まず、主に図1から図6を参照して、本発明を適用した沈胴式ズームレンズ鏡筒1の全体構造を説明する。図1及び図2はズームレンズ鏡筒1の断面を示しており、図1は撮影を行わない収納状態、図2の上半断面はズーム撮影領域のワイド端、図2の下半断面はテレ端をそれぞれ示している。図3から図6は、ズームレンズ鏡筒1の要部の分解斜視図である。
ズームレンズ鏡筒1は、物体側から順に第1レンズ群(前方光学要素)LG1、第2レンズ群(退避光学要素)LG2、シャッタS及び絞りA(進退光学要素、光量調節部材)、第3レンズ群(後方光学要素)LG3、フィルタ28及びCCD(撮像素子)24を備えた3群タイプの光学系を備えている。この光学系は焦点距離可変のズーム光学系であり、第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2を光学系の光軸(撮影光軸)Oに沿って所定の軌跡で進退させることによってズーミングを行う。また、光軸Oに沿って第3レンズ群LG3を移動させることでフォーカシングを行う。
ズームレンズ鏡筒1の光学系を構成する光学要素のうち、フィルタ28とCCD24はCCD支持板(後方の別部材、固定部材)23に保持されている。第1レンズ群LG1から第3レンズ群LG3までは、CCD支持板23の前部に固定された鏡筒ハウジング11の内側に支持されている。
図3に示すように、第3レンズ群LG3を保持する3群レンズ枠(後方の別部材)7は、円筒状の進退ガイド部7aに貫通形成されたガイド穴に対して、鏡筒ハウジング11とCCD支持板23の間に固定された3群ガイド軸22を摺動自在に挿通させることにより、光軸Oと平行な方向に移動可能に直進案内されていて、AFモータ31の駆動力によって同方向に進退移動させることができる。より詳しくは、AFモータ31は送りねじ31aを回転させ、送りねじ31aにはAFナット31bが螺合している。AFナット31bは、3群レンズ枠7に設けたガイド突起7bとの係合関係によって回り止めされており、送りねじ31aが正逆に回転されると光軸Oと平行な方向に進退移動する。3群レンズ枠7は、鏡筒ハウジング11との間に張設した引っ張りばねからなる3群付勢ばね39によって光軸方向前方へ移動付勢されていて、この付勢力によって、移動制御板7cをAFナット31bに当接させている。そのため、AFナット31bが光軸方向前方に移動されると、3群付勢ばね39の付勢力で3群レンズ枠7が追随して前方へ移動され、AFナット31bが光軸方向後方に移動されると、3群付勢ばね39の付勢力に抗して移動制御板7cが押し込まれて3群レンズ枠7が後方へ移動される。
鏡筒ハウジング11の内側にはヘリコイド環12が支持されている。ヘリコイド環12の外周面にはズームギヤ21と噛み合うギヤ12aが形成されており、ズームギヤ21は、図3に示すズームモータ30によって回転駆動されてヘリコイド環12に回転力を伝達する。図1の収納(沈胴)状態と図2の上半断面のワイド端の間は、鏡筒ハウジング11とヘリコイド環12はヘリコイド結合されており、ズームモータ30を駆動させると、鏡筒ハウジング11の内面ヘリコイド11aの案内によってヘリコイド環12が回転しながら光軸方向に移動する。一方、ワイド端とテレ端の間の撮影状態にあるときには、ヘリコイド結合が解除され、代わりに鏡筒ハウジング11の内周面に形成した周方向溝11bに対してヘリコイド環12の外面に設けた突起12bが係合し、ズームモータ30の駆動に応じてヘリコイド環12が光軸方向に移動せずに定位置で回転される。ヘリコイド環12の前部には、該ヘリコイド環12と共に回転及び光軸方向移動を行う第1繰出筒13が結合されている。
第1繰出筒13とヘリコイド環12の内側には、直進案内環14が支持されている。直進案内環14は、鏡筒ハウジング11の内周面に形成した直線溝11cと直進案内突起14aとの係合関係により光軸方向に直進案内されており、第1繰出筒13とヘリコイド環12に対しては、相対回転は可能で光軸方向に共に移動するように係合している。
図4に示すように、直進案内環14には、内周面と外周面を貫通する貫通ガイド溝14bが形成されている。貫通ガイド溝14bは、光軸Oに対して斜行するリード溝部分と、光軸Oを囲む周方向溝部分とを有していて、カム環17の外周面に設けた外径突起17aが摺動可能に嵌まっている。外径突起17aはさらに、第1繰出筒13の内周面に形成した光軸Oと平行な回転伝達溝13aに係合しており、カム環17は第1繰出筒13と共に回転される。カム環17は、貫通ガイド溝14bのリード溝部分に外径突起17aが係合するときには、このリード溝部分の案内を受けて回転しながら第1繰出筒13及び直進案内環14に対して光軸方向に進退され、貫通ガイド溝14bの周方向溝部分に外径突起17aが係合するときには、第1繰出筒13及び直進案内環14に対して光軸方向に相対移動せずに定位置で回転する。ヘリコイド環12と同様に、収納(沈胴)状態と撮影状態の間ではカム環17が回転しながら光軸方向に進退移動され、ワイド端とテレ端の間の撮影状態ではカム環17が定位置回転される。
直進案内環14の内周面には光軸Oと平行な直線溝14c、14dが形成されている。直線溝14cには第2直進案内環18の直進案内突起18aが摺動自在に係合し、直線溝14dには第2繰出筒16の直進案内突起16aが摺動自在に係合し、これらの直線溝と直進案内突起の係合関係によって、第2直進案内環18と第2繰出筒16はそれぞれ光軸方向に直進案内されている。第2直進案内環18と第2繰出筒16はそれぞれ、カム環17に対して相対回転可能かつ光軸方向に一体に移動するように支持されている。
