JP5008422B2 - ポリオレフィン微多孔膜 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリオレフィン微多孔膜、その製造方法及びそれを用いた蓄電デバイス用セパレータに関する。
微多孔膜は、様々な孔径、孔形状、孔数を有し、その特異な構造により発現され得る特性から幅広い分野に利用されている。例えば、孔径の違いによるふるい効果を利用した水処理や濃縮などに用いられる分離膜、微多孔化による大表面積と多孔空間を利用した吸水、吸油、脱臭用材に用いられる吸着シート、分子サイズの違いにより空気や水蒸気などは通すが水は通さないという特徴を利用した透湿防水シート、多孔空間に各種材料を充填することで多機能化し、燃料電池などに有用な高分子電解質膜や加湿膜、さらには液晶材料、電池材料として用いられている。
分離膜分野では、選択透過性の確保と初期透過量の維持は常々要求される課題である。そのため孔形状の最適化や、膜基材とろ過液との親和性制御が過去検討されているが、ろ過液、ろ過方法の多様化に伴い、膜基材には更なる改良が求められている。
近年では、省エネルギー化や省資源化の観点から、特にリチウムイオン二次電池(LIB)やリチウムイオンキャパシター(LIC)、電気二重層キャパシター(EDLC)などの蓄電デバイスの研究開発、及び、用途展開の検討が積極的に行われている。これら蓄電デバイスには、正負極間の接触を防ぎ、イオンを透過させる機能を有するセパレータと呼ばれる電解液を保持した多孔膜が正負極間に設けられている。蓄電デバイスの使用用途に応じ、各様な性能が要求されている。
例えば、自動車用途等への展開としては高出力特性、高安全性が、パソコンや携帯電話用途等への展開としては更なる高容量化、高エネルギー密度化が、無停電電源装置(UPS)や電力貯蔵システム用途等への展開としては、高容量化、高信頼性などが、蓄電デバイスには求められている。デバイス構成部材の一つであるセパレータにも電気特性の向上と安全・信頼性の両立が強く求められているが、トレードオフな関係であり必ずしも十分に満足しうるものではなかった。
特許文献1では、濾過材や医療用衣料等の用途に適したフィルムとして、開放セル式のフィルムが提案されており、相互に結合し合っている伸長された多数の無孔性表面領域と多数の平行小繊維からなり、これらが実質的に直角の位置関係にある微孔性フィルムが開示されている。
特許文献2では、無菌包装シート、コンデンサー用セパレーターやバッテリーセパレーターに適したフィルムとして、三次元網目構造と一方向に配列したフィブリルから構成されている微孔性ポリプロピレンフィルムが開示されている。
特許文献3では、ポリオレフィン樹脂、無機粒子、可塑剤を溶融混錬し、シート状に成形したものを高倍率に二軸延伸し、可塑剤を抽出した微多孔膜が開示されている。本技術より開示されている微多孔膜は、高突刺強度と高温での耐短絡性を有し、電解液含浸性に優れることから蓄電池用セパレータとして適しているとしている。
特許文献4では、ポリオレフィン樹脂と無機粉体とで構成される多孔膜からなる非水電池用セパレータの製造方法が開示されている。本技術ではポリオレフィンの融点以上の温度下で延伸方向に5〜50%の緩和率にて熱処理することで低収縮を達成している。
特公昭55−32531号公報 特許第2503007号公報 WO2006−25323号公報 特開2001−266831号公報
しかしながら、上記従来技術で得られる膜は、透過性、低収縮性、液親和性の点で十分ではなかった。すなわち、上記特許文献1で開示されている微孔性フィルムは、透過性は十分とは言い難く、また、蓄電池用セパレータとして使用した場合には、無孔性表面領域を有するがゆえに電解液との親和性が劣るために、液枯れの懸念や、電極との密着性低減による、寿命特性等の信頼性に不安がある。特許文献2で開示されている微孔性フィルムは、孔形状の均一性には課題が残り、その結果、例えば蓄電デバイス用セパレータとして使用された場合には、イオンの移動が高透過性部分に集中するために、出力特性や長期的な特性維持が十分ではなかった。また、基材のポリプロピレンの融点以下での延伸、または熱固定がなされており、高温下での収縮が大きく、蓄電デバイス用セパレータとして使用された場合には、安全性に不安がある。上記特許文献3の実施例では延伸温度は基材のポリエチレンの融点以下であり、収縮性に不安が残る。また本実施例での孔形状は、その製法よりフィブリルがランダムに配列した孔形状であることが推測され、孔形状の均一性には課題が残り、その結果、例えば蓄電デバイス用セパレータとして使用された場合には、イオンの移動が高透過性部分に集中するために、出力特性や長期的な特性維持が十分ではなかった。上記特許文献4の熱処理条件、すなわちポリオレフィンの融点以上の温度下で延伸方向に5〜50%の緩和率にて熱処理をした場合には、透過性が低減し、蓄電用セパレータとして使用した場合に、例えばサイクル等の寿命特性に不安が残る。
本発明は、高透過性と低収縮性と液親和性に優れた微多孔膜を提供することを目的とする。更に、選択透過性と初期透過性の維持が要求されるろ過膜、加湿膜等に適した微多孔膜や、サイクル特性等の寿命特性と安全性に優れることが要求される蓄電池用セパレータ等として特に好適な微多孔膜を提供することを目的とする。
本発明者は、ポリオレフィン樹脂を含有する有孔島状構造と、島状構造間をつなぐフィブリルを含むポリオレフィン微多孔膜であり、該フィブリルが実質的に長さ方向に配列していることを特徴とするポリオレフィン微多孔膜が、高透過性と低収縮性と液親和性を併せ持つことを見出し、本発明を為すに至った。
