JP2009268371A - 薬剤担持体 - Google Patents

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【課題】表裏2枚の地組織と、該地組織を連結する連結糸からなる繊維立体構造体に、殺虫、殺菌、消臭、芳香等の薬剤を含浸させた薬剤担体において、安定的に薬剤の揮散を保持し、繊維等のほつれのない薬剤担体を提供する。
【解決手段】表裏2枚の地組織と、該地組織を連結する連結糸より構成された繊維立体構造体が任意形状に切断されてなる薬剤担体であって、その切断面における表裏2枚の地組織繊維が融着されて該繊維立体構造体の切断周囲の50%以上において、表裏の地組織が直接接合された薬剤担体とすることで、安定的に薬剤の揮散を保持し、繊維等のほつれを無くす。
【選択図】図1

Description

本発明は、表裏2枚の地組織と、該地組織を連結する連結糸からなる繊維立体構造体に、殺虫、殺菌、消臭、芳香等の薬剤を含浸させた薬剤担体に関し、詳しくは安定的に薬剤の揮散を保持し、繊維等のほつれのない薬剤担体に関する。
従来、表裏2枚の地組織を連結糸にて一体化された繊維立体構造体からなる薬剤担体は、使用状況に合わせ、繊維立体構造体を円形、四角形、その他の任意の形状に切断され使用され、表裏2枚の地組織の間に薬剤を担持させるようにしたものであるが、従来の薬剤担体では、切り出された表裏地組織の間隔が、その形状全体において一定であり、末端部も一定の間隔を保つオープン組織体であった。
例えば、先に本出願人らが提案した特開2006−25656号公報(特許文献1)には、三次元方向にメッシュ状を形成している通気層の下側面又は上下両側面に、毛管現象によって薬剤液を保持できる程度の隙間を有する薬剤保持層を設けると共に、通気層におけるメッシュ状の隙間の程度が、薬剤保持層における隙間の程度よりも大きくした上で、通気層と薬剤保持層とを接合させた構造体であって、かつ回転駆動の対象となる薬剤担体が開示されているが、この薬剤担体にあっても、上下面の間隔が、その形状全体にわたって一定であり、末端部も一定の間隔を有するオープン組織体であることに変わりがない。
しかしながら、かかる従来の薬剤担体では、取り扱い中若しくは使用中に表裏の地組織及びもしくは連結糸の一部が離脱したり、ほつれが生じ、繊維や薬剤等が周囲に飛散したり、特に、薬剤担体が回転するタイプの場合、ほつれ部が回転部分に接触し、回転不良を生じさせたり、含浸させた薬剤が、回転による遠心力等で周縁末端部から外部ヘ飛散してしまい、安定的な揮散状態が得られなかった。
特開2006−25656号公報
そこで、本発明は、薬剤の安定的な揮散状態を保持し、かつ繊維等のほつれの生じない薬剤担体を提供することを課題とする。
本発明の薬剤担体では、以下の手段によって、前述の課題が達成される。
(1)表裏2枚の地組織と該地組織を連結する連結糸より構成された繊維立体構造体を任意形状に切断してなる薬剤担体であって、該繊維立体構造体の切断部周縁の50%以上の部分において、表裏の地組織が互いに接合していることを特徴とする薬剤担体。
(2)前記繊維立体構造体が、該繊維立体構造体を構成する表裏2枚の地組織のそれぞれの構成繊維の少なくとも一部が熱可塑性合成繊維であり、地組織はメッシュ状又はプレーン状で、2枚の地組織は同一もしくは異なる組み合わせからなり、該繊維立体構造体が任意形状に切断され、その切断部で表裏の地組織の少なくとも一部が前記熱可塑性合成繊維の融着により互いに接合されていることを特徴とする前記(1)の薬剤担体。
(3)前記繊維立体構造体の厚みが、10mm以下であることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の薬剤担体。
本発明の薬剤担体によれば、任意の形状に切り出された繊維立体構造体の周縁末端の大部分において、表裏の地組織が直接接合されているため、取り扱い中に表裏地組織及び/もしくは連結糸の一部が離脱したり、ほつれが生じたり、繊維や薬剤等が周囲に飛散することなく、また、薬剤担体が回転するタイプの場合、回転不良を生じさせたり、繊維立体構造体中に含浸させた薬剤が末端部から飛散することなく、安定的な揮散状態を保持することができる。
以下、本発明の繊維立体構造体からなる薬剤担体の詳細を説明する。
本発明の薬剤担体を構成する繊維立体構造体は、表裏2枚の地組織と、該地組織を連結する連結糸とよりなる繊維立体構造体であり、立体編地もしくは立体織物に分類されるが、本発明ではそのいずれであってもよい。この立体構造編地は、相対する2列の針床を有する編み機で編成され、ダブルラッシェル編機、ダブルトリコット編機、ダブル丸編機等で編成できる。編機のゲージは9ゲージから28ゲージが使用される。一方、立体構造織物は、モケット織機等により、製織される。
