JP2009240914A - アスベスト含有物の無害化処理方法およびセメントの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】半導体製造工程から排出された廃水やセメント製造工程から排出される塩素バイパスダストなどに含まれる塩素分を利用することにより、アスベストの飛散を確実に防止して、アスベスト含有物を容易に無害化処理することができ、さらには上記廃水や塩素分についても同時に処理することが可能になるアスベスト含有物の無害化処理方法およびこれを用いたセメントの製造方法を提供する。
【解決手段】アスベスト含有物に、工場生産工程から排出されるフッ化水素酸および硝酸を主体とした混酸の廃水を加え、次いで得られた混合物スラリーを
塩素バイパスダスト、および/または塩素化合物含有のセメント原料によって中和処理するとともに、当該混合液中の上記アスベスト含有物を粉砕することによりアスベストが無害化処理された汚泥とするアスベスト含有物の無害化処理方法とした。
【選択図】図1
【解決手段】アスベスト含有物に、工場生産工程から排出されるフッ化水素酸および硝酸を主体とした混酸の廃水を加え、次いで得られた混合物スラリーを
塩素バイパスダスト、および/または塩素化合物含有のセメント原料によって中和処理するとともに、当該混合液中の上記アスベスト含有物を粉砕することによりアスベストが無害化処理された汚泥とするアスベスト含有物の無害化処理方法とした。
【選択図】図1
Description
本発明は、アスベスト廃棄物等のアスベスト含有物を、半導体製造工程から排出されたフッ化水素酸および硝酸を主体とした混酸の廃水を用いて効率的に無害化するための処理方法およびこれを用いたセメントの製造方法に関するものである。
アスベスト(石綿)は、天然に生成された鉱物繊維であり、化学的安定性を有するとともに、耐熱性や強度に優れることから、その特性を利用して、これまで耐火被覆材、断熱材、吸音材等として、建築物の壁、天井、床、空調設備等に広く使用されていた。
ところが、近年このアスベストは、化学的な毒性はないものの、その結晶構造が針状であるために、人が吸い込んだ場合に、肺の組織に刺さって排出されずに蓄積し、長期間の潜伏を経て重大な疾病を招来することが指摘されている。
ところが、近年このアスベストは、化学的な毒性はないものの、その結晶構造が針状であるために、人が吸い込んだ場合に、肺の組織に刺さって排出されずに蓄積し、長期間の潜伏を経て重大な疾病を招来することが指摘されている。
そこで、現在では、多くの建築物等において、飛散のおそれがある壁や天井等に吹き付けられたアスベストや保温材として使用されていたアスベストを除去または撤去する対策が採られており、この結果多量のアスベストが廃棄物として発生している。
ちなみに、この種の飛散のおそれがあるアスベスト廃棄物については、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」において特別管理産業廃棄物に指定され、その排出から収集・運搬・処分までの処理基準が定められている。
ちなみに、この種の飛散のおそれがあるアスベスト廃棄物については、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」において特別管理産業廃棄物に指定され、その排出から収集・運搬・処分までの処理基準が定められている。
そして、上記収集・運搬に係る処理基準においては、アスベスト等をプラスチック等の容器に収納するとともに、破損などにより飛散させないように慎重に取り扱うことや、運搬車両の荷台に覆いを掛けるなどの飛散防止対策を講じることが義務づけられている。また、上記処分に係る処理基準としては、プラスチック袋や容器等の耐水性の材料で二重に梱包するか、または十分な量のセメント等によって固形化したうえで所定の場所に直接埋め立て処分を行う方法や、溶融設備を用いて十分に溶融処理することにより無害化したうえで、普通の産業廃棄物として処理することが定められている。
このようなアスベストの処分方法のうち、前者の直接埋め立て処分する方法にあっては、大量のセメントが必要になるとともに、今後想定される排出量に対して、早期の埋め立て地の枯渇が懸念されている。また、後者の溶融設備における中間処理による無害化処分の方法にあっては、アスベストの融点が1500℃前後と極めて高いために、溶融温度によっては、アスベストを完全に無害化することが難しいという問題点があった。
そこで、下記特許文献1においては、アスベストとフロン分解無害化処理によって生成されたフロン分解物とを混合又は混練し、次いで当該混合物を低温加熱処理して成るアスベストの無害化処理方法が提案されている。
