JP4039730B2 - 酸化触媒系及びそれを用いた酸化方法 - Google Patents

酸化触媒系及びそれを用いた酸化方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルコール類、カルボニル化合物、カルボン酸類などを製造する上で有用な酸化触媒系、およびこの触媒系を用いた酸化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化反応は、有機化学工業における最も基本的な反応の一つであるため、種々の酸化法が開発されている。資源及び環境上の観点から、好ましい酸化方法は、分子状酸素又は空気を酸化剤として直接利用する触媒的な酸化法である。
しかし、触媒的な酸化法では、通常、酸素を活性化するために高温や高圧を必要としたり、温和な条件で反応させるためにはアルデヒドなどの還元剤の共存下で反応させる必要がある。そのため、触媒的酸化法を用いて、温和な条件下で、アルコール類、カルボニル化合物やカルボン酸を簡易に且つ効率よく製造することは困難であった。
特開平8−38909号公報及び特開平9−327626号公報には、分子状酸素により基質を酸化するための触媒として、特定の構造を有するイミド化合物、又は前記イミド化合物と遷移金属化合物などとで構成された酸化触媒が提案されている。この触媒を用いると、温和な条件下で有機基質を酸化でき、アルコール類などの酸化生成物を比較的高い収率で製造することができる。しかし、工業的な観点からすれば、転化率や選択率、及び触媒寿命などの点で、未だ十分満足しうる方法とはいえない。また、遷移金属化合物を用いると、目的酸化生成物の製品に金属が混入しやすい。そのため、金属が物性に悪影響を及ぼすような分野で使用するには、高度な精製が必要となる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、温和な条件下、分子状酸素により、基質を効率よく酸化し、目的酸化生成物を高い選択率で生成させることのできる新規な酸化触媒系と、それを用いた酸化方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、金属触媒を用いることなく、基質を分子状酸素により高い転化率で酸化できる酸化触媒系と、それを用いた酸化方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、触媒寿命の長い酸化触媒系を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、温和な条件下、アルコール類、カルボニル化合物、および有機カルボン酸を高い収率で製造できる酸化触媒系と酸化方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、α−ヒドロキシカルボン酸若しくはその誘導体、又はα−ケトカルボン酸若しくはその誘導体の簡易な製造法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定構造のイミド化合物と特定の有機塩とで構成された酸化触媒系を用いると、常圧の酸素雰囲気下で、不飽和結合に隣接する部位に炭素−水素結合を有する化合物などの被酸化性基質を高い転化率で酸化でき、アルコール類などの酸化生成物が高い選択率で生成することを見いだし、本発明を完成した。
【0005】
すなわち、本発明の酸化触媒系は、(A)下記式(1)
【化2】
Figure 0004039730
(式中、R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基を示し、R1及びR2は互いに結合して二重結合、または芳香族性又は非芳香族性の環を形成してもよい。Xは酸素原子又はヒドロキシル基を示し、nは1〜3の整数を示す)
で表されるイミド化合物と、(B)有機アンモニウム塩又は有機ホスホニウム塩とで構成されている。
また、本発明の酸化方法では、上記の酸化触媒系の存在下、基質と分子状酸素とを接触させる。
さらに、本発明は、上記の酸化触媒系の存在下、α位に少なくとも1つの水素原子を有する炭素数2以上のカルボン酸又はその誘導体を、分子状酸素と反応させて、α位にヒドロキシル基又はオキソ基の結合した対応する炭素数2以上のカルボン酸又はその誘導体を得るα−ヒドロキシカルボン酸若しくはその誘導体、又はα−ケトカルボン酸若しくはその誘導体の製造法を提供する。
【0006】
【発明の実施の形態】
[イミド化合物(A)]
前記式(1)に表されるイミド化合物(A)において、置換基R1及びR2のうちハロゲン原子には、ヨウ素、臭素、塩素およびフッ素が含まれる。アルキル基には、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル基などの炭素数1〜10程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が含まれる。好ましいアルキル基としては、例えば、炭素数1〜6程度、特に炭素数1〜4程度の低級アルキル基が挙げられる。
【0007】
アリール基には、フェニル、ナフチル基などが含まれ、シクロアルキル基には、シクロペンチル、シクロヘキシル基などが含まれる。アルコキシ基には、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ基などの炭素数1〜10程度、好ましくは炭素数1〜6程度、特に炭素数1〜4程度の低級アルコキシ基が含まれる。
【0008】
アルコキシカルボニル基には、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル基などのアルコキシ部分の炭素数が1〜10程度のアルコキシカルボニル基が含まれる。好ましいアルコキシカルボニル基にはアルコキシ部分の炭素数が1〜6程度、特に1〜4程度の低級アルコキシカルボニル基が含まれる。
【0009】
アシル基としては、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル基などの炭素数1〜6程度のアシル基が例示できる。
【0010】
前記置換基R1及びR2は、同一又は異なっていてもよい。また、前記式(1)において、R1及びR2は互いに結合して、二重結合、または芳香族性又は非芳香属性の環を形成してもよい。好ましい芳香族性又は非芳香族性環は5〜12員環、特に6〜10員環程度であり、複素環又は縮合複素環であってもよいが、炭化水素環である場合が多い。このような環には、例えば、非芳香族性脂環式環(シクロヘキサン環などの置換基を有していてもよいシクロアルカン環、シクロヘキセン環などの置換基を有していてもよいシクロアルケン環など)、非芳香族性橋かけ環(5−ノルボルネン環などの置換基を有していてもよい橋かけ式炭化水素環など)、ベンゼン環、ナフタレン環などの置換基を有していてもよい芳香族環(縮合環を含む)が含まれる。前記環は、芳香族環で構成される場合が多い。前記環は、アルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子などの置換基を有していていもよい。
【0011】
好ましいイミド化合物(A)には、下記式で表される化合物が含まれる。
【化3】
Figure 0004039730
(式中、R3〜R6は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子を示す。R3〜R6は、隣接する基同士が互いに結合して芳香族性又は非芳香族性の環を形成していてもよい。R1、R2およびnは前記に同じ)
置換基R3〜R6において、アルキル基には、前記例示のアルキル基と同様のアルキル基、特に炭素数1〜6程度のアルキル基が含まれ、ハロアルキル基には、トリフルオロメチル基などの炭素数1〜4程度のハロアルキル基、アルコキシ基には、前記と同様のアルコキシ基、特に炭素数1〜4程度の低級アルコキシ基、アルコキシカルボニル基には、前記と同様のアルコキシカルボニル基、特にアルコキシ部分の炭素数が1〜4程度の低級アルコキシカルボニル基が含まれる。また、アシル基としては、前記と同様のアシル基、特に炭素数1〜6程度のアシル基が例示され、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素原子が例示できる。置換基R3〜R6は、通常、水素原子、炭素数1〜4程度の低級アルキル基、カルボキシル基、ニトロ基、ハロゲン原子である場合が多い。R3〜R6が互いに結合して形成する環としては、前記R1及びR2が互いに結合して形成する環と同様であり、特に芳香族性又は非芳香族性の5〜12員環が好ましい。
