JPH11349493A - 有機基質の酸化方法 - Google Patents

有機基質の酸化方法

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JPH11349493A
JPH11349493A JP17059098A JP17059098A JPH11349493A JP H11349493 A JPH11349493 A JP H11349493A JP 17059098 A JP17059098 A JP 17059098A JP 17059098 A JP17059098 A JP 17059098A JP H11349493 A JPH11349493 A JP H11349493A
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group
compound
aromatic
organic substrate
ring
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JP17059098A
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English (en)
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Narihisa Hirai
成尚 平井
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Daicel Corp
Original Assignee
Daicel Chemical Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 触媒として用いるイミド化合物の失活を抑制
できる有機基質の酸化方法を提供する。 【解決手段】 有機基質の酸化方法は、N−ヒドロキシ
フタルイミドなどのイミド化合物、又は前記イミド化合
物と金属化合物の存在下、有機基質を分子状酸素により
酸化して対応する酸化生成物を得る方法であって、有機
溶媒中、反応温度10〜85℃、金属化合物の量が有機
基質に対して0〜0.28モル%の条件下で有機基質と
酸素とを接触させる。有機基質として、不飽和結合に隣
接する部位に炭素−水素結合を有する化合物、メチン炭
素原子を有する化合物、非芳香族性環状炭化水素などを
使用できる。有機溶媒には、カルボン酸類、ニトリル
類、ハロゲン化炭化水素などが含まれる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、メチン炭素原子を
有する化合物や非芳香族性環状炭化水素などを酸化し
て、対応するアルコール類、カルボニル化合物、カルボ
ン酸類などを生成させる有機基質の酸化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】酸化反応は、有機化学工業における最も
基本的な反応の一つであるため、種々の酸化法が開発さ
れている。資源及び環境上の観点から、好ましい酸化方
法は、分子状酸素又は空気を酸化剤として直接利用する
触媒的な酸化法である。しかし、触媒的な酸化法では、
通常、酸素を活性化するために高温や高圧を必要とした
り、温和な条件で反応させるためにはアルデヒドなどの
還元剤の共存下で反応させる必要がある。そのため、触
媒的酸化法を用いて、温和な条件下で、アルコール類、
カルボニル化合物やカルボン酸を簡易に且つ効率よく製
造することは困難であった。
【0003】特開平8−38909号公報及び特開平9
−327626号公報には、分子状酸素により有機基質
を酸化するための触媒として、特定の構造を有するイミ
ド化合物、又は前記イミド化合物と遷移金属化合物など
とで構成された酸化触媒が提案されている。この触媒を
用いると、比較的温和な条件下で有機基質を酸化でき、
アルコール類などの酸化生成物を良好な収率で製造する
ことができる。また、特開平9−143109号公報に
は、シクロアルカン、コバルト化合物及びN−ヒドロキ
シジカルボキシイミドからなる溶液を分子状酸素と接触
させてシクロアルカンを酸化して、シクロアルキルヒド
ロペルオキシド、シクロアルカノール及びシクロアルカ
ノンの混合物を製造する方法が開示されている。しか
し、これらの文献の実施例に記載されている条件で反応
を行うと、触媒として用いるイミド化合物が反応中に変
質又は分解して失活するため、触媒を繰り返し使用でき
ない。そのため、目的酸化生成物の製造コストが高くな
るという問題を有する。例えば、前記特開平9−143
109号公報の実施例では、反応をすべて160℃の条
件で行っているが、この条件では、1回のバッチ式反応
で、イミド化合物の約80%以上が分解する。また、上
記文献の実施例記載の条件下では、アルコール類やカル
ボニル化合物などの低次酸化生成物を高い選択率及び収
率で得ることが困難である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、触媒として用いるイミド化合物の失活を抑制できる
有機基質の酸化方法を提供することにある。本発明の他
の目的は、アルコール類やカルボニル化合物などの低次
酸化生成物を、高い選択率及び収率で得ることのできる
有機基質の酸化方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、前記目的を
達成するため鋭意検討した結果、特定の条件下で有機基
質と酸素とを接触させると、触媒として用いるイミド化
合物の変質や分解を著しく抑制できるとともに、低次酸
化生成物を効率よく製造できることを見出し、本発明を
完成した。
【0006】すなわち、本発明は、下記式(1)
【化2】 (式中、R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、
ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキ
ル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル
基、アルコキシカルボニル基、アシル基を示し、R1
びR2は互いに結合して二重結合、又は芳香族性若しく
は非芳香族性の環を形成してもよい。Xは酸素原子又は
ヒドロキシル基を示し、nは1〜3の整数を示す)で表
されるイミド化合物、又は前記イミド化合物と金属化合
物の存在下、有機基質を分子状酸素により酸化して対応
する酸化生成物を得る方法であって、有機溶媒中、反応
温度10〜85℃、金属化合物の量が有機基質に対して
0〜0.28モル%の条件下で有機基質と酸素とを接触
させる有機基質の酸化方法を提供する。
【0007】
【発明の実施の形態】[イミド化合物]酸化触媒として
用いる前記式(1)で表されるイミド化合物において、
置換基R1及びR2のうちハロゲン原子には、ヨウ素、臭
素、塩素およびフッ素原子が含まれる。アルキル基に
は、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピ
ル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペ
ンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル基など
の炭素数1〜10程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基
が含まれる。好ましいアルキル基としては、例えば炭素
数1〜6程度、特に炭素数1〜4程度の低級アルキル基
が挙げられる。
【0008】アリール基には、フェニル、ナフチル基な
どが含まれ、シクロアルキル基には、シクロペンチル、
シクロヘキシル基などが含まれる。アルコキシ基には、
例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポ
