JP2009268373A - Na/K比1以下の調味梅干の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】白干梅を調味液に浸漬して調味梅干を製造する方法において、調味液に粗製海水塩化カリウムを下記式(1):
(式中、aは白干梅の塩分濃度(%)を表し、bは白干梅の塩化カリウム濃度(%)を表し、cは調味液の塩分濃度(%)を表し、dは調味液の塩化カリウム濃度(%)を表し、eは粗製海水塩化カリウムの塩分濃度(%)を表し、fは粗製海水塩化カリウムの塩化カリウム濃度(%)を表し、xは白干梅の重量を表し、yは調味液の重量を表し、zは添加する粗製海水塩化カリウムの重量を表す。)
で示される関係を満足する量で添加することを特徴とする調味梅干の製造方法。
【選択図】なし
Description
6月に収穫した成熟梅を1〜2ヶ月間塩漬けにし、液きり後7〜8月に天日干しをし、樽に詰められて所定期間貯蔵されて梅の熟成が行われるが、この梅は、白干梅とよばれ、塩分を20〜24%含み、そのままでの利用はし難いものである。そのため、この白干しを種々の調味液に漬け込んだものが調味梅干である。
いずれにしろ、調味梅干では塩分の問題が常に付きまとっているのが現状である。
しかしながら、現代社会では、食塩は基準量を越えているものの、カリウムは摂取不足でその補給の必要性が指摘されている。ナトリウムとカリウムは拮抗作用があり、WHO栄養班によりNa/K比が1以下の食事によって本態性高血圧症を予防ないし治療することが古くから実証されており、このことを受けて、米国での目標値は食塩6g/日以下、カリウム3.5g/日以上であり、Na/K比は0.67以下となっている。
しかしながら、前記特許文献3には、この漬物の素のNa/K比が1以下であるのを継続摂取するのが食塩の過剰摂取に伴う疾患の予防に好ましい旨記載されているものの、該漬物の素のNa/K比が1以下になっていることは立証していないし、また、組成上からNa/K比1以下には到っていない。
[1] 白干梅を調味液に浸漬して調味梅干を製造する方法において、調味液に粗製海水塩化カリウムを下記式(1):
で示される関係を満足する量で添加することを特徴とする調味梅干の製造方法、
[2] 粗製海水塩化カリウムの添加量が、下記式(2):
で示される関係を満足する量である前記[1]記載の製造方法、
[3] 白干梅が、成熟梅を(1)食塩および岩塩から選ばれる少なくとも1種、または(2)食塩および塩化カリウムを含む岩塩から選ばれる少なくとも一種と、粗製海水塩化カリウムからなる混合塩に漬けて得られる白干梅であることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の製造方法、
[4] 調味液が酸度2〜5%、Brix18〜38%である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法、
[5] 粗製海水塩化カリウム中の塩化カリウム量の70質量%以下を塩化カリウムで置き換えた前記[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法、
[6] 粗製海水塩化カリウム中の塩化カリウム量の35質量%以下をクエン酸一カリウム、クエン酸三カリウム、グルコン酸カリウム、酒石酸水素カリウムから選ばれる有機酸の1種または2種以上の組み合わせで置換してなる前記[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法、
[7] 前記[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法で製造された調味梅干、
[8] 前記[7]に記載の調味梅干の梅肉を含有する食品、および
[9] 調味梅干の梅肉が、粉末、半練り、錠剤の形態である前記[8]に記載の食品、
に関する。
で示される関係を満足する量で添加することを特徴とする調味梅干の製造方法である。
したがって、風味の悪化を避け、かつ必要以上の調味液の使用を避ける点から、白干梅は好ましくは塩分濃度を18%以下、より好ましくは16%以下、さらに好ましくは8〜14%に脱塩したものを使用するのが好ましい。脱塩方法は水中に浸漬、0.2%以下の食塩水に浸漬など種々の方法がとられるが、どのような方法をとっても良い。なお、本明細書中、塩分とは塩化ナトリウムを意味する。
調味液の酸度は、中和滴定法で試料液を0.1モル/L水酸化ナトリウム標準液で中和し、そのアルカリ量によりクエン酸換算で示した酸の質量パーセント濃度である。調味液のBrixは糖度計(アタゴ(株)製)により測定し、ナトリウム量およびカリウム量は原子吸光分析法に従って測定した。
で示される関係を満足するzとして求めることができる。前記式(1)は、本発明者らが初めて見出したものであり、以下の式(3)から導きだしたものである。
上記式(3)において、左辺は、塩化ナトリウムの量に相当し、右辺は塩化カリウムの量に相当し、イコール(=)の場合、Na/K比が1となり、本発明の方法で得られ得る調味梅干の可食部のNa/K比の実測値とよく一致する。
したがって、調味液に添加する粗製海水塩化カリウムの量を式(1)で算出されるイコール(=)の場合のzの値以上とすることにより、Na/K比が1以下の調味梅干を製造できることになる。
Na/K比1以下を実現する上で実用的な粗製海水塩化カリウムの使用量は、白干梅の種類、品質間の差異を考慮して式(1)においてイコール(=)の場合に算出される粗製海水塩化カリウム量の通常1.0倍〜3.0倍程度、好ましくは1.1〜1.5倍程度である。なお、調味液が塩分を含んでいる場合は、それに応じて、式(1)から粗製海水塩化カリウムを算出すればよい。塩化カリウムを含む岩塩で塩漬けされた白干梅を使用する際には、該白干梅の塩化ナトリウム、塩化カリウムの量を算出して、粗製海水塩化カリウムを添加すればよい。