すなわち、本発明は下記の通りである。
(1)ポリオレフィン樹脂を含有する有孔島状構造体と、該島状構造体間をつなぐフィブリルとを含み、該フィブリルがポリオレフィン樹脂を含有し、実質的に長さ方向に配列しているポリオレフィン微多孔膜。
上記(1)に記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法であって、
ポリオレフィン樹脂及び微細粒子を含有する多孔シートを、下記式(a)及び(b)を満
たす延伸温度で、少なくとも長さ方向に延伸する工程、微細粒子の少なくとも一部を抽出除去する工程を含むことを特徴とするポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
(a)延伸温度≧Tme−5℃
(b)延伸温度>Tm
(但し、上記式(a)中のTmeは、示差走査熱量計にて測定される、多孔シート中のポリオレフィン樹脂のエンドセット温度を、同(b)中のTmは、示差走査熱量計にて測定される、多孔シート中のポリオレフィン樹脂の融点を各々示す。)
)上記(1)に記載のポリオレフィン微多孔膜からなる蓄電デバイス用セパレータ。
本発明の微多孔膜は、高透過性と低収縮と液親和性を併せ持つ。そのため、本発明によれば、寿命特性および安全性に優れることが要求される蓄電池用セパレータ等として特に好適である微多孔膜を提供することが出来る。
本発明の微多孔膜について、特にその好ましい形態を中心に、以下詳細に説明する。
本発明における微多孔膜は、ポリオレフィン樹脂を含有する有孔島状構造体と島状構造体をつなぐフィブリルとを有する。島状構造体とフィブリルは、ポリオレフィン樹脂を含有する。微多孔膜100質量%中のポリオレフィン樹脂の含有量は50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
島状構造体は有孔構造である。有孔構造であるために、島状構造体表面での液体親和性は高い。例えば蓄電池用セパレータに用いられた場合、フィブリル領域とフィブリル間隙より形成される孔領域(以下、「海部」と記す)のみならず、島状構造体表面も電解液との濡れ性が高いために、電極への密着性が良好であり、サイクル等の寿命特性に優れる。
微多孔膜表面における有孔島状構造体の割合は5%以上70%以下が好ましく、10%以上60%以下がより好ましく、20%以上50%以下がさらに好ましい。5%以上であればより良好な密着性が得られ、70%以下ではより良好な透過性が得られるので好ましい。島状構造体の割合は、例えば走査型顕微鏡等を用い得られた表面像より、島状構造部と海部を分離することで算出できる。
島状構造体の一つ当たりの大きさは特に制限はないが、高透過性と耐熱性の両立の点から、フィブリルが配列している方向での長さが0.1〜50μmであることが好ましく、0.5〜10μmであることがより好ましい。
島状構造体間はフィブリルによりつながれている。ここで、島状構造体は1対1の関係でフィブリルによってつながれている必要はない。例えば島状構造体Aが他の島状構造体Bとフィブリルによってつながれていると同時に、他の島状構造体C、Dとも別のフィブリルによってつながっていてもよい。
フィブリルが実質的に長さ方向に配列していることが本発明の特徴の一つである。ここで「実質的に長さ方向に配列」とは、90%以上のフィブリルが長さ方向±20度の角度範囲内に含まれることを意味する。本発明の微多孔膜を製造する際の進行方向を長さ方向またはMD(Machine Direction)といい、これと表面において直角をなす方向を幅方向またはTD(Transverse Direction)という。フィブリルが長さ方向に配列していると幅方向への収縮応力は極めて小さく、一般的に捲回体構造を有する蓄電池用セパレータとして使用した場合、より高い安全性が得られるので好ましい。さらに一方向にフィブリルが配列することでフィブリルの間隙により形成される孔径分布は一様となり選択透過性を有する微多孔膜が得られやすい。
島状構造体間をつなぐフィブリルの長さは0.5μm以上50μm以下が好ましく、より好ましくは1μm以上20μm以下、さらに好ましくは1.5μm以上10μm以下である。0.5μm以上であればより良好な透過性が得られ、例えばろ過膜と使用した場合には透過性の目詰りによる透過性の低減も少なく好ましい。50μm以下であれば長さ方向により低収縮となる傾向となるので好ましい。
海部におけるフィブリル密度は、100本/10μm以下が好ましい。100本/10μmとは、フィブリルと直角をなす方向10μm長さ当たりに存在するフィブリル本数である。より好ましくは5本/10μm以上80本/10μm以下であり、さらに好ましくは10本/10μm以上50本/10μm以下である。100本/10μm以下であれば、透過性に優れるために好ましく、5本/10μm以上であれば、強度面に優れるために好ましい。フィブリル密度は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて後述の方法により測定できる。フィブリル密度が大きいまたはフィブリルが微小で計測困難な場合は、高倍率で観察した表面写真を用い、1μm長さ当たりで計測したフィブリル数を用いて、10μm当たりのフィブリル密度を算出するなどしても構わない。