キシ、ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ、ペンチ
ルオキシ、ヘキシルオキシ基などの炭素数1〜10程
度、好ましくは炭素数1〜6程度、特に炭素数1〜4程
度の低級アルコキシ基が含まれる。
【0009】アルコキシカルボニル基には、例えば、メ
トキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカ
ルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボ
ニル、イソブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニ
ル、ペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボ
ニル基などのアルコキシ部分の炭素数が1〜10程度の
アルコキシカルボニル基が含まれる。好ましいアルコキ
シカルボニル基にはアルコキシ部分の炭素数が1〜6程
度、特に1〜4程度の低級アルコキシカルボニル基が含
まれる。
【0010】アシル基としては、例えば、ホルミル、ア
セチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレ
リル、イソバレリル、ピバロイル基などの炭素数1〜6
程度のアシル基が例示できる。
【0011】前記置換基R1及びR2は、同一又は異なっ
ていてもよい。また、前記式(1)において、R1及び
2は互いに結合して、二重結合、又は芳香族性若しく
は非芳香属性の環を形成してもよい。好ましい芳香族性
又は非芳香族性環は5〜12員環、特に6〜10員環程
度であり、複素環又は縮合複素環であってもよいが、炭
化水素環である場合が多い。このような環には、例え
ば、非芳香族性脂環式環(シクロヘキサン環などの置換
基を有していてもよいシクロアルカン環、シクロヘキセ
ン環などの置換基を有していてもよいシクロアルケン環
など)、非芳香族性橋かけ環(5−ノルボルネン環など
の置換基を有していてもよい橋かけ式炭化水素環な
ど)、ベンゼン環、ナフタレン環などの置換基を有して
いてもよい芳香族環(縮合環を含む)が含まれる。前記
環は芳香族環で構成される場合が多い。
【0012】前記環は、アルキル基、ハロアルキル基、
ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アル
コキシカルボニル基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、
置換又は無置換アミノ基、ハロゲン原子などの置換基を
有していてもよい。アルキル基には、前記例示のアルキ
ル基と同様のアルキル基、特に炭素数1〜6程度のアル
キル基が含まれ、ハロアルキル基には、トリフルオロメ
チル基などの炭素数1〜4程度のハロアルキル基、アル
コキシ基には、前記と同様のアルコキシ基、特に炭素数
1〜4程度の低級アルコキシ基、アルコキシカルボニル
基には、前記と同様のアルコキシカルボニル基、特にア
ルコキシ部分の炭素数が1〜4程度の低級アルコキシカ
ルボニル基が含まれる。また、アシル基としては、前記
と同様のアシル基、特に炭素数1〜6程度のアシル基が
例示され、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素
原子が例示できる。
【0013】好ましいイミド化合物には、下記式で表さ
れる化合物が含まれる。
【化3】 (式中、R3〜R6は、同一又は異なって、水素原子、ア
ルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキ
シ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシ
ル基、ニトロ基、シアノ基、置換又は無置換アミノ基、
ハロゲン原子を示す。R3〜R6は、隣接する基同士が互
いに結合して芳香族性又は非芳香族性の環を形成してい
てもよい。R1、R2およびnは前記に同じ) 置換基R3〜R6において、アルキル基、ハロアルキル
基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル
基、ハロゲン原子には、前記R1及びR2が互いに結合し
て形成する環が有していてもよい置換基と同様の置換基
が含まれる。置換基R3〜R6は、通常、水素原子、炭素
数1〜4程度の低級アルキル基、カルボキシル基、ニト
ロ基、ハロゲン原子である場合が多い。R3〜R6が互い
に結合して形成する環としては、前記R1及びR2が互い
に結合して形成する環と同様の環が含まれ、特に芳香族
性又は非芳香族性の5〜12員環が好ましい。
【0014】前記式(1)において、Xは酸素原子又は
ヒドロキシル基を示し、窒素原子NとXとの結合は単結
合又は二重結合である。nは、通常、1〜3程度、好ま
しくは1又は2である。式(1)で表される化合物は酸
化反応において一種又は二種以上使用できる。
【0015】前記式(1)で表されるイミド化合物は、
慣用のイミド化反応、例えば、対応する酸無水物とヒド
ロキシルアミンNH2OHとを反応させ、酸無水物基の
開環及び閉環を経てイミド化する方法により調製でき
る。前記イミド化合物に対応する酸無水物には、例え
ば、無水コハク酸、無水マレイン酸などの飽和又は不飽
和脂肪族ジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル
酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸(1,2−シクロヘキサ
ンジカルボン酸無水物)、1,2,3,4−シクロヘキ
サンテトラカルボン酸1,2−無水物などの飽和又は不
飽和非芳香族性環状多価カルボン酸無水物(脂環式多価
カルボン酸無水物)、無水ヘット酸、無水ハイミック酸
などの橋かけ環式多価カルボン酸無水物(脂環式多価カ
ルボン酸無水物)、無水フタル酸、テトラブロモ無水フ
タル酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水ニトロフタル
酸、無水トリメット酸、メチルシクロヘキセントリカル
ボン酸無水物、無水ピロメリット酸、無水メリト酸、
1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物
などの芳香族多価カルボン酸無水物が含まれる。
【0016】好ましいイミド化合物としては、例えば、
N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシマレイ
ン酸イミド、N−ヒドロキシヘキサヒドロフタル酸イミ
ド、N,N′−ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカル
ボン酸イミド、N−ヒドロキシフタル酸イミド、N−ヒ
ドロキシテトラブロモフタル酸イミド、N−ヒドロキシ
テトラクロロフタル酸イミド、N−ヒドロキシヘット酸
イミド、N−ヒドロキシハイミック酸イミド、N−ヒド
ロキシトリメリット酸イミド、N,N′−ジヒドロキシ
ピロメリット酸イミド、N,N′−ジヒドロキシナフタ
レンテトラカルボン酸イミドなどが挙げられる。特に好
ましい化合物は、脂環式多価カルボン酸無水物又は芳香
族多価カルボン酸無水物、なかでも芳香族多価カルボン
酸無水物から誘導されるN−ヒドロキシイミド化合物、
例えば、N−ヒドロキシフタル酸イミドなどが含まれ
る。
【0017】[金属化合物]本発明では、酸化触媒とし
て、前記イミド化合物と金属化合物とを組み合わせて用
いてもよい。この金属化合物は前記イミド化合物の助触
媒として作用する。前記イミド化合物と金属化合物とを
併用することにより、反応速度や反応の選択性を向上さ
せることができる。
【0018】前記金属化合物を構成する金属元素として
は、特に限定されず、周期表1〜15族の金属元素の何
れであってもよい。なお、本明細書では、ホウ素Bも金
