JP5908204B2 - セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法及びその低減装置 - Google Patents

セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法及びその低減装置 Download PDF

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Description

本発明は、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法及びその低減装置に関し、詳細にはセメント製造設備から排出される排ガスに含まれる水銀、亜鉛等の揮発性重金属の含有量を低減する方法及び該排ガス中の揮発性重金属を低減する装置に関する。
近年、セメント製造設備においては、建設発生土、汚泥、煤塵、食品系廃棄物、廃プラスチックなどの廃棄物の有効利用を図るため、これらを原燃料として活用しているが、セメント製造原単位に占める廃棄物系原燃料の増加に伴い、これらの廃棄物に含まれる微量成分により、セメント製造設備の操業状態の不安定化やセメント組成がJIS規格から逸脱したりするという問題を生じている。
水銀や亜鉛等の重金属を含む産業廃棄物などをセメント原燃料として利用する場合、セメント製造設備内で循環濃縮する重金属、特に揮発性重金属の量が増大する傾向にある。
このように、セメント設備内で水銀や亜鉛等の重金属が蓄積され、セメント製造設備外に、排ガス中に含まれて排気される重金属量が増加し、重大な大気汚染の問題を生じる。
従って、セメント製造設備からの排ガス中の水銀や亜鉛等の重金属を低減する必要が生じている。
セメントを製造する際に、該設備内に蓄積する水銀やダイオキシン等の有害物質を蓄積することを防止する方法として、特開2005−97005号公報(特許文献1)には、セメント原料焼成用のロータリーキルンで発生する燃焼排ガスを、該セメント原料を予熱するためのプレヒータ、該セメント原料を乾燥せしめるためのドライヤーおよび集塵機を経て煙突より排出するようにしたセメントの製造方法において、プレヒータより排出された後、煙突に至るまでの間の配管又は装置内を流通する温度350℃以上の排ガスの一部を抽気して、抽気した排ガスよりダストを分離後、ガスを温度100℃以下に冷却して含有する気化物を凝縮せしめる、セメントの製造方法が記載されている。
特開2002−284550号公報(特許文献2)には、セメント製造工程の排ガスからダストを捕集し、この捕集した集塵ダストを、セメント焼成後のクリンカ粉砕工程に投入し、またはクリンカ粉砕物に投入することにより、外部に放出される排ガス中の揮発性金属成分の濃度を低減することを特徴とするセメント製造排ガスの処理方法が記載されている。
更に特開2002−355531号公報(特許文献3)には、セメント製造工程の排ガスから捕集した集塵ダストを加熱炉に導き、集塵ダストに含まれる揮発性金属成分の揮発温度以上に加熱して上記揮発性金属成分をガス化して除去し、揮発性金属成分を除去した集塵ダストをセメント原料の一部に用いることを特徴とするセメント製造排ガスの処理方法が記載されている。
また、特開2009−30883号公報(特許文献4)には、重金属を含むセメント原料を予熱するプレヒータと、前記プレヒータにて予熱されたセメント原料を焼成するキルンと、前記プレヒータから排出される排ガス中のダストを捕集する集塵装置と、特定の重金属除去装置と、前記プレヒータ又は前記キルンの窯尻部と前記第1の分離装置とを接続し、前記プレヒータ又は前記キルンの窯尻部から抽気した抽気ガスを前記第1の分離装置に供給するダクトとを備え、前記集塵装置にて捕集されたダストを、前記ダクトの途中に導入し、前記第1の分離装置及び前記第2の分離装置にて分離されたダストを、前記プレヒータに投入することを特徴とするセメント製造システムが記載されている。
しかし、抽気ガス量はセメント製造設備の制約から限られており、水銀の除去量が制約され、セメント製造設備内を循環濃縮する水銀総量の低減速度が遅くなり、結果として煙突より排出される排ガス中の水銀量を低減させるのに、数十日を要する等、迅速に水銀量を低減させることができず、応答性に問題がある。
