JP2009262009A - 非磁性金属の識別方法及び識別回収装置 - Google Patents

非磁性金属の識別方法及び識別回収装置 Download PDF

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Abstract

【課題】銅、アルミニウム、マグネシウム等の比較的大きな形状の破砕金属片に対してその材質を自動的に識別しその結果に基づいて識別すること、ならびに、アルミニウム合金破砕金属片に対して展伸材と鋳造材に由来するものを自動的に識別しその結果に基づいて識別することが可能な簡素かつ高性能な自動識別装置を実現する。
【解決手段】
非磁性金属の識別回収装置は、破砕金属片1を供給する供給装置2、供給された破砕金属片1を搬送するベルトコンベア3、5、破砕金属片1の重量を測定する重量計4、フォトセンサ6、レーザー3次元計測器7、及び分別回収機構を備えており、これらの動作を制御装置16によって統括制御を行い、材質毎に識別して、回収する。
【選択図】図1

Description

本発明は、廃家電、廃自動車等のシュレッダー処理施設で回収される非磁性金属破砕片の混合物(ミックスメタル)に含まれる20〜200mm程度の比較的大きな銅、アルミニウム、マグネシウム等を、重液を用いた選別法や人手による選別方法によらずに、材質毎に識別回収するのに適した識別方法及び識別回収装置に関する。
さらに、本発明は、識別したアルミニウム破砕片に対して、展伸材に由来するものと鋳造材に由来するものとに分離する識別方法及び識別回収装置に関する。
廃家電、廃自動車などのシュレッダー処理施設では、破砕後、磁力選別により鉄を除いた後、風力選別機やエアテーブルなどにより樹脂などの非金属を除き、渦電流選別機により銅やアルミ二ウム等の非磁性金属をまとめてミックスメタルとして回収するのが一般的である。
このミックスメタルをリサイクルするには、さらに材質別に選別する必要がある。その手段として、通常は重液を用いた比重選別や人手による選別がよく用いられるが、処理コスト・効率の点で問題があるため、次のような特殊な手段が知られている。
例えば、カラー識別機によって銅を他の金属から選別する方法が公知である(特許文献1参照)。また、本発明と同様な金属破砕片の選別回収技術として、金属塊のインダクタンス検出による方法が公知である(特許文献2参照)。さらに、破砕片の体積を、当該破砕片の存在によって気体容積が変動することを利用して計測し、別途重量値を測定して比重を算出し材質を同定する方法が公知である(特許文献3参照)。
また、廃家電、廃自動車等の中間処理施設で回収されるアルミニウムスクラップには、種々の成分のアルミニウム合金が混在するが、特に展伸材用の合金と鋳造材用の合金が混在した場合には、不純物元素の混入によって、二次合金の用途が鋳物やダイカストに限定されてしまいリサイクルの経済性が低下するという問題がある。
こうした事態を回避するため、アルミニウムスクラップについて展伸材に由来するものと鋳造材に由来するものをさらに選別する技術が要請されているが、これに対応可能な手段としては、蛍光X線分析等によって合金の元素組成を直接測定するしかないのが現状である。
さらに、物体の立体形状測定技術を廃棄物の識別に応用した例としては、2方向に配置したカメラもしくはラインセンサで取得した撮像信号を計算処理して物体の立体形状を導出したケースが公知である(特許文献4、5参照)。
特開平6−106091公報 特開平9−24344公報 特開平8−71528公報 特開平11−83461公報 特開平10−192794公報
各種金属や樹脂などの非金属が混在した廃棄物を処理する過程において発生する銅、アルミニウム、マグネシウム等の非磁性金属をさらに材質ごとに分離回収する場合、渦電流選別機では十分な精度でこれらを分離できない。
風力選別やエアテーブルは、概ね10mm以下の比較的小さな形状の破砕片については適用可能であるが、これより大きく高重量の破砕片では分離が困難である。
