JP2009248329A - 凹凸感を有するマット加工印刷物およびその加工方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基材上の少なくとも一部に油性インキを用いた印刷層が設けられ、該印刷層及び基材層の表面上にコーティングによりオーバーコート層が設けられ、該オーバーコート層の前記印刷層と重なる部分が凹凸感のあるマット加工部分に形成され、他の部分が艶加工部分に形成されている印刷物であって、前記オーバーコートが電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化させた層であるマット加工印刷物、及びこれらの各層をオフセット印刷機による一工程で設ける凹凸感を有するマット加工印刷物の加工方法である。
【選択図】なし
Description
さらに、マット加工インキまたは塗料を使用しない方法もあるが、この方法では、下塗り加工を行い、その上にクリアーな電子線または紫外線硬化型のインキまたは塗料をスクリーン印刷あるいはコーターでのコーティングで行うため、生産性が低くコストが高いという問題点がある。いずれの方法においても絵柄の印刷の上に、別の工程で凹凸感のあるマット加工部分を形成することになり、さらに生産性が低くコストが高いという問題点がある。
しかし、特許文献2に記載のマット加工印刷物では、印刷層の表面上に下刷り層を印刷するに当たり、下刷り層として透明インキを用いることが多いため、絵柄位置がずれて、印刷層と下刷り層のずれが生じ、マット加工部分が印刷層と一致しなかったり、オーバーコート層をはじき、凹凸感を出現させるために、下刷り層の電子線または紫外線硬化型インキに配合される反応性シリコーンが、地汚れ等で非画線部に残ることで、例えば、菓子箱等の包装材料において、のりしろ部分等に付着し、接着阻害を起こすなど多々問題があった。
一方、油性インキは、インキコストは、電離放射線硬化性樹脂組成物と比較して格段に低く、色調も優れるが、印刷後のインキの乾燥(硬化)が酸化重合による自然乾燥なので、完全に硬化するまでには数時間〜数日を要し、印刷直後には、ブロッキングなどの不良を発生させないためにスプレーパウダーを噴射し、紙を余り重ねないなどの対策を余儀なくされる。
これらの点から、油性インキと電離放射線硬化性樹脂組成物(ニス)の組み合わせは、従来において実用化されていない。
すなわち、本発明は、
(1)基材上の少なくとも一部に油性インキを用いた印刷層が設けられ、該印刷層及び/又は基材層の表面上にコーティングによりオーバーコート層が設けられ、該オーバーコート層の前記印刷層と重なる部分が凹凸感のあるマット加工部分に形成され、他の部分が艶加工部分に形成されている印刷物であって、前記オーバーコートが電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化させた層であることを特徴とする凹凸感を有するマット加工印刷物、
(2)前記印刷層が、前記オーバーコート層のコーティング剤を塗布した時に、前記コーティング剤をはじく層である、前記(1)に記載の凹凸感を有するマット加工印刷物、
(3)前記電離放射線硬化性樹脂組成物からなるコーティング剤が、25℃でザーンカップ#4で測定したときの流出秒数が10〜30秒の粘度である前記(1)又は(2)に記載の凹凸感を有するマット加工印刷物、及び
(4)基材上に油性インキを用いてオフセット印刷により印刷層を設ける工程、該印刷層及び基材層の表面上にコーティングによりオーバーコート層を設ける工程を、オフセット印刷機による一工程で設けることを特徴とする凹凸感を有するマット加工印刷物の加工方法、
を提供するものである。
また、本発明の凹凸感を有するマット加工印刷物の加工方法によれば、艶加工部分と精密な凹凸感のあるマット加工部分を有し、印刷層に油性インキを用いることによるインキ費の低減と相俟って、生産性が高くコストが低く加工できる凹凸感のあるマット加工印刷物を得ることができるものである。
また、印刷直後のマット加工印刷物は、内部の油性インキによる印刷層が完全に硬化していないが、既に完全硬化されたオーバーコート層の存在により、例えば包装用箱容器の単位数等に応じて所定の大きさに枚葉切断して積載するなどしても、ブロッキングなどの不良が生じない。
さらに、マット加工印刷物は、マット加工による凹凸部を有しているので、多数積層された印刷物から枚葉ごとに取り出し供給する際の搬送性に優れ、例えば、菓子製造ライン等の製函機に好適に供給される。
図2に示すように、まず、基材1の表面にオフセット印刷による絵柄などの印刷層2及び印刷層3を設けるに際し、表面の凹凸感のあるマット加工を施す部分である印刷層2には、油性インキを用いてオフセット印刷され、艶加工部分となる印刷層3は、電離放射線硬化性樹脂組成物によりオフセット印刷される。