今後、セメント製造設備において廃棄物のリサイクルがますます進められ、廃棄物からの重金属量も増加する傾向にあり、かかる廃棄物系資源の有効利用の拡大を図るためには、重金属含有量の高い産業廃棄物等の原燃料の受入に対応した、新規なセメント製造設備の重金属低減技術の確立が望まれているところである。
特開2005−97005号公報 特開2002−284550号公報 特開2002−355531号公報 特開2009−30883号公報
従って、本発明の目的は、上記問題を解決し、セメント製造設備から排出される排ガス中に含まれる水銀、亜鉛等の重金属、特に揮発性重金属の含有量を効果的に低減するための新規な低減方法及び低減装置を提供することである。
具体的には、セメント製造設備内で循環濃縮される水銀等の重金属量の大幅な削減を簡潔に図ることができ、セメント製造設備から排出される排ガス中に含まれる水銀、亜鉛等の重金属、特に揮発性重金属を、迅速に応答性良く低減する新規な方法及び低減装置を提供することである。
本発明のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法は、セメント原料粉砕装置が稼働中の時には、セメント原料焼成用ロータリーキルンで発生する燃焼排ガスを、プレヒータ、該セメント原料粉砕装置及び集塵機、ダスト分離フィルタ装置を経て外部に排出するとともに、セメント原料粉砕装置が停止中の時には、該燃焼排ガスを、該セメント原料粉砕装置を通らずに該ダスト分離フィルタ装置に300℃以上の温度で導入すると共に、該プレヒータ、該ダスト分離フィルタ装置を経て重金属除去装置に導入して重金属を除去した後に外部に排出することを特徴とする、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法である。
好適には、上記本発明のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法において、原料粉砕装置の稼動の有無に係らず、更に、該プレヒータから排出された燃焼ガスの排ガスの一部をスタビライザに通過させた後、該集塵機に導入することを特徴とする。
更に好適には、上記本発明のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法において、該重金属除去装置は排ガス洗浄手段を備え、該排ガス洗浄手段においては、該排ガス中の非水溶性揮発性重金属及びその化合物を洗浄液と接触させて、該揮発性重金属を該洗浄液で酸化して可溶性とし、該洗浄液に溶解させて該重金属を除去することを特徴とする。
また好適には、上記本発明のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法において、該重金属除去装置は減温手段と重金属吸着手段とを備え、該減温手段では該排ガスを200℃以下に減温し、次いで重金属吸着手段にて該排ガス中の揮発性重金属及びその化合物を吸着させて重金属を除去することを特徴とする。
更にまた好適には、上記本発明のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法において、該重金属は水銀であることを特徴とする。
本発明のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減装置は、セメント原料焼成用ロータリーキルン及びプレヒータを備える原料焼成装置、原料粉砕装置、集塵機、ダスト分離フィルタ、重金属除去装置を備え、該原料粉砕装置は稼動又は停止し、該原料粉砕装置が稼動中の時には該原料焼成装置から排出された排ガスが、該原料粉砕装置、該集塵機、該ダスト分離フィルタを通過して外部に排出されるように該原料粉砕装置、該集塵機、該ダスト分離フィルタが設置され、該原料粉砕装置が停止中の時には該原料焼成装置から排出された排ガスが、該原料粉砕装置を通らずに該ダスト分離フィルタに300℃以上の温度で導入されると共に、該ダスト分離フィルタ、該重金属除去装置を通過して外部に排出されるように、該ダスト分離フィルタ、該重金属除去装置が設置されることを特徴とする、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減装置である。
好適には、上記本発明のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減装置において、
該原料粉砕装置に稼動の有無に係らず、更に、該原料焼成装置から排出された排ガスを通過させるスタビライザを、該原料焼成装置と該集塵機との間に設置することを特徴とする。
