JP2020143410A - ポリエステルモノフィラメント - Google Patents
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Abstract
【課題】 製織工程での糸抜けを抑制し、優れた製織性、織物品位が得られるポリエステルモノフィラメントを提供する。【解決手段】 油剤付着量が0.10〜1.00重量%であり、付着している油剤中の重量平均分子量600以下の炭化水素または脂肪酸アルキルエステルからなる成分の割合が油剤の全成分あたり40重量%以下であることを特徴とするポリエステルモノフィラメント。【選択図】なし
Description
本発明は、スクリーン紗やフィルターなどの高度な精密性を要求される品位の優れたメッシュ織物を、糸抜けや織機の停台がなく製織性よく得ることが可能なポリエステルモノフィラメントに関するものである。
従来、スクリーン紗やフィルターとしては、シルクなどの天然繊維やステンレスなどの無機繊維からなるメッシュ織物が広く使用されてきたが、近年、柔軟性・耐久性・コスト競争力に優れた合繊メッシュが好んで使用されてきている。
スクリーン印刷は、例えばプラズマディスプレイ(以下、PDPと称する)を構成する前面電極基板、背面電極基板への電極ペースト塗布やコンピュータグラフィックによるデザイン物の高精密印刷や、電子回路印刷などに用いられる。こうした用途では、広い範囲での高い印刷精度が要求される。従って、使用するスクリーン紗は、高張力の紗張りに耐えうる寸法安定性を持ち、均一かつ高いメッシュ数であることが重要である。さらに、PDPの大画面化などに伴い、使用するスクリーン紗も数m以上の広い範囲にかけて欠点がない、高品位なものが要求されている。一方、フィルターは、例えばエンジンオイルや浄水用などの濾過機能を必要する用途で用いられており、スクリーン紗と同等の原糸特性を必要とする。
上述の要求性能を実現するために使用するポリエステルフィラメントとして求められる特性としては、細繊度かつ高強度、さらには寸法安定性に優れるモジュラス(一定長伸長時の強度)(以下、Moと称する)が高いモノフィラメントであることが挙げられる。ポリエステルモノフィラメントを高強度、高Mo化するためには、原糸の製造工程において高倍率で延伸を行い、高配向、高結晶化する必要がある。
しかし、高倍率延伸を行うと、急激な構造変化により、繊維内部に力学的な歪み、すなわち応力が発生し蓄積される。この力学的な歪みは時間とともに減少していく。これを応力緩和という。高倍率延伸で得られた繊維をパーン巻きとした際はパーンパッケージ全体に均一に進まないことが多く、応力緩和の進んでいない部分は筋状の光沢異常となって現れてくる。この光沢異常をヒケと称している。
そしてパッケージのヒケは応力緩和が不均一であるほど発生しやすく、その程度も強いことが知られている。このため、繊維長手方向の応力緩和の均一性の向上、もしくは応力緩和そのものを実害のないレベルまで軽減させることが、非常に重要となるのである。
また、極めて高密度で製織するため、筬をはじめとする織機の各部位で強い擦過をうけることになり、高倍率で延伸した高配向の原糸であるほど、繊維表面が削り節状に削り取られ易く、これが紗に織り込まれ残った場合、欠点に直結する問題がある。また、削り取られたスカムによって織機が汚染されてしまうため、定期的に清掃する必要があり、スカム発生が多いほど生産性が低下する。
かかる要求に対して従来さまざまな技術が提案されている。例えば、複合モノフィラメントに関する特許文献1には、細繊度・高強度・高Moで高品位のスクリーン紗を得る技術が開示されている。これらの文献には、パーンヒケに関して、繊維長手方向の湿熱収縮応力差を制御することが開示されている。特許文献2には、直接紡糸延伸法によるスピンドル巻き上げ方式で、ボビン上にテーパー角を付けて巻き上げ、テーパー角・糸−糸摩擦係数・解舒張力変動勾配・パッケージ肉層の巻厚1mm部分のポリエステル湿熱収縮応力変動を規定したパッケージとすることで、スレ毛羽、ヒケ、織段などの欠点を製織にて発生させない技術が開示されている。特許文献3には、原糸の強伸度を規定し、酸化チタンの平均粒径、粒径分布、特に特定粒径範囲の存在割合および一定値以上の粗大粒子の存在割合を規定したモノフィラメントとすることで製織時に削れやスカム発生が少なく、かつ高い印刷精度と寸法安定性を両立させる技術が開示されている。
しかしながら、スクリーン紗やフィルターのメッシュ織物の軽量化・薄地化・高密度化に伴い、製織工程での緯糸の糸入れ回数が増加している。このような織物は、主にプロジェクタイル織機で製織されており、この緯糸の糸入れ回数の増加に伴い、特許文献1、2、および3に記載のモノフィラメントでは、緯糸の糸入れの際に、糸がプロジェクタイルのキャップから抜け、織機が停台し、さらに該当の部分が欠点となる問題が生じている。
そこで、本発明は上記の問題点を解決しようとするものであり、製織工程での糸抜けを抑制し、優れた製織性、織物品位が得られるポリエステルモノフィラメントを提供することを課題とする。
上記課題は、下記の構成によって解決することができる。
(1)油剤付着量が0.10〜1.00重量%であり、付着している油剤中の重量平均分子量600以下の炭化水素または脂肪酸アルキルエステルからなる成分の割合が油剤の全成分あたり40重量%以下であり、下記(a)〜(c)を満たすことを特徴とするポリエステルモノフィラメント。
(a)繊度が3〜40dtex
(b)強度が4.5〜10.0cN/dtex
(c)5%伸長時の強度(5%Mo)が2.5〜6.0cN/dtex
(2)ΔFmμs≦0.15、Fdμd≦0.30であることを特徴とする(1)に記載のポリエステルモノフィラメント。
(3)付着している油剤中の重量平均分子量500以下の炭化水素または脂肪酸アルキルエステルからなる成分の割合が油剤の全成分あたり30重量%以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載のポリエステルモノフィラメント。
ここで、ΔFmμsは糸−金属(鏡面)間静摩擦変動幅(最大値と最小値の差)、Fdμdは糸−梨地間動摩擦を示す。
(1)油剤付着量が0.10〜1.00重量%であり、付着している油剤中の重量平均分子量600以下の炭化水素または脂肪酸アルキルエステルからなる成分の割合が油剤の全成分あたり40重量%以下であり、下記(a)〜(c)を満たすことを特徴とするポリエステルモノフィラメント。
(a)繊度が3〜40dtex
(b)強度が4.5〜10.0cN/dtex
(c)5%伸長時の強度(5%Mo)が2.5〜6.0cN/dtex
(2)ΔFmμs≦0.15、Fdμd≦0.30であることを特徴とする(1)に記載のポリエステルモノフィラメント。
(3)付着している油剤中の重量平均分子量500以下の炭化水素または脂肪酸アルキルエステルからなる成分の割合が油剤の全成分あたり30重量%以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載のポリエステルモノフィラメント。
ここで、ΔFmμsは糸−金属(鏡面)間静摩擦変動幅(最大値と最小値の差)、Fdμdは糸−梨地間動摩擦を示す。
本発明によれば、製織工程での糸抜けが抑制され、優れた製織性、織物品位が得られるポリエステルモノフィラメントを提供することができる。
本発明のポリエステルモノフィラメントは、例えばポリエチレンテレフタレート(以下、PETと称する)を主成分とするポリエステルを用いることができる。
本発明で用いるPETとしては、テレフタル酸を主たる酸成分とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分とする。このポリエステルは、90モル%以上がエチレンテレフタレートの繰り返し単位からなる。本発明で用いるPETは、10モル%未満の割合で、他のエステル結合を形成可能な共重合成分を含むことができる。
共重合成分としては、例えば、酸成分として、イソフタル酸、フタル酸、ジブロモテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オルトエトキシ安息香酸のような二官能性芳香族カルボン酸や、セバシン酸、シュウ酸、アジピン酸、ダイマー酸のような二官能性脂肪族カルボン酸、そしてシクロヘキサンジカルボン酸などのジカルボン酸類が挙げられる。また、グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールAや、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコールなどを挙げることができる。
