JP2009275172A - 熱可塑性樹脂組成物及び鏡筒用射出成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)熱可塑性樹脂50〜90質量%、(B)平均繊維長2〜8mm、繊維断面のアスペクト比(長径/短径)1〜2及び前記短径8〜17μmのガラス繊維(繊維B)5〜40質量%、及び(C)平均繊維長2〜8mm、繊維断面のアスペクト比(長径/短径)3〜6及び前記短径5〜10μmのガラス繊維(繊維C)5〜40質量%、を溶融混練することにより、得られるペレット中の繊維Bの平均繊維長を0.16〜0.40mmに、且つ繊維Cの平均繊維長を0.20〜0.45mmに制御した熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
ガラス繊維で強化されたポリカーボネート樹脂は、ノートパソコンのハウジングや電動工具ハウジング等に用いられている。近年、特にデジカメ鏡筒、液晶プロジェクター鏡筒、プロジェクションTV鏡筒等の製品は薄肉化且つ大型化しているため、特に真円度、外観、剛性、各種機械的強度及びウエルド強度に優れた鏡筒が求められている。
ところで、従来、ポリカーボネート樹脂の機械的強度の改良を行なうため、ガラス繊維を含有させる発明が数多くなされてきた(特許文献1〜5参照)。
[1](A)熱可塑性樹脂50〜90質量%、
(B)平均繊維長2〜8mm、繊維断面のアスペクト比(長径/短径)1〜2及び前記短径8〜17μmのガラス繊維(繊維B)5〜40質量%、及び
(C)平均繊維長2〜8mm、繊維断面のアスペクト比(長径/短径)3〜6及び前記短径5〜10μmのガラス繊維(繊維C)5〜40質量%、
を溶融混練することにより、得られるペレット中の繊維Bの平均繊維長を0.16〜0.40mmに、且つ繊維Cの平均繊維長を0.20〜0.45mmに制御した熱可塑性樹脂組成物、
[2]上記(A)の熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート、ポリカーボネートとスチレン系樹脂の混合物、又はポリカーボネートとポリエステル系樹脂の混合物である、上記[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物、
[3]さらに、成分(A)〜(C)の合計量100質量部に対して(D)フェノキシ樹脂及び/又はエポキシ樹脂0.3〜5質量部を含有する、上記[1]又は[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物、
[4]さらに、成分(A)〜(C)の合計量100質量部に対して(E)酸化防止剤0〜0.3質量部、(F)離型剤0〜3質量部及び(G)難燃剤・難燃助剤0〜15質量部を含有する、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物、
[5]上記[1]〜[4]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物から得られる、円筒形状の射出成形体、
[6]鏡筒用である、上記[5]に記載の射出成形体、
を提供するものである。
(A)熱可塑性樹脂50〜90質量%、
(B)平均繊維長2〜8mm、繊維断面のアスペクト比(長径/短径)1〜2及び前記短径8〜17μmのガラス繊維(繊維B)5〜40質量%、及び
(C)平均繊維長2〜8mm、繊維断面のアスペクト比(長径/短径)3〜6及び前記短径5〜10μmのガラス繊維(繊維C)5〜40質量%、
を溶融混練することにより、得られるペレット中の繊維Bの平均繊維長を0.16〜0.40mmに、且つ繊維Cの平均繊維長を0.20〜0.45mmに制御した熱可塑性樹脂組成物である。
成分(A)の熱可塑性樹脂としては、鏡筒としての利用の観点から、ポリカーボネート、ポリカーボネートとスチレン系樹脂の混合物、又はポリカーボネートとポリエステル系樹脂の混合物が好ましく、ポリカーボネート、ポリカーボネートとスチレン系樹脂の混合物がより好ましい。
ポリカーボネートとしては、公知のものを使用でき、例えば、二価フェノールとカーボネート前駆体との反応により製造される芳香族ポリカーボネートを好ましく用いることができる。二価フェノールとカーボネート前駆体とを溶液法又は溶融法、即ち、二価フェノールとホスゲンとを反応させる方法、又は二価フェノールとジフェニルカーボネート等とを反応させるエステル交換法により製造されたものを用いることができる。
二価フェノールとしては、好ましくはビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系、より好ましくはビスフェノールAを主原料としたもの、さらに好ましくはビスフェノールAである。
かかる粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ型粘度計を用いて、20℃における塩化メチレン溶液の粘度を測定し、これより極限粘度[η]を求め、次式にて算出するものである。