更に好適には、上記本発明のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減装置において、該重金属除去装置は、該排ガス中の非水溶性揮発性重金属及びその化合物を洗浄液と接触させて、該揮発性重金属を該洗浄液で酸化して可溶性とし、該洗浄液に溶解させて該重金属を除去する、排ガス洗浄手段であることを特徴とする。
また好適には、上記本発明のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減装置において、該重金属除去装置は、減温手段と重金属吸着手段とを備え、該排ガスを200℃以下に減温する減温手段と、該排ガス中の揮発性重金属及びその化合物を吸着させて重金属を除去する重金属吸着手段とを備えることを特徴とする。
更にまた好適には、上記本発明のセメント製造設備からの重金属低減装置において、重金属は水銀であることを特徴とする。
本発明のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法及び低減装置により、セメント製造設備装置内を循環する水銀等の重金属、特に揮発性重金属の濃度及び量を簡潔に低減することが可能となる。
特に、排ガス中に含まれる揮発性重金属を迅速に応答性よく、簡潔に除去することが可能となる。
更に、原料粉砕装置が停止している際に、排ガス中に重金属が多く含まれることから、原料粉砕装置が停止している時の排ガスから重金属を除去する処理を行なうことで、セメント製造設備全体のランニングコストを削減することが可能となる。
また、本発明の方法及び装置を用いることで、セメント製造設備において、廃棄物系資源の有効利用の拡大を図ることができ、水銀等の重金属の含有量が高い産業廃棄物等の原燃料の受入に対応した、セメント製造設備の確立が可能となる。
従来のセメント製造設備装置の一例を模式的に表す図である。 本発明のセメント製造設備からの排ガス中の重金属の低減方法を実施するための低減装置の一例を模式的に表す図である。 従来のセメント製造設備の煙突から排出される水銀濃度の変化の一例を示す図である。 本発明のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法を適用した場合の煙突から排出される水銀濃度の変化の一例を示す図である。 従来のセメント製造設備の煙突から排出される水銀濃度の変化の他の一例を示す図である。 本発明のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法を適用した場合の煙突から排出される水銀濃度の変化の他の一例を示す図である。 従来のセメント製造設備の煙突から排出される水銀濃度の変化の他の一例を示す図である。 本発明のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法を適用した場合の煙突から排出される水銀濃度の変化の他の一例を示す図である。 従来のセメント製造設備の原料混合・供給装置における水銀保有量の変化の一例を示す図である。 本発明のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法を適用した場合の原料混合・供給装置における水銀保有量の変化の一例を示す図である。
従来のセメント製造設備の代表的な一例を図1を参照しながら概略説明する。
図1は、従来のセメント製造設備の代表的な一例を示す図である。
プレヒータ2に供給された、セメント原料は、セメントロータリーキルン1からの排ガスにより予熱され、仮焼炉3での脱炭酸後、ロータリーキルン1に送られ焼成されている。
セメント原燃料に含まれる水銀は、プレヒータ2内でほとんど揮発し、セメントロータリーキルン1の排ガスとともにプレヒータ2の外に排出される。
一例として、プレヒータ2内の原料の水銀濃度を測定した結果を、次の表1に示す。
Figure 0005908204
上記表1より、プレヒータ2中のサイクロン2dにおいて、セメント原料中の水銀の90%が排ガス側に揮発していることがわかる。
かかる排ガス中の水銀等の重金属は、原料ミル等の原料粉砕装置6でセメント原料に吸着し、原料混合・供給装置10内を介して、セメント原料として、プレヒータ2に供給されてセメント製造設備X内を循環する。
