JP2001131105A - 脂環式アルコール類の製造方法及び分離方法 - Google Patents

脂環式アルコール類の製造方法及び分離方法

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JP2001131105A
JP2001131105A JP31445599A JP31445599A JP2001131105A JP 2001131105 A JP2001131105 A JP 2001131105A JP 31445599 A JP31445599 A JP 31445599A JP 31445599 A JP31445599 A JP 31445599A JP 2001131105 A JP2001131105 A JP 2001131105A
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alicyclic
monol
monools
crystallization
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JP31445599A
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English (en)
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Masahiro Chikamori
正博 近森
Takuya Noguchi
卓也 野口
Takeshi Kataoka
健 片岡
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Daicel Corp
Original Assignee
Daicel Chemical Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 少なくとも脂環式モノオール類と脂環式ジオ
ール類とを含む混合物から、該モノオール類及び/又は
ジオール類を効率よく分離する。 【解決手段】 脂環式アルコール類の分離方法は、少な
くとも脂環式モノオール類と脂環式ジオール類とを含む
混合物から該モノオール類とジオール類とを分離する方
法であって、(b)前記混合物を、少なくとも水を含む
水性溶媒を用いた晶析操作に付し、脂環式モノオール類
を晶析させる脂環式モノオール類晶析工程と、(c)前
記脂環式モノオール類を回収した残液に炭素数3以上の
アルコールと脂肪族炭化水素との混合溶媒を加えて抽出
し、脂環式ジオール類を有機溶媒層に分配する抽出工程
とを含む。さらに、(d)脂環式モノオール類晶析工程
(b)で得られた結晶をアルカリ水溶液で洗浄する脂環
式モノオール類洗浄工程を含んでいてもよい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高機能性材料や医
農薬の原料として有用なアダマンタノール類などの脂環
式アルコール類の製造方法及び分離方法に関する。
【0002】
【従来の技術】脂環式化合物は、環式構造を持つもの
の、性質は脂肪族化合物に類似していることから、これ
らの構造と性質とを生かした種々の用途への利用が検討
されている。特に、環にヒドロキシル基が結合した脂環
式アルコール類は、アクリル酸誘導体やカーボネートな
どに誘導することにより、機能性を高めた種々の重合体
を得ることができる。このような重合体は、光ファイバ
ー、光学用素子、光学レンズ、ホログラム、光ディス
ク、コンタクトレンズなどの光学材料、有機ガラス用透
明樹脂コーティング剤、導電性ポリマー、写真感光性材
料、蛍光性材料などへの利用が期待されている。
【0003】例えば、アダマンタノール類から誘導して
得られる重合体は、導光損失性、屈折率、複屈折率など
の光学的特性、耐湿性、耐熱性、熱膨張率などの特性に
おいて、従来のポリマーでは達成できない高いレベルを
有している。また、アダマンタノール類から誘導される
アミノ誘導体は、高い薬理活性を示す各種の医薬、農薬
を誘導する上で有用であり、例えば、パーキンソン氏病
の治療薬「シンメトレル」などに利用されている。
【0004】脂環式アルコール類の製造方法として、特
開平9−327626号公報には、アダマンタンなどの
脂環式炭化水素類を特定構造を有するイミド化合物を触
媒として酸素により酸化する方法が開示されている。こ
の方法によれば、温和な条件下で、対応するモノオール
体、ジオール体、及びトリオール体、テトラオール体な
どのポリオール類を収率よく得ることができる。しか
し、前記モノオール体、ジオール体などの脂環式アルコ
ール類は、化学的及び物理的特性が類似しているととも
に、反応で副生する例えばケトン体やケトオール体など
の副生物とも性質が似ているため、これらを効率よく分
離することは極めて困難である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、少なくとも脂環式モノオール類と脂環式ジオール類
とを含む混合物から、該モノオール類及び/又はジオー
ル類を効率よく分離できる方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、少なくとも脂環式モノオール類と
脂環式ジオール類と脂環式トリオール類を含む混合物か
ら、該モノオール類、ジオール類及びトリオール類を効
率よく分離できる方法を提供することにある。本発明の
さらに他の目的は、少なくとも脂環式モノオール類と脂
環式ジオール類と環状ケトン類を含む混合物から、該モ
ノオール類及びケトン類とジオール類とを効率よく分離
する方法を提供することにある。本発明の他の目的は、
脂環式炭化水素類又は該脂環式炭化水素類に対応する脂
環式モノオール類から、対応する脂環式アルコール類を
効率よく製造できる方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的
を達成するために鋭意検討を重ねた結果、特定の溶媒を
用いた晶析工程と抽出工程とを組み合わせることによ
り、脂環式モノオール類や脂環式ジオール類を効率よく
分離できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】すなわち、本発明は、少なくとも脂環式モ
ノオール類と脂環式ジオール類とを含む混合物から該モ
ノオール類とジオール類とを分離する方法であって、
(b)前記混合物を、少なくとも水を含む水性溶媒を用
いた晶析操作に付し、脂環式モノオール類を晶析させる
脂環式モノオール類晶析工程と、(c)前記脂環式モノ
オール類を回収した残液に炭素数3以上のアルコールと
脂肪族炭化水素との混合溶媒を加えて抽出し、脂環式ジ
オール類を有機溶媒層に分配する抽出工程とを含む脂環
式アルコール類の分離方法を提供する。この分離方法に
おいて、さらに、(d)脂環式モノオール類晶析工程
(b)で得られた結晶をアルカリ水溶液で洗浄する脂環
式モノオール類洗浄工程、及び/又は(e)抽出工程
(c)で得られた有機溶媒層に含まれる有機成分を有機
溶媒を用いた晶析操作に付して脂環式ジオール類を晶析
させる脂環式ジオール類晶析工程を含んでいてもよい。
【0008】本発明は、また、少なくとも脂環式モノオ
ール類と脂環式ジオール類と脂環式トリオール類を含む
混合物から該モノオール類とジオール類とトリオール類
とを分離する方法であって、(b1)前記混合物を、少な
くとも水を含む水性溶媒を用いた晶析操作に付し、脂環
式モノオール類を晶析させる脂環式モノオール類晶析工
程と、(c1)前記脂環式モノオール類を回収した残液に
炭素数3以上のアルコールと脂肪族炭化水素との混合溶
媒を加えて抽出し、脂環式ジオール類を有機溶媒層に、
脂環式トリオール類を水層にそれぞれ分配する抽出工程
とを含む脂環式アルコール類の分離方法を提供する。こ
の場合、さらに、(f)抽出工程(c1)で得られた水層
に含まれる有機成分を水と水溶性有機溶媒との混合溶媒
を用いた晶析操作に付して脂環式トリオール類を晶析さ
せる脂環式トリオール類晶析工程を含んでいてもよい。
【0009】本発明は、さらに、少なくとも脂環式モノ
オール類と脂環式ジオール類と環状ケトン類を含む混合
物から該モノオール類及びケトン類とジオール類とを分
離する方法であって、(b2)前記混合物を、少なくとも
水を含む水性溶媒を用いた晶析操作に付し、脂環式モノ
オール類及び環状ケトン類を晶析させる脂環式モノオー
ル類及び環状ケトン類晶析工程と、(c2)前記脂環式モ
ノオール類及び環状ケトン類を回収した残液に炭素数3
以上のアルコールと脂肪族炭化水素との混合溶媒を加え
て抽出し、脂環式ジオール類を有機溶媒層に分配する抽
出工程とを含む脂環式アルコール類の分離方法を提供す
る。
【0010】本発明は、また、(a)脂環式炭化水素類
及び該脂環式炭化水素類に対応する脂環式モノオール類
から選択された少なくとも1種の基質を酸化して、少な
くとも対応する脂環式モノオール類と脂環式ジオール類
とを含む混合物を得る酸化工程と、(b)前記混合物
を、少なくとも水を含む水性溶媒を用いた晶析操作に付
し、脂環式モノオール類を晶析させる脂環式モノオール
類晶析工程と、(c)前記脂環式モノオール類を回収し
た残液に炭素数3以上のアルコールと脂肪族炭化水素と
の混合溶媒を加えて抽出し、脂環式ジオール類を有機溶
媒層に分配する抽出工程とを含む脂環式アルコール類の
製造方法を提供する。
【0011】前記酸化工程(a)において、基質を、下
記式(1)
【化2】 (式中、R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、
ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキ
ル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル
基、アルコキシカルボニル基、アシル基を示し、R1
びR2は互いに結合して二重結合、又は芳香族性若しく
は非芳香族性の環を形成してもよい。Xは酸素原子又は
ヒドロキシル基を示す。前記R1、R2、又はR1及びR2
が互いに結合して形成された二重結合又は芳香族性若し
くは非芳香族性の環には、上記式(1)中に示されるN
−置換環状イミド基がさらに1又は2個形成されていて
もよい)で表されるイミド化合物の存在下で酸素により
酸化してもよい。
【0012】本発明の製造方法においては、分離した脂
環式モノオール類は酸化工程(a)にリサイクルしても
よく、また、(g)分離した脂環式モノオール類を強酸
により対応する環状ケトン類に変換する工程をさらに含
んでいてもよい。
【0013】
【発明の実施の形態】[酸化工程(a)]酸化工程
(a)では、脂環式炭化水素類及び該脂環式炭化水素類
に対応する脂環式モノオール類から選択された少なくと
も1種の基質を酸化して、少なくとも対応する脂環式モ
ノオール類と脂環式ジオール類とを含む混合物を得る。
【0014】基質としての脂環式炭化水素類は非芳香族
性の炭素環を有する化合物であればよく、前記脂環式炭
化水素類として、脂環式炭化水素及び置換基を有する脂
環式炭化水素が挙げられる。前記置換基としては、種々
の置換基、例えば、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭
素、又はヨウ素原子)、オキソ基、置換オキシ基(例え
ば、C1-4アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオ
キシ基など)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル
基(例えば、C1-4アルコキシ−カルボニル基など)、
置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、
置換又は無置換アミノ基、アルキル基(例えば、C1-4
アルキル基など)、シクロアルキル基、アリール基(例
えば、フェニル、ナフチル基など)、複素環基などが例
示できる。また、前記置換基には、非芳香族性炭素環に
縮合する芳香族性又は非芳香族性の環も含まれる。
【0015】脂環式炭化水素類は、単環式炭素環を有す
る単環炭化水素類と、多環式炭素環を有する多環炭化水
素類に分類できる。単環炭化水素類としては、例えば、
シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、シク
ロドデカン、シクロペンタデカンなどの炭素数3〜20
程度のシクロアルカン類;シクロヘキセン、シクロオク
テン、シクロデセンなどの炭素数3〜20程度のシクロ
アルケン類などが挙げられる。
【0016】多環炭化水素類には、(i)非芳香族性炭
素環に芳香族炭素環が縮合した縮合環炭化水素類、(i
i)2〜4環程度の橋かけ環式炭化水素類が含まれる。
前記縮合環炭化水素類としては、例えば、インダン、テ
トラリン、フルオレン、アセナフテンなどが挙げられ
る。また、前記橋かけ環式炭化水素類としては、例え
ば、デカリン、ビシクロ[2.2.0]ヘキサン、ビシ
クロ[2.2.2]オクタン、ビシクロ[3.2.1]
オクタン、ビシクロ[4.3.2]ウンデカン、ツジョ
ン、カラン、ピナン、ピネン、ボルナン、ボルニレン、
ノルボルナン、ノルボルネン、カンファー、ショウノウ
酸、カンフェン、トリシクレン、トリシクロ[4.3.
1.12,5]ウンデカン、トリシクロ[5.2.1.0
3,8]デカン、エキソトリシクロ[5.2.1.02,6
デカン、エンドトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ
ン、エンドトリシクロ[5.2.2.02,6]ウンデカ
ン、アダマンタン、1−クロロアダマンタン、1−メチ
ルアダマンタン、1,3−ジメチルアダマンタン、1−
メトキシアダマンタン、1−カルボキシアダマンタン、
1−メトキシカルボニルアダマンタン、1−ニトロアダ
マンタン、テトラシクロ[4.4.0.12,5
7,10]ドデカン、パーヒドロアセナフテン、パーヒド
ロアントラセン、パーヒドロフルオレン、パーヒドロフ
ェナントレン、パーヒドロフェナレン、パーヒドロイン
デンなどのなどが挙げられる。
【0017】前記脂環式炭化水素類に対応する基質とし
ての脂環式モノオール類としては、脂環式炭化水素類を
構成する非芳香族性炭素環にヒドロキシル基が1つ結合
した化合物であればよく、その結合位置は特に制限され
ない。
【0018】基質の酸化方法としては、クロム酸を用い
る方法(特公昭42−16621号公報参照)、コバル
ト塩触媒の存在下で酸素により酸化する方法(特公昭4
2−26792号公報参照)、特定のイミド化合物の存
在下で酸素により酸化する方法(特開平9−32762
6号公報参照)などの公知乃至周知の酸化方法の何れを
適用してもよいが、操作性、経済性、収率などの点か
ら、前記イミド化合物を用いる方法が好ましい。
【0019】より具体的には、基質を、前記式(1)で
表されるイミド化合物の存在下で酸素により酸化する方
法が好ましい。
【0020】前記式(1)において、置換基R1及びR2
のうちハロゲン原子には、ヨウ素、臭素、塩素およびフ
ッ素原子が含まれる。アルキル基としては、例えば、メ
チル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソ
ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル
基などのC1-10アルキル基、好ましくはC1-6アルキル
基、特にC1-4アルキル基が挙げられる。アリール基に
は、フェニル基、ナフチル基などが含まれ、シクロアル
キル基には、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロ
オクチル基などが含まれる。
【0021】アルコキシ基には、例えば、メトキシ、エ
トキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソ
ブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオ
キシ基などのC1-10アルコキシ基、好ましくはC1-6
ルコキシ基、特にC1-4アルコキシ基が含まれる。アル
コキシカルボニル基には、例えば、メトキシカルボニ
ル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソ
プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブト
キシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、ペンチルオ
キシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル基などのC
1-10アルコキシ−カルボニル基、好ましくはC1-6アル
コキシ−カルボニル基、特にC1-4アルコキシ−カルボ
ニル基が含まれる。アシル基としては、例えば、ホルミ
ル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリ
ル、バレリル、イソバレリル、ビバロイル基などのC
1-6アシル基が例示できる。
【0022】前記置換基R1及びR2は、同一又は異なっ
ていてもよい。また、前記式(1)において、R1およ
びR2は互いに結合して、二重結合、または芳香族性若
しくは非芳香族性の環を形成してもよい。好ましい芳香
族性又は非芳香族性環は5〜12員環、特に6〜10員
環程度であり、複素環又は縮合複素環であってもよい
が、炭素環である場合が多い。このような環には、例え
ば、非芳香族性炭素環(シクロヘキサン環などの置換基
を有していてもよいシクロアルカン環、シクロヘキセン
環などの置換基を有していてもよいシクロアルケン環な
ど)、非芳香族性橋かけ環(5−ノルボルネン環などの
置換基を有していてもよい橋かけ式炭素環など)、ベン
ゼン環、ナフタレン環などの置換基を有していてもよい
芳香族環が含まれる。前記環は、芳香族環で構成される
場合が多い。前記環は、アルキル基、ハロアルキル基、
ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アル
コキシカルボニル基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、
アミノ基、ハロゲン原子などの置換基を有していてもよ
い。前記式(1)において、Xは酸素原子又はヒドロキ
シル基を示し、窒素原子NとXとの結合は単結合又は二
重結合である。
【0023】前記R1、R2、又はR1及びR2が互いに結
合して形成された二重結合又は芳香族性若しくは非芳香
族性の環には、上記式(1)中に示されるN−置換環状
イミド基がさらに1又は2個形成されていてもよい。例
えば、R1又はR2が炭素数2以上のアルキル基である場
合、このアルキル基を構成する隣接する2つの炭素原子
を含んで前記N−置換環状イミド基が形成されていても
よい。また、R1及びR2が互いに結合して二重結合を形
成する場合、該二重結合を含んで前記N−置換環状イミ
ド基が形成されていてもよい。さらに、R1及びR2が互