[η]=1.23×10-4Mv0.83
前記スチレン系樹脂としては、公知のスチレン系樹脂を使用でき、例えばポリスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、メチルメタクリレート−スチレン共重合体(MS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体(AES樹脂)、アクリロニトリル−スチレン/アクリレートゴム共重合体(ASA樹脂)、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS樹脂)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(MABS樹脂)、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−スチレン共重合体(MAS樹脂)、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBR)、水素添加スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SEB)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIR)、水素添加スチレン−イソプレンブロック共重合体(SEP)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)等が挙げられる。
スチレン系樹脂をポリカーボネートと混合して用いる場合、スチレン系樹脂の使用量は、ポリカーボネートに対して、0.1〜0.5倍質量であることが好ましく、0.2〜0.4倍質量であることがより好ましい。
前記ポリエステル系樹脂としては、多価カルボン酸(ジカルボン酸)とポリアルコール(ジオール)との重縮合により得られる公知のポリエステル系樹脂を使用できる。
多価カルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、4,4'−ジフェニルジカルボン酸、4,4'−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4'−ジフェニルスルホンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、及びこれらのエステル誘導体等が挙げられる。
ポリアルコールとしては、例えば1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等が挙げられる。また、ポリエステル系樹脂をポリカーボネートと混合して用いる場合、ポリエステル系樹脂の使用量は、ポリカーボネートに対して、0.1〜0.5倍質量であることが好ましい。
成分(B)としては、平均繊維長2〜8mm、繊維断面のアスペクト比(長径/短径)1〜2及び前記短径8〜17μmのガラス繊維(繊維B)を用いる。
かかるガラス繊維としては、含アルカリガラス、低アルカリガラス及び無アルカリガラス等原料としたものをいずれも好適に用いることができる。
平均繊維長は、作業性の観点から、好ましくは2〜6mm、より好ましくは2〜4mmである。繊維断面のアスペクト比は、好ましくは1〜1.7である。繊維断面の短径は、好ましくは8〜16μmであり、より好ましくは8〜15μmである。
短径が大き過ぎ且つアスペクト比が大き過ぎると、成形体の外観が悪くなると共に、強度、弾性率が不足する。短径が小さ過ぎ且つアスペクト比が大き過ぎると、成形体のウエルド強度が低下する。
成分(C)としては、平均繊維長2〜8mm、繊維断面のアスペクト比(長径/短径)3〜6及び前記短径5〜10μmのガラス繊維(繊維C)を用いる。
かかるガラス繊維としては、含アルカリガラス、低アルカリガラス及び無アルカリガラス等原料としたものをいずれも好適に用いることができる。
平均繊維長は、好ましくは2〜6mm、より好ましくは2〜4mmである。繊維断面のアスペクト比は、好ましくは3〜5であり、より好ましくは3〜4である。繊維断面の短径は、好ましくは5〜9μmであり、より好ましくは6〜8μmである。
短径が大き過ぎ且つアスペクト比が小さ過ぎると、円筒形状の射出成形体の真円度が悪くなる。短径が大き過ぎ且つアスペクト比が大き過ぎると、成形体の外観が悪くなると共にウエルド強度が不足する。短径が小さ過ぎ且つアスペクト比が小さすぎると、円筒形状の射出成形体の真円度が悪くなる。短径が小さ過ぎ且つアスペクト比が大き過ぎると、成形体のウエルド強度が低下する。
本発明の樹脂組成物は、前記成分(A)〜(C)以外に、必要に応じてフェノキシ樹脂及び/又はエポキシ樹脂を成分(D)として含有していてもよい。
フェノキシ樹脂は、主鎖が芳香族ジオールと芳香族ジグリシジルエーテルの重付加構造で結ばれた高分子である。