【0012】
前記一般式(1)において、Xは酸素原子又はヒドロキシル基を示し、窒素原子NとXとの結合は単結合又は二重結合である。nは、通常、1〜3程度、好ましくは1又は2である。式(1)で表される化合物は酸化反応において一種又は二種以上使用できる。
【0013】
前記式(1)で表されるイミド化合物に対応する酸無水物には、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸などの飽和又は不飽和脂肪族ジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸(1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物)、1,2,3,4−シクロヘキサンテトラカルボン酸1,2−無水物などの飽和又は不飽和非芳香族性環状多価カルボン酸無水物(脂環式多価カルボン酸無水物)、無水ヘット酸、無水ハイミック酸などの橋かけ環式多価カルボン酸無水物(脂環式多価カルボン酸無水物)、無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水ニトロフタル酸、無水トリメット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、無水ピロメリット酸、無水メリト酸、1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などの芳香族多価カルボン酸無水物が含まれる。
【0014】
好ましいイミド化合物としては、例えば、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシマレイン酸イミド、N−ヒドロキシヘキサヒドロフタル酸イミド、N,N′−ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカルボン酸イミド、N−ヒドロキシフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラブロモフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラクロロフタル酸イミド、N−ヒドロキシヘット酸イミド、N−ヒドロキシハイミック酸イミド、N−ヒドロキシトリメリット酸イミド、N,N′−ジヒドロキシピロメリット酸イミド、N,N′−ジヒドロキシナフタレンテトラカルボン酸イミドなどが挙げられる。特に好ましい化合物は、脂環式多価カルボン酸無水物又は芳香族多価カルボン酸無水物、なかでも芳香族多価カルボン酸無水物から誘導されるN−ヒドロキシイミド化合物、例えば、N−ヒドロキシフタル酸イミドなどが含まれる。
前記イミド化合物は、慣用のイミド化反応、例えば、対応する酸無水物とヒドロキシルアミンNH2OHとを反応させ、酸無水物基の開環及び閉環を経てイミド化する方法により調製できる。
【0015】
[有機塩(B)]
本発明の特徴は、前記イミド化合物(A)と、少なくとも1つの有機基が結合している周期表15族又は16族元素を含む多原子陽イオン又は多原子陰イオンとカウンターイオンとで構成された有機塩(B)とを組み合わせる点にある。
【0016】
有機塩(B)において、周期表15族元素には、N、P、As、Sb、Biが含まれる。周期表16族元素には、O、S、Se、Teなどが含まれる。好ましい元素としては、N、P、As、Sb、Sが挙げられ、特に、N、P、Sなどが好ましい。
【0017】
前記元素の原子に結合する有機基には、置換基を有していてもよい炭化水素基、置換オキシ基などが含まれる。炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、アリルなどの炭素数1〜30程度(好ましくは炭素数1〜20程度)の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基(アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基);シクロペンチル、シクロヘキシルなどの炭素数3〜8程度の脂環式炭化水素基;フェニル、ナフチルなどの炭素数6〜14程度の芳香族炭化水素基などが挙げられる。炭化水素基が有していてもよい置換基として、例えば、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基など)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、アルキル基(例えば、メチル、エチル基などのC1-4アルキル基など)、シクロアルキル基、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル基など)、複素環基などが例示できる。好ましい炭化水素基には、炭素数1〜30程度のアルキル基、炭素数6〜14程度の芳香族炭化水素基(特に、フェニル基又はナフチル基)などが含まれる。前記置換オキシ基には、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基などが含まれる。
【0018】
前記多原子陽イオンは、例えば、下記式(2)で表される。この多原子陽イオンは、カウンターアニオンとともに、下記式(3)で表される有機オニウム塩を構成する。
【0019】
[Ra mA]+ (2)
[Ra mA]+- (3)
上記式中、Raは炭化水素基又は水素原子を示す。4個のRaは互いに同一又は異なっていてもよく、少なくとも1つのRaは炭化水素基である。Aは周期表15族又は16族元素の原子を示す。2つのRaは互いに結合して隣接するAと共に環を形成してもよく、また、2つのRaが一体となってAと二重結合を形成すると共に他のRaと結合してAとで環を形成してもよい。mは3又は4を示す。Y-は、カウンターアニオンを示し、Yは酸基を示す。なお、上記炭化水素基は、例えば前記の置換基を有していてもよい。
【0020】
2つのRaが互いに結合して隣接するAと共に形成する環としては、ピロリジン環、ピペリジン環などの3〜8員(好ましくは、5〜6員)程度の含窒素(又は含リン)複素環などが挙げられる。また、2つのRaが一体となってAと二重結合を形成すると共に他のRaと結合してAとで形成する環としては、ピリジン環などの5〜8員の含窒素複素環などが挙げられる。これらの環にはベンゼン環などの環が縮合していてもよい。このような縮合環として、キノリン環などが挙げられる。Aが周期表15族元素の原子のとき、mは4である場合が多く、Aが周期表16族元素の原子のとき、mは3である場合が多い。
【0021】
前記Aは、好ましくは、N、P、As、Sb、又はSであり、さらに好ましくは、N、P、又はSであり、特に、N又はPが好ましい。また、好ましい多原子陽イオンでは、4個のRaのすべてが有機基である(Aを含む環が形成されている場合を含む)。
酸基Yとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;硝酸基(NO3)、硫酸基(SO4)、リン酸基(PO4)、過塩素酸基(ClO4)などの無機酸基;酢酸基(CH3CO2)、メタンスルホン酸基、ベンゼンスルホン酸基などの有機酸基などが挙げられる。好ましい酸基には、ハロゲン原子及び無機酸基が含まれ、特に塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子が好ましい。
【0022】
