JP5106719B2 - イミド化合物を触媒とするケトンの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、イミド化合物触媒を用いたケトンの製造方法、より詳細には、特定のイミド化合物と、芳香族カルボン酸若しくはその塩、又は芳香族アルデヒドの存在下で、第2級アルコールと酸素とを反応させてケトンを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化反応は、有機化学工業における最も基本的な反応の一つであるため、種々の酸化法が開発されている。資源及び環境上の観点から、好ましい酸化方法は、分子状酸素又は空気を酸化剤として直接利用する触媒的な酸化法である。
【0003】
特開平8−38909号公報及び特開平9−327626号公報には、分子状酸素により有機基質を酸化してケトンを生成するための触媒として、特定の構造を有するイミド化合物、又は前記イミド化合物と遷移金属化合物などとで構成された酸化触媒が提案されている。これらのイミド化合物を触媒として用いる方法によれば、比較的温和な条件下で酸化反応を進めることができる。しかし、この方法においても、目的化合物の収率等の点で必ずしも充分満足できるものではなかった。
特に、シクロアルカンジオールなどの多価の第2級アルコールからシクロアルカンジオンなどのポリケトンを得ようとする場合には、第1番目の第2級アルコールは比較的速やかに酸化されてケトンに変換されるものの、第2番目以降の第2級アルコールの酸化速度が遅く、シクロアルカンジオンなどのポリケトンを収率よく得ることが困難である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、第2級アルコールから対応するケトンを、効率よく製造できる方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、シクロアルカンジオールなどの多価の第2級アルコールや、ヒドロキシシクロアルカノンなどのオキソ基を有する第2級アルコールから、対応するポリケトンを高い収率で製造できる方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定構造のイミド化合物と、芳香族カルボン酸又はその塩、及び芳香族アルデヒドより選ばれた少なくとも一つの反応促進剤との共存下、第2級アルコールと酸素とを反応させると、穏和な条件で、対応するケトンを効率よく得られることを見いだし、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、(i')下記式(I’)
【化3】
[式中、X’は酸素原子又は−OR’基(R’は水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシル基とアセタール又はヘミアセタール基を形成可能な基、アシル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、カルバモイル基、メチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基、無機酸からOH基を除した基、ジアルキルホスフィノチオイル基、ジアリールホスフィノチオイル基、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリベンジルシリル基、トリフェニルシリル基からなる群から選択された少なくとも1種の化学基を示す;N−置換環状イミド骨格のうちR’を除く部分が複数個、R’を介して結合する場合、該R’は、ポリカルボン酸アシル基、カルボニル基、多価の炭化水素基からなる群から選択された少なくとも1種の化学基を示す)を示す]
で表される環状イミド骨格を有するイミド化合物を触媒とし、
(A’)多価の第2級アルコール又はオキソ基を有する第2級アルコールと
(B)酸素とを反応させて、
対応するポリケトンを製造する方法であって、
反応系に、
(ii)芳香族カルボン酸又はその塩、及び芳香族アルデヒドより選ばれた少なくとも一つの反応促進剤を共存させ、
金属化合物を(iii)助触媒として用いることを特徴とするケトンの製造方法を提供する。
【0007】
前記イミド化合物には、下記式(1’)
【化4】
[式中、R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基を示し、R1及びR2は互いに結合して二重結合、又は芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成してもよい。X’は酸素原子又は−OR’基(R’は水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシル基とアセタール又はヘミアセタール基を形成可能な基、アシル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、カルバモイル基、メチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基、無機酸からOH基を除した基、ジアルキルホスフィノチオイル基、ジアリールホスフィノチオイル基、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリベンジルシリル基、トリフェニルシリル基からなる群から選択された少なくとも1種の化学基を示す;N−置換環状イミド骨格のうちR’を除く部分が複数個、R’を介して結合する場合、該R’は、ポリカルボン酸アシル基、カルボニル基、多価の炭化水素基からなる群から選択された少なくとも1種の化学基を示す)を示す。前記R1、R2、又はR1及びR2が互いに結合して形成された二重結合又は芳香族性若しくは非芳香族性の環には、上記式(1’)中に示されるN−置換環状イミド基がさらに1又は2個形成されていてもよい]
で表される化合物が含まれる。
【0008】
前記反応促進剤(ii)として、例えば、安息香酸又はその塩、及びベンズアルデヒドより選ばれた少なくとも一つの化合物が好ましく用いられる。反応促進剤(ii)の使用量は、例えば、第2級アルコール(A)1モルに対して0.0001〜0.2モル程度である。
【0009】
第2級アルコール(A’)として、例えば、飽和又は不飽和脂環式第2級アルコールを使用できる。特に、シクロアルカンジオール又はヒドロキシシクロアルカノンが好ましく用いられる。
