JP2009214075A - 分離膜配設体 - Google Patents

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Abstract

【課題】多孔質基体の表面に配設された分離膜とシール部との境界部分においてシール不良が生じ難い分離膜配設体を提供する。
【解決手段】多孔質基体1と、多孔質基体1の表面に配設された分離膜11と、多孔質基体1の表面に分離膜11に接するように配設された膜状のシール部12と、分離膜11とシール部12との境界部分13に分離膜11とシール部13との両方を覆うように配設された膜状の被覆用ゼオライト21とを備えた分離膜配設体100。
【選択図】図1

Description

本発明は、分離膜配設体に関し、さらに詳しくは、多孔質基体の表面に配設された分離膜とシール部との境界部分においてシール不良が生じ難い分離膜配設体に関する。
従来、ゼオライト膜、炭素膜、チタニア膜等が、多孔質基体表面に配設されて分離膜として使用されている。そして、多孔質基体表面における、被処理流体が接触したときに当該被処理流体を多孔質基体内部に流入させたくない部分、及び当該被処理流体を多孔質基体内部から外部に流出させたくない部分に、分離膜に隣接するようにシール材を塗膜し、多孔質基体表面に分離膜配設部分とそれに隣接するシール部とを形成することがある。このような場合、分離膜とシール部とは気密又は液密に接触していることが好ましいが、製造過程において、分離膜とシール部との間に欠陥が生じ、シール不良が生じるという問題があった。
従来、例えば、多孔質基体の所定の位置に分離膜としてゼオライト膜が配設され、ゼオライト膜に隣接する所定の位置にシール部としてガラスシールが配設された分離膜配設体が開示されている(特許文献1参照)。
特開平10−180060号公報
このような、ガラスシールとゼオライト膜とが多孔質基体の表面上で互いに隣接しているゼオライト膜配設体の場合、その隣接している部分は、通常、気密又は液密に接触していることが好ましい。ゼオライト膜とガラスシールとの間から被処理流体が流入及び流出しないようにして、ゼオライト膜配設体の分離性能を高めるためである。しかし、多孔質基体表面の所定の位置にガラスシールを施し、その後ゼオライト膜を配設すると、ガラスシールが、ゼオライト膜形成時用いられるアルカリ溶液により侵食されて欠陥が生じる、またはガラスシールとゼオライト膜が隙間なく配設されないことにより、シール不良が発生するという問題があった。これに対し、ゼオライト膜を多孔質基体表面に配設した後にガラスシールを施す方法、及び、ガラスシールを施した後にゼオライト膜を配設し、その後、欠陥を塞ぐために更にガラスシールを施す方法が考えられる。これらの方法はいずれもゼオライト膜の上から高温でガラスシールを施すことになるため、ゼオライト膜、ガラスシール及び多孔質基体の熱膨張率の違いにより、新たな欠陥(シール不良)が発生するという問題や、ゼオライト膜をガラスの融点まで温度上昇させることによりゼオライト膜が劣化するという問題がある。また、ガラスシールに使用するガラスを低融点のガラスとすることが考えられるが、低融点ガラスの多くは、酸やアルカリに弱いという問題があるため、膜を使用する環境が制限される。
一方、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂で欠陥部分を被覆して塞ぐ方法も考えられるが、樹脂の耐熱温度が低く、更に有機溶媒、酸、アルカリ、水蒸気等により劣化しやすいため長期的なシール性の確保が難しいという問題がある。
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、多孔質基体の表面に配設された分離膜とガラスシールとの境界部分においてシール不良が生じ難い分離膜配設体を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明によって以下の分離膜配設体が提供される。
[1] 多孔質基体と、前記多孔質基体の表面に配設された分離膜と、前記多孔質基体の表面に前記分離膜に接するように配設された膜状のシール部と、前記分離膜と前記シール部との境界部分に前記分離膜と前記シール部との両方を覆うように配設された膜状の被覆用ゼオライトとを備えた分離膜配設体。
[2] 前記分離膜が、DDR型ゼオライト膜である[1]に記載の分離膜配設体。
[3] 前記被覆用ゼオライトが、構造規定剤を含有するか、又は、平均細孔径が酸素6員環により形成される細孔の細孔径以下である[1]又は[2]に記載の分離膜配設体。
[4] 前記被覆用ゼオライトが、MFI型ゼオライトである[1]〜[3]のいずれかに記載の分離膜配設体。
[5] 前記多孔質基体が、中心軸方向に貫通する複数の貫通孔が形成された柱状のモノリス形状基体であり、前記分離膜が前記モノリス形状基体の貫通孔の内壁面に配設され、前記シール部が前記モノリス形状基体の両端面に配設された[1]〜[4]のいずれかに記載の分離膜配設体。
このように、本発明の分離膜配設体によれば、多孔質基体の表面に互いに隣接するように配設された分離膜とシール部との境界部分に、分離膜とシール部との両方を覆うように被覆用ゼオライトを配設したため、分離膜とシール部との境界部分に気密又は液密に接触してない欠陥部分が存在しても、被覆用ゼオライトがその上から覆うことにより、気密性又は液密性が維持され、シール不良のない分離膜配設体とすることができる。