本発明のポリエステルモノフィラメントには、必要に応じて、艶消剤として二酸化チタン、滑剤としてシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤としてヒンダードフェノール誘導体、耐熱性向上のための添加剤を添加することができる。さらには、難燃剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤および着色顔料等も添加することができる。
本発明のポリエステルモノフィラメントには、複合繊維でも単成分繊維でも使用できる。複合繊維の場合には、固有粘度(以下、IV(Inherent Viscosity)と称する)の異なるポリエチレンテレフタレートを芯鞘型に複合してなる芯鞘型複合ポリエステルモノフィラメントとすることが好ましい。繊維物性、製織性を容易に両立できるからである。また芯鞘型とは、一方のポリエステルが他方のポリエステルによって完全に覆われた繊維断面形状をいう。繊維表面のポリエステルを鞘成分、鞘成分に覆われた繊維内部のポリエステルを芯成分とする。断面形状については必要により、異形断面や芯成分が偏心していてもかまわない。安定した製糸性、高次加工性のため、芯成分と鞘成分は同芯円状に配置し、丸断面に近いことが好ましい。
本発明のポリエステルモノフィラメントの繊維形態が芯鞘型複合繊維や単成分繊維の場合には、IVの高いPETを芯成分や単成分として用いることが好ましい。繊維内部は配向度が高く、結晶化も促進するので、スクリーン紗やフィルターのメッシュ用のモノフィラメントとして必要な高い強度と伸度兼ね備えたポリエステルモノフィラメントを製造することができることから、0.70以上が好ましく、更に好ましくは0.90以上である。また、溶融紡糸における溶融ポリマー押出しと成形等の容易さの点から、1.40以下が好ましく、製造コストや工程途中の熱や剪断応力によって起きる分子鎖切断による分子量低下の影響を考慮すると、更に好ましくは、1.30以下である。
一方、鞘成分に関しては、良好な耐スカム性を得るという観点から、鞘成分に用いるポリエステルのIVを芯成分ポリエステルのIVより低くすることが好ましい。鞘成分の低粘度ポリエステルのIVは、安定した製糸性が得るために0.40以上にすることが好ましく、更に好ましくは0.50である。また、良好な耐摩耗性、すなわち耐スカム性を得るために、0.70以下にすることが好ましい。
また、芯成分と鞘成分のIV差は0.20〜1.00が好ましい。これにより、鞘成分のポリエステル、すなわちポリエステルモノフィラメント表面の配向度および結晶化度を抑えることができ、より良好な耐スカム性を得ることができる。溶融紡糸の口金吐出孔内壁面における剪断応力は鞘成分に集中するため、芯成分が受ける剪断応力は小さくなる。その結果、芯成分は分子鎖配向度が低く、かつ均一な状態で紡出されるため、最終的に得られるポリエステルモノフィラメントの強度が向上する。芯成分と鞘成分のIV差は0.30〜0.70がより好ましい。
更に、スクリーン紗やフィルターのメッシュの製造工程は高密度の織物を高速で製織するため、極めて多数回、筬などとの強い摩擦にさらされることとなる。フィラメント表面の結晶化の進行と相まって、フィラメント表面の一部が削り取られ、ヒゲ状あるいは粉状のかす、いわゆるスカムが発生する場合がある。スカムは量的に少量であっても織機に飛散し、その一部はスクリーン紗の中に織り込まれ、製品品位を低下させる恐れがある。従って、スカムは発生しないほうが好ましい。
本発明のポリエステルモノフィラメントの芯成分や単成分のPETに添加される無機粒子は、芯成分や単成分全量に対して0.5質量%未満であることが好ましい。一方、鞘成分のPETは、ポリエステルモノフィラメントの耐摩耗性を向上させるため、無機粒子を鞘成分全量に対して0.1〜0.5質量%程度添加させることが好ましい。
本発明のポリエステルモノフィラメントが複合繊維の時の芯鞘複合比は、質量%比で70:30〜90:10が好ましく、75:25〜85:15がより好ましい。芯成分の割合を70%以上とすることで、細繊度であっても必要な強度が達成可能となるからである。また鞘成分の割合を10%以上とすることで、溶融紡糸の口金吐出孔内壁面における剪断応力を鞘成分が担うため、芯成分が受ける剪断応力は小さくなるためである。その結果、芯成分は分子鎖配向度が低く、かつ均一な状態で紡出されるため、最終的に得られるポリエステルモノフィラメントの強度が向上することになる。
本発明のパッケージを構成するポリエステルモノフィラメントは、巻き取られた糸条の繊度が3〜40dtex、破断強度が4.5〜10.0cN/dtex、5%Moが2.5〜6.0cN/dtexである。
ポリエステルモノフィラメントは製織性、特に緯糸飛送性を維持するため、繊度が3dtex以上であることが好ましく、フィルター用途、衣料用途の場合には40dtex以下が好ましく、目標とするフィルター、衣料を得るためには、20dtex以下がより好ましい。
また、ポリエステルモノフィラメントを高性能スクリーン紗に用いる場合、例えば、精密印刷に適した#400以上のハイメッシュスクリーン紗では、1本あたりのメッシュ格子間隔はおよそ63μmである。従って、印刷に必要な1格子あたりの開口を維持するために、3〜13dtexであることがより好ましく、4〜10dtexであることが更に好ましい。
本発明のポリエステルモノフィラメントの破断強度は、スクリーン紗やフィルターのメッシュ用途に用いた場合にはメッシュ数に比例して高い紗張り張力が必要となるため、4.5cN/dtex以上が好ましい。他方、他の物性、製糸性の低下を防ぐため10.0cN/dtex以下が好ましい。スクリーン紗用途ならば、より好ましくは6.0〜10.0cN/dtex、さらに好ましくは7.5〜10.0cN/dtexであるが、フィルターメッシュ用途ならば、やや低強度が好ましく、より好ましくは4.5〜7.5cN/dtex、さらに好ましくは4.5〜6.5cN/dtexである。
スクリーン紗やフィルターメッシュの製造時の紗張り後の張力やスクリーン印刷時の版離れ性を良好にするためには、ポリエステルモノフィラメントの5%Moも大切な指標である。一方、5%Moは、破断強度と正の相関関係を示す物性値の一つであるため単独で設定するのは難しい。本発明のポリエステルモノフィラメントの5%Moは、スクリーン印刷時の版離れ性が良好となること、及び、フィルター用途、衣料用途として好適に用いるため、2.5cN/dtex以上が好ましい。他方、他の物性、製糸性の低下を防ぐため、6.0cN/dtex以下が好ましい。より好ましくは2.5〜4.0cN/dtexである。
本発明のポリエステルモノフィラメントの伸度は、5〜50%が好ましい。伸度が5〜50%であることにより、ポリエステルモノフィラメントの断面が変形・扁平化せず、ヒケなどの抑制効果に優れる。また、製織をはじめとする高次加工工程での工程通過性、取り扱い性に優れ、衝撃吸収性や耐摩耗性が高まると共に、スクリーン紗やフィルターメッシュとした時に、紗伸び等発生しない優れた寸法安定性を得ることができる。より好ましくは10〜50%であり、さらに好ましくは10〜45%であるが、使用用途により伸度を選択することができる。
本発明のポリエステルモノフィラメントにおいて用いる紡糸油剤は、主に溶媒、平滑成分、制電成分から主に構成される。
溶媒は、紡糸油剤の平滑成分や制電成分などの有効成分を溶解、分散などさせるために用いられ、この溶媒は糸の製造工程において熱処理をされることなどによって糸表面から揮発する。溶媒が揮発することで、糸表面の油剤成分あたりの有効成分量が増加するため、揮発しやすい溶媒を用いることが好ましい。
制電成分は、糸表面に発生する静電気を抑制するために用いられ、公知のアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤などのイオン界面活性剤が用いられる。
平滑成分は、糸表面の潤滑性を向上させ、製織工程での糸解舒時、糸道ガイド通過時、経糸間通過時などの張力変動や糸切れを抑制し、工程通過性を安定化させるために用いられる。一般的に平滑成分として、エステル系、炭化水素系、エーテルエステル系などや分子中にポリオキシアルキレン基を有するエーテル型非イオン系界面活性剤や多価アルコール部分エステル型非イオン界面活性剤やポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル型非イオン界面活性剤などが用いられる。
