JP2009275026A - 膵臓リパーゼ活性阻害作用を有する組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】コウジュの溶媒抽出エキスを有効成分とすることを特徴とする膵リパーゼ活性阻害剤、それを含む抗肥満、脂肪吸収抑制、血中中性脂肪上昇抑制等の脂肪蓄積を防止する組成物であり、抽出対象となるコウジュがホソバヤマジソ又はナギナタコウジュであり、抽出溶媒が、水である脂肪蓄積防止組成物である。脂肪蓄積防止組成物として、食品、なかでも特定保健用食品、医薬等である。
【選択図】図1
Description
厚生労働省の推定では、日本人の40歳から74歳の男性にあっては二人に一人、女性にあっては五人に一人の割合でメタボリックシンドロームの疑いがあるか、或いはその予備軍であり、その数は約2,000万人にも及んでいるといわれている。
したがって、メタボリックシンドロームへの対策は、国民の健康維持の推進のみならず、国民医療費の増大の抑制にもつながるなど、その効果は計り知れないものである。
例えば、米国では、脂肪代謝に係わる酵素である膵リパーゼの阻害薬としてオリルスタット(商品名:ゼニカル/販売会社:ロッシュ社)が開発され、臨床的に使用されている。しかしながらオリルスタットの服用は突然の便意、放尿、脂肪便などの副作用等を生じさせ、時には日常生活に支障をきたす場合も多い問題点がある。
今回、本発明者は、コウジュのアルコール抽出エキスとは異なり、水抽出エキスについてその薬理作用を検討したところ、かかる水抽出物には優れた膵リパーゼ活性阻害作用があることを新規に見出した。この膵リパーゼ活性阻害作用は、コウジュのアルコール抽出エキスにはみられない、特異的な作用であった。
コウジュ(Xiangru)は、中国においては、夏風邪、発熱、頭痛、腹痛、下痢などの症状に対して用いられている(非特許文献1)。
一方、ホソバヤマジソの非揮発成分に関する報告は少なく、僅かにその成分として数種類のフラボノイドを同定しているに過ぎない(非特許文献3)。
より詳細には、本発明は、コウジュが、ホソバヤマジソ又はナギナタコウジュである膵リパーゼ阻害剤である。
しかも本発明の膵リパーゼ阻害剤は、天然由来の成分であることから、安全であり、日々摂取して利用するために非常に優れている。
このような本発明が提供する膵リパーゼ阻害剤は、様々な食品、加工食品、さらには医薬品等に添加して利用可能である。
したがって、本発明の抽出エキスを含有する脂肪蓄積防止組成物を応用して、日常生活の中で気軽に摂取できる安全性の高い、膵リパーゼ活性阻害作用を持ち、肥満症、高脂血症等の食後の高脂血症を予防、治療する組成物(医薬品、健康食品)を提供できる利点を有している。
このホソバヤマジソは、その乾燥生薬名はコウジュ(Xiangru)と呼ばれ、中国においては、夏風邪、発熱、頭痛、腹痛、下痢などの症状に対して用いられている漢方薬成分の一つである。
また、ナギナタコウジュ(シソ科ナギナタコウジュ属、学名:Elsholtzia ciliata Hylander, Elsholtzia splendens Nakai ex F. Maekawa)については、これをコウジュとして記載していた経緯もあり、中国では地域によってはナギナタコウジュをコウジュとして用いている場合もある。また、本邦においても、ナギナタコウジュ、或いはイヌコウジュ(シソ科イヌコウジュ属、学名:Mosla punctulata)をコウジュとして扱う場合もある。
このホソバヤマジソ又はナギナタコウジュの溶媒抽出エキスに膵リパーゼ活性阻害作用があることは、今まで知られておらず、その点で本発明は特異的なものである。
なお、本発明者の検討によれば、コウジュの抽出エキスとして低級アルコール抽出エキス、或いは低級アルコールと水との混合溶媒を用いた抽出エキスには目的とする膵リパーゼ活性阻害作用は認められないものであり、特に水〜熱水を用いて抽出する点にまた一つの特徴がある。
また、本発明の脂肪蓄積防止組成物は、上記の膵リパーゼ阻害剤を用いて、通常の方法により各種の形態に加工することで製造できる。例えば、固体状物、液状物、乳化状物、ペースト状物、ゼリー状物等の形態に加工して、医薬品として、また食品として製造することができる。