そして、上記従来の無害化処理方法によれば、フロン無害化処理によって生成されるフッ化カルシウムを融解剤として利用することにより、600℃以下の加熱温度によってもアスベストを分解することができ、低エネルギーでアスベストを無害化処理することができる、とされている。
しかしながら、上記特許文献1に記載されているように、上記アスベストの無害化処理方法にあっては、別途、フロン分解無害化装置を用いて、放電によって空気をプラズマ化して超高温(約10、000℃)のアークを発生させ、そこにフロン〔例えば、フロン12(CCl2F2)〕と水蒸気(H2O)とを送り込んで分解処理する必要があり、大量のアスベスト廃棄物を処理するには、工程や設備が複雑化するとともに、処理費用の高騰化を招くという問題点があった。
また、アスベストとフロン分解無害化処理によって生成されたフロン分解物とを混合又は混練する際に、アスベストが飛散するおそれがある。このため、別途上記アスベストの飛散防止対策を採る必要があり、処理工程が全体として大掛かりなものになってしまうという問題点があった。
一方、半導体材料や半導体デバイスの製造工程においては、シリコンウエハのエッチングに洗浄液として使用されたフッ酸、珪フッ酸、硝酸、リン酸等のフッ化水素酸および硝酸を主体とした混酸の廃水が大量に排出されており、その無害化処理が要請されている。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、半導体製造工程から排出された廃水やセメント製造工程から排出される塩素バイパスダストなどに含まれる塩素分を利用することにより、アスベストの飛散を確実に防止して、アスベスト含有物を容易に無害化処理することができ、さらには上記廃水についても同時に処理することが可能になるアスベスト含有物の無害化処理方法およびこれを用いたセメントの製造方法を提供することを課題とするものである。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、アスベスト含有物に、工場生産工程から排出されるフッ化水素酸および硝酸を主体とした混酸の廃水を加え、次いで得られた混合物スラリーをカルシウム塩によって中和処理するとともに、当該混合液中の上記アスベスト含有物を粉砕することによりアスベストが無害化処理された汚泥とするアスベスト含有物の無害化処理方法であって、上記カルシウム塩として、セメント原料を窯前側に設けられた加熱手段によって内部が高温雰囲気に保持されたロータリーキルンの窯尻側から供給して、上記窯前側に送りつつ焼成するセメント製造工程から排出される塩素バイパスダスト、および/または上記ロータリーキルンの窯尻部分から抜き出した塩素化合物を含有する仮焼セメント原料を用いることを特徴とするものである。
ここで、中和処理とは、アスベスト含有物に混酸の排水を加えた強酸の混合物スラリーに、アルカリ性のカルシウム塩を加えることを意味するものであって、このカルシウム塩を加えることによって、水質汚濁防止法に定められたpH5.8以上かつpH8.6以下の範囲内の混合液に調整することを含むものである。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のアスベスト含有物の無害化処理方法において、上記汚泥を、上記ロータリーキルンの窯尻部分に投入して加熱処理することを特徴とするものである。
これに対して、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のアスベスト含有物の無害化処理方法において、上記汚泥を、上記ロータリーキルンの窯前側から当該ロータリーキルン内に投入して加熱処理することを特徴とするものである。
さらに、請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のアスベスト含有物の無害化処理方法において、上記汚泥を、熱分解炉に投入して800℃以上の温度によって加熱処理することを特徴とするものである。
さらにまた、請求項5に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載のアスベスト含有物の無害化処理方法を用いたセメントの製造方法であって、セメント原料を上記汚泥とともにロータリーキルンに投入して、上記セメント原料を焼成してセメントとし、かつ上記汚泥を加熱処理して上記セメントの一部とすることを特徴とするものである。
