JP2009231250A - 絶縁シート及び積層構造体 - Google Patents

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Abstract

【課題】未硬化状態でのシートハンドリング性に優れており、しかも絶縁破壊特性及び熱伝導性に優れた硬化物を与える絶縁シートを提供する。
【解決手段】熱伝導率が10W/m・K以上の高熱伝導体4を導電層2に接着するのに用いられ、芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が3万以上であるポリマー(A)と、芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が600以下のエポキシモノマー(B1)及び/又はオキセタンモノマー(B2)と、フェノール樹脂、又は芳香族骨格もしくは脂環式骨格を有する酸無水物、その水添加物もしくはその変性物である硬化剤(C)と、平均粒子径が12μm以下である破砕されたフィラー(D)と、水素結合性を有する水素原子を含む官能基を有する分散剤(E)とを含有する絶縁シート3。
【選択図】図1

Description

本発明は、熱伝導率が10W/m・K以上の高熱伝導体を導電層に接着するのに用いられる絶縁シートに関し、より詳細には、未硬化状態でのシートハンドリング性に優れており、かつ絶縁破壊特性及び熱伝導性に優れた硬化物を与える絶縁シート、及び該絶縁シートを用いた積層構造体に関する。
近年、電気機器の小型化及び高性能化が進行している。それに伴って、電子部品の実装密度が高くなってきており、電子部品から発生する熱を効果的に放散させる必要が高まってきている。また、近年の環境意識の高まりを受け、環境負荷の抑制が可能な電気自動車などのパワーデバイス用途においては、高電圧が印加されたり、あるいは大電流が流れたりすることが余儀なくされている。この場合高い熱量が発生するが、発生する高い熱量に対処するために、従来にも増して高効率に熱を放散させる必要が高まってきている。
熱を放散させる方法としては、高い放熱性を有し、かつ熱伝導率が10W/m・K以上であるアルミニウム等の高熱伝導体を、発熱源に対して接着する方法が広く採用されている。また、この高熱伝導体を発熱源に接着するのに、絶縁性を有する絶縁接着材料が用いられている。この絶縁接着材料には、高い熱伝導率を有することが強く求められている。
上記絶縁接着材料の一例として、下記の特許文献1には、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂用硬化剤、硬化促進剤、エラストマー及び無機充填剤を含有する接着剤組成物を、ガラスクロスに含浸させた絶縁接着シートが開示されている。
一方、ガラスクロスを用いない絶縁接着材料も知られている。例えば、下記の特許文献2の実施例には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノールノボラック、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及びアルミナを含む絶縁接着剤が開示されている。ここでは、エポキシ樹脂の硬化剤として、3級アミン、酸無水物、イミダゾール化合物、ポリフェノール樹脂、マスクイソシアネート等が挙げられている。
特開2006−342238号公報 特開平8−332696号公報
しかしながら、特許文献1に記載の絶縁接着シートでは、ハンドリング性を高めるために、ガラスクロスが用いられていた。ガラスクロスを用いた場合には、薄膜化が困難であり、かつレーザー加工、ドリル穴開け加工等の各種加工を行うことが困難であった。さらに、ガラスクロスを含む絶縁接着シートの硬化物は、熱伝導率が比較的低いため、充分な放熱性が得られないこともあった。さらに、ガラスクロスに接着剤組成物を含浸させるために、特殊な含浸設備を用意しなければならなかった。
一方、特許文献2の絶縁接着剤は、ガラスクロスを用いていないため、ガラスクロスの使用に伴う上記種々の弊害は生じない。しかし、この絶縁接着剤は、未硬化状態ではそれ自体が自立性を有するシートではなく、従ってハンドリング性が充分ではなかった。
さらに、特許文献1に記載の絶縁接着シート及び特許文献2に記載の絶縁接着剤では、いずれも、絶縁接着シートや絶縁接着剤の硬化物の絶縁破壊特性及び熱伝導性が低いことがあった。
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、熱伝導率が10W/m・K以上の高熱伝導体を導電層に接着するのに用いられ、ガラスクロスが用いられていなくても、未硬化状態でのシートハンドリング性に優れており、しかも絶縁破壊特性及び熱伝導性に優れた硬化物を与える絶縁シート、及びそれを用いた積層構造体を提供することにある。
本発明によれば、熱伝導率が10W/m・K以上の高熱伝導体を導電層に接着するのに用いられる絶縁シートであって、芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が3万以上であるポリマー(A)と、芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が600以下であるエポキシモノマー(B1)及び/又は芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が600以下であるオキセタンモノマー(B2)と、フェノール樹脂、又は芳香族骨格もしくは脂環式骨格を有する酸無水物、その水添加物もしくはその変性物である硬化剤(C)と、平均粒子径が12μm以下である破砕されたフィラー(D)と、水素結合性を有する水素原子を含む官能基を有する分散剤(E)とを含有することを特徴とする、絶縁シートが提供される。
本発明の絶縁シートのある特定の局面では、前記分散剤(E)の前記官能基のpKaが、2〜10の範囲にある。このような分散剤(E)を用いた場合には、絶縁シートの硬化物の熱伝導性及び絶縁破壊特性がより一層高められる。
また、本発明では、上記ポリマー(A)としては、様々なポリマーを用いることができる。中でも、フェノキシ樹脂が好ましく、それによって、耐熱性をより一層高めることができる。また、上記フェノキシ樹脂は、ガラス転移温度Tgが95℃以上であることが好ましい。この場合、樹脂の熱劣化をより一層抑制することができる。