第2直進案内環18は、前方に突出させた3つの直進案内キー18bを直線溝8aに摺動自在に係合させることによって、2群レンズ移動枠(支持環)8を光軸方向に直進案内する。2群レンズ移動枠8の内部には、2群レンズ枠6を介して第2レンズ群LG2が支持されている。また、第2繰出筒16の内周面には光軸Oと平行な直線溝16bが形成され、該直線溝16bに対して第3繰出筒19の直進案内突起19aが摺動自在に係合しており、第3繰出筒19も光軸方向へ直進案内されている。第3繰出筒19の内部には、1群支持環5と1群レンズ枠4を介して第1レンズ群LG1が支持されている。
カム環17の内周面に形成した2群制御カム溝17bに対し、2群レンズ移動枠8の外周面に設けた2群用カムフォロア8bが係合している。2群レンズ移動枠8は第2直進案内環18を介して光軸方向に直進案内されているため、カム環17が回転すると、2群制御カム溝17bの形状に従って、2群レンズ移動枠8すなわち第2レンズ群LG2が光軸方向へ所定の軌跡で移動する。
第3繰出筒19は内径方向に突出する1群用カムフォロア19bを有し、この1群用カムフォロア19bが、カム環17の外周面に形成した1群制御カム溝17cに摺動可能に嵌合している。第3繰出筒19は第2繰出筒16を介して光軸方向に直進案内されているため、カム環17が回転すると、1群制御カム溝17cの形状に従って、第3繰出筒19すなわち第1レンズ群LG1が光軸方向へ所定の軌跡で移動する。
2群レンズ移動枠8と第3繰出筒19の間には、図5に示す一対の群間付勢ばね32が張設されている。この群間付勢ばね32によって、2群レンズ移動枠8と第3繰出筒19は互いに接近する方向に付勢されており、2群制御カム溝17bと2群用カムフォロア8bの間と、1群用カムフォロア19bと1群制御カム溝17cの間でのバックラッシュを取り、嵌合精度を高めている。
以上のズームレンズ鏡筒1では、2群レンズ移動枠8に支持される第2レンズ群LG2、シャッタS及び絞りAといった光学要素に関して、鏡筒収納時のスペース効率を高めて鏡筒の薄型化を実現している。以下、その詳細構造を説明する。
図5に示すように、2群レンズ移動枠8には、その前端部側に内径フランジ部8cが形成されており、この内径フランジ部8cに対向する後方位置に押さえ板38が設けられている。押さえ板38には一対の軸支持穴38a、38bが形成されており、内径フランジ部8cには、軸支持穴38aに対向する軸支持穴(不図示)と、軸支持穴38bに対向する軸支持穴8h(図17ないし図21)が形成されている。押さえ板38の軸支持穴38bの周囲は、光軸方向後方に向けて一段低くされた移動規制凹部(移動規制手段)38dとなっている。押さえ板38の一方の軸支持穴38aと、これに対向する内径フランジ部8c側の軸支持穴には、2群枠揺動軸35の一端部と他端部が挿入支持されている。押さえ板38の他方の軸支持穴38bと、これに対向する内径フランジ部8cの軸支持穴8hには、シャッタガイド軸36の一端部と他端部が挿入支持されている。この支持状態において、2群枠揺動軸35とシャッタガイド軸36のそれぞれの軸線方向が光軸Oと略平行になる。
図8及び図9に示すように、2群レンズ枠6は、第2レンズ群LG2が装着されるレンズ筒6aと、このレンズ筒6aの径方向に延びる揺動アーム6bと、この揺動アーム6bの先端に設けられ光軸Oと略平行に軸線を向けた揺動中心筒6cとを有している。揺動中心筒6cの中心に貫通形成された軸穴は、2群枠揺動軸35に回動自在に支持されている。揺動中心筒6cの前後端部は、2群レンズ移動枠8の内径フランジ部8cと押さえ板38に挟まれて移動規制される。2群レンズ枠6は、揺動中心筒6c上の中間フランジ部6dと押さえ板38の間に配した2群枠付勢ばね34(圧縮コイルばね)によって光軸方向前方へ付勢されていて、2群レンズ移動枠8に対して一定の光軸方向位置に保持される。
レンズ筒6aに固定されている第2レンズ群LG2は、2群レンズ移動枠8内において、2群枠揺動軸35を中心とした2群レンズ枠6の揺動運動により、光軸O上に位置する(第2レンズ群LG2の光軸が光学系全体の光軸Oと一致する)撮影位置(図2、図14、図16、図20、図21)と、光軸Oから下方の偏心領域に退避した光軸離脱位置(図1、図10から図13、図15、図17から図19)との間で、光軸Oと直交する平面内で移動される。2群レンズ枠6には、2群レンズ枠6が撮影位置に移動したときに2群レンズ移動枠8内に設けたストッパ8g(図5、図10)に当接して位置を定めるストッパアーム6eが設けられている。
2群レンズ枠6の揺動中心筒6cの外面には2群枠戻しばね33が支持されている。2群枠戻しばね33は、揺動中心筒6cを囲むコイル部と、該コイル部から延出された一対のばね端部とを有するトーションばねからなり、一方のばね端部を2群レンズ枠6の揺動アーム6b付近に係合させ、他方のばね端部を2群レンズ移動枠8のばね掛け穴8j(図10)に係合させている。この2群枠戻しばね33によって、2群レンズ枠6は撮影位置方向へ回動付勢されている。
2群レンズ枠6には、揺動中心筒6cの外側を囲む態様で半円状の大径筒部6fが形成され、この大径筒部6fから外径方向に向けて位置制御突起6gが突設されている。位置制御突起6gの後端部は、光軸Oと直交する平面に対する傾斜面である後端傾斜面6hとなっている。CCD支持板23には、位置制御突起6gと係合して2群レンズ枠6の位置を制御する2群離脱制御突起23aが形成されている。2群離脱制御突起23aは、CCD支持板23におけるCCD24の支持位置近傍に、光軸方向前方へ向けて突設されており、その先端部に移行傾斜面(カム面)23bを有している。移行傾斜面23bは、CCD24を支持するCCD支持板23の中心部から離れるにつれて徐々に光軸方向前方への突出量を大きくするように傾斜している。移行傾斜面23bに続く2群離脱制御突起23aの側面23cは、光軸Oと平行な面である。押さえ板38には、2群離脱制御突起23aの貫通を許す突起挿通孔38cが形成されている。