次に本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。また、各図面において、同一の符号を付したものは、同一の構成要素を示すものとする。
(分離膜配設体)
本発明の分離膜配設体の一の実施形態は、図1に示すように、多孔質基体1と、多孔質基体1の表面に配設された分離膜11と、多孔質基体1の表面に分離膜11に接するように配設された膜状のシール部12と、分離膜11とシール部12との境界部分13に分離膜11とシール部12との両方を覆うように配設された膜状の被覆用ゼオライト21とを備えるものである。本実施形態の分離膜配設体100は、多孔質基体1として、図2に示す中心軸方向に貫通する複数の貫通孔2が形成された柱状のモノリス形状基体1aを用い、分離膜11がモノリス形状基体1aの貫通孔2の内壁面5に配設され、シール部12がモノリス形状基体1aの両端面4,4に配設されたものである。図1は、本発明の分離膜配設体の一実施形態を示し、多孔質基体1の中心軸に平行な平面で切断した断面を示す模式図である。図2は、本発明の分離膜配設体の一の実施形態を構成するモノリス形状基体1a(多孔質基体1)を模式的に示す斜視図である。
本実施形態の分離膜配設体は、モノリス形状基体1aの貫通孔2の内壁面5に、中心軸方向の両端部間に亘るように分離膜11を配設し、モノリス形状基体1aの両端面4,4にシール部12を配設することにより、貫通孔2の内壁面5と、モノリス形状基体1aの端面4とが接する部分を境界部分13として、分離膜11とシール部12とが隣接して配設された状態としている。本実施形態の分離膜配設体100において、「分離膜11とシール部12とが隣接して多孔質基体1の表面に配設される」というときは、分離膜11とシール部12との境界部分13において、接触している場合も、接触せずに隙間がある場合も含まれる。また、分離膜11とシール部12とが重なっている場合も含まれる。分離膜11とシール部12とが重なっている場合、表面に現れる分離膜11とシール部12との境界線が境界部分13となる。分離膜11とシール部12との境界部分13に隙間がある(多孔質基体1の表面が露出している)場合には、分離膜11とシール部12との両方を覆うように配設した被覆用ゼオライト21によりその隙間も埋められた状態(露出した多孔質基体1の表面も被覆用ゼオライト21で覆われた状態)となるため、シール不良にはならないのである。また、「被覆用ゼオライトが21、分離膜11とシール部12との境界部分13に分離膜11とシール部12との両方を覆うように配設される」というときは、図1に示すように、被膜用ゼオライト21が、分離膜11とシール部12との境界部分13を含めて、分離膜11とシール部12の両方と重なるように配設されることをいう。また、被膜用ゼオライト21は、分離膜11とシール部12との境界部分13全体に亘って配設されていることが好ましい。これにより、より確実にシール不良を防止することができる。
(分離膜)
本実施形態の分離膜配設体100を構成する分離膜11としては、ゼオライト膜、炭素膜、チタニア膜等を挙げることができ、これらの中でもゼオライト膜が好ましく、DDR型ゼオライト膜が更に好ましい。
ここで、ゼオライトは、触媒、触媒担体、吸着材等として利用されており、また、金属やセラミックスからなる多孔質基体の表面に成膜されたゼオライト膜配設体は、ゼオライトの分子篩作用を利用し、ガス分離膜や浸透気化膜に用いられるようになってきている。
ゼオライトは、その結晶構造により、LTA、MFI、MOR、AFI、FER、FAU、DDRといった数多くの種類が存在する。これらの中でDDR(Deca−Dodecasil 3R)は、主成分がシリカからなる結晶であり、その細孔は酸素8員環を含む多面体によって形成されているとともに、酸素8員環の細孔径は4.4×3.6オングストロームであることが知られている(W. M. Meier, D. H. Olson, Ch. Baerlocher, Atlas of zeolite structure types, Elsevier(1996)参照)。
DDR型ゼオライトは、ゼオライトの中では比較的細孔径が小さいものであり、二酸化炭素(CO)、メタン(CH)、エタン(C)といった低分子ガスの分子篩膜として好適に用いることができる。
このようなDDR型ゼオライトをシール部が配設された多孔質基体に製膜して、分離膜配設体を作製する方法としては、ガラスシールが配設された多孔質基体を、1−アダマンタンアミン、シリカ、水及びエチレンジアミン等の所定の原料が含有されるアルカリ性溶液に浸漬して、水熱合成によりDDRゼオライト膜を多孔質基体の表面に成膜する方法が挙げられる。しかし、この方法では、多孔質基体の表面に配設されたシール部をガラスシールとした場合、ガラスシールが、アルカリ性溶液中に溶出することがあり、それによりシール不良やDDR型ゼオライト膜の成膜不良が発生するという問題があった。DDR型ゼオライト膜の成膜不良は、DDR型ゼオライト膜を成膜するための原料にガラス成分が溶出するにより、原料組成が変化し、DDR型ゼオライト膜の成膜に適さない組成となってしまうことによって生じる。本実施形態の分離膜配設体は、被膜用ゼオライトが、分離膜とシール部との境界部分に配設されているため、ガラスシールがアルカリ溶液に溶出してシール不良となった部分があっても、その部分も覆うことにより高いシール性を維持することができる。