いに結合して芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成す
る場合、該環を構成する隣接する2つの炭素原子を含ん
で前記N−置換環状イミド基が形成されていてもよい。
【0024】好ましいイミド化合物には、下記式で表さ
れる化合物が含まれる。
【化3】 (式中、R3〜R6は、同一又は異なって、水素原子、ア
ルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキ
シ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシ
ル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子を
示す。R3〜R6は、隣接する基同士が互いに結合して芳
香族性又は非芳香族性の環を形成していてもよい。式
(1f)中、Aはメチレン基又は酸素原子を示す。R1
2、Xは前記に同じ。式(1c)のベンゼン環には、式
(1c)中に示されるN−置換環状イミド基がさらに1又
は2個形成されていてもよい)
【0025】置換基R3〜R6において、アルキル基、ア
ルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、ハロ
ゲン原子としては、前記R1及びR2の項で例示した置換
基又は原子が挙げられる。ハロアルキル基としては、例
えば、トリフルオロメチル基などのC1-4ハロアルキル
基などが挙げられる。置換基R3〜R6は、通常、水素原
子、炭素数1〜4程度のアルキル基、カルボキシル基、
ニトロ基、ハロゲン原子である場合が多い。R3〜R6
互いに結合して形成する環としては、前記R1及びR2
互いに結合して形成する環と同様であり、特に芳香族性
又は非芳香族性の5〜12員環が好ましい。
【0026】前記イミド化合物は、慣用のイミド化反
応、例えば、対応する酸無水物とヒドロキシルアミンN
2OHとを反応させ、酸無水物基の開環及び閉環を経
てイミド化する方法により調製できる。
【0027】好ましいイミド化合物としては、例えば、
脂肪族多価カルボン酸無水物から誘導されるイミド化合
物(例えば、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒド
ロキシマレイン酸イミドなど)、脂環式多価カルボン酸
無水物又は芳香族多価カルボン酸無水物から誘導される
イミド化合物(例えば、N−ヒドロキシヘキサヒドロフ
タル酸イミド、N,N′−ジヒドロキシシクロヘキサン
テトラカルボン酸イミド、N−ヒドロキシフタル酸イミ
ド、N−ヒドロキシテトラブロモフタル酸イミド、N−
ヒドロキシテトラクロロフタル酸イミド、N−ヒドロキ
シヘット酸イミド、N−ヒドロキシハイミック酸イミ
ド、N−ヒドロキシトリメリット酸イミド、N,N′−
ジヒドロキシピロメリット酸イミド、N,N′−ジヒド
ロキシナフタレンテトラカルボン酸イミドなど)などが
挙げられる。これらのイミド化合物は高い酸化触媒能を
有している。特に好ましいイミド化合物には、脂環式多
価カルボン酸無水物又は芳香族多価カルボン酸無水物、
なかでも芳香族多価カルボン酸無水物から誘導されるN
−ヒドロキシイミド化合物、例えば、N−ヒドロキシフ
タル酸イミドなどが含まれる。式(1)で表されるイミ
ド化合物は酸化反応において、単独で又は二種以上混合
して使用できる。
【0028】酸化触媒は、式(1)で表されるイミド化
合物と助触媒とで構成してもよい。助触媒には、還移金
属化合物(例えば、酸化物、有機酸塩、無機酸塩、ハロ
ゲン化物、錯体、及びヘテロポリ酸又はその塩など)、
ホウ素化合物、第4級アンモニウム塩などが含まれる。
前記遷移金属化合物における遷移金属元素としては、例
えば、周期表3族〜11族元素、特にCe、V、Nb、
Cr、Mo、W、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、N
i、Cuなどが挙げられる。これらの中でも、バナジウ
ムアセチルアセトナート、バナジルアセチルアセトナー
トなどのバナジウム化合物;酢酸コバルト、コバルトア
セチルアセトナートなどのコバルト化合物などが特に好
ましい。助触媒は単独で又は2種以上組み合わせて使用
できる。
【0029】前記式(1)で表されるイミド化合物の使
用量は、広い範囲で選択でき、例えば、基質1モルに対
して0.0001〜1モル、好ましくは0.001〜
0.5モル、さらに好ましくは0.01〜0.3モル程
度である。また、助触媒の使用量も、反応性および選択
率を低下させない範囲で適当に選択でき、例えば、基質
1モルに対して0.0001〜0.7モル、好ましくは
0.0001〜0.5モル、さらに好ましくは0.00
01〜0.3モル程度であり、0.0005〜0.1モ
ル程度である場合が多い。
【0030】前記式(1)で表されるイミド化合物を用
いる酸化反応に利用される酸素は、活性酸素であっても
よいが、分子状酸素を利用するのが有利である。分子状
酸素は特に制限されず、純粋な酸素を用いてもよく、窒
素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素などの不活性ガス
で希釈した酸素を用いてもよい。操作性および安全性の
みならず経済性などの点から、空気を使用するのが好ま
しい。
【0031】酸素の使用量は、基質の種類に応じて、例
えば、基質1モルに対して0.5モル以上(例えば、1
モル以上)、好ましくは1〜100モル、さらに好まし
くは2〜50モル程度である。
【0032】前記酸化反応は、通常、反応に不活性な溶
媒中で行われる。前記溶媒としては、例えば、酢酸、プ
ロピオン酸などの有機酸;アセトニトリル、プロピオニ
トリル、ベンゾニトリルなどのニトリル;ホルムアミ
ド、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド;t−
ブタノール、t−アミルアルコールなどのアルコール;
ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼン、
トルエンなどの芳香族炭化水素;クロロホルム、ジクロ
ロメタン、ジクロロエタン、フルオロベンゼン、クロロ
ベンゼン、ブロモベンゼン、トリフルオロメチルベンゼ
ンなどのハロゲン化炭化水素;ニトロメタン、ニトロベ
ンゼンなどのニトロ化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、
安息香酸メチル、安息香酸エチルなどのエステル類;ジ
エチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテ
ル、及びこれらの混合溶媒などが挙げられる。溶媒とし
ては、有機酸、ニトリル、ハロゲン化炭化水素などを用
いる場合が多い。
【0033】反応温度は、前記イミド化合物や基質の種
類などに応じて適当に選択でき、例えば、0〜300
℃、好ましくは30〜250℃、さらに好ましくは40
〜150℃程度であり、通常、60〜120℃程度で反
応する場合が多い。また、反応は、常圧又は加圧下で行
うことができ、加圧下で反応させる場合には、通常、1
〜100atm(例えば、1.5〜80atm)、好ま
しくは2〜70atm、さらに好ましくは5〜50at
m程度である。反応時間は、反応温度及び圧力に応じ
て、例えば、30分〜48時間、好ましくは1〜36時
間、さらに好ましくは2〜24時間程度の範囲から適当
に選択できる。反応は、分子状酸素の存在下又は分子状
酸素の流通下、回分式、半回分式、連続式などの慣用の
方法により行うことができる。
【0034】前記酸化触媒を利用して、脂環式炭化水素
類やこれに対応する脂環式モノオール類を酸素酸化する
と、主として対応する脂環式モノオール類及び脂環式ジ
オール類が生成し、反応条件によっては脂環式トリオー
ル類等の脂環式ポリオール類、環を構成するメチレン基
が酸化された環状ケトン類や環状ケトオール類などが副
生する。したがって、上記酸化反応により、脂環式モノ
オール類、脂環式ジオール類及び触媒、並びに、条件に
よっては、脂環式ポリオール類、環状ケトン類、環状ケ
トオール類、未反応脂環式炭化水素類などを含む混合物
が得られる。
【0035】なお、前記酸化反応において、基質である
脂環式炭化水素類又は脂環式モノオール類として、メチ
ン炭素原子を有する化合物[例えば、橋頭位(若しくは
接合位)にメチン基を有する橋かけ環式化合物、環に炭
化水素基が結合した脂環式化合物など]を用いると、前
記メチン炭素原子にヒドロキシル基が導入された脂環式
モノオール類及び/又はジオール類が主に生成する。
【0036】例えば、アダマンタン及び/又は1−アダ
マンタノールを基質として酸化すると、1−アダマンタ
ノール、1,3−アダマンタンジオール、及び条件によ
り、1,3,5−アダマンタントリオール、1,3,
5,7−アダマンタンテトラオール、2−アダマンタノ
ン、未反応アダマンタンなどを含む混合物が得られる。
1,3−ジメチルアダマンタン及び/又は1,3−ジメ
チル−5−アダマンタノールを基質として酸化すると、
1,3−ジメチル−5−アダマンタノール、1,3−ジ
メチル−5,7−アダマンタンジオール、及び条件によ
り、1,3−ジメチルアダマンタノン、1,3−ジメチ
ル−5−ヒドロキシアダマンタノン、未反応1,3−ジ
メチルアダマンタンなどを含む混合物が得られる。ま
た、エンドトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン及
び/又は2−ヒドロキシエンドトリシクロ[5.2.