また、上記硬化剤(C)としては、多脂環式骨格を有する酸無水物、もしくはテルペン系化合物と無水マレイン酸との付加反応により得られた脂環式骨格を有する酸無水物、その水添加物もしくはその変性物も好ましく、中でも下記式(1)〜(3)のいずれかで表される酸無水物がより好ましい。これらの場合、絶縁シートの柔軟性、耐湿性及び/又は接着性などをより一層高めることができる。
Figure 2009231250
Figure 2009231250
Figure 2009231250
上記式(3)中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜5のアルキル基、又は水酸基を示す。
また、本発明では、上記硬化剤(C)としては、様々な硬化剤を用いることができるが、メラミン骨格もしくはトリアジン骨格を有するフェノール樹脂、又はアリル基を有するフェノール樹脂が好ましい。この場合、絶縁シートの硬化物のシート柔軟性や難燃性をより一層高めることができる。
上記フィラー(D)の材質としては、特に限定はされないが、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、及び炭化ケイ素からなる群から選択された少なくとも1種が好ましい。これらのフィラー(D)を用いた場合には、絶縁シートの硬化物の放熱性をより一層高めることができる。
本発明に係る積層構造体は、熱伝導率が10W/m・K以上の高熱伝導体の少なくとも片面に、絶縁層を介して導電層が積層されており、該絶縁層が、本発明に従って構成された絶縁シートを硬化させて形成されていることを特徴とする。
本発明に係る積層構造体のある特定の局面では、前記高熱伝導体は金属とされている。
本発明に係る絶縁シートでは、平均粒子径が12μm以下である破砕されたフィラー(D)が、上記特定の成分(A)〜(C)及び(E)と併用されているので、未硬化状態での絶縁シートのシートハングリング性を高めることができる。さらに、本発明の絶縁シートを硬化させることにより、絶縁破壊特性及び熱伝導性に優れた硬化物を得ることができる。
本発明に係る積層構造体は、熱伝導率が10W/m・K以上の高熱伝導体の少なくとも片面に、絶縁層を介して導電層が積層されており、該絶縁層が、本発明に従って構成された絶縁シートを硬化させて形成されているので、導電層側からの熱が絶縁層を介して上記高熱伝導体に伝わり易く、該高熱伝導体によって熱を効率的に放散させることができる。さらに、積層構造体では、絶縁破壊が生じるのを抑制することができる。
以下、本発明の詳細を説明する。
本発明に係る絶縁シートは、芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が3万以上であるポリマー(A)と、芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が600以下であるエポキシモノマー(B1)及び/又は芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が600以下であるオキセタンモノマー(B2)と、フェノール樹脂、又は芳香族骨格もしくは脂環式骨格を有する酸無水物、その水添加物もしくはその変性物である硬化剤(C)と、平均粒子径が12μm以下である破砕されたフィラー(D)と、水素結合性を有する水素原子を含む官能基を有する分散剤(E)とを含有する。
本願発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、平均粒子径が12μm以下である破砕されたフィラー(D)を、上記ポリマー(A)、上記エポキシモノマー(B1)及び/又は上記オキセタンモノマー(B2)、上記硬化剤(C)及び上記分散剤(E)と組み合わせた組成を採用することによって、未硬化状態でのシートハンドリング性に優れており、かつ絶縁破壊特性及び熱伝導性に優れた硬化物を与える絶縁シートが得られることを見出し、本発明を成すに至った。
(ポリマー(A))
本発明に係る絶縁シートに含まれている上記ポリマー(A)としては、芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が3万以上であれば特に限定されない。芳香族骨格は、ポリマー全体の中に有していればよく、主鎖骨格内に含んでいてもよく、側鎖中に含んでいてもよい。耐熱性をより一層高めることができるので、ポリマー(A)は、芳香族骨格を主鎖骨格内に有することが好ましい。ポリマー(A)は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
上記芳香族骨格としては、特に限定はされないが、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格等が挙げられる。なかでも、耐熱性をより一層高めることができるので、ビフェニル骨格又はフルオレン骨格が好ましい。
上記ポリマー(A)としては、特に限定はされず、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などを用いることができる。
上記熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン等の熱可塑性樹脂、熱可塑性ポリイミド、熱硬化性ポリイミド、ベンゾオキサジン、ポリベンゾオキサゾールとベンゾオキサジンとの反応物などといったスーパーエンプラと呼ばれている耐熱性樹脂群を使用することができる。これら熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂は、それぞれ単独で用いられてもよいし、両者が併用されてもよい。
上記ポリマー(A)の中では、酸化劣化を防止することができ、かつ耐熱性をより一層高めることができるので、スチレン系重合体又はフェノキシ樹脂が好ましく、その中でもフェノキシ樹脂がより好ましい。
上記フェノキシ樹脂とは、具体的には、例えばエピハロヒドリンと2価フェノール化合物とを反応させて得られる樹脂、又は2価のエポキシ化合物と2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂のことである。
上記フェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA型骨格、ビスフェノールF型骨格、ビスフェノールA/F混合型骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格及びジシクロペンタジエン骨格からなる群から選択された少なくとも1つの骨格を有するフェノキシ樹脂が好ましい。中でも、耐熱性をより一層高めることができるので、ビスフェノールA型骨格、ビスフェノールF型骨格、ビスフェノールA/F混合型骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格及びビフェニル骨格からなる群から選択された少なくとも1種の骨格を有するフェノキシ樹脂がより好ましく、フルオレン骨格及び/又はビフェニル骨格を有するフェノキシ樹脂が更に好ましい。
上記フェノキシ樹脂は、主鎖中に多環式芳香族骨格を有することが好ましい。また、上記フェノキシ樹脂は、主鎖中に、下記式(4)〜(9)で表される骨格のうち、少なくとも1つの骨格を有することがより好ましい。
Figure 2009231250
上記式(4)中、Rは互いに同一であっても異なっていてもよく水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基又はハロゲン元素から選ばれる基であり、Xは単結合、炭素数1〜7の2価の炭化水素基、−O−、−S−、−SO−、又は−CO−から選ばれる基である。
Figure 2009231250
上記式(5)中、R1aは互いに同一であっても異なっていてもよく水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基又はハロゲン元素から選ばれる基であり、Rは、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基又はハロゲン元素から選ばれる基であり、Rは、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基であり、mは0〜5の整数である。
Figure 2009231250
上記式(6)中、R1bは互いに同一であっても異なっていてもよく水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基又はハロゲン元素から選ばれる基であり、Rは互いに同一であっても異なっていてもよく水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基又はハロゲン元素から選ばれる基であり、lは0〜4の整数である。
Figure 2009231250
Figure 2009231250
上記式(8)中、R、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子から選ばれるものであり、Xは−SO−、−CH−、−C(CH−、又は−O−のいずれかであり、kは0又は1の値である。
Figure 2009231250
上記ポリマー(A)としては、例えば、下記式(10)又は下記式(11)で表されるフェノキシ樹脂を好適に用いることができる。
Figure 2009231250
上記式(10)中、Aは上記式(4)〜(6)のいずれかで表される構造を有し、かつその構成は上記式(4)で表される構造が0〜60モル%、上記式(5)で表される構造が5〜95モル%、及び上記式(6)で表される構造が5〜95モル%であり、Aは水素原子、又は上記式(7)で表される基であり、nは平均値で25〜500の数である。
Figure 2009231250
上記式(11)中、Aは上記式(8)又は上記式(9)で表される構造を有し、nは少なくとも21以上の値である。
上記ポリマー(A)のガラス転移温度Tgは、60〜200℃の範囲が好ましく、より好ましくは90〜180℃の範囲である。ポリマー(A)のTgが低すぎると、樹脂が熱劣化する場合があり、高すぎると、他の樹脂との相溶性が悪くなり、結果として絶縁シートのハンドリング性、並びに絶縁シートの硬化物の耐熱性が低下することがある。
上記ポリマー(A)がフェノキシ樹脂である場合、ガラス転移温度Tgは、95℃以上が好ましく、110〜200℃の範囲がより好ましく、110〜180℃の範囲がさらに好ましい。フェノキシ樹脂のTgが低すぎると、樹脂が熱劣化することがあり、高すぎると、他の樹脂との相溶性が悪くなり、結果として絶縁シートの取扱い性、並びに絶縁シートの硬化物の耐熱性が低下することがある。
上記ポリマー(A)の重量平均分子量は、3万以上である。ポリマー(A)の重量平均分子量は、3万〜100万の範囲が好ましく、より好ましくは、4万〜25万の範囲である。重量平均分子量が小さすぎると、熱劣化することがあり、大きすぎると、他の樹脂との相溶性が悪くなり、結果として絶縁シートの取扱い性、並びに絶縁シートの硬化物の耐熱性が低下することがある。
上記ポリマー(A)と、上記エポキシモノマー(B1)及び/又は上記オキセタンモノマー(B2)と、上記硬化剤(C)とを含む絶縁シートに含まれている全樹脂成分の合計100重量%中に、ポリマー(A)は好ましくは20〜60重量%の割合、より好ましくは30〜50重量%の割合で、かつポリマー(A)と、エポキシモノマー(B1)及び/又はオキセタンモノマー(B2)との合計が100重量%未満となる割合で含まれる。ポリマー(A)が少なすぎると、絶縁シートの未硬化状態でのハンドリング性が低下することがあり、多すぎると、フィラー(D)の分散が困難になることがある。なお、全樹脂成分とは、ポリマー(A)、エポキシモノマー(B1)、オキセタンモノマー(B2)、硬化剤(C)及び必要に応じて添加される他の樹脂構成成分の総和をいうものとする。
(エポキシモノマー(B1)及びオキセタンモノマー(B2))
本発明に係る絶縁シートは、芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が600以下のエポキシモノマー(B1)、及び/又は芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が600以下のオキセタンモノマー(B2)を含む。絶縁シートは、エポキシモノマー(B1)とオキセタンモノマー(B2)との内のいずれか一方のみを含んでいてもよいし、両者を含んでいてもよい。