本実施形態の分離膜配設体100では、上記のように、分離膜11が多孔質基体1(モノリス形状基体1a)の貫通孔2の内壁面5全体に亘って配設されているが、これは、分離膜11の面積を大きくすることができるため好ましい。但し、分離膜11の配設位置は、これに限定されるものではなく、多孔質基体1の表面の他の部分に配設されていてもよい。例えば、モノリス形状基体1aの側面3に配設されてもよいし、端面4に配設されてもよい。また、多孔質基体1がモノリス形状以外の形状であった場合においても、分離膜が配設される部分はその用途、使用方法等により適宜決定することができる。
分離膜の膜厚は特に限定されないが、0.05〜30μmが好ましく、0.2〜5μmが更に好ましい。30μmより厚いと、ガスの透過量が少なくなることがある。0.05μmより薄いと分離膜の強度が低くなることや欠陥が多く発生しやすくなることがある。ここで、多孔質基体の表面に膜を形成すると、多孔質基体表面には多数の細孔が開いているため、多孔質基体表面上だけでなく、多孔質体の細孔内に入り込んだ部分を有する膜となる場合がある。本実施の形態において「膜厚」というときは、このように、多孔質基体の細孔内に入り込んだ部分も含めた厚さをいう。また、分離膜の膜厚は、厚さ方向に沿って切断した断面の電子顕微鏡写真により測定した5ヶ所の断面位置での平均値である。分離膜の平均細孔径は特に限定されないが、0.25〜10nmが好ましく、0.25〜2nmが更に好ましい。0.25nmより小さいと、流体(通過させたい分子等)が通過し難くなることがあり、10nmより大きいと流体(通過させたくない分子等)がほとんど通過してしまい分離性能が低下することがある。
(シール部)
本実施形態の分離膜配設体100を構成するシール部12としては、ガラスシール、金属シールを挙げることができ、これらの中でも、多孔質基体との熱膨張係数を合わせやすい点に優れることより、ガラスシールが好ましい。ガラスシールに用いるガラスの物性としては、特に限定されないが、多孔質基体の熱膨張係数に近い熱膨張係数を有することが好ましい。また、ガラスシールに用いるガラスとしては、鉛を含まない無鉛ガラス等が好ましい。
本実施形態の分離膜配設体100では、上記のように、シール部12が多孔質基体1(モノリス形状基体1a)の両端面4,4全体に貫通孔を塞がないようにして配設されている。このようにモノリス形状基体1の、貫通孔2の内壁面5に分離膜11が形成され、両端面4,4にシール部12が配設された分離膜配設体100は、被処理流体をモノリス形状基体1aの貫通孔2の開口部から貫通孔2内に流入させ、被処理流体の一部(通過流体)を貫通孔の内壁面5に配設された分離膜11を通過させてモノリス形状基体1a内部に流入させ、モノリス形状基体1a内部に流入した通過流体をモノリス形状基体1aの側面から外部に排出することにより被処理流体を分離するものである。そして、被処理流体を貫通孔2の開口部から貫通孔2内に流入させるときに、モノリス形状基体1aの端面4から被処理流体が流入しないように、シール部12が配設されている。これにより、被処理流体がモノリス形状基体1aの端面4からモノリス形状基体内部に流入して、分離膜11を通過した通過流体と端面4から流入した被処理流体とが混ざって側面3から流出することを防止するのである。このとき、分離膜11とシール部12との境界部分13にシール不良が生じると、シール不良部分から、被処理流体がモノリス形状基体1内部に流入するため、この境界部分13に被覆用ゼオライト21を配設してシール不良の発生を防止する必要がある。また、シール部12は、端面だけでなく、端面近くの側面や貫通孔の内壁面にも形成されていてもよい。
(被覆用ゼオライト)
本実施形態の分離膜配設体100を構成する被覆用ゼオライト21は、上記のように、分離膜11とシール部12との境界部分13に、分離膜11とシール部12との両方を覆うように、すなわち、両方に重なるように配設されている。これにより、シール不良を防止することができる。本実施形態の分離膜配設体100においては、被膜用ゼオライト21が境界部分13に配設されると同時に、モノリス形状基体1aの両端面4,4全体に亘って配設されている。被覆用ゼオライト21が、分離膜11と重なる部分の重なり幅W1は、0.01〜50mmであることが好ましく、0.1〜5mmであることが更に好ましい。0.01mmより短いとシール不良が発生し易くなることがあり、50mmより長いと分離膜面積が小さくなることがある。被覆用ゼオライト21が、シール部12と重なる部分の重なり幅W2は、0.01mm以上であることが好ましく、0.1mm以上であることが更に好ましい。0.01mmより短いとシール不良が発生し易くなることがある。尚、被覆用ゼオライト21とシール部12との重なり幅W2の上限は、特に限定されず、本実施形態の分離膜配設体100のように、被覆用ゼオライト21がシール部全体に亘っていてもよい。
被覆用ゼオライト21は、構造規定剤を含有するか、又は、細孔径が酸素6員環により形成される細孔の細孔径以下であることが好ましい。これにより、被覆用ゼオライト21を被処理流体が通過することをより効果的に防止でき、より優れたシール用の被膜となる。細孔径は、結晶構造から計算により求めた推定値である。尚、一般的にゼオライトの細孔径は楕円形であるため、長径×短径で表記され、酸素6員環により形成される細孔の細孔径は、短径において0.1〜0.3nmである。