次に図3に示すように、油性インキによる印刷層2及び3の表面上にコーティングによりオーバーコート層4が設けられる。この時、図1に示すように、油性インキによる印刷層2を設けた部分が、上に加工されたオーバーコート層4を形成するためのコーティング剤をはじくことにより凹凸感のあるマット加工部分となり、電離放射線硬化性樹脂組成物による印刷層3の部分が、そのまま艶加工部分となる。
ここでいう油性インキとは酸化重合型インキであり、ビヒクルの酸化重合による固化、不溶化によって皮膜をつくるもので、乾性油ワニス、乾性アルキドなどがこの部類に入る。
一般的に酸化促進剤としてコバルトやマンガンが添加されている。狭義の意味でインキというと、ビヒクルと色料とを含むが、本願においては、マット感の変化のみで意匠性を向上させることができるので、色材の添加は任意である。ビヒクルとしては、乾燥油、合成樹脂、天然樹脂、繊維系、ゴム誘導体のうち1種類以上が適用できる。乾燥油としては、亜麻仁油、シナキリ油、エノ油、大豆油、魚油、脱水ヒマシ油、スチレン化油、ビニルトルエン化油、マレイン油などがある。天然樹脂としては、ウッドロジン、重合ロジン、石灰硬化ロジン、亜鉛硬化ロジン、ロジンエステル、セラックなどがある。合成樹脂としては、フェノール樹脂、変性アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、コールタールピッチ、ステアリンピッチなどがある。繊維系としては、ニトロセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、などがある。ゴム誘導体としては、環化ゴム、塩化ゴムなどがある。印刷方法に合わせて、適宜選択すればよい。
印刷層2、印刷層3の硬化に関しては、印刷層2を印刷した後、通常ドライヤーによる熱風や赤外線乾燥機を使い乾燥し固化を促進することができる。また、印刷層3を設けた後、印刷層3は、電子線又は紫外線照射により架橋硬化させることができる。前述の方法のほか、印刷層3はコーティング層をその上方に設けられる程度に熱風等により印刷表面に皮膜を形成させておき、オーバーコート層4を設けた後に電子線又は紫外線照射により印刷層3、オーバーコート層4を同時に架橋硬化させてもよい。
さらに、これに助剤として表面調整剤を加えたものを使用することができる。表面調整剤としては、セルロース系のレベリング剤および天然ワックス系の滑剤などがある。このオーバーコート層4は、硬化後の膜厚で約3〜20g/m2となるような量で設けることが好ましい。
ザーンカップ#4によるインキ粘度が、10秒〜30秒であれば、凹凸感が激しすぎることがなく、また凹凸感が不足することもない。
また、油性インキは、用紙に印刷された後、ビヒクル(ワニス)、溶剤といった成分が、用紙に浸透し、酸素と反応してビヒクル分子をつなぎ合わせ、網状の大きな分子を形成して皮膜化し、急速に乾燥するが、その際、赤外線や熱風等の補助を受けると、さらに乾燥が助長される。
要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
基材1に板紙(コートボール310g/m2)を用いて、最終ユニットにUVコーターユニットDの設置されたオフセット印刷機Pにより一工程で凹凸感を有するマット加工印刷物の加工を行った。
まず、絵柄の印刷である印刷層3は、図4に示すフィーダーAから供給された基材1に印刷ユニットBにおいて5色を印刷する。インキは、下記の組成のUVカルトンインキ((株)ザ・インクテック社製)を使用した。
有機顔料 15〜25質量%
感光性樹脂 40〜50質量%
感光性モノマー 15〜25質量%
光重合開始剤 5〜10質量%
油性インキとしては、有機・無機顔料(10〜30質量%)、ロジン変性フェノール樹脂、アマニ油、高沸点石油系溶剤等からなる合成樹脂ワニス(50〜80質量%)を混合した主剤に、助剤(1〜20質量%)を加えたものを使用した。この助剤としては、ポリエチレンワックス等の皮膜強化剤(1〜10質量%)、コバルト、マンガン等のドライヤー(0.5〜3質量%)、裏移り防止剤(0.5〜0.75質量%)、乳化調整剤(0.3〜0.5質量%)、その他(0〜5質量%)を加えた。
また、印刷層2の油性インキとして蛍光インキを使用してもよく、この蛍光インキとしては、蛍光顔料(20〜30質量%)、炭酸カルシウム等からなる体質顔料(10〜15質量%)、前記と同様な合成樹脂ワニス(50〜60質量%)を混合した主剤に、前記と同様な助剤(1〜10質量%)を加えたものを使用することもできる。
感光性樹脂45〜55質量%、感光性モノマー15〜25質量%、光重合開始剤5〜10質量%、添加剤5質量%未満、ザーンカップ粘度18秒
