JP2009280585A - ビニル基又はエポキシ基含有多環式化合物の製造法 - Google Patents

ビニル基又はエポキシ基含有多環式化合物の製造法 Download PDF

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Abstract

【課題】ビニル基を含有するアダマンタン誘導体等の多環式化合物の簡易で効率的な製造法を提供する。
【解決手段】橋頭位にメチン炭素原子を有する多環式化合物と、(A)1,2−ジカルボニル化合物又はそのヒドロキシ還元体、(B)酸素、及び(C)下記式(1)
Figure 2009280585

(式中、R1及びR2は、アルキル基等を示し、R1及びR2は互いに結合して芳香族性の環等を形成してもよい。Xは酸素原子等を示す)で表されるイミド化合物等で構成されているアシル化剤とを反応させて、次いで還元し、さらに脱水反応に供してビニル基含有多環式化合物を得る。
【選択図】なし

Description

本発明は、ビニル基含有多環式化合物の製造法、エポキシ基含有多環式化合物の製造法、並びに機能性高分子のモノマー又はその原料などとして有用なアダマンタン誘導体に関する。
有機基質の炭素原子に直接アシル基を導入する方法として、酸ハライドを用いる方法が知られている。例えば、塩基の存在下、ケトンと酸ハライドとを反応させると、β−ケトエステルが得られる。しかし、この方法では、カルボニル基などで活性化された基質は容易にアシル化されるものの、活性化されていない炭素原子、例えば多環式化合物の橋頭位の炭素原子にアシル基を導入することは困難である。
J.Org.Chem.1978,43,2370及びJ.Org.Chem.1988,53,4369には、光照射下、アダマンタン誘導体にビアセチルを反応させて、1−アセチルアダマンタン誘導体を得る方法が開示されている。しかし、この方法では、特殊な装置を必要とするばかりでなく、収率が低い。
また、アダマンタンの橋頭位にアセチル基を導入する方法として、1−カルボキシアダマンタンを塩化チオニルと反応させて対応する酸塩化物とし、これに、塩基の存在下、マロン酸エチルを反応させて、1−[2−ビス(エトキシカルボニル)アセチル]アダマンタンとし、次いで、これを酸で分解することにより1−アセチルアダマンタンを得る方法が知られている。しかし、この方法は工程数が多く、工業的に不利である。
このように、従来、活性化されていない炭素原子に直接且つ容易にアシル基を導入できる方法はなかった。
一方、橋頭位にアセチル基などのアシル基が導入されたアダマンタン誘導体、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン誘導体及びデカリン誘導体は、機能性高分子のモノマーであるビニル基やエポキシ基を有する多環式化合物等の製造原料として有用であり、簡易且つ効率的な製造法が求められていた。
J.Org.Chem.1978,43,2370 J.Org.Chem.1988,53,4369
従って、本発明の目的は、ビニル基又はエポキシ基を含有するアダマンタン誘導体、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン誘導体及びデカリン誘導体などの多環式化合物の簡易で効率的な製造法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、新規なアダマンタン誘導体を提供することにある。
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討した結果、1,2−ジカルボニル化合物又はそのヒドロキシ還元体と、酸素と、金属化合物などとを組み合わせて用いると、活性化されていない炭素原子、例えば、多環式化合物の橋頭位の炭素原子であっても、簡単に且つ効率よくアシル基を導入できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、下記式(15)
Figure 2009280585
(式中、環Aは、橋頭位にメチン炭素原子を有する多環式基を示し、式中に示されている単結合は前記橋頭位に結合している)
で表される多環式化合物と、(A1)下記式(2b)
Figure 2009280585
(式中、Rf、Rg及びRbは、同一又は異なって、水素原子、炭化水素基又は複素環基を示し、Z1及びZ2は、同一又は異なって、酸素原子又はヒドロキシル基を示す)
で表される1,2−ジカルボニル化合物又はそのヒドロキシ還元体、(B)酸素、および(C)(C1)金属化合物及び(C2)下記式(1)
Figure 2009280585
(式中、R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基を示し、R1及びR2は互いに結合して二重結合、または芳香族性又は非芳香族性の環を形成してもよい。Xは酸素原子又はヒドロキシル基を示す。前記R1、R2、又はR1及びR2が互いに結合して形成された二重結合又は芳香族性若しくは非芳香族性の環には、上記式(1)中に示されるN−置換環状イミド基が1又は2個結合していてもよい)
で表されるイミド化合物から選択された少なくとも1種の化合物で構成されているアシル化剤とを反応させて、下記式(16)
Figure 2009280585
(式中、環A、Rf、Rgは前記と同じ)
で表される化合物を生成させ、得られた式(16)で表される化合物を還元して、下記式(17)
Figure 2009280585
(式中、環A、Rf、Rgは前記と同じ)
で表される化合物とし、これを脱水反応に供して、下記式(18)
Figure 2009280585
(式中、環A、Rf、Rgは前記と同じ)
で表される化合物を得るビニル基含有多環式化合物の製造法を提供する。
この製造法において、式(15)で表される多環式化合物は、下記式(3)
Figure 2009280585
(式中、Rc1、Rd1、Re1は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシメチル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、ニトロ基、アシル基を示す。アダマンタン骨格を構成する炭素原子のうち橋頭位以外の炭素原子は置換基を有していてもよい)
で表されるアダマンタン誘導体、下記式(11)
Figure 2009280585
(式中、Rp1、Rq1、Rr1、Rs1は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシメチル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、ニトロ基、アシル基を示し、Rp1、Rq1、Rr1、Rs1のうち少なくとも1つは水素原子である。トリシクロデカン骨格を構成する炭素原子のうち橋頭位以外の炭素原子は置換基を有していてもよい)
で表されるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン誘導体、または下記式(13)
Figure 2009280585
(式中、Rt1、Ru1は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシメチル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、ニトロ基、アシル基を示し、Rt1、Ru1のうち少なくとも1つは水素原子である。デカリン骨格を構成する炭素原子のうち橋頭位以外の炭素原子は置換基を有していてもよい)
で表されるデカリン誘導体であってもよい。
本発明は、また、上記方法により得られた下記式(18)
Figure 2009280585
(式中、環A、Rf、Rgは前記と同じ)
で表されるビニル基含有多環式化合物と酸化剤とを反応させて、下記式(19)
Figure 2009280585
(式中、環A、Rf、Rgは前記に同じ)
で表される化合物を得るエポキシ基含有多環式化合物の製造法を提供する。
本発明は、さらに、下記式(20)
Figure 2009280585
(式中、Rc6、Rd6、Re6は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシメチル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、ニトロ基、アシル基、置換基を有していてもよいヒドロキシメチル基、置換基を有していてもよいビニル基、置換基を有していてもよいエポキシ基を示し、Rc6、Rd6、Re6は同時に水素原子であることはない。Rf、Rgは、同一又は異なって、水素原子、炭化水素基又は複素環基を示す。アダマンタン骨格を構成する炭素原子のうち橋頭位以外の炭素原子は置換基を有していてもよい)
で表されるアダマンタン誘導体を提供する。
なお、本明細書では、上記の発明のほか、下記の発明についても説明する。
本発明のアシル化剤は、(A)1,2−ジカルボニル化合物又はそのヒドロキシ還元体と、(B)酸素と、(C)(C1)金属化合物及び(C2)下記式(1)
Figure 2009280585
(式中、R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基を示し、R1及びR2は互いに結合して二重結合、または芳香族性又は非芳香族性の環を形成してもよい。Xは酸素原子又はヒドロキシル基を示す。前記R1、R2、又はR1及びR2が互いに結合して形成された二重結合又は芳香族性若しくは非芳香族性の環には、上記式(1)中に示されるN−置換環状イミド基が1又は2個結合していてもよい)
で表されるイミド化合物から選択された少なくとも1種の化合物とで構成されている。
また、本発明のアシル化法では、有機基質と上記のアシル化剤とを反応させてアシル基含有化合物を生成させる。
さらに、本発明のアシル基含有化合物の製造法では、有機基質と上記のアシル化剤とを反応させて、アシル基含有化合物を得る。
また、本発明のアダマンタン誘導体の製造法では、下記式(3)
Figure 2009280585
(式中、Rc1、Rd1、Re1は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシメチル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、ニトロ基、アシル基を示す。アダマンタン骨格を構成する炭素原子のうち橋頭位以外の炭素原子は置換基を有していてもよい)
で表されるアダマンタン誘導体と上記のアシル化剤とを反応させて、下記式(4)
Figure 2009280585
(式中、Rはアシル基を示し、Rc2、Rd2、Re2は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシメチル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、ニトロ基、アシル基を示す。アダマンタン骨格を構成する炭素原子のうち橋頭位以外の炭素原子は置換基を有していてもよい)
で表される化合物を得る。
本発明のアダマンタン誘導体は、下記式(7)
Figure 2009280585
(式中、Rはアシル基を示し、Rc5はヒドロキシル基又はアシル基を示し、Rd5、Re5は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシメチル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、ニトロ基、アシル基を示す。アダマンタン骨格を構成する炭素原子のうち橋頭位以外の炭素原子は置換基を有していてもよい)
で表される。
本発明の トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン誘導体の製造法では、下記式(11)
Figure 2009280585
(式中、Rp1、Rq1、Rr1、Rs1は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシメチル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、ニトロ基、アシル基を示し、Rp1、Rq1、Rr1、Rs1のうち少なくとも1つは水素原子である。トリシクロデカン骨格を構成する炭素原子のうち橋頭位以外の炭素原子は置換基を有していてもよい)
で表されるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン誘導体に上記のアシル化剤を反応させて、橋頭位をアシル化し、下記式(12)
Figure 2009280585
(式中、Rp2、Rq2、Rr2、Rs2は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシメチル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、ニトロ基、アシル基を示し、Rp2、Rq2、Rr2、Rs2のうち少なくとも1つはアシル基である。トリシクロデカン骨格を構成する炭素原子のうち橋頭位以外の炭素原子は置換基を有していてもよい)
で表される化合物を得る。
本発明のトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン誘導体は、下記式(12)
Figure 2009280585
(式中、Rp2、Rq2、Rr2、Rs2は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシメチル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、ニトロ基、アシル基を示し、Rp2、Rq2、Rr2、Rs2のうち少なくとも1つはアシル基である。トリシクロデカン骨格を構成する炭素原子のうち橋頭位以外の炭素原子は置換基を有していてもよい)
で表される。
本発明のデカリン誘導体の製造法では、下記式(13)
Figure 2009280585