カラー選別機では、アルミニウムとマグネシウムのように色調が似ている金属や塗装により着色された金属などの選別には適さない。また、重液を用いた比重選別では廃水処理設備などに要するコストが問題となる。
このため、比較的大きな形状の非磁性金属の破砕片の選別は、主に人手によって行われているが、騒音や汚れなどの作業環境上の問題やコスト増となる問題があった。こうしたことから、上記特許文献2及び3記載の発明がされているが、廃棄物処理の現場ではほとんど用いられていないのが現状である。
また、前記のように、アルミニウム合金破砕片について展伸材由来のものと鋳造材由来のものを選別する手段については、すでに蛍光X線分析による同定法があるが、機器そのものが非常に高価であるのに加え、原理的に物体表面近傍の情報を得る分析手法であるため、廃棄物を対象にした場合、汚れや塗装等の影響によって正確な分析ができないことが多い。
本発明は、従来困難とされてきた銅、アルミニウム、マグネシウム等の比較的大きな形状の破砕片に対してその材質を自動的に識別しその結果に基づいて識別すること、ならびに、アルミニウム合金破砕片に対して展伸材と鋳造材に由来するものを自動的に識別しその結果に基づいて識別することが可能な簡素かつ高性能な自動識別装置を提供することを目的としている。
本発明は上記課題を解決するために、非磁性金属の破砕片を搬送するベルトコンベア上に供給装置、重量計、レーザー3次元計測器、及び分別回収機構を備え、これらの動作を制御装置によって統括制御を行い、材質毎に識別して、回収することを特徴とする非磁性金属の識別回収装置を提供する。
本発明は上記課題を解決するために、非磁性金属の破砕片の重量と1台のレーザー3次元計測器による測定によって得られる破砕片の立体形状情報を用いた演算処理工程の結果に基づいて、非磁性金属破砕片の材質や形状を自動的に識別する方法において、前記演算処理工程は、破砕片の見掛け密度、体積、面積、縦長、横長、最大高、及び重心点高の変数を用いて判別関数の値を算出し、この値と予め設定した閾値とを比較することにより行い、前記判別関数と閾値については、あらかじめ破砕片の上記変数に関する測定データを見掛け密度の大きさ別にグループ分けしたデータベースを作成し、このグループごとに多変量解析を行うことによって決定することを特徴とする非磁性金属の識別方法を提供する。
本発明の非磁性金属識別装置とその識別方法及び識別装置を用いることで、以下のような顕著な効果が生じる。
(1)従来技術では効率的な識別が困難であった20〜200mmの比較的大きな形状を持つ銅、アルミニウム、マグネシウム等の金属破砕片を低コストで材質ごとに識別することが可能である。
(2)アルミニウム合金に対して、破砕片の形態の違いによって展伸材に由来するものと鋳造材に由来するものとを低コストで識別することが可能である。本発明によれば、破砕片の汚れや塗装の影響を受けずに破砕片を識別できる。
(3)物体の立体形状測定技術を廃棄物の識別に応用した例としては、特許文献4、5に示されているような、2方向に配置したカメラもしくはラインセンサで取得した撮像信号を計算処理して物体の立体形状を導出したケースがある。このような公知技術に比較して、本発明では1台のレーザー3次元計測器によって物体の立体形状を数値データとして直接測定するため、識別のための複雑なデータ処理が比較的容易に行えるという利点がある。
本発明に係る非磁性金属の識別方法及び識別回収装置の実施の形態及び実施例を図面を参照して、以下に説明する。
図1に、本発明による非磁性金属識別回収装置の全体構成の実施の形態を示す。破砕金属片1を供給する供給装置2、供給装置2から供給された破砕金属片1を搬送するベルトコンベア3、5、破砕金属片1の重量を測定する重量計4、フォトセンサ6、レーザー3次元計測器7、及び分別回収機構を備え、これらの動作を制御装置16(実際はコンピュータを使用する。)によって統括制御を行うように構成されている。
