JP2009262444A - ガスバリア性シート及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ガスバリア性が高く、基材の透明性の低下を抑制することが可能となるガスバリア性シート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基材2と、添加剤バリア層3と、平坦化層4と、ガスバリア層5と、を有し、添加剤バリア層3が基材2のガラス転移温度より低い温度で形成されるガスバリア性シート1とすることにより、上記課題を解決する。また、ガスバリア性シート1の製造方法は、基材のガラス転移温度より低い温度で行われる基材洗浄工程と、基材のガラス転移温度より低い温度で添加剤バリア層を形成する添加剤バリア層形成工程と、平坦化層を形成する平坦化層形成工程と、ガスバリア層を形成するガスバリア層形成工程と、を有することにより、上記課題を解決する。
【選択図】図1

Description

本発明は、ガスバリア性シート及びその製造方法に関する。
食品や医薬品等の包装材料として用いられるガスバリア性シートにおいては、内容物の品質を劣化させる要因である酸素・水蒸気の影響を防ぐために、プラスチックフィルム基材上にガスバリア層が形成されている。しかしながら、プラスチックフィルム基材表面の凹凸により、ガスバリア層がプラスチックフィルム基材の表面を十分に被覆することができない場合があり、十分なガスバリア特性を得ることが容易ではないという問題があった。
こうした問題につき、特許文献1においては、200μm×200μm以上の面積について測定された平均面粗さSRaが20nm以下である平滑表面を片面または両面に有する基材フィルムと、この基材フィルムの平滑表面に形成された無機化合物からなるガスバリアー層とからなるガスバリアーフィルムが記載されている。
同文献においては、特に、基材フィルム添加剤量を少なくして、かつフィルムを急冷する所定の方法で得られた基材フィルムは、極めて表面平滑性に優れている、とのことである。そして、このような理由については明確ではないものの、添加剤の少ない条件で得られたフィルムを急冷すると、フィルム内での樹脂成分の結晶化が抑制され、これにより表面の平滑性が維持されるものと考えられる、とのことである。
また、特許文献2においては、substrate(基材)105の両面にscratch resistant layer(スクラッチ防止層)110を設けた上で、このscratch resistant layer110上に、polymer smoothing layer(平坦化層)115を設け、その上にfirst barrier stack(バリア積層)120を積層したbarrier assemblyが開示されている。そして、first barrier stack120は、barrier layer(バリア層)125とpolymer layer(ポリマー層)130とを有している。こうした構成を採用することにより、23℃/0%RHにおいて0.005cc/m/dayよりも小さい酸素透過率を有するbarrier assemblyが得られるとのことである。
特開2001−310412号公報(請求項1,第0045段落〜第0052段落) 米国特許第6,413,645明細書(col.2〜4、FIG.1、claim1)
このように、ガスバリア層を平坦な面に設けることが重要となるが、本発明者が検討した結果、特許文献1,2の方法では、ガスバリア層の平坦性を常に確保することができない課題があることが判明した。そして、基材上にスクラッチ防止層(以下、ハードコート層という場合がある。)や平坦化層を設けるとかえってスクラッチ防止層表面や平坦化層表面の表面粗さが大きくなったり、基材の透明性が低下するという課題があることも判明した。さらに、特許文献1,2に記載の方法では、経時的に基材ひいてはガスバリア性シートの透明性に課題を有することもわかった。加えて、特許文献2に記載のbarrier assemblyが達成する、酸素透過率0.005cc/m/day程度のガスバリア性では、有機発光ダイオード(Organic light−emitting diode、以下OLEDという場合がある。)のような非常に微量の水蒸気にて劣化する電子デバイス用部材に適用するには不十分であることも判明した。
すなわち、特許文献1の第0045段落、第0046段落に、基材が樹脂製の場合、基材中の添加剤(ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、塩素捕獲剤等)がブリードアウトする量が多くなり、表面の平滑性が阻害される旨記載されるとおり、添加剤のブリードアウトは基材の表面の凹凸発生の原因となる。同文献では、このブリードアウトの量を抑制することにより基材表面の凹凸を抑制している。
しかしながら、上記添加剤は、酸化防止性能や耐光性能等の各種性能の確保のためには必須の材料であるためこれを基材から取り除くことは実際上難しい。このため、添加剤を含まざるを得ない基材において添加剤のブリードアウトを完全に抑制することは困難である。したがって、添加剤のブリードアウトをある程度抑制した場合においても、基材を製造した段階ですでに基材表面には添加剤のブリードアウトが観察される場合もある。そして、こうした基材製造直後に基材表面に存在することがある添加剤によって、基材表面の凹凸の抑制が不十分となるのが実情なのである。
また、基材上に、ハードコート層や平坦化層を製造する場合に、基材を高温にさらすことがあるが、こうした高温(特に基材のガラス転移温度Tg以上の温度)下では、基材から添加剤のブリードアウトが促進される。このため、基材の製造直後においては、基材表面への添加剤のブリードアウトが抑制されていた場合においても、ガスバリア性シートを製造する際に添加剤のブリードアウトが促進されることになる。その結果、ハードコート層や平坦化層を設けるとかえって基材の表面の凹凸を発生させることになり、ひいてはハードコート層や平坦化層の表面粗さを大きくすることにもなる。また、こうした添加剤のブリードアウトは光学顕微鏡で観察すると白点として観察され、基材の透明性を低下させる原因ともなる。
加えて、ガスバリア性シートの製造後、これを使用していくうちに、添加剤の基材表面へのブリードアウトが経時的に進行する。こうした経時的な添加剤のブリードアウトにより、基材表面に上記白点が観察され、ガスバリア性シートの透明性を損ねる原因ともなる。
こうした、添加剤の基材表面へのブリードアウトによる基材表面への凹凸の形成、基材ひいてはガスバリア性シートの透明性の低下の課題は、昨今ガラス基板に代わる電子デバイス用基板として用いられつつあるガスバリア性シートにおいて特に顕著となる。すなわち、電子デバイス用基板においては、食品、医薬品包装等よりもより高いガスバリア性や透明性が求められる。したがって、従来以上に基材表面の凹凸を抑制する必要があり、また、経時による基材表面の透明性の低下を抑制する要請も高い。例えば、OLED素子等のアプリケーションにおいては、基材の凹凸により透明導電層(電極)に凹凸(突起)が発生し、電流が短絡するという課題がある。
そして、OLEDのような非常に微量の水蒸気にて劣化する電子デバイス用部材に適用するためには、ガスバリア性として0.00009g/m/day以下の水蒸気透過率が必要となる。したがって、特許文献2に記載されたbarrier assemblyが達成するガスバリア性(酸素透過率が0.005cc/m/dayより小)では、OLEDに適応するガスバリア性シートとしては未だ不十分である。したがって、0.00009g/m/day以下の水蒸気透過率を達成できるようなガスバリア性シートを開発することが課題となっている。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、ガスバリア性シートの製造時の添加剤のブリードアウトによる基材表面の凹凸ひいてはガスバリア層等の凹凸(表面粗さ)を低減することにより、高いガスバリア性を有するガスバリア性シートを提供することを目的とする。また、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、ガスバリア性シートの製造時の添加剤のブリードアウトによる基材の透明性の低下の抑制、及び製造後の経時的なブリードアウトによる基材の透明性の低下を抑制することが可能となるガスバリア性シートを提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、基材の製造以後の添加剤のブリードアウトが引き起こす基材表面の凹凸を除去し、ガスバリア性シートの製造時の添加剤のブリードアウトによる基材表面の凹凸ひいてはガスバリア層等の凹凸(表面粗さ)を低減することにより、高いガスバリア性を有するガスバリア性シートの製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、ガスバリア性シートの製造時の添加剤のブリードアウトによる基材の透明性の低下の抑制、及び製造後の経時的なブリードアウトによる基材の透明性の低下を抑制することが可能となるガスバリア性シートの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者が鋭意検討した結果、基材の平坦性を確保するためには、添加剤のブリードアウトによる基板の凹凸を、ガスバリア性シート製造前に一度低減すること、製造時又は製造後の経時での添加剤のブリードアウトによる凹凸の形成を抑制すること、が有効であることがわかった。そして、基材を平坦化するために従来行われていた、基材上に直接平坦化層を設ける方法では、平坦化層を形成する際の加熱により基材からの添加剤のブリードアウトがかえって促進されて基材の凹凸が形成される結果、平坦化層の表面平坦性が不十分になること、また、基材表面の汚染による透明性の低下が発生することもわかった。
以上の知見に鑑み、本発明者は、基材と平坦化層との間に、所定の添加剤バリア層を設けることにより上記課題を解決することができることを見出した。
上記課題を解決するための本発明のガスバリア性シートは、基材と、該基材に接して設けられた添加剤バリア層と、該添加剤バリア層の上に設けられた平坦化層と、該平坦化層の上に設けられたガスバリア層と、を有するガスバリア性シートであって、前記添加剤バリア層が前記基材のガラス転移温度より低い温度で形成されるものである、ことを特徴とする。
この発明によれば、添加剤バリア層が前記基材のガラス転移温度より低い温度で形成されるものであるので、基材が安定な状態で添加剤バリア層の形成が行われるために新たな添加剤のブリードアウトが抑制されるとともに、基材に接して設けられる添加剤バリア層が上記のブリードアウトを抑制することとなる。その結果、ガスバリア性シートの製造時の添加剤のブリードアウトによる基材表面の凹凸ひいてはガスバリア層等の凹凸(表面粗さ)を低減することにより、高いガスバリア性を有するガスバリア性シートを提供することができる。さらに、ガスバリア性シートの製造時の添加剤のブリードアウトによる基材の透明性の低下の抑制、及び製造後の経時的なブリードアウトによる基材の透明性の低下を抑制することが可能となるガスバリア性シートを提供することができる。