被覆用ゼオライト21としては、MFI型ゼオライト、SOD型ゼオライト等を挙げることができるが、MFI型ゼオライトであることが好ましい。MFI型ゼオライトは、セラミック、ガラス、金属等の表面にシール性の高い膜を形成することができ、成膜時の加熱温度が180℃以下と低く、耐薬品性、耐熱性等にも優れることより、被覆用ゼオライトとして好適に用いることができる。被覆用ゼオライト21の膜厚は、特に限定されないが、0.5〜50μmが好ましく、1〜5μmが更に好ましい。50μmより厚いと、形成するために長時間を要することがある。0.5μmより薄いと欠陥が生じ易く、シール不良となり易くなることがある。
(多孔質基体)
本実施形態の分離膜配設体100においては、上記のように、多孔質基体1として、図2に示すような、モノリス形状基体1aを用いているが、多孔質基体1の形状は、これに限定されず、用途に応じて任意の形状とすることができる。例えば、板状、筒状、ハニカム形状等を挙げることができる。なお、本実施形態にいう「モノリス形状」とは、中心軸方向に貫通する複数の貫通孔が形成された柱状を意味し、例えば、その中心軸方向に直交する断面が蓮根状になっているものをいう。多孔質基体の外形としては、円柱状、楕円柱状、又は多角柱状であることが好ましい。以下、多孔質基体が、上記モノリス形状基体である場合について説明するが、上記のように多孔質基体の形状はこれに限定されるものではない。
多孔質基体1の平均気孔率は、10〜60%が好ましく、20〜40%が更に好ましい。10%より低いと被処理流体の分離時に圧力損失が大きくなることがあり、60%より高いと多孔質基体1の強度が低くなることがある。尚、平均気孔率は、水銀ポロシメーターにより測定した値である。多孔質基体1は複数の粒子層からなるが、貫通孔2に面する最表面層の平均細孔径は、0.003〜10μmであることが好ましく、0.01〜1μmであることが更に好ましい。0.003μmより小さいと被処理流体の分離時に圧力損失が大きくなることがあり、10μmより大きいと表面に形成された分離膜11に欠陥が生じ易くなることがある。尚、多孔質基体1の貫通孔2に面する最表面層の平均細孔径は、水銀ポロシメーターにより測定した値である。多孔質基体1の中心軸方向長さは、目的に応じて適宜決定することができ、例えば、40〜1000mm程度の範囲のものを好適に使用することができる。また、多孔質基体1の中心軸に直交する断面の面積は、目的に応じて適宜決定することができ、例えば、5〜300cm程度の範囲のものを好適に使用することができる。多孔質基体1の材質は、アルミナ、ジルコニア又はムライト等のセラミックス、ガラス、ゼオライト、粘土、金属、炭素等が好ましい。これらの中でも、強度やコストの低さに優れる点で、アルミナが好ましい。
多孔質基体1に形成される貫通孔2の密度(貫通孔本数/多孔質基体の中心軸方向に垂直な断面の面積)は、0.01〜15本/cmであることが好ましい。0.01本/cmより少ないと被処理流体の分離時の処理能力が低下することがあり、15本/cmより多いと多孔質基体の強度が低下することがある。一つの貫通孔の大きさは、中心軸に直交する断面の面積が0.5〜28mmであることが好ましい。0.5mmより小さいと被処理流体の分離時の圧力損失が大きくなることがあり、28mmより大きいと多孔質基体の強度が低下したり、被処理流体の分離時の処理能力が低下することがある。
多孔質基体1の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。
(製造方法)
次に、図1に示す本発明の分離膜配設体の一の実施形態の製造方法について説明する。まず、多孔質基体の両端面にガラスペーストを塗布し、所定温度で加熱することによりシール部を形成する。分離膜としてDDR型ゼオライト膜を用いる場合には、その後、1−アダマンタンアミン、シリカ及び水を含有する原料溶液に、上記シール部を配設した多孔質基体を浸漬し、DDR型ゼオライト種結晶の存在下、DDR型ゼオライトを水熱合成して、多孔質基体の表面の、シール部に隣接した位置に「1−アダマンタンアミンを含有するDDR型ゼオライト膜」を形成する。そして、500〜700℃で加熱することにより、DDR型ゼオライト膜に含有される1−アダマンタンアミンを燃焼除去することにより、多孔質基体の表面の、シール部に隣接した位置にDDR型ゼオライト膜を形成して、DDR型ゼオライト膜配設体を得ることが好ましい。以下、各工程毎に詳細に説明する。
(多孔質基体)
本実施形態の分離膜配設体の製造方法において用いる多孔質基体は、上記、本発明の分離膜配設体の一実施形態において挙げられた多孔質基体であることが好ましい。
(ガラスペーストの塗布)
多孔質基体の表面に、ガラスペーストを塗布する。ガラスペーストを塗布する部分は、特に限定されず、多孔質基体の表面の中で、多孔質基体内から外部に、又は外部から多孔質基体内に、ガス、液体、微粒子等が移動することを防止しようとする部分に塗布することが好ましい。本実施形態においては、多孔質基体(モノリス形状基体)の両端面にガラスペーストを塗布する。