破砕金属片1は、供給装置2からベルトコンベア3に個別に供給され、重量計4に達した際にまず重量が測定され、その結果が制御装置16に送られる。続いて、フォトセンサ6によって破砕金属片1を検知すると、その検知信号を受けて、上方に吊り下げられたレーザー3次元計測器7が動作し、破砕金属片1の立体形状が計測される。
制御装置16において、重量と立体形状に関する情報を変数とする演算処理によって破砕金属片1の識別を行う。このときのアルゴリズムについては後記する。識別を終えた破砕金属片1はその結果に基づいて、コンプレッサ15、電磁バルブ13、14及びアクチュエータ11、12から成る分別機構(アクチュエータ)によって分別され、それぞれ各回収容器8、9、10に収納される。
図2に、本発明による金属識別回収の処理フローを示す。
図3に、本装置のベルトコンベア上においてレーザー光を照射された破砕金属片の拡大図を示す。本レーザー3次元計測器は、一定方向に移動する物体をフォトセンサで検出すると、瞬時に横幅25cm程度のスリット状のレーザー光を斜め前方から照射し、物体表面での反射光ラインの位置変化をCCDによって検出して、立体形状をデジタルデータとして記録する。
本装置において識別に用いる測定値は、重量、体積、鉛直上方への投影面積(以下、面積と表記)、縦長(縦方向長)、横長(横方向長)、最大高、鉛直上方への投影面の重心点の高さ(以下、「重心点高」と表記)である。
破砕金属片の識別を行うにあたっては、まず、識別対象とする破砕金属片について代表的な複数のサンプルを抽出して繰り返し測定を行い、表1(判別分析に用いる変数を示す表)に示す14通りの変数値ついてのデータベースを作成する。このとき、ある破砕金属片を測定したときに得られる14個の変数値の組み合わせを1ケースとしてデータベースに登録する。
Figure 2009262009
これらの変数値は、破砕金属片の立体形状の他に、搬送方向に対する破砕金属片の配向(具体的にはコンベアに置かれた破砕金属片の向き)にも依存するので、同一の破砕金属片でも配向が異なる場合は異なる値を取る。このため、複雑な形状を有する破砕金属片に対しては、できるだけ多くの配向についての測定データを収集し、それぞれ別のケースとしてデータベースに登録する。
ここでいうデータとは、ある破砕金属片をある配向で測定したときに得られる(X〜X14)の数値の組み合わせである。これを1ケースとし、同一の破砕金属片でも配向が異なる場合は、別のケースとしてデータベースに登録する。
また、本発明による「識別」とは、「測定されたあるケースがどの材質に該当するのか、あらかじめ登録した大量のケースデータに照らし合わせて判定する」という作業なので、例えば10円玉のように完全に対称な形状のものは1ケースの登録でも十分であるが、識別の精度をあげるためには、複雑な形状を持つ破砕金属片ほど、登録するケース数を多くするとよい。
次に、データベースに登録した全ケースを変数値Xの大きさの順にソートし、Xについて適当な境界値を設定して複数のケース群にグループ分けする。ここで、変数値Xとは、本装置で測定された重量値を体積値で除した値であり、以下、見掛け密度と表記する。
見掛け密度の大きさに従ってグループ分けされた各ケース群に対し、多変量解析法の一種である判別分析法を適用して、あるケースとして測定される破砕金属片の材質を識別するためのアルゴリズムをあらかじめ決定する。
多変量解析法及び判別分析法の詳細は、例えば「応用統計ハンドブックp318〜p328、養賢堂(1986)」に示されているが、その概要は、次のとおりである。多変量解析法とは、同時に調査して得られた複数の項目(本発明では「変数」に相当する。)からなる資料(本発明では「ケース群」に相当する。)の項目間の関連を調べ、全体として資料を理解・分析する統計解析の方法である。判別分析法とは、この資料を所望の目的に沿って2つのグループに分ける際の、合理的に判別する基準(本文における判別関数)を探索する多変量解析の一つの方法である。
