JP2009240912A - アスベスト含有物の無害化処理方法およびセメントの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】アスベスト廃棄物等のアスベスト含有物と、半導体材料等の製造工程などで排出されたリン酸イオンを含むフッ化物汚泥と、セメント製造工程から排出される塩素バイパスダストなどの塩素化合物とを、同時に、かつ低い加熱温度で効率的に無害化処理することができるアスベスト含有物の無害化処理方法ならびにこれを利用したセメントの製造方法を提供する。
【解決手段】ロータリーキルン1の窯尻部分2もしくはロータリーキルンの窯尻側に仮焼セメント原料を供給する上記プレヒータの後段部分から抜き出した塩素化合物を含有する仮焼セメント原料および/またはロータリーキルンの窯尻部分もしくはプレヒータの後段部分から抜き出した塩素バイパスダストと、リン酸イオンを含有するフッ化物汚泥と、アスベスト含有物とを混合し、得られた混合物を600℃以上に加熱処理するアスベスト含有物の無害化処理方法とした。
【選択図】図1

Description

本発明は、アスベスト廃棄物等のアスベスト含有物の無害化と同時に、半導体材料等の製造工程などで排出されたリン酸イオンを含むフッ化物汚泥と、セメント製造工程から排出される塩素バイパスダストなどを効率的に処理するアスベスト含有物の無害化処理方法およびこれを利用したセメントの製造方法に関するものである。
アスベスト(石綿)は、天然に生成された鉱物繊維であり、化学的安定性を有するとともに、耐熱性や強度に優れることから、その特性を利用して、これまで耐火被覆材、断熱材、吸音材等として、建築物の壁、天井、床、空調設備等に広く使用されていた。
ところが、近年このアスベストは、化学的な毒性はないものの、その結晶構造が針状であるために、人が吸い込んだ場合に、肺の組織に刺さって排出されずに蓄積し、長期間の潜伏を経て重大な疾病を招来することが指摘されている。
そこで、現在では、多くの建築物等において、飛散のおそれがある壁や天井等に吹き付けられたアスベストや保温材として使用されていたアスベストを除去または撤去する対策が採られており、この結果多量のアスベストが廃棄物として発生している。
ちなみに、この種の飛散のおそれがあるアスベスト廃棄物については、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」において特別管理産業廃棄物に指定され、その排出から収集・運搬・処分までの処理基準が定められている。
そして、上記収集・運搬に係る処理基準においては、アスベスト等をプラスチック等の容器に収納するとともに、破損などにより飛散させないように慎重に取り扱うことや、運搬車両の荷台に覆いを掛けるなどの飛散防止対策を講じることが義務づけられている。また、上記処分に係る処理基準としては、プラスチック袋や容器等の耐水性の材料で二重に梱包するか、または十分な量のセメント等によって固形化したうえで所定の場所に直接埋め立て処分を行う方法や、溶融設備を用いて十分に溶融処理することにより無害化したうえで、普通の産業廃棄物として処理することが定められている。
このようなアスベストの処分方法のうち、前者の直接埋め立て処分する方法にあっては、大量のセメントが必要になるとともに、今後想定される排出量に対して、早期の埋め立て地の枯渇が懸念されている。また、後者の溶融設備における中間処理による無害化処分の方法にあっては、アスベストの融点が1500℃前後と極めて高いために、溶融温度によっては、アスベストを完全に無害化することが難しいという問題点があった。
そこで、下記特許文献1においては、アスベストとフロン分解無害化処理によって生成されたフロン分解物とを混合又は混練し、次いで当該混合物を低温加熱処理して成るアスベストの無害化処理方法が提案されている。
そして、上記従来の無害化処理方法によれば、フロン無害化処理によって生成されるフッ化カルシウムを融解剤として利用することにより、600℃以下の加熱温度によってもアスベストを分解することができ、低エネルギーでアスベストを無害化処理することができる、とされている。
