JP2009216145A - 無段変速機用ベルト - Google Patents

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Abstract

【課題】ベルトの動力伝達効率の低下を抑制し、かつ、エレメントの耐久性を向上することのできる無段変速機用ベルトを提供する。
【解決手段】厚さ方向に配列された複数のエレメント6と、複数のエレメント6を環状に配列された状態で支持する環状のリングとを有し、エレメント6は相対的な厚さが厚い部分7Aと薄い部分7Bとを有し、エレメントの厚さ方向における一方の面には、厚い部分7Aと薄い部分7Bとを接続し、かつ、配列方向で隣り合うエレメント6同士が接触して相対回転する時の支点となるロッキングエッジ22が形成されているとともに、エレメント6に、リングが接触するサドル面14が形成されている、無段変速機用ベルトにおいて、ロッキングエッジ22が円弧で構成されており、ロッキングエッジ22の円弧の曲率半径は、厚い部分7Aに近い領域30の曲率半径r1が、薄い部分7Bに近い領域31の曲率半径r2よりも小さい。
【選択図】図1

Description

この発明は、駆動プーリおよび従動プーリに巻き掛けられ、その駆動プーリと従動プーリとの間でトルクを伝達する、無段変速機用ベルトに関するものである。
車両用の無段変速機に用いられるベルトとして、ブロックもしくはエレメントと称される板状の金属片を複数個用意し、これらのエレメントを厚さ方向に環状に配列し、それらのエレメントを、リングもしくはフープと称される金属製の帯状材によって支持して、ベルトを構成したものが知られている。この種のベルトは、互いに接触して配列されているエレメント同士の押圧力によってトルクを伝達するように構成されている。そして、駆動プーリの巻き掛け溝に挟み込まれたエレメントが、そのプーリが回転することによりその巻き掛け溝から順次押し出されて先行するエレメントを押圧し、こうして前進させられるエレメントが従動プーリにおける巻き掛け溝に進入することにより、エレメントの進行に伴って従動プーリにトルクが伝達される。
このようなベルトの一例が特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載された無段変速機のベルトは、左右両側面をプーリに接触させてそのプーリに挟み込まれるエレメントに相当する横断素子を、リングに相当するバンド・パッケージによって結束して構成されている。このバンド・パッケージは、環状のバンドを内外に複数積層して構成されている。また、板状の横断素子は、プーリに挟み付けられかつバンド・パッケージが巻き掛けられる第1の部分と、その第1の部分の幅方向での中央部に上方に向けて突出した状態に形成された第2の部分と、その第2の部分の上端部に左右方向に延びて形成された第3の部分とを備えている。すなわち第1の部分は、リングを巻き掛けるサドル面を備えたいわゆる本体部に相当し、また第2の部分は、サドル面の上方に突出したいわゆる首部に相当し、さらに第3の部分は、サドル面の上方を一部覆ういわゆる抜け止め部に相当している。そして、各横断素子の本体部と抜け止め部との間には窪みが形成されており、その窪みにバンド・パッケージが配置されて、そのバンド・パッケージがサドル面に接触する。
また、エレメントの厚さ方向における一方の面、つまり、ベルトの移動方向で前側の面には、ベルトの幅方向に沿って傾斜ラインが形成されている。具体的には、本体部の厚さを先細り形状としてあり、相対的に厚い部分と相対的に薄い部分との接続領域に、傾斜ラインが形成されている。この傾斜ラインは、例えば、曲率半径6ミリメートルの縁によりいくらか丸みを付けたストリップにより形成されている。この傾斜ラインは、隣の横断素子の後ろ側の面と接触している。そして、ベルトのうち、プーリに接触していない部分がプーリに接触して円弧形状に回転するとき、およびプーリに接触している部分がプーリから離れる時には、隣り合う横断素子同士が傾斜ラインを支点として相対回転する。より具体的には、接触位置の変化が連続的に生じ、かつ、接触範囲が相対的に狭い範囲に限定される、いわゆる「ヘルツ接触」となる。
特開2002−39280号公報