ガラスペーストとして多孔質基体の表面に塗布するガラス材料としては、鉛を含まない無鉛ガラスが好ましい。また、ガラス材料としては、軟化点が600〜1000℃であることが好ましく、700〜1000℃であることが更に好ましい。600℃より低いと、分離膜の形成工程での加熱時にガラスが溶融してしまうことがあり、1000℃より高いと、多孔質基体を構成する粒子の焼結を必要以上に進行させてしまうことがある。ガラスペーストは粉末状のガラスを水等の溶媒に分散させることにより作製することができる。また、水等の溶媒に加えて高分子等を添加して作製しても良い。
次に、ガラスペーストを塗布した多孔質基体を加熱することにより、ガラスペーストを溶融して、多孔質基体の表面にガラスシールを形成する。加熱温度は、600〜1000℃が好ましく、700〜1000℃が更に好ましい。600℃より低いとガラスペースト中のガラスが溶融し難くなることがあり、1000℃より高いと多孔質基体を構成する粒子の焼結を必要以上に進行させてしまうことがある。加熱装置としては、電気炉等を挙げることができる。
(原料溶液)
分離膜としてDDR型ゼオライト膜を用いる場合には、まず、1−アダマンタンアミンとシリカ、水、その他要すればエチレンジアミン、その他添加剤を混合して原料溶液を調製する。本実施形態では、DDR型ゼオライト膜を形成するための構造規定剤として1−アダマンタンアミンを用いる。シリカとしてはシリカゾルを用いることが好ましい。例えば、添加剤として微量のアルミン酸ナトリウムを使用すると、DDR型ゼオライト膜を構成するSiの一部をAlで置換することもできる。このように置換することにより、形成されるDDR型ゼオライト膜に分離機能に加えて触媒作用等を付加することも可能である。原料溶液の調製に際して、シリカに対する1−アダマンタンアミンの比の値(1−アダマンタンアミン/シリカ(モル比))は、0.002〜0.5が好ましく、0.002〜0.2が更に好ましい。0.002より小さいと構造規定剤である1−アダマンタンアミンが不足してDDR型ゼオライトが形成しにくいことがあり、0.5より大きいと膜状にDDR型ゼオライトを形成しにくいこと、また高価な1−アダマンタンアミンの使用量が増えるため製造コスト増につながることがある。シリカに対する水の比の値(水/シリカ(モル比))は、10〜500が好ましく、10〜200が更に好ましい。10より小さいとシリカ濃度が高すぎてDDR型ゼオライトが形成しにくいこと、DDR型ゼオライトが形成しても膜状に形成しにくいことがあり、500より大きいとシリカ濃度が低すぎてDDR型ゼオライトが形成しにくいことがある。
原料溶液中には、エチレンジアミンを含有させることが好ましい。エチレンジアミンを添加して原料溶液を調製することにより、1−アダマンタンアミンを容易に溶解することが可能となり、均一な結晶サイズ、膜厚を有する緻密なDDR型ゼオライト膜を製造することが可能となるからである。1−アダマンタンアミンに対するエチレンジアミンの比の値(エチレンジアミン/1−アダマンタンアミン(モル比))は、4〜35が好ましく、8〜32が更に好ましい。4より小さいと、1−アダマンタンアミンを溶かし易くするための量としては不充分であり、35より大きいと、反応に寄与しないエチレンジアミンが過剰となり製造コストがかかることがある。
また、1−アダマンタンアミンを予めエチレンジアミンに溶解することにより1−アダマンタンアミン溶液を調製することが好ましい。このように調製した1−アダマンタンアミン溶液と、シリカを含むシリカゾル溶液とを混合して調製した原料溶液を用いることが、より簡便かつ完全に1−アダマンタンアミンを溶解し、均一な結晶サイズ、膜厚を有する緻密なDDR型ゼオライト膜を製造することが可能となるために好ましい。なお、シリカゾル溶液は、微粉末状シリカを水に溶解すること、又は、アルコキシドを加水分解することにより調製することができるが、シリカゾル市販品のシリカ濃度を調整して用いることもできる。
(水熱合成)
原料溶液にシール部が配設された多孔質基体を浸漬し、DDR型ゼオライト種結晶の存在下、DDR型ゼオライトを水熱合成して多孔質基体の表面に、「1−アダマンタンアミンを含有するDDR型ゼオライト膜」を形成する。ここで、「種結晶の存在下」とは、種結晶が、水熱合成時に、多孔質基体表面に接触した状態で存在していることをいう。従って、種結晶を予め原料溶液中に分散させておき、そこに多孔質基体を浸漬して水熱合成してもよいし、種結晶を多孔質基体表面に予め塗布しておき、その多孔質基体を原料溶液中に浸漬して水熱合成してもよい。また、種結晶を原料溶液に分散させるとともに、多孔質基体表面にも塗布しておき、多孔質基体を原料溶液に浸漬して水熱合成してもよい。種結晶を、均一に多孔質基体表面に配置させるという観点からは、多孔質基体表面に種結晶を予め塗布することが好ましい。
種結晶としては、「M. J. den Exter, J. C. Jansen, H. van Bekkum, Studies in Surface Science and Catalysis vol.84, Ed. by J. Weitkamp et al., Elsevier(1994)1159−1166」に記載のDDR型ゼオライトを製造する方法に従って、DDR型ゼオライト粉末を製造し、これを微粉末に粉砕したものを使用することが好ましい。粉砕後の種結晶は、篩等を用いて所定の粒径範囲とすることが好ましい。
