JP2009242225A - 錫ドープ酸化インジウム粒子及びその製造方法 - Google Patents

錫ドープ酸化インジウム粒子及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】塗布により形成された薄膜の透明性及び膜中での粒子の分散性が高いITO粒子を提供すること。
【解決手段】本発明のITO粒子は、透過型電子顕微鏡を用いて観察した場合に、粒子内の一部に電子線の透過性が相対的に高い部位が観察されるものである。観察像におけるITO粒子の面積に占める該部位の面積の割合は好適には2〜15%である。この粒子は、インジウム換算の濃度が5〜15g/lのインジウム塩、及び錫換算の濃度が0.3〜1.2g/lの錫塩を含む水溶液に、pHが3.0〜4.3となるようにアルカリを添加して、錫及びインジウムを含む沈殿物を生成させ、該沈殿物を還元焼成することで得られる。
【選択図】図1

Description

本発明は、錫ドープ酸化インジウム(以下、ITOという)粒子及びその製造方法に関する。
ITOは高い導電性と優れた透明性を有するので、透明導電膜として液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ等に利用されている。この他ITOは、帯電防止、電磁波防止用途としてディスプレイフィルターに利用されている。ITOの薄膜を形成する方法としては、ITO粒子を含んだ塗料を基材に塗布する方法や、ITO粒子を焼結して得たITO焼結体ターゲットのスパッタリングによって、基材面にITO薄膜を形成する方法などが挙げられる。一般的には、スパッタリングによる製膜法では均一で高透明な薄膜を得ることができる。しかし装置や製膜コストが高い等の欠点がある。ITO粒子を含んだ塗料を基材に塗布する方法は、簡便かつ低コストで製膜ができるものの、ITO粒子を均一に分散させることが必要となり、これが不十分であると薄膜の透明性が落ちてしまう。
導電性及び透明性の高いITO粒子の製造に関する従来技術としては、例えば特許文献1に記載の方法が知られている。この方法においては、錫塩及びインジウム塩の溶液に温度を30℃以下に保持しながらアルカリ水溶液を添加して得られた酸化錫及び酸化インジウムの水和物を加熱処理する。アルカリ水溶液としてはアンモニア水が用いられる。アンモニア水は、系内のpHが最終的に5.0〜9.0となるように添加される。
特許文献1の記載によれば、上述の方法に従い製造されたITO粒子は、形状が一定の粒状のものとなる。かかる形状のITO粒子を原料とする塗料から製膜された薄膜は、本発明者らの検討によれば、その透明性が十分でなく、また導電性も十分なものとはならない。
ITOからなる透明導電性膜の製造方法の別法として、ITOをターゲットして用いたスパッタリング法も知られている。この方法で製造された膜は、密度が高く、厚みが数nmという極めて薄いものなので透明性が非常に高いという利点を有している。しかし、製膜を真空中で行わなければならず、設備及びランニングコストが高価になってしまう。
特開平6−227815号公報
したがって本発明の目的は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得るITO粒子及びその製造方法を提供することにある。
本発明は、透過型電子顕微鏡を用いて観察した場合に、粒子内の一部に電子線の透過性が相対的に高い部位が観察されることを特徴とする錫ドープ酸化インジウム粒子を提供するものである。
また本発明は、前記の粒子の好適な製造方法として、インジウム換算の濃度が5〜15g/lのインジウム塩、及び錫換算の濃度が0.3〜1.2g/lの錫塩を含む水溶液に、pHが3.0〜4.3となるようにアルカリを添加して、錫及びインジウムを含む沈殿物を生成させ、該沈殿物を還元焼成することを特徴とする錫ドープ酸化インジウム粒子の製造方法を提供するものである。
