JP2009224593A - インドロカルバゾール誘導体を含有する電子デバイス用有機導電性材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】有機エレクトロニクス分野において、高い溶解性を有する導電性材料を提供する。
【解決手段】一般式(1)で示される6,12−ジアリールインドロ[3,2−b]カルバゾール誘導体に、ハロゲン、プロトン酸、高分子プロトン酸、ルイス酸、遷移金属塩、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、クロラニル、酸素等の電子受容性物質をドーピングした材料を含有する電子デバイス用有機導電性材料。
(Arは、炭素数3〜20のアリール基を示し、R1は、水素、アルキル基、アルケニル基、アシル基、スルホニル基又はアリール基を示し、R2は、水素、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、水酸基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、ニトロ基、シアノ基、スルホニル基、アミノ基又はアリール基を示す。)
【選択図】なし
【解決手段】一般式(1)で示される6,12−ジアリールインドロ[3,2−b]カルバゾール誘導体に、ハロゲン、プロトン酸、高分子プロトン酸、ルイス酸、遷移金属塩、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、クロラニル、酸素等の電子受容性物質をドーピングした材料を含有する電子デバイス用有機導電性材料。
(Arは、炭素数3〜20のアリール基を示し、R1は、水素、アルキル基、アルケニル基、アシル基、スルホニル基又はアリール基を示し、R2は、水素、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、水酸基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、ニトロ基、シアノ基、スルホニル基、アミノ基又はアリール基を示す。)
【選択図】なし
Description
本発明は、高い導電性と溶剤溶解性を有する電子デバイス用有機導電性材料に関する。詳しくは、インドロカルバゾール誘導体に電子受容性化合物をドーピングした材料を含有する電子デバイス用有機導電性材料に関する。
高い導電性を有する電子デバイス用有機導電性材料としては、主としてポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン等の導電性高分子材料が知られている。これら導電性材料の開発は、これらの材料が有する導電性の向上を開発の主眼としており、その結果、それぞれが有する導電性等の特性に応じて帯電防止、電解コンデンサ等が開発されてきた。一方、有機導電性材料が潜在的に有している半導体的特性、非線形光学効果、光電変換特性、熱電変換特性等を利用することにより更に多くの用途への応用が期待されているが、これらの分野に関しては、いまだ多くの課題を有している。
有機導電性材料を使用した電子デバイスを製造する方法として、電解重合法、蒸着法、塗布法の3種が知られている。電解重合法とは、アニリンやピロールの如き導電性高分子モノマーを電極上で重合することにより素子を得る方法であり、電解コンデンサ等の製造に用いられている。一方、トランジスタ、レーザー、太陽電池等の素子を得るためには、蒸着法又は塗布法が用いられている。蒸着法は、導電性材料を真空下で蒸着する方法であり、主として低分子系材料の開発段階で用いられている。この方法を商業生産ベースで実施しようとするとコスト、機器管理等での真空蒸着装置の導入可否が問題となるため、その点を解決するため塗布法が提案されている。塗布法は、有機導電性材料を溶媒に溶解させた溶液を調製し、得られた溶液を種々の方法により塗布した後、乾燥して素子を得る方法だが、溶媒に可溶な材料が限られていることが問題であり、高い導電性を維持しながらこの方法に対応できる新規な化学構造を有する材料の開発が望まれている。
このような状況の中で、塗布法に対応するために導電性高分子の可溶化に関する開発がなされている。例えば、導電性高分子であるポリアニリンに関しては、溶媒可溶だが絶縁性のエメラルジン塩溶液を用いて成型を行い、その後、ドーピングを行うことにより導電性のエメラルジン塩に変換することが提案されている(特許文献1)。また、可溶化の方法として、ポリアニリンやポリチオフェン等にアルキルスルホン酸基を導入することにより水系溶媒に対する可溶性を付与できることが知られている(特許文献2)。また、アルキルチオフェンの位置規則的重合を行うことによる方法(非特許文献1)が知られている。
