JP2009229306A - 結晶粒解析装置、結晶粒解析方法、及びコンピュータプログラム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 境界点i21〜i24と隣接する点i25〜i34と、解析対象領域に対して線対称となる仮想点81〜88を設定し、これら境界点i21〜i24と、点i25〜i34と、仮想点81〜88とにより定まる円弧91〜98の曲率(曲率半径Ri(t)の逆数)と、その境界点iが属する粒界uの単位長さ当たりの粒界エネルギーの大きさ(絶対値)γiとの積に基づいて、境界点iの駆動力Fi(t)の大きさを決定する。
【選択図】 図8
Description
特許文献1には、圧延された薄板鋼板を焼鈍して一次再結晶化し、一次再結晶化した薄板鋼板を仕上げ焼鈍して、二次再結晶化した薄板鋼板を得るための技術が開示されている。かかる技術では、一次再結晶化した結晶粒の粒径の分布を統計的に求める。そして、その一次再結晶化した結晶粒の粒径の分布を用いて、一次再結晶化した個々の結晶粒の粒界エネルギーの積分値(積分粒界エネルギー)を求め、求めた結果を用いて一次再結晶化した結晶粒の最適な分布を推定する。そして、特許文献1では、このようにして推定した分布となるように、一次再結晶化した結晶粒を得るようにすれば、適正に二次再結晶化した薄板鋼板が得られることになるとしている。
また、特許文献3には、均熱工程におけるAlスラブ、あるいは焼鈍工程におけるAl板材の各工程における初期結晶粒径、保持温度、保持時間と、試験片から得られた種々の係数を所定の計算式に代入して、結晶が成長した後の粒径を算出することが開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、一次再結晶化した結晶粒について着目し、一次再結晶化した結晶粒が、二次再結晶化されるまでの挙動について考慮していない。したがって、結晶粒が時間の経過と共にどのように変化していくのかについての正確な知見を得ることが困難であった。また、前述した従来の技術では、一次再結晶化した結晶粒の粒径の分布を統計的に求めるので、事前の製造・試験等に基づいた多くのデータが必要であった。したがって、結晶粒の状態を簡便に解析することが困難であるという問題点があった。
状を正確に表現することができない。したがって、結晶粒の時間的な変化の評価精度が極端に低くなってしまうという問題点があった。
また、特許文献3に記載の技術では、結晶粒径の計算モデルが開示されているだけである。したがって、具体的にどのような形状となって結晶粒が時間の経過と共に変化するのかを解析することが困難であるという問題点があった。
また、特許文献4に記載の技術では、具体的にどのようなモデルを用いて、結晶粒成長の計算を行うのかが示されていないという問題点があった。
図1は、本実施形態の結晶粒解析装置で行われる解析方法の一例を概念的に示す図である。尚、図1では、説明の都合上、電磁鋼鈑を構成する多数の結晶粒のうち、1つの結晶粒Aのみを示しているが、実際には、多数の結晶粒により電磁鋼鈑が形成されるということは言うまでもない。
まず、図1(a)に示すように、結晶粒Aの3つの粒界ua〜ucの両端点に対応する位置に三重点ia、ie、ifを設定し、粒界ua〜ucの中間点に対応する位置に二重点ib〜id、ig〜iiを設定する。ここで、三重点ia、ie、ifとは、3つのラインpが交わる点(ここでは、3つの結晶粒と接する点)をいい、二重点ib〜id、ig〜iiとは、2つのラインpが交わる点(ここでは、2つの結晶粒と接する点)をいう。そして、同一の粒界ua〜uc上で互いに隣接する点(粒界点)iを互いに結ぶ直線(ライン)を設定する。
以上のように、本実施形態では、粒界ua〜ucの両端の位置だけでなく、粒界ua〜ucの途中の形状も出来るだけ忠実に表すことができるように、二重点ib〜id、ig〜iiを設定するようにしている。
図2に示すように、本実施形態では、1つのラインpが解析対象領域の境界線と交わる点(ここでは、2つの結晶粒A1、A2と接する点)を単点ipとして設定し、2つのラインpが解析対象領域の境界線と交わる点(ここでは、3つの結晶粒A3〜A5と接する点)を二重点iqとして設定し、3つのラインが解析対象領域の境界線と交わる点(ここでは、4つの結晶粒A6〜A9と接する点)を三重点irとして設定する。