本発明のITO粒子は、粒子自体が厚みが薄く、高透過性の部位を有する粒子であることに起因して、これを用いて得られた薄膜の透明性が高く、かつ分散性にも優れている。また、本発明のITO粒子の製造方法により、上述の特徴を有するITO粒子を効率的に製造することができる。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明のITO粒子は、その形態に特徴の一つを有している。詳細には、本発明のITO粒子は、これを透過型電子顕微鏡(以下「TEM」という)を用いて観察した場合に、粒子内の一部に電子線の透過性が相対的に高い部位(以下「高透過性部位」という)が観察されるものである。一般に観察対象物質が単一物である場合、TEMにおいて電子線の透過性が相対的に高い部位が観察されるということは、その部位が他の部位に比較して厚みが相対的に薄いことを意味している。したがって、本発明のITO粒子における高透過性部位は、その部位が粒子の他の部位に比べて(特に該高透過性部位の周囲に比べて)厚みが薄くなっている部位であると言える。
高透過性部位は、1個の粒子中に1箇所又は2箇所以上形成されている。高透過性部位は、粒子のほぼ中央域に形成されていることが多いが、場合によっては粒子の周縁域に形成されていることもある。また、TEM観察による高透過性部位の輪郭は略円形ないし略長円形であるが、これらの形状に制限されない。
高透過性部位が、粒子の他の部位に比べて厚みが薄くなっている場合、次の2つの態様が考えられる。一つは、(イ)高透過性部位が中空部位になっていることで、該部位の電子線の透過性が高くなっている場合である。もう一つは、(ロ)高透過性部位は中実の部位ではあるものの、その部位の厚みが他の部位よりも薄くなっていることで、該部位の電子線の透過性が高くなっている場合である。TEMでは、これら2つの態様は同様に観察されるので、本発明のITO粒子がそのどちらの態様となっているかはTEMからだけでは判断できない。また、本発明者らが知る限り、他の測定方法を用いたとしても、本発明のITO粒子がどちらの態様となっているかは判断できない。ITO粒子の真比重の測定結果から判断すると、高透過性部位は中空の部位である可能性が高いと、本発明者らは考えている。
本発明のITO粒子が、前記の(イ)及び(ロ)のいずれの態様であるにしても、本発明のITO粒子は、これを用いて塗布により薄膜を形成すると、その薄膜の透明性及び膜中での粒子の分散性が高いものとなる。その理由は次のとおりである。膜の透明性を高めるためには、ITO粒子はその粒径が小さいことが有利である。しかし粒子の粒径が小さくなると、粒子どうしの凝集が甚だしくなり、粒子の分散性が低下する。したがって均一な膜を形成することが困難となる。粒子の凝集を抑え、均一な膜を形成するためには、粒子の粒径を大きくすることが有利であるが、その場合には膜の透明性が低下する傾向にある。このように、膜の透明性と粒子の分散性とは二律背反の関係にある。これに対して、本発明のITO粒子は、これが前記の(イ)及び(ロ)のいずれの態様であるにしても、高透過性部位の存在によって膜の透明性が確保される。したがって、粒子の粒径を大きくしても、つまり膜厚を大きくしても、透明性の高い膜を得ることができる。一例を挙げれば、本発明のITO粒子を用いて形成された塗膜は、ITOをターゲットとして用い、スパッタリングによって形成されたスパッタ膜と比較して、該スパッタ膜よりも約一桁大きな厚みを有するにもかかわらず、光透過性はスパッタ膜と同等であるか、又はそれ以上となる。
前記の説明から明らかなように、本発明のITO粒子における高透過性部位は、ITO粒子中に占める割合が高いほど、膜の透明性の向上に有利に働く。しかし、高透過性部位はその厚みが粒子の他の部位よりも薄いので、該高透過性部位の占める割合が過度に高くなると、粒子の分散過程等において粉砕されやすくなってしまう。粉砕された粒子にはもはや高透過性部位は存在せず、しかも該粒子は微粒のものになってしまうので、高透過性と高分散性を両立できないものとなる。これらの観点から、TEMの観察像におけるITO粒子の面積に占める高透過性部位の面積の割合は、好ましくは2〜15%であり、更に好ましくは5〜10%である。