1.02,6]デカンを酸化すると、主として、2−ヒド
ロキシエンドトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ
ン、2,6−ジヒドロキシエンドトリシクロ[5.2.
1.02,6]デカンが生成する。さらに、デカリン及び
/又は4a−ヒドロキシデカリンを酸化する場合には、4a
−ヒドロキシデカリン、4a,8a−ジヒドロキシデカリン
などが生成する。また、基質として、ノルボルナン及び
/又は1−ヒドロキシノルボルナンを用いると、1−ヒ
ドロキシノルボルナン及び/又は1,4−ジヒドロキシ
ノルボルナンなどが生成する。また、前記酸化反応にお
いて環状ケトン類が副生する場合には、後述の晶析工程
(b)の前に、環状ケトン類を脂環式炭化水素類又は脂
環式モノオール類に還元する還元工程を設けてもよい。
還元方法としては、例えば、水素による接触還元法、金
属、金属水素化物、金属水素錯化合物、ボラン、ヒドラ
ジンなどの還元剤による還元法などが挙げられる。
【0037】[脂環式モノオール類晶析工程(b)]脂
環式モノオール類晶析工程(b)(晶析工程(b1)及び
(b2)を含む)では、少なくとも脂環式モノオール類と
脂環式ジオール類とを含む混合物を、少なくとも水を含
む水性溶媒を用いた晶析操作に付し、脂環式モノオール
類を晶析させる。
【0038】晶析操作に付す脂環式モノオール類と脂環
式ジオール類とを含む混合物としては、前記酸化工程に
より得られた反応生成物に限らず、対応するハロゲン化
物やエステル体の加水分解により得られた反応生成物で
あってもよい。また、酸化反応などにより得られた反応
混合液を晶析操作に付す際には、予め、反応溶媒の留去
等の前処理を施してもよい。
【0039】前記水性溶媒としては、水単独、または水
と水溶性有機溶媒との混合溶媒を用いることができる。
前記水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エ
タノール、イソプロパノールなどの炭素数1〜3の脂肪
族一価アルコール;シクロヘキサノールなどの脂環式一
価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコ
ール、グリセリンなどの多価アルコール;ギ酸、酢酸、
プロピオン酸、ヘキサン酸、デカン酸などのカルボン
酸;アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン;アセト
ニトリル、プロピオニトリルなどの脂肪族ニトリル;エ
チレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエ
ーテル;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エ
ーテル;N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスル
ホキシド、ピリジンなどの非プロトン性極性溶媒などが
挙げられる。これらの有機溶媒は単独で又は2種以上を
組み合わせて使用できる。好ましい水溶性有機溶媒に
は、炭素数1〜10(特に、炭素数2〜5)程度のカル
ボン酸、アセトン、アセトニトリル、炭素数1〜3の脂
肪族一価アルコール、環状エーテルなどが含まれる。な
お、前記酸化工程(a)などの反応工程において、反応
溶媒として水溶性溶媒(例えば、酢酸などのカルボン酸
等)を用いると、反応終了後、反応混合液を適当な程度
に濃縮し、水を加えるという簡単な操作で、脂環式モノ
オール類を晶析させることができる。
【0040】好ましい水性溶媒では、水溶性有機溶媒と
水との割合(重量比)が、前者/後者=0/100〜5
0/50、特に0/100〜40/60、とりわけ5/
950〜30/70程度である。
【0041】晶析操作は、慣用の方法、例えば、少なく
とも脂環式モノオール類と脂環式ジオール類とを含む混
合物を前記水性溶媒に溶解させた状態から、冷却又は濃
縮することにより行うことができる。
【0042】この晶析操作において、脂環式モノオール
類と脂環式ジオール類とを含む混合物を溶解させる際の
温度は、例えば10〜180℃、好ましくは10〜10
0℃、さらに好ましくは15〜60℃程度である。前記
溶解温度が高すぎると、脂環式ジオール類が変質しやす
くなり、溶解温度が低すぎると溶解性が低下し、晶析効
率が低くなる。なお、水性溶媒として、水溶性有機溶媒
(例えば、カルボン酸など)と水との混合溶媒を用いる
場合、脂環式モノオール類と脂環式ジオール類の混合物
を含む前記混合溶媒の溶液を冷却または濃縮することに
より脂環式モノオール類を析出させてもよく、また、前
記混合物を含む必要に応じて加温された前記水溶性有機
溶媒(または前記混合溶媒)の溶液に、水を添加するこ
とにより脂環式モノオール類を析出させてもよい。
【0043】析出した脂環式モノオール類は、慣用の分
離方法、例えば、濾過、遠心分離などの方法により分離
回収できる。この脂環式モノオール類は、例えば後述の
脂環式モノオール類洗浄工程(d)などの洗浄工程に供
したり、再結晶操作などによりさらに高度に精製でき
る。脂環式モノオール類は、必要に応じて、反応工程
(例えば、前記酸化工程(a))にリサイクルできる。
脂環式モノオール類を反応系にリサイクルすることによ
り、脂環式炭化水素類から脂環式ジオール類を効率よく
製造することができる。また、脂環式モノオール類は、
後述のように、強酸により対応する環状ケトン類に変換
することもできる(工程(g))。
【0044】なお、脂環式モノオール類と脂環式ジオー
ル類とを含む混合物に、さらに環状ケトン類が含まれて
いる場合には、該混合物を上記の脂環式モノオール類晶
析工程(b)に供することにより、脂環式モノオール類
と環状ケトン類とを晶析させることができる(脂環式モ
ノオール類及び環状ケトン類晶析工程(b2))。得られ
た混合物は、例えば、洗浄、再結晶、カラムクロマトグ
ラフィーなどにより分離精製できる。。
【0045】[抽出工程(c)]抽出工程(c)(抽出
工程(c1)及び(c2)を含む)では、前記脂環式モノオ
ール類晶析工程(b)において析出した脂環式モノオー
ル類を回収した後の脂環式ジオール類を含む残液に、前
記脂環式ジオールに対して抽出効果の高い(i)炭素数
3以上のアルコールと、脂環式トリオール以上の脂環式
ポリオールに対して良溶媒である水が有機層へ分配する
割合を抑制する(ii)脂肪族炭化水素との混合溶媒を加
えて抽出し、脂環式ジオール類を有機溶媒層に分配す
る。
【0046】上記炭素数3以上のアルコールとしては、
プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、
イソブチルアルコール、s−ブチルアルコール、ペンタ
ノール、イソペンチルアルコール、ヘキサノール、イソ
ヘキシルアルコール、3,3−ジメチルブタノール、ヘ
プタノール、イソヘプチルアルコール、オクタノール、
イソオクチルアルコール、2−エチルヘキサノール、デ
カノール、ドデカノール、シクロペンタノール、シクロ
ヘキサノール、メチルシクロヘキサノールなどの炭素数
3〜14程度の脂肪族又は脂環式アルコール;ベンジル
アルコール、2−フェネチルアルコールなどの炭素数7
〜10程度の芳香族アルコールなどが含まれる。これら
の中でも、脂環式トリオールなどのポリオール類の有機
溶媒層への移行を抑制するため、ブタノール、ヘキサノ
ール、2−エチルヘキサノールなどの炭素数4〜10程
度の脂肪族又は脂環式アルコール;ベンジルアルコール
などの炭素数7〜12程度の芳香族アルコールなどが好
ましい。特に好ましいアルコールには、ブタノールなど
の炭素数4〜8程度の脂肪族アルコールなどが含まれ
る。炭素数3以上のアルコールは1種又は2種以上使用
できる。
【0047】前記脂肪族炭化水素としては、例えば、ペ
ンタン、ヘキサン、イソヘキサン、3−メチルペンタ
ン、2−エチルブタン、2,2−ジメチルブタン、ヘプ
タン、イソヘプタン、3−メチルヘキサン、2,2−ジ
メチルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、3−エチ
ルペンタン、オクタン、イソオクタン、2−エチルヘキ