しかしながら、上記特許文献1に記載されているように、上記アスベストの無害化処理方法にあっては、別途、フロン分解無害化装置を用いて、放電によって空気をプラズマ化して超高温(約10、000℃)のアークを発生させ、そこにフロン〔例えば、フロン12(CCl22)〕と水蒸気(H2O)とを送り込んで分解処理する必要があり、大量のアスベスト廃棄物を処理するには、工程や設備が複雑化するとともに、処理費用の高騰化を招くという問題点があった。
一方、半導体材料や半導体デバイスの製造工程においては、シリコンウエハのエッチングに洗浄液として使用されたフッ酸、珪フッ酸、硝酸、リン酸等を含む大量の使用済み廃液が排出される。そして、一般に、当該使用済み廃液は、水酸化カルシウムや炭酸カルシウム等のカルシウム塩によって中和する廃液処理が施されてフッ化物を含むスラリー状の汚泥(以下、フッ化物汚泥と称す。)とされているが、当該フッ化物汚泥の処理にも多くの問題があり、その簡易な処理方法や再資源化の開発が望まれている。
特開2005−168632号公報
そこで、本発明者等は、上記アスベスト廃棄物の無害化処理方法について鋭意研究を重ねた結果、アスベスト成分と塩素バイパスダストやセメント原料中の酸化カルシウム分が固相反応を生じさせ、かつこれらのバイパスダストやセメント原料中の塩素化合物が溶融することによって上記固相反応を促進させるとの知見を得るに至った。さらには、フッ化物汚泥には、上記中和処理においてフッ化カルシウムが沈殿物として含まれており、当該フッ化物汚泥と上記アスベスト廃棄物とを混合することにより、上述したアスベストの分解に要する加熱温度を低くすることができるとともに、上記フッ化物汚泥に含まれるリン酸イオンによって、針状の結晶構造の表面に亀裂を生じさせて脆性化させることにより、一層容易に上記無害化処理を行うことができるとの知見を得るに至った。
本発明は、かかる知見に基づいてなされたもので、アスベスト廃棄物等のアスベスト含有物と、半導体材料等の製造工程などで排出されたリン酸イオンを含むフッ化物汚泥と、セメント製造工程から排出される塩素バイパスダスト等を、同時に、かつ低い加熱温度で効率的に処理することができるアスベスト含有物の無害化処理方法ならびにこれを利用したセメントの製造方法を提供することを課題とするものである。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、セメント原料を、プレヒータにて予熱して仮焼させた後に、窯前側に設けられた加熱手段によって内部が高温雰囲気に保持されたロータリーキルンの窯尻側に供給して、上記窯前側に送りつつ焼成するセメント製造工程を用いたアスベスト含有物の無害化処理方法であって、上記ロータリーキルンの窯尻部分もしくは上記ロータリーキルンの窯尻側に仮焼セメント原料を供給する上記プレヒータの後段部分から抜き出した塩素化合物を含有する仮焼セメント原料および/または上記ロータリーキルンの窯尻部分もしくは上記プレヒータの後段部分から抜き出した塩素バイパスダストと、リン酸イオンを含有するフッ化物汚泥と、アスベスト含有物とを混合し、得られた混合物を600℃以上に加熱処理することを特徴とするものである。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のアスベスト含有物の無害化処理方法において、上記混合物を800℃以上に加熱処理することを特徴とするものである。
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のアスベスト含有物の無害化処理方法において、上記混合物を湿式粉砕した後に上記加熱処理することを特徴とするものである。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載のアスベスト含有物の無害化処理方法において、上記混合物を、セメント製造設備においてセメント原料を焼成するロータリーキルンに投入して上記加熱処理することを特徴とするものである。