一方、有機導電性材料の中でも、その半導体特性に着眼した有機半導体材料では、導電性高分子と同様に可溶化を狙う開発が進められている。低分子系材料としてはチオフェンオリゴマーやインドロカルバゾール等へのアルキル基導入により溶媒可溶な有機半導体材料が得られることが報告されているが、その溶解度は実用上十分なものとはいえない上、導電性材料としての知見はない(特許文献3、4)。高分子半導体材料としては、アルキル基を導入したチオフェンオリゴマーやインドロカルバゾール重合物が溶媒可溶の半導体材料となることが知られているが、その溶解度は実用上十分なものとはいえない上、導電性材料としての知見はない(特許文献5、6、非特許文献1)。
このような状況の中で、高い溶媒可溶性を有する電子デバイス用有機導電性材料の開発が切望されていた。本発明の目的は、有機エレクトロニクス分野において、高い導電性と溶剤溶解性を有する電子デバイス用有機導電性材料を提供することにある。
本発明者らは、従来技術が抱えている上述の課題を解決すべく鋭意検討した結果、6,12−ジアリールインドロ[3,2−b]カルバゾール誘導体を含有する材料が高い溶剤溶解性を有しており、これに電子受容性化合物をドーピングすると高い導電性を発現できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で示される6,12−ジアリールインドロ[3,2−b]カルバゾール誘導体に電子受容性物質をドーピングした材料を含有することを特徴とする電子デバイス用有機導電性材料である。
但し、Arは、それぞれ独立に、置換基を有しても良い炭素数3〜20のアリール基を示す。R1は、それぞれ独立に、水素、アルキル基、アルケニル基、アシル基、スルホニル基又は置換基を有しても良い炭素数3〜20のアリール基を示す。R2は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、水酸基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、ニトロ基、シアノ基、スルホニル基、置換若しくは無置換のアミノ基又は置換基を有しても良い炭素数3〜20のアリール基を示す。
一般式(1)において、R1が水素、アルキル基又は置換基を有しても良い炭素数3〜20のアリール基であること、又は電子受容性物質が、ハロゲン、プロトン酸、高分子プロトン酸、ルイス酸、遷移金属塩、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、クロラニル及び酸素からなる群れから選ばれる少なくとも1種であることは、本発明の好ましい態様である。
本発明によれば、高い導電性と、高い溶剤溶解性を有する電子デバイス用有機導電性材料を提供することができる。本発明の電子デバイス用有機導電性材料は、有機半導体レーザー、有機トランジスタ、有機発光ダイオード、エレクトロルミネッセンス、有機太陽電池、光ディスクメモリ、帯電防止剤、電磁波吸収シールド、化学センサー、表示素子、非線形材料、導電性接着剤、透明導電膜、配線等の導電性を要求される用途に適する。
本発明の電子デバイス用有機導電性材料は、上記一般式(1)で示される6,12−ジアリールインドロ[3,2−b]カルバゾール誘導体に電子受容性物質(電子受容性化合物又は電子受容性原子)をドーピングした材料を含有する。
一般式(1)において、6,12−位のArは、それぞれ独立に、置換基を有しても良い炭素数3〜20のアリール基を示す。なお、本明細書において、アリール基はヘテロアリール基を含む意味で使用される。
上記Ar又はアリール基としては、炭素数6〜20、好ましくは6〜12の炭素環式芳香族基又は炭素数3〜20、好ましくは4〜12の複素環式芳香族基がある。そして、これら炭素環式芳香族基又は複素環式芳香族基は置換基を有しても良く、炭素数の計算には置換基を含める。複素環式芳香族基の場合、環を構成するヘテロ原子として窒素、硫黄、酸素等がある。
炭素環式芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アントラニル基、ターフェニリル基、フェナントリル基、フルオレニル基、クリセニル基、ピレニル基、ペリレニル基、コロネニル基等が例示できる。
複素環式芳香族基としては、フリル基、ベンゾフリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、チエノチエニル基、キノリル基、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、プリル基、イソキノリル基、ナフチリジル基、キノキサリル基、キナゾリル基、プテリジル基、カルバゾリル基、フェナンスリジル基、アクリジル基、ペリミジル基、フェナンスロリル基、フェナジニル基、インドリル基、ピロリル基等が例示できる。
