JP2009268631A - 保温部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】創傷部を有する生体内の消費エネルギを減少させるとともに、創傷部の温度が低下してしまうのを抑制して、術後の回復期間を短縮する。
【解決手段】保温部材1は、創傷部の辺縁部分から体表面を覆うように形成された保温部15を備えている。保温部15には、血行促進部が設けられている。保温部15によって創傷部の辺縁部分及びその周辺の体表面を覆うことで、生体の体温よりも冷たい空気が、創傷部の辺縁部分及びその周辺の体表面に当たらなくなる。血行促進部によって生体の血行が促進されるので、創傷部の辺縁同士がくっつき易くなるとともに、免疫機能の低下が抑制されて病原菌等に感染し難くなる。
【選択図】図2
【解決手段】保温部材1は、創傷部の辺縁部分から体表面を覆うように形成された保温部15を備えている。保温部15には、血行促進部が設けられている。保温部15によって創傷部の辺縁部分及びその周辺の体表面を覆うことで、生体の体温よりも冷たい空気が、創傷部の辺縁部分及びその周辺の体表面に当たらなくなる。血行促進部によって生体の血行が促進されるので、創傷部の辺縁同士がくっつき易くなるとともに、免疫機能の低下が抑制されて病原菌等に感染し難くなる。
【選択図】図2
Description
本発明は、例えば、手術時の切開等によって生体に形成された創傷部及びその近傍を保温する保温部材に関する。
一般に、例えば胸部や腹部の臓器等を手術する際には、皮膚や皮下組織等からなる体表側組織がメス等により切開されて開口することにより創傷部が形成される。この創傷部は鉗子等により開かれるので、創傷部の辺縁部分となる体表側組織の切断面に術者の手や手術器具等が触れやすく、このことによって創傷部の辺縁部分に傷がついてしまうことがある。
そこで、従来より、例えば特許文献1に開示されているような保護具を用いて創傷部の辺縁部分が傷つくのを抑止することが行われている。この保護具は、創傷部の辺縁部分を覆うように形成された保護部と、皮膚の表面に貼り付けられる貼着部とを備えており、貼着部を皮膚の表面に貼り付けることで、保護部の位置ずれが防止されるようになっている。
また、一般に、上記のような手術を行う際には、術者の発汗量が多くなると手術の妨げになるので、手術室の室温は術者の発汗量を抑制できる程度の約20℃〜22℃くらいに設定されている。さらに、手術室には、術者のために新鮮な空気が常に流入するようになっている。
特開2003−334214号公報
ところが、上記のように手術室には温度が低めに調節された空気が流入しているので、患者を取り巻く空気の温度は体温よりも低くなる。その結果、患者の体表側組織や術野内の組織が冷却され、これら組織を流れる血液の温度が低下し、患者の体温が奪われていく。このように患者の体温が奪われると、患者の体内のエネルギは体温維持のために消費されて失われていくので、手術後の回復に必要な体内のエネルギが少なくなり、その分、術後の回復期間が長期化してしまう。
また、手術中の体表面には、体温よりも冷たい空気が当たることになる。この空気により創傷部やその近傍が冷却されて血行が悪化し、創傷部の温度が通常時に比べて低下する。このように創傷部の温度が低下すると、手術後に創傷部の辺縁部分同士がくっつき難くなって傷口がなかなか塞がらなくなるとともに、創傷部の免疫機能が低下して病原菌等に感染し易くなり、これらのことによっても術後の回復期間が長期化してしまう。
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、体温を維持するために消費される体内のエネルギを減少させるとともに、創傷部の温度が低下してしまうのを抑制して、術後の回復期間を短縮することにある。
上記目的を達成するために、本発明では、創傷部の辺縁部分から体表面を覆うように形成された保温部に、血行促進部を設けて血行の促進を図るようにした。
具体的には、第1の発明では、生体の体表側組織が開口することにより形成された創傷部の辺縁部分から体表面を覆うように形成された保温部を備え、上記保温部には、血行促進部が設けられている構成とする。