上記エポキシモノマー(B1)としては、特に限定はされないが、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型のビスフェノール骨格を有するエポキシモノマー;ジシクロペンタジエンジオキシド、ジシクロペンタジエン骨格を有するフェノールノボラックエポキシモノマーなどのジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシモノマー;1−グリシジルナフタレン、2−グリシジルナフタレン、1,2−ジグリシジルナフタレン、1,5−ジグリシジルナフタレン、1,6−ジグリシジルナフタレン、1,7−ジグリシジルナフタレン、2,7−ジグリシジルナフタレン、トリグリシジルナフタレン、1,2,5,6−テトラグリシジルナフタレン等のナフタレン骨格を有するエポキシモノマー;1,3−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)アダマンテン、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)アダマンテン等のアダマンテン骨格を有するエポキシモノマー;9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−メトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジクロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレン等のフルオレン骨格を有するエポキシモノマー、4,4’−ジグリシジルビフェニル、4,4’−ジグリシジル−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル等のビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂;1,1’−バイ(2,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,8’−バイ(2,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,1’−バイ(3,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,8’−バイ(3,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,1’−バイ(3,5−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,8’−バイ(3,5−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,2’−バイ(2,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,2’−バイ(3,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,2’−バイ(3,5−グリシジルオキシナフチル)メタン等のバイ(グリシジルオキシフェニル)メタン骨格を有するエポキシモノマー;1,3,4,5,6,8−ヘキサメチル−2,7−ビス−オキシラニルメトキシ−9−フェニル−9H−キサンテン等のキサンテン骨格を有するエポキシモノマー;アントラセン骨格やピレン骨格を有するエポキシモノマー等が挙げられる。これらのエポキシモノマー(B1)は、1種のみが用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
上記オキセタンモノマー(B2)としては、特に限定はされないが、例えば、4,4’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、1,4−ベンゼンジカルボン酸ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メチル]エステル、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン、オキセタン化フェノールノボラック等が挙げられる。これらのオキセタンモノマー(B2)は、1種のみが用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
上記エポキシモノマー(B1)及び/又はオキセタンモノマー(B2)の重量平均分子量は、600以下である。エポキシモノマー(B1)及び/又はオキセタンモノマー(B2)の重量平均分子量の好ましい下限は200、好ましい上限は550である。重量平均分子量が小さすぎると、揮発性が高すぎて絶縁シートの取扱い性が低下することがあり、大きすぎると、シートが固くかつ脆くなったり、接着力が低下したりすることがある。
上記エポキシモノマー(B1)と、上記オキセタンモノマー(B2)とを併用した場合又はいずれか一方を用いた場合には、上記ポリマー(A)と、上記エポキシモノマー(B1)及び/又は上記オキセタンモノマー(B2)と、上記硬化剤(C)とを含む絶縁シートに含まれている全樹脂成分の合計100重量%中に、エポキシモノマー(B1)及び/又はオキセタンモノマー(B2)は好ましくは10〜60重量%の割合、より好ましくは10〜40重量%の割合で、かつポリマー(A)と、エポキシモノマー(B1)及び/又はオキセタンモノマー(B2)との合計が100重量%未満となる割合で含まれる。
エポキシモノマー(B1)及び/又はオキセタンモノマー(B2)が少なすぎると、接着性や耐熱性が低下することがあり、多すぎると、絶縁シートの柔軟性が低下することがある。
(硬化剤(C))
本発明に係る絶縁シートに含まれている硬化剤(C)は、フェノール樹脂、又は芳香族骨格もしくは脂環式骨格を有する酸無水物、その水添加物もしくはその変性物である。この硬化剤(C)を用いることにより、耐熱性、耐湿性及び電気物性のバランスに優れた絶縁シートの硬化物を得ることができる。硬化剤(C)は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
上記フェノール樹脂としては、特に限定されないが、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、p−クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール、ポリパラビニルフェノール、ビスフェノールA型ノボラック、キシリレン変性ノボラック、デカリン変性ノボラック、ポリ(ジ−o−ヒドロキシフェニル)メタン、ポリ(ジ−m−ヒドロキシフェニル)メタン、ポリ(ジ−p−ヒドロキシフェニル)メタン等が挙げられる。なかでも、シート柔軟性や難燃性がより一層高められるので、メラミン骨格を有するフェノール樹脂、トリアジン骨格を有するフェノール樹脂、又はアリル基を有するフェノール樹脂が好ましい。