本発明のガスバリア性シートにおいては、前記平坦化層が前記基材のガラス転移温度以上の温度で形成されるものであることが好ましい。
この発明によれば、平坦化層が基材のガラス転移温度以上の温度で形成されるものであるので、平坦化層形成時に基材がガラス転移温度以上の温度にさらされて基材からの添加剤のブリードアウトが促進される状態となるが、添加剤バリア層がこれを抑制することとなり、その結果、製造時の添加剤のブリードアウトによる基材表面の凹凸ひいてはガスバリア層等の凹凸(表面粗さ)の低減、製造時の添加剤のブリードアウトによる基材の透明性の低下の抑制をより有効に行うことができる。
本発明のガスバリア性シートにおいては、前記基材が樹脂製であることが好ましい。
この発明によれば、基材が樹脂製であるので、基材に含まれる添加剤がよりブリードアウトしやすくなり、その結果、添加剤バリア層を設ける意義が大きくなる。
本発明のガスバリア性シートにおいては、前記添加剤バリア層が、前記基材のガラス転移温度よりも低い温度で硬化する硬化性樹脂より形成されることが好ましい。
この発明によれば、添加剤バリア層が、基材のガラス転移温度よりも低い温度で硬化する硬化性樹脂より形成されるので、基材に与える熱的な影響が少なくなり、その結果、添加剤バリア層形成後の基材からの添加剤のブリードアウトをより効果的に抑制することができる。
本発明のガスバリア性シートにおいては、前記平坦化層が、前記基材のガラス転移温度以上の温度で硬化する硬化性樹脂より形成されることが好ましい。
この発明によれば、平坦化層が、基材のガラス転移温度以上の温度で硬化する硬化性樹脂より形成されるので、平坦化層形成時に基材から添加剤がブリードアウトしやすい状態となり、その結果、添加剤バリア層を用いる意義がより大きくなる。
本発明のガスバリア性シートにおいては、前記添加剤バリア層の厚さが、0.5μm以上、15μm以下であることが好ましい。
この発明によれば、添加剤バリア層の厚さが、0.5μm以上、15μm以下であるので、添加剤バリア層が基材からの添加剤のブリードアウトを抑制する効果が大きくなり、その結果、製造時及び製造後の経時での添加剤のブリードアウトをより抑制しやすくなる。
本発明のガスバリア性シートにおいては、前記ガスバリア層の表面の最大突起長(Rmax)が2nm以上、20nm以下であることが好ましい。
この発明によれば、ガスバリア層の表面の最大突起長(Rmax)が2nm以上、20nm以下であるので、ガスバリア層の平坦性が向上し、その結果、より高いガスバリア性を有するガスバリア性シートを得られることとなる。
本発明のガスバリア性シートにおいては、水蒸気透過率が0.00009g/m/day以下であることが好ましい。
この発明によれば、水蒸気透過率が0.00009g/m/day以下であるので、非常に高いガスバリア性を有するガスバリア性シートとすることができ、その結果、OLEDのような非常に微量の水蒸気にて劣化する電子デバイス用部材に適用できるガスバリア性シートとなる。
本発明のガスバリア性シートにおいては、前記ガスバリア層の上にさらに透明導電層及び/又は補助電極層を設けることが好ましい。
この発明によれば、ガスバリア層の上にさらに透明導電層及び/又は補助電極層を設けるので、透明導電層をOLEDの電極として利用するのみならず、放熱機能及び帯電防止機能をガスバリア性シートに付与することができ、補助電極層をOLEDの電極及びその補助として利用することができるようになり、その結果、ガスバリア性シートの被封止物がOLEDである場合に、その生産性、発光特性、及び寿命を向上させることができるようになる。
本発明のガスバリア性シートは、有機発光ダイオードの封止フィルムとして用いられることが好ましい。
この発明によれば、本発明のガスバリア性シートを有機発光ダイオード(OLED)の封止フィルムとして用いるので、よりガスバリア性の高いガスバリア性シートで被封止物たるOLEDを封止することになり、その結果、ガスバリア性・透明性がより高く寿命の長いOLED素子を得やすくなる。
本発明のガスバリア性シートは、有機発光ダイオードの基板フィルムとして用いられることが好ましい。
この発明によれば、本発明のガスバリア性シートを有機発光ダイオード(OLED)の基板フィルムとして用いるので、より平滑性及び耐熱性が求められる基板フィルムに対して高い平滑性と耐熱性を有するガスバリア性シートを適用することができ、その結果、ガスバリア性・透明性がより高く寿命の長いOLED素子を得やすくなる。
本発明のガスバリア性シートは、全光線透過率が60%以上であることが好ましい。
この発明によれば、ガスバリア性シートの全光線透過率が60%以上であるので、十分な透明性を確保できるようになり、その結果、カスバリア性シートをディスプレイの前面(表示面)、太陽電池の開口面等の用途に用いることができる。
本発明のガスバリア性シートは、全光線透過率が60%より小さいことが好ましい。
この発明によれば、ガスバリア性シートの全光線透過率が60%より小さいので、ガスバリア性シートを透明性が必要とされない用途に用いることができるようになり、その結果、ガスバリア性シートをディスプレイの背面(フタ面)側、真空断熱パネル、太陽電池のバックカバー等の用途に用いることができる。
上記課題を解決するための本発明のガスバリア性シートの製造方法は、基材と、該基材に接して設けられた添加剤バリア層と、該添加剤バリア層の上に設けられた平坦化層と、該平坦化層の上に設けられたガスバリア層と、を有するガスバリア性シートの製造方法であって、前記基材のガラス転移温度より低い温度で行われる基材洗浄工程と、前記基材のガラス転移温度より低い温度で前記添加剤バリア層を形成する添加剤バリア層形成工程と、前記平坦化層を形成する平坦化層形成工程と、前記ガスバリア層を形成するガスバリア層形成工程と、を有する、ことを特徴とする。
この発明によれば、基材のガラス転移温度より低い温度で行われる基材洗浄工程と、基材のガラス転移温度より低い温度で添加剤バリア層を形成する添加剤バリア層形成工程と、平坦化層を形成する平坦化層形成工程と、ガスバリア層を形成するガスバリア層形成工程と、を有するので、基材表面に新たな添加剤のブリードアウトを起こすことなく添加剤を洗い流すことが可能となり、基材表面が洗浄されてクリーンかつ基材が安定な状態で添加剤バリア層の形成が行われるために新たな添加剤のブリードアウトが抑制されるとともに、基材に接して設けられる添加剤バリア層が上記のブリードアウトを抑制することとなる。その結果、基材の製造以後の添加剤のブリードアウトが引き起こす基材表面の凹凸を除去し、ガスバリア性シートの製造時の添加剤のブリードアウトによる基材表面の凹凸ひいてはガスバリア層等の凹凸(表面粗さ)を低減することにより、高いガスバリア性を有するガスバリア性シートの製造方法を提供することができる。さらに、ガスバリア性シートの製造時の添加剤のブリードアウトによる基材の透明性の低下の抑制、及び製造後の経時的なブリードアウトによる基材の透明性の低下を抑制することが可能となるガスバリア性シートの製造方法を提供することができる。
本発明のガスバリア性シートの製造方法では、前記平坦化層形成工程が、前記基材のガラス転移温度以上の温度で前記平坦化層を形成するものであることが好ましい。
この発明によれば、平坦化層形成工程が、基材のガラス転移温度以上の温度で平坦化層を形成するものであるので、平坦化層形成時に基材が高温にさらされて添加剤のブリードアウトが促進される状態となった場合においても、基材に接して設けられる添加剤バリア層が上記のブリードアウトを抑制することとなり、その結果、製造時の添加剤のブリードアウトによる基材表面の凹凸ひいてはガスバリア層等の凹凸(表面粗さ)の低減、製造時の添加剤のブリードアウトによる基材の透明性の低下の抑制をより有効に行うことができる。
本発明のガスバリア性シートの製造方法では、前記基材洗浄工程において、有機溶剤を用いて前記基材の洗浄を行うことが好ましい。
この発明によれば、基材洗浄工程において、有機溶剤を用いて基材の洗浄を行うので、基材表面の添加剤を確実に洗い流しやすくなり、その結果、よりクリーンな基材表面に添加剤バリア層を形成することができる。
本発明のガスバリア性シートの製造方法では、前記基材が樹脂製であることが好ましい。
この発明によれば、基材が樹脂製であるので、基材に含まれる添加剤がよりブリードアウトしやすくなり、その結果、添加剤バリア層を設ける意義が大きくなる。
本発明のガスバリア性シートの製造方法では、前記添加剤バリア層形成工程において、前記基材のガラス転移温度よりも低い温度で硬化する硬化性樹脂で前記添加剤バリア層を形成することが好ましい。
この発明によれば、添加剤バリア層形成工程において、基材のガラス転移温度よりも低い温度で硬化する硬化性樹脂で添加剤バリア層を形成するので、基材に与える熱的な影響が少なくなり、その結果、添加剤バリア層形成時の基材からの添加剤のブリードアウトをより効果的に抑制することができる。
本発明のガスバリア性シートの製造方法では、前記平坦化層形成工程において、前記基材のガラス転移温度以上の温度で硬化する硬化性樹脂で前記平坦化層を形成することが好ましい。
この発明によれば、平坦化層形成工程において、基材のガラス転移温度以上の温度で硬化する硬化性樹脂で平坦化層を形成するので、平坦化層形成時に基材から添加剤がブリードアウトしやすい状態となり、その結果、添加剤バリア層を用いる意義がより大きくなる。
本発明のガスバリア性シートの製造方法では、前記ガスバリア層の上に、透明導電層を設ける透明導電層形成工程、及び/又は補助電極層を設ける補助電極層形成工程をさらに有することが好ましい。
この発明によれば、ガスバリア層の上に、透明導電層を設ける透明導電層形成工程、及び/又は補助電極層を設ける補助電極層形成工程をさらに有するので、透明導電層をOLEDの電極として利用するのみならず、放熱機能及び帯電防止機能をガスバリア性シートに付与することができ、補助電極層をOLEDの電極及びその補助として利用することができるようになり、その結果、ガスバリア性シートの被封止物がOLEDである場合に、その生産性、発光特性、及び寿命を向上させることができるようになる。
本発明のガスバリア性シートによれば、高いガスバリア性を有するガスバリア性シートを提供することができる。さらに、基材の透明性の低下を抑制することが可能となるガスバリア性シートを提供することができる。
本発明のガスバリア性シートの製造方法によれば、高いガスバリア性を有するガスバリア性シートの製造方法を提供することができる。さらに、基材の透明性の低下を抑制することが可能となるガスバリア性シートの製造方法を提供することができる。
次に、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[ガスバリア性シート]