前記有機オニウム塩のなかでも、有機アンモニウム塩、有機ホスホニウム塩、有機スルホニウム塩などが特に好ましい。有機アンモニウム塩の具体例としては、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラヘキシルアンモニウムクロリド、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、トリエチルフェニルアンモニウムクロリド、トリブチル(ヘキサデシル)アンモニウムクロリド、ジ(オクタデシル)ジメチルアンモニウムクロリドなどの第4級アンモニウムクロリド、及び対応する第4級アンモニウムブロミドなどの、窒素原子に4つの炭化水素基が結合した第4級アンモニウム塩;ジメチルピペリジニウムクロリド、ヘキサデシルピリジニウムクロリド、メチルキノリニウムクロリドなどの環状第4級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0023】
また、有機ホスホニウム塩の具体例としては、テトラメチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムクロリド、トリブチル(ヘキサデシル)ホスホニウムクロリド、トリエチルフェニルホスホニウムクロリドなどの第4級ホスホニウムクロリド、及び対応する第4級ホスホニウムブロミドなどの、リン原子に4つの炭化水素基が結合した第4級ホスホニウム塩などが挙げられる。有機スルホニウム塩の具体例としては、トリエチルスルホニウムイオジド、エチルジフェニルスルホニウムイオジドなどの、イオウ原子に3つの炭化水素基が結合したスルホニウム塩などが挙げられる。
【0024】
前記多原子陰イオンは、例えば、下記式(4)で表される。この多原子陰イオンは、カウンターカチオンとともに、下記式(5)で表される有機塩を構成する。
【0025】
[RbAO3q- (4)
q+[RbAO3q- (5)
上記式中、Rbは炭化水素基又は水素原子を示す。Aは周期表15族又は16族元素の原子を示す。qは1又は2を示し、Zq+は、カウンターカチオンを示す。
bで示される炭化水素基としては、前記と同様の基のほか、樹脂(ポリマー鎖又はその分岐鎖)が挙げられる。好ましいAには、S、Pなどが含まれる。AがSなどのとき、qは1であり、AがPなどのとき、qは2である。Zとしては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属;マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属などが挙げられる。好ましいZにはアルカリ金属が含まれる。Zq+は、前記の多原子陽イオンであってもよい。
【0026】
前記式(5)で表される有機塩としては、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、オクタンスルホン酸塩、ドデカンスルホン酸塩などのアルキルスルホン酸塩;ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、デシルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩などのアルキル基で置換されていてもよいアリールスルホン酸塩;スルホン酸型イオン交換樹脂(イオン交換体);ホスホン酸型イオン交換樹脂(イオン交換体)などが挙げられる。なかでも、C6-18アルキルスルホン酸塩、C6-18アルキル−アリールスルホン酸塩を用いる場合が多い。
有機塩(B)は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。本発明の触媒系は、前記(A)及び(B)成分に加えて、他の触媒成分を含んでいてもよい。
【0027】
本発明の触媒系は均一系であってもよく、不均一系であってもよい。また、触媒成分を担体に担持した固体触媒として使用してもよい。担体としては、活性炭、ゼオライト、シリカ、シリカ−アルミナ、ベントナイトなどの多孔質担体を用いる場合が多い。
【0028】
前記イミド化合物(A)の使用量は、広い範囲で選択でき、例えば、被酸化性基質1モルに対して0.0001モル(0.01モル%)〜1モル(100モル%)、好ましくは0.001モル(0.1モル%)〜0.5モル(50モル%)、さらに好ましくは0.01モル(1モル%)〜0.30モル(30モル%)程度であり、0.02モル(2モル%)〜0.25モル(25モル%)程度である場合が多い。
【0029】
また、有機塩(B)の使用量も、反応性および選択率を低下させない範囲で適当に選択でき、例えば、被酸化性基質1モルに対して0.0001モル(0.01モル%)〜0.7モル(70モル%)、好ましくは0.001モル(0.1モル%)〜0.5モル(50モル%)、さらに好ましくは0.002モル(0.2モル%)〜0.1モル(10モル%)程度であり、0.005モル(0.5モル%)〜0.05モル(5モル%)程度である場合が多い。有機塩(B)の使用量が多すぎると、反応速度が低下する場合がある。
【0030】
なお、イミド化合物(A)と有機塩(B)の割合は、反応速度や選択率を損なわない程度で選択でき、例えば、イミド化合物(A)/有機塩(B)(モル比)=95/5〜5/95、好ましくは90/10〜20/80、さらに好ましくは90/10〜50/50程度である。
【0031】
このような酸化触媒系を利用すると、イミド化合物(A)と酸素との反応により生成するヒドロペルオキシドの分解が有機塩(B)のアニオン又はカチオンにより著しく促進され、そこで生成するオキシラジカルにより基質が速やかに酸化されるためか、酸化反応が効率よく進行して、酸化生成物が高い収率で得られる。また、前記イミド化合物と遷移金属触媒とを組み合わせた従来の触媒系と比較して、前記イミド化合物の劣化、変質を抑制し、長時間高活性が維持される。
【0032】
[酸化方法]
本発明の酸化方法では、前記触媒系の存在下、分子状酸素と基質とを接触させて酸化する。前記基質には、分子状酸素により酸化されうる種々の被酸化性化合物が含まれる。
【0033】
好ましい基質として、(a)不飽和結合に隣接する部位に炭素−水素結合を有する化合物、(b)メチン炭素原子を有する化合物、(c)非芳香族性環状炭化水素、(d)ヘテロ原子の隣接位に炭素−水素結合を有する非芳香族性複素環化合物、(e)共役化合物、(f)アルコール若しくはチオール類、(g)エーテル若しくはチオエーテル類、(h)アルデヒド若しくはチオアルデド類、及び(i)アミン類などが挙げられる。これらの化合物は、種々の置換基、例えば、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基など)、置換チオ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル基など)、アラルキル基、複素環基などを有していてもよい。
【0034】
(a)不飽和結合に隣接する部位に炭素−水素結合を有する化合物
不飽和結合に隣接する部位に炭素−水素結合を有する化合物(a)としては、(a1)芳香族性環の隣接位(いわゆるベンジル位)にメチル基又はメチレン基を有する芳香族化合物、(a2)不飽和結合(例えば、炭素−炭素不飽和結合、炭素−酸素二重結合など)の隣接位にメチル基又はメチレン基を有する非芳香族性化合物などが挙げられる。
【0035】
前記芳香族性化合物(a1)において、芳香族性環は、芳香族炭化水素環、芳香族性複素環の何れであってもよい。芳香族炭化水素環には、ベンゼン環、縮合炭素環(例えば、ナフタレン、アズレン、インダセン、アントラセン、フェナントレン、トリフェニレン、ピレンなどの2〜10個の4〜7員炭素環が縮合した縮合炭素環など)などが含まれる。芳香族性複素環としては、例えば、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環(例えば、フラン、オキサゾール、イソオキサゾールなどの5員環、4−オキソ−4H−ピランなどの6員環、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、4−オキソ−4H−クロメンなどの縮合環など)、ヘテロ原子としてイオウ原子を含む複素環(例えば、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾールなどの5員環、4−オキソ−4H−チオピランなどの6員環、ベンゾチオフェンなどの縮合環など)、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環(例えば、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾールなどの5員環、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジンなどの6員環、インドール、キノリン、アクリジン、ナフチリジン、キナゾリン、プリンなどの縮合環など)などが挙げられる。