上記フェノール樹脂の市販品としては、明和化成社製のMEH−8005、MEH−8010、NEH−8015;ジャパンエポキシレジン社製のYLH903;大日本インキ社製のLA―7052、LA−7054、LA−7751、LA−1356、LA−3018−50P;群栄化学社製のPS6313及びPS6492等が挙げられる。
芳香族骨格を有する酸無水物、その水添加物又はその変性物としては、特に限定されないが、例えば、スチレン/無水マレイン酸コポリマー、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ピロメリット酸無水物、トリメリット酸無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、フェニルエチニルフタル酸無水物、グリセロールビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。なかでも、耐水性が高められるので、メチルナジック酸無水物やトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸が好ましい。
上記芳香族骨格を有する酸無水物、その水添加物又はその変性物の市販品としては、サートマー・ジャパン社製のSMAレジンEF30、SMAレジンEF40、SMAレジンEF60、SMAレジンEF80;マナック社製のODPA−M、PEPA;新日本理化社製のリカジットMTA―10、リカジットMTA−15、リカジットTMTA、リカジットTMEG−100、リカジットTMEG−200、リカジットTMEG−300、リカジットTMEG−500、リカジットTMEG−S、リカジットTH、リカジットHT−1A、リカジットHH、リカジットMH−700、リカジットMT−500、リカジットDSDA、リカジットTDA−100;大日本インキ化学社製のEPICLON B4400、EPICLON B650、EPICLON B570等が挙げられる。
また、脂環式骨格を有する酸無水物、その水添加物又はその変性物としては、多脂環式骨格を有する酸無水物、テルペン系化合物と無水マレイン酸との付加反応により得られる脂環式骨格を有する酸無水物、その水添加物又はその変性物が好ましい。この場合、絶縁シートの柔軟性、耐湿性及び/又は接着性などをより一層高めることができる。また、脂環式骨格を有する酸無水物、その水添加物又はその変性物としては、メチルナジック酸無水物、ジシクロペンタジエン骨格を有する酸無水物又はその変性物等も挙げることができる。
上記脂環式骨格を有する酸無水物、その水添加物又はその変性物の市販品としては、新日本理化社製のリカジットHNA、リカジットHNA−100;ジャパンエポキシレジン社製のエピキュアYH306、エピキュアYH307、エピキュアYH308H、エピキュアYH309等が挙げられる。
また、上記硬化剤(C)としては、シートの柔軟性、耐湿性及び/又は接着性をより一層高めることができるので、下記式(1)〜(3)のいずれかで表される酸無水物がより好ましい。
Figure 2009231250
Figure 2009231250
Figure 2009231250
上記式(3)中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜5のアルキル基、又は水酸基を示す。
硬化速度や硬化物の物性などを調整するために、上記硬化剤とともに、硬化促進剤を併用してもよい。
上記硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、3級アミン、イミダゾール類、イミダゾリン類、トリアジン類、有機リン系化合物、4級ホスホニウム塩類、有機酸塩等のジアザビシクロアルケン類;オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫やアルミニウムアセチルアセトン錯体等の有機金属化合物類;4級アンモニウム塩類;金属ハロゲン化物が挙げられる。
上記硬化促進剤としては、さらに高融点イミダゾール化合物、ジシアンジアミド又はアミンをエポキシモノマー等に付加したアミン付加型促進剤等の高融点分散型潜在性促進剤、イミダゾール系、リン系又はホスフィン系の促進剤の表面をポリマーで被覆したマイクロカプセル型潜在性促進剤、アミン塩型潜在性硬化促進剤、ルイス酸塩、ブレンステッド酸塩等の高温解離型で熱カチオン重合型の潜在性硬化促進剤等に代表される潜在性硬化促進剤を使用することもできる。なかでも、硬化速度や硬化物の物性などの調整をするための反応系の制御をしやすいことから、高融点イミダゾール系硬化促進剤が好適に用いられる。これらの硬化促進剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。取扱性に優れているので、硬化促進剤の融点は100℃以上が好ましい。
(フィラー(D))
本発明に係る絶縁シートに含まれるフィラー(D)は、破砕されたフィラーである。破砕されたフィラー(D)は、例えば、塊状の無機物質を、例えば、一軸破砕機、二軸破砕機、ハンマークラッシャー、又はボールミル等を用いて破砕することにより得られる。破砕されたフィラーを使用することで、絶縁シート中の各フィラーが、橋掛け又は効率的に近接された構造となりやすく、従って絶縁シートの熱伝導性を高めることができる。また、上記破砕されたフィラー(D)は、一般に、通常のフィラーに比べて安価であるため、上記破砕されたフィラーを原料として使用することで、絶縁シートの生産コストを低減することができる。
本発明に係る絶縁シートに含まれるフィラー(D)の平均粒子径は、12μm以下である。平均粒子径が12μmを超えると、絶縁シート中に、フィラーを高密度に分散させることができず、絶縁シートの硬化物の絶縁破壊特性が低下することがある。フィラー(D)の平均粒子径の好ましい上限は、10μmであり、好ましい下限は、1μmである。フィラー(D)の平均粒子径が小さすぎると、絶縁シート中にフィラーを高密度に充填させることが困難となることがある。
なお、本明細書において、平均粒子径とは、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積平均での粒度分布測定結果から求められる平均粒子径のことである。
本発明に係る絶縁シートに含まれる、破砕されたフィラー(D)のアスペクト比については、特に限定されないが、好ましい範囲は1.5〜20である。上記アスペクト比が1.5未満のフィラーは、比較的高価であり、従って絶縁シートのコストが高くなることがあり、上記アスペクト比が20を超えると、絶縁シート中へのフィラーの充填が困難となる場合がある。上記アスペクト比については、特に限定されるものではないが、上記を考慮に入れた上で、適宜、適する破砕されたフィラーを選択することが好ましい。