以上のように、本実施形態では、解析対象領域の境界線によって区画されない部分に加えて、解析対象領域の境界線によって区画される部分についても、点を設定するようにしている。尚、以下の説明では、ラインが解析対象領域の境界線と交わる点を、その他の点と表記を区別するために、必要に応じて境界点と称する。
図3は、結晶粒解析装置の機能構成の一例を示すブロック図である。尚、結晶粒解析装置100のハードウェアは、パーソナルコンピュータ等、CPU、ROM、RAM、ハードディスク、画像入出力ボード、各種インターフェース、及びインターフェースコントローラ等を備えた情報処理装置を用いて実現することができる。そして、特に断りのない限り、図3に示す各ブロックは、CPUが、ROMやハードディスクに記憶されている制御プログラムを、RAMを用いて実行することにより実現される。そして、図3に示す各ブロック間で、信号のやり取りを行うことにより、以下の処理が実現される。
また、点設定部103は、計算対象の点(単点、二重点又は三重点)iにおけるΔt[sec]後の位置ri(t+Δt)を示すベクトルが、後述するようにして位置計算部116により計算されると、その点iの位置ri(t+Δt)を示すベクトルを、RAM又はハードディスクに設定(記憶)する。
更に、後述するように、解析対象領域の境界線上の境界点として二重点を駆動させる場合には、境界点を2つに分裂させる(図8(b)の右図を参照)。したがって、二重点である境界点iを駆動させる場合、点設定部103は、計算対象の点の総数NIに「1」を加算する。
また、解析対象領域の境界線上の境界点として三重点を駆動させる場合には、境界点を3つに分裂させる(図8(c)の右図を参照)。したがって、三重点である境界点iを駆動させる場合、点設定部103は、計算対象の点の総数NIに「2」を加算する。
粒界設定部105は、ライン設定部104により設定されたラインpのうち、点設定部103により設定された三重点iを両端として互いに接続されたラインpにより特定される粒界uに関する情報を、RAM又はハードディスクに設定する。更に、粒界設定部105は、ライン設定部104により設定されたラインpのうち、三重点iを一端とし、解析対象領域の境界線上の点(単点、二重点、又は三重点)を他端として互いに接続されたラインpにより特定される粒界uに関する情報も、RAM又はハードディスクに設定する。
尚、図4(c)に示すように、粒界u1は、結晶粒A1、A2の粒界であり、粒界u2は、結晶粒A1、A5の粒界であり、粒界u3は、結晶粒A1、A4の粒界であり、粒界u4は、結晶粒A1、A3の粒界である。
以上のようにして、解析対象領域の境界線上に、単点、二重点、又は三重点が指定されると、図5の左図に示すように、例えば、単点i21、i24と、二重点i22と、三重点i23とが解析対象領域の境界線上に設定される。
尚、図5の右図に示すように、粒界u21は、結晶粒A16、A17の粒界であり、粒界u22は、結晶粒A18、A19の粒界であり、粒界u23は、結晶粒A19、A20の粒界である。また、粒界u24は、結晶粒A21、A22の粒界であり、粒界u25は、結晶粒A22、A23の粒界であり、粒界u26は、結晶粒A23、A24の粒界であり、粒界u27は、結晶粒A25、A16の粒界である。
例えば、図4(c)に示した粒界u1における「単位長さ当たりの粒界エネルギーγ」は、結晶粒A1の方位ξ1と結晶粒A1の方位ξ2との差分Δξの絶対値と、解析温度設定部106により設定された解析温度θ(t)とに対応した「単位長さ当たりの粒界エネルギーγ」を、粒界エネルギー記憶部108に記憶されたグラフ等から読み出すことにより得られる。尚、以下の説明では、単位長さ当たりの粒界エネルギーγを、必要に応じて粒界エネルギーγと略称する。また、粒界エネルギー記憶部108は、例えば、RAM又はハードディスクを用いて構成される。