なお、本願発明において、窯尻部分とは、ロータリーキルンの窯尻側において当該ロータリーキルンを回転自在に支持する窯尻のケーシングおよびロータリーキルンの上流側に設けられてセメント原料を予熱するプレヒータから上記ケーシングに至る移送管、ならびに上記ロータリーキルンの前段に仮焼炉を有している場合には、この仮焼炉を含む部分を総称するものである。また、セメント製造工程とは、この窯尻部分に加えて、プレヒータを構成している複数のサイクロンのうち内部が800℃以上の高温雰囲気である後段のサイクロンを含む意味であり、セメント製造工程から排出される塩素バイパスダストとは、この窯尻部分または後段の高温雰囲気のサイクロンから排出された塩素バイパスダストを意味するものである。
通常、半導体製造工程等の工場生産工程からから排出された上記廃水中には、フッ化水素酸(HF)、フッ化アンモニウム(NH4F)、フッ化ナトリウム(NaF)、珪フッ化水素酸(H2SiF6)等の化合物としてフッ素(F2)が200〜1,500mg/L含まれるとともに、硝酸が200〜1000mg/L含まれている。その他、上記廃水中には、リン酸が10〜200mg/L含まれており、上記廃水はpH2〜3の値を示す酸性である。
そして、これらの成分の中でも、特に、フッ素が排水規制の対象となるために、通常は、炭酸カルシウムや水酸化カルシウム等のカルシウム塩を添加して、上記フッ素を溶解度の低いフッ化カルシウム(CaF2)等として凝集沈殿させたスラリー状のフッ化物汚泥とし、当該フッ化物汚泥から上記沈殿物を分離除去するなどして処理されている。
そして、これらの成分の中でも、特に、フッ素が排水規制の対象となるために、通常は、炭酸カルシウムや水酸化カルシウム等のカルシウム塩を添加して、上記フッ素を溶解度の低いフッ化カルシウム(CaF2)等として凝集沈殿させたスラリー状のフッ化物汚泥とし、当該フッ化物汚泥から上記沈殿物を分離除去するなどして処理されている。
そこで、請求項1〜5のいずれかに記載の発明においては、先ずアスベスト廃棄物等のアスベスト含有物に、上記半導体製造工程から排出されるフッ化水素酸および硝酸を主体とした混酸の廃水を加える。ここで、アスベスト廃棄物等に含まれるアスベストは、蛇紋石族石綿であるクリソタイル(Mg3Si2O5(OH)4)や、角閃石族石綿であるクロシドライト(Na(Fe,Mg)3Fe2Si8O22(OH,F)2)、アモサイト((Fe,Mg)7Si8O22(OH)2)等を主成分とする針状の結晶構造のものであり、酸浸漬された場合に、上記針状構造の表面に亀裂が生じて脆性化する性質を有する。
したがって、アスベスト含有物に上記混酸の廃水を加えることによって、上記アスベスト含有物中のアスベストの表面に亀裂を生じさせて針状構造を脆性化させることができる。
このようにして得られた混合物スラリーは酸性であるために、次いでこれをカルシウム塩によって中和処理して、フッ素成分をフッ化カルシウムとして分離除去するとともに、混合物スラリー中の上記アスベスト含有物を粉砕することにより、亀裂を生じているアスベストの針状構造を破壊する。
このようにして得られた混合物スラリーは酸性であるために、次いでこれをカルシウム塩によって中和処理して、フッ素成分をフッ化カルシウムとして分離除去するとともに、混合物スラリー中の上記アスベスト含有物を粉砕することにより、亀裂を生じているアスベストの針状構造を破壊する。
この際、混合物スラリーの中和処理によるフッ素の分離除去とともに、800℃程度の反応温度まで加熱することによって、上記カルシウム塩とアスベスト中の二酸化珪素(SiO2)や酸化マグネシウム(MgO)との固相反応により、CaMgSiO4(Monticellite)、Ca2SiO4(dicalcium silicate)、Ca4Si2O7F2(Cuspidine)、MgOなどを生成する。これにより、上記アスベスト含有物を無害化することができる。
加えて、上記カルシウム塩としては、塩素バイパスダストおよび/またはロータリーキルンの窯尻部分から抜き出した仮焼セメント原料を用いることができ、これらの塩素バイパスダストおよび仮焼セメント原料は、いずれも酸化カルシウム(CaO)とともに、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化カリウム(KCl)および塩化ナトリウム(NaCl)などの塩素化合物を含有している。このため、塩化カルシウム(CaCl2)などの塩素化合物が融点温度まで加熱されることによって溶融塩となって、アスベスト含有物や酸化カルシウムなどの粒子間に均一に分散される。従って、ロータリーキルンまたは熱分解炉などの加熱装置によって加熱された場合に、上記固相反応が溶融塩を介して進行するため、1500℃以上のアスベスト含有物の固相反応温度よりも低い温度でCaMgSiO4が生成されて、より確実にアスベスト含有物を無害化することができる。
そこで、請求項2または3に記載の発明のように、上記汚泥をセメント製造設備におけるロータリーキルン内に投入して直接処理することができる。