サン、ノナン、デカン、ドデカンなどの炭素数5〜12
程度の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素などが挙げ
られる。これらの中でも、炭素数5〜8程度の直鎖状又
は分岐鎖状の脂肪族炭化水素が好ましく、特にヘプタン
などの炭素数7の脂肪族炭化水素が好ましい。脂肪族炭
化水素は1種又は2種以上使用できる。
【0048】前記(i)炭素数3以上のアルコールと
(ii)脂肪族炭化水素との比率は、脂環式ジオール類の
種類等によっても異なるが、例えば、(i)/(ii)
(重量比)=5/95〜95/5、好ましくは15/8
5〜85/15、さらに好ましくは30/70〜70/
30程度である。
【0049】上記混合溶媒の使用量は、水性溶媒層の
量、水性溶媒層中に含まれる脂環式ジオール類の種類及
び量などを考慮して適宜選択できる。例えば、前記混合
溶媒の使用量は、前記水性溶媒層1重量部に対して、例
えば0.05〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量
部程度である。
【0050】抽出操作は慣用の方法で行うことができ、
回分式、半回分式、連続式の何れの方式で行ってもよ
い。抽出操作は複数回(例えば、2〜10回程度)繰り
返してもよい。また、抽出温度は、例えば0〜100
℃、好ましくは5〜50℃、さらに好ましくは10〜3
5℃程度である。
【0051】上記抽出により有機溶媒層に分配された脂
環式ジオール類は、慣用の分離手段、例えば、濃縮、晶
析、抽出、再結晶、カラムクロマトグラフィー、又はこ
れらの組み合わせにより分離精製することができる。例
えば、後述の脂環式ジオール類晶析工程(e)により、
脂環式ジオール類を分離精製できる。
【0052】なお、前記脂環式モノオール類晶析工程
(b)において析出した脂環式モノオール類を回収した
後の脂環式ジオール類を含む残液に、脂環式トリオール
類などの脂環式ポリオール類が含まれている場合(脂環
式モノオール類晶析工程(b1))には、この抽出工程
(c)において、該脂環式トリオール類などの脂環式ポ
リオール類は水層に分配される(抽出工程(c1))。そ
して、この水層から、慣用の分離手段、例えば、濃縮、
晶析、抽出、再結晶、カラムクロマトグラフィー、又は
これらの組み合わせにより、脂環式トリオール類などの
脂環式ポリオール類を分離することができる。
【0053】また、前記脂環式モノオール類及び環状ケ
トン類晶析工程(b2)において前記脂環式モノオール類
と環状ケトン類とを回収した残液に、上記と同様、炭素
数3以上のアルコールと脂肪族炭化水素との混合溶媒を
加えて抽出することにより、脂環式ジオール類を有機溶
媒層に分配することができる(抽出工程(c2))。
【0054】本発明では、前記脂環式モノオール類晶析
工程(b)と抽出工程(c)とを組み合わせることによ
り、脂環式モノオール類と脂環式ジオール類とを効率よ
く分離でき、分離した脂環式モノオール類を必要に応じ
て反応系にリサイクルできると共に、脂環式モノオール
類含量の少ない高純度の脂環式ジオール類を簡易に得る
ことができる。
【0055】[脂環式モノオール類晶析工程(d)]前
記脂環式モノオール類晶析工程(b)(晶析工程(b1)
を含む)で得られた結晶をアルカリ水溶液で洗浄するこ
とにより、例えば、脂環式ジオール類や脂環式トリオー
ル類、親水性の溶媒(例えば、酢酸など)、前記イミド
化合物触媒、その他の不純物を効率よく除去でき、純度
の高い脂環式モノオール類を得ることができる。
【0056】また、同様に、前記脂環式モノオール類及
び環状ケトン類晶析工程(b2)で得られた結晶をアルカ
リ水溶液で洗浄することにより、他の不純物の含有量の
少ない脂環式モノオール類と環状ケトン類との混合物を
得ることができる。
【0057】アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウ
ム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶
液;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属
炭酸塩の水溶液;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウ
ムなどのアルカリ金属炭酸水素塩の水溶液などが挙げら
れる。アルカリ水溶液のアルカリ成分濃度は、例えば
0.5〜20重量%程度、好ましくは1〜10重量%程
度である。
【0058】アルカリ水溶液の使用量は、洗浄効率や作
業性を損なわない範囲で適宜選択でき、例えば、1回に
付き、被洗浄液100重量部に対して、10〜500重
量部程度、好ましくは30〜200重量部程度である。
洗浄回数は1回でもよく複数回でもよい。洗浄温度は、
洗浄効率や品質を損なわない範囲であればよく、例えば
10〜100℃程度、好ましくは15〜90℃程度、さ
らに好ましくは30〜70℃程度である。
【0059】アルカリ水溶液による洗浄後、好ましくは
水でさらに洗浄し、濾過、遠心分離などの慣用の分離手
段に付すことにより脂環式モノオール類(又は脂環式モ
ノオール類と環状ケトン類との混合物)を得ることがで
きる。
【0060】得られた脂環式モノオール類(又は脂環式
モノオール類と環状ケトン類との混合物)は、反応工程
(例えば、前記酸化工程(a))にリサイクルできる。
また、脂環式モノオール類は、後述のように、強酸によ
り対応する環状ケトン類に変換することもできる(工程
(g))。
【0061】[脂環式ジオール類晶析工程(e)]前記
抽出工程(c)(抽出工程(c1)及び(c2)を含む)で
得られた有機溶媒層に含まれる有機成分を有機溶媒を用
いた晶析操作に付すことにより、脂環式ジオール類を高
純度の結晶として効率よく得ることができる。
【0062】晶析に用いる有機溶媒としては、例えば、
炭素数3以上のアルコール、脂肪族炭化水素、鎖状エー
テル、及び芳香族系有機溶媒から選択された少なくとも
1種の溶媒が挙げられる。炭素数3以上のアルコール、
及び脂肪族炭化水素としては、前記抽出工程(c)にお
いて例示した化合物を使用できる。鎖状エーテルには、
メチル−t−ブチルエーテル、ジエチルエーテルなどが
含まれる。
【0063】また、芳香族系有機溶媒には、例えば、芳
香族カルボン酸エステル(例えば、安息香酸メチル、安
息香酸エチル、安息香酸ブチル、フタル酸ジメチル、フ
タル酸ジエチル、フタル酸ジブチルなどのC7-8アリー
ルモノ又はジカルボン酸−C1 -6アルキルエステルな
ど)、脂肪族カルボン酸アリールエステル(例えば、酢
酸フェニル、プロピオン酸フェニルなどのC1-6脂肪族
カルボン酸フェニルエステルなど)、脂肪族カルボン酸
アラルキルエステル(例えば、酢酸ベンジルなどのC
1-6脂肪族カルボン酸−C7-9アラルキルエステルなど)
などの芳香族エステル;ハロゲン化アリール(例えば、
フルオロベンゼン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、
ジクロロベンゼン、ジブロモベンゼンなどのハロベンゼ
ン類など);ハロアルキル置換ベンゼン(例えば、トリ
フルオロメチルベンゼンなど);芳香族ニトリル(例え
ば、ベンゾニトリルなど);芳香族ケトン(例えば、ア
セトフェノンなど);芳香族エーテル(例えば、ベンジ
ルエーテルなど)などが含まれる。これらの芳香族系有
機溶媒のうち、芳香族カルボン酸エステル(安息香酸エ
ステルなど)などの芳香族エステル、ハロゲン化アリー
ルなどが好ましい。
【0064】上記の有機溶媒の中でも、炭素数4〜12
程度の脂肪族又は脂環式アルコール、脂肪族炭化水素、
鎖状エーテル、芳香族カルボン酸エステル(安息香酸エ
ステルなど)などの芳香族エステル、ハロゲン化アリー
ルなどが好ましく、特にブタノールなどの炭素数4〜8
程度の脂肪族アルコール、ヘプタンなどの脂肪族炭化水
素、メチル−t−ブチルエーテルなどの鎖状エーテル、
又はこれらの2種以上の混合溶媒などが好ましい。
【0065】晶析操作は、例えば、前記抽出工程(c)
で得られた有機溶媒層を適当な程度に又は完全に濃縮
し、これに前記有機溶媒を加え、必要に応じて加温し、
溶液とした状態から、冷却又は濃縮することにより行う