また、イミド化合物(i')の使用量としては、第2級アルコール(A’)1モルに対して0.001〜0.35モル程度の範囲が好ましく用いられる。
さらに、前記金属化合物の使用量としては、第2級アルコール(A’)1モルに対して0.005〜0.08モル程度の範囲が好ましく用いられる。
なお、本明細書では、上記発明のほか、
(i)下記式(I)
【化5】
[式中、Xは酸素原子又は−OR基(Rは水素原子又はヒドロキシル基の保護基を示す)を示す]
で表される環状イミド骨格を有するイミド化合物を触媒とし、
(A)第2級アルコールと
(B)酸素とを反応させて、
対応するケトンを製造する方法であって、
反応系に、(ii)芳香族カルボン酸又はその塩、及び芳香族アルデヒドより選ばれた少なくとも一つの反応促進剤を共存させることを特徴とするケトンの製造方法、
についても説明する。
また、前記イミド化合物には、下記式(1)
【化6】
[式中、R 1 及びR 2 は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基を示し、R 1 及びR 2 は互いに結合して二重結合、又は芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成してもよい。Xは酸素原子又は−OR基(Rは水素原子又はヒドロキシル基の保護基を示す)を示す。前記R 1 、R 2 、又はR 1 及びR 2 が互いに結合して形成された二重結合又は芳香族性若しくは非芳香族性の環には、上記式(1)中に示されるN−置換環状イミド基がさらに1又は2個形成されていてもよい]
で表される化合物が含まれる。
【0010】
【発明の実施の形態】
[(i)イミド化合物触媒]
式(I)において、窒素原子とXとの結合は単結合又は二重結合である。前記イミド化合物は、分子中に、式(I)で表されるN−置換環状イミド骨格を複数個有していてもよい。また、このイミド化合物は、前記Xが−OR基であり且つRがヒドロキシル基の保護基である場合、N−置換環状イミド骨格のうちRを除く部分(N−オキシ環状イミド骨格)が複数個、Rを介して結合していてもよい。
【0011】
式(I)中、Rで示されるヒドロキシル基の保護基としては、有機合成の分野で慣用のヒドロキシル基の保護基を用いることができる。このような保護基として、例えば、アルキル基(例えば、メチル、t−ブチル基などのC1-4アルキル基など)、アルケニル基(例えば、アリル基など)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基など)、アリール基(例えば、2,4−ジニトロフェニル基など)、アラルキル基(例えば、ベンジル、2,6−ジクロロベンジル、3−ブロモベンジル、2−ニトロベンジル、トリフェニルメチル基など);置換メチル基(例えば、メトキシメチル、メチルチオメチル、ベンジルオキシメチル、t−ブトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル、2,2,2−トリクロロエトキシメチル、ビス(2−クロロエトキシ)メチル、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル基など)、置換エチル基(例えば、1−エトキシエチル、1−メチル−1−メトキシエチル、1−イソプロポキシエチル、2,2,2−トリクロロエチル基など)、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、1−ヒドロキシアルキル基(例えば、1−ヒドロキシエチル、1−ヒドロキシヘキシル、1−ヒドロキシデシル、1−ヒドロキシヘキサデシル、1−ヒドロキシ−1−フェニルメチル基など)等のヒドロキシル基とアセタール又はヘミアセタール基を形成可能な基など;アシル基(例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル基などのC1-6脂肪族アシル基;アセトアセチル基;ベンゾイル、ナフトイル基などの芳香族アシル基など)、スルホニル基(メタンスルホニル、エタンスルホニル、トリフルオロメタンスルホニル、ベンゼンスルホニル、p−トルエンスルホニル、ナフタレンスルホニル基など)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル基などのC1-4アルコキシ−カルボニル基など)、アラルキルオキシカルボニル基(例えば、ベンジルオキシカルボニル基、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基など)、置換又は無置換カルバモイル基(例えば、カルバモイル、メチルカルバモイル、フェニルカルバモイル基など)、無機酸(硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸など)からOH基を除した基、ジアルキルホスフィノチオイル基(例えば、ジメチルホスフィノチオイル基など)、ジアリールホスフィノチオイル基(例えば、ジフェニルホスフィノチオイル基など)、置換シリル基(例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、トリベンジルシリル、トリフェニルシリル基など)などが挙げられる。
【0012】
また、Xが−OR基である場合において、N−置換環状イミド骨格のうちRを除く部分(N−オキシ環状イミド骨格)が複数個、Rを介して結合する場合、該Rとして、例えば、オキサリル、マロニル、スクシニル、グルタリル、フタロイル、イソフタロイル、テレフタロイル基などのポリカルボン酸アシル基;カルボニル基;メチレン、エチリデン、イソプロピリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、ベンジリデン基などの多価の炭化水素基(特に、2つのヒドロキシル基とアセタール結合を形成する基)などが挙げられる。
【0013】
Rとしては、アルキル基(メチル基など)以外の保護基がより好ましい。特に好ましいRには、例えば、水素原子;ヒドロキシル基とアセタール又はヘミアセタール基を形成可能な基;カルボン酸、スルホン酸、炭酸、カルバミン酸、硫酸、リン酸、ホウ酸などの酸からOH基を除した基(アシル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基等)などの加水分解により脱離可能な加水分解性保護基などが含まれる。
【0014】