(式中、Rt1、Ru1は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシメチル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、ニトロ基、アシル基を示し、Rt1、Ru1のうち少なくとも1つは水素原子である。デカリン骨格を構成する炭素原子のうち橋頭位以外の炭素原子は置換基を有していてもよい)
で表されるデカリン誘導体に上記のアシル化剤を反応させて、橋頭位をアシル化し、下記式(14)
Figure 2009280585
(式中、Rt2、Ru2は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシメチル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、ニトロ基、アシル基を示し、Rt2、Ru2のうち少なくとも1つはアシル基である。デカリン骨格を構成する炭素原子のうち橋頭位以外の炭素原子は置換基を有していてもよい)
で表される化合物を得る。
本発明のデカリン誘導体は、下記式(14)
Figure 2009280585
(式中、Rt2、Ru2は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシメチル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、ニトロ基、アシル基を示し、Rt2、Ru2のうち少なくとも1つはアシル基である。デカリン骨格を構成する炭素原子のうち橋頭位以外の炭素原子は置換基を有していてもよい)
で表される。
なお、本明細書において、保護基とは、広い概念で用い、遊離の官能基から誘導される基も含まれ、保護基は脱離不能であってもよい。
本発明によれば、ビニル基やエポキシ基を含有する多環式化合物、例えば、ビニル基又はエポキシ基を含有するアダマンタン誘導体、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン誘導体、デカリン誘導体などを効率よく製造できる。
また、本発明によれば、新規なアダマンタン誘導体が提供される。
[1,2−ジカルボニル化合物又はそのヒドロキシ還元体(A)]
前記1,2−ジカルボニル化合物又はそのヒドロキシ還元体(A)には、下記式(2)で表される化合物が含まれる。
Figure 2009280585
(式中、Ra及びRbは、同一又は異なって、水素原子、炭化水素基又は複素環基を示すか、又は、Ra及びRbは、互いに結合して隣接する2つの炭素原子と共に環を形成してもよい。Z1及びZ2は、同一又は異なって、酸素原子又はヒドロキシル基を示す)
a、Rbにおける炭化水素基には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、アリル基などの炭素数1〜20(好ましくは1〜10、特に1〜6)程度の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基(アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基);シクロペンチル、シクロヘキシル基などの炭素数3〜8程度の脂環式炭化水素基(シクロアルキル基及びシクロアルケニル基);フェニル、ナフチル基などの炭素数6〜14程度の芳香族炭化水素基(アリール基)が含まれる。
前記複素環基における複素環としては、例えば、テトラヒドロフラン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、インドリン、フラン、オキサゾール、チオフェン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、インドール、キノリンなどの窒素原子、酸素原子及びイオウ原子から選択された少なくとも1種のヘテロ原子を1〜3個程度含む3〜15員(好ましくは5〜12員、さらに好ましくは5又は6員)程度の複素環(縮合環を含む)などが含まれる。
前記炭化水素基及び複素環基は、種々の置換基、例えば、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基など)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル基など)、複素環基などを有していてもよい。RaとRbは同一の基である場合が多い。
a及びRbが互いに結合して隣接する2つの炭素原子と共に形成する環としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環などの3〜15員(好ましくは5〜6員)程度のシクロアルカン環が挙げられる。前記環は、例えば上記のような置換基を有していてもよい。
1及びZ2は、酸素原子又はヒドロキシル基を示し、炭素原子とZ1、Z2との結合は単結合又は二重結合である。
式(2)で表される化合物のうち、好ましい化合物には、下記式(2a)で表される化合物が含まれる。
Figure 2009280585
(式中、Ra1及びRb1は、同一又は異なって、炭素数1〜4のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示すか、又は、Ra1及びRb1は、互いに結合して隣接する2つの炭素原子と共に環を形成してもよい。Z1及びZ2は、同一又は異なって、酸素原子又はヒドロキシル基を示す)
特に好ましいRa1及びRb1は、メチル基又はエチル基、特にメチル基である。Ra1及びRb1は同一の基である場合が多い。
前記1,2−ジカルボニル化合物の好ましい具体例として、ビアセチル(2,3−ブタンジオン)、2,3−ペンタンジオン、3,4−ヘキサンジオン、ビベンゾイル(ベンジル)、アセチルベンゾイル、シクロペンタン−1,2−ジオン、シクロヘキサン−1,2−ジオンなどのα−ジケトン類が挙げられる。なかでも、ビアセチルなどが好ましい。前記1,2−ジカルボニル化合物のヒドロキシ還元体の好ましい例としては、アセトイン、ベンゾインなどのα−ケトアルコール類;2,3−ブタンジオール、2,3−ペンタンジオールなどのビシナルジオール類が含まれる。なかでも、アセトイン、2,3−ブタンジオールが好ましい。
[酸素(B)]
酸素(B)は、分子状酸素、活性酸素の何れであってもよい。分子状酸素は、特に制限されず、純粋な酸素を用いてもよく、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素などの不活性ガスで希釈した酸素や空気を使用してもよい。酸素(B)として分子状酸素を用いる場合が多い。
[金属化合物(C1)]
金属化合物(C1)を構成する金属元素としては、特に限定されず、周期表1〜15族の金属元素の何れであってもよい。なお、本明細書では、ホウ素Bも金属元素に含まれるものとする。例えば、前記金属元素として、周期表1族元素(Li、Na、Kなど)、2族元素(Mg、Ca、Sr、Baなど)、3族元素(Sc、ランタノイド元素、アクチノイド元素など)、4族元素(Ti、Zr、Hfなど)、5族元素(Vなど)、6族元素(Cr、Mo、Wなど)、7族元素(Mnなど)、8族元素(Fe、Ruなど)、9族元素(Co、Rhなど)、10族元素(Ni、Pd、Ptなど)、11族元素(Cuなど)、12族元素(Znなど)、13族元素(B、Al、Inなど)、14族元素(Sn、Pbなど)、15族元素(Sb、Biなど)などが挙げられる。好ましい金属元素には、遷移金属元素(周期表3〜12族元素)が含まれる。なかでも、周期表5〜11族元素、特に、5族及び9族元素が好ましく、とりわけ、Co、Vなどが好ましい。金属元素の原子価は特に制限されず、1〜6価程度であってもよいが、2価又は3価程度である場合が多い。
金属化合物(C1)としては、前記金属元素の単体、水酸化物、酸化物(複合酸化物を含む)、ハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、オキソ酸塩(例えば、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩など)、オキソ酸、イソポリ酸、ヘテロポリ酸などの無機化合物;有機酸塩(例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、青酸塩、ナフテン酸塩、ステアリン酸塩など)、錯体などの有機化合物が挙げられる。前記錯体を構成する配位子としては、OH(ヒドロキソ)、アルコキシ(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなど)、アシル(アセチル、プロピオニルなど)、アルコキシカルボニル(メトキシカルボニル、エトキシカルボニルなど)、アセチルアセトナト、シクロペンタジエニル基、ハロゲン原子(塩素、臭素など)、CO、CN、酸素原子、H2O(アコ)、ホスフィン(トリフェニルホスフィンなどのトリアリールホスフィンなど)のリン化合物、NH3(アンミン)、NO、NO2(ニトロ)、NO3(ニトラト)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェナントロリンなどの窒素含有化合物などが挙げられる。
金属化合物(C1)の具体例としては、例えば、コバルト化合物を例にとると、水酸化コバルト、酸化コバルト、塩化コバルト、臭化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、リン酸コバルトなどの無機化合物;酢酸コバルト、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルトなどの有機酸塩;コバルトアセチルアセトナトなどの錯体等の2価又は3価のコバルト化合物などが挙げられる。また、バナジウム化合物の例としては、水酸化バナジウム、酸化バナジウム、塩化バナジウム、塩化バナジル、硫酸バナジウム、硫酸バナジル、バナジン酸ナトリウムなどの無機化合物;バナジウムアセチルアセトナト、バナジルアセチルアセトナトなどの錯体等の2〜5価のバナジウム化合物などが挙げられる。他の金属元素の化合物としては、前記コバルト又はバナジウム化合物に対応する化合物などが例示される。金属化合物(C1)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
金属化合物(C1)と1,2−ジカルボニル化合物又はそのヒドロキシ還元体(A)との比率は、例えば、前者(C1)/後者(A)(モル比)=0〜0.1、好ましくは0.001〜0.05、さらに好ましくは0.002〜0.02程度である。
[イミド化合物(C2)]
前記式(1)で表されるイミド化合物(C2)において、置換基R1及びR2のうちハロゲン原子には、ヨウ素、臭素、塩素およびフッ素が含まれる。アルキル基には、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、デシル基などの炭素数1〜10程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が含まれる。好ましいアルキル基としては、例えば、炭素数1〜6程度、特に炭素数1〜4程度の低級アルキル基が挙げられる。
アリール基には、フェニル、ナフチル基などが含まれ、シクロアルキル基には、シクロペンチル、シクロヘキシル基などが含まれる。アルコキシ基には、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、t−ブトキシ、ヘキシルオキシ基などの炭素数1〜10程度、好ましくは炭素数1〜6程度、特に炭素数1〜4程度の低級アルコキシ基が含まれる。
アルコキシカルボニル基には、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル基などのアルコキシ部分の炭素数が1〜10程度のアルコキシカルボニル基が含まれる。好ましいカルボニル基にはアルコキシ部分の炭素数が1〜6程度、特に1〜4程度の低級アルコキシカルボニル基が含まれる。アシル基としては、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル基などの炭素数1〜6程度のアシル基が例示できる。
前記置換基R1及びR2は、同一又は異なっていてもよい。また、前記式(1)において、R1及びR2は互いに結合して、二重結合、または芳香族性又は非芳香属性の環を形成してもよい。好ましい芳香族性又は非芳香族性環は5〜12員環、特に6〜10員環程度であり、複素環又は縮合複素環であってもよいが、炭化水素環である場合が多い。このような環には、例えば、非芳香族性脂環式環(シクロヘキサン環などの置換基を有していてもよいシクロアルカン環、シクロヘキセン環などの置換基を有していてもよいシクロアルケン環など)、非芳香族性橋かけ環(5−ノルボルネン環などの置換基を有していてもよい橋かけ式炭化水素環など)、ベンゼン環、ナフタレン環などの置換基を有していてもよい芳香族環(縮合環を含む)が含まれる。前記環は、芳香族性環で構成される場合が多い。前記環は、アルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子などの置換基を有していていもよい。
前記一般式(1)において、Xは酸素原子又はヒドロキシル基を示し、窒素原子NとXとの結合は単結合又は二重結合である。
前記R1、R2、又はR1及びR2が互いに結合して形成された二重結合又は芳香族性若しくは非芳香族性の環には、上記式(1)中に示されるN−置換環状イミド基がさらに1又は2個結合していてもよい。例えば、R1又はR2が炭素数2以上のアルキル基である場合、このアルキル基を構成する隣接する2つの炭素原子を含んで前記N−置換環状イミド基が形成されていてもよい。また、R1及びR2が互いに結合して二重結合を形成する場合、該二重結合を含んで前記N−置換環状イミド基が形成されていてもよい。さらに、R1及びR2が互いに結合して芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成する場合、該環を構成する隣接する2つの炭素原子を含んで前記N−置換環状イミド基が形成されていてもよい。