ことができる。
【0066】析出した脂環式ジオール類は、慣用の分離
方法、例えば、濾過、遠心分離、リンス、乾燥させ、さ
らに必要に応じて再結晶に付すことにより分離回収でき
る。前記リンスに用いる溶媒としては、例えば、メチル
−t−ブチルエーテルなどの鎖状エーテル、酢酸t−ブ
チルなどのエステル、トルエンなどの芳香族炭化水素、
ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素、シクロヘキ
サンなどの脂環式炭化水素、ジクロロエタンなどのハロ
ゲン化炭化水素若しくはこれらの混合溶媒、又はこれら
の溶媒と前記芳香族系有機溶媒及び炭素数3以上のアル
コールから選択された少なくとも1種の有機溶媒との混
合溶媒が挙げられる。リンス溶媒として、特にメチル−
t−ブチルエーテルなどの鎖状エーテルが好ましい。
【0067】なお、乾燥効率を高めたり、脂環式ジオー
ル類に対応する脂環式モノオール類が昇華性を有する場
合(例えば、1,3−ジメチル−5−アダマンタノール
など)などにおいて該脂環式モノオール類を効率よく除
去するため、晶析後の乾燥を、例えば、温度60℃以上
(例えば、60〜90℃程度)、圧力20Torr
(2.66kPa)以下[例えば、5〜20Torr
(0.665〜2.66kPa)程度]の条件で行うの
が好ましい。
【0068】脂環式ジオール類晶析工程(e)で得られ
た濾液に脂環式モノオール類が含まれる場合には、該濾
液は、必要に応じて適当な処理(分離精製処理など)を
施した後、反応工程(例えば、前記酸化工程(a))に
リサイクルできる。
【0069】なお、脂環式ジオール類晶析工程(e)で
得られた濾液に溶解している脂環式ジオール類は、例え
ば、以下のようにして回収できる。すなわち、該濾液に
水を加えて抽出することにより、有機層から脂環式ジオ
ール類を回収できる。また、その水層に、前記抽出工程
(c)と同様、炭素数3以上のアルコールと脂肪族炭化
水素との混合溶媒を加えて抽出し、得られた有機層を濃
縮した濃縮物を、この脂環式ジオール類晶析工程(e)
に再度供することにより、残りの脂環式ジオール類を回
収できる。
【0070】[脂環式トリオール類晶析工程(f)]前
記抽出工程(c1)で得られた水層に含まれる脂環式トリ
オール類は、水と水溶性有機溶媒との混合溶媒を用いて
晶析することにより単離できる。水溶性有機溶媒として
は、例えば、前記脂環式モノオール類晶析工程(b)に
おいて例示した水溶性有機溶媒などを使用できる。それ
らの中でも、アセトンなどのケトン類等が好ましい。
【0071】水と水溶性有機溶媒との比率は、脂環式ト
リオール類の種類、水溶性有機溶媒の種類などによって
も異なるが、一般には、前者/後者(重量比)=5/9
5〜95/5程度、好ましくは10/90〜90/10
程度、さらに好ましくは20/80〜80/20程度で
ある。
【0072】晶析操作は、例えば、前記抽出工程(c1)
で得られた水層を適当な程度に濃縮し、これに前記水溶
性有機溶媒を加え、必要に応じて加温し、溶液とした状
態から、冷却又は濃縮することにより行うことができ
る。
【0073】析出した脂環式トリオール類は、例えば、
濾過又は遠心分離後、リンス、乾燥させ、さらに必要に
応じて再結晶に付すことにより分離回収できる。前記リ
ンスに用いる溶媒としては、例えば、アセトンなどの水
溶性有機溶媒が好ましい。
【0074】[脂環式モノオール類の環状ケトン類への
変換工程(g)]前記脂環式モノオール類晶析工程
(b)(晶析工程(b1)及び(b2)を含む)、又はさら
に脂環式モノオール類洗浄工程(d)を経て得られる脂
環式モノオール類は、強酸で処理することにより、対応
する環状ケトン類に変換できる。
【0075】強酸としては、例えばpKa−15〜2程
度の酸が使用でき、その代表的な例として濃硫酸などが
挙げられる。強酸の使用量は、例えば、脂環式モノオー
ル類1モルに対して1モル以上、好ましくは2モル以
上、さらに好ましくは大過剰量である。
【0076】反応温度は、反応速度と反応の選択性とを
考慮して適宜選択できるが、通常、10〜150℃程
度、好ましくは40〜100℃程度の範囲である。反応
混合物を、濃縮、抽出、晶析、再結晶などの慣用の分離
精製手段に付すより、生成した環状ケトン類を分離精製
できる。例えば、反応混合物に水と有機溶媒(例えば、
シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素など)とを加え、
必要に応じて不溶物を濾別した後、分液させ、有機層を
濃縮し、濃縮物を水を用いた晶析操作に付すことによ
り、生成した環状ケトン類を効率よく取得できる。
【0077】この変換工程(g)により、例えば、1−
アダマンタノールなどの橋頭位にヒドロキシル基を有す
る橋かけ環式アルコールを2−アダマンタノンなどの橋
頭位の隣接位にケト基を有する橋かけ環式環状ケトンに
効率よく変換できる。こうして得られた環状ケトン類
は、高機能性材料や医農薬の原料などとして利用するこ
とができる。
【0078】
【発明の効果】本発明の分離方法によれば、特定の溶媒
を用いた晶析工程と抽出工程とを組み合わせるので、少
なくとも脂環式モノオール類と脂環式ジオール類とを含
む混合物から該モノオール類及び/又はジオール類を効
率よく分離できる。また、少なくとも脂環式モノオール
類と脂環式ジオール類と脂環式トリオール類を含む混合
物から、該モノオール類、ジオール類及びトリオール類
を効率よく分離できる。さらに、少なくとも脂環式モノ
オール類と脂環式ジオール類と環状ケトン類を含む混合
物から、該モノオール類及びケトン類とジオール類とを
効率よく分離できる。また、本発明の製造方法によれ
ば、脂環式炭化水素類又は該脂環式炭化水素類に対応す
る脂環式モノオール類から、対応する脂環式アルコール
類を効率よく製造できる。
【0079】
【実施例】以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説
明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定され
るものではない。なお、1−アダマンタノールを「アダ
マンタンモノオール」、1,3−アダマンタンジオール
を「アダマンタンジオール」、1,3,5−アダマンタ
ントリオールを「アダマンタントリオール」、2−アダ
マンタノンを「アダマンタノン」とそれぞれ略称する。
【0080】実施例1(アダマンタンジオール製造) アダマンタン1200.0g(8.82mol)、N−
ヒドロキシフタルイミド215.5g(1.32mo
l)、バナジウム(III)アセチルアセトナート2.3
0g(0.0066mol)、酢酸8000.0gをオ
ートクレーブに仕込み、反応温度80〜90℃、反応圧
力2.0MPaの条件下、オートクレーブ缶底部より空
気を540L(標準状態)/時で3時間流通し反応させ
た。反応終了液量は9777gで、反応生成物をガスク
ロマトグラフィー分析した結果、アダマンタンモノオー
ル2.59重量%(収率18.8mol%、253
g)、アダマンタノン1.18重量%(収率8.74m
ol%、115g)、アダマンタンジオール4.29重
量%(収率28.3mol%、419g)、アダマンタ
ントリオール1.11重量%(収率6.7mol%、1
09g)、アダマンタン転化率99.1%であった。こ
の反応終了液をロータリーエバポレーターを用いて圧力
80〜100Torr(10.6〜13.3kPa)、
オイルバス温度140℃で減圧濃縮し、濃縮液2288
g(仕込み液量に対して77重量%留出させた)を得
た。この濃縮液に、冷却することなく水4314gを仕
込み、液温20〜30℃で1時間攪拌した(アダマンタ
ンモノオール晶析工程)。生じたスラリー液は減圧吸引
ろ過し、ろ過物878g、ろ液5724gを得た。この
ろ過物は、アダマンタン1.2重量%(11g)、アダ
マンタンモノオール26.0重量%(228g)、アダ
マンタノン11.8重量%(104g)、アダマンタン
ジオール5.8重量%(51g)、アダマンタントリオ
ール0.80重量%(7g)、水26.6重量%(23
4g)、酢酸3.4重量%(30g)、N−ヒドロキシ
フタルイミド2.0重量%(18g)、不明成分22.
