JP2009209415A - ガスバリア性蒸着フィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 プラスチックフィルムからなる基材の一方の面に、無機酸化物蒸着膜を1層又は2層以上積層した蒸着フィルムであって、該無機酸化物蒸着膜中に形成される空孔の最大直径が0.5nm以下である、蒸着フィルムを提供する。
【選択図】 なし
Description
無機酸化物蒸着膜は、高真空中で蒸着材料を気化させ、基材上に堆積させることからなる真空蒸着法による形成が知られているが、この場合、膜質が粗く、ガスバリア性の低い無機酸化物蒸着膜が形成される。これに対し、スパッタリングやイオンプレーティング及び化学蒸着法といったイオン蒸着法が開発されたが、これらの方法は、真空蒸着法より緻密な膜質が得られるものの、要求されるガスバリア能を達成することができなかった。また、真空蒸着法において、緻密な無機酸化物蒸着膜を得るために、蒸着材料を特定のものに限定することが提案されているが、これにより得られる蒸着フィルムのガスバリア性は、酸素透過率1ml/m2・day・atm、水蒸気透過率1g/m2・day程度の低いものに留まる(特許文献1)。
また、本発明の蒸着フィルムは、その製造に際し、無機酸化物蒸着工程において、イオンクラスタービーム法を用いるものであるが、該方法を用いることにより、イオン蒸着法
を用いる場合よりもさらに緻密な膜質を、効率よく得ることができる。
<1>基材フィルム
本発明において、基材フィルムとして、化学的ないし物理的強度に優れ、無機酸化物の蒸着膜を形成する条件等に耐え、それら無機酸化物の蒸着膜の特性を損なうことなく良好に保持し得ることができるプラスチックフィルムを使用することができる。
このようなプラスチックフィルムとしては、具体的には、例えば、ポリエチレン系樹脂あるいはポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等の各種のプラスチック材料からなるフィルムを使用することができる。
なお、上記の各種の樹脂1種又はそれ以上を使用し、その製膜化に際して、例えば、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができ、その添加量としては、極く微量から数十%まで、その目的に応じて、任意に添加することができる。
また、上記の基材フィルムとしては、必要ならば、その表面に、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理等の表面活性処理を任意に施すことができる。
本発明において、無機酸化物蒸着膜としては、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の酸化物からなる蒸着膜を挙げることができる。
好ましいものとしては、ケイ素(Si)又はアルミニウム(Al)の金属の酸化物からなる蒸着膜を挙げることができる。
また、上記の金属の酸化物の蒸着膜は、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物等のように金属酸化物ともいうことができ、その表記は、例えば、SiOx、AlOx、MgOx等のようにMOx(ただし、式中、Mは、金属元素を表し、xの値は、金属元素によってそれぞれ範囲が異なる。)で表される。
上記において、x=0の場合は、完全な金属であり、透明ではないので使用することができない。また、xの範囲の上限は、完全に酸化したときの値である。
望ましくは、ケイ素(Si)は1.0〜2.0、アルミニウム(Al)は0.5〜1.5の範囲の値のものを使用することができる。
また、無機酸化物蒸着膜として、使用する金属、又は金属の酸化物は、1種又は2種以上の混合物で使用し、異種の材質で混合した無機酸化物蒸着膜を構成することもできる。
さらに、無機酸化物が、酸化ケイ素である場合は、SiOxCyで表される炭素含有酸化ケイ素であってもよい[式中、xは1.5〜2.2の範囲内にあって、yは0.15〜0.80の範囲内にあるのが好ましく、そしてxが1.7〜2.1の範囲内にあって、yが0.39〜0.47の範囲内にあるのがさらに好ましい]。
本発明の蒸着フィルムを構成する無機酸化物蒸着膜は、直径が0.5nm以下の範囲に制御された微細空孔を有する薄膜である。このような薄膜を形成するためには、蒸着工程において、イオンクラスタービーム法を用いることができる。
イオンクラスタービーム法は、無機酸化物蒸着材料を坩堝内で蒸気化し、この蒸気粒子をクラスター状にし、次いでこれをイオン化し、さらに加速電圧を供給して運動エネルギーを付加し、基材表面に衝突させることにより蒸着する方法である。本発明において、このイオンクラスタービーム法を用いることにより、無機酸化物の蒸気粒子は、大きな質量を持ったクラスターとして基材表面に衝突するため、単原子イオンが衝突する場合と比べて高いスパッタリング効果が得られ、極めて緻密な無機酸化物蒸着膜を得ることができる。
本発明においては、図1に示すように、イオンクラスタービーム装置(1)は、隔壁(2)で仕切られた2室構造であり、クラスター発生部となる第1室(3)と、基材表面への蒸着部となる第2室(4)とからなり、いずれも1×10-5〜1×100Paの高真空領域とされる。第1室(3)内には、蒸着材料を加熱して気化する坩堝(5)、イオン化部(7)及び加速電極部(8)が配置されており、該坩堝(5)は、噴射ノズル(6)を備える。