【0036】
なお、芳香族性環の隣接位のメチレン基は、前記芳香族性環に縮合した非芳香族性環を構成するメチレン基であってもよい。また、芳香族性化合物(a1)において、芳香族性環と隣接する位置にメチル基とメチレン基の両方の基が存在していてもよい。
【0037】
芳香族性環の隣接位にメチル基を有する芳香族化合物としては、例えば、芳香環に1〜6個程度のメチル基が置換した芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン、1−エチル−4−メチルベンゼン、1−エチル−3−メチルベンゼン、1−t−ブチル−4−メチルベンゼン、1−メトキシ−4−メチルベンゼン、メシチレン、デュレン、メチルナフタレン、メチルアントラセン、4,4′−ジメチルビフェニルなど)、複素環に1〜6個程度のメチル基が置換した複素環化合物(例えば、2−メチルフラン、3−メチルフラン、3−メチルチオフェン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、4−メチルインドール、2−メチルキノリンなど)などが例示できる。
【0038】
芳香族性環の隣接位にメチレン基を有する芳香族化合物としては、例えば、炭素数2以上のアルキル基又は置換アルキル基を有する芳香族炭化水素類(例えば、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、1,4−ジエチルベンゼン、ジフェニルメタンなど)、炭素数2以上のアルキル基又は置換アルキル基を有する芳香族性複素環化合物(例えば、2−エチルフラン、3−プロピルチオフェン、4−エチルピリジン、4−ブチルキノリンなど)、芳香族性環に非芳香族性環が縮合した化合物であって、該非芳香族性環のうち芳香族性環に隣接する部位にメチレン基を有する化合物(ジヒドロナフタレン、インデン、インダン、テトラリン、フルオレン、アセナフテン、フェナレン、インダノン、キサンテン等)などが例示できる。
【0039】
不飽和結合の隣接位にメチル基又はメチレン基を有する非芳香族性化合物(a2)には、例えば、(a2-1)いわゆるアリル位にメチル基又はメチレン基を有する鎖状不飽和炭化水素類、(a2-2)カルボニル基の隣接位にメチル基又はメチレン基を有する化合物が例示できる。
【0040】
前記鎖状不飽和炭化水素類(a2-1)としては、例えば、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、1,5−ヘキサジエン、1−オクテン、3−オクテン、ウンデカトリエンなどの炭素数3〜20程度の鎖状不飽和炭化水素類が例示できる。前記化合物(a2-2)には、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、3−ペンタノン、アセトフェノンなどの鎖状ケトン類;シクロヘキサノンなどの環状ケトン類)、カルボン酸又はその誘導体(例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、フェニル酢酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、及びこれらのエステルなど)などが含まれる。
【0041】
不飽和結合に隣接する部位に炭素−水素結合を有する化合物(a)を、前記酸化触媒系の存在下、分子状酸素により酸化すると、不飽和結合に隣接する部位が効率よく酸化されて、アルコール、カルボニル化合物又はカルボン酸が生成する。例えば、不飽和結合に隣接する部位にメチル基を有する化合物からは、第1級アルコール類、アルデヒド類又はカルボン酸類、特にカルボン酸類を高い収率で得ることができる。具体的には、例えば、トルエンからは安息香酸が収率よく得られる。また、不飽和結合に隣接する部位にメチレン基を有する化合物からは、第2級アルコール類又はケトン類、特にケトン類を高収率で得ることができる。例えば、テトラリンを酸化すると、主としてα−テトラロンが生成し、フルオレンを酸化するとフルオレノンが生成する。さらに、ケトン類を酸化すると、開裂して、アルデヒド又はカルボン酸が生成する場合が多い。特に、シクロヘキサノンなどの環状ケトン類を基質として用いると、例えばアジピン酸などのジカルボン酸が高い収率で得られる。
【0042】
なお、前記鎖状不飽和炭化水素類(a2-1)などのように、炭素−炭素二重結合を有する化合物を酸化すると、酸化条件により、炭素−炭素二重結合に酸素が導入されて、対応するエポキシ化合物が得られる場合がある。
【0043】
本発明の好ましい方法には、メチル基が置換したベンゼン誘導体(例えば、トルエン、キシレンなど)を酸素と接触させて、工業的に有用な化合物であるカルボキシル基を有するベンゼン誘導体(例えば、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸など)を生成させる方法、炭素数2〜6程度のアルキル基が置換した芳香族炭化水素類(例えば、エチルベンゼンなど)を酸素と接触させ、工業的に有用な化合物であるカルボニル基を有するベンゼン誘導体(例えば、アセトフェノンなど)を生成させる方法が含まれる。
【0044】
(b)メチン炭素原子を有する化合物
メチン炭素原子(又は第3級炭素原子)を有する化合物(b)には、(b1)環の構成単位としてメチン基(すなわち、メチン炭素−水素結合)を含む環状化合物、(b2)メチン炭素原子を有する鎖状化合物が含まれる。
【0045】
環状化合物(b1)には、(b1-1)少なくとも1つのメチン基を有する橋かけ環式化合物、(b1-2)環に炭化水素基が結合した非芳香族性環状化合物(脂環式炭化水素など)などが含まれる。なお、前記橋かけ環式化合物には、2つの環が2個の炭素原子を共有している化合物、例えば、縮合多環式芳香族炭化水素類の水素添加生成物なども含まれる。
【0046】
橋かけ環式化合物(b1-1)としては、例えば、デカリン、ビシクロ[2.2.0]ヘキサン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、ビシクロ[3.2.1]オクタン、ビシクロ[4.3.2]ウンデカン、ツジョン、カラン、ピナン、ピネン、ボルナン、ボルニレン、ノルボルナン、ノルボルネン、カンファー、ショウノウ酸、カンフェン、トリシクレン、トリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカン、トリシクロ[5.2.1.03,8]デカン、エキソトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、エンドトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、エンドトリシクロ[5.2.2.02,6]ウンデカン、アダマンタン、1−アダマンタノール、1−クロロアダマンタン、1−メチルアダマンタン、1,3−ジメチルアダマンタン、1−メトキシアダマンタン、1−カルボキシアダマンタン、1−メトキシカルボニルアダマンタン、1−ニトロアダマンタン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、ペルヒドロアントラセン、ペルヒドロアセナフテン、ペルヒドロフェナントレン、ペルヒドロフルオレン、ペルヒドロフェナレン、ペルヒドロインデン、キヌクリジンなどの2〜4環式の橋かけ環式炭化水素又は橋かけ複素環化合物及びそれらの誘導体などが挙げられる。これらの橋かけ環式化合物は、橋頭位(2環が2個の原子を共有している場合には接合部位に相当)にメチン炭素原子を有する。
【0047】