フェノキシ樹脂は、(1)芳香族ジオールとエピハロヒドリンとの縮合・重付加反応、(2)芳香族ジオールと芳香族ジグリシジルエーテルとの重付加反応等を利用し、溶液中あるいは無溶媒下に従来公知の方法で縮合・重付加させて得ることができる。
エポキシ樹脂としては、分子内に少なくとも1つ以上のエポキシ基を有する化合物を挙げることができる。具体的には、エポキシ化大豆油、エポキシ化あまに油、エポキシブチルステアレート、エポキシオクチルステアレート、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、p−ブチルフェニルグリシジルエーテル、スチレンオキシド、ネオヘキセンオキシド、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ビス−エポキシジシクロペンタジエニルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ブタジエンジエポキシド、テトラフェニルエチレンエポキシド、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン−ブタジエン系共重合体、エポキシ化水素化スチレン−ブタジエン系共重合体、ビスフェノール−A型エポキシ化合物、ビスフェノール−S型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、レゾルシノール型エポキシ化合物、3,4−エポキシシクロヘキサメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、あるいは3,4−エポキシシクロヘキシルグリシジルエーテル等の脂環式エポキシ化合物等を例示することができる。
本発明の樹脂組成物は、前記成分(A)〜(C)以外に、必要に応じて酸化防止剤を成分(E)として含有していてもよい。
酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤やフェノール系酸化防止剤が好ましく用いられる。
本発明の樹脂組成物は、前記成分(A)〜(C)以外に、必要に応じて離型剤を成分(F)として含有していてもよい。
離型剤としては、例えば高級アルコール、カルボン酸エステル、ポリオレフィンワックス及びポリアルキレングリコールが挙げられる。
炭素数が2〜40の一価又は多価アルコールとしては、例えばオクチルアルコール、デシルアルコール、ドデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクタデシルアルコール、イコシルアルコール、ドコシルアルコール、トリアコンチルアルコール、テトラコンチルアルコール、ガーベットアルコール、ユニリンアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、ネオペンチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキサントリオール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリヒドロキシステアリルアルコール等を挙げることができる。
炭素数8〜40のモノ又はジカルボン酸としては、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、オクタデカン酸、ドコサン酸、テトラコサン酸、ヘキサコサン酸、オクタコサン酸、トリアコンタン酸、テトラコンタン酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸等が挙げられる。
ポリエチレンワックスとしては、分子量が1000〜5000、且つ融点が100〜120℃の範囲のものが好ましく、ポリプロピレンワックスとしては、分子量15000〜40000のものが好ましい。これらの中でも、ポリエチレンワックスがより好ましい。
本発明のポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリエチレン−プロピレングリコール等が挙げられ、分子量としては、500〜20000の範囲のものである。
さらに、ジメチルシリコーン等のシリコーン系離型剤や、ビスアマイド系離型剤等も好ましく用いることができる。
離型剤は、一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の樹脂組成物は、前記成分(A)〜(C)以外に、必要に応じて難燃剤・難燃助剤を成分(G)として含有していてもよい。
難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤、窒素系難燃剤、金属水酸化物、リン系難燃剤、有機アルカリ金属塩、有機アルカリ土類金属塩、シリコーン系難燃剤、膨張性黒鉛等、公知のものを目的に応じて用いることができる。