これらのアリール基が有することができる置換基としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、水酸基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルコキシアルキル基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアミノ基を例示できる。置換基を有するアミノ基としてはアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、芳香族置換アミノ基が挙げられる。例えば、C1〜C20のアルキル基を有するアルキルアミノ基、C1〜C20のジアルキルアミノ基が例示できる。芳香族置換アミノ基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、フルオレニル基、クリセニル基、ピレニル基、トリフェニレリル基、ペリレニル基、コロネニル基、フリル基、ベンゾフリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、チエノチエニル基、キノリル基、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、プリル基、イソキノリル基、ナフチリジル基、キノキサリル基、キナゾリル基、プテリジル基、カルバゾリル基、フェナンスリジル基、アクリジル基、ペリミジル基、フェナンスロリル基、フェナジニル基、インドリル基、ピロリル基等を置換基とする芳香族置換アミノ基を例示できる。ここで、炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基又はジアルキルアミノ基において、アルキル又はアルコキシの好ましい炭素数は1〜6である。
Arの好ましい例を挙げると、フェニル基又は置換フェニル基があり、置換フェニル基の場合、置換基の好ましい例としてはアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アミノ基又はアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基がある。ここで、置換基の炭素数は1〜4であることが好ましい(非置換アミノ基を除く)。
上記一般式(1)中の5,11-位のR1は、それぞれ独立に、水素、アルキル基、アルケニル基、アシル基、スルホニル基又は置換基を有しても良い炭素数3〜20のアリール基を示す。
アルキル基としては炭素数1〜20、好ましくは1〜14のアルキル基が挙げられ、アルケニル基としては炭素数1〜20、好ましくは1〜4のアルケニル基が挙げられる。アシル基としては、炭素数1〜20、好ましくは1〜10のアシル基が挙げられ、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、n−ブチリル基、イソブチリル基、sec-ブチリル基、ベンゾイル基、ナフチロイル基、キノリルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等が挙げられる。スルホニル基としては炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキルスルホニル基やベンゼンスルホニル、トルエンスルホニル等の芳香族スルホニル基を用いることができる。
置換基を有しても良いアリール基としては、上記Arでの説明したと同様なのアリール基がある。すなわち、置換基を有しても良い炭素数6〜20の炭素環式芳香族基、又は炭素と窒素及び硫黄及び酸素等のヘテロ原子から構成される置換基を有しても良い炭素数3〜20の複素環式芳香族基がある。炭素環式芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、フルオレニル基、クリセニル基、ピレニル基、トリフェニレリル基、ペリレニル基、コロネニル基等が例示できる。また、複素環式芳香族基としては、フリル基、ベンゾフリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、チエノチエニル基、キノリル基、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、プリル基、イソキノリル基、ナフチリジル基、キノキサリル基、キナゾリル基、プテリジル基、カルバゾリル基、フェナンスリジル基、アクリジル基、ペリミジル基、フェナンスロリル基、フェナジニル基、インドリル基、ピロリル基、トリアジニル基等が例示できる。