環に炭化水素基が結合した非芳香族性環状化合物(b1-2)としては、1−メチルシクロペンタン、1−メチルシクロヘキサン、リモネン、メンテン、メントール、カルボメントン、メントンなどの、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)程度の炭化水素基(例えば、アルキル基など)が環に結合した3〜15員程度の脂環式炭化水素及びその誘導体などが挙げられる。環に炭化水素基が結合した非芳香族性環状化合物(b1-2)は、環と前記炭化水素基との結合部位にメチン炭素原子を有する。
【0048】
メチン炭素原子を有する鎖状化合物(b2)としては、第3級炭素原子を有する鎖状炭化水素類、例えば、イソブタン、イソペンタン、イソヘキサン、3−メチルペンタン、2,3−ジメチルブタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、3,4−ジメチルヘキサン、3−メチルオクタンなどの炭素数4〜20(好ましくは、4〜10)程度の脂肪族炭化水素類およびその誘導体などが例示できる。
【0049】
前記酸化触媒系を利用すると、メチン炭素原子を有する化合物(b)を効率よく酸化でき、メチン炭素にヒドロキシル基が導入されたアルコール誘導体を高い収率で得ることができる。例えば、アダマンタンなどの橋かけ環式炭化水素類(b1-1)を酸化すると、橋頭位にヒドロキシル基が導入されたアルコール誘導体、例えば、1−ヒドロキシアダマンタン(条件により、1,3−ジヒドロキシアダマンタン及び1,3,5−トリヒドロキシアダマンタン)が高い収率で得られる。なお、アダマンタンなどの橋頭位に隣接する部位にメチレン基を有する化合物では、酸化条件により、前記メチレン基にオキソ基が導入されたケトン誘導体(例えば、2−アダマンタノン)が生成する場合がある。また、イソブタンなどのメチン炭素原子を有する鎖状化合物(b2)を酸化すると、t−ブタノールなどの第3級アルコールを高い収率で得ることができる。
【0050】
(c)非芳香族性環状炭化水素
非芳香族性環状炭化水素(c)には、(c1)シクロアルカン類及び(c2)シクロアルケン類が含まれる。
シクロアルカン類(c1)としては、3〜30員のシクロアルカン環を有する化合物、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロドデカン、シクロテトラデカン、シクロヘキサデカン、シクロテトラコサン、シクロトリアコンタン、及びこれらの誘導体などが例示できる。好ましいシクロアルカン環には、5〜30員、特に5〜20員のシクロアルカン環が含まれる。
【0051】
本発明の酸化触媒系の存在下、このようなシクロアルカン類(c1)を酸化すると、常圧の空気又は酸素雰囲気下であっても、高い収率で、対応するジカルボン酸又はシクロアルカノンが生成する。例えば、シクロヘキサンを酸化すると、高い転化率及び選択率でアジピン酸を得ることができる。また、酸化に対する反応性が小さい8員以上、特に9員以上の大環状シクロアルカン類であっても、酸素に対する反応性が向上し、高い収率でケトン類やジカルボン酸類(特に、大環状モノケトン類、長鎖ジカルボン酸類)を製造できる。例えば、シクロオクタンを酸化すると、シクロオクタノンやスベリン酸が生成する。
【0052】
シクロアルケン類(c2)には、3〜30員のシクロアルケン環を有する化合物、例えば、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、シクロヘキセン、1−メチル−シクロヘキセン、イソホロン、シクロヘプテン、シクロドデカエンなどのほか、シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエンなどのシクロアルカジエン類、シクロオクタトリエンなどのシクロアルカトリエン類、及びこれらの誘導体などが含まれる。好ましいシクロアルケン類には、3〜20員環、特に3〜12員環を有する化合物が含まれる。
本発明の酸化触媒系を用いて前記シクロアルケン類(c2)を酸化すると、対応する酸化物、特にシクロアルケノン類やシクロアルケノール類を高い収率で得ることができる。また、反応条件により、炭素−炭素二重結合に酸素が導入された、エポキシ化合物を得ることができる。
【0053】
(d)ヘテロ原子の隣接位に炭素−水素結合を有する非芳香族性複素環化合物
ヘテロ原子の隣接位に炭素−水素結合を有する非芳香族性複素環化合物(d)における非芳香族性複素環には、窒素原子、酸素原子及びイオウ原子から選択された少なくとも1種のヘテロ原子を有する3〜20員(好ましくは5〜12員、さらに好ましくは5又は6員)の複素環などが含まれる。前記複素環には、ベンゼン環、シクロヘキサン環、ピリジン環などの芳香族性又は非芳香族性の環が1又は2以上縮合していてもよい。前記複素環としては、例えば、ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、ピラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、インドリン、クロマン、イソクロマンなどが例示される。
【0054】
前記非芳香族性複素環化合物(d)を本発明の酸化触媒系の存在下で酸化すると、ヘテロ原子の隣接位にヒドロキシル基又はオキソ基が導入され、対応するヒドロキシル基又はカルボニル基含有化合物(例えば、ラクトン、ラクタムなど)を得ることができる。
【0055】
(e)共役化合物
共役化合物(e)には、共役ジエン類(e1)、α,β−不飽和ニトリル(e2)、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体(例えば、エステル、アミド、酸無水物等)(e3)などが挙げられる。
【0056】
共役ジエン類(e1)としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、2−クロロブタジエン、2−エチルブタジエンなどが挙げられる。なお、共役ジエン類(e1)には、二重結合と三重結合とが共役している化合物、例えば、ビニルアセチレンなども含めるものとする。共役ジエン類(e1)の酸化によりアルケンジオールなどが生成する。例えば、ブタジエンを酸化すると、2−ブテン−1,4−ジオール、1−ブテン−3,4−ジオールなどが得られる。
【0057】
α,β−不飽和ニトリル(e2)としては、例えば、(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体(e3)としては、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなど(メタ)アクリルアミド誘導体などが挙げられる。これらのα,β−不飽和ニトリル(e2)、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体(e3)を酸化すると、α,β−不飽和結合部位が選択的に酸化されて、前記不飽和結合が単結合となり、且つβ位が、ホルミル基、アセタール基(アルコール存在下で反応させた場合)又はアシルオキシ基(カルボン酸存在下で反応させた場合)に変換されるた化合物が得られる。より具体的には、例えば、メタノールの存在下で、アクリロニトリル及びアクリル酸メチルを酸化すると、それぞれ、3,3−ジメトキシプロピオニトリル及び3,3−ジメトキシプロピオン酸メチルが生成する。
【0058】
(f)アルコール若しくはチオール類
アルコール類としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、1−ヘキサノール、1−オクタノール、1−デカノール、ミリスチルアルコール、アリルアルコール、クロチルアルコール、プロパルギルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリンなどの脂肪族アルコール;シクロペンタノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、シクロヘキセン−1−オール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオールなどの脂環式アルコール;ベンジルアルコール、サリチルアルコール、ベンズヒドロール、フェネチルアルコールなどの芳香族アルコールなどが挙げられる。好ましいアルコール類には、不飽和結合に隣接する部位の炭素原子にヒドロキシル基が結合しているアルコール(例えば、アリルアルコール、ベンジルアルコールなど)、脂環式アルコール(例えば、シクロヘキサノールなど)などが含まれる。チオール類としては、前記アルコール類に対応するチオール類が挙げられる。
