JP2007211375A - 官能基を有する極細繊維シート - Google Patents

官能基を有する極細繊維シート Download PDF

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Abstract

【課題】繊維径が小さく、繊維表面に官能基が導入されており、目的化学物質に対する耐久性ある吸着性を有し、柔軟性に優れ、かつ機械的強度にも優れる極細繊維シートとその製造方法およびその用途を提供する。
【解決手段】平均繊度が0.5dtex以下である極細繊維からなるシートであって、シート構造体中に水溶性熱可塑性PVAが存在しており、PVA水酸基部分が1〜80モル%変性されている繊維シートである。
【選択図】 図1

Description

本発明は、官能基を有する極細繊維からなるシートとその製造方法および用途に関する。より詳細には、極細化処理前の複合繊維を構成していた水溶性熱可塑性ポリビニルアルコールを極細化後の繊維シートの表面及び内部に一部残存させ、このポリビニルアルコールの水酸基に化学反応により官能基を導入することを特徴とするシート、その製造方法及びそれを使用したフィルター、特にケミカルフィルター用途に関するものである。
近年、半導体・液晶・メディカル分野等でクリーン度の高い空間での作業の必要性が増加している。特に半導体製造工場ではクリーンルーム内の化学物質をppbレベルまでに抑える必要があり、酸性、アルカリ性ガスの高効率な除去が可能なフィルターが求められている。
このような要求に対してイオン交換樹脂によって化学物質を除去するケミカルフィルターが提案されている。イオン交換樹脂はビーズ状形態をとるため、フィルターとして用いる場合、基材となるシートへ接着剤を用いて固定する必要があり、表面積、取扱い性、成形性の上で十分なものではない。
また活性炭タイプのケミカルフィルターは物理吸着により対象ガスを除去するため、吸着ガスの再放出や、添着剤の脱落等の問題がある。
一方、繊維シート状態の吸着フィルターは成形性に優れ、取扱いが容易である。また粒状の吸着材と比較し、繊維状吸着材は表面積が大きいという利点がある。
そこでイオン交換繊維によって化学物質を除去するケミカルフィルターも提案されているが、2〜5dtex程度の通常繊度の繊維から構成されるため、イオン交換容量が十分でなく、また、イオン交換基導入時に基材繊維の劣化などの問題が生じ、十分満足できるものではなかった。
また、ビニロン繊維を基材とし、イオン交換基を導入したイオン交換繊維も提案されている。ビニロン系のイオン交換繊維は酸性ガス・アルカリ性ガスを吸着するだけでなく、未変性部分の水酸基によりボロンを吸着するという特徴があり、微粒子除去のために必須とされるガラス繊維を使用した超高性能フィルターから生じるホウ素化合物の除去に効果を示している。しかしながら、基材にビニロンを使用しているため、吸湿時に膨潤が起き、圧力損失が高くなるという問題が起きていた。
このような背景のもと、十分なイオン交換量を有し、成形性、取扱い性に優れ、使用環境下の影響を受け難い高性能なケミカルフィルターが望まれている。
ケミカルフィルターにおいて十分なイオン交換量を持たせるためには、表面積を増加させることが有効であり、対象となる化学物質の吸着、除去効率の向上や、長寿命化が期待できる。表面積を向上させる手段としては、シート構成繊維の繊度をより極細にする方法が有効である。
極細繊維シートの製造法としては、2成分以上のポリマーからなる複合繊維シートを処理して同シート構成繊維を長さ方向に分割処理して極細化する方法も知られているが、この場合、不織布中に2種以上の成分が存在することになる。化学薬品を使用して一方の成分を除去することで、1成分のみからなる極細繊維シートを得ることはできるが、除去する成分とは別の成分が好ましくない影響を受けるため、複合繊維を構成する成分の組み合せが限定される場合が多い。
一方、ポリビニルアルコール(以下、PVAと略記することもある)は水溶性のポリマーであって、その基本骨格と分子構造、形態、各種変性により水溶性の程度を変えることができることが知られている。また、PVAは生分解性であることが確認されている。地球環境的に、合成物を自然界といかに調和させるかが大きな課題となっている現在、このような基本性能を有するPVAおよびPVA系繊維は多いに注目されている。
本発明者等は、特開2001−262456公報(特許文献1)で、溶融紡糸によりPVAと他の熱可塑性ポリマーとの複合長繊維を製造すると同時に得られた同複合長繊維を不織布とする方法について、さらには、同複合長繊維不織布からPVAを水で抽出除去して得られる異型断面あるいは極細繊度を有する長繊維不織布について提案している。
さらに、本発明者等は、特願2004−271549(特許文献2)で、PVAの一部を残存させること、さらに残存させる際の条件により従来の常識からは予測できない耐久性に優れた吸水性を有する極細長繊維布が得られることについて提案している。
特開2001−262456公報(0047欄) 特願2004−271549(0058欄〜0062欄)
この一部残存させたPVAを利用することでシートの様々な機能化が可能である。すなわち残存させたPVAの水酸基と目的とする官能基を有する化合物との化学反応を起こすことで、PVAを後変性させることが可能である。特願2004−271549(特許文献2)には、水酸基が予め変性された共重合単位を用いて、ビニルエステル系の重合体を得て、それをケン化して、変性PVAを得て、その変性PVAを使用して溶融紡糸すること、さらに、その変性基として、スルホン酸基や、カルボン酸基、アミノ基を有する単量体が挙げられることが言及されており、かつその際の変性に関しては20モル%以下の範囲が好ましいこと記載されている。しかしながら、このようなイオン交換性の官能基で代表される溶融紡糸に向かない官能基については5%の変性にて安定的に溶融紡糸が行うことができないのが実情である。また溶融紡糸性に問題が生じなくとも、PVA熱水除去行程にて溶解性が低下する場合があり、適用範囲が狭い。
本発明の目的は、繊維径が小さく、幅広い種類の官能基を変性度の高い範囲まで繊維表面に導入することができ、目的化学物質に対する優れた吸着性を有する極細繊維シートとその製造方法およびその用途を提供することにある。
本発明者等は、水溶性熱可塑性PVAと他の熱可塑性ポリマーから構成された溶融紡糸による複合繊維シートから該水溶性熱可塑性樹脂を抽出除去して該複合繊維を極細化し、シートに一部残存するPVAの水酸基を後変性処理(アセタール化など)を施し、目的とする官能基を導入し、有害ガスや有害物質の吸着性および機械的強度に優れ、さらには柔軟性に優れる極細繊維シートが得られることを見出した。
すなわち本発明は、複合溶融紡糸には工業的に適用できない高変性度領域を含む後変性PVAを耐久性のある状態でもう一方の熱可塑性樹脂繊維表面に被覆させることが可能な技術を提供するものである。
またケミカルフィルターとして使用する際には、対象の酸性・アルカリ性ガスを吸着するだけでなく、未変性部分の水酸基によりガラス繊維より発生するボロンの吸着も可能な繊維シートであり、かつ繊維表面に存在する変性PVA量はわずかな量であるため、湿度による膨潤はほとんど起きないと言う長所を有する繊維シートを提供するものである。
具体的には本発明は、平均繊度が0.5dtex以下である熱可塑性ポリマー(ア)からなる極細繊維シートであって、シート構造体中にPVA(イ)がシート質量に対して0.001〜10質量%存在しており、該PVA(イ)が、PVAの水酸基部分に官能基が導入され、かつその導入による変性度が1〜80モル%である変性ポリビニルアルコールであることを特徴とする繊維シートである。
