JP2009270013A - 無機粒子含有微多孔膜の製造方法 - Google Patents

無機粒子含有微多孔膜の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】良好な引張強度と良好な引張弾性率とを備える微多孔膜の製造方法を提供する。
【解決手段】ポリオレフィン樹脂、無機粒子及び可塑剤を含む樹脂組成物を溶融混練し、シート状に成形した後、可塑剤を抽出して微多孔膜を得る無機粒子含有微多孔膜の製造方法であって、可塑剤が、SP値が7.5以上8.5未満である可塑剤(I)と、SP値が8.5以上9.9未満である可塑剤(II)とを含む混合可塑剤であることを特徴とする無機粒子含有微多孔膜の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、無機粒子含有微多孔膜の製造方法、及び無機粒子含有微多孔膜からなる蓄電池セパレータに関する。
微多孔膜は、様々な孔径、孔形状、孔数を有し、その特異な構造により発現され得る特性から幅広い分野に利用されている。リチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタなどの蓄電池には、正負極間の接触を防ぎ、イオンを透過させる機能を有するセパレータと呼ばれる電解液を保持した多孔膜が正負極間に設けられている。近年、リチウムイオン二次電池の性能競争激化に伴い、セパレータとして用いられるポリオレフィン製微多孔膜に対する要求も厳しく、かつ多岐に亘りつつある。
このような事情のもと、例えば特許文献1には、高密度ポリエチレン100質量部に対し、硫酸バリウム、あるいは炭酸カルシウム等の無機フィラーが50〜400質量部、25℃以上で固体で且つ沸点が140℃以上の常温固体可塑剤が1〜30質量部配合された多孔性フィルムが開示されている。
特開2005−343930号公報
ここで、近年の電池組立の高速化に伴い、微多孔膜の更なる強度向上が求められている。強度の向上により、電池組立時の破膜は減少し、歩留まりが改善される方向となる。特に最近は、電池の高容量化に向け、セパレータを薄膜化することが検討されており、より一層の強度向上が望まれている。
しかしながら、従来の微多孔膜はいずれも、微多孔膜の引張強度や引張弾性率の点でなお改良の余地があった。本発明は、良好な引張強度と良好な引張弾性率とを備える微多孔膜の製造方法を提供することを目的としている。
本発明者らは、検討を重ねた結果、ポリオレフィン樹脂、無機粒子及び可塑剤を含む樹脂組成物を溶融混練してシート状に成形し、可塑剤を抽出して無機粒子含有微多孔膜を得る、いわゆる湿式法による微多孔膜の製造方法を採用するに際し、特定の可塑剤を組み合わせて用いることにより、引張強度や引張弾性率に優れる微多孔膜を与えることを見出し、本発明を為すに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
ポリオレフィン樹脂、無機粒子及び可塑剤を含む樹脂組成物を溶融混練し、シート状に成形した後、可塑剤を抽出して微多孔膜を得る無機粒子含有微多孔膜の製造方法であって、
前記可塑剤が、SP値が7.5以上8.5未満である可塑剤(I)と、SP値が8.5以上9.9未満である可塑剤(II)とを含む混合可塑剤であることを特徴とする無機粒子含有微多孔膜の製造方法。
[2]
前記無機粒子の、ポリオレフィン樹脂と無機粒子と可塑剤との総量中に占める割合が20質量%以下である[1]に記載の製造方法。
[3]
前記可塑剤(I)の、前記混合可塑剤中に占める割合が60〜90質量%である[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4]
前記可塑剤(I)の、前記混合可塑剤中に占める割合が20〜55質量%である[1]又は[2]に記載の製造方法。
[5]
前記無機粒子が珪素酸化物である[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]
[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法により得られる無機粒子含有微多孔膜からなる蓄電池セパレータ。