置換基を有しても良いアリール基が有することができる置換基としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、水酸基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルコキシアルキル基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアミノ基を例示できる。置換基を有するアミノ基としてはアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、芳香族置換アミノ基があげられる。例えば、C1〜C20のアルキル基を有するアルキルアミノ基、C1〜C20のジアルキルアミノ基が例示できる。芳香族置換アミノ基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、フルオレニル基、クリセニル基、ピレニル基、トリフェニレリル基、ペリレニル基、コロネニル基、フリル基、ベンゾフリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、チエノチエニル基、キノリル基、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、プリル基、イソキノリル基、ナフチリジル基、キノキサリル基、キナゾリル基、プテリジル基、カルバゾリル基、フェナンスリジル基、アクリジル基、ペリミジル基、フェナンスロリル基、フェナジニル基、インドリル基、ピロリル基等を置換基とする芳香族置換アミノ基を例示できる。
上記一般式(1)中のR2は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、水酸基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、ニトロ基、シアノ基、スルホニル基、置換若しくは無置換のアミノ基、置換基を有しても良い炭素数3〜20のアリール基を示す。
ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子が挙げられる。アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アシル基、スルホニル基としては、上記R1で説明したと同様のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アシル基、スルホニル基が挙げられる。アミド基としては、アミノカルボニル、メチルアミノカルボニル、ジメチルアミノカルボニル、エチルアミノカルボニル、ジエチルアミノカルボニル、フェニルアミノカルボニル、ジフェニルアミノカルボニル等が挙げられる。置換基を有しても良いアリール基としては、上記Ar又はR1で説明したと同様な置換基を有しても良いアリール基が挙げられる。
一般式(1)で示される6,12−ジアリールインドロ[3,2−b]カルバゾール誘導体の好ましい具体例を表1に示す。表1中、Ar、R1、R2は一般式(1)のAr、R1、R2を意味する。
上記一般式(1)で表される6,12−ジアリールインドロ[3,2−b]カルバゾール誘導体は、例えば、EP908787号公報、Tetrahedron, vol51, No43, pp11801-11808(1995)又はTetrahedron, vol55, No43, pp12577-12594(1999)に記載されている方法を利用して合成することができる。
すなわち、置換又は無置換のインドールを適当な溶媒に溶解し、適当な酸を添加してアルデヒド(Ar-CHO)と適当な反応温度で一定時間縮合並びに脱水素反応を行うことにより5、11位に置換基を有しない6,12−ジアリールインドロ[3,2−b]カルバゾール誘導体を得ることができる。その後、必要に応じて5、11位に対する官能基修飾を行う事により所望の化合物を得ることができる。また、N置換インドールとアルデヒド(Ar−CHO)の縮合反応を行うことにより、一段で目的物を得ることも可能である。