スクリーン紗織物は、主にプロジェクタイル織機で製織されており、このプロジェクタイル織機は、一般的に糸をポリウレタンなどの樹脂やSUSなどの金属製のキャップ(グリッパー)で把持したプロジェクタイルと呼ばれる金属製の部品を打ち出すことで緯糸の糸入れを行っている。ここでポリウレタン製のキャップを適用時に、製織時の緯糸の糸入れの際に糸がキャップから抜ける現象が生じたため、要因分析した結果、糸の表面に付着している油剤中の特定成分がポリウレタン製のキャップへ浸透し、この特定成分の浸透によるポリウレタン製のキャップの膨潤による変形や脆化が原因で糸の把持力が低下していくことを突き止めた。
この特定成分は、油剤中の炭化水素または脂肪酸アルキルエステルからなる成分であり、これは重量平均分子量が600以下であると生じやすくなる。すなわち、炭化水素および脂肪酸アルキルエステルは、分子中に極性基が少なく、同じく分子中に極性基の少ないポリウレタンとの親和性は高いため、ポリウレタン製のキャップへこれらの成分は浸透しやすい。浸透すると、ポリウレタン分子鎖間にこれらの成分が入り込み分子鎖を押し広げることでキャップを膨潤させて変形を生じさせる。また、ポリウレタン分子鎖の構造が変化し、キャップの脆化を生じさせるため、糸とプロジェクタイルキャップの把持面積が減少し、糸とキャップの摩擦が低下し、糸がキャップ上で滑り、把持力が低下、糸抜けが発生したと推定している。
そこで、本発明において、安定した工程通過性であり、かつ製織工程での緯糸の糸入れの際に糸がプロジェクタイルのキャップから抜けることを抑制するためには、糸に付着している油剤中の重量平均分子量600以下の炭化水素または脂肪酸アルキルエステルからなる成分の油剤全成分あたりの割合を制御することが重要であることに至った。
本発明のポリエステルモノフィラメントは、付着している油剤中の重量平均分子量600以下の炭化水素または脂肪酸アルキルエステルからなる成分の割合が油剤全成分あたり40重量%以下である必要がある。かかる範囲とすることで、上記のポリウレタン製のキャップへ浸透が生じにくくなり、キャップの変形や脆化を抑制でき、かつ製織時の糸抜けも抑制できる。また、糸抜けの抑制により織機の停台回数が減少することから生産性が向上する。さらに、糸抜けの抑制、停台回数の低減によりスジやヒケといった織物欠点を減少することができ、優れた品位の織物が得られる。より好ましくは、油剤中の重量平均分子量が500以下であって30重量%以下である。油剤中の重量平均分子量600以下の炭化水素または脂肪酸アルキルエステルからなる成分は、糸に平滑性を付与するための平滑成分でもあり、これらの平滑成分は、糸の表面に膜もしくはその他の形状で存在することで、糸の摩擦を低減するなどの平滑効果をもたらし、製織時には糸の走行性が良好となり、織物へのヒケやスジの発生を抑制することができる。一般的に、平滑成分の重量平均分子量が高いほど膜形成能が向上して糸表面に平滑成分が残存しやすくなるが、平滑成分そのものの粘性抵抗による摩擦が生じるため、平滑成分の重量平均分子量が高いほど粘性抵抗による平滑性の低下が生じる傾向がある。一方で、重量平均分子量が低いほど粘性抵抗による平滑性の低下は生じないが、糸表面へ残存しにくくなる傾向がある。
本発明のポリエステルモノフィラメントは、油剤付着量が糸重量あたり0.10〜1.00重量%であることが必要である。1.00重量%以下とすることで、製織工程での糸道ガイド通過時などに過剰な油剤付着による油滴が発生しにくく、油滴による糸切れが生じるなど工程通過性が悪化しにくいため、好ましい。また、0.10重量%以上とすることで、糸表面の油剤成分の不足による製織工程での糸道ガイド通過時などに糸表面の削れやそれに伴うモノマー状の析出物(一般的にスカムと呼ばれる)が発生しにくいため、好ましい。このスカムがガイド上に堆積すると、糸切れが発生して工程通過性が悪化する。さらに、堆積したスカムによって走行糸条の張力が変動することで該当部分にヒケやスジが生じる、もしくはスカムが糸に取られて織物に入ることで該当部分が欠点となる。上述のことから、油剤付着量は糸重量あたり0.10〜1.00重量%であることが必要である。好ましくは0.15〜0.50重量%であり、より好ましくは0.20〜0.40重量%である。
本発明において、付着している重量平均分子量600以下の炭化水素または脂肪酸アルキルエステルからなる成分は、その分子構造は分子量以外限定されるものではない。
本発明において、炭化水素は上述の平滑成分として用いることに加えて、油剤を調整する際の溶媒として用いられている。
上述の通り、本発明において、糸に付着している油剤中の重量平均分子量600以下の炭化水素または脂肪酸アルキルエステルからなる成分の油剤全成分あたりの割合を制御することが重要であり、該成分は沸点が低く、また熱によって分解しやすいため、延伸時のヒーター7,8,9,22,23での熱処理によって、揮発もしくは分解されて糸表面での残留量が減少する。最終熱処理温度を130〜250℃の範囲とすることで、付着している油剤中の重量平均分子量600以下の炭化水素または脂肪酸アルキルエステルからなる成分の割合を油剤全成分あたり40重量%以下にすることができる。さらには、糸表面および糸中に残留しているモノマーやオリゴマーを揮発させてその残留量を減少させることができるので、製織工程でこれらのモノマーやオリゴマーがスカムとして析出することを抑制できる。また、上述の良好な平滑性が得られ、プロジェクタイルキャップへの該成分の浸透が抑制でき、製品品位に優れた布帛を得ることができる。また、油剤を調製する際に溶媒が過少とならず、各成分が均一に溶解した油剤を得られ、糸に付着させる際に油分付着量にバラツキを低減することができる。
油剤成分の特性上、熱処理温度上昇に伴い、油剤成分によっては揮発や熱分解をしやすいことから、適用する油剤と延伸条件はよく吟味されなければならない。例えば、最終熱処理温度が180℃以上であれば、より高温領域に沸点を有する紡糸油剤成分をも適用することができ、選択肢が広がる。最終熱処理温度の上限は糸の品位の点では特に制限されるものではないが、延伸時のホットロールや熱板などのヒーターやロールの表面が熱変性した油剤成分によって汚れて糸の生産性が悪化したり、後工程においてスカムが発生する原因となることから、最終熱処理温度は220℃以下とすることが好ましい。最終熱処理温度が180℃未満であっても沸点が低く、揮発性の高い紡糸油剤成分を使用すればよい。一方で、熱処理温度が低過ぎる場合にはモノフィラメントを高強度にすることができないことから、適切な熱処理温度を選択する。
本発明において、糸に付着している油剤中の脂肪酸アルキルエステルとして、多価アルコール脂肪酸エステル、多価カルボン酸脂肪族アルコールエステル、脂肪族1価アルコールと脂肪酸とがエステル結合した構造を有するエステル化合物が主に挙げられる。多価アルコール脂肪酸エステルは、炭素数2〜6の脂肪族2価アルコールまたは、炭素数3または4の脂肪族3価アルコールと、炭素数4〜24の脂肪族1価カルボン酸とのエステルである。また分子内にポリオキシアルキレン基を有しない化合物である。多価カルボン酸脂肪族アルコールエステルは、炭素数2〜6の脂肪族2価カルボン酸と炭素数4〜24の脂肪族1価アルコールとのエステルであり、また分子内にポリオキシアルキレン基を有しない化合物である。脂肪族1価アルコールと脂肪酸とがエステル結合した構造を有するエステル化合物は、炭素数4〜24の脂肪族1価カルボン酸と炭素数4〜24の脂肪族1価アルコールとのエステルである。
多価アルコール脂肪酸エステルを構成するアルコールと脂肪酸については、以下の通りである。炭素数2〜6の脂肪族2価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどが挙げられる。炭素数3または4の脂肪族3価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
炭素数4〜24の脂肪族1価カルボン酸は、飽和であっても不飽和であってもよく、不飽和結合の数については特に限定はない。また、脂肪族1価カルボン酸は、1種または2種以上を使用してもよく、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸を併用してもよい。