前記イミド化合物の代表的な例として、前記式(1)で表されるイミド化合物が挙げられる。このイミド化合物において、置換基R1及びR2のうちハロゲン原子には、ヨウ素、臭素、塩素およびフッ素原子が含まれる。アルキル基には、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、デシル基などの炭素数1〜10程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が含まれる。好ましいアルキル基としては、例えば、炭素数1〜6程度、特に炭素数1〜4程度の低級アルキル基が挙げられる。
【0015】
アリール基には、フェニル、ナフチル基などが含まれ、シクロアルキル基には、シクロペンチル、シクロヘキシル基などが含まれる。アルコキシ基には、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、t−ブトキシ、ヘキシルオキシ基などの炭素数1〜10程度、好ましくは炭素数1〜6程度、特に炭素数1〜4程度の低級アルコキシ基が含まれる。
【0016】
アルコキシカルボニル基には、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル基などのアルコキシ部分の炭素数が1〜10程度のアルコキシカルボニル基が含まれる。好ましいカルボニル基にはアルコキシ部分の炭素数が1〜6程度、特に1〜4程度の低級アルコキシカルボニル基が含まれる。アシル基としては、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル基などの炭素数1〜6程度のアシル基が例示できる。
【0017】
前記置換基R1及びR2は、同一又は異なっていてもよい。また、前記式(1)において、R1及びR2は互いに結合して、二重結合、または芳香族性又は非芳香属性の環を形成してもよい。好ましい芳香族性又は非芳香族性環は5〜12員環、特に6〜10員環程度であり、複素環又は縮合複素環であってもよいが、炭化水素環である場合が多い。このような環には、例えば、非芳香族性脂環式環(シクロヘキサン環などの置換基を有していてもよいシクロアルカン環、シクロヘキセン環などの置換基を有していてもよいシクロアルケン環など)、非芳香族性橋かけ環(5−ノルボルネン環などの置換基を有していてもよい橋かけ式炭化水素環など)、ベンゼン環、ナフタレン環などの置換基を有していてもよい芳香族環(縮合環を含む)が含まれる。前記環は、芳香族環で構成される場合が多い。前記環は、アルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子などの置換基を有していてもよい。
【0018】
前記R1、R2、又はR1及びR2が互いに結合して形成された二重結合又は芳香族性若しくは非芳香族性の環には、上記式(1)中に示されるN−置換環状イミド基がさらに1又は2個形成されていてもよい。例えば、R1又はR2が炭素数2以上のアルキル基である場合、このアルキル基を構成する隣接する2つの炭素原子を含んで前記N−置換環状イミド基が形成されていてもよい。また、R1及びR2が互いに結合して二重結合を形成する場合、該二重結合を含んで前記N−置換環状イミド基が形成されていてもよい。さらに、R1及びR2が互いに結合して芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成する場合、該環を構成する隣接する2つの炭素原子を含んで前記N−置換環状イミド基が形成されていてもよい。
【0019】
好ましいイミド化合物には、下記式で表される化合物が含まれる。
【化5】
(式中、R3〜R6は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子を示す。R3〜R6は、隣接する基同士が互いに結合して芳香族性又は非芳香族性の環を形成していてもよい。式(1f)中、Aはメチレン基又は酸素原子を示す。R1、R2、Xは前記に同じ。式(1c)のベンゼン環には、式(1c)中に示されるN−置換環状イミド基がさらに1又は2個形成されていてもよい)
【0020】
置換基R3〜R6において、アルキル基には、前記例示のアルキル基と同様のアルキル基、特に炭素数1〜6程度のアルキル基が含まれ、ハロアルキル基には、トリフルオロメチル基などの炭素数1〜4程度のハロアルキル基、アルコキシ基には、前記と同様のアルコキシ基、特に炭素数1〜4程度の低級アルコキシ基、アルコキシカルボニル基には、前記と同様のアルコキシカルボニル基、特にアルコキシ部分の炭素数が1〜4程度の低級アルコキシカルボニル基が含まれる。また、アシル基としては、前記と同様のアシル基、特に炭素数1〜6程度のアシル基が例示され、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素原子が例示できる。置換基R3〜R6は、通常、水素原子、炭素数1〜4程度の低級アルキル基、カルボキシル基、ニトロ基、ハロゲン原子である場合が多い。R3〜R6が互いに結合して形成する環としては、前記R1及びR2が互いに結合して形成する環と同様であり、特に芳香族性又は非芳香族性の5〜12員環が好ましい。
【0021】
好ましいイミド化合物の代表的な例として、例えば、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシマレイン酸イミド、N−ヒドロキシヘキサヒドロフタル酸イミド、N,N′−ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカルボン酸イミド、N−ヒドロキシフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラブロモフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラクロロフタル酸イミド、N−ヒドロキシヘット酸イミド、N−ヒドロキシハイミック酸イミド、N−ヒドロキシトリメリット酸イミド、N,N′−ジヒドロキシピロメリット酸イミド、N,N′−ジヒドロキシナフタレンテトラカルボン酸イミドなどのXが−OR基で且つRが水素原子である化合物;N−アセトキシコハク酸イミド、N−アセトキシマレイン酸イミド、N−アセトキシヘキサヒドロフタル酸イミド、N,N′−ジアセトキシシクロヘキサンテトラカルボン酸イミド、N−アセトキシフタル酸イミド、N−アセトキシテトラブロモフタル酸イミド、N−アセトキシテトラクロロフタル酸イミド、N−アセトキシヘット酸イミド、N−アセトキシハイミック酸イミド、N−アセトキシトリメリット酸イミド、N,N′−ジアセトキシピロメリット酸イミド、N,N′−ジアセトキシナフタレンテトラカルボン酸イミドなどのXが−OR基で且つRがアセチル基等のアシル基である化合物;N−メトキシメチルオキシフタル酸イミド、N−(2−メトキシエトキシメチルオキシ)フタル酸イミドなどのXが−OR基で且つRがヒドロキシル基とアセタール又はヘミアセタール結合を形成可能な基である化合物;N−メタンスルホニルオキシフタル酸イミド、N−(p−トルエンスルホニルオキシ)フタル酸イミドなどのXが−OR基で且つRがスルホニル基である化合物;N−ヒドロキシフタル酸イミドの硫酸エステル、硝酸エステル、リン酸エステル又はホウ酸エステルなどのXが−OR基で且つRが無機酸からOH基を除した基である化合物などが挙げられる。