このような方法により得られた6,12−ジアリールインドロ[3,2−b]カルバゾール誘導体は、6,12−位にアリール置換基を有することで、種々の溶媒に対して高い溶解性を示す。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルイミダゾリジノン等のアミド系非プロトン性溶媒、酢酸エチル、安息香酸メチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、ブチロニトトリル、アジポニトリル等のニトリル系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒、ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ系溶媒、水等に対して高い溶解性を示す。これらの溶媒に溶解することにより6,12−ジアリールインドロ[3,2−b]カルバゾール誘導体の溶液を得ることができる。
6,12−ジアリールインドロ[3,2−b]カルバゾール誘導体を高い導電性を有する電子デバイス材料として使用するために、必要に応じて所望の形態、例えば、錠剤、フィルム、薄膜等に成型を行うことができる。錠剤を得ようとする場合は、6,12−ジアリールインドロ[3,2−b]カルバゾール誘導体の粉末を金型に充填した後、加圧成型することによって得ることができる。特にフィルムや薄膜を得ようとする場合は、6,12−ジアリールインドロ[3,2−b]カルバゾール誘導体を溶媒に溶解した後、この溶液をガラス板等にキャストやスピンコートした後、乾燥により溶媒を除去することにより得ることが有利にできる。
6,12−ジアリールインドロ[3,2−b]カルバゾール誘導体は、有機低分子化合物としては比較的高い導電性を有しているが、電子デバイス用の導電性材料として要求される導電性を与えるために、電子受容性物質をドーピングしてその導電性を向上させる。以下、電子受容性物質を電子受容性化合物又は電子受容体ともいう。
ドーピングに使用する電子受容性物質としては、臭素、ヨウ素等のハロゲン類、PF5、AsF5、SbF5、BF3、BCl3、SO3、GaCl3、NbF5、TaF5、MoF5、WF5,RuF5,BiF5,TiCl4,ZrCl4,HfCl4,NbCl5,TaCl5,MoCl5,FeCl3,MoCl3、WCl5、SnCl4、TeCl4、SeCl4、FeBr3、TaBr3、TeI4、TaI5、SnI5、AuCl3等のルイス酸、AgClO4、AgBF4、H2IrCl6、Ce(NO3)3、Dy(NO3)3、La(NO3)3、Pr(NO3)3、Sm(NO3)3、Yb(NO3)3等の遷移金属塩、塩化水素、硫酸、硝酸、過塩素酸、テトラフルオロホウ酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のプロトン酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、クロラニル、酸素、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリブタジエンスルホン酸、ポリヒドロキシエーテルスルホン酸等の高分子系プロトン酸等が例示できる。
6,12−ジアリールインドロ[3,2−b]カルバゾール誘導体に上述の電子受容性物質をドーピングする方法としては、気相及び液相でドーピングを行うことができる。例えば、気相で実施する場合、6,12−ジアリールインドロ[3,2−b]カルバゾール誘導体を所望の電子受容性物質のガス中に曝すことによって実施できる。液相で実施する場合、所望の電子受容性化合物を適当な溶媒で溶解することにより電子受容性物質溶液を調製し、この溶液に6,12−ジアリールインドロ[3,2−b]カルバゾール誘導体を溶解または浸漬することにより実施することができる。このような処理により、電子受容体が、6,12−ジアリールインドロ[3,2−b]カルバゾール誘導体の電子を受け取りドーピングが行われ、有機導電性材料を得ることができる。
6,12−ジアリールインドロ[3,2−b]カルバゾール誘導体に対する電子受容体のドープ率を高くすることにより、高い導電率を有する有機導電性材料を得ることができる。そのドープ率は、ドープする電子受容体の種類によっても異なるが、6,12−ジアリールインドロ[3,2−b]カルバゾール誘導体に対して1wt%〜500wt%であり、好ましくは、10wt%〜300wt%である。
6,12−ジアリールインドロ[3,2−b]カルバゾール誘導体に電子受容性化合物をドーピングして得られた材料(本材料)は、電子デバイス用の導電性材料として使用される。なお、ドーピングして得られた材料には、必要により着色剤、接着剤、充填剤等を配合することもできる。