本発明の微多孔膜は、ポリオレフィンを含有する有孔島状構造体と、島状構造体をつなぐ、実質的に長さ方向に配列したフィブリルを含有する構造であれば特に制限はなく、三次元網目構造が部分的に存在する場合も包含するが、透過性や耐熱性の点から、実質的に上記島状構造体と、上記フィブリルとからなる構造であること、更には、三次元網目構造を含まない構造であることが好ましい。
本発明において使用するポリオレフィン樹脂とは、通常の押出、射出、インフレーション、及びブロー成形等に使用可能なポリオレフィン樹脂を包含し、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、及び1−オクテン等のホモ重合体及び共重合体、多段重合体等を使用することができる。また、これらのホモ重合体及び共重合体、多段重合体の群から選んだポリオレフィンを単独、もしくは混合して使用することもできる。前記重合体の代表例としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、アタクティックポリプロピレン、ポリブテン、エチレンプロピレンラバー等が挙げられる。本発明の微多孔膜を電池セパレータとして使用する場合、低融点樹脂であり、かつ高強度の要求性能から、特に高密度ポリエチレンを主要成分(例えば、ポリオレフィン樹脂100質量部中に10質量部以上)とする樹脂を使用することが好ましい。
本発明において使用するポリオレフィン樹脂または微多孔膜のマトリックスポリマーの粘度平均分子量は、40万以上1000万未満が好ましく、より好ましくは50万以上300万未満、さらに好ましくは60万以上100万未満である。粘度平均分子量が40万以上であれば、溶融時の粘性が十分に高く好ましい。蓄電池用セパレータとして使用された場合、シャットダウン機能が一層優れるために好ましい。シャットダウン機能とは、電池が、例えば短絡等により発熱した場合に、セパレータの微多孔を閉塞することで、正負極間のイオン移動を抑制し、更なる発熱を抑制する機能である。溶融時の粘性が高い場合は、閉塞後の溶融状態において耐破膜性が高く、長時間閉塞状態を維持できるために好ましい。粘度平均分子量が1000万以下であれば、均一な溶融混練を得やすい傾向があり、シートの成形性、特に厚み安定性に優れる傾向があるので好ましい。
本発明で使用されるポリオレフィン樹脂には、本発明の利点を損なわない範囲で必要に応じて、フェノール系やリン系やイオウ系等の酸化防止剤、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸亜鉛等の金属石鹸類、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、防曇剤、着色顔料等の添加剤を混合して使用できる。
本発明の微多孔膜は、更なる液親和性の向上や耐熱性の向上が期待できるために微細粒子を含有してもよい。微細粒子は、無機粒子、前記ポリオレフィン樹脂よりも高い融点を有する有機粒子、又は融点を有さず、前記ポリオレフィン樹脂よりも高いガラス転移点を有する有機粒子であることが好ましい。有機粒子が融点とガラス転移点の両方を有する場合は、その融点がポリオレフィン樹脂の融点より高いことが好ましく、ガラス転移点はポリオレフィン樹脂の融点よりも低くても構わない。具体的には珪素、アルミニウム、チタン、マグネシウムなどの酸化物や窒化物、カルシウム、バリウムなどの炭酸塩や硫酸塩が好ましい。また、適宜、表面処理を施した無機粒子を用いることが出来る。例えば、水系溶媒を使用したろ過用途向け微多孔膜や水系電解液蓄電デバイス用セパレータを製造する場合は、親水性処理を施した無機粒子が好適であり、非水系電解液蓄電デバイス用セパレータを製造する場合は、疎水処理を施した無機粒子が好適である。有機粒子としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレン等の単独重合体、2種類以上のモノマーから選択された共重合体、その架橋体などの粒子が好ましい。
微細粒子は、粒径が1nm以上1μm未満であることが好ましい。より好ましくは1nm以上100nm未満である。粒径は走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡にて計測できる。粒径が1nm以上であることはポリオレフィン樹脂への良好な分散が達成できるために好ましい。良好な分散を示すことで十分な増粘効果を付与でき、耐熱性が優れると考えられる。1μm未満であれば、同様に十分な増粘効果が得られることから好ましい。また延伸した場合には、ポリオレフィン樹脂と微細粒子間の界面剥離が起こりにくく均一な孔径分布となりやすく好ましい。さらに使用する微細粒子は、一次粒子内部に内部表面積を実質的に有さない、すなわち、一次粒子自身に微細な細孔を実質的に有さないことが好ましい。このような微細粒子を用いると例えば非水電解液電池用セパレータとして用いた場合に容量低下等の性能劣化を起こし難い傾向がある。理由は定かではないが、一次粒子内部に微細な細孔を実質的に有していなければ、通常の乾燥工程において容易に吸着水等を除去できるために、水分混在による容量低下を引き起こし難いと推測される。
本発明の微多孔膜の最終的な膜厚は2μm以上100μm以下の範囲が好ましく、5μm以上40μm以下の範囲がより好ましく、5μm以上35μm以下の範囲がさらに好ましい。膜厚が2μm以上であれば機械強度が十分であり、また、100μm以下であればセパレータの占有体積が減るため、電池の高容量化の点において有利となる傾向があるので好ましい。
