JP2009279930A - 不織布積層構造体およびその製法 - Google Patents

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Abstract

【課題】着色がなく、ポリビニルアルコール(PVA)ナノファイバー不織布の吸湿による収縮を抑制し、積層している不織布の耐剥離性に優れる不織布積層体構造体およびその製法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂繊維からなる不織布または織布支持体(A)1上に、架橋されたアセトアセチル基含有PVA系樹脂を含有するナノファイバーからなるナノファイバー不織布(B)2が積層されてなる不織布積層構造体。
【選択図】図1

Description

本発明は、着色がなく、積層している不織布の耐剥離性に優れる不織布積層構造体およびその製法であって、高精度フィルター等に用いられる不織布積層構造体およびその製法に関するものである。
最近では、電子分野、メカトロニクス分野、水質分野、薬剤や薬品ならびに食品を取り扱っている分野などにおいて、非常に微細な不純物を系外へ除去したり、必要な微量成分を回収するのに、高精度の管理が要求されている。このため、例えば、空気清浄機用フィルター、産業用の粉塵除去用フィルター、純水製造用や化学薬品を精製するためのフィルター、医薬・医療用フィルター、電池セパレータ等において、より薄く、目付が均一な、かつ高精度のフィルターやセパレータ等が要求されてきている。
そこで、このような高精度のフィルター材料等として、ナノファイバーにより形成された不織布(以下「ナノファイバー不織布」という)が、孔径が小さく、孔径分布が均一であることから、特に有用視されている。
そして、ナノファイバーの中でも、ポリビニルアルコール(以下「PVA」と略すことがある)系樹脂により形成されるPVAナノファイバーは、耐油性,耐溶剤性に優れるPVA系樹脂から形成されるため、耐油性,耐溶剤性に優れ、これを用いたPVAナノファイバー不織布は、溶剤系における高精度フィルター材料等として好適に用いられる。
しかしながら、ナノファイバー不織布は、通常、強度や形態保持力に欠けるため、支持体と一緒に積層されて使用されるのが一般である。この支持体としては、例えば、熱可塑性樹脂製の織布または不織布があげられる(特許文献1参照)。具体的には、上記特許文献1において、スクリーン紗(ポリエステル製織布、実施例2等)、ナイロン6極細繊維合成紙(実施例7)、PP(ポリプロピレン)メルトブローン不織布(実施例8)等が用いられている。
また、PVA系樹脂は親水性かつ結晶性の樹脂であるため、これにより得られたPVAナノファイバーを用いた不織布は、吸湿・吸水性によって結晶化、あるいは結晶緩和と再組織化が進み、経時で収縮するようになる。その結果、支持体との収縮率の違いによって、使用中、あるいは保存中に両者が剥離するという問題があった。
この点につき、PVA系樹脂をα−ヒドロキシ酸により架橋させることによって、不溶化を実現する方法が提案されている(特許文献2参照)。これによって、吸湿による収縮が抑制され、剥離性の問題については改善することが可能となる。
特開2005−264420号公報 特開2004−316022号公報
しかしながら、上記ナノファイバーは、架橋反応の進行によって不織布が着色(黄色化)するという大きな問題点があった。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、着色がなく、PVAナノファイバー不織布の吸湿による収縮を抑制し、積層している不織布の耐剥離性に優れる不織布積層体構造体およびその製法の提供をその目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明は、熱可塑性樹脂繊維からなる不織布または織布支持体(A)上に、架橋されたアセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂を含有するナノファイバーからなるナノファイバー不織布(B)が積層されてなる不織布積層構造体をその要旨とする。
また、本発明では、上記不織布積層構造体を製造する方法であって、熱可塑性樹脂繊維からなる不織布または織布支持体(A)を準備し、この不織布または織布支持体(A)を捕集体として、この上に、アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂を含有するナノファイバーを堆積させナノファイバー不織布に形成すると同時に、上記不織布または織布支持体(A)とを積層構造体化し、この積層構造体のナノファイバー不織布に対し架橋処理を施し、ナノファイバー不織布中のアセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂を架橋させ架橋処理済みナノファイバー不織布(B)化する不織布積層構造体の製法を第2の要旨とする。
すなわち、本発明者らは、上記事情に鑑み、PVAナノファイバー不織布と支持体との剥離を抑制するため、一連の研究を行った。その過程で、PVAナノファイバー不織布と支持体との収縮率を近づけ、両者の収縮率の差を減少させることを着想し、この着想に基づきさらに研究を進めた。そして、この研究より、PVAナノファイバー不織布に用いるPVA系樹脂を架橋することによって、耐水性を向上させ収縮率の低下を図ることが可能であることを見いだした。しかしながら、単に架橋するだけでは、着色性の点で問題が生じるため、このような着色性の点を踏まえさらに鋭意検討を行った。その結果、アセトアセチル基含有PVA系樹脂を架橋させることにより、着色がなく、PVAナノファイバー不織布の吸湿による収縮が抑制され、積層している不織布の耐剥離性に優れる不織布積層体構造体が得られることを見いだし、本発明に到達した。
以上のように、本発明は、熱可塑性樹脂繊維からなる不織布または織布支持体(A)上に、架橋されたアセトアセチル基含有PVA系樹脂を含有するナノファイバーからなるナノファイバー不織布(B)が積層されてなる不織布積層構造体である。このため、ナノファイバー不織布(B)の収縮が架橋により抑制され、支持体(A)とナノファイバー不織布(B)との収縮率の差が減少することから、不織布積層構造体の耐剥離性に優れるようになる。また、アセトアセチル基含有PVA系樹脂を用いることから、着色性の問題も生じない。
また、不織布または織布支持体(A)を構成する樹脂繊維の繊維径が5〜100μmであり、ナノファイバー不織布(B)を構成するナノファイバーの繊維径が1〜1000nmであると、より高精度なフィルター等として用いることができるようになる。