この構成によれば、保温部によって創傷部の辺縁部分及びその周辺の体表面が覆われるので、生体の体温よりも冷たい空気が、創傷部の辺縁部分及びその周辺の体表面に当たらなくなる。これにより、体内のエネルギのうち体温を維持するのに使われる量を減少させることが可能になる。さらに、血行促進部によって生体の血行が促進されるので、創傷部の温度低下が抑制され、手術後、創傷部の辺縁部分同士がくっつき易くなるとともに、免疫機能の低下が抑制されて病原菌等に感染し難くなる。
第2の発明では、第1の発明において、血行促進部は、酸化チタンを含んでいる構成とする。
この構成によれば、生体適合性の良好な酸化チタンによって血行促進効果を得ることが可能になる。また、酸化チタンが有する光触媒作用によって抗菌効果も得ることが可能となる。
第3の発明では、第2の発明において、血行促進部は、粒状に加工された酸化チタンを多数含んでいる構成とする。
この構成によれば、酸化チタンが有する光触媒作用が十分に得られるようになる。
第4の発明では、第1の発明において、血行促進部は、トルマリンを含んでいる構成とする。
第5の発明では、第1の発明において、血行促進部は、ゲルマニウムを含んでいる構成とする。
第6の発明では、第1から5のいずれか1つの発明において、血行促進部は、創傷部の辺縁部分を避けるように配置されている構成とする。
この構成によれば、血行促進部が創傷部に接触しなくなる。これにより、血行促進部が創傷部に接触することによって創傷部に何らかの良くない影響を及ぼしてしまう虞れがなくなり、血行促進部を設けたことによる副作用の発生を抑制することが可能になる。
第7の発明では、第1から6のいずれか1つの発明において、保温部を創傷部の辺縁部分に沿う形状で保持する基材を備えている構成とする。
この構成によれば、基材の形状を変更することにより、保温部の形状が創傷部の辺縁部分に沿う形状で保持される。
第8の発明では、第1から7のいずれか1つの発明において、保温部は、水の不透過性を有するシートを備え、該シートが少なくとも体表面を覆うように形成されている構成とする。
この構成によれば、創傷部の辺縁部分近傍の体表面の汗が殆ど蒸発しなくなるので、汗の蒸発によって生体から奪われる熱量を減少させることが可能になる。
第9の発明では、第1から8のいずれか1つの発明において、保温部材が、心臓の冠動脈バイパス手術の際に用いられるものとする。
この構成によれば、冠動脈バイパス手術を受けている患者の血行が促進される。
第1の発明によれば、創傷部の辺縁部分から体表面を覆うように形成された保温部を備えているので、手術時における体内のエネルギの使用量が減少し、しかも、保温部に設けた血行促進部により生体の血行を促進できるので、創傷部の辺縁部分同士がくっつき易くなるとともに、免疫機能の低下を抑制して病原菌等に感染し難くすることができる。これらのことにより、術後の回復期間を短縮することができる。
第2の発明によれば、生体適合性の良好な酸化チタンにより血行を促進することができるので、生体に副作用が起こり難く、安全に血行促進効果を得ることができる。また、酸化チタンの抗菌効果によって保温部を清潔に保つことができ、医療現場に適したものとすることができる。
第3の発明によれば、酸化チタンが有する光触媒作用を十分に得ることができ、抗菌効果を高めることができる。
第4、5の発明によれば、使用者に副作用が起こり難く、安全に血行促進効果を得ることができる。
第6の発明によれば、血行促進部が創傷部の辺縁部分を避けるように配置されているので、創傷部の周辺の体表面の血行促進を図りながら、血行促進部を設けたことによる副作用の発生を抑制することができ、安全性を高めることができる。
第7の発明によれば、基材により保温部の形状を創傷部の辺縁部分に沿う形状で保持できるので、保温部を創傷部の辺縁部分に確実に接触させることができ、創傷部の辺縁部分に冷たい空気が当たるのを確実に回避することができる。
第8の発明によれば、水の不透過性を有するシートにより少なくとも体表面を覆うようにしたので、汗の蒸発によって生体から奪われる熱量を減少させることができ、術後の回復期間をより一層短縮することができる。
第9の発明によれば、冠動脈バイパス手術を受けた患者の回復期間を短縮することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