図1は、ガスバリア性シートの一例を示す模式的な断面図である。ガスバリア性シート1は、基材2と、基材2に接して設けられた添加剤バリア層3と、添加剤バリア層3の上に設けられた平坦化層4と、平坦化層4の上に設けられたガスバリア層5と、を有する。そして、添加剤バリア層3が基材2のガラス転移温度Tgより低い温度で形成されるものである。これにより、基材2が安定な状態で添加剤バリア層3の形成が行われるために新たな添加剤のブリードアウトが抑制されるとともに、基材2に接して設けられる添加剤バリア層3が上記のブリードアウトを抑制することとなる。その結果、ガスバリア性シート1の製造時の添加剤のブリードアウトによる基材2表面の凹凸ひいてはガスバリア層5等の凹凸(表面粗さ)を低減することにより、高いガスバリア性を有するガスバリア性シート1を提供することができる。さらに、ガスバリア性シート1の製造時の添加剤のブリードアウトによる基材2の透明性の低下の抑制、及び製造後の経時的なブリードアウトによる基材2の透明性の低下を抑制することが可能となるガスバリア性シート1を提供することができる。
(基材)
基材2は、ガラス転移温度Tgを有するものであれば、特に制限なく用いることができる。基材2としては、主にはシート状やフィルム状のものが用いられるが、具体的な用途や目的等に応じて、非フレキシブル基板やフレキシブル基板を用いることができる。例えば、ガラス基板、硬質樹脂基板、ウエハ、プリント基板、様々なカード、樹脂シート等の非フレキシブル基板を用いてもよい。
基材2は、樹脂製のものを用いることが好ましい。これにより、基材2に含まれる添加剤がよりブリードアウトしやすくなり、その結果、添加剤バリア層3を設ける意義が大きくなる。
基材2を構成する樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエーテルサルフォン、ポリイミド、ポリノルボルネン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、環状ポリオレフィン等を挙げることができる。また、ガラスクロスに樹脂を含浸させたものを用いてもよい。基材2が樹脂製である場合、好ましくは100℃以上、特に好ましくは150℃以上の耐熱性を有するものが適当である。
基材2の厚さについても特に制限はないが、可とう性及び形態保持性の観点から、通常6μm以上、好ましくは12μm以上、また、通常400μm以下、好ましくは250μm以下の範囲とする。
基材2には、種々の性能確保のために添加剤が含有される。こうした添加剤として従来公知のものを適宜用いることができ、例えば、ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、塩素捕獲剤等を挙げることができる。
基材2に含有されるブロッキング防止剤としては、例えば、液体または固体パラフィン、合成ワックス、ポリエチレンワックス、天然蝋等のワックス類、シリコーン、脂肪酸アマイド等の有機系ブロッキング防止剤;タルク(滑石)、珪藻土、カオリン(陶土)、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ゼオライト等の無機系ブロッキング防止剤を挙げることができる。これらは、混合して使用してもよい。このようなブロッキング防止剤は、球形粒子状のものが好ましく、粒径は、通常0.1μm以上、6μm以下とする。
基材2に含有される熱安定剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)等を挙げることができる。酸化防止剤としては、例えば、テトラキス−{メチレン−(3,5−ジ−3−ブチル−4−ハイドロシンナメート)}ブタン(“Irganox1010”)等を挙げることができる。
基材2に含有される塩素捕獲剤としては、例えば、ステアリン酸カルシウム等を挙げることができる。
基材2に含有される添加剤は、通常、基材2に0.01重量%以上、10重量%以下含有される。本発明では、添加剤バリア層3を用いることにより基材2からの添加剤のブリードアウトを抑制することができる。このため、ブリードアウト量を抑制するために添加剤の含有量を減らすことは基本的には必要ない。したがって、本発明は、基材2が十分な性能を発揮できるように、所望の添加剤を基材2に適量含有させることができる利点をも有する。
基材2を、透明性が必要とされるOLED等の発光素子の基板として用いる場合には、基材2は無色透明であることが好ましい。より具体的には、例えば400nm〜700nmの範囲内での基材2の平均光透過度が80%以上の透明性を有するように構成することが好ましい。こうした光透過度は基材2の材質と厚さに影響されるので両者を考慮して構成される。
基材2として樹脂製のものを用いる場合には、その製造方法も従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。本発明では、添加剤バリア層3を用いることにより基材2からの添加剤のブリードアウトを抑制することができる。このため、基材2を特別な方法で製造することは基本的には必要ない。したがって、本発明では、基材2の製造方法が制限されないという利点も発揮される。
基材2として、樹脂製のものを用いる場合には、延伸フィルムを用いてもよい。延伸の方法も従来公知の一般的な方法を用いればよい。延伸倍率は、基材2の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2〜10倍とすることが好ましい。
基材2の表面は、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、粗面化処理、加熱処理、薬品処理、UV照射処理、大気圧プラズマ処理、易接着化処理等の表面処理を行ってもよい。こうした表面処理の具体的な方法は従来公知のものを適宜用いることができる。
基材2のガラス転移温度Tgは、従来公知の方法で測定することができる。こうした方法としては、例えば、示差走査熱量分析装置(DSC)を用いて測定する方法を挙げることができる。代表的な樹脂で形成した基材2のガラス転移温度Tgを例示すると、ポリエチレンテレフタレート(PET)基材は78℃、ポリエチレンナフタレート(PEN)基材は117℃(基材メーカーのグレードによっては123℃)、ポリカーボネート(PC)基材は150℃、ポリエーテルサルフォン基材は223℃、ポリイミド基材は400℃、環状ポリオレフィン基材は165℃である。
(添加剤バリア層)
添加剤バリア層3は、基材2のガラス転移温度Tgより低い温度で形成されるものである。ガラス転移温度Tgより低い温度で形成可能で、基材2に熱的な影響(添加剤のブリードアウト現象)を与えるようなことがなければよく、添加剤バリア層3に用いられる材料は特に制限されない。こうした材料としては代表的には、無機材料、有機材料を挙げることができる。無機材料で形成する場合には、低温での蒸着法やイオンプレーティング法を用いて、必要な材料で形成された添加剤バリア層3を基材2上に形成すればよい。有機材料を用いる場合には、添加剤バリア層3を、基材2のガラス転移温度Tgよりも低い温度で硬化する硬化性樹脂より形成することが好ましい。これにより、基材に与える熱的な影響が少なくなり、その結果、添加剤バリア層3形成後の基材2からの添加剤のブリードアウトをより効果的に抑制することができる。
添加剤バリア層3に用いることが可能な硬化性樹脂としては、例えば、ジペンタエリストールヘキサアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート等のアクリレート、メタクリレート系樹脂を用いることが好ましく、基材からの添加剤のブリードアウトを効果的に抑制する観点からは、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、環状アクリレート等のアクリレート系樹脂を用いることも好ましい。アクリレート系樹脂としては、基材2のガラス転移温度Tgより低い温度で硬化できる材料を適宜選択すればよい。
添加剤バリア層3の材料に硬化性の樹脂を用いる場合には、公知の光重合開始剤や光増感剤を併用することができる。こうした光重合開始剤や光増感剤は、紫外線を照射して硬化性の樹脂を重合(硬化)させる場合に好ましく用いられる。光重合開始剤や光増感剤の添加量は、一般に、硬化性の樹脂100重量部に対して、0.1重量部以上、10重量部以下とする。こうした材料の他、溶媒、硬化触媒、濡れ性改良剤、可塑剤、消泡剤、増粘剤等の無機、有機系の各種添加剤を必要に応じて添加することができる。
添加剤バリア層3は、基材2のガラス転移温度Tgより低い温度で良好な膜を形成することができるようにする必要がある。良好な膜とは、より具体的には、基材2やその上に設けられることがある平坦化層4との接着性が良好であること等を意味するが、こうした添加剤バリア層3に所望される性能は、その材料のみによって決まるわけではない。例えば、成膜のために用いる溶媒(例えば、沸点、粘度等)との組み合わせ、成膜の方法(例えば、塗布方法、蒸着方法等)、及び製造時の乾燥・硬化条件を適宜選択することが重要となる。こうした点については、製造方法の説明において詳述する。添加剤バリア層3を形成する際の温度としては、添加剤のブリードアウトを考慮して、通常Tgよりも2℃低い温度以下、好ましくはTgよりも5℃低い温度以下、より好ましくはTgよりも10℃低い温度以下、さらに好ましくはTgよりも15℃低い温度以下で行う。ここで、添加剤バリア層3を形成する際の温度としては、基材自体の温度をいっているので、添加剤バリア層3を形成する際の雰囲気の温度は上記温度範囲よりも若干高くしてもよい。
添加剤バリア層3の厚さは、0.5μm以上、15μm以下であることが好ましい。好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上とする。これにより、添加剤バリア層3が基材2からの添加剤のブリードアウトを抑制する効果が大きくなり、その結果、製造時及び製造後の経時での添加剤のブリードアウトがより抑制しやすくなる。
添加剤バリア層3は、基材2やその上に設けられる平坦化層4との接着性が高いことが好ましい。添加剤バリア層3の接着性は、例えば、クロスカット試験によって評価することができる。本発明においては、クロスカット試験をJIS−K5400の8.5.1の記載に準拠して行っている。具体的には、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて、添加剤バリア層3を貫通して基材2等に達する切り傷を縦横につけて、100個のマス目状とし、セロハン粘着テープ(ニチバン社製405番 24mm幅)をマス状の切り傷面に張り付け、消しゴムでこすって完全に付着させた後、垂直に引き剥がす。そして、剥離後の面を目視により観察し、100個のマス目における層残留率(マス目の一部分でも剥がれたものも剥がれた個数として扱う)を接着性の尺度とし、接着性(%)=(1−(剥がれたマス目/100マス))×100を算出して評価する。