ここで、表裏の地組織を構成する繊維としては、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリアクリル繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリアリレート繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリケトン繊維、アラミド繊維等の熱可塑性合成繊維、綿、麻、羊毛等の天然繊維、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、リヨセル等の再生繊維、カーボン繊維、ガラス繊維等任意の繊維が使用できるが、表裏の2枚の地組織それぞれの少なくとも一部に熱可塑性合成繊維が含まれることが望ましい。なかでも、ポリエステル繊維が好ましく、かかるポリエステル繊維には、ポリ乳酸繊維やステレオコンプレックスポリ乳酸繊維が含まれる。
立体編地もしくは立体織物を構成する各繊維の断面形状は、円形であっても、異型断面、中空形であってもよい。また、その形態としては、マルチフィラメントでもモノフィラメントでも、また、それらの複合体でもよい。マルチフィラメントは、全繊度50〜2,000dtex、単糸繊度0.1〜20dtexのものが用いられる。モノフィラメントは、繊度10〜500dtexのものが用いられる。これらの繊維からなる糸条は、未加工糸でもよく、仮撚加工糸、タスラン糸等の各種加工糸でもよい。また紡績糸、撚糸もしくはそれらの複合体を用いることも可能である。
連結糸は、前記の表裏地組織の構成糸と同様の各種繊維が使用でき、単独または組み合わせでもよく、モノフィラメントでも、マルチフィラメントでもよいが、形態保持の観点から、モノフィラメントが主に使用される。表裏2枚の地組織は、メッシュ組織でもプレーン組織でも、またこれらの組み合わせでもよい。
なお、このような繊維立体構造体は、例えば、特開2001−234456号公報、特開2003−278060号公報、特開2004−183118号公報、特開2004−278060号公報等に記載のような三次元編物であっても差し支えない。
製編織された繊維立体構造体の厚み、すなわち該構造体の表面と裏面との間隔は、10mm以下(より好ましく2〜10mm)であることが望ましい。したがって、製編織時に、該繊維立体構造体における表裏の地組織同士の間隔を前記範囲に設定するのがよい。
製編織された繊維立体構造体は、通常の精練、乾燥、熱処理を行い、仕上げを行う。薬剤担体とするには、この繊維立体構造体を、円形、四角形、ドーナツ形、羽車形、扇風機形等の任意の形状に切断する。その形状や大きさは特に限定されないが、小型の薬剤揮散装置に用いる目的で円形(円盤状)に切り抜く場合は、外径を3〜5cm程度とするのが適当である。
切断方法としては、熱エネルギーを利用した加熱工具による切断、超音波による切断、炭酸ガス、ヤグレーザー等の光レーザーによる切断、ウオータージェットによる切断等がある。
本発明の薬剤担体は、切断部の周縁(切断面)の少なくとも50%の部位において、表裏組織が直接接合されている。そのような薬剤担体とするには、切断と同時に切断面における表裏地組織の少なくとも一部の繊維を軟化又は溶融させて表裏組織を全面的又は部分的に融着させる方法が採用される。このような切断方法としては、(1)所望形状の金型を使用して、金型を加熱し、繊維立体構造体の上若しくは下にセットし、加圧下で溶着(融着)と同時にカットを行う方法、あるいは(2)金型は加熱せず、超音波溶着機に金型をセットし、その上に繊維立体構造体を載せ、上からホーンと呼ばれる工具に超音波振動を集中させて、超音波振動エネルギーよる溶着(融着)カットを行う方法等が採用される。
この中でも、工程の簡便さから、前記(2)の超音波溶着カット方法が好ましい。この方法で使用する超音波溶着機としては、日本エマソン株式会社、精電舎電子工業株式会社、HERRMANN社等の製品である、超音波溶着機が適当である。溶着(融着)カットの条件は、出力1KWから2KWの溶着機を使用し、圧力3〜8KPa、ホールド時間0.1〜0.5秒の条件で立体編地の表裏組織の接合がされる。
このようにカットすると、該繊維立体構造体の切断周縁部の50%以上の部位において、表裏の地組織の繊維が直接に接合される。このような薬剤担体では、該薬剤担体が回転して使用される場合、繊維立体構造体に含浸された薬剤は、回転による遠心力で、繊維立体構造体を構成する糸条に沿って薬液は移動し、切断面の表裏の地組織の間隔が開いているとそのまま担体の外へ飛散してしまうが、表裏二面の繊維立体構造体が直接接合されていると、薬液はその接合部に留まり、有効に揮散し、安定的な効果をもたらす。また、切断とは別の接着工程が不要であり、かつ接着剤を使用しないので、コスとトが低下し、製造効率も向上する。
