JP2009263749A - 酸素富化雰囲気切削加工用の機械構造用鋼 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C:0.05〜1.2質量%、Si:0.03〜2.0質量%、Mn:0.2〜1.8質量%、Cr:0.1〜3.0質量%、Al:0.06〜0.5質量%、N:0.002〜0.02質量%、O:0.003質量%以下を含有し、さらに、Ca:0.0005〜0.01質量%、Mg:0.0001〜0.005質量%のうち1種以上を含有し、PおよびSを各0.03質量%以下に規制し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、前記Cr,Al,Oの各含有量(質量%)を、[Cr]、[Al]、[O]として表したとき、(0.1×[Cr]+[Al])/[O]≧150を満足することを特徴とする機械構造用鋼であり、酸素濃度が21〜40%の雰囲気で切削加工される。
【選択図】なし
Description
本発明に係る機械構造用鋼は、C:0.05〜1.2質量%、Si:0.03〜2.0質量%、Mn:0.2〜1.8質量%、Cr:0.1〜3.0質量%、Al:0.06〜0.5質量%、N:0.002〜0.02質量%、O:0.003質量%以下を含有し、さらに、Ca:0.0005〜0.01質量%、Mg:0.0001〜0.005質量%のうち1種以上を含有し、PおよびSを各0.03質量%以下に規制し、残部がFeおよび不可避的不純物で構成されるものである。
(0.1×[Cr]+[Al])/[O]≧150
以下に、本発明に係る機械構造用鋼を構成する各成分の含有量の数値範囲およびその数値範囲の限定理由について説明する。
Cは、機械構造用鋼の強度を向上させる効果を有し、機械構造用部品に必要な芯部の硬さを確保するために有効な元素である。機械構造用鋼の硬さを十分なものとするため、C含有量は0.05質量%以上とされ、0.10質量%以上が好ましく、0.15質量%以上がさらに好ましい。一方、Cが過剰に添加されると、硬さが過剰となって被削性や靭性が低下する。したがって、C含有量は1.2質量%以下とされ、1.0質量%以下が好ましく、0.8質量%以下がさらに好ましい。
Siは、脱酸効果を有し、機械構造用鋼の酸化物系介在物を低減させて内部品質を向上させる。この効果を十分なものとするため、Si含有量は0.03質量%以上とされ、0.04質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がさらに好ましい。また、FeよりもSiにOが結合し易いため、Siは断続切削時の工具の酸化摩耗を抑制する効果を有する。一方、Siが過剰に添加されると、浸炭時に異常組織が生成したり、熱処理(焼入れ)後の残留オーステナイト(残留γ相)の量が増大して浸炭相に十分な硬さが得られない。したがって、Si含有量は2.0質量%以下とされ、1.8質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がさらに好ましい。
Mnは、焼入れ性を向上させる効果を有し、焼入れ後の機械構造用鋼の硬さを向上させる。この効果を十分なものとするため、Mn含有量は0.2質量%以上とされ、0.4質量%以上が好ましく、0.6質量%以上がさらに好ましい。また、FeよりもMnにOが結合し易いため、Mnは断続切削時の工具の酸化摩耗を抑制する効果を有する。一方、Mnが過剰に添加されると、焼入れ性が過剰となって、焼ならし後でも過冷組織が生成して被削性を低下させる。したがって、Mn含有量は1.8質量%以下とされ、1.6質量%以下が好ましく、1.4質量%以下がさらに好ましい。
Crは、焼入れ性を向上させる効果を有し、焼入れ後の機械構造用鋼の硬さを向上させる。この効果を十分なものとするため、Cr含有量は0.1質量%以上とされ、0.3質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましい。また、FeよりもCrにOが結合し易いため、Crは断続切削時の工具の酸化摩耗を抑制する効果を有する。一方、Crが過剰に添加されると、焼入れ性が過剰となって過冷組織が発達するとともに、粒界に粗大な炭化物が生成して被削性が劣化し、また、焼入れ後の硬さが過剰となって靭性が低下する。したがって、Cr含有量は3.0質量%以下とされ、2.5質量%以下が好ましく、2.0質量%以下がさらに好ましい。