【0022】
前記イミド化合物のうち、Xが−OR基で且つRが水素原子である化合物は、慣用のイミド化反応、例えば、対応する酸無水物とヒドロキシルアミンNH2OHとを反応させ、酸無水物基の開環及び閉環を経てイミド化する方法により調製できる。前記酸無水物には、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸などの飽和又は不飽和脂肪族ジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸(1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物)、1,2,3,4−シクロヘキサンテトラカルボン酸1,2−無水物などの飽和又は不飽和非芳香族性環状多価カルボン酸無水物(脂環式多価カルボン酸無水物)、無水ヘット酸、無水ハイミック酸などの橋かけ環式多価カルボン酸無水物(脂環式多価カルボン酸無水物)、無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水ニトロフタル酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、無水ピロメリット酸、無水メリット酸、1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などの芳香族多価カルボン酸無水物が含まれる。
【0023】
前記イミド化合物のうち、Xが−OR基で且つRがヒドロキシル基の保護基である化合物は、対応するRが水素原子である化合物(N−ヒドロキシ環状イミド化合物)に、慣用の保護基導入反応を利用して、所望の保護基を導入することにより調製することができる。例えば、N−アセトキシフタル酸イミドは、N−ヒドロキシフタル酸イミドに無水酢酸を反応させたり、塩基の存在下でアセチルハライドを反応させることにより得ることができる。
【0024】
特に好ましいイミド化合物は、脂環式多価カルボン酸無水物又は芳香族多価カルボン酸無水物、なかでも芳香族多価カルボン酸無水物から誘導されるN−ヒドロキシイミド化合物(例えば、N−ヒドロキシフタル酸イミド、N,N′−ジヒドロキシピロメリット酸イミド);及び該N−ヒドロキシイミド化合物のヒドロキシル基に保護基を導入することにより得られる化合物などが含まれる。
【0025】
式(I)で表されるN−置換環状イミド骨格を有するイミド化合物は、反応において、単独で又は2種以上組合せて使用できる。前記イミド化合物は反応系内で生成させてもよい。
【0026】
前記イミド化合物の使用量は、広い範囲で選択でき、例えば、第2級アルコール1モルに対して0.0000001〜1モル、好ましくは0.00001〜0.5モル、さらに好ましくは0.0001〜0.4モル程度であり、0.001〜0.35モル程度である場合が多い。
【0027】
[(ii)反応促進剤]
本発明の方法では、反応促進剤(ii)を、(a)前記イミド化合物及び助触媒、又は(b)前記イミド化合物と組合せて用いることにより、穏やかな反応条件においても、速やかに反応を進行させることができる。中でも、(a)イミド化合物及び助触媒と組合せると、さらに顕著な効果が見られる。
【0028】
反応促進剤としては、芳香族カルボン酸若しくはその塩、又は芳香族アルデヒドが使用でき、その種類は特に制限されない。これらの芳香族カルボン酸若しくはその塩、又は芳香族アルデヒドは、置換基を有していてもよい。
【0029】
芳香族カルボン酸又はその塩、及び芳香族アルデヒドにおいては、芳香族性環は、芳香族炭化水素環(芳香族性同素環)、芳香族複素環のいずれであってもよい。また、芳香族性縮合複素環において、カルボキシル基又はホルミル基は複素環に結合していてもよく、芳香族炭化水素環に結合していてもよい。
【0030】
芳香族カルボン酸としては、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフトエ酸、ナフタレンジカルボン酸、1,3,5−ナフタレントリカルボン酸などの芳香族炭素環式カルボン酸、フランカルボン酸、チオフェンカルボン酸、1−ピロールカルボン酸、2−ピリジンカルボン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸などの芳香族複素環式カルボン酸;サリチル酸、プロトカテク酸、没食子酸などのヒドロキシカルボン酸;アニス酸、ベラトルム酸、ピペロニル酸、p−エトキシ安息香酸、p−イソプロポキシ安息香酸などのアルコキシカルボン酸;p−ベンゾイル安息香酸、p−アセチル安息香酸、p−プロピオニル安息香酸、p−ブチリル安息香酸などのオキソカルボン酸;フタルアルデヒド酸、イソフタルアルデヒド酸、テレフタルアルデヒド酸などのホルミル基を有するカルボン酸;o−クロロ安息香酸、m−クロロ安息香酸、p−クロロ安息香酸、2−クロロ−4−ピリジンカルボン酸などのハロゲン置換カルボン酸;3−ビフェニルカルボン酸などの芳香族環が置換したカルボン酸;トルイル酸、5−メチル−1−ナフタレンカルボン酸、p−エチル安息香酸、p−イソブチロピル安息香酸、p−プロピル安息香酸、p−ブチル安息香酸などのアルキル基が置換したカルボン酸;o−アセチルオキシ安息香酸、m−アセチルオキシ安息香酸、p−アセチルオキシ安息香酸、p−プロピオニルオキシ安息香酸、p−ブチリルオキシ安息香酸などのアシルオキシ基が置換したカルボン酸;p−アミノ安息香酸,p−ジメチルアミノ安息香酸、アントラニル酸などのアミノカルボン酸等が例示できる。
【0031】