いに隣接する2つの結晶粒Aの方位ξの差分Δξの絶対値と、解析温度θ(t)との関係を示すグラフ、数値列、式、又はそれらの組み合わせを記憶する。尚、以下の説明では、これらグラフ、数値列、式、又はそれらの組み合わせをグラフ等と称する。
例えば、図4(c)に示した粒界u1における易動度Miは、結晶粒A1の方位ξ1と結晶粒A2の方位ξ2との差分Δξの絶対値と、解析温度設定部106により取得された解析温度θ(t)とに対応した易動度Miを、易動度記憶部110に記憶されたグラフ等から読み出すことにより得られる。尚、易動度記憶部110は、例えば、RAM又はハードディスクを用いて構成される。
解析点判別部113は、点設定部103により設定された全ての点(二重点及び三重点)iを、計算対象の点として、重複することなく順番に指定する。そして、解析点判別部113は、指定した点iが、二重点であるのか、それとも三重点であるのかを判別する。
図6は、解析対象領域の境界線上にない二重点に生じる駆動力Fi(t)の計算方法の一例を説明する図である。
まず、二重点iが属する粒界uの粒界ベクトルγiの大きさ(絶対値)と同じ大きさを有し、且つ、二重点iから点i−1、i+1に向かう方向を有する2つのベクトルfi1、fi2のベクトル和が、二重点iに生じる駆動力Frであると仮定する(図6を参照)。そうすると、二重点iに生じる駆動力Frの大きさは、以下の(2)式で表される。
二重点iに生じる駆動力を(2)式のようにして定義してもよいが、このようにして定義してしまうと、二重点iに生じる駆動力が、二重点iから点i−1(又は点i+1)までの直線42、43の長さlに依存してしまう。すなわち、二重点iに生じる駆動力が、1つの粒界uに対して設定された二重点iの数に依存してしまう。例えば、図6(c)に示すように、粒界u1に対して3つの二重点i2〜i4が設定された場合と、粒界u1に対して5つの二重点が設定された場合とで、二重点iに生じる駆動力が異なってしまう。
そして、三重点用駆動力計算部115は、単位長さ当たりの粒界エネルギーγi1、γi2、γi3の大きさ(絶対値)と、計算対象の三重点iから点1、2、3に向かう方向を有する単位ベクトル(dij(t)/|dij(t)|)とを、以下の(3)式に代入して、計算対象の三重点iに生じる駆動力Fi(t)を計算する。
このように、本実施形態では、点1、2、3が属する粒界uにおける単位長さ当たりの粒界エネルギーγi1、γi2、γi3の大きさ(絶対値)と同じ大きさを有し、且つ、計算対象の三重点iから、その三重点iに隣接する点に向かう方向を有する3つのベクトルDi1(t)、Di2(t)、Di3(t)のベクトル和が、三重点iに生じる駆動力Fi(t)として計算される。
次に、境界点用駆動力計算部118は、計算対象の境界点iに属する粒界uの単位長さ当たりの粒界エネルギーγiを、粒界エネルギー設定部109から取得する。
次に、境界点用駆動力計算部118は、曲率半径Ri(t)と、単位長さ当たりの粒界エネルギーγiとを(1)式に代入して、境界点iに生じる駆動力Fi(t)の大きさを計算する。また、境界点用駆動力計算部118は、計算対象の境界点iから曲率中心Oに向かう方向を計算し、計算した方向に対応する解析対象領域の境界線上の方向を、境界点iに生じる駆動力Fi(t)の方向として決定する。前述したように、曲率中心Oa〜Ohは、解析対象領域の境界線上に位置するので、境界点iは、当該境界線上を移動することになる。
以上のようして、図8(b)の右図に示すように、二重点である境界点i22は、2つの境界点i22'、i22''に分裂する。
以上のようして、図8(c)の右図に示すように、三重点である境界点i23は、3つの境界点i23'、i23''、i23'''に分裂する。
本実施形態では、以上のようにすることによって、境界点iと、当該境界点iと隣接する点とを最短距離で相互に結ぶラインpの長さが、境界点iを移動する前よりも短くなるように、境界点iを移動させるようにしている。
まず、境界点iと、境界点iでない二重点iの時間の経過に伴う位置の変化を計算する方法の一例を説明する。
位置計算部116は、二重点用駆動力計算部114により計算された駆動力Fi(t)を示すベクトル(計算対象の点iに生じる駆動力Fi(t)を示すベクトル)を取得する。また、位置計算部116は、計算対象の点iが属する粒界uの易動度Miを、易動度設定部111から取得する。