ここでは、破砕金属片の材質を目的変数、立体形状に関する表1に示した14通りの変数を説明変数として、式1で記述される判別関数Z(X)を算出する。すなわち、判別関数Z(X)のa、b、c...の15個の数値を算出する。そして、これら15個の数値を判別関数Z(X)のa、b、c...に入れた判別関数Z(X)の式に、各ケースのX〜X14の変数値を代入して算出される判別関数値(各ケースについての判別得点)は、破砕金属片の材質に関連した値となる。
ここで、材質とは銅、アルミ、マグネシウムといった金属の種別のことであり、これを(例えば銅とアルミを判別する際には)銅を0、アルミを1といった具合に異なる整数値で表して、この値を各ケースデータに追加して全15個の変数を用いて判別分析を行う。このような、判別分析における「正解」を表す変数のことを目的変数と呼ぶ。
判別分析は、2グループにしか分離できないので、3種の金属が混在するケース群に対しては、例えば、まず「銅とアルミを0、マグネシウムを1」としてマグネシウムを分離後、次の判別分析で「銅を0、アルミを1」とし、銅とアルミを分離するプロセスが必要になる。なお、後記するアルミ鋳物材とアルミ展伸材の判別を行う際は、鋳物材を0、展伸材を1という具合に数値化して判別分析を行う。
ここで判別分析の対象としたすべてのケースの判別得点を算出しその大きさの順にソートすると、材質の違いに応じて判別得点の序列が生じるので、最も判別の精度が高まる判別得点値を閾値として設定し、閾値より大きな判別得点となるケースを材質A、閾値より小さな判別得点となるケースを材質Bという具合に識別する。
一般の判別分析では判別得点の正負によって(常に閾値を0とする)2グループに分離する。しかし、破砕片のケースデータを対象にして実際に判別得点の計算を行うと、下記の表7のような状況になることが頻繁にある。このとき、閾値を0とすると判別の的中率は銅2/3、アルミ2/2となるのに対して、閾値を−0.5〜−2.6の値に設定すると的中率は銅3/3、アルミ2/2となり判別の精度が向上する。上記「最も判別の精度が高まる判別得点値」とは、−0.5〜−2.6の任意の値のことであり、例えば、−1.5というように閾値を設定する。
Figure 2009262009
(式1)
(X)=a+b+c+……+n13+o14 (n=1,2,3……)
大量のケースを扱う場合、一個の判別関数では破砕金属片の材質の正確な識別は困難であるため、判別関数を複数個設定することで精度を高める手法をとる。以下に、その設定方法についてさらに説明する。
図4は、アルミ、銅、マグネシウムの3種の破砕金属片を識別することを想定したアルゴリズムの1例である。ここでは、見掛け密度の違いに応じて、データベースに登録された全ケースを15グループにグループ分けしている。本例では、見掛け密度が4.5g/cm以上に計測された場合は直ちに銅と識別し、0.6g/cm以下に測定された場合は、直ちにアルミと識別することとする。
なお、ケース群をグループ分けする際の見掛け密度の境界値や分割後のグループ数は、識別対象となる母集団の規模、性質に応じて任意に設定してよい。以下に、見掛け密度が2.9〜2.3g/cmにあるケース群について例示する。
まず、このクループにある全ケースを対象として1段目の判別分析を行う。前記の方法によって、判別関数Z(X)を算出するとともに、関数Z(X)による判別得点についての閾値αを決定する。そして、各ケースの判別得点を閾値αと比較することによって全ケースを2グループに分割する。この段階では、各グループには、アルミ、銅、マグネシウムが混在しており、判別得点の違いによって材質を指定することはできない。
次に、分割された2つのグループについて、それぞれのグループに所属するケース群を対象として2段目の判別分析を行い、判別関数Z(X)、Z11(X)を決定するとともに、判別得点Z値、Z11値についての閾値を決定する。さらに、判別得点と閾値を比較することによって、両グループを規模の小さなグループに分割する。ここでは、2つ以上の閾値を設定して、3つ以上のグループに分割する。このときのグループ数(閾値の数)についても、取り扱う母集団の規模、性質に応じて任意に設定可能である。