また、排ガス中の水銀等の重金属は、排ガス中のダストに含まれる未燃カーボンにも吸着し、集塵機7でダストと共に捕集され、原料混合・供給装置10内でフレッシュなセメント原料と混合されて、セメント原料・燃料として、プレヒータ2に供給されてセメント製造設備X内を再循環する。
かかる水銀等の重金属の循環濃縮量の増大とともに、煙突11等より外気に排出される排ガス中に含まれる水銀等の重金属量が徐々に増加し、最終的には定常状態に達してしまう。
また、図1のセメント製造設備Xにおいては、セメントプレヒータ2から排出される排ガス中に含まれる水銀等の重金属は、ガス温度の低下とともに排ガス中のダストに含まれる未燃カーボンに吸着する。かかるダストを集塵機7で捕集し、バグフィルタ等のダスト分離装置8を経て排ガスから分離し、ダストを重金属の沸点以上に加熱することにより、ダスト中の重金属を揮発させ、ダストの重金属を除去し、かかるダストをセメント原料として再利用する方法も提案されているが、ダストの加熱熱源をあらたに確保する必要があり、多量のダストの加熱も必要であり、更にセメント製造設備内で循環濃縮する水銀総量を減少させて煙突より排気される水銀量を低減するのに数十日かかるという応答性の問題も解決されない。
従って、本発明は、水銀等の重金属を排ガス中から応答性良く除去して、該重金属のセメント設備内での循環濃縮量等を減少させるものである。
本発明のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法は、セメント原料粉砕装置が稼働中の時には、セメント原料焼成用ロータリーキルンで発生する燃焼排ガスを、プレヒータ、該セメント原料粉砕装置及び集塵機、ダスト分離フィルタ装置を経て外部に排出するとともに、セメント原料粉砕装置が停止中の時には、該燃焼排ガスを該プレヒータ、該ダスト分離フィルタ装置を経て重金属除去装置に導入して重金属を除去した後に外部に排出する、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法である。
好適には、該原料粉砕装置の稼動の有無に係らず、更に、該プレヒータから排出された燃焼ガスの排ガスの一部をスタビライザに通過させた後、該集塵機に導入する。
また、本発明のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減装置は、セメント原料焼成用ロータリーキルン及びプレヒータを備える原料焼成装置、原料粉砕装置、集塵機、ダスト分離フィルタ、重金属除去装置を備え、該原料粉砕装置は稼動又は停止し、該原料粉砕装置が稼動中の時には該原料焼成装置から排出された排ガスが、該原料粉砕装置、該集塵機、該ダスト分離フィルタを通過して外部に排出されるように該原料粉砕装置、該集塵機、該ダスト分離フィルタが設置され、該原料粉砕装置が停止中の時には該原料焼成装置から排出された排ガスが、該ダスト分離フィルタ、該重金属除去装置を通過して外部に排出されるように、該ダスト分離フィルタ、該重金属除去装置が設置されている、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減装置である。
好適には、該原料粉砕装置に稼動の有無に係らず、更に、該原料焼成装置から排出された排ガスを通過させるスタビライザを、該原料焼成装置と該集塵機との間に設置する。
図2は、本発明のセメント製造設備Xからの排ガス中の重金属低減方法を実施するための低減装置を模式的に示す一例の図であり、図2を参照して本発明を詳細に説明するが、これらに限定されるものではない。
なお、図1及び図2中、実線はガスの流れ、点線は原料等の材料の流れを表す。
セメント製造原料は、原料粉砕装置6で粉砕混合されて、原料混合・供給系装置10を経由してプレヒータ2の上部、プレヒータ2dに供給される。
ここでセメント原料としては、例えば石灰石、粘土、珪石、鉄滓、スラッジ・都市ごみの焼却で発生する主灰等の廃棄物を使用することができる。特に原料では石灰石や廃棄物が、また燃料では石炭が、セメント製造設備内に水銀を多く供給する。
プレヒータ2は、複数のサイクロン2a、2b、2c、2dから構成されており、その数は限定されない。
前記セメント原料は、プレヒータ2内を、上部のサイクロン2dから下部方向へサイクロン2c、サイクロン2b、サイクロン2aへと順次移動しながら予熱されて、最下部のサイクロン2aに導入された後、ロータリーキルン1へと供給される。
さらに、プレヒータ2とロータリーキルン1の間に仮焼炉3を設けてもよく、セメント原料の仮焼を効率的に促進させるために設けられるものである。