本発明の製造方法により得られる調味梅干の梅肉を利用することにより、塩分を気にせず食べられ、カリウムや海水の微量ミネラルの補給源となるため、新たな機能性食品として展開することができる。これらの食品も本発明に含まれる。
Na/K比1以下の調味梅干の梅肉を乾燥粉末化し、単独もしくは他の機能性食品素材と合わせて粉末状、半練り状、錠剤化すると新規の機能性食品を提供することとなる。これらの食品も本発明に含まれる。
また、本発明には以下の実施例の他にも、更には上記の具体的記述以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて種々の変更修正、改良を加え得るものを含む。
白干南高梅を水中で脱塩し、可食部の塩分濃度が10%である脱塩梅干1kgを表1記載の組成の調味液(酸度3.5%、Brix31%)1.6kgに浸漬した。3週間常温で浸漬した後液きりをし、調味梅干1.0kgを得た(以下、実施例品1という。)。なお、用いた粗製海水塩化カリウムは、塩化カリウム70%、塩化ナトリウム20%、水分5.8%、硫酸カルシウム1.3%、塩化マグネシウム1.3%、塩化カルシウム0.4%であった。調味液に含まれる塩分および塩化カリウム濃度並びに白干梅に含まれる塩化カリウムは無視できる程微量であったため、無視して式(1)から計算した結果、粗製海水塩化カリウムは136g以上必要であることがわかった。本実施例では、下記表1に示されるように、粗製海水塩化カリウムは164g(1.6kg×10.25重量%)使用した。
白干南高梅を水中で脱塩し、塩分8%の脱塩梅干1kgを実施例1の表1の調味液(酸度3.5%、Brix31%)1.6kgに浸漬した(実施例2)。さらに、前記調味液において、粗製海水塩化カリウムの1部を、塩化カリウム、クエン酸一カリウム、クエン酸三カリウムまたはグルコン酸カリウムで置き換えたものに浸漬した(実施例3〜7)。3週間後、液きりして各実施例の調味梅干を得た(以下、実施例品2〜7という。)。各実施例の粗製海水塩化カリウム、塩化カリウム、クエン酸一カリウム、クエン酸三カリウムまたはグルコン酸カリウムの使用量(重量%)を表2に示す。なお、調味液に含まれる塩分および塩化カリウム濃度並びに白干梅に含まれる塩化カリウムは実施例1と同様に無視して、式(1)から計算した結果、粗製海水塩化カリウムは、それぞれ109g(実施例2)、76.3g(実施例3)、87.2g(実施例4)、98.1g(実施例5)、98.1g(実施例6)、98.1g(実施例7)以上必要であることがわかった。下記表2から使用した粗製海水塩化カリウムは164g(実施例2)、115g(実施例3)、131g(実施例4)、148g(実施例5)、148g(実施例6)、148g(実施例7)であった。
白干南高梅を水中で脱塩し、塩分8%の脱塩梅干1kgを得て、粗製海水塩化カリウム10.25重量%の代わりに塩化カリウム7.18重量%を用いる以外は実施例1の表1と同様の調味液(酸度3.5%、Brix31%)1.6kgに浸漬した。3週間後、液きりして調味梅干を得た(以下、比較品1という。)。
実施例1で得た調味梅干の可食部100g、残った調味液100g当りのナトリウム量とカリウム量を原子吸光分析法により測定し、比較した。参考例として、五訂日本食品標準成分表に記載の調味梅干のナトリウムとカリウムの量を記載した(以下、参考品という。)。結果を表3に示す。
本発明の調味梅干は、参考品と比べNa/K比の差は歴然としており、また、調味梅干の可食部と調味残液のナトリウム、カリウム量がほぼ等しいことから、本発明の条件下ではこれらの塩類が平衡に達していることがわかる。
上記非特許文献1(厚生労働省策定2005年版日本人の食事摂取基準)では、減塩とともにカリウムの摂取を促しているが、本発明品がカリウムの補給源になるばかりでなく、海水の微量ミネラルの供給源となっていることから、優れた機能性食品素材であることを明確に示している。
一方、比較例のように粗製海水塩化カリウムの代わりに塩化カリウム単体を用いたものではNa/K比は1以下であるが、苦味、えぐ味が伴い、食用には不適であった。
Claims (9)
- 白干梅が、成熟梅を(1)食塩および岩塩から選ばれる少なくとも1種、または(2)食塩および塩化カリウムを含む岩塩から選ばれる少なくとも一種と、粗製海水塩化カリウムからなる混合塩に漬けて得られる白干梅であることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
- 調味液が酸度2〜5%、Brix18〜38%である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- 粗製海水塩化カリウム中の塩化カリウム量の70質量%以下を、塩化カリウムで置換してなる請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
- 粗製海水塩化カリウム中の塩化カリウム量の35質量%以下をクエン酸一カリウム、クエン酸三カリウム、グルコン酸カリウム、酒石酸水素カリウムから選ばれる有機酸の1種または2種以上の組み合わせで置換してなる請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法で製造された調味梅干。
- 請求項7に記載の調味梅干の梅肉を含有する食品。
- 調味梅干の梅肉が、粉末、半練り、錠剤の形態である請求項8に記載の食品。
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