本発明は、良好な引張強度と良好な引張弾性率とを備える微多孔膜の製造方法を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施の形態の製造方法は、ポリオレフィン樹脂、無機粒子、及び可塑剤を含む樹脂組成物を溶融混練してシート状に成形し、可塑剤を抽出して微多孔膜を得る無機粒子含有微多孔膜の製造方法であって、可塑剤が、SP値が7.5以上8.5未満である可塑剤(I)と、SP値が8.5以上9.9未満である可塑剤(II)との混合物(混合可塑剤)であることを特徴とする。
前記ポリオレフィン樹脂とは、通常の押出、射出、インフレーション、及びブロー成形等に使用するポリオレフィン樹脂をいい、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、及び1−オクテン等のホモ重合体及び共重合体、多段重合体等を使用することができる。また、これらのホモ重合体及び共重合体、多段重合体の群から選んだポリオレフィンを単独、もしくは混合して使用することもできる。前記重合体の代表例としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、アタクティックポリプロピレン、ポリブテン、エチレンプロピレンラバー等が挙げられ、これらを単独、もしくは混合して使用することが出来る。本実施の形態の微多孔膜を蓄電池セパレータとして使用する場合に、良好なフューズ特性と良好な突刺強度を実現する観点から、前記ポリオレフィン樹脂としては特に高密度ポリエチレンを含有することが好ましい。
ここで、高密度ポリエチレンが、前記ポリオレフィン樹脂中に占める割合としては、好ましくは10〜70質量%、より好ましくは15〜65質量%である。
前記ポリオレフィン樹脂または微多孔膜の粘度平均分子量は、5万以上1000万未満が好ましい。粘度平均分子量が5万以上であれば、溶融成形の際のメルトテンションが大きくなり成形性が向上しやすい上に、十分な絡み合いを付与しやすく高強度となりやすいので好ましい。粘度平均分子量が1000万未満であれば、均一な溶融混練を得やすい傾向があり、シートの成形性、特に厚み安定性に優れる傾向があるので好ましい。より好ましい粘度領域は10万以上200万未満であり、さらには50万以上100万未満である。200万未満であれば高ポリマー濃度での溶融混練が容易な傾向であり生産性向上が期待できるばかりか、熱収縮が低減する傾向にあるために好ましい。例えば、単独で粘度平均分子量200万未満のポリオレフィンを使用する代わりに、粘度平均分子量が200万のポリエチレンと27万の混合物とし、混合物の粘度平均分子量を200万未満としてもよい。
耐熱性の観点から、前記ポリオレフィン樹脂はポリプロピレンを含むことが好ましい。特に高密度ポリエチレンとポリプロピレンとを混合して使用することが、高突刺強度と耐熱性とを共に向上させ得る観点から好ましい。
ポリプロピレンが、前記ポリオレフィン樹脂中に占める割合としては、好ましくは1〜50質量%であり、より好ましくは5〜40質量%であり、更に好ましくは20〜30質量%である。当該割合を1質量%以上とすることは、良好な耐熱性が得る観点から好ましく、50質量%以下とすることは、延伸性を向上させ、また、微多孔膜の高突刺強度を実現する観点から好ましい。
前記可塑剤としては、ポリオレフィン樹脂と混合した際にポリオレフィン樹脂の融点以上において均一溶液を形成しうる不揮発性溶媒であることが好ましい。また、好ましくは常温において液体である。
SP値が7.5以上8.5未満の可塑剤(可塑剤(I))としては、例えば、流動パラフィン(「LP」と略記することがある。SP値8.4)、プロセスオイル等の鉱物油、キシレン、デカリン等の炭化水素油等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。
一方、SP値が8.5以上9.9未満の可塑剤(可塑剤(II))としては、例えば、フタル酸ジブチル(「DBP」と略記することがある。SP値9.4、融点−35℃)、フタル酸ジー2ーエチルヘキシル(「DOP」と略記することがある。SP値8.9、融点−55℃)等のフタル酸エステル、セバシン酸ジオクチル(「DOS」と略記することがある。SP値8.6、融点−62℃)等のセバシン酸エステル、アジピン酸ジオクチル(「DOA」と略記することがある。SP値8.6、融点−70℃)等のアジピン酸エステル、トリメリット酸トリオクチル(「TOTM」と略記することがある。SP値9.5、融点−30℃)等のトリメリット酸エステル、リン酸トリオクチル、(「TOP」と略記することがある。SP値9.2、融点−70℃)等のリン酸エステルが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。