さらに、請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載のアスベスト含有物の無害化処理方法において、上記混合物に、さらに焼却主灰を混合することを特徴とするものである。
さらにまた、請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載のアスベスト含有物の無害化処理方法を用いたセメントの製造方法であって、上記混合物をセメント原料とともにロータリーキルンに投入して、上記セメント原料を焼成してセメントとし、かつ上記混合物を上記加熱処理により上記セメントの一部とすることを特徴とするものである。
なお、本願発明において、窯尻部分とは、ロータリーキルンの窯尻側において当該ロータリーキルンを回転自在に支持する窯尻のケーシングおよびロータリーキルンの上流側に設けられてセメント原料を予熱するプレヒータから上記ケーシングに至る移送管、ならびに上記ロータリーキルンの前段に仮焼炉を有している場合には、この仮焼炉を含む部分を総称するものである。また、プレヒータの後段部分とは、プレヒータを構成している複数のサイクロンのうち内部が800℃以上の高温雰囲気である後段のサイクロンを意味するものである。従って、上記ロータリーキルンの窯尻部分もしくは上記ロータリーキルンの窯尻側に上記仮焼セメント原料を供給する上記プレヒータの後段部分から抜き出した塩素化合物を含有する仮焼セメント原料とは、上述のロータリーキルンの窯尻部分またはプレヒータを構成する後段の800℃以上の高温雰囲気のサイクロン(後段部分)から抜き出した塩素化合物を含有する仮焼セメント原料を意味するものである。
請求項1〜5のいずれかに記載の発明によれば、ロータリーキルンの窯尻部分における約900℃の高温下にあるセメント原料は、焼成の前段階にあって、いわゆる仮焼された状態にある。そして、この仮焼セメント原料は、セメント原料である石灰石の熱分解により生じた酸化カルシウム(CaO)を多く含んでおり、一部、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化カリウム(KCl)および塩化ナトリウム(NaCl)などの塩素化合物を含有している。
他方、ロータリーキルンの窯尻部分などのセメント製造工程から排出された塩素バイパスダストも、塩化カルシウム、塩化カリウムおよび塩化ナトリウムとともに、セメント原料である酸化カルシウムを一部含んでいる。
このため、アスベスト廃棄物等のアスベスト含有物と、リン酸イオンを含有するフッ化物汚泥と、上記塩素バイパスダストおよび/または仮焼セメント原料とを混合することにより、混合物が窯尻部分への投入による約900℃の高温雰囲気や加熱装置などによって800℃程度の反応温度まで加熱されている場合には、上記酸化カルシウム分とアスベスト中の二酸化珪素(SiO2)や酸化マグネシウム(MgO)との固相反応が生じる。それとともに、塩素化合物が融点温度まで加熱されることによって溶融塩となって、アスベスト含有物や酸化カルシウムなどの粒子間に均一に分散される。その結果、上記固相反応が溶融塩を介して進行して、CaMgSiO4(Monticellite)、Ca2SiO4(dicalcium silicate)、Ca4Si272(Cuspidine)、MgOなどが生成されて、上記アスベスト含有物が無害化される。
さらに、上記フッ化物汚泥に含まれるフッ化カルシウム(CaF2)によっても、上記アスベストの分解に要する加熱温度を低くすることができる。加えて、上記フッ化物汚泥に含まれるリン酸イオンによって、針状の結晶構造の表面に亀裂を生じさせて脆性化させることにより、より一層上記アスベストの分解が容易になる。
従って、上記アスベスト含有物とフッ化物汚泥との混合物を600℃以上、より好ましくは請求項2に記載の発明のように800℃以上に加熱処理することにより、これらアスベスト含有物とフッ化物汚泥とを、同時に、かつ低い加熱温度で効率的に無害化処理することができる。
この際に、請求項3に記載の発明のように、上記混合物を湿式粉砕した後に上記加熱処理するようにすれば、上記アスベスト含有物の飛散を確実に防止することができる。しかも、アスベスト含有物とフッ化物汚泥と塩素バイパスダストおよび/または仮焼セメント原料との混合を促進させることができるとともに、上記アスベスト含有物を細分化させることにより、加熱処理時のアスベストの分解を短時間で行うことが可能になる。