気孔率は、好ましくは25%以上90%以下、より好ましくは40%以上80%以下、さらに好ましくは50%以上80%以下の範囲である。気孔率が25%以上では、透過性がより低下しにくく、一方90%以下では電池セパレータとして使用した場合に自己放電の可能性が少なく信頼性があるので好ましい。
透気度は、好ましくは1秒以上500秒以下、より好ましくは5秒以上200秒以下、さらに好ましくは7秒以上100秒以下の範囲である。透気度が1秒以上では電池用セパレータとして使用した際に自己放電が少なく、500秒以下では良好な充放電特性が得られるので好ましい。
微多孔膜のバブルポイントは、0.1MPa以上1MPa以下が好ましく、0.2MPa以上0.7MPa以下がさらに好ましい。バブルポイントが1MPa以下であれば透過性は良好であり、目詰まり等の影響も少ないために好ましい。0.1MPa以上であれば、電池セパレータとして使用した場合に自己放電の可能性が少なく信頼性があるので好ましい。
微多孔膜の熱収縮開始温度は100℃以上であることが好ましい。より好ましくは110℃以上である。MD方向、TD方向ともに100℃以上であることが好ましいが、電池用セパレータとして使用した場合には、特にTD方向の熱収縮開始温度が100℃以上であることが好ましい。熱収縮開始温度が100℃以上であれば、電池製造時に十分な乾燥を施すことが出来るために好ましい。上限は特に制限されないが、150℃以下が好ましい。MDまたはTD方向の収縮開始温度が150℃以下であればシャットダウン特性が良好となりやすい。
高温時における熱収縮は30%以下が好ましい。MD方向、TD方向とも小さいことが好ましいが、電池用セパレータとして使用した場合には、特にTD方向に低収縮であることが好ましい。高温下(例えば150℃)におけるTD方向の収縮は、30%以下であれば、電池の安全性が確保出来るので好ましい。より好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは10%以下である。下限は特に制限されないが、電極との密着性の観点から1%以上が好ましい。
次に、本発明の微多孔膜を得るための製造方法に関して好適な一例を記述するが、必ずしも本例に限定される訳ではない。例えば本発明の微多孔膜は、以下の(1)〜(5)工程を含む方法により得ることが出来る。
(1)ポリオレフィン樹脂及び微細粒子及び可塑剤を溶融混錬する工程
(2)溶融物を押出し、シート状に成形、冷却固化する工程
(3)可塑剤を抽出する工程
(4)少なくともMD方向に延伸する工程
(5)微細粒子を抽出する工程
これら工程の順序、回数については特に制限はない。
(1)の工程で添加する可塑剤としては、ポリオレフィン樹脂と混合した際にポリオレフィン樹脂の融点以上において均一溶液を形成しうる不揮発性溶媒が好ましい。例えば、流動パラフィンやパラフィンワックス等の炭化水素類、フタル酸ジオクチルやフタル酸ジブチル等のエステル類、オレイルアルコールやステアリルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。特にポリオレフィン樹脂がポリエチレンの場合、流動パラフィンは、ポリエチレンと相溶性が高く延伸時に樹脂と可塑剤の界面剥離が起こりにくいために均一な延伸を実施しやすく好ましい。
本発明範囲において使用するポリオレフィン樹脂と微細粒子と可塑剤の比率については、均一な溶融混練が可能な比率であり、シート状の微多孔膜前駆体を成形しうるのに充分な比率であり、かつ生産性を損なわない程度であれば良い。具体的には、ポリオレフィン樹脂と微細粒子と可塑剤からなる組成物中に占める可塑剤の質量分率は、好ましくは30〜80質量%、更に好ましくは40〜70質量%である。可塑剤の質量分率が80質量%以下の場合、溶融成形時のメルトテンションが不足しにくく成形性が向上する傾向があるので好ましい。一方、質量分率が30質量%以上の場合は、延伸倍率の増大に伴い厚み方向に薄くなり、薄膜を得ることが可能であるので好ましい。また可塑化効果が十分なために結晶状の折り畳まれたラメラ晶を効率よく引き伸ばすことができ、高倍率の延伸ではポリオレフィン鎖の切断が起こらず均一かつ微細な孔構造となり強度も増加しやすい。ポリオレフィン樹脂と微細粒子と可塑剤を溶融混練する方法は、ポリオレフィン樹脂と微細粒子を押出機、ニーダー等の樹脂混練装置に投入し、樹脂を加熱溶融させながら任意の比率で可塑剤を導入し、更に樹脂と微細粒子と可塑剤よりなる組成物を混練することにより、均一溶液を得る方法が好ましい。さらに好ましい方法としては予めポリオレフィン樹脂と微細粒子と可塑剤をヘンシェルミキサー等を用い所定の割合で事前混練する工程を経て、該混練物を押出機に投入し、加熱溶融させながら任意の比率で可塑剤を導入し更に混練することが挙げられる。
(2)の工程である溶融物を押し出して冷却固化させシート状の微多孔膜前駆体を製造する工程は、ポリオレフィン樹脂と微細粒子と可塑剤の均一溶液をTダイ等を介してシート状に押し出し、熱伝導体に接触させて樹脂の結晶化温度より充分に低い温度まで冷却することにより行うことが好ましい。冷却固化に用いられる熱伝導体としては、金属、水、空気、あるいは可塑剤自身等が使用できるが、特に金属製のロールに接触させて冷却する方法が最も熱伝導の効率が高く好ましい。また、金属製のロールに接触させる際に、ロール間で挟み込むと、更に熱伝導の効率が高まり、またシートが配向して膜強度が増し、シートの表面平滑性も向上するためより好ましい。Tダイよりシート状に押出す際のダイリップ間隔は400μm以上3000μm以下が好ましく、500μm以上2500μmがさらに好ましい。ダイリップ間隔が400μm以上の場合には、メヤニ等が低減され、スジや欠点など膜品位への影響が少なく、その後の延伸工程に於いて膜破断などを防げるので好ましい。3000μm以下の場合は、冷却速度が速く冷却ムラを防げるほか、厚みの安定性を維持できるので好ましい。