さらに、上記不織布積層構造体が、熱可塑性樹脂繊維からなる不織布または織布支持体(A)を準備し、この不織布または織布支持体(A)を捕集体として、この上に、アセトアセチル基含有PVA系樹脂を含有するナノファイバーを堆積させナノファイバー不織布に形成すると同時に、上記不織布または織布支持体(A)とを積層構造体化し、この積層構造体のナノファイバー不織布に対し架橋処理を施し、ナノファイバー不織布中のアセトアセチル基含有PVA系樹脂を架橋させ架橋処理済みナノファイバー不織布(B)化することにより得られるものであると、ナノファイバー不織布(B)のナノファイバーが、不織布または織布支持体(A)の空隙に入り込むため、両者は相互に絡まり合った状態となる。これにより不織布積層構造体は、より一層耐剥離性に優れるようになる。
また、上記架橋処理が、紫外線照射および熱処理の少なくとも一方であると、より不織布の収縮率を低下させることができ、剥離性に一層優れた不織布積層構造体が得られるようになる。
本発明の不織布積層構造体の一例を示す断面図である。
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
本発明の不織布積層構造体は、図1に例示されるように、熱可塑性樹脂繊維からなる不織布または織布支持体(以下「不織布または織布支持体」または「支持体」と略す場合がある)(A)1上に、架橋されたアセトアセチル基含有PVA系樹脂を含有するナノファイバーからなるナノファイバー不織布(以下「架橋PVAナノファイバー不織布」と略す場合がある)(B)2が積層されてなる不織布積層構造体である。なお、本発明の不織布積層構造体は、図1に限定されるものではなく、他の層を設ける等、他の構造・形状とすることができる。まず、不織布または織布支持体(A)について説明する。
《不織布または織布支持体(A)》
本発明に係る支持体(A)は、熱可塑性樹脂繊維形成材料を用い、これを、例えば、溶融成形により紡糸して繊維状に成形した樹脂繊維からなる不織布または織布をいう。
上記支持体(A)を構成する樹脂繊維形成材料としては、通常、熱可塑性樹脂を主成分としたものが用いられる。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリプロピレン、中密度ポリプロピレン、低密度ポリプロピレン、線状低密度ポリエチレン、プロピレンと他のα−オレフィンとの2または3元共重合体等のポリオレフィン類、ポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステルエラストマー等のポリエステル類、フッ素樹脂、上記樹脂の混合樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ乳酸、PVA系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。これらの材料は、通常、従来公知の溶融紡糸により繊維化される。なお、これらの材料を用いて繊維化した後、架橋あるいは熱処理による結晶化などによって、吸湿による収縮を抑制する処理を施したものを用いることも可能である。
また、上記PVA系樹脂としては、未変性PVA系樹脂のみならず変性PVA系樹脂も含まれる。すわなち、PVA系樹脂としては、一般的に、ビニルエステル系モノマーの重合体のケン化物又はその誘導体が用いられ、かかるビニルエステル系モノマーとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等があげられるが、経済性の点から酢酸ビニルが好ましく用いられる。また、ビニルエステル系モノマーと該ビニルエステル系モノマーと共重合性を有するモノマーとの共重合体のケン化物等を用いることもでき、かかる共重合モノマーとしては、例えば、エチレンやプロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、3,4−ジヒドロキシ−1−ブテン等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類およびそのアシル化物などの誘導体、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ウンデシレン酸等の不飽和酸類、その塩、モノエステル、あるいはジアルキルエステル、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエチレンカーボネート、2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン、グリセリンモノアリルエーテル、等のビニル化合物、酢酸イソプロペニル、1−メトキシビニルアセテート等の置換酢酸ビニル類、塩化ビニリデン、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、ビニレンカーボネート、等があげられる。
なお、本発明において、主成分とは全体の過半を占める成分のことをいい、全体が主成分のみからなる場合も含む趣旨である。上記樹脂以外の成分としては、例えば、顔料分散剤、増粘剤、膠着防止剤、流動性改良剤、界面活性剤、消泡剤、離型剤、浸透剤、染料、顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、紙力増強剤、架橋剤等の周知の添加剤を適宜配合することができる。
また、上記支持体(A)が不織布であると、その製造方法の違いから、上記支持体(A)を構成する樹脂繊維は、製法の違いから、平均繊維長が、一般に、300mm未満の短繊維、300mm以上の長繊維等に分けられる。得られる不織布(A)の強度、柔軟性、製造コスト等の点から、長繊維不織布であることが好ましい。以下、短繊維からなる不織布(以下、「短繊維不織布」と略す)と、長繊維からなる不織布(以下、「長繊維不織布」と略す)に分けて順に説明する。なお、支持体(A)が織布の場合には、織ることを前提とする以上、長繊維を用いるが、特に制限されるものではない。
上記短繊維不織布は、上記樹脂繊維形成材料を用い紡糸した後、所定の長さに切断して作製された短繊維をウェブ化したものをいう。必要に応じて、熱融着、延伸、スパンレースによる交絡化等が行われる。また、ウェブに高圧の水流を噴射し繊維間に結合を起こす水流噴射方式等を用いることもできる。
上記長繊維不織布は、樹脂繊維形成材料を用い、通常、これをスパンボンド法により不織布化したものをいう。すなわち、長繊維不織布としては、例えば、スパンボンド法やメルトブローン法等の製法があげられるが、原料となる樹脂繊維形成材料から直接製造することができ、長繊維であるため強度に優れた不織布が得られることから、スパンボンド法が好ましく用いられる。
上記スパンボンド法とは、樹脂繊維形成材料を溶融させ、多数のノズルから同時に紡糸し、エアジェットノズル等を用いて引き延ばした後、移動式の捕集面(例えば、金網等)の上に堆積させてウェブを形成させ、このウェブを熱融着させて長繊維不織布を得る方法をいう。
つぎに、このような短繊維不織布または長繊維不織布等の不織布支持体(A)の特性について、説明する。
〈不織布支持体(A)の特性〉