ところで、上記加熱処理は、600℃以上、好ましくは800℃以上の加熱が可能なものであれば、一般的な加熱装置や焼却炉等を用いることが可能であるが、請求項4に記載の発明のように、セメント製造設備においてセメント原料を焼成するロータリーキルンに投入すれば、当該ロータリーキルン内は900℃〜1450℃に保持されているために、確実に無害化処理を行うことができる。
また、当該混合物に含まれる水分は、上記高温雰囲気下において瞬時に気化させて排出することができるとともに、固形分に含まれている酸化カルシウム(CaO)、アルミナ(Al23)、鉄分(Fe23)等は、セメント原料の一部として再利用することがきる。ちなみに、上記フッ化物汚泥に含まれるフッ化カルシウム(CaF2)は、もともとセメント原料の焼成時における溶融温度の低温化用として、所定量添加されるものであるために、本来添加すべき上記フッ化カルシウム量の低減化を図ることも可能になる。
さらに、近年、上記アスベスト廃棄物、上記フッ化物汚泥や塩素バイパスダストなどに加えて、焼却炉から排出される主灰についても、その無害化処理が要請されている。この主灰は、二酸化珪素(SiO2)や酸化カルシウム(CaO)等のセメント原料とほぼ一致する成分を主成分とするものである。そこで、請求項5に記載の発明のように、上記混合物に、さらに焼却主灰を混合すれば、廃棄物としての焼却主灰についても、同時に無害化処理することができ、特に上記ロータリーキルン内において加熱処理する場合には、セメント原料の一部として有効活用することができる。
それだけでなく、請求項6に記載の発明のように、上記混合物を、セメント原料とともにロータリーキルンに投入することによって、セメント原料を焼成してセメントとし、かつ混合物を加熱して、アスベスト含有物の無害化処理と同時にフッ化物汚泥および塩素バイパスダストなどの処理を行うことにより、混合物をセメントの一部とすることができ、効率的にセメントを製造することができる。
(第1の実施形態)
以下、本発明に係るアスベスト含有物の無害化処理方法を、セメント製造設備においてセメント原料を焼成するロータリーキルンを用いて行う第1の実施形態について説明する。
図1は、上記処理方法に用いられる処理システムを示すもので、先ず上記セメント製造設備について説明すると、図1中符号1がセメント原料を焼成するためのセメントキルンある。
このセメントキルン1は、軸芯回りに回転自在に設けられたロータリーキルンであり、その図中左方の端部に、ロータリー部分を支持する窯尻ハウジング2aおよびその立ち上がり部2bからなる窯尻部分2が設けられている。この窯尻部分2の上流側に、セメント原料を予熱するためのプレヒータ3が設けられるとともに、図中右方の窯前4に、内部を加熱するための主バーナ5が設けられている。なお、図中符号6は、焼成後のセメントクリンカを冷却するためのクリンカクーラである。
ここで、プレヒータ3は、上下方向に直列的に配置された複数段のサイクロンによって構成されており、供給管7を介して最上段のサイクロンにセメント原料が供給されるとともに、最下段のサイクロンの底部には、内部のセメント原料をセメントキルン1の窯尻部分2へと送る移送管3aが接続されている。
他方、窯尻部分2の立ち上がり部2bには、セメントキルン1から排出された燃焼排ガスを最下段のサイクロンへと供給する排ガス管3bが接続されており、最上段のサイクロンの上部から排出された排ガスが、図示されない排気ファンによって排気ライン8を介して排気されて行くようになっている。
そして、上記構成からなるセメント製造設備に、アスベスト含有物とフッ化物汚泥の処理設備が併設されている。
このアスベスト含有物などの処理設備は、塩素バイパスと呼ばれる排ガス処理システムが備えらている。
この排ガス処理システムは、セメントキルン1から排出されてプレヒータ3へと送られるダストを含む排ガスの一部を抽気ガスとして抽気して、当該抽気ガスに含まれていた塩素化合物を除去するためのものであり、図中符号20が立ち上がり部2bの上部に接続されて上記抽気ガスを抽気する抽気ダクトである。