本発明の電子デバイス用有機導電性材料は、有機半導体レーザー、有機トランジスタ、有機発光ダイオード、エレクトロルミネッセンス、有機太陽電池、光ディスクメモリ、帯電防止剤、電磁波吸収シールド、化学センサー、表示素子、非線形材料、導電性接着剤、透明導電膜、配線等に使用することができる。本発明の電子デバイス用有機導電性材料を、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂に混合した後、所望の形態に成型したものを、導電性を生かした用途、例えば、導電性樹脂シート、帯電防止剤、電磁波シールド等に使用することが可能となる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリメタクリレート等の透明フィルムに本材料の溶液をキャストすることにより、透明フィルムの表面に導電性を付与した透明導電膜を得ることができる。
次に、合成例、実施例によって更に詳しく説明するが、本発明は、以下の実施例の記載に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能なものである。
合成した化合物の分析データについては特にことわらない限り、次による。1H−NMRは日本電子(株)製JNM−LA400(400MHz)を使用した。マススペクトルは日本電子(株)製JMS−AX505HAを使用した。導電率測定は、三菱化学製ロレスター計 MCP−T610(4端子法:電極間距離1.5mm)で測定した。
実施例1
500mlの3つ口フラスコに、インドール11.7g(0.1mol)とベンズアルデヒド10.6g(0.1mol)、メタノール200gを室温で装入した後、撹拌しながら、硫酸15.0g(0.15mol)を15分かけて滴下した。3時間加熱還流した。室温まで冷却し、生成した沈殿をろ別した。この沈殿を酢酸エチル100gで洗浄した後、残渣を50℃で減圧乾燥することにより6,12−ジフェニル−5,6,11,12−4H−インドロ[3,2-b]カルバゾール7.4gを得た。
1H−NMR(DMSO−d6)δ(ppm):10.69(2H、brs)、7.33(4H,d、J=7Hz)、7.27(4H,t,J=7Hz)、7.23(2H,d,J=7Hz)、7.18(2H,t,J=7Hz)、7.07(2H,d,J=8)、6.94(2H,dt,J=1,8Hz)、6.78(2H,dt,J=1,8Hz)、5.69(2H,s)
FD−MS(M/z):410(M+)
500mlの3つ口フラスコに、インドール11.7g(0.1mol)とベンズアルデヒド10.6g(0.1mol)、メタノール200gを室温で装入した後、撹拌しながら、硫酸15.0g(0.15mol)を15分かけて滴下した。3時間加熱還流した。室温まで冷却し、生成した沈殿をろ別した。この沈殿を酢酸エチル100gで洗浄した後、残渣を50℃で減圧乾燥することにより6,12−ジフェニル−5,6,11,12−4H−インドロ[3,2-b]カルバゾール7.4gを得た。
1H−NMR(DMSO−d6)δ(ppm):10.69(2H、brs)、7.33(4H,d、J=7Hz)、7.27(4H,t,J=7Hz)、7.23(2H,d,J=7Hz)、7.18(2H,t,J=7Hz)、7.07(2H,d,J=8)、6.94(2H,dt,J=1,8Hz)、6.78(2H,dt,J=1,8Hz)、5.69(2H,s)
FD−MS(M/z):410(M+)
得られた6,12−ジフェニル−5,6,11,12−4H−インドロ[3,2-b]カルバゾール3.3g(8.0mmol)、クロラニル2.07g(8.43mmol)をキシレン66gにけん濁し、オイルバスにて5時間加熱還流し、脱水素した。室温まで冷却後、反応混液をろ過し、得られた沈殿をメタノール50gで洗浄した。得られた残渣を50℃で減圧乾燥して目的化合物である6,12−ジフェニル―インドロ[3,2-b]カルバゾールを2.73g得た。この化合物の室温でのアセトンに対する溶解度は、3.4wt%であった。
1H−NMR(DMSO−d6)δ(ppm):10.61(2H,brs)、7.43(4H,d,J=7Hz)、7.15−7.34(8H,m)、7.05(2H,d,J=8Hz)、7.05(2H,d,J=8Hz)、6.93(2H,t,J=8Hz)、6.80(2H,t,J=8Hz)
FD−MS(M/z):408(M+)
1H−NMR(DMSO−d6)δ(ppm):10.61(2H,brs)、7.43(4H,d,J=7Hz)、7.15−7.34(8H,m)、7.05(2H,d,J=8Hz)、7.05(2H,d,J=8Hz)、6.93(2H,t,J=8Hz)、6.80(2H,t,J=8Hz)
FD−MS(M/z):408(M+)
ここで得た6,12−ジフェニル−インドロ[3,2-b]カルバゾールの粉末2.5gをシャーレに入れ、ヨウ素の入ったデシケータ内で静置することによりヨウ素ドーピングを行った。一日後、粉末の重量は4.8gであったことからドープ量が2.3g、ドープ率が6,12−ジフェニル−インドロ[3,2-b]カルバゾールに対して92wt%であることがわかった。ヨウ素ドーピングを行った粉末を錠剤成型器で加圧成型することにより錠剤を作成し直流四端子法にて導電率を測定したところ、2.3×10-2S/cmであった。錠剤を乳鉢で粉砕して得られた粉末のアセトンに対する溶解度は、8.6wt%であった。