このように、3段目の判別分析において対象となるケース数ができるだけ少なくなるように、小さなグループに分割することによって、3段目以降の判別分析における精度が向上する。なお2段目の判別分析における閾値の決定においては判別の精度は問題とせずに、分割後のグループに含まれるケース数を概ね50ケース以下にすることが肝要である。
なお、上記2段目の判別分析を行い、判別関数Z(X)(もしくはZ11(X))を決定する場合について、1段目と2段目の判別関数Z(X)と判別関数Z(X)(もしくはZ11(X))は、同じではない。例えば、1段目の判別分析でA,B,C,Dのケース群をA,Bのケース群とC,Dのケース群に分離する場合は、A,B,C,Dの4つのケースの情報に基づいて判別関数が算出されるのに対して、2段目の判別分析でA,Bのケース群をAとBに分離する場合は、AとBの2つのケースの情報だけで判別関数を算出する。
このように、1段目と2段目では、判別分析の対象となるケース群に含まれるケースの“メンバー”が異なるので、これらを分離するための判別関数も当然異なることになる。
図4に示すように、Z側のグループに移行したケース群については、閾値α〜ιを設定して10個のグループに分割する。このとき、判別得点(Z値)が過大もしくは過小となるケースについては材質を指定できる。また、Z〜Z10のグループに分割されたそれぞれのケース群に対して、3段目の判別分析を行い、判別得点に対して閾値をα、βを設定し、ケース群を3分割する。この段階で多くのケースについて材質を指定できるが、一部についてはさらに4段目の判別分析を行い、最終的な閾値αと材質を指定する。
1段目の判別分析の結果によってZ11側に移行したケース群ついてもこれと同様の手順を取る。また、これと異なる見掛け密度区間に属するケース群ついても、まったく同様の手順で判別関数と閾値を設定し、材質の識別に至るアルゴリズムを決定する。
このように決定したすべての判別関数について、a、b、c...の15個の数値と判別閾値α、β、γ....の組み合わせを制御装置に記憶させる。
以上の準備が終了後、材質が未知の試料を搬送して識別を行う。重量計と3次元計測器で得られる測定値を用いて、上記の判別関数の値を算出し、この値を事前に設定した判別の閾値と比較することによってアルゴリズムを分岐し、最終的に2〜4段の判別分析によって破砕金属片の材質を識別する。
表2〜4を用いて、材質が未知の破砕金属片について識別過程をより具体的に説明する。表2は、上述の手順によって決定した、見掛け密度区間2.9〜2.3g/cmにある一部の判別関数の係数値とその閾値を示している。
Figure 2009262009
今、ある破砕金属片に対して表3に示した7個の測定値を得たとすると、表1に示した定義に基づいて、表3に示したX〜X14の変数値が直ちに算出される。この場合、本破砕金属片の見掛け密度値は2.35g/cmであり、図4に示した手順によって識別を行うことができる。
Figure 2009262009
まず、表2中のZの列に示した係数a〜oと表3中の変数値X〜X14を式1に代入するによってZ=1.12を得る。この値をあらかじめ設定した閾値α=−0.51を比較すると、Z>αとなるので、アルゴリズムはZ側に移行する。
続いて、表2中のZの列に示した係数と変数値から同様の計算によってZ=0.58を得る。Zではα=2.38、β=−1.08、γ=−4.30の3つの閾値があり、この場合はβ<Z<αであるので、アルゴリズムはZに移行する。
続いて、表2中のZの列に示した係数と変数値から同様の計算によってZ=1.68を得る。Zではα=1.95、β=−3.50の2つの閾値があり、この場合はβ<Z<αであるので、アルゴリズムはZ3−2に移行する。
続いて、表2中のZ3−2の列に示した係数と変数値から同様の計算によってZ3−2=22.03を得る。Z3−2では閾値はα=−2.00のみでありこの場合はZ3−2>αとなり、最終的に本破砕金属片は銅であると識別される。表4は、これと同様の計算手順によって、アルミと識別される破砕金属片の例である。