芳香族カルボン酸の塩には広い範囲の塩が含まれ、典型元素の塩や遷移金属の塩が含まれる。これらの芳香族カルボン酸塩は錯塩(例えば、多核錯塩など)であってもよい。典型元素の塩としては、例えば、周期表1族元素の塩(Li塩、Na塩、K塩、Rb塩など)、周期表2族元素の塩(Mg塩、Ca塩、Ba塩など)が例示でき、遷移金属の塩としては、例えば、周期表3族元素の塩(Sc塩、Y塩、La塩、Ce塩など)、周期表4族元素の塩(Ti塩、Zr塩など)、周期表5族元素の塩(V塩、Nb塩など)、周期表6族元素の塩(Cr塩、Mo塩、W塩など)、周期表7族元素の塩(Mn塩、Tc塩など)、周期表8族元素の塩(Fe塩、Co塩、Ni塩、Ru塩、Rh塩、Pd塩など)、周期表11族元素の塩(Cu塩、Ag塩など)、周期表12族元素の塩(Zn塩、Cd塩など)が例示できる。なお、金属元素の原子価(例えば、2価、3価、4価など)も特に制限されない。
【0032】
好ましいカルボン酸塩としては、安息香酸などの芳香族カルボン酸と、周期表4族(Ti,Zrなど)、5族(Vなど)、6族(Cr,Moなど)、7族(Mnなど)、8族(Fe,Coなど)などの遷移金属との塩(例えば、安息香酸と、2価又は3価の金属との塩など)が挙げられる。
【0033】
芳香族アルデヒドとしては、ベンズアルデヒド、1−ナフタレンカルバルデヒド、2−ナフタレンカルバルデヒド、ナフタレンジカルバルデヒド、ニコチンアルデヒド、2−ピリジンカルバルデヒド、4−ピリジンカルバルデヒド、2−フランカルバルデヒド、4−インドールカルバルデヒドなどの芳香族アルデヒド;サリチルアルデヒドなどのヒドロキシアルデヒド;アニスアルデヒド、ベラトルムアルデヒド、ピペロニルアルデヒド、p−エトキシベンズアルデヒド、p−イソプロポキシベンズアルデヒドなどのアルコキシアルデヒド;p−ベンゾイルベンズアルデヒド、p−アセチルベンズアルデヒド、p−プロピオニルベンズアルデヒド、p−ブチリルベンズアルデヒドなどのオキソアルデヒド;o−クロロベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−クロロベンズアルデヒド、2−クロロ−4−ピリジンカルバルデヒドなどのハロゲン置換アルデヒド;3−ビフェニルカルバルデヒドなどの芳香族環が置換したアルデヒド;2−メチルベンゼンカルバルデヒド、5−メチル−1−ナフタレンカルバルデヒド、p−エチルベンズアルデヒド、p−イソプロピルベンズアルデヒド、p−プロピルベンズアルデヒド、p−ブチルベンズアルデヒドなどのアルキル基が置換したアルデヒド;o−アセチルオキシベンズアルデヒド、m−アセチルオキシベンズアルデヒド、p−プロペオニルオキシベンズアルデヒド、p−ブチリルオキシベンズアルデヒドなどのアシルオキシ基が置換したアルデヒド;p−アミノベンズアルデヒド、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、アントラニルアルデヒドなどのアミノアルデヒドなどが例示できる。
【0034】
これらの反応促進剤(ii)は単独で、又は2種以上組合せて使用できる。
【0035】
好ましい反応促進剤(ii)としては、炭素数6〜10の芳香族炭化水素環(特に、ベンゼン環)に、カルボキシル基及びホルミル基より選ばれた少なくとも一つの置換基を有する芳香族性化合物又はその塩が挙げられる。具体的には、例えば、安息香酸若しくはその塩、又はベンズアルデヒドが挙げられる。
【0036】
反応促進剤(ii)の使用量は広い範囲で選択でき、例えば、第2級アルコール1モルに対して0.0001〜0.2モル、好ましくは0.001〜0.18モル、さらに好ましくは0.01〜0.15モル程度である。
【0037】
[(iii)助触媒]
本発明では、助触媒として金属化合物を用いてもよい。前記イミド化合物(i)と前記反応促進剤(ii)に加え、金属化合物とを併用することにより、反応速度や反応の選択性を向上させることができる。
【0038】
金属化合物を構成する金属元素としては、特に限定されないが、周期表2〜15族の金属元素を用いる場合が多い。なお、本明細書では、ホウ素Bも金属元素に含まれるものとする。例えば、前記金属元素として、周期表2族元素(Mg、Ca、Sr、Baなど)、3族元素(Sc、ランタノイド元素、アクチノイド元素など)、4族元素(Ti、Zr、Hfなど)、5族元素(Vなど)、6族元素(Cr、Mo、Wなど)、7族元素(Mnなど)、8族元素(Fe、Ruなど)、9族元素(Co、Rhなど)、10族元素(Ni、Pd、Ptなど)、11族元素(Cuなど)、12族元素(Znなど)、13族元素(B、Al、Inなど)、14族元素(Sn、Pbなど)、15族元素(Sb、Biなど)などが挙げられる。好ましい金属元素には、遷移金属元素(周期表3〜12族元素)が含まれる。なかでも、周期表5〜11族元素、特に5族〜9族元素が好ましく、とりわけV、Mo、Mn、Coなどが好ましい。金属元素の原子価は特に制限されず、例えば0〜6価程度である。
【0039】
金属化合物としては、前記金属元素の単体、水酸化物、酸化物(複合酸化物を含む)、ハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、オキソ酸塩(例えば、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩など)、イソポリ酸の塩、ヘテロポリ酸の塩などの無機化合物;有機酸塩(例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、青酸塩、ナフテン酸塩、ステアリン酸塩など)、錯体などの有機化合物が挙げられる。前記錯体を構成する配位子としては、OH(ヒドロキソ)、アルコキシ(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなど)、アシル(アセチル、プロピオニルなど)、アルコキシカルボニル(メトキシカルボニル、エトキシカルボニルなど)、アセチルアセトナト、シクロペンタジエニル基、ハロゲン原子(塩素、臭素など)、CO、CN、酸素原子、H2O(アコ)、ホスフィン(トリフェニルホスフィンなどのトリアリールホスフィンなど)のリン化合物、NH3(アンミン)、NO、NO2(ニトロ)、NO3(ニトラト)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェナントロリンなどの窒素含有化合物などが挙げられる。
【0040】