好ましいイミド化合物(C2)には、下記式で表される化合物が含まれる。
Figure 2009280585
(式中、R3〜R6は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子を示す。R3〜R6は、隣接する基同士が互いに結合して芳香族性又は非芳香族性の環を形成していてもよい。式(1f)中、Aはメチレン基又は酸素原子を示す。R1、R2は前記に同じ。式(1c)のベンゼン環には、式(1c)中に示されるN−置換環状イミド基が1又は2個結合していてもよい)
置換基R3〜R6において、アルキル基には、前記例示のアルキル基と同様のアルキル基、特に炭素数1〜6程度のアルキル基が含まれ、ハロアルキル基には、トリフルオロメチル基などの炭素数1〜4程度のハロアルキル基、アルコキシ基には、前記と同様のアルコキシ基、特に炭素数1〜4程度の低級アルコキシ基、アルコキシカルボニル基には、前記と同様のアルコキシカルボニル基、特にアルコキシ部分の炭素数が1〜4程度の低級アルコキシカルボニル基が含まれる。また、アシル基としては、前記と同様のアシル基、特に炭素数1〜6程度のアシル基が例示され、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素原子が例示できる。置換基R3〜R6は、通常、水素原子、炭素数1〜4程度の低級アルキル基、カルボキシル基、ニトロ基、ハロゲン原子である場合が多い。R3〜R6が互いに結合して形成する環としては、前記R1及びR2が互いに結合して形成する環と同様であり、特に芳香族性又は非芳香族性の5〜12員環が好ましい。
式(1)で表されるイミド化合物(C2)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
前記式(1)で表されるイミド化合物(C2)に対応する酸無水物には、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸などの飽和又は不飽和脂肪族ジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸(1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物)、1,2,3,4−シクロヘキサンテトラカルボン酸1,2−無水物などの飽和又は不飽和非芳香族性環状多価カルボン酸無水物(脂環式多価カルボン酸無水物)、無水ヘット酸、無水ハイミック酸などの橋かけ環式多価カルボン酸無水物(脂環式多価カルボン酸無水物)、無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水ニトロフタル酸、無水トリメット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、無水ピロメリット酸、無水メリト酸、1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などの芳香族多価カルボン酸無水物が含まれる。
好ましいイミド化合物としては、例えば、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシマレイン酸イミド、N−ヒドロキシヘキサヒドロフタル酸イミド、N,N′−ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカルボン酸イミド、N−ヒドロキシフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラブロモフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラクロロフタル酸イミド、N−ヒドロキシヘット酸イミド、N−ヒドロキシハイミック酸イミド、N−ヒドロキシトリメリット酸イミド、N,N′−ジヒドロキシピロメリット酸イミド、N,N′−ジヒドロキシナフタレンテトラカルボン酸イミドなどが挙げられる。特に好ましい化合物は、脂環式多価カルボン酸無水物又は芳香族多価カルボン酸無水物、なかでも芳香族多価カルボン酸無水物から誘導されるN−ヒドロキシイミド化合物、例えば、N−ヒドロキシフタル酸イミドなどが含まれる。
前記イミド化合物(C2)は、慣用のイミド化反応、例えば、対応する酸無水物とヒドロキシルアミンNH2OHとを反応させ、酸無水物基の開環及び閉環を経てイミド化する方法により調製できる。
イミド化合物(C2)と、1,2−ジカルボニル化合物又はそのヒドロキシ還元体(A)との比率は、例えば、前者(C2)/後者(A)(モル比)=0〜1、好ましくは0.001〜0.5、さらに好ましくは0.002〜0.2程度である。
本発明のアシル化剤は、前記金属化合物(C1)及び前記イミド化合物(C2)から選択された少なくとも1種の化合物を含んでいればよい。すなわち、本発明のアシル化剤の態様には、(i)1,2−ジカルボニル化合物又はそのヒドロキシ還元体(A)と、酸素(B)と、金属化合物(C1)とで構成されたアシル化剤、(ii)1,2−ジカルボニル化合物又はそのヒドロキシ還元体(A)と、酸素(B)と、イミド化合物(C2)とで構成されたアシル化剤、及び(iii)1,2−ジカルボニル化合物又はそのヒドロキシ還元体(A)と、酸素(B)と、金属化合物(C1)と、イミド化合物(C2)とで構成されたアシル化剤が含まれる。
金属化合物(C1)を含むアシル化剤を用いると高い転化率が得られ、また、イミド化合物(C2)を含むアシル化剤を用いると高い選択率でアシル基含有化合物が生成する場合が多い。また、イミド化合物(C2)を含むアシル化剤では、前記化合物(A)として、1,2−ジカルボニル化合物のヒドロキシ還元体を用いた場合に、前記ヒドロキシ還元体が系内で速やかに1,2−ジカルボニル化合物に変換されて、円滑にアシル化反応が進行するという特徴を有する。
本発明のアシル化剤は、前記成分(A)、(B)、(C)以外の他の成分、例えば、ラジカル発生剤、ラジカル反応促進剤などを含んでいてもよい。このような成分として、例えば、ハロゲン(例えば、塩素、臭素など)、過酸(例えば、過酢酸、m−クロロ過安息香酸など)、過酸化物(例えば、過酸化水素、ヒドロペルオキシドなど)などが挙げられる。
[アシル化法及びアシル基含有化合物の製造法]
本発明の方法では、有機基質と前記アシル化剤とを反応させて、アシル基含有化合物を生成させる。有機基質としては、炭素−水素結合を有する広範囲の化合物が含まれる。好ましい有機基質にはメチン炭素原子(又は第3級炭素原子)を有する化合物が含まれる。メチン炭素原子を有する化合物には、(a)環の構成単位としてメチン基(すなわち、メチン炭素−水素結合)を含む環状化合物、(b)メチン炭素原子を有する鎖状化合物が含まれる。
環状化合物(a)には、(a1)少なくとも1つのメチン基を有する橋かけ環式化合物、(a2)環に炭化水素基が結合した非芳香族性環状化合物(脂環式炭化水素など)などが含まれる。なお、前記橋かけ環式化合物には、2つの環が2個の炭素原子を共有している化合物、例えば、縮合多環式芳香族炭化水素類の水素添加生成物なども含まれる。前記環状化合物(a)にはテルペン類に属する化合物が多い。
橋かけ環式化合物(a1)としては、例えば、デカリン、ビシクロ[2.2.0]ヘキサン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、ビシクロ[3.2.1]オクタン、ビシクロ[4.3.2]ウンデカン、ツジョン、カラン、ピナン、ピネン、ボルナン、ボルニレン、ノルボルナン、ノルボルネン、カンファー、ショウノウ酸、カンフェン、トリシクレン、トリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカン、トリシクロ[5.2.1.03,8]デカン、エキソトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、エンドトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、エンドトリシクロ[5.2.2.02,6]ウンデカン、アダマンタン、1−アダマンタノール、1−クロロアダマンタン、1−メチルアダマンタン、1,3−ジメチルアダマンタン、1−メトキシアダマンタン、1−カルボキシアダマンタン、1−メトキシカルボニルアダマンタン、1−ニトロアダマンタン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、パーヒドロアセナフテン、パーヒドロアントラセン、パーヒドロフルオレン、パーヒドロフェナントレン、パーヒドロフェナレン、パーヒドロインデン、キヌクリジンなどの2〜4環式の橋かけ環式炭化水素又は橋かけ複素環化合物及びそれらの誘導体などが挙げられる。これらの橋かけ環式化合物は、橋頭位(2環が2個の原子を共有している場合には接合部位に相当)にメチン炭素原子を有する。
環に炭化水素基が結合した非芳香族性環状化合物(a2)としては、1−メチルシクロペンタン、1−メチルシクロヘキサン、リモネン、メンテン、メントール、カルボメントン、メントンなどの、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)程度の炭化水素基(例えば、アルキル基など)が環に結合した3〜15員程度の脂環式炭化水素及びその誘導体などが挙げられる。環に炭化水素基が結合した非芳香族性環状化合物(a2)は、環と前記炭化水素基との結合部位にメチン炭素原子を有する。
メチン炭素原子を有する鎖状化合物(b)としては、第3級炭素原子を有する鎖状炭化水素類、例えば、イソブタン、イソペンタン、イソヘキサン、3−メチルペンタン、2,3−ジメチルブタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、3,4−ジメチルヘキサン、3−メチルオクタンなどの炭素数4〜20(好ましくは、4〜10)程度の脂肪族炭化水素類およびその誘導体などが例示できる。
本発明の方法において、1,2−ジカルボニル化合物又はそのヒドロキシ還元体(A)の使用量は、有機基質1モルに対して、例えば、1モル以上(1〜50モル程度)、好ましくは1.5〜20モル、さらに好ましくは3〜10モル程度である。1,2−ジカルボニル化合物又はそのヒドロキシ還元体(A)を反応溶媒として用いることもできる。
酸素(B)の使用量は、通常、有機基質1モルに対して、0.5モル以上(例えば、1モル以上)、好ましくは1〜100モル、さらに好ましくは2〜50モル程度である。基質に対して過剰モルの分子状酸素を使用する場合が多い。
金属化合物(C1)の使用量は、有機基質1モルに対して、例えば、0.00001〜1モル、好ましくは0.0001〜0.1モル、さらに好ましくは0.001〜0.05モル程度である。イミド化合物(C2)の使用量は、有機基質1モルに対して、例えば、0.00001〜1モル、好ましくは0.001〜0.7モル、さらに好ましくは0.01〜0.5モル程度である。
本発明の方法は、通常、有機溶媒中で行われる。有機溶媒としては、例えば、酢酸、プロピオン酸などの有機酸;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類;ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;t−ブタノール、t−アミルアルコールなどのアルコール類;ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ニトロベンゼン、ニトロメタン、ニトロエタンなどのニトロ化合物;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類;及びこれらの混合溶媒などが挙げられる。溶媒としては、酢酸などの有機酸、ベンゾニトリルなどのニトリル類、トリフルオロメチルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素等を用いる場合が多い。
本発明の方法は比較的温和な条件であっても円滑にアシル化反応が進行する。反応温度は、有機基質の種類などに応じて適当に選択でき、例えば、0〜300℃、好ましくは30〜250℃、さらに好ましくは40〜200℃程度であり、通常、40〜150℃程度で反応する場合が多い。反応は、常圧または加圧下で行うことができ、加圧下で反応させる場合には、通常、1〜100atm(例えば、1.5〜80atm)、好ましくは2〜70atm程度である。反応時間は、反応温度及び圧力に応じて、例えば、30分〜48時間程度の範囲から適当に選択できる。
反応は、酸素の存在下又は酸素の流通下、回分式、半回分式、連続式などの慣用の方法により行うことができる。反応終了後、反応生成物は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により容易に分離精製できる。
前記アシル化剤を利用すると、ラジカル的な機構を経るためか、カルボニル基などで活性化されていない炭素原子であっても、前記1,2−ジカルボニル化合物に対応するアシル基(例えば、前記式(2)で表される1,2−ジカルボニル化合物又はそのヒドロキシ還元体を用いる場合には、RaCO基又はRbCO基)を導入でき、良好な収率でアシル基含有化合物を得ることができる。特に、メチン炭素原子を有する化合物からは、メチン炭素にアシル基が導入されたアシル基含有化合物を高い収率で得ることができる。例えば、アダマンタンなどの橋かけ環式炭化水素類(a1)をアシル化すると、橋頭位にアシル基が導入されたアシル基含有化合物が得られる。また、イソブタンなどのメチン炭素原子を有する鎖状化合物(b)をアシル化すると、t−ブチルケトンなどのt−アルキルケトン類を得ることができる。
[アダマンタン誘導体の製造]
前記アシル化法又はアシル基含有化合物の製造法を利用することにより種々のアダマンタン誘導体を製造することができる。