図1は、本発明の実施形態に係る保温部材1を示し、この保温部材1は、心臓の冠動脈バイパス手術の際に用いられるものである。保温部材1は、図2に示すように、中間シート2と、中間シート2の表面に配置される表側吸液材3と、表側吸液材3を覆う表側シート4と、中間シート2の裏面に配置される裏側吸液材5と、裏側吸液材5を覆う裏側シート6と、生体に貼り付けられる粘着材7と、粘着材を覆う剥離シート8と、基材9とを備えている。
中間シート2は、透光性を有するポリエチレン製シートを長方形に裁断してなるものである。この中間シート2は、水を透過させないように構成されている。中間シート2の長手方向(図1の左右方向)の寸法は、約300mmとされ、幅方向(図1及び図2上下方向)の寸法は約220mmとされている。また、図1に示すように、中間シート2の4つの角部は、曲線で構成されている。尚、中間シート2は、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル等のシートで構成してもよく、また、これら樹脂材を積層した多層構造のシートで構成してもよい。
表側吸液材3は、水膨潤性繊維からなる布材を長方形に裁断してなるものである。表側吸液材3の長手方向の寸法は、中間シート2の長手方向の寸法よりも若干短めに設定され、上下方向の寸法は、中間シート2の上下方向の寸法の約3/4に設定されている。表側吸液材3を構成する水膨潤性繊維としては、アクリル繊維の内層と吸水性樹脂からなる外層とで構成された東洋紡績株式会社製のランシールを用いることができる。この水膨潤性繊維の吸水速さは、水に接触すると約10秒で平衡吸水量の約50%以上を吸水する速さである。また、この水膨潤性繊維は、吸水した後は、多少の圧力を加えても離水せず、また、水には溶けない性質を持っている。さらに、この水膨潤性繊維の吸水後の繊維径は、吸水前の繊維径の約5倍以上に拡大する一方、繊維の長さ方向の寸法は、アクリル繊維で維持されて吸水前後で殆ど変化しない。また、水膨潤性繊維の繊維物性はアクリル繊維で維持されているので、外層の吸水樹脂が吸水しても殆ど低下しないようになっている。尚、表側吸液材3は、綿やレーヨン等からなるガーゼや、脱脂綿等で構成してもよいし、これら綿やレーヨンに上記水膨潤性繊維を混合した不織布や、綿やレーヨンに水膨潤性繊維を積層した積層体で構成してもよい。裏側吸液材5は表側吸液材3と同じものである。裏側吸液材5の厚みは、表側吸液材3の厚みと同じにしてもよいし、異ならせてもよい。
表側シート4は、樹脂繊維からなるトリコットを長方形に裁断してなるものである。トリコットには編み目があるため、水が容易に透過するようになっている。表側シート4の長手方向の寸法は、中間シート2の長手方向の寸法と同じに設定され、上下方向の寸法は、表側吸液材3の上下方向の寸法よりも若干長めに設定されている。すなわち、表側シート4は、表側吸液材3よりも大きいものとなっている。尚、表側シート4は、例えば、不織布やガーゼ等の透湿性のある部材で構成することができる。
表側シート4は、その下縁部が中間シート2の下縁部と一致するように配置された状態で、周縁部全周が中間シート2に熱溶着されている。つまり、表側シート4と中間シート2とにより、中間シート2の表側に表側吸液材3を収容する収容部が構成されている。また、この状態で、中間シート2の上側約1/4の領域が表側シート4から露出した状態となっている。
上記基材9は、図3に示すように、多数の樹脂製線材9a、9a、…を網状に組み合わせてなり、平面視で上記裏側吸液材5と略同じ形状とされている。各線材9a、9a、…は、曲げた際に途中で折れて切れることなく、かつ、その曲げた形状を保持する形状保持性を有する樹脂材で構成されている。この樹脂材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン等を使用することができるが、この実施形態では、これら樹脂材の中で形状保持性が最も優れているポリエチレンを使用している。尚、線材9aの太さや本数は、任意に設定することが可能である。また、基材9は、樹脂製の板材で構成してもよいし、金属製の線材や板材で構成してもよい。