そして、例えば、基材2上に添加剤バリア層3を設けた接着性測定用サンプルを準備し、上記のクロスカット試験を、この接着性測定用サンプルの製造直後と、耐湿熱試験後と、の両方で行えば、製造後の状態における基材2と添加剤バリア層3との接着性だけでなく、この接着性の持続性を評価することもできる。そして、耐湿熱試験の方法としては、例えば、温度60℃/湿度95%RHの環境に調整した恒温恒湿器を用い、この恒温恒湿器内に240時間、接着性測定用のサンプルを保持することによって行うことができる。
添加剤バリア層3は、上記のクロスカット試験において、製造直後及び耐湿熱試験後のいずれにおいても、95%以上の接着性を有することが好ましい。
添加剤バリア層3を、透明性が必要とされるOLED等の発光素子の基板として用いる場合には、添加剤バリア層3は無色透明であることが好ましい。より具体的には、例えば400nm〜700nmの範囲内での添加剤バリア層3の平均光透過度が80%以上の透明性を有するように構成することが好ましい。こうした光透過度は添加剤バリア層3の材質と厚さに影響されるので両者を考慮して構成される。
添加剤バリア層3の表面は、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、粗面化処理、加熱処理、薬品処理、UV照射処理、大気圧プラズマ処理、易接着化処理等の表面処理を行ってもよい。こうした表面処理の具体的な方法は従来公知のものを適宜用いることができる。
(平坦化層)
平坦化層4は、特に制限はないが、基材2のガラス転移温度Tg以上の温度で形成されるものであることが好ましい。これにより、平坦化層4の形成時に基材2がガラス転移温度Tg以上の温度にさらされて基材2からの添加剤のブリードアウトが促進される状態となるが、添加剤バリア層3がこれを抑制することとなり、その結果、製造時の添加剤のブリードアウトによる基材2表面の凹凸ひいてはガスバリア層5等の凹凸(表面粗さ)の低減、製造時の添加剤のブリードアウトによる基材2の透明性の低下の抑制をより有効に行うことができる。
平坦化層4の材料としては、例えば、ゾル−ゲル材料、硬化性樹脂(紫外線硬化性樹脂、熱硬化型樹脂)、及びフォトレジスト材料等を挙げることができる。こうした材料のうち、平坦化層4が、基材2のガラス転移温度Tg以上の温度で硬化する硬化性樹脂より形成されることが好ましい。これにより、平坦化層4の形成時に基材2から添加剤がブリードアウトしやすい状態となり、その結果、添加剤バリア層3を用いる意義がより大きくなる。こうした硬化性樹脂としては、例えば、シロキサン系ゾルゲル材料、カルドポリマー含有材料、アリレート樹脂、透明ポリイミド樹脂、及び環状骨格を有したアクリレート系樹脂、エポキシ基をもつ反応性のプレポリマー、オリゴマー、及び/又は単量体を適宜混合したものである電離放射線硬化型樹脂や、電離放射線硬化型樹脂に必要に応じてウレタン系、ポリエステル系、アクリル系、ブチラール系、ビニル系等の熱可塑性樹脂を混合して液状となした液状組成物のような、分子中に重合性不飽和結合を有し、紫外線(UV)や電子線(EB)を照射することにより、架橋重合反応を起こして3次元の高分子構造に変化する樹脂等を挙げることができる。
平坦化層4の材料としては、ゾルーゲル法を用いたゾル−ゲル材料を用いることも好ましい。ゾル−ゲル法とは、有機官能基と加水分解基を有するシランカップリング剤と、このシランカップリング剤が有する有機官能基と反応する有機官能基を有する架橋性化合物とを少なくとも原料として構成された塗料組成物の塗工方法、及び塗膜のことをいう。有機官能基と加水分解基を有するシランカップリング剤としては、従来公知のものを適宜用いることができ、例えば、特開2001−207130号公報に開示されるアミノアルキルジアルコキシシランやアミノアルキルトリアルコキシシランを用いればよい。また、シランカップリング剤が有する有機官能基と反応する有機官能基を有する架橋性化合物としては、例えば、グリシジル基、カルボキシル基、イソシアネート基、及びオキサゾリン基等のアミノ基と反応しうる官能基を有するものを挙げることができる。こうした材料も従来公知のものを適宜用いることができる。さらに、上記の塗料組成物には、例えば、溶媒、硬化触媒、濡れ性改良剤、可塑剤、消泡剤、増粘剤等の無機・有機系の各種添加剤を必要に応じて添加することができる。さらに、平坦化層4の材料としては、従来公知のカルドポリマーを含有させることも好ましい。
平坦化層4の厚さは、表面の平滑性確保の観点から、通常0.5μm以上、通常10μm以下とする。
(ガスバリア層)
ガスバリア層5に用いる材料は特に制限されない。こうした材料としては、例えば、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化インジウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウム等の酸化物、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化マグネシウム等の窒化物、炭化珪素等の炭化物、硫化物等を挙げることができる。また、これら材料から選ばれた二種以上の複合体である、酸化窒化物や、さらに炭素を含有してなる酸化炭化物、無機窒化炭化物、無機酸化窒化炭化物等を用いることもできる。
カスバリア層5に用いる材料としては、より具体的には、無機酸化物(MO)、無機窒化物(MN)、無機炭化物(MC)、無機酸化炭化物(MO)、無機窒化炭化物(MN)、無機酸化窒化物(MO)、無機酸化窒化炭化物(MO)を挙げることができ、好ましいMは、Si、Al、Ti等の金属元素である。なかでも、MをSiとし、酸化珪素からなる膜は、透明性の高いガスバリア性を発揮し、一方、窒化珪素はさらに高いガスバリア性を発揮するので好ましく用いられる。特に好ましくは、酸化珪素と窒化珪素の複合体(無機酸化窒化物(MO))である、酸化珪素の含有量が多いと透明性が向上し、窒化珪素の含有量が多いとガスバリア性が向上する。
ガスバリア層5の厚さは、通常10nm以上、500nm以下とする。この範囲とすれば、ガスバリア性、フレキシビリティを確保しつつ、色味の調整もしやすくなり、生産性も確保しやすい。
(透明導電層、補助電極層)
図1には図示していないが、ガスバリア層5の上にさらに透明導電層及び/又は補助電極層を設けることも好ましい。これにより、透明導電層をOLEDの電極として利用するのみならず、放熱機能及び帯電防止機能をガスバリア性シート1に付与することができ、補助電極層をOLEDの電極及びその補助として利用することができるようになり、その結果、ガスバリア性シート1の被封止物がOLEDである場合に、その生産性、発光特性、及び寿命を向上させることができるようになる。また、透明導電層を設けることで、平坦性を具備した透明導電性フィルムとすることもできる。
透明導電層に用いる材料としては、透明かつ導電性を付与することができるものであれば特に制限はされない。こうした材料としては、例えば、酸化スズ、酸化インジウム、ITO(インジウム−錫系酸化物)、ATO(アンチモン−錫系酸化物)、IZO(インジウム−亜鉛系酸化物)、及び銀等を挙げることができる。
透明導電層の厚さは、通常2nm以上、1000nm以下とする。この範囲とすれば、導電性、フレキシビリティ、及び透明性を確保しやすく、適度な応力を有するように制御することができ、生産性も確保しやすくなる。
補助電極層に用いる材料も特に制限はないが、例えば良導電性金属が用いられる。こうした材料としては、具体的には、例えば、クロム、ニッケル、モリブデン、アルミニウム、銅、銀、金、亜鉛、マンガン、インジウム、及びサマリウム等の金属、又はこれらの合金、これらの金属とリチウム、ナトリウム、カルシウム等のアルカリ・アルカリ土類金属との合金、等を挙げることができる。補助電極層に用いる材料は、透明導電層の配線抵抗を低減させる機能をもつものであればよく、上記の材料に限られるものではない。
補助電極層の厚さは、通常30nm以上、500nm以下とする。この範囲とすれば、導電性、フレキシビリティを確保しやすく、適度な応力を有するように制御することができ、生産性も確保しやすくなる。
(その他)
以上、ガスバリア性シート1について説明したが、本発明のガスバリア性シートは、上記構成に限られるものではない。具体的には、添加剤バリア層と平坦化層との間や、平坦化層とガスバリア層との間には、添加剤バリア層と平坦化層との接着性の確保等、平坦化層とガスバリア層との接着性の確保等の観点から、適宜他の層を挿入してもよい。また、基材において添加剤バリア層が形成されていない方の面に他の層を適宜形成してもよい。さらに、透明導電層や補助電極層以外の層をガスバリア層の上にさらに設けてもよい。こうした他の層としては、例えば、従来公知の、アンカーコート層、ガスバリア層、ハードコート層、反射防止層、防汚層、防眩層、及びカラーフィルタ等を挙げることができる。これらのうち、反射防止層、防汚層、防眩層、カラーフィルタは、光学粘着剤を介してガスバリア性シートと貼り合わせることで、所望の機能を得てもよい。
このように、用いることが可能な他の層の種類やその積層に関するバリエーションは、本発明の要旨の範囲内において適宜選択することができる。
本発明のガスバリア性シートは、例えば、食品や医薬品等の包装材料だけでなく、タッチパネル、ディスプレイ用フィルム基板、照明用フィルム基板、太陽電池用フィルム基板、及びサーキットボード用フィルム基板等、従来ガラスを支持基材として利用していたものに代替できる、軽くて割れない、曲げられる電子デバイス用部材に関する材料に用いることができる。
本発明のガスバリア性シートは、電子デバイス用部材のうちでもOLEDを封止するために用いられることが好ましい。こうした用途に用いる場合には、ガスバリア層の表面の最大突起長(Rmax)が2nm以上、20nm以下であることが好ましい。これにより、ガスバリア層の平坦性が向上し、その結果、より高いガスバリア性を有するガスバリア性シートを得られることとなる。ガスバリア層の表面粗さの測定は、特に制限はなく、例えば、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)として、セイコーインスツルメンツ社製のNanopics−1000を用い、JIS B0601−1982に準拠して、20μmの範囲にて最大突起長(Rmax)を測定する方法を挙げることができる。
本発明のガスバリア性シートは、水蒸気透過率が0.00009g/m/day以下であることが好ましい。これにより、非常に高いガスバリア性を有するガスバリア性シートとすることができ、その結果、OLEDのような非常に微量の水蒸気にて劣化する電子デバイス用部材に適用できるガスバリア性シートとなる。なお、本発明においては、水蒸気透過率は、Ca法で評価している。具体的には、40℃、90%RHの条件下にガスバリア性シートを保持して、Caの腐食成長観察することにより水蒸気透過率を評価している。