ここで、計算対象の点iが境界点である場合であって、二重点(三重点)である場合、位置計算部116は、計算対象の点iが属する粒界uの易動度Miを2つ(3つ)取得することになる。図8(b)に示す例では、結晶粒A18、A19の粒界uの易動度Mi1と、結晶粒A19、A20の粒界uの易動度Mi2とを取得する。また、図8(c)に示す例では、結晶粒A21、A22の粒界uの易動度Mi1と、結晶粒A22、A23の粒界uの易動度Mi2と、結晶粒A23、A24の粒界uの易動度Mi3とを取得する。
ここで、計算対象の点iが境界点である場合であって、二重点(三重点)である場合、位置計算部116は、計算対象の点iの速度vi(t)を示すベクトルを2つ(3つ)計算することになる。
ここで、計算対象の点iが境界点である場合であって、二重点(三重点)である場合、位置計算部116は、現在の時間tからΔt[sec]が経過したときに、計算対象の点iが存在する位置ri(t+Δt)を示すベクトルを2つ(3つ)計算することになる。
尚、時間Δtは、点iの位置を計算するタイミング(間隔)を規定するものであり、解析対象となる電磁鋼鈑の種類や、解析条件、解析精度等に応じて予め定められている。
位置計算部116は、位置計算部116は、計算対象の三重点iが属する3つの粒界uの易動度Mi1〜Mi3を、易動度設定部111から取得する。
また、位置計算部116は、三重点用駆動力計算部115により計算された駆動力Fi(t)を示すベクトル(計算対象の三重点iに生じる駆動力Fi(t)を示すベクトル)を取得する。そして、位置計算部116は、計算対象の三重点iが属する粒界uの易動度Miと、計算対象の三重点iの駆動力Fi(t)を示すベクトルとを、前述した(4)式に代入して、計算対象の三重点iの速度vi(t)を示すベクトルを計算する。
このように本実施形態では、例えば、ステップS1の処理を行うことにより、画像信号取得手段の一例が実現される。
次に、ステップS7において、点設定部103は、結晶画像表示部102により表示された結晶粒画像に対して、点i(単点、二重点、又は三重点)が指定されるまで待機する。前述したように、本実施形態では、解析対象領域の境界線上では、単点、二重点、及び三重点の何れもが指定可能であるが、解析対象領域の境界線以外では、二重点及び三重点の何れかが指定可能となっている。
このように本実施形態では、例えば、ステップS8の処理を行うことにより、点設定手段の一例が実現される。
次に、ステップS9において、点設定部103は、ユーザによる操作装置300の操作に基づいて、点(単点、二重点、又は三重点)iを指定する作業の終了指示がなされたか否かを判定する。この判定の結果、点iを指定する作業の終了指示がなされていない場合には、ステップS7に戻り、既に指定された点(単点、二重点、又は三重点)iと別の点(単点、二重点又は三重点)iが指定されるまで待機する。
一方、点iを指定する作業の終了指示がなされた場合には、ステップS10に進む。ステップS10に進むと、点設定部103は、ステップS7で指定されたと判定した点(単点、二重点、又は三重点)iの数(すなわち、ステップS7の処理を行った回数)NIを計算して、RAM又はハードディスクに設定する。
p1={i1,i2} ・・・(6)
u1={p1,p2,p3,p4} ・・・(7)
次に、ステップS14において、粒界エネルギー設定部109は、ステップS14で設定された結晶粒Aの方位ξと、ステップS4で設定された解析温度θ(t)とに基づいて、粒界エネルギー記憶部108に記憶されたグラフ等から、ステップS12で設定された全ての粒界uの単位長さ当たりの粒界エネルギーγを読み出す。そして、粒界エネルギー設定部109は、読み出した単位長さ当たりの粒界エネルギーγを、RAM又はハードディスクに設定する。
次に、ステップS17において、点設定部103は、計算対象の点を示す変数iに「1」を設定する。
次に、ステップS18において、解析点判別部113は、計算対象の点を示す変数iにより特定される点(計算対象の点)が、境界点であるか否かを判定する。この判定の結果、計算対象の点が境界点である場合には、後述するステップS22に進む。