アルコール類を酸化すると、反応条件により、対応するカルボニル化合物(アルデヒド又はケトン)及び/又はカルボン酸が生成する。
【0059】
(g)エーテル若しくはチオエーテル類
エーテル類としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルブチルエーテル、エチルブチルエーテル、ジアリルエーテル、メチルビニルエーテル、エチルアリルエーテルなどの脂肪族エーテル類;アニソール、フェネトール、ジベンジルエーテル、フェニルベンジルエーテルなどの芳香族エーテルなどが挙げられる。チオエーテル類としては、前記エーテル類に対応するチオエーテル類が挙げられる。
エーテル類を酸化すると、エーテル結合を形成する酸素原子の隣接位が酸化されて、対応するエステル、酸無水物などが生成する。
【0060】
(h)アルデヒド若しくはチオアルデヒド類
アルデヒド類としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ヘキサナール、デカナール、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジピンアルデヒドなどの脂肪族アルデヒド;ホルミルシクロヘキサン、シトラール、シトロネラールなどの脂環式アルデヒド;ベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、サリチルアルデヒド、アニスアルデヒド、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒドなどの芳香族アルデヒド;フルフラール、ニコチンアルデヒドなどの複素環アルデヒドなどが挙げられる。チオアルデヒド類としては、前記アルデヒド類に対応するチオアルデヒド類が挙げられる。
アルデヒド類を酸化すると、対応するカルボン酸が高収率で得られる。
【0061】
(i)アミン類
アミン類(i)としては、第1級または第2級アミン、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、エチレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、ヒドロキシルアミン、エタノールアミンなどの脂肪族アミン;シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミンなどの脂環式アミン;ベンジルアミン、トルイジンなどの芳香族アミンなどが例示される。アミン類は、酸化により対応するシッフ塩基、オキシムなどに変換される。
【0062】
基質の酸化に利用される分子状酸素は、特に制限されず、純粋な酸素を用いてもよく、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素などの不活性ガスで希釈した酸素を使用してもよい。操作性及び安全性のみならず経済性などの点から、空気を使用するのが好ましい。
【0063】
分子状酸素の使用量は、基質および目的化合物の種類に応じて選択でき、通常、基質1モルに対して、0.5モル以上(例えば、1モル以上)、好ましくは1〜100モル、さらに好ましくは2〜50モル程度である。基質に対して過剰モルの分子状酸素を使用する場合が多い。
【0064】
本発明の酸化方法では、反応系内に水を存在させてもよい。適量の水が存在すると、反応速度が速くなる。なお、基質の種類等により、反応によって水が生成する場合がある。水の添加量は、基質1モルに対して、例えば、0.01〜20モル、好ましくは0.1〜10モル程度であり、反応混合液100重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部程度である。水の量が多すぎると、反応が阻害される。
【0065】
本発明の酸化方法は、通常、有機溶媒中で行われる。有機溶媒としては、例えば、酢酸、プロピオン酸などの有機酸;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類;ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;t−ブタノール、t−アミルアルコールなどのアルコール類;ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ニトロベンゼン、ニトロメタン、ニトロエタンなどのニトロ化合物;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類;これらの混合溶媒など挙げられる。溶媒としては、酢酸などの有機酸類、ベンゾニトリルなどのニトリル類、トリフルオロメチルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素などを用いる場合が多い。なお、本発明の方法では、芳香族化合物、例えばベンゼン誘導体を用いると、高い転化率が得られる場合が多い。
【0066】
本発明の方法は比較的温和な条件であっても円滑に酸化反応が進行する。反応温度は、基質の種類などに応じて適当に選択でき、例えば、0〜300℃、好ましくは30〜250℃、さらに好ましくは40〜200℃程度であり、通常、50〜150℃程度で反応する場合が多い。なお、基質の種類等によっては、室温などの比較的低温でも酸化反応を円滑に進行させることができる。反応は、常圧または加圧下で行うことができ、加圧下で反応させる場合には、通常、1〜100atm(例えば、1.5〜80atm)、好ましくは2〜70atm程度である。反応時間は、反応温度及び圧力に応じて、例えば、30分〜48時間程度の範囲から適当に選択できる。
【0067】
反応は、分子状酸素の存在下又は分子状酸素の流通下、回分式、半回分式、連続式などの慣用の方法により行うことができる。反応終了後、反応生成物は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により、容易に分離精製できる。
【0068】
[α−ヒドロキシカルボン酸若しくはその誘導体、又はα−ケトカルボン酸若しくはその誘導体の製造]
前記本発明の酸化方法を利用することにより、α−ヒドロキシカルボン酸若しくはその誘導体、又はα−ケトカルボン酸若しくはその誘導体を簡易に製造することができる。
【0069】
すなわち、本発明の前記酸化触媒系の存在下、α位に少なくとも1つの水素原子を有する炭素数2以上のカルボン酸又はその誘導体を、分子状酸素と反応させることにより、α位にヒドロキシル基又はオキソ基の結合した対応する炭素数2以上のカルボン酸又はその誘導体を、良好な収率で得ることができる。なお、前記イミド化合物(A)と遷移金属化合物とで構成される酸化触媒を用いた場合には、金属化合物が基質のカルボニル基に配位しやすいためか、α位の酸化がさほど円滑に進行しない。これに対し、イミド化合物(A)と有機塩(B)とで構成される酸化触媒系では、上記のようなことがなく、α位の酸化が極めて有利に進行する。
【0070】
前記カルボン酸の誘導体には、カルボン酸塩、カルボン酸エステル、カルボン酸アミドなどが含まれる。好ましい「カルボン酸又はその誘導体」として、カルボン酸エステルが挙げられる。反応及び反応生成物の精製は、前記本発明の酸化方法の項に記載した方法により行うことができる。α炭素原子に水素原子が1つ結合したカルボン酸又はその誘導体からは、対応するα−ヒドロキシカルボン酸又はその誘導体が生成し、α炭素原子に水素原子が2又は3個結合したカルボン酸又はその誘導体からは、反応条件により、対応するα−ヒドロキシカルボン酸若しくはその誘導体及び/又はα−ケトカルボン酸若しくはその誘導体が生成する。特に、α炭素原子に水素原子が2個結合している場合(α位がメチレン基の場合)には、対応するα−ケトカルボン酸若しくはその誘導体を主生成物として得ることができる。
【0071】
より具体的には、例えば、下記式(6)
【化4】
Figure 0004039730