なお、上記アスペクト比は、例えば、フィラーの破砕面をデジタル画像解析方式粒度分布測定装置(商品名:FPA、日本ルフト社製)を用いて測定することにより求めることができる。
上記フィラー(D)の材質としては、特に限定されないが、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、及び炭化ケイ素からなる群から選択された少なくとも1種が好ましい。なかでも、放熱性をより一層高めることができるので、アルミナ及び/又は窒化アルミニウムがより好ましい。上記材質のフィラー(D)は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
上記フィラー(D)の配合量としては、絶縁シート100体積%中に、40〜90体積%の範囲が好ましい。より好ましくは、50〜85体積%の範囲である。フィラー(D)が40体積%未満であると、放熱性を充分に高めることができないことがあり、90体積%を超えると、絶縁シートの柔軟性や接着性が著しく低下するおそれがある。
(分散剤(E))
本発明に係る絶縁シートは、水素結合性を有する水素原子を含む官能基を有する分散剤(E)を含む。
一般に、本発明に係る絶縁シートに含まれる上記フィラー(D)は、破砕されたフィラーであり、接触している破砕面同士が強く凝集する傾向がある。そのため、該フィラー(D)を原料として使用した場合には、絶縁シート中に該フィラー(D)を高密度に分散させることができず、結果として、未硬化状態での絶縁シートのシートハンドリング性、絶縁シートの硬化物の絶縁破壊特性及び熱伝導性が低下することがある。しかしながら、上記分散剤(E)を併用することで、絶縁シート中に、上記フィラー(D)を高密度に分散させることが可能となり、未硬化状態での絶縁シートのシートハンドリング性、絶縁シートの硬化物の絶縁破壊特性及び熱伝導性を向上させることができる。本発明は、上記ポリマー(A)、上記エポキシモノマー(B1)、上記オキセタンモノマー(B2)及び上記硬化剤(C)に加えて、上記フィラー(D)及び上記分散剤(E)とを併用することに特徴を有する。
上記水素結合性を有する水素原子を含む官能基としては、例えば、カルボキシル基(pKa=4)、リン酸基(pKa=7)、又はフェノール基(pKa=10)等が挙げられる。
上記水素結合性を有する水素原子を含む官能基のpKaは、2〜10の範囲にあることが好ましく、より好ましくは3〜9の範囲である。pKaが2未満であると、分散剤の酸性度が高すぎるために、原料樹脂成分中のエポキシ成分及び/又はオキセタン成分の反応が促進されやすく、未硬化状態の絶縁シートを貯蔵した場合に、その貯蔵安定性に劣ることがある。pKaが10を超えると、分散剤としての機能が充分に果たせず、未硬化状態での絶縁シートのシートハンドリング性、絶縁シートの硬化物の熱伝導性及び絶縁破壊特性が充分に向上しない場合がある。
絶縁シートの硬化物の未硬化状態での絶縁シートのシートハンドリング性、絶縁破壊特性及び熱伝導性をより一層高めることができるので、上記水素結合性を有する水素原子を含む官能基としては、カルボキシル基又はリン酸基が好ましい。
上記分散剤(E)としては、具体的には、例えば、ポリエステル系カルボン酸、ポリエーテル系カルボン酸、ポリアクリル系カルボン酸、脂肪族系カルボン酸、ポリシロキサン系カルボン酸、ポリエステル系リン酸、ポリエーテル系リン酸、ポリアクリル系リン酸、脂肪族系リン酸、ポリシロキサン系リン酸、ポリエステル系フェノール、ポリエーテル系フェノール、ポリアクリル系フェノール、脂肪族系フェノール、又はポリシロキサン系フェノール等が挙げられる。分散剤(E)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記分散剤(E)の配合割合としては、絶縁シート100重量%中、0.01〜20重量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜10重量%の範囲である。分散剤(E)の配合割合がこの範囲にある場合、フィラー(D)の凝集を抑制することができ、従って絶縁シートの硬化物の熱伝導性及び絶縁破壊特性を充分に高めることができる。
(他の成分)
本発明に係る絶縁シートは、ハンドリング性をより一層高めるために、ガラスクロス、ガラス不織布、アラミド不織布等の基材物質を含んでいてもよい。もっとも、それら基材物質を含まなくても、本発明の絶縁シートは、室温(23℃)において、未硬化状態でも自立性を有し、かつ優れたハンドリング性を有する。よって、絶縁シートは基材物質を含まないことが好ましく、特にガラスクロスを含まないことが好ましい。上記基材物質を含まない場合、絶縁シートの薄膜化が可能であり、かつ絶縁シートの熱伝導率をより一層高めることができ、さらに必要に応じて絶縁シートにレーザー加工、ドリル穴開け加工等の各種加工を容易に行うこともできる。なお、自立性とは、PETフィルムや銅箔といった支持体が存在しなくても、例え未硬化状態であっても、シートの形状を保持し、シートとしての取扱いが可能であることをいうものとする。
また、本発明の絶縁シートは、必要に応じて、チキソ性付与剤、分散剤、難燃剤、着色剤などを含有していてもよい。
(絶縁シート)
本発明に係る絶縁シートは、特に限定はされないが、例えば、上述した材料を混合したものを溶剤キャスト法、押し出し成膜等の方法でシート状に成形することにより得ることができる。シート状に成形する際に、脱泡することが好ましい。
本発明に係る絶縁シートの未硬化状態でのガラス転移温度(Tg)は、25℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が25℃を超えると、室温において固く、かつ脆くなる場合があり、絶縁シートのハンドリング性が低下する場合がある。
絶縁シートの膜厚としては、特に限定はされないが、5〜300μmの範囲が好ましい。本発明により得られる絶縁シートの硬化物は、極めて絶縁破壊特性に優れるため、膜厚が薄い場合においても十分な絶縁性を得ることができ、結果として、極めて高い放熱性を得ることができる。
絶縁シートの硬化後の熱伝導率は、2.0W/m・K以上であることが好ましい。より好ましくは3.0W/m・K以上、更に好ましくは5.0W/m・K以上である。熱伝導率が低すぎると、充分な放熱性が得られないことがある。