脂肪族1価カルボン酸としては、酪酸、クロトン酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、イソセチル酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、イソエイコサ酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、ドコサン酸、イソドコサン酸、エルカ酸、テトラコサン酸、イソテトラコサン酸、ネルボン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸などが挙げられる。
多価カルボン酸脂肪族アルコールエステルを構成するアルコールと脂肪酸については、以下の通りである。炭素数4〜24の脂肪族1価アルコールは、飽和であっても不飽和であってもよく、不飽和結合の数については特に限定はない。また、脂肪族1価アルコールは、1種または2種以上を使用してもよく、飽和脂肪族アルコールと不飽和脂肪族アルコールを併用してもよい。
脂肪族1価アルコールとしては、ブチルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクチルアルコール、イソオクチルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ミリストレイルアルコール、セチルアルコール、イソセチルアルコール、パルミトレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、エライジルアルコール、バクセニルアルコール、ガドレイルアルコール、アラキジルアルコール、イソイコサニルアルコール、エイコセノイルアルコール、ベヘニルアルコール、イソドコサニルアルコール、エルカニルアルコール、リグノセリニルアルコール、イソテトラコサニルアルコール、ネルボニルアルコール、セロチニルアルコール、モンタニルアルコール、メリシニルアルコールなどが挙げられる。
脂肪族多価カルボン酸は、2価以上であれば特に限定はなく、1種または2種以上を使用してもよい。脂肪族多価カルボン酸としては、クエン酸、イソクエン酸、リンゴ酸、アコニット酸、オキサロ酢酸、オキサロコハク酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などが挙げられる。
脂肪族1価アルコールと脂肪酸とがエステル結合した構造を有するエステル化合物を構成するアルコールと脂肪酸は、上記の炭素数4〜24の脂肪族1価カルボン酸と炭素数4〜24の脂肪族1価アルコールとのエステル化合物である。
これらのエステルは一般的に市販されているアルコールと脂肪酸を用いて、公知の方法で合成し得られたものを使用してもよい。また、天然の果実、種子または花など天然より得られる天然エステルであって、上記のエステルの構成を満足する天然エステルをそのまま使用したり、必要に応じて、天然エステルを公知の方法で精製したり、さらに精製したエステルを公知の方法で融点差を利用して分離、再精製を行ったエステルを用いてもよい。
また、前述の製織工程などの工程通過性の観点から、プロジェクタイル織機のポリウレタン製のキャップへの膨潤と脆化への対策として、油剤成分には加水分解性の高い酸・アルコール系より加水分解性の低いエステル系を適用することが好ましい。製織工程での糸抜けによる織機停台やキャップ交換の頻度低減の観点から、キャップ膨潤率(itema社製のポリウレタン製キャップを油剤に8日間常温常湿下(20±1℃、65±5%)で浸漬した際の重量変化率)としては、10%以下が好ましく、更に好ましくは7%以下である。
さらに、紡糸機、延伸機、織機などの装置金属部への腐食への対策として、油剤成分にはpH抑制のための緩衝剤を添加することが好ましい。各装置の停台や部材交換の頻度低減の観点、およびモノフィラメントが製造から油剤成分が除去されるまでに日数を要することから、油剤のpHは常温常湿下で1年経過してもpH4〜9を保つことが好ましく、更に好ましくは5〜8を保つことである。
本発明のポリエステルモノフィラメントは、ΔFmμs(糸−金属(鏡面)間静摩擦変動幅)≦0.15、Fdμd(糸−梨地間動摩擦)≦0.30であることが好ましい。上述の通り、プロジェクタイル織機にて緯打ち込みをする際にはプロジェクタイルに原糸を把持、飛送、把持解除を繰り返すことになるが、ΔFmμs>0.15、すなわち微小領域での原糸の摩擦特性の差が大きい場合に、プロジェクタイルでの把持、飛送、解舒時に挟まれた原糸がずれやすく、把持するキャップが樹脂製であると繰り返しずれることで樹脂が削れてしまうことがあり、結果として糸が抜けやすくなり、織機停台回数が増えてしまう。停台回数が増えると樹脂性キャップの交換頻度が多くなるため、原糸がずれやすいΔFmμsが大きいことは好ましくない。これは、膨潤による変形や脆化したポリウレタン製キャップで特に傾向が見られ、キャップが削れやすい。キャップが樹脂製でなくて金属製であっても摩擦特性に差があると糸がキャップ内で滑り、糸が抜けやすくなるため、ΔFmμsが大きいことは好ましくない。より好ましくはFmμs≦0.10である。
また、Fdμd≦0.30であれば摩擦抵抗が小さいため、プロジェクタイルでの把持、解舒時に樹脂製キャップの削れにくいため、好ましい。また、摩擦抵抗が高いとモノフィラメントの摺動性が損なわれ、応力集中による部分的な塑性変形や糸切れが発生しやすい。より好ましくはFdμd≦0.20である。
次いで、本発明のポリエステルモノフィラメントの製造方法の好ましい形態について説明する。製造方法としては、上述の通り2成分の複合紡糸の場合には芯鞘型が好ましく、芯成分の高粘度ポリエステルと、鞘成分の低粘度ポリエステルを適用してもよい。また、単成分紡糸を適用してもよい。
複合成分、単成分共に、紡糸口金から溶融押出しして冷却固化させる。その後、給油ガイドやオイリングロールによって水と混合・エマルション化させた油剤を糸条に付与させた未延伸糸に対して、連続して延伸し巻き取る直接紡糸延伸法を適用してもよく、1度巻き取った後に延伸する2工程法を適用してもよく、これらを適用することでポリエステルモノフィラメントを製造することが好ましい。油剤付与は、平滑性、耐摩耗性、制電性を向上させ、パッケージ形成時の糸落ちと崩れの抑制することができるため、本発明においては必須である。
油剤は、上述の冷却固化後の未延伸糸への付与以外にも、工程の何れかの部分において、仕上げ剤として付与しても良い。給油方式としては給油ガイド方式、オイリングロール方式、スプレー方式などを挙げることができ、紡糸から巻取までの間で複数回給油してもよい。加熱延伸後に仕上げ油剤を付与してから巻取しても良いが、この場合は油剤付与後に熱処理せずに製織工程を経ることになるため、油剤成分としては、より製織時にモノフィラメントを把持するポリウレタンなどのキャップへの膨潤や、紡糸機、延伸機、織機などの装置金属部への腐食を考慮した成分を用いる必要がある。
芯鞘複合紡糸、単成分紡糸のいずれも溶融紡糸する時は、各成分をそれぞれ280〜300℃の温度で溶融することが好ましい。PETを溶融する方法として、プレッシャーメルター法およびエクストルーダー法が挙げられるが、均一溶融と滞留防止の観点から、エクストルーダー法による溶融が好ましい。
複合紡糸の場合には、別々に溶融されたポリマーは、別々の配管を通り、計量された後、紡糸口金パックへ流入される。この際、熱劣化を抑制する観点から、配管通過時間は30分以内であることが好ましい。パックへ流入された高粘度PETと低粘度PETは、前述の紡糸口金により合流され、芯鞘型の形態に複合され、紡糸口金から吐出される。単成分紡糸において単一の配管を通る以外は複合紡糸と同様である。紡糸温度は、280〜300℃が適当である。紡糸温度が280〜300℃であれば、PETの特徴を活かしたモノフィラメントが好ましく製造できる。
芯鞘複合紡糸において、上述の通り、直接紡糸延伸法でも2工程法を適用しても良いが、高強度の原糸を得る場合には、紡出引取は、紡糸口金直下の雰囲気温度を260℃以上に加熱保温することが好ましい。紡糸口金直下の雰囲気温度を260℃以上に加熱保温すると、繊度3.0〜13.0dtexのポリエステルモノフィラメントを紡糸すると、紡出糸条が細い場合でも冷却されにくく、高倍率延伸が容易となる傾向がある。なお、繊度や引取速度によっては冷却固化の位置がより下方となり、得られる原糸が物性不均一となる恐れがあるので、その場合は保温筒を外して冷却固化の位置を調整する。
図1は、本発明で用いられる製糸工程(直接紡糸延伸法)の一例を示す側面図である。