しかしながら、ハロゲン系難燃剤は比較的難燃化効率は良いが、環境汚染、安全性の観点から、ハロゲンを含まない難燃剤が好ましい。
金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
該ハロゲン非含有機リン系難燃剤としては、リン原子を有し、ハロゲンを含まない有機化合物であれば、特に制限なく用いることができる。中でも、リン原子に直接結合するエステル性酸素原子を1つ以上有するリン酸エステル化合物が好適に用いられる。リン酸エステル化合物は、モノマー、ダイマー、オリゴマー、ポリマー又はこれらの混合物であってもよい。
具体的には、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジイソプロピルフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、ビスフェノールAビスホスフェート、ヒドロキノンビスホスフェート、レゾルシンビスホスフェート、レゾルシノール−ジフェニルホスフェート、トリオキシベンゼントリホスフェート、又はこれらの置換体、縮合物等が挙げられる。
有機リン系難燃剤以外のハロゲン非含有リン系難燃剤としては、赤リン等が挙げられる。
アルカリ金属塩としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウム等の塩が挙げられ、アルカリ土類金属塩としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の塩が挙げられる。これらの中で、ナトリウム、カリウム、セシウムの塩が好ましい。また、その有機酸の塩は、フッ素、塩素、臭素等のハロゲンで置換されていてもよく、その例としては、パーフルオロメタンスルホン酸、パーフルオロエタンスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸のカリウム塩等が挙げられる。
シリコーン系難燃剤としては、例えば、官能基を有する(ポリ)オルガノシロキサン類が挙げられる。この官能基としては、アルコキシ基、アリールオキシ、ポリオキシアルキレン基、水素基、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基等が挙げられる。
上記の難燃剤は一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
難燃助剤としては、ポリフルオロオレフィン、酸化アンチモン等が挙げられる。
ポリフルオロオレフィンとしては、通常、フルオロエチレン構造を含む重合体又は共重合体であり、例えばポリジフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン等が好ましく挙げられる。これらの中でも、燃焼時の溶融滴下防止の観点から、ポリテトラフルオロエチレンが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、前述の各配合割合で配合し、溶融混練することにより得られるが、溶融混練の際に、前記繊維Bの平均繊維長を0.16〜0.40mm(好ましくは、0.20〜0.35mm)に、繊維Cの平均繊維長を0.20〜0.45mm(好ましくは、0.27〜0.40mm)の範囲内に厳密に制御する必要がある。
溶融混練後の繊維B及び繊維Cの平均繊維長の制御方法に特に制限は無く、例えば、バンバリーミキサー、単軸混練機、二軸混練機、多軸混練機、コニーダ等を用い、混練度合いを適宜調整する方法が挙げられる。特に、例えば図1の様に、供給口を2つ又は3つ有し、各供給口の間にニーディングブロックを有する二軸混練機を用いて混練度合いを調整する方法が好ましい。混練の際の加熱温度は、通常、230〜320℃であり、好ましくは240〜300℃の範囲、より好ましくは250〜290℃の範囲である。
また、本請求範囲に繊維長を制御するための方法としては、図1に示すような二軸混練機を用いる場合は、繊維B及び繊維Cを共に供給口1から投入する方法や、繊維Bを供給口2から投入し、繊維Cを供給口1から投入する方法が挙げられる。供給口2を、供給口3よりもホッパー口(供給口1)に近いところに設けることにより、繊維B及び繊維Cが長くなり過ぎるのを防ぐことができ、二軸混練機におけるニーディングブロックの数を少なく抑えることができると共に、繊維B及び繊維Cの平均繊維長を、上記範囲内で自由に制御し易くなる。
但し、用いる熱可塑性樹脂の分子量及び供給量、繊維Bや繊維Cの添加量、ニーディングブロックの種類や数、混練機の大きさ、ホッパー口からの距離(L)とシリンダー径(D)との比(L/D)、回転数、温度などに応じて、当業者が行なえる範囲で適宜条件を設定すればよい。
以上のようにして得られる本発明の熱可塑性樹脂組成物・成形体は、一般に以下に示す物性を有している。