上記不織布支持体(A)を構成する樹脂繊維の繊維径は、通常5〜100μm、特には5〜50μmであり、さらには5〜30μmであることが好ましい。繊維径が太すぎると、得られる支持体(A)の柔軟性が失われたり、架橋PVAナノファイバー不織布(B)のナノファイバーが、この支持体(A)に添着しにくくなったりする傾向がみられるからである。また、繊維径が細すぎると、支持体(A)の強度が不足する傾向がみられる。なお、本発明における繊維径は、不織布または織布の顕微鏡写真から測定することにより、得られる繊維の横断面における平均直径を意味し、横断面形状が非円形である場合には、横断面と同じ面積をもつ円の直径を繊維径とみなす。
また、この繊維の繊度は、成形方法および用途等に応じて適宜に設定されるが、例えば、好ましくは0.005〜50000デニール、より好ましくは0.01〜500デニール、特に0.05〜5デニールの範囲に設定することが好ましい。このような範囲に設定することにより、繊維強度と柔軟性が得られるようになる。
また、得られた不織布支持体(A)の目付けは、その用途に応じて適宜設定されるが、通常5〜500g/m2、特には10〜100g/m2、さらには20〜80g/m2であることが好ましい。目付けが小さすぎると、樹脂繊維の絶対量が少ないため強度が不充分となり、支持体として適さない傾向がみられ、逆に、目付けが大きすぎると、通気性が失われたり、ナノファイバーが基材不織布に添着しにくくなったりする傾向がみられるからである。
さらに、上記不織布支持体(A)の厚みは、特に制限されるものではないが、通常10〜1000μm、特には20〜500μm、さらには30〜400μmであることが好ましい。不織布(A)の厚みが厚すぎると、それを用いた不織布積層構造体の柔軟性が低下し、通気性に劣る傾向がみられ、逆に、厚みが薄すぎると、強度がなく、支持体として適さない傾向がみられるからである。
〈織布支持体(A)の特性〉
また、織布支持体としては、モノフィラメントからなる織布やマルチフィラメントからなる織布があげられる。モノフィラメント織布を構成する樹脂繊維の繊維径は、通常5〜500μm、特に20〜300μm、さらには30〜100μmである。マルチフィラメント織布を構成する樹脂繊維の繊維径は、通常5〜100μm、特には5〜50μm、さらには5〜30μmであり、これらの繊維径をもつ単繊維を数本から数十本撚りあわせてマルチフィラメントを構成している。繊維径が太すぎると得られる支持体(A)の柔軟性が不充分になる傾向があり、細すぎると支持体(A)の強度が不足する傾向が見られる。
また、得られた織布支持体(A)の目付けは、その用途に応じて適宜設定されるが、通常5〜500g/m2、特には10〜100g/m2、さらには20〜80g/m2であることが好ましい。目付けが小さすぎると、樹脂繊維の絶対量が少ないため強度が不充分となり、支持体として適さない傾向がみられ、逆に、目付けが大きすぎると、通気性が失われたり、ナノファイバーが支持体に添着しにくくなったりする傾向がみられる。
さらに、上記織布支持体(A)の厚みは、通常10〜1000μm、特には20〜500μm、さらには30〜400μmであることが好ましい。支持体(A)の厚みが厚すぎると、それを用いた不織布積層構造体の柔軟性が低下し、通気性に劣る傾向がみられ、逆に、厚みが薄すぎると、強度がなく、支持体として適さない傾向がみられるからである。
つぎに、架橋PVAナノファイバー不織布(B)について説明する。
《架橋PVAナノファイバー不織布(B)》
本発明に係る架橋PVAナノファイバー不織布(B)は、上記アセトアセチル基含有PVA系樹脂を含有する樹脂形成材料を用い、これを紡糸してナノファイバーに成形した後、ナノファイバー中のアセトアセチル基含有PVA系樹脂を架橋させたPVA系樹脂ナノファイバーからなる。
まず、アセトアセチル基含有PVA系樹脂(b)について詳しく説明する。
本発明で用いるアセトアセチル基含有PVA系樹脂(以下、「AA化PVA系樹脂」と略記する場合がある)(b)は、PVA系樹脂にアセトアセチル基を導入したものである。このAA化PVA系樹脂(b)中のアセトアセチル基の含有量は、通常0.1〜25モル%程度であり、残る部分は、通常のPVA系樹脂と同様、ケン化度相当のビニルアルコール構造単位と若干量の酢酸ビニル構造単位からなる。
上記AA化PVA系樹脂(b)を得るには、例えば、(α)PVA系樹脂とジケテンを反応させる方法、(β)PVA系樹脂とアセト酢酸エステルを反応させてエステル交換する方法、(γ)酢酸ビニルとアセト酢酸ビニルの共重合体をケン化する方法等をあげることができる。なかでも、製造工程が簡略で品質の良いAA化PVA系樹脂(b)が得られることから、(α)PVA系樹脂とジケテンを反応させる方法で製造することが好ましく、以下、この方法について詳述するが、これに限定されるものではない。
AA化PVA系樹脂(b)の原料となるPVA系樹脂としては、一般的にはポリ酢酸ビニルの低級アルコール溶液をアルカリや酸などのケン化触媒によってケン化したケン化物またはその誘導体が用いられる。さらには本発明の目的、あるいはAA化PVA系樹脂(b)の樹脂特性を大幅に損なわない程度の量であれば、酢酸ビニルと共重合性を有する単量体と酢酸ビニルとの共重合体のケン化物等を用いることもできる。
このような単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、ビニレンカーボネート類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ウンデシレン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいはモノ又はジアルキルエステル等、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテルなどのポリオキシアルキレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ポリオキシエチレン(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)エステル、ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン、ニル、ビニルエチレンカーボネート、2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン、グリセリンモノアリルエーテル、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレートを意味し、(メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタクリルを意味する。
得られたポリ酢酸ビニル系樹脂のケン化は、公知の方法で行うことができる。通常は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をアルコール系溶媒に溶解させたのち、アルカリ触媒または酸触媒の存在下でケン化することが行われる。
アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノールや、メタノールと酢酸メチルの混合溶媒などの各種アルコールと酢酸メチルの混合溶媒などを使用することができる。アルコール系溶媒中のポリ酢酸ビニル系樹脂の濃度は10〜60重量%の範囲から選ばれることが好ましい。
上記アルカリ触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラートなどのアルカリ金属の水酸化物やアルコラートのようなアルカリ触媒を用いることができる。酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸などの無機酸水溶液、p−トルエンスルホン酸などの有機酸を用いることができる。アルカリ触媒の使用量は、ポリ酢酸ビニル系樹脂中の酢酸ビニル構造単位1モルに対して1〜100ミリモル、特には1〜40ミリモル、さらには1〜20ミリモルであることが好ましい。アルカリ触媒の使用量が少なすぎると、目的とするケン化度までケン化度を上げることが困難となる傾向にあり、逆に、アルカリ触媒の使用量が多すぎると、目的とするケン化度よりも高くなり過ぎる傾向となり制御が困難になるため好ましくない。また、ケン化を行うときの温度はとくに制限されないが、通常10〜70℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。
つぎに、ポリ酢酸ビニル系樹脂のケン化によって得られたPVA系樹脂とジケテンを反応させる。これには、PVA系樹脂とガス状あるいは液状のジケテンを直接反応させてもよいし、有機酸をPVA系樹脂に予め吸着吸蔵せしめた後、不活性ガス雰囲気下でガス状または液状のジケテンを噴霧、反応させてもよい。またPVA系樹脂に有機酸と液状ジケテンの混合物を噴霧、反応させる等の方法を用いてもよい。
上記の反応を実施する際の反応装置としては加温可能で撹拌機の付いた装置であれば充分である。例えば、ニーダー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、その他各種ブレンダー、撹拌乾燥装置を用いることができる。
このようにして得られたAA化PVA系樹脂(b)中の全アセトアセチル基含有量(以下、「AA化度」と略記する)は、通常0.1〜25モル%、特には0.5〜20モル%、さらには1〜15モル%であることが好ましい。AA化度が多すぎると、水溶液の安定性が低下したりする傾向がみられ、逆に、AA化度が少なすぎると、反応基が少なく、架橋特性が不足する傾向がみられ、ナノファイバー不織布の収縮を抑制することができない傾向がみられるからである。
上記AA化度は、AA化PVA系樹脂(b)の全てのビニル構造単位に対するAA基の量(モル%)を表すものであり、具体的には1H−NMRスペクトルにおける主鎖のメチレンプロトンに由来するピーク面積とAA基のメチルプロトンに由来するピーク面積の比によって求めることができる。
また、上記AA化PVA系樹脂(b)の平均ケン化度は、通常75〜100モル%、特には88〜99.9モル%、さらには95〜99.9モル%であることが好ましい。平均ケン化度が低すぎると、不織布の耐薬品性、耐溶剤性が低下する傾向がみられるからである。
さらに、上記AA化PVA系樹脂(b)の平均重合度(JIS K6726に準拠)は、通常200〜3000、特には300〜2500、さらには500〜2300であることが好ましい。平均重合度が大きすぎると、溶液粘度を適度な粘度に調整した場合に、濃度が低くなるため、生産性が低下する傾向がみられ、逆に、平均重合度が小さすぎると、得られるナノファイバー不織布の強度が不足する傾向がみられるからである。
本発明では、AA化PVA系樹脂(b)を含有する樹脂繊維形成材料を用いてナノファイバー不織布を製造する。ここで、上記樹脂繊維形成材料中の、AA化PVA系樹脂(b)の含有量は、通常70重量%以上であり、特には80〜100重量%、さらには90〜100重量%であることが好ましい。AA化PVA系樹脂(b)含有量が少なすぎると、必要とする架橋が不足するため、本発明の効果を発揮しにくい傾向がみられるからである。
また、本発明においては、上記AA化PVA系樹脂(b)を架橋させる必要があることから、必要に応じて、架橋剤を用いることができる。
本発明に使用できる上記架橋剤としては、有機系架橋剤として、例えば、アルデヒド系化合物(ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタルジアルデヒド、グリオキシル酸、グリオキシル酸塩、グリオキシル酸エステル、グルコース等の多価アルコールとグリオキザール等の多価アルデヒド化合物の反応物である環状アセタール化合物、クロトンアルデヒド、ベンズアルデヒド等のモノアルデヒド類、マロンジアルデヒド、テレフタルアルデヒド、ジアルデヒド澱粉等)、アミノ樹脂(尿素樹脂、グアナミン樹脂、メラミン系樹脂、メチロールメラミン等)、エポキシ系化合物、ヒドラジド化合物〔ヒドラジン、ヒドラジン無機酸塩(塩酸塩、硫酸塩,硝酸塩,亜硫酸塩,リン酸塩,チオシアン酸塩等)、ヒドラジン有機酸塩(炭酸塩,ギ酸塩,シュウ酸塩等)、ヒドラジン一置換体(メチル,エチル,プロピル,ブチル,アリル等)、ヒドラジンニ置換体(1,1−ジメチル,1,1−ジエチル等)、カルボン酸ヒドラジド(カルボヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン(味の素ファインテクノ社製、「アミキュアVDH」等)、7,11−オクタデカジエン−1,18−ジカルボヒドラジド(味の素ファインテクノ社製、「アミキュアUDH」等)、ポリアクリル酸ヒドラジド、N−アミノポリアクリルアミド、N−アミノアクリルアミド/アクリルアミド共重合体等〕、アミン化合物〔脂肪族ポリアミン(エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、N−アミノエチルピペラジン、ビスアミノプロピルピペラジン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン等)、脂環式ポリアミン(3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ノルボルナンジアミン等)、芳香族ポリアミン(4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、m−フェニレンジアミン、2、4’−トルイレンジアミン、メタキシリレンジアミン等)、アミノ基含有水溶性ポリマー(アミノ基変性PVA系樹脂、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン等)、およびこれらの無機酸塩や有機酸塩〕、ポリアミドエピクロルヒドリン又は酸無水物、ポリイソシアネート、ブロックイソシアネート等があげられる。なかでも、反応性とAA化PVA系樹脂との混合水溶液のポットライフに優れる点から、アルデヒド系化合物やアミン化合物の塩が好ましい。