前記の割合は、(株)マウンテック社の画像解析式粒度分布測定システム“マックビュー”を用い、50個の粒子を対象として測定し、その結果を算術平均した値である。詳細な測定方法は実施例において後述する。
膜を形成したときの粒子どうしの凝集を防止する観点から、本発明のITO粒子は、その一次粒子の平均粒径が5〜25nm、特に5〜20nmであることが好ましい。一次粒子の平均粒径は、本発明のITO粒子のTEM像に基づき、粒子を横切る最大長さを測定し、測定値を平均したものである。測定数はN=50とする。
本発明のITO粒子は、その形状が一定である場合よりも、不定形である場合の方が、導電性の高い膜を形成できることが本発明者らの検討の結果判明した。本発明のITO粒子は、これを後述する方法に従い製造すると、例えば後述する図1に示すように、平面視してピーナツ形ないし空豆形である扁平な粒子を比較的多く含み、全体として平面視での形状がアメーバ形の扁平なものとなる。球形の粒子や針状の粒子は実質的に含まれていない。かかる不定形の粒子からなる本発明のITO粒子を原料とする導電性インクを用いて薄膜を形成すると、該薄膜中においてITO粒子は隣り合う粉末との接触部分が多くなることから、該薄膜の導電性が高くなる。また、ITO粒子が上述の範囲の平均粒径を有する場合、単位体積中に含まれるITO粒子の数が多くなり、それによっても薄膜の導電性が高くなる。単位体積当たりの粒子の充填数で比較すると、例えば針状のITO粒子の方が充填性は良好である。しかし、針状のITO粒子から形成される薄膜は透明性が高くない。これに対して、不定形である本発明のITO粒子から形成される薄膜は、意外にも透明性も高いものとなる。
本発明のITO粒子が、上述のとおりの平均粒径や形状を有する場合、その比表面積は30〜80m2/g、特に45〜70m2/gとなることが好ましい。
本発明のITO粒子は、これを公知の溶媒及びバインダ等と混合することで、導電性インクとなる。この導電性インクを基材に塗布し塗膜を形成し、該塗膜を所定温度で焼成することで、透明性及び導電性が高い薄膜電極や電磁波シールドを得ることができる。上述したとおり、本発明のITO粒子を用いることによって、意外にも、厚みが100〜300nmという比較的厚い膜であるにもかかわらず、全光線透過率(波長400nm)が95%以上という透明性の高い導電性膜を得ることができる。全光線透過率は高ければ高いほど好ましく、可能な限り100%に近づけることが望ましい。
次に、本発明のITO粒子の好適な製造方法について説明する。本発明の製造方法の概略工程は、共沈法により製造されるインジウム及び錫の混合水酸化物を熱処理することからなる。共沈法による混合水酸化物の生成は、従来法と同様に、インジウム塩及び錫塩を含む溶液とアルカリ溶液とを混合することによりなされる。本製造方法の特徴は、共沈法による混合水酸化物の生成において、(イ)インジウム塩の濃度を低く設定し、かつ(ロ)アルカリ添加によるpH上昇の終点を低く設定した点にある。
詳細には、共沈法による混合水酸化物の生成における水溶液中のインジウム塩の濃度は、インジウム換算で好ましくは5〜15g/lとし、更に好ましくは5〜10g/lとし、一層好ましくは7〜10g/lとする。インジウム換算でのインジウム塩の濃度が15g/l超である場合には、得られるITO粒子が粗粒のものとなり、粒子どうしの凝集は防止できるものの、透明性及び導電性が十分に高い薄膜を形成することができない。インジウム塩の濃度は、低ければ低いほど、得られるITO粒子が微粒となり好ましいが、その分、生産性に劣り経済的でない。この観点から、下限値を上述の値とした。