2群レンズ枠6は、位置制御突起6gに対して外力が入力されない状態では、2群枠戻しばね33の付勢力によって前述の撮影位置に保持される。そして、2群レンズ移動枠8の移動に伴って2群レンズ枠6がCCD支持板23に接近すると、2群離脱制御突起23aが突起挿通孔38cを通して位置制御突起6gに近付き、後端傾斜面6hに対して移行傾斜面23bが当接する。すると、光軸方向への移動力から回転方向分力が生じ、2群枠戻しばね33の付勢力に抗して2群レンズ枠6が前述の光軸離脱位置へ向けて回動される。この退避状態では、2群レンズ枠6の一部は、2群レンズ移動枠8の内周面と外周面を貫通させて形成した切欠8d(図5、図10)に進入するが、該2群レンズ移動枠8の外側には突出せず、2群レンズ移動枠8の外側に位置するカム環17とは干渉しない。
2群レンズ移動枠8には、2群レンズ枠6が揺動するスペースと干渉しない位置に、前述した一対の群間付勢ばね32を挿入させる一対のばね収納部8e、8fが形成されている。押さえ板38には、ばね収納部8eの延長上に位置するばね挿通穴38eが形成されている。一対の群間付勢ばね32はそれぞれ引張ばねからなり、対応するばね収納部8e及びばね挿通穴38eと、ばね収納部8e、8fに挿入された状態で、それぞれのばね収納部8e、8fの後部に設けたばね掛け部(図には表れていない)に対して一方のばね端部が掛けられる。群間付勢ばね32の他方のばね端部は、2群レンズ移動枠8から前方に延出されて、第3繰出筒19に設けたばね掛け部19c(図6)に掛けられる。
2群レンズ移動枠8には、2群レンズ枠6とは別に、シャッタSと絞りAを有するシャッタ部材(進退光学要素の保持部材)10がシャッタ支持環(進退光学要素の保持部材)9を介して支持されている。図5に示すように、シャッタ部材10はシャッタSや絞りAによってその開度が変更されるシャッタ開口部(撮影開口)10aを有し、このシャッタ開口部10aを囲むハウジング内にシャッタSや絞りAを駆動するアクチュエータが内蔵されている。シャッタ部材10からはアクチュエータに動作信号を送るフレキシブル基板10bが延出されている。
シャッタ部材10の外周部には、2群レンズ枠6の揺動中心筒6c付近や押さえ板38との干渉を避ける形状をなす段状の側方切欠部10cが形成されている。側方切欠部10cは、2群レンズ移動枠8のばね収納部8e及び押さえ板38のばね挿通穴38eに対応する位置の上方切欠部10c1と、シャッタガイド軸36の延長上に位置する中間切欠部10c2と、2群枠揺動軸35の延長上に位置する下方切欠部10c3とに大別される。下方切欠部10c3は、2群レンズ枠6の大径筒部6fよりも大径の半円状の切欠形状をなしている。シャッタ部材10の外周部にはさらに、前述の光軸離脱位置における2群レンズ枠6のレンズ筒6aに対応する位置の半円状の下方凹部10dと、2群レンズ移動枠8のばね収納部8fに対応する位置の側方切欠部10eが形成されている。
図5や図7に示すように、シャッタ部材10を支持するシャッタ支持環9は、シャッタ部材10の前面部が当接する前方フランジ部9aを有し、前方フランジ部9aの中央にシャッタ開口部10aより大径の前面開口部9bが形成されている。前面開口部9bの周囲には光軸方向前方に突出する前端環状リブ9cが形成されている。前方フランジ部9aの周縁から光軸方向後方に向けて、2群レンズ移動枠8の内周面に沿う部分円筒面9dが形成されている。シャッタ支持環9の周縁には、部分円筒面9dの一部を切除する態様で、第1切欠部9e、第2切欠部9f、2群格納凹部(格納部)9g、第3切欠部9hが形成されている。第2切欠部9fは、2群レンズ枠6の大径筒部6fよりも大径の半円状の切欠形状をなしている。第1切欠部9eと第2切欠部9fの間には、前方フランジ部9aよりも光軸方向後方に位置する移動規制板(移動規制手段)9iが設けられ、該移動規制板9iから光軸方向前方へ向けて円筒状の進退支持筒9jが突設されている。移動規制板9iと前方フランジ部9aは、進退支持筒9jを囲む半円筒状の接続壁9rで接続されている。
シャッタ部材10をシャッタ支持環9に組み付ける際には、シャッタ部材10の前面部に2つ設けた位置決めボス10fを、シャッタ支持環9の前方フランジ部9aに形成した2つのボス係合穴9kに係合させ、シャッタ部材10の外周面上に設けた3つの位置決め突起10gを、シャッタ支持環9の部分円筒面9d上に形成した3つの突起係合穴9mに係合させる。このようにしてシャッタ部材10をシャッタ支持環9に組み付けると、2群格納凹部9gの裏側(光軸方向後方側)に下方凹部10dが嵌合する。また、第1切欠部9eと上方切欠部10c1、第2切欠部9fと下方切欠部10c3、第3切欠部9hと側方切欠部10eがそれぞれ、光軸Oと平行な方向に並ぶ一続きの切欠部になる。シャッタ支持環9の接続壁9rは、シャッタ部材10の中間切欠部10c2に沿って位置する。
進退支持筒9jの中心に貫通形成したガイド穴に対してシャッタガイド軸36が摺動自在に挿通されており、該シャッタガイド軸36の案内によって、シャッタ部材10とシャッタ支持環9の結合体であるシャッタブロックSBが、2群レンズ移動枠8内で光軸Oに沿う方向へ移動可能に支持されている。また、2群レンズ移動枠8におけるばね収納部8fの内周部分には、光軸方向に一様な断面形状のレール状部8i(図5)が形成されていて、このレール状部8iに対してシャッタ支持環9の第3切欠部9hとシャッタ部材10の側方切欠部10eの一部が光軸方向に摺動自在に嵌合することによって、シャッタブロックSBが2群レンズ移動枠8に対して回り止めされている。