絶縁シートの硬化後の絶縁破壊電圧は、30kV/mm以上であることが好ましい。より好ましくは、40kV/mm以上、さらに好ましくは50kV/mm以上である。絶縁破壊電圧が低すぎると、例えば電力素子用のような大電流用途に用いた場合に充分な絶縁性が得られないことがある。
絶縁シートの硬化後の体積抵抗率は、1014Ω・cm以上であることが好ましい。より好ましくは1016Ω・cm以上である。体積抵抗率が低すぎると、導体層と高熱伝導体間の絶縁を保てないことがある。
絶縁シートの硬化後の熱線膨張率は、30ppm/℃以下であることが好ましい。より好ましくは、20ppm/℃以下である。熱線膨張率が高すぎると、耐冷熱サイクル性に劣ることがある。
(積層構造体)
本発明に係る絶縁シートは、熱伝導率が10W/m・K以上の高熱伝導体を導電層に接着するのに用いられる。また、本発明に係る絶縁シートは、熱伝導率が10W/m・K以上の高熱伝導体の少なくとも片面に、絶縁層を介して導電層が積層されている積層構造体の絶縁層を構成するのに好適に用いられる。例えば、両面銅回路付き積層板又は多層配線板、銅箔、銅板、半導体素子、半導体パッケージ等の各導電層に、絶縁シートを介して金属体を接着した後、絶縁シートを硬化させることにより、上記積層構造体を得ることができる。
図1に、本発明の一実施形態に係る積層構造体を模式的に部分切欠正面断面図で示す。
図1に示す積層構造体1は、発熱源としての導電層2の表面2aに、絶縁層3を介して、高熱伝導体4が積層されている。絶縁層3は、本発明の絶縁シートを硬化させて形成されている。高熱伝導体4としては、熱伝導率が10W/m・K以上の高熱伝導体が用いられている。
上記積層構造体1では、絶縁層3が高い熱伝導率を有するので、導電層2側からの熱が絶縁層3を介して上記高熱伝導体4に伝わり易い。そして、該高熱伝導体4によって熱を効率的に放散させることができる。
上記熱伝導率が10W/m・K以上の高熱伝導体4としては特に限定されないが、例えば、アルミニウム、銅、アルミナ、ベリリア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミ、グラファイトシート等が挙げられる。中でも、放熱性に優れているので、銅、アルミニウムが好ましい。
本発明に係る絶縁シートは、基板上に半導体素子が実装されている半導体装置の導電層に、熱伝導率が10W/m・K以上の高熱伝導体を接着するのに好適に用いられる。本発明に係る絶縁シートは、半導体素子以外の電子部品素子が基板上に搭載されている電子部品装置の導電層に、熱伝導率が10W/m・K以上の高熱伝導体を接着するのにも好適に用いられる。
半導体素子が大電流用の電力用デバイス素子の場合には、より一層高い絶縁性、あるいはより一層高い耐熱性などが求められる。従って、このような用途において、本発明の絶縁シートはより好ましく用いられる。
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
以下の材料を用意した。
[ポリマー(A)]
(1)ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:E1256、Mw=51,000、Tg=98℃)
(2)高耐熱フェノキシ樹脂(東都化成社製、商品名:FX−293、Mw=43,700、Tg=163℃)
(3)エポキシ基含有スチレン樹脂(日本油脂社製、商品名:マープルーフG−1010S、Mw=100,000、Tg=93℃)
[ポリマー(A)以外のポリマー]
(1)エポキシ基含有アクリル樹脂(日本油脂社製、商品名:マープルーフG−0130S、Mw=9,000,Tg=69℃)
[エポキシモノマー(B1)]
(1)ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製、商品名:エピコート828US、Mw=370)
(2)ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製、商品名:エピコート806L、Mw=370)
(3)3官能グリシジルジアミン型液状エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:エピコート630、Mw=300)
(4)フルオレン骨格エポキシ樹脂(大阪ガスケミカル社製、商品名:オンコートEX1011、Mw=486)
(5)ナフタレン骨格液状エポキシ樹脂(大日本インキ化学社製、商品名:EPICLON HP−4032D、Mw=304)
[オキセタンモノマー(B2)]
(1)ベンゼン骨格オキセタン樹脂(宇部興産社製、商品名:エタナコールOXTP、Mw=362.4)
[エポキシモノマー(B1)及びオキセタンモノマー(B2)以外のモノマー]
(1)ヘキサヒドロフタル酸骨格液状エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名:AK−601、Mw=284)
(2)ビスフェノールA型固体状エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:1003、Mw=1300)
[硬化剤(C)]
(1)脂環式骨格酸無水物(新日本理化社製、商品名:MH−700)
(2)芳香族骨格酸無水物(サートマー・ジャパン社製、商品名:SMAレジンEF60)
(3)多脂環式骨格酸無水物(新日本理化社製、商品名:HNA−100)
(4)テルペン骨格酸無水物(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:エピキュアYH−306)
(5)ビフェニル骨格フェノール樹脂(明和化成社製、商品名:MEH−7851−S)
(6)アリル骨格フェノール樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:YLH−903)
(7)トリアジン骨格フェノール樹脂(大日本インキ化学社製、商品名:フェノライトKA−7052−L2)
(8)メラミン骨格フェノール樹脂(群栄化学工業社製、商品名:PS−6492)
(9)イソシアヌル変性固体分散型イミダゾール(イミダゾール系硬化促進剤、四国化成社製、商品名:2MZA−PW)
[フィラー(D)]
(1)5μmアルミナ(破砕フィラー、日本軽金属社製、商品名:LT300C、平均粒子径5μm)
(2)2μmアルミナ(破砕フィラー、日本軽金属社製、商品名:LS−242C、平均粒子径2μm)
(3)6μm窒化アルミニウム(破砕フィラー、東洋アルミニウム社製、商品名:FLC、平均粒子径6μm)