また、必要に応じて、無機系架橋剤を使用することもできる。無機系架橋剤としては、ホウ素、ケイ素、アルミニウム、亜鉛、鉄、ジルコニウム、チタン、ガリウム、インジウム、ルテニウム、ハフニウムなどの元素を含有する化合物があげられ、例えば、ホウ酸、ホウ酸塩(ホウ砂等)、チタニウム化合物(テトラアルコキシチタネート等)、アルミニウム化合物(硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等)、リン化合物(亜リン酸エステル、ビスフェノールA変性ポリリン酸等)、アルコキシ基やグリシジル基などの反応性官能基を有するシリコーン化合物、ジルコニウム化合物(フッ化ジルコニウム、塩化ジルコニウム、臭化ジルコニウム、ジルコニウム酸、ジルコニウム酸塩、塩化ジルコニル(第一稀元素化学工業社製、「ジルコゾールZC」)、塩基性塩化ジルコニル(第一稀元素化学工業社製、「ジルコゾールZC−2」)、硫酸ジルコニル、硝酸ジルコニル(第一希元素化学工業社製、「ジルコゾールZN」)、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニウムアンモニウム(第一稀元素化学工業社製、「ジルコゾールAC−7」)、炭酸ジルコニウムカリウム(第一稀元素化学工業社製、「ジルコゾールZK−10」)、酢酸ジルコニル、ステアリン酸ジルコニル、オクチル酸ジルコニル、クエン酸ジルコニル、乳酸ジルコニル、シュウ酸ジルコニル、リン酸ジルコニル、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート(松本製薬工業社製、「オルガチックスZC−150」)、ジルコニウムモノアセチルアセトネート(松本製薬工業社製、「オルガチックスZC−540」)、ジルコニウムビスアセチルアセトネート(松本製薬工業社製、「オルガチックスZC−550」)、ジルコニウムモノエチルアセトアセテート(松本製薬工業社製、「オルガチックスZC−560」)、ジルコニウムアセテート(松本製薬工業社製、「オルガチックスZC−115」)、などがあげられる。なかでも、AA化PVA系樹脂を架橋して、すぐれた耐水性を示す架橋構造体が得られる点から、塩基性塩化ジルコニル、硝酸ジルコニルが好適に用いられる。なお、これらの架橋剤を単独あるいは二種類以上使用してもよい。
上記架橋剤の含有量は、樹脂繊維形成材料全体に対して、通常0.1〜50重量%、特には0.5〜20重量%、さらには1〜15重量%であることが好ましい。添加量が多すぎると、不織布積層構造体に着色しやすくなる傾向がみられるからであり、逆に、少なすぎると、架橋特性が低下し、収縮が抑制できないようになる傾向がみられるからである。
上記樹脂繊維形成材料における他の成分としては、例えば、光重合開始剤、可塑剤、滑剤、顔料分散剤、増粘剤、膠着防止剤、流動性改良剤、界面活性剤、消泡剤、離型剤、浸透剤、染料、顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、紙力増強剤等があげられる。これらの添加剤は適宜配合することができる。
以上の樹脂繊維形成材料を用いて、ナノファイバー不織布を作製し、これを架橋させることにより、本発明に係る架橋PVAナノファイバー不織布(B)が得られる。まず、架橋前のナノファイバー不織布について説明する。
〈架橋前のナノファイバー不織布の製造〉
架橋前のナノファイバー不織布は、上記AA化PVA系樹脂(b)を溶媒に溶解させたAA化PVA溶解液を、エレクトロスピニング法(静電紡糸法)に適用することにより得られる。上記溶媒としては、例えば、水、アルコール類、その他の有機溶媒を用いることができる。これらの中でも製造環境上の問題を考慮すると、水を用いることが好ましい。
上記エレクトロスピニング法(静電紡糸法)としては、上記AA化PVA溶解液等の高分子溶液あるいは高分子融液から、紡糸ノズルを用いてナノファイバー等の微細繊維を製造する方法が一般に知られている。一方で、最近では、紡糸ノズルを用いない方法も提案されている。そこで、「紡糸ノズルを用いる方法(イ)」と、「用いない方法(ロ)」とに分けて、架橋前のナノファイバー不織布の製法について説明する。
(紡糸ノズルを使用するエレクトロスピニング法(イ))
紡糸ノズルを使用するエレクトロスピニング法を用いて架橋前のナノファイバー不織布を得ることは、例えば、つぎのようにして行われる。すなわち、上記ナノファイバー不織布は、上記PVA系樹脂溶解液を、紡糸ノズルから押し出す際に、紡糸ノズル側に高電圧を印加し、溶解液に電界を作用させることにより延伸してナノファイバー化し、対向電極側の捕集体上にナノファイバーを堆積させ不織布化させることにより得られる。なお、紡糸ノズル側ではなく対向電極側に電圧を印加し、紡糸ノズルとの間に電界を作用させてもよい。
上記溶解液におけるAA化PVA系樹脂(b)の濃度は、通常1〜40重量%、特には2〜30重量%、さらには5〜20重量%であることが好ましいが、特に限定されるものではなく、任意に設定することができる。
この溶解液の押し出し方向は、特に限定するものではないが、溶解液の滴下が生じにくいように、ノズルからの押し出し方向と重力の作用方向とが一致しないことが好ましい。特には、重力の作用方向と反対方向または重力の作用方向と直角方向に溶解液を押し出すことが好ましい。
この溶解液を押し出す紡糸ノズルの直径(内径)は、繊維径によって変化するが、通常0.1〜5mm、特には0.5〜2mmであることが好ましい。直径が大きすぎると、液だれが多く、エレクトロスピニングが困難な傾向がみられ、逆に、直径が小さすぎると、溶解液を押し出しにくく、生産性が低下する傾向がみられるからである。
また、紡糸ノズルは金属製であっても、非金属製であってもよい。紡糸ノズルが金属製であれば紡糸ノズルを一方の電極として使用することができ、紡糸ノズルが非金属製である場合には、紡糸ノズルの内部に電極を設置することにより、溶解液に電界を作用させることができる。
このような紡糸ノズルから溶解液を押し出した後、押し出した溶解液に電界を作用させることにより、電気的に引き伸ばす力が作用し、延伸して繊維化する。この電界は、ナノファイバーの繊維径、紡糸ノズルとナノファイバーを集積する捕集体との距離、溶解液の粘度などによって変化するため、特に限定するものではないが、ナノファイバーの繊維径とするには、0.2〜5kV/cmであることが好ましい。印加する電界が大きければ、その電界値の増加に応じてナノファイバーの繊維径が細くなる傾向があるが、電界値が大きすぎると、空気の絶縁破壊が生じやすい傾向がみられ、逆に、小さすぎると、繊維形状となりにくい傾向がみられるからである。
このように押し出した溶解液に電界を作用させることにより、溶解液に静電荷が蓄積され、捕集体側の電極によって電気的に引っ張られ、引き伸ばされて繊維化する。電気的に引き伸ばしているため、繊維が捕集体に近づくにしたがって、電界により繊維の速度が加速され、繊維径のより小さいPVAナノファイバーとなる。また、溶媒の蒸発によって細くなり、静電気密度が高まり、その電気的反発力によって分裂し、更に繊維径の小さいPVAナノファイバーになると考えられる。
