JP2009268373A - Na/K比1以下の調味梅干の製造方法 - Google Patents

Na/K比1以下の調味梅干の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】塩分を気にせず食べられるNa/K比が1以下の調味梅干を提供すること。
【解決手段】白干梅を調味液に浸漬して調味梅干を製造する方法において、調味液に粗製海水塩化カリウムを下記式(1):
Figure 2009268373

(式中、aは白干梅の塩分濃度(%)を表し、bは白干梅の塩化カリウム濃度(%)を表し、cは調味液の塩分濃度(%)を表し、dは調味液の塩化カリウム濃度(%)を表し、eは粗製海水塩化カリウムの塩分濃度(%)を表し、fは粗製海水塩化カリウムの塩化カリウム濃度(%)を表し、xは白干梅の重量を表し、yは調味液の重量を表し、zは添加する粗製海水塩化カリウムの重量を表す。)
で示される関係を満足する量で添加することを特徴とする調味梅干の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、調味梅干の製造方法およびその製造方法で製造された梅肉を利用した食品に関する。
梅は、殺菌、疲労回復、胃粘膜増強、血流改善、カルシウムの吸収促進などの効用から古くから利用され、梅干、梅肉エキス、焼梅などの種々の加工法が適用され、数多くの製品が発売されているが、主流をなすのは調味梅干である。
6月に収穫した成熟梅を1〜2ヶ月間塩漬けにし、液きり後7〜8月に天日干しをし、樽に詰められて所定期間貯蔵されて梅の熟成が行われるが、この梅は、白干梅とよばれ、塩分を20〜24%含み、そのままでの利用はし難いものである。そのため、この白干しを種々の調味液に漬け込んだものが調味梅干である。
調味梅干は、梅の効用も利用し、かつ摂取し易い形態であるが、依然として問題視されていたのが塩分であり、低塩化の努力がなされ(特許文献1)、塩分8%のものが主流となっているのが現状である。一部では更なる低塩化が行なわれ、塩分5%のものも商品化されているが、保存性の問題と関連してアルコールを多く添加せざるを得ず、風味を損なっている(特許文献2)。
いずれにしろ、調味梅干では塩分の問題が常に付きまとっているのが現状である。
食塩は男性で10g/日以下、女性で8g/日以下、カリウムは男性で2.8〜3.1g/日以上、女性で2.7〜3.1g/日以上、とくに高血圧予防から男女とも、3.5g/日以上摂取することが目標とされている(非特許文献1)。
しかしながら、現代社会では、食塩は基準量を越えているものの、カリウムは摂取不足でその補給の必要性が指摘されている。ナトリウムとカリウムは拮抗作用があり、WHO栄養班によりNa/K比が1以下の食事によって本態性高血圧症を予防ないし治療することが古くから実証されており、このことを受けて、米国での目標値は食塩6g/日以下、カリウム3.5g/日以上であり、Na/K比は0.67以下となっている。
また、特許文献3には、梅干の製造工程において副生する調味料の残渣液に、塩化ナトリウム30〜75重量%および海水シルビン(粗製海水塩化カリウムと同意語)25〜70重量%からなる混合物100重量部に対してクエン酸塩5〜60重量部を混合してなる塩味料を添加してなる漬物の素が開示されている(特許文献3)。
しかしながら、前記特許文献3には、この漬物の素のNa/K比が1以下であるのを継続摂取するのが食塩の過剰摂取に伴う疾患の予防に好ましい旨記載されているものの、該漬物の素のNa/K比が1以下になっていることは立証していないし、また、組成上からNa/K比1以下には到っていない。
特開2006−149364号公報 特開2005−110576号公報 特開平7−31368号公報 厚生労働省策定2005年版日本人の食事摂取基準、2005年5月30日、194〜201頁
本発明は、塩分を気にせず食べられるNa/K比が1以下の調味梅干の製造方法を提供することを目的とする。さらに前記製造方法から得られる調味梅干の梅肉を利用した種々の食品を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、白干梅を調味液に浸漬する際、調味液に簡潔な式で算出される所定量の粗製海水塩化カリウムを添加すると、調味梅干の可食部である梅肉と調味液間でナトリウムおよびカリウムがほぼ平衡に達すること、粗製海水塩化カリウムの1部を塩化カリウムで置き換えても同様な平衡が認められること、並びに粗製海水塩化カリウムの添加量を所定量以上とすると、得られる調味梅干の風味を損なうことなくNa/K比を1以下になしうることを見出し、この知見に基づいてさらに研究を進め、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1] 白干梅を調味液に浸漬して調味梅干を製造する方法において、調味液に粗製海水塩化カリウムを下記式(1):