すなわち、上記汚泥はスラリー状であるために、当該汚泥をそのまま処理する場合には、請求項2に記載の発明のように、セメント製造工程におけるロータリーキルンの窯尻部分に直接投入する。すると、窯尻部分は、約900℃の高温雰囲気であるために、先ず上記汚泥中の水分を、上記窯尻部分において瞬時に気化させて排出することができる。他方、上記汚泥中の無害化されたアスベスト含有物を含む固形分は、ロータリーキルン内を窯前側へと送られて行く過程において、焼成温度である約1450℃以上に加熱されつつ仮焼セメント原料と混合される。この結果、固形分を最終的にセメントの一部として利用することができ、請求項5に記載の発明のように効率的にセメントを製造することができる。
また、予め上記汚泥を乾燥処理すれば、請求項3に記載の発明のように、上記ロータリーキルンの窯前側から内部に投入して加熱処理することもできる。この場合においても、同様に上記アスベスト含有物を、セメント原料の一部として利用することができる。
なお、請求項2または3に記載の発明のように汚泥をロータリーキルンに投入する場合には、上記汚泥中に生成するフッ化カルシウムが、もともとセメント製造設備において、セメント原料の焼成時における溶融温度の低温化用として、所定量添加されるものであるために、本来添加すべき上記フッ化カルシウム量の低減化を図ることも可能になる。
さらに、上記汚泥の処理としては、請求項4に記載の発明のように、別途熱分解炉に投入して上記800℃以上、すなわち、上記固相反応温度以上の温度に加熱処理することもできる。
(第1の実施形態)
以下、本発明に係るセメント製造工程を用いたアスベスト含有物の無害化処理方法の第1の実施形態について説明する。
図1は、上記無害化処理方法に用いられる処理システムを示すもので、先ず上記セメント製造設備について説明すると、図1中符号1がセメント原料を焼成するためのセメントキルンである。
以下、本発明に係るセメント製造工程を用いたアスベスト含有物の無害化処理方法の第1の実施形態について説明する。
図1は、上記無害化処理方法に用いられる処理システムを示すもので、先ず上記セメント製造設備について説明すると、図1中符号1がセメント原料を焼成するためのセメントキルンである。
このセメントキルン1は、軸芯回りに回転自在に設けられたロータリーキルンであり、その図中左方の端部に、ロータリー部分を支持する窯尻ハウジング2aおよびその立ち上がり部2bからなる窯尻部分2が設けられている。この窯尻部分2の上流側に、セメント原料を予熱するためのプレヒータ3が設けられるとともに、図中右方の窯前4に、内部を加熱するための主バーナ5が設けられている。なお、図中符号6は、焼成後のセメントクリンカを冷却するためのクリンカクーラである。
ここで、プレヒータ3は、上下方向に直列的に配置された複数段のサイクロンによって構成されており、供給管7を介して最上段のサイクロンにセメント原料が供給されるとともに、最下段のサイクロンの底部には、内部のセメント原料をセメントキルン1の窯尻部分2へと送る移送管3aが接続されている。
他方、窯尻部分2の立ち上がり部2bには、セメントキルン1から排出された燃焼排ガスを最下段のサイクロンへと供給する排ガス管3bが接続されており、最上段のサイクロンの上部から排出された排ガスが、図示されない排気ファンによって排気ライン8を介して排気されて行くようになっている。
そして、上記構成からなるセメント製造設備に、アスベスト含有物の無害化処理設備が併設されている。
このアスベスト含有物の無害化処理設備は、塩素バイパスと呼ばれる排ガス処理システムが備えらている。
この排ガス処理システムは、セメントキルン1から排出されてプレヒータ3へと送られるダストを含む排ガスの一部を抽気ガスとして抽気して、当該抽気ガスに含まれていた塩素化合物を除去するためのものであり、図中符号20が立ち上がり部2bの上部に接続されて上記抽気ガスを抽気する抽気ダクトである。
このアスベスト含有物の無害化処理設備は、塩素バイパスと呼ばれる排ガス処理システムが備えらている。
この排ガス処理システムは、セメントキルン1から排出されてプレヒータ3へと送られるダストを含む排ガスの一部を抽気ガスとして抽気して、当該抽気ガスに含まれていた塩素化合物を除去するためのものであり、図中符号20が立ち上がり部2bの上部に接続されて上記抽気ガスを抽気する抽気ダクトである。
そして、この処理システムにおいては、この抽気ダクト20に沿って、順次この抽気ダクト20から抽気された抽気ガスを冷却する冷却器21と、この冷却器21から排気された排気ガスから所定粒度以上のダストを分離するサイクロン型分級機22と、このサイクロン型分級機22において所定粒度以上のダストが分離された抽気ガスから微粉ダストである塩素バイパスダストDを捕集・除去するバグフィルタ23と、このバグフィルタ23の下流側に設けられて抽気ガスを吸引する誘引ファン24とが設けられている。