(3)の可塑剤を抽出する方法はバッチ式、連続式のいずれでもよいが、抽出溶剤に微多孔膜を浸漬することにより可塑剤を抽出し、充分に乾燥させ、可塑剤を微多孔膜から実質的に除去することが好ましい。微多孔膜の収縮を抑えるために、浸漬、乾燥の一連の工程中に微多孔膜の端部を拘束することは好ましい。また、抽出後の微多孔膜中の可塑剤残存量は1質量%未満にすることが好ましい。
抽出溶剤は、ポリオレフィン樹脂かつ微細粒子に対して貧溶媒であり、かつ可塑剤に対して良溶媒であり、沸点がポリオレフィン微多孔膜の融点より低いことが望ましい。このような抽出溶剤としては、 例えば、n−ヘキサンやシクロヘキサン等の炭化水素類、塩化メチレンや1,1,1−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、ハイドロフロロエーテルやハイドロフロロカーボン等の非塩素系ハロゲン化溶剤、エタノールやイソプロパノール等のアルコール類、ジエチルエーテルやテトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類が挙げられる。
(4)の延伸工程では少なくともMD方向の延伸を行うことが好ましい。MD方向に延伸した場合にフィブリルは長さ方向に配列しやすいために好ましい。二軸方向に高倍率延伸した場合、面方向に分子配向するため裂けにくく安定な構造となり高い突刺強度が得られやすい。延伸方法は同時二軸延伸、逐次二軸延、多段延伸、多数回延伸等のいずれの方法を単独もしくは併用することも構わないが、延伸方法が同時二軸延伸であることが突刺強度の増加や膜厚均一化の観点から最も好ましい。ここでいう同時二軸延伸とはMD方向の延伸とTD方向の延伸が同時に施される手法であり、各方向の変形率は異なっても良い。逐次二軸延伸とは、MD方向、またはTD方向の延伸が独立して施される手法であり、MD方向、またはTD方向に延伸がなされている際は、他方向が非拘束状態、または定長に固定されている状態にある。延伸工程は、(3)の可塑剤を抽出する工程よりも前工程で行っても、後工程で行っても、または前後、複数回行っても構わない。(3)の抽出工程の前工程及び後工程で複数回延伸を実施する工程が好ましい。延伸温度(T[℃])は延伸が可能な温度であれば何度であっても構わない。好ましい延伸温度としては、(I)ポリオレフィン樹脂の融点(Tm[℃])より高温、かつ、融解吸熱ピークのエンドセット温度(Tme[℃])−5℃以上の温度での延伸(T[℃]>Tm[℃]、かつ、T[℃]≧Tme[℃]−5℃)、が挙げられる。さらに、(II)ポリオレフィン樹脂の融点以下の温度での延伸(T[℃]≦Tm[℃])、とを併用することがより好ましく、(3)の可塑剤を抽出する工程よりも前工程で(II)の延伸工程を含み、かつ、(3)の可塑剤を抽出する工程よりも後工程で(I)の延伸工程を含むことが最も好ましい。(I)の延伸工程を含むことは、島状構造間をつなぐフィブリルを形成しやすいために好ましい。(II)の延伸工程は、高強度が達成しやすいために好ましい。(I)の延伸工程に用いる多孔シートの空孔率は25%以上90%以下が好ましく、30%以上70%以下がより好ましく、35%以上60%以下がさらに好ましい。25%以上であれば、延伸時にポリオレフィン樹脂との界面剥離が起こりにくく孔形状をフレキシブルに制御出来やすい。90%以下であれば延伸によりいたずらに気孔率が増加する懸念が少なく、得られた微多孔膜は高強度となりやすい。ここで言う融点(Tm[℃])とは、示差走査熱量計(DSC)にて測定した融解吸熱曲線のピークトップ温度のことである。単独のポリオレフィン樹脂、または2種類以上のポリオレフィン樹脂を用い、融解吸熱ピークが2つ以上ある場合は、その融解吸熱量が最も大きいピークトップ温度を本発明で言う融点とみなす。融解吸熱ピークのエンドセット温度(Tme[℃])とは、融解吸熱ピークの終止温度を本発明で言うエンドセット温度と言う。融解吸熱ピークが2つ以上ある場合は、最も高温にある融解吸熱ピークの終止温度を本発明で言うエンドセット温度とみなす。エンドセット温度は、融解吸熱ピークの接線とベースラインの接線の交点を求めることで算出出来る。
(5)の微細粒子を抽出する工程を必要に応じて実施することができる。このような工程を設けることは、島状構造体中に孔を効果的に形成できる点から好ましい。微細粒子の一部または全てを抽出することが出来る。微多孔膜中における微細粒子の残存量は、微多孔膜中の50質量%未満であり、40質量%未満が好ましく、より好ましくは20質量%未満である。50質量%未満であれば、良好なシャットダウン特性が得られる。抽出溶剤は、ポリオレフィン樹脂に対して貧溶媒であり、かつ微細粒子に対して良溶媒であり、沸点がポリオレフィン微多孔膜の融点より低いことが望ましい。例えば、微細粒子がシリカの場合、抽出溶剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのようなアルカリ水溶液が好適に用いられる。