また、本発明は、以下の工程(a)および(b)を、(a)の工程を行った後に(b)の工程を行うことを特徴とする繊維シートの製造方法である。
(a)熱可塑性ポリマー(ア)および水溶性熱可塑性PVA(イ)からなる複合繊維シートから、該PVA(イ)の大部分を水で溶解除去して、平均繊度が0.5dtex以下である熱可塑性ポリマー(ア)からなる極細繊維シートとするとともに、シート中にPVAがシート質量に対して0.001〜10質量%存在するように該PVAの一部を該極細繊維シート内に残存させる工程。
(b)シート内に存在するPVA(イ)の水酸基部分を化学反応により変性させ、その変性度が1〜80モル%となるように官能基を導入する工程。
さらに、本発明は、このような極細繊維シートの好適な用途として、このような極細繊維シートを用いたケミカルフィルター、液体フィルター、消臭シート、建材シート、マスク、メディカル衣料用シート、電池用セパレーター、キャパシタ用セパレーター等、特に顕著な効果が得られるケミカルフィルターに関するものである。
本発明の極細繊維シートがPVAの残存状態において耐久性に優れている理由としては、水溶性熱可塑性PVA(a)が極細化前の複合繊維の段階で繊維を構成している一成分であったことから、繊維を構成している他の熱可塑性ポリマー(b)との間で何らかの結合が存在していること、さらに、水溶性熱可塑性PVA(a)除去後の熱可塑性樹脂(b)は極細繊維となり、水溶性熱可塑性PVA(a)は極細繊維中或いは繊維間の細い隙間の奥に主として存在していること等により、水溶性熱可塑性PVA(a)を水により抽出除去する際の処理では極細繊維表面から脱落しにくい状態となっているものと予想される。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、水溶性熱可塑性PVA以外の熱可塑性樹脂(b)からなる極細繊維は平均0.5dtex以下の繊度を有していることが必要であり、0.4dtex以下の繊度を有することが好ましく、0.3dtex以下の繊度を有することがより好ましく、0.25dtex以下の繊度を有することが特に好ましい。極細繊維の繊度が0.5dtexよりも大きい場合には、極細化が十分でなく、繊維表面積が低下し、さらに柔軟性が著しく低下する。また、下限値に関しては特に限定はないが、生産のし易さの点で0.001dtex以上が好ましい。
本発明の極細繊維シートには、水溶性熱可塑性PVAの一部が残存されていることが大きな特徴である。
本発明の極細繊維シート構造体中に存在する水溶性熱可塑性PVAの割合は、シート質量に対して10質量%以下であることが必要であり、0.001〜10質量%であることが好ましく、0.03〜3質量%であることがより好ましく、0.05〜2質量%であることが特に好ましい。水溶性熱可塑性PVAの割合が10質量%より多い場合には、使用時に水溶性熱可塑性PVAの溶出が高くなり、また不織布の柔軟性が低下する。一方、水溶性熱可塑性PVAの割合が0.001質量%より少ない場合には、後に官能基を導入した際に、ガス吸着性などの面で十分な性能を示さない場合がある。なお、本発明で言う残存PVA量とは、PVAを変性した後の質量での値である。
溶融紡糸に用いる水溶性熱可塑性PVAは、PVAのホモポリマーは勿論のこと、例えば、共重合、末端変性、および変性により官能基を導入した変性PVAも包括するものである。勿論、溶融紡糸可能なものであらねばならない。通常の一般市販PVAや溶融紡糸には向かない官能基を有しているPVAや水酸基を多量に変性したPVAでは溶融温度と熱分解温度が近接しているため、あるいは溶融時にゲル化を生じるため溶融紡糸することはできず(すなわち熱可塑性ではなく)、種々の工夫が必要である。
PVAの粘度平均重合度(以下、単に重合度と略記する)は200〜800が好ましく、230〜600がより好ましく、250〜500が特に好ましい。通常の繊維用に使用されるPVAは、重合度が高いほど高強度繊維が得られることから、重合度1500以上のものが一般的であり、例えば重合度約1700のものや約2100のものが一般的である。そのことから考えると、本発明で用いられるPVAの重合度200〜800は極めて低いと言える。重合度が200未満の場合には紡糸時に十分な曳糸性が得られず、その結果として満足な複合繊維が得られない場合がある。一方、重合度が800を越えると溶融粘度が高すぎて紡糸ノズルからポリマーを吐出することができず、満足な複合繊維を得られない場合がある。
PVAの重合度(P)は、JIS−K6726に準じて測定される。すなわち、PVAを完全に再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](dl/g)から次式により求められるものである。
P=([η]×10/8.29)(1/0.62)
本発明に用いられるPVAのけん化度は90〜99.99モル%の範囲が好ましく、92〜99.9モル%がより好ましく、94〜99.8モル%が特に好ましい。けん化度が90モル%未満の場合には、PVAの熱安定性が悪く熱分解やゲル化によって安定な複合溶融紡糸を行うことができない場合がある。一方、けん化度が99.99モル%よりも大きいPVAは安定に製造することが困難である。
PVAは、ビニルエステル系重合体のビニルエステル単位をけん化することにより得られる。ビニルエステル単位を形成するためのビニル化合物単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニルおよびバーサティック酸ビニル等が挙げられ、これらの中でもPVAを生産性よく得る点からは酢酸ビニルが好ましい。なお、本発明で言う変性度の中に、未けん化で残存するビニルエステル単位に由来する酢酸基等は含めない。
本発明の極細長繊維シートを構成するPVAは、ホモポリマーであっても共重合単位を導入した変成PVAであってもよいが、複合溶融紡糸性、吸水性、繊維物性およびシート物性の観点からは、共重合単位を導入した変性PVAを用いることが好ましい。共重合単量体の種類としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン等のα−オレフィン類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテル等のヒドロキシ基含有のビニルエーテル類、アリルアセテートで代表されるアリルエステル類、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル等のアリルエーテル類、 N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニルアミド類、オキシアルキレン基を有する単量体、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等のヒドロキシ基含有のα−オレフィン類に由来する単量体に由来する単量体等が挙げられる。これらの単量体による共重合割合としては、共重合PVAを構成する全単位のモル数を100%とした場合に、α−オレフィン類に由来する単量体の場合には、通常20モル%以下、それ以外の単量体の場合には10モル%以下である。また、共重合されていることのメリットを発揮するためには、0.01モル%以上が上記共重合単位であることが好ましい。
これらの単量体の中でも、共重合性、混合溶融紡糸性および繊維物性等の観点からエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテンの炭素数4以下のα−オレフィン類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類がより好ましい。炭素数4以下のα−オレフィン類およびビニルエーテル類に由来する単位は、PVA中に0.1〜18モル%存在していることが好ましく、0.5〜15モル%がより好ましい。