金属化合物の具体例としては、例えば、コバルト化合物を例にとると、水酸化コバルト、酸化コバルト、塩化コバルト、臭化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、リン酸コバルトなどの無機化合物;酢酸コバルト、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルトなどの有機酸塩;コバルトアセチルアセトナトなどの錯体等の2価又は3価のコバルト化合物などが挙げられる。また、バナジウム化合物の例としては、水酸化バナジウム、酸化バナジウム、塩化バナジウム、塩化バナジル、硫酸バナジウム、硫酸バナジル、バナジン酸ナトリウムなどの無機化合物;バナジウムアセチルアセトナト、バナジルアセチルアセトナトなどの錯体等の2〜5価のバナジウム化合物などが挙げられる。他の金属元素の化合物としては、前記コバルト又はバナジウム化合物に対応する化合物などが例示される。金属化合物は単独で又は2種以上組合せて使用できる。
【0041】
前記金属化合物の使用量は、例えば、第2級アルコール(A)1モルに対して、0.000001〜0.1モル程度、好ましくは0.00001〜0.01モル程度である。また、前記金属化合物の使用量は、前記イミド化合物1モルに対して、例えば0.001〜0.1モル程度、好ましくは0.005〜0.08モル程度である。
【0042】
本発明では、また、助触媒として、少なくとも1つの有機基が結合した周期表15族又は16族元素を含む多原子陽イオン又は多原子陰イオンとカウンターイオンとで構成された有機塩を用いることもできる。助触媒として前記有機塩を用いることにより、反応速度や反応の選択性を向上させることができる。
【0043】
前記有機塩において、周期表15族元素には、N、P、As、Sb、Biが含まれる。周期表16族元素には、O、S、Se、Teなどが含まれる。好ましい元素としては、N、P、As、Sb、Sが挙げられ、特に、N、P、Sなどが好ましい。
【0044】
前記元素の原子に結合する有機基には、置換基を有していてもよい炭化水素基、置換オキシ基などが含まれる。炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、アリルなどの炭素数1〜30程度(好ましくは炭素数1〜20程度)の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基(アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基);シクロペンチル、シクロヘキシルなどの炭素数3〜8程度の脂環式炭化水素基;フェニル、ナフチルなどの炭素数6〜14程度の芳香族炭化水素基などが挙げられる。炭化水素基が有していてもよい置換基として、例えば、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基など)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、アルキル基(例えば、メチル、エチル基などのC1-4アルキル基など)、シクロアルキル基、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル基など)、複素環基などが例示できる。好ましい炭化水素基には、炭素数1〜30程度のアルキル基、炭素数6〜14程度の芳香族炭化水素基(特に、フェニル基又はナフチル基)などが含まれる。前記置換オキシ基には、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基などが含まれる。
【0045】
前記有機塩の代表的な例として、有機アンモニウム塩、有機ホスホニウム塩、有機スルホニウム塩などの有機オニウム塩が挙げられる。有機アンモニウム塩の具体例としては、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラヘキシルアンモニウムクロリド、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、トリエチルフェニルアンモニウムクロリド、トリブチル(ヘキサデシル)アンモニウムクロリド、ジ(オクタデシル)ジメチルアンモニウムクロリドなどの第4級アンモニウムクロリド、及び対応する第4級アンモニウムブロミドなどの、窒素原子に4つの炭化水素基が結合した第4級アンモニウム塩;ジメチルピペリジニウムクロリド、ヘキサデシルピリジニウムクロリド、メチルキノリニウムクロリドなどの環状第4級アンモニウム塩などが挙げられる。また、有機ホスホニウム塩の具体例としては、テトラメチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムクロリド、トリブチル(ヘキサデシル)ホスホニウムクロリド、トリエチルフェニルホスホニウムクロリドなどの第4級ホスホニウムクロリド、及び対応する第4級ホスホニウムブロミドなどの、リン原子に4つの炭化水素基が結合した第4級ホスホニウム塩などが挙げられる。有機スルホニウム塩の具体例としては、トリエチルスルホニウムイオジド、エチルジフェニルスルホニウムイオジドなどの、イオウ原子に3つの炭化水素基が結合したスルホニウム塩などが挙げられる。
【0046】
また、前記有機塩には、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、オクタンスルホン酸塩、ドデカンスルホン酸塩などのアルキルスルホン酸塩(例えば、C1-18アルキルスルホン酸塩);ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、デシルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩などのアルキル基で置換されていてもよいアリールスルホン酸塩(例えば、C1-18アルキル−アリールスルホン酸塩);スルホン酸型イオン交換樹脂(イオン交換体);ホスホン酸型イオン交換樹脂(イオン交換体)なども含まれる。
【0047】
前記有機塩の使用量は、例えば、第2級アルコール(A)1モルに対して、0.000001〜0.1モル程度、好ましくは0.00001〜0.01モル程度である。また、前記有機塩の使用量は、前記イミド化合物1モルに対して、例えば0.001〜0.1モル程度、好ましくは0.005〜0.08モル程度である。
【0048】
[(A)第2級アルコール]