当該樹脂組成物の試験片(厚さ3.2mm)について、ASTM D256に準拠して測定される、23℃におけるノッチ付Izod衝撃強度は、9.8kJ/m2以上、より詳細には9.8〜13.7kJ/m2であり、高い耐衝撃強度を有している。
当該樹脂組成物の試験片(幅12.7mm、厚さ3.2mm)について、ASTM D790に準拠して、スパン距離60mm、曲げ速度5mm/secで曲げ試験を行なった。その結果、曲げ強度は141MPa以上、より詳細には141〜189MPaであり、高い曲げ強度を有しており、曲げ弾性率は5190MPa以上、より詳細には5190〜9070MPaであり、高い曲げ弾性率を有している。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物から得た円筒形状の射出成形体は、真円度測定機として「タリロンド300型」(製品名、ランクテーラーホブソン株式会社製)を用い、円筒形状の射出成形体の反ゲート側(流動末端)の内接面を測定したときの、10サンプルの測定値の平均値を真円度とすると、真円度が25μm以下となり、優れている。
該円筒形状の射出成形体は、目視によると、外観に非常に優れている。また、円筒形状の射出成形体の筒部の圧縮試験を行ない、その荷重−変位曲線の傾きより求めた剛性は100N/mm以上であり、高剛性である。さらに、円筒形状の射出成形体の筒部の圧縮試験により求めたウエルド部の破壊荷重は550N以上であり、ウエルド強度に非常に優れている。
各例で得られた樹脂組成物・成形体の性能評価は、下記の方法に従って行なった。
幅12.7mm、厚さ3.2mmの樹脂組成物の試験片を用いて、ASTM D790に準拠して、スパン距離60mm、曲げ速度5mm/secで曲げ試験を行ない、曲げ強度及び曲げ弾性率を測定した。
厚さ3.2mmの樹脂組成物の試験片を用いて、ASTM D256に準拠して、23℃におけるノッチ付Izod衝撃強度を測定した。
以上の(1)及び(2)の測定で用いた試験片は、ペレットを80℃で5時間乾燥した後、射出成形機(製品名「IS100EN」、東芝機械株式会社製)でシリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件で作成した。
真円度測定機として「タリロンド300型」(製品名、ランクテーラーホブソン株式会社製)を用い、円筒形状の射出成形体の反ゲート側(流動末端)の内接面を測定したときの、10サンプルの測定値の平均値を真円度とし、以下の様に評価した。
○・・・25μm以下
△・・・25〜35μm
×・・・35μm以上
樹脂組成物の成形品を目視により確認し、以下の様に評価した。
○・・・ガラス繊維の浮きや表面の荒れが、殆んど見受けられない。
×・・・ガラス繊維の浮きや表面の荒れが、はっきりと確認される。
鏡筒の筒部の圧縮試験を行ない、その荷重−変位曲線の傾きより剛性を求め、以下の様に評価した。
○・・・100N/mm以上
×・・・100N/mm未満
鏡筒の筒部の圧縮試験により、ウエルド部の破壊荷重を測定し、以下の様に評価した。
○・・・550N以上
△・・・450〜550N
×・・・450N以下
ポリカーボネート、繊維B−1、繊維C−1、酸化防止剤、離型剤、難燃剤及び難燃助剤を、いずれも図1と同様の形状の二軸混練機の供給口1から表1に示す配合比(質量部)で投入し、260℃で溶融混練することによりペレットを得た。かかるペレットの一部を600℃の電気炉で灰化し、残った繊維を顕微鏡写真にし、繊維B、繊維Cそれぞれの繊維長を測定し、平均繊維長を求めた。その結果を表2に示す。なお、二軸混練機は、株式会社日本製鋼所製のTEX44を用いた。この二軸混練機は、各穴の位置(供給口2、供給口3、ベント口)を「L(ホッパー口からの距離)/D(スクリュー径:44mm)」の値で示すと、第2供給口では22、第3供給口では37、ベント口では47である。また、先端部では、L/Dは52である。
得られたペレットを120℃で5時間乾燥した後、射出成形により鏡筒を得た。この鏡筒の各種評価結果を表2に示す。
実施例1において、繊維B−1及び繊維C−1を、既に樹脂が溶融状態にある供給口3から投入したこと以外は、実施例1と同様に実験を行なった。結果を表2に示す。
実施例1において、各成分を表2に示す様に変更し、繊維B−2を供給口1から、そして繊維C−2を供給口2から投入したこと以外は、実施例1と同様に実験を行なった。結果を表2に示す。
実施例1において、各成分を表2に示す様に変更し、繊維B−3を供給口1から、そして繊維C−3を供給口3から投入したこと以外は、実施例1と同様に実験を行なった。結果を表2に示す。
*1:「タフロン(登録商標)A1900」(商品名、出光興産株式会社製、粘度平均分子量19,000)
*2:「PKHB」(商品名、InChem社製、数平均分子量10,000)
*3:「イルガフォス(登録商標)168」(商品名、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