本発明の微多孔膜において、本発明の利点を損なわない範囲で各延伸過程に引き続いて、または後に熱固定及び熱緩和等の熱処理工程を加えることは、微多孔膜の収縮をさらに抑制する効果があり好ましい。
さらに本発明の利点を損なわない範囲で、本発明の微多孔膜同士または他の基材と多層化して利用しても構わない。
また、本発明の利点を損なわない範囲で後処理を行っても良い。後処理としては、例えば、界面活性剤等による親水化処理、及び電離性放射線等による架橋処理、熱可塑性樹脂や無機粒子等を片面もしくは両面に塗工する等が挙げられる。
次に、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を制限するものではない。実施例における試験方法は次の通りである。
<微多孔膜の評価>
(1)粘度平均分子量
デカヒドロナフタリンへ試料の劣化防止のため2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.1w%の濃度となるように溶解させ、これ(以下DHNと略す)を試料溶媒として用いる。微多孔膜をDHNへ0.1w%の濃度となるように150℃で溶解させる。微多孔膜中に微細粒子を含有する場合は、その溶液をろ過し、微細粒子を除去し試料溶液とする。もしくは、微細粒子は溶解するがポリオレフィン樹脂は溶解または反応しない溶液に微多孔膜を浸漬することで、微細粒子を先に抽出除去した微多孔膜を用いても良い。作成した試料溶液を10ml採取し、キャノンフェンスケ粘度計(SO100)により135℃での標線間通過秒数(t)を計測する。また、DHNを150℃に加熱した後、10ml採取し、同様の方法により粘度計の標線間を通過する秒数(t)を計測する。得られた通過秒数t、tBを用いて次の換算式により極限粘度[η]を算出した。
[η]=((1.651t/tB−0.651)0.5−1)/0.0834
求められた[η]より、次式により粘度平均分子量(Mv)を算出した。
[η]=6.77×10−4Mv0.67
(2)一次粒径
走査型電子顕微鏡(SEM)「型式S−4800、HITACHI社製」を用いて測定した。試料はオスミウム蒸着したものを用い、加速電圧1.0kVで観察した
(3)膜厚
微小測厚器(東洋精機製 タイプKBM)を用いて室温23℃で測定した。
(4)気孔率
10cm×10cm角の試料を微多孔膜から切り取り、その体積(cm)と質量(g)を求め、それらと膜密度(g/cm)より、次式を用いて計算した。
体積(cm)=10×10×膜厚(μm)/10000
気孔率(%)=(体積−質量/密度)/体積×100
なお、微多孔膜中に微細粒子を含有する場合は、用いたポリオレフィン樹脂と微細粒子の各々の密度と混合比より混合組成物の密度として算出した値を用いた。
(5)透気度
JIS P−8117準拠のガーレー式透気度計(東洋精機製)にて測定した。
(6)収縮率
MD120mm×TD120mm角の試料を微多孔膜から切り出し、TD100mm間隔で3箇所、油性ペンで印をつけた。A4サイズ、目付け64g/m、紙厚0.092mmのコピー用紙(KOKUYO製)で微多孔膜を挟み、コピー用紙の側辺をホッチキスで綴じた。150℃下のオーブン中に水平に置き1時間放置した。その後、空冷し、印間のTD長さ(mm)を測定した。3箇所の平均値より収縮率を算出した。
収縮率(%)=(1−TD長さ(mm)/100)×100
(7)収縮開始温度
熱機械的分析装置(セイコー電子工業製TMA120)にて、初期荷重を1.0gとし、定長下にて試料を昇温速度10℃/minで室温より昇温させ、収縮荷重を計測した。試料は幅3mmで、チャック間は10mmとした。収縮荷重が初期荷重の1.05%(1.05g)を上回った時の温度を収縮開始温度とした。収縮荷重が1.05gを上回らない場合は、収縮開始温度は観測されないと判断した。
(8)フィブリル密度
微多孔膜のフィブリル密度は走査型電子顕微鏡(SEM)「型式S−4800、HITACHI社製」を用いて測定した。試料はオスミウム蒸着したものを用い、加速電圧1.0kVで観察した。フィブリルの配列方向が縦方向になるように観察し、その表面像を印刷した。海部(フィブリル領域およびフィブリル間隙より形成される孔領域)において横方向に線を引き、その線と交差するフィブリル数を測定した。線の長さは、そのSEM観察像において0.5μmから50μmに該当する長さとする。異なる3視野における計3箇所の平均値よりフィブリル密度を算出した。本実施例1では20000倍の倍率で観察し測定した。
フィブリル密度(本/10μm)=交差したフィブリル本数(本)/SEM観察像に該当する線の長さ(μm)×10
(9)フィブリル長さ
微多孔膜のフィブリル長さは走査型電子顕微鏡(SEM)「型式S−4800、HITACHI社製」を用いて測定した。試料はオスミウム蒸着したものを用い、加速電圧1.0kVで観察した。フィブリルの配列方向が縦方向になるように観察し、その表面像を印刷した。任意に20本のフィブリルを選択し、そのフィブリル長さを測定し、平均値を算出した。同様の作業を計3視野について実施し、3視野の平均値をフィブリル長さとした。本実施例1では3000倍の倍率で観察し測定した。
(10)島比率
微多孔膜の島比率は走査型電子顕微鏡(SEM)「型式S−4800、HITACHI社製」を用いて測定した。試料はオスミウム蒸着したものを用い、加速電圧1.0kVで観察した。表面写真10cm×10cmに島状構造体が3〜100個程度存在する倍率で観察、印刷し、その表面写真より島状構造体を切り出した。あらかじめ計測した表面写真10cm×10cmの重量と表面写真10cm×10cmより切り出した島状構造体の重量との比率より島状構造体の割合を算出し島比率とした。本実施例1では3000倍の倍率で観察し測定した。