なお、粘度(ザーンカップ粘度)は以下のように測定した。
ザーン(Zahn)粘度計のザーンカップ #4(容積40cc、オリフィス径4mm)にインキを満たした後に、ザーンカップ 下部の穴よりインキが完全に流れ落ちる時間を測定した。測定する際のインキ温度は25℃とした。
このように、オフセット印刷機Pの最終ユニットにおいて、オーバーコート層4を加工することによって、油性印刷層2の部分は、オーバーコート層4がはじかれた状態の凹凸感のあるマット加工部分Mとなり、UV印刷層3の部分及び基材表面の部分は、オーバーコート層4の光沢をそのまま有する艶加工部分Tとなる印刷物10を得ることができた。
また、従来において、マット加工部分の印刷層のインキに、電離放射線硬化性樹脂組成物を使用することによる、高インキ価格、瞬間硬化のためレベリングが不良、光沢が劣るなどの問題を解消して、油性インキの使用によって、電離放射線硬化性樹脂組成物と比較して格段に低インキ価格で、優れた色調のマット加工印刷物として利用できる。
さらに、油性インキ印刷後のインキの乾燥(硬化)が酸化重合による自然乾燥のため、数時間〜数日を要し、印刷直後には、ブロッキングなどの不良を発生させないためにスプレーパウダーを噴射し、紙を余り重ねないなどの対策を余儀なくされていたが、電離放射線硬化性樹脂組成物からなるオーバーコート層が瞬間硬化であるため、印刷後の取扱いが極めて容易なマット加工印刷物として利用できる。
以上のように、本発明の凹凸感のあるマット加工印刷物の加工方法によれば、絵柄等の印刷層2、印刷層3、及びオーバーコート層4を、オフセット印刷機等を用いて設けることができ、さらに、オフセット印刷機を用いて一工程で行うことによって、艶加工部分と精密な凹凸感のあるマット加工部分を有し、かつ、生産性が高くコストが低く加工できる凹凸感のあるマット加工印刷物を得ることができるものである。
本発明のマット加工印刷物によれば、シリコーン系化合物を含むインキによる下刷り層を有していないので、印刷後において当該シリコーン系化合物に起因する、製函時等の接着不良、当該製造ロット等のインクジェット印刷のインク落ちなどの不具合のない凹凸感を有するマット加工印刷物として利用できる。
また、本発明の凹凸感を有するマット加工印刷物の加工方法によれば、艶加工部分と精密な凹凸感のあるマット加工部分を有し、印刷層に油性インキを用いることによるインキ費の低減と相俟って、生産性が高くコストが低く加工できる凹凸感のあるマット加工印刷物を得ることができるものである。
さらに、印刷直後のマット加工印刷物は、内部の油性インキによる印刷層が完全に硬化していないが、既に完全硬化されたオーバーコート層の存在により、例えば包装用箱容器の単位数等に応じて所定の大きさに枚葉切断して積載するなどしても、ブロッキングなどの不良が生じない。
さらにまた、マット加工印刷物は、マット加工による凹凸部を有しているので、多数積層された印刷物から枚葉ごとに取り出し供給する際の搬送性に優れ、例えば、菓子製造ライン等の製函機に好適に供給できるマット加工印刷物として利用できる。
1 基材
2 油性インキによる印刷層
3 電離放射線硬化性樹脂組成物による印刷層
4 オーバーコート層
P オフセット印刷機
A フィーダー
B 印刷ユニット
C 紫外線照射装置
D コーターユニット
E 紫外線照射装置
F デリバリー
M マット加工部分
T 艶加工部分
Claims (4)
- 基材上の少なくとも一部に油性インキを用いた印刷層が設けられ、該印刷層及び基材層の表面上にコーティングによりオーバーコート層が設けられ、該オーバーコート層の前記印刷層と重なる部分が凹凸感のあるマット加工部分に形成され、他の部分が艶加工部分に形成されている印刷物であって、前記オーバーコート層が電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化させた層であることを特徴とする凹凸感を有するマット加工印刷物。
- 前記印刷層が、前記オーバーコート層のコーティング剤を塗布した時に、前記コーティング剤をはじく層である、請求項1に記載の凹凸感を有するマット加工印刷物。
- 前記電離放射線硬化性樹脂組成物からなるコーティング剤が、25℃でザーンカップ#4で測定したときの流出秒数が10〜30秒の粘度である請求項1又は2に記載の凹凸感を有するマット加工印刷物。
- 基材上に油性インキを用いてオフセット印刷により印刷層を設ける工程、該印刷層及び基材層の表面上にコーティングによりオーバーコート層を設ける工程を、オフセット印刷機による一工程で設けることを特徴とする凹凸感を有するマット加工印刷物の加工方法。
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