属元素に含まれるものとする。例えば、前記金属元素と
して、周期表1族元素(Li、Na、Kなど)、2族元
素(Mg、Ca、Sr、Baなど)、3族元素(Sc、
ランタノイド元素、アクチノイド元素など)、4族元素
(Ti、Zr、Hfなど)、5族元素(Vなど)、6族
元素(Cr、Mo、Wなど)、7族元素(Mnなど)、
8族元素(Fe、Ruなど)、9族元素(Co、Rhな
ど)、10族元素(Ni、Pd、Ptなど)、11族元
素(Cuなど)、12族元素(Znなど)、13族元素
(B、Al、Inなど)、14族元素(Sn、Pbな
ど)、15族元素(Sb、Biなど)などが挙げられ
る。好ましい金属元素には、遷移金属元素(周期表3〜
12族元素)が含まれる。なかでも、周期表5〜11族
元素、特に、5族、6族、7族及び9族元素が好まし
く、とりわけ、V、Mo、Co、Mnなどが好ましい。
金属元素の原子価は特に制限されないが、0〜6価程度
である場合が多い。
【0019】金属化合物としては、前記金属元素の単
体、水酸化物、酸化物(複合酸化物を含む)、ハロゲン
化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、オキソ
酸、オキソ酸塩(例えば、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、
ホウ酸塩、炭酸塩など)、イソポリ酸、ヘテロポリ酸な
どの無機化合物;有機酸塩(例えば、酢酸塩、プロピオ
ン酸塩、青酸塩、ナフテン酸塩、ステアリン酸塩な
ど)、錯体などの有機化合物が挙げられる。前記錯体を
構成する配位子としては、OH(ヒドロキソ)、アルコ
キシ(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシな
ど)、アシル(アセチル、プロピオニルなど)、アルコ
キシカルボニル(メトキシカルボニル、エトキシカルボ
ニルなど)、アセチルアセトナト、シクロペンタジエニ
ル基、ハロゲン原子(塩素、臭素など)、CO、CN、
酸素原子、H2O(アコ)、ホスフィン(トリフェニル
ホスフィンなどのトリアリールホスフィンなど)のリン
化合物、NH3(アンミン)、NO、NO2(ニトロ)、
NO3(ニトラト)、エチレンジアミン、ジエチレント
リアミン、ピリジン、フェナントロリンなどの窒素含有
化合物などが挙げられる。
【0020】金属化合物の具体例としては、例えば、コ
バルト化合物を例にとると、水酸化コバルト、酸化コバ
ルト、塩化コバルト、臭化コバルト、硝酸コバルト、硫
酸コバルト、リン酸コバルトなどの無機化合物;酢酸コ
バルト、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルトな
どの有機酸塩;コバルトアセチルアセトナトなどの錯体
等の2価又は3価のコバルト化合物などが挙げられる。
また、バナジウム化合物の例としては、水酸化バナジウ
ム、酸化バナジウム、塩化バナジウム、塩化バナジル、
硫酸バナジウム、硫酸バナジル、バナジン酸ナトリウム
などの無機化合物;バナジウムアセチルアセトナト、バ
ナジルアセチルアセトナトなどの錯体等の2〜5価のバ
ナジウム化合物などが挙げられる。さらに、モリブデン
化合物の例としては、水酸化モリブデン、酸化モリブデ
ン、塩化モリブデン、臭化モリブデン、硫化モリブデ
ン、モリブデン酸又はその塩、リンモリブデン酸又はそ
の塩、ケイモリブデン酸又はその塩などの無機化合物;
モリブデンカルボニル、ビス(アセチルアセトナト)ジ
オキソモリブデン、クロロトリカルボニル(η−シクロ
ペンタジエニル)モリブデン、ジブロモビス(η−シク
ロペンタジエニルモリブデンなどの錯体等の0〜6価の
モリブデン化合物などが挙げられる。他の金属元素の化
合物としては、前記コバルト、バナジウム又はモリブデ
ン化合物に対応する化合物などが例示される。金属化合
物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0021】[有機基質]本発明において、有機基質に
は、分子状酸素により酸化されうる種々の被酸化性化合
物が含まれる。有機基質として、例えば、(a)不飽和
結合に隣接する部位に炭素−水素結合を有する化合物、
(b)メチン炭素原子を有する化合物、(c)非芳香族
性環状炭化水素、(d)ヘテロ原子の隣接位に炭素−水
素結合を有する非芳香族性複素環化合物、(e)共役化
合物、(f)アルコール又はチオール類、(g)エーテ
ル又はチオエーテル類、(h)アルデヒド又はチオアル
デド類、(i)アミン類及び(j)芳香族炭化水素から
なる群から選択された少なくとも1種の化合物を使用で
きる。これらの化合物は、種々の置換基、例えば、ハロ
ゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、
置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ
基、アシルオキシ基など)、置換チオ基、カルボキシル
基、置換オキシカルボニル基、置換又は無置換カルバモ
イル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ
基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロ
アルキル基、シクロアルケニル基、アリール基(例え
ば、フェニル、ナフチル基など)、アラルキル基、複素
環基などを有していてもよい。
【0022】(a)不飽和結合に隣接する部位に炭素−
水素結合を有する化合物 不飽和結合に隣接する部位に炭素−水素結合を有する化
合物(a)としては、(a1)芳香族性環の隣接位(いわ
ゆるベンジル位)にメチル基又はメチレン基を有する芳
香族化合物、(a2)不飽和結合(例えば、炭素−炭素不
飽和結合、炭素−酸素二重結合など)の隣接位にメチル
基又はメチレン基を有する非芳香族性化合物などが挙げ
られる。
【0023】前記芳香族性化合物(a1)において、芳香
族性環は、芳香族炭化水素環、芳香族性複素環の何れで
あってもよい。芳香族炭化水素環には、ベンゼン環、縮
合炭素環(例えば、ナフタレン、アズレン、インダセ
ン、アントラセン、フェナントレン、トリフェニレン、
ピレンなどの2〜10個の4〜7員炭素環が縮合した縮
合炭素環など)などが含まれる。芳香族性複素環として
は、例えば、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環
(例えば、フラン、オキサゾール、イソオキサゾールな
どの5員環、4−オキソ−4H−ピランなどの6員環、
ベンゾフラン、イソベンゾフラン、4−オキソ−4H−
クロメンなどの縮合環など)、ヘテロ原子としてイオウ
原子を含む複素環(例えば、チオフェン、チアゾール、
イソチアゾール、チアジアゾールなどの5員環、4−オ
キソ−4H−チオピランなどの6員環、ベンゾチオフェ
ンなどの縮合環など)、ヘテロ原子として窒素原子を含
む複素環(例えば、ピロール、ピラゾール、イミダゾー
ル、トリアゾールなどの5員環、ピリジン、ピリダジ
ン、ピリミジン、ピラジンなどの6員環、インドール、
キノリン、アクリジン、ナフチリジン、キナゾリン、プ
リンなどの縮合環など)などが挙げられる。
【0024】なお、芳香族性環の隣接位のメチレン基
は、前記芳香族性環に縮合した非芳香族性環を構成する
メチレン基であってもよい。また、芳香族性化合物(a
1)において、芳香族性環と隣接する位置にメチル基と
メチレン基の両方の基が存在していてもよい。
【0025】芳香族性環の隣接位にメチル基を有する芳
香族化合物としては、例えば、芳香環に1〜6個程度の
メチル基が置換した芳香族炭化水素類(例えば、トルエ
ン、キシレン、1−エチル−4−メチルベンゼン、1−
エチル−3−メチルベンゼン、1−t−ブチル−4−メ
チルベンゼン、1−メトキシ−4−メチルベンゼン、メ
シチレン、デュレン、メチルナフタレン、メチルアント
ラセン、4,4′−ジメチルビフェニルなど)、複素環