一方、ステップS19において、計算対象の点を示す変数iが、計算対象の点の総数NI以上であると判定された場合には、現在設定されている全ての点iについて境界点か否かを判定したと判断し、ステップS21に進む。ステップS21に進むと、点設定部103は、計算対象の点の総数NIに、境界点iを分離することにより増える境界点iの数NJを加算して、計算対象の点の総数NIを更新する。そして、後述する図9−3のステップS26に進む。
次に、ステップS27において、解析点判別部113は、計算対象の点を示す変数iを「1」に設定する。これにより計算対象の点iが設定される。
一方、計算対象の点が、境界点でない場合には、ステップS29に進む。ステップS29に進むと、解析点判別部113は、計算対象の点iが、二重点か否かを判定する。この判定の結果、計算対象の点が、二重点でなく、三重点である場合には、後述するステップS42に進む。一方、計算対象の点が、二重点である場合には、ステップS30に進む。
ステップS30に進むと、二重点用駆動力計算部114は、計算対象の二重点i、及びその二重点に隣接する2つの点i−1、i+1の情報を、点設定部103から読み出す。そして、二重点用駆動力計算部114は、二重点iと、その二重点iに隣接する2つの点i−1、i+1とにより定まる円弧41の曲率中心O及び曲率半径Ri(t)を計算する。
次に、ステップS32において、二重点用駆動力計算部114は、ステップS30で計算した曲率半径Ri(t)と、ステップS31で読み出した単位長さ当たりの粒界エネルギーγiとを(1)式に代入して、二重点iに生じる駆動力Fi(t)の大きさを計算する。
次に、ステップS34において、位置計算部116は、計算対象の点の現在の位置ri(t)を示すベクトルを点設定部103から受け取る。
そして、位置計算部116は、計算対象の点iの速度vi(t)を示すベクトルと、計算対象の点の現在の位置ri(t)を示すベクトルと、時間Δtとを、(5)式に代入して、現在の時間tからΔt[sec]が経過したときに、計算対象の点iが存在する位置ri(t+Δt)を示すベクトルを計算する。
一方、ステップS36において、計算対象の点を示す変数iが、計算対象の点の総数NI以上であると判定された場合には、時間t+Δtにおける位置を、点設定部103で現在設定されている全ての点iについて計算したと判定し、ステップS38に進む。
次に、ステップS39において、解析時間設定部112は、時間tが、ステップS6で設定した解析完了時間Tよりも大きいか否かを判定する。すなわち、解析完了時間Tが経過したか否かを判定する。この判定の結果、時間tが、ステップS6で設定した解析完了時間Tより大きくない場合(解析完了時間Tが経過していない場合)には、ステップ40に進む。ステップS40に進むと、解析時間設定部112は、現在設定している時間tに時間Δtを加算して、時間tを更新する。そして、ステップS27以降の処理を再度行い、更新した時間tから時間Δtが経過した場合の点iの位置ri(t+Δt)を計算する。
また、三重点用駆動力計算部115は、計算対象の三重点iと、その三重点iに隣接する3つの点1、2、3の情報を、点設定部103から読み出す。そして、三重点用駆動力計算部115は、計算対象の三重点iから、点1、2、3に向かう方向を有する単位ベクトルを計算する。
次に、ステップS45において、位置計算部116は、計算対象の三重点が属する3つの粒界uの易動度Mi1〜Mi3と、計算対象の三重点から点1、2、3に向かう方向を有する単位ベクトル(dij(t)/|dij(t)|)とを、(6)式に代入して、計算対象の三重点iの易動度Miを計算する。尚、計算対象の三重点iから点1、2、3に向かう方向を有する単位ベクトルは、ステップS42で計算されたものを使用することができる。そして、前述したステップS34以降の処理を行い、時間t+Δtにおける三重点iの位置ri(t+Δt)のベクトルを前述したようにして計算する。
ステップS46に進むと、境界点用駆動力計算部118は、境界点i21〜i24に隣接する点i25〜i34(図8では二重点)と解析対象領域の境界線に対して線対称となる仮想点81〜88を設定する。