一方、錫塩の濃度は、得られるITO粒子におけるSnO2の含有率との関係で決定される。本発明においては、ITO粒子におけるSnO2の含有率は、粒子の凝集の防止及び抵抗の増大防止の観点から、5〜10重量%、特に6〜8重量%であることが好ましい。このSnO2の含有率と、上述のインジウム塩の濃度との関係から、水溶液中の錫塩の濃度は、錫換算で0.3〜1.2g/lとし、好ましくは0.5〜1.0g/lとし、更に好ましくは0.7〜1.0g/lとする。
本発明で用いられるインジウム塩としては、例えば硝酸インジウム、塩化インジウム、硫酸インジウムなどの水溶性塩が挙げられる。錫塩としては、例えば塩化第一錫、塩化第二錫、臭化錫、硫酸錫などの水溶性塩が挙げられる。これらの塩は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの塩のうち、インジウム塩として硝酸インジウムを用い、かつ錫塩として塩化第二錫を用いると、適度に微粒でかつ分散性の高いITO粒子を得ることができるので好ましい。
インジウム塩及び錫塩が溶解された水溶液にアルカリを添加して、インジウム及び錫の混合水酸化物を生成させる。必要に応じ、生成に先立って、系内にアルコールやアセトン等の水溶性有機溶媒、塩酸や硝酸等の鉱酸を添加してもよい。混合水酸化物を生成させるときの系内の温度は好ましくは0〜30℃、更に好ましくは0〜27℃、一層好ましくは0〜23℃に設定する。つまり室温近傍の比較的低温に設定することが好ましい。系内の温度をこの範囲内に設定して共沈反応を行うことで、得られるITO粒子の粒度が微粒でばらつきが小さくなり、かつ生産性に支障を来さない程度に十分な反応速度が確保できる。
アルカリの添加によって系内のpHは上昇するところ、本製造方法においては系内のpHが3.0〜4.3の範囲に達した時点で、アルカリの添加を終了させる。これに対して、先に述べた特許文献1においては、アルカリを系内のpHが最終的に5.0〜9.0となるように添加している。本発明者らの検討の結果、アルカリ添加によるpH上昇の終点を、特許文献1に記載に記載されている範囲に設定すると、インジウムと錫との混合水酸化物の凝集が甚だしくなり、得られるITO粒子の分散性が低下することが判明した。この理由は、特許文献1に記載に記載されているpHの範囲が、インジウムの等電点に近いからであると本発明者らは考えている。アルカリ添加によるpH上昇の終点を、特許文献1に記載されている範囲よりも低い範囲である3.0〜4.3にすることで、インジウムと錫との混合水酸化物の凝集を抑制でき、得られるITO粒子の分散性を良好にすることが可能となる。また、pHをこの範囲内とすることで、インジウムと錫との混合水酸化物の生成反応を十分に進行させることができる。pHの範囲が3.0よりも低いと、前記の混合水酸化物を首尾良く生成させることができない。
使用するアルカリとしては、アンモニア、アンモニウム塩、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物などが挙げられる。最終的に得られるITO粒子に含まれる不純物元素を極力低減させる観点からは、アルカリとしてアンモニアを用いることが好ましい。アルカリとしてアンモニアを用いる場合、アンモニア水の濃度は5〜15重量%、特に5〜10重量%とすることが、インジウムと錫との混合水酸化物の生成反応を十分に進行させつつ、該混合水酸化物の過度の凝集が防止される点から好ましい。
アルカリの添加時間は、得られるITO粒子の粒径や形状、分散性等に影響を及ぼす。所望のITO粒子を得るためには、インジウムと錫との混合水酸化物が十分に生成する範囲内において、アルカリの添加時間を極力短くすることが好ましい。アルカリの添加時間が長すぎると、得られるITO粒子が過度に粗粒のものとなってしまう。尤も、アルカリの添加時間が短すぎると、例えばアルカリを系内へ一括添加すると、インジウムと錫との混合水酸化物の凝集が甚だしくなってしまう。これらの観点から、アルカリの添加時間は、例えばアルカリとしてアンモニアを用いた場合には、5〜30分、特に10〜30分、とりわけ20〜30分とすることが好ましい。