実施例2
100mlの3つ口フラスコに、水素化ナトリウム0.68g(17.7mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド10mlを室温で装入し、窒素雰囲気下10分撹拌した。得られた懸濁液に実施例1で合成した6,12−ジフェニル−インドロ[3,2-b]カルバゾール3.02g(7.35mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド40ml溶液を3分かけて滴下した。滴下終了後、室温で30分撹拌し、得られた溶液にn−オクチルブロミド3.41g(17.7mmol)を装入した。オイルバスにて槽内温度を50℃まで昇温、62時間反応した。室温まで冷却し、水35mlを加えて30分攪拌した。反応液をろ別し、ろ紙上の固体を水90gで洗浄し、次いでヘキサン15gで洗浄した。洗浄後の固体を60℃で減圧乾燥させて目的の化合物である6,12−ジフェニル−5,11−オクチル−インドロ[3,2-b]カルバゾールを1.59gを得た。この化合物の室温でのアセトンに対する溶解度は、7.8wt%であった。
100mlの3つ口フラスコに、水素化ナトリウム0.68g(17.7mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド10mlを室温で装入し、窒素雰囲気下10分撹拌した。得られた懸濁液に実施例1で合成した6,12−ジフェニル−インドロ[3,2-b]カルバゾール3.02g(7.35mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド40ml溶液を3分かけて滴下した。滴下終了後、室温で30分撹拌し、得られた溶液にn−オクチルブロミド3.41g(17.7mmol)を装入した。オイルバスにて槽内温度を50℃まで昇温、62時間反応した。室温まで冷却し、水35mlを加えて30分攪拌した。反応液をろ別し、ろ紙上の固体を水90gで洗浄し、次いでヘキサン15gで洗浄した。洗浄後の固体を60℃で減圧乾燥させて目的の化合物である6,12−ジフェニル−5,11−オクチル−インドロ[3,2-b]カルバゾールを1.59gを得た。この化合物の室温でのアセトンに対する溶解度は、7.8wt%であった。
1H−NMR(DMSO−d6)δ(ppm):7.70−7.65(10H,m)、7.40(2H,d,J=8Hz)、7.29(2H,t,J=8Hz)、6.75(2H,t,J=8Hz)、6.34(2H,d,J=8Hz)、3.78(4H,t,J=8Hz)、1.40−0.83(30H,m)
FD−MS(M/z):633(M+)
FD−MS(M/z):633(M+)
ここで得た6,12−ジフェニル−5,11−オクチル−インドロ[3,2-b]カルバゾールの粉末1.5gをシャーレに入れ、ヨウ素の入ったデシケータ内で静置することによりヨウ素ドーピングを行った。一日後、粉末の重量は2.25gであったことからドープ量0.75g、ドープ率が6,12−ジフェニル5,11−オクチル−インドロ[3,2-b]カルバゾールに対して50wt%であることがわかった。ヨウ素ドーピングを行った粉末を錠剤成型器で加圧成型することにより錠剤を作成し直流四端子法にて導電率を測定したところ、7.1×10-2S/cmであった。また、この錠剤を乳鉢で粉砕して得られる粉末のアセトンに対する溶解度は、12wt%であった。
実施例3
実施例1に記載の方法において、ベンズアルデヒドを3−ニトロベンズアルデヒドに代えて、6,12−ビス−(3―ニトロフェニル)―インドロ[3,2-b]カルバゾールを合成した。
次に、100mlのフラスコに6,12−ビス−(3―ニトロフェニル)―インドロ[3,2-b]カルバゾール3.40g(6.82mol)とPd/c0.35g、N,N−ジメチルホルムアミド55gを室温下で順次装入・撹拌し、系内を水素で置換し、撹拌した。3日後、原料消失を確認した後、反応混合物を吸引ろ過した。ろ液を濃縮して得られた固体にエチレングリコールジメチルエーテル15gを加えて、槽内温度70℃まで加熱した。得られた溶液を冷却し、析出した固体を吸引ろ過した。得られた固体を60℃で減圧乾燥し目的の化合物である6,12−ビス−(3−アミノフェニル)―インドロ[3,2-b]カルバゾールを1.98g得た。この化合物の室温でのアセトンに対する溶解度は、5.6wt%であった。