に1〜6個程度のメチル基が置換した複素環化合物(例
えば、2−メチルフラン、3−メチルフラン、3−メチ
ルチオフェン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジ
ン、4−メチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、
2,4,6−トリメチルピリジン、4−メチルインドー
ル、2−メチルキノリンなど)などが例示できる。
【0026】芳香族性環の隣接位にメチレン基を有する
芳香族化合物としては、例えば、炭素数2以上のアルキ
ル基又は置換アルキル基を有する芳香族炭化水素類(例
えば、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、1,4−ジ
エチルベンゼン、ジフェニルメタンなど)、炭素数2以
上のアルキル基又は置換アルキル基を有する芳香族性複
素環化合物(例えば、2−エチルフラン、3−プロピル
チオフェン、4−エチルピリジン、4−ブチルキノリン
など)、芳香族性環に非芳香族性環が縮合した化合物で
あって、該非芳香族性環のうち芳香族性環に隣接する部
位にメチレン基を有する化合物(ジヒドロナフタレン、
インデン、インダン、テトラリン、フルオレン、アセナ
フテン、フェナレン、インダノン、キサンテン等)など
が例示できる。
【0027】不飽和結合の隣接位にメチル基又はメチレ
ン基を有する非芳香族性化合物(a2)には、例えば、
(a2-1)いわゆるアリル位にメチル基又はメチレン基を
有する鎖状不飽和炭化水素類、(a2-2)カルボニル基の
隣接位にメチル基又はメチレン基を有する化合物が例示
できる。
【0028】前記鎖状不飽和炭化水素類(a2-1)として
は、例えば、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、1
−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、1,5−ヘ
キサジエン、1−オクテン、3−オクテン、ウンデカト
リエンなどの炭素数3〜20程度の鎖状不飽和炭化水素
類が例示できる。前記化合物(a2-2)には、ケトン類
(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、3−ペンタ
ノン、アセトフェノンなどの鎖状ケトン類;シクロヘキ
サノンなどの環状ケトン類)、カルボン酸又はその誘導
体(例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン
酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、フェニル酢酸、マロン
酸、コハク酸、グルタル酸、及びこれらのエステルな
ど)などが含まれる。
【0029】不飽和結合に隣接する部位に炭素−水素結
合を有する化合物(a)を、前記酸化触媒の存在下、分
子状酸素により酸化すると、不飽和結合に隣接する部位
が効率よく酸化されて、アルコール、カルボニル化合物
又はカルボン酸が生成する。例えば、不飽和結合に隣接
する部位にメチル基を有する化合物からは、第1級アル
コール類、アルデヒド類又はカルボン酸類を高い収率で
得ることができる。具体的には、例えば、トルエンから
は安息香酸などが収率よく得られる。また、不飽和結合
に隣接する部位にメチレン基を有する化合物からは、第
2級アルコール類又はケトン類、特にケトン類を高収率
で得ることができる。例えば、テトラリンを酸化する
と、主としてα−テトラロンが生成し、フルオレンを酸
化するとフルオレノンが生成する。さらに、ケトン類を
酸化すると、開裂して、アルデヒド又はカルボン酸が生
成する場合が多い。例えば、シクロヘキサノンなどの環
状ケトン類を基質として用いると、例えばアジピン酸な
どのジカルボン酸が得られる。また、条件により、環状
ケトン類から対応するラクトン類を得ることもできる。
【0030】なお、前記鎖状不飽和炭化水素類(a2-1)
などのように、炭素−炭素二重結合を有する化合物を酸
化すると、酸化条件により、炭素−炭素二重結合に酸素
が導入されて、対応するエポキシ化合物が得られる場合
がある。
【0031】(b)メチン炭素原子を有する化合物 メチン炭素原子(又は第3級炭素原子)を有する化合物
(b)には、(b1)環の構成単位としてメチン基(すな
わち、メチン炭素−水素結合)を含む環状化合物、(b
2)メチン炭素原子を有する鎖状化合物が含まれる。
【0032】環状化合物(b1)には、(b1-1)少なくと
も1つのメチン基を有する橋かけ環式化合物、(b1-2)
環に炭化水素基が結合した非芳香族性環状化合物(脂環
式炭化水素など)などが含まれる。なお、前記橋かけ環
式化合物には、2つの環が2個の炭素原子を共有してい
る化合物、例えば、縮合多環式芳香族炭化水素類の水素
添加生成物なども含まれる。
【0033】橋かけ環式化合物(b1-1)としては、例え
ば、デカリン、ビシクロ[2.2.0]ヘキサン、ビシ
クロ[2.2.2]オクタン、ビシクロ[3.2.1]
オクタン、ビシクロ[4.3.2]ウンデカン、ツジョ
ン、カラン、ピナン、ピネン、ボルナン、ボルニレン、
ノルボルナン、ノルボルネン、カンファー、ショウノウ
酸、カンフェン、トリシクレン、トリシクロ[4.3.
1.12,5]ウンデカン、トリシクロ[5.2.1.0
3,8]デカン、エキソトリシクロ[5.2.1.02,6
デカン、エンドトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ
ン、エンドトリシクロ[5.2.2.02,6]ウンデカ
ン、アダマンタン、1−アダマンタノール、1−クロロ
アダマンタン、1−メチルアダマンタン、1,3−ジメ
チルアダマンタン、1−メトキシアダマンタン、1−カ
ルボキシアダマンタン、1−メトキシカルボニルアダマ
ンタン、1−ニトロアダマンタン、テトラシクロ[4.
4.0.12,5.17,10]ドデカン、ペルヒドロアント
ラセン、ペルヒドロアセナフテン、ペルヒドロフェナン
トレン、ペルヒドロフルオレン、ペルヒドロフェナレ
ン、ペルヒドロインデン、キヌクリジンなどの2〜4環
式の橋かけ環式炭化水素又は橋かけ複素環化合物及びそ
れらの誘導体などが挙げられる。これらの橋かけ環式化
合物は、橋頭位(2環が2個の原子を共有している場合
には接合部位に相当)にメチン炭素原子を有する。
【0034】環に炭化水素基が結合した非芳香族性環状
化合物(b1-2)としては、1−メチルシクロペンタン、
1−メチルシクロヘキサン、リモネン、メンテン、メン
トール、カルボメントン、メントンなどの、炭素数1〜
20(好ましくは1〜10)程度の炭化水素基(例え
ば、アルキル基など)が環に結合した3〜15員程度の
脂環式炭化水素及びその誘導体などが挙げられる。環に
炭化水素基が結合した非芳香族性環状化合物(b1-2)
は、環と前記炭化水素基との結合部位にメチン炭素原子
を有する。
【0035】メチン炭素原子を有する鎖状化合物(b2)
としては、第3級炭素原子を有する鎖状炭化水素類、例
えば、イソブタン、イソペンタン、イソヘキサン、3−
メチルペンタン、2,3−ジメチルブタン、2−メチル
ヘキサン、3−メチルヘキサン、3,4−ジメチルヘキ
サン、3−メチルオクタンなどの炭素数4〜20(好ま
しくは、4〜10)程度の脂肪族炭化水素類;イソプロ
ピルベンゼン、イソプロピルビフェニルなどの、芳香族
性環が第3級炭素原子を有する脂肪族炭化水素基で置換
された芳香族炭化水素類;およびこれらの誘導体などが
例示できる。
【0036】前記酸化触媒を利用すると、メチン炭素原
子を有する化合物(b)を効率よく酸化でき、メチン炭
素にヒドロキシル基が導入されたアルコール誘導体を高
い収率で得ることができる。例えば、アダマンタンなど
の橋かけ環式炭化水素類(b1-1)を酸化すると、橋頭位
にヒドロキシル基が導入されたアルコール誘導体、例え