特にポリオレフィン樹脂がポリエチレンの場合、流動パラフィンとフタル酸ジー2ーエチルヘキシルの組み合わせは、該混合可塑剤が、ポリエチレンと無機粒子との混合物に対して相溶性が高く、延伸時にポリエチレンと無機粒子と可塑剤との界面剥離が起こりにくいために均一な延伸を実施しやすく、従って、高強度及び高弾性率を有する微多孔膜を実現する観点から好ましい。
前記可塑剤(I)と可塑剤(II)との組み合わせにおいて、前記可塑剤(I)の、前記混合可塑剤中に占める割合としては、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは20〜80質量%である。当該質量分率が10質量%以上の場合、ポリオレフィン樹脂と無機粒子の分散が行われやすい傾向があるので好ましい。一方、90質量%以下の場合、無機粒子の凝集が起こりにくく均一な延伸が行われやすい傾向があるので好ましい。
ここで、得られる微多孔膜の突刺し強度を向上させる観点から、前記可塑剤(I)の、前記混合可塑剤中に占める割合としては、好ましくは60〜90質量%、より好ましくは60〜80質量%である。
一方、得られる微多孔膜の引張弾性率を向上させる観点から、前記可塑剤(I)の、前記混合可塑剤中に占める割合としては、好ましくは20〜55質量%、より好ましくは25〜50質量%である。
なお、本実施の形態でいう「SP値」とは、溶解度パラメータ:秋山三郎らによる、ポリマーブレンド 125頁〜(1981年 シーエムシー刊)に記載されている方法や、SmallによるJournal of AppliedChemistry 第3巻 71頁〜(1953年)の方法により計算される値である。
本実施の形態の製造方法においては、上述したポリオレフィン樹脂と可塑剤に、更に無機粒子が配合される。無機粒子は、ポリオレフィン樹脂に対して不活性であるものが好ましい。
また、無機粒子としては、室温における電気抵抗率が10−2Ω・cm以上の無機粒子が好ましい。より好ましくは1014Ω・cm以上である。電気抵抗率が10−2Ω・cm以上の無機粒子を用いることは、微多孔膜を蓄電デバイス用セパレータとして用いた場合に、電極間において電子絶縁性を向上させる観点から好ましい。
無機粒子としてより具体的には、例えば、珪素、アルミニウム、チタン、マグネシウムなどの酸化物や窒化物、カルシウム、バリウムなどの炭酸塩や硫酸塩が好ましい。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。珪素酸化物は、軽量化、低コスト化の点で優れる。また、アルミニウム酸化物は耐薬品性に優れ、特に非水電池用セパレータとして使用した場合に生じる可能性のあるフッ酸との反応性が低い点で優れる。チタン酸化物は高透過性の微多孔膜が得られやすい点で優れる。
また、適宜、表面処理を施した無機粒子を用いることが出来る。例えば、水系溶媒を使用したろ過用途向け微多孔膜や水系電解液蓄電デバイス用セパレータを製造する場合は、親水性処理を施した無機粒子が好適であり、非水系電解液蓄電デバイス用セパレータを製造する場合は、疎水処理を施した無機粒子が好適である。
無機粒子の形状としては、球状、棒状、針状、板状といかなる形状であっても構わない。耐熱性の観点から、球状、棒状、針状が好ましい。無機粒子の構造は、例えば多孔構造、層状構造、無孔構造であっても構わない。好ましくは無孔構造である。無孔構造とは、一次粒子内部に内部表面積を実質的に有さない、すなわち、一次粒子自身に微細な細孔を実質的に有さない構造である。一次粒子自身に微細な細孔を実質的に有さない粒子とは、多孔度(P/S)が0.1から3.0の範囲にある粒子をいう。P/Sとは、一次粒子径D(単位:μm)と粒子を構成する物質の密度d(単位:g/cm)から算出される単位重量あたりの表面積Sに対する、比表面積Pの比である。粒子が球形である場合には、粒子1個あたりの表面積はπD×10−12(単位:m)であり、粒子1個の重量は(πDd/6)×10−12(単位:g)であるので、単位重量あたりの表面積Sは、S=6/(Dd)(単位:m/g)となる。比表面積Pは、−196℃における窒素吸着等温線からBET式に基づいて求められる。このような粒子を用いると例えば非水電解液電池用セパレータとして用いた場合に容量低下等の性能劣化を起こし難い傾向がある。理由は定かではないが、一次粒子内部に微細な細孔を実質的に有していなければ、通常の乾燥工程において容易に吸着水等を除去できるために、水分混在による容量低下を引き起こし難いと推測される。さらに、ポリオレフィン樹脂を含む微多孔膜に無孔構造である粒子を用いると耐熱性に優れた微多孔膜が得られる傾向にある。