さらに、α−オレフィンがエチレンである場合には、特に繊維物性が高くなることからもっとも好ましく、特にエチレン単位が3〜18モル%存在する場合が好適であり、より好ましくは5〜15モル%エチレン単位が導入された変性PVAを使用する場合である。
本発明で使用するPVAは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法が挙げられる。その中でも、無溶媒あるいはアルコールなどの溶媒中で重合する塊状重合法や溶液重合法が通常採用される。溶液重合時に溶媒として使用されるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどの低級アルコールが挙げられる。共重合に使用される開始剤としては、α,α'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−バレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、nープロピルパーオキシカーボネートなどのアゾ系開始剤または過酸化物系開始剤などの公知の開始剤が挙げられる。重合温度については特に制限はないが、0℃〜200℃の範囲が適当である。
本発明で使用するPVAにおけるアルカリ金属イオンの含有割合は、PVA100質量部に対してナトリウムイオン換算で0.00001〜0.05質量部が好ましく、0.0001〜0.03質量部がより好ましく、0.0005〜0.01質量部が特に好ましい。アルカリ金属イオンの含有割合が0.00001質量部未満のものは工業的に製造困難である。またアルカリ金属イオンの含有量が0.05質量部より多い場合には複合溶融紡糸時のポリマー分解、ゲル化および断糸が著しく、安定に繊維化することができない場合がある。なお、アルカリ金属イオンとしては、カリウムイオン、ナトリウムイオン等が挙げられる。
本発明において、特定量のアルカリ金属イオンをPVA中に含有させる方法は特に制限されず、PVAを重合した後にアルカリ金属イオン含有の化合物を添加する方法、ビニルエステルの重合体を溶媒中においてけん化するに際し、けん化触媒としてアルカリイオンを含有するアルカリ性物質を使用することによりPVA中にアルカリ金属イオンを配合し、けん化して得られたPVAを洗浄液で洗浄することにより、PVA中に含まれるアルカリ金属イオン含有量を制御する方法などが挙げられるが、後者の方法が好ましい。なお、アルカリ金属イオンの含有量は、原子吸光法で求めることができる。
けん化触媒として使用するアルカリ性物質としては、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムが挙げられる。けん化触媒に使用するアルカリ性物質のモル比は、酢酸ビニル単位に対して0.004〜0.5が好ましく、0.005〜0.05が特に好ましい。けん化触媒は、けん化反応の初期に一括添加しても良いし、けん化反応の途中で追加添加しても良い。
けん化反応の溶媒としては、メタノール、酢酸メチル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。これらの溶媒の中でもメタノールが好ましく、含水率を0.001〜1質量%に制御したメタノールがより好ましく、含水率を0.003〜0.9質量%に制御したメタノールがもっと好ましく、含水率を0.005〜0.8質量%に制御したメタノールが特に好ましい。洗浄液としては、メタノール、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ヘキサン、水などが挙げられ、これらの中でもメタノール、酢酸メチル、水の単独もしくは混合液がより好ましい。
洗浄液の量としてはアルカリ金属イオンの含有割合を満足するように設定されるが、通常、PVA100質量部に対して、300〜10000質量部が好ましく、500〜5000質量部がより好ましい。洗浄温度としては、5〜80℃が好ましく、20〜70℃がより好ましい。洗浄時間としては20分間〜100時間が好ましく、1時間〜50時間がより好ましい。
また本発明の目的や効果を損なわない範囲で、PVAには融点や溶融粘度を調整する等の目的で可塑剤を添加することが可能である。可塑剤としては、従来公知のもの全てが使用できるが、ジグリセリン、ポリグリセリンアルキルモノカルボン酸エステル類、グリコール類にエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドを付加したものが好適に使用される。そのなかでも、ソルビトール1モルに対してエチレンオキサイドを1〜30モル%付加した化合物が好ましい。
次に本発明の極細繊維シートの製造方法について説明する。本発明の極細繊維シートは、水溶性熱可塑性PVA(イ)と他の熱可塑性樹脂(ア)からなる複合繊維で構成されたシートから該水溶性熱可塑性PVA(イ)を水で溶解(抽出)除去することにより製造することができる。
本発明に用いられる水溶性熱可塑性PVA(イ)以外の熱可塑性樹脂(ア)の具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル、ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリヒドロキシブチレート-ポリヒドロキシバリレート共重合体、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステルおよびその共重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン10、ナイロン12、ナイロン6−12等の脂肪族ポリアミドおよびその共重合体、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィンおよびその共重合体、エチレン単位を25モル%から70モル%含有する水不溶性のエチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリスチレン系、ポリジエン系、塩素系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、フッ素系のエラストマー等の中から少なくとも一種類を選んで用いることができる。
本発明に好適に用いられるPVA(イ)と複合紡糸しやすい点からは、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ナイロン6、ナイロン66、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびエチレン単位を25モル%から70モル%含有する上記エチレン−ビニルアルコール共重合体が好ましい。
水溶性熱可塑性PVA(イ)と他の熱可塑性樹脂(ア)からなる複合繊維シートを得る方法は、溶融紡糸繊維や積層シートから得られるフラットヤーンを織編物にする方法、溶融紡糸繊維を乾式法や湿式法(紙)で不織布とするものであっても、スパンボンド法やメルトブローン法などにより溶融紡糸後直接不織布化するものであってもよいが、生産性や得られるシート強度の点からスパンボンド法が好ましい。
本発明において複合溶融紡糸繊維の製造は、ポリマーの組み合せ、複合断面に応じて適宜設定する必要があるが、主に、以下のような点に留意して繊維化条件を決めることが望ましい。