2重量%(195g)を含んでいた。ろ液は、アダマン
タンモノオール0.44重量%(25g)、アダマンタ
ノン0.19重量%(11g)、アダマンタンジオール
6.43重量%(368g)、アダマンタントリオール
1.78重量%(102g)を含んでいた。上記のろ液
からアダマンタンジオールを抽出するために、n−ブタ
ノールとn−ヘプタンを重量比で1対1の割合で含む抽
出溶剤を用いて3回抽出を行い、有機層16567g、
水層3557gを得た(アダマンタンジオール抽出工
程)。この有機層は、アダマンタンモノオール0.15
重量%(25g)、アダマンタノン0.07重量%(1
1g)、アダマンタンジオール2.09重量%(346
g)、アダマンタントリオール0.14重量%(23
g)を含んでいた。また、水層は、アダマンタンジオー
ル0.62重量%(22g)、アダマンタントリオール
2.22重量%(79g)を含んでいた。有機層を、ロ
ータリーエバポレーターを用いて圧力200〜80To
rr(26.6〜10.6kPa)、オイルバス温度1
40℃で減圧濃縮し、濃縮液2200g(仕込み液量に
対して87重量%を留出させた)を得た。この濃縮液に
残留する酢酸3.6重量%(79g)を留去するため
に、n−ブタノール2000gを加えて減圧濃縮し、濃
縮液として1400g[残留酢酸3.2重量%(45
g)]を得た。この濃縮液を20℃まで冷却したとこ
ろ、結晶が析出した。このスラリー化した液中にメチル
−t−ブチルエーテル4500gを仕込み、液温0〜1
0℃で1時間攪拌した(アダマンタンジオール晶析工
程)。このスラリー液を減圧吸引ろ過後、得られた湿結
晶をメチル−t−ブチルエーテル380gでリンスする
ことで、湿結晶313g、ろ液5967gを得た。ろ液
は、アダマンタンモノオール0.35重量%(21
g)、アダマンタノン0.18重量%(11g)、アダ
マンタンジオール1.47重量%(88g)、アダマン
タントリオール0.18重量%(11g)を含んでい
た。また、湿結晶は、アダマンタンモノオール1.0重
量%(3.2g)、アダマンタンジオール82.4重量
%(258g)、アダマンタントリオール3.8重量%
(12g)を含んでいた。得られた湿結晶を乾燥(圧力
20Torr(2.66kPa)以下、温度80℃、6
時間)させることにより、純度90.2重量%のアダマ
ンタンジオール285gを得た。この乾燥品中には、ア
ダマンタンモノオール1.1重量%、アダマンタントリ
オール4.0重量%、アダマンタンケトオール0.9重
量%が含まれていた。以上、アダマンタンジオールの製
造成績は、反応収率28.3mol%、精製収率61.
4%、アダマンタン原料からの一貫収率17.4mol
%であった。
【0081】実施例2(アダマンタンモノオールなどの
精製) 実施例1のアダマンタンモノオール晶析工程で得られた
ろ過物878gに対して5重量%NaOH水溶液を2重
量倍加えて、液温50℃で1時間攪拌した。これを減圧
吸引ろ過し、得られた湿結晶を、5重量%NaOH水溶
液400g、続いて水400gでリンスして湿結晶60
7gを得た。この湿結晶を乾燥(圧力20Torr
(2.66kPa)以下、温度60℃、16時間)させ
た。得られた乾燥品(白色粉末)の重量は416gで、
アダマンタン2.6重量%(11g)、アダマンタンモ
ノオール53.2重量%(221g)、アダマンタノン
24.7重量%(103g)、アダマンタンジオール
5.8重量%(24g)、水分0.55重量%(2.3
g)、N−ヒドロキシフタルイミド0.042重量%
(0.17g)、不明成分13.0重量%(54g)を
含んでいた。
【0082】実施例3(回収したアダマンタンモノオー
ルの酸化) 実施例2で得られた乾燥品4バッチ分の合計1664g
(アダマンタンモノオール含量884g、5.82mo
l;アダマンタンジオール含量96g、0.57mo
l)、N−ヒドロキシフタルイミド190g(1.17
mol)、バナジウム(III)アセチルアセトナート
2.03g(5.83mmol)、酢酸5511gをオ
ートクレーブに仕込み、反応圧力2.0MPa、反応温
度80〜85℃の条件下、オートクレーブ缶底部より空
気を200L(標準状態)/時で3.5時間流通し反応
させた。反応終了液量は7432gで、反応生成物をガ
スクロマトグラフィー分析した結果、アダマンタンモノ
オール4.40重量%(2.15mol、327g)、
アダマンタノン4.17重量%(2.07mol、31
0g)、アダマンタンジオール6.03重量%(2.6
7mol、448g)、アダマンタントリオール1.4
4重量%(0.582mol、107g)であった。反
応終了液は実施例1と同様の方法で精製を行い、純度9
0.0重量%のアダマンタンジオール309gを得た。
この乾燥品中には、アダマンタンモノオール1.1重量
%、アダマンタントリオール3.5重量%、アダマンタ
ンケトオール0.8重量%が含まれていた。この場合、
得られたアダマンタンジオールの収率は、実施例1で仕
込んだアダマンタン(1200g、8.82mol)基
準で4.7mol%(1バッチ当り)であった。
【0083】実施例4(アダマンタントリオールの分
離) 実施例1で得られた水層3557gを、ロータリーエバ
ポレーターを用いて圧力200〜500Torr(2
6.6〜66.5kPa)、オイルバス温度140℃で
減圧濃縮し、濃縮液427g(仕込み液量に対して88
重量%留出させた)を得た。この中に等量のアセトンを
仕込み、生じたスラリー液を20℃まで冷却した。この
スラリー液を減圧吸引ろ過し、得られた湿結晶をアセト
ン100gでリンスした。この湿結晶の重量は92g
で、これを減圧乾燥(130℃、20Torr(2.6
6kPa)以下、12時間)させることで、純度94.