シャッタブロックSBを2群レンズ移動枠8に支持させた状態で、シャッタ支持環9の移動規制板9iと2群レンズ移動枠8の内径フランジ部8cとの間には、圧縮コイルばねからなるシャッタ押しばね(付勢部材)37が挿入されている。図17ないし図21に示すように、シャッタ押しばね37は、シャッタガイド軸36と接続壁9rの間の径方向空間に収納されている。このシャッタ押しばね37によって、シャッタ支持環9は2群レンズ移動枠8に対して光軸方向後方へ移動付勢されている。そして、シャッタ支持環9の移動規制板9iが押さえ板38の移動規制凹部38dに当て付くことによって、2群レンズ移動枠8内でのシャッタブロックSBの後方移動端が定められる。移動規制板9iと移動規制凹部38dの互いの当接面は、光軸Oと略直交する平面となっている。
第2切欠部9fと下方切欠部10c3は、シャッタブロックSBが2群レンズ移動枠8内で光軸方向位置を変化させるときに、2群レンズ枠6、特に揺動中心筒6cの大径筒部6fとの干渉を防ぐ逃げ部として機能する。また、第1切欠部9eと上方切欠部10c1、第3切欠部9hと側方切欠部10eはそれぞれ、シャッタブロックSBが2群レンズ移動枠8内で光軸方向位置を変化させるときに、2群レンズ移動枠8のばね収納部8e、8fとの干渉を防ぐ逃げ部として機能する。前述のように、第3切欠部9hと側方切欠部10eは、ばね収納部8fの裏面側のレール状部8iとの摺接関係によってシャッタブロックSBを回転規制する機能も備えている。
図15や図16に示すように、シャッタ支持環9の第2切欠部9fは、2群レンズ枠6の大径筒部6fの外周面に沿う形状をしており、第2切欠部9fの上端部側には、2群レンズ枠6の位置制御突起6gとの干渉を防ぐ逃げ凹部9nが形成されている。また、シャッタ支持環9において第2切欠部9fの下端部に隣接する部分には、光軸方向へ長い回動規制面9pが形成されている。回動規制面9pは、2群枠揺動軸35を中心とする半径方向(放射方向)に向く、光軸Oと平行な平面である(図15、図16参照)。
2群レンズ枠6の大径筒部6fからは、2群離脱制御突起23aとの係合用の位置制御突起6gとは位置を異ならせて、外径方向に向けて回動規制突起6iが突設されている。図9に示すように、回動規制突起6iの一側面には、光軸方向へ長い回動規制面6jが形成されている。回動規制面6jは、2群枠揺動軸35を中心とする半径方向(放射方向)に向く、光軸Oと平行な平面である(図15、図16参照)。回動規制突起6iの後端部と回動規制面6jの間には、光軸Oに対して傾斜する傾斜面部6kが形成されている。
以上の構造からなるズームレンズ鏡筒1は次のように動作する。図1に示す鏡筒収納状態においてカメラに設けたメインスイッチがオンされると、ズームモータ30が鏡筒繰出方向に駆動される。ズームモータ30によりズームギヤ21が回転駆動され、ヘリコイド環12と第1繰出筒13が鏡筒ハウジング11の内面ヘリコイド11aにガイドされて前方へ回転繰出される。直進案内環14は、第1繰出筒13及びヘリコイド環12と共に前方に直進移動する。このとき、第1繰出筒13から回転力が付与されるカム環17は、直進案内環14の前方への直進移動分と、該直進案内環14との間に設けたリード構造(貫通ガイド溝14bのリード溝部分と外径突起17a)による繰出分との合成移動を行う。ヘリコイド環12とカム環17が前方の所定位置まで繰り出されると、それぞれの回転繰出構造(ヘリコイド、リード)の機能が解除されて、光軸方向の定位置で回転のみ行うようになる。
カム環17が回転すると、その内側では、第2直進案内環18を介して直進案内された2群レンズ移動枠8が、2群用カムフォロア8bと2群制御カム溝17bの関係によって光軸方向に所定の軌跡で移動される。また、カム環17が回転すると、該カム環17の外側では、第2繰出筒16を介して直進案内された第3繰出筒19が、1群用カムフォロア19bと1群制御カム溝17cの関係によって光軸方向に所定の軌跡で移動される。
すなわち、鏡筒収納状態からの第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2の繰出量はそれぞれ、前者が、鏡筒ハウジング11に対するカム環17の前方移動量と、該カム環17に対する第3繰出筒19のカム繰出量との合算値として決まり、後者が、鏡筒ハウジング11に対するカム環17の前方移動量と、該カム環17に対する2群レンズ移動枠8のカム繰出量との合算値として決まる。ズーミングは、この第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2が互いの空気間隔を変化させながら撮影光軸O上を移動することにより行われる。図1の収納状態から鏡筒繰出を行うと、まず図2の上半断面に示すワイド端の繰出状態になり、さらにズームモータ30を鏡筒繰出方向に駆動させると、図2の下半断面に示すテレ端の繰出状態となる。テレ端とワイド端の間のズーム領域では、ヘリコイド環12、第1繰出筒13及びカム環17は、前述の定位置回転のみを行い、光軸方向へは進退しない。メインスイッチをオフすると、ズームモータ30が鏡筒収納方向に駆動され、ズームレンズ鏡筒1は上記の繰出動作とは逆の収納動作を行い、図1の収納状態になる。