次に、ステップS47において、境界点用駆動力計算部118は、境界点i21〜i24と、その境界点i21〜i24に隣接する点25〜i34と、設定した仮想点81〜88とにより定まる円弧91〜98の曲率中心Oa〜Oh及び曲率半径Ri(t)を計算する。
一方、解析対象領域の四隅にある境界点iについては、解析対象領域の境界線に対して線対称となる仮想点が2つできるので、線対称となる仮想点の2つの夫々について求めた2つの駆動力Fi(t)のうち、大きい方の駆動力Fi(t)を採用する(図8(d)を参照)。
そして、前述した図9−3のステップS34に進み、位置計算部116は、計算対象の境界点の現在の位置をri(t)示すベクトルを取得する。
以上のように本実施形態では、例えば、ステップS46〜50、S34、S35の処理を行うことにより、境界点位置変更の一例が実現される。そして、例えば、ステップS46の処理を行うことにより、仮想点設定手段の一例が実現され、例えば、ステップS49の処理を行うことにより、駆動力演算手段の一例が実現され、例えば、ステップS34、S35の処理を行うことにより、位置演算手段の一例が実現される。
まず、結晶粒解析装置100による解析結果を適用せずに、(比較対象となる)深絞り鋼を製造した。具体的には、まず、転炉溶製されたスラブを、熱延巻き取り温度が600[℃]となるように熱間圧延した。尚、熱延巻き取り温度のバラツキは、標準偏差で30[℃]であった。そして、このようにして熱間圧延された薄板鋼板を酸洗した後に冷間圧延し、その冷間圧延により圧延された薄板鋼板を、CAPL(Continuous Annealing and Processing Line、連続焼鈍ライン)で850[℃]、5分間焼鈍して、比較対象となる製品を製造した。このようにして製造された製品のうち、r(ランクフォード)値が2.0よりも大きいものを良品、そうでないものを不良品とした。そうすると、歩留まりが97.5[%]以上になった。
次に、焼鈍温度と焼鈍時間とにより定められる焼鈍条件に基づいて、中温サンプルの解析温度θ(t)を結晶粒解析装置100に入力した。そして、中温サンプルを、入力した焼鈍条件で焼鈍した場合に、中温サンプルの結晶粒Aの状態がどのように変化するのかを、前述したようにして結晶粒解析装置100で解析した。そして、解析した結果に基づいて、中温サンプルに対するr値を、別途用意したプログラムを実行することにより計算した。この計算したr値が2.0より大きくなるように、焼鈍条件(すなわち、解析温度θ(t))を変えて、結晶粒解析装置100による解析を繰り返し行った。その結果、計算したr値が2.0より大きくなる「中温サンプルの焼鈍条件」は、図11(a)に示すようになった。
従って、結晶粒解析装置100による解析を行った結果に基づいて、1つのコイルに対する焼鈍条件を変えることにより、製品の歩留まりが向上することが確認できた。
また、本実施形態では、粒界エネルギー設定部109、易動度設定部111は、粒界uを介して互いに隣接する2つの結晶粒Aの方位ξの差分Δξの絶対値に基づいて、単位長さ当たりの粒界エネルギーγ、易動度Miを設定するようにしたが、粒界uを介して互いに隣接する2つの結晶粒Aの方位ξの差分Δξそのものに基づいて、単位長さ当たりの粒界エネルギーγ、易動度Miを設定するようにしてもよい。
また、図9−3のフローチャートにおいて、ステップS40で時間を更新しているので、計算負荷を軽減するために、ステップ38の処理を行わないようにしてもよい。
また、前述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
101 結晶画像取得部
102 結晶画像表示部
103 点設定部
104 ライン設定部
105 粒界設定部
106 解析温度設定部
107 方位設定部
108 粒界エネルギー記憶部
109 粒界エネルギー設定部
110 易動度記憶部
111 易動度設定部
112 解析時間設定部
113 解析点判別部
114 二重点用駆動力計算部
115 三重点用駆動力計算部
116 位置計算部