該仮焼炉3としては、任意の公知の仮焼炉を用いることができ、例えば、SF仮焼炉、MFC仮焼炉、RSP仮焼炉、KSV仮焼炉、DD仮焼炉、SLC仮焼炉等が例示できる。
仮焼炉3が設けられている場合には、仮焼成されたセメント原料はロータリーキルン1へ供給される。
本発明においては、セメントロータリーキルン1、プレヒータ2、仮焼炉3を原料焼成装置という。
ロータリーキルン1内に供給されたセメント原料は、焼成されてクリンカを製造する。
該ロータリーキルン1で上記セメント原料が加熱焼成される際に発生する排ガスは、ロータリーキルン1から排出されてプレヒータ2aに流入する。
また図2に示すように、仮焼炉3が設けられている場合には、該ロータリーキルン1から排出された高温の排ガスは、仮焼炉3中でのセメント原料の仮焼成に利用され、仮焼炉3に流入する。該仮焼炉3で発生した排ガスもプレヒータ2aに流入する。
またロータリーキルン1からの排出される排ガスは、一部抽気されて脱塩バイパス処理される。
該サイクロン2aに流入した排ガスは、サイクロン2b、サイクロン2c、サイクロン2dに順次流入して、プレヒータ2内を上方へと移動し、最上部のサイクロン2dから排出される。その際の排ガスの温度は通常、400℃前後である。
該プレヒータ内における排ガスは、供給された原料と接触して原料を予備加熱する。
該排ガス中に含まれる水銀等の重金属及びその化合物、特に揮発性重金属及びその化合物は、該排ガス中に含まれた状態でプレヒータ2から排出される。
プレヒータ2(最上部のサイクロン2d)から排出した排ガスは、沈降室4に導入されるが、かかる沈降室4は必須の装置ではなく、任意に設けることができるものである。
沈降室4に排ガスが導入されることでプレヒータ2から排出される排ガス中に含まれるダストを沈降させて回収することができる。
回収されたダスト等は、原料混合・供給装置10に導入されて、原料粉砕装置6から導入される原料と混合されて、セメント製造原料としてプレヒータ2の上部のサイクロン2dに循環供給される。
次いで、沈降室4から排出された排ガスの一部は、原料粉砕装置6が稼働中または停止中のいずれの時でも、スタビライザ5に導入されることができる。
該スタビライザ5から排出された排ガスは、集塵機7に導入されて、ダストを捕捉される。
該スタビライザ5や集塵機7で回収されたダスト等は、原料混合・供給装置10に導入されて、原料粉砕装置6から導入される原料と混合されて、セメント製造原料としてプレヒータ2の上部のサイクロン2dに循環供給される。
集塵機7としては、通常、電気集塵機が用いられるが、それ以外の集塵機(例えば、重力集塵装置、慣性力集塵装置、遠心力集塵装置、濾過集塵装置等)を用いてもよい。
原料粉砕装置6がオンの場合とオフの場合には、排ガスの流れは異なる。
ここで原料粉砕装置6には、原料ミル及び/又は原料乾燥機及び/又はインパクトドライヤーが含まれる。
まず、原料粉砕装置6がオンの場合について説明する。図2中、白抜きの矢印で示す流れが、原料粉砕装置6がオンの場合の排ガスの流れである。
沈降室4から排出された排ガスは、原料粉砕装置6、前記集塵機7、セラミックフィルタ等のダスト分離フィルタ装置8に送られ、煙突等の外気排気手段11によって大気に放出される。
まず、排ガスは原料粉砕装置6に導入されて、原料粉砕装置6中での原料の乾燥に利用される。
排ガス中の水銀等の重金属は、原料ミル等の原料粉砕装置6で原料と接触して捕集されて、また排ガス中のダストに含まれる未燃炭素に吸着して集塵機7やセラミックフィルタ8で捕集されて、セメント製造設備内で循環濃縮する。
そしてセラミックフィルタ8を通過した排ガスは、煙突11より大気中に放出される。
排ガス中の水銀等の重金属は、原料ミル等の原料粉砕装置6でその多く(50〜80%)が捕集されるので、原料粉砕装置6の下流側に設置される集塵機7、ダスト分離フィルタ装置8で捕集されるダストに含まれる水銀量は激減する。
原料粉砕装置6の上流側に設置される沈降室4で捕集されるダストは、原料粉砕装置6がONの場合とOFFの場合の影響を受けないが、その量は、排ガス処理系で回収されるダストの総量の10〜30%程度で、多量の重金属を除去する場合には、その絶対量が不足する。
従って、原料粉砕装置6がONの時には、排ガス中の水銀等の重金属は該原料粉砕装置6、集塵機7やセラミックフィルタ8でその多くが捕獲されてセメント製造設備内を循環濃縮することとなるため、本発明においては、原料粉砕装置6がOFFの時の排ガス中に含まれる重金属、特に揮発性重金属の除去操作を行った方が効率的である。