ここで、冷却器21は、冷却ファンからの冷気や冷却ポンプの冷却水を冷媒として抽気ガスを熱交換させることにより、抽気ガスの温度を塩素化合物の融点(600℃〜700℃)以下に冷却するものであり、サイクロン型分級機22の底部には、分離された所定粒度以上のダストを再び窯尻部分2へと戻す戻り配管25が接続されている。
一方、図1中符号10は、アスベスト廃棄物等のアスベスト含有物が投入されるホッパ兼静置タンクである。また、符号16は、半導体製造工程から排出されるフッ化水素酸および硝酸を主体とした混酸の廃水の貯留タンクである。そして、この貯留タンク16の底部に接続された抜き出管16aが、開閉弁16bを介してホッパ兼静置タンク10の上部に接続されている。
また、このホッパ兼静置タンク10の下部排出口は、大径の開閉手段11を介して湿式ミル12の供給側に接続されている。さらに、この湿式ミル12には、湿式ミル12内に中和剤を供給する供給管13が、開閉弁13aを介して接続されている。
ここで、この中和剤としては、酸化カルシウムを塩化カルシウム、塩化カリウムおよび塩化ナトリウムなどの塩素化合物とともに含有する塩素バイパスダストDが用いられ、好ましくは、特願2007−170602において開示したKCl/NaCl(モル比)=0.5〜0.9の範囲内の塩素バイパスダストDが用いられる。
このため、バグフィルタ23によって捕集除去された塩素バイパスダストDが回収されて、上記供給管13に供給されるようになっている。
ここで、この中和剤としては、酸化カルシウムを塩化カルシウム、塩化カリウムおよび塩化ナトリウムなどの塩素化合物とともに含有する塩素バイパスダストDが用いられ、好ましくは、特願2007−170602において開示したKCl/NaCl(モル比)=0.5〜0.9の範囲内の塩素バイパスダストDが用いられる。
このため、バグフィルタ23によって捕集除去された塩素バイパスダストDが回収されて、上記供給管13に供給されるようになっている。
なお、湿式ミル12内の混合物における流動性が不足する場合には、図示されない溶媒供給管から、湿式ミル12内に、別途廃液、水、流動剤等が流動性を増加させる溶媒として供給されるようになっている。
他方、この湿式ミル12の排出側には、移送ポンプ14が介装された移送配管15の一端部が接続されており、この移送配管15の他端部は、セメントキルン1の窯尻部分2に導入されている。
次に、以上の構成からなる処理システムを用いた本発明の第1の実施形態について説明する。
先ず、供給管7からプレヒータ3の1段目のサイクロンに供給されたセメント原料は、順次下方のサイクロンへと落下するにしたがって、下方から上昇するセメントキルン1からの高温の排ガスによって予熱され、最終的に最下段のサイクロンから移送管3aを介してセメントキルン1の窯尻部分2に導入される。
先ず、供給管7からプレヒータ3の1段目のサイクロンに供給されたセメント原料は、順次下方のサイクロンへと落下するにしたがって、下方から上昇するセメントキルン1からの高温の排ガスによって予熱され、最終的に最下段のサイクロンから移送管3aを介してセメントキルン1の窯尻部分2に導入される。
そして、このセメントキルン1内において、窯尻部分2側から窯前4側へと徐々に送られる過程において、主バーナ5からの燃焼排ガスによって約1450℃まで加熱され、焼成されてクリンカとなる。次いで、窯前4に到達したクリンカは、クリンカクーラ6内に落下して図中右方に送られる。この際に、クリンカクーラ6内に供給された空気によって所定温度まで冷却されて最終的に当該クリンカクーラ6から取り出される。
これと平行して、セメントキルン1の窯尻部分2側から、あるいは窯前4側から、下水汚泥やプラスチックフィルムなどの廃棄物が内部に投入され、セメント原料の一部あるいは加熱用燃料の一部として利用される。
このため、各種の廃棄物、特に、プラスチックフィルムなどの合成樹脂からなる廃棄物によって、燃焼時に揮発性を有する塩素成分が発生し、セメントキルン1内から排出される排ガスに同伴して、窯尻部分2の立ち上がり部2bから排ガス管3bを通じてプレヒータ3へと送られていく。そして、プレヒータの上段側移送されるに連れて雰囲気温度が低下して融点以下になると、凝集してセメント原料に付着し、再びセメントキルン1内へと送られるとともに、雰囲気温度の上昇に伴って再度蒸発することになり、セメント焼成設備の系内に取り込まれた塩素成分は、セメントキルン1およびプレヒータ3内で蒸発および凝集を繰り替えして循環し、かつこれに新たに投入される廃棄物から発生する塩素成分が加わることにより、その濃度が上昇して、プレヒータなどにコーチングが生じ、または製造されたセメントクリンカーの品質低下を招きうる。