図1において、紡糸口金(1)から吐出された糸条は、加熱体(2)と一体化した保温筒により紡糸口金直下を積極保温し、その後、糸条冷却風装置(3)により温度調節されたエアーを糸条に吹き付け、冷却固化せしめる。冷却固化された糸条は、オイリングロール方式の給油ロール(4)により油剤が付与される。次いで、非加熱の第1ゴデットロール(5)に引き取られ、鏡面の第1ホットロール(7)上に数ターン巻き付けられて予熱された後、第2ホットロール(8)との間で延伸される。次いで、第2ホットロール(8)と第3ホットロール(9)との間で延伸される。さらに、第3ホットロール(9)上に数ターン巻き付けられて熱セットされ、ゴデットロール(10)、(11)へ引き回される。熱セットされた糸条は、ゴデットロール(10)、(11)によって冷却されるとともに張力が調整され、パッケージに巻き付けられる。糸条巻取装置(12)においては、パッケージが装着されているスピンドルの回転数を制御することによって、パッケージ巻取張力が調整される。
非加熱の第1ゴデットロール(5)による引取速度は、300〜1500m/minとすることが好ましく、より好ましくは500〜1000m/minである。非加熱のゴデットロールによる引取速度を300〜1500m/minの範囲とすると、紡糸線上で未延伸糸の繊維配向が形成されること無く、高倍率延伸が可能となり、生産性も良好に高強度ポリエステルモノフィラメントを得ることが可能となる。
この未延伸糸に対して直接紡糸延伸法を適用するにあたり、ホットロールを3セット以上有する多段延伸工程により4.0〜7.0倍で多段延伸することが好ましい。多段延伸とは、多段に組み合わされたホットロールの速度を変更することにより、未延伸糸を4.0〜7.0倍に延伸する工程をいう。多段延伸のトータル延伸倍率は、4.0〜7.0倍が好ましい。延伸倍率を4.0倍以上とすることで、得られる延伸糸の繊維構造が高配向となり、高強度ポリエステルモノフィラメントを得ることができるため、好ましい。7.0倍以下とすることで、延伸張力が高くなり過ぎることがないため、糸切れ発生が抑制され、製糸性に問題が発生しにいだけでなく、残留応力によるパーンヒケの悪化が発生しにくいため、好ましい。多段延伸の延伸倍率は、4.0〜7.0倍であり、より好ましくは、4.5〜6.5倍、更に好ましくは、5.0〜6.0倍である。
多段延伸の際、ホットロールの温度条件は、走行糸条がロールに融着しない程度の温度を適宜用いることが好ましい。通常、第1ホットロールは芯成分ポリエステルのガラス転移温度+10〜30℃とし、第2ホットロール以降は徐々に温度を増加していくことが好ましい。最終ホットロール前のロール温度は、最終ホットロール温度以下とすることが好ましい。最終ホットロール温度は130〜230℃とすることが好ましく、この温度にすることで原糸の配向制御が容易になり、高強度ポリエステルモノフィラメントが得られ、さらに、最終ホットロールでの融着が起きず、製糸性がよく、さらには、上述の通り油剤の低分子量成分を揮発除去できる。この時の巻取速度は、通常2500〜5000m/minである。工程安定性を考慮すると、巻取速度は2700〜4500m/minであることがより好ましい。
また、多段延伸した後に、最終ホットロールと非加熱のゴデットロールの間でロールの速度を−2〜8%変更させたリラックス・緊張処理を行ってもよい。この速度比であるリラックス率は、例えば−2〜8%にする場合は最終ホットロール速度(V1)と非加熱のゴデットロール速度(V2)の速度比(V2/V1)を、0.92〜1.02とすればよく、リラックス率を−2%を下回る範囲にすると、ロール間の張力が高くなるため糸切れが多発し、8%を超える範囲で行うと非晶部分の配向が低下するため高Moのポリエステルモノフィラメントを得ることができない。リラックス処理により、ポリエステルモノフィラメントの非晶部分の配向制御、すなわちMoの制御(高Mo化)が可能となる上、非加熱のゴデットロール−巻取間での物性変化が無く、糸条にかかる張力を容易に調整することができるため、パーンヒケを回避する点ではこのように安定して低張力巻取することが好ましい。より好ましいリラックス率の範囲は、−1〜3%である。
複合紡糸、単成分紡糸のいずれも場合にもパッケージ形成時の巻取張力は0.1〜0.4cN/dtexの範囲で制御することが好ましい。一般に、巻取張力が高いとパーンパッケージの端部と中央で糸条の残留収縮応力の緩和差が大きくなり、パーンヒケの問題が起こりやすいため、巻取張力を0.4cN/dtex以下に設定することが好ましい。また、巻取張力を0.1cN/dtex以上に設定することにより、非加熱のゴデットロールから巻取機間の糸揺れを低減することができ、巻取速度を上げた場合でも安定して糸条を巻き取ることができる。より好ましい巻取張力は、0.2〜0.3cN/dtexである。巻取張力を制御するにあたっては、公知の巻取制御装置を用いて、張力センサによって検出された走行糸条の張力を一定とするように、ボビンが装着されたスピンドルモータの回転数を制御すればよい。
図2、3は、本発明で用いられる製糸工程(2工程法)の一例を示す側面図である。
図2において、紡糸口金(13)から吐出された糸条は、加熱体(14)と一体化した保温筒により紡糸口金直下を積極保温し、その後、糸条冷却風装置(15)により温度調節されたエアーを糸条に吹き付け、冷却固化せしめる。糸条への徐冷冷却固化された糸条は、オイリングロール方式の給油ロール(16)により油剤が付与される。次いで、非加熱の第1ゴデットロール(17)、第2ゴデットロール(18)に引き取られ、糸条巻取装置(19)で未延伸糸を巻き取る。図3において、スタンドに設置した未延伸糸(20)を供給ロール(21)で引き出し、鏡面の第1ホットロール(22)上に数ターン巻き付けられて予熱された後、第2ホットロール(23)との間で延伸される。熱セットされた糸条は、冷ゴデットロール(24)によって冷却されるとともに張力が調整され、延伸糸パッケージ(25)は巻き付けられる。第2ホットロールの代わりに熱板ヒーターで熱セットしてもよいし、第2ホットロールに続いて第3ホットロールなどを用いて多段延伸をしてもよい。
2工程法の場合には、例えば、未延伸糸の巻取速度は800〜1500m/分、で未延伸糸を巻き取った後、温度85〜95℃の第1ホットロールで糸条を予熱し、延伸倍率3.75〜5.30倍で延伸した後、温度130〜250℃の第2ホットロールあるいは熱板ヒーターで熱セットすることができる。また、このリラックス率は、2工程法での加熱延伸後に巻取する際に適用することで、同様にMoの制御が可能になるため、リラックス率は所望の物性を有するモノフィラメントを得るために適宜設定することが好ましい。
以下、実施例により詳細に説明する。なお、実施例中の評価は以下の方法に従った。
(1)固有粘度(IV)
25℃の温度の純度98%以上のオルト−クロロフェノール10mL中に、試料ポリマーを0.8g溶かし、25℃の温度でオストワルド粘度計を用いて相対粘度ηrを次式(1)により求めた。この相対粘度ηrを用いて、次式(2)により固有粘度(IV)を算出した。
ηr=η/η0=(t×d)/(t0×d0) ・・・・・・(1)
固有粘度(IV)=0.0242ηr+0.2634 ・・・(2)
ここで、
・η:ポリマー溶液の粘度
・η0:オルト−クロロフェノールの粘度
・t:溶液の落下時間(秒)
・d:溶液の密度(g/cm3)
・t0:オルト−クロロフェノールの落下時間(秒)
・d0:オルト−クロロフェノールの密度(g/cm3) 。
25℃の温度の純度98%以上のオルト−クロロフェノール10mL中に、試料ポリマーを0.8g溶かし、25℃の温度でオストワルド粘度計を用いて相対粘度ηrを次式(1)により求めた。この相対粘度ηrを用いて、次式(2)により固有粘度(IV)を算出した。
ηr=η/η0=(t×d)/(t0×d0) ・・・・・・(1)
固有粘度(IV)=0.0242ηr+0.2634 ・・・(2)
ここで、
・η:ポリマー溶液の粘度
・η0:オルト−クロロフェノールの粘度
・t:溶液の落下時間(秒)
・d:溶液の密度(g/cm3)
・t0:オルト−クロロフェノールの落下時間(秒)
・d0:オルト−クロロフェノールの密度(g/cm3) 。
(2)繊度
フィラメントを500mかせ取り、かせの質量に20を乗じた値を繊度とした数値をフィラメントの繊度とする。
フィラメントを500mかせ取り、かせの質量に20を乗じた値を繊度とした数値をフィラメントの繊度とする。
(3)破断強度、伸度、5%Mo