具体的に原料粉砕装置6がオフの場合には、図2の黒塗り矢印で示す流れが、排ガスの流れである。原料粉砕装置6がオフの場合には、上記プレヒータ2、又は必要に応じて設けられた沈降室4を通過して、排ガスはセラミックフィルタ等のダスト分離フィルタ装置8に導入される。
前記集塵機7から排出された排ガス及び、原料粉砕装置6が稼動していない場合の上記排ガスが、セラミックフィルタ等のダスト分離フィルタ装置8に導入される。
ここで排ガスはセラミックフィルタ8により、より微細なダスト等を捕捉する。
ダスト分離フィルタ装置8にて回収されたダスト等は、原料混合・供給装置10に導入されて、原料粉砕装置6から導入される原料と混合されて、セメント製造原料としてプレヒータ2の上部のサイクロン2dに循環供給される。
即ち、原料粉砕装置6がオフの場合には、プレヒータ2を出た水銀等の重金属を含む排ガスは、360〜430℃程度の高温のままセラミックフィルタ8に送られ、排ガス中のダストを捕捉する。
この時、例えば、水銀(沸点:356℃)を例にすると、フィルタ分離温度が300℃以上、特に、360℃以上の場合であれば、水銀はダストに含まれる未燃炭素にほとんど吸着されず、排ガスと共にセラミックフィルタ8を通過する。従って、排ガス中のダストを媒介として原料混合・供給装置10によって供給される原料中に含まれる水銀による、セメント製造設備内の水銀の循環濃縮量は、大幅に削減される。
次いで、原料粉砕装置6がオフの場合には、該セラミックフィルタ8を排出した排ガスは、重金属除去装置12に送られる。必要に応じて、重金属除去装置12に排ガスが導入される前に、熱交換器9を設けてもよい。
該重金属除去装置12は、排ガス洗浄手段や、減温手段及び重金属吸着手段とすることができる。
重金属除去装置12が排ガス洗浄手段の場合、該排ガス洗浄手段としては湿式方式を採用でき、該排ガス中の非水溶性揮発性重金属及びその化合物を洗浄液と接触させて、該揮発性重金属を該洗浄液で酸化して可溶性とし、該洗浄液に溶解させて該重金属を除去する。
なお、ガス洗浄水としては、薬液調製・給水装置13からの水、酸化剤溶液、酸・アルカリ剤によりpH調整された吸収液などを使用することができ、ガス洗浄塔の洗浄液は、例えばポンプを用いてガス洗浄塔内を循環噴霧させて、排ガスと接触させる。水としては、上水道水、工業用水、セメント製造工程等から排出される2次排水等が利用できる。
また、重金属除去装置12が減温手段及び重金属吸着手段を備える場合、該減温手段では該排ガスを200℃以下に減温し、次いで重金属吸着手段にて該排ガス中の揮発性重金属及びその化合物を吸着させて重金属を除去する。
重金属吸着手段としては、活性炭やゼオライト等の吸着材による固定層処理、移動層処理、煙道噴霧処理などの乾式方式が例示できる。
水銀が除去された排ガスは、煙道の腐食、煙突11の排ガスの拡散力などを考慮し、必要に応じて熱交換器9で昇温し、煙突11より大気へ排出する。
例えば、上記排ガス洗浄手段から排出された、水銀等の重金属が溶解しているガス洗浄水を廃水処理装置14に送り、該重金属を回収する。
重金属の該回収方法は特に限定されず、公知の任意の方法及び装置を適用することができ、例えば、比重分離法、pH調整剤を添加して高分子凝集剤や、キレート剤、硫化剤等を添加し、重金属を沈殿させ、濾過装置を用いて固液分離して回収する。また、必要に応じて、電解工程を設けてもよい。このようにして回収された重金属は、再利用に供される。
重金属を除去した後に該濾液を、廃水処理装置14で放流基準を満足するまでの処理、好ましくは水処理を行い、公共水域、あるいは下水道へ放流する。
また、必要に応じて、精密濾過工程を設けることにより、微細な浮遊物質を除去して、その後放流してもよい。
本発明の方法及び装置により、原料ミルOFFの時に排ガスから除去される水銀等の重金属量が、セメント製造設備内を循環する重金属濃縮量をはるかにしのぐため、セメント製造設備内で循環する水銀等の重金属総量は急激に減少し、結果として煙突から排出される水銀量も急激に減少することができる。即ち、原料ミル等の原料粉砕装置が稼働していない時だけ、ガス洗浄装置等の重金属除去装置を運転すれば排ガスに含まれる水銀量を急激に減少させることができ、重金属除去装置の運転を間欠運転とすることにより、ランニングコストの削減も図ることができる、極めて優れた重金属低減装置及び低減方法である。例えば、原料ミル等の原料粉砕装置が停止している約9時間/日の間、ガス洗浄塔等の重金属除去装置を運転すれば、排ガス中に含まれる水銀量を急激に減少させることができ、ガス洗浄塔等の重金属除去装置の運転時間を24分の9に削減可能とすることができる。