第2級アルコールには、広範囲のアルコールが含まれる。アルコールは、1価、2価又は多価アルコールの何れであってもよく、反応を阻害しない範囲で種々の置換基を有していてもよい。置換基として、例えば、ハロゲン原子、メルカプト基、オキソ基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アルールオキシ基、アシルオキシ基など)、置換チオ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、スルホ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環基などが挙げられる。
【0049】
代表的な第2級アルコール(A)としては、2−プロパノール、s−ブチルアルコール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−オクタノール、4−デカノール、2−ヘキサデカノール、2−ペンテン−4−オール、1,2−プロパンジオール、2,3−ブタンジオールや2,3−ペンタンジオールなどのビシナルジオール類などの炭素数3〜30(好ましくは3〜20、さらに好ましくは3〜15)程度の飽和又は不飽和脂肪族第2級アルコール;1−シクロペンチルエタノール、1−シクロヘキシルエタノールなどの、ヒドロキシル基の結合した炭素原子に脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素(シクロアルキル基など)とが結合している第2級アルコール;シクロブタノール、シクロペンタノール、1,3−シクロペンタンジオール、シクロヘキサノール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサン−1−オール−2−オン、シクロヘキサン−1−オール−3−オン、シクロヘキサン−1−オール−4−オン、シクロオクタノール、シクロドデカノール、2−シクロヘキセン−1−オール、2−アダマンタノール、橋頭位にヒドロキシル基を1〜4個有する2−アダマンタノール、アダマンタン環にオキソ基を有する2−アダマンタノールなどの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜15員、特に5〜8員)程度の飽和又は不飽和脂環式第2級アルコール(橋かけ環式第2級アルコールを含む);1−フェニルエタノール、1−フェニルプロパノール、1−フェニルメチルエタノール、ジフェニルメタノールなどの芳香族第2級アルコール;1−(2−ピリジル)エタノールなどの複素環式第2級アルコールなどが含まれる。
【0050】
好ましいアルコールには、飽和又は不飽和脂環式第2級アルコール、多価の第2級アルコール、又はオキソ基を有する第2級アルコールなどが含まれる。特に、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオールなどのシクロアルカンジオールや、シクロヘキサン−1−オール−3−オン、シクロヘキサン−1−オール−4−オンなどのヒドロキシシクロアルカノンなどを用いる場合、極めて大きな効果が得られる。
【0051】
[(B)酸素]
酸素は、分子状酸素、活性酸素の何れであってもよい。分子状酸素は、特に制限されず、純粋な酸素を用いてもよく、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素などの不活性ガスで希釈した酸素や空気を使用してもよい。酸素として分子状酸素を用いる場合が多い。
【0052】
[反応]
反応は溶媒の存在下又は非存在下で行われる。溶媒としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類;ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ニトロベンゼン、ニトロメタン、ニトロエタンなどのニトロ化合物;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;水;これらの混合溶媒などが挙げられる。溶媒としては、酢酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸類、アセトニトリルやベンゾニトリルなどのニトリル類、トリフルオロメチルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、酢酸エチルなどのエステル類などを用いる場合が多い。
【0053】
酸素の使用量は、反応性や操作性等を考慮して適宜選択でき、例えば、第2級アルコール1モルに対して0.5モル以上(例えば、1モル以上)、好ましくは1〜100モル、さらに好ましくは2〜50モル程度である。第2級アルコールに対して過剰モルの酸素を使用する場合が多い。
【0054】
反応温度は、第2級アルコール(A)の種類等に応じて適当に選択できる。反応温度は、例えば、0〜200℃、好ましくは20〜150℃、さらに好ましくは30〜100℃程度である。
【0055】
反応圧力は、常圧、加圧下の何れであってもよい。加圧下で行う場合には、通常、0.1〜10MPa、好ましくは0.2〜7MPa程度である。反応は、回分式、半回分式、連続式などの慣用の方法により行うことができる。
【0056】
反応により、原料の第2級アルコールに対応するケトンが生成する。また、多価の第2級アルコールやオキソ基を有する第2級アルコールからはポリケトンが得られる。より具体的には、シクロアルカンジオールやヒドロキシシクロアルカノンからシクロアルカン−ポリオンが得られる。
【0057】
反応終了後、反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、吸着、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段やこれらを組合せることにより分離精製できる。
【0058】
この方法によれば、温和な条件下、第2級アルコールから対応するケトンを収率よく得ることができる。
特に、シクロアルカンジオールなどの多価の第2級アルコールからシクロアルカンジオンなどのポリケトンを得ようとする場合には、第2番目以降の第2級アルコールも速やかに酸化されて、シクロアルカンジオンなどのポリケトンを収率よく得ることができる。
【0059】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、特定構造のイミド化合物触媒と、反応促進剤として芳香族カルボン酸若しくはその塩、又は芳香族アルデヒドとを組合せて用いるので、第2級アルコールからケトンを温和な条件で、しかも効率よく製造することができる。また、シクロアルカンジオールやヒドロキシシクロアルカノンからシクロアルカン−ポリオンを収率よく得ることができる。