オリエンテックス社製テンシロン引張試験機を用い、初期試料長20cm、引張速度2cm/minにて5%伸長時の強度(5%Mo)、破断した際の強度、伸度を測定し、それぞれ連続して5回測定した値の平均値を破断強度(cN/dtex)、伸度(%)、5%Mo(cN/dtex)とした。
オリエンテックス社製テンシロン引張試験機を用い、初期試料長20cm、引張速度2cm/minにて5%伸長時の強度(5%Mo)、破断した際の強度、伸度を測定し、それぞれ連続して5回測定した値の平均値を破断強度(cN/dtex)、伸度(%)、5%Mo(cN/dtex)とした。
(4)油剤付着量
試料(ポリエステルモノフィラメント)10gを精秤し、メタノールを溶媒としてソックスレー抽出器を用いて3時間かけて加熱還流させて油剤を抽出し、抽出後メタノールを除去し乾燥して、抽出前後の容器の重量差から油剤付着量を算出した。
試料(ポリエステルモノフィラメント)10gを精秤し、メタノールを溶媒としてソックスレー抽出器を用いて3時間かけて加熱還流させて油剤を抽出し、抽出後メタノールを除去し乾燥して、抽出前後の容器の重量差から油剤付着量を算出した。
(5)糸表面の油剤成分の特定
ポリエステルモノフィラメントをソックスレー抽出装置に入れ、次にシクロヘキサンを加えて、約4時間加熱還流した後、シクロヘキサンを回収して糸表面の油剤成分を抽出した。得られた抽出液を公知の1H−NMR法にて測定を行い、スペクトルデータより油剤成分の構造を特定した。また、抽出液中の油剤成分の重量平均分子量は東ソー(株)製高速ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置HLC−8220GPCを用い、試料濃度3mg/ccで、昭和電工(株)製分離カラムKF−402HQ、KF−403HQに注入し、示差屈折率検出器で測定されたピークより算出した。
ポリエステルモノフィラメントをソックスレー抽出装置に入れ、次にシクロヘキサンを加えて、約4時間加熱還流した後、シクロヘキサンを回収して糸表面の油剤成分を抽出した。得られた抽出液を公知の1H−NMR法にて測定を行い、スペクトルデータより油剤成分の構造を特定した。また、抽出液中の油剤成分の重量平均分子量は東ソー(株)製高速ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置HLC−8220GPCを用い、試料濃度3mg/ccで、昭和電工(株)製分離カラムKF−402HQ、KF−403HQに注入し、示差屈折率検出器で測定されたピークより算出した。
(6)摩擦特性
摩擦試験機(英光産業製)で測定した。
(A)ΔFmμs(糸−金属(鏡面)間静摩擦係数の変動幅)
鏡面仕上げ(0.3S)の回転ロール上(表面速度0.125m/min)の、モノフィラメントの接触角を180度として、回転ロール入側張力T1と回転ロール入側張力T2を測定し、下式よりFmμs(糸−金属(鏡面)間静摩擦係数)を算出した。経時で変動する測定値を10分間チャートで観察し、最大値と最小値の差をΔFmμs(糸−金属(鏡面)間静摩擦係数の変動幅)とした。
糸−金属(鏡面)間静摩擦係数:Fmμs=(1/π)×Ln(T2/T1)
変動幅:ΔFmμs=Fmμs(max)−Fmμs(min)
(B)Fdμs(糸−梨地間動摩擦係数)
回転ロール上(表面速度55m/min)の、モノフィラメントの接触角を180度として、回転ロール入側張力T1と回転ロール入側張力T2を30秒間測定し、下式より算出した。
糸−梨地間動摩擦係数:Fdμd=(1/π)×Ln(T2/T1) 。
摩擦試験機(英光産業製)で測定した。
(A)ΔFmμs(糸−金属(鏡面)間静摩擦係数の変動幅)
鏡面仕上げ(0.3S)の回転ロール上(表面速度0.125m/min)の、モノフィラメントの接触角を180度として、回転ロール入側張力T1と回転ロール入側張力T2を測定し、下式よりFmμs(糸−金属(鏡面)間静摩擦係数)を算出した。経時で変動する測定値を10分間チャートで観察し、最大値と最小値の差をΔFmμs(糸−金属(鏡面)間静摩擦係数の変動幅)とした。
糸−金属(鏡面)間静摩擦係数:Fmμs=(1/π)×Ln(T2/T1)
変動幅:ΔFmμs=Fmμs(max)−Fmμs(min)
(B)Fdμs(糸−梨地間動摩擦係数)
回転ロール上(表面速度55m/min)の、モノフィラメントの接触角を180度として、回転ロール入側張力T1と回転ロール入側張力T2を30秒間測定し、下式より算出した。
糸−梨地間動摩擦係数:Fdμd=(1/π)×Ln(T2/T1) 。
(7)糸抜け性
ポリエステルモノフィラメントを緯糸に用いて、プロジェクタイル織機にて緯糸打ち込み速度を750m/minとして織物を作製する際に、緯糸1000万mあたりで発生するプロジェクタイルキャップからの糸抜け発生回数を記録し、発生回数が5回未満で合格とした。この回数は少なければ少ない程よい。
ポリエステルモノフィラメントを緯糸に用いて、プロジェクタイル織機にて緯糸打ち込み速度を750m/minとして織物を作製する際に、緯糸1000万mあたりで発生するプロジェクタイルキャップからの糸抜け発生回数を記録し、発生回数が5回未満で合格とした。この回数は少なければ少ない程よい。
(8)停台回数
ポリエステルモノフィラメントを緯糸に用いて、プロジェクタイル織機にて緯糸打ち込み速度を750m/minとして織物を作製する際に、緯糸1000万mあたりで発生する織機の停台回数を記録し、停台回数が5回未満で合格とした。この回数は少なければ少ない程よい。
ポリエステルモノフィラメントを緯糸に用いて、プロジェクタイル織機にて緯糸打ち込み速度を750m/minとして織物を作製する際に、緯糸1000万mあたりで発生する織機の停台回数を記録し、停台回数が5回未満で合格とした。この回数は少なければ少ない程よい。
(9)織物品位
ポリエステルモノフィラメントを緯糸に用いて織物を作製し、目視検査にて織物50mあたりでのムラやスジの発生状態によって以下の三段階で評価し、○以上の評価結果で合格とした。
◎:布帛にスジやムラがなく、優れた品位を有する。
○:わずかなスジやムラが発生しているが、製品として使用するには問題ない。
×:スジやムラが発生しており、製品として使用できない。
ポリエステルモノフィラメントを緯糸に用いて織物を作製し、目視検査にて織物50mあたりでのムラやスジの発生状態によって以下の三段階で評価し、○以上の評価結果で合格とした。
◎:布帛にスジやムラがなく、優れた品位を有する。
○:わずかなスジやムラが発生しているが、製品として使用するには問題ない。
×:スジやムラが発生しており、製品として使用できない。
(実施例1)
常法によって重合およびチップ化し、酸化チタンを0.5質量%含有し、固有粘度(IV)が0.80(Tg80℃)のPET(ポリエチレンテレフタレート)を芯成分、IVが0.50(Tg78℃)のPETを鞘成分に用いた。紡糸工程および延伸工程は、図1に示す1工程法によるものである。PETをエクストルーダーによって溶融させた後、溶融PETは295℃の温度に保温した配管内を通過させた後、複合比が芯成分:鞘成分=80:20となるようにポンプ計量を行い、芯鞘型となるよう公知の複合紡糸口金から糸条を紡出させた。吐出糸条は口金面から下方に100mmの間、加熱体(2)と一体化した保温筒により紡糸口金直下の雰囲気温度が290℃となるよう積極保温した。その後、糸条冷却風装置(3)により25℃の温度のエアーを25m/分の風速で糸条に吹き付け、冷却固化せしめた。冷却固化された糸条は、オイリングロール方式の給油ロール(4)により、重量平均分子量400以下の炭化水素または脂肪酸アルキルエステルからなる成分の合計量を油剤重量に対して70重量%に調整した紡糸油剤を給油したのち、非加熱、表面粗度0.8Sの鏡面ロールを用いた第1ゴデットロール(5)、表面温度90℃を介した後、表面粗度0.8Sの鏡面ロールを用いた第1ホットロール(7)および第2ホットロール(8)、表面温度130℃、表面粗度2.5Sの梨地ロールを用いた最終の第3ホットロール(9)で延伸熱セットした。さらに第3ホットロール(9)と非加熱、表面粗度0.8Sの鏡面ロールを用いた第2ゴデットロール(10)の間で1.3%リラックス処理して、非加熱、表面粗度0.8Sの鏡面ロールを用いた第3ゴデットロール(11)を介した後、糸条巻取装置(12)を用いて芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントを巻き取った。巻取り中は、第1ホットロール(7)、第2ホットロール(8)および第3ホットロール(9)それぞれを金属製の容器で覆い、各容器の外壁を保温材で覆った(温度調節保温容器(6))。このとき、トータル延伸倍率は4.7倍とし、1段目延伸比率(1段目延伸倍率/トータル延伸倍率×100)は80%とした。