Figure 2009268373
(式中、aは白干梅の塩分濃度(%)を表し、bは白干梅の塩化カリウム濃度(%)を表し、cは調味液の塩分濃度(%)を表し、dは調味液の塩化カリウム濃度(%)を表し、eは粗製海水塩化カリウムの塩分濃度(%)を表し、fは粗製海水塩化カリウムの塩化カリウム濃度(%)を表し、xは白干梅の重量を表し、yは調味液の重量を表し、zは添加する粗製海水塩化カリウムの重量を表す。)
で示される関係を満足する量で添加することを特徴とする調味梅干の製造方法、
[2] 粗製海水塩化カリウムの添加量が、下記式(2):
Figure 2009268373
(式中、aは白干梅の塩分濃度(%)を表し、bは白干梅の塩化カリウム濃度(%)を表し、cは調味液の塩分濃度(%)を表し、dは調味液の塩化カリウム濃度(%)を表し、eは粗製海水塩化カリウムの塩分濃度(%)を表し、fは粗製海水塩化カリウムの塩化カリウム濃度(%)を表し、xは白干梅の重量を表し、yは調味液の重量を表し、zは添加する粗製海水塩化カリウムの重量を表す。)
で示される関係を満足する量である前記[1]記載の製造方法、
[3] 白干梅が、成熟梅を(1)食塩および岩塩から選ばれる少なくとも1種、または(2)食塩および塩化カリウムを含む岩塩から選ばれる少なくとも一種と、粗製海水塩化カリウムからなる混合塩に漬けて得られる白干梅であることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の製造方法、
[4] 調味液が酸度2〜5%、Brix18〜38%である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法、
[5] 粗製海水塩化カリウム中の塩化カリウム量の70質量%以下を塩化カリウムで置き換えた前記[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法、
[6] 粗製海水塩化カリウム中の塩化カリウム量の35質量%以下をクエン酸一カリウム、クエン酸三カリウム、グルコン酸カリウム、酒石酸水素カリウムから選ばれる有機酸の1種または2種以上の組み合わせで置換してなる前記[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法、
[7] 前記[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法で製造された調味梅干、
[8] 前記[7]に記載の調味梅干の梅肉を含有する食品、および
[9] 調味梅干の梅肉が、粉末、半練り、錠剤の形態である前記[8]に記載の食品、
に関する。
本発明の製造方法によれば、塩分を気にすることなく摂取でき、かつ梅の効能成分とともにカリウムおよび海水の微量ミネラルの補給剤として有用である調味梅干を提供することができる。また、本発明は、前記製造方法により得られる調味梅干の梅肉をそのまま利用した食品、あるいは粉末状、半練り状、または錠剤とした食品を提供することができる。
本発明の調味梅干の製造方法は、白干梅を調味液に浸漬して調味梅干を製造する方法において、調味液に粗製海水塩化カリウムを下記式(1):
Figure 2009268373
(式中、aは白干梅の塩分濃度(%)を表し、bは白干梅の塩化カリウム濃度(%)を表し、cは調味液の塩分濃度(%)を表し、dは調味液の塩化カリウム濃度(%)を表し、eは粗製海水塩化カリウムの塩分濃度(%)を表し、fは粗製海水塩化カリウムの塩化カリウム濃度(%)を表し、xは白干梅の重量を表し、yは調味液の重量を表し、zは添加する粗製海水塩化カリウムの重量を表す。)
で示される関係を満足する量で添加することを特徴とする調味梅干の製造方法である。