そして、この処理システムにおいては、この抽気ダクト20に沿って、順次この抽気ダクト20から抽気された抽気ガスを冷却する冷却器21と、この冷却器21から排気された排気ガスから所定粒度以上のダストを分離するサイクロン型分級機22と、このサイクロン型分級機22において所定粒度以上のダストが分離された抽気ガスから微粉ダストである塩素バイパスダストDを捕集・除去するバグフィルタ23と、このバグフィルタ23の下流側に設けられて抽気ガスを吸引する誘引ファン24とが設けられている。
ここで、冷却器21は、冷却ファンからの冷気や冷却ポンプの冷却水を冷媒として抽気ガスを熱交換させることにより、抽気ガスの温度を塩素化合物の融点(600℃〜700℃)以下に冷却するものであり、サイクロン型分級機22の底部には、分離された所定粒度以上のダストを再び窯尻部分2へと戻す戻り配管25が接続されている。
一方、図1において、符号10は、アスベスト廃棄物等のアスベスト含有物が投入されるホッパである。そして、このホッパ10の下部排出口は、大径の開閉手段11を介して湿式ミル12の供給側に接続されている。また、この湿式ミル12には、スラリー状のフッ化物汚泥を湿式ミル12内に導入するフッ化物汚泥の供給管13が接続されている。さらに、湿式ミル12には、ダストDを供給する供給配管40が接続されている。なお、これらアスベスト含有物とフッ化物汚泥とダストDとの混合物における流動性が不足する場合には、図示されない溶媒供給管から、湿式ミル12内に、別途廃液、水、流動剤等が流動性を増加させる溶媒として供給されるようになっている。
他方、この湿式ミル12の排出側には、移送ポンプ14が介装された移送配管15の一端部が接続されており、この移送配管15の他端部は、セメントキルン1の窯前4であって、かつ主バーナ5の上方位置に導入されている。
さらに、この移送配管15の窯前4の上流側には、圧縮空気供給管16が接続されている。ここで、圧縮空気供給管16は、移送配管15内のスラリーのセメントキルン1側への移送を促進するように、圧縮空気を移送配管15内であって、かつセメントキルン1の窯前4側に噴き出すように傾斜して配管されている。
次に、以上の構成からなる処理システムを用いた本発明の第1の実施形態について説明する。
先ず、供給管7からプレヒータ3の1段目のサイクロンに供給されたセメント原料は、順次下方のサイクロンへと落下するにしたがって、下方から上昇するセメントキルン1からの高温の排ガスによって予熱され、最終的に最下段のサイクロンから移送管3aを介してセメントキルン1の窯尻部分2に導入される。
そして、このセメントキルン1内において、窯尻部分2側から窯前4側へと徐々に送られる過程において、主バーナ5からの燃焼排ガスによって約1450℃まで加熱され、焼成されてクリンカとなる。次いで、窯前4に到達したクリンカは、クリンカクーラ6内に落下して図中右方に送られる。この際に、クリンカクーラ6内に供給された空気によって所定温度まで冷却されて最終的に当該クリンカクーラ6から取り出される。
これと併行して、セメントキルン1の窯尻部分2側から、あるいは窯前4側から、下水汚泥やプラスチックフィルムなどの廃棄物が内部に投入され、セメント原料の一部あるいは加熱用燃料の一部として利用される。
このため、各種の廃棄物、特に、プラスチックフィルムなどの合成樹脂からなる廃棄物によって、燃焼時に揮発性を有する塩素成分が発生し、セメントキルン1内から排出される排ガスに同伴して、窯尻部分2の立ち上がり部2bから排ガス管3bを通じてプレヒータ3へと送られていく。そして、プレヒータの上段側移送されるに連れて雰囲気温度が低下して融点以下になると、凝集してセメント原料に付着し、再びセメントキルン1内へと送られるとともに、雰囲気温度の上昇に伴って再度蒸発することになり、セメント焼成設備の系内に取り込まれた塩素成分は、セメントキルン1およびプレヒータ3内で蒸発および凝集を繰り替えして循環し、かつこれに新たに投入される廃棄物から発生する塩素成分が加わることにより、その濃度が上昇して、プレヒータなどにコーチングが生じ、または製造されたセメントクリンカーの品質低下を招きうる。