常法によって重合およびチップ化し、酸化チタンを0.5質量%含有し、固有粘度(IV)が0.80(Tg80℃)のPET(ポリエチレンテレフタレート)を芯成分、IVが0.50(Tg78℃)のPETを鞘成分に用いた。紡糸工程および延伸工程は、図1に示す1工程法によるものである。PETをエクストルーダーによって溶融させた後、溶融PETは295℃の温度に保温した配管内を通過させた後、複合比が芯成分:鞘成分=80:20となるようにポンプ計量を行い、芯鞘型となるよう公知の複合紡糸口金から糸条を紡出させた。吐出糸条は口金面から下方に100mmの間、加熱体(2)と一体化した保温筒により紡糸口金直下の雰囲気温度が290℃となるよう積極保温した。その後、糸条冷却風装置(3)により25℃の温度のエアーを25m/分の風速で糸条に吹き付け、冷却固化せしめた。冷却固化された糸条は、オイリングロール方式の給油ロール(4)により、重量平均分子量400以下の炭化水素または脂肪酸アルキルエステルからなる成分の合計量を油剤重量に対して70重量%に調整した紡糸油剤を給油したのち、非加熱、表面粗度0.8Sの鏡面ロールを用いた第1ゴデットロール(5)、表面温度90℃を介した後、表面粗度0.8Sの鏡面ロールを用いた第1ホットロール(7)および第2ホットロール(8)、表面温度130℃、表面粗度2.5Sの梨地ロールを用いた最終の第3ホットロール(9)で延伸熱セットした。さらに第3ホットロール(9)と非加熱、表面粗度0.8Sの鏡面ロールを用いた第2ゴデットロール(10)の間で1.3%リラックス処理して、非加熱、表面粗度0.8Sの鏡面ロールを用いた第3ゴデットロール(11)を介した後、糸条巻取装置(12)を用いて芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントを巻き取った。巻取り中は、第1ホットロール(7)、第2ホットロール(8)および第3ホットロール(9)それぞれを金属製の容器で覆い、各容器の外壁を保温材で覆った(温度調節保温容器(6))。このとき、トータル延伸倍率は4.7倍とし、1段目延伸比率(1段目延伸倍率/トータル延伸倍率×100)は80%とした。
得られたモノフィラメントを用いてフィルターの製織評価を行ったところ、糸抜け、ヒケは認められず、織物品位は合格レベルであることを確認した。詳細結果は表1に示す通りである。
(実施例2)
炭化水素からなる成分の量を油剤重量に対して40重量%、炭化水素または脂肪酸アルキルエステルからなる成分の合計量を油剤重量に対して60重量%に調整した油剤に変更した以外は実施例1と同条件にて芯鞘複合モノフィラメントを巻き取った。評価結果は表1に示す通りである。
炭化水素からなる成分の量を油剤重量に対して40重量%、炭化水素または脂肪酸アルキルエステルからなる成分の合計量を油剤重量に対して60重量%に調整した油剤に変更した以外は実施例1と同条件にて芯鞘複合モノフィラメントを巻き取った。評価結果は表1に示す通りである。
(実施例3)
重量平均分子量600以下の炭化水素からなる成分を調整した油剤に変更した以外は実施例1と同条件にて芯鞘複合モノフィラメントを巻き取った。評価結果は表1に示す通りである。
重量平均分子量600以下の炭化水素からなる成分を調整した油剤に変更した以外は実施例1と同条件にて芯鞘複合モノフィラメントを巻き取った。評価結果は表1に示す通りである。
(実施例4)
第3ホットロール温度を220℃とした以外は実施例1と同条件にて芯鞘複合モノフィラメントを巻き取った。評価結果は表1に示す通りである。
第3ホットロール温度を220℃とした以外は実施例1と同条件にて芯鞘複合モノフィラメントを巻き取った。評価結果は表1に示す通りである。
(実施例5)
吐出量を変えて繊度を13dtexに変更した以外は実施例1と同条件にてモノフィラメントを巻き取った。評価結果は表1に示す通りである。
吐出量を変えて繊度を13dtexに変更した以外は実施例1と同条件にてモノフィラメントを巻き取った。評価結果は表1に示す通りである。
(実施例6)
常法によって重合およびチップ化し、酸化チタンを0.5質量%含有し、固有粘度(IV)が0.80(Tg80℃)のPET(ポリエチレンテレフタレート)を芯成分、IVが0.50(Tg78℃)のPETを鞘成分に用いた。紡糸工程および延伸工程は、図2、3に示す2工程法によるものである。図2の通り、PETをエクストルーダーによって溶融させた後、溶融PETは295℃の温度に保温した配管内を通過させた後、複合比が芯成分:鞘成分=80:20となるようにポンプ計量を行い、芯鞘型となるよう公知の複合紡糸口金(13)から糸条を紡出させた。吐出糸条は口金面から下方に100mmの間、パックハウジング(14)と一体化した保温筒により紡糸口金直下の雰囲気温度が290℃となるよう積極保温した。その後、糸条冷却風装置(15)により25℃の温度のエアーを25m/分の風速で糸条に吹き付け、冷却固化せしめた。冷却固化された糸条は、オイリングロール方式の給油ロール(16)により、重量平均分子量600以下の炭化水素または脂肪酸アルキルエステルからなる成分の量を油剤重量に対して60重量%に調整した紡糸油剤を給油したのち、表面速度1200m/分の第1、2ゴデットロール(17)、(18)を介した後に、糸条巻取装置(19)を用いて40.1dtexのポリエステルモノフィラメント未延伸糸を巻き取った。さらに該未延伸糸を環境温度25℃×2日間エージングした後、図3に示す延伸機を用い、90℃の温度に加熱された第1ホットロール(22)と130℃の温度に加熱された第2ホットロール(23)の間で延伸倍率4.2倍で延伸熱セットした。さらに第2ホットロールと非加熱の表面粗度0.8Sの鏡面ロールを用いたゴデットロール(24)の間で1.4%リラックス処理して、延伸糸パッケージ(25)として芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントを巻き取った。評価結果は表1に示す通りである。
常法によって重合およびチップ化し、酸化チタンを0.5質量%含有し、固有粘度(IV)が0.80(Tg80℃)のPET(ポリエチレンテレフタレート)を芯成分、IVが0.50(Tg78℃)のPETを鞘成分に用いた。紡糸工程および延伸工程は、図2、3に示す2工程法によるものである。図2の通り、PETをエクストルーダーによって溶融させた後、溶融PETは295℃の温度に保温した配管内を通過させた後、複合比が芯成分:鞘成分=80:20となるようにポンプ計量を行い、芯鞘型となるよう公知の複合紡糸口金(13)から糸条を紡出させた。吐出糸条は口金面から下方に100mmの間、パックハウジング(14)と一体化した保温筒により紡糸口金直下の雰囲気温度が290℃となるよう積極保温した。その後、糸条冷却風装置(15)により25℃の温度のエアーを25m/分の風速で糸条に吹き付け、冷却固化せしめた。冷却固化された糸条は、オイリングロール方式の給油ロール(16)により、重量平均分子量600以下の炭化水素または脂肪酸アルキルエステルからなる成分の量を油剤重量に対して60重量%に調整した紡糸油剤を給油したのち、表面速度1200m/分の第1、2ゴデットロール(17)、(18)を介した後に、糸条巻取装置(19)を用いて40.1dtexのポリエステルモノフィラメント未延伸糸を巻き取った。さらに該未延伸糸を環境温度25℃×2日間エージングした後、図3に示す延伸機を用い、90℃の温度に加熱された第1ホットロール(22)と130℃の温度に加熱された第2ホットロール(23)の間で延伸倍率4.2倍で延伸熱セットした。さらに第2ホットロールと非加熱の表面粗度0.8Sの鏡面ロールを用いたゴデットロール(24)の間で1.4%リラックス処理して、延伸糸パッケージ(25)として芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントを巻き取った。評価結果は表1に示す通りである。
(実施例7)
常法によって重合およびチップ化し、酸化チタンを0.5質量%含有し、固有粘度(IV)が0.80(Tg80℃)のPET(ポリエチレンテレフタレート)を単成分で用い、吐出量を変更し、公知の単成分紡糸口金を用い、延伸倍率を3.9倍とする以外は実施例6と同条件とし、39.9dtexのポリエステルモノフィラメント未延伸糸から単成分ポリエステルモノフィラメントを巻き取った。評価結果は表1に示す通りである。