ば、1−アダマンタノール(条件により、1,3−アダ
マンタンジオール及び1,3,5−アダマンタントリオ
ール)が高い収率で得られる。なお、アダマンタンなど
の橋頭位に隣接する部位にメチレン基を有する化合物で
は、酸化条件により、前記メチレン基にオキソ基が導入
されたケトン誘導体(例えば、2−アダマンタノン)が
生成する場合がある。
【0037】イソブタンなどのメチン炭素原子を有する
鎖状化合物(b2)を酸化すると、t−ブタノールなどの
第3級アルコールを高い収率で得ることができる。ま
た、上記芳香族性環が第3級炭素原子を有する脂肪族炭
化水素基で置換された芳香族炭化水素類のうち、芳香族
性環の隣接位にメチン炭素原子を有する化合物では、上
記第3級アルコールのほか、芳香族性環にアシル基が結
合したアシル化芳香族炭化水素が生成する場合がある。
例えば、イソプロピルベンゼンを酸化すると、2−フェ
ニル−2−プロパノールのほかにアセトフェノンが生成
し、4−イソプロピルビフェニルを酸化すると、4−
(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ビフェニルのほ
かに4−アセチルビフェニルが生成する。
【0038】(c)非芳香族性環状炭化水素 非芳香族性環状炭化水素(c)には、(c1)シクロアル
カン類及び(c2)シクロアルケン類が含まれる。
【0039】シクロアルカン類(c1)としては、3〜3
0員のシクロアルカン環を有する化合物、例えば、シク
ロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘ
キサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナ
ン、シクロデカン、シクロドデカン、シクロテトラデカ
ン、シクロヘキサデカン、シクロテトラコサン、シクロ
トリアコンタン、及びこれらの誘導体などが例示でき
る。好ましいシクロアルカン環には、5〜30員、特に
5〜20員のシクロアルカン環が含まれる。
【0040】前記酸化触媒の存在下、このようなシクロ
アルカン類(c1)を酸化すると、常圧の空気又は酸素雰
囲気下であっても、高い収率で、対応するシクロアルカ
ノン又はジカルボン酸が生成する。例えば、シクロヘキ
サンを酸化すると、条件により、シクロヘキサノン及び
/又はアジピン酸を収率よく得ることができる。また、
酸化に対する反応性が小さい8員以上、特に9員以上の
大環状シクロアルカン類であっても、酸素に対する反応
性が向上し、高い収率でケトン類やジカルボン酸類(特
に、大環状モノケトン類、長鎖ジカルボン酸類)を製造
できる。例えば、シクロオクタンを酸化すると、シクロ
オクタノンやスベリン酸が生成する。
【0041】シクロアルケン類(c2)には、3〜30員
のシクロアルケン環を有する化合物、例えば、シクロプ
ロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロオクテ
ン、シクロヘキセン、1−メチル−シクロヘキセン、イ
ソホロン、シクロヘプテン、シクロドデカエンなどのほ
か、シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエ
ン、1,5−シクロオクタジエンなどのシクロアルカジ
エン類、シクロオクタトリエンなどのシクロアルカトリ
エン類、及びこれらの誘導体などが含まれる。好ましい
シクロアルケン類には、3〜20員環、特に3〜12員
環を有する化合物が含まれる。
【0042】前記酸化触媒を用いてシクロアルケン類
(c2)を酸化すると、対応する酸化物、特にシクロアル
ケノン類やシクロアルケノール類を高い収率で得ること
ができる。また、反応条件により、炭素−炭素二重結合
に酸素が導入された、エポキシ化合物を得ることができ
る。
【0043】(d)ヘテロ原子の隣接位に炭素−水素結
合を有する非芳香族性複素環化合物 ヘテロ原子の隣接位に炭素−水素結合を有する非芳香族
性複素環化合物(d)における非芳香族性複素環には、
窒素原子、酸素原子及びイオウ原子から選択された少な
くとも1種のヘテロ原子を有する3〜20員(好ましく
は5〜12員、さらに好ましくは5又は6員)の複素環
などが含まれる。前記複素環には、ベンゼン環、シクロ
ヘキサン環、ピリジン環などの芳香族性又は非芳香族性
の環が1又は2以上縮合していてもよい。前記複素環と
しては、例えば、ジヒドロフラン、テトラヒドロフラ
ン、ピラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、ピ
ロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、イン
ドリン、クロマン、イソクロマンなどが例示される。
【0044】前記非芳香族性複素環化合物(d)を前記
酸化触媒の存在下で酸化すると、ヘテロ原子の隣接位に
ヒドロキシル基又はオキソ基が導入され、対応するヒド
ロキシル基又はカルボニル基含有化合物(例えば、ラク
トン、ラクタムなど)を得ることができる。
【0045】(e)共役化合物 共役化合物(e)には、共役ジエン類(e1)、α,β−
不飽和ニトリル(e2)、α,β−不飽和カルボン酸又は
その誘導体(例えば、エステル、アミド、酸無水物等)
(e3)などが挙げられる。
【0046】共役ジエン類(e1)としては、例えば、ブ
タジエン、イソプレン、2−クロロブタジエン、2−エ
チルブタジエンなどが挙げられる。なお、共役ジエン類
(e1)には、二重結合と三重結合とが共役している化合
物、例えば、ビニルアセチレンなども含めるものとす
る。共役ジエン類(e1)の酸化によりアルケンジオール
などが生成する。例えば、ブタジエンを酸化すると、2
−ブテン−1,4−ジオール、1−ブテン−3,4−ジ
オールなどが得られる。
【0047】α,β−不飽和ニトリル(e2)としては、
例えば、(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。
α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体(e3)として
は、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、
(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプ
ロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル
酸−2−ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸エ
ステル;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メ
タ)アクリルアミドなど(メタ)アクリルアミド誘導体
などが挙げられる。これらのα,β−不飽和ニトリル
(e2)、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体(e
3)を酸化すると、α,β−不飽和結合部位が選択的に
酸化されて、前記不飽和結合が単結合となり、且つβ位
が、ホルミル基、アセタール基(アルコール存在下で反
応させた場合)又はアシルオキシ基(カルボン酸存在下
で反応させた場合)に変換されるた化合物が得られる。
より具体的には、例えば、メタノールの存在下で、アク
リロニトリル及びアクリル酸メチルを酸化すると、それ
ぞれ、3,3−ジメトキシプロピオニトリル及び3,3
−ジメトキシプロピオン酸メチルが生成する。
【0048】(f)アルコール又はチオール類 アルコール類としては、メタノール、エタノール、1−
プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、1
−ヘキサノール、1−オクタノール、1−デカノール、
ミリスチルアルコール、アリルアルコール、クロチルア
ルコール、プロパルギルアルコール、エチレングリコー