また、セメント設備からの排ガス中の重金属がセメント製造系外に排出されることとなり、セメント設備で循環濃縮する水銀等の重金属濃度及び量を有効に低減させることが可能となる。
従って、セメント設備における操業の安定性を確保できることも可能となる。
(実施例1〜3、比較例1〜3)
実施例においては図2に示すセメント製造設備の排ガス中の重金属低減装置を用いて、また比較例においては図1に示すセメント製造設備を用いて、煙突11から排出される排ガス中の水銀濃度(図3〜8)、及び原料混合・供給装置10のストレージサイロに貯蔵されたセメント原料が保有する水銀量(図9〜10)を測定し、セメント製造設備の運転時間による変化で表した。
但し、下記表2に示す条件で実施した。
表2に記載されている条件以外の条件はすべての実施例及び比較例で同様にして行なった。
Figure 0005908204
その結果を下記表3及び図3〜10に示す。
図3は比較例1、図4は実施例1、図5は比較例2、図6は実施例2、図7は比較例3、図8は実施例3の各煙突から排出される排ガス中の水銀濃度の測定結果(初期値(1日目)からの週単位の測定値)、図9は比較例1、図10は実施例1の原料混合・供給装置のストレージサイロに貯蔵されたセメント原料が保有する水銀量の測定結果である。
Figure 0005908204
上記表3及び図4、図6及び図8より、実施例1、実施例2及び実施例3では、目標とする水銀濃度50μg/Nm以下に初日から到達しており、応答性が非常に速いことがわかる。また、実施例3の結果より、水銀含有量の多い原料に対しても応答性が早く、有効であることがわかる。
一方、図3より比較例1では、運転開始後16週目で水銀濃度は100μg/Nm程度であり、応答性が悪いことがわかる。また図5より比較例2では水銀濃度が経時的に増加し、16週目では水銀濃度が150μg/Nmとなり、運転を継続しても水銀濃度は低下しない。また図7より、水銀含有量の多い原料を受け入れた比較例3でも水銀濃度は経時的に増加し、16週目では水銀濃度が200μg/Nmとなり、水銀濃度はほとんど変化せず、運転を継続しても水銀濃度は低下しない。
また、図9及び図10より、セメント製造原料が保有する水銀量は、実施例1のほうが比較例1と対比して、顕著に水銀量の減少が観られる。
このように、本発明のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法及び低減装置を適用することにより、排ガス中に含まれる水銀等の重金属を有効に低減することができることは明らかである。
本発明の排ガス中の重金属低減方法及び低減装置は、廃棄物を原料として利用するセメント製造設備に有効に適用することができる。
1・・・ロータリーキルン
2・・・プレヒータ
3・・・仮焼炉
4・・・沈降室
5・・・スタビライザ
6・・・原料粉砕装置
7・・・集塵機
8・・・ダスト分離フィルタ装置
9・・・熱交換器
10・・・原料混合・供給装置
11・・・煙突
12・・・重金属除去装置
13・・・薬液調製・給水装置
14・・・廃水処理装置
X・・・セメント製造設備

Claims (10)

  1. セメント原料粉砕装置が稼働中の時には、セメント原料焼成用ロータリーキルンで発生する燃焼排ガスを、プレヒータ、該セメント原料粉砕装置及び集塵機、ダスト分離フィルタ装置を経て外部に排出するとともに、セメント原料粉砕装置が停止中の時には、該燃焼排ガスを、該セメント原料粉砕装置を通らずに該ダスト分離フィルタ装置に300℃以上の温度で導入すると共に、該プレヒータ、該ダスト分離フィルタ装置を経て重金属除去装置に導入して重金属を除去した後に外部に排出することを特徴とする、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法。
  2. 請求項1記載のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法において、該原料粉砕装置の稼動の有無に係らず、更に、該プレヒータから排出された燃焼ガスの排ガスの一部をスタビライザに通過させた後、該集塵機に導入することを特徴とする、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法。