紡糸口金温度は、複合繊維を構成するポリマーのうち高い融点を持つポリマーの融点をMpとするときMp+10℃〜Mp+80℃が好ましく、せん断速度(γ)500〜25000sec−1、ドラフト(V)50〜2000で紡糸することが好ましい。また、複合紡糸するポリマーの組み合わせから見た場合、紡糸時における口金温度とノズル通過時のせん断速度で測定したときの溶融粘度が近接したポリマー、例えば溶融紡糸口金温度において、せん断速度1000sec−1における溶融粘度差が2000poise以内である組み合せで複合紡糸することが紡糸安定性の面から好ましい。
本発明におけるポリマーの融点Tmとは、示差走査熱量計(DSC:例えばMettler社TA3000)で観察される主吸熱ピークのピーク温度である。せん断速度(γ)は、ノズル半径をr(cm)、単孔あたりのポリマー吐出量をQ(cm/sec)とするとき、γ=4Q/πrで計算される。またドラフトVは、引取速度をA(m/分)とするとき、V=A・πr/Qで計算される。
本発明の複合繊維を製造するに際して、紡糸口金温度が複合繊維を構成するポリマーのうち高い融点を持つポリマーの融点Mp+10℃より低い温度では、該ポリマーの溶融粘度が高すぎて、高速気流による曳糸・細化性に劣り、またMp+80℃を越えるとPVAが熱分解しやすくなるために安定した紡糸ができない。また、せん断速度は500sec−1よりも低いと断糸しやすく、25000sec−1より高いとノズルの背圧が高くなり紡糸性が悪くなる。ドラフトは50より低いと繊度むらが大きくなり安定に紡糸しにくくなり、ドラフトが2000より高くなると断糸しやすくなる。
複合形態は特に限定されないが、分散性や極細化後の繊維径の均一性を考慮すると、海成分と島成分からなる海島型、ミカンの横断面形状型または扇型の形状を有するもの、短冊状に配列した貼り合せ型形状を有するものが好ましい。また複合断面形状が海島型である場合には、極細繊維形成成分(ア)である島成分の数としては2〜800の範囲が生産性の点で好ましく、より好ましくは10〜400の範囲である。また、複合繊維の横断面形状がミカンの横断面形状型、扇型、或いは貼り合せ型の形状を有する場合には、複合繊維を構成する極細繊維形成成分(ア)は水溶性熱可塑性PVA(イ)により2〜20個に分割されているのが生産性の点で好ましい。フィルターや電池用セパレーターに用いる場合には、繊維の細さが重要であることから、細い繊維が得られやすい海島型の形状が好ましい。
本発明に用いる熱可塑性樹脂(ア)と水溶性熱可塑性PVA(イ)とからなる複合繊維シートにおける熱可塑性樹脂(ア)と水溶性熱可塑性PVA(イ)の質量比は目的に応じて適宜設定されるので特に制限はないが、5/95〜95/5が好適であり、10/90〜90/10がより好ましい。好適な範囲を外れた場合には複合した効果が現れない場合がある。
また本発明の目的や効果を損なわない範囲で、熱可塑性樹脂(ア)および水溶性熱可塑性PVA(イ)には、必要に応じて銅化合物等の安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、潤滑剤、結晶化速度遅延剤を重合反応時、またはその後の工程で添加することができる。特に熱安定剤としてヒンダードフェノール等の有機系安定剤、ヨウ化銅等のハロゲン化銅化合物、ヨウ化カリウム等のハロゲン化アルカリ金属化合物を添加すると、繊維化の際の溶融滞留安定性が向上するので好ましい。
また必要に応じて平均粒子径が0.01μm以上5μm以下の微粒子を0.05質量%以上10質量%以下、重合反応時、またはその後の工程で該熱可塑性樹脂(ア)に添加することができる。微粒子の種類は特に限定されず、たとえばシリカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の不活性微粒子を添加することができ、これらは単独で使用しても2種以上併用しても良い。特に平均粒子径が0.02μm以上1μm以下の無機微粒子、例えばシリカ等が添加されていることが好ましく、この場合には紡糸性、延伸性が向上する。
紡糸ノズルから吐出された糸条は延伸せずにそのまま高速で巻き取るか必要に応じて延伸される。延伸は通常熱延伸され、熱風、熱板、熱ローラー、水浴等のいずれを用いてもよい。溶融紡糸繊維を織り編物の形態にするには、レピア、グリッパー、エアージェット、ウォータージェット、スルザー等の織機、あるいは丸編み機などの横編み機、トリコット、ラッセル、ミラニーズなどのたて編み機等を用いて行うことができる。
また捲縮・カットして綿状にし、カーディング、絡合、ボンディングして得ることができる。またカーディング時に他のバインダー繊維原綿等を目的に応じて混綿することもできる。絡合方法はニードルパンチによる方法であっても高圧水流絡合処理による方法であっても良い。
本発明において、繊維シートの製造方法としては、スパンボンド法を用いる方法がもっとも好ましいのであるが、スパンボンド法では水溶性熱可塑性PVA(イ)と他の熱可塑性樹脂(ア)をそれぞれ別の押出機で溶融混練し、引き続きこれら溶融したポリマーの流れをそれぞれ紡糸頭に導き、合流し、流量を計量し、紡糸ノズル孔から吐出させ、この吐出糸条を冷却装置により冷却せしめた後、エアジェット・ノズルのような吸引装置を用いて、目的の繊度となるように、1000〜6000m/分の糸条の引取り速度に該当する速度で高速気流により牽引細化させた後、開繊させながら移動式の捕集面の上に堆積させて不織布ウエブを形成させ、引き続きこのウエブを部分熱圧着して巻き取ることによって複合長繊維不織布を得ることができる。更に必要に応じ、ボンディング、絡合処理を行い、目的に応じたウエブ加工を実施することで様々な風合い・物性のシートを得ることができる。ボンディング方法は熱エンボスによる方法であっても、熱フラットカレンダーであっても良い。絡合方法はニードルパンチによる方法であっても高圧水流絡合処理による方法であっても良い。
スパンボンド法では、エアジェット・ノズルのような吸引装置を用いて吐出糸条を牽引細化させるに際し、1000〜6000m/分の糸条の引取速度に該当する速度で高速気流により牽引細化させるのが好ましい。吸引装置による糸条の引取条件は、紡糸ノズル孔から吐出する溶融ポリマーの溶融粘度、吐出速度、紡糸ノズル温度、冷却条件などにより適宜選択するが、1000m/分未満では、吐出糸条の冷却固化遅れによる隣接糸条間の融着が起こる場合があり、また糸条の配向・結晶化が進まず、得られる複合不織布は、粗雑で機械的強度の低いものになってしまい好ましくない。一方、6000m/分を越えると、吐出糸条の曳糸・細化性が追随できず糸条の切断が発生して、安定した複合長繊維不織布の製造ができない。
さらに、スパンボンド法において本発明の複合繊維シートを安定に製造するに際し、紡糸ノズル孔とエアジェット・ノズルのような吸引装置との間隔は30〜200cmが好ましい。該間隔は使用するポリマー、組成、上記で述べた紡糸条件にもよるが、該間隔が30cmより小さい場合には、吐出糸条の冷却固化遅れによる隣接糸条間の融着が起こる場合があり、また糸条の配向・結晶化が進まず、得られる複合不織布は、粗雑で機械的強度の低いものになってしまい好ましくない。一方、200cmを越える場合には、吐出糸条の冷却固化が進みすぎて吐出糸条の曳糸・細化性が追随できず糸条の切断が発生して、安定した複合繊維シートの製造ができない。
スパンボンド法においてエアジェット・ノズルのような吸引装置で細化された複合繊維は、捕集用シート面上にほぼ均一な厚さとなるように分散捕集してウエッブを形成する。吸引装置と捕集面との間隔としては30〜200cmであることが生産性、得られる不織布の繊維物性の観点から好ましい。また、ウエッブの目付としては、5〜500g/mの範囲が不織布の生産性および後加工性の点で好ましい。更に吸引細化されたウエッブ形成複合繊維の太さとしては0.2〜8dtexの範囲が生産性の点で好ましい。