常法によって重合およびチップ化し、酸化チタンを0.5質量%含有し、固有粘度(IV)が0.80(Tg80℃)のPET(ポリエチレンテレフタレート)を単成分で用い、吐出量を変更し、公知の単成分紡糸口金を用い、延伸倍率を3.9倍とする以外は実施例6と同条件とし、39.9dtexのポリエステルモノフィラメント未延伸糸から単成分ポリエステルモノフィラメントを巻き取った。評価結果は表1に示す通りである。
(実施例8)
図3に示す第2ホットロール(23)を熱板に変更し、熱板温度を150℃とした以外は実施例7と同条件にてモノフィラメントを巻き取った。評価結果は表1に示す通りである。
図3に示す第2ホットロール(23)を熱板に変更し、熱板温度を150℃とした以外は実施例7と同条件にてモノフィラメントを巻き取った。評価結果は表1に示す通りである。
(実施例9)
熱板温度を220℃とした以外は実施例8と同条件にてモノフィラメントを巻き取った。評価結果は表2に示す通りである。
熱板温度を220℃とした以外は実施例8と同条件にてモノフィラメントを巻き取った。評価結果は表2に示す通りである。
(実施例10)
熱板温度を250℃とした以外は実施例8と同条件にてモノフィラメントを巻き取った。評価結果は表2に示す通りである。
熱板温度を250℃とした以外は実施例8と同条件にてモノフィラメントを巻き取った。評価結果は表2に示す通りである。
(比較例1)
炭化水素または脂肪酸アルキルエステルからなる成分の量を油剤重量に対して90重量%に調整した油剤に変更した以外は実施例1と同条件にて芯鞘複合モノフィラメントを巻き取った。評価結果は表2に示す通りである。
炭化水素または脂肪酸アルキルエステルからなる成分の量を油剤重量に対して90重量%に調整した油剤に変更した以外は実施例1と同条件にて芯鞘複合モノフィラメントを巻き取った。評価結果は表2に示す通りである。
(比較例2)
炭化水素または脂肪酸アルキルエステルからなる成分の量を油剤重量に対して70重量%に調整した油剤に変更した以外は実施例7と同条件にて単成分ポリエステルモノフィラメントを巻き取った。評価結果は表2に示す通りである。
炭化水素または脂肪酸アルキルエステルからなる成分の量を油剤重量に対して70重量%に調整した油剤に変更した以外は実施例7と同条件にて単成分ポリエステルモノフィラメントを巻き取った。評価結果は表2に示す通りである。
(比較例3)
吐出量を変更して、延伸倍率を3.3倍に変更した以外は実施例7と同条件とし、33.5dtexのポリエステルモノフィラメント未延伸糸を巻き取った後に延伸をして単成分ポリエステルモノフィラメントを巻き取った。評価結果は表2に示す通りである。
吐出量を変更して、延伸倍率を3.3倍に変更した以外は実施例7と同条件とし、33.5dtexのポリエステルモノフィラメント未延伸糸を巻き取った後に延伸をして単成分ポリエステルモノフィラメントを巻き取った。評価結果は表2に示す通りである。
(比較例4)
吐出量を変更して、延伸倍率を3.5倍、リラックス率を1.0%に変更した以外は実施例7と同条件とし、35.6dtexのポリエステルモノフィラメント未延伸糸を巻き取った後に延伸をして単成分ポリエステルモノフィラメントを巻き取った。評価結果は表2に示す通りである。
吐出量を変更して、延伸倍率を3.5倍、リラックス率を1.0%に変更した以外は実施例7と同条件とし、35.6dtexのポリエステルモノフィラメント未延伸糸を巻き取った後に延伸をして単成分ポリエステルモノフィラメントを巻き取った。評価結果は表2に示す通りである。
(比較例5)
油剤付着量を0.03%となるように調整した以外は実施例7と同条件にて単成分ポリエステルモノフィラメントを巻き取った。評価結果は表2に示す通りである。
油剤付着量を0.03%となるように調整した以外は実施例7と同条件にて単成分ポリエステルモノフィラメントを巻き取った。評価結果は表2に示す通りである。
(比較例6)
油剤付着量を1.20%となるように調整した以外は実施例7と同条件にて単成分ポリエステルモノフィラメントを巻き取った。評価結果は表2に示す通りである。
油剤付着量を1.20%となるように調整した以外は実施例7と同条件にて単成分ポリエステルモノフィラメントを巻き取った。評価結果は表2に示す通りである。
本発明のポリエステルモノフィラメントは製織工程でのプロジェクタイルからの糸抜けを抑制されるので、製品品位に優れ、高いフィルター性能を有するスクリーン紗やフィルターのメッシュ織物を得ることができる。
1:紡糸口金
2:加熱体
3:糸条冷却風装置
4:給油ロール
5:第1ゴデットロール
6:温度調節保温容器
7:第1ホットロール
8:第2ホットロール
9:第3ホットロール
10:第2ゴデットロール
11:第3ゴデットロール
12:糸条巻取装置
13:紡糸口金
14:加熱体
15:糸条冷却風装置
16:給油ロール
17:第1ゴデットロール
18:第2ゴデットロール
19:糸条巻取装置
20:未延伸糸
21:供給ロール
22:第1ホットロール
23:第2ホットロール
24:冷ゴデットロール
25:延伸糸パッケージ
2:加熱体
3:糸条冷却風装置
4:給油ロール
5:第1ゴデットロール
6:温度調節保温容器
7:第1ホットロール
8:第2ホットロール
9:第3ホットロール
10:第2ゴデットロール
11:第3ゴデットロール
12:糸条巻取装置
13:紡糸口金
14:加熱体
15:糸条冷却風装置
16:給油ロール
17:第1ゴデットロール
18:第2ゴデットロール
19:糸条巻取装置
20:未延伸糸
21:供給ロール
22:第1ホットロール
23:第2ホットロール
24:冷ゴデットロール
25:延伸糸パッケージ
Claims (3)
- 油剤付着量が0.10〜1.00重量%であり、付着している油剤中の重量平均分子量600以下の炭化水素または脂肪酸アルキルエステルからなる成分の割合が油剤の全成分あたり40重量%以下であり、下記(1)〜(3)を満たすことを特徴とするポリエステルモノフィラメント。
(1)繊度が3〜40dtex
(2)強度が4.5〜10.0cN/dtex
(3)5%伸長時の強度(5%Mo)が2.5〜6.0cN/dtex - ΔFmμs≦0.15、Fdμd≦0.30であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステルモノフィラメント。
ΔFmμs:糸−金属(鏡面)間静摩擦変動幅、Fdμd:糸−梨地間動摩擦 - 付着している油剤中の重量平均分子量500以下の炭化水素または脂肪酸アルキルエステルからなる成分の割合が油剤の全成分あたり30重量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステルモノフィラメント。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019042844A JP2020143410A (ja) | 2019-03-08 | 2019-03-08 | ポリエステルモノフィラメント |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019042844A JP2020143410A (ja) | 2019-03-08 | 2019-03-08 | ポリエステルモノフィラメント |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2020143410A true JP2020143410A (ja) | 2020-09-10 |
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ID=72353356
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2019042844A Pending JP2020143410A (ja) | 2019-03-08 | 2019-03-08 | ポリエステルモノフィラメント |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2020143410A (ja) |
-
2019
- 2019-03-08 JP JP2019042844A patent/JP2020143410A/ja active Pending
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