このため、各種の廃棄物、特に、プラスチックフィルムなどの合成樹脂からなる廃棄物によって、燃焼時に揮発性を有する塩素成分が発生し、セメントキルン1内から排出される排ガスに同伴して、窯尻部分2の立ち上がり部2bから排ガス管3bを通じてプレヒータ3へと送られていく。そして、プレヒータの上段側移送されるに連れて雰囲気温度が低下して融点以下になると、凝集してセメント原料に付着し、再びセメントキルン1内へと送られるとともに、雰囲気温度の上昇に伴って再度蒸発することになり、セメント焼成設備の系内に取り込まれた塩素成分は、セメントキルン1およびプレヒータ3内で蒸発および凝集を繰り替えして循環し、かつこれに新たに投入される廃棄物から発生する塩素成分が加わることにより、その濃度が上昇して、プレヒータなどにコーチングが生じ、または製造されたセメントクリンカーの品質低下を招きうる。
そこで、アスベスト含有物の処理設備においては、セメントキルン1から排出されてプレヒータ3へとダストを含む排ガスの一部を、連続的あるいは間欠的に誘引ファン24を作動させることにより、立ち上がり部2bに接続された抽気ダクト20を通じて、排ガス処理システムに抽気する。
これにより、この抽気ダクト20によって送られた排ガスを、冷却器21によって、塩素化合物の融点(600℃〜700℃)まで冷却した後に、サイクロン型分級機22に送る。そして、5μm〜30μmの範囲内の所定粒度以上のダストを戻り配管25を通じて窯尻部分2へと戻すとともに、この所定粒度以上のダストが分離された排ガスを、バグフィルタ23へと送って、微粉ダストDを捕集除去する。
これにより、この抽気ダクト20によって送られた排ガスを、冷却器21によって、塩素化合物の融点(600℃〜700℃)まで冷却した後に、サイクロン型分級機22に送る。そして、5μm〜30μmの範囲内の所定粒度以上のダストを戻り配管25を通じて窯尻部分2へと戻すとともに、この所定粒度以上のダストが分離された排ガスを、バグフィルタ23へと送って、微粉ダストDを捕集除去する。
他方、アスベスト廃棄物をホッパ兼静置タンク10内に投入するとともに、開閉弁16bを開いて貯留タンク16内の廃水を抜き出管16aからホッパ兼静置タンク10内に供給する。そして、ホッパ兼静置タンク10内のアスベスト廃棄物を上記廃水中に浸漬した状態で一定時間静置しておく。
すると、混酸の廃水によって、上記アスベスト廃棄物中のアスベストの表面に亀裂が生じて針状構造が脆性化するとともに、上記廃水と混合された酸性の混合物スラリーとなる。
次いで、これらの酸性の混合物スラリーを、開閉手段11を開いて湿式ミル12に送り、かつ中和剤として上記ダストDを、供給管13の開閉弁13aを開いて湿式ミル12に供給する。そしてさらに、湿式ミル12を作動させることにより、上記ダストDによる中和処理を促進させるとともに、同時に上記混合物スラリー中に含まれるアスベスト廃棄物を粉砕する。
この際に、要すれば、別途流動性を与えるための廃液、汚泥、水または流動剤を供給する。
これにより、ホッパ兼静置タンク10内において亀裂を生じているアスベストの針状構造を破壊して、無害化することができる。またこの結果、湿式ミル12内には、アスベストが無害化された上記アスベスト廃棄物と、中和された廃水との混合物であるスラリー状の汚泥が生成される。
次いで、これらの酸性の混合物スラリーを、開閉手段11を開いて湿式ミル12に送り、かつ中和剤として上記ダストDを、供給管13の開閉弁13aを開いて湿式ミル12に供給する。そしてさらに、湿式ミル12を作動させることにより、上記ダストDによる中和処理を促進させるとともに、同時に上記混合物スラリー中に含まれるアスベスト廃棄物を粉砕する。
この際に、要すれば、別途流動性を与えるための廃液、汚泥、水または流動剤を供給する。
これにより、ホッパ兼静置タンク10内において亀裂を生じているアスベストの針状構造を破壊して、無害化することができる。またこの結果、湿式ミル12内には、アスベストが無害化された上記アスベスト廃棄物と、中和された廃水との混合物であるスラリー状の汚泥が生成される。
そこで次に、この湿式ミル12から排出されたスラリー状の汚泥を、ポンプ14により移送配管15を通じて約900℃の温度雰囲気下にあるセメントキルン1の窯尻部分2から内部に送る。
すると、無害化されたアスベストを含むアスベスト廃棄物は、さらに、窯尻部分2の投入直後において、上記ダストD含有の塩化カルシウム、塩化カリウムおよび塩化ナトリウムが溶融・分散して、酸化カルシウムとアスベスト中の二酸化ケイ素および酸化マグネシウムとの固相反応を促進させるため、効率的にCaMgSiO4などが生成される。その際、特に、ダストDとして上記KCl/NaCl=0.5〜0.9の範囲内の塩素バイパスダストDを用いた場合には、低温にて溶融塩となってアスベスト含有物や酸化カルシウムなどの粒子間に分散されて上記固相反応が進行する。