(式中、Rc及びRdは、同一又は異なって、水素原子、炭化水素基又は複素環基を示し、Rc及びRdは互いに結合して、隣接する炭素原子と共に環を形成してもよい。Reは炭化水素基を示す)
で表されるカルボン酸エステルから、下記式(7)又は(8)
【化5】
Figure 0004039730
(式中、Rc、Rd、Reは前記に同じ)
で表されるα−ヒドロキシカルボン酸エステル、又はα−ケトカルボン酸エステルを得ることができる。
【0072】
c、Rd、Reにおける炭化水素基には、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基が含まれる。アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、ヘキサデシル基などの炭素数1〜20程度のアルキル基(好ましくは炭素数1〜10、さらに好ましくは炭素数1〜6程度のアルキル基)などが挙げられる。アルケニル基としては、ビニル、アリル、1−ブテニル、2−ブテニル、1−へキセニル、1−デセニル、1−ヘキサデセニル基などの炭素数2〜20程度のアルケニル基(好ましくは炭素数2〜10、さらに好ましくは炭素数2〜6程度のアルケニル基)などが挙げられる。アルキニル基としては、エチニル、1−ブチニル、1−ペンチニル基などの炭素数2〜20程度のアルキニル基(好ましくは炭素数2〜10、さらに好ましくは2〜6程度のアルキニル基)などが挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基などの3〜20員のシクロアルキル基(好ましくは3〜12員、さらに好ましくは5〜8員のシクロアルキル基)などが例示できる。シクロアルケニル基としては、シクロペンテニル、シクロへキセニル基などの3〜20員のシクロアルケニル基(好ましくは3〜12員、さらに好ましくは5〜8員のシクロアルケニル基)などが例示できる。アリール基には、フェニル基、ナフチル基などが含まれる。
【0073】
c、Rd、Reにおける複素環基に対応する複素環には、例えば、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリンなどの非芳香族性複素環、フラン、オキサゾール、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾール、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、インドール、キノリン、アクリジンなどの芳香族性複素環などが含まれる。
【0074】
上記の炭化水素基や複素環基は、種々の置換基、例えば、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基など)、置換チオ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、アルキル基(例えば、炭素数1〜4程度のアルキル基)、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル基など)、アラルキル基、複素環基などを有していてもよい。
【0075】
c及びRdが互いに結合して、隣接する炭素原子と共に形成する環としては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン環などが例示される。
c及びRdのうち、一方が水素原子である場合には、他方は、1−アルケニル基、1−アルキニル基、アリール基又は芳香族性複素環基であるのが好ましい。好ましいReには、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル基などの炭素数1〜4程度のアルキル基が含まれる。
【0076】
式(6)で表される代表的な化合物としては、例えば、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、酪酸メチル、3−ブテン酸メチル、3−ペンテン酸メチル、フェニル酢酸メチル、2−ピリジル酢酸メチル、シクロヘキサンカルボン酸メチル、2−メチルプロピオン酸メチル、及びこれらに対応するC2-4アルキルエステルなどが挙げられる。これらの化合物を本発明の製造方法に付すことにより、対応するα−ヒドロキシカルボン酸エステル又はα−ケトカルボン酸エステルを良好な収率で得ることができる。例えば、フェニル酢酸メチルを酸化することにより、2−オキソ−2−フェニル酢酸メチルを高い収率で製造できる。
【0077】
【発明の効果】
本発明によれば、温和な条件下、分子状酸素により、基質を効率よく酸化し、目的酸化生成物を高い選択率で生成させることができる。また、金属触媒を用いることなく、基質を分子状酸素により高い転化率で酸化できる。さらに、芳香族炭化水素を分子状酸素により酸化して、高い収率でキノン類を生成させることができる。
また、本発明の酸化触媒系は、長時間使用しても活性が低下せず、触媒寿命が長い。さらに、本発明によれば、温和な条件下、アルコール類、カルボニル化合物、および有機カルボン酸を高い収率で製造できる。
また、本発明の製造法によれば、α−ヒドロキシカルボン酸若しくはその誘導体、又はα−ケトカルボン酸若しくはその誘導体を、簡易な操作で収率よく得ることができる。
【0078】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0079】
実施例1
テトラリン2ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド0.2ミリモル、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド1滴、及びクロロベンゼン6mlの混合物を、酸素雰囲気下、80℃で14時間攪拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、テトラリンの転化率76%で、α−テトラロン及びβ−テトラロンが、それぞれ49%及び8%の収率で生成していた。
【0080】
比較例1
トリオクチルメチルアンモニウムクロリドを用いなかった点以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、テトラリンの転化率36%で、α−テトラロン及びβ−テトラロンが、それぞれ22%及び8%の収率で生成していた。
【0081】
比較例2
トリオクチルメチルアンモニウムクロリドに代えて、コバルトアセチルアセトナートCo(acac)2を0.01ミリモル用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、テトラリンの転化率47%で、α−テトラロン及びβ−テトラロンが、それぞれ28%及び12%の収率で生成していた。
【0082】
実施例2
クロロベンゼンに代えてトリフルオロメチルベンゼンを用い、反応時間を6時間とした以外は実施例1と同様の操作を行ったところ、テトラリンの転化率77%で、α−テトラロン及びβ−テトラロンが、それぞれ48%及び8%の収率で生成していた。
【0083】
比較例3
トリオクチルメチルアンモニウムクロリドに代えて、コバルトアセチルアセトナートCo(acac)2を0.01ミリモル用いた以外は、実施例2と同様の操作を行ったところ、テトラリンの転化率13%で、α−テトラロン及びβ−テトラロンが、それぞれ7%及び4%の収率で生成していた。
【0084】
実施例3
フルオレン2ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド0.2ミリモル、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド0.04ミリモル、及びトリフルオロメチルベンゼン6mlの混合物を、酸素雰囲気下、80℃で6時間攪拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、フルオレンの転化率56%で、フルオレノンが51%の収率で生成していた。また、反応液中に残存しているN−ヒドロキシフタルイミドの量を逆相高速液体クロマトグラフィーで測定した結果、75%以上のN−ヒドロキシフタルイミドが残存していることが判った。