以下、本発明の実施例と比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、ここで言う「接合率」とは、円形に切断した立体編地の周縁部の円周方向の長さに対する表面組織と裏面組織との溶着部の合計長の比率である。
[実施例1〜3]
14ゲージのダブルラッシェル機にて繊維立体構造編地を作成し、はメッシュ組織で、ポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント糸280dtex/48filのインアウト2本通し、裏組織はプレーン組織でポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント糸280dtex/48filのフルセット1本通し、密度は21コース/インチ、14ウエール/インチにて、5mmの厚さの立体編地を作成した。なお、該立体編地の表組織と裏組織との連結糸は、ポリエチレンテレフタレートモノフィラメント糸(240dtex)である。
該編地を、通常の精練、熱セット後、図2に示す超音波溶着機ホーンと金型6からなる超音波溶着機を用いて、立体編地5を溶断し、図1に示すような中心部に空洞を有する直径5cmの円形に、溶着カットした。ここで、図1において、符号1は通気層、符号2は薬剤保持層、符号3は、表裏組織溶着部である。この際、出力1.2KWの溶着機(精電舎電子工業株式会社製)、を使用し、圧力3〜8KPa、ホールド時間0.1〜4.0秒の条件で、溶着時間、圧力を変更して、種々の接合率のサンプルを作成した。そして、カットされた円盤形の立体編地の担体を、ケーシングにいれ、該担体に殺虫剤であるピレスロイド系薬剤を1cc滴下したカートリッジを準備した。電池で回転する携帯用蚊取り器に、該カートリッジをセットし、室温で120時間回転させ、ほつれの有無、カット端部からのピレスロイド系薬剤の液飛散の有無及び揮散安定性について試験を行い、その結果を表1に示した。
なお、実施例1では接合率が50%、実施例2では接合率が70%、実施例3では接合率が100%であり、これらの接合率は、接合率100%の物を作成し接合部分を切断することにより調整した。
Figure 2009268371
注釈:ほつれ○=ほとんどほつれはみられない
[比較例1]
実施例1と同一の立体編地を使用し、トムソンカッターにて同一サイズの円形に打ち抜き、図3に示すような、通気層1、薬剤保持層2を有する薬剤担体を作成し、同様の手順で試験を行った。このトムソンカッターによる打ち抜きの際、接合率は0%であり、カット面において、繊維のほつれが生起した。その結果を表2に示した。
[比較例2]
実施例1と同様に接合率100%の物を作成し接合部分を切断して接合率が30%の薬剤担体を作成し、実施例1と同様の手順で試験を行った。結果を表2に示す。
Figure 2009268371
注釈:ほつれ△:一部ほつれがみられる。
注釈:ほつれ×:ほつれが多く発生する。
この実施形態によれば、熱可塑性合成繊維による溶着により、カット端部からのほつれや連結糸の脱落がなくなり、また薬剤の端部からの液飛散も防止され、安定した揮散結果が得られる。
本発明の一実施形態を示す斜視図である。 超音波溶着機を用いて本発明の薬剤担体を製造する場合のカット工程の1例を示す簡略化された側面図である。 従来の薬剤担体の一実施形態を示す斜視図である。
符号の説明
1.表地組織
2.裏地組織
3.表裏組織溶着部
4.超音波溶着機のホーン
5.立体編地
6.金型

Claims (3)

  1. 表裏2枚の地組織と該地組織を連結する連結糸より構成された繊維立体構造体を任意形状に切断してなる薬剤担体であって、該繊維立体構造体の切断部周縁の50%以上の部分において、表裏の地組織が互いに接合していることを特徴とする薬剤担体。
  2. 前記繊維立体構造体が、該繊維立体構造体を構成する表裏2枚の地組織のそれぞれの構成繊維の少なくとも一部が熱可塑性合成繊維であり、地組織はメッシュ状又はプレーン状で、2枚の地組織は同一もしくは異なる組み合わせからなり、該繊維立体構造体が任意形状に切断され、その切断部で表裏の地組織の少なくとも一部が前記熱可塑性合成繊維の融着により互いに接合されていることを特徴とする請求項1記載の薬剤担体。
  3. 前記繊維立体構造体の厚みが、10mm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の薬剤担体。


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