また、種結晶を原料溶液中に分散させる場合は、原料溶液調製時に上記所定の種結晶を所定量添加する。原料溶液に種結晶を分散させる方法としては、一般的な撹拌方法を採用すればよいが、超音波処理等の方法を採用してもよく、均一に分散させることにより、より緻密で均一な膜厚のDDR型ゼオライト膜を形成することができる。尚、種結晶を分散させた原料溶液を用いてDDR型ゼオライト膜を水熱合成する場合、多孔質基体の表面の中のDDR型ゼオライト膜を形成しない部分にPTFEシールテープ等によりマスキングを施し、DDR型ゼオライト膜が形成されないようにしても良い。例えば、モノリス形状基体の貫通孔の内壁面のみにDDR型ゼオライト膜を形成しようとするときは、モノリス形状基体の両端面及び側面にマスキングを施し、モノリス形状基体を原料溶液に浸漬したときに、原料溶液がモノリス形状基体の貫通孔の内壁面のみに接触するようにすることが好ましい。
原料溶液にシール部が配設された多孔質基体を浸漬し、DDR型ゼオライトを水熱合成する方法としては、特に限定されないが、例えば、種結晶を多孔質基体の貫通孔の内壁面に塗布する場合には、以下の方法が挙げられる。
種結晶分散液を多孔質基体の貫通孔の内壁面に、ディップコート法、ろ過コート法等の方法で塗布して、貫通孔の内壁面に種結晶が塗布された多孔質基体を形成する。そして、原料溶液を入れた耐圧容器等に、種結晶が塗布された多孔質基体を入れて、下記所定の温度で所定時間保持することにより水熱合成し、多孔質基体1の貫通孔2の内壁面5に1−アダマンタンアミンを含有するDDR型ゼオライト膜(分離膜11)を形成する。この場合、種結晶を塗布していない、多孔質基体1の側面3及び両端面4,4には、DDR型ゼオライト膜は形成されない。これにより、両端面4,4に配設されたシール部12と、貫通孔の内壁面に形成されるDDR型ゼオライト膜(分離膜11)とが隣接して配置されることになる。このように、分離膜11とシール部12とを隣接させて配置させるため、1−アダマンタンアミンを含有するDDR型ゼオライト膜は、貫通孔の両端部間に亘って配設されることが好ましい。本実施形態においては、水熱合成に際しての温度条件を90〜200℃とすることが好ましく、100〜150℃とすることが更に好ましい。90℃未満で水熱合成を行った場合には、DDR型ゼオライト膜を形成し難いことがあり、200℃超で水熱合成を行った場合には、DOH型ゼオライト等のDDR型ゼオライトとは異なる結晶相が形成されることがある。また、水熱合成に際しての処理時間は、1〜240時間が好ましく、1〜120時間が更に好ましい。また、耐熱容器としては、特に限定されないが、例えば、フッ素樹脂製内筒付きステンレス製耐圧容器であることが好ましい。
形成される1−アダマンタンアミンを含有するDDR型ゼオライト膜11の膜厚は0.05〜15μmであることが好ましく、0.1〜5μmであることが更に好ましく、0.1〜2μmであることが特に好ましい。この膜厚が、上記本発明の分離膜配設体の一実施形態における分離膜の膜厚となる。
(分離膜の形成)
次に、貫通孔2の内壁面5に1−アダマンタンアミンを含有するDDR型ゼオライト膜が配設された多孔質基体1を、500〜700℃で加熱することにより、DDR型ゼオライト膜に含有される1−アダマンタンアミンを燃焼除去して多孔質基体の表面にシール部に隣接するように配設されたDDR型ゼオライト膜(分離膜11)を形成する。このとき、分離膜11とシール部12との境界部分13は、分離膜11とシール部12とが密着し、シール不良がないことが好ましいが、境界部分13に隙間があってもよい。後の工程で、被覆用ゼオライト21を配設することにより、この隙間が塞がれ、高いシール性が保たれるからである。
貫通孔2の内壁面5に1−アダマンタンアミンを含有するDDR型ゼオライト膜が配設された多孔質基体1を、加熱する温度は500〜800℃であり、600〜800℃であることが好ましい。500℃より低いと、1−アダマンタンアミンを燃焼除去し難くなることがあり、800℃より高いと、DDR型ゼオライト膜にクラック等の欠陥が発生することがある。加熱時の雰囲気は大気中が好ましい。加熱装置としては、特に限定されないが、電気炉等を挙げることができる。
(被覆用ゼオライトの形成)
まず、水酸化テトラプロピルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、水及びシリカ、要すればその他添加剤を混合してMFI原料溶液を調製する。本実施形態では、MFI型ゼオライト膜を形成するための構造規定剤として水酸化テトラプロピルアンモニウム及び臭化テトラプロピルアンモニウムを用いる。シリカとしてはシリカゾル溶液を用いることが好ましい。MFI原料溶液の調製に際して、シリカに対する水酸化テトラプロピルアンモニウムの比の値(水酸化テトラプロピルアンモニウム/シリカ(モル比))は、0.05〜0.5が好ましく、0.2〜0.4が更に好ましい。0.05より小さいとMFI型ゼオライトの生成が不十分となり膜化において欠陥が発生しやすいことがあり、0.5より大きいとMFI型ゼオライトが粉末として生成しやすく膜化しにくいことがある。シリカに対する臭化テトラプロピルアンモニウムの比の値(臭化テトラプロピルアンモニウム/シリカ(モル比))は、0.05〜0.5が好ましく、0.2〜0.4が更に好ましい。0.05より小さいとMFI型ゼオライトの生成が不十分となり膜化において欠陥が発生しやすいことがあり、0.5より大きいとMFI型ゼオライトが粉末として生成しやすく膜化しにくいことがある。シリカに対する水の比の値(水/シリカ(モル比))は、10〜250が好ましく、20〜100が更に好ましい。10より小さいと原料溶液がゲル化し、膜化において欠陥が発生しやすいことがあり、250より大きいと原料溶液中のシリカ濃度が薄すぎて膜化が不十分になることがある。