そこで、アスベスト含有物の処理設備においては、セメントキルン1から排出されてプレヒータ3へとダストを含む排ガスの一部を、連続的あるいは間欠的に誘引ファン24を作動させることにより、立ち上がり部2bに接続された抽気ダクト20を通じて、排ガス処理システムに抽気する。
これにより、この抽気ダクト20によって送られた排ガスを、冷却器21によって、塩素化合物の融点(600℃〜700℃)まで冷却した後に、サイクロン型分級機22に送る。そして、5μm〜30μmの範囲内の所定粒度以上のダストを戻り配管25を通じて窯尻部分2へと戻すとともに、この所定粒度以上のダストが分離された排ガスを、バグフィルタ23へと送って、微粉ダストDを捕集除去する。
他方、上記セメント製造設備に搬入された粉砕済みのアスベスト廃棄物をホッパ10内に投入し、開閉手段11を開くことにより、湿式ミル12内に供給する。また湿式ミル12内には、供給管13のバルブ13aを開いて、スラリー状のフッ化物汚泥を供給するとともに、供給配管40からダストDを供給する。その際、好ましくは、特願2007−170602において開示した最も融点の低くなるKCl/NaCl(モル比)=0.5〜0.9の範囲内のダストDを供給する。また、要すれば、別途流動性を与えるための廃液、汚泥、水または流動剤を供給する。
ここで、上記フッ化物汚泥について詳述すると、当該フッ化物汚泥のうち、処理すべき排水として大量に発生するものは、半導体製造工場等においてウエハのエッチング工程から排出されるフッ化水素酸と硝酸を主体とした混酸の廃水である。そして、この廃水は、特にフッ素が排水規制の対象となるために、一般に炭酸カルシウムや水酸化カルシウム等のカルシウム塩を添加して、上記フッ素を凝集沈殿する処理方法が採用されている。
すなわち、上記廃水中のフッ素は、フッ化水素酸(HF)、フッ化アンモニウム(NH4F)、フッ化ナトリウム(NaF)、珪フッ化水素酸(H2SiF6)等の化合物となっており、これに上記カルシウム塩として、例えば水酸化カルシウム(Ca(OH)2)を添加することにより、溶解度の低いフッ化カルシウムCaF2を生成させるものである。
図3は、この種のウエハのエッチンク工程から排出されてカルシウム塩添加処理が施された複数のフッ化物汚泥のサンプルにおける成分の分析結果を示すものである。なお、上記分析にあたっては、熱加水分解蒸留およびイオンクロマトグラフィーを用いた。
図3から、いずれのフッ化物汚泥も、所定量のカルシウム、フッ素ならびにリンを含んでいることが判る。
そして、本実施形態においては、上記フッ化カルシウムCaF2を沈殿物として含むスラリー状のフッ化物汚泥を、そのまま上記供給管13から湿式ミル12内に導入するとともに、ダストDを供給配管40から湿式ミル12に供給する。すると、湿式ミル12においては、アスベスト廃棄物がその容器ごと湿式で粉砕されるとともに、粉砕されたアスベスト廃棄物とフッ化物汚泥とダストDとが混合される。
これにより、フッ化物汚泥に含まれるフッ化カルシウム(CaF2)によって、アスベストの分解に要する加熱温度が低下する。これとともに、上記フッ化物汚泥に含まれるリン酸イオンによって、針状の結晶構造の表面に亀裂を生じさせて脆性化させることにより、より一層上記アスベストの分解が容易になる。
さらに、ダストDに含まれる塩素化合物が溶融することより、この溶融塩によってダストDに含まれる酸化カルシウムとアスベスト中の二酸化ケイ素や酸化マグネシウムとの固相反応が促進されて、CaMgSiO4 などが生成されるため、より低温でアスベストを無害化させることができる。
なおこの際に、湿式ミル12内に、上記アスベスト廃棄物、フッ化物汚泥およびダストDに加えて、さらに二酸化珪素や酸化カルシウム等のセメント原料とほぼ一致する成分を主成分とする焼却主灰を混合することもできる。また、湿式ミル12内で生成される粉砕後のアスベスト廃棄物とフッ化物汚泥とダストD等とのスラリー状の混合物は、その粘度が10000mPa・s以下になるように調整することが好ましい。