また、甘味剤、着色剤等を添加して服用させることもできる。これらの製剤化にあたっては、日本薬局方の製剤総則に記載の方法によって行うことができる。
ホソバヤマジソの全草乾燥物100gに1Lの水を加え、70℃で2時間加熱抽出し、これを濾過後、減圧下濃縮乾固して、10.1gの抽出エキスを得た。
ナギナタコウジュの水抽出エキスを上記実施例1と同様にして調製した。すなわち、ナギナタコウジュの全草乾燥物100gに1Lの水を加え、70℃で2時間加熱抽出し、これを濾過後、減圧下濃縮乾固して、18.5gの抽出エキスを得た。
リパーゼ阻害活性は、ブタ膵臓由来リパーゼ(シグマ アルドリッチ ジャパン社)及びリパーゼキットS(大日本住友製薬社)を用いて測定した。
測定方法は、キットの説明書に従って行った。すなわち、1試料について試験管A(サンプル測定用)と試験管B(サンプルブランク測定用)を用意し、遮光した両試験管A及びBに6μg/mLの濃度のリパーゼを添加した発色液1mLを入れ、0.0〜10.0mg/mLの濃度に希釈した試料100μLを入れて混和し、恒温漕に入れて30℃で5分間予熱した。予熱後、試験管Aのみに基質液100μLを添加して、30℃で30分間インキュベートした。インキュベートの後、両試験管A及びBに反応停止液を加え、試験管Bにのみ基質液100μLを加えて混和した後、412nmにおける吸光値を測定した。サンプル非添加の液における値を100%として、各サンプルの活性値を以下の式により算出した。
b:サンプル(+)ブランクの活性値(吸光値)
c:サンプル(−)の活性値(吸光値)
d:サンプル(−)ブランクの活性値(吸光値)
比較対照例として、既にリパーゼ阻害活性を有すると報告されている桂皮(特許文献5)、グアバ葉(特許文献6)、及び杜仲葉(特許文献7)の同様の抽出エキスを用いた。
図中に示した結果からも判明するように、ホソバヤマジソ及びナギナタコウジュの水抽出エキスは、良好なリパーゼ阻害活性を示した。
特にホソバヤマジソの水抽出エキスは、比較対照例の桂皮、グアバ葉、及び杜仲葉の抽出エキスのリパーゼ阻害活性よりも強く、優れたリパーゼ阻害活性を有するものであることが判明した。
なお、コウジュ(ホソバヤマジソ又はナギナタコウジュ)のアルコール(エタノール)抽出エキスにあっては、リパーゼ阻害活性を示さなかった。
上記実施例1で調整したホソバヤマジソの抽出エキスについて、ラットの脂肪負荷試験による血中中性脂肪上昇抑制作用を検討した。
[方法]
ウィスター系雄性ラット(6週齢)を1週間予備飼育して実験に用いた。
試験前日より18時間絶食させたラットに、実施例1で調製したホソバヤマジソの水抽出エキス(100及び400mg/5mL/kg)とコーン油1mLとの混合液を投与した。
対照群には蒸留水(5mL/kg)とコーン油1mLの混合物を投与した。
投与前(0時間)、投与2、4及び6時間後に鎖骨下静脈からヘパリン下で採血(0.15mL)を行い、血液を遠心分離(3000rpm、10分間)し、血漿を採取してトリグリセリド−E−Test Wako(和光純薬工業社)にて血漿中のトリグリセリド(TG)を測定し、標準液により作成した検量線から各血漿サンプル中のTG値(mg/dL)を算出した。
対照群及びホソバヤマジソ投与群は、各群ともラット8匹のデータについての結果を平均値で示した(図3は平均値±標準偏差)。
統計処理は、ボンフェローニの多重比較検定を用いて行い、*:p<0.05で対照に対して統計学的有意差ありとした。
図2に、投与後の時間の経緯に基づく血漿TG値(mg/dL)の変化を示し、図3に、投与4時間後における各投与群の血漿TG値(mg/dL)の対比を示した。
図中に示した結果からも判明するように、対照群においてコーン油投与4時間後に血漿のトリグリセリド(TG)は最高値を示した。
これに対してホソバヤマジソ水抽出エキスの400mg/5mL/kgの投与群において、投与4時間後に血漿TG値の上昇を有意に抑制していた。
このことから、本発明のホソバヤマジソの水抽出エキスには、脂肪の吸収を抑制する効果があることが示された。
[方法]