装置作動時には、蒸着材料は、坩堝(5)内で、その蒸気圧が例えば1×100〜1×103Paとなるように加熱され、蒸気化される。次いで、得られた蒸気粒子は坩堝(5)の噴射ノズル(6)より真空下の第1室(3)へ噴射される。噴射ノズル(6)から噴
射された蒸気粒子は断熱膨張によりクラスターを形成し、イオン化部(7)においてイオン化された後、加速電極部(8)において例えば0〜5kVの加速電圧により加速され、ここでイオン化クラスタービームとされる。
このイオン化クラスタービームは、隔壁(2)の開口部(9)を通過して第2室(4)へ進入し、ここで反応ガスと反応し、冷却ドラム(11)上に適当なライン速度で案内されたプラスチックフィルムの表面に衝突する。この衝突によりイオン化クラスターは個々の原子に分離し、緻密な蒸着膜を得ることができる。こうして無機酸化物蒸着膜が形成されたフィルムは、次いで、巻き取りロールに巻き取られる。
図示しないが、本発明において、無機酸化物蒸着膜の層は、単層であっても、2層以上からなる多層であってもよく、また、使用する無機酸化物は、単独で使用しても、2種以上の混合物として使用してもよい。
本発明において、無機酸化物蒸着膜中に形成される空孔の最大直径は、0.5nm以下である。無機酸化物蒸着膜中に、直径0.5nmを越える空孔が存在する場合、酸素及び水蒸気の分子が容易に該空孔を通過するため、酸素ガスバリア性及び水蒸気バリア性が低下し、長期間にわたり所望のガスバリア性を維持することができない。
なお、本発明において、無機酸化物蒸着膜中に形成される空孔のサイズは、ナノ空孔計測装置PALS-1(フジ・インバック株式会社製)を用いて、短パルス化した低速陽電子ビームを利用することにより測定することができる。
本発明の蒸着フィルムは、酸素透過率に関して、JIS K 7126に準拠した手法で得られる数値として0.5 ml/m2・day・atm以下という優れた酸素バリア性を示すことができ、また水蒸気透過率に関して、JIS K 7129に準拠した手法で得られる数値として0.5 g/m2・day以下という優れた水蒸気バリア性を示すことができる。
厚さ100μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、イオンクラスタービーム法により、図1のイオンクラスタービーム装置を用いて、以下の成膜条件下で、厚さ50nmの酸化ケイ素蒸着膜を形成し、蒸着フィルムを得た。
蒸着材料 酸化ケイ素(SiO)
反応ガス 酸素
真空度 第1室(クラスター発生部) 6.3×10-3Pa、
第2室(蒸着部) 4.2×10-1Pa
加速電圧 2kV
ライン速度 10m/min
厚さ100μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、イオンクラスタービーム法により、図1のイオンクラスタービーム装置を用いて、以下の成膜条件下で、厚さ50nmの酸化アルミニウム蒸着膜を形成し、蒸着フィルムを得た。
蒸着材料 アルミニウム(Al)
反応ガス 酸素
真空度 第1室(クラスター発生部) 5.8×10-3Pa、
第2室(蒸着部) 3.7×10-1Pa
加速電圧 2kV
ライン速度 10m/min
厚さ100μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、真空蒸着法により、電子ビーム(EB)加熱方式を用いて、以下の成膜条件下で、厚さ60nmの酸化ケイ素蒸着膜を形成し、蒸着フィルムを得た。
蒸着材料 酸化ケイ素(SiO)
真空度 4.8×10-2Pa
ライン速度 360m/min
厚さ100μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、プラズマCVD法により、以下の成膜条件下で、厚さ50nmの酸化ケイ素蒸着膜を形成し、蒸着フィルムを得た。
蒸着材料 ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)
真空度 7.8Pa
ライン速度 30m/min
(i)無機酸化物蒸着膜厚の測定
蛍光X線分析装置RIX2000(株式会社リガク製)を用いて、ケイ素(Si)のピーク強度を測定し、その測定値を酸化ケイ素(SiO2)膜厚として換算した。
(ii)無機酸化物蒸着膜中の空孔サイズの測定
ナノ空孔計測装置PALS−1(フジ・インバック株式会社製)を用いて測定した。
(iii)酸素透過率の測定
酸素透過率測定装置OXTRAN2/20(MOCON社製)を用いて、23℃、90%RH雰囲気下で測定した。
(iv)水蒸気透過率の測定
水蒸気透過率測定装置PERMATRAN3/31(MOCON社製)を用いて、40℃、90%RH雰囲気下で測定した。
結果は以下のとおりであった。
2 隔壁
3 第1室
4 第2室
5 坩堝
6 噴射ノズル
7 イオン化部
8 加速電極部
9 開口部
10 プラスチックフィルム
11 冷却ドラム
12 ガス導入管の出口部
Claims (4)
- プラスチックフィルムからなる基材の一方の面に、無機酸化物蒸着膜を1層又は2層以上積層した蒸着フィルムであって、該無機酸化物蒸着膜中に形成される空孔の最大直径が0.5nm以下である、蒸着フィルム。
- 無機酸化物蒸着膜が、イオンクラスタービーム法により蒸着される、請求項1に記載の蒸着フィルム。
- 酸素透過率が0.5 ml/m2・day・atm以下である、請求項1又は2に記載の蒸着フィルム。
- 水蒸気透過率が0.5 g/m2・day以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の蒸着フィルム。
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