Alは、強い脱酸効果を有し、機械構造用鋼の内部品質を向上させる。また、AlはNと結合してAlNを形成し、このAlNが浸炭処理において結晶粒の異常成長を抑制する効果を有する。また、FeよりもAlにOが結合し易いため、Alは断続切削時の工具の酸化摩耗を抑制する効果を有する。そして、連続切削においては、酸素富化雰囲気とすることで、Alを含む保護膜を工具の表面に形成して工具摩耗を抑制できる。これらの効果を十分なものとするため、Al含有量は0.06質量%以上とされ、0.08質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましい。一方、Alが過剰に添加されると、アルミナ(Al2O3)が過剰に形成されて硬質介在物となる割合が増加して被削性が低下したり、浸炭における熱処理(焼入れ)後の残留オーステナイト(残留γ相)の量が増大して浸炭相に十分な硬さが得られない。したがって、Al含有量は0.5質量%以下とされ、0.45質量%以下が好ましく、0.4質量%以下がさらに好ましい。
N(窒素)は鋼の溶融工程で不可避的に混入する元素である。Nは、断続切削における機械構造用鋼の新生面の酸化反応を抑制する効果を有し、断続切削における工具の寿命を延ばす。また、NはAlに結合してAlNを形成し、このAlNが浸炭処理において結晶粒の異常成長を抑制する効果を有する。これらの効果を十分なものとするため、N含有量は0.002質量%以上とされ、0.003質量%以上が好ましく、0.004質量%以上がさらに好ましい。一方、Nが過剰に添加されると、時効硬化によって延性および靭性が低下する。したがって、N含有量は0.02質量%以下とされ、0.015質量%以下が好ましい。
Ca,Mgは、それぞれがアルミナ等の硬質介在物を軟質化させる作用があるので、硬質介在物による工具摩耗を抑制する。また、Ca,Mgは、それぞれがMnS介在物を球状化する作用があるので、このMnS介在物による靭性の劣化を抑制する。これらの効果を十分なものとするため、Ca含有量は0.0005質量%以上とされ、0.0007質量%以上が好ましく、0.001質量%以上がさらに好ましい。同様に、Mg含有量は0.0001質量%以上とされ、0.0002質量%以上が好ましい。Ca,Mgは、いずれか1種のみ前記それぞれの量を含有していれば前記工具摩耗を抑制する効果を得られ、また、2種共に含有していてもよい。さらに、Ca,Mgは、どちらもOと結合し易いため、断続切削時の酸化摩耗を抑制する効果を有する。一方、Ca,Mgは、どちらも過剰に添加されると、CaO,MgO等の介在物が増大して、これらの介在物により延性および靭性が低下する。したがって、Ca含有量は0.01質量%以下とされ、0.009質量%以下が好ましく、0.008質量%以下がさらに好ましい。同様に、Mg含有量は0.005質量%以下とされ、0.004質量%以下が好ましく、0.003質量%以下がさらに好ましい。
Pは鋼に不可避的に含まれる元素(不純物)である。Pは、熱間加工時の割れを助長するので可能な限り低減されることが好ましい。したがって、P含有量は0.03質量%以下とされ、0.025質量%以下が好ましく、0.02質量%以下がさらに好ましい。
Sは鋼に不可避的に含まれる元素(不純物)である。Sは、被削性を向上させる効果を有するが、一方で、延性および靭性を低下させる。さらに、SはMnと反応してMnS介在物を形成する。この介在物が圧延時に圧延方向に伸展することにより、靭性が劣化する。したがって、S含有量は0.03質量%以下とされ、0.025質量%以下が好ましく、0.02質量%以下がさらに好ましい。
O(酸素)は鋼の溶融工程で不可避的に混入する元素である。O含有量が過剰になると、粗大な酸化物系介在物が生成して、この酸化物系介在物により被削性や延性、靭性、鋼の熱間加工性が低下する。したがって、O含有量は0.003質量%以下とされ、0.002質量%以下がさらに好ましい。
(0.1×[Cr]+[Al])/[O]≧150
Moは、鋼に固溶して焼入れ性を確保し、不完全焼入れ組織の生成を抑制する効果を有し、Mo含有量増加に伴いこの効果が大きくなる。この効果を得るために、Mo含有量は0.005質量%以上が好ましく、0.008質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上がさらに好ましい。一方、Moが過剰に添加されると、焼入れ性が過剰となって、焼ならし後でも過冷組織が生成して被削性が低下する。したがって、Mo含有量は1.0質量%以下とされ、0.9質量%以下が好ましく、0.8質量%以下がさらに好ましい。