また、ワイド端からテレ端までの撮影可能状態にあるとき、測距手段によって得られた被写体距離情報に応じてAFモータ31を駆動することにより、第3レンズ群LG3を支持する3群レンズ枠7が光軸Oに沿って移動してフォーカシングが実行される。
以上はズームレンズ鏡筒1の全体的な動作であり、続いて、図17から図21に示す時系列に沿って、第2レンズ群LG2とシャッタブロックSBの関係を中心とした収納構造の動作を説明する。図17から図21では、説明を分かりやすくするため、同一断面上には存在しない複数の要素を一つの図面上に表しており、詳細には、図中の下方に示す光軸Oを通る位置の断面に加えて、シャッタガイド軸36付近の断面と、2群レンズ枠6の位置制御突起6gに対する2群離脱制御突起23aの位置関係と、2群レンズ枠6の回動規制突起6iに対するシャッタ支持環9の回動規制面9pの位置関係とが同時に示されている。図17から図21中の二点鎖線Q1は2群レンズ移動枠8の内径フランジ部8c前面の光軸方向位置、二点鎖線Q2はシャッタ支持環9の前方フランジ部9a前面の光軸方向位置、二点鎖線Q3はCCD支持板23における基準面を意味する。基準面Q3は、ズームレンズ鏡筒1のズーミング動作やフォーカシング動作によっては移動されない固定の面位置である。
図17は図1の鏡筒収納状態に対応しており、3群レンズ枠7は、CCD支持板23の前面部に当て付く後方移動端まで後退されている。シャッタブロックSBを構成するシャッタ部材10の後面が3群レンズ枠7の前面部に当て付いており、シャッタブロックSBのそれ以上の後退が規制されている。後退が規制されたシャッタブロックSBに対して、2群レンズ移動枠8は、シャッタ押しばね37の付勢力に抗してさらに多く後退され、シャッタ押しばね37を圧縮させながら内径フランジ部8c(Q1)をシャッタ支持環9の前方フランジ部9a(Q2)に接近させている。このとき、図15及び図17に示すように、2群レンズ枠6は、位置制御突起6gと2群離脱制御突起23aの側面23cとの当接関係により第2レンズ群LG2を光軸Oから下方に離脱させた光軸離脱位置に保持されており、図10、図11及び図12に表されるように、該第2レンズ群LG2を保持するレンズ筒6aが、シャッタ支持環9の2群格納凹部9g内へ格納されている。
2群レンズ枠6は、2群枠戻しばね33によって図15の時計方向に回動付勢されているが、位置制御突起6gが2群離脱制御突起23aの側面23cに当て付くことにより、この付勢方向への2群レンズ枠6の回動が規制されている。このとき同時に、2群レンズ枠6の回動方向において、回動規制突起6iの回動規制面6jがシャッタ支持環9の回動規制面9pに対向していて、回動規制面9pと回動規制面6jの当接関係によっても、図15の時計方向への2群レンズ枠6の回動は規制される。すなわち、2群レンズ枠6の位置制御を行う2群離脱制御突起23aとは別に、シャッタブロックSBと2群レンズ枠6の間にも、該2群レンズ枠6を独自に光軸離脱位置に保持させる離脱位置維持手段が備えられている。
図17の収納状態では、シャッタS及び絞りAが第3レンズ群LG3に近接して位置し、かつシャッタブロックSB及び第3レンズ群LG3の光軸方向位置と、第2レンズ群LG2の光軸方向位置とが重なっている(第2レンズ群LG2が、シャッタブロックSB及び第3レンズ群LG3に対して光軸Oと直交する方向に重なっている)ため、第2レンズ群LG2からシャッタS及び絞りAを挟んで第3レンズ群LG3までの光学要素が占める光軸方向の収納スペースを極めて薄くすることができ、ズームレンズ鏡筒1の収納長の短縮化が達成されている。また、図1に示すように、鏡筒収納状態では、1群レンズ枠4の後面がシャッタ支持環9の前端環状リブ9cに当接するまで後退されており、第1レンズ群LG1とシャッタブロックSBの間隔も詰められている。そして、第1レンズ群LG1の後部付近と第2レンズ群LG2の前部付近も、互いの光軸方向位置が重なる(光軸Oと直交する方向に重なる)関係にある。つまり、ズームレンズ鏡筒1では、最も物体側の第1レンズ群LG1から結像部であるCCD24に至るまでの光学系全体が、光軸方向のサイズを極めてコンパクトにして収納されている。
図18から図21は、図17の鏡筒収納状態からワイド端撮影状態までの推移を時系列的に示したものである。ズームモータ30の駆動によってズームレンズ鏡筒1が図1の収納位置から繰り出されると、2群レンズ移動枠8が光軸方向前方へ移動される。ここで、2群レンズ移動枠8はシャッタブロックSBに対して前方に相対移動する余地があるため、2群レンズ移動枠8は前方に移動するが、シャッタブロックSBはシャッタ押しばね37の付勢力によって3群レンズ枠7の前面に押し付けられた状態が続き、光軸方向には移動されない。その結果、Q2とQ3の間隔は変化せず、Q1とQ2の間隔が広がっていく。2群レンズ枠6と押さえ板38も2群レンズ移動枠8と一体的に前方へ移動され、この前方移動によって2群レンズ枠6のレンズ筒6aがシャッタ支持環9の2群格納凹部9g内から前方へ離脱していく。また、押さえ板38の移動規制凹部38dがシャッタ支持環9の移動規制板9iに接近していく。
Q1とQ2の間隔拡大は図18の状態まで続く。図18は、2群レンズ移動枠8の前方への移動の結果、シャッタ支持環9の移動規制板9iに対して押さえ板38の移動規制凹部38dが当て付いた状態を示している。2群レンズ移動枠8が図18の位置まで前方に移動されると、2群レンズ枠6のレンズ筒6aがシャッタ支持環9の2群格納凹部9gから前方に離脱される(図13参照)。また、回動規制突起6iの後端部が回動規制面9pの前端部よりもわずかに前方に位置され(図22参照)、該回動規制面9pと回動規制面6jの当接による撮影位置へ向けての2群レンズ枠6の回動規制が解除される。