無機粒子の粒径としては、1nm以上200nm未満であることが好ましく、6nm以上100nm未満がより好ましく、10nm以上60nm未満が更に好ましい。粒径は走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡にて計測できる。粒径が200nm未満の場合は、延伸等を施した場合でもポリオレフィンと粒子間での剥離が生じにくいためにマクロボイドの発生を抑制出来る傾向にあり高強度となりやすい。また粒子がポリオレフィン中に分散し融着した状態となるために耐熱性においても優れる傾向がある。
無機粒子が、ポリオレフィン樹脂と無機粒子と可塑剤との総量中に占める割合としては、好ましくは6質量%以上55質量%以下である。より好ましくは7質量%以上50質量%以下であり、さらに好ましくは7質量%以上45質量%未満である。6質量%以上の場合は、ポリオレフィン樹脂を含有する微多孔膜において耐熱性に優れた微多孔膜が得られやすい。55質量%以下であれば、高強度が得られやすい。また電池用セパレータとして使用した際に高温保存時の容量低下が起こり難く、信頼性に優れる。特に、20質量%以下である場合、当該傾向が顕著となり好ましい。
なお、前記ポリオレフィン樹脂には必要に応じて、フェノール系やリン系やイオウ系等の酸化防止剤、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸亜鉛等の金属石鹸類、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、防曇剤、着色顔料等の添加剤を混合して使用できる。
本実施の形態の製造方法は、例えば以下の(1)〜(4)各工程、
(1)ポリオレフィン樹脂と、可塑剤(I)と、可塑剤(II)と、無機粒子とを含む樹脂組成物を溶融混練する工程、
(2)(1)の工程により得られた溶融混練物からシートを成形し、冷却固化する工程、
(3)(2)の工程により得られたシートを、例えば面倍率が20倍以上100倍未満で少なくとも一軸方向に延伸する工程、
(4)(3)の工程により得られた延伸物から可塑剤を抽出し、微多孔膜を作製する工程、
を含む。
(1)の工程において、使用される可塑剤の比率については、均一な溶融混練が可能な比率であり、シート状の微多孔膜前駆体を成形し得るのに充分な比率であり、かつ生産性を損なわない程度であることが好ましい。
当該可塑剤の、ポリオレフィン樹脂と可塑剤と無機粒子との総量中に占める割合としては、好ましくは30〜80質量%、更に好ましくは40〜70質量%である。可塑剤の質量分率が80質量%以下の場合、溶融成形時のメルトテンションが不足しにくく成形性が向上する傾向があるので好ましい。一方、質量分率が30質量%以上の場合は、延伸倍率の増大に伴い厚み方向に薄くなり、薄膜を得ることが可能であるので好ましい。また可塑化効果が十分なために結晶状の折り畳まれたラメラ晶を効率よく引き伸ばすことができる。高倍率の延伸を施した場合においてもポリオレフィン鎖の切断が起こらず均一かつ微細な孔構造となり強度も増加しやすい。
ポリオレフィン樹脂と無機粒子と可塑剤とを溶融混練する方法は、該混合物を押出機、ニーダー等の樹脂混練装置に投入し、樹脂を加熱溶融させながら任意の比率で可塑剤を導入し、更に樹脂と無機粒子と可塑剤よりなる組成物を混練することにより、均一溶液を得る方法が好ましい。
(2)の工程は、溶融混練物を移送し、シート状に成形し、冷却固化させて微多孔膜前駆体を製造する工程である。当該工程は、ポリオレフィン樹脂、無機粒子、可塑剤の均一溶液を、Tダイ等を介してシート状に押し出し、熱伝導体に接触させて樹脂の結晶化温度より充分に低い温度まで冷却することにより行うことが好ましい。冷却固化に用いられる熱伝導体としては、金属、水、空気、あるいは可塑剤自身等が使用できるが、特に金属製のロールに接触させて冷却する方法が最も熱伝導の効率が高く好ましい。また、金属製のロールに接触させる際に、ロール間で挟み込むと、更に熱伝導の効率が高まり、またシートが配向して膜強度が増し、シートの表面平滑性も向上するためより好ましい。