本発明のガスバリア性シートは、全光線透過率が60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。全光線透過率をこの範囲とすることにより、十分な透明性を確保できるようになり、その結果、カスバリア性シートをディスプレイの前面(表示面)、太陽電池の開口面等の用途に用いることができる。
本発明のガスバリア性シートは、全光線透過率が60%より小さいことも好ましい。これにより、ガスバリア性シートを透明性が必要とされない用途に用いることができるようになり、その結果、ガスバリア性シートをディスプレイの背面(フタ面)側、真空断熱パネル、太陽電池のバックカバー等の用途に用いることができる。
なお、本発明においては、全光線透過率の測定は、従来公知の方法、例えば須賀試験機製ヘーズメータを用いて測定することができる。この場合、測定を一般環境の下で行えばよい。
[ガスバリア性シートの製造方法]
本発明のガスバリア性シートの製造方法は、基材と、基材に接して設けられた添加剤バリア層と、添加剤バリア層の上に設けられた平坦化層と、平坦化層の上に設けられたガスバリア層と、を有するガスバリア性シートの製造方法であって、基材のガラス転移温度Tgより低い温度で行われる基材洗浄工程と、基材のガラス転移温度Tgより低い温度で添加剤バリア層を形成する添加剤バリア層形成工程と、平坦化層を形成する平坦化層形成工程と、ガスバリア層を形成するガスバリア層形成工程と、を有する。これにより、基材表面に新たな添加剤のブリードアウトを起こすことなく添加剤を洗い流すことが可能となり、基材表面が洗浄されてクリーンかつ基材が安定な状態で添加剤バリア層の形成が行われるために新たな添加剤のブリードアウトが抑制されるとともに、基材に接して設けられる添加剤バリア層が上記のブリードアウトを抑制することとなる。その結果、基材の製造以後の添加剤のブリードアウトが引き起こす基材表面の凹凸を除去し、ガスバリア性シートの製造時の添加剤のブリードアウトによる基材表面の凹凸ひいてはガスバリア層等の凹凸(表面粗さ)を低減することにより、高いガスバリア性を有するガスバリア性シートの製造方法を提供することができる。さらに、ガスバリア性シートの製造時の添加剤のブリードアウトによる基材の透明性の低下の抑制、及び製造後の経時的なブリードアウトによる基材の透明性の低下を抑制することが可能となるガスバリア性シートの製造方法を提供することができる。以下、各工程について説明する。
(基材洗浄工程)
基材洗浄工程は、基材のガラス転移温度Tgより低い温度で行われる。基材について詳細はすでに説明したとおりであるので、ここでの説明は省略するが、例えば、基材が樹脂製であることが好ましい。これにより、基材に含まれる添加剤がよりブリードアウトしやすくなり、その結果、添加剤バリア層を設ける意義が大きくなる。
基材洗浄工程は、基材のガラス転移温度Tgより低い温度で行われる。すなわち、基材洗浄工程を通じて、基材の温度がそのガラス転移温度Tg以上となることのないように制御を行う。具体的には、洗浄プロセス温度を基材のガラス転移温度Tgより低い温度とする。Tg以上の温度では洗浄プロセスの段階で、基材の添加剤のブリードアウトが促進されてしまい、洗浄を行う意義がなくなる。低い温度での洗浄により、添加剤が基材表面から洗い流されるので、基材と添加剤バリア層との接着性も改善しやすくなる。洗浄時の温度は、添加剤のブリードアウトを考慮して、通常Tgよりも10℃低い温度以下、好ましくはTgよりも15℃低い温度以下とする。
基材洗浄工程においては、有機溶剤を用いて基材の洗浄を行うことが好ましい。これにより、基材表面の添加剤を確実に洗い流しやすくなり、その結果、よりクリーンな基材表面に添加剤バリア層を形成することができる。このように基材表面に存在する添加剤等の微粒子成分を除去するため有機溶剤を用いることが好ましい。こうした有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等を挙げることができる。工業生産上の観点からは、好ましくは、メチルエチルケトン、アセトン、イソプロピルアルコール、エタノールを用いる。
基材洗浄工程における洗浄の方法としては、例えば、ブラシ洗浄、シャワー洗浄、及び超音波洗浄等を挙げることができる。これらのうち、工業的に好ましいのは超音波洗浄であるが、超音波洗浄においては洗浄漕の温度が高くなる場合があるので、基材のガラス転移温度Tg以上にならないように温度管理が重要となる。
基材洗浄工程においては、基材の洗浄後、有機溶剤等の洗浄液が基材上に残留するようであれば、乾燥を適宜行えばよい。乾燥の方法は、吸着した液体成分の除去が十分にされる方法であればよく特に制限はないが、低温で行いやすいものとしては、例えば真空乾燥を挙げることができる。このように、乾燥温度は基材のガラス転移温度Tgよりも低い温度で行う。
(添加剤バリア層形成工程)
添加剤バリア層形成工程は、基材のガラス転移温度Tgより低い温度で添加剤バリア層を形成することによって行われる。添加剤バリア層形成工程は、上記説明した無機材料や有機材料を用い、基材のガラス転移温度Tgより低い温度で添加剤バリア層を形成すればよく、特に制限はない。
添加剤バリア層の形成は、通常、基材の表面を洗浄した後に、添加剤バリア層を構成する材料をコーティングし、次いで必要に応じて乾燥・硬化する方法が用いられる。添加剤バリア層を形成する方法としては、塗膜を均一に薄く形成できる方法であればよく、ウェットコーティング法では、スピンコート法、グラビアコート法、(キス)リバースコート法、コンマコート法、リップコート法、CAP(毛細管)コート法、ナイフコート法、ディップコート法等が、またドライコーティング法では、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の方法や、熱CVD法やプラズマCVD法等が、適宜使用される。
添加剤バリア層は、基材のガラス転移温度よりも低い温度で硬化する硬化性樹脂で形成することが好ましい。これにより、基材に与える熱的な影響が少なくなり、その結果、添加剤バリア層形成時の基材からの添加剤のブリードアウトをより効果的に抑制することができる。硬化性樹脂を用いる場合には、硬化前の樹脂材料を溶媒に溶解させた上で、上記ウェットコーティング法を用いて塗布を行えばよい。
ウェットコーティング法を用いる場合の溶剤としては、基材のガラス転移温度Tgより低い温度で溶媒の蒸発速度を制御して均一な添加剤バリア層を形成するために、低沸点溶媒と高沸点溶媒とを適宜混合することが好ましい。低沸点溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、酢酸エチル、ヘキサン、及びメチルエチルケトン(MEK)等を挙げることができ、高沸点溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、N−メチルピロリドン(NMP)、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等を挙げることができる。こうした混合溶媒においては、高沸点溶媒を、通常10重量%以上、80重量%以下含有させる。
添加剤バリア層形成工程における乾燥・硬化は、基材のガラス転移温度Tgより低い温度で行う。具体的には、添加剤のブリードアウトを考慮して、通常Tgよりも2℃低い温度以下、好ましくはTgよりも5℃低い温度以下、より好ましくはTgよりも10℃低い温度以下、さらに好ましくはTgよりも15℃低い温度以下で行う。ここで、添加剤バリア層の温度が基材のガラス転移温度Tg以上とならないように、適宜製造工程上の制御を行ってもよい。例えば、基材を金属ドラムの上に設置して基材を裏面から冷やしながら、添加剤バリア層の乾燥・硬化を行う方法を採用する、添加剤バリア層にあてる温風の角度や位置を制御する、等の方法を適宜用いればよい。
添加剤バリア層形成工程においては、得られた添加剤バリア層の表面に、上述した表面処理を適宜行ってもよい。
(平坦化層形成工程)
平坦化層形成工程においては、平坦化層が形成される。平坦化層の形成方法については、上記説明した材料を用いて行えばよく特に制限はないが、基材のガラス転移温度Tg以上の温度で平坦化層が形成されることが好ましい。これにより、平坦化層形成時に基材が高温にさらされて添加剤のブリードアウトが促進される状態となった場合においても、基材に接して設けられる添加剤バリア層が上記のブリードアウトを抑制することとなり、その結果、製造時の添加剤のブリードアウトによる基材表面の凹凸ひいてはガスバリア層等の凹凸(表面粗さ)の低減、製造時の添加剤のブリードアウトによる基材の透明性の低下の抑制をより有効に行うことができる。
平坦化層の形成は、通常、添加剤バリア層の上に、平坦化層を構成する材料をコーティングし、次いで必要に応じて乾燥・硬化する方法が用いられる。平坦化層を形成する方法としては、それを均一に薄く形成できる方法であればよく、ウェットコーティング法では、スピンコート法、グラビアコート法、(キス)リバースコート法、コンマコート法、リップコート法、CAP(毛細管)コート法、ナイフコート法、ディップコート法等が、またドライコーティング法では、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の方法や、熱CVD法やプラズマCVD法等が、適宜使用される。
平坦化層は、基材のガラス転移温度Tg以上の温度で硬化する硬化性樹脂で形成することが好ましい。これにより、平坦化層形成時に基材から添加剤がブリードアウトしやすい状態となり、その結果、添加剤バリア層を用いる意義がより大きくなる。
硬化性樹脂を用いる場合には、硬化前の樹脂材料を溶媒に溶解させた上で、上記ウェットコーティング法を用いて塗布を行えばよい。溶剤としては、従来公知のものを適宜用いればよい。
平坦化層形成工程における乾燥・硬化は、上述の通り、基材のガラス転移温度Tg以上の温度で行うことが好ましい。こうした方法につき特に制限はないので従来公知の方法を適宜用いることができる。
(ガスバリア層形成工程)
ガスバリア層形成工程においては、ガスバリア層が形成される。ガスバリア層の形成方法については、上記説明した材料を用いて行えばよく特に制限はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法やプラズマCVD法等を適宜用いればよい。これらの方法は、ガスバリア層の種類、成膜材料の種類、成膜のし易さ、工程効率等を考慮して、適宜選択すればよい。
(透明導電層形成工程・補助電極層形成工程)
本発明のガスバリア性シートの製造方法は、ガスバリア層の上に、透明導電層を設ける透明導電層形成工程、及び/又は補助電極層を設ける補助電極層形成工程をさらに有することが好ましい。これにより、透明導電層をOLEDの電極として利用するのみならず、放熱機能及び帯電防止機能をガスバリア性シートに付与することができ、補助電極層をOLEDの電極及びその補助として利用することができるようになり、その結果、ガスバリア性シートの被封止物がOLEDである場合に、その生産性、発光特性、及び寿命を向上させることができるようになる。