裏側シート6は、上側領域部10と下側領域部11とで構成されており、全体として、中間シート2と同じ大きさの長方形をなしている。上側領域部10と下側領域部11との境界は、裏側シート6の上下方向中央部に位置付けられている。上側領域部10を構成する布材は、図5に示すように、重ね合わされた2枚の不織布13、13と、これら不織布13、13の間に配置された金属粉末(血行促進部)14とで構成されている。不織布13、13には、親水化処理が施されている。金属粉末14の表面には酸化チタンの皮膜が形成されている。
下側領域部11は、上記表側シート4を構成するトリコットと同じもので構成されている。上側領域部10の下縁部と下側領域部11の上縁部とは熱溶着されている。このように2つ領域部10、11の境界部分を保温部材1の上下方向中央部に位置付けることで、後述する使用時には、上側領域部10が創傷部Aの辺縁部分A1、A2には接触しないようになる。
裏側シート6の周縁部は、中間シート2の周縁部に全周に亘って熱溶着されており、これにより、中間シート2の裏面全体が裏側シート6によって覆われるようになっている。また、図1及び図2に示すように、裏側シート6の上縁部から下方へ離れた部位に設定された溶着部6aも、中間シート2に熱溶着されている。この溶着部6aは、保温部材1を表裏方向に見たとき、表側シート4の上縁部と重なる位置とされている。この溶着部6aよりも下側に裏側吸液材5が配置されており、従って、この裏側吸液材5は、表側吸液材3と重なる位置にある。上記中間シート2、表側吸液材3、表側シート4、裏側吸液材5、裏側シート6及び基材9により、本発明の保温部15が構成されている。
粘着材7は、裏側シート6の裏面における上部に貼り付けられている。この粘着材7は、図2に示すように、人間の皮膚への貼り付け用として一般に用いられているアクリル系、シリコーン系、ポリウレタン系やゴム系のものである。この粘着材7によって、保温部材1が体表面に貼り付けられるようになっている。
上記剥離シート8は、樹脂製シートや紙等をシリコーン系剥離剤等で剥離処理したものである。剥離シート8を樹脂製シートで構成する場合には、例えばポリエチレンテレフタラートフィルムやポリプロピレンフィルム等を用いることができ、一方、紙で構成する場合には、グラシン紙、クレーコート紙、ラミネート紙等を用いることができる。
上記のように構成された保温部材1は、図示しないが、透湿性がない樹脂製シートからなる袋に収容された状態で保管されるようになっている。このため、表側吸液材3及び裏側吸液材5が保管中に空気中の水分を吸収して吸液能力が低下することはない。
次に、裏側シート6の上側領域部10を構成する布材の製造方法について説明する。まず、酸化チタン被膜が形成された金属粉末14を得る。この金属粉末14は、例えば、特開2000−61314号公報や特開2004−344687号公報に開示されている装置及び方法を用いて製造することができる。すなわち、図示しないが、製造装置としては、重力式ブラスト装置を用意する。また、酸化チタンの被膜を形成する前の金属粉末からなる被処理材も用意しておく。尚、ブラスト装置は、エア式であれば、吸い込み式のサイホン型や、他の形式であってもよい。
そして、被処理材をブラスト装置の処理室に配置し、チタン粉末を圧縮空気により噴射ノズルを介して被処理材へ向けて噴射する。このチタン粉末の平均粒径は、40μm〜100μmの範囲である。また、噴射圧力は、0.4MPa〜0.6MPaの範囲で設定され、噴射ノズルと被処理材との間隔は、100mm〜250mmの範囲で設定されている。また、噴射ノズルの内径は5mm〜7mmの範囲で設定されている。
上記噴射ノズルから噴射されたチタン粉末が被処理材に当たると被処理材の表面への衝突前後の速度変化により、熱エネルギーが生じ、局部的に温度上昇が起こる。これにより、チタン粉末が被処理材の表面で加熱されて、チタン粉末中のチタンが被処理材の表面に活性化吸着するとともに、大気中の酸素と酸化反応を起こす。その結果、酸化チタン被膜が形成された金属粉末14が得られる。この酸化チタン被膜を形成する際には、チタン粉末が温度上昇することにより、チタンが被処理材に浸透していく。このため、被処理材の表面から内部に入るに従って酸素が欠乏気味になり、酸化チタン被膜は、酸素欠乏傾斜構造と呼ばれる構造を呈することになる。すなわち、被処理材の表面では、酸化チタン被膜はTiO2であるのに対し、表面から内部に入った箇所では、TiOとなる。このようにして得られた金属粉末14を2枚の不織布13、13の間に配置して、これら不織布13、13を互いに接着するとともに、金属粉末14を不織布13に接着する。金属粉末14は不織布13、13の繊維間から露出するようになっている。
