理して、繊度が18dtexで、表1に記載する特性を有する各種ポリエステルモノフィラメントを得た。これらのモノフィラメントの擦過試験結果を表1に併せて示す。なお、本発明の要件を満たす実施例は1及び2である。
また、得られたモノフィラメントを整経し、経糸本数を10,177本、緯糸には経糸と同じモノフィラメントを用いて180回/分の速度で300メッシュのスクリーン紗を製織した。製織した結果も併せて表1示す。
表中A反率は、白粉スカム詰まりによる経糸切れ、生機の経筋斑、製織時の筬擦過による経筋、ゆるみなどにより判定するもので、これらの少ないものをA反といい、この割合が88%以上を良好と判定した。
Figure 2009293160

Claims (6)

  1. ポリエステルモノフィラメントであって、該モノフィラメントの表面には、アルキル基の炭素数が12以上であるアルキルホスフェートアルカリ金属塩を含有する油剤であって、かつ30℃に於ける脱水粘度が20〜100mm/sである油剤が付与されていることを特徴とするスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメント。
  2. 該アルキルホスフェートアルカリ金属塩がカリウム塩である請求項1記載のスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメント。
  3. 該アルキルホスフェートアルカリ金属塩が、ジアルキルホスフェートアルカリ金属塩を含むものである請求項1または2記載のスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメント。
  4. 該油剤が下記(a)〜(d)を含有する油剤である請求項1〜3のいずれか1項記載のスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメント。
    (a)分子量300〜450の脂肪族一塩基酸エステル;50〜70重量%
    (b)エチレンオキサイド付加多価アルコールエステル;15〜30重量%
    (c)アルキレンオキサイド付加アルキルエーテル;5〜10重量%
    (d)アルキル基の炭素数が12以上であるアルキルホスフェートアルカリ金属塩;1〜10重量%
  5. 油剤の付着量が、繊維重量に対して0.1〜0.4重量%である請求項1〜4のいずれか1項記載のスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメント。
  6. ポリエステルモノフィラメントの繊度が6.6〜33dtex、破断強度が5.5g/dtex以上、10%荷伸強度が3.6g/dtex以上である請求項1〜4のいずれか1項記載のスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメント。
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