【0085】
実施例4
トリオクチルメチルアンモニウムクロリドに代えてヘキサデシルピリジニウムクロリドを用いた以外は実施例3と同様の操作を行ったところ、フルオレンの転化率44%で、フルオレノンが40%の収率で生成していた。
【0086】
実施例5
トリオクチルメチルアンモニウムクロリドに代えてテトラブチルアンモニウムブロミドを用いた以外は実施例3と同様の操作を行ったところ、フルオレンの転化率50%で、フルオレノンが47%の収率で生成していた。
【0087】
実施例6
トリオクチルメチルアンモニウムクロリドに代えてトリエチルフェニルアンモニウムクロリドを用いた以外は実施例3と同様の操作を行ったところ、フルオレンの転化率48%で、フルオレノンが43%の収率で生成していた。
【0088】
実施例7
トリオクチルメチルアンモニウムクロリドに代えてトリブチル(ヘキサデシル)ホスホニウムブロミドを用いた以外は実施例3と同様の操作を行ったところ、フルオレンの転化率50%で、フルオレノンが45%の収率で生成していた。
【0089】
実施例8
トリオクチルメチルアンモニウムクロリドに代えてジ(オクタデシル)ジメチルアンモニウムクロリドを用いた以外は実施例3と同様の操作を行ったところ、フルオレンの転化率55%で、フルオレノンが51%の収率で生成していた。
【0090】
実施例9
トリオクチルメチルアンモニウムクロリドに代えてテトラヘキシルアンモニウムクロリドを用いた以外は実施例3と同様の操作を行ったところ、フルオレンの転化率61%で、フルオレノンが60%の収率で生成していた。
【0091】
実施例10
トリオクチルメチルアンモニウムクロリドに代えてテトラヘキシルアンモニウムブロミドを用いた以外は実施例3と同様の操作を行ったところ、フルオレンの転化率40%で、フルオレノンが34%の収率で生成していた。
【0092】
比較例4
トリオクチルメチルアンモニウムクロリドを用いなかった点以外は、実施例3と同様の操作を行ったところ、フルオレンの転化率10%で、フルオレノンが7%の収率で生成していた。
【0093】
比較例5
トリオクチルメチルアンモニウムクロリドに代えて臭化リチウムを用いた以外は、実施例3と同様の操作を行ったところ、フルオレンの転化率13%で、フルオレノンが8%の収率で生成していた。
【0094】
比較例6
トリオクチルメチルアンモニウムクロリドに代えてコバルトアセチルアセトナートCo(acac)2を0.01ミリモル用いた以外は実施例3と同様の操作を行い、反応液中に残存しているN−ヒドロキシフタルイミドの量を逆相高速液体クロマトグラフィーで測定したところ、N−ヒドロキシフタルイミドは約12%しか残存していなかった。
【0095】
実施例11
フルオレン5ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド0.05ミリモル、テトラブチルアンモニウムブロミド0.01ミリモル、及びトリフルオロメチルベンゼン15mlの混合物を、酸素雰囲気下、80℃で30時間攪拌した。反応を開始して20時間後及び30時間後のフルオレンの転化率をガスクロマトグラフィーを用いて求めたところ、それぞれ19.3%及び24.1%であり、長時間反応させても、触媒活性は保持されていた。
【0096】
比較例7
テトラブチルアンモニウムブロミドに代えてコバルトアセチルアセトナートCo(acac)2を0.0025ミリモル用いた以外は実施例11と同様の操作を行った。反応を開始して20時間後及び30時間後のフルオレンの転化率をガスクロマトグラフィーを用いて求めたところ、それぞれ8.2%及び7.9%であった。この触媒系では、ある程度時間が経過すると触媒が失活するものと考えられる。
【0097】
実施例12
フルオレン2ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド0.2ミリモル、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド0.04ミリモル、水1滴(23.6mg)、及びトリフルオロメチルベンゼン6mlの混合物を、酸素雰囲気下、80℃で6時間攪拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、フルオレンの転化率73%で、フルオレノンが68%の収率で生成していた。
【0098】
実施例13
水の量を34.7mgとし、反応時間を18時間とした以外は実施例12と同様の操作を行ったところ、フルオレンの転化率85%で、フルオレノンが81%の収率で生成していた。
【0099】
実施例14
水の量を73.3mgとした以外は実施例13と同様の操作を行ったところ、フルオレンの転化率83%で、フルオレノンが81%の収率で生成していた。
【0100】
実施例15
アダマンタン2ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド0.2ミリモル、テトラブチルアンモニウムブロミド0.04ミリモル、水1滴、及びトリフルオロメチルベンゼン6mlの混合物を、酸素雰囲気下、80℃で6時間攪拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、アダマンタンの転化率73%で、1−アダマンタノール、2−アダマンタノン及び1、3−アダマンタンジオールが、それぞれ41%、8%及び12%の収率で生成していた。
【0101】
比較例8
テトラブチルアンモニウムブロミドに代えてコバルトアセチルアセトナートCo(acac)2を0.01ミリモル用いた以外は実施例15と同様の操作を行ったところ、アダマンタンの転化率26%で、1−アダマンタノール及び2−アダマンタノンが、それぞれ17%及び2%の収率で生成していた。
【0102】
実施例16
フェニル酢酸メチル2ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド0.2ミリモル、テトラブチルアンモニウムクロリド0.04ミリモル、水1滴、及びトリフルオロメチルベンゼン6mlの混合物を、酸素雰囲気下、80℃で6時間攪拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、2−オキソ−2−フェニル酢酸メチルが収率65%で生成していた。
【0103】
比較例9
テトラブチルアンモニウムクロリドに代えてコバルトアセチルアセトナートCo(acac)2を0.01ミリモル用いた以外は実施例16と同様の操作を行ったところ、2−オキソ−2−フェニル酢酸メチルが収率17%で生成していた。

Claims (4)

  1. (A)下記式(1)
    Figure 0004039730
    (式中、R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基を示し、R1及びR2は互いに結合して二重結合、または芳香族性又は非芳香族性の環を形成してもよい。Xは酸素原子又はヒドロキシル基を示し、nは1〜3の整数を示す)
    で表されるイミド化合物と、(B)有機アンモニウム塩又は有機ホスホニウム塩とで構成されている酸化触媒系。
  2. 請求項1記載の酸化触媒系の存在下、基質と分子状酸素とを接触させる酸化方法。
  3. 基質が、(a)不飽和結合に隣接する部位に炭素−水素結合を有する化合物、(b)メチン炭素原子を有する化合物、(c)非芳香族性環状炭化水素、(d)ヘテロ原子の隣接位に炭素−水素結合を有する非芳香族性複素環化合物、(e)共役化合物、(f)アルコール若しくはチオール類、(g)エーテル若しくはチオエーテル類、(h)アルデヒド若しくはチオアルデヒド類、又は(i)アミン類である請求項記載の酸化方法。
  4. 請求項1記載の酸化触媒系の存在下、α位に少なくとも1つの水素原子を有する炭素数2以上のカルボン酸又はその誘導体を、分子状酸素と反応させて、α位にヒドロキシル基又はオキソ基の結合した対応する炭素数2以上のカルボン酸又はその誘導体を得るα−ヒドロキシカルボン酸若しくはその誘導体、又はα−ケトカルボン酸若しくはその誘導体の製造法。
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