Tダイよりシート状に押出す際のダイリップ間隔は400μm以上3000μm以下が好ましく、500μm以上2500μmがさらに好ましい。ダイリップ間隔が400μm以上の場合には、メヤニ等が低減され、スジや欠点など膜品位への影響が少なく、その後の延伸工程に於いて膜破断などを防げるので好ましい。3000μm以下の場合は、冷却速度が速く冷却ムラを防げるほか、厚みの安定性を維持できるので好ましい。
(3)の工程において、延伸方向は少なくとも一軸延伸である。二軸方向に高倍率延伸した場合、面方向に分子配向するため裂けにくく安定な構造となり高い突刺強度が得られる。延伸方法は同時二軸延伸、逐次二軸延、多段延伸、多数回延伸等のいずれの方法を単独もしくは併用することも構わないが、延伸方法が同時二軸延伸であることが突刺強度の増加や膜厚均一化の観点から最も好ましい。ここでいう同時二軸延伸とは機械方向(又は長さ方向。以下、「MD方向」と略記することがある)の延伸とTD方向(幅方向。以下、「TD方向」と略記することがある)の延伸が同時に施される手法であり、各方向の変形率は異なっても良い。逐次二軸延伸とは、MD方向、またはTD方向の延伸が独立して施される手法であり、MD方向、またはTD方向に延伸がなされている際は、他方向が非拘束状態、または定長に固定されている状態にある。
延伸倍率としては、面倍率で20倍以上100倍未満の範囲であることが好ましく、20倍以上80倍以下がより好ましく、25倍以上50倍以下の範囲がさらに好ましい。
各軸方向の延伸倍率はMD方向に4倍以上10倍以下、TD方向に4倍以上10倍以下の範囲が好ましく、MD方向に5倍以上8倍以下、TD方向に5倍以上8倍以下の範囲がさらに好ましい。総面積倍率が20倍以上の場合は、膜に十分な突刺強度を付与でき、100倍未満では膜破断を防ぎ、高い生産性が得られるので好ましい。MD方向に4倍以上およびTD方向に4倍以上延伸した場合は、MD方向、TD方向共に膜厚ムラが小さい製品が得られやすいために好ましい。10倍以下では捲回性に優れる傾向となるため好ましい。
また、延伸温度としては、ポリオレフィンの融点温度−50℃以上、融点温度未満が好ましく、ポリオレフィンの融点温度−30℃以上、融点温度−2℃以下がより好ましく、ポリオレフィンの融点温度−15℃以上、融点温度−3℃以下がさらに好ましい。ポリオレフィンの融点温度−50℃以上では、ポリオレフィンと無機粒子間もしくはポリオレフィンと可塑剤間の界面剥離が生じにくく耐熱性に優れる傾向がある。ポリオレフィンの融点温度未満では高突刺強度が得られやすく、さらに延伸ムラが低減出来るために好ましい。例えば高密度ポリエチレンを用いた場合は、110℃以上132℃以下が好適である。複数のポリオレフィンを混合し用いた場合は、その融解熱量が大きい方のポリオレフィンの融点を基準にすればよい。
(4)の工程は、(3)の工程の前に実施しても良いが、高突刺強度の観点から(3)の工程の後に行うことが好ましい。
可塑剤を抽出する方法はバッチ式、連続式のいずれでもよいが、抽出溶剤に微多孔膜を浸漬することにより可塑剤を抽出し、充分に乾燥させ、可塑剤を微多孔膜から実質的に除去することが好ましい。微多孔膜の収縮を抑えるために、浸漬、乾燥の一連の工程中に微多孔膜の端部を拘束することが好ましい。
なお、抽出後の微多孔膜中の可塑剤残存量は1質量%未満にすることが好ましい。
また、抽出後の微多孔膜中に占める無機粒子の残存割合は、好ましくは15〜85質量%、より好ましくは30〜60質量%である。
抽出溶剤は、ポリオレフィン樹脂、無機粒子に対して貧溶媒であり、かつ可塑剤に対して良溶媒であり、沸点がポリオレフィン微多孔膜の融点より低いことが望ましい。このような抽出溶剤としては、例えば、n−ヘキサンやシクロヘキサン等の炭化水素類、塩化メチレンや1,1,1−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、ハイドロフロロエーテルやハイドロフロロカーボン等の非塩素系ハロゲン化溶剤、エタノールやイソプロパノール等のアルコール類、ジエチルエーテルやテトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類が挙げられる。
なお、(4)の工程の後に更に延伸を実施する場合は、少なくとも可塑剤抽出後の延伸倍率が面倍率として4倍未満とすることが好ましく、3倍未満がさらに好ましい。面倍率が4倍未満であれば、マクロボイドの発生や突刺強度低下を抑制できるために好ましい。