島比率(%)=切り出した島状構造体の重量(g)/表面写真重量(g)×100
(11)融点およびエンドセット温度
示差走査型熱量計「DSC60」(島津製作所社製、商標)を使用し測定した。多孔シートを直径5mmの円形に打ち抜き、数枚重ね合わせて3mgとしたものを測定サンプルとして用いた。これを直径5mmのアルミ製オープンサンプルパンに敷き詰め、クランピングカバーを乗せサンプルシーラーでアルミパン内に固定した。窒素雰囲気下、昇温速度10℃/minで30℃から200℃までを測定し、融解吸熱曲線を得た。得られた融解吸熱曲線のピークトップ温度を融点(Tm[℃])とし、ピークの終止温度をエンドセット温度(Tme[℃])とした。融点及びエンドセット温度は熱分析ワークステーション(島津製作所製、TA-60WS)を用いて融解吸熱曲線より読み取った。
(12)電解液親和性
電解液としてエチレンカーボネート:プロピレンカーボネート=2:8(重量比)の溶液を作成した。グローブボックス内で該電解液を微多孔膜に滴下した。30秒後に電解液の液滴と微多孔膜が接している面の80%以上が透明であった場合を親和性が良好(○)と判定し、透明な部分が80%未満または不透明であった場合を親和性が十分ではない(×)と判定した。
(13)高温サイクル評価
a.正極作成
正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)を92.2質量%、導電材としてリン片状グラファイトとアセチレンブラックをそれぞれ2.3質量%、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)3.2質量%をN−メチルピロリドン(NMP)中に分散させてスラリーを調製する。このスラリーを正極集電体となる厚さ20μmのアルミニウム箔の片面にダイコーターで塗布し、130℃で3分間乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形する。この時、正極の活物質塗布量は250g/m、活物質嵩密度は3.00g/cmになるようにする。
b.負極作成
負極活物質として人造グラファイト96.6質量%、バインダーとしてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩1.4質量%とスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス1.7質量%を精製水中に分散させてスラリーを調製する。このスラリーを負極集電体となる厚さ12μmの銅箔の片面にダイコーターで塗布し、120℃で3分間乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形する。この時、負極の活物質塗布量は106g/m、活物質嵩密度は1.35g/cmになるようにする。
c.非水電解液の調整
エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=1:2(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPFを濃度1.0mol/Lとなるように溶解させて調整する。
d.セル組立
セパレータを30mmφ、正極及び負極を16mmφの円形に切り出し、正極と負極の活物質面が対向するよう、負極、セパレータ、正極の順に重ね、蓋付きステンレス金属製容器に収納する。容器と蓋は絶縁されており、容器は負極の銅箔と、蓋は正極のアルミニウム箔と接している。この容器内に前記した非水電解液を注入して密閉する。室温にて一日放置した後、25℃雰囲気下、2.0mA(0.33C)の電流値で電池電圧4.2Vまで充電し、到達後4.2Vを保持するようにして電流値を2.0mAから絞り始めるという方法で、合計8時間電池作成後の最初の充電を行う。続いて2.0mA(0.33C)の電流値で電池電圧3.0Vまで放電する。
e.サイクル評価
充放電は60℃雰囲気下で100サイクル実施する。充電は6.0mA(1.0C)の電流値で電池電圧4.2Vまで充電し、到達後4.2Vを保持するようにして電流値を6.0mAから絞り始めるという方法で、合計3時間充電する。放電は6.0mA(1.0C)の電流値で電池電圧3.0Vまで放電する。1サイクル時の放電容量に対する100サイクル時の放電容量を比較した。
容量維持率(%)=100サイクル時の放電容量/1サイクル時の放電容量
[実施例1]