本発明では、複合繊維シートから水溶性熱可塑性PVA(イ)を水で抽出除去することにより、熱可塑性ポリマー(ア)の極細化が可能である。複合繊維シートから水溶性熱可塑性樹脂(イ)を水で抽出する方法に関しては特に制約はなく、連続多段方式の洗浄槽、サーキュラー、ビーム、ジッカー、ウィーンス等の染色機やバイブロウォッシャー、リラクサー等の熱水処理設備を使用する方法、高圧水流を噴射する方法等、任意の方法を適宜選択することができる。高圧水流を噴射する方法は、分割極細繊維が相互に強く絡まるという点で、非常に有効な方法あるが、高圧水流を噴射するだけでは、水溶性熱可塑性PVA(イ)の付着量を本発明で規定する範囲にまで減少させることが難しい場合が多い。したがって、高圧水流で処理した後、水浴中で不織布を攪拌処理して水溶性熱可塑性PVA(イ)の付着量を本発明で既定する範囲にする方法を用いることが好ましい。抽出水は中性でかまわないし、アルカリ水溶液、酸性水溶液、あるいは界面活性剤等を添加した水溶液であっても良い。
特に本発明において重要なことは、水で水溶性熱可塑性PVA(イ)を抽出除去する際に、シート内に水溶性熱可塑性PVA(イ)の一部が残存するように、除去処理を行わなければならないことである。そのためには、予め、除去処理に使用する水の量、処理方法、処理時間、処理温度等を種々変更して、本発明で規定するPVA残存量が得られるようにこれら条件を決めておくのが好ましい。
具体的には、本発明においては、水溶性熱可塑性PVA(イ)を水で抽出除去する方法として、水浴中で複合繊維シートを攪拌処理して含有水溶性熱可塑性PVA(イ)を溶解除去する方法が好ましく、その際の水浴比は、複合繊維シートの質量に対して100〜2000倍であることが好ましく、200〜1000倍であることがより好ましい。水浴比が100倍より少ない場合、水溶性熱可塑性PVA(イ)の溶解除去が不十分となり、目的とする極細繊維シートが得られないことがある。また、水浴比が2000倍を越える場合には、複合繊維から極細繊維への分割性が低下することがある。もちろん、抽出除去が不十分な場合には、水溶性熱可塑性PVA(イ)を含まないフレッシュな水を用いて、再度水浴中で水溶性熱可塑性PVA(イ)を抽出除去する方法が用いられる。
抽出処理温度は目的に応じて適宜調整すればよいが、熱水を用いて抽出する場合には、40〜120℃で処理するのが好ましく、60〜110℃で処理するのがより好ましく、80〜100℃で抽出処理を行うのが特に好ましい。処理温度が40℃より低い場合、水溶性熱可塑性PVA(イ)の抽出性が十分でなく、生産性が低下する。また、処理温度が120℃より高い場合には、水溶性熱可塑性PVA(イ)の溶解時間が極端に短くなり、目的とする水溶性熱可塑性PVA(イ)の割合での安定な生産が困難な場合がある。一旦、水溶性熱可塑性PVA(イ)が不織布から完全に抽出除去された場合には、その後で、水溶性熱可塑性PVA(イ)水溶液を付与する等の方法を用いて水溶性熱可塑性PVA(イ)を不織布に添加しても本発明で規定するような耐久性ある繊維表面への付着は得られ難い。
抽出処理時間についても、目的や使用する装置、処理温度に応じて適宜調整が可能であるが、生産効率、安定性、得られる極細繊維シートの品質・性能等を考慮すると、バッチ処理を行う場合には10〜200分であることが好ましく、連続処理の場合は1〜20分であることが好ましい。
複合繊維の横断面形状が、ミカンの横断面形状型、扇型、或いは貼り合せ型、海島型等の断面形状である場合、複合繊維から極細繊維への分割性・分繊性を向上させる目的で、50℃以下の温度から、好ましくは室温付近から抽出処理を開始し、徐々に水温を高めて、所定の温度、好ましくは80〜110℃まで昇温し、この温度範囲で5分〜10時間抽出処理を行う操作を用いるのが効果的である。徐々に昇温する速度としては0.2〜30℃/分が好ましい。そのような徐々に昇温する条件を適用することで、水溶性熱可塑性PVA(イ)成分が溶解時に収縮し、その結果、残存成分である熱可塑性ポリマー極細長繊維が微細な捲縮を有することとなり、極細繊維の分割性が向上し、得られる極細繊維シートの嵩高性、繊維分散性がより向上する。
上記以外にも、複合繊維の分散性を向上させる方法として、高圧水流の噴射により分割する方法、加圧ロール間を通過させることによる分割方法等、種々の方法が適用可能であり、水溶性熱可塑性PVA(イ)を抽出除去する方法と併用して行われる。
本発明では、このようにして得られた極細繊維シートを構成する極細繊維の表面に存在する水溶性熱可塑性PVA(イ)の水酸基に化学反応により官能基を導入する。官能基を導入する方法としては複合繊維より水溶性熱可塑性PVA(イ)を抽出除去した後にアセタール化法、エステル化法、エーテル化法等の手段を用いて達成される。好ましくは、アセタール化法により官能基を導入する場合である。
導入する官能基については目的に応じて適宜選択可能であるが、ケミカルフィルターにおいては、酸性ガス、アルカリ性ガスを吸着するイオン性基を導入することが必要である。すなわち、アルカリ性ガスを吸着させたい場合には、スルホン酸基、カルボキシル基などの導入が好ましい。一方、酸性ガスを吸着させたい場合は、4級アンモニウム基、3級アミノ基、2級アミノ基などの導入が好ましい。例えば、PVAの水酸基部分を部分ホルマール化、部分アセタール化、部分アミノアセタール化して、これらのイオン性基を導入する。
これらの化学反応の結果、イオン交換基などの目的とする官能基がPVA鎖に結合していればよい。好ましくは、変性ポリビニルアルコール(イ)がスルホン酸基、またはカルボキシル基を有する脂肪族、または芳香族アルデヒドまたはそのアセタール化物により変性されたものである場合、あるいは変性ポリビニルアルコール(イ)が、ハロゲン原子を有する脂肪族または芳香族アルデヒドまたはそのアセタール化物により変性された後、ハロゲン原子が4級アンモニウム基、3級アミノ基、2級アミノ基、1級アミノ基のいずれかにより置換されたもの、あるいはポリビニルアルコールとエピハロヒドリンを反応させたのち、ハロゲン原子を4級アンモニウム基、3級アミノ基、2級アミノ基、1級アミノ基のいずれかにより置換されたものである場合である。
たとえば、スルホン酸基を導入する場合には、分子内にスルホン酸基を有するアルデヒド類及びそのアセタール化物、好適な例をあげれば、ベンズアルデヒドスルホン酸ナトリウム、ベンズアルデヒドジスルホン酸ナトリウム等を用いる。また、カルボキシル基を導入する場合には、分子内にカルボキシル基を有するアルデヒド類、及びそのアセタール化物、好適な例を挙げればベンズアルデヒドカルボン酸等を用いる。
また、アミノ基を導入する場合には、例えば、分子内にハロゲンを有する脂肪族または芳香族のアルデヒドまたはそのアセタール化物、例えばブロモアセトアルデヒドジメチルアセタール、ブロモアセトアルデヒドジエチルアセタール、クロロアセトアルデヒドジメチルアセタール、クロロアセトアルデヒドジエチルアセタール等でPVAをアセタール化した後、ハロゲン原子をアミン類でアミノ置換する方法、またエピハロヒドリンとPVAを反応させ、1〜3級アミン類でハロゲン原子をアミノ化することにより弱または強塩基性アニオン交換基を導入する。
このような、PVAの水酸基をアセタール結合によりイオン交換基をPVAに導入した変性PVAの場合には、特に水系の反応であることや、適当なアルデヒドを選択することで容易に目的の官能基を導入することが可能であるというメリットから本発明の目的に極めて適したものであると言える半面、このような変性PVAは溶融安定性に劣るという問題点を有している。特に変性度が高くなる、すなわち変性度が5モル%以上となると安定した紡糸が不可能となる。本発明は、上記したような後変性により、変性度が5モル%以上のものでも何ら問題を生じることなく、容易に変性PVAが繊維表面に存在している極細繊維シートが得られることとなる。