  3. 請求項1又は2記載のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法において、該重金属除去装置は排ガス洗浄手段を備え、該排ガス洗浄手段においては、該排ガス中の非水溶性揮発性重金属及びその化合物を洗浄液と接触させて、該揮発性重金属を該洗浄液で酸化して可溶性とし、該洗浄液に溶解させて該重金属を除去することを特徴とする、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法。
  4. 請求項1又は2記載のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法において、該重金属除去装置は減温手段と重金属吸着手段とを備え、該減温手段では該排ガスを200℃以下に減温し、次いで重金属吸着手段にて該排ガス中の揮発性重金属及びその化合物を吸着させて重金属を除去することを特徴とする、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法。
  5. 請求項1〜4記載のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法において、該重金属は水銀であることを特徴とする、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法。
  6. セメント原料焼成用ロータリーキルン及びプレヒータを備える原料焼成装置、原料粉砕装置、集塵機、ダスト分離フィルタ、重金属除去装置を備え、該原料粉砕装置は稼動又は停止し、該原料粉砕装置が稼動中の時には該原料焼成装置から排出された排ガスが、該原料粉砕装置、該集塵機、該ダスト分離フィルタを通過して外部に排出されるように該原料粉砕装置、該集塵機、該ダスト分離フィルタが設置され、該原料粉砕装置が停止中の時には該原料焼成装置から排出された排ガスが、該原料粉砕装置を通らずに該ダスト分離フィルタに300℃以上の温度で導入されると共に、該ダスト分離フィルタ、該重金属除去装置を通過して外部に排出されるように、該ダスト分離フィルタ、該重金属除去装置が設置されることを特徴とする、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減装置。
  7. 請求項6記載のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減装置において、該原料粉砕装置に稼動の有無に係らず、更に、該原料焼成装置から排出された排ガスを通過させるスタビライザを、該原料焼成装置と該集塵機との間に設置することを特徴とする、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減装置。
  8. 請求項6又は7記載のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減装置において、該重金属除去装置は、該排ガス中の非水溶性揮発性重金属及びその化合物を洗浄液と接触させて、該揮発性重金属を該洗浄液で酸化して可溶性とし、該洗浄液に溶解させて該重金属を除去する、排ガス洗浄手段であることを特徴とする、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減装置。
  9. 請求項6又は7記載のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減装置において、
    該重金属除去装置は、減温手段と重金属吸着手段とを備え、該排ガスを200℃以下に減温する減温手段と、該排ガス中の揮発性重金属及びその化合物を吸着させて重金属を除去する重金属吸着手段とを備えることを特徴とする、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減装置。
  10. 請求項6〜9記載のセメント製造設備からの重金属低減装置において、重金属は水銀であることを特徴とする、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減装置。
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