このような電界は、例えば、紡糸ノズル(金属製ノズルの場合にはノズル自体、ガラスや樹脂などの非金属製ノズルの場合にはノズルの内部の電極)と捕集体との間に電位差を設けることによって、作用させることができる。例えば、紡糸ノズルに電圧を印加するとともに捕集体をアースすることによって電位差を設けることができるし、逆に、捕集体に電圧を印加するとともに紡糸ノズルをアースすることによって電位差を設けることもできる。
上記印加電圧は、前述のような電界強度とすることができれば、特に限定されるものではないが、通常1〜30kV、特には5〜25kV、さらには10〜20kVであることが好ましい。電圧が高すぎると、スパークが発生し、紡糸が不可能になる傾向がみられ、逆に、電圧が低すぎても、溶解液を電気的に引っ張る力が不足し、紡糸が困難となる傾向がみられるからである。電圧印加装置は、特に限定されるものではないが、直流高電圧発生装置を使用できるほか、ヴァン・デ・グラフ起電機を用いることもできる。
なお、印加電圧の極性は、プラスとマイナスのいずれであってもよい。しかしながら、繊維の広がりを抑制し、孔径が小さく、しかも孔径分布の狭い状態で集合できるように、紡糸ノズル側をプラス電位となるようにすることが好ましい。特に、電圧印加時のコロナ放電を抑制しやすいように、捕集体側の対向電極をアースし、紡糸ノズル側をプラスに印加して、紡糸ノズル側をプラス電位となるようにすることが好ましい。
本発明は、上記のようにして形成されたPVAナノファイバーを堆積させ不織布化するものである。このPVAナノファイバーを堆積させる先の捕集体としては、PVAナノファイバーを捕集できるものであれば、特に限定するものではない。例えば、ドラム、不織布、平板、或いはベルト形状を有する、金属製や炭素などからなる導電性材料、有機高分子などからなる非導電性材料等があげられる。通常は、先に述べた不織布(A)を捕集体とすることが行われる。捕集体が不織布(A)であると、ナノファイバー不織布(架橋前)の繊維が不織布(A)の空隙に入り込むため、両者が相互に絡まり合った状態となり、より耐剥離性に優れるようになるからである。
捕集体は、上記のように導電性材料である必要はなく、捕集体よりも後方に対向電極を配置すればよい。この場合、捕集体と対向電極とは接触していてもよいし、離間していてもよい。
なお、このエレクトロスピニング法は、相対湿度が通常30〜80%、特には35〜70%の雰囲気下で実施することが好ましい。相対湿度が低すぎると、紡糸ノズル出口での溶解液の乾燥が速く、固化してノズルを閉塞してしまう傾向がみられ、相対湿度が高すぎると、逆に乾燥しにくくなり、繊維を形成しにくくなる傾向がみられるからである。
上記相対湿度を保つため、紡糸ノズルおよび捕集体を密閉容器の中に設置するとともに、バルブ等を介して、調湿した空気を送り込み、密閉容器内の湿度を前記範囲内に調節できるようにすることが好ましい。なお、密閉容器内の圧力を上昇させないように、また溶解液から揮発した溶媒を排出できるように、排気装置が密閉容器に接続されていることが好ましい。
(紡糸ノズルを使用しないエレクトロスピニング法(ロ))
紡糸ノズルを使用しないエレクトロスピニング法としては、例えば、磁性流体を電極として使用し、PVA系樹脂溶解液表面から静電紡糸を行う方法(A.L.Yarin,E.Zussman,“Polymer”,45(2004)2977−2980参照)があげられる。また、エレクトロスピニング法としては、回転ロールを、PVA系樹脂溶解液を満たした浴に浸漬し、ロール表面上にPVA系樹脂溶解液を付着させ、この表面に高電圧を印加し、静電紡糸を行う方法(http://www.elmarco.com参照)があげられ、さらに、PVA系樹脂溶解液に連続的に発生した泡に高電圧を印加することにより静電紡糸を行う方法等があげられる(“NONWOVENS REVIEW”,Vol.18,No.2(2007)17−20、特開2008−25057号公報、参照)。
上記(イ)および(ロ)法で得られたナノファイバー不織布(架橋前)に、架橋処理を施すことにより、本発明に係る架橋PVAナノファイバー不織布(B)が得られる。この架橋処理について、つぎに説明する。
〈架橋処理〉
得られたナノファイバー不織布(架橋前)の架橋処理としては、特に限定されるものではないが、熱処理または紫外線照射の少なくとも一方(片方または両方)を行うことが好ましい。この架橋処理により、AA化PVA系樹脂が相互に架橋し、ナノファイバー不織布の収縮が減少する。この架橋処理は、ナノファイバー不織布(架橋前)のみに行ってもよく、また、ナノファイバー不織布(架橋前)と支持体(A)とを積層した不織布積層構造体に対し行っても良い。
(i)熱処理
架橋前のナノファイバー不織布を、例えば、恒温槽等を用いて、通常40〜200℃、特には40〜180℃の温度範囲において、通常1〜30分間、特には3〜10分間、熱処理を行い架橋させることが好ましい。温度が低すぎると、架橋反応が充分におこらず、収縮を抑制することが困難な傾向がみられ、逆に、温度が高すぎると、熱分解等を生じ変色する傾向がみられるからである。なお、熱処理を行い架橋する場合には、反応性の点から、通常、前に述べた架橋剤を用いることが好ましい。
(ii)紫外線照射
不織布積層構造体に対し紫外線照射をする場合には、不織布積層構造体のナノファイバー不織布(架橋前)面に対し行うことが好ましい。この紫外線照射には、150〜450nm波長域の光を発する高圧水銀ランプ、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、無電極放電ランプ等を用いることができる。
紫外線の積算照射量としては、通常50〜10000mJ/cm2、特には100〜5000mJ/cm2、さらには200〜2000mJ/cm2であることが好ましい。この積算照射量が低すぎると、架橋反応にばらつきができやすくなる傾向がみられ、逆に、積算照射量が多すぎると、装置およびコストの関係で実用的ではなく好ましくないからである。
なお、本発明に使用するAA化PVA系樹脂(b)は、紫外線照射等により自己架橋が可能となるため、必ずしも架橋剤等を必要としない。
つぎに、このようにして得られた架橋PVAナノファイバー不織布(B)の特性について説明する。
〈架橋PVAナノファイバー不織布(B)の特性〉
本発明に係る架橋PVAナノファイバー不織布(B)を構成するPVAナノファイバーの繊維径は、通常1〜1000nm、特には5〜500nmであり、さらには10〜300nmであることが好ましい。繊維径が太すぎると、この繊維により得られる架橋PVAナノファイバー不織布(B)のフィルター効果が低下したり、通気度が低下したりする傾向がみられるからである。また、繊維径が細すぎると、架橋PVAナノファイバー不織布(B)の強度が低下したり、生産効率が低下したりする傾向がみられる。上記ナノファイバーの繊維径は、電子顕微鏡を用いて測定することができる。