本発明に用いる白干梅としては、通常の食塩で塩漬した白干梅以外に、成熟梅を、(1)カリウム塩(例えば塩化カリウム等)を含む岩塩あるいは(2)食塩とカリウム塩を含む岩塩からなる混合塩、(3)食塩と粗製海水塩化カリウムからなる混合塩、(4)カリウム塩を含む岩塩と粗製海水塩化カリウムからなる混合塩、(5)食塩、カリウム塩を含む岩塩および粗製海水塩化カリウムからなる混合塩等の各種特殊塩に漬けて得られる白干梅であってもよい。前記特殊塩を用いる場合、成熟梅を混合塩に漬けて白干梅とするまでの期間は、通常の白干梅を製造する場合と同様で、通常30〜1年程度、好ましくは30〜60日程度である。白干梅は可食部と非可食部(種)とからなり、白干梅の重量は可食部と非可食部を合わせた白干梅全体の量を意味する。白干梅の塩分濃度および塩化カリウム濃度は、白干梅の可食部の塩分濃度および塩化カリウム濃度を意味する。脱塩していない白干梅は、通常塩分濃度約20〜24%であるが、塩分濃度が20〜24%の白干梅をそのまま用いた場合、Na/K比1以下を実現するには、多量の粗製海水塩化カリウムを含む調味液に漬けることになるので、調味液の量が少ないと液切り後梅表面にナトリウムおよびカリウムの塩が析出し、商品価値が劣るばかりでなく、風味も悪いものとなり、食用に不適になる。そのため、白干梅に対する調味液を重量比で2倍以上とする必要がある。
したがって、風味の悪化を避け、かつ必要以上の調味液の使用を避ける点から、白干梅は好ましくは塩分濃度を18%以下、より好ましくは16%以下、さらに好ましくは8〜14%に脱塩したものを使用するのが好ましい。脱塩方法は水中に浸漬、0.2%以下の食塩水に浸漬など種々の方法がとられるが、どのような方法をとっても良い。なお、本明細書中、塩分とは塩化ナトリウムを意味する。
本発明に用いる白干梅の塩分は、種を除いた果肉部分をホモジナイズし、ろ過後、一定容とし、モール法により測定した塩化ナトリウムの量を意味し、白干梅の塩分濃度は、前記で測定した塩化ナトリウム量の白干梅全体(種+可食部)に対する比率(%)をいう。
本発明に用いる調味液は、脱塩梅酢、醸造酢、甘味料、調味料、酸味料などで構成されるが、その含有比率は特に限定されず、商品により異なる。酸度は通常2〜5%程度、好ましくは2.2〜4.5%程度、より好ましくは2.5〜4%程度に調整する。酸度が2%以下では調味梅干の酸味が少なく、5%以上では酸味が増して、食用に適さない。Brixは通常18〜38%程度、好ましくはBrix24〜35%程度、より好ましくは26〜34%程度に調整する。Brix38%以上では、浸漬した白干梅への調味液の浸透が不十分となり、Na/K比1以下を実現し難くなる。Brixも18%以下では調味梅干が多量の調味液を吸うことになるが、液きり後、放置すると、離水を起こし、商品としての価値を失う。調味液の使用量は、白干梅の塩分に応じて変わるが、通常白干梅に対し重量比で約1.1〜2倍量使用する。1.1倍以下では浸漬が十分でなく、2倍以上では調味液の無駄な使用となる。
調味液の酸度は、中和滴定法で試料液を0.1モル/L水酸化ナトリウム標準液で中和し、そのアルカリ量によりクエン酸換算で示した酸の質量パーセント濃度である。調味液のBrixは糖度計(アタゴ(株)製)により測定し、ナトリウム量およびカリウム量は原子吸光分析法に従って測定した。
本発明に用いる粗製海水塩化カリウムは、海水をイオン交換膜法などで濃縮し、蒸発缶で濃縮して大部分の食塩を析出させた高温の母液を冷却することにより、塩化カリウムおよび塩化ナトリウムの混合物を析出させ、これをろ過機により分離して得られるもので、シルビナイトとも呼ばれる。粗製海水塩化カリウムを冷却析出させる場合、通常外気温度まで放置冷却させるが、夏季と冬季により、あるいは工程の状態により塩化カリウムの量が異なる。
本発明に用いる粗製海水塩化カリウムとしては、例えば、乾物表示で塩化ナトリウムおよび塩化カリウムの合計含有量が88%以上、塩化カリウムの含有量が約60%〜85%、硫酸カルシウムの含有量が約0.6〜1.3%、塩化マグネシウムの含有量が約0.7〜1.3%、塩化カルシウムの含有量が約0.4%のものが好ましく挙げられる。
調味梅干のNa/K比を1以下にするために、調味液に添加する粗製海水塩化カリウムの量(z)は、次式(1):
Figure 2009268373
(式中、aは白干梅の塩分濃度(%)を表し、bは白干梅の塩化カリウム濃度(%)を表し、cは調味液の塩分濃度(%)を表し、dは調味液の塩化カリウム濃度(%)を表し、eは粗製海水塩化カリウムの塩分濃度(%)を表し、fは粗製海水塩化カリウムの塩化カリウム濃度(%)を表し、xは白干梅の重量を表し、yは調味液の重量を表し、zは添加する粗製海水塩化カリウムの重量を表す。)