このようにして得られたインジウムと錫との混合水酸化物は、濾過等の適宜の手段によって分離され、洗浄及び乾燥工程に付された後、焼成工程に付される。この焼成工程は、水酸化物からの酸化物の生成、及び錫のインジウムへの拡散を主たる目的として行われる。得られるITO粒子の導電性を高める観点から、焼成工程は微還元性雰囲気下に行われることが好ましい。微還元性雰囲気としては、水素のような還元性ガスを0.1〜3体積%程度含有する、窒素のような不活性ガス雰囲気が例示される。この微還元性雰囲気下の焼成工程は、雰囲気ガスを、焼成炉内を流通させた状態下に行うことが好ましい。
焼成工程の温度及び時間は、得られるITO粒子の分散性や導電性に影響を及ぼす。具体的には、得られるITO粒子の導電性が満足すべき程度まで高くなる範囲において、高温かつ短時間で焼成を終了させることが好ましい。この観点から焼成温度は300〜600℃が好ましく、350〜550℃が更に好ましく、350〜450℃が一層好ましい。焼成時間は15分〜2時間が好ましく、30分〜1.5時間が更に好ましく、30分〜1時間が一層好ましい。焼成温度と焼成時間とは反比例の関係とする。即ち、焼成温度を高く設定するほど、焼成時間は短く設定する。
焼成により得られたITO粒子は常法に従い粉砕されて、目的とするITO粒子となる。このITO粒子(本発明のITO粒子という)は、上述した高透過性部位を有していることによって特徴づけられる。また、適度に微粒でかつ不定形であることによっても特徴づけられる。本発明のITO粒子を含む導電性インクを用いて形成された薄膜は、透明性及び導電性が高いものとなる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されない。
〔実施例1〕
インジウム換算の濃度が320g/lである硝酸インジウム水溶液15.6リットルと、錫換算の濃度が120g/lである塩化第二錫水溶液3.12リットルとを混合し、更に純水を加えて500リットルにメスアップした。メスアップ後の水溶液中のインジウムの濃度は10g/l、錫の濃度は0.75g/lであった。
この水溶液とは別に、25重量%のアンモニア水を三倍に希釈したアンモニア水溶液を用意した。前記のインジウム及び錫を含む水溶液の温度を20℃に保ちつつ、これにアンモニア水溶液を徐々に滴下した。滴下の間、反応系をゆるやかに攪拌し続けた。滴下は反応系のpHが3.8に上昇した時点で終了した。滴下時間は30分であった。また、滴下したアンモニア水溶液の量は30リットルであった。アンモニア水溶液の滴下によって、反応系にはインジウムと錫との混合水酸化物が生成した。
アンモニア水溶液の滴下を終了した後、引き続き攪拌を30分間継続した。その後、混合水酸化物を濾過によって分離し、更に導電率が100μSに低下するまでデカンテーションによって洗浄を行った。洗浄の完了後、得られたスラリーを乾燥させた。乾燥にはスプレードライヤを用いた。このようにして得られた混合水酸化物の粉末を、バッチキルンを用いて焼成した。焼成雰囲気は、1.5体積%H2/N2とした。雰囲気ガスは、炉内を通過させるようにした。焼成温度は450℃、焼成時間は1時間であった。この焼成によりITOが得られた。得られたITOを常法に従い粉砕し、目的とするITO粒子を得た。得られたITO粒子及び焼成前の混合水酸化物のTEM像を図1に示す。同図から明らかなように、本実施例で得られたITO粒子は、ピーナツ形ないし空豆形である扁平な粒子を比較的多く含み、全体として平面視での形状がアメーバ形の扁平なものであることが判る。また、粒子内に円形をした高透過性部位を有していることが判る。更に、粒子の分散性が良好であることが判る。更に、焼成前の水酸化物においても粒子の分散性が良好であることが判る。
〔比較例1〕