すると、無害化されたアスベストを含むアスベスト廃棄物は、さらに、窯尻部分2の投入直後において、上記ダストD含有の塩化カルシウム、塩化カリウムおよび塩化ナトリウムが溶融・分散して、酸化カルシウムとアスベスト中の二酸化ケイ素および酸化マグネシウムとの固相反応を促進させるため、効率的にCaMgSiO4などが生成される。その際、特に、ダストDとして上記KCl/NaCl=0.5〜0.9の範囲内の塩素バイパスダストDを用いた場合には、低温にて溶融塩となってアスベスト含有物や酸化カルシウムなどの粒子間に分散されて上記固相反応が進行する。
それとともに、このようなアスベスト廃棄物を含む混合物スラリー中の水分は、窯尻部分2における約900℃の高温によって瞬時に気化して燃焼排ガスとともにプレヒータ3から排気ライン8へと送られて行く。
他方、上記混合物スラリー中の固形分については、仮焼セメント原料と混合されつつセメントキルン1内を窯尻部分2側から窯前4側へと送られて行く過程において、仮焼セメント原料の焼成温度である約1450℃以上に加熱され、最終的にセメントの一部として利用される。これにより、セメントが製造される。この結果、半導体製造工程から排出された上記廃水を利用することにより、アスベストの飛散を生じることなく、アスベスト含有物を容易に無害化処理することができ、さらには上記廃水についても同時に処理することができる。
他方、上記混合物スラリー中の固形分については、仮焼セメント原料と混合されつつセメントキルン1内を窯尻部分2側から窯前4側へと送られて行く過程において、仮焼セメント原料の焼成温度である約1450℃以上に加熱され、最終的にセメントの一部として利用される。これにより、セメントが製造される。この結果、半導体製造工程から排出された上記廃水を利用することにより、アスベストの飛散を生じることなく、アスベスト含有物を容易に無害化処理することができ、さらには上記廃水についても同時に処理することができる。
また、フッ酸を酸化カルシウムを含むダストDで中和した時に生成したフッ化カルシウムは、仮焼セメント原料の焼成時における溶融温度の低温化用として用いることができ、よって本来添加すべき上記フッ化カルシウム量の低減化を図ることもできる。
(第2の実施形態)
図2は、本発明の第2の実施形態に用いられる無害化処理システムを示すもので、図1に示したものと同一構成部分については、同一符号を付してその説明を簡略化する。
この処理システムにおいては、湿式ミル12の後段に加熱手段17aによって内部が加熱される乾燥槽17が設けられており、湿式ミル12の排出口に接続された移送配管15の他端部が、この乾燥槽17に接続されている。そして、乾燥槽17から取り出された乾燥汚泥が、供給ライン18を介してセメントキルン1の窯前4であって、かつ主バーナ5の上方位置に投入されるようになっている。
図2は、本発明の第2の実施形態に用いられる無害化処理システムを示すもので、図1に示したものと同一構成部分については、同一符号を付してその説明を簡略化する。
この処理システムにおいては、湿式ミル12の後段に加熱手段17aによって内部が加熱される乾燥槽17が設けられており、湿式ミル12の排出口に接続された移送配管15の他端部が、この乾燥槽17に接続されている。そして、乾燥槽17から取り出された乾燥汚泥が、供給ライン18を介してセメントキルン1の窯前4であって、かつ主バーナ5の上方位置に投入されるようになっている。
上記構成からなる処理システムを用いた第2の実施形態においては、湿式ミル12から排出されたスラリー状の上記汚泥は、移送配管15から一旦乾燥槽17に送られる。そして、この乾燥槽17において、加熱手段17aによる加熱によって乾燥処理されて乾燥汚泥とされたうえで、さらに供給ライン18からセメントキルン1の窯前4側に送られ、内部に投入される。
次いで、乾燥汚泥は、セメントキルン1内における主バーナ5からの火炎近傍において、反応温度まで加熱された酸化カルシウムとアスベスト中の二酸化ケイ素および酸化マグネシウムの固相反応によってCaMgSiO4などが生成されて、アスベストが無害化される。この際に、塩素化合物の溶融温度まで加熱されて、上記ダストDに含有される塩素化合物が溶融すると、上記固相反応の促進剤として作用することにより、効率的にCaMgSiO4が生成される。そして、火炎近傍の約2000℃の高温により燃焼された乾燥汚泥は、他のセメント原料と混合されて、同様に最終的にセメント原料の一部として利用される。
したがって、上記第2の実施形態に示す処理方法によっても、上述した第1の実施形態と同様に作用効果を得ることができる。