で示される関係を満足するzとして求めることができる。前記式(1)は、本発明者らが初めて見出したものであり、以下の式(3)から導きだしたものである。
Figure 2009268373
(式中、58.5は塩化ナトリウムの分子量、74.6は塩化カリウムの分子量を表し、23はナトリウムの原子量、39.1はカリウムの原子量を表し、記号は前記と同一意味を有する。)
上記式(3)において、左辺は、塩化ナトリウムの量に相当し、右辺は塩化カリウムの量に相当し、イコール(=)の場合、Na/K比が1となり、本発明の方法で得られ得る調味梅干の可食部のNa/K比の実測値とよく一致する。
したがって、調味液に添加する粗製海水塩化カリウムの量を式(1)で算出されるイコール(=)の場合のzの値以上とすることにより、Na/K比が1以下の調味梅干を製造できることになる。
例えば、五訂日本食品標準成分表によると、白干梅の梅干では可食部100g当りナトリウム8700mg、カリウム490mgとあり、調味液の主要成分である醸造酢または穀物酢では100g当り、ナトリウム6mg、カリウム4mgとあるので、上記式中、調味液の塩分および塩化カリウムの量は無視できるものであり、白干梅の可食部のカリウムの量もナトリウムの量に比べて微量であるため、無視することができる。したがって、塩分12%の白干梅(1kg)、塩分がほとんどない調味液(1.6kg)、および塩化カリウム70%および塩化ナトリウム20%を含有する粗製海水塩化カリウムを使用する場合、上記式(3)にあてはめ、調味液の塩分および塩化カリウムの量を無視したとすると、
Figure 2009268373
となり、添加する粗製海水塩化カリウムの重量(z)は164g以上となる。
梅は15〜20質量%の種をもっており、例えば、可食部の塩分濃度12%の白干梅の場合、白干梅全体に対する塩分濃度に換算すると、12%未満となるが、本発明においては、前記の通り、可食部の塩分濃度(%)は白干梅の塩分濃度(%)とみなして差し支えないこと、および、白干梅と調味液間でナトリウムとカリウムの変換がいかになされるかが課題となるが、式(1)で表した量で粗製海水塩化カリウムを添加することにより製品の梅干の可食部のナトリウム、カリウム量が残った調味液の量とほぼ同じであることに、本発明の特徴がある。
Na/K比1以下を実現する上で実用的な粗製海水塩化カリウムの使用量は、白干梅の種類、品質間の差異を考慮して式(1)においてイコール(=)の場合に算出される粗製海水塩化カリウム量の通常1.0倍〜3.0倍程度、好ましくは1.1〜1.5倍程度である。なお、調味液が塩分を含んでいる場合は、それに応じて、式(1)から粗製海水塩化カリウムを算出すればよい。塩化カリウムを含む岩塩で塩漬けされた白干梅を使用する際には、該白干梅の塩化ナトリウム、塩化カリウムの量を算出して、粗製海水塩化カリウムを添加すればよい。
調味梅干の製造において、粗製海水塩化カリウムに換えて塩化カリウムまたは有機酸カリウム塩を調味液に添加してもNa/K比1以下を実現できる。しかしながら、使用する粗製海水塩化カリウムの全量を塩化カリウムのみに置換した場合、苦味、えぐ味がきつく食用に適さない。粗製海水塩化カリウムに含まれる塩化ナトリウム、塩化カリウム以外の硫酸カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムやその他の無機塩が塩化カリウムの苦味、えぐ味を消し、食用に好適な美味な調味梅干を製造することができるためである。粗製海水塩化カリウムの一部を塩化カリウムに換えて、塩化カリウムを調味液に添加する場合、塩化カリウムの添加量は、粗製海水塩化カリウム中の塩化カリウム量の通常約70質量%以下、好ましくは約40質量%以下、より好ましくは約30質量%以下である。粗製海水塩化カリウム中の塩化カリウム量の70質量%以上の塩化カリウムを添加すると調味梅干の風味に影響を及ぼすためである。
また、粗製海水塩化カリウムの一部を有機酸カリウムに換えて、有機酸カリウムを調味液に添加することもできる。前記有機酸カリウム塩としては、クエン酸一カリウム、クエン酸三カリウム、グルコン酸カリウム、酒石酸水素カリウムなどが挙げられ、1種または2種以上を組み合わせで用いてもよい。有機酸カリウム塩を調味液に添加する場合、有機酸カリウム塩の添加量は、粗製海水塩化カリウム中の塩化カリウム量の通常約35質量%以下、好ましくは約30質量%以下、より好ましくは約20質量%以下である。粗製海水塩化カリウム中の塩化カリウム量の35質量%以上の有機酸カリウム塩を添加すると調味液の酸度に影響し、醸造酢などで酸度を調整しても調味梅干の風味を損ない、食用に適さなくなる。