ル、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、
1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、グ
リセリンなどの脂肪族アルコール;シクロペンタノー
ル、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、
シクロヘキセン−1−オール、1,2−シクロヘキサン
ジオール、1,4−シクロヘキサンジオールなどの脂環
式アルコール;ベンジルアルコール、サリチルアルコー
ル、ベンズヒドロール、フェネチルアルコールなどの芳
香族アルコールなどが挙げられる。好ましいアルコール
類には、不飽和結合に隣接する部位の炭素原子にヒドロ
キシル基が結合しているアルコール(例えば、アリルア
ルコール、ベンジルアルコールなど)、脂環式アルコー
ル(例えば、シクロヘキサノールなど)などが含まれ
る。チオール類としては、前記アルコール類に対応する
チオール類が挙げられる。
【0049】アルコール類を酸化すると、反応条件によ
り、対応するカルボニル化合物(アルデヒド又はケト
ン)及び/又はカルボン酸が生成する。
【0050】(g)エーテル又はチオエーテル類 エーテル類としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエ
ーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、
メチルエチルエーテル、メチルブチルエーテル、エチル
ブチルエーテル、ジアリルエーテル、メチルビニルエー
テル、エチルアリルエーテルなどの脂肪族エーテル類;
アニソール、フェネトール、ジベンジルエーテル、フェ
ニルベンジルエーテルなどの芳香族エーテルなどが挙げ
られる。チオエーテル類としては、前記エーテル類に対
応するチオエーテル類が挙げられる。
【0051】エーテル類を酸化すると、エーテル結合を
形成する酸素原子の隣接位が酸化されて、対応するエス
テル、酸無水物などが生成する。
【0052】(h)アルデヒド又はチオアルデヒド類 アルデヒド類としては、アセトアルデヒド、プロピオン
アルデヒド、ヘキサナール、デカナール、スクシンアル
デヒド、グルタルアルデヒド、アジピンアルデヒドなど
の脂肪族アルデヒド;ホルミルシクロヘキサン、シトラ
ール、シトロネラールなどの脂環式アルデヒド;ベンズ
アルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、シンナムアルデ
ヒド、サリチルアルデヒド、アニスアルデヒド、フタル
アルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデ
ヒドなどの芳香族アルデヒド;フルフラール、ニコチン
アルデヒドなどの複素環アルデヒドなどが挙げられる。
チオアルデヒド類としては、前記アルデヒド類に対応す
るチオアルデヒド類が挙げられる。アルデヒド類を酸化
すると、対応するカルボン酸が高収率で得られる。
【0053】(i)アミン類 アミン類(i)としては、第1級または第2級アミン、
例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミ
ン、ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、
ジブチルアミン、エチレンジアミン、1,4−ブタンジ
アミン、ヒドロキシルアミン、エタノールアミンなどの
脂肪族アミン;シクロペンチルアミン、シクロヘキシル
アミンなどの脂環式アミン;ベンジルアミン、トルイジ
ンなどの芳香族アミンなどが例示される。アミン類は、
酸化により対応するシッフ塩基、オキシムなどに変換さ
れる。
【0054】(j)芳香族炭化水素 芳香族炭化水素(j)としては、ベンゼン、ナフタレ
ン、アセナフチレン、フェナントレン、アントラセン、
ナフタセン、アセアンスリレン、トリフェニレン、ピレ
ン、クリセン、ナフタセン、ピセン、ペリレン、ペンタ
セン、コロネン、ピランスレン、オバレンなどの、少な
くともベンゼン環を1つ有する芳香族化合物、好ましく
は少なくともベンゼン環が複数個(例えば、2〜10
個)縮合している縮合多環式芳香族化合物などが挙げら
れる。これらの芳香族炭化水素は、1又は2以上の置換
基を有していてもよい。置換基を有する芳香族炭化水素
の具体例として、例えば、2−クロロナフタレン、2−
メトキシナフタレン、1−メチルナフタレン、2−メチ
ルナフタレン、2−メチルアントラセン、2−t−ブチ
ルアントラセン、2−カルボキシアントラセン、2−エ
トキシカルボニルアントラセン、2−シアノアントラセ
ン、2−ニトロアントラセン、2−メチルペンタレンな
どが挙げられる。また、前記ベンゼン環には、非芳香族
性炭素環、芳香族性複素環、又は非芳香族性複素環が縮
合していてもよい。これらの芳香族炭化水素を酸化する
と、反応条件により対応するキノン類が生成する。
【0055】[酸化反応]本発明の主たる特色は、酸化
反応を、有機溶媒中、反応温度が10〜85℃、金属化
合物の量が有機基質に対して0〜0.28モル%の条件
下で行う点にある。
【0056】有機溶媒としては、酢酸、プロピオン酸な
どのカルボン酸類;アセトニトリル、プロピオノニトリ
ルなどの脂肪族ニトリル類、シクロヘキサンカルボニト
リルなどの脂環式ニトリル類、ベンゾニトリルなどの芳
香族ニトリル類などのニトリル類;N,N−ジメチルホ
ルムアミドなどのN,N−ジ置換アミド類;ニトロベン
ゼン、ニトロメタン、ニトロエタンなどのニトロ化合
物;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチルなどのエ
ステル類;ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;
クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩
化炭素、クロロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン
などのハロゲン化炭化水素などが挙げられる。これらの
溶媒のなかでも、カルボン酸類、ニトリル類、ハロゲン
化炭化水素などを用いる場合が多い。有機溶媒は、単独
で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0057】なお、有機基質から低次酸化生成物(例え
ば、アルコール、カルボニル化合物など)を得る場合、
例えば、シクロヘキサンなどのシクロアルカン類を酸化
して、シクロヘキサノンなどのシクロアルカノン類を製
造する場合には、反応溶媒として、非プロトン性溶媒、
例えば、ニトリル類、ハロゲン化炭化水素を用いること
により、ジカルボン酸などの高次酸化生成物の副生を抑
え、目的化合物の選択率をより一層向上させることがで
きる。
【0058】反応溶媒の使用量は、反応速度や操作性等
を考慮して適宜選択でき、例えば、有機基質1重量部に
対して、1〜100重量部、好ましくは2〜50重量
部、さらに好ましくは3〜30重量部程度である。
【0059】反応温度は10〜85℃であり、好ましく
は20〜83℃、さらに好ましくは30〜80℃(例え
ば40〜78℃)程度である。反応温度が10℃未満で
は反応速度が小さく、目的酸化生成物の生産効率が低下
する。また、反応温度が85℃を越えると前記イミド化
合物の変質又は分解が著しく増大する。
【0060】前記金属化合物の量は有機基質に対して0
〜0.28モル%であり、好ましくは0.0001〜
0.25モル%、さらに好ましくは0.001〜0.2
5モル%(例えば0.01〜0.25モル%)程度であ
る。前記金属化合物の量が0.28モル%を越えると、
前記イミド化合物の変質又は分解が急激に増大する。
【0061】前記式(1)で表されるイミド化合物の使
用量は、例えば、被酸化性有機基質1モルに対して0.