シリカゾル溶液は、微粉末状シリカを水に溶解すること、又は、アルコキシドを加水分解することにより調製することができるが、シリカゾル市販品のシリカ濃度を調整して用いることもできる。
(水熱合成)
分離膜及びシール部を配設した多孔質基体(モノリス形状基体)の側面全体にマスキングテープを巻き、必要に応じて、端面の所望の位置にマスキングテープを貼り付け、その後、そのモノリス形状基体を耐圧容器内に一方の端面を下にして載置する。MFI原料溶液を、モノリス形状基体の下側の端面から所望の高さになるまで耐圧容器内に入れる。その後、水熱合成を行うことにより、モノリス形状基体の一方の端面について被覆用ゼオライト膜が配設された分離膜配設体が得られる。そして、他方の端面についても同様にして被覆用ゼオライト膜を配設することにより、モノリス形状基体の両端面に被覆用ゼオライト膜が配設された分離膜配設体を得ることができる。
MFI原料溶液を耐圧容器内に入れる高さ(量)としては、モノリス形状基体の下側の端面から20〜50mmであることが好ましく、20〜40mmであることが更に好ましい。このモノリス形状基体の下側の端面からの高さが、被覆用ゼオライト(MFI型ゼオライト)が、多孔質基体の貫通孔内に入り込む深さ(多孔質基体の端面からの距離)になり、実質的に被覆用ゼオライト21が、分離膜11と重なる部分の重なり幅W1となる(図1参照)。上記高さが、20mmより低いと、重なり幅W1が小さくなることがあり、50mmより高いと、重なり幅W1が大きくなることがある。マスキングテープの材質としては、水熱合成に際しての温度条件は100〜200℃とすることが好ましく、110〜150℃とすることが更に好ましい。100℃未満で水熱合成を行った場合には、MFI型ゼオライト膜を形成し難いことがあり、200℃超で水熱合成を行った場合には、MFI型ゼオライトが生成し難いことがある。また、水熱合成に際しての処理時間は、1〜48時間が好ましく、6〜32時間が更に好ましい。耐圧容器としては、例えば、フッ素樹脂製内筒付きステンレス製耐圧容器であることが好ましい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
多孔質基体として、両端面全体に、貫通孔の開口部を塞がないようにガラスシールが施された、アルミナ製のモノリス形状基体を用いた。モノリス形状基体の構造としては、直径30mmφ、長さ160mm、貫通孔に面する最表層の平均細孔径0.1μm、直径3mmφの貫通孔を37本有するものとした。
「M. J. den Exter, J. C. Jansen, H. van Bekkum, Studies in Surface Science and Catalysis vol.84, Ed. by J. Weitkamp et al., Elsevier(1994)1159−1166」に記載のDDR型ゼオライトを製造する方法に従って、DDR型ゼオライト粉末を製造し、これを微粉末に粉砕してDDR型ゼオライトの種結晶として使用した。粉砕後の種結晶を水に分散させた後、粗い粒子を除去し、種結晶分散液とした。
(分離膜)
フッ素樹脂製のボトルに6.31gのエチレンジアミン(和光純薬工業社製)を入れた後、0.993gの1−アダマンタンアミン(アルドリッチ社製)を加え、1−アダマンタンアミンの沈殿が残らないように溶解した。別のボトルに100gの水を入れ、84.12gの30質量%シリカゾル(スノーテックスS:日産化学社製)を加えて軽く撹拌した後、これにエチレンジアミンと1−アダマンタンアミンを混合した溶液を加えて約1時間撹拌混合し、原料溶液とした。その後、原料溶液をフッ素樹脂製内筒付きステンレス製耐圧容器に移した。
上記種結晶分散液を、上記アルミナ製のモノリス形状基体の貫通孔の内壁面全体に、ろ過コート法で塗布した。種結晶が貫通孔の内壁面に付着したモノリス形状基体を、原料溶液を入れた耐圧容器内に配置した。上記のようにモノリス形状基体は、端面にガラスシールを施したものを使用した。その後、120℃で64時間、加熱処理(水熱合成)を行った。水熱合成後、水洗、乾燥し、更に、大気中、650℃まで電気炉で加熱し、DDR型ゼオライト膜の細孔内に存在する1−アダマンタンアミンを燃焼除去し、モノリス形状基体の貫通孔の内壁面にDDR型ゼオライト膜を形成した。この場合、モノリス形状基体の端面と、貫通孔の内壁面とが接する部分が、分離膜とシール部との境界部分となる。
得られたDDR型ゼオライト膜の結晶相をX線回折で調べることにより結晶相の評価を行ったところ、DDR型ゼオライト及び多孔質基体を構成するアルミナの回折ピークのみが検出された。なお、X線回折における「DDR型ゼオライトの回折ピーク」とは、International Center for Diffraction Data (ICDD) 「Powder Diffraction File」に示されるDeca−dodecasil 3Rに対応するNo.38−651、又は41−571に記載される回折ピークである。
(MFI型ゼオライト被覆)