例えば、前記式(3)で表されるアダマンタン誘導体と前記アシル化剤とを反応させることにより、前記式(4)で表されるアダマンタン誘導体を得ることができる。
前記式(3)のRc1、Rd1、Re1におけるハロゲン原子には、フッ素、塩素、臭素原子などが含まれる。また、アルキル基には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル基などの炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6、さらに好ましくは炭素数1〜4程度のアルキル基が含まれる。特に好ましいアルキル基として、メチル基及びエチル基、とりわけメチル基が挙げられる。
c1、Rd1、Re1におけるヒドロキシル基及びヒドロキシメチル基の保護基としては、慣用の保護基、例えば、アルキル基(例えば、メチル、t−ブチル基などのC1-4アルキル基など)、アルケニル基(例えば、アリル基など)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基など)、アリール基(例えば、2,4−ジニトロフェニル基など)、アラルキル基(例えば、ベンジル、2,6−ジクロロベンジル、3−ブロモベンジル、2−ニトロベンジル、トリフェニルメチル基など)、置換メチル基(例えば、メトキシメチル、メチルチオメチル、ベンジルオキシメチル、t−ブトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル、2,2,2−トリクロロエトキシメチル、ビス(2−クロロエトキシ)メチル、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル基など)、置換エチル基(例えば、1−エトキシエチル、1−メチル−1−メトキシエチル、1−イソプロポキシエチル、2,2,2−トリクロロエチル基など)、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、アシル基(例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル基などのC1-6脂肪族アシル基;アセトアセチル基;ベンゾイル、ナフトイル基などの芳香族アシル基など)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル基などのC1-4アルコキシ−カルボニル基など)、アラルキルオキシカルボニル基(例えば、ベンジルオキシカルボニル基、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基など)、置換又は無置換カルバモイル基(例えば、カルバモイル、メチルカルバモイル、フェニルカルバモイル基など)、ジアルキルホスフィノチオイル基(例えば、ジメチルホスフィノチオイル基など)、ジアリールホスフィノチオイル基(例えば、ジフェニルホスフィノチオイル基など)、置換シリル基(例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、トリベンジルシリル、トリフェニルシリル基など)など、及び、分子内にヒドロキシル基(ヒドロキシメチル基を含む)が2以上存在するときには、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基(メチレン、エチリデン、イソプロピリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、ベンジリデン基など)などが例示できる。好ましいヒドロキシル基の保護基には、C1-4アルキル基、置換メチル基、置換エチル基、アシル基、C1-4アルコキシ−カルボニル基、置換又は無置換カルバモイル基、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基などが含まれる。
c1、Rd1、Re1におけるアミノ基の保護基としては、前記ヒドロキシル基の保護基として例示したアルキル基、アラルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、ジアルキルホソフィノチオイル基、ジアリールホスフィノチオイル基などが挙げられる。好ましいアミノ基の保護基には、C1-4アルキル基、C2-6脂肪族アシル基、芳香族アシル基、C1-4アルコキシ−カルボニル基などが含まれる。
c1、Rd1、Re1におけるカルボキシル基の保護基としては、例えば、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシなどのC1-6アルコキシ基など)、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基など)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基など)、トリアルキリシリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ基など)、置換基を有していてもよいアミノ基(例えば、アミノ基;メチルアミノ基、ジメチルアミノ基などのモノ又はジC1-6アルキルアミノ基など)、ヒドラジノ基、アルコキシカルボニルヒドラジノ基、アラルキルオキシカルボニルヒドラジノ基などが含まれる。好ましいカルボキシル基の保護基としては、C1-6アルコキシ基(特に、C1-4アルコキシ基)、モノ又はジC1-6アルキルアミノ基(特に、モノ又はジC1-4アルキルアミノ基)などが挙げられる。
c1、Rd1、Re1におけるアシル基としては、前記1,2−ジカルボニル化合物に対応するアシル基、例えば、前記RaCO基又はRbCO基に相当するアシル基などが挙げられる。好ましいアシル基には、C2-5飽和脂肪族アシル基、シクロアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基などが含まれ、なかでもアセチル基及びプロピオニル基、特にアセチル基が好ましい。
なお、式(3)で表される化合物[式(4)、(4a)、(5)、(6)及び(7)で表される化合物も同様]において、アダマンタン骨格を構成する炭素原子のうち橋頭位以外の炭素原子(式中、メチレン基を形成している炭素原子)には、オキソ基、アルキル基(メチル基などのC1-4アルキル基)、アシル基(アセチル基などのC2-5脂肪族アシル基、ベンゾイル基などのアリールカルボニル基など)、ヒドロキシル基、アルコキシ基(メトキシ基などのC1-4アルコキシ基)、アシルオキシ基(アセトキシなどのC2-6脂肪族アシルオキシ基、ベンゾイルオキシ基などのアリールカルボニルオキシ基など)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル基などのC1-4アルコキシ−カルボニル基など)、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素原子など)、シアノ基などの置換基が置換していてもよい。
式(3)で表される化合物は、公知の方法により製造できる。例えば、橋頭位にヒドロキシル基を有するアダマンタン誘導体は、橋頭位に水素原子を有するアダマンタン誘導体を、前記式(1)で表されるイミド化合物で構成された触媒、又はこの触媒と前記金属化合物(c1)とで構成された触媒の存在下、酸素により酸化することにより得ることができる。イミド化合物の使用量は、橋頭位に水素原子を有するアダマンタン誘導体1モルに対して、例えば0.001〜1モル程度であり、前記金属化合物(c1)の使用量は、橋頭位に水素原子を有するアダマンタン誘導体1モルに対して、例えば0.0001〜0.7モル程度である。酸素は、通常、橋頭位に水素原子を有するアダマンタン誘導体に対して過剰モル量使用される。酸素としては、分子状酸素を使用できる。反応は、例えば、酢酸などの有機酸、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル等の溶媒中、常圧又は加圧条件下、0〜300℃(好ましくは30〜250℃)程度の温度で行われる。
また、橋頭位にカルボキシル基を有するアダマンタン誘導体は、橋頭位に水素原子を有するアダマンタン誘導体を、前記式(1)で表されるイミド化合物で構成された触媒、又はこの触媒と前記金属化合物(c1)とで構成された触媒の存在下、一酸化炭素及び酸素と接触させることにより得ることができる。イミド化合物及び金属化合物(c1)の使用量は、前記酸化反応の場合と同様である。一酸化炭素の使用量は、橋頭位に水素原子を有するアダマンタン誘導体1モルに対して、通常、1モル以上(例えば1〜100モル)である。酸素の使用量は、橋頭位に水素原子を有するアダマンタン誘導体1モルに対して、0.5モル以上(例えば0.5〜100モル)程度である。一酸化炭素と酸素の割合は、一酸化炭素/酸素(モル比)=1/99〜99/1、好ましくは10/90〜99/1程度である。反応は、例えば、酢酸などの有機酸、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル等の溶媒中、常圧又は加圧条件下、0〜200℃(好ましくは10〜150℃)程度の温度で行われる。
橋頭位にヒドロキシルメチル基を有するアダマンタン誘導体は、上記の橋頭位にカルボキシル基を有するアダマンタン誘導体を、還元剤(例えば、水素−白金族金属触媒、水素化ホウ素ナトリウム−ルイス酸、水素化アルミニウムリチウム、ジボランなど)を用いた慣用の還元法により得ることができる。
橋頭位にニトロ基を有するアダマンタン誘導体は、橋頭位に水素原子を有するアダマンタン誘導体を、前記式(1)で表されるイミド化合物で構成された触媒の存在下又は非存在下、窒素酸化物(例えば、N23、N2O−O2、NO−O2、NO2など)と接触させることにより得ることができる。イミド化合物の使用量は、前記酸化反応の場合と同様である。窒素酸化物の使用量は、橋頭位に水素原子を有するアダマンタン誘導体1モルに対して、通常、1〜50モル、好ましくは1.5〜30モル程度である。反応は、例えば、酢酸などの有機酸、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル等の溶媒中、常圧又は加圧条件下、0〜150℃(好ましくは10〜125℃)程度の温度で行われる。
橋頭位にアミノ基を有するアダマンタン誘導体は、上記橋頭位にニトロ基を有するアダマンタン誘導体を、還元剤[例えば、水素−金属触媒(白金族金属、ニッケル、銅クロマイトなど)、水素化ホウ素ナトリウム、ジボランなど]を用いた慣用の還元法により得ることができる。
また、保護基の導入及び脱離は慣用の方法により行うことができる。なお、アシル基を含む化合物は、本発明の方法を利用することにより製造することができる。
式(3)で表される化合物としては、例えば、アダマンタン、1−メチルアダマンタン、1−エチルアダマンタン、1,3−ジメチルアダマンタン、1−アダマンタノール、1,3−アダマンタンジオール、1−メトキシアダマンタン、1−アセトキシアダマンタン、1−ヒドロキシメチルアダマンタン、1−アミノアダマンタン、1−アセチルアミノアダマンタン、1−ベンゾイルアミノアダマンタン、1−カルボキシアダマンタン、1−エトキシカルボニルアダマンタン、1−ニトロアダマンタン、1−アセチルアダマンタンなどが例示できる。
式(4)において、Rで示されるアシル基としては、前記1,2−ジカルボニル化合物に対応するアシル基、例えば、前記RaCO基又はRbCO基に相当するアシル基などが挙げられる。好ましいアシル基には、C2-5飽和脂肪族アシル基、シクロアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基などが含まれ、なかでもアセチル基及びプロピオニル基、特にアセチル基が好ましい。また、Rc2、Rd2、Re2におけるアルキル基;ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基、アミノ基及びカルボキシル基の保護基;アシル基としては、前記Rc1、Rd1、Re1におけるアルキル基等と同様の基が例示できる。なお、Rc1、Rd1又はRe1が水素原子の場合には、反応により、アシル基又はヒドロキシル基に変換され得る。また、条件により、アダマンタン骨格の橋頭位に隣接するメチレン基にオキソ基が導入される場合がある。
前記式(4)で表される化合物のうち、前記式(7)で表されるアダマンタン誘導体は新規な化合物である。式(7)において、R及びRc5で示されるアシル基、Rd5、Re5で示されるアルキル基、ヒドロキシル基等の保護基及びアシル基としては、前記式(3)又は(4)の化合物におけるR、Rc1、Rd1、Re1と同様の基が挙げられる。
式(7)で表される化合物の具体例としては、例えば、1−アセチル−3−アダマンタノール、1,3−ジアセチルアダマンタン、1−アセチル−2−オキソ−3−アダマンタノール、1,3−ジアセチル−5−アダマンタノール、1−アセチル−3,5−アダマンタンジオール、1−アセチル−3−メチル−5−アダマンタノール、1−アセチル−3,5−ジメチル−7−アダマンタノール、1,3−ジアセチル−5,7−ジメチルアダマンタン、1−アセチル−3−メトキシ−5−アダマンタノール、1−アセトキシ−3−アセチル−5−アダマンタノール、1−アセチル−3−ヒドロキシメチル−5−アダマンタノール、1−アセチル−3−アミノ−5−アダマンタノール、1−アセチル−3−アセチルアミノ−5−アダマンタノール、1−アセチル−3−ベンゾイルアミノ−5−アダマンタノール、1−アセチル−3−カルボキシ−5−アダマンタノール、1−アセチル−3−エトキシカルボニル−5−アダマンタノール、1−アセチル−3−ニトロ−5−アダマンタノールなどが挙げられる。
[トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン誘導体の製造]