[フィラー(D)以外のフィラー]
(1)29μmアルミナ(破砕フィラー、大平洋ランダム社製、商品名:LA400、平均粒子径29μm)
[分散剤(E)]
(1)アクリル系分散剤(ビックケミージャパン社製、商品名:Disperbyk−2070、pKaが4のカルボキシル基を有する)
(2)ポリエーテル系分散剤(楠本化成社製、商品名:ED151、pKaが7のリン酸基を有する)
[分散剤(E)以外の分散剤]
(1)ノニオン系分散剤(共栄社化学社製、商品名:D−90、水素結合性を有する水素原子を含む官能基を有しない分散剤)
[添加剤]
(1)エポキシシランカップリング剤(信越化学社製、商品名:KBE403)
[溶剤]
(1)メチルエチルケトン
(実施例1)
ホモディスパー型攪拌機を用い、下記の表1に示す割合(配合単位は重量部)で各原料を配合・混練し、絶縁材料を調製した。
上記絶縁材料を膜厚50μmの離型PETシートに100μm厚に塗工し、90℃オーブンにて30分乾燥して、PETシート上に絶縁シートを作製した。
(実施例2〜18及び比較例1〜5)
使用した各原料の種類及び配合量を下記の表1、2に示すようにしたこと以外は、実施例1と同様にして絶縁材料を調製し、上記PETシート上に絶縁シートを作製した。
(実施例及び比較例の評価)
上記のようにして得られた各絶縁シートについて以下の項目を評価した。
(1.絶縁破壊電圧)
絶縁シートを100mm×100mm角に切り出したものを120℃オーブンで1時間、更に200℃オーブンで1時間硬化し、テストサンプルを作製した。耐電圧試験器(MODEL7473、EXTECH Electronics社製)を用いて、1kV/秒の速度で電圧上昇して、テストサンプルの絶縁破壊電圧を測定した。
(2.シートハンドリング性)
PETシートと、該PETシート上に形成された絶縁シートとを有する積層シートを460mm×610mm角に切り出したテストサンプルを用意した。このテストサンプルにおいて、室温(23℃)でPETシートから未硬化状態の絶縁シートを剥離したときのシートハンドリング性を下記の基準で評価した。
〇:絶縁シートの変形がなく、容易に剥離可能
△:絶縁シートを剥離できるが、シート伸びや破断が発生する
×:絶縁シートを剥離できない
(3.自立性)
上記ハンドリング性の評価において、PETシートから剥離された後の未硬化状態の絶縁シートの四角を固定して、該四角が互いに水平方向に位置するように絶縁シートを宙吊りにし、23℃で10分間放置した。放置後の絶縁シートの変形を観察し、自立性を下記の基準で評価した。
○:絶縁シートが下方に向かってたわんでおり、絶縁シートの鉛直方向におけるたわみ距離(変形度合い)が5cm以内
△:絶縁シートが下方に向かってたわんでおり、絶縁シートの鉛直方向におけるたわみ距離(変形度合い)が5cmを超える
×:絶縁シートに破れが発生
(4.熱伝導率)
絶縁シートの熱伝導率を、京都電子工業社製熱伝導率計「迅速熱伝導率計QTM−500」を用いて測定した。
結果を下記の表1、表2に示す。
Figure 2009231250
Figure 2009231250
図1は、本発明の一実施形態に係る積層構造体を模式的に示す部分切欠正面断面図である。
符号の説明
1…積層構造体
2…導電層
2a…表面
3…絶縁層
4…高熱伝導体

Claims (10)

  1. 熱伝導率が10W/m・K以上の高熱伝導体を導電層に接着するのに用いられる絶縁シートであって、
    芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が3万以上であるポリマー(A)と、
    芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が600以下であるエポキシモノマー(B1)及び/又は芳香族骨格を有し、かつ重量平均分子量が600以下であるオキセタンモノマー(B2)と、
    フェノール樹脂、又は芳香族骨格もしくは脂環式骨格を有する酸無水物、その水添加物もしくはその変性物である硬化剤(C)と、
    平均粒子径が12μm以下である破砕されたフィラー(D)と、
    水素結合性を有する水素原子を含む官能基を有する分散剤(E)とを含有することを特徴とする、絶縁シート。
  2. 前記分散剤(E)の前記官能基のpKaが、2〜10の範囲にある、請求項1に記載の絶縁シート。
  3. 前記ポリマー(A)がフェノキシ樹脂である、請求項1又は2に記載の絶縁シート。
  4. 前記フェノキシ樹脂は、ガラス転移温度Tgが95℃以上である、請求項3に記載の絶縁シート。
  5. 前記硬化剤(C)が、多脂環式骨格を有する酸無水物、もしくはテルペン系化合物と無水マレイン酸との付加反応により得られた脂環式骨格を有する酸無水物、その水添加物もしくはその変性物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の絶縁シート。
  6. 前記硬化剤(C)が、下記式(1)〜(3)のいずれかで表される酸無水物である、請求項5に記載の絶縁シート。
    Figure 2009231250
    Figure 2009231250
    Figure 2009231250
    上記式(3)中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜5のアルキル基、又は水酸基を示す。
  7. 前記硬化剤(C)が、メラミン骨格もしくはトリアジン骨格を有するフェノール樹脂、又はアリル基を有するフェノール樹脂である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の絶縁シート。
  8. 前記フィラー(D)が、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、及び炭化ケイ素からなる群から選択された少なくとも1種である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の絶縁シート。
  9. 熱伝導率が10W/m・K以上の高熱伝導体の少なくとも片面に、絶縁層を介して導電層が積層されており、該絶縁層が、請求項1〜8のいずれか1項に記載の絶縁シートを硬化させて形成されていることを特徴とする、積層構造体。
  10. 前記高熱伝導体が金属であることを特徴とする、請求項9に記載の積層構造体。
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