これらの方法にて目的とする性能を達成しうる官能基を導入しようとする場合、例えばスルホン基を有するアルデヒドで反応させる場合、触媒として塩酸または硫酸を10〜30重量%、所定アルデヒドを1〜10重量%、膨潤抑制剤として硫酸ナトリウムまたは塩化ナトリウムを10〜30重量%のアセタール化反応浴中で常温〜70℃の範囲にて10分〜120分の処理を行うのが好ましい。
導入される官能基によっては親水性を増加させるため、PVA残量が比較的多いシートでは水中に浸漬させると膨潤が著しい場合もある。このため、必要に応じ官能基導入反応の前後にてホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、グリオキザール等のアルデヒド類とアセタール化反応を行ってもよい。
本発明において、水溶性熱可塑性PVA(a)へ導入される官能基量、すなわち変性度は1〜80モル%であり、好ましくは20〜75モル%、より好ましくは25〜70モル%である。なお、各種官能基導入は溶融紡糸前の水溶性熱可塑性PVA(a)の水酸基に導入することも可能であるが、実用的な性能を得るために必要な官能基量、例えば、イオン交換性基20モル%以上、特に好適範囲である25モル%以上まで反応を行うと、紡糸時にPVAの分解が起き、溶融紡糸を安定に行うことができない。
なお、変性度が1モル%未満の場合には十分なイオン交換容量を得ることができず、また80モル%を越える場合には残存する水酸基が少量となりボロン化合物の吸着能力が低下する。また、本発明で言う変性度とは、PVAのビニルアルコール単位に由来する水酸基が変性されている割合のみの値であり、例えば、PVAを合成するに至る過程で、ビニルエステルと共重合した共重合可能モノマーに由来する官能基は本発明の変性度の中には含めない。
本発明において、不織布(繊維シート)の目付けとしては、5〜500g/mの範囲が生産性および後加工性の点で好ましい。
本発明で使用されるPVAは生分解性を有しており、活性汚泥処理あるいは土壌に埋めておくと分解されて水と二酸化炭素になる。PVAを溶解した後の廃液の処理には活性汚泥法が好ましい。該PVA水溶液を活性汚泥で連続処理すると2日間から1ヶ月で分解される。また、本発明に用いるPVAは燃焼熱が低く、焼却炉に対する負荷が小さいので、PVAを溶解した排水を乾燥させてPVAを焼却処理してもよい。
さらに本発明の極細繊維シートは目的に応じ、エレクトレット加工による帯電処理、プラズマ放電処理やコロナ放電処理による親水化処理等の後加工処理を行ってもよい。
また、本発明で得られる極細繊維シートは、単独で使用するのみではなく、他の長繊維不織布や短繊維不織布、織物や編物等と積層して用いることも可能であり、上記の用途に用いる場合、実用機能をさらに付与することができる。
このようにして得られる極細繊維シートは、表面積が大きく、導入される官能基によってはアルカリ性または酸性ガス吸着性能に優れることから、ケミカルフィルターとして好適に使用することができる。また気体用だけでなく、液体用のイオン交換フィルターとしても使用することができる。
さらに本発明にて得られた極細繊維シートは表面積が大きく、導入される官能基によっては、例えば、アミノ基、カルボキシル基、スルホン基が導入されている場合、ホルムアルデヒド吸着性能に優れることから、建材シートとして好適に使用することができる。
また本発明にて得られた極細繊維シートは、表面積が大きく、導入される官能基によっては脱臭性能に優れることから、消臭シートとしても好適に使用することができる。
その他にも、本発明の極細繊維シートは、優れた柔軟性、吸水性、濾過性を活かし、種々の用途で使用することができる。例として、絶縁材で代表されるエレクトロニクス用、油吸着材、皮革基布、セメント用配合材、ゴム用配合材、各種テープ基材などの産業用資材;紙おむつ、ガーゼ、包帯、医療用ガウン、サージカルテープなどの医療・衛材;印刷物基材、包装・袋物資材、収納材などの生活関連資材;衣料用;断熱材、吸音材などの内装材用;建設資材用;農業・園芸用資材;土壌安定材、濾過用資材、流砂防止材、補強材などの土木・資材用;鞄靴材等の用途を挙げることができる。
次に本発明を具体的に実施例で説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例において、各物性値は以下のようにして測定した。なお、実施例中の部及び%はことわりのない限り質量に関するものである。
[PVAの分析方法]
PVAの分析方法は、特に記載のない限り、JIS−K6726に従った。
変性量は、変性ポリビニルエステルあるいは変性PVAを用いて500MHz1H−NMR(JEOL GX−500)装置による測定から求めた。なお、本発明で言う変性量の中に、PVAを合成する際に、未けん化でPVA中に残ったビニルエステル由来の基は含めない。また、PVAを合成する際に、ビニルエステルと共重合可能なモノマーとして添加したモノマーに由来した官能基も本発明の変性量に含めない。アルカリ金属イオンの含有量は原子吸光法で求めた。
[融点]
PVAの融点は、DSC(メトラー社、TA3000)を用いて、窒素中、昇温速度10℃/分で250℃まで昇温後室温まで冷却し、再度昇温速度10℃/分で250℃まで昇温した場合のPVAの融点を示す吸熱ピークのピークトップの温度を調べた。
[紡糸状態]
溶融紡糸の状態を観察して次の基準で評価した。
◎:極めて良好、○:良好、△:やや難あり、×:不良
[不織布の状態]
得られた不織布を目視観察および手触観察して次の基準で評価した。
◎:均質で極めて良好、○:ほぼ均質で良好、△:やや難あり、×:不良
[不織布中の水溶性熱可塑性PVAの割合]
30cm×30cmの試料をオートクレーブ中で2000ccの水に浸漬し、120℃で1時間加熱処理した。処理後、熱水中からシートを取り出して軽く搾り、抽出液を取り換えて同様の操作を実施。計3回の繰り返し処理により、シート中の水溶性熱可塑性PVA(a)を完全抽出除去。処理前後の質量変化より、シート中の水溶性熱可塑性PVA(a)の割合を求めた。
[平均繊維径]
顕微鏡により倍率1000倍で撮影した試料の拡大写真から、無作為に100本の繊維を選び、それらの繊維径を測定し、その平均値を平均繊維径とした。
[目付]
JIS L1906 「一般長繊維不織布試験方法」に準じて測定した。
[厚み]
JIS L1906 「一般長繊維不織布試験方法」に準じて測定した。
[ガス除去効率]
評価用シートをプリーツ加工した上で、アルミ製枠材にはめ込み、下記の方法にてガス除去効率試験を行なった。
・アンモニア
5μg/m3に調製したエアーを風速0.5m/sになるように評価サンプルに通し、フィルター前後のガスをサンプリングし、超純水に溶解捕集させ、イオンクロマトグラフィーを用いた分析により除去効率を求めた。
・硫化水素
5μg/m3に調製したエアーを風速0.5m/sになるように評価サンプルに通し、フィルター前後のガスをサンプリングし、ガスクロマトグラフィーを用いた分析により除去効率を求めた。
・ボロン
1μg/m3に調製したエアーを風速0.5m/sになるように評価サンプルに通し、フィルター前後のガスをサンプリングし、超純水に溶解捕集させ、イオンクロマトグラフィーを用いた分析により除去効率を求めた。
[圧力損失]
・ドライ時
25℃、湿度30%において、エアーを風速0.5m/sになるように評価サンプルに通した際のフィルター前後の圧力差を差圧計にて測定した。
・高湿度下
40℃、湿度90%において、エアーを風速0.5m/sになるように評価サンプルに通した際のフィルター前後の圧力差を差圧計にて測定した。
実施例1
[エチレン変性PVAの製造]