また、前記アシル化法又はアシル基含有化合物の製造法を利用して、アシル基を有する種々のトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン誘導体を製造することができる。例えば、前記式(11)で表されるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン誘導体と前記アシル化剤とを反応させることにより、前記式(12)で表されるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン誘導体を得ることができる。なお、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン誘導体には、エンド体及びエキソ体が含まれる。
前記式(11)のRp1、Rq1、Rr1、Rs1におけるハロゲン原子;アルキル基;ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基、アミノ基及びカルボキシル基の保護基;アシル基;及びこれらの好ましい基としては、前記式(3)におけるRc1、Rd1、Re1と同様の基が例示される。
なお、式(11)で表される化合物[式(12)で表される化合物も同様]において、トリシクロデカン骨格を構成する炭素原子のうち橋頭位以外の炭素原子(式中、メチレン基を形成している炭素原子)には、オキソ基、アルキル基(メチル基などのC1-4アルキル基)、アシル基(アセチル基などのC2-5脂肪族アシル基、ベンゾイル基などのアリールカルボニル基など)、ヒドロキシル基、アルコキシ基(メトキシ基などのC1-4アルコキシ基)、アシルオキシ基(アセトキシなどのC2-6脂肪族アシルオキシ基、ベンゾイルオキシ基などのアリールカルボニルオキシ基など)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル基などのC1-4アルコキシ−カルボニル基など)、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素原子など)、シアノ基などの置換基が置換していてもよい。
式(11)で表される化合物は、例えば、橋頭位に水素原子を有するトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン誘導体から、前記式(3)で表されるアダマンタン化合物について記した方法と同様の方法により得ることができる。なお、アシル基を含む化合物は、本発明の方法を利用することにより製造できる。
式(11)で表される化合物としては、例えば、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1−メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1−エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1,7−ジメチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2−メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1−ヒドロキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2−ヒドロキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1,7−ジヒドロキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1−メトキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2−メトキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1−アセトキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2−アセトキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1−ヒドロキシメチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2−ヒドロキシメチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1−アミノトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2−アミノトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1−アセチルアミノトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2−アセチルアミノトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1−ベンゾイルアミノトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2−ベンゾイルアミノトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1−カルボキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2−カルボキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1−エトキシカルボニルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2−エトキシカルボニルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1−ニトロトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2−ニトロトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1−アセチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2−アセチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンなどが例示できる。これらの化合物には、エンド体及びエキソ体が含まれる。
式(12)において、Rp2、Rq2、Rr2、Rs2におけるアシル基としては、前記1,2−ジカルボニル化合物に対応するアシル基、例えば、前記RaCO基又はRbCO基に相当するアシル基などが挙げられる。好ましいアシル基には、C2-5飽和脂肪族アシル基、シクロアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基などが含まれ、なかでもアセチル基及びプロピオニル基、特にアセチル基が好ましい。また、Rp2、Rq2、Rr2、Rs2におけるアルキル基;ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基、アミノ基及びカルボキシル基の保護基;アシル基としては、前記Rc1、Rd1、Re1におけるアルキル基等と同様の基が例示できる。なお、Rp1、Rq1、Rr1、Rs1が水素原子の場合には、反応により、ヒドロキシル基に変換される場合もある。また、条件により、トリシクロデカン骨格の橋頭位に隣接するメチレン基にオキソ基が導入される場合がある。
前記式(12)で表される化合物は新規な化合物である。式(12)で表される化合物の具体例としては、例えば、2−アセチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2,6−ジアセチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2−アセチル−7−メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2−アセチル−7−エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2−アセチル−1,7−ジメチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2−アセチル−7−ヒドロキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2−アセチル−1,7−ジヒドロキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2−アセチル−7−メトキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2−アセチル−6−メトキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2−アセトキシ−6−アセチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2−アセチル−7−ヒドロキシメチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2−アセチル−6−ヒドロキシメチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2−アセチル−7−アミノトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2−アセチル−6−アミノトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2−アセチル−7−アセチルアミノトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2−アセチル−6−アセチルアミノトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2−アセチル−7−ベンゾイルアミノトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2−アセチル−6−ベンゾイルアミノトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2−アセチル−7−カルボキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2−アセチル−6−カルボキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2−アセチル−7−エトキシカルボニルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2−アセチル−6−エトキシカルボニルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2−アセチル−7−ニトロトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2−アセチル−6−ニトロトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンなどが挙げられる。これらの化合物には、エンド体及びエキソ体が含まれる。
[デカリン誘導体の製造]
さらに、前記アシル化法又はアシル基含有化合物の製造法を利用して、アシル基を有する種々のデカリン誘導体を製造することができる。例えば、前記式(13)で表されるデカリン誘導体と前記アシル化剤とを反応させることにより、前記式(14)で表されるデカリン誘導体を得ることができる。デカリン誘導体には、シス体及びトランス体が含まれる。
前記式(13)のRt1、Ru1におけるハロゲン原子;アルキル基;ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基、アミノ基及びカルボキシル基の保護基;アシル基;及びこれらの好ましい基としては、前記式(3)におけるRc1、Rd1、Re1と同様の基が例示される。
なお、式(13)で表される化合物[式(14)で表される化合物も同様]において、デカリン骨格を構成する炭素原子のうち橋頭位以外の炭素原子(式中、メチレン基を形成している炭素原子)には、オキソ基、アルキル基(メチル基などのC1-4アルキル基)、アシル基(アセチル基などのC2-5脂肪族アシル基、ベンゾイル基などのアリールカルボニル基など)、ヒドロキシル基、アルコキシ基(メトキシ基などのC1-4アルコキシ基)、アシルオキシ基(アセトキシなどのC2-6脂肪族アシルオキシ基、ベンゾイルオキシ基などのアリールカルボニルオキシ基など)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル基などのC1-4アルコキシ−カルボニル基など)、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素原子など)、シアノ基などの置換基が置換していてもよい。
式(13)で表される化合物は、例えば、橋頭位に水素原子を有するデカリン誘導体を原料として、前記式(3)で表されるアダマンタン化合物について記したのと同様の方法により得ることができる。なお、アシル基を含む化合物は、本発明の方法を利用することにより製造できる。
式(13)で表される化合物としては、例えば、デカリン、4a−メチルデカリン、4a−エチルデカリン、4a−ヒドロキシデカリン、4a−メトキシデカリン、4a−アセトキシデカリン、4a−ヒドロキシメチルデカリン、4a−アミノデカリン、4a−アセチルアミノデカリン、4a−ベンゾイルアミノデカリン、4a−カルボキシデカリン、4a−エトキシカルボニルデカリン、4a−ニトロデカリン、4a−アセチルデカリンなどが例示できる。これらの化合物には、シス体及びトランス体が含まれる。