Figure 2009262009
以下に、上記方法によって破砕金属片の識別が可能となる理由をさらに補足して説明する。図5は、ある廃自動車シュレッダー処理施設から入手した3種の金属破砕金属片(アルミ300個、マグネシウム250個、銅(真鍮を含む、以下、銅と表記)105個)について、コンベア上での配向が異なる状態で各破砕金属片について15回ずつ測定した際の見掛け密度の頻度分布を示している。
図中、アルミについては鋳造材(cast)と展伸材(wrought)を別々に示している。また、マグネシウムについては、全サンプルが鋳造材であり、銅については鋳造材と展伸材を区別せずに表示している。本図から、本装置で測定される見掛け密度は、破砕金属片の種類によらず真密度(Al2.7、Mg1.7、Cu7.9−8.9g/cm)よりも小さな値となることがわかる。
その理由は、本3次元計測器は一定方向から見た情報に基づく計測であるため、レーザー光が到達しない死角域が発生した場合、影に相当する部分を体積に含めて余計にカウントするためである。
展伸材に多く見られる板状・薄手の部材が屈曲した破砕金属片では、破砕金属片の内部やコンベアとの隙間において、このような検知できない空隙が多く生じ、その占める割合が相対的に高くなるため、鋳造材に多く見られる塊状・厚手の破砕金属片と比較して見掛け密度の誤差が大きくなったものと考えられる(図6にこの概念図を示す)。
銅については、鋳造材を主体とする約半数が見掛け密度3.4 g/cm以上に測定されているが、薄手の管材ではやはり誤差が大きくなり、低い密度域にまで分布が広がっている。従って、破砕金属片の重量と体積を測定して見掛け密度を比較するだけではこれらの正確な識別は困難である。
図7は、図5と同一の試料について、破砕金属片の立体形状に関する3種の変数について、0.2 g/cm間隔の見掛け密度の区間ごとの平均値をプロットしたものである。図7(a)に見られるように、マグネシウムの破砕金属片は概ねX=0.7〜1.8 g/cm見掛け密度値を取るが、同じような見掛け密度となるアルミ展伸材やアルミ鋳造材と比較すると、これらよりも面積Xが小さくなる傾向がある。
また、図7(b)及び(c)に見られるように、アルミ鋳造材と銅との見掛け密度の重なりが問題となるX=1.8 g/cm以上では、物体の高さに関する指標であるXやX11値に両者の違いがある。また、アルミ鋳物材とアルミ展伸材についても、これらの見掛け密度が重なり合うX=1.2〜1.6 g/cmの範囲において、いずれの変数にも顕著な違いが見られる。
このことから、見掛け密度をある狭い区間に限定して考えれば、同一区間に存在するアルミ鋳物材、アルミ展伸材、マグネシウム、銅の破砕金属片の立体形状には統計的に見て何らかの違いがあり、多変量解析によってその特徴を上手く抽出することでこれらの識別が可能となる。
(Mg−Al−Cuの分離)
廃自動車のシュレッダー処理施設の非鉄金属選別ラインから採取した、銅(真鍮を含む)、アルミニウム合金、マグネシウム合金の3種類の金属破砕金属片(20〜250mm程度)を材質別に識別する試験を実施した。
まず、無作為に抽出した破砕金属片について、図1の装置を用いて配向を変えながら測定を繰り返し、表1に示した14の変数についてのデータベースを作成した。データベースに登録したサンプル数は、銅:4865ケース(個数105)、アルミ:13316ケース(個数300)、マグネシウム:11045ケース(個数250)である。
判定アルゴリズムは図4と同様のものとし、見掛け密度を15区間に分割、各区間において4〜41通りの判別関数とその閾値を設定して、最大4段の判別分析によって材質を識別する形式とした。
その後、データベースに未登録の破砕金属片300個(アルミ150個、マグネシウム100個、銅50個)について、配向を変えながら各5回ずつ測定を行い、材質の的中率を調べた結果を表5に示す。銅、アルミ、マグネシウムのいずれも90%以上の的中率で識別が可能であった。