118 境界点用駆動力計算部
200 表示装置
300 操作装置
a 結晶粒
i 二重点、三重点、境界点
p ライン
u 粒界
Claims (6)
- 金属材料における結晶の画像信号を取得する画像信号取得手段と、
前記結晶に含まれる結晶粒の粒界と、前記画像信号に基づく解析対象領域の境界線との交点に対応する境界点と、前記境界点とは異なる点であって、前記結晶に含まれる結晶粒の粒界に対応する非境界点とが、前記画像信号に基づいて指定されると、その指定された点を設定する点設定手段と、
前記点設定手段により設定された境界点に関する情報と、当該境界点に隣接する点に関する情報とを用いて、前記境界点と、前記境界点に隣接する点とを相互に最短距離で結ぶラインの長さが短くなる方向に、前記境界点の位置を変更する境界点位置変更手段とを有することを特徴とする結晶粒解析装置。 - 前記境界点位置変更手段は、前記解析対象領域の境界線に対して、前記境界点と隣接する点と線対称となる位置に仮想的な仮想点を設定する仮想点設定手段と、
前記境界点と、前記境界点に隣接する点と、前記仮想点とにより定まる円弧の曲率と、前記境界点が属する粒界に対して設定された単位長さ当たりの粒界エネルギーとの積に基づく大きさを有し、且つ前記境界点から前記円弧の曲率中心に向かう方向を有するベクトルを、前記境界点に生じる駆動力として演算する駆動力演算手段と、
前記駆動力演算手段により演算された駆動力を用いて、前記境界点の時間の経過に伴う新たな位置を演算する位置演算手段とを有することを特徴とする請求項1に記載の結晶粒解析装置。 - 前記仮想点設定手段は、前記境界点と隣接する点の数がm個(mは2以上の整数)ある場合、前記解析対象領域の境界線に対して、前記m個の点と線対称となる位置にm個の仮想点を設定し、
前記駆動力演算手段は、前記境界点に生じる駆動力を、前記m個の仮想点毎に演算し、
前記位置演算手段は、前記駆動力演算手段により演算された駆動力を用いて、前記境界点にかわる前記m個の境界点の位置を演算することを特徴とする請求項2に記載の結晶粒解析装置。 - 前記仮想点設定手段は、前記境界点が、前記解析対象領域の角にある場合、前記解析対象領域の境界線に対して、前記境界点に隣接する点と線対称となる位置に2個の仮想点を設定し、
前記駆動力演算手段は、前記境界点に生じる駆動力を、前記2個の仮想点毎に演算し、
前記位置演算手段は、前記駆動力演算手段により演算された駆動力のうち、値が大きい方の駆動力を用いて、前記境界点の新たな位置を演算することを特徴とする請求項2又は3に記載の結晶粒解析装置。 - 金属材料における結晶の画像信号を取得する画像信号取得ステップと、
前記結晶に含まれる結晶粒の粒界と、前記画像信号に基づく解析対象領域の境界線との交点に対応する境界点と、前記境界点とは異なる点であって、前記結晶に含まれる結晶粒の粒界に対応する非境界点とが、前記画像信号に基づいて指定されると、その指定された点を設定する点設定ステップと、
前記点設定ステップにより設定された境界点に関する情報と、当該境界点に隣接する点に関する情報とを用いて、前記境界点と、前記境界点に隣接する点とを相互に最短距離で結ぶラインの長さが短くなる方向に、前記境界点の位置を変更する境界点位置変更ステップとを有することを特徴とする結晶粒解析方法。 - 金属材料における結晶の画像信号を取得する画像信号取得ステップと、
前記結晶に含まれる結晶粒の粒界と、前記画像信号に基づく解析対象領域の境界線との交点に対応する境界点と、前記境界点とは異なる点であって、前記結晶に含まれる結晶粒の粒界に対応する非境界点とが、前記画像信号に基づいて指定されると、その指定された点を設定する点設定ステップと、
前記点設定ステップにより設定された境界点に関する情報と、当該境界点に隣接する点に関する情報とを用いて、前記境界点と、前記境界点に隣接する点とを相互に最短距離で結ぶラインの長さが短くなる方向に、前記境界点の位置を変更する境界点位置変更ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
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