上記の特許文献1に記載された駆動ベルトにおいては、隣り合うエレメント同士が傾斜ラインを支点として相対回転する際に、サドル面とバンド・パッケージの内周面との間に滑りが生じて、動力の伝達効率が低下する可能性がある。ここで、前記の傾斜ラインを構成する円弧形状の曲率半径を相対的に小さくして、サドル面とバンド・パッケージとの滑り量を低減し、動力の伝達効率の低下を抑制することも考えられる。しかしながら、傾斜ラインの曲率半径を相対的に小さくすると、エレメント同士がヘルツ接触する部分の面圧(単位面積あたりの面圧)が相対的に高くなり、エレメントの耐久性が低下する可能性があった。特に、無段変速機のプーリ同士の間における変速比が相対的に大きい場合、ベルトにより伝達されるトルクが相対的に高く、エレメントに加わる押圧力が相対的に高いため、エレメント同士の接触部分の面圧が一層増加する傾向にあった。このため、現状では傾斜ラインの曲率半径を相対的に小さくすることが困難であった。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、ベルトにおける動力の伝達効率の低下を抑制でき、かつ、エレメントの耐久性の低下を抑制することの可能な、無段変速機用ベルトを提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、複数個が姿勢を揃えて厚さ方向に配列された板状のエレメントと、複数のエレメントを環状に配列された状態で支持する環状のリングとを有し、このエレメントは相対的な厚さが厚い部分と薄い部分とを有し、前記エレメントの厚さ方向における一方の面には、前記厚い部分と前記薄い部分とを接続し、かつ、前記配列方向で隣り合うエレメント同士が接触して相対回転する時の支点となるロッキングエッジが形成されているとともに、前記エレメントに、前記リングが接触するサドル面が形成されている、無段変速機用ベルトにおいて、前記ロッキングエッジが円弧で構成されており、このロッキングエッジの円弧の曲率半径は、前記厚い部分に近い領域の曲率半径が、前記薄い部分に近い領域の曲率半径よりも小さいことを特徴とするものである。
請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、前記ロッキングエッジを構成する円弧の曲率半径が連続的に変化していることを特徴とするものである。
請求項3の発明は、請求項1の構成に加えて、前記ロッキングエッジを構成する円弧は、曲率半径が異なる複数の円弧を接続して形成されており、この複数の円弧の接続部分の接線が一致していることを特徴とするものである。
請求項1に係る発明によれば、環状に配列された複数のエレメントのうち、配列方向で隣り合うエレメント同士がロッキングエッジを支点として相対回転する過程で、エレメントの厚さ方向の平面内で、サドル面とエレメント同士の接触点との間の距離が相対的に短くなる。その結果、エレメント同士の接触点と、サドル面とリングとの接触面とを結ぶモーメントの腕の長さが相対的に短くなり、サドル面とリングとの摺動により生じる動力損失の増加を抑制できる。したがって、ベルトの動力伝達効率の低下を抑制できる。また、エレメント同士の接触面積が相対的に狭められることを抑制でき、エレメント同士の接触面圧が増加することを抑制でき、エレメントの耐久性の低下を抑制できる。
また、請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる。さらに、請求項3の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、エレメント同士の相対回転が円滑におこなわれる。
つぎに、この発明をより具体的に説明する。先ず、この発明で対象とするベルトについて説明すると、この発明で対象とするベルトは、無段変速機に使用されるものであり、複数のプーリの外周部に形成された断面V字状の巻き掛け溝の内部にベルトが挟み込まれる。その結果、プーリとベルトとの間で摩擦力により動力が伝達され、一方のプーリのトルクが他方のプーリに伝達される。この発明において、エレメントの姿勢が揃えられているということの技術的意味には、リングの半径方向における基部と首部との位置関係が同じであること、ロッキングエッジが同じ方向を向いていること、などが含まれる。