透明導電層形成工程においては、透明導電層が形成される。透明導電層の形成方法については、上記説明した材料を用いて行えばよく特に制限はなく、例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、及びCVD等のドライコート法や、めっき法、印刷法、及びスプレーコート法等のウェットコート法、が適宜用いられる。透明導電層は、所定のパターン形状となるようにエッチングを行ってもよい。
補助電極層形成工程においては、補助電極層が形成される。補助電極層の形成方法については、上記説明した材料を用いて行えばよく特に制限はなく、例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、及びCVD等のドライコート法や、めっき法、印刷法、及びスプレーコート法等のウェットコート法、が適宜用いられる。補助電極層は、所定のパターン形状となるようにエッチングを行ってもよい。
(その他の工程)
上記説明したように、本発明のガスバリア性シートにおける積層形態は、本発明の要旨の範囲内において適宜選択することができる。したがって、積層形態に応じて適宜上記説明した工程以外の工程を行えばよい。例えば、添加剤バリア層と平坦化層との間にガスバリア層やアンカーコート層等を挿入する場合には、これらの層の成膜工程を適宜行えばよい。
[有機発光ダイオード(OLED)素子]
本発明のガスバリア性シートは、ガスバリア層の平坦性が高くガスバリア性に優れ、かつ、製造後の経時での透明性も高いので、OLEDを封止するためのフィルムに用いられることが好ましい。
図2は、OLED素子の一例を示す模式的断面図である。OLED素子10は、基板フィルム12と封止フィルム13とを接着剤11で接着することにより、被封止物たるOLED9を封止する形態を採用している。
OLED素子10においては、封止フィルム13として、ガスバリア性シート1が用いられている。これにより、よりガスバリア性の高いガスバリア性シート1で被封止物たるOLED9を封止することになり、その結果、ガスバリア性・透明性がより高く寿命の長いOLED素子10を得やすくなる。
OLED素子10においては、基板フィルム12として、ガスバリア性シート1が用いられている。これにより、より平滑性及び耐熱性が求められる基板フィルム12に対して高い平滑性と耐熱性を有するガスバリア性シート1を適用することができ、その結果、ガスバリア性・透明性がより高く寿命の長いOLED素子10を得やすくなる。なお、封止フィルム13と基板フィルム12とを比較した場合、一般に基板フィルム12の方が要求される性能が厳しくなる。これは、基板フィルム12は、OLED9がその上に直接形成されることになる結果、陽極電極6及び陰極電極8の間での短絡の発生を抑制するために平坦性が高いことが要求され、また、OLED9の製造過程でさらされる乾燥工程等の高温においても十分な耐熱性を有することが要求されるからである。ここで、十分な耐熱性には、基板フィルム12の変形や収縮が起きにくいというだけではなく、高温下での基材からの添加剤のブリードアウトを抑制して基板フィルム12の透明性を高く維持する性能等も含まれる。
OLED素子10は、上述のとおり、封止フィルム13、基板フィルム12のいずれにもガスバリア性シート1を用いているが、本発明においては、封止フィルム又は基板フィルムのいずれか一方に本発明のガスバリア性シートを用いれば所定の効果を得ることができるので、必ずしも両方に適用する必要はない。
OLED素子10は、OLED9が封止されている。OLED9は、陽極電極6、有機EL層7、及び陰極電極8から構成されている。このように、OLED9は、通常、陽極電極6と陰極電極8との一対の電極間に有機化合物を含む有機EL層7を挟持した構造となっており、陽極電極6(アノード電極)/有機EL層7/陰極電極8(カソード電極)の積層構造を採用している。有機EL層7(有機発光層とも言う)には、図2には図示していないが、通常、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、及び電子注入層等が含まれる。そして、画素電極と対向電極が、それぞれ、陽極電極6又は陰極電極8のいずれかに相当し、一対の電極を構成する。こうしたOLED9を構成する各層に用いる材料としては、従来公知のものを用いることができる。以下にその具体例を説明する。
陽極電極6は、有機EL層7に正孔を供給する電極としての機能を有していればよい。このため、陽極電極6の形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、OLED素子10の用途、目的に応じて、従来公知の材料・製造方法を適宜用いればよい。ディスプレイの視認性のために、陽極電極6を透明電極とする場合には、上述した透明導電層をそのまま用いることができる。また、陽極電極6として、上述した補助電極層を用いてもよい。
陽極電極6の上に、絶縁層を部分的に一層以上形成することができる。そのような絶縁層は、好ましくは紫外線硬化樹脂などの光硬化樹脂又は熱硬化性樹脂を含む樹脂材料から構成され、表示の際に、絶縁層のある部分が非発光部となるようパターン状に形成する。また、この樹脂材料にカーボンブラック等を混合することにより、絶縁層をブラックマトリックスとして形成することも好ましい。なお、こうした絶縁層は、基板フィルム12の上に設けてもよい。
有機EL層7は、正孔輸送層及び発光層を積層した積層構造、又は、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層を積層した積層構造を基本構成とするが、陽極電極6と陰極電極8との間には、エレクトロルミネッセンスを起こす有機発光材料からなる発光層を必須の層として、任意の層として発光層に正孔を輸送する正孔輸送層、正孔輸送層に正孔を注入する正孔注入層、電子輸送層、及び電子注入層等を設けることができる。以下、有機EL層7を構成する各層について説明する。
発光層は、通常有機発光材料で構成される。こうした有機発光材料としては、例えば、色素系材料、金属錯体系材料、高分子系材料等の各タイプのものを挙げることができる。
発光層に用いられる色素系材料としては、例えば、シクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリレーン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、オキサジアゾールダイマー、及びピラゾリンダイマー等を挙げることができる。
発光層に用いられる金属錯体系材料としては、例えば、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポリフィリン亜鉛錯体、及びユーロピウム錯体等の、中心金属にAl、Zn、及びBe等の金属、又はTb、Eu、及びDy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、及びキノリン構造等を有する金属錯体を挙げることができる。
発光層に用いられる高分子系材料としては、例えば、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体等、ポリフルオレン誘導体、及びポリビニルカルバゾール誘導体等、又は上記色素系材料や金属錯体系材料を高分子化したものを挙げることができる。
発光層には、必要に応じて、発光効率を向上させる、又は発光波長を変化させる等の目的で所定の材料をドーピングしてもよい。ドーピングを行なうためのドーピング材料としては、例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポリフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、及びフェノキサゾン等を挙げることができる。
発光層の厚さは、OLED9の発光特性の観点から、通常、1nm以上、100nm以下とする。
正孔注入層は、陽極電極6と正孔輸送層との間、もしくは陽極電極6と発光層との間に設けられるものである。正孔注入層を構成する材料としては、例えば、フェニルアミン系、スターバースト型アミン系、及びフタロシアニン系の有機材料、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、及び酸化アルミニウム等の酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェン誘導体等を挙げることができる。正孔注入層の厚さは、通常1nm以上、100nm以下とする。
正孔輸送層は、陽極電極6又は正孔注入層から正孔を受け取り発光層へと輸送する機能を有する。こうした正孔輸送層に用いる材料としては、例えば、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェニレンジアミン誘導体等の各種の誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、有機シラン誘導体、カーボン等を挙げることができる。正孔輸送層の厚さは、通常1nm以上、100nm以下とする。
正孔注入層と正孔輸送層とを一層として構成することもできる。この場合、通常、材料としてPEDOT/PSSを用いる。正孔注入層と正孔輸送層とを一層構成とした場合の厚さは、通常1nm以上、100nm以下とする。
電子輸送層は、発光層と陰極電極8との間、もしくは発光層と電子注入層との間にけられるものである。電子輸送層を構成する材料としては、例えば、オキサジアゾール類又はアルミニウムキノリノール錯体等の、一般的に安定なラジカルアニオンを形成し、イオン化ポテンシャルの大きい物質が挙げられ、具体的には、1,3,4−オキサジアゾール誘導体、もしくは1,2,4−トリアゾール誘導体等を挙げることができる。電子輸送層の厚さは、通常1nm以上、100nm以下とする。
電子注入層は、電子輸送層と陰極電極8の間、若しくは陰極電極8と発光層との間に設けられるものである。電子注入層を構成する材料としては、例えば、1A族又は2A族の金属、それらの酸化物やハロゲン化物を挙げることができる。1A族の金属、その酸化物、及びハロゲン化物の例としては、具体的には、フッ化リチウム(LiF)、酸化ナトリウム、および酸化リチウム等を挙げることができる。また、2A族の金属、その酸化物、及びハロゲン化物の例としては具体的に、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、カルシウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、及び酸化ストロンチウム等を挙げることができる。電子注入層は上記材料を用いて2層構成としてもよい。例えば、フッ化リチウム(LiF)の層とカルシウム(Ca)の層の2層構成で電子注入層を形成してもよい。電子注入層の厚さは、通常1nm以上、100nm以下とする。