ddyマウス(7週齢、雄性)を用いてホソバヤマジソ抽出エキスの単回大量投与による毒性試験を行った。
実施例1で得られたホソバヤマジソの水抽出エキスを0.5%CMC溶液に懸濁して経口投与に用いた。試験群は、0.5%CMCのみを投与した対照群、及びホソバヤマジソ抽出エキスを2500mg/kgの用量で投与した群(各群3匹)を設け、投与後14日間のマウスの状態を観察した。
ホソバヤマジソ抽出エキス投与後14日間の一般症状、及び体重経過は、対照群と変わり無い状態を維持していた。また、投与後14日目に、開腹して各臓器(胸腺、心臓、肺、肝臓、脾臓、腎臓、精巣)を摘出し、臓器重量の測定、及び肉眼的観察を行ったが、いずれの臓器にも異常は見られなかった。
実施例1で得たホソバヤマジソ、または実施例2で得られたナギナタコウジュの水抽出エキス55.0gを、乳糖249.5gおよびステアリン酸マグネシウム0.5gとともに、単発式打錠機にて打錠することにより、直径10mm、重量300mgの錠剤を製造した。
上記実施例1で得たホソバヤマジソ、または実施例2で得られたナギナタコウジュの水抽出エキス100.0gにステアリン酸マグネシウム0.5gを加え、圧縮、粉砕、整粒、篩別して20〜50メッシュの顆粒剤を得た。
以下に示す組成にて、実施例1で得たホソバヤマジソ、または実施例2で得られたナギナタコウジュの水抽出エキス(以下、単に抽出エキスと記す)入りの各種飲食物を製造した。
(1)飴:
(組成) (重量部)
粉末ソルビトール 89.70
香料 0.25
抽出エキス 10.00
ソルビトールシード 0.05
全量 100.00
(組成) (重量部)
ガムベース 20.00
炭酸カルシウム 2.00
ステビオサイド 0.10
抽出エキス 10.00
乳糖 66.90
香料 1.00
全量 100.00
(組成) (重量部)
グラニュー糖 32.00
水飴 20.00
粉乳 30.00
硬化油 4.00
食塩 0.60
香料 0.03
水 3.37
抽出エキス 10.00
全量 100.00
(組成) (重量部)
グラニュー糖 8.00
濃縮レモン果汁 1.00
L−アスコルビン酸 0.10
クエン酸 0.09
クエン酸ナトリウム 0.05
着色料 0.05
炭酸水 80.71
抽出エキス 10.00
全量 100.00
(組成) (重量部)
冷凍濃縮オレンジ果汁 5.00
果糖ブドウ糖液糖 1.00
クエン酸 0.10
L−アスコルビン酸 0.09
抽出エキス 10.00
香料 0.20
色素 0.10
水 83.51
全量 100.00
(組成) (重量部)
乳固形21%発酵乳 14.76
果糖ブドウ糖液糖 13.31
ペクチン 0.50
クエン酸 0.08
香料 0.15
水 61.20
抽出エキス 10.00
全量 100.00
(組成) (重量部)
50%エタノール 32.00
砂糖 8.60
果汁 2.40
抽出エキス 10.00
水 47.00
全量 100.00
Claims (9)
- コウジュの溶媒抽出エキスを有効成分とすることを特徴とする膵リパーゼ阻害剤。
- コウジュが、ホソバヤマジソ又はナギナタコウジュである請求項1に記載の膵リパーゼ阻害剤。
- コウジュの溶媒抽出エキスがホソバヤマジソ又はナギナタコウジュの溶媒抽出エキスである請求項1又は2に記載の膵リパーゼ阻害剤。
- 抽出溶媒が、水〜熱水である請求項1、2又は3に記載の膵リパーゼ阻害剤。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の膵リパーゼ阻害剤を含有することを特徴とする抗肥満、脂肪吸収抑制、血中中性脂肪上昇抑制および脂肪蓄積防止組成物。
- 請求項5に記載の抗肥満、脂肪吸収抑制、血中中性脂肪上昇抑制および脂肪蓄積防止組成物を含有する食品。
- 食品が特定保健用食品である請求項6に記載の食品。
- 請求項5に記載の抗肥満、脂肪吸収抑制、血中中性脂肪上昇抑制および脂肪蓄積防止組成物を含有する医薬。
- 請求項5に記載の抗肥満、脂肪吸収抑制、血中中性脂肪上昇抑制および脂肪蓄積防止組成物を含有する飼料。
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