この発明において、エレメントの厚さ方向に沿った平面内で、前記エレメントが、相対的に厚い部分と薄い部分とを有している。具体的には、複数のエレメントを環状に配列してベルトを組み立てた場合に、ベルトの半径方向で、外側に相対的に厚い部分が形成され、内側に相対的に薄い部分が形成されている。また、この発明におけるリングは、複数のエレメントを積層した環状体の形状を保持するための形態保持要素である。この発明におけるリングは、単一部品により構成されていてもよいし、複数の帯状材を内外に積層したものであってもよい。また、この発明におけるサドル面は、前記エレメントの厚さ方向に沿って形成されている。
この発明で対象とする無段変速機、つまり、ベルト式無段変速機の一例を図2に模式的に示してある。ベルト式無段変速機は、例えば、車両の動力源から車輪に至る動力伝達経路に配置される。このベルト式無段変速機は、駆動プーリ2および従動プーリ3を有しており、その駆動プーリ2および従動プーリ3にベルト1が巻き掛けられている。具体的には、動力源から車輪に至る動力の伝達方向で、上流に駆動プーリ2が配置され、下流に従動プーリ3が配置されている。駆動プーリ2は、第1軸線(図示せず)を中心として回転可能に支持され、従動プーリ3は第2軸線(図示せず)を中心として回転可能に支持されている。第1軸線および第2軸線は、略水平に、かつ相互に平行に配置されている。つまり、図2は、2つの軸線に沿った方向における平面図である。
まず、駆動プーリ2は、テーパ面を備えた固定シーブ(固定片)と、テーパ面を備えた可動シーブ(可動片)とを対向させて配置することにより、駆動プーリ2のシーブの間に断面V字状の巻き掛け溝4が形成されている。また、従動プーリ3は、テーパ面を備えた固定シーブ(固定片)と、テーパ面を備えた可動シーブ(可動片)とを対向させて配置することにより、従動プーリ3のシーブの間に断面V字状の巻き掛け溝4が形成されている。そして、駆動プーリ2の可動シーブを、油圧シリンダなどのアクチュエータ5によって固定シーブに対して前後動させることにより、駆動プーリ2におけるベルト1の巻き掛け半径を変化させるように構成されている。一方、従動プーリ3の可動シーブを、油圧シリンダなどのアクチュエータ5によって固定シーブに対して前後動させることにより、従動プーリ3からベルト1に加えられる挟圧力を変化させるように構成されている。
この発明で対象とするベルト1は、全体として環状をなし、かつ両側面がV字状もしくはテーパ状をなすように構成されている。また、ベルト1は、多数のエレメント6を厚さ方向に積層し、積層されたエレメント6同士をリング8で支持、または結束することにより、全体として環状のベルト1を構成している。リング8は、可撓性の金属材料を環状に成形して構成されている。
(第1実施例)
上記の図2に示すベルト1を構成しているエレメント6の第1実施例を図1に示してある。この図1は、ベルト1の回転方向に対して略垂直な平面内におけるエレメントの正面図である。このエレメント6は板形状の金属片であり、同一の形状および寸法のエレメント6が、厚さ方向に多数個を積層して配置される。各エレメント6は、基部7と、この基部7に連続して形成された首部9と、首部9に連続して形成された抜け止め部10とを有している。前記ベルト1の半径方向、つまり、ベルト1の内外に沿った方向で、最も内側に基部7が形成され、その基部7の外側に首部9が形成され、首部9の外側に抜け止め部10が形成されている。また、ベルト1の幅方向で、基部7の略中央に首部9が形成されている。この基部7は、ベルト1の外側から内側に向けて幅が狭くなる向きで傾斜されており、その基部7の幅方向の両端に傾斜面11が形成されている。そして、ベルト1が駆動プーリ2および従動プーリ3に巻き掛けられると、エレメント6の接触面11が、駆動プーリ2のテーパ面12、および、従動プーリ3のテーパ面13に接触する。
また、ベルト1の半径方向で、基部7の上端にはサドル面14が形成されている。このサドル面14は、リング8の内周面が接触する箇所であり、ベルト1の幅方向で、首部9の両側に配置されている。このサドル面14は、リング8の幅方向に沿ってほぼ平坦に構成されている。図1は前記エレメント6の構成を示す部分的な側面図である。言い換えれば、図1はエレメント6の厚さ方向に沿った平面内における側面図である。ここで、エレメント6の厚さ方向に沿った平面内で、サドル面14が略平坦に構成されている。前記リング8は2本設けられており、各リング8は環状に構成されている。リング8は、複数の帯状材15を内外に積層して構成されている。この帯状材15は、可撓性を有する材料、例えば金属材料により構成されている。上記の首部9は、前記基部7からリング8の厚さ方向に突出されている。