撹拌機、窒素導入口、エチレン導入口および開始剤添加口を備えた100L加圧反応槽に酢酸ビニル29.0kgおよびメタノール31.0kgを仕込み、60℃に昇温した後30分間窒素バブリングにより系中を窒素置換した。次いで反応槽圧力が5.6kg/cm(5.5×10Pa)となるようにエチレンを導入仕込みした。開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(AMV)をメタノールに溶解した濃度2.8g/L溶液を調整し、窒素ガスによるバブリングを行って窒素置換した。上記の重合槽内温を60℃に調整した後、上記の開始剤溶液170mlを注入し重合を開始した。重合中はエチレンを導入して反応槽圧力を5.6kg/cm(5.5×10Pa)に、重合温度を60℃に維持し、上記の開始剤溶液を用いて610ml/hrでAMVを連続添加して重合を実施した。9.5時間後に重合率が68%となったところで冷却して重合を停止した。反応槽を開放して脱エチレンした後、窒素ガスをバブリングして脱エチレンを完全に行った。次いで減圧下に未反応酢酸ビニルモノマーを除去しポリ酢酸ビニルのメタノール溶液とした。
得られた該ポリ酢酸ビニル溶液にメタノールを加えて濃度が50%となるように調整したポリ酢酸ビニルのメタノール溶液2.0kg(溶液中のポリ酢酸ビニル1.0kg)に、0.47kg(ポリ酢酸ビニル中の酢酸ビニルユニットに対してモル比(MR)0.10)のアルカリ溶液(NaOHの10%メタノール溶液)を添加してけん化を行った。アルカリ添加後約5分で系がゲル化したものを粉砕器にて粉砕し、60℃で3時間放置してけん化を進行させた後、0.5%酢酸濃度の水/メタノール=20/80混合溶液10.0kgを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和の終了を確認後、濾別して得られた白色固体のPVAに水/メタノール=20/80の混合溶液20.0kgを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記洗浄操作を3回繰り返した後、さらにメタノール10.0kgを加えて室温で3時間放置洗浄した。その後、遠心脱液して得られたPVAを乾燥機中70℃で2日間放置して乾燥PVA(PVA−1)を得た。
得られたエチレン変性PVAのけん化度は99.1モル%であった。また該変性PVAを灰化させた後、酸に溶解したものを用いて原子吸光光度計により測定したナトリウムの含有量は、変性PVA100質量部に対して0.0012質量部であった。
また、重合後未反応酢酸ビニルモノマーを除去して得られたポリ酢酸ビニルのメタノール溶液をn−ヘキサンに沈殿、アセトンで溶解する再沈精製を3回行った後、80℃で3日間減圧乾燥を行って精製ポリ酢酸ビニルを得た。該ポリ酢酸ビニルをDMSO−d6に溶解し、500MHzプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて80℃で測定したところ、エチレンの含有量は8.7モル%であった。上記のポリ酢酸ビニルのメタノール溶液をアルカリモル比0.5で鹸化した後、粉砕したものを60℃で5時間放置して鹸化を進行させた後、メタノールソックスレーを3日間実施し、次いで80℃で3日間減圧乾燥を行って精製されたエチレン変性PVAを得た。該PVAの平均重合度を常法のJIS K6726に準じて測定したところ340であった。さらに該精製された変性PVAの5%水溶液を調整し厚み10ミクロンのキャスト製フィルムを作成した。該フィルムを80℃で1日間減圧乾燥を行った後に、DSC(メトラー社、TA3000)を用いて、前述の方法によりPVAの融点を測定したところ212℃であった(表1)。
Figure 2007211375
上記で得られたPVAを日本製鋼所(株)二軸押出機(30mmφ)を用いて設定温度220℃、スクリュー回転数200rpmで溶融押出することによりペレットを製造した(表1)。
上記で得られたPVA(PVA−1)ペレットと、メルトフローレートが35、融点が160℃のポリプロピレンを準備し、それぞれのポリマーを別の押出機で加熱して溶融混練し、不織布を構成する複合長繊維の繊維軸に直交する繊維断面に占める質量比率がPP/PVA=70/30になるように230℃の25海島型複合紡糸パックに導き、ノズル径0.35mmφ×1008ホール、吐出量1050g/分、せん断速度2500sec−1の条件で紡糸口金から吐出させ、紡出フィラメント群を20℃の冷却風で冷却しながら、ノズルから80cmの距離にあるエジェクターにより高速エアーで2500m/分の引取り速度で牽引細化させ、開繊したフィラメント群をエンドレスに回転している捕集コンベア装置上に捕集堆積させ長繊維ウエブを形成させた。紡糸状態は、断糸は全く見られず、断面形状も極めて良好であった。
次いで、このウエブを60℃に加熱した凹凸柄エンボスロールとフラットロールとの間で、線圧50kg/cmの圧力下で通過させ、エンボス部分熱圧着させることにより、単繊維繊度3.5dtexの長繊維からなる目付60g/mの25海島型複合長繊維不織布を得た。得られた不織布は均質なもので極めて良好であった。次いで本シートを水流絡合機(水圧100kg/cm、不織布通過速度10m/分)を用いて高圧水流を噴射させることにより、複合長繊維を分割・交絡処理した。複合長繊維不織布の製造条件を表2に記載する。
Figure 2007211375
得られた複合長繊維不織布約50mについて、連続式多段洗浄槽を用い、PVA成分の抽出処理を行った(95℃にて滞留時間20分の処理を行った)。抽出除去後の不織布中PVAの割合は0.1%であった。
次いで、このウエッブを20%塩酸、20%硫酸ナトリウム、5%ベンズアルデヒドスルホン酸ナトリウムが混合されているアセタール化反応浴にて40℃、30分処理を行った後、十分に純水にて洗浄し、スルホン酸基を導入したPP極細繊維シートを得た。
上記で得られた極細繊維シートの熱水抽出後PVA残量、アセタール化変性度、繊度、目付、厚みを表3に記載した。
Figure 2007211375
また、上記で得られた極細繊維シートのケミカルフィルター性能について評価を行った。ガス除去効率及び圧力損失の評価結果を表3に示す。いずれの評価においても良好な性能を示した。
実施例2および3
実施例1で用いたPVAの代わりに表1に記載するPVAを用いる以外は実施例1と同じ条件下にて複合繊維からなる不織ウエブを得た。紡糸状態を表2に示す。
得られた複合繊維シートについて、実施例1と同様に洗浄槽を用いてPVA成分を抽出した。次いで実施例1と同様にアセタール化反応処理を行い目的とする極長繊維シートを得た。実施例3についてはアセタール化反応時間を90分とした。得られた極細繊維シートのPVA残存量、繊度、目付、厚みを表3に示す。さらにケミカルフィルター性能についての評価結果も表3に示す。
実施例4〜8
実施例1で用いたPVAを用い、表2に記載する型状の複合紡糸用口金、熱可塑性ポリマーを用い、表2に記載する紡糸条件を採用し、適宜ノズル−エジェクター間距離およびラインネット速度を調整する以外は実施例1と全く同じ条件下にて複合長繊維からなる不織ウエブを得た後、表2に記載するエンボス処理温度にて部分熱圧着して複合長繊維不織布とした。
複合繊維成分の質量比率はパックへのポリマー導入量を変えることで調整させた。また、海島型複合繊維は、熱可塑性ポリマーが島成分、PVAが海成分となるように導いた。
実施例4についてはロールを140℃、線圧50kg/cmの圧力下で通過させた。
得られた複合繊維シートについて、実施例1と同様に洗浄槽を用いてPVA成分を抽出し、次いで実施例1と同様にアセタール化反応処理を行い目的とする極細繊維シートを得た。実施例4についてはアセタール化反応時間を10分とした。実施例5についてはPVA抽出温度・時間を100℃、120分とした。得られた極細繊維シートの熱水抽出後のPVA残存量、繊度、目付、厚みを表3に示す。さらにケミカルフィルター性能についての評価結果も表3に示す。