式(14)において、Rt2、Ru2におけるアシル基としては、前記1,2−ジカルボニル化合物に対応するアシル基、例えば、前記RaCO基又はRbCO基に相当するアシル基などが挙げられる。好ましいアシル基には、C2-5飽和脂肪族アシル基、シクロアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基などが含まれ、なかでもアセチル基及びプロピオニル基、特にアセチル基が好ましい。また、Rt2、Ru2におけるアルキル基;ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基、アミノ基及びカルボキシル基の保護基;アシル基としては、前記Rc1、Rd1、Re1におけるアルキル基等と同様の基が例示できる。なお、Rt1、Ru1が水素原子の場合には、反応によりヒドロキシル基に変換される場合もある。また、条件により、デカリン骨格の橋頭位に隣接するメチレン基にオキソ基が導入される場合がある。
前記式(14)で表される化合物は新規な化合物である。式(14)で表される化合物の具体例としては、例えば、4a−アセチルデカリン、4a−アセチル−8a−メチルデカリン、4a−アセチル−8a−エチルデカリン、4a−アセチル−8a−ヒドロキシデカリン、4a−アセチル−8a−メトキシデカリン、4a−アセトキシ−8a−アセチルデカリン、4a−アセチル−8a−ヒドロキシメチルデカリン、4a−アセチル−8a−アミノデカリン、4a−アセチル−8a−アセチルアミノデカリン、4a−アセチル−8a−ベンゾイルアミノデカリン、4a−アセチル−8a−カルボキシデカリン、4a−アセチル−8a−エトキシカルボニルデカリン、4a−アセチル−8a−ニトロデカリン、4a,8a−ジアセチルデカリンなどが例示できる。これらの化合物には、シス体及びトランス体が含まれる。
[ビニル基含有多環式化合物の製造]
また、本発明のアシル化法又はアシル基含有化合物の製造法を利用することにより、置換基を有していてもよいビニル基を有する多環式化合物を製造することができる。
すなわち、前記式(15)で表される多環式化合物と、(A1)前記式(2b)で表される1,2−ジカルボニル化合物又はそのヒドロキシ還元体、(B)酸素、および(C)(C1)金属化合物及び(C2)前記式(1)で表されるイミド化合物から選択された少なくとも1種の化合物で構成されているアシル化剤とを反応させて、前記式(16)で表される化合物を生成させ、得られた式(16)で表される化合物を還元して、前記式(17)で表される化合物とし、これを脱水反応に供することにより、前記式(18)で表される化合物が得られる。
式(15)で表される多環式化合物には、前記橋かけ環式化合物(a1)などが含まれる。特に、多環式化合物として、前記式(3)で表されるアダマンタン誘導体、式(11)で表されるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン誘導体、及び式(13)で表されるデカリン誘導体などが好ましい。
式(2b)において、Rb、Rf、Rgにおける炭化水素基、複素環基としては、前記Raにおける炭化水素基、複素環基と同様の基が例示される。Rb及び基−CH(Rf)(Rg)は、好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル又はs−ブチル基)、さらに好ましくはメチル基又はエチル基、特にメチル基である。
式(15)で表される化合物のアシル化は前記本発明の方法により行うことができる。式(16)で表される化合物の還元は、例えば、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウムなどの金属水素錯化合物による還元法、ボランによる還元法、Rh触媒などを用いた接触還元法などにより行うことができる。還元は、上記還元法に応じて、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類;ヘキサンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;トルエンなどの芳香族炭化水素;エタノールなどのアルコール類;酢酸などのカルボン酸;塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素等から選択された溶媒中、−100〜150℃程度の温度で行うことができる。式(17)で表される化合物の脱水反応は、例えば、必要に応じて硫酸などの酸または脱水剤の存在下、適当な溶媒(例えば上記例示の溶媒など)中、0〜150℃程度の温度で行われる。脱水反応は、共沸により副生する水を留去しながら行ってもよい。
代表的な例として、ビニル基を含有するアダマンタン誘導体の製造について、より具体的に説明する。下記反応工程式で示されるように、前記式(3)で表されるアダマンタン誘導体を原料として、これを前記アシル化反応に付し、式(4a)で表されるアシル基含有アダマンタン誘導体を得る。次いで、式(4a)で表される化合物を還元して、式(5)で表されるアルコール体とし、これを脱水反応に付すことにより、式(6)で表されるビニル基含有アダマンタン誘導体を得ることができる。
Figure 2009280585
上記反応工程式において、式(4a)中、Rc2、Rd2、Re2は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシメチル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、ニトロ基、アシル基を示し、Rf、Rgは前記と同じ意味を示す。式(5)中、Rc3、Rd3、Re3は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシメチル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、ニトロ基、アシル基、置換基を有していてもよいヒドロキシメチル基を示し、Rf、Rgは前記と同じ意味を示す。式(6)中、Rc4、Rd4、Re4は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシメチル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、ニトロ基、アシル基、置換基を有していてもよいヒドロキシメチル基、置換基を有していてもよいビニル基を示し、Rf、Rgは前記と同じ意味を示す。
c2、Rd2、Re2、Rc3、Rd3、Re3、Rc4、Rd4、Re4におけるハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシル基等の保護基及びアシル基は、前記Rc1、Rd1、Re1におけるアルキル基等と同様の基が例示できる。また、Rc3、Rd3、Re3、Rc4、Rd4、Re4における「置換基を有していてもよいヒドロキシメチル基」は、前記アシル基が前記還元反応により還元されて形成される官能基を意味する。さらに、Rc4、Rd4、Re4における「置換基を有していてもよいビニル基」は、前記置換基を有していてもよいヒドロキシメチル基が前記脱水反応により脱水されて形成される官能基を意味する。
こうして得られた、置換基を有していてもよいビニル基を有するアダマンタン誘導体等の多環式化合物は、機能性高分子の単量体成分として有用である。
また、前記式(4a)で表される化合物は、下記反応工程式に示されるように、α位にハロゲン原子が置換したビニル基を有するアダマンタン誘導体(8)や、α位にシアノ基が置換したビニル基を有するアダマンタン誘導体(10)に誘導することもできる。
Figure 2009280585
式中、Rc2、Rd2、Re2、Rf、Rgは前記と同じ意義である。Rhはハロゲン原子(例えば、塩素、臭素原子など)を示す。
より具体的には、式(4a)で表される化合物を、必要に応じてピリジン、トリエチルアミンなどの塩基の存在下、塩化チオニルなどのハロゲン化剤と反応させることにより、α位にハロゲン原子が置換したビニル基を有するアダマンタン誘導体(8)を得ることができる。反応は、適当な溶媒(例えば前記例示の溶媒など)の存在下、または不存在下、0〜150℃程度の温度で行うことができる。また、式(4a)で表される化合物に、シアン化剤、例えば、トリメチルシリルシアニドなどを作用させ、必要に応じて酸(塩酸など)等で処理して、対応するシアンヒドリン体(9)とした後、脱水反応に供することにより、α位にシアノ基が置換したビニル基を有するアダマンタン誘導体(10)を得ることができる。式(4a)で表される化合物とシアン化剤との反応は、必要に応じてヨウ化亜鉛などのルイス酸の存在下、適当な溶媒(例えば前記例示の溶媒など)中、0〜150℃程度の温度で行うことができる。シアンヒドリン体(9)の脱水反応は、例えば、ピリジンなどの溶媒中、0〜200℃程度の温度で、必要に応じてオキシ塩化リンなどの脱水剤を作用させることによって行うことができる。
こうして得られる、式(8)又は(10)で表されるアダマンタン誘導体も、機能性高分子の単量体成分として有用である。
[エポキシ基含有多環式化合物の製造]
上記の方法で得られた式(18)で表されるビニル基含有多環式化合物(例えば、アダマンタン誘導体、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン誘導体、デカリン誘導体などの橋かけ環式化合物等)に酸化剤を作用させることにより、対応する前記式(19)で表されるエポキシ基含有多環式化合物を製造できる。
酸化剤としては、非芳香族性のエチレン性二重結合をエポキシ化する際に用いられる公知乃至慣用の酸化剤、例えば、過酢酸、過安息香酸、m−クロロ過安息香酸、モノペルオキシフタル酸、トリフルオロ過酢酸などの過酸;ジオキシランなどの過酸化物;金属触媒存在下でのヒドロペルオキシド、過酸化水素などが例示できる。酸化剤の使用量は、酸化すべき非芳香族性のエチレン性二重結合に対して、例えば1〜1.6当量程度である。
反応は、通常、有機溶媒中で行われる。該有機溶媒としては、酸化に対して不活性な溶媒であればよく、例えば、前記アシル化反応において例示した溶媒などが挙げられる。反応系内に、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなどの塩基性物質を存在させて、反応を行ってもよい。反応温度は、例えば−10〜100℃程度である。
反応終了後、反応生成物は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により容易に分離精製できる。
この方法により、例えば、前記式(20)で表される本発明のアダマンタン誘導体を製造することができる。なお、式(20)中、Rc6、Rd6、Re6におけるハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシル基等の保護基、アシル基、置換基を有していてもよいヒドロキシメチル基、置換基を有していてもよいビニル基は、前記Rc4、Rd4、Re4におけるハロゲン原子、アルキル基等と同様の基が例示できる。また、Rc6、Rd6、Re6における「置換基を有していてもよいエポキシ基」は、前記「置換基を有していてもよいビニル基」が前記酸化剤により酸化されて形成されるエポキシ基を意味する。Rf、Rgは前記と同じ意味を示す。
式(20)で表されるアダマンタン誘導体の中でも、好ましいアダマンタン誘導体には、Rc6、Rd6、Re6のうち少なくとも1つが、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、アシル基、置換基を有していてもよいビニル基又は置換基を有していてもよいエポキシ基である化合物が含まれる。このような化合物は、アダマンタン環に反応性の官能基を有しているため、種々の機能を高めたり、付与することができる。
式(20)で表されるアダマンタン誘導体の代表的な例として、例えば、3−(1,2−エポキシエチル)−1−アダマンタノール及びこのヒドロキシル基保護体、1−(1,2−エポキシエチル)−3−カルボキシアダマンタン及びこのカルボキシル基保護体、1−アセチル−3−(1,2−エポキシエチル)アダマンタン、1−(1,2−エポキシエチル)−3−ビニルアダマンタン、1,3−ビス(1,2−エポキシエチル)アダマンタンなどが挙げられる。
上記方法により得られたエポキシ基含有多環式化合物は機能性高分子(ポリエーテルなど)の単量体成分として有用である。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
参考例1
アダマンタン3ミリモル、ビアセチル18ミリモル、酢酸コバルト(II)0.015ミリモル、及び酢酸3mlの混合物を、酸素雰囲気下(1atm)、60℃で4時間撹拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、アダマンタンの転化率86%で、1−アセチルアダマンタン(収率50%)、1,3−ジアセチルアダマンタン(収率23%)、1−アセチル−3−アダマンタノール(収率4%)、1−アダマンタノール(収率3%)、及び2−アダマンタノン(収率3%)が生成していた。
[1,3−ジアセチルアダマンタンのスペクトルデータ]
白色固体
IR(cm-1):2932,1706,1453,1344,1253,1192,598
13C−NMR(CDCl3)δ:24.4,27.8,35.5,37.4,38.5,46.6,212.9。
参考例2
酢酸コバルト(II)の使用量を0.0015ミリモルとした以外は、参考例1と同様の操作を行ったところ、アダマンタンの転化率97%で、1−アセチルアダマンタン(収率29%)、1,3−ジアセチルアダマンタン(収率35%)、1−アセチル−3−アダマンタノール(収率10%)、1−アダマンタノール(収率2%)、及び2−アダマンタノン(収率4%)が生成していた。
参考例3
酢酸コバルト(II)に代えて、コバルトアセチルアセトナト(III)を0.015ミリモル使用した以外は、参考例1と同様の操作を行ったところ、アダマンタンの転化率82%で、1−アセチルアダマンタン(収率51%)、1,3−ジアセチルアダマンタン(収率21%)、1−アセチル−3−アダマンタノール(収率2%)、1−アダマンタノール(収率2%)、及び2−アダマンタノン(収率3%)が生成していた。
参考例4
