JP5428736B2 - セメント製造設備からの排ガス中の水銀成分及び有機塩素化合物の低減方法 - Google Patents
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Description
これらの廃棄物には、多くの場合、重金属類が含有されており、そのうち、水銀等およびその塩化物等の揮発性重金属成分は、セメント製造設備の高温部において揮発し、ガス中に含有される。その後、ガスの温度が低下するのに伴いガス中に含有されるダストの表面にこれらの重金属等が析出し、あるいは重金属やその化合物自身の微粒子となる。これらのダストや微粒子は煙道の電気集塵機で捕集され、ガス中から除去される。
また、セメント製造設備内では、セメント原料や燃料としてセメント製造設備に持ち込まれる石炭、木屑、汚泥および廃プラスチック等の可燃物が完全燃焼せずに生成する未燃ガスと、廃プラスチック等から持ち込まれる塩素分が反応し、PCBおよびダイオキシン類などの有機塩素化合物が合成される。これら有機塩素化合物もセメント製造設備の高温部において揮発し、ガス中に含有され、より低温の電気集塵機内でダストに吸着する。
水銀等の重金属類、ダイオキシン類およびPCBなどの有機塩素化合物のいずれも、一部は煙道から外気へ排出されるが、大部分はセメント製造設備内を循環することとなる。
このため、ガス中の水銀や有機塩素化合物を処理する手段を設けないと、セメント製造設備内を循環する水銀等の重金属類、ダイオキシン類およびPCBの量が増加し、ガス温度の低下に伴って水銀等がダクトに析出したり、セメント製造設備の煙突から排出される排ガス中の水銀排出量、有機塩素化合物排出量が増える等の問題を生じる。
しかしながら、大量のセメント原料を予加熱することは、大型の予加熱器と多量の熱量を要し、大がかりな処理となる。
特許文献2には、セメント製造工程の排ガスから捕集した集塵ダストを加熱炉に導き、集塵ダストに含まれる水銀等を揮発温度以上に加熱してガス化して、酸性ないし酸化性溶液に吸収させる方法等によって水銀を除去し、水銀等を除去した集塵ダストをセメント原料の一部に用いるセメント製造排ガスの処理方法が記載されている。
しかしながら、特許文献2は、セメント製造工程の有機塩素化合物については全く考慮されていない。すなわち、塩素化合物と水銀が共存する系を加熱すれば、塩化第2水銀(HgCl2)が主体となるにもかかわらず、特許文献2では、元素状水銀(金属水銀)を吸収するために、吸収液としては酸性溶液ないし酸化性溶液が用いられている。また、セメント製造工程の有機塩素化合物の除去については全く記載がない。
(1)セメント製造設備の集塵機後半部分で捕集された集塵ダストを加熱炉に導き、キャリヤーガス導入下、300〜600℃に加熱して、集塵ダスト中の水銀成分及び塩素化合物を揮発させ、該加熱炉を出た排ガスを、水銀成分除去装置中で洗浄水と接触させて水銀成分を吸収し、該水銀成分除去装置を出た排ガスを800℃以上のセメント製造設備内の高温部に導いて有機塩素化合物を分解することを特徴とするセメント製造設備からの排ガス中の水銀成分及び有機塩素化合物の低減方法。
(2)加熱炉に導入するキャリヤーガスが、セメント製造設備において排出された熱排ガスである上記(1)に記載のセメント製造設備からの排ガス中の水銀成分及び有機塩素化合物の低減方法。
本発明は、セメント製造設備の集塵機後半部分で捕集された集塵ダストを加熱炉に導き、300〜600℃に加熱して、集塵ダスト中の水銀成分及び有機塩素化合物を揮発させ、該加熱炉を出た排ガスを、水銀成分除去装置中で洗浄水と接触させて水銀成分を吸収し、該水銀成分除去装置を出た排ガスを800℃以上のセメント製造設備内の高温部に導いて有機塩素化合物を分解するセメント製造設備からの排ガス中の水銀成分及び有機塩素化合物の低減方法である。なお、本明細書で、水銀成分とは、元素状水銀(金属水銀)及び塩化第2水銀を指し、有機塩素化合物とは、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、ダイオキシン類等を指す。
すなわち、原料ミル11により粉砕されたセメント原料を貯蔵サイロ12に一旦貯蔵し、次に貯蔵サイロ12内のセメント原料をプレヒーター13(図中の4つのサイクロン)により予熱し、続いて仮焼炉14で石灰石が脱炭酸されるまで昇温し、昇温されたセメント原料をロータリーキルン15内で加熱してセメントクリンカーを焼成する。その後、セメントクリンカーをクリンカークーラーに投入して冷却する。
セメント原料がプレヒーター13、仮焼炉14及びロータリーキルン15内で加熱されることにより、セメント原料中に含まれる水銀成分や有機塩素化合物は、排出ガス中に揮発し、そのガスはプレヒーター13の最上段のサイクロン(出口のガス温度は約400℃)を出て沈降室21に送られる。
沈降室21で粒子径の大きいダストが分離され、スタビライザー22でガス温度を調節された排ガスは、電気集塵機23に送られる。なお、沈降室21を出た排ガスは原料ミル11にも送られ、原料ミル11から出た排ガスは電気集塵機23に送られる排ガスに合流する。
電気集塵機23ではガス中に含まれる粒子径の小さいダストが捕集される。