さらに、前記抜け止め部10は、ベルト1の幅方向に沿った平面内でほぼ三角形に構成された部分であり、その三角形の頂角がベルト1の外周に位置するように、抜け止め部10が構成されている。この抜け止め部10の頂角の両側に形成された2つの底角が、ベルト1の幅方向で首部9の外側に配置されている。つまり、抜け止め部10の幅は、首部9の幅よりも広い。そして、ベルト1の半径方向で、抜け止め部10と前記サドル面14との間に形成された空間に、リング8の幅方向の一部が配置されている。この抜け止め部10は、リング8からエレメント6が脱落することを防止するものである。
さらに、図3に示すように、エレメント6の厚さ方向で、抜け止め部10における一方の面には、エレメント6の厚さ方向に突出されたディンプル(凸部)20が形成されている。これに対して、抜け止め部10における他方の面には、エレメント6の厚さ方向の深さを有する凹部21が形成されている。前記エレメント6の幅方向における中央に、ディンプル20および凹部21が配置されている。第1実施例においては、エレメント6を正面から見てディンプル20および凹部21の形状は、共にほぼ円形に構成されており、凹部21の直径の方がディンプル20の直径よりも大きい。そして、エレメント6同士が厚さ方向に積層されると、前記ディンプル20が凹部21に挿入されて、エレメント6同士が平面方向に相対移動する範囲、もしくは量が規制される。
一方、前記エレメント6の厚さは、ベルト1の内外方向で異なる値に構成されている。具体的には、抜け止め部10および首部9は厚さがほぼ均一に構成されている。これに対して、基部7における首部9に近い領域の厚さは首部9の厚さと同じであり、これよりも首部9から遠い領域の厚さは、首部9よりも薄い。このように、基部7には、図1の上下方向に、厚い部分7Aと薄い部分7Bとが形成されている。前記エレメント6の厚さ方向、具体的には、サドル面14に沿った方向の厚さは、厚い部分7Aの方が薄い部分7Bよりも相対的に厚い。また、図1に示すように、基部7における前記凹部21が形成された方の背面32は、ほぼ平坦に構成されている。
これに対して、基部7における前記ディンプル20が形成された方の表面には、平坦面33および傾斜面34が形成されている。具体的には、厚い部分7Aに平坦面33が形成され、薄い部分7Bに傾斜面34が形成されている。なお、平坦面33は背面32とほぼ平行であり、傾斜面34は背面32に対して一定の角度で傾斜している。言い換えれば、エレメント6の下端に進むほど、エレメント6の厚さは相対的に薄くなる向きで傾斜している。そして、前記基部7における厚い部分7Aと薄い部分7Bとを接続する領域に、ロッキングエッジ22が形成されている。具体的には、平坦面33と傾斜面34とを接続する境界部分にロッキングエッジ22が形成されている。
そして、前記エレメント6の厚さ方向に沿った平面内で、ロッキングエッジ22の形状線は、ロッキングエッジ22は円弧(湾曲面)となっている。より具体的には、サドル面14に相対的に近い方、つまり、厚い部分7Aに形成された第1円弧30と、サドル面14から相対的に遠い方、つまり、薄い部分7Bに形成された第2円弧31とを有している。そして、第1円弧30の曲率半径r1と、第2円弧31の曲率半径r2とが異なる。具体的には、曲率半径r1は、曲率半径r2よりも小さく、第1円弧30と第2円弧31とが接続されてロッキングエッジ22が形成されている。このように、ロッキングエッジ22を構成する円弧の曲率が、2段階に変化している。さらに、第1円弧30と第2円弧31との接続部分が滑らかに接続されている。具体的には、第1円弧30と第2円弧31との接続部分で接線A1が一致している。つまり、接線A1は第1円弧30および第2円弧31で共通である。前記の第1円弧30が、この発明の厚い部分に近い領域に相当し、第2円弧31が、この発明の薄い部分に近い領域に相当する。