次いで、この湿式ミル12から排出されたスラリー状の上記混合物を、ポンプ14により移送配管15を通じてセメントキルン1の窯前4側へと送る。
そして、圧縮空気供給管16から移送配管15内へと圧縮空気を供給することにより、上記スラリーをセメントキルン1の窯前4側から内部に噴出させる。
これにより、アスベスト廃棄物とフッ化物汚泥とダストDとの混合物は、セメントキルン1内における主バーナ5からの火炎近傍において、約2000℃の高温により燃焼される。この結果、瞬時にアスベストが分解されて非アスベスト化することにより、また、固相反応が生じることにより、アスベストが無害化される。そして、上記混合物中の固形分がセメント原料の一部として利用され、上記混合物中の水分が瞬時に気化して燃焼排ガスとともに排気されて、セメントが製造される。
したがって、上記構成からなるセメント製造設備を利用したアスベスト含有物の無害化処理方法によれば、アスベスト廃棄物とリン酸イオンを含有するフッ化物汚泥とダストDとを混合することにより、上記固相反応によってアスベストを無害化できるとともに、上記フッ化物汚泥に含まれるフッ化カルシウムによって、上記アスベストの分解に要する加熱温度を約600℃まで低くすることができる。加えて、上記フッ化物汚泥に含まれるリン酸イオンによって、針状の結晶構造の表面に亀裂を生じさせて脆性化させることにより、より一層上記アスベストの分解が容易になる。
そしてさらに、上記アスベスト廃棄物とフッ化物汚泥とダストDとの混合物を、1400℃以上の高温雰囲気が得られるセメントキルン1の窯前4側から内部に導入しているために、これらアスベスト含有物とフッ化物汚泥等とを、同時に、かつ確実に無害化処理することができる。
加えて、上記アスベスト廃棄物とフッ化物汚泥とダストD等を、湿式ミル12によって湿式で粉砕・混合しているので、飛散防止のためにプラスチック容器に収納されて搬送されてきたアスベスト廃棄物についても、その容器ごと湿式ミル12内に投入して湿式で破砕することにより、アスベストの飛散を確実に防止して、当該アスベストの粉砕を行うことができる。
しかも、湿式ミル12からは、粉砕されたアスベスト廃棄物とフッ化物汚泥とダストD等との混合物がスラリーとして排出されるために、これをポンプ14によって移送配管15内を通じてセメントキルン1の窯前4側から内部に供給することにより、アスベスト廃棄物の粉砕後の移送工程においても、同様にアスベストが飛散するおそれがない。しかも、搬送手段として、汎用のポンプ14を使用することもできる。
また、圧縮空気供給管16から圧縮空気を供給して、移送配管15内のスラリーをセメントキルン1内に噴出させているので、上記スラリーをセメントキルン1内の広範囲に供給して瞬時に燃焼処理することができる。
この結果、別途飛散防止対策を講じることなく、容易かつ確実に上記ロータリーキルンにおいて無害化処理することができる。
(第2の実施形態)
図2は、本発明のアスベスト含有物の無害化処理方法の第2の実施形態に用いられる処理システムを示すもので、図1に示したものと同一構成部分については、同一符号を付してその説明を簡略化する。
この処理システムにおいては、湿式ミル12の排出側に接続された移送配管15に、加熱槽17が介装されており、この加熱槽17の排出側がセメントキルン1の窯尻部分2に導入されている。
他方、この加熱槽17には、熱源としてセメントキルン1の窯尻部分2から送気管18を介して抜き出された約900℃の高温空気が導入されている。そして、この加熱槽17に導入された高温空気は、戻り管19を通じて再びセメントキルン1の窯尻部分2に戻されるようになっている。なお、図2においては、加熱槽17がセメントキルン1から離間して描かれている結果、送気管18および戻り管19が引き回された配管形式になっているが、実際には、上記加熱槽17をセメントキルン1の窯尻部分2に隣接して設置することが可能である。