0001〜1モル、好ましは0.001〜0.5モル、
さらに好ましくは0.01〜0.3モル(例えば0.0
2〜0.25モル)程度である場合が多い。また、前記
金属化合物の量は、前記イミド化合物に対して、通常0
〜10モル%(例えば0.01〜10モル%)、好まし
くは0.02〜5モル%、さらに好ましくは0.03〜
3.5モル%、特に0.04〜3モル%(例えば0.1
〜2.5モル%)程度である。
【0062】有機基質の酸化に利用される分子状酸素
は、特に制限されず、純粋な酸素を用いてもよく、窒
素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素などの不活性ガス
で希釈した酸素を使用してもよい。操作性、安全性及び
経済性などの点から、空気を使用するのが好ましい。
【0063】分子状酸素の使用量は、有機基質および目
的化合物の種類に応じて選択でき、通常、有機基質1モ
ルに対して、0.5モル以上(例えば、1モル以上)、
好ましくは1〜100モル、さらに好ましくは2〜50
モル程度である。基質に対して過剰モルの分子状酸素を
使用する場合が多い。
【0064】反応は、常圧、又は加圧下で行うことがで
き、加圧下で反応させる場合(例えば、分子状酸素とし
て空気などの希釈された酸素を用いる場合など)には、
通常、1〜100atm(例えば、1.5〜80at
m)、好ましくは2〜70atm程度である。反応時間
は、反応温度及び圧力に応じて、例えば、30分〜48
時間程度の範囲から適当に選択できる。
【0065】反応は、分子状酸素の存在下又は分子状酸
素の流通下、回分式、半回分式、連続式などの慣用の方
法により行うことができる。反応終了後、反応生成物及
び触媒は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽
出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分
離手段や、これらを組み合わせた分離手段により、容易
に分離精製できる。
【0066】本発明の方法によれば、酸化反応を特定条
件下で行うため、触媒として用いる前記イミド化合物の
変質や分解、劣化を著しく抑制できる。そのため、反応
終了後、回収したイミド化合物を繰り返し反応に使用す
ることができ、目的酸化生成物の製造コストを低減でき
る。また、本発明では、低次酸化生成物を高選択的に得
ることができるという利点をも有する。例えば、シクロ
ヘキサンなどのシクロアルカン類を酸化する場合、高次
酸化生成物であるアジピン酸などのジカルボン酸誘導体
の生成が抑制され、シクロヘキサノンなどのシクロアル
カノン類等の低次酸化生成物を高い選択率で得ることが
できる。
【0067】
【発明の効果】本発明の方法によれば、触媒として用い
るイミド化合物の失活を顕著に抑制できる。また、アル
コール類やカルボニル化合物(アルデヒド又はケトン)
などの低次酸化生成物を高い選択率及び収率で得ること
ができる。
【0068】
【実施例】以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細
に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定
されるものではない。
【0069】実施例1 冷却管、圧力調節器を備え付けた内容積1リットルのT
i製オートクレーブに、シクロヘキサン50g(0.5
94モル)、N−ヒドロキシフタルイミド9.69g
(シクロヘキサンに対して10モル%)、酢酸コバルト
(II)四水和物0.296g(シクロヘキサンに対して
0.2モル%)及びアセトニトリル400gを入れ、窒
素加圧下(33kg/cm2)、撹拌しながら加熱昇温
した。内温が75℃で安定したところで、窒素と空気と
を切り替え、40kg/cm2の圧力下、40Nl/時
の流量で空気を供給した。4時間反応させた後、系内を
窒素で置換し、冷却した。ガスクロマトグラフィー及び
高速液体クロマトグラフィーによる分析の結果、シクロ
ヘキサンの転化率18.9%で、シクロヘキサノン(収
率14.1%、選択率74.5%)、シクロヘキサノー
ル(収率1.1%、選択率6%)、及びアジピン酸(収
率1.8%、選択率9.4%)が生成していた。また、
触媒として用いたN−ヒドロキシフタルイミドの残存率
は93.7%であった。
【0070】比較例1 反応温度を160℃、反応圧力を35kg/cm2、反
応時間を2時間とした以外は実施例1と同様の操作を行
ったところ、シクロヘキサンの転化率30.2%で、シ
クロヘキサノン(収率20.1%、選択率66.6
%)、シクロヘキサノール(収率2.2%、選択率6.
6%)、及びアジピン酸(収率3.9%、選択率12.
9%)が生成していた。また、触媒として用いたN−ヒ
ドロキシフタルイミドの残存率は18.1%であった。
【0071】比較例2 酢酸コバルト(II)四水和物の使用量をシクロヘキサン
に対して0.5モル%とした以外は実施例1と同様の操
作を行ったところ、シクロヘキサンの転化率30.4%
で、シクロヘキサノン(収率14.8%、選択率48.
7%)、シクロヘキサノール(収率1.2%、選択率
3.9%)、及びアジピン酸(収率6.8%、選択率3
2.2%)が生成していた。また、触媒として用いたN
−ヒドロキシフタルイミドの残存率は66.3%であっ
た。
【0072】比較例3 反応温度を100℃とした以外は実施例1と同様の操作
を行ったところ、シクロヘキサンの転化率23.3%
で、シクロヘキサノン(収率16.8%、選択率72.
1%)、シクロヘキサノール(収率1.1%、選択率
4.7%)、及びアジピン酸(収率2.3%、選択率
9.9%)が生成していた。また、触媒として用いたN
−ヒドロキシフタルイミドの残存率は40.5%であっ
た。
【0073】実施例2 反応溶媒としてアセトニトリルの代わりに酢酸を用いた
以外は実施例1と同様の操作を行ったところ、シクロヘ
キサンの転化率30.4%で、シクロヘキサノン(収率
14.8%、選択率48.7%)、シクロヘキサノール
(収率1.2%、選択率3.9%)、及びアジピン酸
(収率6.8%、選択率22.5%)が生成していた。
また、触媒として用いたN−ヒドロキシフタルイミドの
残存率は80.1%であった。
【0074】実施例3 酢酸コバルト(II)四水和物の使用量をシクロヘキサン
に対して0.1モル%とした以外は実施例1と同様の操
作を行ったところ、シクロヘキサンの転化率13.5%
で、シクロヘキサノン(収率9.8%、選択率72.6
%)、シクロヘキサノール(収率1.2%、選択率8.
9%)、及びアジピン酸(収率1.0%、選択率7.4
%)が生成していた。また、触媒として用いたN−ヒド
ロキシフタルイミドの残存率は99.7%であった。
【0075】実施例4 N−ヒドロキシフタルイミドの使用量をシクロヘキサン
に対して20モル%とした以外は実施例1と同様の操作
を行ったところ、シクロヘキサンの転化率31.8%
で、シクロヘキサノン(収率22.6%、選択率71.
1%)、シクロヘキサノール(収率1.3%、選択率
4.1%)、及びアジピン酸(収率2.2%、選択率
6.9%)が生成していた。また、触媒として用いたN
−ヒドロキシフタルイミドの残存率は88.6%であっ
た。
【0076】実施例5 反応溶媒としてアセトニトリルの代わりにトリフルオロ
メチルベンゼンを用いた以外は実施例1と同様の操作を
行ったところ、シクロヘキサンの転化率19.4%で、
シクロヘキサノン(収率14.3%、選択率73.7
%)、シクロヘキサノール(収率1.1%、選択率5.
7%)、及びアジピン酸(収率1.6%、選択率8.2
%)が生成していた。また、触媒として用いたN−ヒド
ロキシフタルイミドの残存率は92.2%であった。
【0077】実施例6 内容積100mlのガラス製フラスコに、シクロヘキサ
ン2.525g(0.03モル)、N−ヒドロキシフタ
ルイミド0.489g(シクロヘキサンに対して10モ
ル%)、酢酸コバルト(II)四水和物0.007g(シ
クロヘキサンに対して0.1モル%)及びアセトニトリ
ル25gを入れ、酸素雰囲気下(1気圧)、75℃で4
時間撹拌した。ガスクロマトグラフィー及び高速液体ク
ロマトグラフィーによる分析の結果、シクロヘキサンの
転化率7.0%で、シクロヘキサノン(収率4.7%、
選択率67.1%)、シクロヘキサノール(収率0.5
%、選択率7.1%)、及びアジピン酸(収率0.5
%、選択率7.1%)が生成していた。また、触媒とし
て用いたN−ヒドロキシフタルイミドの残存率は97.