また、上記延伸の後に、熱固定や熱緩和等の熱処理工程を実施することは、微多孔膜の収縮をさらに抑制する効果があり好ましい。
更に、本実施の形態の利点を損なわない範囲で、界面活性剤等による親水化処理や、電離性放射線等による架橋処理、といった後処理を実施することも可能である。
製造される微多孔膜の最終的な膜厚としては、2μm以上100μm以下の範囲が好ましく、5μm以上80μm以下の範囲がより好ましく、10μm以上50μm以下の範囲がさらに好ましい。膜厚が2μm以上であれば機械強度が十分であり、また、100μm以下であればセパレータの占有体積が減るため、電池の高容量化の点において有利となる傾向があるので好ましい。
また、気孔率は、好ましくは25%以上90%以下、より好ましくは40%以上80%以下、さらに好ましくは50%以上80%以下の範囲である。気孔率が25%以上では、透過性が低下しにくく、一方90%以下では電池セパレータとして使用した場合に自己放電の可能性が少なく信頼性があるので好ましい。なお、上記気孔率は、前記(3)の工程における延伸温度、延伸倍率を調整する及び/または、前記(5)の工程の温度等を調整する方法等により調節可能である。
製造される微多孔膜の透気度は、好ましくは10秒以上1000秒以下、より好ましくは20秒以上500秒以下、さらに好ましくは40秒以上400秒以下の範囲である。透気度が10秒以上では電池用セパレータとして使用した際に自己放電が少なく、1000秒以下では良好な充放電特性が得られるので好ましい。なお、上記透気度は、前記(5)の工程の温度等を調整する方法等により調節可能である。
突刺強度は、好ましくは1.2N/20μm以上20N/20μm以下、より好ましくは2.0N/20μm以上10N/20μm以下、さらに好ましくは2.4N/20μm以上6.0N/20μm以下の範囲である。突刺強度が1.2N/20μm以上では電池用セパレータとして使用した際に、電極と共に捲回する際に破膜等の不具合が起こりにくく捲回性に優れ、20N/20μm以下では、良好な耐熱性が得られるので好ましい。なお、上記突刺し強度は、ポリエチレン分子量、ポリオレフィン樹脂の割合、及び、前記(3)の工程における延伸温度、延伸倍率を調整する方法等により調節可能である。
製造される微多孔膜の引張破断強度は、好ましくは10MPa以上200MPa以下、より好ましくは20MPa以上150MPa以下、さらに好ましくは40MPa以上130MPa以下の範囲である。引張破断強度が10MPa以上では電池用セパレータとして使用した際に、電極と共に捲回する際に破膜等の不具合が起こり難く捲回性に優れ、200MPa以下では、良好な耐熱収縮性が得られるので好ましい。なお、上記引張破断強度は、ポリエチレン分子量、ポリオレフィン樹脂の割合、及び、前記(3)の工程における延伸温度、延伸倍率を調整する方法等により調節可能である。
引張弾性率は、好ましくは10MPa以上600MPa以下、より好ましくは20MPa以上550MPa以下、さらに好ましくは40MPa以上500MPa以下の範囲である。引張弾性率が10MPa以上では電池用セパレータとして使用した際に、電極と共に捲回する際に破膜等の不具合が起こり難く捲回性に優れ、600MPa以下では、捲回後に巻締まり等の不具合が起こり難いので好ましい。なお、上記引張弾性率は、ポリエチレン分子量、ポリオレフィン樹脂の割合、及び、前記(3)の工程における延伸温度、延伸倍率を調整する方法等により調節可能である。
以上、本実施の形態によれば、引張強度及び引張弾性率に優れるを微多孔膜の製造方法が提供される。製造される微多孔膜の高引張強度及び高引張弾性率は、捲回時のハンドリング性を向上させることができるため、電池の生産性を向上させ得る。
本実施の形態により得られる微多孔膜は、電池用、特に、非水電解液電池といった蓄電池用のセパレータ等として好適である。
次に、実施例及び比較例を挙げて本実施の形態をより具体的に説明するが、本実施の形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の物性は以下の方法により測定した。
(1)粘度平均分子量(Mv)
ASTM−D4020に基づき、デカリン溶媒における135℃での極限粘度[η]を求める。ポリエチレンのMvは次式により算出した。
[η]=6.77×10−4Mv0.67
(2)膜厚
東洋精機製の微小測厚器、KBM(商標)用いて室温23±2℃で測定した。
(3)気孔率