機械構造用鋼の中でも特に肌焼鋼は、通常、表面硬化のために浸炭処理が施される。この浸炭処理時に、処理温度および処理時間、加熱速度等によっては異常粒成長が発生する場合がある。Ti,Nb,Vは、この異常粒成長を防止する効果を有するので、これらの元素を添加することが有効である。この効果を得るために、Ti,Nb,Vの各含有量は0.001質量%以上が好ましく、0.002質量%以上がさらに好ましい。一方、これらの元素が過剰に添加されると、硬質炭化物が生成して被削性が劣化する。したがって、Ti,Nbの各含有量は0.2質量%以下とされ、0.15質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましい。同様に、V含有量は0.5質量%以下とされ、0.4質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がさらに好ましい。
Bは、前記Ti,Nb,Vと同様に、浸炭処理時の異常粒成長を防止する効果を有する。この効果を得るために、B含有量は0.0001質量%以上が好ましく、0.0003質量%以上がより好ましく、0.0005質量%以上がさらに好ましい。一方、Bが過剰に添加されると、硬質炭化物が生成して被削性が劣化する。したがって、B含有量は0.005質量%以下とされ、0.003質量%以下が好ましく、0.001質量%以下がさらに好ましい。
CuおよびNiは、焼入れ性を向上させる効果を有し、焼入れ後の機械構造用鋼の硬さを向上させる。さらに、CuおよびNiの含有量増加に伴いこの効果が大きくなる。この効果を得るために、Cu,Niの各含有量は0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がさらに好ましい。一方、これらの元素が過剰に添加されると、焼入れ性が増大して過冷組織が生成し、延性および靭性が低下する。したがって、Cu,Niの各含有量は5.0質量%以下とされ、4.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以下がさらに好ましい。
本発明に係る機械構造用鋼は、酸素濃度21%以上の雰囲気、すなわち、大気またはそれを超える酸素濃度の雰囲気(酸素富化雰囲気)で切削されるものとする。切削雰囲気中の酸素が高濃度にされることで、機械構造用鋼中のAl,N,Ca,Sが工具の表面に付着、結合して工具の保護膜となり、工具を構成する材料である主要合金中の元素が切屑中に拡散することによる工具の磨耗が抑制される。また、前記酸化反応により切削温度が上昇するので、機械構造用鋼の表面が工具に凝着し難くなって、工具の凝着磨耗が抑制される効果も付与される。切削雰囲気の酸素濃度は、その増加に伴って前記の効果が顕著になるため、23%以上が好ましく、25%以上がさらに好ましい。一方、切削雰囲気中の酸素が過剰に高濃度であることは安全面の問題を生じるため、切削雰囲気の酸素濃度は40%以下とされ、38%以下が好ましく、36%以下がさらに好ましい。
表1に示される化学成分組成の鋼150kgが、真空誘導炉で溶解され、上面:φ245mm、下面:φ210mm×高さ480mmのインゴットに鋳造された。このインゴットは、1200℃×3hr程度でソーキングされた後、1100℃×1hr程度で、150mm角×長さ680mmの四角材に鍛造されて、長さ100mm程度に切断された。この切断された四角材は、1100℃×1hr程度で、厚さ30mm×幅155mmの板材およびφ80mmの丸棒材に、それぞれ熱間鍛造された。そして、板材は長さ100mmに、丸棒材は長さ300mmに、それぞれ切断された。これらの板材および丸棒材は、焼ならし(900℃×2hrの熱処理後、放冷)されて、供試材(実施例1〜17、比較例18〜35)に作製された。作製された供試材で、以下の測定および評価が行われた。Cr含有量の1/10とAl含有量との和の、O含有量に対する比[A]=(0.1×[Cr]+[Al])/[O]は、前記化学成分組成から算出されて表1に併記されている。
(被削性:断続切削)
断続切削時の被削性を評価するために、エンドミル工具を用いた断続切削試験が行われた後、工具摩耗量が測定された。供試材(板材)は、スケールを除去されて、その表面を厚さ方向に2mm研削されて、厚さ25mm×幅150mm×長さ100mmの切削試験片に作製された。マニシングセンタ主軸にエンドミル工具(三菱マテリアル製ハイスエンドミル、型番K−2SL、外径φ10mm、TiAlNコーティング厚さ2.6μm)が取り付けられ、バイスにより固定された切削試験片に対して、大気(酸素濃度21%)中で、乾式の切削雰囲気下で断続切削が行われた。断続切削条件は下記に示される。200カット(切削距離:約3000m)の断続切削の後、使用されたエンドミル工具が光学顕微鏡にて観察され、平均逃げ面摩耗幅(工具摩耗量)が測定された。断続切削時の被削性の合格基準は、工具摩耗量が70μm以下とされた。なお、同じ切削試験片の表面のビッカース硬さが測定された。工具摩耗量およびビッカース硬さは表1に示される。