【0060】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0061】
実施例1
1,4−シクロヘキサンジオール4ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド0.8ミリモル、酢酸コバルト(II)四水和物0.04ミリモル、安息香酸0.2ミリモル、アセトニトリル8mLの混合物を、酸素雰囲気下(0.1MPa)、65℃で20時間攪拌した。反応混合物をガスクロマトグラフィ−で分析したところ、1,4−シクロヘキサンジオンが収率66%、シクロヘキサン−1−オール−4−オンが収率15%で得られた。1,4−シクロヘキサンジオールの転化率は100%であった。
【0062】
実施例2
安息香酸の使用量を0.4ミリモルとする以外、実施例1と同様に反応させたところ、1,4−シクロヘキサンジオンが収率51%、シクロヘキサン−1−オール−4−オンが収率26%で得られた。1,4−シクロヘキサンジオールの転化率は100%であった。
【0063】
実施例3
安息香酸の使用量を0.1ミリモルとする以外、実施例1と同様に反応させたところ、1,4−シクロヘキサンジオンが収率45%、シクロヘキサン−1−オール−4−オンが収率40%で得られた。1,4−シクロヘキサンジオールの転化率は95%であった。
【0064】
実施例4
実施例1において、安息香酸の代わりに、o−クロロ安息香酸を用いる以外は、実施例1と同様に反応させたところ、1,4−シクロヘキサンジオンが収率52%、シクロヘキサン−1−オール−4−オンが収率26%で得られた。1,4−シクロヘキサンジオールの転化率は100%であった。
【0065】
実施例5
実施例1において、安息香酸の代わりに、p−クロロ安息香酸を用いる以外は、実施例1と同様に反応させたところ、1,4−シクロヘキサンジオンが収率61%、シクロヘキサン−1−オール−4−オンが収率27%で得られた。1,4−シクロヘキサンジオールの転化率は100%であった。
【0066】
実施例6
実施例1において、安息香酸の代わりに、2,4−ジクロロ安息香酸を用いる以外は、実施例1と同様に反応させたところ、1,4−シクロヘキサンジオンが収率54%、シクロヘキサン−1−オール−4−オンが収率33%で得られた。1,4−シクロヘキサンジオールの転化率は100%であった。
実施例7
実施例1において、安息香酸の代わりに、ベンズアルデヒドを用いる以外は、実施例1と同様に反応させたところ、1,4−シクロヘキサンジオンが収率62%、シクロヘキサン−1−オール−4−オンが収率21%で得られた。1,4−シクロヘキサンジオールの転化率は100%であった。
【0067】
実施例8
実施例1において、酢酸コバルト(II)四水和物の代わりに、コバルト(II)アセチルアセトナトを用いる以外は、実施例1と同様に反応させたところ、1,4−シクロヘキサンジオンが収率64%、シクロヘキサン−1−オール−4−オンが収率18%で得られた。1,4−シクロヘキサンジオールの転化率は100%であった。
【0068】
比較例1
安息香酸を添加しなかった点以外は実施例1と同様に反応させたところ、1,4−シクロヘキサンジオンが収率22%、シクロヘキサン−1−オール−4−オンが収率75%で得られた。1,4−シクロヘキサンジオールの転化率は92%であった。
【0069】
比較例2
比較例1において、酢酸コバルト(II)四水和物の代わりに、コバルト(II)アセチルアセトナトを用いる以外は、比較例1と同様に反応させたところ、1,4−シクロヘキサンジオンが収率27%、シクロヘキサン−1−オール−4−オンが収率67%で得られた。1,4−シクロヘキサンジオールの転化率は95%であった。
【0070】
実施例9
実施例1において、1,4−シクロヘキサンジオールの代わりにシクロヘキサン−1−オール−4−オンを用い、攪拌時間を6時間とした以外は、実施例1と同様に反応させたところ、1,4−シクロヘキサンジオンが収率44%で得られた。シクロヘキサン−1−オール−4−オンの転化率は50%であった。
【0071】
実施例10
実施例9において、酢酸コバルト(II)四水和物の代わりに、コバルト(II)アセチルアセトナトを用いる以外は、実施例9と同様に反応させたところ、1,4−シクロヘキサンジオンが収率41%で得られた。シクロヘキサン−1−オール−4−オンの転化率は47%であった。
【0072】
比較例3
安息香酸を添加しなかった点と攪拌時間を20時間とした以外は実施例9と同様に反応させた。反応混合物をガスクロマトグラフィ−で分析したところ、反応は進行していなかった。
【0073】
比較例4
安息香酸を添加しなかった点と攪拌時間を20時間とした以外は実施例10と同様に反応させた。反応混合物をガスクロマトグラフィ−で分析したところ、反応は進行していなかった。
以上の結果を表1にまとめて示す。
【表1】
Claims (8)
- (i')下記式(I’)
で表される環状イミド骨格を有するイミド化合物を触媒とし、
(A’)多価の第2級アルコール又はオキソ基を有する第2級アルコールと
(B)酸素とを反応させて、
対応するポリケトンを製造する方法であって、
反応系に、
(ii)芳香族カルボン酸又はその塩、及び芳香族アルデヒドより選ばれた少なくとも一つの反応促進剤を共存させ、
金属化合物を(iii)助触媒として用いることを特徴とするケトンの製造方法。 - イミド化合物(i')が、下記式(1’)
で表される化合物である請求項1記載のケトンの製造方法。 - 反応促進剤(ii)が安息香酸又はその塩、及びベンズアルデヒドより選ばれた少なくとも一つの化合物である請求項2記載のケトンの製造方法。
- 反応促進剤(ii)の使用量が、第2級アルコール(A’)1モルに対して0.0001〜0.2モルである請求項3記載のケトンの製造方法。
- 第2級アルコール(A’)が、飽和又は不飽和脂環式第2級アルコールである請求項4記載のケトンの製造方法。
- 第2級アルコール(A’)がシクロアルカンジオール又はヒドロキシシクロアルカノンである請求項5記載のケトンの製造方法。
- イミド化合物(i')の使用量が、第2級アルコール(A’)1モルに対して0.001〜0.35モルである請求項6記載のケトンの製造方法。
- 前記金属化合物の使用量が、第2級アルコール(A’)1モルに対して0.005〜0.08モルである請求項7記載のケトンの製造方法。
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