図17から図18の間は、位置制御突起6gが2群離脱制御突起23aの側面23cに当接した状態が継続していて、回動規制面9pによる回動規制とは別に、2群レンズ枠6は2群離脱制御突起23aによって光軸離脱位置に保持されている。しかし、何らかの機械的誤差で、図18の状態になる前に2群離脱制御突起23aによる回動規制が解除されてしまった場合には、回動規制突起6iの回動規制面6jが回動規制面9pに当て付くことで、撮影位置への2群レンズ枠6の回動を規制する。この回動規制面9pは、2群格納凹部9gと同じくシャッタ支持環9に形成されているため、機械的誤差の生じる余地がなく、少なくともレンズ筒6aの一部でも2群格納凹部9g内に入っているときには、回動規制面6jと回動規制面9pの当接関係によって、撮影位置方向への2群レンズ枠6の回動を確実に規制することができる。すなわち、2群レンズ枠6とシャッタ支持環9が、レンズ筒6aと2群格納凹部9gの相互干渉を生じうる光軸方向の相対位置関係にある間は、回動規制突起6iと回動規制面9pによって、2群枠戻しばね33の付勢力に抗して2群レンズ枠6を光軸離脱位置に保持させておくことができるフェイルセーフ構造となっている。
図18のように移動規制板9iと移動規制凹部38dが係合した以降は、該移動規制板9iが移動規制凹部38dに押圧されることによって、2群レンズ移動枠8とシャッタブロックSBが一体的に光軸方向前方へ移動される。すなわち、Q1とQ2が一定間隔を保ちつつ、Q1とQ3の間隔、Q2とQ3の間隔が均等に大きくなっていく。図19は、Q1とQ3の間隔拡大の結果、位置制御突起6gにおける後端傾斜面6hと側面部の境界部が、2群離脱制御突起23aにおける移行傾斜面23bと側面23cの境界部の位置まで達した状態を示している。このとき2群レンズ枠6に対する2群離脱制御突起23aの側面23cによる回動規制が解除され、図19の位置から2群レンズ移動枠8が前方に移動すると、2群枠戻しばね33の付勢力によって、位置制御突起6gの後端傾斜面6hを2群離脱制御突起23aの移行傾斜面23bに対して摺接させながら、2群レンズ枠6が光軸離脱位置から撮影位置へ向けて回動されていく。前述のように、レンズ筒6aは図18の時点で既に2群格納凹部9gから前方に離脱しているので、2群レンズ枠6がシャッタ支持環9と干渉して回動が妨げられることはない。
図14及び図20は、撮影位置への2群レンズ枠6の回動が完了した状態を示している。光軸O上に進出された第2レンズ群LG2は、シャッタブロックSBの前方に位置し、これ以降は再び鏡筒収納動作を行うまで、第2レンズ群LG2とシャッタS及び絞りAの光軸方向間隔は一定に保たれる。撮影位置への2群レンズ枠6の回動が行われる図19から図20までの間、2群レンズ移動枠8とシャッタブロックSBの前方への移動は継続されていて、Q1とQ2の間隔は一定に保ちつつ、Q1とQ3、Q2とQ3の間隔がそれぞれ拡大する。
なお、図17の鏡筒収納状態で、CCD支持板23に当て付く機械的な後方移動端まで3群付勢ばね39の付勢力に抗して3群レンズ枠7を押し込んでいるのは、シャッタブロックSB(厳密にはシャッタ部材10の後面)である。このとき、AFナット31bは3群レンズ枠7の移動制御板7cよりも前方に離間した位置で停止されており、このAFナット31bの停止位置が、撮影状態で用いる実用上の(ソフト的に制御される)3群レンズ枠7の後方移動端になっている。そして、収納状態からズームレンズ鏡筒1が繰り出されて図18以降のようにシャッタブロックSBが前方に移動されると、3群付勢ばね39の付勢力によって、3群レンズ枠7も追随して前方に移動される。そして、図19に示す2群レンズ枠6の撮影位置への回動開始から図20に示す撮影位置への回動完了までの間に、移動制御板7cがAFナット31bに当て付いて、3群レンズ枠7の前方移動が規制される。その結果、前進移動を続ける第2レンズ群LG2及びシャッタブロックSBと第3レンズ群LG3との間隔が大きくなる。
2群レンズ移動枠8が図21の位置まで前進されると、図2の上半断面に示すワイド端の撮影状態となる。2群レンズ枠6の位置制御突起6gは2群離脱制御突起23から前方に離れ、後端傾斜面6hと移行傾斜面23bが光軸方向に離間して対向している。これ以降は再び鏡筒収納動作を行うまで、後端傾斜面6hと移行傾斜面23bが当接することはなく、2群レンズ枠6は撮影位置に保持され続ける。また、図21のワイド端では図20の状態よりもシャッタブロックSBと第3レンズ群LG3との間隔が大きくなっている。ワイド端からテレ端までのズーム域では、図21の位置よりも2群レンズ移動枠8が後方に移動されず、AFモータ31の駆動によって3群レンズ枠7を図示位置から前方に移動させてフォーカシング動作を行わせることが可能となっている。
ワイド端撮影状態からの鏡筒収納では、以上とは逆の動作が行われる。説明が重複する部分の詳細は省略するが、まず、図21のように、AFモータ31によってソフト制御上の後方移動端に3群レンズ枠7を位置させる。続いて、ズームモータ30の収納方向駆動により、2群レンズ移動枠8が光軸方向後方に移動され、やがて図20のように、2群レンズ移動枠8と共に後退している2群レンズ枠6の後端傾斜面6hが、2群離脱制御突起23aの移行傾斜面23bに当て付く。ここで2群レンズ枠6の後退動作が継続されると、後端傾斜面6hと移行傾斜面23bの関係によって、図19のように2群レンズ枠6が撮影位置から光軸離脱位置へ回動される。また、2群レンズ枠6の離脱回動の途中で、2群レンズ移動枠8と共に光軸方向後方へ移動されているシャッタブロックSBの後部が3群レンズ枠7の前面に当接し、3群付勢ばね39の付勢力に抗して3群レンズ枠7を後方へ押圧し、ソフト的に制御される後方移動端よりもさらにCCD支持板23に接近させていく。