陰極電極8は、通常のOLEDに用いることが可能な材料であれば、特に制限はなく、電子が注入し易いように仕事関数の小さい導電性材料であることが好ましい。こうした材料としては、例えば、マグネシウム−銀合金(Mg−Ag)、アルミニウム、銀等を挙げることができる。陰極電極8の厚さは、通常2nm以上、1000nm以下とする。
接着剤11は、基板フィルム12と封止フィルム13とを接着するために用いるものである。接着剤11に用いる材料としては、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂(より具体的には、紫外線硬化性樹脂)、瞬間接着剤等を挙げることができる。より具体的には、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、及びポリエステル樹脂等を挙げることができる。これら材料のうち、透湿度が低く、耐熱性が良好となる観点から、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、及びアクリロニトリル樹脂を用いることが好ましい。
接着剤11は、通常、所定の粘度を有する接着剤をスピンコート法、ダイコート法等で、基材フィルム12の表面のうち、OLED9の周辺に塗布した後、封止フィルム13を被覆して、硬化させることによって形成できる。接着剤11の厚さは、通常100nm以上、また、通常10μm以下、好ましくは1μm以下とする。
以上説明したように、OLED素子10では本発明のガスバリア性シートを用いているので、高いガスバリア性と透明性を維持することが可能となる。
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
[実施例1]
基材として、厚さが188μmのPETフィルム(東洋紡績株式会社製:E−5101、Tg:78℃)を用いた。この基材は、耐光性や耐酸化性等の実使用可能な特性を得るために、酸化防止剤等の所望の添加剤が適量含有されているものであると推測される。
(基材洗浄工程)
上記の基材をメチルエチルケトンの溶液に浸し、室温で5分間超音波洗浄を行った。その後、50℃/30分間クリーンオーブンにて乾燥を行った。
(添加剤バリア層形成工程)
添加剤バリア層を形成する材料として、大日精化工業株式会社製のアクリル樹脂(主剤:硬化剤:希釈剤=5:1:6)を用いた。このアクリル樹脂は、ウレタンアクリレート系の材料を用いたものである。また、希釈剤としては、低沸点溶剤として酢酸エチル、高沸点溶剤としてトルエンを用い、その混合比を1/1とした。添加剤バリア層は、上記材料を基材の一方の面に2μmの厚さになるようスピンコーターにて塗布し、その後ベイク温度70℃で30分間硬化を行うことにより形成した。
(平坦化層形成工程)
平坦化層を形成する材料として、カルドポリマー(新日鐵化学株式会社製)を用いた。平坦化層は、上記材料を添加剤バリア層の一方の面に1μmの厚さになるようスピンコーターにて塗布し、その後ベイク温度150℃で60分間硬化を行うことにより形成した。
(ガスバリア層形成工程)
平坦化層の上に、スパッタリング法にて100nmのSiON膜をガスバリア層として形成した。
(ガスバリア層の表面粗さ測定)
以上のようにして得られたガスバリア性シートの表面の粗さを測定した。具体的には、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)として、セイコーインスツルメンツ社製のNanopics−1000を用い、JIS B0601−1982に準拠して、20μmの範囲にて最大突起長(Rmax)を測定することにより、表面粗さの評価を行った。その結果、ガスバリア層の最大突起長(Rmax)は8nmであった。
(添加剤バリア層の添加剤バリア性の評価)
ガスバリア性シートを光学顕微鏡で観察して、基材上に白点がないことを確認した後、ガスバリア性シートを80℃/90%RHの環境下で10日間保持した。その後、ガスバリア性シートの表面を光学顕微鏡で観察した。その結果、基材からの添加剤のブリードアウトによる白点の発生は観察されなかった。
(ガスバリア性シートのガスバリア性評価)
ガスバリア性シートのガスバリア性は、水蒸気透過率をCa法で評価することによって行った。具体的には、40℃、100%RHの条件下にガスバリア性シートを保持して、Caの腐食成長観察をすることにより水蒸気透過率を評価した。その結果、水蒸気透過率は、0.00009g/m/dayであった。
(添加剤バリア層の接着性の評価)
基材と添加剤バリア層のみを設けたサンプルを別途製造し、添加剤バリア層の接着性を行った。接着性の評価は、クロスカット試験をJIS−K5400の8.5.1の記載に準拠して行った。具体的には、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて、添加剤バリア層を貫通して基材に達する切り傷を縦横につけて、100個のマス目状とし、セロハン粘着テープ(ニチバン社製405番 24mm幅)をマス状の切り傷面に張り付け、消しゴムでこすって完全に付着させた後、垂直に引き剥がした。そして、剥離後の面を目視により観察し、100個のマス目における層残留率(マス目の一部分でも剥がれたものも剥がれた個数として扱う)を接着性の尺度とし、接着性(%)=(1−(剥がれたマス目/100マス))×100を算出して評価した。
上記のクロスカット試験を、上記サンプルの製造直後と、耐湿熱試験後と、の両方で行った。耐湿熱試験の方法としては、温度60℃/湿度95%RHの環境に調整した恒温恒湿器内に240時間、上記サンプルを保持することによって行った。その結果、製造直後の接着性は100%、耐湿熱試験後の接着性は100%であった。
[実施例2]
基材たるPETフィルムの裏面にも実施例1と同様の添加剤バリア層を形成したこと、以外は実施例1と同様にしてガスバリア性シートを製造した。得られたガスバリア性シートにつき、ガスバリア層の表面粗さ測定と、ガスバリア性シートのガスバリア性評価とを行った。その結果、ガスバリア層の最大突起長(Rmax)は7nmであった。また、水蒸気透過率は、0.00009g/m/dayであった。
[実施例3]
基材たるPETフィルムの裏面にも実施例1と同様のスパッタリング法を用いて、100nmのSiON膜を形成したこと、以外は実施例1と同様にしてガスバリア性シートを製造した。得られたガスバリア性シートにつき、ガスバリア層の表面粗さ測定と、ガスバリア性シートのガスバリア性評価とを行った。その結果、ガスバリア層の最大突起長(Rmax)は、8nmであった。また、水蒸気透過率は、0.00008g/m/dayであった。
[実施例4]
基材として、厚さ100μmのPENフィルム(韓国SKC社製、SKYNEX、Tg:123℃)を用いた。この基材は、耐光性や耐酸化性等の実使用可能な特性を得るために、酸化防止剤等の所望の添加剤が適量含有されているものであると推測される。
(基材洗浄工程)
乾燥を90℃/15分間クリーンオーブンにて乾燥を行ったこと、以外は実施例1と同様にして基材洗浄工程を行った。
(添加剤バリア層形成工程)
ベイク温度を90℃として、30分間硬化を行うことにより添加剤バリア層を形成したこと、以外は実施例1と同様にして添加剤バリア層を形成した。
(平坦化層形成工程)
ベイク温度を180℃として、60分間硬化を行うことにより平坦化層を形成したこと、以外は実施例1と同様にして平坦化層を形成した。
(ガスバリア層形成工程)
実施例1と同様にして行った。
(ガスバリア層の表面粗さ測定)
以上のようにして得られたガスバリア性シートのガスバリア層の表面粗さを実施例1と同様にして測定したところ、最大突起長(Rmax)は6nmであった。
(添加剤バリア層の添加剤バリア性の評価)
添加剤バリア層の添加剤バリア性を実施例1と同様にして評価した。その結果、基材からの添加剤のブリードアウトによる白点の発生は観察されなかった。
(ガスバリア性シートのガスバリア性評価)
ガスバリア性シートのガスバリア性を実施例1と同様にして評価した。その結果、水蒸気透過率は、0.00004g/m/dayであった。
(添加剤バリア層の接着性の評価)
基材と添加剤バリア層のみを設けたサンプルを別途作製し、実施例1と同様にして接着性を評価した。その結果、製造直後の接着性は100%、耐湿熱試験後の接着性は100%であった。
[実施例5]
実施例4のガスバリア性シートを用いてOLED素子を製造した。
(OLED素子の製造)
実施例4のガスバリア性シートを基板フィルムとして、その片面に、厚さ160nmのITO膜を、イオンプレーティング法(Ar:16sccm、酸素:22sccm、放電パワー:4.0kW、成膜圧力:0.1Pa)により形成した。その際、基板フィルムの温度を5℃にした。基板フィルムの温度を制御する理由は、基板フィルムの温度によりITOの膜質(結晶性・配向等)が変わるためであり、ITO膜の導電性、フレキキシブル性、及び耐熱性等を考慮して決めたものである。
得られたITO薄膜が成膜されたガスバリア性シートを洗浄した後、ITO膜を所定のパターン状にエッチングを行ない、陽極電極を形成して、フレキシブル透明電極基板を得た。
次いで、陽極電極上に有機EL層を形成した。まず、陽極電極の表面を洗浄した。そして、陽極電極表面上に、PEDOT/PSSの分散液(PEDOT/PSS=1/20、バイエル社製、バイトロン(Baytron(登録商標))P VP CH8000)を、スピンコーティングによって塗布し、塗布後、200℃のホットプレート上に載せて30分間加熱して乾燥させた。さらに、純窒素置換されたグローブボックス内に移して再度、200℃のホットプレート上に載せ15分間加熱して乾燥させ、陽極上に、厚さ80nmのPEDOT/PSSの薄膜を形成した。
PEDOT/PSSの薄膜の上に発光層を形成した。具体的には、有機EL素子用蛍光体(シグマアルドリッチジャパン株式会社製、品番:ADS228GE)をトルエン中に1.0%(質量比)になるよう混合した発光層形成用の塗布液を準備し、この溶液を、上記で得られたPEDOT/PSSの薄膜上に、グローブボックス内にてスピンコーティングによって塗布し、塗布後、130℃のホットプレート上に載せて1時間加熱して乾燥させ、厚さ80nmの発光層を形成した。
次いで、グローブボックス内にて蒸着を行ない、発光層の上に、厚さ3nmのLiFの薄膜、及び厚さ10nmのCa薄膜を順次形成して電子注入層を形成した。
このようにして得た有機EL層の電子注入層上に、厚さ180nmのAl薄膜を形成して陰極電極とした。
周囲に凸部を有する封止用のガラスを用い、この封止用のガラスの凸部に紫外線硬化性接着剤(ナガセケムテック(株)製、品番:XNR5516HP−B1)を塗布した。そして、接着剤を塗布した封止用のガラスを、基板フィルム上に形成された陽極電極/有機EL層/陰極電極(OLED)にかぶせて、基板フィルムと封止用のガラスとを重ね合わせた。その後、接着剤の塗布された箇所に紫外線を照射して接着剤を硬化させた後、基板フィルム/OLED/封止用のガラスの積層体を80℃のホットプレート上に載せて1時間加熱して接着剤を十分硬化させてOLED素子を得た。