粘度平均分子量(Mv)27万の高密度ポリエチレン「SH800」(商標、旭化成ケミカルズ(株)製)を22.5質量部、Mv200万の超高分子量ポリエチレン「UH850」(商標、旭化成ケミカルズ(株)製)を15質量部、一次粒径が15nmであるシリカ「DM10C」(商標、(株)トクヤマ製)を25質量部、可塑剤として流動パラフィン「スモイル P−350P」(商標、(株)松村石油研究所製)を37.5質量部、酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を0.3質量部添加したものをスーパーミキサーにて予備混合した。得られた混合物をフィーダーにより二軸同方向スクリュー式押出機フィード口へ供給した。また溶融混練し押し出される全混合物中に占める全流動パラフィン量が60質量部となるように、流動パラフィンを二軸押出機シリンダーへサイドフィードした。溶融混練条件は、設定温度200℃、スクリュー回転数180rpm、吐出量12kg/hで行った。続いて、溶融混練物をTダイを経て表面温度40℃に制御された冷却ロール間に押出し、厚み1480μmのシート状のポリオレフィン組成物を得た。次に連続して同時二軸テンターへ導き、縦方向に7倍、横方向に7倍に同時二軸延伸を行った。この時同時二軸テンターの設定温度は121℃である。次に塩化メチレン槽に導き、十分に塩化メチレンに浸漬して流動パラフィンを抽出除去した。その後塩化メチレンの乾燥を行い、多孔シートを得た。得られた多孔シートの融解吸熱曲線を図1に示す。図1に示すとおり、融点は137℃、エンドセット温度は151℃であった。さらにロール延伸機でのMD延伸を実施した。MD延伸における巻取速度/繰出速度比を2.0倍に設定し、ロール温度150℃でMD延伸し巻取りを行い微多孔膜を得た。次に、水酸化ナトリウム水溶液に浸漬してシリカを抽出除去した。製膜条件および微多孔膜の特性を表1に示す。表面SEM像を図2、図3に示す。図2を用い島比率及びフィブリル長さを計測した。図3よりフィブリル密度を測定した。得られた微多孔膜の特性を製膜条件と共に表1に示す。
[比較例1]
実施例1のロール延伸機でのMD延伸のかわりに、横テンターでTD延伸を行った。出口倍率を1.6倍に設定した横テンターに導きTD方向に延伸し巻取りを行い、微多孔膜を得た。TD延伸部の設定温度は130℃とした。その次に水酸化ナトリウム水溶液に浸漬してシリカを抽出除去した。得られた微多孔膜の特性を製膜条件と共に表1に示す。
[比較例2]
実施例1のロール延伸機でのMD延伸のかわりに、横テンターでTD熱緩和を行った。すなわち、出口倍率を0.92倍に設定した横テンターに導きTD方向に熱緩和を行い、微多孔膜を得た。TD緩和部の設定温度は150℃である。その次に水酸化ナトリウム水溶液に浸漬してシリカを抽出除去した。得られた微多孔膜の特性を製膜条件と共に表1に示す。
[比較例3]
粘度平均分子量(Mv)13万の高密度ポリエチレン「B161」(商標、旭化成ケミカルズ(株)製)に酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を0.3質量部添加したものをヘンシェルミキサーにて混合した。得られた混合物をフィーダーにより二軸同方向スクリュー式押出機フィード口へ供給した。溶融混練条件は、設定温度180℃、スクリュー回転数100rpm、吐出量12kg/hで行った。続いて、溶融混練物をTダイを経てドラフト比100となるように溶融配向させながらロール表面温度を25℃に制御したロールを介しポリオレフィンフィルムを巻き取った。次に115℃で30分間熱処理を施した。得られたシートをロール延伸機を用いて25℃で縦方向に1.5倍延伸し、120℃で最終的に縦方向に2.0倍となるように延伸を施し、引続き125℃で熱処理を行い、微多孔膜を得た。得られた微多孔膜の特性を製膜条件と共に表1に示す。
Figure 0005008422
表1から明らかなように本発明の微多孔膜は、透気度が小さく、比較例に対し透過性が良好である。さらに収縮が小さく、収縮開始温度も高い。有孔島/フィブリル構造を形成しており電解液親和性も良好である。さらに、本発明の実施例は比較例よりも明らかに高温サイクル特性が優れる結果が得られている。これは本発明の微多孔膜は透過性が良好であり、かつ電解液の親和性が優れるためと考えられる。ゆえに非水電解液電池等の蓄電池用セパレータとして寿命特性と安全性に優れた微多孔膜といえる。
本発明の微多孔膜は、出力特性と安全性に優れた非水電解液電池等の蓄電池用セパレータとしてや燃料電池の一構成部品、加湿膜、ろ過膜等として好適に利用できる。特に、寿命特性と安全性が要求される電気自動車やハイブリッド自動車用の電池分野において有用である。
実施例1の多孔シートのDSCによる融解吸熱曲線である。 実施例1の微多孔膜の表面SEM像(3000倍)の一例である。 実施例1の微多孔膜の表面SEM像(20000倍)の一例である。

Claims (3)

  1. ポリオレフィン樹脂を含有する有孔島状構造体と、該島状構造体間をつなぐフィブリルとを含み、該フィブリルがポリオレフィン樹脂を含有し、実質的に長さ方向に配列しているポリオレフィン微多孔膜。
  2. 請求項1に記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法であって、
    ポリオレフィン樹脂及び微細粒子を含有する多孔シートを、下記式(a)及び(b)を満たす延伸温度で、少なくとも長さ方向に延伸する工程、微細粒子の少なくとも一部を抽出除去する工程を含むことを特徴とするポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
    (a)延伸温度≧Tme−5℃
    (b)延伸温度>Tm
    (但し、上記式(a)中のTmeは、示差走査熱量計にて測定される、多孔シート中のポリオレフィン樹脂のエンドセット温度を、同(b)中のTmは、示差走査熱量計にて測定される、多孔シート中のポリオレフィン樹脂の融点を各々示す。)
  3. 請求項に記載のポリオレフィン微多孔膜からなる蓄電デバイス用セパレータ。
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