上記の白干梅を調味液に浸漬する時間は、通常10〜30日程度、好ましくは14〜25日程度である。浸漬後、調味液から出し、液切りをすることにより調味梅干が完成する。
本発明の製造方法により得られる調味梅干は、そのまま食品として利用できるが、調味梅干の梅肉を利用して、調味梅肉、梅みそ、梅肉シート、梅ドレッシング等の食品とすることができる。
本発明の製造方法により得られる調味梅干の梅肉を利用することにより、塩分を気にせず食べられ、カリウムや海水の微量ミネラルの補給源となるため、新たな機能性食品として展開することができる。これらの食品も本発明に含まれる。
Na/K比1以下の調味梅干の梅肉を乾燥粉末化し、単独もしくは他の機能性食品素材と合わせて粉末状、半練り状、錠剤化すると新規の機能性食品を提供することとなる。これらの食品も本発明に含まれる。
以下に実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、本発明には以下の実施例の他にも、更には上記の具体的記述以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて種々の変更修正、改良を加え得るものを含む。
[実施例1]
白干南高梅を水中で脱塩し、可食部の塩分濃度が10%である脱塩梅干1kgを表1記載の組成の調味液(酸度3.5%、Brix31%)1.6kgに浸漬した。3週間常温で浸漬した後液きりをし、調味梅干1.0kgを得た(以下、実施例品1という。)。なお、用いた粗製海水塩化カリウムは、塩化カリウム70%、塩化ナトリウム20%、水分5.8%、硫酸カルシウム1.3%、塩化マグネシウム1.3%、塩化カルシウム0.4%であった。調味液に含まれる塩分および塩化カリウム濃度並びに白干梅に含まれる塩化カリウムは無視できる程微量であったため、無視して式(1)から計算した結果、粗製海水塩化カリウムは136g以上必要であることがわかった。本実施例では、下記表1に示されるように、粗製海水塩化カリウムは164g(1.6kg×10.25重量%)使用した。
Figure 2009268373
[実施例2〜7]
白干南高梅を水中で脱塩し、塩分8%の脱塩梅干1kgを実施例1の表1の調味液(酸度3.5%、Brix31%)1.6kgに浸漬した(実施例2)。さらに、前記調味液において、粗製海水塩化カリウムの1部を、塩化カリウム、クエン酸一カリウム、クエン酸三カリウムまたはグルコン酸カリウムで置き換えたものに浸漬した(実施例3〜7)。3週間後、液きりして各実施例の調味梅干を得た(以下、実施例品2〜7という。)。各実施例の粗製海水塩化カリウム、塩化カリウム、クエン酸一カリウム、クエン酸三カリウムまたはグルコン酸カリウムの使用量(重量%)を表2に示す。なお、調味液に含まれる塩分および塩化カリウム濃度並びに白干梅に含まれる塩化カリウムは実施例1と同様に無視して、式(1)から計算した結果、粗製海水塩化カリウムは、それぞれ109g(実施例2)、76.3g(実施例3)、87.2g(実施例4)、98.1g(実施例5)、98.1g(実施例6)、98.1g(実施例7)以上必要であることがわかった。下記表2から使用した粗製海水塩化カリウムは164g(実施例2)、115g(実施例3)、131g(実施例4)、148g(実施例5)、148g(実施例6)、148g(実施例7)であった。
Figure 2009268373
粗製海水塩化カリウムは、塩化ナトリウム20質量%、塩化カリウム70質量%として計算した。また、塩化カリウム、クエン酸一カリウム、クエン酸三カリウム、グルコン酸カリウムは無水物として換算した。
[比較例1]
白干南高梅を水中で脱塩し、塩分8%の脱塩梅干1kgを得て、粗製海水塩化カリウム10.25重量%の代わりに塩化カリウム7.18重量%を用いる以外は実施例1の表1と同様の調味液(酸度3.5%、Brix31%)1.6kgに浸漬した。3週間後、液きりして調味梅干を得た(以下、比較品1という。)。
[試験例1]
実施例1で得た調味梅干の可食部100g、残った調味液100g当りのナトリウム量とカリウム量を原子吸光分析法により測定し、比較した。参考例として、五訂日本食品標準成分表に記載の調味梅干のナトリウムとカリウムの量を記載した(以下、参考品という。)。結果を表3に示す。
Figure 2009268373
本発明の調味梅干は、Na/K比1以下であり、風味も優れていた。