次に、上記のように構成された保温部材1を、冠動脈バイパス手術中に使用する要領について図4に基づいて説明する。冠動脈バイパス手術が行われる手術室には、約20℃〜22℃くらいに調節された調和空気が、患者の胸部の上方から患者へ向けて流入するようになっている。
患者の体表側組織が切開されて創傷部Aが形成された後、保温部材1を、創傷部Aの一方の辺縁部分A1に沿うように曲げるとともに、辺縁部分A1から体表面に沿うように曲げる。そして、保温部材1を、その裏側シート6が一方の辺縁部分A1及びその周りの体表面に接触するように配置する。このとき、裏側シート6の下側領域部11を創傷部Aに接触させ、上側領域部10が辺縁部分A1には接触しないようにしておく。そして、剥離シート8を粘着材7から剥がして貼着材7を体表面に密着させる。これにより、粘着材7が体表面に貼り付き、保温部材1の位置ずれが抑制される。この状態で、創傷部Aの辺縁部A1、A2及びその周りの体表面が保温部材1により覆われる。また、創傷部Aの他方の辺縁部分A2及びその周囲の体表面も、同様に別の保温部材1で覆う。
このように創傷部Aの辺縁部分A1、A2を保温部材1、1で覆うことにより、患者の体温よりも冷たい空気が、創傷部Aの辺縁部分A1、A2及びその周辺の体表面に当たらなくなる。これにより、体内のエネルギのうち体温を維持するのに使われる量を減少させることが可能になる。また、創傷部Aの辺縁部分A1、A2に術者の手や器具が当たらなくなる。さらに、創傷部Aの辺縁部分A1、A2が水を通さない中間シート2で覆われた状態となっているので、保温部材1の表側に付着した体液中に病原菌等が存在していた場合に、その病原菌等が創傷部Aに達しなくなり、感染の虞れが低くなる。
また、手術中に創傷部Aから出血した血液や滲出した体液等は裏側シート6を通過して裏側吸液材5によって吸収される。また、術野の内部からの血液や体液等は、表側シート4を通過して表側吸液材3に吸収される。創傷部Aからの体液等は、中間シート2によって表側へ染み出すのが防止され、また、術野内の体液等は、中間シート2によって裏側へ染み出すのが防止される。
また、中間シート2が水を通さないものであるため、その中間シート2で覆われている創傷部Aの辺縁部分A1、A2の体液や、体表面の汗等は殆ど蒸発しなくなる。これにより、体液等の蒸発によって患者から奪われる熱量を減少させることが可能になる。
また、基材9が形状保持性を有しているため、保温部15を創傷部Aの辺縁部分A1、A2及び体表面に沿う形状に維持でき、辺縁部分A1、A2及び体表面に密着させることができる。
また、裏側シート6の上側領域部10の金属粉末14は、患者の体表面に接触することになる。これにより、金属粉末14の酸化チタンによって患者の体表面の血行が促進される。その結果、手術後、創傷部Aの辺縁部分A1、A2同士がくっつき易くなるとともに、免疫機能の低下が抑制されて病原菌等に感染し難くなる。
また、酸化チタンが有する光触媒作用による抗菌効果によって、体表面の表在菌を殺菌することが可能になる。これにより、表在菌が創傷部Aへ向けて移動することによる感染が起こり難くなる。また、裏側シート6の上側領域部10が創傷部Aの辺縁部分A1、A2に接触しないようになっているので、金属粉末14の酸化チタンが創傷部Aに何らかの良くない影響を及ぼしてしまうことはない。
したがって、この実施形態に係る保温部材1によれば、創傷部Aの辺縁部分A1、A2及びその周りの体表面を覆うことができるので、手術時における体内のエネルギの使用量を減少させることができる。さらに、裏側シート6の金属粉末14により患者の血行を促進できるので、創傷部Aの辺縁部分A1、A2同士がくっつき易くなるとともに、免疫機能の低下を抑制して病原菌等に感染し難くすることができる。これらのことにより、術後の回復期間を短縮することができる。
また、生体適合性の良好な酸化チタンにより血行を促進するようにしたので、患者に副作用が起こり難く、安全に血行促進効果を得ることができる。また、酸化チタンの抗菌効果によって保温部15を清潔に保つことができ、医療現場に適したものとすることができる。