実施例1において、アンモニアの滴下による混合水酸化物の生成を、反応系のpHが6.5となった時点で終了した。それ以外は実施例1と同様にして、目的とするITO粒子を得た。得られたITO粒子及び焼成前の混合水酸化物のTEM像を図2に示す。同図から明らかなように、本比較例で得られたITO粒子は、粒子どうしが凝集しており、分散性が低いことが判る。また、焼成前の水酸化物においても粒子どうしの凝集が甚だしく、分散性が低いことが判る。
〔実施例2ないし4及び比較例2ないし4〕
合成条件を、以下の表1に示す条件とした以外は、実施例1と同様にしてITO粒子を得た。実施例2ないし4で得られたITO粒子のTEM像を図3に示す。また、比較例2及び3で得られたITO粒子のTEM像を図4に示す。
〔参考例1〕
ITOターゲットを用い、スパッタリングによって厚み120nmのITO薄膜を成膜した。基板にはガラス基板を使用した。DCマグネトロンスパッタ装置を用い、酸素分圧をコントロールして成膜した。スパッタの条件としてスパッタ圧力0.3Pa(酸素分圧0.01Pa)、出力600Wの条件を採用した。
〔評価〕
実施例及び比較例で得られたITO粒子について、ITO粒子の面積に占める高透過性部位の占める割合を以下の方法で測定した。またITO粒子の諸物性値を以下の方法で測定した。更に、ITO粒子を原料として調製された導電性インクから形成された薄膜の全光線透過率及び表面抵抗を以下の方法で測定した。それらの結果を表2に示す。また同表には、参考例1の測定結果も併せて記載されている。
〔ITO粒子の面積に占める高透過性部位の占める割合〕
(株)マウンテック社の画像解析式粒度分布装置システム「マックビュー」を用い、50個の粒子を対象として測定した。測定に際して、まずTEM画像のスケールバーより換算長さを読み取り、粒子それぞれについて、それらの形状に沿って形状認識を実施した。規定個数の形状認識後、画像解析ソフトにて粒子測定を実施し、得られた粒子面積の合計値を(Total Area)Taとした。更に、測定に使用した粒子の明部を同様に選択し、明部の面積の合計値を(Bright Area)Baとした。Ba/Ta×100(%)にて、ITO粒子の面積に占める高透過性部位の占める割合を求めた。
〔形状及び一次粒子の平均粒径〕
ITO粒子1gを50mlの水に入れて超音波分散させた。この液をスポイトで採取し、コロジオン溶液の中に1滴滴下してコロジオン膜を作成し、銅メッシュで掬い取った。膜を乾燥させた後カーボン蒸着してTEM(日立製作所製H−9000NAR)にて観察した。この際、任意の50個の粒子を選定し、粒子を横切る最大長さを測定し、測定値を平均した。
〔SnO2の含有量〕
ITO粉末を酸に溶解させ、ICP法によってSnO2の含有量を測定した。
〔粉体の体積抵抗率〕
直径45mm、深さ10mmのアルミニウム製カップにITO粒子を充填し、これをプレス成型機にて加圧力49MPaで加圧成型してペレットとした。このペレットについて、四探針抵抗測定機(三菱化学株式会社製ロレスタGP)を用いて体積抵抗率を測定した。
〔比表面積〕
BET多点法により測定した。
〔ITO薄膜の全光線透過率及び表面抵抗〕
容積100mlのポリエチレン製ボトルに、ITO粒子10gとエチレングリコール40gとを混合した液を入れた。更に、ジルコニアビーズ(Φ0.1mm)300gを入れ、ペイントシェイカーを用いて3時間分散処理を行った。得られた分散液を、加圧濾過器を使用して、0.2μmのメンブランフィルターを通過させた。得られたスラリー1gとZr系カップリング剤(BZ−125)0.2gを、自転・公転ミキサー(シンキー社製の「泡取り錬太郎」)を用いて60秒間混合しインクを得た。このインクを、スピンコーター(ミカサ社製IH−D7)を用いてガラス基盤(OA−10)に塗布し成膜を行った。この膜を120℃の乾燥機中で1時間乾燥させて、導電性薄膜を得た。この薄膜の膜厚を電子顕微鏡で観察したところ約300nmであった。この薄膜を日本電色工業社の光線透過率測定装置NDH−1001DPを用いて全光線透過率を測定した。また、この薄膜について、四探針抵抗測定機(三菱化学製ロレスタGP)を用いて表面抵抗を測定した。