1H−NMR(DMSO−d6)δ(ppm):10.38(2H,brs)、7.45(2H,d,J=8Hz)、7.33(2H,t,J=8Hz)、7.26−7.20(4H,m)、6.86−6.76(8H,m)、5.28(4H,bs)
FD−MS(M/z):438(M+)
実施例1に記載の方法において、ベンズアルデヒドを3−ニトロベンズアルデヒドに代えて、6,12−ビス−(3―ニトロフェニル)―インドロ[3,2-b]カルバゾールを合成した。
次に、100mlのフラスコに6,12−ビス−(3―ニトロフェニル)―インドロ[3,2-b]カルバゾール3.40g(6.82mol)とPd/c0.35g、N,N−ジメチルホルムアミド55gを室温下で順次装入・撹拌し、系内を水素で置換し、撹拌した。3日後、原料消失を確認した後、反応混合物を吸引ろ過した。ろ液を濃縮して得られた固体にエチレングリコールジメチルエーテル15gを加えて、槽内温度70℃まで加熱した。得られた溶液を冷却し、析出した固体を吸引ろ過した。得られた固体を60℃で減圧乾燥し目的の化合物である6,12−ビス−(3−アミノフェニル)―インドロ[3,2-b]カルバゾールを1.98g得た。この化合物の室温でのアセトンに対する溶解度は、5.6wt%であった。
1H−NMR(DMSO−d6)δ(ppm):10.38(2H,brs)、7.45(2H,d,J=8Hz)、7.33(2H,t,J=8Hz)、7.26−7.20(4H,m)、6.86−6.76(8H,m)、5.28(4H,bs)
FD−MS(M/z):438(M+)
ここで得た6,12−ビス−(3−アミノフェニル)―インドロ[3,2-b]カルバゾールの粉末1.5gをシャーレに入れ、ヨウ素の入ったデシケータ内で静置することによりヨウ素ドーピングを行った。一日後、粉末の重量は2.8gであったことからドープ量1.3g、ドープ率が6,12−ビス−(3−アミノフェニル)―インドロ[3,2-b]カルバゾールに対して87wt%であることがわかった。ヨウ素ドーピングを行った粉末を錠剤成型器で加圧成型することにより錠剤を作成し、直流四端子法にて導電率を測定したところ、7.8×10-2S/cmであった。錠剤を乳鉢で粉砕して得られる粉末のアセトンに対する溶解度は、10.5wt%であった。
比較例1
Arch.Pharm.(Weinheim),320,pp280−282,(1987)記載の方法にて5,6,11,12−4H-インドロ[3,2−b]カルバゾールを合成した。この化合物のアセトンに対する溶解度は、0.002wt%であり、実施例1で得た6,12位にフェニル基を有する化合物と比較してはるかに低いものであった。また、この化合物をシャーレに入れ、ヨウ素の入ったデシケータ内で一日静置した。ヨウ素処理したものを、錠剤成型器で加圧成型することにより錠剤を作成し直流四端子法にて導電率を測定したところ、8.8×10-7S/cmであった。
Arch.Pharm.(Weinheim),320,pp280−282,(1987)記載の方法にて5,6,11,12−4H-インドロ[3,2−b]カルバゾールを合成した。この化合物のアセトンに対する溶解度は、0.002wt%であり、実施例1で得た6,12位にフェニル基を有する化合物と比較してはるかに低いものであった。また、この化合物をシャーレに入れ、ヨウ素の入ったデシケータ内で一日静置した。ヨウ素処理したものを、錠剤成型器で加圧成型することにより錠剤を作成し直流四端子法にて導電率を測定したところ、8.8×10-7S/cmであった。
実施例、比較例から、6,12−位にアリール置換基を有するインドロ[3,2-b]カルバゾール誘導体は、高い溶剤溶解性を有し、更に電子受容性化合物をドーピングすることで、高い導電性を示すことがわかる。
Claims (3)
- 下記一般式(1)で示される6,12−ジアリールインドロ[3,2−b]カルバゾール誘導体に電子受容性物質をドーピングした材料を含有することを特徴とする電子デバイス用有機導電性材料。
- 一般式(1)において、R1が水素、アルキル基又は置換基を有しても良い炭素数3〜20のアリール基である請求項1記載の電子デバイス用有機導電性材料。
- 電子受容性物質が、ハロゲン、プロトン酸、高分子プロトン酸、ルイス酸、遷移金属塩、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、クロラニル又は酸素から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2記載の電子デバイス用有機導電性材料。
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