(発光特性の評価)
以上のようにして得られたOLED素子の陽極電極(ITO電極)と陰極電極との間に、直流電圧を印可することにより、両電極が交差する所望の位置における発光層を発光させた結果、いずれの位置においても、良好な発光が得られた。
また、OLED素子を23℃に保たれた恒温漕に保存することで、ダークスポット(DS)の成長観察を行い、DSの占有率が発光面の1%に当たるときにこれを保存寿命と定義し、その測定を行った。その結果、保存寿命は9ヶ月であった。さらに、保存寿命測定から100間後において再度DSの観察を行った。その結果、DSの成長は観察されなかった。
また、保存寿命測定に用いたものとは別のOLED素子につき、その発光寿命を測定した。発光寿命は、OLED素子について、初期の輝度が100Cdになるように連続して電圧を印加し、時間の経過に伴う輝度の変化を測定し、初期の輝度が半減する輝度半減時間を発光寿命と定義し、その測定を行った。その結果、発光寿命は3.5万時間であった。
[実施例6]
(OLED素子の製造)
実施例5において、封止用のガラスの代わりに、実施例1で作製したガスバリア性シートを封止フィルムとして用いたこと、以外は実施例5と同様にしてOLED素子を製造した。
(発光特性の評価)
以上のようにして得られたOLED素子の発光特性を、実施例5と同様にして測定した。まず、OLED素子の陽極電極と陰極電極との間に、直流電圧を印可することにより、両電極が交差する所望の位置における発光層を発光させた結果、いずれの位置においても、良好な発光が得られた。また、保存寿命を測定した結果、8ヶ月であった。そして、保存寿命測定から100間後において再度DSの観察を行ったが、DSの成長は観察されなかった。さらに、発光寿命は3万時間であった。
[実施例7]
(OLED素子の製造)
実施例6において、基板フィルムに用いたガスバリア性シートの代わりに、ガラスを基板として用いたこと、以外は実施例6と同様にしてOLED素子を製造した。
(発光特性の評価)
以上のようにして得られたOLED素子の発光特性を、実施例5と同様にして測定した。まず、OLED素子の陽極電極と陰極電極との間に、直流電圧を印可することにより、両電極が交差する所望の位置における発光層を発光させた結果、いずれの位置においても、良好な発光が得られた。また、保存寿命を測定した結果、12ヶ月であった。そして、保存寿命測定から100間後において再度DSの観察を行ったが、DSの成長は観察されなかった。さらに、発光寿命は4万時間であった。
[比較例1]
添加剤バリア層を形成しないこと、以外は実施例1と同様にガスバリア性シートを作製した。得られたガスバリア性シートにつき、ガスバリア層の表面粗さ測定と、ガスバリア性シートのガスバリア性評価とを行った。その結果、ガスバリア層の最大突起長(Rmax)は、215nmであった。また、水蒸気透過率は、0.008g/m/dayであった。
[比較例2]
添加剤バリア層を形成しないこと、以外は実施例4と同様にガスバリア性シートを作製した。得られたガスバリア性シートにつき、ガスバリア層の表面粗さ測定と、ガスバリア性シートのガスバリア性評価とを行った。その結果、ガスバリア層の最大突起長(Rmax)は、35nmであった。また、水蒸気透過率は、0.001g/m/dayであった。
[比較例3]
平坦化層を形成しないこと、以外は実施例4と同様にガスバリア性シートを作製した。得られたガスバリア性シートにつき、ガスバリア層の表面粗さ測定と、ガスバリア性シートのガスバリア性評価とを行った。その結果、ガスバリア層の最大突起長(Rmax)は、24nmであった。また、水蒸気透過率は、0.012g/m/dayであった。
[比較例4]
比較例2で得られたガスバリア性シートを用いたこと、以外は実施例5と同様にしてOLED素子を製造した。そして、発光特性を評価したところ、保存寿命測定から100間後において、DSが多発・拡大し不良となった。
[比較例5]
添加剤バリア層形成工程において、下記に示すように、添加剤バリア層の代わりにハードコート層に用いられている材料を用いて所定の方法でハードコート層を形成したこと、以外は実施例1と同様にしてガスバリア性シートを製造した。以下に、実施例1との相違点である、ハードコート層形成工程の内容について説明する。
(ハードコート層形成工程)
ハードコート層形成用の塗布液を以下の方法により製造した。まず、日産化学株式会社製のコロイダルシリカであるスノーテックスO−40を300gフラスコに計り取り、冷却撹拌しながらγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを135gとメチルトリメトキシシラン49gを徐々に添加した。そして、添加終了後さらに1時間撹拌した。途中、混合液の昇温がなくなった時点で冷却を止めた。その後、混合液を撹拌しながら、希釈溶媒としてイソプロパノール450gを添加し、次に4−ヒドロキシブチルアクリレートを60g添加した。さらに、日本ユニカー株式会社製のレベリング剤L−7001を0.4g添加し、20分撹拌した。以上の操作を経て、ハードコート層形成用の塗布液を得た。
以上のようにして得られたハードコート層形成用の塗布液を、ワイヤーバーにて基材上に塗布した後に120℃で1時間硬化させた。得られたハードコート層の厚さは5μmであった。
(ガスバリア層の表面粗さ測定)
ガスバリア性シートの表面粗さを実施例1と同様にして測定したところ、最大突起長(Rmax)は149nmであった。
(添加剤バリア層の添加剤バリア性の評価)
添加剤バリア層の添加剤バリア性の評価以前に、基材のガラス転移温度Tg以上の温度でハードコート層を形成した結果、ガスバリア性シート製造直後の段階で基材からの添加剤のブリードアウトによる白点の発生が多数観察された。
(ガスバリア性シートのガスバリア性評価)
ガスバリア性シートのガスバリア性を実施例1と同様にして評価した。その結果、水蒸気透過率は、0.004g/m/dayであった。
[比較例6]
比較例5で得られたガスバリア性シートを用いたこと、以外は実施例5と同様にしてOLED素子を製造した。そして、発光特性を評価したところ、保存寿命測定から100間後において、DSが多発・拡大し不良となった。
ガスバリア性シートの一例を示す模式的な断面図である。 OLED素子の一例を示す模式的断面図である。
符号の説明
1 ガスバリア性シート
2 基材
3 添加剤バリア層
4 平坦化層
5 ガスバリア層
6 陽極電極
7 有機EL層
8 陰極電極
9 OLED
10 OLED素子
11 接着剤
12 基板フィルム
13 封止フィルム

Claims (20)

  1. 基材と、該基材に接して設けられた添加剤バリア層と、該添加剤バリア層の上に設けられた平坦化層と、該平坦化層の上に設けられたガスバリア層と、を有するガスバリア性シートであって、
    前記添加剤バリア層が前記基材のガラス転移温度より低い温度で形成されるものである、ことを特徴とするガスバリア性シート。
  2. 前記平坦化層が前記基材のガラス転移温度以上の温度で形成されるものである、請求項1に記載のガスバリア性シート。
  3. 前記基材が樹脂製である、請求項1又は2に記載のガスバリア性シート。
  4. 前記添加剤バリア層が、前記基材のガラス転移温度よりも低い温度で硬化する硬化性樹脂より形成される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリア性シート。
  5. 前記平坦化層が、前記基材のガラス転移温度以上の温度で硬化する硬化性樹脂より形成される、請求項2〜4のいずれか1項に記載のガスバリア性シート。
  6. 前記添加剤バリア層の厚さが、0.5μm以上、15μm以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のガスバリア性シート。
  7. 前記ガスバリア層の表面の最大突起長(Rmax)が2nm以上、20nm以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のガスバリア性シート。
  8. 水蒸気透過率が0.00009g/m/day以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のガスバリア性シート。
  9. 前記ガスバリア層の上にさらに透明導電層及び/又は補助電極層を設ける、請求項1〜8のいずれか1項に記載のガスバリア性シート。
  10. 有機発光ダイオードの封止フィルムとして用いられる、請求項1〜9のいずれか1項に記載のガスバリア性シート。
  11. 有機発光ダイオードの基板フィルムとして用いられる、請求項1〜9のいずれか1項に記載のガスバリア性シート。
  12. 全光線透過率が60%以上である、請求項1〜11のいずれか1項に記載のガスバリア性シート。
  13. 全光線透過率が60%より小さい、請求項1〜11のいずれか1項に記載のガスバリア性シート。
  14. 基材と、該基材に接して設けられた添加剤バリア層と、該添加剤バリア層の上に設けられた平坦化層と、該平坦化層の上に設けられたガスバリア層と、を有するガスバリア性シートの製造方法であって、
    前記基材のガラス転移温度より低い温度で行われる基材洗浄工程と、
    前記基材のガラス転移温度より低い温度で前記添加剤バリア層を形成する添加剤バリア層形成工程と、
    前記平坦化層を形成する平坦化層形成工程と、
    前記ガスバリア層を形成するガスバリア層形成工程と、
    を有する、ことを特徴とするガスバリア性シートの製造方法。
  15. 前記平坦化層形成工程が、前記基材のガラス転移温度以上の温度で前記平坦化層を形成するものである、請求項14に記載のガスバリア性シートの製造方法。
  16. 前記基材洗浄工程において、有機溶剤を用いて前記基材の洗浄を行う、請求項14又は15に記載のガスバリア性シートの製造方法。
  17. 前記基材が樹脂製である、請求項14〜16のいずれか1項に記載のガスバリア性シートの製造方法。
  18. 前記添加剤バリア層形成工程において、前記基材のガラス転移温度よりも低い温度で硬化する硬化性樹脂で前記添加剤バリア層を形成する、請求項14〜17のいずれか1項に記載のガスバリア性シートの製造方法。
  19. 前記平坦化層形成工程において、前記基材のガラス転移温度以上の温度で硬化する硬化性樹脂で前記平坦化層を形成する、請求項15〜18のいずれか1項に記載のガスバリア性シートの製造方法。
  20. 前記ガスバリア層の上に、透明導電層を設ける透明導電層形成工程、及び/又は補助電極層を設ける補助電極層形成工程をさらに有する、請求項14〜19のいずれか1項に記載のガスバリア性シートの製造方法。
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