〔結晶子径〕
X線源としてCu管を用い、自動X線回折装置RINT2200(株式会社リガク製)によって測定を行った。測定範囲は20°≦2θ≦40°とした。結晶子径の決定には、2θ=21.5°、30.5°、35.5°、37.7°のピークを用いた。結晶子径は、これらのピークからWillson法により得られる値を用い、最小自乗法から求めた。
〔インク評価〕
ITO粒子10gとエチレングリコール40gとを混合した液に、ジルコニアビーズ(φ0.3mm)300gを加え、ペイントシェイカーを用いて3時間分散処理を行った。分散によって得られたスラリーを、加圧濾過器を使用して、0.8μmと0.45μmのメンブレンフィルターをそれぞれ通過させた。そのときのITO粒子の通過量及び時間を測定した。ITO粒子の通過量は、全量通過したときを「○」、50%以上の粒子が通過したときを「△」、50%未満の粒子しか通過しないときを「×」とした。
また、実施例1及び比較例1のITO粒子について、インク調製後の分散状態をTEM観察した。それらの結果を図1(c)及び図2(c)にそれぞれ示す。
表2に示す結果から明らかなように、実施例で得られたITO粒子は、微粒のものであり、これを用いて形成された薄膜は、透明性が高く、かつ抵抗が低く、スパッタリング法で成膜されたITO薄膜と遜色がないことが判る。また、図1(b)等から明らかなとおり、実施例のITO粒子には高透過性部位が存在していることが判る。更に、図1(c)と図2(c)との対比から明らかなように、実施例のITO粒子は、インク調製後においても良好な分散性が保たれていた。
実施例1で得られたITO粒子のTEM像であり、図1(a)は焼成前の混合水酸化物を示し、図1(b)は焼成後のITO粒子を示し、図1(c)はインク調製後のITO粒子を示す。 比較例1で得られたITO粒子のTEM像であり、図2(a)は焼成前の混合水酸化物を示し、図2(b)は焼成後のITO粒子を示し、図2(c)はインク調製後のITO粒子を示す。 実施例2、3及び4で得られたITO粒子のTEM像であり、図3(a)は実施例2、図3(b)は実施例3、図3(c)は実施例4を示す。 比較例2及び3で得られたITO粒子のTEM像であり、図4(a)は比較例2、図3(b)は比較例3を示す。

Claims (9)

  1. 透過型電子顕微鏡を用いて観察した場合に、粒子内の一部に電子線の透過性が相対的に高い部位が観察されることを特徴とする錫ドープ酸化インジウム粒子。
  2. 観察像における前記粒子の面積に占める前記部位の面積の割合が2〜15%である請求項1記載の錫ドープ酸化インジウム粒子。
  3. 一次粒子の平均粒径が5〜25nmで、かつ不定形の形状である請求項1又は2記載の錫ドープ酸化インジウム粒子。
  4. 請求項1記載の錫ドープ酸化インジウム粒子を含むことを特徴とする導電性インク。
  5. 請求項4記載の導電性インクを用いて製造され、厚みが100〜300nmで、波長400nmでの全光線透過率が95%以上である導電性膜。
  6. インジウム換算の濃度が5〜15g/lのインジウム塩、及び錫換算の濃度が0.3〜1.2g/lの錫塩を含む水溶液に、pHが3.0〜4.3となるようにアルカリを添加して、錫及びインジウムを含む沈殿物を生成させ、該沈殿物を還元焼成することを特徴とする錫ドープ酸化インジウム粒子の製造方法。
  7. インジウム塩が硝酸インジウムであり、錫塩が塩化第二錫である請求項6記載の製造方法。
  8. アルカリがアンモニア水であり、該アンモニア水の添加時間が5〜30分である請求項6又は7記載の製造方法。
  9. 0〜30℃で前記沈殿物を生成させる請求項6ないし8のいずれかに記載の製造方法。
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