フッ素樹脂製のボトルに3.05gの40質量%水酸化テトラプロピルアンモニウム(SACHEM社製)を入れた後、1.595gの臭化テトラプロピルアンモニウム(和光純薬社製)を加えた。さらに、10.57gの水と、8.00gの30質量%シリカゾル(スノーテックスS、日産化学社製)を加えて約1時間攪拌混合し、MFI原料溶液とした。
DDR型ゼオライト膜を配設したモノリス形状基体の側面に、フッ素樹脂製のシールテープを巻いた後、フッ素樹脂製内筒付きステンレス製耐圧容器内に一方の端面側を下にして、中心軸方向が鉛直方向を向くように設置した。モノリス形状基体の下側の端面から約2cmの高さまでMFI原料溶液を注ぎ入れ、120℃で24時間、加熱処理(水熱合成)を行った。水熱合成後、水洗、乾燥し、被覆用MFI型ゼオライトをモノリス形状基体の一方の端面に配設した。更に、同様の方法で、モノリス形状基体の反対側の端面に被覆用MFI型ゼオライトを配設し、分離膜配設体を得た。得られた分離膜配設体は、多孔質基体と、多孔質基体の表面に配設された分離膜と、多孔質基体の表面に分離膜に隣接するように配設された膜状のシール部と、分離膜とシール部との境界部分に分離膜とシール部との両方を覆うように配設された膜状の被覆用ゼオライトとを備えたものであった。被覆用MFI型ゼオライトの膜厚は、5〜20μmであった。被覆用MFI型ゼオライトの膜厚は、厚さ方向に沿って切断した断面の電子顕微鏡写真により測定した5ヶ所の断面位置での平均値である。得られた分離膜配設体の、分離膜とシール部(ガラスシール)との境界部分を電子顕微鏡で観察した。図3A及び図3Bに示す電子顕微鏡写真によれば、分離膜とガラスシール31との間に、被覆用MFI型ゼオライト32(MFI型ゼオライト33)が生成し、モノリス形状基体の表面の露出がないことが確認できた。図3Aは、実施例1で作製された分離膜配設体の、DDR型ゼオライト膜とガラスシール31との境界部分を示す電子顕微鏡写真であり、図3Bは、図3Aの電子顕微鏡写真の中の一部の領域S1を拡大した電子顕微鏡写真である。尚、図3A及び図3Bの電子顕微鏡写真には、分離膜の部分が写されていないが、分離膜表面にも、MFI型ゼオライトは生成していた。
(比較例1)
実施例1と同様にして、モノリス形状基体の貫通孔の内壁面にDDR型ゼオライト膜を形成し、モノリス形状基体表面にガラスシールとDDR型ゼオライト膜とが隣接するように配設された分離膜配設体を作製した。得られた分離膜配設体について、実施例1の場合と同様に、分離膜とシール部(ガラスシール)との境界部分を電子顕微鏡で観察した。図4A及び図4Bに示す電子顕微鏡写真によれば、多結晶からなるDDR型ゼオライト膜とガラスシール31は接しておらず、これらの間には隙間があった。そして、その隙間部分(モノリス形状基体表面34)には、DDR型ゼオライト35の結晶が疎らにしか存在しておらず、モノリス形状基体の表面が露出している領域があった。図4Aは、比較例1で作製された分離膜配設体の、DDR型ゼオライト膜とガラスシールとの境界部分を示す電子顕微鏡写真であり、図4Bは、図4Aの電子顕微鏡写真の中の一部の領域S2を拡大した電子顕微鏡写真である。
シール不良が生じ難い分離膜配設体であり、ガス分離膜や浸透気化膜として利用することができる。
本発明の分離膜配設体の一実施形態を示し、多孔質基体の中心軸に平行な平面で切断した断面を示す模式図である。 本発明の分離膜配設体の一の実施形態を構成するモノリス形状基体(多孔質基体)を模式的に示す斜視図である。 実施例1で作製された分離膜配設体の、DDR型ゼオライト膜とガラスシールとの境界部分を示す電子顕微鏡写真である。 図3Aの電子顕微鏡写真の中の一部の領域を拡大した電子顕微鏡写真である。 比較例1で作製された分離膜配設体の、DDR型ゼオライト膜とガラスシールとの境界部分を示す電子顕微鏡写真である。 図4Aの電子顕微鏡写真の中の一部の領域を拡大した電子顕微鏡写真である。
符号の説明
1:多孔質基体、1a:モノリス形状基体、2:貫通孔、3:側面、4:端面、5:貫通孔の内壁面、11:分離膜、12:シール部、13:境界部分、21:被膜用ゼオライト、31:ガラスシール、32:被覆用MFI型ゼオライト、33:MFI型ゼオライト、34:モノリス形状基体表面、35:DDR型ゼオライト、100:分離膜配設体、S1,S2:領域、W1,W2:重なり幅。

Claims (5)

  1. 多孔質基体と、前記多孔質基体の表面に配設された分離膜と、前記多孔質基体の表面に前記分離膜に接するように配設された膜状のシール部と、前記分離膜と前記シール部との境界部分に前記分離膜と前記シール部との両方を覆うように配設された膜状の被覆用ゼオライトとを備えた分離膜配設体。
  2. 前記分離膜が、DDR型ゼオライト膜である請求項1に記載の分離膜配設体。
  3. 前記被覆用ゼオライトが、構造規定剤を含有するか、又は、平均細孔径が酸素6員環により形成される細孔の細孔径以下である請求項1又は2に記載の分離膜配設体。
  4. 前記被覆用ゼオライトが、MFI型ゼオライトである請求項1〜3のいずれかに記載の分離膜配設体。
  5. 前記多孔質基体が、中心軸方向に貫通する複数の貫通孔が形成された柱状のモノリス形状基体であり、前記分離膜が前記モノリス形状基体の貫通孔の内壁面に配設され、前記シール部が前記モノリス形状基体の両端面に配設された請求項1〜4のいずれかに記載の分離膜配設体。
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