1重量%のアダマンタントリオール73g(アダマンタ
ントリオール:0.38mol、69g)を得た。この
乾燥品中には、アダマンタンジオール4.6重量%
(0.02mol、3.4g)が含まれていた。この場
合、得られたアダマンタントリオールの収率は、実施例
1で仕込んだアダマンタン基準で4.3mol%であっ
た。
【0084】実施例5(アダマンタンモノオールのアダ
マンタノンへの変換) 実施例1の操作を繰り返してアダマンタンモノオール晶
析工程で得られたろ過物878gを、文献記載の方法
(Tetrahedron, 1968, 24(15), 5361-8)に準じ、96
%硫酸6300g中、反応温度75℃で2時間反応さ
せ、アダマンタンモノオールをアダマンタノンへ転換し
た。反応終了液を水10kg中へ徐々に仕込み、液温2
5℃とした。得られたスラリー液にシクロヘキサン3k
gを加えて1時間攪拌させ、減圧吸引ろ過した。得られ
たろ液は分液し、下層をシクロヘキサン3kgで2回抽
出した。抽出で得られたシクロヘキサン層をロータリー
エバポレーターを用いて圧力400〜500Torr
(53.2〜66.5kPa)、バス温度120℃で減
圧濃縮し、濃縮液1800gを得た。この濃縮液を、圧
力200Torr(26.6kPa)、バス温度70℃
の条件下、水1kgを仕込んだロータリーエバポレータ
ー中に連続的に仕込み、シクロヘキサンの留出液170
0gを得た。ここで、シクロヘキサンを留去した残液は
スラリー化した。このスラリーを25℃まで冷却して減
圧吸引ろ過することで、湿結晶177gを得た。この湿
結晶を乾燥して(圧力20Torr(2.66kPa)
以下、40℃、8時間)、純度97重量%のアダマンタ
ノン(白色固体)124gを得た。この場合、得られた
アダマンタノンの収率は、実施例1で仕込んだアダマン
タン基準で9.1mol%であった。
【0085】実施例6(アダマンタンモノオールのアダ
マンタノンへの変換) 実施例2で得られた乾燥品を、実施例5と同様の方法で
反応させて、精製したところ、得られたアダマンタノン
は141gであった(純度97重量%)。この場合、得
られたアダマンタノンの収率は、実施例1で仕込んだア
ダマンタン基準で10.3mol%であった。
【0086】実施例7(ろ液からのアダマンタンジオー
ル(第二晶)の回収) 実施例1で得られたメチル−t−ブチルエーテルを含む
ろ液5967gに水6000gを加えて、液温25℃で
1時間攪拌後、1時間静置させ、上層5693g、下層
6274gを得た。上層中のアダマンタンジオールの含
有量は0.58重量%(33g)、下層のそれは0.8
8重量%(55g)であった。得られた下層に、n−ブ
タノールとn−ヘプタンを重量比で1対1の割合で含む
抽出溶剤(又は、実施例1の抽出工程で得られた有機層
を濃縮する際に得られた留出液)を下層量に対して同量
加えて、2回抽出した。得られた上層の量は12548
g、下層の量は6274gであり、上層中のアダマンタ
ンジオール含有量は0.36重量%(45g)、下層の
それは0.16重量%(10g)であった。得られた上
層をロータリーエバポレーターを用いて圧力200〜1
00Torr(26.6〜13.3kPa)、オイルバ
ス温度140℃で減圧濃縮し、濃縮液205g(仕込み
液量に対して98重量%留出させた)を得た。この濃縮
液を20℃まで冷却後、スラリー化した液中にメチル−
t−ブチルエーテル(又は、上記の水抽出後に得られた
上層を精留することによって回収したn−ブタノールを
含まないメチル−t−ブチルエーテル)615g(濃縮
液に対して3重量倍)を仕込み、液温0〜10℃で1時
間攪拌した。このスラリー液を減圧吸引ろ過後、得られ
た湿結晶をメチル−t−ブチルエーテル50gでリンス
することで、湿結晶40g、ろ液830gを得た。ろ液
中のアダマンタンジオール含有量は1.57重量%(1
3g)であった。得られた湿結晶を乾燥(圧力20To
rr(2.66kPa)以下、温度80℃、6時間)さ
せることにより、純度90.3重量%のアダマンタンジ
オール36gを得た。この乾燥品中には、アダマンタン
モノオール0.6重量%、アダマンタントリオール1.
7重量%、アダマンタンケトオール1.5重量%が含ま
れていた。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C07C 49/453 C07C 49/453 // C07B 61/00 300 C07B 61/00 300 Fターム(参考) 4H006 AA02 AC41 AC44 AD15 AD16 BA51 BA66 BB11 BB14 BB31 BB47 BD41 BD52 BD60 BE10 BE11 BE12 BE13 BE30 FC36 FE12 4H039 CA60 CC30

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも脂環式モノオール類と脂環式
    ジオール類とを含む混合物から該モノオール類とジオー
    ル類とを分離する方法であって、(b)前記混合物を、
    少なくとも水を含む水性溶媒を用いた晶析操作に付し、
    脂環式モノオール類を晶析させる脂環式モノオール類晶
    析工程と、(c)前記脂環式モノオール類を回収した残
    液に炭素数3以上のアルコールと脂肪族炭化水素との混
    合溶媒を加えて抽出し、脂環式ジオール類を有機溶媒層
    に分配する抽出工程とを含む脂環式アルコール類の分離
    方法。
  2. 【請求項2】 少なくとも脂環式モノオール類と脂環式
    ジオール類と脂環式トリオール類を含む混合物から該モ
    ノオール類とジオール類とトリオール類とを分離する方
    法であって、(b1)前記混合物を、少なくとも水を含む
    水性溶媒を用いた晶析操作に付し、脂環式モノオール類
    を晶析させる脂環式モノオール類晶析工程と、(c1)前
    記脂環式モノオール類を回収した残液に炭素数3以上の
    アルコールと脂肪族炭化水素との混合溶媒を加えて抽出
    し、脂環式ジオール類を有機溶媒層に、脂環式トリオー
    ル類を水層にそれぞれ分配する抽出工程とを含む脂環式
    アルコール類の分離方法。
  3. 【請求項3】 少なくとも脂環式モノオール類と脂環式
    ジオール類と環状ケトン類を含む混合物から該モノオー
    ル類及びケトン類とジオール類とを分離する方法であっ
    て、(b2)前記混合物を、少なくとも水を含む水性溶媒
    を用いた晶析操作に付し、脂環式モノオール類及び環状
    ケトン類を晶析させる脂環式モノオール類及び環状ケト
    ン類晶析工程と、(c2)前記脂環式モノオール類及び環
    状ケトン類を回収した残液に炭素数3以上のアルコール
    と脂肪族炭化水素との混合溶媒を加えて抽出し、脂環式
    ジオール類を有機溶媒層に分配する抽出工程とを含む脂
    環式アルコール類の分離方法。
  4. 【請求項4】 さらに、(d)脂環式モノオール類晶析
    工程(b)で得られた結晶をアルカリ水溶液で洗浄する
    脂環式モノオール類洗浄工程を含む請求項1記載の脂環
    式アルコール類の分離方法。
  5. 【請求項5】 さらに、(e)抽出工程(c)で得られ
    た有機溶媒層に含まれる有機成分を有機溶媒を用いた晶
    析操作に付して脂環式ジオール類を晶析させる脂環式ジ
    オール類晶析工程を含む請求項1記載の脂環式アルコー
    ル類の分離方法。
  6. 【請求項6】 さらに、(f)抽出工程(c1)で得られ
    た水層に含まれる有機成分を水と水溶性有機溶媒との混
    合溶媒を用いた晶析操作に付して脂環式トリオール類を
    晶析させる脂環式トリオール類晶析工程を含む請求項2
    記載の脂環式アルコール類の分離方法。
  7. 【請求項7】 (a)脂環式炭化水素類及び該脂環式炭
    化水素類に対応する脂環式モノオール類から選択された
    少なくとも1種の基質を酸化して、少なくとも対応する
    脂環式モノオール類と脂環式ジオール類とを含む混合物
    を得る酸化工程と、(b)前記混合物を、少なくとも水
    を含む水性溶媒を用いた晶析操作に付し、脂環式モノオ
    ール類を晶析させる脂環式モノオール類晶析工程と、
    (c)前記脂環式モノオール類を回収した残液に炭素数
    3以上のアルコールと脂肪族炭化水素との混合溶媒を加
    えて抽出し、脂環式ジオール類を有機溶媒層に分配する
    抽出工程とを含む脂環式アルコール類の製造方法。
  8. 【請求項8】 酸化工程(a)において、基質を、下記
    式(1) 【化1】 (式中、R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、
    ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキ
    ル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル
    基、アルコキシカルボニル基、アシル基を示し、R1
    びR2は互いに結合して二重結合、又は芳香族性若しく
    は非芳香族性の環を形成してもよい。Xは酸素原子又は
    ヒドロキシル基を示す。前記R1、R2、又はR1及びR2
    が互いに結合して形成された二重結合又は芳香族性若し
    くは非芳香族性の環には、上記式(1)中に示されるN
    −置換環状イミド基がさらに1又は2個形成されていて
    もよい)で表されるイミド化合物の存在下で酸素により
    酸化する請求項7記載の脂環式アルコール類の製造方
    法。
  9. 【請求項9】 分離した脂環式モノオール類を酸化工程
    (a)にリサイクルする請求項7記載の脂環式アルコー
    ル類の製造方法。
  10. 【請求項10】 さらに、(g)分離した脂環式モノオ
    ール類を強酸により対応する環状ケトン類に変換する工
    程を含む請求項7記載の脂環式アルコール類の製造方
    法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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