本発明の調味梅干は、参考品と比べNa/K比の差は歴然としており、また、調味梅干の可食部と調味残液のナトリウム、カリウム量がほぼ等しいことから、本発明の条件下ではこれらの塩類が平衡に達していることがわかる。
上記非特許文献1(厚生労働省策定2005年版日本人の食事摂取基準)では、減塩とともにカリウムの摂取を促しているが、本発明品がカリウムの補給源になるばかりでなく、海水の微量ミネラルの供給源となっていることから、優れた機能性食品素材であることを明確に示している。
[試験例2]
実施例2〜7および比較例1で得た調味梅干について、得られた調味梅干の可食部100g当りのナトリウム量とカリウム量を原子吸光分析法により測定し、比較した。結果を表4に示す。
Figure 2009268373
以上の結果から、調味梅干の可食部の塩分濃度は4%〜4.4%であるが、Na/K比は1以下であるので、この調味梅干は塩分を気にせず食べられるものであり、風味も優れていた。また、粗製海水塩化カリウムの一部を塩化カリウム単独もしくは有機酸カリウム塩との併合で代替しても良く、有機酸カリウム塩のみで代替しても良いことを示している。なお、塩分は低いが塩化カリウムを含むことから、実施例2〜7のものは保存性でも問題がなかった。
一方、比較例のように粗製海水塩化カリウムの代わりに塩化カリウム単体を用いたものではNa/K比は1以下であるが、苦味、えぐ味が伴い、食用には不適であった。
本発明の製造方法により得られる調味梅干は、Na/K比1以下を実現した風味の良い調味梅干としてそのままでも機能性食品として利用されるばかりでなく、該調味梅干から得られる梅肉を種々加工した食品にも有用である。

Claims (9)

  1. 白干梅を調味液に浸漬して調味梅干を製造する方法において、調味液に粗製海水塩化カリウムを下記式(1):
    Figure 2009268373
    (式中、aは白干梅の塩分濃度(%)を表し、bは白干梅の塩化カリウム濃度(%)を表し、cは調味液の塩分濃度(%)を表し、dは調味液の塩化カリウム濃度(%)を表し、eは粗製海水塩化カリウムの塩分濃度(%)を表し、fは粗製海水塩化カリウムの塩化カリウム濃度(%)を表し、xは白干梅の重量を表し、yは調味液の重量を表し、zは添加する粗製海水塩化カリウムの重量を表す。)
    で示される関係を満足する量で添加することを特徴とする調味梅干の製造方法。
  2. 粗製海水塩化カリウムの添加量が、下記式(2):
    Figure 2009268373
    (式中、aは白干梅の塩分濃度(%)を表し、bは白干梅の塩化カリウム濃度(%)を表し、cは調味液の塩分濃度(%)を表し、dは調味液の塩化カリウム濃度(%)を表し、eは粗製海水塩化カリウムの塩分濃度(%)を表し、fは粗製海水塩化カリウムの塩化カリウム濃度(%)を表し、xは白干梅の重量を表し、yは調味液の重量を表し、zは添加する粗製海水塩化カリウムの重量を表す。)
    で示される関係を満足する量である請求項1記載の製造方法。
  3. 白干梅が、成熟梅を(1)食塩および岩塩から選ばれる少なくとも1種、または(2)食塩および塩化カリウムを含む岩塩から選ばれる少なくとも一種と、粗製海水塩化カリウムからなる混合塩に漬けて得られる白干梅であることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 調味液が酸度2〜5%、Brix18〜38%である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 粗製海水塩化カリウム中の塩化カリウム量の70質量%以下を、塩化カリウムで置換してなる請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 粗製海水塩化カリウム中の塩化カリウム量の35質量%以下をクエン酸一カリウム、クエン酸三カリウム、グルコン酸カリウム、酒石酸水素カリウムから選ばれる有機酸の1種または2種以上の組み合わせで置換してなる請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法で製造された調味梅干。
  8. 請求項7に記載の調味梅干の梅肉を含有する食品。
  9. 調味梅干の梅肉が、粉末、半練り、錠剤の形態である請求項8に記載の食品。
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