上記のベルト1を、図2に示すように駆動プーリ2および従動プーリ3に巻き掛けるとともに、動力源のトルクが駆動プーリ2に伝達されると、その駆動プーリ2の動力が摩擦力によりエレメント6に伝達される。各エレメント6同士の間では押圧力により動力が伝達され、従動プーリ3に接触しているエレメント6から、従動プーリ3に摩擦力で動力が伝達される。そして、ベルト1において、駆動プーリ2または従動プーリ3に巻き掛けられていない部分が、ベルト1の回転により駆動プーリまたは従動プーリ3に巻き掛かる過程で、図4に示すように、エレメント6同士がロッキングエッジ22を支点として相対回転し、ベルト1の半径方向で、ロッキングエッジ22よりも外側ではエレメント6同士の隙間が広くなる。一方、ベルト1において、駆動プーリ2または従動プーリ3に巻き掛かっている部分が、ベルト1の回転により駆動プーリ2または従動プーリ3から離れる過程で、リング8の張力に対応する力がエレメント6に加えられて、図4に示すように、エレメント6同士がロッキングエッジ22を支点として相対回転し、ベルト1の半径方向で、ロッキングエッジ22よりも外側ではエレメント6同士の隙間が狭くなる。このように、エレメント6同士がロッキングエッジ22を支点として回転する、つまり、ピッチング運動すると、リング8の内周面とサドル面14との接触部分で摺動が生じ、その摺動に伴って大きい摩擦力が生じる。
上記のように、エレメント6同士の隙間が広くなる方向にエレメント6が相対回転する過程で、図1に示すエレメント6同士の接触点S1は、第1円弧30から第2円弧31へ移動する。これに対して、エレメント6同士の隙間が狭くなる方向にエレメント6同士が相対回転する過程で、エレメント6同士の接触点S1は、第2円弧31から第1円弧30へ移動する。なお、駆動プーリ2または従動プーリ3における巻き掛け半径が小さいほど、エレメント6同士の相対回転角度の最大値が相対的に大きくなる。
この第1実施例では、第1円弧30の曲率半径r1の方が、第2円弧31の曲率半径r2よりも小さい。このため、エレメント6がピッチング運動するとき、図1においてベルト1の半径方向、より具体的には、サドル面14と直角な方向で、サドル面14から、ピッチング角度が最大になった時点の接触点S1までの距離L1が、相対的に短くなる。すると、エレメント6同士の接触点S1から、サドル面14とリング8との接触部分に至るモーメントの腕の長さが相対的に短くなる。したがって、リング8とサドル面14との摺動による動力損失の増加を抑制でき、ベルト1の動力伝達効率の低下を抑制できる。また、第2円弧31に接触点S1があるとき、エレメント6同士の接触面積は、第1円弧30に接触点があるときの接触面積よりも広い。したがって、接触点S1が第2円弧31にあるときの接触面圧を、接触点S1が第1円弧30にあるときの接触面圧よりも低下させることができ、エレメント6の耐久性の低下を抑制できる。
特に、駆動プーリ2と従動プーリ3との間の変速比が相対的に大きい場合、ベルト1で伝達されるトルクが相対的に高くなり、エレメント6同士の間で生じる押圧力が相対的に高くなるが、この第1実施例においては、エレメント6同士の接触点S1における面圧の増加を抑制できる。さらにまた、第1円弧30の曲率半径r1の方が、第2円弧31の曲率半径r2よりも小さいため、ロッキングエッジを構成する円弧全体を相対的に小さな曲率半径で構成する場合に比べて、第1実施例では、エレメント6がピッチング運動する角度の最大値の増加が抑制され、かつ、エレメント6同士がヘルツ接触する範囲が狭められる。したがって、エレメント6のサドル面14とリング8の内周面との滑り量の増加を抑制でき、ベルト1の動力伝達効率の低下を一層確実に抑制できる。さらに、第1円弧30と第2円弧31との接続部分の接線A1が共通であるため、第1円弧30と第2円弧31との接続部分を接触点S1が通る時に、滑らかにエレメント6同士の相対回転がおこなわれる。
つぎに、この第1実施例におけるロッキングエッジ22の変更例を説明する。これは、ロッキングエッジ22を形成する円弧の曲率半径を連続的に変化されることにより、サドル面14に相対的に近い部分と、サドル面14から相対的に遠い部分との曲率半径を異ならせるものである。つまり、ロッキングエッジ22の円弧が楕円に近似した形状となる。このロッキングエッジ22の変更例においても、前記と同様の作用効果を得られる。
(第2実施例)
つぎに、この発明におけるベルト1の第2実施例を、図5に基づいて説明する。この第2実施例におけるベルト1では、基部7の両端、具体的にはエレメント6の幅方向の両端に首部9が形成されており、その首部9にそれぞれ抜け止め部10が連続して形成されている。つまり、首部9および抜け止め部10によりフック形状が構成されている。第2実施例では、ベルト1の幅方向で、エレメント6の両端に接触面11が形成されている。また、ベルト1の幅方向において、首部9同士の間の間隔は、抜け止め部10同士の間の間隔よりも長く構成されている。このようにして、エレメント6には、首部9同士の間、および抜け止め部10同士の間に亘り、リング8を保持する凹部23が形成されている。この凹部23の底面が、基部7のサドル面14を構成している。この第2実施例では、凹部23は単数設けられており、サドル面14は単数設けられている。この凹部23に、2本のリング8が配置されている。2本のリング8は、幅方向に並べて配置されている。