電気集塵機23中のガス温度は、約80〜150℃程度であるので、ガス中の水銀成分や有機塩素化合物の大部分はダスト中の未燃物に吸着される。そして、電気集塵機23中で捕集される集塵ダストは、後半部分の方が前半部分よりも粒子径が小さく、水銀成分や有機塩素化合物が高濃度に吸着される。
電気集塵機23前半部分で捕集された集塵ダストは、直接、原料混合・供給系の混合サイロ・貯蔵サイロ12へ送られ、電気集塵機23後半部分で捕集された、水銀成分等をより高濃度に吸着した集塵ダストは加熱炉30へ送られる。そして、電気集塵機23でダストが捕集された排ガスは、一部が煙突24を通って系外へ放出される。他の排ガスは、ダストと共に混合サイロ・貯蔵サイロ12に入り、次いで、セメント原料と共にプレヒーター13へ送られることで、セメント製造設備内でガス循環系が形成されている。
加熱炉30の熱源は、電気加熱、熱風加熱またはバーナー加熱などを採用することができる。
加熱炉30のキャリヤーガスとしては、空気、窒素ガスあるいは窒素リッチガス(窒素濃度が90%以上)およびセメント製造設備の排ガスや排空気を利用することができ、セメント製造設備の排ガスや排空気の内300℃以上の排ガス、排空気を用いれば、ダストの加熱処理に必要な熱量を低減することができる。
加熱炉30中の集塵ダストの滞留時間は30〜120分程度であることが好ましい。
塩化第2水銀吸収液は排水処理設備で処理され、水銀成分除去装置40の底部の金属水銀は定期的に取り出される。
該高温部において、PCBおよびダイオキシン類などの有機塩素化合物は分解される。
すなわち、集塵機23後半部分で捕集された集塵ダストの一部(集塵ダスト全体の1/20量〜1/3量)を加熱炉内で300〜600℃に加熱して上記の後処理をすることによる水銀成分、有機塩素化合物の除去量は、水銀成分のセメント製造設備内への外部からの通常の持ち込み量、有機塩素化合物のセメント製造設備内への外部からの通常の持ち込み量及びセメント製造設備内での生成量を上回る。その結果、水銀成分及び有機塩素化合物のセメント製造設備内の循環量、及びそれと平衡な(電気集塵機23出口から煙突24を通って)系外へ排出される排ガス中の水銀成分及び有機塩素化合物の濃度は、連続運転により大幅に低減してゆく。
セメント製造設備の電気集塵機で捕集されたダストの内、後段側で捕集されたダストの一部を加熱炉(電気加熱方式)に導いてキャリヤーガス(空気)導入下、加熱処理し、ダスト中の水銀成分とPCBをキャリヤーガス中に揮発させた。このキャリヤーガスを水銀成分除去装置(スプレー方式)に導いて洗浄水と接触させることによりキャリヤーガス中の水銀成分(塩化第2水銀78%)を吸収液に吸収除去もしくは沈殿分離し、続いて水銀成分除去装置を出たキャリヤーガスをセメント製造装置のロータリーキルン15の窯尻部に吹き込んだ。ダスト処理の条件、加熱処理前後のダストの水銀成分濃度、PCB濃度を表1に示した。水銀成分の除去量は5.4kg/日(加熱処理による除去率69%、処理開始一日目)、PCBの除去量は475g/日(加熱処理による除去率95%、処理開始一日目)と計算される。そして、このダスト処理の条件で連続運転した時の電気集塵機出口ガス(系外へ排出されるガスに同じ)における水銀成分とPCBの排出濃度の経日変化を表1に示した。この連続運転時における、セメント製造設備への水銀成分の外部からの持ち込み量は約1.6kg/日であり、PCBの外部からの持ち込み量及びセメント製造設備内での生成量は約240g/日であった。
12 原料混合・供給系サイロ(混合サイロ・貯蔵サイロ)
13 プレヒーター
14 仮焼炉
15 ロータリーキルン
21 沈降室
22 スタビライザー
23 電気集塵機
24 煙突
30 加熱炉
40 水銀成分除去装置
50 ガス配送管
Claims (3)
- セメント製造設備の集塵機後半部分で捕集された集塵ダストの一部(集塵ダスト全体の1/20量〜1/3量)を加熱炉に導き、キャリヤーガス導入下、300〜600℃に加熱して、集塵ダスト中の水銀成分及び有機塩素化合物を揮発させ、該加熱炉を出た排ガスを、水銀成分除去装置中で洗浄水と接触させて水銀成分を吸収し、該水銀成分除去装置を出た排ガスを800℃以上のセメント製造設備内の高温部に導いて有機塩素化合物を分解することを特徴とするセメント製造設備からの排ガス中の水銀成分及び有機塩素化合物の低減方法。
- 加熱炉に導入するキャリヤーガスが、セメント製造設備において排出された熱排ガスである請求項1に記載のセメント製造設備からの排ガス中の水銀成分及び有機塩素化合物の低減方法。
- セメント製造設備の集塵機後半部分から集塵ダストの一部(集塵ダスト全体の1/20量〜1/3量)を導入し、キャリヤーガスを導入して300〜600℃に加熱する加熱炉と、該加熱炉を出た排ガスを洗浄水と接触させて水銀成分を吸収する水銀成分除去装置と、該水銀成分除去装置を出た排ガスを800℃以上のセメント製造設備内の高温部に導くガス配送管とからなるセメント製造設備内の排ガス中の水銀成分及び有機塩素化合物を低減する装置。
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