また、酸化チタン被膜を有する金属粉末14を裏側シート6に多数設けたので、酸化チタンが有する光触媒作用を十分に得ることができ、抗菌効果をより一層高めることができる。
また、保温部材1の使用状態において、金属粉末14が創傷部Aの辺縁部分A1、A2を避けるように配置されているので、金属粉末14を設けたことによる副作用の発生を抑制することができ、安全性を高めることができる。また、金属粉末14を裏側シート6の全体に設けなていないことにより、金属粉末14の使用量を減少させることができ、保温部材1のコストを低減できる。
また、中間シート2が水の不透過性を有するシートからなるので、創傷部Aの辺縁部分A1、A2の体液や体表面の汗等が殆ど蒸発しなくなる。これにより、汗等の蒸発によって患者から奪われる熱量を減少させることができ、術後の回復期間をより一層短縮することができる。
また、裏面シート6における下側領域部11には、例えば抗生物質等を含む薬剤を塗布しておいてもよい。これにより、創傷部Aが炎症を起こすのを抑制することができる。
また、上記実施形態1では、血行促進部を酸化チタン被膜を有する金属粉末14で構成しているが、これに限らず、トルマリンやゲルマニウムで構成してもよい。
トルマリンは、電気石とも呼ばれており、細かく粉砕した場合に、トルマリン結晶の両端にプラス極とマイナス極とが存在する性質を持っている。このトルマリンの微弱電流は、例えば、人体の細胞に含まれる水分に流れることによって、人体に極めて弱い電気刺激を与えることができる。これにより血行が効果的に促進される。
上記トルマリンは、原石のまま不織布13に接着剤等によって担持させてもよいし、原石を細かく砕いて粒状にして不織布13に担持させてもよい。
また、ゲルマニウムを用いる場合には、ゲルマニウムから放出される電子の作用によって、血行が促進される。ゲルマニウムは、粒状にして不織布に担持させてもよい。
また、酸化チタン、トルマリン及びゲルマニウムのうち、全てを組み合わせて血行促進部を構成してもよいし、任意の2つを組み合わせて血行促進部を構成してもよい。
また、本発明の保温部材1は、胸部や腹部の手術以外にも創傷部が形成される各種手術の際に用いることができる。
以上説明したように、本発明に係る保温部材は、例えば、心臓の冠動脈バイパス手術の際に用いることができる。
1 保温部材
2 中間シート
3 表側吸液材
4 表側シート
5 裏側吸液材
6 裏側シート
9 基材
13 不織布
14 金属粉末(血行促進部)
15 保温部
A 創傷部
A1、A2 辺縁部分
2 中間シート
3 表側吸液材
4 表側シート
5 裏側吸液材
6 裏側シート
9 基材
13 不織布
14 金属粉末(血行促進部)
15 保温部
A 創傷部
A1、A2 辺縁部分
Claims (9)
- 生体の体表側組織が開口することにより形成された創傷部の辺縁部分から体表面を覆うように形成された保温部を備え、
上記保温部には、血行促進部が設けられていることを特徴とする保温部材。 - 請求項1に記載の保温部材において、
血行促進部は、酸化チタンを含んでいることを特徴とする保温部材。 - 請求項2に記載の保温部材において、
血行促進部は、粒状に加工された酸化チタンを多数含んでいることを特徴とする保温部材。 - 請求項1に記載の保温部材において、
血行促進部は、トルマリンを含んでいることを特徴とする保温部材。 - 請求項1に記載の保温部材において、
血行促進部は、ゲルマニウムを含んでいることを特徴とする保温部材。 - 請求項1から5のいずれか1つに記載の保温部材において、
血行促進部は、創傷部の辺縁部分を避けるように配置されていることを特徴とする保温部材。 - 請求項1から6のいずれか1つに記載の保温部材において、
保温部を創傷部の辺縁部分に沿う形状で保持する基材を備えていることを特徴とする保温部材。 - 請求項1から7のいずれか1つに記載の保温部材において、
保温部は、水の不透過性を有するシートを備え、該シートが少なくとも体表面を覆うように形成されていることを特徴とする保温部材。 - 請求項1から8のいずれか1つに記載の保温部材において、
心臓の冠動脈バイパス手術の際に用いられることを特徴とする保温部材。
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