さらに、第2実施例においても、基部7にロッキングエッジ22が形成されている。このロッキングエッジ22を形成する円弧は、第1実施例において図4を用いて説明した構成を有している。つまり、第1円弧30の曲率半径r1は、第2円弧r2の曲率半径r2よりも小さい。この場合、ロッキングエッジ22を構成する円弧の曲率半径を段階的に変化させる構成、または連続的に変化させる構成のいずれでもよい。さらに、ロッキングエッジ22を構成する円弧の曲率半径を段階的に変化させる構成の場合、曲率半径が異なる円弧の接続部分の接線が一致していることは、第1実施例と同じである。さらに、第2実施例では、基部7におけるロッキングエッジ22よりも下方に、それぞれディンプル20および凹部21が形成されている。このディンプル20および凹部21の構成および機能は、第1実施例と同じである。
この第2実施例では、全てのエレメント6の凹部23に2本のリング8が配置されて、多数のエレメント6が全体として環状に形態が保持される。2本のリング8は第1実施例のリング8と同様に構成されており、2本のリング8の最も内周側を構成する構成片15が、サドル面14に接触する。この第2実施例では、凹部23に2本のリング8が並べて配置され、リング8の幅方向の両端同士が接触することがある。この第2実施例においても、第1実施例と同様の原理で駆動プーリ2と従動プーリ3との間で動力伝達がおこなわれる。そして、第2実施例のエレメント6を用いたベルト1においても、図4に示すように、エレメント6同士が、ロッキングエッジ22を支点として相対回転する。そして、第2実施例でも、ロッキングエッジ22を構成する円弧の曲率半径が、第1実施例と同様に構成されているため、第1実施例と同じ効果を得られる。なお、この第2具体例において、凹部23に配置されるリング8の本数を、1本に構成することも可能であり、その場の作用効果は、リング8の本数が2本の場合と同じである。なお、図1に示されたベルト1は、第2実施例のエレメント6を用いたベルト1である。
この発明の無段変速機用ベルトに用いるエレメントの第1実施例を示す拡大側面図である。 この発明の無段変速機用ベルトを用いた無段変速機の構成を示す模式図である。 この発明のエレメントの第1実施例を示す正面図である。 この発明の無段変速機用ベルトに用いるエレメント同士が相対回転する状態を示す側面図である。 この発明の無段変速機用ベルトに用いるエレメントの第2実施例を示す正面図である。
符号の説明
1…ベルト、 6…エレメント、 7A…厚い部分、 7B…薄い部分、 8…リング、 14…サドル面、 22…ロッキングエッジ、 30…第1円弧、 31…第2円弧、 A1…接線。

Claims (3)

  1. 複数個が姿勢を揃えて厚さ方向に配列された板状のエレメントと、複数のエレメントを環状に配列された状態で支持する環状のリングとを有し、このエレメントは相対的な厚さが厚い部分と薄い部分とを有し、前記エレメントの厚さ方向における一方の面には、前記厚い部分と前記薄い部分とを接続し、かつ、前記配列方向で隣り合うエレメント同士が接触して相対回転する時の支点となるロッキングエッジが形成されているとともに、前記エレメントに、前記リングが接触するサドル面が形成されている、無段変速機用ベルトにおいて、
    前記ロッキングエッジが円弧で構成されており、このロッキングエッジの円弧の曲率半径は、前記厚い部分に近い領域の曲率半径が、前記薄い部分に近い領域の曲率半径よりも小さいことを特徴とする無段変速機用ベルト。
  2. 前記ロッキングエッジを構成する円弧の曲率半径が連続的に変化していることを特徴とする請求項1に記載の無段変速機用ベルト。
  3. 前記ロッキングエッジを構成する円弧は、曲率半径が異なる複数の円弧を接続して形成されており、この複数の円弧の接続部分の接線が一致していることを特徴とする請求項1に記載の無段変速機用ベルト。
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