酢酸コバルト(II)に代えて、バナジルアセチルアセトナト(II)を0.015ミリモル使用した以外は、参考例1と同様の操作を行ったところ、アダマンタンの転化率97%で、1−アセチルアダマンタン(収率24%)、1,3−ジアセチルアダマンタン(収率31%)、1−アセチル−3−アダマンタノール(収率12%)、1−アダマンタノール(収率3%)、及び2−アダマンタノン(収率3%)が生成していた。
参考例5
1,3−ジメチルアダマンタン3ミリモル、ビアセチル18ミリモル、酢酸コバルト(II)0.015ミリモル、及び酢酸3mlの混合物を、酸素雰囲気下(1atm)、60℃で4時間撹拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、1,3−ジメチルアダマンタンの転化率93%で、1−アセチル−3,5−ジメチルアダマンタン(収率40%)、1,3−ジアセチル−5,7−ジメチルアダマンタン(収率15%)、1−アセチル−3,5−ジメチル−7−アダマンタノール(収率5%)、1,3−ジメチル−5−アダマンタノール(収率6%)、及び1,3−ジメチル−4−アダマンタノン(収率4%)が生成していた。
[1,3−ジアセチル−5,7−ジメチルアダマンタンのスペクトルデータ] IR(cm-1):2923,2847,1696,1454,1359,1191,1155
13C−NMR(CDCl3)δ:24.9,30.4,31.8,37.8,44.0,49.0,50.1,212.9
[1−アセチル−3,5−ジメチル−7−アダマンタノールのスペクトルデータ]
IR(cm-1):3422,2924,1699,1455,1166,1052,600
13C−NMR(CDCl3)δ:25.1,29.8,34.2,43.8,44.8,49.8,50.8,51.4,70.4,212.6。
参考例6
酢酸コバルト(II)に代えて、塩化コバルト(II)を0.03ミリモル用いた以外は参考例5と同様の操作を行ったところ、1,3−ジメチルアダマンタンの転化率94%で、1−アセチル−3,5−ジメチルアダマンタン(収率34%)、1,3−ジアセチル−5,7−ジメチルアダマンタン(収率13%)、1−アセチル−3,5−ジメチル−7−アダマンタノール(収率5%)、1,3−ジメチル−5−アダマンタノール(収率6%)、及び1,3−ジメチル−4−アダマンタノン(収率6%)が生成していた。
比較例1
酸素雰囲気下に代えて窒素雰囲気下で行った以外は参考例5と同様の操作をしたところ、反応は進行しなかった。
参考例7
1,3−ジメチルアダマンタン3ミリモル、ビアセチル9ミリモル、酢酸コバルト(II)0.0006ミリモル、及び酢酸3mlの混合物を、酸素雰囲気下(1atm)、60℃で4時間撹拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、1,3−ジメチルアダマンタンの転化率40%で、1−アセチル−3,5−ジメチルアダマンタン(収率8%、選択率20%)、1−アセチル−3,5−ジメチル−7−アダマンタノール(trace)、1,3−ジメチル−5−アダマンタノール(収率17%、選択率43%)、及び1,3−ジメチル−4−アダマンタノン(収率5%、選択率13%)が生成していた。
参考例8
1,3−ジメチルアダマンタン、ビアセチル、酢酸コバルト(II)、酢酸に加え、さらにN−ヒドロキシフタルイミドを0.3ミリモル含む混合物を反応させたこと以外は、参考例7と同様の操作を行ったところ、1,3−ジメチルアダマンタンの転化率36%で、1−アセチル−3,5−ジメチルアダマンタン(収率19%、選択率53%)、1,3−ジアセチル−5,7−ジメチルアダマンタン(trace)、1−アセチル−3,5−ジメチル−7−アダマンタノール(trace)、1,3−ジメチル−5−アダマンタノール(収率7%、選択率19%)、及び1,3−ジメチル−4−アダマンタノン(収率3%、選択率8%)が生成していた。
参考例9
ビアセチルの使用量を18ミリモルとした以外は参考例8と同様の操作を行ったところ、1,3−ジメチルアダマンタンの転化率63%で、1−アセチル−3,5−ジメチルアダマンタン(収率18%、選択率29%)、1,3−ジアセチル−5,7−ジメチルアダマンタン(trace)、1−アセチル−3,5−ジメチル−7−アダマンタノール(収率2%、選択率3%)、1,3−ジメチル−5−アダマンタノール(収率24%、選択率38%)、及び1,3−ジメチル−4−アダマンタノン(収率5%、選択率8%)が生成していた。
参考例10
N−ヒドロキシフタルイミドの使用量を0.6ミリモルとした以外は参考例9と同様の操作を行ったところ、1,3−ジメチルアダマンタンの転化率59%で、1−アセチル−3,5−ジメチルアダマンタン(収率32%、選択率54%)、1,3−ジアセチル−5,7−ジメチルアダマンタン(収率2%、選択率3%)、1−アセチル−3,5−ジメチル−7−アダマンタノール(収率1%、選択率2%)、1,3−ジメチル−5−アダマンタノール(収率7%、選択率12%)、及び1,3−ジメチル−4−アダマンタノン(収率5%、選択率8%)が生成していた。
参考例11
1−アダマンタノール3ミリモル、ビアセチル18ミリモル、酢酸コバルト(II)0.015ミリモル、及び酢酸3mlの混合物を、酸素雰囲気下(1atm)、60℃で4時間撹拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、1−アダマンタノールの転化率82%で、1−アセチル−3−アダマンタノール(収率20%)、1,3−ジアセチル−5−アダマンタノール(収率5%)、1−アセチル−4−オキソ−3−アダマンタノール及び1−アセチル−2−オキソ−5−アダマンタノール(合計収率2%)、1,3−アダマンタンジオール(収率6%)、及び4−オキソ−1−アダマンタノール(収率1%)が生成していた。
[1−アセチル−3−アダマンタノールのスペクトルデータ]
IR(cm-1):3401,2897,2854,1683,1430,1019,605
13C−NMR(CDCl3)δ:24.3,29.9,34.8,36.8,43.9,45.4,49.6,67.9,212.4
[1,3−ジアセチル−5−アダマンタノールのスペクトルデータ]
IR(cm-1):3357,2944,1693,1187,1109
13C−NMR(CDCl3)δ:25.0,30.3,36.6,38.0,43.5,45.1,50.0,68.9,212.0
[1−アセチル−4−オキソ−3−アダマンタノールのスペクトルデータ]
MS m/e:208([M+]),190,175,147,119
[1−アセチル−2−オキソ−5−アダマンタノールのスペクトルデータ]
MS m/e:208([M+]),190,175,148,119。
参考例12
参考例1と同様の方法により得られた1−アセチルアダマンタン154g、水素化アルミニウムリチウム22g、及びジエチルエーテルの混合物を、窒素雰囲気下、0℃〜室温で6時間攪拌した。反応混合物に水を400ml加えた後、セライト濾過し、濃縮して、1−(1−ヒドロキシエチル)アダマンタン87gを得た。これに、シクロヘキサン400ml、97%硫酸12g、及び少量のハイドロキノンを加え、70℃で4時間攪拌した。反応混合液を蒸留して、1−ビニルアダマンタン27.9gを得た(64℃/4mmHg)。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.4−1.9(12H,m),1.9−2.1(3H,m),4.8−4.95(2H,m),5.65−5.8(1H,m)
13C−NMR(CDCl3)δ:28.5,35.5,37.0,41.9,108.8,149.7。
参考例13
参考例1と同様の方法により得られた1−アセチルアダマンタン110g、塩化チオニル900ml、及びピリジン206mlの混合物を1時間還流させた。反応混合物から塩化チオニル及びピリジンを留去し、ヘキサンで抽出した後、蒸留して1−(1−クロロエテニル)アダマンタンを49g得た(123℃/11mmHg)。
IR(cm-1):876(=CH2),733(CCl),665
13C−NMR(CDCl3)δ:28.5,36.7,39.2,40.7,108.8,153.3。
参考例14
参考例1と同様の方法により得られた1−アセチルアダマンタン17.1g、ヨウ化亜鉛0.5g、トリメチルシリルシアニド11.8g、及び塩化メチレンの混合物を40℃で4時間攪拌した。反応混合液を濃縮し、冷却して晶析させ、1−(1−シアノ−1−トリメチルシリルオキシエチル)アダマンタン28.7gを得た(白色結晶)。
得られた1−(1−シアノ−1−トリメチルシリルオキシエチル)アダマンタンと、テトラヒドロフラン45mlと、2N−塩酸17mlとの混合液を攪拌しながら3時間還流させた。反応混合液を冷却し、炭酸水素カリウム(11g)の水溶液(水:170ml)を加えた後、エーテル抽出し、有機層を濃縮して、1−(1−シアノ−1−ヒドロキシエチル)アダマンタンを24.1g得た(白色固体)。
得られた1−(1−シアノ−1−ヒドロキシエチル)アダマンタンに、3倍モル量のオキシ塩化リン及び乾燥ピリジン170mlを加え、2時間還流させた。反応混合物にエーテルを加えて600mlとし、これに冷却した4N−塩酸600gを攪拌しながら加えた。有機層を濃縮して、1−(1−シアノエテニル)アダマンタンを17.4g得た。
参考例15
アダマンタン3ミリモル、ビアセチル18ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド0.3ミリモル、酢酸コバルト(II)0.015ミリモル、及び酢酸3mlの混合物を、酸素雰囲気下(1atm)、75℃で10時間撹拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、アダマンタンの転化率100%で、1−アセチルアダマンタン(収率52%)、及び1−アセチル−3−アダマンタノール(収率27%)が生成していた。
参考例16
反応温度を85℃、反応時間を6時間とした以外は参考例15と同様の操作を行ったところ、アダマンタンの転化率100%で、1−アセチルアダマンタン(収率36%)、1−アセチル−3−アダマンタノール(収率37%)、及び1−アセチル−4−アダマンタノン及び1−アセチル−2−アダマンタノン(合計収率6%)が生成していた。
[1−アセチル−4−アダマンタノンのスペクトルデータ]
MS m/e:192([M+]),177,149,120
[1−アセチル−2−アダマンタノンのスペクトルデータ]
MS m/e:192([M+]),177,148,120。
参考例17
反応温度を85℃、反応時間を10時間とした以外は参考例15と同様の操作を行ったところ、アダマンタンの転化率100%で、1−アセチルアダマンタン(収率25%)、1−アセチル−3−アダマンタノール(収率32%)、1−アセチル−4−アダマンタノン(収率4%)、1−アセチル−3,5−アダマンタンジオール(収率14%)、1−アセチル−4−オキソ−3−アダマンタノール及び1−アセチル−2−オキソ−5−アダマンタノール(合計収率8%)が生成していた。
[1−アセチル−3,5−アダマンタンジオールのスペクトルデータ]
IR(cm-1):1050,1204,1347,1456,1695,2932,3317
13C−NMR(CD3OD)δ:25.0,32.1,37.3,43.8,45.6,52.2,70.9,214。
参考例18
反応温度を85℃、反応時間を6時間、N−ヒドロキシフタルイミドの使用量を0.6ミリモルとした以外は参考例15と同様の操作を行ったところ、アダマンタンの転化率100%で、1−アセチルアダマンタン(収率30%)、1−アセチル−3−アダマンタノール(収率22%)、1,3−ジアセチルアダマンタン(収率14%)、及び1,3−ジアセチル−5−アダマンタノール(収率12%)が生成していた。
参考例19
1−カルボキシアダマンタン3ミリモル、ビアセチル18ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド0.3ミリモル、酢酸コバルト(II)0.015ミリモル、及び酢酸3mlの混合物を、酸素雰囲気下(1atm)、75℃で6時間撹拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、1−カルボキシアダマンタンの転化率92%で、1−アセチル−3−カルボキシアダマンタン(収率46%)、及び1−アセチル−3−カルボキシ−5−アダマンタノール(収率24%)が生成していた。
参考例20
1,3−ジメチルアダマンタン3ミリモル、ビアセチル18ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド0.3ミリモル、酢酸コバルト(II)0.015ミリモル、及び酢酸3mlの混合物を、酸素雰囲気下(1atm)、75℃で8時間撹拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、1,3−ジメチルアダマンタンの転化率94%で、1−アセチル−3,5−ジメチルアダマンタン(収率58%)、及び1−アセチル−3,5−ジメチル−7−アダマンタノール(収率22%)が生成していた。
参考例21
反応温度を85℃、N−ヒドロキシフタルイミドの使用量を0.6ミリモルとした以外は参考例20と同様の操作を行ったところ、1,3−ジメチルアダマンタンの転化率100%で、1−アセチル−3,5−ジメチルアダマンタン(収率41%)、1−アセチル−3,5−ジメチル−7−アダマンタノール(収率11%)、及び1,3−ジアセチル−5,7−ジメチルアダマンタン(収率27%)が生成していた。
参考例22
エンドトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン3ミリモル、ビアセチル18ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド0.3ミリモル、酢酸コバルト(II)0.015ミリモル、及び酢酸3mlの混合物を、酸素雰囲気下(1atm)、75℃で6時間撹拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、エンドトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンの転化率75%で、2−アセチルエンドトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン(収率27%)、2−ヒドロキシエンドトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン(収率11%)、2,6−ジヒドロキシエンドトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン(収率16%)、及びジシクロ[5.2.1]デカン−2,6−ジオン(収率12%)が生成していた。
[2−アセチルエンドトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンのスペクトルデータ]
MS m/e:178([M+]),163,135。
参考例23
cis−デカリン3ミリモル、ビアセチル18ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド0.3ミリモル、酢酸コバルト(II)0.015ミリモル、及び酢酸3mlの混合物を、酸素雰囲気下(1atm)、75℃で8時間撹拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、cis−デカリンの転化率67%で、4a−アセチル−cis−デカリン(収率24%)、4a−ヒドロキシ−cis−デカリン(収率4%)、4a,8a−ジヒドロキシ−cis−デカリン(収率22%)、及び1,6−シクロデカンジオン(収率10%)が生成していた。
[4a−アセチル−cis−デカリンのスペクトルデータ]
MS m/e:180([M+]),165,137
参考例24
1−アセチルアダマンタン3ミリモル、ビアセチル18ミリモル、酢酸コバルト(II)0.015ミリモル、及び酢酸3mlの混合物を、酸素雰囲気下(1atm)、60℃で4時間攪拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、1−アセチルアダマンタンの転化率80%で、1,3−ジアセチルアダマンタン(収率34%)、1−アセチル−3−アダマンタノール(収率29%)、1,3−ジアセチル−5−アダマンタノール(収率2%)、1−アセチル−4−アダマンタノン(収率5%)が生成していた。
実施例1
1−アセチルアダマンタン45.0g、メタノール100ml、0.1N水酸化ナトリウム水溶液20mlの混合物に水浴中で、粉末の水素化ホウ素ナトリウム4.8gを30分かけてゆっくり加えた。さらに30分攪拌した後、1N塩酸水溶液で中和し、水200mlを加えた。得られた結晶をろ過、水洗、真空乾燥することにより、1−(1−ヒドロキシエチル)アダマンタン45.0gを得た。これに、トルエン400ml、98%硫酸4.9g、ハイドロキノン0.1gを加え、共沸脱水しながら3時間攪拌した。反応液を冷却し、飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄後、濃縮した。得られた濃縮液を蒸留して1−ビニルアダマンタン29.0g(収率72.5%)を得た(65℃/4mmHg)。
[1−アセチルアダマンタンのスペクトルデータ]
1H−NMR(CDCl3)δ:1.65−1.85(m,12H),2.00−2.10(m,3H),2.10(s,3H)
[1−(1−ヒドロキシエチル)アダマンタンのスペクトルデータ]
1H−NMR(CDCl3)δ:1.10(d,3H),1.30−1.40(br,1H),1.42−1.80(m,12H),1.90−2.10(m,3H),3.29(q,1H)
[1−ビニルアダマンタンのスペクトルデータ]
1H−NMR(CDCl3)δ:1.50−1.80(m,12H),1.90−2.05(m,3H),4.80−4.90(m,2H),5.71(dd,1H)
1−ビニルアダマンタン16.2g、ジクロロメタン120ml、炭酸ナトリウム5.3gの混合物に、水浴中、70%−メタクロロ過安息香酸36.9gを30分かけて添加した。さらに、2時間室温下で攪拌した後、5%亜硫酸ナトリウム水溶液、飽和重曹水で洗浄し、有機層を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO2 400g、展開液:ヘキサン/酢酸エチル=15/1)で精製したところ、1−(1,2−エポキシエチル)アダマンタン11.0gを得た。
[1−(1,2−エポキシエチル)アダマンタンのスペクトルデータ]
1H−NMR(CDCl3)δ:1.45−1.80(m、12H),1.90−2.05(m,3H),2.55−2.64(m,2H),2.65−2.70(m,1H)。
実施例2
1,3−ジアセチルアダマンタン5.6g、メタノール20ml、0.1N水酸化ナトリウム水溶液3mlの混合物に、水浴中、水素化ホウ素ナトリウム1gをゆっくり添加した。さらに室温下で30分攪拌した後、1N塩酸水溶液で中和した。水50mlを加え、酢酸エチル100mlで3回抽出した。有機層を濃縮することにより、1,3−ビス(1−ヒドロキシエチル)アダマンタン5.5gを得た。
これにトルエン100ml、98%硫酸0.5g、ハイドロキノン0.02gを加え、共沸脱水しながら5時間攪拌した。反応液を冷却し、飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO2 100g、展開液:ヘキサン)で精製したところ、1,3−ジビニルアダマンタン3.0gを得た。
[1,3−ジビニルアダマンタンのスペクトルデータ]
1H−NMR(CDCl3)δ:1.30−1.80(m,12H),1.90−2.10(m,3H),4.70−5.05(m,2H),5.73(dd,1H)
1,3−ジビニルアダマンタン3.6g、ジクロロメタン50ml、炭酸ナトリウム1.8gの混合物に、水浴中、粉末の70%−メタクロロ過安息香酸12.6gを30分かけて添加した。さらに、2時間室温下で攪拌した後、5%亜硫酸ナトリウム水溶液、飽和重曹水で洗浄し、有機層を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO2 80g、展開液:ヘキサン/酢酸エチル=15/1)で精製したところ、1,3−ビス(1,2−エポキシエチル)アダマンタン2.6gを得た。
[1,3−ビス(1,2−エポキシエチル)アダマンタンのスペクトルデータ]
1H−NMR(CDCl3)δ:1.30−1.80(m,12H),1.90−2.10(m,3H),2.55−2.65(m,4H),2.65−2.75(m,2H)
実施例3
3−アセチル−1−アダマンタノール4.0g、メタノール20ml、0.1N水酸化ナトリウム水溶液2mlの混合物に、水浴中、水素化ホウ素ナトリウム0.6gをゆっくり添加した。さらに室温下で30分攪拌した後、1N塩酸水溶液で中和した。水50mlを加え、酢酸エチル100mlで3回抽出した。有機層を濃縮することにより、3−(1−ヒドロキシエチル)−1−アダマンタノール3.6gを得た。
3−(1−ヒドロキシエチル)−1−アダマンタノール3gに、トルエン60ml、98%硫酸0.4g、ハイドロキノン0.01gを加え、共沸脱水しながら5時間攪拌した。反応液を冷却し、飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO2 80g、展開液:ヘキサン/酢酸エチル=10/1)で精製したところ、3−ビニル−1−アダマンタノール1.5gを得た。
3−ビニル−1−アダマンタノール1.5g、ジクロロメタン25ml、炭酸ナトリウム2.3gの混合物に、水浴中、粉末の70%−メタクロロ過安息香酸3.2gを30分かけて添加した。さらに、2時間室温下で攪拌した後、5%亜硫酸ナトリウム水溶液、飽和重曹水で洗浄し、有機層を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO2 40g、展開液:ヘキサン/酢酸エチル=5/1)で精製したところ、3−(1,2−エポキシエチル)−1−アダマンタノール0.45gを得た。
[3−(1,2−エポキシエチル)−1−アダマンタノールのスペクトルデータ]
1H−NMR(CDCl3)δ:1.40−1.80(m,13H),2.20−2.30(m,2H),2.55−2.65(m,2H),2.65−2.75(m,1H)。

Claims (4)

  1. 下記式(15)
    Figure 2009280585
    (式中、環Aは、橋頭位にメチン炭素原子を有する多環式基を示し、式中に示されている単結合は前記橋頭位に結合している)
    で表される多環式化合物と、(A1)下記式(2b)
    Figure 2009280585
    (式中、Rf、Rg及びRbは、同一又は異なって、水素原子、炭化水素基又は複素環基を示し、Z1及びZ2は、同一又は異なって、酸素原子又はヒドロキシル基を示す)
    で表される1,2−ジカルボニル化合物又はそのヒドロキシ還元体、(B)酸素、および(C)(C1)金属化合物及び(C2)下記式(1)
    Figure 2009280585
    (式中、R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基を示し、R1及びR2は互いに結合して二重結合、または芳香族性又は非芳香族性の環を形成してもよい。Xは酸素原子又はヒドロキシル基を示す。前記R1、R2、又はR1及びR2が互いに結合して形成された二重結合又は芳香族性若しくは非芳香族性の環には、上記式(1)中に示されるN−置換環状イミド基が1又は2個結合していてもよい)
    で表されるイミド化合物から選択された少なくとも1種の化合物で構成されているアシル化剤とを反応させて、下記式(16)
    Figure 2009280585
    (式中、環A、Rf、Rgは前記と同じ)
    で表される化合物を生成させ、得られた式(16)で表される化合物を還元して、下記式(17)
    Figure 2009280585
    (式中、環A、Rf、Rgは前記と同じ)
    で表される化合物とし、これを脱水反応に供して、下記式(18)
    Figure 2009280585
    (式中、環A、Rf、Rgは前記と同じ)
    で表される化合物を得るビニル基含有多環式化合物の製造法。
  2. 式(15)で表される多環式化合物が、下記式(3)
    Figure 2009280585
    (式中、Rc1、Rd1、Re1は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシメチル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、ニトロ基、アシル基を示す。アダマンタン骨格を構成する炭素原子のうち橋頭位以外の炭素原子は置換基を有していてもよい)
    で表されるアダマンタン誘導体、下記式(11)
    Figure 2009280585
    (式中、Rp1、Rq1、Rr1、Rs1は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシメチル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、ニトロ基、アシル基を示し、Rp1、Rq1、Rr1、Rs1のうち少なくとも1つは水素原子である。トリシクロデカン骨格を構成する炭素原子のうち橋頭位以外の炭素原子は置換基を有していてもよい)
    で表されるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン誘導体、または下記式(13)
    Figure 2009280585
    (式中、Rt1、Ru1は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシメチル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、ニトロ基、アシル基を示し、Rt1、Ru1のうち少なくとも1つは水素原子である。デカリン骨格を構成する炭素原子のうち橋頭位以外の炭素原子は置換基を有していてもよい)
    で表されるデカリン誘導体である請求項1記載のビニル基含有多環式化合物の製造法。
  3. 請求項1又は2に記載の方法により得られた下記式(18)
    Figure 2009280585
    (式中、環Aは、橋頭位にメチン炭素原子を有する多環式基を示し、式中に示されている単結合は前記橋頭位に結合している。Rf、Rgは、同一又は異なって、水素原子、炭化水素基又は複素環基を示す)
    で表されるビニル基含有多環式化合物と酸化剤とを反応させて、下記式(19)
    Figure 2009280585
    (式中、環A、Rf、Rgは前記に同じ)
    で表される化合物を得るエポキシ基含有多環式化合物の製造法。
  4. 下記式(20)
    Figure 2009280585
    (式中、Rc6、Rd6、Re6は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシメチル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、ニトロ基、アシル基、置換基を有していてもよいヒドロキシメチル基、置換基を有していてもよいビニル基、置換基を有していてもよいエポキシ基を示し、Rc6、Rd6、Re6は同時に水素原子であることはない。Rf、Rgは、同一又は異なって、水素原子、炭化水素基又は複素環基を示す。アダマンタン骨格を構成する炭素原子のうち橋頭位以外の炭素原子は置換基を有していてもよい)
    で表されるアダマンタン誘導体。
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