また、このナノファイバーの平均繊維長は、特に限定されるものではないが、ナノファイバーの脱落防止の点から、0.1mm以上であることが好ましく、連続繊維であることが特に好ましい。
得られた架橋PVAナノファイバー不織布(B)の目付けは、その用途に応じて適宜設定されるが、例えば、通常0.2〜40g/m2、特には1〜30g/m2、さらには2〜20g/m2であることが好ましい。目付けが小さ過ぎると、フィルター効果が低下する傾向がみられ、逆に、多すぎると、生産効率が低下する傾向がみられるからである。
また、架橋PVAナノファイバー不織布(B)の厚みは、通常0.1〜500μm、特には0.3〜300μm、さらには0.5〜100μmであることが好ましい。厚みが厚すぎると、生産効率が低下する傾向がみられ、逆に、薄すぎると、フィルター効果が不充分となる傾向がみられるからである。
以上のようにして得られた不織布(A)および架橋ナノファイバー不織布(B)を用い、つぎのようにして不織布積層構造体を製造する。
《不織布積層構造体について》
本発明の不織布積層構造体は、支持体(A)および架橋PVAナノファイバー不織布(B)をそれぞれ別個に作製し、それを貼り合わせて積層してもよいが、通常は、架橋前のナノファイバー不織布を製造する際の捕集体として、支持体(A)を使用して不織布積層構造体を作製し、この不織布積層構造体のナノファイバー不織布(架橋前)に、紫外線照射または熱処理を行い、ナノファイバー中のAA化PVA系樹脂を架橋化させることが好ましい。このように、捕集体として支持体(A)を用いると、先に述べたように、ナノファイバー不織布(架橋前)の製造時に、支持体(A)の空隙に入り込むため、両者は相互に絡まりあった状態で架橋しており、耐剥離性に一層優れるようになる。
上記支持体(A)と架橋PVAナノファイバー不織布(B)との厚み比(A/B)は、通常1/50〜10000/1、特には1/2〜800/1、さらには1/1〜100/1であることが好ましい。架橋PVAナノファイバー不織布(B)に比べ、支持体(A)が薄すぎると、得られる不織布積層構造体の強度が不充分となる傾向がみられるからである。
必要に応じて、不織布積層構造体が各種用途に適合するように、各種後処理を行うことができる。後処理としては、例えば、緻密化するためのカレンダー処理、親水処理、撥水処理、海面活性剤付着処理、純粋洗浄処理等があげられる。
また、得られる不織布積層構造体の積層構造としては、図1に例示されるB/A(AおよびBからなる積層体)だけでなく、A/B/A、B/A/B/Aなど、AとBとを順次積層した層構成であってもよい。
さらに、AおよびBだけでなく、他の層も積層されていてもよい。他の層としては、例えば、各種熱可塑性樹脂からなる織布、ネット、金網、紙等があげられる。
得られた本発明の不織布積層構造体を、フィルター等として用いる場合には、気体、液体を流す方向は、架橋PVAナノファイバー不織布(B)側から支持体(A)側へと流すことが、剥離をより防げる点から好ましい。
得られた本発明の不織布積層構造体は、吸音材料用途として好適である。すなわち、多孔質材料は、その空隙内の空気中を音が伝達する際の空気の粘性摩擦によって振動エネルギーが熱エネルギーに変換され、音のエネルギーを吸収する。したがって、本発明の不織布積層構造体における架橋PVAナノファイバー不織布(B)は微細な空隙を多数有していることから、優れた吸音性が得られる。
また、高分子材料は、粘弾性挙動によって振動エネルギーを熱エネルギーに変換することにより音のエネルギーを吸収し、損失正接(tanδ)が大きいものほど優れた吸音性が得られる。そういう点から、本発明の不織布積層構造体の架橋PVAナノファイバー不織布(B)に用いられるPVA系樹脂は、室温〜80℃におけるtanδが大きく、優れた吸音材料であるといえる。さらに、本発明で用いられる前記AA化PVA系樹脂は、その架橋度によってtanδが変化することから、吸音効果が最も発揮される温度領域に調整することが可能である。
以下、実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
〔実施例1〕
まず、不織布からなる支持体(A)を作製し、その支持体(A)上に、架橋PVAナノファイバー不織布(B)を積層形成する。以下、AおよびBについて順に説明する。
〈1.支持体(A)について〉
支持体(A)として、市販品であるポリプロピレン(PP)不織布(日本ポリプロ社製、ノバテックPP SA06A)を準備する。この不織布は、繊維径が平均20μm、目付けが40g/m2、厚みが平均250μmである。
〈2.架橋PVAナノファイバー不織布(B)について〉
〈2−1.AA化PVA系樹脂(b)の製造〉
温度調節器付きリボンブレンダーに、未変性PVA(ケン化度95.1モル%、平均重合度1200)を100部仕込み、回転数20rpmで撹拌しながら60℃に昇温し、酢酸30部を90分間かけて添加し、さらに1時間撹拌してPVAを膨潤させた。これに、ジケテン29.2部を8時間かけて噴霧添加し、さらに30分間撹拌を続けて反応させた。反応終了後、メタノール300部を添加し、固液分離の後、さらにメタノールにより抽剤比3倍で2回洗浄し、60℃で乾燥し、AA化PVA系樹脂(b)を得た。
得られたAA化PVA系樹脂(b)のAA化度は7.9モル%で、ケン化度は95.1モル%であり、平均重合度は1200であった。
ついで、この得られたAA化PVA系樹脂(b)を純水で加熱しながら、10%の濃度となるように溶解させ、AA化PVA水溶液を作製した。
〈2−2.架橋PVAナノファイバー不織布(B)ならびに不織布積層構造体の製造〉
つぎに、上記得られたAA化PVA水溶液を、下記のI)の条件にて、ノズルに電圧を印加し、押し出したAA化PVA水溶液に電界を作用させてナノファイバー化し、前記支持体である不織布(A)上に、PVAナノファイバー堆積させてナノファイバー不織布を作製する。そして、このナノファイバー不織布を速度1.53m/分のコンベアに載せ、このコンベア上のナノファイバー不織布に対し、下記のII)の条件において紫外線照射を行い、架橋PVAナノファイバー不織布(B)を得た。
I)ナノファイバー化条件
・装置:静電紡糸装置(カトーテック社製)
・製造条件:電圧20kV、ノズル直径1.2mm、ノズル数9
II)紫外線照射条件
・装置:紫外線照射装置(アイグラフィック社製、ECS301G)
・高圧水銀ランプ(アイグラフィック社製、HO3−L31)を用い、照射強度は80W/m2であり、積算照射量はコンベア速度にてコントロールする。すなわち、コンベア速度が1.53m/分の場合、積算照射量は1100mJ/cm2となる。ランプ高さは18cmである。
上記得られた架橋PVAナノファイバー不織布(B)は、繊維径が平均直径200nm、目付けが5g/m2、厚みが平均20μmであった。
〈3.得られた不織布積層構造体について〉