*4:「SH200」(商品名、東レ・ダウコーニング株式会社製、ジメチルシリコーン)
*5:「メガファック(登録商標)F114」(商品名、大日本インキ株式会社製、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム)
*6:「CD076」(商品名、旭硝子株式会社製、ポリテトラフルオロエチレン)
実施例1において、各成分を表3に示す様に変更し、繊維B−1および繊維C−2を供給 口1から投入し、混練温度280℃で溶融混練したこと以外は、実施例1と同様に実験を行なった。結果を表3に示す。
実施例1において、各成分を表3に示す様に変更し、混練温度280℃で溶融混練したこと以外は、実施例1と同様に実験を行なった。結果を表3に示す。
実施例1において、各成分を表3に示す様に変更し、繊維B−2を供給口2から、そして繊維C−2を供給口1から投入し、混練温度280℃で溶融混練したこと以外は、実施例1と同様に実験を行なった。結果を表3に示す。
実施例1において、各成分を表3に示す様に変更し、繊維B−3および繊維C−3を供給口1から投入し、混練温度280℃で溶融混練したこと以外は、実施例1と同様に実験を行なった。結果を表3に示す。
実施例1において、各成分を表3に示す様に変更し、繊維B−1を供給口3から、そして繊維C−4を供給口1から投入し、混練温度240℃で溶融混練したこと以外は、実施例1と同様に実験を行なった。結果を表3に示す。
*1〜*4:表2と同様である。
*7:「サンタックUT−61」(商品名、日本エイアンドエル株式会社)
実施例1において、各成分を表4に示す様に変更し、繊維B−2を供給口3から、そして繊維C−1を供給口2から投入し、混練温度280℃で溶融混練したこと以外は、実施例1と同様に実験を行なった。結果を表4に示す。
実施例1において、各成分を表4に示す様に変更し、繊維B−1を供給口1から、そして繊維C−2を供給口3から投入し、混練温度250℃で溶融混練したこと以外は、実施例1と同様に実験を行なった。結果を表4に示す。
実施例1において、各成分を表4に示す様に変更し、繊維B−1を供給口3から投入し、混練温度290℃で溶融混練したこと以外は、実施例1と同様に実験を行なった。結果を表4に示す。
実施例1において、各成分を表4に示す様に変更し、繊維C−4を供給口1から投入し、混練温度240℃で溶融混練したこと以外は、実施例1と同様に実験を行なった。結果を表4に示す。
*1〜*7:表3と同様である。
一方、比較例1及び5〜7より、使用する繊維B及び繊維Cを前記規定の範囲内であっても、溶融混練後の繊維B及び繊維Cの平均繊維長を前記規定の範囲内に制御できていないと、曲げ強度、曲げ弾性率又は耐衝撃性が良好なものでも、鏡筒に求められる真円度、外観、ウエルド強度を得ることができなかった。
同様に、比較例2〜4より、使用する繊維B及び繊維Cが前記規定の範囲になく、溶融混練後の繊維B及び繊維Cの平均繊維長を前記規定の範囲内に制御できていないと、曲げ強度、曲げ弾性率又は耐衝撃性に乏しくなる傾向にあり、且つ、鏡筒に求められる真円度、外観、ウエルド強度を得ることができなかった。
2、3 供給口(サイドフィード用)
4〜7 ニーディングブロック
Claims (6)
- (A)熱可塑性樹脂50〜90質量%、
(B)平均繊維長2〜8mm、繊維断面のアスペクト比(長径/短径)1〜2及び前記短径8〜17μmのガラス繊維(繊維B)5〜40質量%、及び
(C)平均繊維長2〜8mm、繊維断面のアスペクト比(長径/短径)3〜6及び前記短径5〜10μmのガラス繊維(繊維C)5〜40質量%、
を溶融混練することにより、得られるペレット中の繊維Bの平均繊維長を0.16〜0.40mmに、且つ繊維Cの平均繊維長を0.20〜0.45mmに制御した熱可塑性樹脂組成物。 - 上記(A)の熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート、ポリカーボネートとスチレン系樹脂の混合物、又はポリカーボネートとポリエステル系樹脂の混合物である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- さらに、成分(A)〜(C)の合計量100質量部に対して(D)フェノキシ樹脂及び/又はエポキシ樹脂0.3〜5質量部を含有する、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- さらに、成分(A)〜(C)の合計量100質量部に対して(E)酸化防止剤0〜0.3質量部、(F)離型剤0〜3質量部及び(G)難燃剤・難燃助剤0〜15質量部を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物から得られる、円筒形状の射出成形体。
- 鏡筒用である、請求項5に記載の射出成形体。
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