したがって、上記第2の実施形態に示す処理方法によっても、上述した第1の実施形態と同様に作用効果を得ることができる。
なお、上記第1および第2の実施形態においては、いずれも湿式ミル12から排出されたスラリー状の汚泥を、そのまま、あるいは乾燥させた後にセメントキルン1内に投入して処理する場合についてのみ説明したが、これに限るものではなく、湿式ミル12から排出された上記スラリー状の汚泥を、別途熱分解炉等に投入して800℃以上の温度によって加熱処理することもできる。また、塩素バイパスダストDに代えて、ロータリーキルンの窯尻部分から、例えば、立ち上がり部2bの下部に開閉可能な取り出し口を設けて、この取り出し口から抜き出した塩素化合物を含有する仮焼セメント原料を用いてもよい。
1 セメントキルン(ロータリーキルン)
2 窯尻部分
4 窯前
10 アスベスト廃棄物等の投入用ホッパ兼静置タンク
12 湿式ミル
13 中和剤の供給管
16 廃水の貯留タンク
16a 廃水の抜き出管
17 乾燥槽
17a 加熱手段
20 抽気ダクト
21 冷却器
22 サイクロン型分級機
23 バグフィルタ
24 誘引ファン
25 配管
2 窯尻部分
4 窯前
10 アスベスト廃棄物等の投入用ホッパ兼静置タンク
12 湿式ミル
13 中和剤の供給管
16 廃水の貯留タンク
16a 廃水の抜き出管
17 乾燥槽
17a 加熱手段
20 抽気ダクト
21 冷却器
22 サイクロン型分級機
23 バグフィルタ
24 誘引ファン
25 配管
Claims (5)
- アスベスト含有物に、工場生産工程から排出されるフッ化水素酸および硝酸を主体とした混酸の廃水を加え、次いで得られた混合物スラリーをカルシウム塩によって中和処理するとともに、当該混合液中の上記アスベスト含有物を粉砕することによりアスベストが無害化処理された汚泥とするアスベスト含有物の無害化処理方法であって、
上記カルシウム塩として、セメント原料を窯前側に設けられた加熱手段によって内部が高温雰囲気に保持されたロータリーキルンの窯尻側から供給して、上記窯前側に送りつつ焼成するセメント製造工程から排出される塩素バイパスダスト、および/または上記ロータリーキルンの窯尻部分から抜き出した塩素化合物を含有する仮焼セメント原料を用いることを特徴とするアスベスト含有物の無害化処理方法。 - 上記汚泥を、上記ロータリーキルンの窯尻部分に投入して加熱処理することを特徴とする請求項1に記載のアスベスト含有物の無害化処理方法。
- 上記汚泥を、上記ロータリーキルンの窯前側から当該ロータリーキルン内に投入して加熱処理することを特徴とする請求項1に記載のアスベスト含有物の無害化処理方法。
- 上記汚泥を、熱分解炉に投入して800℃以上の温度によって加熱処理することを特徴とする請求項1に記載のアスベスト含有物の無害化処理方法。
- 請求項1ないし3のいずれかに記載のアスベスト含有物の無害化処理方法を用いたセメントの製造方法であって、セメント原料を上記汚泥とともにロータリーキルンに投入して、上記セメント原料を焼成してセメントとし、かつ上記汚泥を加熱処理して上記セメントの一部とすることを特徴とするセメントの製造方法。
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Citations (4)
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---|---|---|---|---|
JP2007302482A (ja) * | 2006-02-06 | 2007-11-22 | A & A Material Corp | 石綿を含有する無機質系廃材の処理方法 |
WO2008001464A1 (fr) * | 2006-06-30 | 2008-01-03 | Onc Co., Ltd. | Procédé de dégradation d'amiante et appareil de dégradation d'amiante |
JP2008030027A (ja) * | 2006-06-28 | 2008-02-14 | Mitsubishi Materials Corp | セメント製造工程を用いたアスベスト含有物の処理方法 |
JP2008202803A (ja) * | 2006-06-08 | 2008-09-04 | Kenzo Takahashi | 産業廃棄物溶融固化装置 |
-
2008
- 2008-03-31 JP JP2008090127A patent/JP2009240914A/ja active Pending
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