Figure 2009262009
(Al鋳物材−Al展伸材の分離)
廃自動車のシュレッダー処理施設の非鉄金属選別ラインから採取したアルミニウムの破砕金属片(20〜250mm程度)を鋳物材と展伸材に分類し、上記と同様のデータベースを作成した。登録したサンプル数は、Al鋳物材:5454ケース(116個)、Al展伸材:7865ケース(214個)である。
判定アルゴリズムは、見掛け密度を11区間に分割して区間毎に5〜26通りの判別関数と閾値を設定し、最大4段の判別分析によって未知試料を同定する形式とした。
データベースに未登録のアルミ破砕金属片200個(鋳物材100個、展伸材100個)について、配向を変えながら各5回ずつ測定を行い、材質の的中率を調べた結果を表6に示す。いずれも97%の的中率で識別が可能であった。
Figure 2009262009
以上のとおり、廃自動車等のシュレッダー処理施設において、渦電流選別機の後に本発明による非磁性金属選別装置を配置することにより、非磁性金属破砕金属片の混合物に含まれる20〜200mm程度の比較的大きな銅、アルミニウム、マグネシウム等を、重液を用いた選別法や人手による選別方法によらずに材質毎に識別回収することが可能となる。
以上、本発明に係る非磁性金属の識別方法及び識別回収装置の実施の形態及び実施例を図面を参照して説明したが、本発明はこのような実施例に限定されることなく、特許請求の範囲記載の技術的事項の範囲内で、いろいろな実施例があることは言うまでもない。
産業上の利用の可能性
本発明に係る非磁性金属の識別方法及び識別回収装置は、事前に行うデータ収集と多変量解析において、対象物を適宜変更することにより、金属以外の識別にも応用可能である。こうしたことから、本発明は廃自動車等のリサイクルの効率化や経済性の向上に寄与するものと考えられる。
さらに発明に係る非磁性金属の識別方法及び識別回収装置は、事前のデータ収集において識別対象物を変更すれば、他の物体の識別にも応用可能である。例えば各種工業製品の製造工程管理、食品や農水産物等の識別といった分野にも応用できる。
本発明による金属識別回収装置の全体構成を示す図である。 本発明による金属の識別回収の処理フロー図である。 レーザー光を照射された金属破砕金属片の拡大図である。 金属の材質を判別するためのアルゴリズムの例を示す図である。 本装置で測定した金属破砕金属片の見掛け密度分布を示す図である。 本装置で検知できない空隙についての説明図である。 本装置で測定した破砕金属片の立体形状に関する3種の変数と見掛け密度の関係を示す図である。
符号の説明
1 破砕金属片
2 供給装置
3、5 ベルトコンベア
4 重量計
6 フォトセンサ
7 レーザー3次元計測器
8、9、10 回収容器
11、12 アクチュエータ
13、14 電磁バルブ
15 コンプレッサ
16 制御装置

Claims (2)

  1. 非磁性金属の破砕片を搬送するベルトコンベア上に供給装置、重量計、レーザー3次元計測器、及び分別回収機構を備え、これらの動作を制御装置によって統括制御を行い、材質毎に識別して、回収することを特徴とする非磁性金属の識別回収装置。
  2. 非磁性金属の破砕片の重量と1台のレーザー3次元計測器による測定によって得られる破砕片の立体形状情報を用いた演算処理工程の結果に基づいて、非磁性金属破砕片の材質や形状を自動的に識別する方法において、
    前記演算処理工程は、破砕片の見掛け密度、体積、面積、縦長、横長、最大高、及び重心点高の変数を用いて判別関数の値を算出し、この値と予め設定した閾値とを比較することにより行い、
    前記判別関数と閾値については、あらかじめ破砕片の上記変数に関する測定データを見掛け密度の大きさ別にグループ分けしたデータベースを作成し、このグループごとに多変量解析を行うことによって決定することを特徴とする非磁性金属の識別方法。
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