軸方向切り込み量:1.0mm
径方向切り込み量:1.0mm
送り量 :0.117mm/rev
送り速度 :558.9mm/min
切削速度 :150m/min
回転速度 :4777rpm
連続切削時の被削性、さらに切削雰囲気の酸素富化による効果を評価するために、超硬工具(P10)を用いた長手方向旋削による切削試験が行われた後、工具摩耗量が測定された。供試材(丸棒材)に対して、大気(酸素濃度21%)中と表1に示す酸素濃度の酸素富化雰囲気(酸素付与)中とで、乾式の切削雰囲気下で連続切削が行われた。連続切削条件は下記に示される。15分間の切削(切削距離:約3000m)の後、使用された超硬工具が光学顕微鏡にて観察され、平均逃げ面摩耗幅(工具摩耗量)が測定された。連続切削時の被削性の合格基準は、大気中での切削による工具摩耗量より、酸素富化雰囲気中での切削による工具摩耗量の方が少ないこととされた。それぞれの切削雰囲気での工具摩耗量は表1に示される。
切り込み量:1.5mm
送り量 :0.25mm/rev
切削速度 :200m/min
機械的特性として、浸炭処理後の供試材の横目の靭性が評価された。供試材(丸棒材)は、圧延(鍛伸)方向に垂直な方向(横目)に沿ったノッチ(R:10mm、深さ:2mm)を形成され、10mm×10mm×55mmのサイズに削り出されて、シャルピー衝撃試験片に作製された。この試験片は、下記の条件で浸炭処理され、次に60℃のコールド油を用いて油焼入れされた後、焼戻しされた(170℃×120minの熱処理後、空冷)。以上の処理後の試験片でシャルピー衝撃値(シャルピー吸収エネルギー)が測定された。測定したシャルピー吸収エネルギーは表1に示される。横目の靭性の合格基準は、シャルピー吸収エネルギーが10.0J以上とされた。
900℃×90min(CO2濃度:0.11%、カーボンポテンシャル(以下、CP):1.0%狙い)→900℃×90min(CO2濃度:0.17%、CP:0.8%狙い)→840℃×60min(CO2濃度:0.39%、CP:0.8%狙い)
表1に示すように、実施例1〜17は、その各成分の含有量、およびCr,Alの各含有量とO含有量との比が本発明の範囲であるので、断続切削試験後の工具摩耗量が小さくて断続切削時の被削性に優れており、連続断続切削試験においては酸素富化により被削性が向上し、さらに横目の靭性も良好であった。
Claims (5)
- 酸素濃度が21〜40%の雰囲気で切削加工される酸素富化雰囲気切削加工用の機械構造用鋼であって、
C:0.05〜1.2質量%、Si:0.03〜2.0質量%、Mn:0.2〜1.8質量%、Cr:0.1〜3.0質量%、Al:0.06〜0.5質量%、N:0.002〜0.02質量%、O:0.003質量%以下を含有し、さらに、Ca:0.0005〜0.01質量%、Mg:0.0001〜0.005質量%のうち1種以上を含有し、PおよびSを各0.03質量%以下に規制し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
前記Cr,Al,Oの各含有量(質量%)を、[Cr]、[Al]、[O]として表したとき、(0.1×[Cr]+[Al])/[O]≧150を満足することを特徴とする酸素富化雰囲気切削加工用の機械構造用鋼。 - さらに、Mo:1.0質量%以下を含有することを特徴とする請求項1に記載の酸素富化雰囲気切削加工用の機械構造用鋼。
- さらに、Ti:0.2質量%以下、Nb:0.2質量%以下、およびV:0.5質量%以下のうち1種以上を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の酸素富化雰囲気切削加工用の機械構造用鋼。
- さらに、B:0.005質量%以下を含有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の酸素富化雰囲気切削加工用の機械構造用鋼。
- さらに、Cu:5.0質量%以下、およびNi:5.0質量%以下のうち1種以上を含有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の酸素富化雰囲気切削加工用の機械構造用鋼。
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