2%であった。
【0078】実施例7 内容積100mlのガラス製フラスコに、シクロヘキサ
ン2.525g(0.03モル)、N−ヒドロキシフタ
ルイミド0.489g(シクロヘキサンに対して10モ
ル%)、コバルト(II)アセチルアセトナト二水和物
0.022g(シクロヘキサンに対して0.25モル
%)及びベンゾニトリル25gを入れ、酸素雰囲気下
(1気圧)、80℃で6時間撹拌した。ガスクロマトグ
ラフィー及び高速液体クロマトグラフィーによる分析の
結果、シクロヘキサンの転化率15.0%で、シクロヘ
キサノン(収率9.8%、選択率65.3%)、シクロ
ヘキサノール(収率1.2%、選択率8.0%)、及び
アジピン酸(収率1.0%、選択率6.7%)が生成し
ていた。また、触媒として用いたN−ヒドロキシフタル
イミドの残存率は88.5%であった。
【0079】実施例8 冷却管、圧力調節器を備え付けた内容積1リットルのT
i製オートクレーブに、イソプロピルビフェニル58.
8g(0.3モル)、N−ヒドロキシフタルイミド4.
89g(イソプロピルビフェニルに対して10モル
%)、コバルト(II)アセチルアセトナト二水和物0.
044g(シクロヘキサンに対して0.05モル%)、
酢酸マンガン(II)四水和物0.037g(シクロヘキ
サンに対して0.05モル%)及びアセトニトリル40
0gを入れ、窒素加圧下(35kg/cm2)、撹拌し
ながら加熱昇温した。内温が65℃で安定したところ
で、窒素と空気とを切り替え、40kg/cm2の圧力
下、40Nl/時の流量で空気を供給した。4時間反応
させた後、系内を窒素で置換し、冷却した。ガスクロマ
トグラフィー及び高速液体クロマトグラフィーによる分
析の結果、4−イソプロピルビフェニルの転化率98.
7%で、4−アセチルビフェニル(収率23.6%、選
択率23.9%)、4−イソプロペニルビフェニル(収
率6.2%、選択率6.3%)、及び4−(1−ヒドロ
キシ−1−メチルエチル)ビフェニル(収率57.0
%、選択率57.7%)が生成していた。また、触媒と
して用いたN−ヒドロキシフタルイミドの残存率は9
2.9%であった。
【0080】比較例4 反応温度を160℃、反応時間を3時間とした以外は実
施例8と同様の操作を行ったところ、4−イソプロピル
ビフェニルの転化率64.7%で、4−アセチルビフェ
ニル(収率22.2%、選択率34.3%)、4−イソ
プロペニルビフェニル(収率3.6%、選択率5.6
%)及び4−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ビ
フェニル(収率16.8%、選択率26.0%)が生成
していた。触媒として用いたN−ヒドロキシフタルイミ
ドの残存率は0%であった。
【0081】実施例9 内容積100mlのガラス製フラスコに、アダマンタン
2.725g(0.02モル)、N−ヒドロキシフタル
イミド0.3263g(アダマンタンに対して10モル
%)、V250.0061g(アダマンタンに対して
0.15モル%)及び酢酸25gを入れ、酸素雰囲気下
(1気圧)、75℃で3時間撹拌した。ガスクロマトグ
ラフィー及び高速液体クロマトグラフィーによる分析の
結果、アダマンタンの転化率60.1%で、1−アダマ
ンタノール(収率36.0%、選択率59.9%)、
1,3−アダマンタンジオール(収率8.8%、選択率
14.6%)、及び2−アダマンタノン(収率4.0
%、選択率14.6%)が生成していた。また、触媒と
して用いたN−ヒドロキシフタルイミドの残存率は8
9.6%であった。
【0082】実施例10 内容積100mlのガラス製フラスコに、アダマンタン
2.725g(0.02モル)、N−ヒドロキシフタル
イミド0.3263g(アダマンタンに対して10モル
%)、V(acac)3(バナジウムアセチルアセトナ
ト)0.0035g(アダマンタンに対して0.05モ
ル%)及び酢酸25gを入れ、酸素雰囲気下(1気
圧)、80℃で3時間撹拌した。ガスクロマトグラフィ
ー及び高速液体クロマトグラフィーによる分析の結果、
アダマンタンの転化率99.2%で、1−アダマンタノ
ール(収率25.3%、選択率25.5%)、1,3−
アダマンタンジオール(収率37.1%、選択率37.
4%)、2−アダマンタノン(収率7.6%、選択率
7.7%)及び1,3,5−アダマンタントリオール
(収率8.7%、選択率8.8%)が生成していた。ま
た、触媒として用いたN−ヒドロキシフタルイミドの残
存率は80.2%であった。
【0083】比較例5 V(acac)3(バナジウムアセチルアセトナト)を
0.071g(アダマンタンに対して1モル%)用い、
反応温度を85℃とした以外は、実施例10と同様の操
作を行った結果、アダマンタンの転化率99.3%で、
1−アダマンタノール(収率30.3%、選択率30.
5%)、1,3−アダマンタンジオール(収率31.2
%、選択率31.4%)、2−アダマンタノン(収率
7.7%、選択率7.8%)及び1,3,5−アダマン
タントリオール(収率5.0%、選択率5.0%)が生
成していた。また、触媒として用いたN−ヒドロキシフ
タルイミドの残存率は5.9%であった。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記式(1) 【化1】 (式中、R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、
    ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキ
    ル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル
    基、アルコキシカルボニル基、アシル基を示し、R1
    びR2は互いに結合して二重結合、又は芳香族性若しく
    は非芳香族性の環を形成してもよい。Xは酸素原子又は
    ヒドロキシル基を示し、nは1〜3の整数を示す)で表
    されるイミド化合物、又は前記イミド化合物と金属化合
    物の存在下、有機基質を分子状酸素により酸化して対応
    する酸化生成物を得る方法であって、有機溶媒中、反応
    温度10〜85℃、金属化合物の量が有機基質に対して
    0〜0.28モル%の条件下で有機基質と酸素とを接触
    させる有機基質の酸化方法。
  2. 【請求項2】 有機基質として、(a)不飽和結合に隣
    接する部位に炭素−水素結合を有する化合物、(b)メ
    チン炭素原子を有する化合物、(c)非芳香族性環状炭
    化水素、(d)ヘテロ原子の隣接位に炭素−水素結合を
    有する非芳香族性複素環化合物、(e)共役化合物、
    (f)アルコール又はチオール類、(g)エーテル又は
    チオエーテル類、(h)アルデヒド又はチオアルデヒド
    類、(i)アミン類及び(j)芳香族化合物からなる群
    から選択された少なくとも1種の化合物を用いる請求項
    1記載の有機基質の酸化方法。
  3. 【請求項3】 有機溶媒として、カルボン酸類、ニトリ
    ル類、N,N−ジ置換アミド類、ニトロ化合物、エステ
    ル類、脂肪族炭化水素及びハロゲン化炭化水素からなる
    群から選択された少なくとも1種の溶媒を用いる請求項
    1記載の有機基質の酸化方法。
  4. 【請求項4】 金属化合物の量が式(1)で表されるイ
    ミド化合物に対して0〜10モル%の条件下で有機基質
    と酸素とを接触させる請求項1記載の有機基質の酸化方
    法。
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