このようにして得られた不織布積層構造体は、総目付けが45g/m2、総厚み平均が270μmであった。
〔実施例2〕
実施例1において、コンベア速度を5.1m/分に変更し、紫外線照射の積算照射量を256mJ/cm2とする以外は、実施例1と同様にして、総目付け45g/m2、総厚み平均270μmの不織布積層構造体を製造した。
〔実施例3〕
実施例1において、AA化PVA水溶液100部に対し、架橋剤としてグリオキザール2部を添加し、これを、実施例1と同様に、静電紡糸装置を用いて、ナノファイバー不織布を作製する。そして、得られたナノファイバー不織布を70℃×5分の条件で熱処理を行い、架橋PVAナノファイバー不織布(B)を得た。これにより、総目付け45g/m2、総厚み平均270μmの不織布積層構造体が得られた。
〔実施例4〕
上記実施例3において、熱処理条件を70℃×5分から105℃×5分に代えた以外は、実施例3と同様にして、総目付け45g/m2、総厚み平均270μmの不織布積層構造体を製造した。
〔実施例5〕
実施例1において、AA化PVA水溶液100部に対し、架橋剤としてグルコースとグリオキザールの反応物である環状アセタール化合物(オムノヴァ社製、セクアレッツ755、多価アルコール/カルボニル付加物)2部を添加し、これを、実施例1と同様に、静電紡糸装置を用いて、ナノファイバー不織布を作製する。そして、得られたナノファイバー不織布を70℃×5分の条件で熱処理を行い、架橋PVAナノファイバー不織布(B)を得た。これにより、総目付け45g/m2、総厚み平均270μmの不織布積層構造体が得られた。
〔実施例6〕
上記実施例5において、熱処理条件を70℃×5分から105℃×5分に代えた以外は、実施例3と同様にして、総目付け45g/m2、総厚み平均270μmの不織布積層構造体を製造した。
〔比較例1〕
実施例1において、紫外線照射を行わず、架橋しなかった以外は、実施例1と同様にして、総目付け45g/m2、総厚み平均270μmの不織布積層構造体を製造した。
〔比較例2〕
実施例1において、AA化PVA系樹脂を、未変性PVA系樹脂(重合度1100、ケン化度98.5モル%)に代えて、実施例1と同様に、未変性PVA水溶液を作製する。この未変性PVA水溶液100部に対し、架橋剤としてクエン酸20部を添加し、これを、実施例1と同様に、静電紡糸装置を用いて、ナノファイバー不織布を作製した。そして、得られたナノファイバー不織布を180℃×10分の条件で熱処理を行い、架橋されたナノファイバー不織布を得た。これにより、総目付け45g/m2、総厚み平均270μmの不織布積層構造体が得られた。
以上の実施例および比較例における不織布積層構造体の形成材料および形成条件を、後記の表1に示す。そして、得られた不織布積層構造体を用いて、下記の方法により耐剥離性、耐着色性および耐水性の評価を行い、その結果を後記の表1に併せて示す。
<耐剥離性>
不織布積層構造体を、30℃、70%RH下で、10日間保存後、周辺からの剥離距離を測定し、下記の基準にしたがって、評価を行った。
○・・・0〜1mm未満。
×・・・1mm以上。
<耐着色性>
不織布積層構造体を目視することにより、着色の有無を確認する。
○・・・着色が認められない。
×・・・著しい着色が認められる。
<耐水性>
不織布積層構造体から切り取ったナノファイバー不織布を、80℃の熱水に1時間浸漬した後、105℃で3時間乾燥させ、その前後の重量を測定し、下記の式(1)にしたがって、残存率(%)を測定した。残存率が高いほど、耐水性に優れる。
残存率(%)=(溶出試験後の乾燥重量/試験前の乾燥重量)×100 …(1)
Figure 2009279930
以上の結果より、実施例はいずれも、耐剥離性、耐着色性に優れることが分かる。このように耐剥離性に優れるのは、上記表1の結果から、ナノファイバー不織布が架橋により、耐水性が向上したことによるものと考えられる。すなわち、この耐水性の向上によって、ナノファイバー不織布の収縮率が低下し、一般的な熱可塑性樹脂からなる不織布支持体(A)の低い収縮率に近づくことによって、収縮率の差に起因する剥離が減少するためであると考えられる。また、本発明の不織布積層構造体によれば、架橋しても耐着色性に優れるものを得ることができる。
これに対し、比較例1は、ナノファイバー不織布が架橋していないため、吸湿して収縮してしまうため、従来から生じる剥離を解決できないものであった。また、比較例2は、ナノファイバー不織布のPVA系樹脂を、クエン酸に代表されるα−ヒドロキシ酸によって架橋したものであるが、架橋反応の進行によって著しい着色が生じ、耐着色性に劣るものであった。
なお、上記実施例において、支持体(A)の不織布を、織布に代えた場合であっても、上記実施例と同様の効果が得られるものであった。
本発明の不織布積層構造体は、例えば、空気清浄機用フィルター、産業用の粉塵除去用フィルター、純水製造用や化学薬品を精製するためのフィルター、医薬・医療用フィルター、電池セパレータ等において、より薄くて、目付が均一で、かつ高強力の高精度のフィルターやセパレータ等に使用することができる。さらに、自動車(内装、エンジンルーム等)、工作機械、家電製品等における吸音材、建築材料(壁、天井、床材等)、各種インテリア、家具、楽器等の構成材料にも使用することができる。
1 不織布または織布支持体(A)
2 架橋PVAナノファイバー不織布(B)

Claims (4)

  1. 熱可塑性樹脂繊維からなる不織布または織布支持体(A)上に、架橋されたアセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂を含有するナノファイバーからなるナノファイバー不織布(B)が積層されてなることを特徴とする不織布積層構造体。
  2. 不織布または織布支持体(A)を構成する樹脂繊維の繊維径が5〜100μmであり、ナノファイバー不織布(B)を構成するナノファイバーの繊維径が1〜1000nmである請求項1記載の不織布積層構造体。
  3. 請求項1または2に記載の不織布積層構造体を製造する方法であって、熱可塑性樹脂繊維からなる不織布または織布支持体(A)を準備し、この不織布または織布支持体(A)を捕集体として、この上に、アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂を含有するナノファイバーを堆積させナノファイバー不織布に形成すると同時に、上記不織布または織布支持体(A)とを積層構造体化し、この積層構造体のナノファイバー不織布に対し架橋処理を施し、ナノファイバー不織布中のアセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂を架橋させ架橋処理済みナノファイバー不織布(B)化することを特徴とする不織布積層構造体の製法。
  4. 上記架橋処理が、紫外線照射および熱処理の少なくとも一方である請求項3記載の不織布積層構造体の製法。
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