10cm×10cm角の試料を微多孔膜から切り取り、その体積(cm)と質量(g)を求め、それらと膜密度(g/cm)より、次式を用いて計算した。
気孔率(%)=(体積−質量/混合組成物の密度)/体積×100
なお、混合組成物の密度は、用いたポリオレフィン樹脂、無機粒子の各々の密度と混合比より計算で求められる値を用いた。
(4)透気度
JIS P−8117準拠のガーレー式透気度計(東洋精機製)にて測定した。
(5)突刺強度
カトーテック製、商標、KES−G5ハンディー圧縮試験器を用いて、針先端の曲率半径0.5mm、突刺速度2mm/secの条件で突刺試験を行い、最大突刺荷重を突刺強度(N)とした。
(6)引張弾性率(MPa)、引張破断強度(MPa)
JIS K7127に準拠し、島津製作所製の引張試験機、オートグラフAG−A型(商標)を用いて、MD及びTDサンプル(形状;幅10mm×長さ100mm)について測定した。また、サンプルはチャック間を50mmとした。
引張破断伸度(%)は、破断に至るまでの伸び量(mm)をチャック間距離(50mm)で除して、100を乗じることにより求めた。
引張破断強度(MPa)は、破断時の強度を、試験前のサンプル断面積で除することで求めた。なお、測定は、温度23±2℃、チャック圧0.30MPa、引張速度200mm/分で行った。
引張弾性率は伸度が1〜4%間の傾きで評価した。
[実施例1]
粘度平均分子量(Mv)200万の超高分子量ポリエチレン「UH−850」(商標 旭化成ケミカルズ(株)製)を28質量部、Mv27万の高密度ポリエチレン「SH−800」(商標 旭化成ケミカルズ(株)製)を42質量部、平均一次粒径が13nmであるアルミナ「AluC」(商標、Degussa製 疎水処理未実施、比重3.2g/cm)を30質量部、可塑剤としてDOPとLPとの混合物(質量比にてDOP/LP=50/50)を150質量部、酸化防止剤としてペンタエリスリチルーテトラキスー[3−(3,5−ジーt−ブチルー4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を0.3質量部の割合で添加したものを東洋精機製作所社製プラストミルを用いて加熱混合した。加熱混合は、プラストミルの温度を200℃、回転数を50rpmに設定して10分間行った。溶融した混合物をプラストミルから取り出して冷却し、得られた固化物をポリイミドフィルムを介して金属板の間に挟み、200℃に設定した熱プレス機を用い10MPaで圧縮し、厚さ1000μmのシートを作成した。得られたシートを岩本製作所社製二軸延伸機を用いて115℃で縦方向に7倍、横方向に7倍で同時二軸延伸した。次にステンレスの枠で四方を固定した状態で塩化メチレン中で可塑剤を除去した後、室温で乾燥し微多孔膜を得た。製膜条件及び膜特性を表1に示す。
実施例2〜7及び比較例1〜9は表1に記載した条件で、実施例1と同様に微多孔膜の製膜を実施した。その結果を表1に示す。
Figure 2009270013
本発明によれば、引張強度と引張弾性率に優れる無機粒子含有微多孔膜の製造方法を提供することができる。

Claims (6)

  1. ポリオレフィン樹脂、無機粒子及び可塑剤を含む樹脂組成物を溶融混練し、シート状に成形した後、可塑剤を抽出して微多孔膜を得る無機粒子含有微多孔膜の製造方法であって、
    前記可塑剤が、SP値が7.5以上8.5未満である可塑剤(I)と、SP値が8.5以上9.9未満である可塑剤(II)とを含む混合可塑剤であることを特徴とする無機粒子含有微多孔膜の製造方法。
  2. 前記無機粒子の、ポリオレフィン樹脂と無機粒子と可塑剤との総量中に占める割合が20質量%以下である請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記可塑剤(I)の、前記混合可塑剤中に占める割合が60〜90質量%である請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記可塑剤(I)の、前記混合可塑剤中に占める割合が20〜55質量%である請求項1又は2に記載の製造方法。
  5. 前記無機粒子が珪素酸化物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法により得られる無機粒子含有微多孔膜からなる蓄電池セパレータ。
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