2群レンズ枠6が光軸離脱位置への回動を完了してなおも2群レンズ移動枠8が後退動作を続けると、図18のように、シャッタブロックSBにより後方へ押し込まれた3群レンズ枠7の後面がCCD支持枠23の前面に当接して、該3群レンズ枠7とシャッタブロックSBの後退移動が規制される。
シャッタブロックSBの後退規制後も、2群レンズ移動枠8と2群レンズ枠6は引き続いて後退する。すると、シャッタ支持環9の前方フランジ部9aと内径フランジ部8cの間隔を小さくする態様で、シャッタ押しばね37の付勢力に抗して、停止されているシャッタブロックSBに対して2群レンズ移動枠8と2群レンズ枠6が後方へ相対移動する。その結果、図17のように、2群レンズ枠6のレンズ筒6aが2群格納凹部9g内に入り込む。この光軸方向の相対移動によって、2群レンズ枠6の回動規制突起6iの回動規制面6jが、シャッタ支持環9の回動規制面9pに対向する位置に移動され、CCD支持板23の2群離脱制御突起23aと位置制御突起6gの係合関係とは別に、回動規制面6jと回動規制面9pの当接関係によっても2群レンズ枠6は撮影位置への回動が規制されるようになる。
なお、図18の状態を一部拡大した図22に示すように、鏡筒収納動作において回動規制面6jと回動規制面9pが当接する直前の段階(2群離脱制御突起23aによって2群レンズ枠6が光軸離脱位置まで回動された段階)では、シャッタ支持環9における前方フランジ部9aと回動規制面9pの間の境界角部9sの前方に、回動規制突起6iに形成した傾斜面部6kが位置している。そして、この状態から2群レンズ枠6がシャッタ支持環9に対して接近すると、傾斜面部6kが境界角部9sに当接し、この傾斜面部6kの傾斜形状によって、2群レンズ枠6をさらに離脱方向に回動させる分力が生じる。その結果、2群レンズ枠6がわずかに離脱方向へ変位して、回動規制面6jが境界角部9sを乗り越えるようにして回動規制面9pに当接する。このように、2群レンズ枠6とシャッタ支持環9の間に、光軸方向の相対移動を受けて2群レンズ枠6に離脱位置方向への移動分力を付与する当接部(離脱補助部)を設けたことにより、鏡筒収納動作時における、2群レンズ枠6とシャッタ支持環9の衝突を起因とする動作不全(2群レンズ枠6の後退不能状態)を防ぐことができる。なお、傾斜面部6kに相当する部位を、シャッタ支持環9側に形成することも可能である。
また、停止されているシャッタブロックSBに対して2群レンズ移動枠8と2群レンズ枠6が後方へ相対移動すると、2群レンズ移動枠8の内径フランジ部8cとシャッタ支持環9の移動規制板9iの間隔が小さくなり、シャッタ押しばね37が圧縮される。このとき、シャッタ押しばね37は、同心状をなす進退支持筒9jの外周面と接続壁9rの内周面によって座屈が防がれる。
図17の収納位置までの収納動作が完了すると、図1のように1群レンズ枠4がシャッタ支持環9の前端環状リブ9cに当接するまで後退され、第1レンズ群LG1とシャッタブロックSBとの間隔も詰められる。そして、ズームレンズ鏡筒1は、第1レンズ群LG1からCCD支持板23における基準面Q3までの光軸方向の収納長が極めて短縮化された収納状態となる。
以上の構成のズームレンズ鏡筒1によれば、2群レンズ移動枠8内において、撮影状態(ズーム撮影域)では光軸Oに沿って所定の固定間隔で並んでいる第2レンズ群LG2とシャッタブロックSBが、鏡筒収納状態では互いの光軸方向位置が重なる(光軸Oと直交する面内で重なる)態様で収納される。そのため、第2レンズ群LG2とシャッタブロックSBが光軸方向に占める収納スペースが小さくて済み、第2レンズ群LG2のような光軸外位置への退避光学要素を備えた従前のレンズ鏡筒に比して、ズームレンズ鏡筒1はその光軸方向の収納長がより一層短縮化されている。
より詳細には、図2の撮影状態から図1の収納状態に移行するに際して、シャッタブロックSBは2群レンズ移動枠8内の位置を相対的に前方に変位させ、収納状態では、2群レンズ移動枠8の光軸方向の略中央付近にシャッタブロックSBが位置している。そして、1群レンズ枠4の後部が前方から2群レンズ移動枠8内に進入して、第1レンズ群LG1がシャッタブロックSBの前方の直近位置まで接近し、3群レンズ枠7の後部が後方から2群レンズ移動枠8内に進入して、第3レンズ群LG3がシャッタブロックSBの後方の直近位置まで接近し、第1レンズ群LG1から第3レンズ群LG3までが光軸方向にスペース効率よく収納されている。例えば、本実施形態と異なり、鏡筒収納状態においても2群レンズ移動枠8内でシャッタブロックSBが図2の撮影時位置に固定であると仮定した場合、シャッタブロックSBに阻まれて第3レンズ群LG3は、図1のように2群レンズ移動枠8内に進入して離脱状態の第2レンズ群LG2と光軸直交方向に重なることができず、その分ズームレンズ鏡筒1の収納長が長くなってしまう。これに対し本実施形態では、撮影時に第2レンズ群LG2が占めていた2群レンズ移動枠8内の中央付近のスペースに、収納状態ではシャッタブロックSBを進出させることにより、該シャッタブロックSBが撮影状態で占めていた2群レンズ移動枠8の後部スペースに空きを作り、この後部スペースを第3レンズ群LG3の格納領域として用いているため、高いスペース効率が得られている。