実施例9
実施例1で得られたPVA熱水抽出除去後のシートを20%塩酸、20%硫酸ナトリウム、5%ブロモアセトアルデヒドジメチルアセタールが混合されているアセタール化反応浴にて40℃、60分処理を行った。次いで10%トリメチルアミン水溶液に浸漬させ、50℃、90分でアミノアセタール化を行った後、中和、洗浄し、PVA樹脂の水酸基にトリメチルアンモニウム基を導入した(アセタール化度34%)。得られた極細繊維シートのPVA残存量、繊度、目付、厚みを表3に示す。さらにケミカルフィルター性能についての評価結果も表3に示す。
実施例10
実施例1で得られたPVA熱水抽出除去後のシートを20%塩酸、20%硫酸ナトリウム、5%ベンズアルデヒドカルボン酸が混合されているアセタール化反応浴にて40℃、30分処理を行った後、十分に純水にて洗浄し、カルボキシル酸基を導入したPP極細繊維シートを得た(アセタール化度37%)。得られた極細繊維シートのPVA残存量、繊度、目付、厚みを表3に示す。さらにケミカルフィルター性能についての評価結果も表3に示す。
実施例11
実施例1で得られたPVA熱水抽出除去後のシートを20%塩酸、20%硫酸ナトリウム、5%ブロモアセトアルデヒドジメチルアセタールが混合されているアセタール化反応浴にて40℃、60分処理を行った。次いで10%ジメチルアミン水溶液に浸漬させ、50℃、90分でアミノアセタール化を行った後、中和、洗浄し、PVA樹脂の水酸基にジメチルアミノ基を導入した(アセタール化度40%)。得られた極細繊維シートの熱水抽出後のPVA残存量、繊度、目付、厚みを表3に示す。さらにケミカルフィルター性能についての評価結果も表3に示す。
比較例1〜4
実施例1で用いたPVAを用い、表2に記載する熱可塑性ポリマー、紡糸条件を適用し、適宜ノズル−エジェクター間距離およびラインネット速度を調整する以外は実施例1と全く同じ条件下にて複合長繊維からなる不織ウエブを得た後、表2に記載するエンボス処理温度にて部分熱圧着して複合繊維シートとした。複合繊維成分の質量比率はパックへのポリマー導入量を変えることで調整させた。紡糸状態はいずれも良好であった。
得られた複合繊維シートについて、実施例1と同様に表2に記載する条件にてPVA成分を抽出し、次いで表2に記載する条件にて、官能基の導入処理を行い各種繊維シートを得た。シート中のPVAの割合は、熱水温度および処理時間を適宜変更することにより調整した。
得られた繊維シートのPVA残存量、繊度、目付、厚みを表3に示す。さらにケミカルフィルター性能についての評価結果も表3に示す。
比較例1については、繊度が0.85と大きく、表面積が不十分なため、ガス除去効率が劣るものとなった。
比較例2については熱水抽出後のPVA残存率が0.0006%と低いため、十分な量の官能基が導入することができず、ガス除去効率が劣るものとなった。
比較例3については熱水抽出後のPVA残存率が15%と高く、繊維の分割性・分散性が低い上、吸湿時にシートの膨潤が起こり、圧力損失を高くさせてしまう結果となった。
比較例4については残存PVAへの官能基導入の際に反応がほとんど進行せず、低い変性度となった。その結果、ガス除去効率が劣るものとなった。
本発明に使用される複合繊維の複合形態の一例を示す繊維断面図 本発明に使用される複合繊維の複合形態の一例を示す繊維断面図 本発明に使用される複合繊維の複合形態の一例を示す繊維断面図
符号の説明
1 水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール
2 熱可塑性ポリマー

Claims (13)

  1. 平均繊度が0.5dtex以下である熱可塑性ポリマー(ア)からなる極細繊維シートであって、シート構造体中にポリビニルアルコール系重合体(イ)がシート質量に対して0.001〜10質量%存在しており、該ポリビニルアルコール系重合体(イ)が、ポリビニルアルコールの水酸基部分に官能基が導入され、かつその導入による変性度が1〜80モル%である変性ポリビニルアルコールであることを特徴とする繊維シート。
  2. 変性ポリビニルアルコール(イ)が、アセタール化、エステル化、エーテル化のいずれかにより変性されたものである請求項1記載の繊維シート。
  3. 変性ポリビニルアルコール(イ)に導入されている官能基がイオン交換基である請求項1または2に記載の繊維シート。
  4. 変性ポリビニルアルコール(イ)に導入されている官能基が、スルホン酸基、カルボキシル基、4級アンモニウム基、3級アミノ基、2級アミノ基、1級アミノ基のいずれかである請求項1〜3のいずれかに記載の繊維シート。
  5. 変性ポリビニルアルコール(イ)がスルホン酸基、またはカルボキシル基を有する脂肪族、または芳香族アルデヒドまたはそのアセタール化物により変性されたものである請求項1〜4のいずれかに記載の繊維シート。
  6. 変性ポリビニルアルコール(イ)が、ハロゲン原子を有する脂肪族または芳香族アルデヒドまたはそのアセタール化物により変性された後、ハロゲン原子が4級アンモニウム基、3級アミノ基、2級アミノ基、1級アミノ基のいずれかにより置換されたもの、あるいはポリビニルアルコールとエピハロヒドリンを反応させたのち、ハロゲン原子を4級アンモニウム基、3級アミノ基、2級アミノ基、1級アミノ基のいずれかにより置換されたものである請求項1〜4のいずれかに記載の繊維シート。
  7. 変性度が25〜70モル%である請求項1記載の繊維シート。
  8. 極細繊維シート層に存在する変性ポリビニルアルコール(イ)が、炭素数4以下のαオレフィン単位を0.1〜20モル%共重合したものである請求項1〜7のいずれかに記載の繊維シート。
  9. 極細繊維シート層に存在する変性ポリビニルアルコール(イ)が、エチレン単位を0.1〜20モル%共重合したものである請求項1〜8のいずれかに記載の繊維シート。
  10. 極細繊維シート層が、水流絡合処理、熱エンボス処理、カレンダー処理、ニードルパンチ加工処理からなる群から選ばれる少なくとも1種の方法により形態が維持されている請求項1〜9のいずれかに記載の繊維シート。
  11. 熱可塑性ポリマー(ア)が、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ナイロン6、ナイロン66、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびエチレン単位を25モル%から70モル%含有するエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーである請求項1〜10のいずれかに記載の繊維シート。
  12. 以下の工程(a)および(b)を、(a)の工程を行った後に(b)の工程を行うことを特徴とする繊維シートの製造方法。
    (a)熱可塑性ポリマー(ア)およびポリビニルアルコール(イ)からなる複合繊維シートから、ポリビニルアルコール(イ)の大部分を水で溶解除去して、平均繊度が0.5dtex以下である熱可塑性ポリマー(ア)からなる極細繊維シートとするとともに、シート中にポリビニルアルコール系重合体(イ)がシート質量に対して0.001〜10質量%存在するように該ポリビニルアルコール(イ)の一部を該極細繊維シート内に残存させる工程、
    (b)シート内に存在するポリビニルアルコール成分(イ)の水酸基部分を化学反応により変性させ、その変性度が1〜80モル%となるように官能基を導入する工程、
  13. 請求項1〜11のいずれかに記載の繊維シートを用いたケミカルフィルター。
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