上記構成からなる処理システムを用いた第2の実施形態においては、湿式ミル12において粉砕・混合されたアスベスト廃棄物とフッ化物汚泥とダストDとの混合物は、一旦加熱槽17に送られる。そして、この加熱槽17において、セメントキルン1の窯尻部分2から送られてくる約900℃の高温空気によって加熱処理される。すると、上記混合物は、上記800℃程度での固相反応に加えて、フッ素物汚泥に含まれるフッ素分による600℃程度での分解反応によって、この加熱槽17において当該混合物中のアスベストが無害化される。
次いで、加熱槽17から排出されたスラリー状の上記混合物は、移送配管15を通じてセメントキルン1の窯尻部分2から内部に導入される。そして、セメントキルン1内において、約900℃以上の高温により燃焼され、同様に上記混合物中の固形分は、セメント原料の一部として利用される。
したがって、上記第2の実施形態に示す処理方法によっても、上述した第1の実施形態と同様に作用効果を得ることができる。
なお、本発明は、上述の実施形態に何ら限定されるものでなく、塩素バイパスダストDに代えて、ロータリーキルンの窯尻部分から(例えば、立ち上がり部2bの下部に開閉可能な取り出し口を設けて、この取り出し口から)抜き出した塩素化合物を含有するセメント原料を、湿式ミル12に供給して、アスベスト含有物と混合してもよい。その際、上記混合物が窯尻部分から抜き出したセメント原料によって上記固相反応温度や分解温度に加熱された場合には、ロータリーキルンや加熱槽17に供給される前にCaMgSiO4 が生成され、また、分解されることによっても、アスベストが無害化される。
本発明の第1の実施形態に用いられる処理システムを示す概略構成図である。 本発明の第2の実施形態に用いられる処理システムを示す概略構成図である。 ウエハのエッチング工程から排出されたフッ化物汚泥における成分の分析結果を示す図表である。
符号の説明
1 セメントキルン(ロータリーキルン)
2 窯尻部分
4 窯前
10 アスベスト廃棄物等の投入用ホッパ
12 湿式ミル
13 フッ化物汚泥の供給管
15 移送配管
17 加熱槽
40 供給配管
D 塩素バイパスダスト

Claims (6)

  1. セメント原料を、プレヒータにて予熱して仮焼させた後に、窯前側に設けられた加熱手段によって内部が高温雰囲気に保持されたロータリーキルンの窯尻側に供給して、上記窯前側に送りつつ焼成するセメント製造工程を用いたアスベスト含有物の無害化処理方法であって、
    上記ロータリーキルンの窯尻部分もしくは上記ロータリーキルンの窯尻側に仮焼セメント原料を供給する上記プレヒータの後段部分から抜き出した塩素化合物を含有する仮焼セメント原料および/または上記ロータリーキルンの窯尻部分もしくは上記プレヒータの後段部分から抜き出した塩素バイパスダストと、
    リン酸イオンを含有するフッ化物汚泥と、
    アスベスト含有物とを混合し、
    得られた混合物を600℃以上に加熱処理することを特徴とするアスベスト含有物の無害化処理方法。
  2. 上記混合物を800℃以上に加熱処理することを特徴とする請求項1に記載のアスベスト含有物の無害化処理方法。
  3. 上記混合物を湿式粉砕した後に上記加熱処理することを特徴とする請求項1または2に記載のアスベスト含有物の無害化処理方法。
  4. 上記混合物を、セメント製造設備においてセメント原料を焼成するロータリーキルンに投入して上記加熱処理することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のアスベスト含有物の処理方法。
  5. 上記混合物に、さらに焼却主灰を混合することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のアスベスト含有物の無害化処理方法。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載のアスベスト含有物の無害化処理方法を用いたセメントの製造方法であって、上記混合物をセメント原料とともにロータリーキルンに投入して、上記セメント原料を焼成してセメントとし、かつ上記混合物を上記加熱処理により上記セメントの一部とすることを特徴とするセメントの製造方法。
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