さらに、第1レンズ群LG1から第3レンズ群LG3までが、後方の固定部材であるCCD支持板23に接近し、第3レンズ群LG3がフィルタ28に近接した位置まで後退されるので、第1レンズ群LG1からCCD24までを含む光学系全体の収納長が短くなっており、ズームレンズ鏡筒1の薄型化が達成されている。
本実施形態のズームレンズ鏡筒1では、鏡筒収納時の2群レンズ移動枠8の後退動作によって、シャッタブロックSBが3群レンズ枠7に当接して後方に押し込み、さらに3群レンズ枠7がCCD支持板23に当て付くことでシャッタブロックSBの後退が規制され、後退動作を継続する2群レンズ移動枠8との間で光軸方向の相対移動が生じる。つまり、鏡筒収納時に2群レンズ移動枠8に対するシャッタブロックSBの光軸方向の相対移動を行わせるために特別な駆動源を必要とせず、2群レンズ移動枠8の収納動作そのものによって上記の相対移動を行わせている。また、3群レンズ枠7は、光軸方向後方へはAFナット31bの規制を受けずにシャッタブロックSBに押圧されて移動されるため、3群レンズ枠7を収納位置まで後退させるための特別な駆動源も必要としない。よって、収納時のスペース効率を高めつつ、機構的には複雑化を回避することが可能となっている。
なお、従来の3群タイプのズームレンズでは、第2レンズ群の前方にシャッタや絞りを配置するのが一般的であった。これに対し本実施形態のズームレンズ鏡筒1では、撮影時には第2レンズ群LG2の後方にシャッタブロックSBを位置させている。これにより、テレ端でシャッタブロックSBの干渉を考慮することなく第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2を接近させる光学設計が可能になり、レンズ鏡筒の小型化や高変倍化に有利となっている。そして、この第2レンズ群LG2後方のシャッタブロックSBを、鏡筒収納時には2群レンズ移動枠8内で相対的に前方へ移動させることで、前述した収納スペース効率の向上が達成されている。但し、撮影時において、第2レンズ群LG2相当の退避光学要素の後部ではなく前部にシャッタブロックSB相当の進退光学要素を配置した形態のレンズ鏡筒にも本発明は適用可能である。この場合、撮影状態から収納状態になるときの退避光学要素に対する進退光学要素の相対移動方向は先の実施形態と逆になる。
本実施形態のズームレンズ鏡筒1ではさらに、以上のように鏡筒収納時の薄型化を達成しつつ、特に、第2レンズ群LG2を保持する2群レンズ枠6と、シャッタS及び絞りAを保持するシャッタブロックSBの関係において、第2レンズ群LG2が2群格納凹部9g内に位置する間は、撮影位置への第2レンズ群LG2の復帰動作を規制する離脱位置維持手段(回動規制突起6iと回動規制面9p)を第2レンズ群LG2とシャッタ支持環9の間に設けている。これにより、2群レンズ移動枠8内での第2レンズ群LG2とシャッタブロックSBの干渉を防ぎ、光学要素の収納構造における動作の確実性と安定性を得ることができる。
なお、以上の実施形態では、鏡筒収納動作に際して、2群レンズ移動枠8の後退に伴ってシャッタブロックSBの後部が3群レンズ枠7の前面に当接したとき、まず3群レンズ枠7が2群レンズ移動枠8やシャッタブロックSBと共に後退し、3群レンズ枠7がCCD支持板23に当て付いて後退が規制された段階で、後退規制されたシャッタブロックSBに対して2群レンズ移動枠8と2群レンズ枠6がさらに後方へ相対的に移動するようになっている。これと異なり、3群レンズ枠7を前方に付勢する3群付勢ばね39のばね力を強く設定して、2群レンズ移動枠8の後退に伴ってシャッタブロックSBの後部が3群レンズ枠7の前面に当接した段階で、まず、シャッタブロックSBに対する2群レンズ移動枠8と2群レンズ枠6の相対移動を行わせることも可能である。すなわち、シャッタブロックSBが後退して3群レンズ枠7に当接したとき、3群レンズ枠7にはシャッタブロックSBを介して後退移動力が作用するが、3群付勢ばね39による前方への付勢力が大きいため、3群レンズ枠7は後退せずにその位置に留まる。これによりシャッタブロックSBの後退も規制されるため、2群レンズ移動枠8と2群レンズ枠6が後退を続けると、シャッタブロックSBとの光軸方向の相対位置が変化する。この相対移動によって、2群レンズ枠6のレンズ筒6aが、シャッタ支持環9の2群格納凹部9gに進入する。そして、光軸方向の相対移動が所定量になると、2群レンズ移動枠8の内径フランジ部8cがシャッタ支持環9の前部に当接して、3群付勢ばね39の付勢力に抗して、2群レンズ移動枠8と2群レンズ枠6と共に、3群レンズ枠7が後退される。この態様では、シャッタブロックSBと2群レンズ枠6の光軸方向の相対移動が、先に説明した実施形態よりも早いタイミングで行われるので、少なくともこの相対移動が開始されるより前に、2群レンズ枠6の光軸離脱位置への移動が完了するように、2群離脱制御突起23aの長さや移行傾斜面23bの形状などが適宜設定される。
以上、図示実施形態に基づき説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、実施形態では、2群レンズ移動枠8内において光軸直交平面内で移動される退避光学要素を第2レンズ群LG2、同じく光軸方向に移動される進退光学要素をシャッタS及び絞りAとしているが、これと異なる組み合わせの退避光学要素と進退光学要素を用いてもよい。
また、実施形態では、第2レンズ群LG2を保持する2群レンズ枠6は、2群枠揺動軸35を中心とする揺動(回動)部材であるが、退避光学要素を光軸直交平面内で移動させる手段は、このような揺動機構に限らず、直線的な移動機構であってもよい。